(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061485
(43)【公開日】2022-04-18
(54)【発明の名称】ノズルプレート、流体吐出ヘッド及び流体吐出ヘッドを作製するための方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20220411BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20220411BHJP
G03F 7/075 20060101ALI20220411BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20220411BHJP
【FI】
G03F7/20 501
G03F7/004 512
G03F7/004 501
G03F7/004 503Z
G03F7/075 501
G01N1/00 101K
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021157062
(22)【出願日】2021-09-27
(31)【優先権主張番号】17/063,942
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000201113
【氏名又は名称】船井電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100148460
【弁理士】
【氏名又は名称】小俣 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100168125
【弁理士】
【氏名又は名称】三藤 誠司
(72)【発明者】
【氏名】ウィーバー・ショーン ティー.
【テーマコード(参考)】
2G052
2H197
2H225
【Fターム(参考)】
2G052CA18
2G052CA22
2G052CA30
2G052CA32
2G052FA10
2G052GA29
2G052JA09
2G052JA11
2G052JA16
2H197CA03
2H197CA09
2H197CE01
2H197HA10
2H225AE06P
2H225AF15P
2H225AF23P
2H225AF78P
2H225AM66P
2H225AM70P
2H225AN41P
2H225AN42P
2H225AN47P
2H225BA01P
2H225BA05P
2H225CA30
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC12
2H225CD05
(57)【要約】
【課題】流体吐出装置のための流体吐出ヘッドのノズルプレート、ノズルプレートを含む流体吐出ヘッド、及びノズルプレートを含む流体吐出ヘッドを作製するための方法。
【解決手段】ノズルプレートは、ノズル孔の2以上の列と、ノズル孔の隣接する列の間のノズルプレートの露出面上に設けられたバリア構造とを含み、バリア構造は、ノズル孔の隣接する列の間の流体の相互汚染を阻止する。
【選択図】
図17
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体吐出装置のための流体吐出ヘッドのノズルプレートであって、
ノズル孔の2以上の列と、
前記ノズル孔の隣接する前記列の間の前記ノズルプレートの露出面上に設けられたバリア構造と
を含み、
前記バリア構造が前記ノズル孔の隣接する前記列の間の流体の相互汚染を阻止する、
ノズルプレート。
【請求項2】
フォトイメージアブル層を含む、
請求項1に記載のノズルプレート。
【請求項3】
前記バリア構造が、前記ノズルプレートへ積層された前記フォトイメージアブル層に画像形成された単一の壁を含む、
請求項2に記載のノズルプレート。
【請求項4】
前記バリア構造が、前記ノズルプレートに積層された前記フォトイメージアブル層に画像形成された複数の壁を含む、
請求項2に記載のノズルプレート。
【請求項5】
前記バリア構造が、前記ノズルプレートに直交する25~100ミクロンの範囲の高さを有する、
請求項1に記載のノズルプレート。
【請求項6】
前記バリア構造が、前記ノズルプレートの前記露出面に積層されたドライフィルムフォトレジスト層を含む、
請求項1に記載のノズルプレート。
【請求項7】
前記ドライフィルムフォトレジスト層が、ネガ型フォトイメージアブル材料層を含む、
請求項6に記載のノズルプレート。
【請求項8】
請求項1に記載の前記ノズルプレートを含む、
流体吐出装置のための流体吐出ヘッド。
【請求項9】
流体吐出装置のための流体吐出ヘッドを作製するための方法であって、
第1のネガ型フォトレジスト層を半導体基板のデバイス面に塗布することであって、前記第1のネガ型フォトレジスト層が、多官能エポキシ化合物と、第1の二官能エポキシ化合物と、光酸発生剤と、接着増強剤と、アリールケトン溶媒とを含む第1のフォトレジスト製剤に由来することと、
前記第1のネガ型フォトレジスト層に複数のフロー特徴を画像形成することと、
前記複数のフロー特徴及び実質的に平面な厚膜層面を提供するため、画像形成された前記第1のネガ型フォトレジスト層を現像することと、
第2のネガ型フォトレジスト層を前記厚膜層面に塗布することであって、前記第2のネガ型フォトレジスト層が、10~30ミクロンの範囲の厚さを有し、第2の二官能エポキシ化合物と、比較的高分子量のポリヒドロキシエーテルと、前記光酸発生剤と、前記接着増強剤と、脂肪族ケトン溶媒とを含む、第2のフォトレジスト製剤に由来することと、
前記第2のネガ型フォトレジスト層にノズル孔の少なくとも2つの列を提供するため、前記第2のネガ型フォトレジスト層に複数の前記ノズル孔を画像形成することと、
前記厚膜層面上にフォトレジストノズルプレートを提供するため、画像形成された前記第2のネガ型フォトレジスト層を現像することと、
