(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061442
(43)【公開日】2022-04-18
(54)【発明の名称】ヒートシンクの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20220411BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2020177650
(22)【出願日】2020-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】520413645
【氏名又は名称】小田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】小田 貴弘
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BA04
5F136BA38
5F136FA02
5F136FA03
5F136GA22
(57)【要約】
【課題】ヒートシンクにおいてベースからフィンあるいはヒートパイプ、もしくはヒートパイプからフィンへと優れた熱伝導を可能とする製造方法を提供する。
【解決手段】2つ以上の熱伝導材で構成されたヒートシンクであって、少なくとも1か所以上は隣り合う熱伝導材が厚みをもったメッキのみで接合されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つ以上の熱伝導材で構成されたヒートシンクであって、少なくとも1か所以上は隣り合う熱伝導材が厚みをもったメッキのみで接合されていることを特徴とするヒートシンク。
【請求項2】
前記隣り合う熱伝導材が接触する部分に少なくとも1か所以上は突起を有していることを特徴とする請求項1に記載するヒートシンク。
【請求項3】
前記メッキ厚が0.05mmから0.3mmであることを特徴とする請求項1または2に記載するヒートシンク。
【請求項4】
前記メッキが銅メッキであることを特徴とする請求項1または2に記載するヒートシンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱伝導性と製造作業性が良好であるヒートシンクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ヒートシンクは鋳造や押出、切削等の一体成型で製造できない製品は各熱伝導材をカシメや半田付け等で接合する方法が提案されている。
【0003】
特許文献1記載の方法では、ヒートシンクを構成している板状の多数のフィンがベースにカシメで固定されていて、製造作業性は良好である。
【0004】
特許文献2記載の方法では、ヒートシンクを構成しているピン状の多数のフィンがベースに半田で固定されていて、フィンとベースとの間に半田が存在しているため、熱伝導性は良好である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3990140
【特許文献2】特許3833676
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記特許文献1記載の方法では、カシメる前のカシメ溝とフィンとの距離が一定でなく、またカシメる圧力も場所により異なるため、カシメた後にスプリングバックによりフィンとベースとの間に隙間が生じ、隙間が熱抵抗となり熱伝導性が低下する。
【0007】
前記特許文献2記載の方法では、半田を溶かす作業において高温となるため、熱伝導材の変形を考慮する必要がある。また、製造作業時の半田量の調整が難しく半田量が多い場合、フィンとベースとの間にある半田の厚みが増すため、熱抵抗が増し熱伝導性が低下する。逆に半田量が少ない場合、ボイドが発生し熱抵抗となり熱伝導性が低下する。
【0008】
本発明の目的は、加工時に起こる熱伝導性の低下を防ぎ、製造作業性が良好であるヒートシンクの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の製造方法は2つ以上の熱伝導材で構成されたヒートシンクであって、少なくとも1か所以上は隣り合う熱伝導材が厚みをもったメッキのみで接合されていることを特徴とする。
【0010】
以上のような本発明によれば、製造作業時に熱伝導材と熱伝導材をメッキにて接合するため、電気メッキならば電気を流した量に対して、無電解メッキならばメッキに漬けている時間に対して厚みを調整することが可能であり、メッキの流動性により隙間もなく接合が可能となる。また、半田に比べて加工時にかける温度も低いため、熱による変形を最小限に抑えることができる。
【0011】
前記隣り合う熱伝導材が接触する部分に少なくとも1か所以上は突起を有していることを特徴としている。
【0012】
