(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061456
(43)【公開日】2022-04-18
(54)【発明の名称】研磨システム
(51)【国際特許分類】
B24B 41/06 20120101AFI20220411BHJP
B24B 21/04 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
B24B41/06 L
B24B21/04
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101649
(22)【出願日】2021-06-18
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-01-18
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2020/037882
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】WO
(71)【出願人】
【識別番号】591098628
【氏名又は名称】ユアサ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】特許業務法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 健司
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 孝之
【テーマコード(参考)】
3C034
3C158
【Fターム(参考)】
3C034BB75
3C034DD20
3C158AA05
3C158AA12
3C158AA16
3C158CA01
3C158CB04
3C158CB06
(57)【要約】
【課題】中空部を有する角形セルを容易かつ安全に保持した状態で、角形セルの測光領域を研磨できる研磨システムを提供する。
【解決手段】研磨システム1は、y軸方向に並べて配置された複数の研磨装置11と、研磨装置11の各々の砥面に接するように角形セル9を保持するホルダ13を備える。研磨装置11の砥面はx軸方向移動装置12によりx軸方向に移動できる。ホルダ13は、z軸移動回転装置14により、z軸方向に移動でき、また、z軸方向に回転できる。ホルダ13及びz軸移動回転装置14は、y軸方向移動装置15により、y軸方向に移動できる。ホルダ13は、角形セル9の凹部に収容された状態で角形セル9を保持する。研磨装置11がx軸方向に移動することで、ホルダ13にセットされた角形セル9の測光領域に研磨装置11の砥面が押し当てられ、研磨が行われる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析装置で測光により検査される被検試料を収容する一端面が開口した有底の角形セルを研磨対象物として保持する保持手段と、
前記保持手段に保持される角形セルの外側面の測光領域を研磨する研磨手段と、
前記保持手段と前記研磨手段の砥面との少なくとも一方を、前記保持手段に保持される研磨対象物の測光領域を含む外側面と垂直な方向であるx軸方向に移動させるx軸方向移動手段と
を備え、
前記保持手段は、所定の外形の保持部材を有し、前記保持部材の外形に遊びを加えた内形の凹部を有する研磨対象物の当該凹部に前記保持部材が収容された状態で当該研磨対象物を保持する
研磨システム。
【請求項2】
前記保持部材が研磨対象物の凹部に収容された状態で前記保持部材から当該凹部に気体を放出する気体放出機構
を備える請求項1に記載の研磨システム。
【請求項3】
前記x軸方向移動手段による前記保持手段と前記研磨手段の砥面との少なくとも一方の移動距離を制御するx軸方向移動制御手段
を備える請求項1又は2に記載の研磨システム。
【請求項4】
前記保持手段と前記研磨手段の砥面との少なくとも一方を、前記x軸方向に直交する1つの方向であるy軸方向に移動させるy軸方向移動手段
を備える請求項1乃至3のいずれか1項に記載の研磨システム。
【請求項5】
前記y軸方向移動手段による前記保持手段と前記研磨手段の砥面との少なくとも一方の移動距離を制御するy軸方向移動制御手段
を備える請求項4に記載の研磨システム。
【請求項6】
前記保持手段と前記研磨手段の砥面との少なくとも一方を、前記x軸方向及び前記y軸方向のいずれとも直交する方向であるz軸方向に移動させるz軸方向移動手段
を備える請求項4又は5に記載の研磨システム。
【請求項7】
前記研磨手段を第1研磨手段とするとき、
前記第1研磨手段と前記y軸方向に所定の間隔をあけて配置され、前記保持手段に保持される研磨対象物を研磨する第2研磨手段と
を備え、
前記y軸方向移動手段は、前記保持手段と、所定の間隔をあけて配置されている前記第1研磨手段及び前記第2研磨手段との少なくとも一方を前記y軸方向に移動させる
請求項4又は5に記載の研磨システム。
【請求項8】
前記保持手段と前記第1研磨手段の砥面及び前記第2研磨手段の砥面との少なくとも一方を、前記x軸方向及び前記y軸方向のいずれとも直交する方向であるz軸方向に移動させるz軸方向移動手段
を備える請求項7に記載の研磨システム。
【請求項9】
前記z軸方向移動手段による前記保持手段と前記研磨手段の砥面との少なくとも一方の移動距離を制御するz軸方向移動制御手段
を備える請求項6又は8に記載の研磨システム。
【請求項10】
前記保持手段を前記z軸周りに回転させるz軸周り回転手段
を備える請求項6、8及び9のいずれか1項に記載の研磨システム。
【請求項11】
前記z軸周り回転手段による前記保持手段の回転角度を制御するz軸周り回転制御手段
