(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061594
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】フェイスカバー付き帽子
(51)【国際特許分類】
A42B 1/18 20060101AFI20220412BHJP
A42B 1/018 20210101ALI20220412BHJP
A42C 5/00 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
A42B1/18 Z
A42B1/18 C
A42C5/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020169620
(22)【出願日】2020-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】597093115
【氏名又は名称】株式会社シオジリ製帽
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】塩尻 英一
(57)【要約】
【課題】
不使用時のフェイスカバーを邪魔にならない位置に保持し、フェイスカバーの紛失を防止することができるフェイスカバー付き帽子を提供する。
【解決手段】
半球状のクラウン11を有する帽子本体10と、着用者の顔面を覆うフェイスカバー30とを備えたフェイスカバー付き帽子において、帽子本体10の前部に、本体側被取付部βを設ける一方、フェイスカバー30の上部に、本体側被取付部βに対して着脱可能な状態で取り付け可能なカバー側取付部αを設けることによって、フェイスカバー30を帽子本体10から取り外し可能な状態するとともに、フェイスカバー30を前方に凸な球面状とする。フェイスカバー30を帽子本体10から取り外して上方に凸な向きとした状態でクラウン11に被せ、本体側被取付部βに対してカバー側取付部αを再び取り付けることで、不使用時のフェイスカバー30をクラウン11に沿わせた状態で保持させることができる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部に被るための半球状のクラウンを有する帽子本体と、
帽子本体から垂下されて、着用者の顔面を覆うフェイスカバーと
を備えたフェイスカバー付き帽子であって、
帽子本体の前部に、本体側被取付部が設けられる一方、
フェイスカバーの上部に、本体側被取付部に対して着脱可能な状態で取り付け可能なカバー側取付部が設けられることによって、
フェイスカバーが、帽子本体から取り外し可能な状態されるとともに、
フェイスカバーが、前方に凸な球面状を為し、
帽子本体から垂下されていたフェイスカバーを帽子本体から取り外し、クラウンに沿うようフェイスカバーを上方に凸な向きとした状態でクラウンに被せ、本体側被取付部に対してカバー側取付部を再び取り付けることで、不使用時のフェイスカバーをクラウンに沿わせた状態で保持できるようにした
ことを特徴とするフェイスカバー付き帽子。
【請求項2】
クラウンの前方の空気をクラウンの内側に取り込むためのクラウン用通気部が、クラウンの前側下部に設けられるとともに、
着用者の目を出すための目出し部が、フェイスカバーの上部に設けられ、
不使用時のフェイスカバーをクラウンに沿わせた状態で保持させているときのクラウン用通気部が、フェイスカバーによって覆われずに目出し部から外側に露出するようにした
請求項1記載のフェイスカバー付き帽子。
【請求項3】
帽子本体が、クラウンの前側下縁から前方に突出する前鍔を備え、
フェイスカバーを帽子本体から垂下させているときの前鍔が、目出し部における上部から前方に突出するようにした
請求項2記載のフェイスカバー付き帽子。
【請求項4】
前鍔の下方の空気を上方に通過させるための前鍔用通気部が、前鍔の基端部に設けられた請求項3記載のフェイスカバー付き帽子。
【請求項5】
頭周りに装着するためのバンドと、バンドの前側下縁から前方に突出する前鍔とを有する帽子本体と、
帽子本体から垂下されて、着用者の顔面を覆うフェイスカバーと
を備えたフェイスカバー付き帽子であって、
帽子本体の前部に、本体側被取付部が設けられる一方、
フェイスカバーの上部に、本体側被取付部に対して着脱可能な状態で取り付け可能なカバー側取付部が設けられることによって、
