(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061469
(43)【公開日】2022-04-18
(54)【発明の名称】強制換気式インソール
(51)【国際特許分類】
A43B 7/08 20220101AFI20220411BHJP
A43B 17/08 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
A43B7/08
A43B17/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021134574
(22)【出願日】2021-08-20
(31)【優先権主張番号】P 2020168821
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】520206151
【氏名又は名称】平原 賢一
(74)【代理人】
【識別番号】100098615
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 学
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(72)【発明者】
【氏名】平原 賢一
【テーマコード(参考)】
4F050
【Fターム(参考)】
4F050DA04
4F050DA05
4F050DA10
4F050EA15
4F050EA16
4F050EA17
4F050HA53
4F050HA74
(57)【要約】
【課題】吸気側および排気側に歩行に伴うエア送気量を区画する逆止弁を個別に配置し、且つ靴内の爪先側における蒸れを効果的に抑制できる実用的な強制換気式インソールを提供する。
【解決手段】強制換気式インソール1は、平面視の外形が靴底に倣った形状であるインソール本体2と、インソール本体2の踵側9に内蔵された容積が少なくとも20cc以上であるエアポンプ室10と、インソール本体2の内股側の側面から垂設する垂設部と、エアポンプ室10内の中央部に位置する逆止弁26を先端に連設する水平部とを有する吸気管20と、インソール本体2の爪先側8とエアポンプ室10との間を連通し、且つ爪先側8に逆止弁16を連設している排気管12と、を備え、排気管12における爪先側8の逆止弁16からは、利用者の一歩ごとに少なくとも10cc以上のエアが靴内の爪先側に噴射される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴内の爪先側にエアを強制的に噴射して換気するための強制換気式インソールであって、
平面視の外形が靴底に倣った形状であるインソール本体と、
前記インソール本体の踵側に内蔵された容積が少なくとも20cc以上であるエアポンプ室と、
前記インソール本体の内股側の側面から垂設する垂設部と、前記エアポンプ室内の中央部に位置する逆止弁を先端に連設する水平部とを有する吸気管と、
前記インソール本体の爪先側と前記エアポンプ室との間を連通し、且つ前記爪先側に逆止弁を連設している排気管と、を備え、
前記排気管における爪先側の逆止弁からは、利用者の一歩ごとに少なくとも10cc以上のエアが靴内の爪先側に噴射される、
強制換気式インソール。
【請求項2】
前記エアポンプ室内には、スポンジ状の弾性合成樹脂が内蔵されている、
請求項1に記載の強制換気式インソール。
【請求項3】
前記スポンジ状の弾性合成樹脂は、平面視の外形が前記エアポンプ室と相似形状であると共に、内股側の側面には、前記吸気管の水平部および前記逆止弁を受け入れる凹部を有している、
請求項2に記載の強制換気式インソール。
【請求項4】
前記吸気管および前記排気管は、断面が扁平な矩形状または長円形状であり、且つ内側に長手方向に沿った少なくとも1個の隔壁または突条が形成されている、
請求項1から3の何れか一項に記載の強制換気式インソール。
【請求項5】
