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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061692
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】ナノ粒子体
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20220412BHJP
   G01N 21/41 20060101ALI20220412BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20220412BHJP
   B82Y 15/00 20110101ALI20220412BHJP
【FI】
G01N21/64 G
G01N21/41 101
G01N33/543 595
B82Y15/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020169786
(22)【出願日】2020-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】314005768
【氏名又は名称】PHCホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(72)【発明者】
【氏名】小松 由枝
(72)【発明者】
【氏名】北脇 文久
【テーマコード(参考)】
2G043
2G059
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043BA16
2G043DA02
2G043EA01
2G043EA14
2G059AA01
2G059BB12
2G059CC16
2G059EE02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】比較的低濃度の生体物質の検出に資する、検出感度により優れるナノ粒子体を提供する。
【解決手段】ナノ粒子体1はプラズモン励起蛍光分析に用いるナノ粒子体である。金属ナノ粒子2と、該金属ナノ粒子2の表面に結合されたナノ抗体4とを有し、前記ナノ抗体の分子質量が60,000Da以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ナノ粒子と、該金属ナノ粒子の表面に結合されたナノ抗体とを有し、
前記ナノ抗体の分子質量が60,000Da以下である、ナノ粒子体。
【請求項2】
前記ナノ粒子体が、プラズモン励起蛍光分析に用いるナノ粒子体である、請求項1に記載のナノ粒子体。
【請求項3】
前記ナノ抗体の分子質量が30,000Da以下である、請求項1または2に記載のナノ粒子体。
【請求項4】
前記ナノ抗体がVHH抗体である、請求項1~3のいずれか1項に記載のナノ粒子体。
【請求項5】
前記金属ナノ粒子が金または銀を含んで成る、請求項1~4のいずれか1項に記載のナノ粒子体。
【請求項6】
前記金属ナノ粒子が、コアと、該コアの表面を被覆する被覆層とを有する、請求項1~5のいずれか1項に記載のナノ粒子体。
【請求項7】
前記被覆層はSiOを含んで成る、請求項6に記載のナノ粒子体。
【請求項8】
前記ナノ抗体は前記金属ナノ粒子に直接結合している、請求項1~7のいずれか1項に記載のナノ粒子体。
【請求項9】
前記ナノ粒子体として第1ナノ粒子体と第2ナノ粒子体とが含まれ、
前記第1ナノ粒子体および前記第2ナノ粒子体の少なくとも一方に、蛍光物質が標識されている、請求項1~8のいずれか1項に記載のナノ粒子体。
【請求項10】
前記第1ナノ粒子体には前記蛍光物質が標識されている一方、前記第2ナノ粒子体には前記蛍光物質が標識されていない、請求項9に記載のナノ粒子体。
【請求項11】
前記第1ナノ粒子体と前記第2ナノ粒子体とが抗原を介して結合された複合体において、
前記第1ナノ粒子体と前記第2ナノ粒子体との間の離隔距離が10nm~50nmである、請求項9または10に記載のナノ粒子体。
【請求項12】
前記離隔距離が10nm~25nmである、請求項11に記載のナノ粒子体。
【請求項13】
前記複合体において、前記第1ナノ粒子体の前記金属ナノ粒子と前記第2ナノ粒子体の前記金属ナノ粒子との間に前記蛍光物質が位置づけられている、請求項11または12に記載のナノ粒子体。
【請求項14】
前記抗原が、血液、血漿、尿、または唾液に由来する抗原である、請求項11~13のいずれか1項に記載のナノ粒子体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナノ粒子体、特にプラズモン励起蛍光分析に用いるナノ粒子体に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオセンサーは、検出対象である特定の抗原を特定の抗体に特異的に反応させて複合体を形成し、複合体における特異的な結合に由来する信号によって、抗原を検出する。
