(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061652
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】施設内におけるシステム、電動モビリティ、および侵入防止エリア検知装置
(51)【国際特許分類】
G05D 1/02 20200101AFI20220412BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220412BHJP
B62K 5/01 20130101ALN20220412BHJP
【FI】
G05D1/02 H
G05D1/02 P
G08G1/16 C
B62K5/01
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020169713
(22)【出願日】2020-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】512250902
【氏名又は名称】WHILL株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(74)【代理人】
【識別番号】100142789
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100201466
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】武井 祐介
(72)【発明者】
【氏名】勝又 俊介
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 光
【テーマコード(参考)】
3D011
5H181
5H301
【Fターム(参考)】
3D011AA07
3D011AD18
5H181AA05
5H181BB04
5H181CC03
5H181CC04
5H181CC12
5H181CC14
5H181FF04
5H181FF05
5H181LL01
5H181LL02
5H181LL07
5H181LL08
5H181LL09
5H181MB04
5H301AA02
5H301GG07
5H301GG08
5H301GG09
5H301KK08
5H301KK18
5H301KK19
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電動モビリティの侵入防止エリアへの侵入を防止する。
【解決手段】施設内におけるシステムは、複数の電動モビリティMと施設内における侵入防止エリアを画定するために施設の天井面に設けられた再帰反射部材とを備え、各電動モビリティMは、車輪と車輪を駆動する駆動装置とを有するモビリティ本体とモビリティ本体に設けられ上方に向かって光を射出する光射出部と光射出部からの光に基づく反射光を受光する受光部とを有する侵入防止エリア検知センサと駆動装置を制御する制御装置とを備え、制御装置は光射出部からの光が再帰反射部材によって反射された反射光を受光部が受光した時に侵入防止エリアに侵入した侵入状態であると判断する侵入判断処理を行い、制御装置は侵入判断処理が行われると、電動モビリティに設けられた出力装置を用いた警告および駆動装置の制御による当該電動モビリティの走行状態の変更の少なくとも一方を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施設内におけるシステムであって、
複数の電動モビリティと、
前記施設内における侵入防止エリアを画定するために前記施設の天井面に設けられた再帰反射部材と、を備え、
各前記電動モビリティは、
車輪と、前記車輪を駆動する駆動装置とを有するモビリティ本体と、
前記モビリティ本体に設けられ、上方に向かって光を射出する光射出部と、前記光射出部からの前記光に基づく反射光を受光する受光部とを有する侵入防止エリア検知センサと、
前記駆動装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記光射出部からの前記光が前記再帰反射部材によって反射された前記反射光を前記受光部が受光した時に、前記侵入防止エリアに侵入した侵入状態であると判断する侵入判断処理を行い、
前記制御装置は、前記侵入判断処理が行われると、当該電動モビリティに設けられた出力装置を用いた警告および前記駆動装置の制御による当該電動モビリティの走行状態の変更の少なくとも一方を行う、施設内におけるシステム。
【請求項2】
前記複数の電動モビリティの車体情報を受信する管理コンピュータと、
受信した前記車体情報を前記複数の電動モビリティに関連付けて表示する表示装置と、を備え、
前記管理コンピュータは、前記複数の電動モビリティについて、前記侵入状態であること、又は、前記侵入状態であることによって前記電動モビリティの前記走行状態の変更が行われていることを示す情報を受信し、
前記表示装置は、前記情報に基づき、前記複数の電動モビリティの何れが前記侵入状態であるか、又は、前記複数の電動モビリティの何れで前記走行状態の変更が行われているかを表示する、請求項1に記載の施設内におけるシステム。
【請求項3】
各前記電動モビリティの前記制御装置には前記施設のマップデータが格納されており、
前記マップデータは前記侵入防止エリアの情報を有し、
各前記電動モビリティの前記制御装置は、前記マップデータ上で当該電動モビリティと前記侵入防止エリアが所定の離隔距離よりも近付かないように前記駆動装置を制御する、請求項1又は2に記載の施設内におけるシステム。
【請求項4】
前記複数の電動モビリティの各々の位置情報を受信する管理コンピュータと、
前記施設内で働くスタッフが携帯する端末装置と、を備え、
前記端末装置は、前記管理コンピュータから送信される送信情報であって、前記複数の電動モビリティのうち前記侵入状態の電動モビリティの少なくとも前記位置情報を示す送信情報を受信し、受信した送信情報に基づく表示および音声出力の少なくとも一方を行う、請求項1~3の何れかに記載の施設内におけるシステム。
【請求項5】
前記侵入防止エリアの縁に沿った方向に長く、前記再帰反射部材の幅寸法は8cm以上である、請求項1~4の何れかに記載の施設内におけるシステム。
【請求項6】
電動モビリティであって、
車輪と、前記車輪を駆動する駆動装置とを有するモビリティ本体と、
前記モビリティ本体に設けられたセンサと、
前記モビリティ本体に設けられ、上方に向かって光を射出する光射出部と、前記光射出部からの前記光に基づく反射光を受光する受光部とを有する侵入防止エリア検知センサと、
前記駆動装置を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記光射出部からの前記光が再帰反射部材によって反射された前記反射光を前記受光部が受光した時に、侵入防止エリアに侵入した侵入状態であると判断する侵入判断処理を行い、
前記制御装置は、前記侵入判断処理が行われると、当該電動モビリティに設けられた出力装置を用いた警告および前記駆動装置の制御による当該電動モビリティの走行状態の変更の少なくとも一方を行う、電動モビリティ。
【請求項7】
前記光射出部は、鉛直方向に対して前記モビリティ本体の前方に2°以上傾いた傾斜方向に前記光を射出する、請求項6の何れかに記載の電動モビリティ。
【請求項8】
前記光は光軸に対する出射角が5°以内であり、前記光射出部は、鉛直方向に対して15°以内の方向に前記光を射出する、請求項6又は7に記載の電動モビリティ。
【請求項9】
前記光射出部と前記受光部との前記モビリティ本体の車両前後方向の距離は5cm以下である、請求項6~8の何れかに記載の電動モビリティ。
【請求項10】
前記侵入防止エリア検知センサは距離センサであり、
前記制御装置は、前記距離センサによって第1の距離以下の距離が検出されると、前記出力装置を用いた改善要求を行い、又は、前記駆動装置の制御による前記走行状態の変更若しくは当該電動モビリティの減速を行い、
前記制御装置は、前記光射出部からの前記光が前記再帰反射部材によって反射された前記反射光の光量が基準値以上であると判断し、且つ、前記距離センサによって前記第1の距離よりも長い第2の距離以上の距離が検出されると、前記侵入判断処理を行う、請求項6~9の何れかに記載の電動モビリティ。
【請求項11】
施設内を自動運転によって移動する電動モビリティに取付けられる侵入防止エリア検知装置であって、
前記電動モビリティの上面に取付けられる装置本体と、
前記装置本体に設けられ、上方に向かって光を射出する光射出部と、
前記装置本体に設けられ、前記光射出部からの前記光に基づく反射光を受光する受光部と、
前記装置本体に設けられ、前記受光部が受光する光の量に応じた信号を前記電動モビリティに向かって出力する信号出力部と、を備え、