前記インソール本体は、少なくとも上側シートおよび下側シートを積層した一体物であり、前記エアポンプ室および前記排気管は、前記上側シートと前記下側シートとの間に配置されている、
請求項1から4の何れか一項に記載の強制換気式インソール。
【請求項6】
前記吸気管、前記排気管、および、前記逆止弁は、軟質ゴムまたは軟質樹脂からなる、
請求項1から5の何れか一項に記載の強制換気式インソール。
【請求項7】
前記逆止弁は、上片と、該上片に対して先端側が面接触するように傾斜した下片とを備え、前記吸気管内または前記排気管内の圧力が前記エアポンプ室内または前記インソール本体の爪先側の圧力よりも大きい場合に、前記上片と前記下片との間の吐出口が開かれる、
請求項1から6の何れか一項に記載の強制換気式インソール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、靴底上に敷設され、靴内の爪先側にエアを強制的に噴射して換気するための強制換気式インソールに関する。
【背景技術】
【0002】
爪先が露出しないビジネスシューズ、安全靴、作業靴、長靴、半長靴などを履いて歩行した場合、特に夏季などでは、爪先側が蒸れるため、水虫などの疾患や不快な悪臭が発生し易くなる。これらの発生を予防するため、歩行時の両足交互の上下運動を原動力とした換気用小型ポンプを内蔵した強制換気型靴底敷きが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された強制換気型靴底敷きは、平面視が足形に倣った靴底敷繊維の踵側に、弾性膜ポンプ室を内蔵し、内股側の側面において上端に吸入側逆止弁を設けた吸気管の下端を弾性膜ポンプ室に連通させ、靴底敷繊維の爪先側に排出側逆止弁を設けた排気管の後端側を弾性膜ポンプ室に連通させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に例示されるこれまでの歩行に伴う強制換気型インソールは、何れも一歩当たりのエア送気量が数cc程度(約2~3cc)に過ぎないと推測されるため、靴内における利用者の爪先側での蒸れを阻止するには不十分であった。
【0006】
本発明は、背景技術で説明した問題点を解決し、吸気側および排気側に歩行に伴うエア送気量を区画する逆止弁を個別に配置し、且つ靴内の爪先側における蒸れを効果的に抑制できる実用的な強制換気式インソールを提供する、ことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明の強制換気式インソールは、
靴内の爪先側にエアを強制的に噴射して換気するための強制換気式インソールであって、
平面視の外形が靴底に倣った形状であるインソール本体と、
前記インソール本体の踵側に内蔵された容積が少なくとも20cc以上であるエアポンプ室と、
前記インソール本体の内股側の側面から垂設する垂設部と、前記エアポンプ室内の中央部に位置する逆止弁を先端に連設する水平部とを有する吸気管と、
前記インソール本体の爪先側と前記エアポンプ室との間を連通し、且つ前記爪先側に逆止弁を連設している排気管と、を備え、
前記排気管における爪先側の逆止弁からは、利用者の一歩ごとに少なくとも10cc以上のエアが靴内の爪先側に噴射される。
【0008】
前記エアポンプ室内には、例えば、スポンジ状の弾性合成樹脂が内蔵されていても良い。
【0009】
前記スポンジ状の弾性合成樹脂は、例えば、平面視の外形が前記エアポンプ室と相似形状であると共に、内股側の側面には、前記吸気管の水平部および前記逆止弁を受け入れる凹部を有していても良い。
【0010】
前記吸気管および前記排気管は、例えば、断面が扁平な矩形状または長円形状であり、且つ内側に長手方向に沿った少なくとも1個の隔壁または突条が形成されていても良い。
【0011】
前記インソール本体は、例えば、少なくとも上側シートおよび下側シートを積層した一体物であり、前記エアポンプ室および前記排気管は、前記上側シートと前記下側シートとの間に配置されていても良い。
【0012】