プラズモン励起蛍光分析では、複合体は抗体、抗原の他に、蛍光物質と金属をさらに含む。励起光が複合体に照射されると、複合体内の金属で表面プラズモン共鳴が発生し、金属の表面近傍で近接場が形成される。この近接場によって蛍光物質の蛍光強度が増大される。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の局在プラズモン増強センサでは、基材の一方の面に、高さが100~1000nm、幅が20~1000nm、アスペクト比が2~10である多数の凸部が形成され、該凸部表面に厚さ40~120nmの金属膜が積層され、該金属表面に誘電体層が積層され、該誘電体層表面に検体中の被測定物質と特異的に結合して特異的結合物を構成しうる特異的結合メンバーが固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-240361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記のようなセンサでは、本発明者らが鋭意検討した結果、検出感度をさらに改善する余地があることが分かった。
【0006】
本発明はかかる課題に鑑みて為されたものである。すなわち、本発明の主たる目的は、比較的低濃度の生体物質の検出に資する、検出感度により優れるナノ粒子体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係るナノ粒子体は、
金属ナノ粒子と、該金属ナノ粒子の表面に結合されたナノ抗体とを有し、
前記ナノ抗体の分子質量が60,000Da以下である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、ナノ粒子体を模式的に示す断面図である。
図2図2は、複合体を模式的に示す断面図である。
図3図3は、測定装置を模式的に示す図である
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態であるナノ粒子体を図示の実施の形態により詳細に説明する。なお、図面は模式的なものを含み、実際の寸法や比率を反映していない場合がある。
【0010】
<第1実施形態:ナノ粒子体>
第1実施形態に係るナノ粒子体は、
金属ナノ粒子と、金属ナノ粒子の表面に結合されたナノ抗体とを有し、
ナノ抗体の分子質量が60,000Da以下である。
【0011】
本実施形態に係るナノ粒子体は、検出感度に優れる。その理由は以下のように推測される。本実施形態に係るナノ粒子体は、金属ナノ粒子と、金属ナノ粒子の表面に結合されたナノ抗体とを有する。このため、ナノ粒子体のナノ抗体は、検体中の抗原と抗原抗体反応し、複合体を形成する。形成された複合体は、抗原を介して2つのナノ粒子体が結合して構成される。つまり、2つの金属ナノ粒子体は、複合体において同一の抗原に対してそれぞれのナノ抗体が結合することによって、一定の距離で離間して配置されている。ここで、ナノ抗体の分子質量は60,000Da以下であるため、ナノ抗体の体積は、比較的小さい。このため、2つのナノ粒子体間の距離(離間距離)を小さくすることができる。よって、表面プラズモン励起増強蛍光分光法(Surface Plasmon Fluorescence Spectroscopy:SPFS)において、複合体に励起光を照射すると、局在表面プラズモン共鳴(Localized Surface Plasmon Resonance:LSPR)が起き、金属ナノ粒子の表面近傍(特に、2つの金属粒子間の表面近傍)で効率的に近接場が形成される。この近接場によって、複合体の蛍光物質が効率的に励起され、蛍光強度が増大すると考えられる。したがって、本実施形態に係るナノ粒子体は、検出感度に優れる。特に、検体中の抗原の濃度が希薄であっても、検出することができる。
【0012】
本発明者らは、従来のナノ粒子体の検出感度が低い理由を検討し、抗原を捕捉した複合体では、効果的に局在表面プラズモン共鳴を起こすことができないことに着目した。その理由として、金属ナノ粒子間の離間距離が比較的大きいことを見出した。このような知見に基づいて、本発明者らはさらに検討し、比較的小さな体積を有するナノ抗体を採用することにより、ナノ粒子体間の離間距離を十分に狭めた複合体を形成し、蛍光強度を増大させ検出感度を向上させることに想到した。つまり、本発明者らによって「ナノ抗体の分子質量が60,000Da以下である」が想到された。
【0013】
ナノ粒子体は、抗体抗原反応により抗原を捕捉し、2つのナノ粒子体と抗原とから構成される複合体を形成することができる。図1を参照して、ナノ粒子体を説明する。図1は、ナノ粒子体を模式的に示す断面図である。本実施形態に係るナノ粒子体1は、金属ナノ粒子2と、金属ナノ粒子2の表面に結合されたナノ抗体4とを有する。
【0014】
ナノ粒子体1は、プラズモン励起蛍光分析に用いることができる。ナノ粒子体1は、抗原抗体反応により検体中の抗原を捕捉し、後述する複合体を形成する。複合体に励起光を照射すると、局在表面プラズモン共鳴を起こし近接場を形成する。この近接場によって、蛍光強度が増大する。