前記装置本体が前記電動モビリティの上面に取付けられた状態で、前記光射出部は鉛直方向に対して2°傾いた傾斜方向に前記光を射出する侵入防止エリア検知装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は施設内におけるシステム、電動モビリティおよび侵入防止エリア検知装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このような施設内におけるシステムとして、複数の電動モビリティを用い、利用者が前記複数の電動モビリティのうち一つの電動モビリティを施設内において手動運転によって移動させ、利用者による前記電動モビリティの利用が終了すると前記電動モビリティが自動運転によって待機場所まで移動するものが知られている。例えば特許文献1を参照されたい。
【0003】
また、自動運転可能な一人乗りモビリティを用いたサービスが知られている。例えば特許文献2~6を参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-144167号公報
【特許文献2】特開2003-024390号公報
【特許文献3】特開2018-160270号公報
【特許文献4】特開2018-169787号公報
【特許文献5】特開2016-027456号公報
【特許文献6】特開平11-231935号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の電動モビリティは施設内において自動運転によって目的地に向かって走行することができる。当該自動運転を行うために、電動モビリティは施設内のマップデータを有しており、また、電動モビリティは自己位置推定機能を有している。自己位置推定がGPSを用いて行われる場合がある。また、自己位置推定にオドメータ、ステレオカメラ、LiDAR等のセンサが用いられる場合もある。
【0006】
これらを用いてある程度の正確な自己位置が推定できるが、推定位置が1m以下の精度で正確であることの保証はかなり難しい。特に、電動モビリティの周囲に多くの人が存在するエリアでは、自己位置推定の精度が低下する傾向がある。推定位置の精度を上げるために、施設内に数m間隔でアンテナを配置し、各アンテナから異なる信号を出力することも可能であるが、このような構成はコスト高となり現実的ではない。
【0007】
一方、施設内には電動モビリティの侵入が好ましくないエリアがある。電動モビリティの乗車者の安全性を確保するために、例えば下り階段の入り口エリアは侵入防止エリアとすることが好ましい場合がある。自己位置推定および施設内のマップデータを用いて、電動モビリティの侵入防止エリアへの侵入を防止することは可能であるが、前述のようにその精度を上げることは容易ではない。このため、施設に容易に適用することが可能であり、電動モビリティの侵入防止エリアへの侵入を確実に防止することが可能な技術が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の態様は、電動モビリティであって、車輪と、前記車輪を駆動する駆動装置とを有するモビリティ本体と、前記モビリティ本体に設けられたセンサと、前記モビリティ本体に設けられ、上方に向かって光を射出する光射出部と、前記光射出部からの前記光に基づく反射光を受光する受光部とを有する侵入防止エリア検知センサと、前記駆動装置を制御する制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記光射出部からの前記光が再帰反射部材によって反射された前記反射光を前記受光部が受光した時に、侵入防止エリアに侵入した侵入状態であると判断する侵入判断処理を行い、前記制御装置は、前記侵入判断処理が行われると、当該電動モビリティに設けられた出力装置を用いた警告および前記駆動装置の制御による当該電動モビリティの走行状態の変更の少なくとも一方を行う。
【0009】
本発明の第2の態様は、施設内におけるシステムであって、前記電動モビリティと、前記施設内における侵入防止エリアを画定するために前記施設の天井面に設けられた再帰反射部材と、を備える。好ましくは、当該システムは、前記複数の電動モビリティの車体情報を受信する管理コンピュータと、受信した前記車体情報を前記複数の電動モビリティに関連付けて表示する表示装置と、を備え、前記管理コンピュータは、前記複数の電動モビリティについて、前記侵入状態であること、又は、前記侵入状態であることによって前記電動モビリティの前記走行状態の変更が行われていることを示す情報を受信し、前記表示装置は、前記情報に基づき、前記複数の電動モビリティの何れが前記侵入状態であるか、又は、前記複数の電動モビリティの何れで前記走行状態の変更が行われているかを表示する。
【0010】
本発明の第3の態様は、施設内を自動運転によって移動する電動モビリティに取付けられる侵入防止エリア検知装置であって、前記電動モビリティの上面に取付けられる装置本体と、前記装置本体に設けられ、上方に向かって光を射出する光射出部と、前記装置本体に設けられ、前記光射出部からの前記光に基づく反射光を受光する受光部と、前記装置本体に設けられ、前記受光部が受光する光の量に応じた信号を前記電動モビリティに向かって出力する信号出力部と、を備え、前記装置本体が前記電動モビリティの上面に取付けられた状態で、前記光射出部は鉛直方向に対して2°傾いた傾斜方向に前記光を射出する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るシステムの電動モビリティの斜視図である。
【
図2】本実施形態の電動モビリティの一部分解断面図である。
【
図3】本実施形態の電動モビリティの座席ユニット、カバー部等を取り外した状態の底面図である。
【
図4】本実施形態の旅客ターミナルT内のシステムの概略図である。
【
図5】本実施形態の旅客ターミナルTの一部の斜視図である。
【
図6】本実施形態の電動モビリティの制御ユニットのブロック図である。
【
図7】本実施形態に用いられる管理コンピュータのブロック図である。
【
図8】本実施形態の管理データの一例を示すテーブルである。
【
図9】本実施形態の第1の変形例の電動モビリティの斜視図である。
【
図10】本実施形態の電動モビリティの侵入防止エリア検知センサの動作を説明するための図である。
【
図11】本実施形態の電動モビリティの侵入防止エリア検知センサの動作を説明するための図である。
【
図12】本実施形態の電動モビリティに用いられるマップデータの一例である。
【
図13】本実施形態の電動モビリティの変形例の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の一実施形態に係る空港(施設)内におけるシステムが、図面を参照しながら以下に説明される。
当該システムは、
図4に示されるように、空港の旅客ターミナルT内に配置された複数の電動モビリティMと、複数の電動モビリティMを管理する管理コンピュータ100と、を備えている。管理コンピュータ100は空港内に配置されていなくてもよい。
【0013】
先ず、本実施形態の電動モビリティMについて簡単に説明する。なお、当該システムにおいて、本実施形態の電動モビリティMとは異なる電動モビリティを用いることも可能である。例えば、一人が着座して乗る他の電動モビリティ、一人が立って乗る電動モビリティ、複数人が乗る電動モビリティ、荷物が載置される電動モビリティ等を電動モビリティMとして用いることが可能である。または、一人が寝て乗る自動運転ベッドを電動モビリティMとして用いることも可能である。
【0014】
この電動モビリティMは、
図1~
図3に示されるように、一対の前輪(車輪)10および一対の後輪(車輪)20を有するモビリティ本体30を備える。また、モビリティ本体30は、座席ユニットSを有する。前輪10および後輪20の他に車輪が設けられてもよく、前輪10および後輪20の数が前記以外であってもよい。また、前輪10および後輪20の一方が無くてもよい。本実施形態の電動モビリティMは、一人の利用者が座席ユニットSに着座して乗る電動車椅子の一種である。
モビリティ本体30は、一対の前輪10および一対の後輪20の少なくとも一方を駆動するためのモータ(駆動装置)MTを有する。
【0015】
本実施形態の説明では、
図3に示す電動モビリティMおよびモビリティ本体30の車両前後方向は以下の説明で前後方向と称される場合があり、
図3に示す電動モビリティMおよびモビリティ本体30の車両幅方向は以下の説明で幅方向又は左右方向と称される場合がある。
【0016】
本実施形態では、
図3に示すように、一対の後輪20はそれぞれモータMTと接続され、各モータMTは対応する後輪20を駆動する。各モータMTの駆動力が対応する前輪10に動力伝達部材によって伝達されてもよい。動力伝達部材はベルト、ギヤ等である。
【0017】
