(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061518
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】防護柵
(51)【国際特許分類】
E01F 7/04 20060101AFI20220412BHJP
【FI】
E01F7/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020169473
(22)【出願日】2020-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】501047173
【氏名又は名称】株式会社ライテク
(71)【出願人】
【識別番号】508112852
【氏名又は名称】株式会社トーエス
(71)【出願人】
【識別番号】512077273
【氏名又は名称】株式会社T.クリエーションセンター
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】細川 豊
【テーマコード(参考)】
2D001
【Fターム(参考)】
2D001PA05
2D001PA06
2D001PC03
2D001PC04
2D001PD06
2D001PD10
2D001PE01
(57)【要約】
【課題】従来にない支柱構造により、支柱に用いる管本体の軽量化が可能で、効率よく強度を確保できる防護柵を提供する。
【解決手段】設置場所2に間隔を置いて支柱3,3A,3A,3を立設し、これら支柱3,3A,3A,3の間に網体5を設けた防護柵1において、支柱3,3A,3A,3は、上部管本体14が上方に向かって断面が縮小する縮小管であるから、防護柵1支柱3,3A,3A,3に作用する外力は、支柱3,3A,3A,3の下部が最大で、上方に向かって次第に小さくなるため、支柱3,3A,3A,3に縮小管を用いることにより、作用する外力の小さい上部の支柱断面積と外形を小さくできるため、重量も軽量となり、施工性に優れると共に,景観性にも優れる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設置場所に間隔を置いて支柱を立設し、これら支柱の間に防護面を設けた防護柵において、前記支柱は上方に向かって断面が縮小する縮小管であることを特徴とする防護柵。
【請求項2】
前記支柱は、下側部分が地中に埋設された支柱下部と、前記支柱下部の上側に連結した支柱上部とを備え、前記支柱上部が前記縮小管であることを特徴とする請求項1記載の防護柵。
【請求項3】
前記縮小管の内面側に複数の補強鋼棒を周方向均等間隔に配置し、前記支柱の内部に硬化型充填材を充填したことを特徴とする請求項1又は2記載の防護柵。
【請求項4】
前記縮小管の断面形状が、六角形,八角形,十二角形のいずれかであり、前記縮小管の内面側の角部の位置に補強鋼棒を配置して複数の前記補強鋼棒を周方向均等間隔に配置し、前記支柱の内部に硬化型充填材を充填したことを特徴とする請求項1又は2記載の防護柵。
【請求項5】
上方に向かって縮小するスペーサに、複数の前記補強鋼棒を取り付けたことを特徴とする請求項3記載の防護柵。
【請求項6】
上方に向かって縮小するスペーサに、複数の前記補強鋼棒を取り付けたことを特徴とする請求項4記載の防護柵。
【請求項7】
前記縮小管の外周の平坦面に、取付部材の平坦面を溶着したことを特徴とする請求項4記載の防護柵。
【請求項8】
前記縮小管の外周の平坦面に、取付部材の横方向の直線縁部を溶着したことを特徴とする請求項4記載の防護柵。
【請求項9】
前記防護面が前記支柱間に設ける網体を備え、この網体を前記支柱間に開閉可能に設けたことを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の防護柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、津波発生時の漂流物や落石・崩壊土砂・雪崩などを捕捉する防護柵に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の落石・崩壊土砂・雪崩などを捕捉する防護柵として、支柱となる耐荷材をコンクリートなどの基礎に間隔を置いて複数立設し、耐荷材間に金網などを張設して耐荷材間を塞ぎ、前記金網により落石,雪崩や崩壊土砂などを受ける防護面を構成した防護柵(例えば特許文献1)がある。
【0003】
この防護柵では、基礎の上面位置に上下跨るように補強体を部分的に挿入配置しており、圧縮力が働く圧縮領域側と、引張力が働く引張領域側に、それぞれ鉄筋からなる補強材を配設している。
【0004】
また、下側部分が地中に埋設される支柱下部と、前記支柱下部の上側に前記支柱下部と同軸に配置された支柱上部と、前記支柱下部と前記支柱上部とを連結する受け筒部とを備え、傾斜地の山側斜面に設置される防護体用の支柱を備えた防護柵(例えば特許文献2)がある。
【0005】
この防護柵では、前記支柱下部と支柱上部の内部にそれぞれ補強体である補強用鋼材を挿入配置し、この補強用鋼材には、圧縮力が働く圧縮領域側と、引張力が働く引張領域側に、補強用の棒鋼が設けられている。
【0006】
また、パイプ支柱の鋼管の内面で、落石等を受けると引張領域となる前側に3本の鉄筋を溶着固定し、さらに、ロープ材の係合部として、上下の係合部材と、これら上下の係合部材により形成され前記ロープ材を長さ交差方向から挿入可能な挿入受け部と、この挿入受け部を開閉する開閉手段とを備えた防護柵(例えば特許文献3)がある。
【0007】
