(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061475
(43)【公開日】2022-04-18
(54)【発明の名称】不均一性の照射を最小限に抑えるためのシステムと方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/268 20060101AFI20220411BHJP
【FI】
H01L21/268 T
H01L21/268 G
H01L21/268 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021149865
(22)【出願日】2021-09-15
(31)【優先権主張番号】20306056.1
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】515075197
【氏名又は名称】レイザー システムズ アンド ソリューションズ オブ ヨーロッパ
【氏名又は名称原語表記】LASER SYSTEMS AND SOLUTIONS OF EUROPE
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】マツァムート,フルヴィオ
(72)【発明者】
【氏名】ペロー,シルヴァイン
(72)【発明者】
【氏名】ドゥリ,ナビル
(72)【発明者】
【氏名】テボー,ギョーム ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】ユエ,カリム ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ハインツマン,マーティン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】事前定義された温度プロファイルを得るために、処理基板の加工面の照射を可能にするプロセス及びシステムを提供する。
【解決手段】所定の温度プロファイルを得るために、処理基板1の加工面5を照射するためのシステムにおいて、加工面5は、第1の領域41及び第2の領域42を含む。第1の領域は、光学特性と熱特性の第1の組み合わせを有し、第2の領域は、光学特性と熱特性の第2の組み合わせを有し、第1の組み合わせと第2の組み合わせは異なる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の温度プロファイルを得るために処理基板(1)の加工面(5)を照射するためのプロセスであって、前記加工面(5)は、第1の領域(11)および第2の領域(13)を具え、前記第1の領域(11)は光学特性と熱特性との第1の組み合わせを有し、前記第2の領域(13)は光学特性と熱特性との第2の組み合わせを有しており、前記第1の組み合わせは第2の組み合わせとは異なり、
a)様々な照射位置の反射信号を表す加工面(5)の少なくとも一部の反射率マップ(45)を決定するステップと、
b)不均一な照射プロファイルを決定するために、制御ユニット(39)にステップa)で決定された前記反射率マップ(45)を提供するステップと、
c)所定の温度プロファイルを取得するよう照射された処理基板(1)の加工面(5)を得るために、前記処理基板(1)の前記加工面(5)を、ステップb)で決定された前記不均一な照射プロファイルで照射するステップと、
を具えることを特徴とするプロセス。
【請求項2】
請求項1に記載のプロセスにおいて、
ステップa)が、
a1)前記加工基板(1)の前記加工面(5)に均一な照射条件で照射するステップと、
a2)照射ステップa1)の間に、様々な照射位置での反射信号を検出するステップと、
a3)反射信号を対応する照射位置に関連付けることにより、前記処理基板(1)の前記加工面(5)の少なくとも一部の反射率マップ(45)を決定するステップと、
から成るサブステップを具えることを特徴とするプロセス。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプロセスにおいて、
ステップc)における不均一な照射プロファイルによる前記加工面(5)の照射が、超高速制御ループ、ダイツーダイ制御ループ、および/またはダイの断片化で実行されることを特徴とするプロセス。
【請求項4】
請求項3に記載のプロセスにおいて、ステップc)における不均一な照射プロファイルによる加工面(5)の照射が、超高速制御ループを用いて実行されることを特徴とするプロセス。
【請求項5】
請求項3に記載のプロセスにおいて、
ステップc)における不均一な照射プロファイルによる加工面(5)の照射が、ダイツーダイ制御ループを用いて実行され、