を備える請求項10に記載の研磨システム。
【請求項12】
前記研磨手段を第1研磨手段とするとき、前記保持手段に保持される研磨対象物を挟んで対向する位置に配置され、当該研磨対象物を研磨する第2研磨手段
を備える請求項1乃至6のいずれか1項に記載の研磨システム。
【請求項13】
前記保持手段は、同時に複数の研磨対象物を、当該複数の研磨対象物の研磨される領域を含む外側面が実質的に1つの面を成すように保持する
請求項1乃至12のいずれか1項に記載の研磨システム。
【請求項14】
前記研磨手段は、
砥面を構成する帯状のシートを搬送するシート搬送手段と、
前記シート搬送手段により搬送されるシートを研磨対象物に押し当てる押当手段と
を有する請求項1乃至13のいずれか1項に記載の研磨システム。
【請求項15】
前記保持手段と前記研磨手段の砥面との少なくとも一方を、前記x軸方向と直交する1つの方向であるy軸方向に移動させるy軸方向移動手段と、
前記保持手段と前記研磨手段の砥面との少なくとも一方を、前記x軸方向及び前記y軸方向のいずれとも直交する方向であるz軸方向に移動させるz軸方向移動手段と
を備え、
前記y軸方向移動手段は、前記x軸方向移動手段により前記保持手段に保持される研磨対象物が前記研磨手段の砥面により研磨されている間、前記保持手段と前記研磨手段の砥面との少なくとも一方を、前記y軸方向に移動させ、
前記z軸方向移動手段は、前記x軸方向移動手段により前記保持手段に保持される研磨対象物が前記研磨手段の砥面により研磨されている間、前記保持手段と前記研磨手段の砥面との少なくとも一方を、前記z軸方向に移動させる
請求項1に記載の研磨システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象物の表面を研磨する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物の表面を研磨する装置として、円盤状のプレートの上に設けられた凹みに対象物をセットし、研磨布を表面に取り付けた円盤状のプレートを上から挟み込むように載せ、それら2枚のプレートのうち、少なくとも一方を回転させる構造を備える装置(以下、「円盤回転型研磨装置」という)がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、各々の表面に研磨布を貼り付けた上下2枚の定盤のうち下側の定盤の上に、各々が自転する円盤状のキャリアを複数設け、各キャリアに複数の薄い円柱状の凹みであるキャリアホールを設け、円盤状の薄いプレートの両面に円盤状のウェーハを貼り付けたものを各キャリアホールにセットし、上側の定盤でそれらを上から挟み込んだ状態で、2枚の定盤の各々を回転させると同時に、各キャリアを回転させることで、多数のウェーハの表面を同時に研磨する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
分析装置で測光により被検試料を検査する際に、被検試料を収容する角形セルと呼ばれる容器がある。角形セルは、光を透過する素材でできており、一端面が開口し、開口している一端面に対向する端面が塞がった、有底の角筒形状の容器である。
【0006】
角形セルのうち、分析装置に取り付けられた際に測定光が透過する領域である測光領域の表面は鏡面に研磨される必要がある。
【0007】
円盤回転型研磨装置を用いる場合、対象物の表面のうち、一平面を成す領域の全体を研磨することはできるが、その領域の一部領域のみを研磨することはできない。
【0008】
従って、角形セルの表面の一部領域である測光領域を、円盤回転型研磨装置を用いて研磨することはできない。
【0009】
また、円盤回転型研磨装置を用いる場合、上下2枚の定盤で対象物を挟み込んだ状態で研磨が行われる。従って、中空である角形セルの表面を円盤回転型研磨装置で研磨する場合、定盤の押圧力により角形セルが破損しないように、角形セルの中空部に詰め物を詰める等の処理が必要となり、手間がかかる。
【0010】
上記の事情に鑑み、本発明は、中空部を有する角形セルを容易かつ安全に保持した状態で、角形セルの測光領域を研磨できる研磨システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するため、本発明は、分析装置で測光により検査される被検試料を収容する一端面が開口した有底の角形セルを研磨対象物として保持する保持手段と、前記保持手段に保持される角形セルの外側面の測光領域を研磨する研磨手段と、前記保持手段と前記研磨手段の砥面との少なくとも一方を、前記保持手段に保持される研磨対象物の測光領域を含む外側面と垂直な方向であるx軸方向に移動させるx軸方向移動手段とを備え、前記保持手段は、所定の外形の保持部材を有し、前記保持部材の外形に遊びを加えた内形の凹部を有する研磨対象物の当該凹部に前記保持部材が収容された状態で当該研磨対象物を保持する研磨システムを第1の態様として提案する。
【0012】
第1の態様に係る研磨システムによれば、中空部を有する角形セルを容易かつ安全に保持した状態で、角形セルの測光領域の研磨ができる。
【0013】
第1の態様に係る研磨システムにおいて、前記保持部材が研磨対象物の凹部に収容された状態で前記保持部材から当該凹部に気体を放出する気体放出機構を備える、という構成が第2の態様として採用されてもよい。
【0014】
第2の態様に係る研磨システムによれば、角形セルの凹部に研磨により生じる研磨屑が入りにくい。
【0015】
第1又は第2の態様に係る研磨システムにおいて、前記x軸方向移動手段による前記保持手段と前記研磨手段の砥面との少なくとも一方の移動距離を制御するx軸方向移動制御手段を備える、という構成が第3の態様として採用されてもよい。