前記吸気管、前記排気管、および、前記逆止弁は、例えば、軟質ゴムまたは軟質樹脂からなっていても良い。
【0013】
前記逆止弁は、例えば、上片と、該上片に対して先端側が面接触するように傾斜した下片とを備え、前記吸気管内または前記排気管内の圧力が前記エアポンプ室内または前記インソール本体の爪先側の圧力よりも大きい場合に、前記上片と前記下片との間の吐出口が開かれるものとしても良い。
【発明の効果】
【0014】
強制換気式インソールによれば、利用者が歩行において、足を上げた際に吸気管から逆止弁を経てエアポンプ室内にエアが吸引され、足を下げた際にエアポンプ室から爪先側の逆止弁を通じて、少なくとも10cc以上のエアが靴内の爪先側に強制的に噴射される。その結果、夏季などの湿潤時に、蒸れに伴う疾患を効果的に阻止ないし抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(X)は、本発明による一形態の強制換気式インソールを示す平面図、(Y)は、(X)中のY-Y線の矢視に沿った部分垂直断面図、(Z)は、スポンジ状の弾性合成樹脂を示す斜視図。
【
図2】(A1),(A2)は、
図1(X)中のA-A線の矢視に沿った垂直断面図、(a1),(a2)は、(A1),(A2)中の逆止弁付近を示す斜視図、(B1),(B2)は、
図1(X)中のB-B線の矢視に沿った垂直断面図。
【
図3】(A)は、異なる構造のソール本体を示す部分垂直断面図、(B)は、異なる形態の排気管を示す断面図,(C)は、異なる形態の給気管を示す断面図、(D)、(E)は、更に異なる形態の排気管または吸気管を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下において、本発明を実施するための形態について説明する。尚、本発明による強制換気式インソールは、左右一対の作業靴などの靴底上にそれぞれ敷設され、利用者が歩行した際に、一方の足(足の裏)が持ち上がった側の靴内では、外気のエアが次述するエアポンプ室内に吸引されると共に、他方の足(足の裏)が押し下げられて加圧した側の靴内では、エアポンプ室内のエアが次述するインソール本体の爪先側から、靴内の爪先側に強制的に噴射される。即ち、エアの吸引と排出とは、利用者の歩行に伴う足の昇降動作により交互に連続して行われる。
【0017】
本発明による一形態の強制換気式インソール1は、
図1(X)の平面図で例示するように、平面視の外形が靴底(図示せず)の外形に倣った形状であるインソール本体2と、インソール本体2の踵側9に内蔵されたエアポンプ室10と、インソール本体2の内股側の側面から靴外(上方)側または靴内側に垂直状に垂設され、且つエアポンプ室10の中央部と連通する後述する吸気側逆止弁(以下、単に逆止弁と言う)26を連設する吸気管20と、インソール本体2の爪先側8とエアポンプ室10との間を連通し、且つ爪先側8に扁平な排気側逆止弁(以下、単に逆止弁と言う)16を一体に連設する排気管12と、を備えている。尚、
図1(X)は、右足用の強制換気式インソール1を示し、これと線対称である左足用の強制換気式インソール1(図示せず)との一対が常に利用される。
【0018】
インソール本体2は、
図1(Y),
図2(A1),(A2)に示すように、比較的厚めの上側シート3と、比較的薄い下側シート5との二層を一体に積層したものである。エアポンプ室10は、上側シート3の底面側を除去した位置に配置され、排気管12は、上側シート3を前後方向に沿って細長く切除した凹溝6内に配置されている。因みに、上側シート3は、例えば、フェルト状のエチレン酢酸ビニール樹脂をプレス成形してなり、厚肉部の厚みが約5mmで、且つ上面側の薄肉部の厚みが約1mmである。下側シート5は、ほぼ全面の厚みが数mmのエチレン酢酸ビニール樹脂を、約1mmの厚さにプレス成形したものである。尚、上側シート3と下側シート5とは、プレス成形時の加熱および圧縮条件を相互に変えている。
【0019】
エアポンプ室10は、