前記ダイツーダイ制御ループを実施することは、検出された反射信号と目標値との比較に応じて、各ダイ(3)の照射後の照射設定値の再計算を具え、
照射設定値は、各ダイ(3)内で一定であることを特徴とするプロセス。
【請求項6】
請求項3に記載のプロセスにおいて、
ステップc)における不均一な照射プロファイルによる加工面(5)の照射が、ダイフラグメンテーションを用いて実行され、
前記ダイフラグメンテーションを実施することは、検出された反射信号と目標値との比較に応じて、各ダイ(3)の照射後の照射設定値の再計算を具え、
照射設定値は、照射に対する応答が異なる前記ダイ(3)の様々な領域(11、13)に対して異なり、照射に対する応答は各ゾーン内で均一であり、照射設定値は各ゾーン内で一定であることを特徴とするプロセス。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセスにおいて、
ステップb)で決定された不均一な照射プロファイルが、少なくとも第1の照射条件及び第2の照射条件を具え、前記第1および第2の照射条件が異なる照射エネルギ密度および/または異なるパルス数を有することを特徴とするプロセス。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセスにおいて、
ステップb)における不均一な照射プロファイルの決定が、少なくとも1つの決定論的アルゴリズムおよび/または人工知能の使用によって実行されることを特徴とするプロセス。
【請求項9】
所定の温度プロファイルを得るために処理基板(1)の加工面(5)を照射するためのシステム(21)であって、前記加工面(5)は、第1の領域(11)および第2の領域(13)を具え、前記第1の領域(11)は光学特性と熱特性との第1の組み合わせを有し、前記第2の領域(13)は光学特性と熱特性との第2の組み合わせを有しており、前記第1の組み合わせは第2の組み合わせとは異なり、
加工面(5)に向かってパルス光ビームを放出するように構成された光源(23)であって、そのフルエンスを変調するのに適した光学系(25)に結合された光源と、
前記加工面(5)のフレームからフレームへと段階的に移動可能な移動ステージ(27)と、
露光位置に対する前記基板(1)の位置を特定可能な位置決めシステム(31)と、
大きな表面上のマイクロスポットを均一に走査可能な走査システム(33)と、
フィードバック照射収集システム(35)と、
制御ユニット(39)と、
を具えることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項9に記載のシステム(21)において、前記走査システム(33)は、2ミラー検流計または多角形走査システムであることを特徴とするシステム。
【請求項11】
請求項9または10に記載のシステム(21)において、
前記マイクロスポットの面積が、0.75平方マイクロメートルから40000平方マイクロメートルとの間で構成されることを特徴とするシステム。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか一項に記載のシステム(21)において、
前記大きな表面の面積が少なくとも26×33mm2であることを特徴とするシステム。
【請求項13】
請求項9~12のいずれか一項に記載のシステム(21)において、
前記照射源(23)に結合された前記光学系(25)が、前記システム(21)の透過を変調するのに適した光変調器であることを特徴とするシステム。
【請求項14】
請求項9~13のいずれか一項に記載のシステム(21)において、
前記フィードバック照射収集システム(35)が、照射フィードバック信号から照射源信号を分割することができる少なくとも1つの構成要素と、光学系(351)と、超高速検出器(352)とを具えることを特徴とするシステム。
【請求項15】
請求項14に記載のシステム(21)において、
前記フィードバック照射収集システム(35)に含まれる前記光学系(35)が、照射フィードバック信号が照射源信号から分割された後、照射フィードバック信号の減衰および/またはビーム管理を実行し得ることを特徴とするシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の熱アニーリングのためのシステムに関する。
【0002】
より正確には、本発明は、パルス光ビームによって照射された基板の加工面に供給されるエネルギ量を空間的に制御するためのシステム、および基板の加工面に供給されるエネルギ量を空間的に制御するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
半導体デバイスを製造するために、半導体基板は、レーザ熱処理と呼ばれるプロセス中にパルス光ビームにさらされる。レーザ熱処理中にパルス光ビームにさらされた領域の表面は、一定時間加熱されて所定の温度に達する。例えば、温度は数ナノ秒の間に1000℃を超える可能性がある。
