(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061515
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】結像光学系
(51)【国際特許分類】
G02B 13/02 20060101AFI20220412BHJP
G02B 13/18 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
G02B13/02
G02B13/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020169465
(22)【出願日】2020-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000131326
【氏名又は名称】株式会社シグマ
(72)【発明者】
【氏名】村上 仁
【テーマコード(参考)】
2H087
【Fターム(参考)】
2H087KA01
2H087LA02
2H087MA07
2H087PA09
2H087PA10
2H087PA18
2H087PB10
2H087PB11
2H087QA02
2H087QA07
2H087QA12
2H087QA21
2H087QA25
2H087QA32
2H087QA34
2H087QA42
2H087QA46
2H087RA04
2H087RA05
2H087RA12
2H087RA13
2H087RA32
2H087RA44
2H087UA06
(57)【要約】
【課題】デジタルカメラやビデオ用のレンズで、諸収差が良好に補正された、静粛かつ迅速なフォーカスを有する、小型の結像光学系を提供する
【解決手段】物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群L1と、開口絞りSと、正の屈折力を有する第2レンズ群L2と、負の屈折力を有する第3レンズ群L3からなり、合焦に際して前記開口絞りSは不動であり、同時に前記第2レンズ群L2が光軸方向に移動し、 前記第2レンズ群L2の最も物体側のレンズは物体側に凹面を向けた負レンズであり、前記第2レンズ群L2は1枚の正レンズと1枚の負レンズを含み、特定の条件式を満足する
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から順に、
正の屈折力を有する第1レンズ群L1と、
開口絞りSと、
正の屈折力を有する第2レンズ群L2と、
負の屈折力を有する第3レンズ群L3からなり、
合焦に際して前記開口絞りSは不動であり、同時に前記第2レンズ群L2が光軸方向に移動し、
前記第2レンズ群L2の最も物体側のレンズは物体側に凹面を向けた負レンズであり、
前記第2レンズ群L2は1枚の正レンズと1枚の負レンズを含み、
以下の条件を満足することを特徴とする結像光学系。
(1) -0.90<f1/f23<0.30
(2) 0.60<f1/f<1.30
f1:前記第1レンズ群L1の焦点距離
f23:前記第2レンズ群L2と前記第3レンズ群L3の合成焦点距離
f:全系の無限遠時の焦点距離
【請求項2】
前記第1レンズ群の最も像側の面が像側に凹面を向けたレンズであることを特徴とする請求項1に記載の結像光学系。
【請求項3】
前記第1レンズ群の最も像側の負レンズから前記第1レンズ群の最も像側のレンズまでの部分系E1が無限遠状態において負の合成屈折力を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の結像光学系。
【請求項4】
前記第1レンズ群L1と前記第3レンズ群L3が合焦に際して不動であることを特徴とする請求項1又は請求項3のいずれかに記載の結像光学系。
【請求項5】
以下の条件を満足することを特徴とする請求項1又は請求項4のいずれかに記載の結像光学系。
(3) 0.60<LT/f<1.30
LT:結像光学系の光学全長
f:全系の無限遠時の焦点距離
【請求項6】
以下の条件を満足することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の結像光学系。
(4)1.00<LT/Y<4.50
LT:結像光学系の光学全長
Y:結像光学系の最大像高
【請求項7】
