(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061498
(43)【公開日】2022-04-18
(54)【発明の名称】共焦点ラマン分析装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/65 20060101AFI20220411BHJP
G02B 21/00 20060101ALN20220411BHJP
G02B 21/06 20060101ALN20220411BHJP
G02B 21/36 20060101ALN20220411BHJP
【FI】
G01N21/65
G02B21/00
G02B21/06
G02B21/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021164251
(22)【出願日】2021-10-05
(31)【優先権主張番号】2015815.0
(32)【優先日】2020-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】520143993
【氏名又は名称】アンドール・テクノロジー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Andor Technology Limited
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】デニス,アンドリュー コーム
【テーマコード(参考)】
2G043
2H052
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043CA05
2G043EA03
2G043EA14
2G043FA02
2G043HA01
2G043HA07
2G043HA09
2G043JA03
2G043KA09
2G043LA03
2H052AB25
2H052AC14
2H052AC15
2H052AC16
2H052AC34
2H052AF02
2H052AF14
2H052AF25
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高速共焦点ラマン撮像及び/または高速共焦点ラマン分光法の実行を可能にする装置を提供する。
【解決手段】ラマン分析装置100は、光学検出器14に、光路に沿って対象物を撮像するように構成されたイメージング光学システム30と、対象物を照射する照射光学システム45と、回転するピンホールディスク11を有するスキャン装置と、を備える。照射光学システムは、複数の照射点66において、対象物55を照射するように、スキャン装置上に光を向けるように構成される。イメージング光学システムは、対象物における照射点からスキャン装置が配置される中間画像平面に発振されるラマン散乱光を撮像するように構成される。イメージング光学システムは、スペクトルアナライザフィルタ70を含んでもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学検出器と、
前記光学検出器に、光路に沿って対象物を撮像するように構成されたイメージング光学システムと、
光源を有し、前記光路の少なくとも一部に沿って前記光源から対象物に光を向けることによって前記対象物を照射するように構成される照射光学システムと、
複数の開口を形成し、前記光路と交差し、光路に対して移動可能であるスキャン装置と、
を備え、
前記照射光学システムは、複数の照射点において、前記対象物を照射するように、前記スキャン装置上に光を向けるように構成され、
前記イメージング光学システムは、前記対象物における前記照射点から中間画像平面に発振されるラマン散乱光を撮像するように構成され、
前記スキャン装置は、前記中間画像平面に配置され、
前記イメージング光学システムは、
複数の選択可能な波長範囲のうち選択された1つまたは複数の波長範囲のみにおける光を透過させるように構成されるスペクトルフィルタ、
及び/または少なくとも1つの光学スペクトルアナライザ、
を含む、ラマン分析装置。
【請求項2】
前記スキャン装置は、開口上に光を集光させるように、前記複数の開口と位置合わせされた複数のレンズを有する、請求項1に記載のラマン分析装置。
【請求項3】
前記スキャン装置は、回転可能なスキャンディスクを有する、請求項1または2に記載のラマン分析装置。
【請求項4】
前記スキャン装置は、前記複数のレンズが設けられた回転可能なレンズディスクを含み、前記レンズディスクは前記スキャンディスクとともに回転可能である、請求項2に従属した請求項3に記載のラマン分析装置。
【請求項5】
前記照射光学システムは、望ましくは、前記光源と前記スキャン装置との間に配置されるラマンバンドパスフィルタを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のラマン分析装置。
【請求項6】
前記イメージング光学システムは、望ましくは、前記スキャン装置と前記光学検出器との間の前記光路に配置され、前記光源からの光に対応する波長バンドにおける光を排除するように構成されるフィルタを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のラマン分析装置。
【請求項7】
前記光源は、レーザ光源であり、レーザビームを生成するように構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載のラマン分析装置。
【請求項8】
前記光学検出器は、例えば、CCDまたはEMCCD検出器、またはいずれかの他の適切なデジタル画像センサ等の電子画像センサを有し、デジタルカメラに選択的に含まれてもよくまたはデジタルカメラを有してもよく、
及び/または、前記光学検出器は、例えば、分光器または分光写真機を有する光学スペクトルアナライザを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載のラマン分析装置。
【請求項9】
前記スペクトルフィルタは、例えば、液晶チューナブルフィルタ(LCTF);音響光学チューナブルフィルタ(AOTF);フィルタホイールまたは他の移動可能な車両(carriage)上の複数の異なるフィルタ;旋回可能(pivotable)なフィルタホイール上の複数の波長/角度チューナブルフィルタ;ファブリ・ペロー・エタロンとともに用いた複数のブロードバンドパスフィルタ;または減算式ダブルモノクロメーター等の、1つまたは複数の固定された波長バンドにおける光を透過させるように構成された光学フィルタ、またはチューナブル光学フィルタのいずれか1つを有する、請求項1から8のいずれか一項に記載のラマン分析装置。
【請求項10】
前記スペクトルフィルタ、及び/または前記少なくとも1つの光学スペクトルアナライザは、前記スキャン装置と前記光学検出器との間の前記光路に配置され、
または前記少なくとも1つの光学スペクトルアナライザは前記光学検出器として機能する、請求項1から9のいずれか一項に記載のラマン分析装置。
【請求項11】
前記対象物の少なくとも1つのラマン画像を撮像するように構成され、
それぞれのラマン画像は、前記選択された1つまたは複数の波長範囲における前記ラマン散乱光を有し、または前記ラマン散乱光から作成される、請求項1から10のいずれか一項に記載のラマン分析装置。
【請求項12】
前記光路に配置されるビームスプリッタをさらに含み、
前記ビームスプリッタは、前記光源の光と前記ラマン散乱光との一方を透過させて、前記光源の光と前記ラマン散乱光との他方を反射し、
前記イメージング光学システムは、前記ビームスプリッタを通じて、前記光学検出器に向かって対象物を撮像するように構成され、
前記照射光学システムは、前記ビームスプリッタを通じて前記対象物を照射するように構成される、請求項1から11のいずれか一項に記載のラマン分析装置。
【請求項13】
前記ビームスプリッタは、前記光源の光を透過させて、前記ラマン散乱光を反射する、請求項12に記載のラマン分析装置。
【請求項14】
前記ビームスプリッタは、前記スキャン装置と前記光学検出器との間に配置される、請求項12または13に記載のラマン分析装置。
【請求項15】
前記ビームスプリッタは、前記スキャンディスクと前記光学検出器との間に配置され、望ましくは、前記スキャンディスクに隣接して配置される、請求項3に従属した請求項12から14のいずれか一項に記載のラマン分析装置。
【請求項16】
1つまたは複数の光学偏光板は、前記照射光学システムに設けられ、
1つまたはそれぞれの前記偏光板は、望ましくは、前記光源と前記スキャン装置との間に配置される、請求項1から15のいずれか一項に記載のラマン分析装置。
【請求項17】
1つまたは複数の偏光アナライザは、前記イメージング光学システムに設けられ、
前記偏光アナライザは、望ましくは、前記スペクトルフィルタまたは前記スペクトルアナライザの前に配置される、請求項1から16のいずれか一項に記載のラマン分析装置。
【請求項18】
前記スペクトルフィルタは、複数の選択可能な波長範囲のうち選択された1つまたは複数の波長範囲のみにおける光を透過させるように、チューナブルまたは調節可能である、請求項1から17のいずれか一項に記載のラマン分析装置。
【請求項19】
対象物を複数の照射点において同時に励起光で照射することと、
前記複数の照射点から光学検出器に発振されるラマン散乱光を撮像することと、