【0004】
高温により、露出部分が溶けて構造が変化する場合がある。構造変化の程度は温度に依存するため、温度を正確に制御することが重要である。さらに、基板の一部の領域は、より壊れやすく高温によって損傷する可能性のある他の領域よりも、高い温度に到達する必要がある。
【0005】
製造のこの段階では、基板の表面はすでに処理されており、いくつかのパターンが示されている。各パターンには独自の光学的および熱的特性があるため、各パターンはパルス光ビームとは異なる方法で相互作用する。例えば、パターンのコーティングおよび/またはスタック、パターンの材料、パターンの形状および/またはその密度は、特に、パターンによって吸収される光の量および/またはその熱拡散、すなわち、熱がパターン全体および隣接領域に再分配される速度に影響を及ぼす。結果として、表面温度は基板自体のパターンに依存する。
【0006】
パターン化された半導体基板は通常さまざまなパターンを示すため、結果として生じる表面温度を制御することは困難である。
【0007】
パターン効果の問題を解決するために、従来技術では様々な方法が実施されてきた。
【0008】
まず、ダミー化は、パターンの観点からの差異を減らすために、半導体デバイスを製造するときにいくつかの設計ルールを適用することで構成され、レーザアニーリング中にすべてのパターンが同等に見えるようにする(Lin,S.C.,S.F.Liu,およびF.L.Chen.Journal of Intelligent Manufacturing 23.3(2012):775-785)。
【0009】
それにもかかわらず、ダミー化は非常に複雑になる可能性があり、ほとんどの場合、アクティブデバイスの密度を下げることなく不可能である。これは、設計に重要な制約を引き起こし、パフォーマンスと負荷に関してトレードオフを課す。
【0010】
第2の解決策は、走査レーザを使用し、走査中にレーザエネルギ密度を積極的に調整して、さまざまなパターンが露光されている間、温度を均一に維持することで構成される。温度の不均一性は、熱放射検出器によって測定される(Hebb,Jeffrey,et al.Advanced Semiconductor Manufacturing Conference(ASMC),2011 22nd Annual IEEE/SEMI.IEEE,2011)。この解決策では、熱放射検出を使用してループを閉じるが、これには、正確のために十分な数の光子を検出する必要がある。したがって、このアプローチは、小さな領域や高速プロセスには適用できない。さらに、熱放射信号をシステムの近くでキャプチャする必要があるため、プロセス環境の設計がより複雑になる。
【0011】
第3に、従来技術のいくつかの装置は2つの光源を使用する。第1の連続光源は、パターン化された表面を目標温度よりも低い第1の表面温度に加熱するように構成された光ビームを放出する。この最初の連続光の波長は非常に長いため、小さなパターンは無視でき、この加熱に影響を与えない。第2のパルス光源はパルス光ビームを放射して、目標表面温度に到達するために必要なエネルギを提供する。これらの2つの連続する加熱ステップで観察された全体的な温度の不均一性は、パターン化された表面が第2のパルス光源のみによって目標温度に直接加熱された場合よりも低くなる。米国特許第8,309,474号明細書はそのような装置を開示している。
【0012】
しかしながら、2つの光源を使用すると、デバイスの熱収支が増加する。この量は、その適用を制限しないように低く抑える必要がある。
【0013】
最後に、欧州特許EP19315058は、ショット内のレーザ照射の変調によってパターンの不均一性を補償することができる空間マスクの使用を開示している。 このような技術は、大きなビームにのみ適用できる。
【0014】
したがって、処理基板の加工面の均一な照射を可能にし、従来技術の不利な点に悩まされないプロセスを開発することが望ましい。特に、事前定義された温度プロファイル、例えば均一な照射を得るために、処理基板の加工面の照射を可能にするプロセスを開発することは有利であり、それは、それは単純で実装が簡単であり、小さな領域の照射、狭いビームの使用、または高速照射プロセスといったすべての状況に適用でき、それは低い熱収支のみを必要とする。
【発明の概要】
【0015】
したがって、本発明の1つの目的は、所定の温度プロファイルを得るために処理基板の加工面を照射するためのプロセスであり、前記加工面は、第1の領域および第2の領域を具え、前記第1の領域は光学特性と熱特性との第1の組み合わせを有し、前記第2の領域は光学特性と熱特性との第2の組み合わせを有しており、前記第1の組み合わせは第2の組み合わせとは異なり、