以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の結像光学系。
(5) 0.60<Y/BF<1.60
Y:結像光学系の最大像高
BF:結像光学系のバックフォーカス
【請求項8】
本発明は、さらに以下の条件式を満足することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の結像光学系。
(6) 0.10<ENP/f<0.80
ENP:結像光学系の入射瞳位置
f:全系の無限遠時の焦点距離
【請求項9】
本発明は、さらに以下の条件を満足することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の結像光学系。
(7) 0.001<ΔPgF1p<0.040
ΔPgF1p:前記第1レンズ群L1に含まれる正レンズの異常分散性の平均値
【請求項10】
本発明は、さらに以下の条件を満足することを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の結像光学系。
(8) 22<Δν3
Δν3=ν3n-ν3p
ν3n:前記第3レンズ群L3に含まれる負レンズのアッベ数の平均値
ν3p:前記第3レンズ群L3に含まれる正レンズのアッベ数の平均値
【請求項11】
本発明は、さらに以下の条件を満足することを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の結像光学系。
(9) 0.10<|f3/f|<1.00
f3:前記第3レンズ群L3の焦点距離
f:全系の無限遠時の焦点距離
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラやビデオカメラ等の撮像装置に用いられる結像光学系に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラやビデオカメラ等の撮像装置が普及している。
【0003】
その中で、結像光学系と撮像素子の間にファインダー光学系へ光線を導くためのミラーを有するものが広く知られている。しかし近年、そのミラー部分を取り除き、結像光学系と撮像素子の間隔を短くした撮像装置がある。
【0004】
その中で、撮像素子は大型のものを使用しつつ撮像装置は小型化させたものが普及している。小型化された撮像装置に対して、結像光学系も全長や外径の小型化が要求されている。
【0005】
また撮像素子の画素小型化に伴い、結像光学系に高い性能が要求されている。
【0006】
またフォーカスレンズ群に軽量化が要求されている。フォーカスレンズ群の重量が大きくなると、フォーカス駆動の速度が低下したり、フォーカス駆動時の騒音が大きくなったりして好ましくない。またレンズを移動させるためのアクチュエータが大型化してしまい、鏡筒が大型化してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-146478
【特許文献2】特開平7-199066
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1では、物体側から順に正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、第3レンズ群からなる結像光学系が開示されている。
【0009】
しかし上述した光学系ではフォーカシングに際して第1レンズ群と、絞りと、第2レンズ群を駆動しており、フォーカスレンズの重量が大きくなるという課題がある。
【0010】
特許文献2では、物体側から順に正の屈折力を有する第1レンズ群と、正の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群からなる大口径中望遠レンズが公開されている。
【0011】
しかし、上述した光学系ではフォーカスレンズの枚数が5枚程度であり、フォーカスレンズ群の重量が大きくなるという課題がある。また、撮像素子サイズに対してレンズ全長が十分に短いとは言えない。
【0012】