フェイスカバーが、帽子本体から取り外し可能な状態されるとともに、
フェイスカバーが、前方に凸な球面状を為し、
帽子本体から垂下されていたフェイスカバーを帽子本体から取り外し、フェイスカバーを上方に凸な向きとした状態でバンドの上方に被せ、本体側被取付部に対してカバー側取付部を再び取り付けることで、不使用時のフェイスカバーを着用者の頭部を覆うクラウンとして機能させることができるようにした
ことを特徴とするフェイスカバー付き帽子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着用者の顔面を覆うフェイスカバーを備えたフェイスカバー付き帽子に関する。
【背景技術】
【0002】
日差しが強い時期に屋外で活動すると、顔が日焼けしてしまう。このため、着用者の顔面を覆うフェイスカバーを備えた帽子(フェイスカバー付き帽子)が提案されている。例えば、特許文献1の
図1には、クラウン6の下縁に日除け布1(フェイスカバー)を縫い付けた帽子が記載されている。また、特許文献2の
図1には、前鍔の先端縁から日除け布(フェイスカバー)を垂下した状態に設けた帽子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-183440号公報
【特許文献2】実用新案登録第3218185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1や特許文献2の帽子等、従来のフェイスカバー付き帽子は、フェイスカバーを使用しないときに、フェイスカバーが邪魔になるという課題があった。この課題は、フェイスカバーを着脱可能な構造とすれば、解決することができる。しかし、その場合には、取り外したフェイスカバーを紛失しやすいという別の課題が生ずる。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、不使用時のフェイスカバーを邪魔にならない位置に保持し、フェイスカバーの紛失を防止することができるフェイスカバー付き帽子を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、
頭部に被るための半球状のクラウンを有する帽子本体と、
帽子本体から垂下されて、着用者の顔面を覆うフェイスカバーと
を備えたフェイスカバー付き帽子であって、
帽子本体の前部に、本体側被取付部が設けられる一方、
フェイスカバーの上部に、本体側被取付部に対して着脱可能な状態で取り付け可能なカバー側取付部が設けられることによって、
フェイスカバーが、帽子本体から取り外し可能な状態されるとともに、
フェイスカバーが、前方に凸な球面状を為し、
帽子本体から垂下されていたフェイスカバーを帽子本体から取り外し、クラウンに沿うようフェイスカバーを上方に凸な向きとした状態でクラウンに被せ、本体側被取付部に対してカバー側取付部を再び取り付けることで、不使用時のフェイスカバーをクラウンに沿わせた状態で保持できるようにした
ことを特徴とするフェイスカバー付き帽子
を提供することによって解決される。
【0007】
このように、不使用時のフェイスカバーをクラウンに沿わせた状態で保持できる(不使用時のフェイスカバーがクラウンの一部を形成する)ようにしたことによって、不使用時のフェイスカバーが邪魔にならないようにするだけでなく、不使用時のフェイスカバーの紛失を防止することも可能になる。加えて、フェイスカバーを球面状としたことによって、フェイスカバーを使用する際に、口元や鼻先周辺に空間を確保し、息苦しさを感じにくくすることができるだけでなく、不使用時のフェイスカバーを、クラウンに対して綺麗に沿わせて、帽子の見た目を良くすることも可能になる。
【0008】
本発明のフェイスカバー付き帽子においては、
クラウンの前方の空気をクラウンの内側に取り込むためのクラウン用通気部を、クラウンの前側下部に設けるとともに、
着用者の目を出すための目出し部を、フェイスカバーの上部に設け、
不使用時のフェイスカバーをクラウンに沿わせた状態で保持させているときのクラウン用通気部が、フェイスカバーによって覆われずに目出し部から外側に露出するようにする
ことが好ましい。
【0009】