図1(X)のように、平面視が矩形状の爪先側と、半円形状の踵側とからなる変形長円形状を呈し、
図2(B1),(B2)のように、側面視が扁平な楕円形状または長円形状を呈すると共に、利用者の足Fによる圧力(足圧)を受けた際と、かかる圧力が解除された際とでは、厚みが異なっている。エアポンプ室10は、上側シート3の底面側を切除した凹み内に、次述する弾性合成樹脂40を挿入した後、上側シート3と下側シート5とにより上下双方から膨張および収縮可能に挟まれつつ、密閉されている。エアポンプ室10内の容積は、利用者の足Fによる圧力が解除された際で、且つ外部からエアを吸引した状態において、少なくとも20cc以上、望ましくは40cc以上、より望ましくは60cc以上とされる。尚、排気管12から靴内の爪先側に一度に排出できるエア量は、概ね、エアポンプ室10内の容積の約50~60%である。
【0020】
エアポンプ室10内には、
図2(B1),(B2)に示すように、エアポンプ室10内の全体に亘って、これと平面視の外形が相似形状であるスポンジ状(多孔質)の弾性合成樹脂40が内蔵されている。弾性合成樹脂40は、
図1(Z)に示すように、爪先側の矩形状部41と、踵側の半円形状部42と、内股側の側面から中央側に角形状に凹んだ凹部44とを備えている。弾性合成樹脂40は、利用者の足圧の有無に応じて、エアポンプ室10を厚めの無負荷状態と薄めの負荷状態とに交互に切り替えさせることで、エアポンプ室10のポンプ機能を助長している。因みに、平面視において、弾性合成樹脂40を含むエアポンプ室10の中央付近の厚みは、無負荷状態では、約15~18mmで、且つ負荷状態では、約6~9mmである。
【0021】
排気管12は、インソール本体2の爪先側8とエアポンプ室10の排出口7との間を連通し、エアポンプ室10内のエアを利用者の足圧によって、インソール本体2の爪先側8へ強制的に送気する。
図1(Y)に示すように、排気管12は、上側シート3の底面側を前後方向に沿って細長く切り欠いた凹溝6内に収容され、断面の外形が長方形状で、且つ内側に長手方向に沿った断面が縦に細長い三角形の一対の突条13によりほぼ三等分された3個の排気孔14を全長に沿って備えている。排気管12は、柔軟性を有する軟質の合成樹脂(以下、軟質樹脂と称する)または軟質の合成ゴム(以下、軟質ゴムと称する)からなる。但し、利用者の足圧を受けた場合、3個の排気孔14が潰れる事態を防ぐため、一対の突条13が内側に突設されている。尚、排出口7は、凹溝6と下側シート5の上面とに囲まれた開口部である。
【0022】
図2(a1),(a2)に示すように、排気管12の爪先側8の先端には、横方向に扁平な逆止弁16が一体に連設されている。逆止弁16は、上片u、下片b、および両側の側片sの各厚みが約0.5~1mmである軟質ゴムまたは軟質樹脂(例えば、軟質塩化ビニル)からなり、全体が扁平な箱形状を呈する。図示のように、下片bと上片uとが面接触して閉塞した吐出口17となるように、予め、下片bと両側片sとの接続部ごとに前後方向に沿った垂直なスリットを形成し、
図2(A1)に示すように、排気管12側から連続している一対の突条13の先端側を斜め上向き(例えば、約45度)に切除した後、下片bの両側の端面を両側片sの内面に対して斜め上向きの姿勢で接着してある。
【0023】
その結果、排気管12側からの常圧(大気圧)以上のエア圧力を受けない場合には、
図2(a1),(A1)に示すように、水平線状に閉じた吐出口17となる。一方、排気管12側からのエア圧力を受けた場合には、
図2(a2),(A2)に示すように、下向きに緩くカーブして開いた吐出口18となり、矢印で示すエアが爪先側8に強制的に噴射される。
【0024】
逆止弁16の吐出口18を通過したエアは、
図1(X),
図2(A2)に示すように、上側シート3と下側シート5との間に位置する直方体形状の空所19を経た後、上側シート3の底面側に平面視で放射状に形成された5本の噴射孔30から靴内の足指先側に噴射される。噴射孔30ごとの底面側は、下側シート5の上面によって密閉されている。この際、空所19内に送気されたエアの一部は、空所19の天井面を構成する上側シート3に横並びで穿設された3個の噴射孔31から靴内の足指の付け根側に噴射される。