前記ノズルプレートの露出面に第3のネガ型フォトレジスト層を塗布することと、
前記ノズル孔の隣接する前記列の間の流体の相互汚染を阻止する、前記ノズル孔の隣接する前記列の間のバリア構造を提供するため、前記第3のネガ型フォトレジスト層を画像形成し現像することと
を含む、方法。
【請求項10】
前記バリア構造が、前記第3のネガ型フォトレジスト層に画像形成された複数の壁を含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記バリア構造が、前記ノズルプレートに直交する25~100ミクロンの範囲の高さを有する、
請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記ノズルプレートと前記第3のネガ型フォトレジスト層との間の接着を向上させるため、前記第3のネガ型フォトレジスト層を前記ノズルプレートの前記露出面へ積層する前に、前記ノズルプレートを酸素プラズマ表面処理及び/又はアルコキシシラン化合物で表面処理することを更に含む、
請求項9に記載の方法。
【請求項13】
流体吐出装置のための流体吐出ヘッドであって、
ノズル孔の2以上の列を有するノズルプレートと、
前記ノズル孔の隣接する前記列の間の前記ノズルプレートの露出面上に設けられたバリア構造と
を含み、
前記バリア構造が前記ノズル孔の隣接する前記列の間の流体の相互汚染を阻止する、
流体吐出ヘッド。
【請求項14】
前記ノズルプレートが第1のフォトイメージアブル層を含む、
請求項13に記載の流体吐出ヘッド。
【請求項15】
前記バリア構造が、前記第1のフォトイメージアブル層に積層された第2のフォトイメージアブル層に画像形成された単一の壁を含む、
請求項14に記載の流体吐出ヘッド。
【請求項16】
前記バリア構造が、前記第1のフォトイメージアブル層に積層された第2のフォトイメージアブル層に画像形成された複数の壁を含む、
請求項14に記載の流体吐出ヘッド。
【請求項17】
前記バリア構造が、前記ノズルプレートに直交する25~100ミクロンの範囲の高さを有する、
請求項13に記載の流体吐出ヘッド。
【請求項18】
前記バリア構造が、前記ノズルプレートの前記露出面に積層されたドライフィルムフォトレジスト層を含む、
請求項13に記載の流体吐出ヘッド。
【請求項19】
前記バリア構造が、前記ドライフィルムフォトレジスト層がネガ型フォトイメージアブル材料層を含む、
請求項18に記載の流体吐出ヘッド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体吐出装置から吐出される流体の相互汚染を低減するための、流体吐出装置のための改善されたフォトイメージアブルノズル部材、及び方法、及び構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特に医療分野において、分析のための自動化された試料調製の必要性がある。分析は、比色分析、又は顕微鏡下で試料をより好ましく観察するため試料の着色を要する可能性がある。そのような分析は、薬剤試料分析、血液試料分析等を含む。例えば、血液の分析において、血液は個人の健康を判定するために用いられるいくつかの異なる要因を提供するため分析される。血液試料分析を要する多くの患者がいる場合、分析のため試料を調製する手順は非常に時間がかかるものとなる。また、結果が信頼できるものであるよう、試料の正確な調製の必要がある。複数の試料の微量滴定といった、正確で再現可能な結果を提供する分析機器の使用の恩恵を受けることのできる医療分野やその他の分野において、試料調製を要するその他の多くの状況がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
多くの実験と検査手順にてマイクロウェルプレート、スライド、及び他の基板が使用される。ウェルを充填又はスポッティングする処理は、手作業又は高価な検査機器を用いて行われることが多い。マイクロウェルプレート中のウェルを迅速かつ正確に充填するため、及びスライドを準備するため、比較的安価な流体吐出装置が開発されている。該装置は、試料の分析を実行するためマイクロウェルプレートのウェル又はスライドに分注される1以上の流体を含み得る吐出ヘッドを含む。複数の流体を分注する流体吐出ヘッドの使用に関連付く1つの課題は、吐出ヘッドの表面上の流体の相互汚染の可能性であり、汚染された流体のマイクロウェルプレートのウェル内又はスライド上への吐出につながる。流体の相互汚染は、特定の試験を無効とさせたり、偽陽性及び/又は偽陰性を生む可能性がある。従って、流体吐出ヘッドから吐出される流体の相互汚染を低減又は排除する流体吐出装置のための流体吐出ヘッドが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記を鑑み、本発明の1つの実施形態は、流体吐出装置の流体吐出ヘッドのノズルプレートを提供する。該ノズルプレートは、ノズル孔の2以上の列と、ノズル孔の隣接する列の間のノズルプレートの露出面上に設けられたバリア構造とを含み、該バリア構造はノズル孔の隣接する列の間の流体の相互汚染を阻止する。
【0005】
本発明のもう1つの実施形態は、流体吐出装置のための流体吐出ヘッドを作製するための方法を提供する。該方法は、半導体基板のデバイス面に第1のネガ型フォトレジスト層を塗布することを含み、第1のネガ型フォトレジスト層は、多官能性エポキシ化合物と、第1の二官能性エポキシ化合物と、アリールスルホニウム塩を含まない光酸発生剤と、接着増強剤と、アリールケトン溶媒とを含む第1のフォトレジスト製剤に由来する。複数のフロー特徴が第1のネガ型フォトレジスト層に画像形成され、画像形成された第1のネガ型フォトレジスト層は、複数のフロー特徴及び実質的に平面な厚膜層面を提供するため現像される。第2のネガ型フォトレジスト層が該厚膜層面に塗布される。第2のネガ型フォトレジスト層は、10~30ミクロンの範囲の厚さを有し、第2の二官能エポキシ化合物と、比較的高分子量のポリヒドロキシエーテルと、アリールスルホニウム塩を含まない光酸発生剤と、接着増強剤と、脂肪族ケトン溶媒とを含む、第2のフォトレジスト製剤に由来する。第2のネガ型フォトレジスト層にノズル孔の少なくとも2つの列を提供するため、複数のノズル孔が第2のネガ型フォトレジスト層に画像形成される。厚膜層面上にフォトレジストノズルプレートを提供するため、画像形成された第2のネガ型フォトレジスト層が現像される。第3のネガ型フォトレジスト層がノズルプレートの露出面に塗布される。第3のネガ型フォトレジスト層は、ノズル孔の隣接する列の間のバリア構造を提供するため画像形成及び現像され、該バリア構造によりノズル孔の隣接する列の間の流体の相互汚染が阻止される。