前記係合部を
図23に示すと、係合部たる挿通連結部100は、ロープ材に対応して、支柱101の鋼管の前側に多段に設けられ、上下対をなす係合部材102,103を前方の突出して設け、これら係合部材102,103は断面が円形の丸棒などからなり、この丸棒は鋼製などであって、支柱101の鋼管の円筒形の外周に溶着されている。この場合、係合部材102,103の基端側の平坦面102F,103Fを鋼管の外周に溶着部104により溶着しており、それら上下の係合部材102,103の間に、前記ロープ材を側方から挿入可能な挿入受け部105が形成されている。そして、挿入受け部105側には、係合部材102,103の円筒形の外周面102G,103Gが位置している。また、上の係合部材102の先端上部に切欠き段部106を形成すると共に、下の係合部材103の先端下部に切欠き段部106を形成し、上下の切欠き段部106,106の対応する位置で係合部材102,103に透孔107,107を穿設し、開閉手段たるボルト108を前記透孔107,107に挿通し、そのボルト108にナット109,109Aを螺合することにより、前記挿入受け部105を閉めることができ、逆に、ナット109,109Aを外してボルト108を抜くことにより、挿入受け部105を開くことができる。
【0008】
また、両側に配置する端末パイプ支柱の間に複数の中間パイプ支柱を間隔を置いて並設し、これらパイプ支柱に上下に間隔を置いて索状体としてのケーブルを多段に架設すると共に、防護用網体として金属線材で編成した金網を張設し、前記パイプ支柱内に補強体を設けた防護柵(例えば特許文献4)がある。
【0009】
この防護柵では、パイプ支柱の外周に、連結杆を取り付けるための上下一対の取付プレート(特許文献4の
図4)とケーブルを取り付けるための取付プレート(特許文献4の
図5)が固定され、これを
図24に示すと、円形の支柱101の外周に板片状の取付プレート111を溶着などにより固定するために、板状金具である取付プレート111の縁部112を、支柱101の外周面に合わせて円弧状に加工している。
【0010】
ところで、津波に対する対策として、従来はコンクリート製の津波防護壁を構築することで対処していたが、津波等での浸水時に浮力が働き、コンクリート基礎ごと防護柵が転倒する虞があった。このため津波の押し波及び引き波のエネルギーに堪え得る必要があり、おのずと壁高も高く、壁厚も厚い大型構造物となり、経済性、施工性、景観性に難があった。
【0011】
これに対して、港湾や海岸沿線に構築し、津波発生時の押し波による陸側への船舶などの流入物、及び引き波による車両や建物などの漂流物を捕捉する防護柵が提案されている。
【0012】
このような津波対策用の防護柵として、津波発生時の予測される波の流れ方向と略直交する方向に所定間隔毎に並べて地面に立設された複数の支柱と、該複数の支柱によって支持されて張架された高強度の網体とを有する対津波用防護柵(例えば特許文献5)や、岸壁の基礎部に立設された円筒形状の支柱を備え、前記支柱間にワイヤを張ることによりスクリーンを構成した津波による漂流物を捕捉する防護柵たる構造物(例えば特許文献6)や、津波流の襲来が想定される設置基盤に複数のベースを互いに離間するようにして固定配備すると共に、これらの各ベースには、津波流の流れてくる前側に倒れて待機する一方津波流により浮上しながら起き上がるように、起倒自在な防護柱がヒンジ軸で支持されて設けられた防護柵たる非常用防護装置(例えば特許文献7)がある。
【0013】
上記の津波対策用の防護柵では、津波発生時は津波エネルギーを減衰させて流入物及び漂流物を阻止することができ、常時はワイヤや網などで構成される阻止面が透過性を有しており、極端に景観を損なうことがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2012-177261号公報
【特許文献2】特開2017-203292号公報
【特許文献3】特開2007-277896号公報
【特許文献4】特開2002-115213号公報
【特許文献5】特開2013-159895号公報
【特許文献6】特開2013-36190号公報
【特許文献7】特開2015-200176号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
落石・崩壊土砂・雪崩用及び津波対策用の両者の防護柵において、外力により支柱に作用する力は、支柱の下部が最も大きく、上部に行くにしたがって小さくなるが、従来の両者の防護柵とも同一断面の支柱を使用しているため、支柱の重量が不必要に重くなると共に、経済性、施工性、景観性に劣るという問題がある。
【0016】
また、特許文献1の落石等の防護柵では、支柱内に補強材を設けることにより、支柱の耐力が向上するが、補強材の全長が鋼管の全長に対して短いため、落石などの衝撃を受けると、補強材の端部箇所において、支柱に応力が集中するという問題がある。
【0017】
これに対して、特許文献2の落石防護柵では、支柱の支柱下部と支柱上部内に、それら支柱下部と支柱上と略同じ長さの補強用鋼材を挿入しているが、補強用鋼材の棒鋼が支柱内の前側と後側のみに設けられているため、前後からの衝撃力に対して耐力を有するものの、前後からの衝撃力に対する耐力に比べて、斜め方向や横方向からの衝撃力に対して耐力に劣る面がある。また、前側のみに鉄筋を配置した特許文献3の防護柵も同様である。
【0018】