図3に示すように、各前輪10は、車軸11に取付けられたハブ14と、ハブ14に支持された複数のローラ支軸(図示せず)とを備え、複数のローラ13はそれぞれローラ支軸に回転可能に支持されている。なお、ハブ14が車軸11にベアリング等を用いて取付けられていてもよく、ハブ14が車軸11に緩衝部材、中間部材等を用いて取付けられていてもよい。
【0018】
各ローラ13は対応するローラ支軸の軸線周りに回転する。つまり、各前輪10の外周面は複数のローラ13によって形成され、各前輪10は走行面に対して全方向に移動する全方向車輪である。なお、
図3では、各ローラ13の溝の図示が省略されている。
本実施形態では、各後輪20は、図示しない車軸と、車軸に取付けられたハブ21と、ハブ21の外周側に設けられ、外周面がゴム状弾性を有する材料を用いて形成された外周部材22とを有するが、前輪10と同様に全方向車輪を用いてもよい。この場合、前輪10が全方向車輪ではなく通常の車輪となる。後輪20の車軸はモータMTの主軸と共通でもよい。
【0019】
モビリティ本体30の構造は適宜変更可能である。本実施形態のモビリティ本体30は、地面に沿って延びるベース部32と、ベース部32の後端側又は中央部から上方に延びている座席支持部33とを有する。座席支持部33の上端側に座席ユニットSが取付けられている。
本実施形態のベース部32は、
図2に示されるように、金属製のベースフレーム32aを少なくとも部分的に覆うプラスチック製のカバー部32bを有する。
【0020】
本実施形態では、座席ユニットSは、背凭れ部40と、座面部50とを有する。背凭れ部40は座面部50の後端から上方に延びている。座面部50のクッション51は取外し可能であり、クッション51が取り外されると、座席支持部33の上面および/又は座面部50の下部構造52が露出する。
座席支持部33には、上下方向に延びるバッテリ収容部34が形成され、バッテリBAがバッテリ収容部34に収容される。
【0021】
座席支持部33の上端部には、
図2に示されるように、座面部50の下部構造52の一部として、着座センサ53が設けられている。本実施形態の着座センサ53は、座席支持部33の上端部に支持された可撓性部材54と、可撓性部材54の下方に配置された検出機器55とを有する。検出機器55は、スイッチ、圧力センサ等である。本実施形態では検出機器55はスイッチである。なお、検出機器55が、可撓性部材54に取付けられた撓みセンサであってもよい。このように、検出機器55は、可撓性部材54の撓みを検出できる機器であればよい。なお、着座センサ53は、クッション51の下方、下面、中等に設けられた検出機器55であってもよい。この場合は可撓性部材54を設ける必要はない。また、着座センサ53として、クッション51に利用者が乗ったことを検出する他の態様の公知のセンサが用いられてもよい。例えば、座席ユニットSを撮像するカメラを着座センサ53として用いることも可能である。
【0022】
本実施形態では、クッション51上に利用者が乗ると、可撓性部材54の一部、例えば中央側が下方に弾性変形することによって検出機器55が押され、検出機器55が押されることによって所定の信号(電流)等が検出機器55から後述の制御装置80に送信される。つまり、利用者が座面部50に乗っていることが制御装置80によって認識される。
【0023】
座席ユニットSは、右のコントロールアーム43と左のコントロールアーム43とを有する。
各コントロールアーム43の上面にはアームレスト43aが固定されている。本実施形態ではコントロールアーム43とアームレスト43aの両方が設けられているが、コントロールアーム43又はアームレスト43aのみが設けられていてもよい。この場合、利用者は、コントロールアーム43の上に腕および手の少なくとも一方を置き、又は、アームレスト43aの上に腕および手の少なくとも一方を置くことができる。
【0024】
右側のコントロールアーム43の上端にはジョイスティック44aを有するコントローラ(操作部)44が設けられている。力が加えられていない状態では、コントローラ44内に配置された付勢部材(図示せず)によってジョイスティック44aは中立位置に配置される。
【0025】
なお、コントローラ44がモビリティ本体30から分離していてもよい。この場合、コントローラ44は、例えば、利用者のタブレットコンピュータ、ゲーム用コントローラに類似するコントローラ等であり得る。タブレットコンピュータの場合、ジョイスティック44aは設けられず、利用者はタブレットコンピュータの画面のタッチスクリーン機能を用いて電動モビリティMの走行方向、走行速度等を入力する。コントローラ44がモビリティ本体30から分離している場合、利用者ではなく他の者が利用者が乗っている電動モビリティMの走行を操作することも可能である。
【0026】
コントローラ44は、電動モビリティMを前進させるための前進用操作および後進させるための後進用操作が入力されるものである。例えば、ジョイスティック44aの変位方向および変位量に応じた信号がコントローラ44から後述する制御ユニット60に送信され、受信する信号に応じて制御ユニット60が各モータMTを制御する。
【0027】
左側のコントロールアーム43の上端には、電動モビリティMに関する各種設定を行うための設定部45が設けられている。各種設定の例として、最高速度の設定、運転モードの設定、電動モビリティのロックの設定がある。設定部45には複数の操作ボタン、表示部等が設けられている。
図1に示されるように、電動モビリティMは、左のコントロールアーム43の上端面から上方に突出しているモビリティ表示装置200を備えている。モビリティ表示装置200は、左のコントロールアーム43の上端面から上方に向かって延びている支持部材210によって、左のコントロールアーム43に支持されている。
【0028】
モビリティ表示装置200には有線又は無線によって後述の制御装置80から情報が送信され、モビリティ表示装置200は受信した情報を表示する。当該情報は、例えば、電動モビリティMの走行速度の情報、バッテリBAの状態に関する情報、ステレオカメラ(センサ)90等のセンサによって検出された障害物の位置の情報、当該障害物が走行の障害になるか否かの判断結果の情報、地図情報、および走行経路の情報等を含む。また、モビリティ表示装置200は例えばタッチスクリーン機能等の入力手段を備えており、モビリティ表示装置200に入力された情報は制御装置80に送信される。
【0029】
なお、モビリティ表示装置200がプロセッサ、記憶装置等を有する制御装置を備え、当該制御装置が制御装置80の機能の一部又は全てを担ってもよい。また、モビリティ表示装置200が支持部材210に取外し可能に取付けられていてもよい。
【0030】
制御ユニット60は、
図6に示すように、各モータMTを駆動するモータドライバ70と、制御装置80とを有する。
モータドライバ70はバッテリBAに接続されている。また、モータドライバ70は各モータMTにも接続されており、モータドライバ70は各モータMTに駆動電力を供給する。
【0031】
制御装置80は、
図6に示されるように、CPU等のプロセッサ81と、不揮発性メモリ、ROM、RAM等を有する記憶装置82と、無線通信および有線通信で情報の送受信を行う送受信部83とを有する。記憶装置82には電動モビリティMを制御するための走行制御プログラム82aが格納されている。プロセッサ81は走行制御プログラム82aに基づき作動し、コントローラ44および設定部45からの信号に基づき、各モータMTを駆動するための駆動信号をモータドライバ70に送信する。
【0032】
図1に示すように、三次元カメラであるステレオカメラ(センサ)90が右のコントロールアーム43の上端側および左のコントロールアーム43の上端側にそれぞれ取付けられている。各ステレオカメラ90は、一対のレンズユニット91と、一対のレンズユニット91を支持するカメラ本体とを備えている。
【0033】
各ステレオカメラ90の内部には一対の撮像素子93(
図6)が設けられ、一対の撮像素子93は一対のレンズユニット91にそれぞれ対応している。各撮像素子93はCMOSセンサ、CCDセンサ等の周知のセンサである。各撮像素子93は制御装置80に接続されている。一例として、各ステレオカメラ90の検出範囲は、電動モビリティの前方および前輪10の幅方向外側である。
【0034】
図1に示すように、モビリティ本体30は荷物ラックである荷物載置部42を有し、荷物載置部42はモビリティ本体30における後端部又は座席ユニットSの背面側に設けられている。本実施形態では、荷物載置部42は、
図1および
図2に示されるように、モビリティ本体30の後端部および座席ユニットSの背面によって支持されている。荷物載置部42は、背凭れ部40に沿って上下方向に延びる一対のフレーム46を有する。
【0035】