本発明は、デジタルカメラやビデオ用のレンズで、諸収差が良好に補正された、静粛かつ迅速なフォーカスを有する、小型の結像光学系を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための手段である第1の発明は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群L1と、開口絞りSと、正の屈折力を有する第2レンズ群L2と、負の屈折力を有する第3レンズ群L3からなり、合焦に際して前記開口絞りSは不動であり、同時に前記第2レンズ群L2が光軸方向に移動し、前記第2レンズ群L2の最も物体側のレンズは物体側に凹面を向けた負レンズであり、前記第2レンズ群L2は1枚の正レンズと1枚の負レンズを含み、以下の条件式を満足することを特徴とする。
(1) -0.90<f1/f23<0.30
(2) 0.60<f1/f<1.30
f1:前記第1レンズ群L1の焦点距離
f23:前記第2レンズ群L2と第3レンズ群L3の無限遠時の合成焦点距離
f:全系の無限遠時の焦点距離
【0014】
また、第2の発明は、第1の発明において、さらに前記第1レンズ群の最も像側の面が像側に凹面を向けたレンズであることを特徴とする。
【0015】
また、第3の発明は、第1又は第2の発明において、さらに前記第1レンズ群の最も像側の負レンズから前記第1レンズ群の最も像側のレンズまでの部分系E1が無限遠状態において負の合成屈折力を有することを特徴とする。
【0016】
また、第4の発明は、第1乃至第3の発明のいずれかにおいて、さらに前記第1レンズ群L1と前記第3レンズ群L3が合焦に際して不動であることを特徴とする。
【0017】
また、第5の発明は、第1乃至第4の発明のいずれかにおいて、さらに以下の条件式を満足することを特徴とする。
(3) 0.60<LT/f<1.30
LT:結像光学系の光学全長
f:全系の無限遠時の焦点距離
【0018】
また、第6の発明は、第1乃至第5の発明のいずれかにおいて、さらに以下の条件式を満足することを特徴とする。
(4) 1.00<LT/Y<4.50
LT:結像光学系の光学全長
Y:結像光学系の最大像高
【0019】
また、第7の発明は、第1乃至第6の発明のいずれかにおいて、さらに以下の条件式を満足することを特徴とする。
(5) 0.60<Y/BF<1.60
Y:結像光学系の最大像高
BF:結像光学系のバックフォーカス
【0020】
また、第8の発明は、第1乃至第7の発明のいずれかにおいて、さらに以下の条件式を満足することを特徴とする。
(6) 0.10<ENP/f<0.80
ENP:結像光学系の入射瞳位置
f:全系の無限遠時の焦点距離
【0021】
また、第9の発明は、第1乃至第8の発明のいずれかにおいて、さらに以下の条件式を満足することを特徴とする。
(7) 0.001<ΔPgF1p<0.040
ΔPgF1p:前記第1レンズ群L1に含まれる正レンズの異常分散性の平均値
【0022】
また、第10の発明は、第1乃至第9の発明のいずれかにおいて、さらに以下の条件式を満足することを特徴とする。
(8) 22<Δν3
Δν3=ν3n-ν3p
ν3n:前記第3レンズ群L3に含まれる負レンズのアッベ数の平均値
ν3p:前記第3レンズ群L3に含まれる正レンズのアッベ数の平均値
【0023】
また、第11の発明は、第1乃至第10の発明のいずれかにおいて、さらに以下の条件式を満足することを特徴とする。
(9) 0.10<|f3/f|<1.00
f3:前記第3レンズ群の焦点距離
f:全系の無限遠時の焦点距離
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、デジタルカメラやビデオ用のレンズで、諸収差が良好に補正された、静粛かつ迅速なフォーカスを有する、小型の結像光学系が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の結像光学系の実施例1に係るレンズ構成図である。
【
図2】実施例1の結像光学系の無限遠状態合焦時の縦収差図である。
【
図3】実施例1の結像光学系の無限遠状態合焦時の横収差図である。
【
図4】実施例1の結像光学系の近距離物体状態合焦時の縦収差図である。
【
図5】実施例1の結像光学系の近距離物体状態合焦時の横収差図である。
【
図6】本発明の結像光学系の実施例2に係るレンズ構成図である。
【
図7】実施例2の結像光学系の無限遠状態合焦時の縦収差図である。
【