上記のように、クラウンの前側下部にクラウン用通気部を設けることによって、クラウンの内側を効率的にベンチレーション(換気)し、帽子の着用者の頭部を蒸れにくくすることができる。しかし、不使用時のフェイスカバーをクラウンに沿わせた状態で保持させたときに、クラウン用通気部がフェイスカバーで覆われてしまうと、上記のベンチレーション効果が奏されにくくなる。この点、フェイスカバーに目出し部を設け、不使用時のフェイスカバーをクラウンに沿わせた状態で保持させたときに、その目出し部がクラウン用通気部に重なるようにすることで、不使用時のフェイスカバーをクラウンに沿わせた状態で保持させているときでも、クラウン用通気部が露出するようにし、上記のベンチレーション効果が奏されるようにすることができる。
【0010】
本発明のフェイスカバー付き帽子において、フェイスカバーに上記の目出し部を設ける場合には、
帽子本体を、クラウンの前側下縁から前方に突出する前鍔を備えたものとし、
フェイスカバーを帽子本体から垂下させているときの前鍔が、目出し部における上部から前方に突出するようにする
ことが好ましい。
これにより、前鍔を備えた帽子本体においても、本発明のフェイスカバー付き帽子に係る構成を採用しやすくなる。
【0011】
本発明のフェイスカバー付き帽子において、帽子本体に前鍔を設ける場合には、前鍔の下方の空気を上方に通過させるための前鍔用通気部を、前鍔の基端部に設けることが好ましい。これにより、前鍔の上方(上面側)にある空気だけでなく、前鍔の下方(下面側)にある空気も、クラウン用通気部からクラウンの内側に取り込むことが可能になる。したがって、クラウンのベンチレーションをより効果的に行うことが可能になる。
【0012】
以上では、帽子本体が半球状のクラウンを有するクラウン帽タイプのものである場合について説明した。しかし、本発明のフェイスカバー付き帽子における主要な構成は、帽子本体が半球状のクラウンを有さないサンバイザータイプのものである場合にも採用することができる。
【0013】
すなわち、上記課題は、
頭周りに装着するためのバンドと、バンドの前側下縁から前方に突出する前鍔とを有する帽子本体と、
帽子本体から垂下されて、着用者の顔面を覆うフェイスカバーと
を備えたフェイスカバー付き帽子であって、
帽子本体の前部に、本体側被取付部が設けられる一方、
フェイスカバーの上部に、本体側被取付部に対して着脱可能な状態で取り付け可能なカバー側取付部が設けられることによって、
フェイスカバーが、帽子本体から取り外し可能な状態されるとともに、
フェイスカバーが、前方に凸な球面状を為し、
帽子本体から垂下されていたフェイスカバーを帽子本体から取り外し、フェイスカバーを上方に凸な向きとした状態でバンドの上方に被せ、本体側被取付部に対してカバー側取付部を再び取り付けることで、不使用時のフェイスカバーを着用者の頭部を覆うクラウンとして機能させることができるようにした
ことを特徴とするフェイスカバー付き帽子
を提供することによっても解決される。
【0014】
帽子本体がクラウン帽タイプのものである場合には、不使用時のフェイスカバーがクラウンに被せられてクラウンの一部を構成するようになっていたのに対し、帽子本体がサンバイザータイプのものである場合には、不使用時のフェイスカバーがクラウンそのものとして機能するようになっている。この場合(帽子本体がサンバイザータイプのものである場合)にも、不使用時のフェイスカバーが邪魔にならないようにするだけでなく、不使用時のフェイスカバーの紛失を防止することが可能になる。加えて、フェイスカバーを球面状としたことによって、フェイスカバーを使用する際に、口元や鼻先周辺に空間を確保し、息苦しさを感じにくくすることができるだけでなく、不使用時のフェイスカバーを、着用者の頭部に沿うように綺麗に湾曲させて、帽子の見た目を良くすることも可能になる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によって、不使用時のフェイスカバーを邪魔にならない位置に保持し、フェイスカバーの紛失を防止することができるフェイスカバー付き帽子を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第一実施形態のフェイスカバー付き帽子を示した斜視図であって、帽子本体からフェイスカバーを垂下させた状態を示した図である。
【
図2】第一実施形態のフェイスカバー付き帽子を示した斜視図であって、帽子本体から垂下していたフェイスカバーを取り外した後、そのフェイスカバーをクラウンの上方から帽子本体に再び取り付けようとしている様子を示した図である。