【0016】
第3の態様に係る研磨システムによれば、研磨により角形セルに生じる凹みの深さを制御できる。
【0017】
第1乃至第3のいずれかの態様に係る研磨システムにおいて、前記保持手段と前記研磨手段の砥面との少なくとも一方を、前記x軸方向に直交する1つの方向であるy軸方向に移動させるy軸方向移動手段を備える、という構成が第4の態様として採用されてもよい。
【0018】
第4の態様に係る研磨システムによれば、角形セルの表面のy軸方向に広がる領域を研磨できる。
【0019】
第4の態様に係る研磨システムにおいて、前記y軸方向移動手段による前記保持手段と前記研磨手段の砥面との少なくとも一方の移動距離を制御するy軸方向移動制御手段を備える、という構成が第5の態様として採用されてもよい。
【0020】
第5の態様に係る研磨システムによれば、角形セルの研磨される領域のy軸方向の長さを制御できる。
【0021】
第4又は第5の態様に係る研磨システムにおいて、前記保持手段と前記研磨手段の砥面との少なくとも一方を、前記x軸方向及び前記y軸方向のいずれとも直交する方向であるz軸方向に移動させるz軸方向移動手段を備える、という構成が第6の態様として採用されてもよい。
【0022】
第6の態様に係る研磨システムによれば、角形セルの表面のz軸方向に広がる領域を研磨できる。
【0023】
第4又は第5の態様に係る研磨システムにおいて、前記研磨手段を第1研磨手段とするとき、前記第1研磨手段と前記y軸方向に所定の間隔をあけて配置され、前記保持手段に保持される研磨対象物を研磨する第2研磨手段とを備え、前記y軸方向移動手段は、前記保持手段と、所定の間隔をあけて配置されている前記第1研磨手段及び前記第2研磨手段との少なくとも一方を前記y軸方向に移動させる、という構成が第7の態様として採用されてもよい。
【0024】
第7の態様に係る研磨システムによれば、同じ角形セルのx軸方向に垂直な面を第1研磨手段で粗く研磨した後、第2研磨手段で細かく研磨できる。
【0025】
第7の態様に係る研磨システムにおいて、前記保持手段と前記第1研磨手段の砥面及び前記第2研磨手段の砥面との少なくとも一方を、前記x軸方向及び前記y軸方向のいずれとも直交する方向であるz軸方向に移動させるz軸方向移動手段を備える、という構成が第8の態様として採用されてもよい。
【0026】
第8の態様に係る研磨システムによれば、角形セルの表面のz軸方向に広がる領域を研磨できる。
【0027】
第6又は8の態様に係る研磨システムにおいて、前記z軸方向移動手段による前記保持手段と前記研磨手段の砥面との少なくとも一方の移動距離を制御するz軸方向移動制御手段を備える、という構成が第9の態様として採用されてもよい。
【0028】
第9の態様に係る研磨システムによれば、角形セルの研磨される領域のz軸方向の長さを制御できる。
【0029】
第6、8及び9のいずれかの態様に係る研磨システムにおいて、前記保持手段を前記z軸周りに回転させるz軸周り回転手段を備える、という構成が第10の態様として採用されてもよい。
【0030】
第10の態様に係る研磨システムによれば、角形セルのz軸に平行な互いに対向する2面の各々を研磨できる。
【0031】
第10の態様に係る研磨システムにおいて、前記z軸周り回転手段による前記保持手段の回転角度を制御するz軸周り回転制御手段を備える、という構成が第11の態様として採用されてもよい。
【0032】
第11の態様に係る研磨システムによれば、研磨対象物がz軸に平行な複数の表面を有する場合、それらの複数の面のうち研磨対象とする面を選択できる。また、第11の態様に係る研磨システムによれば、研磨対象物がz軸を中心とする円柱形状の表面を有する場合、その表面のうち研磨する領域を制御できる。
【0033】
第1乃至第6のいずれかの態様に係る研磨システムにおいて、前記研磨手段を第1研磨手段とするとき、前記保持手段に保持される研磨対象物を挟んで対向する位置に配置され、当該研磨対象物を研磨する第2研磨手段を備える、という構成が第12の態様として採用されてもよい。
【0034】
第12の態様に係る研磨システムによれば、角形セルのx軸方向において対向する2つの面を同時に研磨できる。
【0035】
第1乃至第12のいずれかの態様に係る研磨システムにおいて、前記保持手段は、同時に複数の研磨対象物を、当該複数の研磨対象物の研磨される領域を含む外側面が実質的に1つの面を成すように保持する、という構成が第13の態様として採用されてもよい。
【0036】
第13の態様に係る研磨システムによれば、複数の角形セルの表面を同時に研磨できる。
【0037】
第1乃至第13のいずれかの態様に係る研磨システムにおいて、前記研磨手段は、砥面を構成する帯状のシートを搬送するシート搬送手段と、前記シート搬送手段により搬送されるシートを研磨対象物に押し当てる押当手段とを有する、という構成が第14の態様として採用されてもよい。
【0038】
第14の態様に係る研磨システムによれば、砥面が常時、変化するため、研磨される領域に斑が生じにくい。
【0039】