【0006】
本発明のもう1つの実施形態は、流体吐出装置のための流体吐出ヘッドを提供する。該流体吐出ヘッドは、ノズル孔の2以上の列を有するノズルプレートと、ノズル孔の隣接する列の間のノズルプレートの露出面上に設けられたバリア構造とを含む。バリア構造は、ノズル孔の隣接する列の間の流体の相互汚染を阻止する。
【0007】
いくつかの実施形態において、ノズルプレートはフォトイメージアブル層からなる。
【0008】
いくつかの実施形態において、各バリア構造は、ノズルプレートに積層されたフォトイメージアブル層に画像形成された単一の壁である。
【0009】
いくつかの実施形態において、各バリア構造は、ノズルプレートに積層されたフォトイメージアブル層に画像形成された複数の壁からなる。
【0010】
いくつかの実施形態において、バリア構造は、ノズルプレートに直交する25~100ミクロンの範囲の高さを有する。
【0011】
いくつかの実施形態において、バリア構造は、ノズルプレートの露出面に積層されたドライフィルムフォトレジスト層である。いくつかの実施形態において、ドライフィルムフォトレジスト層はネガ型フォトイメージアブル材料層である。
【0012】
いくつかの実施形態において、ノズルプレートの露出面は、ノズルプレートと該ノズルプレートに積層されるネガ型フォトレジスト層との間の接着を向上させるため、ノズルプレートの露出面にネガ型フォトレジスト層が積層される前に、酸素プラズマ表面処理及び/又はアルコキシシラン化合物で処理される。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明による流体吐出装置の、縮尺通りではない、概略図である。
【
図2】
図2は、
図1の流体吐出装置で用いられるトレイ内のマイクロウェルプレートの、縮尺通りではない、概略図である。
【
図3】
図3は、3つの流体供給ビアを含む先行技術の流体吐出ヘッドの、縮尺通りではない、平面概略図である。
【
図4】
図4は、
図3の先行技術の流体吐出ヘッドの一部の、縮尺通りではない、断面図である。
【
図5】
図5は、3つの流体供給ビアと、吐出ヘッドの外面に設けられたバリア壁とを含む流体吐出ヘッドの、縮尺通りではない、平面概略図である。
【
図6】
図6は、3つの流体供給ビアと、吐出ヘッドの外面に設けられたバリア壁とを含む流体吐出ヘッドの、縮尺通りではない、平面概略図である。
【
図7】
図7は、3つの流体供給ビアと、吐出ヘッドの外面に設けられた複数セクションのバリア壁とを含む流体吐出ヘッドの、縮尺通りではない、平面概略図である。
【
図8】
図8は、4つの流体供給ビアと、吐出ヘッドの外面に設けられたバリア壁とを含む流体吐出ヘッドの、縮尺通りではない、平面概略図である。
【
図9】
図9は、4つの流体供給ビアと、吐出ヘッドの外面に設けられたバリア壁とを含む流体吐出ヘッドの、縮尺通りではない、平面概略図である。
【
図11】
図11は、ノズル孔の列の間のバリア壁を示す吐出ヘッドのノズルプレートの一部の、縮尺通りではない、平面図である。
【
図12】
図12は、本発明の実施形態による吐出ヘッドを作製するためのステップを表す、縮尺通りではない、断面図である。
【
図13】
図13は、本発明の実施形態による吐出ヘッドを作製するためのステップを表す、縮尺通りではない、断面図である。
【
図14】
図14は、本発明の実施形態による吐出ヘッドを作製するためのステップを表す、縮尺通りではない、断面図である。
【
図15】
図15は、本発明の実施形態による吐出ヘッドを作製するためのステップを表す、縮尺通りではない、断面図である。
【
図16】
図16は、本発明の実施形態による吐出ヘッドを作製するためのステップを表す、縮尺通りではない、断面図である。
【
図17】
図17は、本発明の実施形態による吐出ヘッドを作製するためのステップを表す、縮尺通りではない、断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、流体吐出装置の流体吐出ヘッドための改善されたノズルプレートに関する。流体吐出ヘッドは、プリンタや、マイクロウェルプレート14のウェル12内(
図2)又はガラススライド上に1以上の流体を分注するための流体吐出装置10(
図1)を含むがこれに限定されない、多様な流体吐出装置に用いられることができる。マイクロウェルプレート14は、典型的に、流体吐出装置10を起動するため電源ボタン20が押されたとき、トレイ移送装置18により流体吐出装置10中を並進されるトレイ16内に保持される。流体吐出装置10は、マイクロウェルプレート14が流体吐出装置10中を移動するにつれウェル12内に1以上の流体を堆積するよう構成される。
【0015】
先行技術の流体吐出ヘッド30を
図3にてやや概略的に平面図にて表し、先行技術の流体吐出ヘッド30の一部を
図4にて断面図にて表す。流体吐出ヘッド30は3つの流体供給ビア32a、32b、32cを含み、これらは各流体供給ビア32aと32b(
図4)の対向する側に設けられた流体吐出器34の列に異なる流体を供給するためのものである。各流体吐出器34は、対応するノズル孔38の下方の流体チャンバ36内に設けられる。流体吐出器34が起動されると、流体がノズル孔38を通し分注される。上述したように、流体吐出ヘッドが複数の流体供給ビアを伴い構成されるとき、ノズル孔38の列の間の吐出ヘッド30の表面40に渡り流体汚染が起こりやすい。