そして、仮に、前後に棒鋼を配置した特許文献2の防護柵及び前側のみに鉄筋を配置した特許文献3の防護柵を、津波対策用に用いた場合、津波発生時における海からヘドロを含んだ押し波や、海に戻る引き波により船や漂流物が流されるため、これらにより防護柵の支柱に前後方向以外に斜めや略横方向の衝撃力が加わるため、これらの衝撃力に対して、鉄筋などを周方向において部分的に配置した従来の支柱では、対抗することが難しい。
【0019】
ところで、特許文献1~4の防護柵などのように、断面円形の支柱を用いるものでは、
図23に示したように、取付部材たる係合部材102,103の平坦な平坦面102F,103Fを、支柱101の円弧状の外周に突き合わせて固定するため、係合部材102,103の位置と向きを正しく位置決めして溶接する必要があり、溶着作業が煩雑となる。
【0020】
また、
図24に示したように、板片状の金具である取付プレート111を取り付ける場合、支柱101の外周面に沿わせる取付プレート111の縁部112を円弧状に加工する必要があるため、加工コストが上昇するという問題がある。
【0021】
一方、特許文献7の防護柵では、支柱を起倒自在に設け、平時は支柱を倒すことにより低く環境を損なわないが、押し波時に支柱を起立状態に保つために引き止め部材を設け、引き波時に起立状態に保つために反転ストッパを設けるため、構造が複雑になるという問題がある。
【0022】
そこで、本発明は上記した問題点に鑑み、従来にない支柱構造により、支柱に用いる管本体の軽量化が可能で、効率よく強度を確保できる防護柵を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、設置場所に間隔を置いて支柱を立設し、これら支柱の間に防護面を設けた防護柵において、前記支柱は上方に向かって断面が縮小する縮小管であることを特徴とする。
【0024】
請求項2に係る発明は、前記支柱は、下側部分が地中に埋設された支柱下部と、前記支柱下部の上側に連結した支柱上部とを備え、前記支柱上部が前記縮小管であることを特徴とする。
【0025】
請求項3に係る発明は、前記縮小管の内面側に複数の補強鋼棒を周方向均等間隔に配置し、前記支柱の内部に硬化型充填材を充填したことを特徴とする。
【0026】
請求項4に係る発明は、前記縮小管の断面形状が、六角形,八角形,十二角形のいずれかであり、前記縮小管の内面側の角部の位置に補強鋼棒を配置して複数の前記補強鋼棒を周方向均等間隔に配置し、前記支柱の内部に硬化型充填材を充填したことを特徴とする。
【0027】
請求項5に係る発明は、上方に向かって縮小するスペーサに、複数の前記補強鋼棒を取り付けたことを特徴とする。
【0028】
請求項6に係る発明は、上方に向かって縮小するスペーサに、複数の前記補強鋼棒を取り付けたことを特徴とする。
【0029】
請求項7に係る発明は、前記縮小管の外周の平坦面に、取付部材の平坦面を溶着したことを特徴とする。
【0030】
請求項8に係る発明は、前記縮小管の外周の平坦面に、取付部材の横方向の直線縁部を溶着したことを特徴とする。
【0031】
請求項9に係る発明は、前記防護面が前記支柱間に設ける網体を備え、この網体を前記支柱間に開閉可能に設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0032】
請求項1の構成によれば、防護柵の支柱に作用する外力は、支柱の下部が最大で、上方に向かって次第に小さくなるため、支柱に縮小管を用いることにより、作用する外力の小さい上部の支柱断面積と外形を小さくできるため、重量も軽量となり、施工性に優れると共に,景観性にも優れる。
【0033】
請求項2の構成によれば、支柱下部を地中に埋設し、この支柱下部に支柱上部を連結して支柱を固定することにより、大型のコンクリート基礎などを設けることができない設置場所でも、所定の据付強度を備えた支柱を構築することができる。
【0034】
請求項3の構成によれば、硬化型充填材により縮小管に複数の補強鋼棒を一体化して縮小管の強度を補強することができる。
【0035】
請求項4の構成によれば、断面形状が六角形,八角形又は十二角形であるため、支柱の意匠性に優れた新規な外観が得られると共に、四角形に比べて、全方向からの荷重に略均等に対抗することができる。また、硬化型充填材により縮小管に複数の補強鋼棒を一体化して縮小管の強度を補強することができ、しかも、内面側の角部の位置を基準として複数の補強鋼棒の縮小管への位置決めを簡便に行うことができる。
【0036】
請求項5の構成によれば、上方に向かって縮小するスペーサに補強鋼棒を取り付けることにより、縮小管内に複数の補強鋼棒を位置決め状態で配置することができる。
【0037】
請求項6の構成によれば、上方に向かって縮小するスペーサに補強鋼棒を取り付けることにより、縮小管内に複数の補強鋼棒を位置決め状態で配置することができる。
【0038】
請求項7の構成によれば、円形の支柱と異なり、平坦面を縮小管の平坦な外面に溶着することができ、取付作業が容易となる。
【0039】
請求項8の構成によれば、円形の支柱と異なり、直線縁部を縮小管の平坦な外面に溶着することができ、取付作業が容易となる。
【0040】
請求項9の構成によれば、網体を通して視認性が確保されるため、景観への影響を抑えることができ、しかも、常時は網体を開いた状態にすることにより、景観を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図3】同上、支柱上部の上部管本体を示し、
図3(A)は平面図、
図3(B)は底面図である。
【
図8】同上、支柱上部と支柱下部を連結した状態の受け筒部の平断面図である。
【
図9】同上、端末の支柱の連結部材を示し、
図9(A)は平面図、
図9(B)は正面図である。