a)好適には各照射位置について、様々な照射位置の反射信号を表す加工面の少なくとも一部の反射率マップを決定するステップと、
b)不均一な照射プロファイルを決定するために、制御ユニットにステップa)で決定された前記反射率マップを提供するステップと、
c)所定の温度プロファイルを取得するよう照射された処理基板の加工面を得るために、前記処理基板の前記加工面を、ステップb)で決定された前記不均一な照射プロファイルで照射するステップと、
を具える。
【0016】
本発明のプロセスは、所定の温度プロファイルを得るために加工面の照射を可能にし、パターン効果を克服し、実施が容易であり、低い熱収支を必要とする。さらに、本発明のプロセスは、照射する領域が小さい場合、ビームが狭い場合、および/または照射プロセスが速いプロセスである場合でも実施することができる。
【0017】
本発明によるプロセスの他の有利で非限定的な態様は、以下を含む。
-所定の温度プロファイルを得るための加工面の照射は、均一な照射である;
-ステップa)が、
a1)前記加工基板の前記加工面に均一な照射条件で照射するステップと、
a2)照射ステップa1)の間に、好適には各照射位置について、様々な照射位置での反射信号を検出するステップと、
a3)反射信号を対応する照射位置に関連付けることにより、前記処理基板の前記加工面の少なくとも一部の反射率マップを決定するステップと、
から成るサブステップを具える;
-ステップc)における不均一な照射プロファイルによる前記加工面の照射が、超高速制御ループ、ダイツーダイ制御ループ、および/またはダイの断片化で実行される;
-ステップc)における不均一な照射プロファイルによる加工面の照射が、超高速制御ループを用いて実行され、超高速制御ループの実施は、検出された反射信号と目標値の比較に応じて、照射設定値の継続的な再計算を含む;
-ステップc)における不均一な照射プロファイルによる加工面の照射が、ダイツーダイ制御ループを用いて実行され、前記ダイツーダイ制御ループを実施することは、検出された反射信号と目標値との比較に応じて、各ダイの照射後の照射設定値の再計算を具え、照射設定値は、各ダイ内で一定である;
-ステップc)における不均一な照射プロファイルによる加工面の照射が、ダイフラグメンテーションを用いて実行され、前記ダイフラグメンテーションを実施することは、検出された反射信号と目標値との比較に応じて、各ダイの照射後の照射設定値の再計算を具え、照射設定値は、照射に対する応答が異なる前記ダイの様々な領域に対して異なり、照射に対する応答は各ゾーン内で均一であり、照射設定値は各ゾーン内で一定である;
-ステップb)で決定された照射プロファイルが、少なくとも第1の照射条件及び第2の照射条件を具え、前記第1および第2の照射条件が異なる照射エネルギ密度および/または異なるパルス数を有する;
-ステップb)における不均一な照射プロファイルの決定が、少なくとも1つの決定論的アルゴリズムおよび/または人工知能の使用によって実行される。
【0018】
本発明のさらなる目的は、所定の温度プロファイルを得るために処理基板の加工面を照射するためのシステムであって、前記加工面は、第1の領域および第2の領域を具え、前記第1の領域は光学特性と熱特性との第1の組み合わせを有し、前記第2の領域は光学特性と熱特性との第2の組み合わせを有しており、前記第1の組み合わせは第2の組み合わせとは異なり、
加工面に向かってパルス光ビームを放出するように構成された光源であって、そのフルエンスを変調するのに適した光学系に結合された光源と、
前記加工面のフレームからフレームへと段階的に移動可能な移動ステージと、
露光位置に対する前記基板の位置を特定可能な位置決めシステムと、
好適にはフレームである大きな表面上のマイクロスポットを均一に走査可能な走査システムと、
フィードバック照射収集システムと、
制御ユニットと、
を具える。
【0019】
本発明によるシステムの他の有利で非限定的な態様は、以下を含む。
-所定の温度プロファイルを得るための加工面の照射は均一な照射である;
-前記走査システムは、2ミラー検流計または多角形走査システムである;
-前記マイクロスポットの面積が、0.75平方マイクロメートルから40000平方マイクロメートルとの間、好適には、0.75平方マイクロメートルから2000平方マイクロメートルの間で構成される;
-前記大きな表面の面積が少なくとも26×33mm2である;
-前記照射源に結合された前記光学系が、前記システムの透過を変調するのに適した光変調器である;
-前記フィードバック照射収集システムが、照射フィードバック信号から照射源信号を分割することができる少なくとも1つの構成要素を具える光学系と、超高速検出器とを具える;