を含み、
前記照射することは、複数の照射点において前記対象物を照射するように、スキャン装置に励起光を向けることを含み、
前記撮像することは、中間画像平面にラマン散乱光を撮像することを含み、
前記スキャン装置は前記中間画像平面に配置され、
複数の選択可能な波長範囲のうち選択された1つまたは複数の波長範囲のみにおけるラマン散乱光が前記光学検出器に透過するように前記ラマン散乱光をフィルタすることと、
及び/または前記ラマン散乱光の光学スペクトル分析を実行することと、をさらに含む、ラマン分析方法。
【請求項20】
前記フィルタすることは、1つの範囲毎に、または1つより多くの範囲の1つのグループ毎に、複数の異なる選択された波長範囲におけるラマン散乱光が前記光学検出器に透過するように前記ラマン散乱光をフィルタすることを含む、請求項19に記載のラマン分析方法。
【請求項21】
前記選択された1つまたは複数の波長範囲におけるラマン散乱光を有するまたはラマン散乱光からラマン画像を作成することをさらに含み、
望ましくは、それぞれの前記選択された波長範囲におけるラマン散乱光を有するまたはラマン散乱光からそれぞれのラマン画像を作成することを含む、請求項19または20に記載のラマン分析方法。
【請求項22】
それぞれの前記選択された波長範囲におけるラマン散乱光を有するまたはそれから複合ラマン画像を作成することをさらに含む、請求項20または21に記載のラマン分析方法。
【請求項23】
前記励起光を除去するように前記複数の照射点から発振される光をフィルタすることをさらに含む、請求項19から22のいずれか一項に記載のラマン分析方法。
【請求項24】
前記照射することは、スキャン装置を用いて、励起光のビームをスキャンすることを含み、
前記撮像することは、中間画像平面に前記ラマン散乱光を撮像することを含み、
前記スキャン装置は、前記画像平面に配置される、請求項19から23のいずれか一項に記載のラマン分析方法。
【請求項25】
前記照射すること及び前記撮像することは共焦点で実施される、請求項19から24のいずれか一項に記載のラマン分析方法。
【請求項26】
光学検出器と、
前記光学検出器に、光路に沿って対象物を撮像するように構成されるイメージング光学システムと、
光源を有し、前記光路の少なくとも一部に沿って前記光源から前記対象物に光を向けることによって前記対象物を照射するように構成される照射光学システムと、
複数の開口を形成し、前記光路と交差し、前記光路に対して移動可能であるスキャン装置と、
を備え、
前記照射光学システムは、複数の照射点において、前記対象物を照射するように、前記スキャン装置上に光を向けるように構成され、
前記イメージング光学システムは、選択された1つまたは複数の波長範囲において、前記照射点からのラマン散乱光を検出することによって、前記対象物または前記対象物の目標領域の少なくとも1つのラマン画像を撮像するように構成される、ラマン分析装置。
【請求項27】
対象物を複数の照射点において同時に励起光で照射することと、
複数の照射点から光学検出器に発振されるラマン散乱光を撮像することと、
を含み、
前記照射することは、複数の照射点において対象物を照射するように、スキャン装置に前記励起光を向けることを含み、
前記撮像することは、選択された1つまたは複数の波長範囲において、前記照射点からのラマン散乱光を検出することによって、前記対象物または前記対象物の目標領域から少なくとも1つのラマン画像を撮像することを含む、ラマン分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラマン分光法を含むラマン分析に関する。本発明は、特に、共焦点ラマン分析に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザと共焦点顕微鏡を用いた共焦点ラマン分光法が知られている。方法は、単一のレーザ点を用いてサンプルを照射するように単一のピンホールを通じてレーザ光を方向付けることと、ピンホールを通じてサンプルから生じたラマン散乱光を収集することとを含む。収集されたラマン光は、単一点のラマンスペクトルの取得を実行する分光器(spectrometer)に送られる。ラマン画像が求められると、サンプルは、モータ駆動されたXYまたはXYZステージを用いて静止した(static)レーザ点に対して従来のように移動される。あるいは、レーザは、サンプルに対してスキャンされてもよい。いずれかの場合において、画像は、それぞれのサンプル点から個別に取得されるラマンスペクトルから構築され、サンプル点は一つずつ照射される。各点において取得されるスペクトルは、それぞれ、結果として生じるマルチスペクトルなラマン画像における単一のピクセルを示す画像データを提供する。しかしながら、従来の点スキャンラマン共焦点分光法は時間がかかる。サンプルは、ラスタスキャンされなければならず、光の収集のために各ステージ位置において、充分な滞留時間(dwell time)が必要となる。ラマン効果は、他の電磁効果と比較してかなり弱く、これは画像データの収集に時間がかかるさらなる要因となる。したがって、取得に時間がかかるため、マルチスペクトルなラマン画像は比較的小さいものである傾向がある。
【0003】
サンプルのワイドフィールド(widefield)またはグローバル(global)な照射を用いた非共焦点ラマン分光法も知られている。しかしながら、ワイドフィールドラマン分光法は、2つの主な理由によって、通常、不鮮明な画像をもたらす。第一に、サンプルにおいて一様なワイドフィールドな照射を実現することは極めて困難であり、よって視野にわたってレーザ輝度は変動し得る。第二に、多くのラマンサンプルは散乱性が高い。入射されるフォトンの多数は、弾性散乱を受け、ラマンフォトンとなるように非弾性散乱を受ける前に、複数回において跳ね返り(ricochet)得る。ラマンフォトンは、収集され検出される前に、サンプルの周りにおいて跳ね返り得る。このことは、特定の分子試料が存在しない位置からも、当該分子試料のラマン信号が観察される充分な可能性があることを意味する。その結果が不鮮明な画像である。
【0004】
ラインスキャンまたはライン照射のラマン分光法は、ラマン分光法のハイブリッドな形態であって、サンプルは、光のラインで照射され、ラマン散乱は、ラマン信号を検出するように使用される分光器の焦点面におけるスリットに向かけられてそこを通じて集光される。この形態のラマン顕微鏡において、スリットは、分光写真機(spectrograph)のスリットに直交する軸における共焦点開口として機能するが、スリットの軸においては、共焦点開口は形成されない。この形態のラマン分光法は、真の意味で共焦点であるとは認められない。
【0005】
上述の課題を改善することが望ましい。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の態様は、ラマン分析装置を提供し、装置は、
光学検出器と、
光学検出器に、光路に沿って対象物を撮像するように構成されたイメージング光学システムと、
光源を有し、光路の少なくとも一部に沿って光源から対象物に光を向けることによって対象物を照射するように構成される照射光学システムと、
複数の開口を形成し、光路と交差し、光路に対して移動可能であるスキャン装置と、
を備え、
照射光学システムは、複数の照射点において、対象物を照射するように、スキャン装置上に光を向けるように構成され、
イメージング光学システムは、対象物における照射点から中間画像平面に発振されるラマン散乱光を撮像するように構成され、
スキャン装置は、中間画像平面に配置され、
イメージング光学システムは、
複数の選択可能な波長範囲のうち選択された1つまたは複数の波長範囲のみにおいて光を透過させるように構成されるスペクトルフィルタ、
及び/または少なくとも1つの光学スペクトルアナライザ(analyser)、
を含み、
及び/または、イメージング光学システムは、選択された1つまたは複数の波長範囲において、照射点からのラマン散乱光を検出することによって、対象物または対象物の目標領域の少なくとも1つのラマン画像を撮像するように構成される。
【0007】
望ましくは、スキャン装置は、開口上に光を集光させるように、複数の開口と位置合わせされた複数のレンズを有する。
【0008】
望ましくは、スキャン装置は、回転可能なスキャンディスクを有する。望ましくは、スキャン装置は、複数のレンズが設けられた回転可能なレンズディスクを含み、レンズディスクはスキャンディスクとともに回転可能である。
【0009】
選択的に、照射光学システムは、望ましくは、光源とスキャン装置との間に配置されるラマンバンドパスフィルタを含む。
【0010】
選択的に、イメージング光学システムは、望ましくは、スキャン装置と光学検出器との間の光路に配置され、光源からの光に対応する波長バンドにおける光を排除するように構成されるフィルタを含む。
【0011】
望ましくは、光源は、レーザ光源であり、レーザビームを生成するように構成される。
【0012】
望ましい実施の形態において、光学検出器は、例えば、CCDまたはEMCCD検出器、またはいずれかの他の適切なデジタル画像センサ等の電子画像センサを有し、デジタルカメラに選択的に含まれてもよくまたはデジタルカメラを有してもよい。代わりにまたは加えて、光学検出器は、例えば、分光器または分光写真機を有する光学スペクトルアナライザを有してもよい。
【0013】
