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特開2022-61568三次元造形物と、その製造方法および制御プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061568
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】三次元造形物と、その製造方法および制御プログラム
(51)【国際特許分類】
   A61L 27/56 20060101AFI20220412BHJP
   A61F 2/28 20060101ALI20220412BHJP
   A61L 27/12 20060101ALI20220412BHJP
   A61L 27/58 20060101ALI20220412BHJP
   B01D 39/20 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
A61L27/56
A61F2/28
A61L27/12
A61L27/58
B01D39/20 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020169561
(22)【出願日】2020-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】横田 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】山澤 建二
(72)【発明者】
【氏名】辻村 有紀
(72)【発明者】
【氏名】大山 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 政樹
【テーマコード(参考)】
4C081
4C097
4D019
【Fターム(参考)】
4C081AB03
4C081BA13
4C081BB08
4C081CE01
4C081CF011
4C081CF021
4C081DA01
4C081DB03
4C081DC04
4C081DC14
4C081EA05
4C081EA06
4C097AA01
4C097BB01
4C097CC01
4C097CC02
4C097DD06
4C097DD07
4C097DD15
4C097FF05
4C097MM03
4C097MM05
4C097MM07
4C097MM08
4D019AA01
4D019AA03
4D019BA05
4D019BA06
4D019BB07
4D019BD01
4D019BD02
(57)【要約】
【課題】三次元造形物において、緻密度が高い場合の特性と、緻密度が低い場合の特性の両方が得られ、かつ、高い強度が得られるようにする
【解決手段】三次元造形物10は、一方側において緻密質に形成された緻密質部分3と、他方側において多孔質に形成された多孔質部分5とを有する。緻密質部分3と多孔質部分5とは、セラミック材料とキレート剤との反応物により形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方側において緻密質に形成された緻密質部分と、
他方側において多孔質に形成された多孔質部分と、を有し、
前記緻密質部分と前記多孔質部分とは、セラミック材料とキレート剤との反応物により形成されている、三次元造形物。
【請求項2】
前記緻密質部分と前記多孔質部分との間においてセラミック材料とキレート剤との反応物により形成された中間部分を有し、
該中間部分の緻密度は、前記多孔質部分の緻密度よりも高く、前記緻密質部分の緻密度よりも低い、請求項1に記載の三次元造形物。
【請求項3】
前記緻密質部分の緻密度は、80%以上であり、前記多孔質部分の緻密度は、60%未満である、請求項1又は2に記載の三次元造形物。
【請求項4】
セラミック材料は、リン酸カルシウムである、請求項1~3のいずれか一項に記載の三次元造形物。
【請求項5】
前記リン酸カルシウムは、α-リン酸三カルシウム(α-TCP)、β-リン酸三カルシウム(β-TCP)、リン酸八カルシウム(OCP)、及び炭酸アパタイトのいずれかである、請求項4に記載の三次元造形物。
【請求項6】
前記キレート剤は、1分子当たり3個以上のリン酸基又はカルボキシル基を有する有機化合物である、請求項4又は5に記載の三次元造形物。
【請求項7】
前記有機化合物は、エチドロン酸、フィチン酸、及びクエン酸のいずれかである、請求項6に記載の三次元造形物。
【請求項8】
前記三次元造形物は人工骨である、請求項1~7のいずれか一項に記載の三次元造形物。
【請求項9】
前記人工骨は、生体骨の欠損部分に充填されて該生体骨とともに骨体を形成するものであり、
前記人工骨は、前記骨体の外面となる外側面と、前記骨体の内部に位置することになる内側面とを有し、
前記外側面は、前記緻密質部分により形成され、前記多孔質部分は、前記内側面を形成する、請求項8に記載の三次元造形物。
【請求項10】
前記緻密質部分が形成している前記内側面は、前記生体骨により形成されている、前記欠損部分の内面に隣接する面である、請求項9に記載の三次元造形物。