図2に示されるように、モビリティ本体30における座席支持部33若しくは座席ユニットSの後端部又は荷物載置部42の下方には、センサであるLiDAR(Light Detection and Ranging又はLaser Imaging Detection and Ranging)95が取付けられている。本実施形態では、電動モビリティMの車両後方の所定の検出範囲に亘ってLiDAR95がレーザ光を走査し、物体に当たって跳ね返るレーザ光をLiDAR95が検出する。当該検出結果(検出データ)を用いて、制御装置80(
図6)は、電動モビリティの幅方向外側および後方である前記所定の検出範囲の障害物を検出する。障害物は、例えば、人、動物、植物である。障害物は、例えば、壁、比較的大きな物体、段差等である。他の例では、LiDAR95は、後輪20が落下する又は嵌る可能性のある段差、穴、溝等の障害物を検出してもよい。
【0036】
なお、電動モビリティMの後方および側方の障害物を検出するための他のステレオカメラが設けられてもよく、障害物を検出できる公知のレーダー、ミリ波センサ等の他のセンサが設けられてもよい。また、電動モビリティの前輪10の幅方向外側および前方の障害物を検出するために、ステレオカメラ90の代わりにLiDAR、レーダー、ミリ波センサ等の他のセンサが設けられてもよい。
【0037】
制御装置80は、記憶装置82に格納されている回避制御プログラム82bおよび自動運転プログラム82cに基づき作動する。制御装置80はステレオカメラ90の視差画像を処理して距離画像(検出データ)を作成する。そして、制御装置80は、距離画像中において前記障害物を検出する。
【0038】
制御装置80は、ステレオカメラ90およびLiDAR95によって得られるデータ(検出データ)を二次元の平面視画像に変換して障害物の認識をしてもよいし、前記データを3次元空間内のデータとして扱って障害物の認識をしてもよい。制御装置80は、その他の方法で検出範囲内において検出された障害物を認識してもよい。
【0039】
制御装置80は、記憶装置82に格納された自動運転プログラム82cに基づき、電動モビリティMに備えられたGPS受信機、オドメータ、ステレオカメラ90、LiDAR95等の検出結果を用いて公知の自己位置推定を行う。また、制御装置80は、自動運転プログラム82cに基づき、検出される障害物と、記憶装置82に格納されているマップデータと、自己位置推定の結果とを用いて、例えば出発地から目的地迄のルート設定および自動運転を行うことができる。
【0040】
一例では、利用者がモビリティ表示装置200に設けられた入力装置201(
図6)を用いて目的地を指定し、制御装置80が現在の自己位置である出発地から当該目的地迄のルート設定および自動運転を行う。入力装置201は、例えば、モビリティ表示装置200のタッチスクリーン機能、モビリティ表示装置200に設けられたボタンであり得る。入力装置201の代わりに、コントローラ44、設定部45等に設けられたボタン等の入力装置が用いられてもよい。
【0041】
制御装置80は、記憶装置82に格納された回避制御プログラム82bに基づき、例えば検出範囲における所定の範囲に前記障害物が検出された時に、回避動作のための制御指令によって各モータMTを制御し、および/又は、報知装置を作動させる。回避動作の例は、回避対象を避けるための各モータMTの回転速度の低下又は停止(自動停止機能)、回避対象側への電動モビリティMの移動を制限するための各モータMTの制御等である。回避対象は、電動モビリティMの走行の障害になる可能性が高い対象である。
【0042】
図4に示すように、旅客ターミナルTには、一例として、セキュリティースクリーニングエリア1の出口の近傍に管理場所である管理ステーション(貸出ステーション)2が設けられ、管理ステーション2には複数の電動モビリティMが配置されている。また、管理ステーション2は受付3を有し、受付3にはコンピュータ4が設置されている。コンピュータ4は、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ等の公知のコンピュータである。コンピュータ4は通信ネットワーク、通信回線等を介して、管理コンピュータ100と接続されている。
【0043】
管理コンピュータ100は、
図7に示されように、CPUを有するプロセッサ101と、不揮発性メモリ、ROM等を有する記憶装置102と、表示装置103と、無線通信および有線通信で情報の送受信を行う送受信部104とを有する。記憶装置102には複数の電動モビリティMを管理するための管理データ102aが格納されている。管理データ102aは、コンピュータ4の表示装置5や管理コンピュータ100の表示装置103に管理テーブルを表示させるためのデータである。
【0044】
管理データ102aは、一例では
図8に示される管理テーブルを表示装置5,103に表示させるデータである。
図8に示される管理テーブルはタイムテーブルを含む態様である。当該管理テーブルの複数の行にはそれぞれ複数の電動モビリティMの識別情報(識別子)が記載され、各行には対応する電動モビリティMに関する車体情報、利用者による使用予定(利用情報)、利用者による使用状況(利用情報)、利用者の搭乗券に記載されているフライト情報等が表示される。フライト情報は、利用者の行き先の情報、当該行き先への希望到着時刻に関する時刻情報等を含む情報であるとも言える。
【0045】
図8において、番号1の電動モビリティMは8:00からユーザAによって使用されている。これが前記使用状況の一例として
図8の管理テーブルに表示されている。
図9において、番号3の電動モビリティMはユーザCによる利用が終わり、自動運転で管理ステーション2に戻っている途中である。この場合、前記使用状況の一例として、番号3の電動モビリティMは利用済であることが
図8の管理テーブルに表示されている。
【0046】
また、
図8に示すように、管理テーブルにおけるタイムテーブル以外のエリアに車体情報としてバッテリBAの充電状態、電動モビリティMの走行状態、電動モビリティMに装着された着座センサ53の検出状態等が表示される。走行状態として、手動運転で走行していること、手動運転で停止していること、自動運転で走行していること、自動運転で停止していること等が表示される。他の例として、走行状態として、手動運転又は自動運転であることが表示される。
図8に示されていないが、管理テーブルに、フライト情報として、利用者の行き先の情報、当該行き先への希望到着時刻に関する時刻情報等が表示されてもよい。行き先の例はゲート番号であり、希望到着時刻はボーディング開始時刻等である。
【0047】
図1および
図2に示すように、モビリティ本体30のコントロールアーム43の上端部に侵入防止エリア検知センサ500が設けられている。侵入防止エリア検知センサ500は、上方に向かって光Lを射出する光射出部510と、光射出部510からの光Lに基づく反射光を受光する受光部520とを有する。本実施形態では、
図1に示すように、光射出部510と受光部520とは車両幅方向に並んでいる。光Lは、可視光、紫外光、赤外光等である。光射出部510を指向性の強いLEDとすることも可能である。
【0048】
再帰反射部材530の検出精度を上げるため、光Lの出射角(Emitting Angle)を光軸に対して±5°以内の光とすることが好ましく、±2°以内の光とすることがより好ましい。光Lはレーザ光であることが好ましい。本実施形態では光射出部510はレーザーダイオード等である。また、光Lは反射波検出時のノイズ低減に有利な単波長レーザとすることが考えられる。なお、本実施形態では、内部電池で駆動する電動モビリティに搭載することを考え、光射出部510に消費電力が小さいVCSEL Laser(垂直共振器面発光レーザ)を使用している。当該構成は充電量、充電時間等が問題になる施設内で使用される電動モビリティMにおいて極めて有利である。
【0049】
図10に示すように、光射出部510は鉛直方向Vに対して15°以内の上方向に光Lを射出する。15°を超えると、例えば天井照明における傾き20°の反射面からの反射光がノイズとなる場合もある。15°を超えると、電動モビリティMが侵入防止エリアPAからかなり離れている状態で当該電動モビリティMによって再帰反射部材530が検出される場合が多くなる一方、電動モビリティMが方向転換しながら進んでいる場合に直上に配置された再帰反射部材530を検出できない場合も発生し得る。また、15°以上とすると後述する再帰反射部材からの反射光の検出精度が大きく低下する可能性もある。本実施形態では、光射出部510は、鉛直方向Vに対してモビリティ本体30の前方に2°以上傾いた傾斜方向に光Lを射出する。本実施形態では、光射出部510は、鉛直方向Vに対してモビリティ本体30の前方に3°傾いた傾斜方向に光Lを射出する。つまり、光射出部510の光軸は鉛直方向Vに対してモビリティ本体30の前方に3°傾いている。好ましくは、受光部520の光軸も光射出部510の光軸と同様に傾いている。これにより、電動モビリティMが手動運転または自動運転で目標方向に前進する際に、侵入防止エリアPAを早めに検出することが可能となる。