望ましい実施の形態において、スペクトルフィルタは、例えば、液晶チューナブルフィルタ(LCTF);音響光学チューナブルフィルタ(AOTF);フィルタホイールまたは他の移動可能な車両(carriage)上の複数の異なるフィルタ;旋回可能(pivotable)なフィルタホイール上の複数の波長/角度チューナブルフィルタ;ファブリ・ペロー・エタロンとともに用いた複数のブロードバンドパスフィルタ;または減算式ダブルモノクロメーター等の、1つまたは複数の固定された波長バンドにおいて光を透過させるように構成された光学フィルタまたはチューナブル光学フィルタのいずれか1つを有する。
【0014】
望ましくは、スペクトルフィルタ、及び/または少なくとも1つの光学スペクトルアナライザは、スキャン装置と光学検出器との間の光路に配置され、または少なくとも1つの光学スペクトルアナライザは光学検出器として機能する。
【0015】
望ましい実施の形態において、装置は、対象物の少なくとも1つのラマン画像を撮像するように構成され、それぞれのラマン画像は、選択された1つまたは複数の波長範囲におけるラマン散乱光を有し、またはそれから作成される(またはそれぞれのラマン画像は、ラマン散乱光を検出することによって作成される)。
【0016】
通常の実施の形態において、装置は、光路に配置されるビームスプリッタを含む。ビームスプリッタは、光源光とラマン散乱光との一方を透過させて、光源光とラマン散乱光との他方を反射する。イメージング光学システムは、ビームスプリッタを通じて、光学検出器に向かって対象物を撮像するように構成される。照射光学システムは、ビームスプリッタを通じて対象物を照射するように構成される。望ましくは、ビームスプリッタは、光源光を透過させて、ラマン散乱光を反射する。望ましくは、ビームスプリッタは、スキャン装置と光学検出器との間に配置される。ビームスプリッタは、スキャンディスクとレンズディスクとの間に配置される。ビームスプリッタは、望ましくは、スキャンディスクと光学検出器との間に配置され、望ましくは、スキャンディスクに隣接して配置される。
【0017】
選択的に、1つまたは複数の光学偏光板は、照射光学システムに設けられ、1つまたはそれぞれの偏光板は、望ましくは、光源とスキャン装置との間に配置される。選択的に、1つまたは複数の偏光アナライザは、イメージング光学システムに設けられ、偏光アナライザは、望ましくは、スペクトルフィルタまたはスペクトルアナライザの前に配置される。
【0018】
望ましい実施の形態において、スペクトルフィルタは、複数の選択可能な波長範囲のうち選択された1つまたは複数の波長範囲のみにおける光を透過させるように、チューナブルまたは調節可能である。
【0019】
第2態様において、本発明はラマン分析方法を提供し、方法は、対象物を複数の照射点において同時に励起光で照射することと、複数の照射点から光学検出器に発振される(emanates)ラマン散乱光を撮像することとを含み、照射することは、複数の照射点において対象物を照射するように、スキャン装置に励起光を向けることを含み、撮像することは、中間画像平面にラマン散乱光を撮像することを含み、スキャン装置は中間画像平面に配置され、方法は、さらに、複数の選択可能な波長範囲のうち選択された1つまたは複数の波長範囲のみにおけるラマン散乱光が光学検出器に透過するようにラマン散乱光をフィルタすることと、及び/またはラマン散乱光の光学スペクトル分析を実行することと、を含み、及び/または、方法は、さらに、選択された1つまたは複数の波長範囲において、照射点からのラマン散乱光を検出することによって、対象物または対象物の目標領域の少なくとも1つのラマン画像を撮像することを含む。
【0020】
他の態様において、本発明は、ラマン分析装置を提供し、装置は、
光学検出器と、
光学検出器に、光路に沿って対象物を撮像するように構成されるイメージング光学システムと、
光源を有し、光路の少なくとも一部に沿って光源から対象物に光を向けることによって対象物を照射するように構成される照射光学システムと、
複数の開口を形成し、光路と交差し、光路に対して移動可能であるスキャン装置と、
を備え、
照射光学システムは、複数の照射点において、対象物を照射するように、スキャン装置上に光を向けるように構成され、
イメージング光学システムは、選択された1つまたは複数の波長範囲において、照射点からのラマン散乱光を検出することによって、対象物または対象物の目標領域の少なくとも1つのラマン画像を撮像するように構成される。
【0021】
さらなる態様から、本発明はラマン分析方法を提供し、方法は、対象物を複数の照射点において同時に励起光で照射することと、複数の照射点から光学検出器に発振されるラマン散乱光を撮像することとを含むラマン分析方法を提供し、照射することは、複数の照射点において対象物を照射するように、スキャン装置に励起光を向けることを含み、撮像することは、選択された1つまたは複数の波長範囲において、照射点からのラマン散乱光を検出することによって、対象物または対象物の目標領域から少なくとも1つのラマン画像を撮像することを含む。
【0022】
望ましくは、フィルタすることは、1つの範囲毎に、または1つより多くの範囲の1つのグループごとに、複数の異なる選択された波長範囲におけるラマン散乱光が光学検出器に透過するようにラマン散乱光をフィルタすることを含む。
【0023】
ある実施の形態において、方法は、選択された1つまたは複数の波長範囲におけるラマン散乱光を有するまたはそれからラマン画像を作成することを含み、望ましくは、それぞれの選択された波長範囲におけるラマン散乱光を有するまたはそれからそれぞれのラマン画像を作成することを含む。有利なことに、方法は、それぞれの選択された波長範囲におけるラマン散乱光を有するまたはそれから複合ラマン画像を作成することを含んでもよい。それぞれのラマン画像は、それぞれのラマン散乱光を検出することによって作成されてもよい。
【0024】
望ましくは、方法は、励起光を除去するように複数の照射点から発振される光をフィルタすることを含む。
【0025】
望ましくは、照射することは、スキャン装置を用いて、励起光のビームをスキャンすることを含み、撮像することは、中間画像平面にラマン散乱光を撮像することを含み、スキャン装置は、画像平面に配置される。
【0026】
有利なことに、照射すること及び撮像することは共焦点で(confocally)で実施される。
【0027】
望ましい実施の形態において、レーザ光源及びスキャンディスクは、サンプル上の点のアレーを同時に照射し、照射点からラマン散乱光を収集するために使用される。スキャンディスクは回転可能であり、通常ピンホールと呼ばれる開口のアレーを有する。このように、スキャンディスクは、回転ディスクまたは回転ピンホールディスクと呼ばれてもよい。望ましくは、第2回転可能ディスクは、スキャンディスクと回転するようにスキャンディスクに係合される。第2ディスクは、レンズまたはマイクロレンズ、ディスクと呼ばれるタイプであってもよく、特にマイクロレンズ等のレンズのアレーを有する。この配置は、レーザ源からの光がレンズによってピンホール上に集光されるように、レンズアレーとピンホールアレーが互いに位置合わせされたものである。通常、各レンズは、それぞれのピンホールと位置合わせされ、それぞれのピンホール上に光を集光させるように配置される。レンズディスクは、省略されてもよいが、これはレーザ源からの光の非効率的な使用をもたらす。ディスクは、通常ニプコー(Nipkow)ディスクと呼ばれるタイプであってもよい。
【0028】
通常の実施の形態において、スキャンディスクアセンブリは、回転ディスク共焦点顕微鏡の一部であり、スペクトルアナライザフィルタは、収集されたラマン散乱光をフィルタするように提供される。望ましい実施の形態において、本発明は、スキャンまたはニプコーディスク共焦点ラマン撮像を有し、比較的速い速度、例えば、公知の自然(spontaneous)ラマン点スキャンに基づく方法に対して1桁(またはそれ以上)速い速度において、共焦点ラマン画像の取得を可能にする。不鮮明の問題は、サンプルの特定の点のみを照射することによって対処され、跳ね返るフォトンは、ニプコーディスクのピンホールを通過する透過をもたらす方向及び位置を有してサンプルを出ることの最小限の可能性を有する。対応して、跳ね返ったフォトンは、ニプコーディスク共焦点配置によって排除され、一方で、跳ね返ったフォトンは、従来のグローバル/ワイドフィールドラマン分光法によっては排除されない。
【0029】
本発明の望ましい実施の形態は、後続の1つまたは複数の利点を提供する。
i.高速共焦点ラマン撮像及び/または高速共焦点ラマン分光法。サンプルによって、ラマン画像は、「ビデオ」または「リアルタイム」のフレームレートにおいて取得されてもよく、リアルタイムにおける表面化学反応の研究を容易にする。
ii.照射点毎における低いレーザ照射強度。この特徴は、過度な加熱によるサンプルダメージの可能性を抑制する。過度な加熱は、従来の点スキャン共焦点ラマン機器からラマンスペクトルを取得する際に高いレーザパワーを使用しなければならないことの望ましくない結果である。望ましい実施の形態において、照射点毎の照射パワーは、同等の時間フレーム毎の同じ信号とノイズの比において、少なくとも2桁小さい。
iii.選択的に、スキャンディスクアセンブリは、装置がグローバル照射/ワイドフィールドラマン顕微鏡として操作できるように、光路から外れるように格納可能である。