【請求項11】
前記人工骨は、細胞と成長因子の一方又は両方を含んでいる、請求項8~10のいずれか一項に記載の三次元造形物。
【請求項12】
前記三次元造形物は、通過する流体中の粒子を捕集するフィルタであって、
前記緻密質部分と前記多孔質部分は、流体が通過可能になっており、
前記多孔質部分は、通過する流体の上流側のフィルタ部を構成し、前記緻密質部分は、通過する流体の下流側のフィルタ部を構成する、請求項1~7のいずれか一項に記載の三次元造形物。
【請求項13】
粉末状のセラミック材料を用いてセラミック層を形成する層形成工程と、
前記層の目標範囲に、キレート剤を含む硬化液を付与する硬化液付与工程と、を有し、
前記層形成工程と前記硬化液付与工程を繰り返すことにより、積み重ねた前記層の前記目標範囲において、前記セラミック材料とキレート剤との反応物により形成された三次元造形物を形成し、
前記目標範囲において、前記三次元造形物の一方側部分と他方側部分となる領域をそれぞれ一方側領域と他方側領域として、前記硬化液付与工程では、一方側領域に対して単位面積あたりに付与する前記硬化液の量を、他方側領域に対して単位面積あたりに付与する前記硬化液の量よりも多くする、三次元造形物の製造方法。
【請求項14】
前記目標範囲において、前記一方側領域と他方側領域との間の領域を中間領域として、前記硬化液付与工程において、中間領域に対して単位面積あたりに付与する前記硬化液の量を、一方側領域に対して単位面積あたりに付与する前記硬化液の量よりも少なく、他方側領域に対して単位面積あたりに付与する前記硬化液の量よりも多くする、請求項13に記載の三次元造形物の製造方法。
【請求項15】
前記三次元造形物を形成した後に、前記三次元造形物を洗浄する洗浄工程を有する、請求項13又は14に記載の三次元造形物の製造方法。
【請求項16】
三次元造形装置を制御するための制御プログラムであって、
粉末状のセラミック材料を用いてセラミック層を三次元造形装置に形成させる層形成処理と、
前記層の目標範囲に、キレート剤を含む硬化液を前記三次元造形装置に付与させる硬化液付与処理と、をコンピュータに実行させ、
前記層形成処理と前記硬化液付与処理を繰り返し前記コンピュータに実行させ、積み重ねた前記層の前記目標範囲において、前記セラミック材料とキレート剤との反応物による三次元造形物を前記三次元造形装置に形成させ、
前記目標範囲において、前記三次元造形物の一方側部分と他方側部分となる領域をそれぞれ一方側領域と他方側領域として、一方側領域に対して単位面積あたりに付与する前記硬化液の量を、他方側領域に対して単位面積あたりに付与する前記硬化液の量よりも多くするように、前記硬化液付与処理を前記コンピュータに実行させる、制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック材料を用いて形成される三次元造形物と、その製造方法および制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック材料を用いて形成された三次元造形物として、人工骨がある。人工骨は、骨折等により生じた骨の欠損部分に充填される。バイオセラミック材料から形成した人工骨では、金属材料で形成された人工骨と違って、生体骨への置換性が得られる。すなわち、バイオセラミック材料を用いた人工骨は、生体における骨の欠損部分へ充填された後、新たな骨の成長により本来の骨に融合し置換され得る。
【0003】
特許文献1では、リン酸カルシウム等のセラミック材料の粉末骨材を用いて、粉末積層法により人工骨を形成し、その後、人工骨を水溶液に浸し減圧処理することにより、人工骨内部の気体を水溶液に置換し、次いで、静置して水和反応を生じさせて人工骨の強度を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4575295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来において、セラミック材料を用いて形成された三次元造形物は、強度を確保する目的等のために、内部の緻密度を高くする必要があるが、緻密度が低い方が好ましい場合もある。三次元造形物が人工骨である場合には、人工骨の強度を確保するために、内部の緻密度を高くする必要があるが、緻密度が高すぎると、新たな骨の成長が妨げられるので、生体骨との融合や生体骨への置換に時間がかかる。一方、人工骨の緻密度が低いと、生体骨を補強するための強度が不足する。
【0006】
そこで、本発明の主要な目的は、三次元造形物において、緻密度が高い場合の特性と、緻密度が低い場合の特性の両方が得られ、かつ、高い強度が得られるようにすることにある。
【0007】
また、本発明の副次的な目的は、人工骨において、生体骨に対する融合性及び置換性の少なくともいずれかと高い強度との両方が得られるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するため、本発明による三次元造形物は、一方側において緻密質に形成された緻密質部分と、他方側において多孔質に形成された多孔質部分と、を有し、前記緻密質部分と前記多孔質部分とは、セラミック材料とキレート剤との反応物により形成されている。この三次元造形物は、人工骨であってよい。