図8】実施例2の結像光学系の無限遠状態合焦時の横収差図である。
【
図9】実施例2の結像光学系の近距離物体状態合焦時の縦収差図である。
【
図10】実施例2の結像光学系の近距離物体状態合焦時の横収差図である。
【
図11】本発明の結像光学系の実施例3に係るレンズ構成図である。
【
図12】実施例3の結像光学系の無限遠状態合焦時の縦収差図である。
【
図13】実施例3の結像光学系の無限遠状態合焦時の横収差図である。
【
図14】実施例3の結像光学系の近距離物体状態合焦時の縦収差図である。
【
図15】実施例3の結像光学系の近距離物体状態合焦時の横収差図である。
【
図16】本発明の結像光学系の実施例4に係るレンズ構成図である。
【
図17】実施例4の結像光学系の無限遠状態合焦時の縦収差図である。
【
図18】実施例4の結像光学系の無限遠状態合焦時の横収差図である。
【
図19】実施例4の結像光学系の近距離物体状態合焦時の縦収差図である。
【
図20】実施例4の結像光学系の近距離物体状態合焦時の横収差図である。
【
図21】本発明の結像光学系の実施例5に係るレンズ構成図である。
【
図22】実施例5の結像光学系の無限遠状態合焦時の縦収差図である。
【
図23】実施例5の結像光学系の無限遠状態合焦時の横収差図である。
【
図24】実施例5の結像光学系の近距離物体状態合焦時の縦収差図である。
【
図25】実施例5の結像光学系の近距離物体状態合焦時の横収差図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る結像光学系の実施例について詳細に説明する。なお、以下の実施例の説明は本発明の結像光学系の一例を説明したものであり、本発明はその要旨を逸脱しない範囲において本実施例に限定されるものではない。
【0027】
本発明の結像光学系は、
図1、
図6、
図11、
図16、
図21に示すレンズ構成図からわかるように、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群L1と、開口絞りSと、正の屈折力を有する第2レンズ群L2と、負の屈折力を有する第3レンズ群L3からなり、合焦に際して前記開口絞りSは不動であり、同時に前記第2レンズ群L2が光軸方向に移動し、前記第2レンズ群L2の最も物体側のレンズは物体側に凹面を向けた負レンズであり、前記第2レンズ群L2は1枚の正レンズと1枚の負レンズを含み、以下の条件式を満足する。
(1) -0.90<f1/f23<0.30
(2) 0.60<f1/f<1.30
f1:前記第1レンズ群L1の焦点距離
f23:前記第2レンズ群L2と第3レンズ群L3の合成焦点距離
f:全系の無限遠時の焦点距離
【0028】
条件式(1)は、第1レンズ群L1の焦点距離と第2レンズ群L2以降の合成焦点距離の比を規定するものである。条件式(1)を満足することで、光学系を小さくコンパクトにするとともに諸収差を良好に補正することができる。
【0029】
条件式(1)の上限値を超え第1レンズ群L1の正の屈折力が小さくなると、第1レンズ群L1から射出される光線高さが大きくなるため、絞りの径が大きくなり鏡筒を小型化するのが難しくなる。また第2レンズ群L2への光線入射高さが大きくなるため、第2レンズ群L2が大きくなりフォーカスレンズ群の重量が大きくなるため好ましくない。または第2レンズ群L2と第3レンズ群L3の正の合成屈折力が大きくなる。これに伴い第2レンズ群L2と第3レンズ群L3の間隔が大きくなるため、光学系の全長の大型化を招く。または光学全長を小さく保ったまま第2レンズ群L2或いは第3レンズ群L3のいずれかのレンズを配置しようとすると、第2レンズ群L2の駆動スペースが小さくなるため敏感度が大きくなりすぎ、フォーカシング時の性能変動が大きくなる。または第3レンズ群L3を像面側に配置すると、軸外光線は像面に近いほど高くなるため、第3レンズ群L3が巨大化する。
【0030】
条件式(1)の下限値を超え第2レンズ群L2と第3レンズ群L3の負の合成屈折力が大きくなると、第3レンズ群L3の負の屈折力が大きくなり、非点収差を抑制するのが困難となる。または第2レンズ群L2の正の屈折力が小さくなり、フォーカシングの際に第2レンズ群L2を駆動させるためのスペースが大きくなるため、光学系の全長が大きくなる。または第1レンズ群L1の正の屈折力が大きくなり、前述したように開口絞りSや第2レンズ群L2の径が増大するため、鏡筒の大型化やフォーカスレンズ群の重量増加を招く。