-前記フィードバック照射収集システムに含まれる前記光学系が、照射フィードバック信号が照射源信号から分割された後、照射フィードバック信号の減衰および/またはビーム管理を実行し得る。
【図面の簡単な説明】
【0020】
添付の図面を参照する以下の説明は、本発明が何で構成されるか、およびそれをどのように達成することができるかを明らかにするであろう。本発明は、図面に示されている実施形態に限定されない。したがって、請求項に記載されている特徴の後に参照記号が続く場合、そのような記号は、請求項の理解度を高める目的でのみ含まれ、請求項の範囲を限定するものではないことに留意されたい。
【0021】
添付図面で、
【
図2】
図2は、
図1の基板で支持されたダイの例の概略図である。
【
図3】
図3は、本発明による処理基板の加工面を均一に照射するためのシステムを表す。
【
図4】
図4は、本発明による処理基板の加工面を均一に照射するためのプロセスの実施を表す。
【
図5】
図5は、照射条件を変更することにより、照射される表面の異なる領域間の不均一性の補正の実施を表す。
【
図6】
図6は、ダイの断片化を伴う不均一な照射プロファイルによる加工面の照射の実施を表す。
【
図7】
図7は、本発明のプロセスで実施された照射面上のシステムの誤動作、劣化または欠陥の検出を表す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明において、表面を「均一に照射する」とは、照射条件により、表面全体が同じ温度に到達することを意味する。この場合、表面の事前定義された温度プロファイルは、表面全体にわたって一定値を示す。
【0023】
本発明のプロセスは、異なる光学的および/または熱的特性を有する領域を含む基板の表面のパターン効果に起因する照射の不均一性を排除するか、または少なくとも最小化することを目的とする。
【0024】
図1を参照すると、処理基板1は、典型的には、半導体デバイス産業で一般的に使用されるようなシリコンウェーハまたは複合ウェーハである。処理基板1は、その加工面5上でダイ3のアレイを支持する。ダイ3は、けがき線7によって分離されている。処理基板1はまた、その周縁に位置する周縁領域9を含む。周辺領域9は、機能的なダイをサポートするには小さすぎる。加工面5は、基板1の表面全体であるが、それはまた、基板1の表面に存在するダイのグループ、または基板1の表面に存在する単一のダイ3など、その一部のみでもよい。加工面5は、均一に照射される面に対応する。
【0025】
図2を参照すると、各ダイ3は、少なくとも第1の領域11および第2の領域13を含む。第1の領域11は、光学特性および熱特性の第1の組み合わせを有する。第2の領域13は、光学特性と熱特性の第2の組み合わせを有する。第1の組み合わせと第2の組み合わせは異なる。
【0026】
光学特性には、パターンによる光吸収が含まれる。光学特性は、パターンのコーティングおよび/またはスタック、パターンの材料、パターンの形状および/またはその密度などのパターンの異なるパラメータによって影響を受ける。パターン密度(「パターン荷重」とも称される)は、ダイ3の領域11、13の表面によってサポートされるパターンの繰り返し率である。
【0027】
パターンは、たとえば、トランジスタ、抵抗器、およびそれらの金属相互接続などの電子デバイスの配置によって形成される。
【0028】
パターンの反射率は、パターン密度などの多くのパラメータに依存するが、照射波長に対するパターンピッチの寸法にも依存する。より密度の高いパターンの場合、領域の表面は、たとえば、より反射性が高くなる。このような場合、光線によって供給されるエネルギは低くなり、領域の表面が到達する温度は低くなる。
【0029】
逆に、まばらなパターンの場合、領域の表面の反射率が低くなる。このような場合、光ビームによってより多くのエネルギを供給することができ、領域の表面が到達する温度はより高くなる。
【0030】
図2に示すように、第2の領域13は、第1の領域11よりも密度の高いパターンを有する。
【0031】
第1の領域11は、ダイ3の第1の機能回路ブロックに対応する。第2の領域13は、ダイ3の第2の機能回路ブロックに対応する。
【0032】
熱特性には、考慮される領域11、13の熱拡散率が含まれる。熱拡散速度は、ダイ3内で熱が再分配される速度である。熱拡散速度は、たとえば、各領域11、13が構成されている材料によって異なる。したがって、第1の領域11および第2の領域13は、異なる熱拡散速度を有する。
【0033】
一般に、熱拡散率が高いと表面温度が低くなる。熱拡散率が低いと、表面温度が高くなる。例えば、熱拡散率が表面温度に影響を及ぼし、表面温度が光学特性である反射率に影響を与えるため、光学特性と熱特性は相互に関連している。