【
図3】第一実施形態のフェイスカバー付き帽子を示した斜視図であって、フェイスカバーをクラウンに沿わせて保持させた状態を示した図である。
【
図4】第一実施形態のフェイスカバー付き帽子における帽子本体を後方から見た状態を示した背面図である。
【
図5】第一実施形態のフェイスカバー付き帽子における帽子本体の前側下部の周辺を左右方向に垂直な平面で切断した状態を示した断面図である。
【
図6】第二実施形態のフェイスカバー付き帽子を示した斜視図であって、帽子本体からフェイスカバーを垂下させた状態を示した図である。
【
図7】第二実施形態のフェイスカバー付き帽子を示した斜視図であって、不使用時のフェイスカバーをクラウンとして利用している状態を示した図である。
【
図8】第二実施形態のフェイスカバー付き帽子における帽子本体を後方から見た状態を示した背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のフェイスカバー付き帽子の好適な実施形態について、図面を用いてより具体的に説明する。以下においては、2つの実施形態(第一実施形態及び第二実施形態)を例に挙げて、本発明のフェイスカバー付き帽子を説明する。しかし、本発明のフェイスカバー付き帽子の技術的範囲は、これらの実施形態に限定されない。本発明のフェイスカバー付き帽子には、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0018】
1.第一実施形態のフェイスカバー付き帽子
まず、第一実施形態のフェイスカバー付き帽子について説明する。
図1~5は、第一実施形態のフェイスカバー付き帽子を示した図である。
図1は、帽子本体10からフェイスカバー30を垂下させた状態を示した斜視図である。
図2は、帽子本体10から垂下していたフェイスカバー30を取り外した後、そのフェイスカバー30をクラウンの上方から帽子本体10に再び取り付けようとしている様子を示した斜視図である。
図3は、フェイスカバー30をクラウン11に沿わせて保持させた状態を示した斜視図である。
図4は、帽子本体10を後方から見た状態を示した背面図である。
図5は、帽子本体10の前側下部の周辺を左右方向に垂直な平面で切断した状態を示した断面図である。
図4及び
図5においては、フェイスカバー30等の図示を省略している。第一実施形態のフェイスカバー付き帽子は、
図1に示すように、帽子本体10と、フェイスカバー30とを備えている。
【0019】
第一実施形態のフェイスカバー付き帽子において、帽子本体10は、
図1に示すように、半球状のクラウン11を有するクラウン帽タイプのものとなっている。
図1に示したクラウン11は、三角状の生地(いわゆる「れんげ」)を複数枚繋ぎ合わせることによって形成されたものとなっているが、クラウン11の生地構成は、これに限定されない。また、クラウン11を構成する複数枚の生地の繋ぎ合わせは、通常、縫合によって行われるが、シームレス加工(例えば、超音波による振動で生地同士を摩擦することで熱を発生させ、生地を溶融させて互いに溶着させる加工等)等、他の方法によって繋ぎ合わせてもよい。
【0020】
第一実施形態のフェイスカバー付き帽子においては、帽子本体10に、前鍔12を備え付けている。この前鍔12は、着用者の目に入る日差しを遮るためのものである。前鍔12は、平面視半円状乃至は平面視三日月状を為しており、クラウン11の前側下縁から前方に突出した状態に設けられている。この前鍔12は、
図4に示すように、前鍔芯材12aと、前鍔芯材12aの上面側を覆う前鍔表地12bと、前鍔芯材12aの下面側を覆う前鍔裏地12cとで構成されている。
【0021】
前鍔芯材12aは、前鍔12の保形を行うためのものである。このため、前鍔芯材12aは、樹脂やエラストマーや厚紙等、ある程度の厚みと硬さを有する素材で形成される。また、前鍔表地12bは、第一生地12b1と第二生地12b2と第三生地12b3とを重ねて構成しており、このうち、第二生地12b2及び第三生地12b3は、メッシュ生地としている。第三生地12b3は、第二生地12b2よりも厚手となっている。さらに、前鍔裏地12cも、メッシュ生地としている。前鍔裏地12cは、第二生地12b2と同程度の厚さとなっている。
【0022】