第1の態様に係る研磨システムにおいて、前記保持手段と前記研磨手段の砥面との少なくとも一方を、前記x軸方向と直交する1つの方向であるy軸方向に移動させるy軸方向移動手段と、前記保持手段と前記研磨手段の砥面との少なくとも一方を、前記x軸方向及び前記y軸方向のいずれとも直交する方向であるz軸方向に移動させるz軸方向移動手段とを備え、前記y軸方向移動手段は、前記x軸方向移動手段により前記保持手段に保持される研磨対象物が前記研磨手段の砥面により研磨されている間、前記保持手段と前記研磨手段の砥面との少なくとも一方を、前記y軸方向に移動させ、前記z軸方向移動手段は、前記x軸方向移動手段により前記保持手段に保持される研磨対象物が前記研磨手段の砥面により研磨されている間、前記保持手段と前記研磨手段の砥面との少なくとも一方を、前記z軸方向に移動させる、という構成が第15の態様として採用されてもよい。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、中空部を有する角形セルを容易かつ安全に保持した状態で、角形セルの測光領域の研磨ができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】一実施形態に係る研磨システムにより研磨された後の角形セルを示した図。
【
図2】一実施形態に係る研磨システムの全体構成を示した図。
【
図3】一実施形態に係る研磨装置の主要な構成を模式的に示した図。
【
図4】一実施形態に係るホルダに角形セルがセットされた状態を模式的に示した図。
【
図6】一変形例に係る研磨システムが備える2つの研磨装置とホルダの位置関係と示した図。
【
図7】一変形例に係るz軸移動回転装置及び複数のホルダを示した図。
【
図8】一変形例に係る研磨システムを上から見た模式図。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下に本発明の一実施形態に係る研磨システム1を説明する。研磨システム1は、角形セルを研磨するための装置である。本願において、角形セルとは、分析装置で測光により検査される被検試料を収容する、光を透過する素材でできた一端面が開口し当該一端面に対向する端面が塞がった有底の角筒形状の容器を意味する。本実施形態において、角形セルの素材はガラスであるものとする。
【0043】
図1は、研磨システム1により研磨された後の対象物(研磨対象物)である角形セル9を示した図である。角形セル9は、z軸に垂直な2つの面のうち上側の面が開口し、下側の面が塞がった有底の角筒形状の容器である。角形セル9は、x軸に垂直な2つの面のz軸方向における下側の領域91及び領域92が、x軸方向に所定の深さだけ凹んでいる。この凹みは、研磨システム1の研磨により削られてできた凹みである。領域91及び領域92は、測光領域を含む領域である。そのため、領域91及び領域92の表面は鏡面に研磨されている。
【0044】
図2は、研磨システム1の全体構成を示した図である。研磨システム1が備える構成部は、直交座標系の3次元空間において管理されている。研磨システム1が研磨システム1は、研磨装置11(1)、研磨装置11(2)、研磨装置11(3)、x軸方向移動装置12(1)、x軸方向移動装置12(2)、x軸方向移動装置12(3)、ホルダ13(1)、ホルダ13(2)、・・・、ホルダ13(n)、z軸移動回転装置14(1)、z軸移動回転装置14(2)、・・・、z軸移動回転装置14(n)、y軸方向移動装置15、x軸方向移動制御装置(図示略)、z軸方向移動制御装置(図示略)、z軸周り回転制御装置(図示略)、y軸方向移動制御装置(図示略)、コントローラ(図示略)を備える。なお、
図2においては、研磨システム1が備えるn個のホルダ13及びz軸移動回転装置14のうち、3つのみが示されている。
【0045】
研磨装置11(1)、研磨装置11(2)、研磨装置11(3)は共通の構成を備える。以下、これらの研磨装置を互いに区別しない場合、「研磨装置11」と総称する。
図3は、研磨装置11の主要な構成を模式的に示した図である。研磨装置11は、主な構成部として、シート巻出リール111、シート巻取リール112、押圧ローラ113、シート114を備える。
【0046】
シート114は、一方の面に砥粉の塗布された帯状のシートである。シート114の砥粉が塗布されている面は、押圧ローラ113に接しない側の面である。
【0047】
シート巻出リール111は、予め巻き取られている未使用のシート114を、
図3において時計回りに回転しながら巻き出すリールである。シート巻取リール112は、使用済みのシート114を、
図3において時計回りに回転しながら巻き取るリールである。シート巻出リール111とシート巻取リール112は、シート114を搬送するシート搬送手段を構成する。シート巻出リール111とシート巻取リール112によるシート114の搬送速度は図示せぬ制御装置により制御される。
【0048】
押圧ローラ113は、シート巻出リール111とシート巻取リール112の回転に伴い搬送されるシート114を、砥粉が塗布されている面を研磨対象物である角形セル9に押し当てる押当手段の役割を果たす。本実施形態において、研磨装置11はx軸方向移動装置12によりx軸方向に移動する。研磨装置11のx軸正方向への移動に伴い、押圧ローラ113がシート114を挟んでホルダ13に保持されている角形セル9に押し当てられる。その結果、シートが押圧ローラ113により角形セル9に押し当てられる。
【0049】
なお、押圧ローラ113がシート114を研磨対象物に押し当てる力の強さをより細かく制御するために、例えば、研磨装置11が、押圧ローラ113をx軸正方向に付勢する付勢機構を備え、制御装置が付勢機構による付勢の強さを制御するようにしてもよい。付勢機構としては、例えば、油圧シリンダにより押圧ローラ113を押し出す機構、圧送される空気の圧力により押圧ローラ113を押し出す機構等が挙げられる。
【0050】