【0009】
また、本発明による三次元造形物の製造方法は、粉末状のセラミック材料を用いてセラミック層を形成する層形成工程と、前記層の目標範囲に、キレート剤を含む硬化液を付与する硬化液付与工程と、を有し、
前記層形成工程と前記硬化液付与工程を繰り返して、積み重ねた前記層の前記目標範囲において、前記セラミック材料とキレート剤との反応物により三次元造形物を形成し、
前記目標範囲において、前記三次元造形物の一方側部分と他方側部分となる領域をそれぞれ一方側領域と他方側領域として、前記硬化液付与工程では、一方側領域に対して単位面積あたりに付与する前記硬化液の量を、他方側領域に対して単位面積あたりに付与する前記硬化液の量よりも多くする。
【0010】
また、本発明による制御プログラムは、三次元造形装置を制御するためのプログラムであって、
粉末状のセラミック材料を用いてセラミック層を三次元造形装置に形成させる層形成処理と、
前記層の目標範囲に、キレート剤を含む硬化液を前記三次元造形装置に付与させる硬化液付与処理と、をコンピュータに実行させ、
前記層形成処理と前記硬化液付与処理を繰り返し前記コンピュータに実行させ、積み重ねた前記層の前記目標範囲において、前記セラミック材料とキレート剤との反応物による三次元造形物を前記三次元造形装置に形成させ、
前記目標範囲において、前記三次元造形物の一方側部分と他方側部分となる領域をそれぞれ一方側領域と他方側領域として、一方側領域に対して単位面積あたりに付与する前記硬化液の量を、他方側領域に対して単位面積あたりに付与する前記硬化液の量よりも多くするように、前記硬化液付与処理を前記コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0011】
本発明による三次元構造物は、緻密度が高い緻密質部分と緻密度が低い多孔質部分を有するので、緻密度が高い場合の特性と、緻密度が低い場合の特性との両方が得られる。また、多孔質部分は、セラミック材料とキレート剤との反応物により形成されているので、多孔質部分であっても高い強度が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態による三次元造形物の一例を示す概略構成図である。
図2図1のII-II線断面図である。
図3】本実施形態による三次元造形物の製造方法を示すフローチャートである。
図4A】三次元造形物の製造方法の説明図である。
図4B】三次元造形物の製造方法の別の説明図である。
図5】本実施形態による三次元造形物の別の例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0014】
(三次元造形物の構成)
図1は、本実施形態における三次元造形物10の一例を示す図である。図1は、三次元造形物10は人工骨である場合を示すが、三次元造形物10は、人工骨に限定されず、後述のようにフィルタや触媒担体等として適用されてもよい。以下で、人工骨10に特定していない三次元造形物10に関する記載は、三次元造形物10が人工骨である場合とそうでない場合の両方に当てはまる。
【0015】
人工骨10は、生体(人又は動物)における生体骨20の欠損部分20aに充填される。図1は、人工骨10が、人の皮膚2の内側の生体骨20の欠損部分20aに充填された状態を示す。欠損部分20aは、例えば、損傷(例えば骨折)により生じた部分であってもよいし、整形外科手術の骨切り術により形成された部分であってもよい。図1に例示する生体骨20は、人の大腿骨であるが、本実施形態による人工骨10が充填可能な欠損部分は、人の脛骨、上腕骨、胸骨、頭蓋骨、又は他の箇所の骨の欠損部分であってもよいし、人以外の動物の生体骨の欠損部分であってもよい。
【0016】
図2は、図1における人工骨10のII-II線断面図である。なお、図2の断面と平行な、図1の人工骨10の各断面は、図2と同様の断面であってよい。
【0017】
三次元造形物10は、一方側(図2では右側)において緻密質に形成された緻密質部分3と、他方側(図2では左側)において多孔質に形成された多孔質部分5とを有する。三次元造形物10において、緻密質部分3となる一方側と、多孔質部分5となる他方側は、それぞれ、三次元造形物10における一端側と他端側(図2では、この図の右側と左側)であってよいが、これに限定されず、例えば、三次元造形物10における外周側と内部中央側(又は内部中央側と外周側)とであってもよい。
【0018】
緻密質部分3と多孔質部分5とは、セラミック材料とキレート剤との反応物により形成されている。すなわち、セラミック材料は、キレート剤とのキレート反応の結果、硬化して上記反応物となっている。より詳しくは、キレート剤がセラミックス材料を溶解させ、そこで発生したカルシウムイオンをキレート剤がトラップすることで硬化した上記反応物が得られる。つまり、キレート反応に加えて、セラミックス材料の溶融後の固着が生じることで上記反応物が得られる。なお、キレート反応とは、2座又はそれ以上の多座配位子が環を形成して中心金属と結合する化学反応を意味する。キレート剤とは、上記反応物をつくる配位子(多座配位子)を持つ化合物を意味する。