フェイスカバー30は、着用者の顔面を覆うためのものとなっている。このフェイスカバー30によって、着用者の顔面を日焼けから守ることができる。このため、フェイスカバー30は、通常、遮光性を有する生地によって形成される。ただし、フェイスカバー30を通気性の低い生地で形成すると、着用者が息苦しさを感じるおそれがある。このため、フェイスカバー30は、ラッセルメッシュ生地やトリコットメッシュ生地等の経編メッシュ生地や、緯編メッシュ生地や、平織メッシュ生地や、綾織メッシュ生地や、朱子織メッシュ生地等、通気性を有するメッシュ生地によって形成される。これらのメッシュ生地は、通常、ポリエステルやナイロン等の合成繊維や、綿等の天然繊維や、或いはこれらの複合繊維等を編製又は織製することによって形成される。フェイスカバー30に使用する生地の目を小さくしたり、フェイスカバー30に抗菌処理を施したりすると、フェイスカバー30に衛生マスクとしての機能を付与することもできる。このフェイスカバー30は、帽子本体10に対して着脱可能な状態で取り付けられる。
【0023】
このように、第一実施形態のフェイスカバー付き帽子は、着脱可能なフェイスカバー30を備えているところ、
図1に示すように、このフェイスカバー30を、前方に凸な球面状に湾曲させている。このため、
図1に示すように、帽子本体10から垂下されていたフェイスカバー30を、帽子本体10から取り外し、
図2に示すように、フェイスカバー30を上方に凸となる向きにしてクラウン11の上方に被せ、
図3に示すように、フェイスカバー30を帽子本体11に再び取り付けることによって、フェイスカバー30をクラウン11の外面に綺麗に沿わせた状態で保持させることが可能となっている。これにより、不使用時のフェイスカバー30が邪魔にならないようにするだけでなく、不使用時のフェイスカバー30の紛失を防ぐことも可能となっている。
【0024】
フェイスカバー30は、その全体を1枚の生地によって形成してもよい。しかし、フェイスカバー30は、上記のように、球面状に湾曲しているところ、フェイスカバー30の全体を1枚の生地で形成すると、フェイスカバー30をシワのない状態で湾曲させにくい。例えば、全体が1枚の生地からなるフェイスカバー30を、球面状に湾曲させる方法としては、球面状の凹面を有する雌型と、球面状の凸面を有する雄型との間に生地を挟み、雌型及び/又は雄型を加熱することによって、その生地を熱プレスする方法等が挙げられるが、この場合には、その生地にシワが寄った部分が形成されてしまう。また、熱プレスにより球面状に形成した生地をその形状で維持させるためには、その生地を複層構造とし、その生地に熱可塑性の接着剤からなる接着層を設けることが好ましいところ、この場合には、熱プレス後のフェイスカバー30が硬くなってしまい、フェイスカバー30の顔当たり(肌触り)が悪くなるおそれがある。
【0025】
このため、第一実施形態のフェイスカバー付き帽子においては、フェイスカバー30を、複数枚の生地を繋ぎ合わせることによって球面状に形成している。これにより、フェイスカバー30をシワのない綺麗な球面状に仕上げることが可能になる。また、フェイスカバー30を柔らかくし、その凹凸を反転させやすくすることも可能になる。加えて、フェイスカバー30の顔当たり(肌触り)を良くすることもできる。フェイスカバー30を構成する複数枚の生地の繋ぎ合わせは、通常、縫合によって行われるが、シームレス加工(例えば、超音波による振動で生地同士を摩擦することで熱を発生させ、生地を溶融させて互いに溶着させる加工等)等、他の方法によって繋ぎ合わせてもよい。
【0026】
フェイスカバー30をどの程度の曲率半径で球面状に形成するかは、クラウン11の寸法(半球状のクラウン11の曲率半径)等に応じて適宜決定される。フェイスカバー30の曲率半径とクラウン11の曲率半径とが大きく異なっていると、不使用時のフェイスカバー10がクラウン11の外面に綺麗に沿いにくくなり、クラウン11に被せたときのフェイスカバー30にシワ等が形成されたり、クラウン11からフェイスカバー30が浮き上がったり等の不具合が生じやすくなるからである。このため、フェイスカバー30の曲率半径は、クラウン11の曲率半径(人間の頭部の曲率半径に略一致)と同程度に形成することが好ましい。人間の頭部は、完全な半球状とはなっておらず、半球状のクラウン11も、完全な球面には形成されない(場所によって曲率半径が変化している)ところ、フェイスカバー30も、そのように形成される。