図2を参照し、研磨システム1の構成の説明を続ける。x軸方向移動装置12(1)、x軸方向移動装置12(2)、x軸方向移動装置12(3)は共通の構成を備える。以下、これらのx軸方向移動装置を互いに区別しない場合、「x軸方向移動装置12」と総称する。x軸方向移動装置12(x軸方向移動手段の一例)は、x軸方向移動制御装置の制御下で、対応する研磨装置11の砥面をx軸の指定された方向に指定された距離だけ移動させる装置である。
【0051】
ホルダ13(1)、ホルダ13(2)、・・・、ホルダ13(n)は共通の構成を備える。以下、これらのホルダを互いに区別しない場合、「ホルダ13」と総称する。ホルダ13(保持手段、保持部材の一例)は金属製の部材である。ホルダ13の先端側の外形は、角形セル9の凹部の形状より、角形セル9の着脱のために必要な遊びを減じた外形である。換言すれば、角形セル9の凹部の内形は、ホルダ13の先端側の外形に遊びを加えた形状である。
【0052】
ホルダ13には、角形セル9が被せられた状態でセットされる。
図4は、ホルダ13に角形セル9がセットされた状態を模式的に示した図である。
図4に示されるように、ホルダ13は、角形セル9の凹部に収容された状態で角形セル9を保持する。
【0053】
図2を参照し、研磨システム1の構成の説明を続ける。z軸移動回転装置14(1)、z軸移動回転装置14(2)、・・・、z軸移動回転装置14(n)は共通の構成を備える。以下、これらのz軸周り回転装置を互いに区別しない場合、「z軸移動回転装置14」と総称する。z軸移動回転装置14(z軸周り移動手段及びz軸周り回転手段の一例)、は、2つの機能を備える。まず、z軸移動回転装置14は、z軸方向移動制御装置の制御下で、対応するホルダ13をz軸の指定された方向に指定された距離だけ移動させる。次に、z軸移動回転装置14は、z軸周り回転制御装置の制御下で、対応するホルダ13をz軸周りに指定された方向に指定された角度だけ回転させる。
【0054】
y軸方向移動装置15は、y軸方向移動制御装置の制御下で、ホルダ13及びz軸移動回転装置14をy軸の指定された方向に指定された距離だけ移動させる装置である。
【0055】
x軸方向移動制御装置(x軸方向移動制御手段の一例)は、例えばx軸方向移動装置12に内蔵され、ユーザ又はプログラムにより指定されたx軸の方向に、ユーザ又はプログラムにより指定された距離だけ、x軸方向移動装置12が研磨装置11の砥面を移動させるように、x軸方向移動装置12の動作を制御する装置である。
【0056】
z軸方向移動制御装置(z軸方向移動制御手段の一例)は、例えばz軸移動回転装置14に内蔵され、ユーザ又はプログラムにより指定されたz軸の方向に、ユーザ又はプログラムにより指定された距離だけ、z軸移動回転装置14がホルダ13を移動するように、z軸移動回転装置14の動作を制御する装置である。
【0057】
z軸周り回転制御装置(z軸周り回転制御手段の一例)は、例えばz軸移動回転装置14に内蔵され、ユーザ又はプログラムにより指定されたz軸周りの方向に、ユーザ又はプログラムにより指定された角度だけ、z軸移動回転装置14がホルダ13を回転するように、z軸移動回転装置14の動作を制御する装置である。
【0058】
y軸方向移動制御装置(y軸方向移動制御手段の一例)は、例えばy軸方向移動装置15に内蔵され、ユーザ又はプログラムにより指定されたy軸の方向に、ユーザ又はプログラムにより指定された距離だけ、y軸方向移動装置15がホルダ13を移動させるように、y軸方向移動装置15の動作を制御する装置である。
【0059】
コントローラは、タッチパネル等のマンマシンインタフェースを備え、ユーザから研磨システム1に対する各種操作を受け付けるとともに、研磨システム1からユーザに対する各種情報の表示を行う装置である。コントローラは、研磨装置11、x軸方向移動制御装置、z軸方向移動制御装置、z軸周り回転制御装置、y軸方向移動制御装置と通信接続されており、研磨システム1の状態(例えば、研磨装置11の運転状況、各ホルダ13のx軸及びy軸における位置、各ホルダ13の回転角度等)を表示するとともに、ユーザの指示(例えば、研磨装置11の運転の開始及び終了、ホルダ13のx軸方向、y軸方向又はz軸方向における移動、ホルダ13のz軸周りの回転等)を受け付け、受け付けた指示を当該指示に応じた装置に送信する。
【0060】
以下に、研磨システム1により角形セル9を研磨する手順を説明する。研磨装置11(1)には細目の砥粉の塗布されたシート114がセットされ、研磨装置11(2)には超細目の砥粉の塗布されたシート114がセットされ、研磨装置11(3)には超微粒子の砥粉の塗布されたシート114がセットされている。ここで、研磨装置11(1)~(3)にセットされているシート114の目の粗さは、研磨対象物の研磨面を鏡面に研磨するための粗さである。
【0061】
初期状態として、研磨装置11は、x軸方向における基準位置にある。この基準位置とは、押圧ローラ113がホルダ13にセットされた角形セル9の表面から所定距離だけ離れる位置である。また、ホルダ13は、z軸方向及びz軸周りにおける基準位置にある。この基準位置とは、ホルダ13にセットされた角形セル9の領域91が押圧ローラ113に正対する角度であり、かつ、領域91の上端が押圧ローラ113の正面位置となる高さの位置である。また、ホルダ13(1)が研磨装置11(1)の押圧ローラ113の正面に位置している。
【0062】
ユーザは、研磨したいm個(ただし、m≦n)の未研磨の角形セル9を、ホルダ13(1)、ホルダ13(2)、・・・、ホルダ13(m)に未研磨の角形セル9をセットする。その際、角形セル9の領域91が押圧ローラ113に対向する方向で角形セル9をホルダ13にセットする。
【0063】
続いて、ユーザは、コントローラに、研磨したい角形セル9の数であるmを入力した後、研磨開始の指示を行う。この指示に従い、まず、研磨装置11(1)が運転を開始する。