【0050】
図4および
図5に示すように、施設である旅客ターミナルTの天井面には再帰反射部材530が設けられている。再帰反射部材530の一例として、再帰反射テープを用いることができる。再帰反射テープは旅客ターミナルTの天井面に貼付けられる。フィルム状やシール状の再帰反射部材530、特に可撓性を有するテープ状の再帰反射部材530であれば、施設の天井への設置が容易である。
【0051】
例えば、再帰反射部材530は、JIS Z 9117:2011の規格値を満たすものである。再帰反射部材530を用いてJIS Z 9117の8.1に準じたサンプルを作り、JIS Z 9117の8.1に準じて規格値である再帰反射係数R'(cd/lux/m2)を測定した時に、JIS Z 9117:2011の規格値を満たす。なお、再帰反射部材530の再帰反射係数R'がJIS Z 9117:2011の規格値を外れていても、下記の効果を奏する場合はある。
【0052】
図4および
図5に示すように、旅客ターミナルTの下り階段STに入口エリアに侵入防止エリアPAを画定するために、下り階段STの入り口エリアの天井面に再帰反射部材530が設けられている。本実施形態では、再帰反射部材530の真下と階段との間のエリアが侵入防止エリアPAとなる。
図4において侵入防止エリアPAは斜線で示されている。本実施形態では、下り階段STの入り口エリアには、下りエスカレータの入り口エリアも含まれる。また、同様に、侵入防止エリアが上り階段の入り口エリア、上りエスカレータの入り口エリア、および上りおよび下りエスカレータの出口エリアに設けられてもよい。
【0053】
この場合、再帰反射部材530である再帰反射テープは侵入防止エリアPAの縁に沿って切れ目無く連続して貼付けられている。また、再帰反射テープは、侵入防止エリアPAの縁に沿った方向に長く、その長手方向と直交する方向の寸法である幅寸法は8cm以上であり、より好ましくは10cm以上である。本実施形態では、侵入防止エリアPAは下り階段STの入り口エリアと一致している。なお、幅寸法が数cmの再帰反射テープを複数本使って幅寸法が8cm以上の再帰反射部材530とすることが可能である。
【0054】
図4に示すように、旅客ターミナルTの窓ガラスWに沿った例えば幅数cm~数十cmの侵入防止エリアPAを画定するために、天井面における窓ガラスWから数cm~数十cm離れた位置に再帰反射テープである再帰反射部材530が設けられる。再帰反射部材530は窓ガラスWに沿って存在し、一例では、侵入防止エリアPAは再帰反射部材530の真下と窓ガラスWとの間のエリアとなる。
【0055】
図4に示すように、旅客ターミナルTのムービングウォークウェイMWの入り口エリアおよび出口エリアに侵入防止エリアPAを画定するために、ムービングウォークウェイMWの長手方向と直交する方向に延びる再帰反射部材530が天井面に設けられる。
図4に示すように、旅客ターミナルTの自動ドアADに沿った例えば幅数cm~数十cmの侵入防止エリアPAを画定するために、天井面における自動ドアADから数cm~数十cm離れた位置に再帰反射テープである再帰反射部材530が設けられる。
【0056】
再帰反射部材530として、ビーズタイプの再帰反射テープ、プリズムタイプの再帰反射テープ等の公知の再帰反射テープを用いることができる。また、再帰反射部材530として、プラスチック製の公知の再帰反射板、その他の公知の再帰反射材を用いることができる。
【0057】
図6に示すように、制御装置80の記憶装置82には侵入判断プログラム82dが格納されている。制御装置80は、侵入判断プログラム82dに基づき、光射出部510からの光Lが再帰反射部材530によって反射された反射光を受光部520が受光したか否かを判断する。また、制御装置80は、侵入判断プログラム82dに基づき、受光部520が前記反射光を受光したと判断すると、電動モビリティMが侵入防止エリアPAに侵入した侵入状態であると判断する侵入判断処理を行う。
【0058】
受光部520は前記反射光の光量を検出する機能を有する。例えば、受光部520はフォトダイオード等の入射光量を検出できるセンサを有し、制御装置80は、侵入判断プログラム82dに基づき、受光部520が受光する前記反射光の光量を検出する。光量は照度等である。制御装置80は、受光部520が基準値以上の光量を受光したか否かを判断する。当該判断は、受光部520のフォトダイオード等のセンサの出力電流、出力電圧等が基準電流値以上か否かに基づき行われる。受光部520の出力電流、出力電圧等を送信するための通信線が制御装置80に接続されている。前記基準値は、例えば、旅客ターミナルT内の天井面に設けた複数の再帰反射部材530に対し、各々の再帰反射部材530の下に配置した電動モビリティMの光射出部510からの光Lを受光部520で受光し、その時の受光部520のフォトダイオードの出力電流、出力電圧等の出力値に基づき設定される。
【0059】
一例では、光射出部510は所定波長帯域の光Lをパルス波状に射出し、受光部520のフォトダイオードが前記反射光を受光する。
図10に示すように光射出部510の光Lの光軸は鉛直方向Vに対してモビリティ本体30の前方に3°傾いているので、光Lが天井面の再帰反射部材530に当たった時に、受光部520の所定範囲に入射する所定波長帯域の光量が多くなる。
図11には、仮に天井面に鏡面を有する金属板が張付けられており、当該鏡面に向かって光Lが射出される場合が説明されている。この場合は、光Lの光軸は鉛直方向Vに対してモビリティ本体30の前方に3°傾いているので、正反射によって反射光が車両前方に向かい、受光部520には強い反射光が照射されない。天井面の照明の反射面も再帰反射部材ではないので、前記金属板と同様である。当該構成は、天井面の再帰反射部材530を正確に検出するために有用である。光Lの光軸が鉛直方向Vに対してモビリティ本体30の前方に2°以上傾いている場合も同様である。なお、光Lが鉛直方向Vに対する傾きは15°以下であることが好ましい。
【0060】
また、電動モビリティMは特に自動運転の時に主に前進するので、光射出部510からの光Lが鉛直方向Vに対してモビリティ本体30の前方に傾いていると、侵入防止エリアPAに進入する前に再帰反射部材530の検出が確実に行われる傾向がある。
【0061】
本実施形態では、侵入防止エリア検知センサ500はTOF(TIME OF FLIGHT)センサ等の距離センサである。TOFセンサ以外の公知の距離センサを用いることも可能である。制御装置80は、侵入判断プログラム82dに基づき、受光部520が基準値以上の光量を受光した時に再帰反射部材530までの距離を検出し、当該検出距離が例えば1.5m(第2の距離)以上であるか否かを判断する。第2の距離以上の場合、制御装置80は電動モビリティMが侵入防止エリアPAに侵入した侵入状態であると判断する。
【0062】
好ましくは、制御装置80は、受光部520によって検出される光量が所定時間を超えて基準値以上である時に、受光部520が基準値以上の光量を受光したと判断する。当該構成は、受光部520が再帰反射部材530からの反射光を受光したことを正確に見分けるために有用である。所定時間は例えば50ミリ秒である。制御装置80等のサンプリング周期が10ミリ秒以下であれば、受光部520によって検出される光量が連続して5回以上受付けられる。当該5回以上の検出結果の平均値が前記基準値以上か否か判断されてもよい。
【0063】
ここで、前述のように、再帰反射部材530の幅寸法は好ましくは10cm以上である。このため、電動モビリティMが時速5km/hで再帰反射部材530の下を通過する場合は、70ミリ秒以上の時間がかかる。このように再帰反射部材530の幅寸法の設定は、電動モビリティMの侵入防止エリアPAへの侵入を確実に防止するために有用である。電動モビリティMが時速4km/hで自動運転又は手動運転により移動する場合がある。この場合は、再帰反射部材530の幅寸法が8cm以上であれば、電動モビリティMの侵入防止エリアPAへの侵入を確実に防止することができる。
【0064】
自動運転状態もしくは手動運転状態にある電動モビリティMが侵入防止エリアPAに侵入状態であると判断されると、制御装置80は、記憶装置82に格納されている侵入防止プログラム82eに基づき、モータMTを制御することによって電動モビリティMを停止させ、又は、減速状態にした後に停止させる。減速状態とは、電動モビリティMの最高速度を例えば1km/h以下の低速にした状態である。電動モビリティMの停止および減速後の停止は、電動モビリティMの走行状態の変更である。走行状態の変更として、制御装置80が電動モビリティMを低速で後進させてもよい。侵入防止エリアPAへの電動モビリティMの侵入を防止するためのその他の走行状態変更が行われてもよい。例えば、自動運転状態から手動運転状態に変更することや、手動運転状態から自動運転状態に変更することが考えられる。