【0027】
フェイスカバー30の上部(フェイスカバー30をクラウン11の前側下縁から垂下させたときに前鍔12の下側となる部分)には、
図1に示すように、目出し部31を設けている。この目出し部31は、着用者が目を出す部分となっている。これにより、フェイスカバー30を使用しているときでも、着用者の視界を良好に確保することが可能となっている。また、既に述べたように、第一実施形態のフェイスカバー付き帽子においては、クラウン11の前側下縁に前鍔12を設けているところ、この目出し部31から前方に前鍔12を突出させることもできる。さらに、第一実施形態のフェイスカバー付き帽子では、後述するように、クラウン11の前側下部に、クラウン11の前方の空気をクラウン11の内側に取り込むためのクラウン用通気部11aを設けているところ、
図3に示すように、フェイスカバー30をクラウン11に沿わせた状態で保持させたときに、クラウン用通気部11aがフェイスカバー30によって覆われないように、目出し部31からクラウン用通気部11aを露出させることもできる。したがって、フェイスカバー30をクラウン11に沿わせた状態で保持させたときでも、クラウン用通気部11aを機能させることができる。
【0028】
フェイスカバー30は、既に述べたように、帽子本体10に対して着脱可能な状態で取り付けられている。具体的には、
図1に示すように、フェイスカバー30の上部に設けたカバー側取付部αを、帽子本体10の前部に設けた本体側被取付部βに取り付けることによって、フェイスカバー30を帽子本体10に取り付けることができ、カバー側取付部αを、本体側被取付部βから取り外すことによって、フェイスカバー30を帽子本体10から取り外すことができるようになっている。第一実施形態のフェイスカバー付き帽子においては、フェイスカバー30の上部左右(目出し部31の左方及び右方)に設けた一対の突片部32のそれぞれに、カバー側取付部αを設けており、前鍔12の基端縁の両端部(左端部及び右端部)に、本体側被取付部βを設けている。カバー側取付部α及び本体側被取付部βは、着脱可能な状態で互いに取り付けできるものであれば特に限定されない。第一実施形態のフェイスカバー付き帽子においては、カバー側取付部α及び本体側被取付部βとして、一方が嵌合用凸部を有し、他方が嵌合用凹部を有するスナップボタンを採用している。このほか、カバー側取付部α及び本体側被取付部βとして、面ファスナーを採用することもできる。
【0029】
ところで、本体側被取付部βは、前鍔12の下面側ではなく上面側に設けている。このため、
図1に示すように、帽子本体10からフェイスカバー30を垂下させたときに、フェイスカバー30が帽子本体10から落ちにくくする(本体側被取付部βからカバー側取付部αが外れにくくする)ことが可能となっている。加えて、突片部32が前鍔12の先端縁から垂れ下がるようにして、着用者の顔の左右方向にわたる広い範囲をフェイスカバー30で覆うことが可能となっている。また、着用者の顔とフェイスカバー30との間に適度な隙間を設け(フェイスカバー30が着用者の顔面に押し当たらないようにし)、フェイスカバー30を快適に使用することも可能となっている。
【0030】
ただし、第一実施形態のフェイスカバー付き帽子では、クラウン11の左右(本体側被取付部βよりもやや後寄りの部分)に、第二の本体側被取付部γを設けており、この本体側被取付部γにもカバー側取付部αを取り付けることができるようにしている。このため、カバー側取付部αを取り付ける箇所を、第一の本体側被取付部βから第二の本体側被取付部γに切り替えることによって、フェイスカバー30が垂れ下がる箇所を後方に変化させ、フェイスカバー30を着用者の顔に近い箇所に垂下させることもできるようになっている。
【0031】
また、第一実施形態のフェイスカバー付き帽子では、
図3に示すように、フェイスカバー30をクラウン11に沿わせた状態で保持させたときに、クラウン11の側方下縁部P
1が、フェイスカバー30で覆われずに露出する状態となっている。このため、クラウン11の側方下縁部P
1に、クラウン11の側方の空気をクラウン11の内側に取り込むクラウン側方通気部(第一実施形態のフェイスカバー付き帽子では採用していない。)を設けることもできる。クラウン11の側方下縁部P