【
図10】同上、中間の支柱の連結部材を示し、
図10(A)は平面図、
図10(B)は正面図である。
【
図13】本発明の実施例2を示す全体正面図である。
【
図15】本発明の実施例3を示す取付片を取り付けた支柱上部の断面図である。
【
図16】同上、挿通連結部を取り付けた支柱上部の断面図である。
【
図17】本発明の実施例4を示す支柱上部の断面図である。
【
図18】同上、受け筒部を取り付けた支柱下部の断面図である。
【
図19】同上、支柱上部と支柱下部を連結した状態の受け筒部の平断面図である。
【
図20】本発明の実施例5を示す支柱の断面図である。
【
図21】本発明の実施例6を示す支柱の断面図である。
【
図22】本発明の実施例7を示す支柱上部の平面図である。
【0042】
本発明における好適な実施例について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施例は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例0043】
図1~
図12は本発明の実施例1を示し、津波対策用を例にして説明する。
図1に示すように、防護柵1は、津波の発生が予想される箇所に設置されるもので、設置場所2は、津波の予想される波の方向と略直交する方向に間隔を置いて複数の支柱3,3Aが立設されている。また、防護柵1は、例えば4本の支柱3,3A,3A,3と、各支柱3,3A,3A,3間に設けた防護面4とにより構成され、それら4本の支柱3,3A,3A,3は、左右方向に均等な間隔を置いて立設されている。また、支柱3,3A,3A,3は、その全長の約1/2程度の支柱地中部が地中に位置し、1/2程度の支柱地上部が地表から略垂直に立設されている。
【0044】
前記支柱3は、防護柵1の端部に設けられる端部支柱であり、前記支柱3Aは、前記端部の支柱3,3の間に設けられる中間支柱であり、この例では、端末の支柱3と支柱3の間に2本の中間の支柱3A,3Aを等間隔で設け、4本の支柱3,3A,3A,3を一組として前記防護面4が設けられている。
【0045】
前記防護面4は、菱形金網からなる網体5と、支柱3,3間に多段に設けられた横ロープ材6とを備え、この横ロープ材6はワイヤロープなどからなる。
【0046】
前記支柱3,3Aは、支柱上部11と、下側部分が地中に埋設された支柱下部12と、これら支柱上部11と支柱下部12とを連結する受け筒部13とを備え、前記支柱上部11は、前記支柱下部12の上側に該支柱下部12と同軸に配置され、現場で支柱上部11と支柱下部12を組み立ててなる。また、それら支柱上部11は例えば5m程度、支柱下部12は例えば定尺の5.5m程度であり、支柱上部11が支柱下部12より短い。
【0047】
前記受け筒部13は、前記支柱下部12の上端にその長さの略半分を外嵌し、その受け筒部13の下端を支柱下部12の外面に溶着部16により溶着することにより、受け筒部13が支柱下部12と同軸に固定されている。そして、この例では、支柱上部11の管本体である上部管本体14,支柱下部12の管本体である下部管本体15及び受け筒部13の断面形状は、正八角形をなす。尚、上部管本体14の上端における最大幅寸法Hは250mm程度、上部管本体14の下端における最大幅寸法Hは300mm程度である。この最大幅寸法Hは、上部管本体14の対向する外角部の間隔である。
【0048】
図1及び
図2に示すように、前記上部管本体14は下から上に向かって外形(断面)が縮小する縮小管たる縮小鋼管であり、上下方向の中心軸を中心として下端から上端に向かって次第に平断面が狭まるように縮小し、前記中心線に対して点対称な断面形状を有する。
【0049】
前記縮小鋼管は、上端となる部分が下端となる部分より幅狭になるように次第に幅が縮小する略帯板状の鋼板を形成し、この鋼板を幅方向に八角形状になるようにプレスにより徐々に巻き、八角形状に巻いた鋼板の幅方向の両端を縮小鋼管の長さ方向に溶接してなる。この溶接は、前記上部管本体14の外平面18の幅方向中央で鋼板の端部を突き合わせて行われる。
【0050】
このように一定厚さを有する前記鋼板から形成した支柱上部11は、全長で同一厚さを有し、前記プレスにより周方向等間隔に8か所の内角部17が形成されると共に、隣り合う内角部17,17の間に平坦な前記外平面18が形成されている。
【0051】
また、前記下部管本体15及び受け筒部13は、全長に渡って同一厚さで同一形状の断面が連続する鋼管からなり、前記受け筒部13は前記下部管本体15より断面が大きい。また、前記上部管本体14の下端の外形は、前記下部管本体15の外形と同一である。さらに、この例では、上部管本体14と下部管本体15は同一厚さであり、前記上部管本体14の下端の断面形状は、前記下部管本体15の断面形状と同一である。
【0052】
前記上部管本体14内には、鋼製の補強体21が設けられ、この補強体21は上部管本体14より僅かに短く、略同一長さを有する。尚、両端部において、補強体21は、上部管本体14より100mm、この例では20mm程度短く、全長で200mm、この例では40mm短く、或いは両者の長さが同じでもよい。
【0053】
前記補強体21はスペーサである補強十字板22と、この補強十字板22により位置決めされた複数の補強鋼棒23とを備え、補強十字板22と補強鋼棒23は同一長さである。尚、補強十字板22の長さは、両側の固定部24,24の間隔以上であればよい。また、補強十字板22は一側板部22Aの中心両側に他側板部22B,22Bを取り付けて断面十字形をなし、4つの外縁部22F,22F,22F,22Fの間隔が上方に向かってテーパー状に収縮する。尚、前記補強鋼棒23は異形鉄筋などからなる。