【0019】
緻密質部分3は、緻密度が第1しきい値以上となっている領域である。多孔質部分5は、緻密度が第2しきい値未満となっている領域である。緻密度は、三次元造形物10において、その構成材料(上記反応物)が占める空間の割合(占有率)を示す。したがって、空隙が全く生じないように構成材料が完全に詰められた領域では緻密度は100%である。第1しきい値は、70%以上であり90%以下の範囲内の値(例えば80%)であってよく、第2しきい値は、30%以上であり65%以下の範囲内の値(例えば60%)であってよい。なお、緻密質部分3の緻密度の上限は、100%であってよい。多孔質部分5の緻密度の下限は、10%以上であり20%以下の範囲内の値(例えば20%)であってよい。
【0020】
三次元造形物10は、緻密質部分3と多孔質部分5との間においてセラミック材料とキレート剤との反応物により形成された中間部分7を有していてもよい。中間部分7の緻密度は、多孔質部分5の緻密度よりも高く、緻密質部分3の緻密度よりも低い。中間部分7は、緻密質部分3と多孔質部分5のそれぞれと直接結合されている。一例では、中間部分7において、(例えば、緻密質部分3との境界から多孔質部分5との境界まで)緻密質部分3側から多孔質部分5側へ移行するにつれて緻密度が徐々に下がっている。別の例では、中間部分7の全体にわたって、緻密度が均一であってもよい。なお、中間部分7が設けられない場合には、緻密質部分3と多孔質部分5とは互いに直接結合されている。
【0021】
三次元造形物10の全体が、主に上記反応物により形成されていてよい。例えば、三次元造形物10の全重量に対する、三次元造形物10を構成する上記反応物の重量の割合が、80%以上(又は90%以上)であってよく、100%以下であってよい。三次元造形物10が人工骨である場合、人工骨10は上記反応物以外の成分として後述の細胞と成長因子の一方又は両方を含んでいてよい。
【0022】
上述のセラミック材料は、リン酸カルシウムであってよい。このリン酸カルシウムは、例えば、α-リン酸三カルシウム(α-TCP)、β-リン酸三カルシウム(β-TCP)、リン酸八カルシウム(OCP)、又は炭酸アパタイトあってよいが、特定のリン酸カルシウムに限定されない。
【0023】
また、上述のキレート剤は、1分子当たり3個以上のリン酸基又はカルボキシル基を有する有機化合物であってよい。この有機化合物は、エチドロン酸、フィチン酸、又はクエン酸であってよいが、これらに限定されない。
【0024】
人工骨10は、生体骨20の欠損部分20aに充填されて当該生体骨20とともに骨体30を形成するものである。図1は、生体骨20と、その欠損部分20aに充填された人工骨10とにより骨体30を形成している状態の一例を示している。人工骨10が、生体骨20の欠損部分20aに充填された状態を、以下で単に充填状態という。
【0025】
人工骨10は、充填状態において骨体30の外面となる外側面10aと、充填状態において骨体30の内部に位置することになる内側面10bとを有する。骨体30の外面は、生体の外側(皮膚2の側)を向く面である。外側面10a(例えば外側面10aの全体)は、緻密質部分3により形成されており、多孔質部分5は、内側面10b(内側面10bにおいて緻密質部分3に属しない部分)を形成している。充填状態において、多孔質部分5が形成している内側面10bは、欠損部分20aの内面に隣接(例えば接触)しており、当該内面は、生体骨20により形成されている。
【0026】
緻密質部分3が形成している内側面10bとして、互いに異なる方向を向く複数の内側面10bが存在してよい。図1図2の例では、内側面10bとして第1~第5の内側面10b1~10b5が形成されている。第1の内側面10b1は、外側面10aと反対側(図2の左側)を向いており、欠損部分20aを区画する内面のうち欠損部分20aの底面に隣接(接触)する。第2及び第3の内側面10b2,10b3は、第1の内側面10b1と外側面10aとの間に位置し、互いに反対側(図2の上側と下側)を向いている。第4及び第5の内側面10b4,10b5は、第1の内側面10b1と外側面10aとの間に位置するとともに、第2の内側面10b2と第3の内側面10b3との間に位置し、互いに反対側(図1の上側と下側)を向いている。
【0027】
なお、内側面10bの数は、この例に限定されず、人工骨10が充填される欠損部分20aの形状に応じて異なる。三次元造形物(人工骨)10は、直方体、角柱形状、円柱形状、角錐形状、円錐形状、切頭円柱形状、切頭角錐形状、又は薄片状を有していてよい。角柱形状又は円柱形状の人工骨10の場合には、円柱形状の一方の端面が外側面10aであってよい。角錐形状、円錐形状、切頭円柱形状、又は切頭角錐形状の人工骨10の場合には、当該形状の底面が外側面10aであってよい。薄片状の人工骨10の場合、当該人工骨10は、頭蓋骨(例えば頭蓋冠)をその厚み方向に貫通する欠損部分20aに充填されるものであってもよく、この場合、人工骨10の厚み方向を向く一方の側面が上述の外側面10aである。