1にクラウン側方通気部を設ける場合には、クラウン11の側方下縁部P
1にメッシュ生地からなる部分を設けたり、その部分のクラウン11を表地と裏地とで構成し、表地の下縁を裏地に対して縫着せずにふらした状態とし、その部分から表地と裏地との隙間に空気が取り込まれるようにしたりするとよい。
【0032】
また、第一実施形態のフェイスカバー付き帽子では、
図3に示すように、クラウン11に沿った状態で保持させているときのフェイスカバー30を、クラウン11の後部に固定するための固定手段を設けている。この固定手段は、
図1に示すように、フェイスカバー30の下部に左右一対に設けたカバー側固定部33と、
図4に示すように、クラウン11の後部に左右一対に設けたクラウン側被固定部11bとで構成している。これにより、フェイスカバー30をクラウン11に沿わせた状態でしっかりと固定することが可能となっている。カバー側固定部33とクラウン側被固定部11bは、互いに固定できるのであれば、その種類を限定されない。カバー側固定部33及びクラウン側被固定部11bとしては、面ファスナーやスナップボタン等が例示される。
【0033】
さらに、第一実施形態のフェイスカバー付き帽子では、
図1に示すように、フェイスカバー30における着用者の口元周辺を覆う部分に、保冷材収容部34を設けている。この保冷材収容部34は、ポケット状に形成されている。この保冷材収容部34に保冷材(図示省略)を収容することよって、フェイスカバー30を使用しているときの着用者の口元周辺の空気を保冷材で冷却し、着用者が暑さや息苦しさを感じにくくすることが可能となっている。保冷材収容部34に収容する保冷材は、通常、シート状乃至はマット状(厚手シート状)のものとされる。
図3に示すように、フェイスカバー30をクラウン11に沿わせた状態で保持させたときには、保冷材収容部34は、着用者の頭頂部付近に重なるようになる。このときの保冷材収容部34に保冷材を収容することで、着用者の頭部を冷却することも可能になる。
【0034】
さらにまた、第一実施形態のフェイスカバー付き帽子では、
図1に示すように、クラウン11の前側下部にクラウン用通気部11aを設けている。このクラウン用通気部11aによって、
図5に示すように、前鍔12の上面側にある空気101をクラウン11の内側に取り込むことができるようになっている。これにより、クラウン11のベンチレーション(換気)を行って、着用者の頭部を蒸れにくくすることができる。このクラウン用通気部11aは、クラウン11に開口部を設けただけの単純な構造としてもよい。しかし、クラウン11の内側には、
図5に示すように、前立て50(クラウン11の前部を保形するための部材であり、通常、硬めのメッシュ生地によって形成される。)や、ビン皮60(着用者の頭部の汗を吸い取るための部材であり、通常、肌触りのよい生地の内側に吸水素材を収容したものが用いられる。)が設けられることがあるところ、これらの前立て50やビン皮60がクラウン用通気部11aから見えてしまうと、フェイスカバー付き帽子の見た目が悪くなるおそれがある。このため、第一実施形態のフェイスカバー付き帽子では、クラウン用通気部11a(クラウン11に設けた開口部)の内側に、裏当て用メッシュ生地40を裏当てしており、前立て50やビン皮60がクラウン側通気部10aから見えにくくしている。
【0035】
ただし、上記のように、クラウン11の前側下部にクラウン用通気部11aを設けただけでは、前鍔12の下面側にある空気102をクラウン用通気部11aから取り込むことができない。このため、クラウン用通気部11aによって奏されるベンチレーション効果が限定的になる。したがって、第一実施形態のフェイスカバー付き帽子では、
図1に示すように、前鍔12の基端縁に沿った箇所に、前鍔用通気部12dを設けており、
図5に示すように、前鍔12の下面側にある空気102を、前鍔用通気部12dを通じて前鍔12の上面側に透過させることができるようになっている。これにより、前鍔12の上面側にある空気101だけでなく、前鍔12の下面側にある空気102もクラウン用通気部11aから取り込むことができるようになり、より優れたベンチレーション効果を得ることが可能となっている。第一実施形態のフェイスカバー付き帽子においては、前鍔12の基端縁側の左右方向中央部における前鍔芯材12aを切り欠くことで、前鍔用通気部12dを形成している。既に述べたように、前鍔表地12bにおける第二生地12b