【0016】
3つの流体供給ビア32a、32b、32cといった2以上の流体供給ビアを有する流体吐出ヘッドの表面に渡る流体の相互汚染を防ぐため、流体吐出器の列と、対応するノズル孔との間のノズルプレートの表面上に、バリア壁52aと52b(
図5)を設けることができる。
図6は、各流体供給ビア32a~32cに対応するノズル孔の列を囲むバリア壁54a~54fを伴う3つの流体供給ビア32a~32cを含む吐出ヘッド50を表す。バリア壁54a~54fが
図6に示されるように用いられるとき、流体がノズルプレートからあふれ、吐出ヘッド上の電気接点パッドに接触する可能性は低い。流体吐出装置において用いられる流体によっては接点パッドの腐蝕を起こす可能性があり、これにより吐出ヘッドの機能に影響を及ぼす。
【0017】
上記実施形態が流体吐出ヘッド上のノズル孔の列の間の単一のバリア壁を提供するのに対し、バリア壁は
図7に表されるように複数のバリア壁56a~56bにより提供されてもよいことを理解されたい。複数のバリア壁56a~56bは、流体がノズルプレートを通過する表面積と長さを増加させ、これによりノズル孔の隣接する列の間のノズルプレートの表面上の流体の相互汚染の可能性を更に減少させる。
【0018】
流体吐出ヘッド58が
図8と9に表されるように4つの流体供給ビア60a~60dを含むとき、バリア壁62a~62d(
図8)又はバリア壁62a~62bがノズルプレートの表面上の異なる流体の混合及び/又は相互汚染を防ぐために用いられてよい。
図6のように、
図8の流体吐出ヘッド58は、流体がノズルプレートの表面にあふれ、吐出ヘッド58の電子接点パッドに接触する可能性を減少させるバリア壁62cと62dとを含む。
【0019】
バリア壁の構成に関わらず、各バリア壁は、約25ミクロン~約100ミクロンの範囲の高さ(H)を有してよい(
図10)。
図11は、ノズルプレートの表面40上のノズル孔列68a~68bの間に設けられたバリア壁66を含む吐出ヘッド64の一部を表す。
【0020】
図12~17を参照し、本発明の実施形態による改善された吐出ヘッドを作製するための方法が表される。処理の第1ステップとして、流体吐出装置110を含む半導体基板100が提供される。基板100の表面114へ第1のフォトレジスト材料層112をスピンコートする又は積層するといった従来の方法により、第1のフォトレジスト材料層112が基板100の表面114に塗布される。
【0021】
第1のフォトレジスト材料層112は、第1の二官能性エポキシ化合物、光酸発生剤、非反応性溶媒、そして任意的に接着増強剤に由来する。いくつかの実施形態において、第1のフォトレジスト材料層112は、多官能エポキシ化合物、二官能エポキシ化合物、光酸発生剤、非反応性溶媒、そして任意的に接着増強剤を含む。
【0022】
本発明の実施形態によると、第1のフォトレジスト材料層112を作製するために用いられるフォトレジスト製剤において、二官能エポキシ化合物は、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(例えば、テキサス州ヒューストンのシェルケミカル社から「EPON1007F」、「EPON1007」及び「EPON1009F」の商品名において入手可能なもの、ミシガン州ミッドランドのダウ・ケミカル社から入力可能な「DER-331」、「DER-332」及び「DDR-334」)、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、コネチカット州ダンベリーのユニオンカーバイド社から入力可能な「ERL-4221」)、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル―3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキサンカルボキシレート(例えば、ユニオンカーバイド社から入手可能な「ERL-4201」)、ビス(3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル)アジペート(例えば、ユニオンカーバイド社から入力可能な「ERL-4289」)、及びビス(2,3-エポキシシクロペンチル)エーテル(例えば、ユニオンカーバイド社から入力可能な「ERL-0400」)を含む、二官能エポキシ化合物から選択されてよい。
【0023】
特に適する二官能エポキシ化合物は、約1000より大きいエポキシ当量を有する、商品名EPON resin 1007Fにてテキサス州ヒューストンのシェルケミカル社より入手可能なビスフェノール-A/エピクロロヒドリンエポキシ樹脂である。「エポキシ当量」は、1グラム相当のエポキシドを含む樹脂のグラム数である。二官能性エポキシ成分の重量平均分子量は、通常、例えばダルトンで約2800~約3500重量平均分子量といった、2500よりも上である。フォトレジスト製剤中の二官能エポキシ成分の量は、硬化した樹脂の重量に基づき約30~約95重量%の範囲であってよい。
【0024】
本発明の実施形態によるフォトレジスト製剤は、光酸発生剤も含む。光酸発生剤は、VA族元素のオニウム塩、VIA族元素のオニウム塩、及び芳香族ハロニウム塩から選択されることのできる芳香族錯体塩といった、カチオンを生成することのできる化合物又は化合物の混合物から選択されてよい。芳香族錯塩は、紫外線又は電子ビーム照射にさらされると、エポキシドとの反応を開始する酸部分を生成することができる。光酸発生剤は、硬化した樹脂の重量に基づき約0.5~約15重量%の範囲の量でフォトレジスト製剤中に存在してよい。
【0025】
本発明の1つの実施形態による製剤において用いることのできるトリアリール置換スルホニウム錯体塩光開始剤の例は、次を含むがこれに限定されない:
トリフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート
トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート
トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート
トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート
アニシルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート
4-ブトキシフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート
4-クロロフェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート
4-アセトキシ-フェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート
4-アセトアミドフェニルジフェニルスルホニウムテトラフルオロボラート
【0026】
フォトレジスト製剤において用いるのに適するトリアリール置換スルホニウム錯体塩の、最も好ましい塩は、ユニオンカーバイド社からCYRACURE UVI-6974の商品名で市販されているトリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩の混合物である。
【0027】
本発明のもう1つの実施形態において、第1のフォトレジスト製剤は、多官能エポキシ成分をも含む。本発明の第2の実施形態によるフォトレジスト製剤の作製に適した多官能エポキシ成分は、ポリフェノールのグリシジルエーテルといった芳香族エポキシドから選択されてよい。特に好ましい多官能エポキシ樹脂は、テキサス州ヒューストンのResolution Performance ProductsからEPON RESIN SU-8の商品名で入手可能な、約190~約250の範囲のエポキシドグラム当量を有し、130℃での粘度が約10~約60ポアズの範囲のノボラックエポキシ樹脂といった、フェノールホルムアルデヒドノボラック樹脂のポリグリシジルエーテルである。
【0028】
本発明による第1のフォトレジスト製剤の多官能エポキシ成分は、ゲル浸透クロマトグラフィーで測定して約3,000~約5,000の重量平均分子量、及び3を超え、好ましくは約6~約10である、平均エポキシド基官能を有する。フォトレジスト製剤中の多機能エポキシ樹脂の量は、硬化した厚膜層80の重量に基づき約30~約50重量%の範囲であることが好ましい。
【0029】
上記実施形態におけるように、第1のフォトレジスト製剤は、光酸発生剤をも含む。光酸発生剤は、VA族元素のオニウム塩、硫黄以外のVIA族元素のオニウム塩、及び芳香族ハロニウム塩から選択されることのできる芳香族錯体塩といった、カチオンを生成することのできる化合物または化合物の混合物から選択されてよい。本発明による例示的なフォトレジスト製剤での使用に適した芳香族錯体塩のうち、適する塩は、アリールスルホニウム塩を実質的に欠くジ-及びトリアリール置換ヨードニウム塩である。光酸発生剤が生成するアリール置換ヨードニウム錯体塩の例は次を含むがこれに限定されない:
ジフェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、
(p-tert-ブトキシフェニル)フェニルヨードニウムトリフルオロメタンスルホネート、
ジフェニルヨードニウムp-トルエンスルホネート、
(p-tert-ブトキシフェニル)-フェニルヨードニウムp-トルエンスルホネート、
ビス(4-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、及び
ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート。
【0030】
ここで説明される第2の実施形態の製剤のための光酸発生剤として用いるのに最も好ましいヨードニウム塩は、ペンシルベニア州エクストンのSartomer Company、Inc.からSARCAT CD 1012の商品名で市販されているジアリールヨードニウムヘキサフルオロアンチモネート塩の混合物である。
【0031】
ここで説明される第1のフォトレジスト製剤は、シラン化合物といった接着増強剤の有効量を任意的に含んでよい。フォトレジスト製剤の成分と適合性のあるシラン化合物は、典型的に、多官能エポキシ化合物、二官能性エポキシ化合物、及び光開始剤からなる群から選択された少なくとも1つと反応が可能な官能基を有する。そのような接着増強剤は、例えばγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランといった、グリシドキシアルキルトリアルコキシシランといったエポキシド官能基を有するシランであってよい。使用されるとき、接着増強剤は、硬化した樹脂の総重量に基づき、約0.5~約5重量%の範囲の量で存在することが好ましく、約0.9~約4.5重量%であることがより好ましく、そこに含まれる全ての範囲を含む。ここで使用される接着増強剤は、基板100の表面114上の第1のフォトレジスト材料層112のフィルム形成及び接着特性を補助するフォトレジスト組成物に可溶な有機材料を意味するよう定義される。
【0032】
基板100の表面114上の第1のフォトレジスト材料層112(
図12)を提供するため、適切な溶媒が用いられる。適切な溶媒は、非光反応性であることが好ましい溶媒である。非光反応性溶媒は、γ-ブチロラクトン、炭素数1~6のアセテート、テトラヒドロフラン、低分子量ケトン、それらの混合物等を含むがこれに限定されない。特に好ましい非光反応性溶媒は、アセトフェノンである。非光反応性溶媒は、フォトレジスト製剤の総重量に基づき約20~約90重量%の範囲の量で第1のフォトレジスト材料層112を提供するために用いられる製剤混合物に存在し、約40~約60重量%であることが好ましい。非光反応性溶媒は硬化した層112中に残留しないことが好ましく、このため層112の硬化ステップの前又は間に取り除かれる。