【0031】
本発明の効果をさらに確実なものにするためには、条件式(1)の上限値を0.10、下限値を-0.70とすることが好ましい。
【0032】
条件式(2)は、第1レンズ群L1の焦点距離と全系の焦点距離の比を規定するものである。条件式(2)を満足することで、球面収差やコマ収差などの諸収差を良好に補正し、鏡筒の小型化を達成することが可能となる。
【0033】
条件式(2)の上限値を超え第1レンズ群L1の屈折力が小さくなると、第1レンズ群L1から射出される光線高さが大きくなり、前述したように鏡筒の大型化やフォーカスレンズ群の重量増加を招く。
【0034】
条件式(2)の下限値を超え第1レンズ群L1の屈折力が大きくなると、第1レンズ群L1で発生する球面収差やコマ収差が大きくなり好ましくない。
【0035】
本発明の効果をさらに確実にするためには、条件式(2)の上限値を1.10、下限値を0.80とすることが好ましい。
【0036】
開口絞りSを第2レンズ群L2の先頭面よりも物体側に配置することで、入射瞳位置を物体側に配置することができ第1レンズ群L1の物体側のレンズ径が大型化することを避けることができる。また開口絞りSを第1レンズ群L1の外側の最も像側近傍に配置することで、開口絞りSの高さが抑えられ、かつ機構を簡略化できるため、開口絞りSが大型化することを避けることができる。また合焦に際し不動とすることで、機構を簡略化することができるため、鏡筒が大型化することを避けることができる。
【0037】
第2レンズ群L2の最も物体側のレンズ面を開口絞りSに対しコンセントリックなレンズ形状とすることにより、軸外主光線の各面への入射角を小さくして非点収差やコマ収差を抑制することができる。また、第1レンズL1から射出される軸上光束は像面に向かって収斂しているが、第2レンズ群L2の最も物体側のレンズが正の屈折力を有すると、さらに軸上光束が収斂し、球面収差が大きく補正不足となる。第2レンズ群L2の最も物体側のレンズを負の屈折力にすることにより、第2レンズ群L2の最も物体側のレンズから射出される光束を負レンズの発散作用により緩くすることができ、全系の球面収差が大きく補正不足になることを抑制することができる。また、第2レンズ群L2の敏感度を小さくすることができるため、ガタによる性能低下を小さく抑えることができる。
【0038】
第2レンズ群L2に正レンズと負レンズを含むことで、フォーカシングの際の軸上色収差や倍率色収差の変動を抑制することができる。
【0039】
本発明の結像光学系は、さらに前記第1レンズ群L1の最も像側の面が像側に凹面を向けたレンズであることを特徴とする。
【0040】
第1レンズ群L1の最も像面側の面を像側に凹面を向けたレンズとすることにより、この面で発生するペッツバール値が第1レンズ群L1に含まれる正レンズで発生するペッツバール値を打ち消す方向となるため、第1レンズ群L1のペッツバール和を小さくでき、第1レンズ群L1で発生する像面湾曲を抑制することができる。
【0041】
本発明の結像光学系は、前記第1レンズ群L1の最も像側の負レンズから前記第1レンズ群L1の最も像側のレンズまでの部分系E1が無限遠状態において負の合成屈折力を有することを特徴とする。
【0042】
第1レンズ群L1の最も像側の部分系を負の合成屈折力にすることにより、第1レンズ群L1から射出される軸上光束を緩くすることができるため、第2レンズ群L2で発生する球面収差を小さくすることができる。
【0043】
本発明の結像光学系は、さらに前記第1レンズ群L1と前記第3レンズ群L3が合焦に際して不動であることを特徴とする。
【0044】
合焦時に駆動する群を第2レンズ群L2に限定することで、フォーカシングの機構を簡略化することができ、レンズ鏡筒を小型化することができる。
【0045】
本発明の結像光学系は、さらに以下の条件を満足することを特徴とする。
(3) 0.60<LT/f<1.30
LT:光学全長
f:全系の無限遠時の焦点距離
【0046】
条件式(3)は、光学全長と全系の焦点距離の比を規定するものである。条件式(3)を満足することで、全長の小さい光学系を得ることができる。
【0047】