iv.装置は、共焦点、従来の点スキャン共焦点及びラインスキャンに基づいた操作に基づく回転ディスクを容易にするように、レーザ拡大光学要素を含んでもよい。
v.3Dイメージングまたはトポグラフィーイメージング等のための3次元データセット収集は、実用的な時間期間内において達成可能である。逆に、点スキャンラマン機器を用いて3Dイメージングを試みると、極めて遅い。
【0030】
本発明のさらなる有利な態様は、特定の実施の形態の後続の説明を参照し、添付の図面を参照することによって、当業者にとって明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の一の態様を示す回転ディスク共焦点ラマン分析装置の概略図である。
【
図2】
図1の装置の一部である回転ディスクアセンブリの概略図である。
【
図3】サンプルから取得されたラマン画像及び対応するラマンスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
例示によって、及び添付の図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0033】
図面を参照すると、通常100と示されている、本発明の一態様を示すラマン分析装置が示されている。装置100は、光学顕微鏡を有してもよく、望ましい実施の形態において、光学顕微鏡は回転ディスク共焦点顕微鏡である。このように、装置100は、共焦点ラマン分析装置と呼ばれてもよい。ある実施の形態において、本明細書にてより詳細に説明されるように、装置100は、ラマン散乱光を用いて画像を撮像することによってサンプルを分析し、ラマン撮像装置または共焦点ラマン撮像装置と呼ばれてもよい。ある実施の形態において、装置100はラマン分光法装置または共焦点ラマン分光法装置として説明されてもよい。
【0034】
装置100は、分析される対象物55を受けるステージ20を含む。対象物55は、試料、通常、生物学的、半導体、結晶性、または化学的試料を有し、スライドまたは他のホルダ(図示せず)においてまたはその上に配置されてもよい。対象物55は対象物平面に配置される。
【0035】
装置100は光学検出器14を含む。望ましい実施の形態において、光学検出器14は、電子画像センサ(図示せず)を有し、分析されるスペクトル範囲によって、例えば、CCD、またはEMCCD検出器、または他のいずれかの適切なデジタル画像センサ、例えば、InGaAs、sCMOS、InSb、Ge若しくはMCD検出器を有する。光学検出器14は、デジタルカメラまたは(例えば、分光写真機及びデジタル画像センサを有する)分光器またはデジタル画像センサを含む他の装置に、含まれてもまたはこれを有してもよい。他の実施の形態(図示せず)において、光学検出器14は、画像センサを有する必要がなく、例えば、1つまたは複数の単一ピクセル検出器等の1つまたは複数の他の従来の光学検出装置を代わりに有してもよい。
【0036】
装置100は、光路によって光学検出器14に対象物55を撮像するためのイメージング光学システム30を含む。望ましい実施の形態において、イメージング光学システム30が、光学検出器14の焦点面(または画像平面)において対象物55の画像を集光することが望ましい。イメージング光学システム30は、光学装置のトレインを有し、トレインは、光学検出器14に対象物55を撮像するように配置され、即ち、光学トレインを通じて光学検出器14において対象物55の画像を形成するように、少なくとも1つのレンズ及び選択的に少なくとも1つのミラーを通常有する。イメージング光学システム30の光学トレインは、対象と呼ばれてもよい対象物レンズ7を含む。対象物7は、対象物平面と通常直交する光軸を有する。便利なことに、対象物7は、顕微対象物であり、例えば、複合顕微対象物レンズであるが、プラノ凸(plano convex)(PCX)、アクロマティック(achromatic)または非球面レンズが使用されてもよい。
【0037】
光学トレインの特定の構成及び設定は、当業者によって明らかであるように、実施の形態毎に変化してもよく、本発明を理解するために役立つ要素のみが本明細書にて図示及び説明される。
【0038】
イメージング光学システム30の光学トレインは、中間画像平面において対象物55の中間画像を形成するように構成される。この目的において、イメージング光学システム30は、通常チューブレンズ(図示せず)を有し、対象物7とあわせて中間画像を形成するように構成される。スキャンディスク11は、中間画像平面IIPにおいて配置され、光路と交差する。スキャンディスク11は、回転可能であり、通常ピンホールと呼ばれる開口のアレーを有する。このように、スキャンディスク11は、回転ディスクまたは回転ピンホールディスクと呼ばれてもよい。望ましくは、第2回転可能ディスク15は、スキャンディスク11とともに回転するようにスキャンディスク11に係合される。ディスク11、15は、共通軸9に通常固定され、シャフトとともに回転する。第2ディスク15は、レンズまたはマイクロレンズのアレーを有し、回転レンズディスクまたはコレクタディスクと呼ばれてもよい。ディスク11、15は、あわせて回転ディスクアセンブリを形成し、ディスク11、15の配置は、レンズアレーとピンホールアレーとが互いに揃って配置され、よってレンズに入射する光がピンホールに集光されるようなものである。光の非効率的な使用をもたらすが、レンズディスク15は省略されてもよい。ディスク11、15の一方または両方は、通常ニプコーディスクと呼ばれる種類であってもよい。
【0039】
装置100は、その中心軸(例えば、
図2に示す軸9を通じて)、ディスクアセンブリ11、15を回転するためのいずれかの適切な駆動手段(図示せず)を含んでもよい。駆動手段は、ディスクアセンブリの軸に係合されたモータ、通常電気モータ、を通常有する。ディスク11、15は用途の要求に適したいずれかの速度において回転してもよい。例えば、ある実施の形態において、ディスク11、15は、略400RPMまたは略20,000RPMにおいて回転してもよい。通常ディスク11、15は、略20,000RPMまでのいずれかの望ましい速度において回転する。
【0040】
代替的な実施の形態(図示せず)において、スキャンディスクアセンブリ11、15は、代替的なスキャン装置に置き換えられてもよく、スキャン装置は、それに複数の開口またはピンホールが形成された可動のプレートのような構造を有し、複数の開口またはピンホールは、望ましくは対応する位置合わせされたレンズ構造に係合され、ディスクアセンブリ11、15と同様または似た方法で対象物55を点照射するように光路に対して可動である。スキャン装置は、回転可能である必要はないが、代替的に、光路に対する往復または振動運動のために構成されてもよい。この目的においていずれかの適切な駆動手段が提供されてもよい。ピンホールは、ディスク11、15において説明された方法と同様または似た方法において配置されてもよい。
【0041】
イメージング光学システム30の光学トレインは、通常光学リレーを含み、光学検出器14に対象物画像を伝播(relay)するように少なくとも1つのリレーレンズ13、13’を有する。図示された実施の形態において、この例において第1及び第2リレーレンズ13、13’を有する光学リレーは、回転ディスクアセンブリ11、15と、光学検出器14との間に配置され、中間画像平面から検出器14に対象物55の中間画像を投影するように構成される。特に、イメージング光学システム30は、イメージング光学システム30の焦点面において配置される検出器14の画像センシング表面上に対象物55の画像を集光するように構成される。光学トレインイメージング光学システムは、レンズのいずれかの他の適切な配置と、必要であれば、ミラー及び/またはビームスプリッタを含んでもよい。
【0042】
装置100は、対象物55、特に対象物55に含まれる試料を照射するように、照射光学システム45を含む。照射光学システム45は、光源25を有しまたは光源25に接続可能であり、望ましい実施の形態において、光源25は1つまたは複数のレーザ装置を有するが、例えば、1つまたは複数のLED等のいずれかの他の適切な従来の光源を代わりに有してもよい。光源25は、用途に適するように、及び当業者にとって明らかであるように、1つまたは複数の周波数バンドにおいて光を生成するように構成されてもよい。例えば、ラマン分光法及び撮像において適切な波長は488nm、532nm、785nmであるが、より一般的に、ラマン散乱は、光、望ましくは、波長がUV-可視光-近赤外の範囲の波長、例えば、200nmから1600nmまでの範囲であるレーザ光を用いて検出できる。
【0043】
望ましい実施の形態において、照射光学システム45は、イメージング光学システム30によって規定される光路の少なくとも一部に沿って対象物55に、通常レーザビーム65の形態として、光を向けることによって、対象物55を照射するように構成される。
【0044】
選択的には、例えば、1つまたは複数の偏光フィルタ及び/または他の光学偏光要素を有する1つまたは複数の光学偏光板26は、照射光65を偏光させるように照射光学システム45に設けられている。偏光板26は、サンプル55に向かう光を偏光させる。偏光板26は、光学照射パスにおいていずれかの適切な位置において設けられてもよい。望ましくは、偏光板26は、光源25とスキャンディスクアセンブリ11、15との間に配置される。ラマン実験のために偏光された光を使用することは、例えば、分析される分子の対称性に関する情報を取得することが望まれる場合において必要となり得る。