【0064】
続いて、研磨装置11(1)がx軸方向の基準位置からx軸正方向に所定距離だけ移動する。この所定距離は、押圧ローラ113がホルダ13(1)にセットされた角形セル9に接触し、さらに、細目の砥粉により角形セル9の領域91を所定の深さまで研磨するための距離である。これにより、研磨装置11(1)のシート114がホルダ13(1)にセットされた角形セル9の領域91の上端に押し付けられ、研磨が開始される。
【0065】
シート114が角形セル9に押し付けられると同時に、ホルダ13(1)がz軸正方向にゆっくりと移動を開始する。この移動に伴い、角形セル9の領域91の上端位置から下方に向かい、研磨が進行する。
【0066】
ホルダ13(1)がz軸正方向に所定距離だけ移動すると、研磨装置11(1)はx軸負方向に移動し基準位置に戻り、運転を停止する。この所定距離は、角形セル9の領域91のz軸方向の長さである。続いて、ホルダ13(1)がz軸負方向に移動し、基準位置に戻る。これにより、ホルダ13(1)にセットされた角形セル9の領域91の細目の砥粉による研磨が完了する。
【0067】
続いて、ホルダ13(1)が研磨装置11(2)の正面位置となり、ホルダ13(2)が研磨装置11(1)の正面位置となるように、ホルダ13及びz軸移動回転装置14がy軸正方向に移動する。
【0068】
続いて、研磨装置11(2)が運転を開始し、x軸方向の基準位置からx軸正方向に所定距離(角形セル9の領域91を超細目の砥粉で所定の深さまで研磨するための距離)だけ移動し、研磨装置11(2)のシート114がホルダ13(1)にセットされた角形セル9に押し当てられると、ホルダ13(1)が基準位置からz軸正方向にゆっくりと移動を開始する。
【0069】
研磨装置11(2)及びホルダ13(1)の動作と並行して、研磨装置11(1)が運転を開始し、x軸方向の基準位置からx軸正方向に所定距離だけ移動し、研磨装置11(1)のシート114がホルダ13(2)にセットされた角形セル9に押し当てられると、ホルダ13(2)が基準位置からz軸正方向にゆっくりと移動を開始する。
【0070】
ホルダ13(1)がz軸正方向に所定距離だけ移動すると、研磨装置11(2)はx軸負方向に移動し基準位置に戻り、運転を停止する。続いて、ホルダ13(1)がz軸負方向に移動し、基準位置に戻る。これにより、ホルダ13(1)にセットされた角形セル9の領域91の超細目の砥粉による研磨が完了する。
【0071】
また、ホルダ13(2)がz軸正方向に所定距離だけ移動すると、研磨装置11(1)はx軸負方向に移動し基準位置に戻り、運転を停止する。続いて、ホルダ13(2)がz軸負方向に移動し、基準位置に戻る。これにより、ホルダ13(2)にセットされた角形セル9の領域91の細目の砥粉による研磨が完了する。
【0072】
続いて、ホルダ13(1)が研磨装置11(3)の正面位置となり、ホルダ13(2)が研磨装置11(2)の正面位置となり、ホルダ13(1)が研磨装置11(3)の正面位置となるように、ホルダ13及びz軸移動回転装置14がy軸正方向に移動する。
【0073】
続いて、研磨装置11(3)が運転を開始し、x軸方向の基準位置からx軸正方向に所定距離(角形セル9の領域91を超微粒子の砥粉で所定の深さまで研磨するための距離)だけ移動し、研磨装置11(3)のシート114がホルダ13(1)にセットされた角形セル9に押し当てられると、ホルダ13(1)が基準位置からz軸正方向にゆっくりと移動を開始する。
【0074】
研磨装置11(3)及びホルダ13(1)の動作と並行して、研磨装置11(2)が運転を開始し、x軸方向の基準位置からx軸正方向に所定距離だけ移動し、研磨装置11(2)のシート114がホルダ13(2)にセットされた角形セル9に押し当てられると、ホルダ13(2)が基準位置からz軸正方向にゆっくりと移動を開始する。
【0075】
また、研磨装置11(3)及びホルダ13(1)の動作と並行して、研磨装置11(1)が運転を開始し、x軸方向の基準位置からx軸正方向に所定距離だけ移動し、研磨装置11(1)のシート114がホルダ13(3)にセットされた角形セル9に押し当てられると、ホルダ13(3)が基準位置からz軸正方向にゆっくりと移動を開始する。
【0076】
ホルダ13(1)がz軸正方向に所定距離だけ移動すると、研磨装置11(3)はx軸負方向に移動し基準位置に戻り、運転を停止する。続いて、ホルダ13(1)がz軸負方向に移動し、基準位置に戻る。これにより、ホルダ13(1)にセットされた角形セル9の領域91の超微粒子の砥粉による研磨が完了する。
【0077】
また、ホルダ13(2)がz軸正方向に所定距離だけ移動すると、研磨装置11(2)はx軸負方向に移動し基準位置に戻り、運転を停止する。続いて、ホルダ13(2)がz軸負方向に移動し、基準位置に戻る。これにより、ホルダ13(2)にセットされた角形セル9の領域91の超細目の砥粉による研磨が完了する。
【0078】
また、ホルダ13(3)がz軸正方向に所定距離だけ移動すると、研磨装置11(1)はx軸負方向に移動し基準位置に戻り、運転を停止する。続いて、ホルダ13(3)がz軸負方向に移動し、基準位置に戻る。これにより、ホルダ13(3)にセットされた角形セル9の領域91の細目の砥粉による研磨が完了する。
【0079】
その後、ホルダ13及びz軸移動回転装置14のy軸正方向における移動と、3台の研磨装置11による角形セル9の領域91に対する研磨が繰り返される。
【0080】
ホルダ13(m)にセットされた角形セル9の領域91における細目の砥粉による研磨が完了すると、ホルダ13(1)が研磨装置11(1)の押圧ローラ113の正面位置となるように、ホルダ13とz軸移動回転装置14がy軸負方向に移動する。