条件式(3)の上限値を超え全系の光学全長が大きくなると、全長の小型化が困難となる。
【0048】
条件式(3)の下限値を超え全系の光学全長が小さくなると、小型化のためには第3レンズ群L3の拡大倍率を大きくする必要があるため、特に軸上色収差や倍率色収差の補正が難しくなる。
【0049】
本発明の効果をさらに確実にするためには、条件式(3)の上限値を1.10、下限値を0.80とすることが好ましい。
【0050】
本発明の結像光学系は、さらに以下の条件を満足することを特徴とする。
(4) 1.00<LT/Y<4.50
LT:結像光学系の光学全長
Y:結像光学系の最大像高
【0051】
条件式(4)は、光学全長と最大像高の比を規定したものである。条件式(4)を満足することで、光学系の小型化と、良好な周辺光量を得ることが可能となる。
【0052】
条件式(4)の上限値を超え、最大像高に対する全系の光学全長が大きくなると、大型の撮像素子に対しては光学系が大型化するため好ましくない。
【0053】
条件式(4)の下限値を超え、最大像高に対する全系の光学全長が小さくなると、軸上光線と軸外光線で発生する収差を共に小さくすることが困難となる。
【0054】
本発明の効果をさらに確実にするためには、条件式(4)の上限値を4.10、下限値を2.00とすることが好ましい。
【0055】
本発明の結像光学系は、さらに以下の条件式を満足することを特徴とする。
(5) 0.60<Y/BF<1.60
Y:結像光学系の最大像高
BF:結像光学系のバックフォーカス
【0056】
条件式(5)は、最大像高とバックフォーカスの比を規定するものである。条件式(5)を満足することで、光学系の小型化と、良好な周辺光量を得ることが可能となる。
【0057】
条件式(5)の上限値を超え、バックフォーカスが小さくなると、撮像素子に入射する光線角度が大きくなり、撮像素子の量子効率が著しく低下するため好ましくない。また、第3レンズ群L3の径が大きくなり、光学系の大型化を招く。
【0058】
上限値式(5)の下限値を超え、バックフォーカスが大きくなると、光学全長を小さくすることが困難となる。
【0059】
本発明の効果をさらに確実にするためには、条件式(5)の上限値を1.30、下限値を0.80とすることが好ましい。
【0060】
本発明の結像光学系は、さらに以下の条件式を満足することを特徴とする。
(6) 0.10<ENP/f<0.80
ENP:結像光学系の入射瞳位置
【0061】
条件式(6)は、入射瞳位置と全系の焦点距離の比を規定するものである。条件式(6)を満足することにより、光学系をコンパクトに保ちつつ良好な周辺光量を得ることができる。
【0062】
条件式(6)の上限値を超え、入射瞳位置が大きくなると、第1レンズ群L1の最も物体側のレンズ径が大きくなり、光学系の大型化を招くため好ましくない。
【0063】
条件式(6)の下限値を超え、入射瞳位置が小さくなると、開口絞りSを光線高の大きな物体側に配置することになるため、絞り機構が大きくなり鏡筒の巨大化を招く。
【0064】
本発明の効果をさらに確実にするためには、条件式(6)の上限値を0.50、下限値を0.15とすることが好ましい。
【0065】
本発明の結像光学系は、さらに以下の条件を満足することを特徴とする。
(7) 0.001<ΔPgF1p<0.040
ΔPgF1p:前記第1レンズ群L1に含まれる正レンズの異常分散性の平均値
【0066】
条件式(7)は第1レンズ群L1に含まれる正レンズの硝材の異常分散性を規定するものである。条件式(7)を満足することにより、2次スペクトルを良好に補正することが可能となる。
【0067】
条件式(7)の上限値を超え、第1レンズ群L1に含まれる正レンズの異常分散性の平均値が大きくなると、2次スペクトル補正が過剰になり、軸上色収差や倍率色収差を良好に補正するのが困難となるため、好ましくない。
【0068】
条件式(7)の下限値を超え、第1レンズ群L1に含まれる正レンズの異常分散性の平均値が小さくなると、2次スペクトルが補正不足になるため、好ましくない。
【0069】
本発明の効果をさらに確実にするためには、条件式(7)の上限値を0.036、下限値を0.010とすることが好ましい。
【0070】
本発明の結像光学系は、さらに以下の条件を満足することを特徴とする。
(8) 22<Δν3
Δν3=ν3n-ν3p