【0045】
選択的に、コリメータレンズ29は、ビーム65をコリメートするように光源とディスクアセンブリとの間に設けられる。
【0046】
選択的に、バンドパスフィルタ等の1つまたは複数の光学フィルタは、用途にあわせてビーム65を調整するように設けられてもよい。望ましい実施の形態において、バンドパスフィルタ27は、光源25とディスクアセンブリ11、15との間に便利に設けられ、適切に狭い波長バンドにおける励起光65のみがサンプル55に伝播されることを保証する。例えば、バンドパスフィルタ27は、励起光のための選択された波長の周りで1nmと4nmとの間のパスバンドを有するように構成されてもよい。時々レーザラインクリーンアップフィルタ(laser-line clean up filter)と呼ばれるタイプのフィルタは、フィルタ27として使用されてもよい。バンドパスフィルタ27がないと、望ましくない波長における光がサンプルに入射するリスクがあり、結果として生じる散乱光のスペクトルの汚染が生じる可能性がある。
【0047】
望ましい実施の形態において、照射光学システム45は、対象物7を通じて対象物55を照射するように構成される。これを容易にするため、ビームスプリッタ12は、イメージング光学システム30に含まれてもよい。ビームスプリッタ12は、光源25から生成される光に対応する1つまたは複数の周波数バンドにおける光が透過するように構成され、照射されると対象物55から発振される光、特にラマン散乱光に対応する1つまたは複数の波長バンドにおける光を反射(または少なくとも部分的に反射)するように構成される。この関係において、ラマン散乱光は、通常、レーザ波長に対して略-1000cm
-1と+4000cm
-1との間であって、負のcm
-1は反ストークス(Anti-Stokes)散乱光を示す。ビームスプリッタ12は、対象物55から発振される光に対応する1つまたは複数の反射バンドと、光源25によって生成される光に対応する透過バンドとを有するといわれてもよい。通常、ビームスプリッタ12は、ダイクロイックフィルタ、ダイクロイックミラー、またはたのダイクロイック光学要素を有する。光源25は、ビームスプリッタ12を通じてレーザビーム65を向けて、光路に向けるように配置され、光路において、対象物7を通じて対象物55に向けられる。ビームスプリッタ12は、スキャンピンホールディスク11と光学検出器14との間に配置され、通常スキャンピンホールディスク11に隣接して配置される。望ましい実施の形態において、ビームスプリッタ12は、スキャンディスク11とレンズディスク15との間に配置される。ビームスプリッタ12は、本例示における光学リレー13、13’を通じて、対象物からスキャンディスク11を通じて光学検出器14に、光路に沿って向けられる光を反射するように配置される。代替的な実施の形態(図示せず)において、ビームスプリッタ12は、レーザ光を反射し、ラマン散乱光を透過させてもよく、照射光学システム45とイメージングシステム30とはそれに応じて構成されてもよい(例えば、
図1に対して、光学検出器14と光源25との位置が逆であってもよい)。
【0048】
望ましい実施の形態において、装置100は、回転ディスク共焦点顕微鏡を実行するように構成され、光源25は、レーザビーム65を回転ディスクアセンブリ11、15に、特に(存在すると)レンズディスク15に向けるように配置される。特に
図2を参照して、光源25からのビーム65は、レンズディスク15に入射され、複数のレンズ17(または、レンズディスクが存在しなければ、ピンホール)を同時に照射する。それぞれの照射されたレンズ17は、スキャンディスク11のそれぞれのピンホール19にそれぞれの光ビーム65Aを集光し、各レンズ17は通常それぞれのピンホール19に位置合わせされている。そのため、複数のピンホールは同時に照射される。それぞれの光ビーム65Bは、照射された各ピンホール19から出て、対象物7を通じて対象物55に集光され、対象物55のそれぞれの点66またはスポットを同時に照射する。したがって、対象物レンズ7は、サンプル55上にピンホールディスク11の出口側の画像を伝播して、サンプル55上に光(通常はレーザ)スポット66のアレーをもたらす。対象物55上に入射された光65Bは入射光または励起光と呼ばれてもよい。ディスク11、15が回転すると、レンズ17及びピンホール19との異なるセットは照射され、照射される対象物55上の点66の対応するセットが照射されることをもたらす。これは、レンズ17及びピンホール19が配置されるパターンと組み合わせて、対象物55の全体、即ち分析される目標領域の全体が点照射されることをもたらす。対応して、回転ディスク11、または回転ディスクアセンブリは、スキャナとして機能するように構成され、ディスク11、15が回転すると、対象物55が点照射されることをもたらす。この照射の間、対象物55は静止したままであり、またはより具体的に、対象物7と対象物55(またはステージ20)との間で相対移動がないと認識される。光源25は、固定されるまたはスキャンしない。
【0049】
通常、ピンホール19(及び望ましい実施の形態において対応するレンズ17)の全数は、百または千の桁であり(実施の形態によって、例えば十または万の桁等、より高くまたは低くてもよい)、及びピンホール19の一部(通常、全数の略12分の1と20分の1との間)は、ディスク11が回転すると、いずれかの1つの時点において照射されてもよい。例えば、望ましい実施の形態において、400と2000との間のピンホール19が同時に照射される。対応して、いずれかの時点において、対象物55の複数の(例えば、百または千までの)点は同時に照射される。対応して、本明細書にてより詳細に説明するように、複数の時点の(例えば、百または千までの)データは、対象物55から同時に取得されてもよい。そのため、従来の単一点スキャン装置を用いる場合よりも、試料からより速くデータを収集できる。さらに、スキャンディスク11の使用は、単一点スキャン装置と比較して、相対的に高いパワーのレーザ光の使用を可能にする。
【0050】
光ビーム65は、望ましくはコリメートされ、通常レーザ光を有する。レンズディスク15に入射される光はコリメートされなくてもよい。コリメートされていない光が使用されてもよく、この場合、レンズディスク15とピンホールディスク11との間の間隔は、必要に応じて補正するように調整されてもよく、及び/またはレンズ17の焦点長さは対応して調整されてもよい。レンズディスク15に入射されるがレンズに入射しない光は、(通常非透過性コーティングによって)排除される。ピンホールディスク11に入射するがピンホール17から外れる光も、(通常非透過性コーティングによって)排除される。
【0051】
レンズディスク15は省略されてもよいと認識され、この場合ビーム65はスキャンディスク11に直接当たってもよい。しかしながら、これは、光の非効率的な使用をもたらし、結果として生じる画像の信号とノイズの比に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0052】
通常の実施の形態において、レンズ17及びピンホール19は、共通の中心点から複数の螺旋状のアームにおいて放射状に、例えば、Archimedeanパターンまたはニプコーパターンにおいて、配置される。望ましい配置では、対象物55の均一な照射を実現する。上述のスキャン照射を形成するように、他のパターンが使用されてもよいと理解されよう。望ましい実施の形態において、レンズ17のパターンは、ピンホールのパターンと一致して、レンズ17及びピンホール19は光の移動の方向において互いに位置合わせされている。
【0053】
望ましくは、ピンホール19は、対象物55の照射点またはスポットが回折限界であるような寸法を有する。代わりに、ピンホール19は、回折限界のスポットを形成することに必要な大きさ以上に大きくてもよく、これは、空間的分解/共焦点の性質(confocality)を犠牲にして、照射光の光学スループットの増加及び散乱光のスループットの増加を提供する。
【0054】
ピンホール19の直径は、通常、20から100μmの範囲内である。ピンホール19の間の間隔は、通常1000μmであり、ピンホールの数及び/または光学システムを通じて伝播される画像の大きさ等の要因によってより高くまたはより低くてもよい。蛍光顕微鏡と比較して、ラマン顕微鏡は、著しく多くの跳ね返るフォトン(鏡面(specular)または拡散散乱光)を発生させる試料の分析に関し、その結果、通常の実施の形態は、蛍光顕微鏡に設けられるピンホール間隔より広いピンホール間隔を有する。そのため、ある照射の範囲/視野において、より少ないピンホールが照射される。しかしながら、ある分析された試料は、跳ね返るフォトンの極めて低いレベルを有する可能性があり、蛍光顕微鏡と同一または類似のピンホール間隔が適用可能であってもよい。レンズ17は、対応する寸法及び間隔を有してもよい。
【0055】
選択的に、適用可能な回転ディスク11または回転ディスクアセンブリは、いずれかの適切な搬送手段(図示せず)によって光路に入るまたは出るように移動可能である。回転ディスク(または回転ディスクアセンブリ)が光路内にあると、装置100は、回転ディスク共焦点レーザ顕微鏡を実現してもよい共焦点モードにある。回転ディスク11(または回転ディスクアセンブリ)が光路外にあると、装置100は、ワイドフィールドラマン分光法、微分位相顕微鏡、明視野顕微鏡(brightfield microscopy)または蛍光顕微鏡(epifluorescence microscopy)等の他のタイプの顕微鏡(microscopy)を実現してもよい。