【0025】
吸気管20は、排気管12と同様の軟質ゴムまたは軟質樹脂からなり、
図1(X)中で示すように、断面の外形が長方形状または扁平な台形状で、且つ内側の内壁面から外側の内壁面に向かって細長い三角形状に突出した一対の突条21によりほぼ三等分された3個の吸気孔22を、その全長に沿って有している。前後方向の両端部には、角部が足Fの踝付近を圧迫する事態から防護するため、内側から外側に向かって断面が先細状となる円弧形状である一対の防護片27が対称に突設されている。
【0026】
図2(B1),(B2)に示すように、吸気管20は、インソール本体2の内股側において、利用者の内股側の足Fに沿ってほぼ垂直状に垂設された垂設部23と、その下端側に位置するL字形状の湾曲部24と、湾曲部24から水平方向に延びた水平部25とを備えている。水平部25の先端側には、逆止弁26が連設されている。逆止弁26の構造は、前記逆止弁16と同じである。
【0027】
吸気管20の湾曲部24は、上側シート3と下側シート5との間の内股側に形成された横長の貫通孔11を貫通しつつ、当該貫通孔11に密着している。
図1(X),
図2(B1)に示すように、吸気管20の水平部25と逆止弁26とは、平面視でエアポンプ室10内の中央側に位置させるべく、弾性合成樹脂40の凹部44内に進入するように、上側シート3の底面に接着されている。吸気管20の垂設部23の上端位置は、利用環境に応じて適宜に選定され、例えば、利用者の作業靴や長靴の最上端よりも高くし、且つズボンなどの内側において上端部が開口するようにしたり、あるいは、ビジネスシューズや作業靴の内側に上端部を留めて、外部から目視できない高さに設定しても良い。
【0028】
以下において、強制換気式インソール1の作用を、主に、
図2(B1),(B2)に沿って説明する。予め、利用者は、図示しない靴内の靴底上に強制換気式インソール1を敷設し、且つ吸気管20の垂設部23を靴の内股側で垂設した状態で、自己の足を靴内のインソール本体2の上面に載せて歩行するものとする。利用者の歩行によって右足Fを持ち上げた際には、
図2(B1)中の左側の矢印で示すように、エアポンプ室10内が負圧になるため、エアが吸気管20から開いた逆止弁26を通じて、エアポンプ室10内に吸引される。この際、弾性合成樹脂40も吸引されたエアによって、厚み方向に沿って復元膨張するので、エアポンプ室10内には、その全容量に近い容積のエアが吸引される。尚、排気孔14内も負圧になるため、逆止弁16は、閉じた吐出口17となっている。
【0029】
次いで、
図2(B2)に示すように、利用者の歩行によって右足Fをインソール本体2上に下げ降ろした際には、エアポンプ室10内のエアが高圧化(常圧を超える正圧)される。その結果、高圧化されたエアは、開口孔7から排気管12および逆止弁16の吐出口18から靴内の爪先側に強制的に排出され、噴射孔30,31から靴内に噴射される。排出されるエアの容量は、エアポンプ室10内に吸引したエア量の約50~60%程度である。
【0030】
排気管12は、上方から足圧を受けるが、一対の突条13によって、3個の排気孔14が潰れることないので、排気状態を確実に保ち続ける。一方、吸気管20側の逆止弁26の吐出口は、閉鎖されている。尚、逆止弁26は、エアポンプ室10内が負圧の場合(吸気孔22内の圧力がエアポンプ室10内の圧力よりも相対的に大きくなった場合)にのみ開く。以上のように、靴内の爪先側にエアが強制的に噴射されることにより、靴内の湿気に伴う蒸れを効果的に防止し、あるいは低減することが可能となる。
【0031】
この間において、図示しない左足側の靴内の強制換気式インソール1では、右足が
図2(B1)の吸気状態であった際には、
図2(B2)の排気状態となっていると共に、右足が
図2(B2)の排気状態であった際には、