ν3n:前記第3レンズ群L3に含まれる負レンズのアッベ数の平均値
ν3p:前記第3レンズ群L3に含まれる正レンズのアッベ数の平均値
【0071】
条件式(8)は、第3レンズ群L3に使用される負レンズと正レンズのアッベ数差を規定するものである。第3レンズ群L3では軸外光線高が大きくなるため、使用する正レンズと負レンズのアッベ数差を大きくとることで、倍率色収差を良好に補正することができる。条件式(8)を満足することで、全系の倍率色収差を良好に補正することが可能となる。
【0072】
条件式(8)の下限値を超え、第3レンズ群L3に使用する負レンズと正レンズのアッベ数差が小さくなると、第3レンズ群L3で発生する倍率色収差が増大し、全系の倍率色収差が大きくなるため好ましくない。
【0073】
本発明の効果をさらに確実にするためには、条件式(8)の下限値を25とすることが好ましい。
【0074】
本発明の結像光学系は、さらに以下の条件を満足することを特徴とする。
(9) 0.10<|f3/f|<1.00
f3:前記第3レンズ群L3の焦点距離
f:全系の無限遠時の焦点距離
【0075】
条件式(9)は、第3レンズ群L3の焦点距離と全系の焦点距離の比を規定するものである。条件式(9)を満足することで、光学全長をコンパクトに保ちつつ、非点収差や歪曲収差の良好な補正が可能となる。
【0076】
条件式(9)の上限値を超え、第3レンズ群L3の屈折力が大きくなると、非点収差を補正することが困難となる。
【0077】
条件式(9)の下限値を超え、第3レンズ群L3の屈折力が小さくなると、軸外の光線を跳ね上げる効果が不足する。そのためバックフォーカスの増大を招き、全長を小さくすることが困難となる。
【0078】
本発明の効果をさらに確実にするためには、条件式(9)の上限値を0.80、下限値を0.30とすることが好ましい。
【0079】
次に、本発明の結像光学系に係る実施例のレンズ構成について説明する。なお、以下の説明ではレンズ構成を物体側から像側の順番で記載する。
【0080】
[面データ]において、面番号は物体側から数えたレンズ面または開口絞りSの番号、rは各レンズ面の曲率半径、dは各レンズ面の間隔、ndはd線(波長587.56nm)に対する屈折率、vdはd線に対するアッベ数、θgFはg線(波長435.84nm)とF線(波長486.13nm)の部分分散比を示している。
【0081】
面番号に付した*(アスタリスク)は、そのレンズ面形状が非球面であることを示している。また、BFはバックフォーカス、物面の距離は被写体からレンズ第1面までの距離を示している。
【0082】
面番号に付した(絞り)は、その位置に開口絞りSが位置していることを示している。平面又は開口絞りSに対する曲率半径には∞(無限大)を記入している。
【0083】
[非球面データ]には、[面データ]において*を付したレンズ面の非球面形状を与える各係数の値を示している。非球面の形状は、下記の式で表される。以下の式において、光軸に直交する方向への光軸からの変位をy、非球面との光軸の交点から光軸方向への変位(ザグ量)をz、基準球面の曲率半径をr、コーニック係数をKで表している。また、3、4、5、6、7、8次の非球面係数をそれぞれA3、A4、A5、A6、A7、A8で表している。
【0084】
[各種データ]には、各撮影距離合焦状態における焦点距離等の値を示している。
【0085】
[可変間隔データ]には、各種撮影距離合焦状態における可変間隔およびBFの値を示している。
【0086】
[レンズ群データ]には、各レンズ群を構成する最も物体側の面番号および群全体の合成焦点距離を示している。
【0087】
また、各実施例に対応する収差図において、d、g、Cはそれぞれd線、g線、C線を表しており、△S、△Mはそれぞれサジタル像面、メリジオナル像面を表している。
なお、以下のすべての諸元の値において、記載している焦点距離f、曲率半径r、レンズ面間隔d、その他の長さの単位は特記のない限りミリメートル(mm)を使用するが、光学系では比例拡大と比例縮小においても同等の光学性能が得られるので、これに限られるものではない。
【実施例0088】
図1は、本発明の実施例1の結像光学系のレンズ構成図である。
【0089】