【0054】
また、前記補強十字板22の上端側と下端側には、前記補強鋼棒23を固定する前記固定部24が取り付けられており、この固定部24は、円形の鋼製リングからなり、前記補強十字板22の外縁部22F,22F,22F,22Fに、外嵌されると共に、溶着などにより固定されている。尚、両側の固定部24,24は取付位置に対応した直径を有し、上端側の固定部24が下端側の固定部24より径小である。
【0055】
また、一例として、固定部24の厚さは9mm,その支柱長さ方向の長さは、100mm以下、この例では12mm程度であり、軽量である。また、補強十字板22及び固定部24の厚さは、上部管本体14の厚さに比べて、薄い。尚、補強十字板22には、一側板部22A及び他側板部22Bのそれぞれに、管本体14,15内に充填材19を充填するための透孔22Tが複数穿設されている。
【0056】
また、両端側の固定部24,24の外周に、8本の前記補強鋼棒23が円周方向に等間隔で溶着などにより固定されている。尚、上部管本体14の断面形状がn角形(nは6以上の自然数であって、好ましくは偶数)の場合、n本の補強鋼棒23が固定される。
【0057】
支柱上部11の上部管本体14内に補強体21を挿入した状態(
図4)で、その上部管本体14の両端と補強体21の両端には僅かな隙間があり、補強体21の両端部を上部管本体14に溶着などにより固定する。この場合、上部管本体14内には8か所の内角部17があるから、この内角部17への補強鋼棒23の位置決めを容易に行うことができる。尚、下部管本体15及び受け筒部13内にも、8か所の内角部17が設けられていると共に、隣り合う内角部17,17の間に平坦な外平面18が形成されている。
【0058】
そして、外形が最大の下端側から上部管本体14内に補強体21を挿入し、補強体21の両端において、補強鋼棒23をスポット溶接などにより上部管本体14の内面に固定する。この後、支柱上部11にメッキ処理を施し、メッキ処理後、上部管本体14内に無収縮モルタルなどのセメント系の硬化型充填材19を充填し、この充填材19が硬化することにより、上部管本体14と補強体21とが一体化される。この場合、組立前に上部管本体14と補強体21とを個別にメッキ処理した後、支柱上部11を組み立ててもよい。尚、硬化型充填材19は、充填後経時的に硬化するものである。
【0059】
前記支柱下部12の下部管本体15内には、鋼製の補強体21Aが設けられ、この補強体21Aは下部管本体15より僅かに短く、略同一長さを有する。尚、両端部において、補強体21は、上部管本体14より100mm、この例では20mm程度短く、全長で200mm、この例では40mm短く、或いは両者の長さが同じでもよい。また、この支柱下部用の補強体21Aと前記支柱上部用の補強体21とは、補強体21Aの外縁部22F,22F,22F,22F間が全長に渡って同一幅である点以外は、同一である。
【0060】
また、
図5~
図7に示すように、支柱3,3Aの据付状態で、補強体21,21Aは、一側板部22A又は他側板部22Bが防護柵1の前後方向と左右方向に向き、上部管本体14,下部管本体15及び受け筒部13は、前側の外平面18と後側の外平面18が、防護柵1の前後に位置し、補強鋼棒23が内角部17の位置になるように補強体21,21Aに取り付けられている。即ち、補強鋼棒23は、一側板部22A又は他側板部22Bに対して、線対称の位置に配置されている。尚、支柱3,3Aの平断面図においては、図中上下が、支柱3,3Aの前後で、図中左右が支柱3,3Aの左右であり、
図5及び
図6などに示すように、一側板部22Aを前後方向に配置すると共に、他側板部22Bを左右方向に配置している。このように内面側の角部である内角部17に補強鋼棒23を配置することにより、補強鋼棒23を縮小管の中心から離れた位置に配置することができるため、補強鋼棒23による縮小管の断面性能を向上することができる。
【0061】
そして、支柱上部11と略同様に、支柱下部12においても、受け筒部13を取り付けた下部管本体15内に補強体21Aを挿入し、補強体21Aの両端において、補強鋼棒23をスポット溶接などにより下部管本体15の内面に固定する。この後、支柱上部11にメッキ処理を施し、メッキ処理後、無収縮モルタルなどのセメント系の硬化型充填材19を充填し、この充填材19が硬化することにより、下部管本体15と補強体21Aとが一体化される。この場合、組立前に下部管本体15と補強体21Aと受け筒部13を個別にメッキ処理した後、支柱下部12を組み立ててもよい。
【0062】
支柱上部11の上部管本体14には、その下端の外周面に、該上部管本体14の軸方向に配置された複数の上部突条26Jが設けられている。この上部突条26Jは、複数(3本)の鋼棒27を上部管本体14の外周面に溶着したものである。また、支柱下部12の下部管本体15には、その上端の外周面に、該下部管本体15の軸方向に配置された複数の下部突条26Kが設けられている。この下部突条26Kは、複数(3本)の鋼棒27を下部管本体15の外周面に溶着したものであり、下部管本体15と受け筒部13との間に配置されている。尚、上部突条26Jと下部突条26Kは支柱3,3Aの据付状態において、平面同一位置に配置される。
【0063】
また、上部突条26Jと下部突条26Kの長さは、前記受け筒部13の長さの1/2以下であり、支柱上部11と支柱下部12の接合状態で、それら上部突条26Jと下部突条26Kは受け筒部13内に収納される。
【0064】