【0033】
好ましい手順によると、非光反応性溶媒と二官能エポキシ化合物とがアンバーボトルやフラスコといった適切な容器で混合され、この混合物が成分の適切な混合を確実にするため約60℃で一晩ローラーミルに入れられる。溶媒と二官能エポキシ化合物とが混合された後、使用される場合、多官能エポキシ化合物が容器に加えられ、得られた混合物が約60℃で2時間ローラーミルで回される。他の成分、光酸発生剤及び接着増強剤も一度に1つずつ容器に加えられ、ウェハ被覆用混合物を提供するため、全ての成分が容器に加えられた後、容器は約60℃で2時間回される。
【0034】
ここで説明されるフォトレジスト製剤及び得られる第1のフォトレジスト材料層112は、アクリレート又はタクリレートポリマー及びニトリル基を実質的に含まない。理論に拘束されることを望むことなく、高分子量の二官能性エポキシ材料は、アクリル又はメタクリレートポリマー及びニトリルゴム成分を実質的に含まない光硬化性製剤の使用を可能にするのに十分な熱可塑性特性を層112に寄与すると考えられる。加えて、実質的にアクリレート又はメタクリレートポリマーを含まないフォトレジスト製剤は、アクリレート又はメタクリレートポリマーを含む同様のフォトレジスト製剤と比較し、向上した貯蔵寿命を有し得る。
【0035】
上述したフォトレジスト製剤を基板100の表面114(
図2)へ塗布するため、レジストスピナー又は従来のウェハレジスト堆積軌道のいずれかの適切なサイズのチャック上にシリコン基板ウェハ100が中心に置かれる。第1のフォトレジスト製剤混合物は、手動又は機械的にウェハの中心に分注される。ウェハを保持するチャックは、次いで混合物をウェハの中心からウェハの縁部へ均等に広げるため、所定の毎分回転数で回転される。層112の得られる厚さを変化させるため、ウェハの回転速度が調節されてよく、又は被覆用混合物の粘度が変更されてよい。2500rpm以上の回転速度が用いられてよい。基板100の表面114に塗布されるフォトレジスト製剤の量は、そこに画像形成されるフロー特徴のための所望の厚さを有する層112を提供するのに十分であるべきである。従って、硬化した層112の厚さは、約10~約25ミクロン以上の範囲であってよい。
【0036】
層112を含む得られたシリコン基板ウェハが手動又は機械的にチャックから取り外され、材料が「ソフト」ベークされるまで約30秒~約1分間、約90℃の温度に温度調整されたホットプレート又は温度調整されたオーブンのいずれかに置かれる。このステップは、層112から溶媒の少なくとも一部を取り除き、基板100の表面114上の部分的に乾燥した膜が得られる。ウェハは熱源から取り外され、室温へ冷まされる。
【0037】
層112に画像形成及び現像する前に、エッチング処理等により、流体供給ビア32aが基板100に形成される。例示的なエッチング処理は、深掘り反応性イオンエッチング又は誘導結合プラズマエッチングといったドライエッチング処理である。エッチング処理の間、層112はエッチング停止層としての役割を果たす。
【0038】
流体チャンバ116及び流体供給チャネル118といった第1のフォトレジスト材料層112中のフロー特徴を定義するため、層112は、実質的に透明な領域122と実質的に非透明な領域124とを含むマスク120でマスクされる。マスク120の非透明な領域124によりマスクされた層112の領域は、上述したフロー特徴を提供するため、現像において取り除かれる。
【0039】
図12において、放射源は、層112に画像形成するため矢印126によって示される活性光線を提供する。適切な放射源は、紫外線及び可視スペクトル領域内の波長で活性光線を放射する。層112の露出は、製剤において用いられる特定のエポキシ材料及び芳香族錯塩の量によって、そして放射源、放射源からの距離、及び層112の厚さによって、約1秒未満~約10分以上であってよく、約5秒~約1分が好ましい。層112は、任意的に紫外線放射ではなく電子ビーム照射に露出されてよい。
【0040】
上記手順は標準的な半導体リソグラフィ処理に類似する。マスク120は、層112(即ち、ネガ型フォトレジスト層)から取り除くべき領域を定義する非透明な領域124を有する、通常、ガラス又は石英の、透明で平坦な基板である。非透明な領域124は、その下にマスクされた層112を紫外線光が架橋することを防ぐ。マスク120の実質的に透明な領域122により提供される層112の露出領域は、層112の硬化を完成させるため、続いて約30秒~約10分、好ましくは約1~約5分、約90℃の温度でベークされる。
【0041】
層112の非画像形成領域は、次いで現像剤によって可溶化され、可溶化された材料が除去され、
図13に示されるように、基板100の表面114上の画像形成され現像された層112が残る。現像剤は、タンクのような構成での浸漬及び攪拌のいずれかにより、又は基板100及び層112上に現像剤を噴霧することにより、基板100及び層112と接触する。噴霧又は浸漬のいずれかにより、画像形成されていない材料が適切に除去される。例示的な現像剤には、例えば、ブチルセロソルブアセテート、キシレン、及びブチルセロソルブアセテート混合物、及びブチルアセテートのような炭素数1~6のアセテートが含まれる。
【0042】
第1のフォトレジスト材料層112を作製するための例示的な製剤を次の表に表す:
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
図14を参照し、第1のフォトレジスト材料層112の画像形成と現像に続き、第2のフォトレジスト材料層130が第1の層112に積層される。第2のフォトレジスト材料層130は、二官能性エポキシ化合物、比較的高分子量のポリヒドロキシエーテル、上述した光酸発生剤、及び任意的に上述した接着増強剤に由来するドライフィルムフォトレジスト材料により提供される。