【0081】
続いて、全てのホルダ13がz軸周りに180度、回転する。これにより、ホルダ13にセットされている角形セル9の領域92が研磨装置11に対向するようになる。
【0082】
その後、ホルダ13及びz軸移動回転装置14のy軸正方向への移動と、3台の研磨装置11による角形セル9の領域92に対する研磨が繰り返される。これにより、m個の角形セル9に対する領域91及び領域92の研磨が完了する。
【0083】
研磨システム1によれば、角形セル9の表面のうち一平面を成す領域の一部(領域91又は領域92)のみを研磨できる。また、研磨システム1によれば、1つや2つといった少数の角形セル9の研磨であっても、精度を落とすことなく研磨ができる。
【0084】
また、円盤回転型研磨装置による場合、研磨対象物をセットする凹部に入り込んだ研磨屑の清掃に多大な手間がかかるが、研磨システム1によれば、そのような手間がかからない。
【0085】
[変形例]
上述した実施形態は、本発明の技術的思想の範囲内で様々に変形することができる。以下にそれらの変形の例を示す。なお、以下の2以上の変形例が組み合わされてもよい。
【0086】
(1)ホルダ13に角形セル9がセットされた状態、すなわち、ホルダ13が角形セル9の凹部に収容された状態で、ホルダ13から角形セル9の凹部に気体を放出する気体放出機構が設けられてもよい。
図5は、この変形例に係るホルダ13の構造を示した図である。
図5(A)はホルダ13の外観図、
図5(B)はホルダ13の断面図、
図5(C)は角形セル9がセットされた状態を示した図である。
【0087】
この変形例に係るホルダ13には、角形セル9に覆われる部分に1以上の排出口131が設けられている。排出口131は、ホルダ13の長手方向(z軸方向)に延伸する通気路132と連通している。通気路132は、空気を排出するポンプ(図示略)と連結されており、ポンプから送られてくる空気が排出口131から排出される。この場合、ポンプ、通気路132、及び、排出口131が、気体放出機構を構成する。
【0088】
また、ホルダ13は、側面を一周するようにリング状の封止部材133を1以上、有している。封止部材133は、例えばゴム製のリングである。従って、ホルダ13に角形セル9がセットされた状態において、研磨屑が角形セル9の内側に入り込みにくい。
【0089】
なお、封止部材133はなくてもよい。その場合、角形セル9の開口部とホルダ13の隙間から空気が排出されるため、研磨屑が角形セル9の内側に入り込みにくい点は同様である。
【0090】
また、封止部材133は、ホルダ13が角形セル9をしっかりと保持する役割も果たす。
【0091】
(2)ホルダ13に保持される角形セル9を挟んで対向する位置に、研磨装置11を2つ備えるようにしてもよい。
図6は、この変形例に係る研磨システム1が備える2つの研磨装置11とホルダ13の位置関係と示した図である。この変形例に係る研磨システム1によれば、角形セル9の領域91と領域92を同時に研磨できる。
【0092】
(3)1つのz軸移動回転装置14に複数のホルダ13が取り付けられ、それらのホルダ13にセットされる複数の角形セル9の研磨装置11に対向する外側面(研磨される領域を含む外側面)が実質的に1つの面を成すように配置されてもよい。
図7は、この変形例に係るz軸移動回転装置14及び複数のホルダ13を示した図である。なお、
図7の例では1つのz軸移動回転装置14に配置されているホルダ13の数は9つであるが、この数は2以上であればいずれでもよい。この変形例に係る研磨システム1によれば、1つの研磨装置11で同時に複数の角形セル9を研磨できる。
【0093】
(4)上述した実施形態において、研磨システム1の研磨対象物は角形セル9であるものとしたが、本発明に係る研磨システムの研磨の対象物は角形セルに限られない。
【0094】
(5)上述した実施形態において、ホルダ13は研磨対象物の凹部に収容された状態で研磨対象物を保持する。本発明に係る研磨システムが備えるホルダ(保持手段)が研磨対象物を保持する方法はこれに限られない。例えば、把持により研磨対象物を保持するホルダが採用されてもよい。
【0095】
(6)上述した実施形態において、研磨システム1が備える研磨装置11は、一方の面に砥粉が塗布されたシートを搬送し、そのシートを研磨対象物に押し当てる構造の研磨装置であるものとしたが、本発明に係る研磨システムが備える研磨装置(研磨手段)の構造はこれに限られない。例えば、回転する研磨ビットを研磨対象物に押し当てる構造の研磨装置が採用されてもよい。
【0096】
(7)上述した研磨システム1において、x軸方向移動装置12は研磨装置11の砥面をx軸方向に移動させるために、研磨装置11全体をx軸方向に移動するものとした。x軸方向移動装置12は、研磨装置11の砥面をx軸方向に移動すればよく、必ずしも研磨装置11の全体を移動しなくてもよい。例えば、研磨装置11の本体はx軸方向に移動せず、x軸方向移動装置12が研磨装置11の押圧ローラ113をx軸方向に移動するように構成されてもよい。
【0097】
また、上述した実施形態においては、ホルダ13と研磨装置11の砥面のx軸方向の位置関係は、研磨装置11が移動することにより変更される。これに代えて、もしくは加えて、ホルダ13がx軸方向に移動することにより、ホルダ13と研磨装置11の砥面のx軸方向の位置関係が変更されてもよい。この変形例に係る研磨システム1は、ホルダ13をx軸方向に移動させるx軸方向移動手段と、当該x軸方向移動手段による移動の方向及び距離を制御するx軸方向移動制御手段を備えるように構成される。