【0028】
また、人工骨10は、細胞と成長因子の一方又は両方を含んでいてよい。細胞と成長因子は、後でより詳しく説明するが、人工骨10が本来の骨組織に入れ替わることを促進させるためのものである。
【0029】
(三次元造形物の製造方法)
図3は、本発明の実施形態による三次元造形物(人工骨)10の製造方法を示すフローチャートである。
【0030】
ステップS1において、製作対象である三次元造形物10の三次元形状のデータ(以下で、単に形状データともいう)を作成する。三次元造形物10が人工骨である場合、ステップS1において、生体骨20の欠損部分20aの三次元形状のデータに基づいて、当該欠損部分20aに充填する人工骨10の三次元形状を表わす形状データを作成する。形状データは、三次元造形物10における一方側部分となる緻密質部分3と三次元造形物10における他方側部分となる多孔質部分5がそれぞれ占める三次元的な範囲を表わすデータを含んでいてよい。更に、形状データは、三次元造形物10において緻密質部分3と多孔質部分5との間の部分となる中間部分7が占める三次元的な範囲を表わすデータを含んでいてよい。
【0031】
形状データの作成は、人がコンピュータの入力装置(キーボードやマウスなど)を操作することによりなされてよい。三次元造形物10が人工骨10の場合、例えば、コンピュータのディスプレイに欠損部分20aの三次元形状のデータを表示させ、人が、このデータを見ながら、入力装置を操作することにより形状データを作成してよい。欠損部分20aの三次元形状のデータは、生体骨20における欠損部分20aを含む領域の三次元形状データであり、例えばCTスキャンによって得られたものであってよい。欠損部分20aの三次元形状のデータと形状データは、例えばCADデータであってよい。
【0032】
ステップS2において、ステップS1で作成した形状データに基づいて、粉末積層法により三次元造形物10を製作する造形処理を行う。すなわち、ステップS2では、後述する三次元造形装置100(3Dプリンタ)が、形状データに基づいて、粉末状のセラミック材料による層を形成して硬化させ、硬化した当該層の上面に同様の処理を行い、新たに硬化した層の上面に対し同様の処理を繰り返すことにより、硬化して一体化された多数の層からなる3次元形状の人工骨10を形成する。なお、上述の形状データは、これらの多数の層にそれぞれ対応する多数のスライスデータから構成されている。
【0033】
図4Aは、造形処理の説明図であり、ステップS2に用いられる三次元造形装置100の構成例を示す。図4Aの三次元造形装置100は、粉末積層法で三次元造形物10を製作する。三次元造形装置100は、上下に移動する昇降底面部111aを底部に有し粉末状のセラミック材料2(以下で単に粉末102ともいう)が導入される造形容器111と、粉末102を造形容器111に導入する粉末導入装置112と、造形容器111に導入された粉末102を部分的に硬化させる硬化装置113を備える。また、上述のステップS1で作成された形状データを記憶する記憶装置114と、三次元造形装置100の動作を制御する制御装置115とが設けられる。
【0034】
ステップS2は、層形成工程のステップS21と硬化液付与工程のステップS22を有する。ステップS2において、三次元造形装置100は、次のステップS21とステップS22を、この順で繰り返すことにより、三次元造形物101を製作する。
【0035】
ステップS21では、粉末102を用いてセラミック層を形成する。例えば、図4Aのように、制御装置115が粉末導入装置112を制御することにより、粉末導入装置112は、一層分の粉末102を造形容器111に導入する。この時、造形容器111に導入された粉末102の上面が水平になるように、粉末導入装置112は粉末102を造形容器111に導入する。
【0036】
図4Aの例では、粉末導入装置112は、昇降底面部112a1を有し粉末102が蓄えられた粉末容器112aと、ローラ112bとを有する。粉末容器112aの上面は開口している。制御装置115は、一層分に対応する距離だけ昇降底面部112a1を上昇させる。次いで、制御装置115は、図4Aのように、ローラ112bを、粉末容器112aの開口に関して造形容器111と反対側から、水平に、この開口と造形容器111の開口を横切るように移動させる。これにより、粉末容器112aの開口から上昇した一層分の粉末102が造形容器111に導入される。この方法で、一層分の粉末102が、造形容器111に導入され、導入された粉末102の上面が水平にされる。
【0037】
ステップS22では、ステップS21で形成された層の上面における目標範囲に、キレート剤を含む液体である硬化液(以下で単に硬化液ともいう)を付与する。例えば、制御装置115が一層分の上述のスライスデータに基づいて、硬化装置113を制御することにより、硬化装置113は、図4Bのように、層の上記目標範囲に硬化液を付与する。これにより、目標範囲の粉末状のセラミック材料102が、硬化液に含まれるキレート剤とのキレート反応の結果、硬化した反応物となる。