【0065】
また、自動運転状態の電動モビリティMが侵入防止エリアPAに侵入したと判断された場合は、運転状態を手動運転に切替えずに、前述のルート設定を改めて行うことも考えられる。この場合、例えば、侵入防止エリアPAの検出情報を参照して前述の自己位置推定を再度行うことや、侵入防止エリアPAの検出情報を障害物情報として、目的地迄のルート設定を再度行うことが考えられる。
【0066】
一例では、制御装置80によって自動運転状態もしくは手動運転状態にある電動モビリティMが侵入防止エリアPAに侵入状態であると判断されると、制御装置80は、侵入防止プログラム82eに基づき、電動モビリティMを所定距離だけ後進させた後に停止させる。一例では、所定距離は5m以下の適当な距離であり、所定距離は例えば50cm以上である。
【0067】
例えば、前述のように侵入状態であること、前述のように後進して停止したこと、又は、前述のように侵入状態であると判断された後に停止したことが、
図8の管理テーブルに表示される。当該情報に基づき、当該サービスを提供する者や管理コンピュータ100は、利用者の補助の要否を判断する。
【0068】
好ましい実施形態では、前記マップデータは、
図12のように、各侵入防止エリアPAの情報を有する。また、マップデータでは、
図12のように、天井面の再帰反射部材530によって確定された一部又は全部の侵入防止エリアPAから離隔距離だけ離れた位置に、ジオフェンスGFが設定されている。
図12では、窓ガラスWおよび自動ドアADの侵入防止エリアPAを除く侵入防止エリアPAにジオフェンスGFが設定されている。
【0069】
前記離隔距離は、例えば1.5m以上であり、好ましくは3m以上である。例えば、階段STの入り口および出口エリア、ムービングウォークウェイMWの入り口および出口エリア、エスカレータの入り口および出口エリア、電動モビリティMの落下や脱輪が懸念される段差等に設定されたジオフェンスGFについては、前記離隔距離が2.5m以上であり、5m以上であることが好ましい。理論的には、高さ6m以下の天井面に設けられた再帰反射部材530については、侵入防止エリアPAから1.5m離れた位置において、前記侵入状態であると判断されることはない。
【0070】
例えば、自動運転の時に、制御装置80は、電動モビリティMの推定された自己位置と侵入防止エリアPAとの距離が前記離隔距離よりも小さくならないようにルート設定および各モータMTの制御を行う。また、手動運転の時に、制御装置80は、電動モビリティMの推定されたマップデータ上の自己位置と侵入防止エリアPAとの距離が前記離隔距離よりも小さくならないように、各モータMTの制御を行う。例えば、手動運転の時に電動モビリティMの推定された自己位置がマップデータ上で離隔距離内に入ると、電動モビリティMの走行状態の変更、例えば減速等を行い、侵入防止エリアPAに近付いている事を乗車者に知らせる。つまり、マップデータ上で電動モビリティMはジオフェンスGFを超えることができない。
【0071】
電動モビリティMが侵入防止エリアPAに近付くことを防止する設定をマップデータ内で行う代わりに、侵入防止エリアPAに近付くことを防止する前述の設定が電動モビリティMの回避制御プログラム82b又は自動運転プログラム82cに設定されていてもよい。例えば、制御装置80は、回避制御プログラム82bに基づき、マップデータ上で電動モビリティMの自己位置が侵入防止エリアPAに対して前記離隔距離よりも近い位置に配置されると、停止又は減速運転を行う。
【0072】
このため、電動モビリティMは基本的には侵入防止エリアPAに侵入することはない。しかしながら、電動モビリティの自己位置推定が完全であることを保証することは難しく、前記離隔距離があっても電動モビリティMが侵入防止エリアPAに近付き、前述のように侵入状態であると判断される場合がある。当該構成では、電動モビリティMが侵入状態になったことが
図8の管理テーブルに表示されると、当該サービスを提供する者や管理コンピュータ100は、利用者の補助が必要であると判断できる。
【0073】
また、制御装置80は、侵入防止プログラム82eに基づき、モビリティ表示装置(出力装置)200に警告を表示させる。警告は、電動モビリティMが侵入防止エリアPAに侵入したことを利用者(乗車者)に知らせるための警告、電動モビリティMを侵入防止エリアPAから退避させる必要があることを利用者(乗車者)に知らせるための警告等である。
また、制御装置80は、モビリティ表示装置(出力装置)200のスピーカやモビリティ本体30に設けられた音声発生装置(出力装置)300(
図6)から前記警告を音声で出力する。警告の表示および警告の音声での出力の何れか一方が行われてもよい。警告はビープ音、短い音声の繰り返し等でもよい。
【0074】
また、モビリティ本体30に設けられた発光部(出力装置)400を用いた警告が行われてもよい。警告は所定の発光等である。本実施形態では、
図1に示すように、発光部400はコントロールアーム43の前端のステレオカメラ90の周囲に設けられている。より具体的に、発光部400はコントロールアーム43の前端且つ上端側に設けられている。コントロールアーム43が設けられずにアームレスト43aだけが設けられる場合、発光部400はアームレスト43aの前端に設けられる。
【0075】
制御装置80は、電動モビリティMが回避動作等を行っていない通常走行を行っている時は発光部400を青、緑、白等の第1の態様で発光させ、電動モビリティMが回避動作を行っている時は黄、赤、点滅等の第2の態様で発光させる。前記報知の際、制御装置80は発光部400を通常走行時および回避動作時と異なる第3の態様で発光させる。例えば、制御装置80は発光部400を紫色で発光させる。制御装置80が発光部400を通常走行時および回避動作時と異なるその他の発光態様で発光させてもよい。例えば、制御装置80が発光部400を前記警告用のパターンで点滅させてもよい。
【0076】
また、電動モビリティMの走行状態の変更および前記警告の何れか一方が行われてもよい。侵入防止エリアPAに電動モビリティMが侵入することによって利用者(乗車者)が危険になる場合、好ましくは、電動モビリティMの走行状態の変更が行われる。
制御装置80は、前記侵入状態であると判断されている間は、電動モビリティMの走行状態の変更および前記警告の何れか一方を継続する。
【0077】
一方、制御装置80は、侵入判断プログラム82dに基づき、距離センサである侵入防止エリア検知センサ500によって検出される距離が例えば0.5m(第1の距離)以下であるか否かを判断する。検出距離が0.5m以下である時、乗車者の身体の一部、乗車者の衣服の一部、乗車者の所持品の一部等が障害物として侵入防止エリア検知センサ500の上方に配置されている場合が多い。
【0078】
第1の距離以下であると判断された時、制御装置80は、侵入防止プログラム82eに基づき、モータMTを制御することによって電動モビリティMの前記走行状態の変更を行う。例えば、制御装置80は、電動モビリティMの停止又は減速後の停止を行う。電動モビリティMの停止又は減速後の停止を行う方が乗車者の安全を確保するために好ましい。
制御装置80は、前記走行状態の変更の代わりに、電動モビリティMの減速を行う。減速とは、電動モビリティMの最高速度を例えば1km/h以下の低速にすることである。当該減速を行う方が乗車者のストレスが小さい。好ましくは、制御装置80は、前記第1の距離以下の距離が検出されると、コントローラ(操作部)44に対する操作に基づく当該電動モビリティの走行を減速して維持する。当該構成は、乗車者や周囲の人のストレスを低減するために有用である。
【0079】
また、制御装置80は、侵入防止プログラム82eに基づき、モビリティ表示装置(出力装置)200に改善要求を表示させる。改善要求は、侵入防止エリア検知センサ500の上方に乗車者の手等の障害物が存在することを利用者(乗車者)に知らせる表示、侵入防止エリア検知センサ500の上方の障害物の移動を要求する表示等である。
また、制御装置80は、モビリティ表示装置(出力装置)200のスピーカから前記改善要求を音声で出力する。特定のビープ音、繰り返される短い音声等も改善要求の音声として機能する。
また、電動モビリティMの走行状態の変更および前記音声出力の何れか一方が行われてもよい。
【0080】
本実施形態では、光射出部510からの光Lが天井面の再帰反射部材530によって反射された反射光を受光部520が受光したと判断されると、制御装置80は、電動モビリティMが侵入防止エリアPAに侵入した侵入状態であると判断する侵入判断処理を行う。また、侵入判断処理が行われると、制御装置80は、電動モビリティMに設けられた出力装置を用いた前記警告および電動モビリティMの前記走行状態の変更を行う。