図7(A)に示すように、前記受け筒部13は、その内周面に軸方向に配置された複数の受け突条28が設けられている。この受け突条28は、複数(3本)の鋼棒29を受け筒部13の内周面に溶着したものである。尚、
図7(A)では下部突条26Kを図示省略している。
【0065】
前記受け突条28は、受け筒部13の内周面の前後左右の4か所に設けられ、前記上部突条26J及び下部突条26Kは、前記受け突条28の間の位置に設けられている。
【0066】
図9などに示すように、防護柵1の端部の支柱3には、前記横ロープ材6の端部を連結するために連結部材31が複数段に設けられている。この連結部材31は、前記支柱上部11に外嵌する二つ割りの分割バンド32,32を備え、これら分割バンド32,32を合わせた形状が前記上部管本体14の外形に対応した八角形をなし、一方の分割バンド32に取付片33を縦方向に設け、この取付片33には透孔33Tが穿設されている。尚、分割バンド32は上下方向において略同一幅を有する。それら分割バンド32の端部に連結部34,34をそれぞれ設け、これら連結部34,34の透孔34T,34Tにボルト35を挿通し、このボルト35にナット35Nを螺合することにより、支柱上部11に連結部材31が固定される。尚、連結部材31は、取付片33が隣の支柱3A側に向くように支柱3に取り付けられる。
【0067】
また、防護柵1の中間の支柱3Aに設ける連結部材31Aは、前記取付片33を設ける代わりに、一方の分割バンド32に、前記横ロープ材6の途中を挿通して連結する挿通連結部41を設けている。
【0068】
前記挿通連結部41は、
図23に示した挿通連結部100と同一構成であり、鋼製丸棒の上,下係合部材42,43の間に横ロープ材6の途中を挿入する挿入受け部44を設け、この挿入受け部44側には、係合部材42,43の円筒形の外周面が位置している。また、上の係合部材42の先端上部に切欠き段部42Dを形成すると共に、下の係合部材43の先端下部に切欠き段部43Dを形成し、上下の切欠き段部42D,43Dの対応する位置で係合部材42,43に透孔42T,43Tを穿設し、これら透孔42T,43Tに、縦方向のボルト45を挿通し、このボルト45にナット45N,45Nを螺合することにより、挿入受け部44の先端開口を閉めて横ロープ材6の途中を支柱3Aに連結するものである。この場合、取付部材たる上,下係合部材42,43の平坦面である縁部42F,43Fを、前記分割バンド32の外周の平坦面に当接した状態で、縁部42F,43Fを溶接により外平面18に取り付けている。尚、連結部材31Aは、挿通連結部41が前側を向くように支柱3Aに取り付けられる。
【0069】
尚、支柱3,3Aの上部管本体14は縮小鋼管からなるから、各連結部材31,31Aの大きさは取付位置の上部管本体14の外形に対応して形成されている。また、上部管本体14には、連結部材31,31Aの高さ位置を位置決めする位置決め部46が設けられている。そして、最下段の連結部材31,31Aは受け筒部13に取り付けられる。
【0070】
前記位置決め部46は、
図2,
図6及び
図9に示すように、前記連結部材31,31Aの上下幅に対応して、上部管本体14及び受け筒部13の外面に位置決め突起47を周方向に間隔を置いて複数設けてなり、上下の位置決め突起47,47の間で、上部管本体14の外周面に前記連結部材31,31Aが取り付けられ、これにより連結部材31,31Aの上下位置がずれることなく、位置決めされる。尚、位置決め突起47は各連結部材31,31Aの取付位置に対応して、周方向に間隔を置いて複数設けられている。
【0071】
前記横ロープ材6の端末は、
図11に示すように、端末金具51により前記取付片33に連結されている。前記端末金具51は、U字状のジョイント金具52と、このジョイント金具52にナット53によって固定される板片状の連結部54とで構成され、この連結部54には、前記ジョイント金具52の基部に形成した雄螺子部52Aを挿通する一対の透孔55,55と、これら透孔55,55の間に位置して前記横ロープ材6を通す挿通孔56とが形成されている。この挿通孔56は、前記横ロープ材6の末端に固着されるストッパ57に比べて、径小に形成され、該ストッパ57が抜け止め状態で連結部54に連結されており、挿通孔56を挿通した横ロープ材6の端末に、前記ストッパ57が取り付けられている。
【0072】
従って、ジョイント金具52を取付片33の透孔33Tに挿通し、ジョイント金具52の両端を連結部54の透孔55,55に挿通し、そのジョイント金具52の両端部にナット53,53を螺合することにより、端末の支柱3に横ロープ材6の端部が連結される。
【0073】
図1に示すように、支柱3,3A間及び支柱3A,3A間に複数(5つ)の分散維持装置61が設けられている。この分散維持装置61は、
図1及び
図12に示すように、縦方向の連結部材62を有し、この連結部材62は縦長の鋼製フラットバーなどからなり、各段の横ロープ材6に対応して、Uボルト挿通孔63,63が上下に並んで形成され、上下に並んだ挿通孔63,63に対応して連結部材62には受け座64が設けられている。そして、この受け座64と挿通孔63にUボルト65の端部を挿通し、該端部にナット66を螺合して受け座64とUボルト65との間に横ロープ材6が挟着される。この分散維持装置61により、多段に設けた横ロープ材6,6・・の間隔が保持されると共に、受けた衝撃力を複数の横ロープ材6,6・・・に分散することができる。
【0074】