実施例1は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群L1と、開口絞りSと、正の屈折力を有する第2レンズ群L2と、負の屈折力を有する第3レンズ群L3からなる。また、フォーカシングの際に、第2レンズ群L2が光軸方向に移動し、第1レンズ群L1と開口絞りSと第3レンズ群L3は像面に対し不動である。
【0090】
第1レンズ群L1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズ、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズ、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズと像側に凹面を向けた負メニスカスレンズの接合レンズからなる。また、部分系E1は最も像側の負メニスカスレンズからなる。
【0091】
第2レンズ群L2は、両凹レンズ、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズ、両凸レンズからなる。
【0092】
第3レンズ群L3は、両凹レンズ、物体側に凹面を向けた負メニスカスレンズ、両凸レンズからなる。
【0093】
以下に実施例1に係る結像光学系の諸元値を示す。
数値実施例1
単位:mm
[面データ]
面番号 r d nd vd ΔPgF
物面 ∞ (d0)
1 38.3837 3.3041 1.76385 48.49 -0.0022
2 95.0663 0.1500
3 25.5261 6.7160 1.49700 81.61 0.0373
4 172.1963 0.6366
5 46.6803 3.8749 1.43700 95.10 0.0564
6 1282.1427 0.9000 1.80610 40.73
7 23.2525 5.1841
8(絞り) ∞ (d8)
9 -29.9945 0.8000 1.68893 31.16
10 197.4429 0.1502
11 23.0771 2.8699 1.59349 67.00
12 38.4102 1.4798
13* 46.3945 3.6000 1.69350 53.20
14* -27.7276 (d14)
15 -104.3277 0.8000 1.59282 68.62
16 26.8495 8.8115
17 -24.1931 1.9999 1.48749 70.44
18 -107.5161 2.0448
19 93.7454 3.3478 1.80518 25.46
20 -112.2531 21.4645
像面
[非球面データ]
13面 14面
K 0.00000 0.00000
A4 -2.67372E-05 9.76175E-06
A6 -7.27561E-08 -7.78960E-08
A8 5.81169E-10 7.03174E-10
[各種データ]
INF 最短撮影距離
焦点距離 87.30 81.33
Fナンバー 2.90 2.91
全画角2ω 26.37 26.35
像高Y 21.63 21.63
レンズ全長 80.02 80.02
[可変間隔データ]
INF 最短撮影距離
d0 ∞ 1725.6600
d8 9.7858 8.2908
d14 2.1000 3.5950
[レンズ群データ]
群 始面 焦点距離
L1 1 81.00
L2 9 39.26
L3 15 -41.29
E1 6 -29.39
実施例2は、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群L1と、開口絞りSと、正の屈折力を有する第2レンズ群L2と、負の屈折力を有する第3レンズ群L3からなる。また、フォーカシングの際に、第2レンズ群L2が光軸方向に移動し、第1レンズ群L1と開口絞りSと第3レンズ群L3は像面に対し不動である。
第1レンズ群L1は、物体側から順に、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズ、物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズ、両凸レンズ、像側に凹面を向けた負メニスカスレンズと物体側に凸面を向けた正メニスカスレンズの接合レンズからなる。また、部分系E1は最も像側の接合レンズからなる。