電動モビリティMは自己位置推定機能を有しており、前記マップデータも持っているので、マップデータの中にジオフェンスGF等を設定し、これにより電動モビリティMの侵入防止エリアPAへの侵入を防止することも考えられる。
【0081】
しかし、人混みで電動モビリティMの自己位置推定を常に正確に機能させることは難しい。例えば、旅客ターミナルT等の多くの人が存在する空間では、多くの人よりも低い電動モビリティMに設けられたセンサ90,95によって得られる自己位置推定のための情報が、人が障害物となって少なくなる。このため、施設内で電動モビリティMの自己位置推定を正確に機能させることは難しい。また、その他の状況や条件によって電動モビリティMの自己位置推定を正確でなくなる場合がある。
【0082】
手動運転の時は、乗車者が注意散漫である場合、乗車者の視野が狭い場合等があり、電動モビリティMが侵入防止エリアPAに向かって進む場合がある。
本実施形態では、再帰反射部材530が天井面に設けられており、その存在が電動モビリティMに設けられた光射出部510および受光部520によって検出されるので、人混みであっても電動モビリティMの侵入防止エリアPAへの侵入を確実に防止できる。
【0083】
また、本実施形態では、窓ガラスWに沿った侵入防止エリアPAを画定するために、天井面における窓ガラスWから数cm~数十cm等の所定距離だけ離れた位置に、窓ガラスWに沿って再帰反射部材530が設けられている。旅客ターミナルT等の施設における窓ガラスWは、床面の近傍から存在している場合が多く、天井の近傍まで存在している場合も多い。窓ガラスWは透明であり、電動モビリティMのセンサ90,95によって窓ガラスWを障害物として検出し難い場合がある。特に、照明や日光の角度によって、センサ90,95によって窓ガラスWが全く検出されない場合もある。上記実施形態では窓ガラスWについて説明したが、店舗等に用いられる透明仕切りについても、窓ガラスWの場合と同様に再帰反射部材530を設けることができる。
本実施形態では、施設の大幅な変更を要せずに、電動モビリティMが窓ガラスWや透明仕切りに意図せず衝突することを防止できる。
【0084】
また、本実施形態では、自動ドアADに沿った侵入防止エリアPAを画定するために、天井面における自動ドアADから数cm~数十cm等の所定距離だけ離れた位置に、自動ドアADに沿って再帰反射部材530が設けられている。旅客ターミナルT等の施設における自動ドアADはガラス等の透明材質から成る場合があり、床面の近傍から存在しており、2m以上の高さまで存在している。このため、電動モビリティMのセンサ90,95によって自動ドアADを障害物として検出し難い場合がある。特に、照明や日光の角度によって、センサ90,95によって自動ドアADが全く検出されない場合もある。
本実施形態では、施設の大幅な変更を要せずに、電動モビリティMが自動ドアADに意図せず衝突することを防止できる。
【0085】
また、ムービングウォークウェイMWの入り口エリアおよび出口エリアについても、施設の大幅な変更を要せずに、電動モビリティMがこれらエリアに意図せず侵入することを防止できる。
【0086】
また、本実施形態では、光射出部510と受光部520がコントロールアーム43の上端部に取付けられ車両幅方向に並んでいる。コントロールアーム43が設けられずにアームレスト43aだけが設けられる場合、光射出部510と受光部520がアームレスト43aの上端部に取付けられ車両幅方向に並ぶ。つまり、光射出部510と受光部520が実質的に同じ高さ位置に配置されており車両幅方向に並んでいる。このため、光射出部510から再帰反射部材530に射出される光Lと再帰反射部材530から受光部520に向かう反射光との間の角度である観測角が小さくなる(
図10)。侵入防止エリア検知センサ500から天井面迄は2m以上であることが多く、このため観測角は極めて小さくなる。観測角が小さいことにより、受光部520は光Lに由来する反射光をより多く受けることになる。当該構成は再帰反射部材530の正確な検出を行うために有用である。
【0087】
再帰反射部材530の正確な検出を行うため、光射出部510と受光部520との高さ位置の差が小さい場合、例えば20cm以下の場合、光射出部510と受光部520との車両前後方向の距離は5cm以下であることが好ましく、3cm以下であることがより好ましい。なお、当該距離が5cm以上であっても、再帰反射部材530の特性、光射出部510と受光部520との高さ位置の差等によって、再帰反射部材530の正確な検出を行うことが可能な場合もあるので、前記距離が5cm以下である構成に限定している訳ではない。
【0088】
一例では、前記侵入状態であるとの判断がされている状態で、電動モビリティMの停止又は減速後の停止が行われた後に、制御装置80が、コントローラ(操作部)44に対する前進用操作を無効にし、後進用操作を有効にする。当該構成では、コントローラ(操作部)44を用いて電動モビリティMを後進させることによって、乗車者は電動モビリティMを侵入防止エリアPAから遠ざけることができる。当該構成は、前進を許容することによる危険を回避しつつ、乗車者や周囲の人のストレスを低減できる。
【0089】
他の例では、前記侵入状態であるとの判断がされている状態で、制御装置80は、侵入状態を解消するための方法を出力装置であるモビリティ表示装置200によって示す。当該方法が音声によって出力されてもよい。当該構成は、乗車者を侵入防止エリアPAから安全に遠ざけるために有用であり、乗車者や周囲の人のストレスを低減するためにも有用である。
【0090】
なお、本実施形態では、右のコントロールアーム43の上端部に侵入防止エリア検知センサ500が設けられている。代わりに、
図9に示すように、左のコントロールアーム43の上端部に侵入防止エリア検知センサ500が設けられてもよい。この場合、
図9に示すように、コントロールアーム43の上端部に設けられたモビリティ表示装置200やその支持部材210の車両前方に侵入防止エリア検知センサ500の少なくとも一部が配置されると、乗車者の身体の一部等が侵入防止エリア検知センサ500の上方に配置され難い。コントロールアーム43が設けられずにアームレスト43aだけが設けられる場合も、モビリティ表示装置200やその支持部材210の車両前方に侵入防止エリア検知センサ500の少なくとも一部が配置されると、乗車者の身体の一部等が侵入防止エリア検知センサ500の上方に配置され難い。
なお、侵入防止エリア検知センサ500を荷物載置部42の例えばフレーム46に取付けることも可能である。この場合も乗車者の身体の一部等が侵入防止エリア検知センサ500の上方に配置され難い。
【0091】
また、本実施形態では、
図8の管理テーブルにおいて、前記侵入状態であることが電動モビリティMごとに表示される。管理テーブルに表示される当該情報は、当該サービスを提供する者や管理コンピュータ100にとって、利用者の補助の要否を判断するために極めて有用である。
【0092】
また、本実施形態では、
図8の管理テーブルにおいて、侵入状態であるか否かの情報が着座センサ53の検出結果と共に表示される。当該構成は、侵入状態であると表示されている時の利用者又は電動モビリティMの状態を判断する上で有用である。一例では、
図8の現在時刻においてユーザAが利用中の状態で、侵入状態であると判断され、着座センサ53の検出結果がNOになると、当該サービスを提供する者又は管理コンピュータ100は正常ではないと判断できる。例えば、電動モビリティMが侵入状態になって停止した後、ユーザAが電動モビリティMを置き去りにする可能性がある。
【0093】
また、本実施形態では、
図8の管理テーブルにおいて、侵入状態であるか否かの情報が電動モビリティMの走行状態と共に表示される。走行状態は、自動運転であるか手動運転であるかを示すものである。例えば、自動運転の時に進入状態となると、侵入状態となった原因が乗車者にないため、乗車者は大きなストレスを感じることになる。当該構成は、当該サービスを提供する者や管理コンピュータ100にとって、利用者の補助の要否を判断するために極めて有用である。
【0094】
また、
図8に示されるように、管理テーブルは、侵入状態になってからの経過時間の情報も有する。なお、管理テーブルが、侵入状態になった回数の情報を持っていてもよい。侵入状態になってからの経過時間や侵入状態になった回数に応じて、管理テーブルにおいて、対応している電動モビリティMに関する表示態様が変化してもよい。例えば。対応している電動モビリティMを示す行の色が変化してもよい。当該情報は、当該サービスを提供する者又は管理コンピュータ100にとって、異常の早期発見のために極めて有用である。例えば、侵入状態となっている電動モビリティMが手動運転状態である場合は、乗車者が意図的に侵入防止エリアPAに進入している可能性、侵入防止エリアPAから出る方法を乗車者が知らない可能性等がある。