【0038】
ステップS22では、硬化液付与量の制御が行われる。すなわち、ステップS21で形成された層の上記目標範囲において、三次元造形物10の一方側部分と他方側部分となる領域をそれぞれ一方側領域と他方側領域として、形状データに基づいて、一方側領域に対して単位面積あたりに硬化装置113が付与する硬化液の量を、他方側領域に対して単位面積あたりに硬化装置113が付与する硬化液の量よりも多くする。これにより、一方側領域は緻密層部分3を構成し、他方側部分は多孔質部分5を構成するように硬化する。
【0039】
このような硬化液付与量の制御では、更に、ステップS21で形成された層の目標範囲において、一方側領域と他方側領域との間の領域を中間領域として、中間領域に対して単位面積あたりに硬化装置113が付与する硬化液の量を、一方側領域に対して単位面積あたりに硬化装置113が付与する硬化液の量よりも少なく、他方側領域に対して単位面積あたりに硬化装置113が付与する硬化液の量よりも多くしてもよい。これにより、中間領域が中間部分7を構成するように硬化する。
【0040】
また、硬化液付与量の制御において、中間領域内の位置に応じて、当該位置に対して、単位面積あたりに硬化装置113が付与する硬化液の量を変化させてもよい。例えば、中間領域において一方側領域側から他方側領域側へ位置が移行するにつれて、当該位置に対して、単位面積あたりに硬化装置113が付与する硬化液の量を徐々に少なくしてもよい。これにより、緻密質部分3側から多孔質部分5側へ移行するにつれて緻密度が徐々に下がっている中間部分7が形成される。
【0041】
上述の硬化液付与量の制御は、形状データ(スライスデータ)が示す一方側領域、他方側領域、および中間領域の位置範囲に基づいて、制御装置115により行われてよい。
【0042】
ステップS22が終了したら、制御装置115は、一層分の厚みだけ昇降底面部111aを下降させる。その後、再びステップS21とステップS22を行う。このように、ステップS21とステップS22を繰り返すことにより、セラミック材料とキレート剤との反応物により形成された三次元造形物(人工骨)10を形成する。すなわち、形状データの全てのスライスデータに対応する全ての層を形成して硬化させることにより、三次元造形物10を形成する。このように全ての層を形成して硬化させたら、ステップS3へ移行する。
【0043】
ステップS3では、ステップS2により形成された三次元造形物10を、造形容器111から取り出し、三次元造形物10の全体を液体(例えば水)で洗浄する。例えば、三次元造形物10に水を流して、三次元造形物10から、キレート反応に寄与しなかった残留キレート剤、及び硬化液に含まれている他の成分(例えば後述の界面活性剤など)を取り除く。
【0044】
以下で、上述のステップS2の造形処理について、より詳しく説明する。
【0045】
<セラミック材料と硬化液>
上述のステップS21で用いる粉末状のセラミック材料102は、リン酸カルシウムであってよい。このリン酸カルシウムは、α-リン酸三カルシウム(α-TCP)、β-リン酸三カルシウム(β-TCP)、リン酸八カルシウム(OCP)、及び炭酸アパタイトの何れかであってよい。
【0046】
ステップS22で用いる硬化液は、少なくともキレート剤を含む液体である。この硬化液は、水にキレート剤が溶けたものであってよい。キレート剤は、1分子当たり3個以上のリン酸基又はカルボキシル基を有する有機化合物である。この有機化合物は、エチドロン酸、フィチン酸、及びクエン酸の何れかであってよい。
【0047】
硬化液は、キレート剤以外に、他の物質を含んでいてもよい。例えば、硬化液は、更に界面活性剤を含んでいてもよい。
【0048】
<三次元造形装置の具体例>
三次元造形装置100は、インクジェットプリンタを用いたものであってもよい。すなわち、三次元造形装置100の上述の硬化装置113は、インクジェットプリンタの構成要素であってよい。この場合、インクジェットプリンタのインクとして、又は、当該インクの代わりに、上記硬化液が用いられる。また、この場合、硬化装置113は、硬化液を滴下又は噴射する複数のヘッド113aが設けられ移動可能なキャリッジである。
【0049】
上述のステップS22では、制御装置115の制御により、層の目標範囲に上方において当該目標範囲に沿ってキャリッジ113が移動させられるとともに、ヘッド113aが硬化液を当該目標範囲における各位置へ滴下又は噴射する。これにより、層の目標範囲の全体に硬化液が付与される。
【0050】
この場合、ステップS22における硬化液付与量の制御では、制御装置115は、上述の一方側領域に対して単位面積あたりに硬化液を付与するのに用いるヘッド113aの数を、上述の他方側領域に対して単位面積あたりに硬化液を付与するのに用いるヘッド113aの数よりも多くすることにより、上述のように硬化液付与量の制御を行ってもよい。
【0051】