【0056】
対象物55に光65Bが入射されると、サンプル/試料の性質または組成、及び/または入射光65Bの特性によって、(反射、透過、蛍光、非ラマン光散乱、ラマン散乱及びその他を含む)1つまたは複数の電磁的現象が生じてもよい。装置100は、ラマン散乱光、特に自然ラマン散乱光(通常または広域(far-field)ラマン散乱光とも呼ばれる)及び増強(enhanced)または近接場(near-field)ラマン散乱光を検出するように構成される。装置100は、存在する場合において、共鳴ラマン光及び/または表面増強(surface enhanced)ラマン光を検出してもよい。ラマン散乱光は、入射光65Bと異なる波長においてサンプル/試料55によって散乱された光を有し、即ち、入射されるフォトンは、サンプル/試料の分子と作用して、変化したエネルギ及び変化した波長が生じる。ラマン散乱は、非弾性散乱でありことが知られており、入射光に応じてサンプル/試料において自然に生じる。ラマン散乱は、ストークス散乱光及び反ストークス散乱光を含む。ストークス散乱光は、励起フォトンが、散乱フォトンが励起フォトンより小さいエネルギを有する(即ち、より長い波長を有する、赤シフトされる)ように、サンプル/試料における分子と作用する場合において、ラマン散乱光を有する。反ストークス散乱光は、励起フォトンが、散乱フォトンが励起フォトンより大きいエネルギを有する(即ち、より短い波長を有する、青シフトされる)ように、サンプル/試料における分子と作用する場合において、ラマン散乱光を有する。ラマン散乱光は、対象物55によって発振され、本明細書にて後述するように検出される。ラマン散乱光は分析される試料/サンプル55の分子との作用によって生じるため、その特性は対象物55の特性(例えば、化学組成)の指標を提供するために使用されてもよい。対象物55の温度もラマン散乱光から特定されてもよく、例えば、特定のラマンバンドのストークスと反ストークスの信号強度の比から算出されてもよい。
【0057】
非ラマン散乱光は、弾性散乱光を有し、弾性散乱光は、波長が変化することなく光がサンプル/試料55によって散乱されるものであり、即ち、入射フォトンは、サンプルの分子と作用するが、エネルギ(波長)が変化しない。
【0058】
光65Bによる対象物55の照射に応じて、散乱光は、対象物55から全方向に発振され、この光の一部は対象物レンズ7を通過する。対象物55はこの光の収集の間は静止したままであり、または特に対象物7と対象物55(またはステージ20)との間で相対移動がない。光源25も固定されるまたはスキャンしない。イメージング光学システム30は、この散乱光の一部をスキャンディスク11が配置される中間画像平面に伝播させる。イメージング光学システム30の構成は、対象物55において現在照射される点66から発振される光のみが中間画像平面に集光され、よってピンホール19を通過するようなものである。特に、配置は、対象物における各照射点66から発振される光が、そこを通じて照射されるそれぞれのピンホール19を通過するようなものである。照射点66から発振されない光、例えば、2次反射(または高次反射)からの光は、中間画像平面の上または下で集光され、またはピンホールディスク11には入射するが、ピンホールには入射せず、よってスキャンディスク11、通常ディスク11上の透明でないコーティングに排除される。
【0059】
したがって、光は共焦点で収集される。ピンホール大きさは、サンプル55のレーザスポット66の大きさを規定し、よって、収集されたラマン画像の空間的分解能を規定すると認識される。光学検出器14の画像センサのピクセルは、検出器14が画像をアンダーサンプリングして画像の鮮明度(分解能)の低下が生じないことを保証するように、適切に選択されるべきである。ある実施の形態において、(共焦点顕微鏡を実行する場合において通常であるように)回折限界スポットから光を発生させるまたは収集するように最適化されていない比較的大きいピンホールを使用することが有益であってもよい。この配置は、より多くのラマンフォトンが測定されるように、反射/跳ね返された(照射スポット66の直接の周囲において反射された)フォトンの収集を容易にする。この手法は、画像分解能を犠牲にして、より優位な信号強度を提供する。
【0060】
ピンホール19を通過する散乱光は、(レーザ光65と等しい波長を有する)弾性散乱フォトンと、(励起光65と異なる波長を有する)非弾性散乱ラマンフォトンとを含む散乱フォトンを有する。スキャンディスク11を通過する散乱光は、ビームスプリッタ12に入射し、ビームスプリッタ12は、ラマン散乱光のみが光学検出器14に到達するように構成される。図示される実施の形態において、ビームスプリッタ12は、弾性散乱光が通過して光源25に戻るように(または他の方法で検出器14から離れるように)移動できて、本例示において光学リレー13、13’を通じて検出器14にラマン散乱光を反射または他の方法で導くように構成される。
【0061】
ビームスプリッタ12はフィルタ、例えば、必要に応じてショートパス、ロングパス、バンドパスまたはノッチフィルタとして機能するように構成されてもよく、光のどの波長が検出器14に到達できるのかを制御する。例えば、ストークスラマン散乱光の収集を容易にするように、ビームスプリッタ12は、特定の波長より短いまたは青い側における全ての光を透過させて、(赤シフトされ、より長い波長を有する)ストークス散乱フォトンを光学検出器14に向かって反射するショートパスフィルタとして構成されてもよい。代わりに、ビームスプリッタ12は、励起光65の波長における光を透過させて、ストークス(赤)シフト及び反ストークス(青)シフト光を含む他の光を反射するノッチフィルタとして機能するように構成されてもよい。代わりに、ビームスプリッタ12は、反ストークス自然ラマン発振のみを反射するロングパスフィルタとして機能するように構成されてもよい。イメージング光学システム30、特にビームスプリッタ12が、透過光が光学検出器14に到達し、反射光が光学検出器14から離れるように導かれるように構成される代替的な実施の形態において、ビームスプリッタ12は、上述の構成と逆の方法で構成されてもよいと理解されよう。
【0062】
選択的に、ビームスプリッタ12は、除去可能であり、異なる用途に適するように、異なる透過/反射特性を有する代替的なビームスプリッタ12と交換されてもよい。選択的に、装置100は、複数のビームスプリッタ12を有し、それぞれは、異なる透過/反射特性を有し、光路におけるいずれか1つのビームスプリッタ12の1つずつの位置を特定するように操作可能である伝達装置(図示せず)に設けられている。伝達装置は、例えば、ホイールまたはリニアコンベヤを有する等のいずれかの適切な形態をとってもよく、光路に選択された1つのビームスプリッタ12を移動させるように、手動で移動可能であってもまたは(例えば、電気モータによって)パワー駆動されてもよい。異なるビームスプリッタ12の使用を支持することは有利である。これは、対象物55から異なるタイプの発振の分析(例えば、ストークス散乱または反ストークス散乱、または同時ストークス/反ストークス散乱の収集の間でスイッチすること)を容易にするだけではなく、異なる光源25の使用、即ち、異なる波長を有する光65を発生させることを容易にする点において有利である。あるタイプのサンプルを分析するときにあるレーザはより高い感度を有するため、異なる波長を有する光65を発生させることが望ましい。
【0063】
選択的に、イメージング光学システム30は、光路における1つまたは複数の光学フィルタ32を含んでもよく、1つまたは複数のフィルタ32は、対象物55から戻る光から、実行されている分析において望ましくない波長を有する光を、除去するように構成される。図示されている実施の形態において、光学フィルタ32は、ビームスプリッタ12と光学検出器14との間に配置され、便利なことにリレーレンズ13、13’との間に配置される。フィルタ32は、ビームスプリッタ12の検出器側の光路において他の箇所に配置されてもよい。例示によって、弾性散乱フォトンは、ビームスプリッタ12によって反射されてもよく、フィルタ32は、光学検出器14に到達することを防止するように、この弾性散乱レーザ光を排除するように構成されてもよい。フィルタ32は、通常ノッチまたはエッジフィルタであり、光源25によって生成された光ビーム65に対応する波長バンドにおける光を排除するように望ましくは構成される。
【0064】
選択的に、例えば、1つまたは複数の偏光フィルタ及び/または他の光学偏光要素を有する1つまたは複数の偏光アナライザ33は、イメージング光学システム30に設けられる。偏光アナライザ33は、光学イメージングパスにおいていずれかの適切な位置において提供されてもよい。望ましくは、偏光アナライザ33は、スペクトルアナライザ70の前に配置され、便利なことに、ビームスプリッタ12とスペクトルアナライザ70との間に配置される。偏光板26と偏光アナライザ33との相対的配向は、出力において観察されるスペクトルパターンに影響を及ぼす。例えば、偏光アナライザ33が偏光板26に平行に配向されると、特定のスペクトルパターンが生じ、一方、2つの光学素子26、33がその偏光が交差するように配向されると、即ち、平行でないと、異なるスペクトルパターンが観察される。これらの2つの偏光において観察される異なるピーク強度は、分子結合の対称性に対応してもよい。