【0098】
また、上述した実施形態においては、ホルダ13と研磨装置11の砥面のy軸方向の位置関係は、ホルダ13が移動することにより変更される。これに代えて、もしくは加えて、研磨装置11の砥面がy軸方向に移動することにより、ホルダ13と研磨装置11の砥面のy軸方向の位置関係が変更されてもよい。この変形例に係る研磨システム1は、例えば、研磨装置11全体又は押圧ローラ113をy軸方向に移動させるy軸方向移動手段と、当該y軸方向移動手段による移動の方向及び距離を制御するy軸方向移動制御手段を備えるように構成される。
【0099】
また、上述した実施形態においては、ホルダ13と研磨装置11の砥面のz軸方向の位置関係は、ホルダ13が移動することにより変更される。これに代えて、もしくは加えて、研磨装置11の砥面がz軸方向に移動することにより、ホルダ13と研磨装置11のz軸方向の位置関係が変更されてもよい。この変形例に係る研磨システム1は、例えば、研磨装置11全体又は押圧ローラ113をz軸方向に移動させるz軸方向移動手段と、当該z軸方向移動手段による移動の方向及び距離を制御するz軸方向移動制御手段を備えるように構成される。
【0100】
(8)ホルダ13がx軸周りに回転できてもよい。この場合、研磨システム1は、ホルダ13をx軸周りに回転するx軸周り回転手段と、当該x軸周り回転手段によるホルダ13の回転の方向及び角度を制御するx軸周り回転制御手段を備えるように構成される。
【0101】
また、ホルダ13がy軸周りに回転できてもよい。この場合、研磨システム1は、ホルダ13をy軸周りに回転するy軸周り回転手段と、当該y軸周り回転手段によるホルダ13の回転の方向及び角度を制御するy軸周り回転制御手段を備えるように構成される。
【0102】
(9)ホルダ13及びz軸移動回転装置14が循環するように移動してもよい。
図8は、この変形例に係る研磨システム1を上から見た模式図である。この変形例においては、y軸方向移動装置15がホルダ13及びz軸移動回転装置14を、環状の移動経路に沿って搬送する。
【0103】
(10)上述した研磨システム1の一連の動作における各工程の順序は適宜、変更されてよい。例えば、上述の説明においては、m個の角形セル9の領域91の研磨が完了した後、それらm個の角形セル9の領域92の研磨が行われるものとした。これに代えて、各角形セル9の領域91の研磨に続いて領域92の研磨が行われるようにしてもよい。この場合、ホルダ13は、研磨装置11による領域91の研磨が完了すると、z軸周りに180度回転し、引き続き、その研磨装置11に領域92の研磨を行わせる。そして、領域92の研磨が完了すると、ホルダ13は再びz軸周りに180度回転し、次の研磨装置11に領域91の研磨を行わせる。
【0104】
(11)上述した研磨システム1において、研磨装置11の砥面を構成するシート114には砥粉が塗布されているものとしたが、これに代えて、砥粉が塗布されていない帯状のシートをシート114として用いてもよい。その場合、搬送されるシート114の外側面上に砥粉を含む液体状の研磨剤を垂らす等により塗布すればよい。
【0105】
なお、シート114に砥粉が塗布されている場合において、搬送されるシート114の外側面上に水、油等の液体を垂らす等により塗布してもよい。それにより、研磨による発熱の低減や研磨面の平滑化が図られる。
【0106】
(12)上述した研磨システム1の動作は一例であって、様々に変更されてよい。例えば、領域91又は領域92をシート114により研磨する際、z軸移動回転装置14はホルダ13により保持されている角形セル9をz軸正方向に1回のみ移動させるものとしたが、z軸移動回転装置14が角形セル9をz軸正方向とz軸負方向に1回又は複数回、往復移動させてもよい。
【0107】
また、角形セル9が研磨されている間、z軸移動回転装置14により角形セル9をz軸方向に移動すると同時に、y軸方向移動装置15により角形セル9をy軸方向に往復移動させてもよい。例えば、
図7に示されるように、ホルダ13が複数の角形セル9を一列に並んだ状態で保持するような場合、シート114の幅より並べられた角形セル9の全体の幅が広くなることがある。その場合、y軸方向移動装置15により砥面がy軸方向に移動することで、複数の角形セル9の全てを研磨できる。
【0108】
(13)上述した研磨システム1においては、研磨対象物の研磨面に対し細目、超細目、超微粒子、という目の粗さの異なる3つの砥面による研磨を行うものとしたが、これらの砥面の粗さ、及び、粗さの種類の数は実施形態において説明したものに限られない。
【0109】
また、上述した研磨システム1においては、目の粗さの異なる3つの砥面による研磨を行うために、3台の研磨装置11をy軸方向に並べて配置し、それら3台の研磨装置11の各々に異なる目の粗さのシート114をセットし、それら3台の研磨装置11により研磨対象物を研磨するものとした。これに代えて、例えば、1台の研磨装置11に、まず細目のシート114をセットして研磨対象物を研磨した後、研磨装置11にセットされている細目のシート114を超細目のシート114と交換して研磨対象物を研磨し、その後、研磨装置11にセットされている超細目のシート114を超微粒子のシート114に交換して研磨対象物を研磨してもよい。
【符号の説明】
【0110】
1…研磨システム、9…角形セル、11…研磨装置、12…x軸方向移動装置、13…ホルダ、14…z軸移動回転装置、15…y軸方向移動装置、91…領域、92…領域、111…シート巻出リール、112…シート巻取リール、113…押圧ローラ、114…シート、131…排出口、132…通気路、133…封止部材。