【0047】
第2のフォトレジスト材料層130を提供するために用いられる二官能エポキシ化合物は、例えば、ダルトンで約2800~約3500重量平均分子量といった、典型的に2500ダルトンを超える重量平均分子量を有する上述した第1の二官能エポキシ化合物を含む。
【0048】
積層目的のため第2のフォトレジスト材料層130の柔軟性を向上させるため、第2の二官能エポキシ化合物が第2の層130のための製剤に含まれてよい。第2の二官能エポキシ化合物は、典型的に、第1の二官能エポキシ化合物の重量平均分子量よりも低い重量平均分子量を有する。具体的には、第2の二官能エポキシ化合物の重量平均分子量は、約250~約400ダルトンの範囲である。第1の二官能エポキシ化合物と第2の二官能エポキシ化合物の実質的に等しい質量部が、第2のフォトレジスト層130を作製するために用いられる。適切な二官能エポキシ化合物は、日本のDICエポキシ社からDIC850-CRPの商品名で、テキサス州ヒューストンのシェルケミカル社からEPON 828の商品名で入手可能な、ビスフェノール-Aのジグリシジルエーテルから選択されてよい。第2のフォトレジスト材料層130中の二官能エポキシ化合物の総量は、硬化した層130の総重量に基づき約40~約60重量%の範囲である。層130中の二官能エポキシ化合物の総量において、総量の約半分が第1の二官能エポキシ化合物であり、総量の約半分が第2の二官能エポキシ化合物である。
【0049】
第2のフォトレジスト材料層130のもう1つの成分、次の式の末端α-グリコール基を有する比較的高分子量のポリヒドロキシエーテル化合物であり、nは約35~約100の整数である:
[OC6H4C(CH3)2C6H4OCH2CH(OH)CH2]n
【0050】
このような化合物は、エポキシ樹脂と同一の原材料から製造されるが、化合物中にエポキシ基を含まない。このような化合物はフェノキシ樹脂と称されることが多い。適切な比較的高分子量のフェノキシ樹脂には、サウスカロライナ州ロックヒルのInChem社からPKHP-200及びPKHJの商品名で入手可能なフェノキシ樹脂を含むが、これに限定されない。そのようなフェノキシ化合物は、約99重量%の固形分、約450~約800センチポイズの25℃でのブルックフィールド粘度、約50,000~約60,000の範囲のダルトンでの重量平均分子量、約1.18の25℃で溶融する特定の比重、そして約90℃~約95℃のガラス転移温度を有する。
【0051】
フェノキシ樹脂は第2のフォトレジスト層130を作製するのに特に有用であり、理由の一部は、結晶化又は応力集中を蓄積しないことが多いためである。フェノキシ樹脂は、約38℃を超える温度を含む広い温度範囲で安定性を可能にする高温特性を有する。第2のフォトレジスト材料層130は、硬化した第2の層130の重量に基づき約25~約35重量%のフェノキシ樹脂を含む。
【0052】
第1の層112のためのフォトレジスト材料のように、第2のフォトレジスト材料層130は、上述した光酸発生剤、そして任意的に上述した接着増強剤を含む。光酸発生剤の量は、硬化した層130の重量に基づき約15~約20重量%の範囲であり、使用される場合、接着増強剤は、硬化した第2の層130の重量に基づき約0.05~約1重量%の範囲である。
【0053】
第2のフォトレジスト材料層130は、第1の層112を硬化させ現像した後、第1のフォトレジスト材料層112へドライフィルム積層として塗布される。従って、第2のフォトレジスト材料層130の上記の成分は適切な溶媒又は溶媒の混合物に溶解され、剥離ライナーまたは他の適切な支持材料上で乾燥されることができる。第2のフォトレジスト材料層130の全成分が可溶である溶媒は、脂肪族ケトン溶媒又は溶媒の混合物である。特に有用な脂肪族ケトン溶媒はシクロヘキサノンである。シクロヘキサノンは単独で使用されてよく、又はアセトンとの組合せで用いられることが好ましい。シクロヘキサノンは、シクロヘキサノンにおける高分子量フェノキシ樹脂の溶解性のため、第2の層組成のための主溶媒として使用される。アセトンは、フィルム形成処理を助けるための溶媒として任意的に使用される。アセトンが高揮発性溶媒であることから、フィルムが剥離ライナー又は支持材上に引き下ろされた後、アセトンは即座に溶出する。アセトンの揮発は、液体樹脂が層130のためのドライフィルムに固化することを助ける。
【0054】
図14と15を参照し、第2のフォトレジスト材料層130を含む吐出ヘッド50を作製する方法を説明する。該方法によると、第2のフォトレジスト材料層130が、画像形成され現像された第1のフォトレジスト材料層112へ積層される(
図14)。第2のフォトレジスト材料層130は、熱と圧力を用いて第1の層112へ積層されてよい。次に、第2のフォトレジスト層130中のノズル孔134を定義するためマスク132が用いられる。上述したように、マスク132は、透明な領域136と、第2の層130中のノズル孔134を定義する非透明な領域138とを含む。非透明な領域138は、矢印140により示される活性光線がノズル孔134を提供する領域において第2の層130に接触することを防ぎ、残りの第2の層130は活性光線により硬化される。上述したような適切な溶媒で第2のフォトレジスト層130を現像すると、
図15に示されるように、ノズル孔134が第2のフォトレジスト層に形成される。上述したような従来のフォトイメージング及び現像技術が、第2のフォトレジスト材料層130を画像形成し現像するために用いられる。
【0055】
第2のフォトレジスト材料層130を現像した後、層112と130とを含む基板110は、任意的に、後続の上述したバリア壁の形成の間の第2の層130の損傷又は反りを防止するため、約1分~約60分、好ましくは約15~約30分、約150℃~約200℃の範囲の温度、好ましくは約170℃~約190℃でベークされる。第2の層130のガラス転移温度は約175℃であり、これは第3のフォトレジスト材料層150を第2の層130に塗布するために用いられるドライフィルム積層温度よりも高い。