【0065】
イメージング光学システム30に収集された反射ラマン光は、複数の異なる波長において多数のフォトンを含み、フォトンは、照射点66の位置によって特定されるようにサンプルの照射領域にわたり幅広い位置から対象物55の異なる位置から同時に発振される。
【0066】
一度にサンプルの単一のスポットを照射する従来のラマン顕微鏡においては、ラマン光の単一のビームは、(通常、自由空間を通じて、または光学的にファイバ結合された)分光器に向けられて、分光器においては、幅広い波長のスペクトル分析が同時に実行されてもよい。この手法は、単一点照射/スキャン及びラインスキャンにおいてよく機能する。しかしながら、この手法は、サンプル上の複数の位置から同時に発振されたフォトンの間の区別を可能にせず、よってこの従来の手法は、本発明の望ましい実施の形態における使用において適していない。
【0067】
上述のように、イメージング光学システム30は、光学検出器14の焦点面において画像を集光する。対象物55から同時に収集されたいずれかの他のフォトンが、光学検出器14に到達する前にイメージング光学システム30に、特にビームスプリッタ12及び/またはフィルタ32に除去または排除されるため、画像はラマンフォトンによって構成される。残留レーザ/レイリーフォトンの比較的低いレベルは、イメージング光学システム30によって排除または除去されず、存在してもよい。これに関わらず、画像は主にまたは実質的にラマンフォトンによって構成される。さらに、焦点面において形成される画像(ラマン画像と呼ばれてもよい)は、同時にまたは実質的に同時に照射される点66に対応する対象物55上の異なる位置から同時に収集されるラマンフォトンによって構成される。特に、対象物55の全体(即ち分析される目標領域の全て)を点照射するためのスキャンディスク11の回転において、ラマン画像は、対象物55の全体にわたる全ての照射点66から実質的に同時に、即ち、スキャンディスク11が対象物55の全体を点照射するためにかかる時間において、収集されるラマン散乱光によって構成される。
【0068】
望ましい実施の形態においては、スペクトルアナライザフィルタ70は、光学検出器14の前の光路に設けられている。スペクトルアナライザフィルタ70は、光学検出器14の光学入力において配置されてもよい。図示される実施の形態において、スペクトルアナライザフィルタ70は、ビームスプリッタ12と光学検出器14との間に、望ましくはフィルタ32と光学検出器14との間に配置される。便利なことに、スペクトルアナライザフィルタ70は、リレーレンズ13、13’の間に配置される。しかしながら、スペクトルアナライザフィルタ70は、光路においていずれかの他の適切な位置において配置されてもよい。他の実施の形態(図示せず)、スペクトルアナライザフィルタ70の代わりにまたはそれに加えて、イメージング光学システムは、イメージング光学システム30によって提供されるラマン光をスペクトル分析または分光学的に分析するために、例えば、光学分光写真機または光学分光器等の1つまたは複数の他の光学スペクトルアナライザを有してもよい。このような実施の形態において、装置100は、必ずしもラマン画像を撮像せず、よって光学検出器14は画像センサを有しなくてもよいと認識される。例えば、光学分光写真機または光学分光器等を有する光学スペクトルアナライザがイメージング光学システムに設けられている実施の形態において、光学スペクトルアナライザ自体が光学検出器であってもよく、画像センサ、ピクセルセンサまたはカメラ等の個別の光学検出器が、設けられる必要はない(しかし、用途の要件によって設けられてもよい)。あるいは、または加えて、イメージング光学システム30は、選択された1つまたは複数の波長範囲において、照射点からのラマン散乱光を検出することによって、対象物または対象物の目標領域の少なくとも1つのラマン画像を撮像するように構成される。
【0069】
望ましいスペクトルアナライザフィルタ70は、調節可能またはチューナブルであって、よって、選択可能な波長範囲のうち選択された1つまたは複数の波長範囲のみにおける光を透過させる。スペクトルアナライザフィルタ70は、いずれかの適切な調節可能なスペクトルフィルタ装置を有してもよい。例えば、スペクトルアナライザフィルタ70は、液晶チューナブルフィルタ(LCTF);音響光学チューナブルフィルタ(AOTF);フィルタホイールまたは他の移動可能な車両(carriage)上の複数の異なるフィルタ;旋回可能なフィルタホイール上の複数の波長/角度チューナブルフィルタ;ファブリ・ペロー・エタロンとともに用いる複数のブロードバンドパスフィルタ;または減算式ダブルモノクロメーター(例えば、第1分光写真機は光を分散させて、その後、特定の波長範囲のみが通過できるように、物理的なブロックが設けられた第1分光写真機と第2分光写真機との中間焦点面において、光を再集光させるように構成されてもよく、第2分光写真機は光を非分散させるように構成され、単色(monochromatic)またはフィルタされた画像が第2分光写真機の出力において配置されている)のいずれか1つの装置を有してもよい。
図3の例示において、サンプル55の材料のそれぞれに1つのピークが存在し、ピークは重ならない。あるいは、サンプル55は、1つより多くの重ならないピークに関連した1つまたは複数の物質を有してもよい。信号対ノイズの観点において、より多くのフォトンを収集し、よって単一の重ならないピークを使用した場合と比較してより低いノイズを有するデータを生成するため、このような重ならないピークの可能な限り多くから光を収集することが望ましい。いくつかの公知のチューナブルフィルタ(または固定フィルタ)は、ある個数の離散的なバンドが通過するように構成されてもよい。
【0070】
代替的な実施の形態において、スペクトルアナライザフィルタ70は、調節可能またはチューナブルでなくてもよく、代わりに、固定された波長バンド、または望ましくは複数の異なる、望ましくは離散的または重ならない、固定された波長バンドにおける光が通過するように構成されてもよい。固定された波長バンドは、関心の特定の材料を有するサンプルを分析するように選択されてもよく、例えば、波長バンドは、使用においてサンプル55から発振されるラマン光の特定の波長に対応する。複数の固定されたフィルタが提供されてもよく、それぞれ異なるパスバンド特性を有し、分析されるサンプルの組成によって必要に応じて設置または除去されてもよい。
【0071】
上述のように、イメージング光学システム30は、サンプル55の照射領域の全体からのラマン光がスペクトルアナライザフィルタ70を通じて光学的に伝播するように構成される。スペクトルアナライザフィルタ70の設定によって、1つまたはそれぞれの選択された波長範囲における波長を除く全ての波長は、フィルタ70によって排除され、単一の選択された波長バンドまたは複数の選択された波長バンドにおけるラマン光が、光学検出器14を通過できる。その結果、選択された波長範囲におけるラマン光のみによって構成された対象物55の全体のラマン画像は、光学検出器14の焦点面に集光される。スペクトルアナライザフィルタ70は、後続的に、1つまたは複数の異なる波長範囲からのラマン光が通過できるように調整されてもよく、よって、異なる選択された波長範囲におけるラマン光のみによって構成される対象物55の全てのラマン画像が、光学検出器14の焦点面に集光されることをもたらす。このプロセスは、用途に応じて、望ましい数の波長範囲において実行されてもよい。よって、望ましい実施の形態において、複数の異なる波長バンドのいずれか1つにおける光が同時に通過できるように、フィルタ70はチューナブルである。よって、サンプル55における目標物質は、複数の波長バンドにおけるラマン散乱光と関連すると、フィルタ70は、それぞれのバンドにおける光が同時に通過できるようにチューンされてもよい。あるいは、フィルタ70は、各バンドにおける光が、1つのバンドずつ順番に通過するように調整してもよい。
【0072】
この方法でラマン画像を撮像することは、特に、プロセス制御または品質制御の目的において、予想される組成が知られている場合、サンプル/試料55の組成を分析するために便利である。これは、特定の波長範囲におけるラマン光の存在は、サンプル55における対応する化学物質の存在と関連付けすることができる。したがって、サンプル55における1つまたは複数の化学物質の存在は、それぞれの波長範囲におけるラマン光が通過するようにスペクトルアナライザフィルタ70を設定することによって検出できる。さらに、ラマン画像が生成されるため、サンプル55におけるそれぞれの化学物質の空間的分布が検出される。
【0073】
例えば、