また、上述の中間領域についても同様に、制御装置115は、中間領域に対して単位面積あたりに硬化液を付与するのに用いるヘッド113aの数を、上述の一方側領域に対して単位面積あたりに硬化液を付与するのに用いるヘッド113aの数よりも少なくし、上述の他方側領域に対して単位面積あたりに硬化液を付与するのに用いるヘッド113aの数よりも多くすることにより、上述の硬化液付与量の制御を行ってもよい。この場合、制御装置115は、中間領域において一方側領域側から他方側領域側へ位置が移行するにつれて、当該位置に対して、単位面積あたりに硬化液を付与するのに用いるヘッド113aの数を徐々に少なくしてもよい。これにより、緻密質部分3側から多孔質部分5側へ移行するにつれて緻密度が徐々に下がっている中間部分7が形成されてよい。
【0052】
<細胞と成長因子>
三次元造形物10が人工骨である場合に、生体骨20へ人工骨10を充填した後に人工骨10が生体骨20の本来の骨組織に入れ替わることを促進させる目的で、ステップS22において、層の上記目標範囲の全体又は所定部分に細胞と成長因子の一方又は両方を付与してもよい。細胞は、骨組織内に存在する細胞(例えば骨芽細胞や破骨細胞)でもよいし、分化前の幹細胞でもよいし、或いは、これらの一方又は両方であってもよい。成長因子は、強力な骨再生の誘導能をもつ骨形成因子(BMP)であってもよいし、骨細胞成長や基質成長を促すサイトカインとしての塩基性繊維芽細胞増殖因子(b-FGF)、トランスフォーミング増殖因子(TGFβ)、インスリン様増殖因子(IGF-1)等であってもよい。
【0053】
細胞を人工骨10に付与する場合には、細胞を含む細胞含有液を用意する。例えば、細胞含有液は、細胞が液体中に分散しているものであってよい。上述のステップS22において、上述のキャリッジ113に設けた別のヘッド113bから、細胞含有液を層の目標範囲の全体又は所定領域に滴下又は噴射する。この所定領域は、例えば多孔質部分5となる上記他方側領域であってよい。
【0054】
細胞に加えて成長因子を人工骨10に付与する場合には、上述の細胞含有液に成長因子を含ませてもよいし、上述の細胞含有液とは別に、成長因子を含む成長因子含有液を用意してもよい。後者の場合、上述のステップS22において、上述のキャリッジ113に設けた更に別のヘッド(図示せず)から、成長因子含有液を層の目標範囲の全体又は所定領域(例えば上記他方側領域)に滴下又は噴射する。なお、細胞と成長因子のうち成長因子のみを人工骨10に付与する場合、上述のステップS22において、上述のキャリッジ113に設けたヘッド113bから、上述の成長因子含有液を層の目標範囲の全体又は所定領域(例えば上記他方側領域)に滴下又は噴射する。
【0055】
(実施形態による効果)
上述した三次元造形物10は、緻密度が高い緻密質部分3と緻密度が低い多孔質部分5を有するので、緻密度が高い場合の特性と、緻密度が低い場合の特性との両方が得られる。
【0056】
多孔質部分5は、セラミック材料とキレート剤との反応物により形成されているので、多孔質部分5であっても高い強度が得られる。例えば、三次元造形物10が人工骨である場合、多孔質部分5は、緻密度が60%であっても、25~30MPaの強度が得られる。
【0057】
また、三次元造形物10が人工骨である場合、人工骨10と生体骨20とにより骨体30を形成するように人工骨10が生体骨20の欠損部分20aに充填された充填状態で、多孔質部分5よりも高い強度を有する緻密質部分3が、骨体30の外面を形成している。したがって、緻密質部分3により、外部からの衝撃に対して、欠損部分20a(すなわち、欠損部分20aに充填された人工骨10)を確実に保護することができる。
【0058】
また、上記充填状態で、多孔質部分5が形成している内側面10bは、生体骨20の欠損部分20aの内面に隣接(例えば接触)している。したがって、欠損部分20aの内面から、生体骨20から新たな骨組織(骨質)が人工骨10内に入りやすい。したがって、生体骨20に対して高い融合性及び置換性を有する人工骨10が実現される。
【0059】
また、上述の造形処理のステップS22において、粉末102の層に付与する硬化液の量を変化させるだけで、緻密質部分3と多孔質部分5を簡単に形成することができる。また、三次元造形物10は、セラミック材料とキレート剤との反応物により形成され、当該反応物自体が高い強度を有するので、強度を高めるための焼成処理等を不要にすることができる。
【0060】
緻密質部分3と多孔質部分5の間に中間部分7を設けてもよい。この場合、中間部分7において、緻密質部分3側から多孔質部分5側へ移行するにつれて緻密度が徐々に下がっていることにより、三次元造形物10の強度を高めることができる。
【0061】
(制御プログラム)
上述のステップS2の造形処理を行うための制御プログラムが、記憶装置114に記憶されていてもよいし、制御装置115としてのコンピュータが読み取り可能な他の記憶装置に記憶されていてもよい。
【0062】
制御プログラムは、粉末状のセラミック材料102を用いてセラミック層を三次元造形装置100に形成させる層形成処理をコンピュータ115に実行させる。この層形成処理は、上述のステップS21を三次元造形装置100に行わせる処理である。