【0095】
なお、管理テーブルに、利用者の行き先の情報および希望到着時刻に関する時刻情報の少なくとも一方が含まれていることが好ましい。当該情報は、当該サービスを提供する者又は管理コンピュータ100が補助者を向かわせる判断を正確に行うために有用である。例えば、利用者の希望到着時刻が迫っている状況で、侵入状態が複数回発生している場合や、侵入状態が長時間に亘って発生している場合は、補助者を向かわせる必要性が高いと言える。
【0096】
また、管理コンピュータ100は各電動モビリティMの位置情報を受信し、
図8に示されるように、管理テーブルは、各電動モビリティMの位置情報を有する。一例では、各電動モビリティMから管理コンピュータ100に自己位置推定で推定した位置情報が送信される。当該構成によって、補助者を向かわせるための指示が明確になる。
また、当該構成は、当該サービスを提供する者又は管理コンピュータ100が、補助者を向かわせるか否か判断を行う上で有用である。例えば、侵入状態となることによる危険度が高いエリアがあり、管理テーブルにおいて当該エリアで侵入状態であることが示される場合は、補助者を向かわせる必要性が高いと判断される。管理コンピュータ100が判断する場合、施設内の複数のエリアにそれぞれ危険度指標が紐づけられたデータを管理コンピュータ100が持っている。
【0097】
また、管理テーブルが、電動モビリティMの各ユーザの属性情報を持っていてもよい。属性情報は、各ユーザの年齢に関する情報、各ユーザの身体状態に関する情報等である。一例では、属性情報は、利用者による使用予定(利用情報)の入力時、利用者による使用状況(利用情報)の入力時等に、入力され、管理コンピュータ100によって受付けられる。当該構成は、当該サービスを提供する者又は管理コンピュータ100が、補助者を向かわせるか否か判断を行う上で有用である。
【0098】
また、この施設内におけるシステムが、施設内で働くスタッフが携帯する端末装置600を備えていてもよい。端末装置600はタブレットコンピュータ、音声出力装置等である。音声出力装置はヘッドフォン、ヘッドセット等である。端末装置600は管理コンピュータ100から送信される送信情報を受信し、受信した送信情報に基づく表示および音声出力の少なくとも一方を行う。
送信情報は、例えば、侵入状態である電動モビリティMの前記位置情報を示すものである。他の例では、送信情報は、管理テーブルの情報である。この場合、端末装置600に管理テーブルが表示される。
【0099】
一例では、
図8に示すように、スタッフ情報が管理テーブルの情報の一部となっている。スタッフ情報は、
図8に示すように、各スタッフの位置情報、各スタッフの仕事の割り当て状況等を有する。当該サービスを提供する者又は管理コンピュータ100は、スタッフ情報も参照しながら、補助に向かわせるスタッフを決定することができる。
【0100】
例えば、管理コンピュータ100は、補助に向かわせるスタッフWAに侵入状態である電動モビリティMの前記位置情報を送信する。これにより、スタッフWAの端末装置600に侵入状態である電動モビリティMの位置が表示され、スタッフWAが当該位置に向かう。
【0101】
なお、電動モビリティMを用いた前記サービスが旅客ターミナルT以外の施設内で提供されてもよい。例えば、病院、電車の駅等の施設内で前記サービスが提供され得る。また、前記サービスが、アミューズメントパーク、屋外美術館、大学、コンセプトタウン等の屋外の施設で提供されてもよい。
【0102】
また、電動モビリティMが、施設内で自動運転によって移動しながら所定の作業を行う
図13のような作業用の電動モビリティM’であってもよい。所定の作業は、施設内の清掃、施設内の警備、施設内における案内、施設内におけるその他の様々な作業であり得る。
電動モビリティM’は前述の電動モビリティMと同様な構成を有しているが、
図13のようにモビリティ本体30’はモビリティ本体30と異なり乗車者が乗る構造ではない。また、この変形例では、電動モビリティM’にはステレオカメラ90が設けられておらず、LiDAR95によって周囲の障害物を検出する。
電動モビリティM’の制御装置80は、自動運転プログラム82cと前記マップデータに基づき、例えば所定の作業ルートに沿って自動運転で移動する。
【0103】
図13の電動モビリティM’では、侵入防止エリア検知センサ500はモビリティ本体30’の上面に取付けられた侵入防止エリア検知装置である。
図13に二点鎖線で示されるように、侵入防止エリア検知センサ500がモビリティ本体30’の突出部の上面に取付けられてもよい。
侵入防止エリア検知センサ500は、電動モビリティM’の上面に両面テープ等によって取付けられる装置本体540を有する。装置本体540は、ボルト等の締結部材によってモビリティ本体30’の上面に取付けられてもよく、他の公知の構造を用いてモビリティ本体30’の上面に取付けられてもよい。装置本体540は例えばプラスチックから成り、数cm角のチップ形状又は直径数cmのコイン形状を有し、厚さは2cm以下であるが、これに限定されない。
【0104】
モビリティ本体30’に前述の光射出部510および受光部520が設けられている。光射出部510は、
図13のように、装置本体540がモビリティ本体30’の上面に取付けられた状態で、鉛直方向Vに対して2°以上傾いた傾斜方向に光Lを射出する。より好ましくは、光射出部510が鉛直方向Vに対して電動モビリティM’の進行方向に2°以上傾いた傾斜方向に光Lを射出する。進行方向は、電動モビリティMが前進するものである場合は前進方向であり、電動モビリティMが後進するものである場合は後進方向である。
【0105】
装置本体540には、受光部520によって受光する光の量に応じた信号を電動モビリティM’に向かって出力する信号出力部550が設けられている。
図13では、信号出力部550は受光部520の出力である電圧又は電流をそのまま前記信号として出力する端子であり、当該端子は電動モビリティM’の制御装置80に接続されている。信号出力部550が回路を有し、受光部520の出力が所定値以上になった時に、受光部520が再帰反射部材530からの反射光を受光したことを示す信号を前記回路が出力してもよい。受光部520が再帰反射部材530からの反射光を受光したことを示す信号は、受光部520が受光する光の量に応じた信号である。
【0106】
または、信号出力部550がプロセッサおよびプログラムが格納されたメモリを有し、当該プロセッサが、受光部520からの出力に基づき、受光部520が再帰反射部材530からの反射光を受光したことを示す信号を出力してもよい。
また、信号出力部550が無線によって前記信号を電動モビリティM’の制御装置80に送信してもよい。
【0107】
電動モビリティM’の制御装置80は、受光部520が再帰反射部材530からの反射光を受光したことを示す信号を受信すると、前述のような電動モビリティM’のモータMTの制御、前述のような警告の出力等を行う。即ち、制御装置80は、電動モビリティM’を例えば停止させ、音声発生装置300から警告を音声で出力する。
または、電動モビリティM’の制御装置80は、受光部520によって受光する光の量に応じた信号に基づき、受光部520が再帰反射部材530からの反射光を受光したことを判断し、前述のような電動モビリティM’のモータMTの制御、前述のような警告の出力等を行う。
【0108】
上記構成によって得られる効果は、電動モビリティMに侵入防止エリア検知センサ500が設けられる場合と同様である。
また、信号出力部550から出力される信号は、受光部520が受光する光の量に応じた信号である。このため、電動モビリティM’の上面に侵入防止エリア検知センサ500を後付けで取付けても、電動モビリティM’の制御装置80において受光部520が再帰反射部材530からの反射光を受光したことの認識の設定は容易である場合が多い。また、当該認識に基づく前述のような電動モビリティM’のモータMTの制御、前述のような警告の出力等の設定も容易である場合が多い。
【符号の説明】
【0109】
10 前輪(車輪)
20 後輪(車輪)
30 モビリティ本体
42 荷物載置部
44 コントローラ(操作部)
44a ジョイスティック
45 設定部
53 着座センサ
60 制御ユニット
80 制御装置
81 プロセッサ
82 記憶装置
82b 回避制御プログラム
82c 自動運転プログラム
82d 進入判断プログラム
82e 侵入防止プログラム
90 ステレオカメラ(センサ)
95 LiDAR(センサ)
100 管理コンピュータ
102 記憶装置
102a 管理データ
200 モビリティ表示装置
201 入力装置
300 音声発生装置
400 発光部
500 侵入防止エリア検知センサ
510 光射出部
520 受光部
530 再帰反射部材
540 装置本体
550 信号出力部
M,M’ 電動モビリティ
S 座席ユニット
T 旅客ターミナル