【0034】
各領域11、13は、少なくとも1μm×1μmに等しく、最大26mm×33mmまでの表面積を有する。
【0035】
図2に示される例示的なダイ3は、第3の領域15、第4の領域17、第5の領域19を含む。
【0036】
第3の領域15は、光学特性と熱特性の第3の組み合わせを有する。第4の領域17は、光学特性と熱特性の第4の組み合わせを有する。第5の領域19は、光学特性と熱特性の第5の組み合わせを有する。すべての組み合わせが異なる場合がある。代替的に、いくつかの組み合わせは類似している。
【0037】
処理基板1の加工面5によって支持されたすべてのダイ3は、好ましくは類似している。
【0038】
ダイ3内の少なくとも2つの領域11、13の存在は、例えば、ダイ3内の異なるレイアウト、異なる構造、異なる材料、および/または異なるスタックに起因する。
【0039】
図3は、第1の領域および第2の領域を含み、前記第1の領域は光学特性および熱特性の第1の組み合わせを有し、前記第2の領域は光学特性および熱特性の第2の組み合わせを有する、処理基板1の加工面5を均一に照射するためのシステム21を表しており、処理基板1の加工面5に供給されるエネルギの量を空間的に制御するための、前記第1の組み合わせおよび第2の組み合わせが異なる。
【0040】
システム21は、処理基板1の加工面5に向かってパルス光ビームを放出するように構成された光源23を備える。
【0041】
光源23は、紫外線(UV)光源である。光源23は、レーザ光源を含む。ここでは、固体レーザ、ファイバーレーザ、エキシマレーザ光源など、様々なタイプのレーザ光源を使用できる。例えば、ここではエキシマレーザ光源を使用できる。放出されるパルス光ビームの波長は、1064ナノメートル(nm)未満であり、532ナノメートルよりもさらに低くなる。好ましくは、放出されるパルス光ビームの波長は、355ナノメートル以下である。
【0042】
光源23は、パルスモードで動作する。例えば、1~150MHzを超える速度で、半値全幅(FWHM)が1~500ナノ秒未満のナノ秒パルスを生成する。
【0043】
光源23は、そのフルエンスを変調するのに適した光学系25に結合されている。フルエンスは、処理基板1の加工面5の単位面積あたりの光源23によって送達されるエネルギに対応する。光学系25は、光源23と処理基板1との間のビーム経路上に配置される。光学系25は、例えば、システムの伝送を変調するのに適した光変調器であり得る。光学系25による変調は、異なる物理的手段(および関連する物理的現象)によって光ビームの透過を修正することによって実行され得る。物理的手段のさまざまな例を引用することができる。すなわち、材料の光学特性を変更する音波、材料の光学特性を変更するための電圧を印加するための電気吸収変調および電気光学システム、または材料に磁場を加えることによって光の伝播を変更する磁気光学変調である。
【0044】
実際には、光学系25による変調は、例えば、音響光学変調器、電気吸収変調器、電気光学変調器、磁気光学変調器、またはマイクロまたはナノ電気機械装置(MEMSおよびNEMS)によって実施できる。
【0045】
移動ステージ27は、加工面5のフレームから別のフレームに段階的に移動するために、2つの方向に移動することができる。
【0046】
フレームは、ウェーハ上にフォトリソグラフィによって印刷される繰り返し可能なパターンとなっている。システム21は、好ましくは、処理基板1の加工面5上に存在する異なるフレームの反復走査によって、処理基板1の加工面5を照射するのに適している。基板1はマイクロスポットによって走査される。第1のフレームが完全に走査されると、移動ステージ27は、処理基板1の加工面5のさらなるフレームの照射を可能にするために、処理基板1を移動させる。フレームは、異なる光学的および/または熱的特性を有する少なくとも第1の領域11および第2の領域13を含む1つまたはいくつかのダイ3を含む。処理基板の加工面のフレームの走査は、照射条件が1つのダイ3から別のダイに、あるいは同じダイ3でさえも変更され得るので、必ずしもフレーム内の均一な照射条件で実行されるとは限らない。
【0047】
露光位置に対して基板1の位置を識別することができる位置決めシステム31が提供される。
【0048】
大きな面上のマイクロスポットの均一な走査は、走査システム33によって実行される。走査システム33は、2ミラー検流計である。あるいは、走査システム33は、例えば多角形走査システムなど、大きな表面上のマイクロスポットを均一に走査するための他の適切な走査システムである。
【0049】