【0056】
図16と17を参照し、第2の層130の外面148上にバリア壁を作製するための方法を説明する。第2のフォトレジスト材料層130の画像形成、現像、及び任意的なベークに続き、
図16に示されるように、第3のフォトレジスト材料層150が第2の層130の外面148に積層される。第3のフォトレジスト材料層150は、第2のフォトレジスト材料層130について上述したのと同一の製剤のドライフィルムフォトレジスト材料により提供される。従って、第3の層150も、二官能エポキシ化合物、比較的高分子量のポリヒドロキシエーテル、上述した光酸発生剤、そして任意的に上述した接着増強剤に由来する。
【0057】
第2のフォトレジスト材料層130及び第3のフォトレジスト材料層150を提供するための適切な製剤は次のとおりである:
【0058】
【0059】
第3のフォトレジスト材料層150は、第2の層130の画像形成、現像、及び任意的なベークの後、第2のフォトレジスト材料層130の外面148にドライフィルム積層として塗布される。従って、第3のフォトレジスト材料層150の上記成分に適切な溶媒又は溶媒の混合に溶融し、剥離ライナー又は他の適切な支持材上で乾燥されることができる。第3のフォトレジスト材料層150の全成分が可溶である溶媒は、脂肪族ケトン溶媒又は溶媒の混合物である。特に有用な脂肪族ケトン溶媒はシクロヘキサノンである。シクロヘキサノンは単独で使用されてよく、又はアセトンとの組合せで用いられることが好ましい。シクロヘキサノンは、シクロヘキサノンにおける高分子量フェノキシ樹脂の溶解性のため、第3の層組成のための主溶媒として使用される。アセトンは、フィルム形成処理を助けるための溶媒として任意的に使用される。アセトンが高揮発性溶媒であることから、フィルムが剥離ライナー又は支持材上に引き下ろされた後、アセトンは即座に溶出する。アセトンの揮発は、液体樹脂が層150のためのドライフィルムに固化することを助ける。
【0060】
上述したように、第3のフォトレジスト材料層150は、第2の層130のガラス転移温度よりも低い温度で、熱と圧力とを用いて第2の層130の外面148に積層される。次いで、第3の層150中のバリア壁154を定義するためマスク152が用いられる。マスク152は、第3の層150中のバリア壁154を定義する透明な領域136を含む。非透明な領域158は、矢印160により示される活性光線が、層150の取り除くべき領域において第3の層150に接触することを防ぎ、マスク152の透明な領域156は、活性光線が、バリア壁154を提供するために残る第3の層150の領域を硬化させることを可能とする。上述したような適切な溶媒で第3のフォトレジスト材料層150を現像すると、
図17に示されるように、バリア壁154が第2の層130の外面148上に形成される。上述したような従来のフォトイメージング及び現像技術が、第3のフォトレジスト材料層150を画像形成し現像するために用いられる。
【0061】
第3のフォトレジスト材料層150を現像した後、層112と層130とバリア壁154とを含む基板110は、任意的に、約1分~約60分、好ましくは約15~約30分、約150℃~約200℃の範囲の温度、好ましくは約170℃~約190℃でベークされる。バリア壁154を含む吐出ヘッドの断面図は
図17に表される。
【0062】
上述したバリア壁はノズル孔の隣接する列の間の流体の相互汚染を防ぐのみならず、該バリア壁は流体がノズルプレートの表面148からあふれ、吐出ヘッドへの電気接続のために用いられる接点パッドを腐蝕することも防ぐ。
【0063】
本明細書及び添付の特許請求の範囲の目的のため、特に明記しない限り、明細書及び特許請求の範囲で使用される量、百分率又は比率を表す全ての数値及び他の数値は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。従って、そうでないと示されない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本発明により得ることが求められる所望の特性に応じて変わり得る近似値である。少なくとも、そして各数値パラメータは、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限する試みとしてではなく、少なくとも、述べられた有効数字の数を考慮し、そして通常の丸め手法を適用することにより、解釈されるべきである。
【0064】
特定の実施形態について説明したが、出願人又は他の当業者には、現在予測してない、又は予測できない、代替、修正、変形、改善、及び実質的な均等物が生じうる。従って、提出された添付の特許請求の範囲及び補正された特許請求の範囲は、そのようなすべての代替、修正、変形、改善、及び実質的な均等物を包含することを意図している。
【符号の説明】
【0065】
10、110、110a、110b:流体吐出装置
12:ウェル
14:マイクロウェルプレート
16:トレイ
18:トレイ移送装置
20:電源ボタン
30、50、58、64:流体吐出ヘッド
32a、32b、32c、60a~60d:流体供給ビア
34:流体吐出器
36、116、116a、116b:流体チャンバ
38、134、134a、134b:ノズル孔
40:表面
52a~52b、54a~54f、56a~56b、62a~62d、66、154:バリア壁
68a~68b:ノズル孔列
100:基板
112:第1のフォトレジスト材料層
114:表面
118、118a、118b:流体供給チャネル
120、132、152:マスク
122、136、156:透明な領域
124、138、158:非透明な領域
126、140、160:矢印
130:第2のフォトレジスト材料層
148:外面
150:第3のフォトレジスト材料層
H:高さ