図3は、3つの異なる化学物質、本例示においては、具体的にはアスピリン、アセトアミノフェン、カフェインの3つのラマンスペクトルを示す。それぞれのスペクトルは、それぞれ異なる波長A、B、Cにおいてピークを有し、それらの波長においては、他のスペクトルはピークを有しないことが示されている。よって、スペクトルアナライザフィルタ70を波長Aにおけるバンドの波長を通過させるようにチューンする(例えば、波長Aを中心とするノッチフィルタとして操作するように設定する)ことによって、結果として生じるラマン画像72は、関係する化学物質(この例示においてはアスピリン)の空間的分布を示す。同様に、他の化学物質は、波長B及びCに対応する波長バンドにスペクトルアナライザフィルタ70をチューンすることによって検出されてもよく、結果として生じるラマン画像72は、この例示においてそれぞれアセトアミノフェン及びカフェインである他の関係する化学物質の空間的分布を示す。このプロセスは、望まれる数の化学物質のために実行されてもよい。個別のラマン画像は、
図3に示すように、複合ラマン画像を形成するように組み合わせてもよく、目標とされた化学物質に応じてサンプル55の化学組成の空間的表示を提供する。波長バンドは、サンプル55における1つまたは複数の物質に関するデータの収集を容易にするように選択されてもよいと認識される。例えば、結晶性材料のサンプルにおいて、ピークの位置または強度によって、応力または圧力等のパラメータを特定できる。温度もこの方法を用いて特定できる。
【0074】
装置100は、ラマンスペクトルの全体を検出せず、1つのまたはそれぞれの選択された波長バンドに対応するそれぞれのラマン画像を撮像すると認識される。有利なことに、各波長バンドは、特定の目標物質または試料のラマンスペクトルにおけるピークが存在し、及び望ましくは、サンプル55内に存在し得る1つまたは複数の他の物質または試料のそれぞれのラマンスペクトルにおけるピークが存在しない波長に対応するように、選択される。この内容において、ピークは、適切な閾値レベルを超えるラマン散乱光の存在として定義されてもよい。閾値レベルは、用途によって設定されてもよく、実験的に、計算によって、及び/またはいずれかの適切なカリブレーションプロセスによって設定されてもよい。
【0075】
上述の方法でラマン画像を撮像することは、ラマン画像を構築する従来の方法と比較すると、極めて速いが、全てのラマンスペクトル情報を収集しない。サンプル55上において全ての照射点におけるラマンスペクトルの全体は、スペクトルアナライザフィルタ70に入射するが、1つまたは複数の選択された波長範囲におけるラマン光のみが、いずれかの1つの時点において光学検出器14に到達することが許可される。対応する異なる波長範囲において複数のラマン画像を取得することで、画像のハイパーキューブ(hypercube)及びスペクトルを全てのピクセルから抽出できる。それぞれのラマン画像は、全てのデータ点における全てのスペクトル情報を提供するように、装置100によって支持される全ての波長において撮像されてもよい。大きい画像においては、このプロセスは、従来の点スキャンより速いままである。より一般的に、ラマン画像が撮像される波長バンドの数が大きいほど、取得されるスペクトル情報が多くなる。用途によって、ラマン画像が撮像される波長バンドの数は、不正確に特定されるサンプルがないことを保証するように充分なスペクトル情報を提供するように、一方で、実用的な(かつ従来の点スキャンより充分速い)タイムスケールにおいて画像を撮像するように充分速く実行可能であるように選択されてもよい。この手法は、孤立したスペクトル特徴を含まない混合材からのスペクトル貢献をケモメトリクス的に(chemometrically)または単変量によって(univariately)分離するために適切である。
【0076】
図3の例示を使用して、上述のように、ユーザは、サンプルにおける物質の分布を特定するように、サンプル55に存在するそれぞれの物質のために1つずつ、たった3つの画像を取得してもよい。しかしながら、全てのラマンスペクトル情報を取得することが望まれている場合、各波長における強度情報が生じるよう、複数の異なる波長において多数の画像が撮像されてもよい。波長によって順番に撮像された情報を並べることによって、完全な(または部分的な)スペクトルが、画像のすべてのピクセルから構築されてもよい。結果として生じるデータセットは、XYピクセル情報(選択的にZデータも)と、スペクトルまたは部分的なスペクトルとを含む。このタイプのデータセットは、データのハイパーキューブまたはハイパースペクトル画像データキューブと呼ばれてもよい。この方法は、単一波長によって全てのXYデータを構成する完全な画像を収取することを含み、欠けているスペクトルデータはスペクトルアナライザをスキャンすることによって収集されてもよい。上述の方法は、従来のポイントスキャナによって取得されるものと同じ最終データセットをもたらす。従来のラマン装置は、(分光器のピクセルカメラによって定められた既定の分解能において)全てのスペクトルデータを収集し、XY(及び選択的にZ)データは、サンプルを移動させることによって順次収集される。
【0077】
装置100は、通常、本明細書にて説明されるように装置100の操作を制御するように構成された1つまたは複数のコントローラ50を有するコントロールシステムを含む。通常、コントローラ50は、光学検出器14、ステージ20、及びスペクトルアナライザフィルタ70の操作を制御するように構成される。通常の実施の形態において、コントローラ50は、ステージ20、よってサンプル55を移動させ、サンプルの3D画像を取得する。2D画像のみが要求される実施の形態において、ステージ20は、移動する必要がなく、コントローラ50によって制御される必要がない。コントローラ50は、例えば、バンドパス位置及び/またはスペクトルアナライザ70のスペクトル範囲を制御するように構成され、異なる波長において測定を取得することを容易にする。選択的に、コントローラ50は、光源25及び/またはスキャンディスクアセンブリ11、15を制御するように構成される。図示された実施の形態において、光源25またはスキャンディスクアセンブリ11、15の操作を、装置100の他の要素、特にスペクトルアナライザ70または光学検出器14と同期する必要なく、よって、コントローラ50が、この観点において光源25またはスキャンディスクアセンブリ11、15の操作を制御する必要がない。しかしながら、選択的に、コントローラ50は、光源25を制御し、及び/またはスキャンディスクアセンブリ11、15を必要に応じてオン及びオフにするように使用されてもよい。1つのまたはそれぞれのコントローラ50は、いずれかの従来の形態を有してもよく、通常適切にプログラムされたプロセッサ、例えば、マイクロプロセッサまたはマイクロコントローラを有し、いずれかの従来の方法において制御することが要求される要素に接続されてもよい。
【0078】
多くの自然ラマンイメージング用途において、サンプルからの散乱は、マイクロ結晶材料において、単結晶または非結晶材料より高い。したがって、ピンホール19の大きさ、ピンホール19の数、ピンホール19の間隔及び/またはピンホール19のパターンの1つまたは複数において、用途に適するように構成されたスキャンディスク11を使用することが望ましい。選択的に、複数の異なるスキャンディスク11(及び適用される場合に応じて対応するレンズディスク15)が設けられ、それぞれ1つは、特定のサンプルタイプからのラマン光収集を最適化するように用途に適するように、選択され及び装置100に設置される。例えば、シリコンウェーハまたはグラフェンの単層を分析するためには比較的近くに配置されたピンホールを選択し、または法科学的タイプの粉末サンプルまたは製薬タブレットの分析のためには比較的広く配置されたピンホールを選択してもよい。例えば、スキャンディスク11は、用途によって、2と12との間の数のディスク毎のネストされた(nested)ピンホールスパイラルを有してもよく、単一のまたは12より多くのネストされたピンホールスパイラルが代わりに使用されてもよい。より少ないネストされたスパイラルは、特定のディスク回転速度において、イメージング速度を減少させる。nがネストされたスパイラルの数であると、1/nのネストされたスパイラルにおいて画像を取得できる(例えば、10のネストされたスパイラルを有するディスクによって、ディスク回転の1/10毎において完全なサンプル照射パターンが発生し、2のネストされたスパイラルはディスク回転の1/2毎においてのみ画像が収集されることを意味する)。
【0079】
望ましい実施の形態において、装置100は、複数のスキャンディスクアセンブリ11、15と、通常コントローラ59の制御下で、いずれかの選択された1つのディスクアセンブリを光路に設置するように構成されたパワー駆動アクチュエーションシステムとを保持するマガジン(図示せず)を含む。あるいは、選択されたディスクアセンブリは、除去可能なカートリッジに配置されてもよく、カートリッジは、必要に応じて手動で設置または交換されてもよい。さらに、1つまたは複数のスキャンディスクアセンブリがあってもよく、1つまたはそれぞれのディスクは複数のセクタを有し、それぞれのセクタは、ピンホール/レンズの異なる配置を有する。
【0080】
前述より、望ましい実施の形態において、スキャンニプコーディスクペアは、サンプル55、通常その表面上の複数の点をスキャンして、同じディスクピンホールを通じて自然ラマン散乱光を収集して、共焦点ラマン画像が取得されるように光学検出器15に収集した光を方向付けるように、励起光によって照射されることが明らかである。本発明の実施の形態は、共鳴ラマン及び/または表面増強ラマン光を検出してもよい。
【0081】
本発明は、本明細書にて説明される実施の形態に限定されず、本発明の範囲から離脱せず、補正または改造されてもよい。
【外国語明細書】