走査システム33によって均一に走査されるマイクロスポットは、任意の適切なサイズおよび形状である。特に、それは、0.75平方マイクロメートルから40000平方マイクロメートルの間、好ましくは0.75平方マイクロメートルから2000平方マイクロメートルの間で構成される領域を提示する。そのような面積値は、例えば、1マイクロメートルから50マイクロメートルの間で構成される直径を有する円形スポットに対応する。
【0050】
大きな表面は、例えば、フレームの表面である。大きな表面は少なくとも26×33mm2である。
【0051】
フィードバック照射収集システム35は、反射ビームを収集するのに適している。フィードバック照射収集システム35は、
図3のシステムにおいて適切に配向されたミラーを含む光学系351を含むが、とりわけ、フィードバック照射信号を収集システム352に向けるのに適した他の任意の光学系である。一実施形態では、フィードバック収集システム35は、照射フィードバック信号から照射源信号を分割することができる少なくとも1つの構成要素3511を含む光学系351と、超高速検出器である収集システム352とを備える。光学系351は、照射源信号から分割された後、照射フィードバック信号の減衰および/またはビーム管理をさらに実行することができる。収集システム352が照射繰り返し率に関して十分に速い場合、反射信号は各パルスの後に検出される。あるいは、反射信号は、収集システム352が照射繰り返し率に関して遅い場合、いくつかの連続するパルスにわたる平均値として検出される。
【0052】
走査システム33と照射される基板1の表面5との間にレンズとしての光学系37が設けられている。光学系37は、走査システム33に結合され、照射ビームが、マイクロスポットによって走査される広い表面全体にわたって同じ角度、同じ焦点、および同じ寸法などの同じ特性を示すことを保証する。
【0053】
制御ユニット39は、システム21の異なる部分の相互作用を制御する。制御ユニット39は、システム21の異なる部分を同期させる。
【0054】
システム21は、以下のように動作する。すなわち、照射ビームが、処理基板1の加工面5と相互作用し、その一部は吸収され、その一部は反射される。具体的には、加工基板1の加工面5に到達する照射エネルギ密度は、吸収照射と反射照射の合計である。システム21は、処理基板1の加工面5上のエネルギ密度を制御するように較正される。処理基板1の加工面5上のエネルギ密度、およびフィードバック収集システム35によって測定された反射エネルギを知ることで、吸収されたエネルギ密度を計算することが可能である。照射信号の反射部分は、数パーセントから90%以上まで変化する可能性があり、主にダイ3内の領域のパターン、スタック、および/または材料に依存する。
【0055】
フィードバック照射収集システム35は反射信号を収集することができ、位置決めシステム31は、ダイ3内の正確な照射およびフィードバック位置を制御するので、システムは、照射中に測定された反射エネルギを照射位置と関連付けて、照射領域の反射率マップ45を生成する。反射率マップ45は、吸収されたエネルギに反比例し、大まかに言えば、処理基板1の照射された加工面5の少なくとも一部の領域の温度に反比例する。反射率マップ45は、処理基板1の加工面5の少なくとも一部の反射率マップである。一実施形態では、生成された反射率マップ45は、処理基板1の加工面5の単一のダイ3の反射率マップである。処理基板1の加工面5は、反射された信号を対応する照射位置に関連付けることによって決定され得る(ステップa3)。対応する照射位置は、好ましくは、位置決めシステム31によって決定される。
【0056】
図4を参照すると、表されたプロセスは、均一な照射条件で処理基板1の加工面5を照射するサブステップa1、および照射ステップa1の間に異なる照射位置で反射信号を検出するサブステップa2に対応する。
【0057】
基板1の表面5上に存在するダイ3のビームによる走査は、点線の矢印によって具体化された経路に沿って実行される。したがって、走査経路は、ダイ3の第1の領域41、ダイ3の第2の領域42、およびダイ3の第3の43および第4の領域44を連続して通過する。走査は、単一のダイ3上で均一であり、すべてのパルスは同じ長さと強度を有している。
【0058】
収集システム352は、各照射位置で反射信号を収集する。反射信号の決定は、いくつかの連続する照射位置、例えば2から10個の連続する照射位置の平均値として代替的に実行される。パルス表現に見られるように、ダイ3の各領域41、42、43、および44での反射信号は、ある領域から別の領域へと強度の点で異なる。反射信号は、ダイ3の各領域41、42、43、および44に対して均一である。走査されたダイに対応する2D反射マップ45が得られ、異なる領域421、422、423および424は、それぞれダイ3の領域41、42、43、44に対応する。