2及び第三生地12b
3と前鍔裏地12cは、メッシュ生地で形成したところ、これらの生地は、前鍔用通気部12dにも延在させている。
【0036】
2.第二実施形態のフェイスカバー付き帽子
続いて、第三実施形態のフェイスカバー付き帽子について説明する。第二実施形態のフェイスカバー付き帽子については、上述した第一実施形態のフェイスカバー付き帽子と異なる構成に絞って説明する。第二実施形態のフェイスカバー付き帽子で特に言及しない構成については、第一実施形態のフェイスカバー付き帽子と同様の構成を採用することができる。
図6~8は、第二実施形態のフェイスカバー付き帽子を示した図である。
図6は、帽子本体10からフェイスカバー30を垂下させた状態を示した斜視図であり、
図7は、不使用時のフェイスカバー30をクラウンとして利用している状態を示した斜視図であり、
図8は、帽子本体10を後方から見た状態を示した背面図である。
図8においては、フェイスカバー30等の図示を省略している。
【0037】
上述した第一実施形態のフェイスカバー付き帽子(
図1)では、クラウン11が半球状に形成されており、フェイスカバー30は、
図1に示すように、帽子本体10から垂下する状態と、
図3に示すように、クラウン11に沿わせた状態とで切り替えることができるようになっていた。これに対し、第二実施形態のフェイスカバー付き帽子は、
図6に示すように、半球状のクラウンを有しておらず、その代わりに、着用者の頭周りに装着するためのバンド13を備えたものとなっている。第二実施形態のフェイスカバー付き帽子では、
図6に示すように、帽子本体10から垂下されていたフェイスカバー30を帽子本体10から取り外し、
図7に示すように、フェイスカバー30を上方に凸な向きとした状態でバンド13の上方に被せて、本体側被取付部βに対してカバー側取付部αを再び取り付けることで、不使用時のフェイスカバー30を着用者の頭部を覆うクラウン(半球状のクラウン)として機能させることができるようになっている。
【0038】
また、第二実施形態のフェイスカバー付き帽子では、
図8に示すように、バンド13の後部における左右にバンド側被固定部13bを設けており、フェイスカバー30に設けたカバー側固定部33をこのバンド側被固定部13bに固定することができるようになっている。このバンド側被固定部13bは、第一実施形態のフェイスカバー付き帽子におけるクラウン側被固定部11b(
図4)に対応する部分となっている。さらに、第二実施形態のフェイスカバー付き帽子では、
図6に示すように、バンド13の前方下部にバンド用通気部13aを設けている。このバンド用通気部13aは、第一実施形態のフェイスカバー付き帽子におけるクラウン用通気部11a(
図1)に対応する部分となっている。
【0039】
第二実施形態のフェイスカバー付き帽子のように、不使用時のフェイスカバー30をクラウン自体として機能させることによっても、不使用時のフェイスカバー30を邪魔にならない位置に保持させ、フェイスカバー30の紛失を防止することができる。また、第二実施形態のフェイスカバー付き帽子では、帽子の形態自体を、半球状のクラウンを有さないサンバイザータイプの帽子から、半球状のクラウンを有するキャップタイプへの帽子へと大きく変化させることができるようになっている。
【0040】
3.用途
本発明のフェイスカバー付き帽子に係る構成は、その用途を特に限定されるものではなく、各種の帽子で採用することができる。なかでも、野球帽等の運動帽や、農作業時等に着用する作業帽で好適に採用することができる。
【符号の説明】
【0041】
10 帽子本体
11 クラウン
11a クラウン用通気部
11b クラウン側被固定部
12 前鍔
12a 前鍔芯材
12b 前鍔表地
12b1 第一生地
12b2 第二生地
12b3 第三生地
12c 前鍔裏地
12d 前鍔用通気部
13 バンド
13a バンド側被固定部
13b バンド用通気部
30 フェイスカバー
31 目出し部
32 突片部
33 カバー側固定部
34 保冷材収容部
40 裏当て用メッシュ生地
50 前立て
60 ビン皮
101 前鍔の上面側にある空気
102 前鍔の下面側にある空気
α カバー側取付部
β 本体側被取付部(第一の本体側被取付部)
γ 本体側被取付部(第二の本体側被取付部)