前記網体5は、網体連結手段たる結束コイル68などにより前記横ロープ材6に取り付けられ、支柱3と分散維持装置61の間、分散維持装置61,61の間、分散維持装置61と支柱3Aとの間で、各段に結束コイル68が設けられている。尚、網体5の両端縁部は、図示しない連結構造により端末の支柱3,3に連結されている。
【0075】
図1に示すように、前記支柱上部11の上端には、その上部開口を塞ぐ蓋体69が設けられ、この蓋体69は鋼製で溶着などにより支柱上部11に固定されている。
【0076】
支柱上部11に充填した充填材19と、受け筒部13を取り付けた支柱下部12に充填した充填材19が硬化した後、さらに、好ましくは連結部材31,31Aを取り付けた後、それら支柱上部11,支柱下部12及び網体5などを運搬車両により設置場所2の近くまで運搬する。このように支柱3,3Aを支柱上部11と支柱下部12に分割することにより、1本物の支柱に比べて、運搬作業及び後の据付作業を容易に行うことができる。
【0077】
設置場所2の支柱3,3Aの設置位置に、掘削手段たるダウンザホールハンマー(図示せず)により、掘削孔77を形成し、この掘削孔77に支柱下部12を挿入し、掘削孔77にグラウト材などの凝固材を充填して支柱下部12を設置場所2に建て込む。尚、受け筒部13の下端位置が設置場所2の設置面に位置する(
図1)。
【0078】
支柱下部12の建て込みが終わった後、支柱上部11の下端を受け筒部13に挿入するようにして連結する。この場合、支柱上部11の下端部を受け筒部13上端側に挿入し、上部突条26Jを受け突条28に係合させることによって仮固定する。支柱上部11を受け筒部13に挿入するときは、各上部突条26Jが相手方の受け突条28の間に入り込むように挿入する。
【0079】
従って、上部突条26Jが受け突条28にガイドされる形になり、支柱上部11を規定の向きに正確に挿入することができる。また、突条26J,28は、支柱上部11と受け筒部13が互いに隙間を空けて同軸に配置されるように位置決めするスペーサの働きをし、上部突条26Jと受け突条28が適度に係合することによって、支柱上部11と受け筒部13が仮固定される。また、受け筒部13及び上部管本体14の断面形状が八角形であるから、周方向の位置合わせを簡便に行うことができる。
【0080】
支柱上部11の下端を受け筒部13に挿入して仮固定した後、支柱下部12の外面及び支柱上部11の外面と受け筒部13の内面との隙間に充填材19に充填し、充填材19が硬化することにより、受け筒部13を設けた支柱下部12と支柱上部11が一体的に接合され、支柱3,3Aが形成される。尚、充填材19は、いわゆる間詰め材であり、例えば、無収縮モルタルが好適であり、セメントやエポキシ系接着剤でも良い。また、突条26J,26K,28は、支柱上部11と支柱下部12を接続する受け筒部13内において、スペーサ機能以外に補強鋼材として機能する。
【0081】
設置場所2に支柱3,3Aを据え付けた後、横ロープ材6を多段に取り付け、横ロープ材6に分散維持装置61を取り付け、網体5を横ロープ材6に連結し、網体5の端部を端末の支柱3,3に連結する。
【0082】
上記のような防護柵1を、海岸近くの津波が予想される設置場所2に構築した場合、支柱下部12を地中に建て込んだため、コンクリート基礎のように浮力による影響が少なく、網体5を用いるから、経済性、施工性、景観性にも優れる。
【0083】
また、縮小鋼管である上部管本体14を支柱3,3Aの地上部に用いるから、加わるモーメントの大きい支柱3,3Aの基部を太く、モーメントの小さい頂部を細くし、頂部の重量を減らすことで自重や重心の安定を図ることができる。
【0084】
さらに、津波対策用の防護柵1としては、波発生時における海からヘドロを含んだ押し波や、海に戻る引き波により、船や、自動車,流木などの漂流物が流され、これらにより防護柵1の支柱3,3Aに前後方向以外に斜め方向や略横方向の衝撃力が加わっても、これらの衝撃力に対して、補強鋼棒23を周方向に均等に配置すると共に、支柱3,3Aの全長に配置することにより、それら斜め方向や略横方向の衝撃力に対しても効果的に対抗することができる。
【0085】
また、防護面4に網体5と横ロープ材6を用いることにより、押し波及引き波のエネルギーを減衰し、防護構造を簡略化できる。さらに、漂流物と共に流された動物などを救助することができる。
【0086】
このように本実施例では、請求項1に対応して、設置場所2に間隔を置いて支柱3,3A,3A,3を立設し、これら支柱3,3A,3A,3の間に防護面4を設けた防護柵1において、支柱3,3A,3A,3は、上部管本体14が上方に向かって断面が縮小する縮小管であるから、防護柵1の支柱3,3A,3A,3に作用する外力は、支柱3,3A,3A,3の下部が最大で、上方に向かって次第に小さくなり、支柱3,3A,3A,3に縮小管を用いることにより、作用する外力の小さい上部の支柱断面積と外形を小さくできるため、重量も軽量となるから、施工性に優れると共に,景観性にも優れる。
【0087】
このように本実施例では、請求項2に対応して、支柱3,3A,3A,3は、下側部分が地中に埋設された支柱下部12と、支柱下部12の上側に連結した支柱上部11とを備え、支柱上部11の上部管本体14が縮小管であるから、支柱下部12を地中に埋設し、この支柱下部12に支柱上部11を連結して支柱3,3A,3A,3を固定することにより、大型のコンクリート基礎などを設けることができない設置場所2でも、所定の据付強度を備えた支柱3,3A,3A,3を構築することができる。
【0088】