【0059】
図5を参照すると、左側の部分は、ステップa1の実施を表しており、ダイ3のすべての領域41、42、43、および44に均一に照射され、2D反射マップ45を決定するための収集システム352により不均一な反射信号が収集される。右の部分は、ステップcの実施を表しており、2D反射率マップ45から決定された不均一な照射プロファイルでダイ3を照射している。収集システム352によって収集された反射信号は均一であり、ダイ3の各領域41、42、43または44の光学的および熱的特性が何であれ、ダイ3に提供されるエネルギに関して表面照射が均一であることを保証する。
【0060】
図6を参照すると、ダイフラグメンテーションを使用したステップcの実装が示されている。二重線で囲まれたダイ3の各領域は、均一な条件で照射される。左側のパネルはいくつかのダイを示しており、中央のダイ3は均一な照射条件で走査され、制御ユニット39に入力される2D反射率マップ45の決定を提供する。次に制御ユニット39は不均一な照射プロファイルを決定し-ステップb-、これは次のダイを照射するために使用され、中央パネルに表示される。不均一な照射プロファイルは、ダイの4つの異なる領域に対応する、二重線で囲まれた4つの異なる領域によって中央パネルに具体化される。右のパネルは、均一な照射条件で照射されるダイの1つの領域の詳細を示している。ダイフラグメンテーションは、好ましくは、検出された反射信号と目標値との比較に応じて、各ダイの照射後の照射設定値の再計算を含む。照射に対する反応が異なるダイの領域によって、照射設定値が異なる。照射に対する応答は各領域で均一であり、照射設定値は各領域で一定である。
【0061】
代替的に、またはダイの断片化に加えて、ステップcは、超高速制御ループ、フレーム間制御ループ、および/またはダイ間制御ループによって実施される。
【0062】
超高速制御ループの実装は、検出された反射信号と目標値の比較に応じて、照射設定値を継続的に再計算することで構成される。≪連続再計算≫は、各レーザパルス後または所定の数のレーザパルス後の照射設定値の再計算に対応する。いくつかのレーザパルスの所定の数は、2から数百の範囲である。
【0063】
ダイツーダイ制御ループの実装は、検出された反射信号と目標値の比較に応じて、各ダイ3の照射後に照射設定値を再計算することを含む。照射設定値は各ダイ内で一定である。すべてのダイ3は、同等の反射率マップ45を有するべきである。それにもかかわらず、リソグラフィの変動性または堆積の変動性は、ダイの所与のサブ領域において、または平均して、ダイからダイへの不均一性を引き起こす。したがって、ダイツーダイ制御ループは、リソグラフィの変動性または堆積の変動性がないか、またはほとんどない状態で得られた処理基板1に特に有用である。
【0064】
第1のダイ3の照射後に決定された反射率マップ45は、制御ユニット39に提供され、制御ユニット39は、次のダイを照射するために使用される不均一な照射プロファイルを決定する。この反復は、2D反射率マップ45において変動がなくなるか、または低レベルの変動が得られるまで繰り返される。この段階に達すると、不均一な照射プロファイルの再計算は、さらなるダイの照射に必要なくなる。
【0065】
図7を参照すると、本発明によるプロセスはまた、基板欠陥、粒子またはパターン欠陥、またはシステムの誤動作または劣化などの他の変動性の原因を検出することを可能にする。全領域に同じ光学的および熱的特性を示すダイ73の均一な照射は、均一な2D反射率マップ75を提供する。逆に、変動源72は、光学的および/または熱的特性の変化を引き起こし、変動源72を含むダイ71の均一な照射は、不均一性76を含む不均一な2D反射率マップ74を提供する。本発明のプロセスのステップc)のさらなる実施は、変動源72が存在するにもかかわらず、ダイ71に提供されるエネルギに関して、ダイ71全体の均一な照射を引き起こす。
【0066】
変動性の他の原因の検出は、もちろん、変動性の少なくとも1つの原因に加えて不均一な光学的および/または熱的特性を提示するダイ内で同様に実行され得る。
【0067】
したがって、本発明によるプロセスは、ステップa)の後に、基板の欠陥、粒子またはパターンの欠陥、またはシステムの誤動作または劣化から成る群から選択された変動の原因にとって引き起こされる少なくとも1つの不均一性の存在および/または性質を識別するために、ステップa)で決定された反射率マップの分析の追加のステップを含む。
【0068】
前記分析ステップは、場合によっては、例えば、識別された欠陥にもかかわらずプロセスを実行し、プロセスの実施を停止し、および/または例えば警報信号を介して識別された不均一性の存在を警告するなどの適切なアクションを引き起こす。
【外国語明細書】