この特徴によれば、隣り合う熱伝導材の接触する面に隙間が生じることによって、その部分にメッキが流れ込むことが可能となるため、メッキとの接合する面積が増えることで良好な熱伝導性及び強度を有することができる。
【0013】
この際、本発明のメッキの厚みは0.05mmから0.3mmが好ましい。
【0014】
例えばベースとフィンの接合に用いられるメッキの厚みは、ヒートシンクにおける流体の圧力損失を一定と仮定した場合、メッキ厚が薄いほど、フィンの枚数を増やすことで性能を向上させることが可能であり、メッキ厚が厚いほど、フィンの熱伝導が良好となり性能を向上させる。ただし、この関係はトレードオフとなるため、接合するメッキの厚みは一定の範囲となる。
【0015】
さらに、メッキの種類は銅メッキが好ましい。
【0016】
銅メッキは半田の数倍の熱伝導性と引張強度を有しており、さらに膜厚の均一性も優れていることからヒートシンクを設計する際に必要とされる構成部材や製品において指定された寸法公差内に収めることができる。
【0017】
このような構成によれば、メッキと接合する熱伝導材の材質は銅を用いることが可能である。
【0018】
銅を用いることで良好な熱伝導性を得ることができ、さらに銅メッキとの組み合わせならば、電蝕も起こらない。
【0019】
また、メッキと接合する熱伝導材の材質はアルミを用いることも可能である。
【0020】
アルミを用いることで軽量化と良好な熱伝導性を得ることができる。腐食を考えた場合、銅メッキ後にニッケルメッキやクロムメッキ等を施すことで耐食性や耐変色性を保つことができる。
【発明の効果】
【0021】
以上のような本発明の製造方法によれば、2つ以上の熱伝導材で構成されたヒートシンクであって、少なくとも1か所以上は隣り合う熱伝導材が厚みをもったメッキのみで接合されていることによって、良好な熱伝導性と製造作業性を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施例に係るヒートシンクを示す斜視図である。
【
図3】本発明の変形例1に係るメッキ前のヒートシンクを示す斜視図である
【
図4】
図3のメッキ後のヒートシンクを示す斜視図である。
【
図6】本発明の変形例2を構成する熱伝導材を示す図である。
【
図7】
図6に係るヒートシンクを示す斜視図である。
【
図9】本発明の変形例3に係るヒートシンクを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係るヒートシンクの製造方法を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0024】
実施例に係るヒートシンクの製造方法につき、
図1から
図10を参照して説明する。
【0025】
図1及び
図2に示されるように、ヒートシンク1は熱伝導材2と複数の熱伝導材3,3,3,…とメッキ4により主に構成されている。熱伝導材2は、ベースでありアルミニウムや銅等の熱伝導率の高い金属材料により成る。熱伝導材3はフィンでありアルミニウムや銅等の熱伝導率の高い金属材料により成る。厚みをもったメッキ4は、熱伝導性に優れた銅メッキや銀メッキあるいは耐食性に優れたニッケルメッキにより成り、熱伝導材2と熱伝導材3の接触面以外を囲い込む形で形成されている。
【0026】
この構成により、ベースより輸送される熱がメッキを通してフィンに熱が伝わることで熱伝導性の向上し、周囲を厚みをもったメッキで囲むことによって、一体成型のような強度を保つことが可能となる。
【0027】
図3及び
図4、
図5の変形例1に示されるように、メッキ工程前にマスキング5等を施すこともある。
【0028】
この製造方法により、メッキを接合部のみに形成することが可能であり、例えば、ねじ穴へのメッキの侵入を防ぐことが可能となる。
【0029】
図6及び
図7、
図8の変形例2に示されるように、熱伝導材6のように熱伝導材2との接触面に少なくとも1か所以上突起7を設ける。
【0030】
このような構成により、接触面にメッキ液を流し接合することが可能となり、良好な熱伝導性と強度を有することが可能となる。
【0031】
図9及び
図10の変形例3に示されるように、ヒートシンクを構成する熱伝導材8のベースとフィンが離れている場合に、熱伝導材9が用いられる。熱伝導材9はヒートパイプと呼ばれる状態変化を用いて熱を移動させる熱伝導デバイスであり、ベースからフィンへと運ぶ熱輸送量によって配置する本数が変化する。
【0032】
このような構成により、ベースに組み込まれたヒートパイプをメッキで囲むことによって、ヒートパイプの抜け防止のための接着剤や半田による接合あるいは押さえ治具が不要となり、さらにヒートパイプに接触しているメッキ部からの熱移動も加わることで良好な熱伝導性を有することが可能となる。
【0033】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。