図2(B1)の吸気状態となっている。即ち、右足が履いた靴と左足が履いた靴とでは、これらの靴底上に付設された強制換気式インソール1が、常に、一方が吸気状態で且つ他方が排気状態となり、且つ、それぞれが足F(踵)の昇降動作に応じて、吸気状態と排気状態とを、交互に連続して繰り返えされる。
【0032】
その結果、夏季や、湿潤な環境下または高温現場などにおいて、長時間に亘る作業を行う作業者などの利用者にとっても、自己の靴内に強制換気式インソール1を敷設することで、靴内の湿気に伴う蒸れを継続的且つ効果的に防止ないし抑制することが可能となる。従って、利用者の作業能率を適正に維持し易くなると共に、作業環境を安全で且つ衛生的に保ち易くすることも可能となる。しかも、強制換気式インソール1を靴内に敷設したり、不使用時に取り外すだけの簡単な操作で行え、メンテナンスも殆ど不要であるため、利用者にとって使い易くなっている。
【0033】
尚、インソール本体2は、
図3(A)に示すように、薄い上側シート3と薄い下側シート5との間に、これらよりも厚めの中間シート4を挟んで一体に積層した3層構造からなる形態としても良い。中間シート4の厚みは、凹溝6やエアポンプ室10を打ち抜き加工することが可能なものが推奨される。但し、中間シート4の厚みは、貫通孔11の高さよりも若干大きくすることで、製造や組み立てが容易となる。
【0034】
排気管12に替えて、
図3(B)に示すように、内側の突条13を1本のみとして、一対の排気孔14を有する形態の排気管12aとしても良い。吸気管20に替えて、
図3(C)に示すように、内側の突条21を1本のみとして、一対の吸気孔22を有する形態の吸気管20aとしても良い。排気管12と吸気管20の内側に3本以上の突条13,21を設けた形態とすることも可能である。
【0035】
排気管12,12aに替えて、
図3(D)に示す形態の排気管12bとしても良い。排気管12bは、断面の外形が長円形で、内側に一対の隔壁15を内設することで、断面が長円形である合計3個の排気孔14a,14bを図示の前後方向の全長に沿って内蔵している。更に、排気管12bは、1個または3個以上の隔壁15を内蔵する形態としたり、これらを吸気管20bとして転用することも可能である。
【0036】
排気管12,12a,12bに替えて、
図3(E)に示す形態の排気管12cとしても良い。排気管12cは、断面の外形が長円形で、内側に断面が鼓形状である一対の隔壁15cを内設することで、断面が長円形である合計3個の排気孔14cを図示の前後方向の全長に沿って内蔵している。但し、排気管12cは、1個または3個以上の隔壁15cを内蔵する形態としたり、これらを吸気管20cとして転用することも可能である。
【0037】
エアポンプ室は、平面視の外形が長円形状または楕円形状を呈する形態としても良い。これらの場合、弾性合成樹脂40も凹部44を含む相似形状となる。
【0038】
本発明は、その技術思想に基づいて適宜に形態に変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明によれば、吸気側および排気側に歩行に伴うエア送気量を区画する逆止弁を個別に有し、靴内の爪先側における蒸れを効果的に抑制できる実用的な強制換気式インソールを提供できる。
【符号の説明】
【0040】
1 強制換気式インソール
2 インソール本体
3 上側シート
4 中間シート
5 下側シート
6 凹溝
7 排出口
8 爪先側
9 踵側
10 エアポンプ室
11 貫通孔
12,12a~12c 排気管
13 突条
15,15c 隔壁
14,14a~14c 排気孔
16 排気側逆止弁(逆止弁)
17,18 吐出口
19 空所
20,20a,20b 吸気管
21 突条
22 吸気孔
23 垂設部
24 湾曲部
25 水平部
26 吸気側逆止弁(逆止弁)
27 防護片
30,31 噴射孔
40 弾性合成樹脂
41 矩形状部
42 半円形状部
44 凹部
F 足
b 下片
s 側片
u 上片