【0063】
また、制御プログラムは、層の上記目標範囲に、キレート剤を含む硬化液を三次元造形装置100に付与させる硬化液付与処理をコンピュータ115に実行させる。この硬化液付与処理は、上述のステップS22を三次元造形装置100に行わせる処理である。
【0064】
制御プログラムは、層形成処理と硬化液付与処理を繰り返しコンピュータ115に実行させる。これにより、コンピュータ115は、三次元造形装置100にステップS21とステップS22が繰り返し行わせる。
【0065】
(三次元造形物の他の例)
上述した三次元造形物10は、人工骨以外のものであってもよい。例えば、三次元造形物10は、通過する流体中の粒子を捕集するフィルタであってもよい。
【0066】
フィルタ10は、例えば、排ガス浄化フィルタ、空気清浄フィルタ、又は液体フィルタであってよい。排ガス浄化フィルタは、内燃機関やボイラー等の熱機関の排気流路に設けられ、熱機関からの排気ガスに含まれる粒子を捕集する。空気清浄フィルタは、建物や自動車等の室内の空気を循環させる流路に設けられ、循環する空気中の粒子を捕集する。液体フィルタは、燃料や作動油等の液体中の粒子(異物)を捕集する。
【0067】
図5は、三次元造形物10としてのフィルタの概略構成図である。フィルタ10において、緻密質部分3と多孔質部分5は、流体が通過可能になっている。多孔質部分5は、通過する流体の上流側のフィルタ部を構成し、緻密質部分3は、通過する流体の下流側のフィルタ部を構成する。また、図5のように、フィルタ10に中間部分7が設けられる場合には、中間部分7も、流体が通過可能になっている。
【0068】
このような構成において、流体が、多孔質部分5からフィルタ10内へ流入して多孔質部分5を通過し、次いで中間部分7を通過し、その後、緻密質部分3を通過して、フィルタ10の外部へ流出する。この過程で、流体中の粒子がフィルタ10に捕集される。流体中の粒子のうち、大きい粒子は、多孔質部分5で捕集され、中間の大きさの粒子は、中間部分7で捕集され、小さい粒子は緻密質部分3で捕集される。
【0069】
フィルタ10を所定期間使用した後は、例えば、緻密質部分3側から多孔質部分5側に向けてフィルタ10内に加圧水を流すことで、フィルタ10に蓄積された粒子を取り除いて、フィルタ10を再度使用してもよい。
【0070】
また、三次元造形物10は、触媒担体であってもよい。この場合、触媒担体10は、上述のフィルタと同じ構成(図5の構成)を有していてよい。触媒担体10には、その内部(例えば図5の多孔質部分5、中間部分7、及び緻密質部分3)などに触媒が担持される。触媒担体10は、その内部を通過する流体(液体又はガス)の所定の化学反応を促進させる。図5の例の場合には、流体は、多孔質部分5から触媒担体10内へ流入して多孔質部分5を通過し、次いで中間部分7を通過し、その後、緻密質部分3を通過して、触媒担体10の外部へ流出する。あるいは、これと逆の順で、流体は、触媒担体10を通過してもよい。
【0071】
なお、図5の例では、多孔質部分5、緻密質部分3、及び中間部分7の各々の形状は、円柱形であるが、他の形状であってもよい。また、図5の例では、フィルタ10又は触媒担体10の全体形状は、円柱形であるが、角柱形状などの他の形状であってもよい。また、フィルタ10又は触媒担体10において、多孔質部分5が円柱形状であり、中間部分7が多孔質部分5の外周面を囲むように設けられた円筒形であり、緻密質部分3が中間部分7の外周面を囲むように設けられた円筒形であってもよい。この場合、流体は、多孔質部分5にその軸方向に流入した後、その径方向に中間部分7と緻密質部分3を順に通過するようになっていてもよい。
【0072】
触媒担体10の場合、緻密質部分3が円柱形状であり、中間部分7が緻密質部分3の外周面を囲むように設けられた円筒形であり、多孔質部分5が中間部分7の外周面を囲むように設けられた円筒形であってもよい。この場合、流体は、緻密質部分3にその軸方向に流入した後、その径方向に中間部分7と多孔質部分5を順に通過するようになっていてもよい。
【0073】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、本発明の実施形態による三次元造形物10は、上述した複数の事項の全て有していなくてもよく、上述した複数の事項のうち一部のみを有していてもよい。
【符号の説明】
【0074】
2 皮膚、3 緻密質部分、5 多孔質部分、7 中間部分、10 三次元造形物(人工骨)、10a 外側面、10b 内側面、20 生体骨、20a 欠損部分、30 骨体、100 三次元造形装置、102 粉末状のセラミック材料(粉末)、111 造形容器、111a 昇降底面部、112 粉末導入装置、112a 粉末容器、112a1 昇降底面部、112b ローラ、113 硬化装置(キャリッジ)、113a ヘッド、113b ヘッド、114 記憶装置、115 制御装置(コンピュータ)
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5