このように本実施例では、請求項3に対応して、縮小管たる上部管本体14の内面側に複数の補強鋼棒23を周方向均等間隔に配置し、支柱3,3A,3A,3の内部に硬化型充填材19を充填したから、硬化型充填材19により上部管本体14に複数の補強鋼棒23を一体化して上部管本体14の強度を補強することができる。
【0089】
このように本実施例では、請求項4に対応して、縮小管たる上部管本体14の断面形状が、六角形,八角形,十二角形のいずれかである八角形であり、上部管本体14の内面側の角部たる内角部17の位置に補強鋼棒23を配置して複数の補強鋼棒23を周方向均等間隔に配置し、支柱3,3Aの内部に硬化型充填材19を充填したから、断面形状が八角形であるため、支柱3,3Aの意匠性に優れた新規な外観が得られると共に、四角形に比べて、全方向からの荷重に略均等に対抗することができる。また、硬化型充填材19により上部管本体14に複数の補強鋼棒23を一体化して上部管本体14の強度を補強することができ、しかも、内角部17の位置を基準として、複数の補強鋼棒23の上部管本体14への位置決めを簡便に行うことができる。
【0090】
このように本実施例では、請求項5に対応して、上方に向かって縮小するスペーサたる補強十字板22に、複数の補強鋼棒23を取り付けたから、上部管本体14内に複数の補強鋼棒23を位置決め状態で配置することができる。
【0091】
以下、実施例上の効果として、補強体21,21Aのスペーサが薄板鋼板を十字形に組んだ補強十字板22であり、鋼製リングからなる固定部24を両端側の2か所に設けたから、軽量にして複数の補強鋼棒23の位置決めを確実に行うことができ、また、その構造により充填材19を充填し易くなる。加えて、複数の補強鋼棒23を固定する固定部24は鋼製リングからなり、補強十字板22は板材からなり、補強十字板22及び固定部24は上部管本体14より薄いから、軽量であり、支柱の重量が嵩むことがない。また、前記上部管本体14の外平面18の幅方向中央で鋼板の端部を突き合わせて行われているから、角部で溶接する場合より、溶接が容易で、溶接強度を確保することができる。
【0092】
さらに、連結部材31,31Aは、前記支柱上部11に外嵌する二つ割りの分割バンド32,32を組み立ててなるから、溶接ができない場合など現場での取付作業を簡便に行うことができる。また、上部管本体14には、連結部材31,31Aの高さ位置を位置決めする位置決め部46が設けられているから、テーパー管に取り付ける連結部材31,31Aにおいて、上下位置を位置決めすることができる。さらに、突条26J,26K,28は、支柱上部11と支柱下部12を接続する受け筒部13において、スペーサ機能以外に補強鋼材としての効果が得られる。
この例の網体5Aには合成樹脂からなる貫通型無結筋網を用いることが好ましく、例えば合成樹脂製の繊維糸を複数撚り合わせて線材を形成し、これら線材交差方向をなし、交差部により無結筋により相互に固定されている。尚、無結節網にはラッセル式もあるが、好ましくは貫通型が用いられる。
前記縦ロープ材71の端部には輪部71Wが設けられ、これら輪部71W,71Wが上下の前記透孔72T,72Tに、連結具たるシャックル73,73により着脱可能に連結される。また、前記縦ロープ材71の途中には張力調整手段たるターンバックル74が設けられている。そして、両端の支柱3,3の地上部に配置された前記縦ロープ材71,71に、連結手段たる結束コイル(図示せず)などにより網体5Aの両縁部が連結される。
また、網体5Aの上部の上縁には、上段の前記横ロープ材6に移動可能に掛装する吊り輪部75が複数設けられ、これら吊り輪部75に上段の横ロープ材6が遊挿されている。
そして、支柱3,3A,3A,3の間の網体5Aを開く場合は、ターンバックル74により縦ロープ材71の張力を緩め、固定手段たる上下のシャックル73,73をそれぞれ透孔72T,72Tから外すことにより、一方の端部の縦ロープ材71を支柱3から取り外し、また、中間の支柱3A,3Aにおいて、挿通連結部41から横ロープ材6,6の途中を取り外す。尚、網体5Aを下段の横ロープ材6に連結している場合は、下段の横ロープ材6を支柱3,3Aから取り外すか、網体5Aと下段の横ロープ材6との連結を解除すればよい。
こうすると、端末の支柱3,3間の上段の横ロープ材6に、吊り輪部75により網体5Aが吊下げられた状態となり、一方の端部の支柱3から他方の端部の支柱3側へ網体5Aを引っ張って移動するようにして、他方の端部の支柱3側に網体5Aを折り畳むことができ、支柱3,3A,3A,3間が開放された景観が得らえる。
このように本実施例では、上記実施例1と同様な作用・効果を奏し、また、このように本実施例では、請求項9に対応して、防護面4が支柱3,3A間に設ける網体5Aを備え、この網体5Aを支柱3,3A,3A,3間に開閉可能に設けたから、網体5Aを通して視認性が確保されるため、景観への影響を抑えることができ、しかも、常時は網体5Aを開いた状態にすることにより、景観を確保することができる。
また、実施例上の効果として、網体5Aを上段の横ロープ材6に移動可能に吊設する吊設移動手段たる吊り輪部75を有するから、網体5Aを移動して、簡便に支柱間を開いたり、閉めたりすることができる。さらに、網体5Aの端部を支柱3に着脱可能に取り付ける取付手段70を備えるから、網体5Aを閉めたときは、網体5Aの端部を支柱3に固定し、開くときは、固定解除することができる。また、防護面4は、網体5Aと上,下の横ロープ材6,6からなる簡易な構成で、しかも、網体5Aを左右に移動して畳むから、従来のように支柱を倒すものに比べて、構造簡易なものとなる。さらに、固定手段たる上下のシャックル73,73を外すことにより、支柱3に網体5Aの端部を簡単に着脱することができる。