【0015】
ナノ粒子体1はまた、非特異的な結合部位をブロッキング剤によってブロッキングされてもよい。ブロッキングされたナノ粒子体1は、ナノ抗体4の検出対象以外の物質への非特異的な結合の形成が抑制され、バックグラウンドおよび偽陽性信号を低減することができる。ブロッキング剤としては、例えば、ウシ血清アルブミン(BSA)、スキムミルク、およびカゼインのようなタンパク質、ならびに化学合成ポリマーである。
【0016】
(金属ナノ粒子)
金属ナノ粒子2は、金属の種類によって異なるが、特定の波長を有する光と相互作用し、局在表面プラズモン共鳴を起こす。銀ナノ粒子では400nmから530nm、金ナノ粒子では510nmから580nmにプラズモンの共鳴ピークがある。これは粒子径により異なる。例えば、粒子径が20nmの銀からなるナノ粒子は、波長405nmの光と共鳴し、粒子径が20nmの金からなるナノ粒子は、波長524nmの光と共鳴する。金属ナノ粒子2の粒子径(平均一次粒子径)は、例えば、5nm~100nmである。金属ナノ粒子2の粒子径は、走査型電子顕微鏡(SEM)または透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、金属ナノ粒子2の画像を撮像し、画像での金属ナノ粒子2の粒子径を測長し、複数の粒子径の平均値(測定数:少なくとも10以上)を算出することにより得ることができる。
金属ナノ粒子2は、好ましくは金または銀を含んで成り、より好ましくは銀を含んで成る。
【0017】
(ナノ抗体)
ナノ抗体4は、抗原抗体反応により、その先端部(抗原結合部位:Antigen Binding Site)で、特定の抗原と特異的に結合する。この特異的結合は、非共有結合であり、例えば、水素結合、ならびに分子間力、疎水的相互作用および電荷的相互作用に起因する結合である。ナノ抗体4は、例えば、VHH(variable domain of heavy chain antibody)抗体およびその変異体である。VHH抗体は、単一ドメイン抗体である。変異体は、抗原に対する特異的結合性を有する範囲内で、アミノ酸配列の一部を組み換えた抗体または置換基を導入した抗体である。ナノ抗体4は、好ましくはVHH抗体である。ナノ抗体4がVHH抗体であると、VHH抗体は比較的体積が小さいため、複合体における離間距離を狭め、近接場をより効率的に形成し、蛍光強度をさらに増大させることができる。
【0018】
ナノ抗体4の分子質量は、60,000Da以下であり、好ましくは30,000Da以下であり、より好ましくは20,000Da以下である。分子質量が60,000Da以下(特に、30,000Da以下、または20,000Da以下)であると、ナノ抗体4の体積が比較的小さいため、複合体における離間距離を狭め、近接場をより効率的に形成し、蛍光強度をさらに増大させることができる。分子質量の測定方法は、電気泳動(SDS-PAGE)、ゲルろ過クロマトグラフィー、および静的光散乱法などである。
【0019】
ナノ抗体4は、金属ナノ粒子2に直接結合している。ここで、「直接結合」の結合とは、共有単結合のような化学結合だけでなく、物理吸着のような非化学結合性の結合も含まれる。ナノ抗体4が金属ナノ粒子2の表面に直接結合している場合、複合体における2つの金属ナノ粒子間の離間距離をさらに狭めることができる点で、好ましい。
【0020】
<第2実施形態:複合体>
図2を参照して、複合体を説明する。図2は、複合体を模式的に示す断面図である。複合体40は、検出対象である抗原30と、2つのナノ粒子体10,20とを含んで成る。2つのナノ粒子体10,20は、複合体40において、抗原30を介して結合されている。2つのナノ粒子体10,20のうち、一方を第1ナノ粒子体10と称し、もう一方のナノ粒子体を第2ナノ粒子体20と称する。このように複合体40は、ナノ粒子体1として第1ナノ粒子体10と第2ナノ粒子体20とを含む。
【0021】
複合体40において、第1ナノ粒子体10は、第1金属ナノ粒子12と、第1金属ナノ粒子12の表面に結合された第1ナノ抗体14と、第1ナノ抗体14に標識された蛍光物質16とを有する。このように第1ナノ粒子体10は、さらに蛍光物質16を有することができる。第2ナノ粒子体20は、第2金属ナノ粒子22と、第2金属ナノ粒子22の表面に結合された第2ナノ抗体24とを有する。
【0022】
第1ナノ粒子体10と第2ナノ粒子体20との間の離隔距離Lは、10nm~50nmであり、好ましくは10nm~25nmである。離隔距離Lは、第1金属ナノ粒子12と第2金属ナノ粒子22との間の距離であって、第1ナノ粒子体10の表面上の第1点P1と、第2ナノ粒子体20の表面上の第2点P2とで結ばれる線分が最小となる距離である。
離隔距離Lが50nm以下である場合、複合体40に励起光が照射されると、第1,第2金属ナノ粒子12,22間の表面近傍の空間でより効率的に近接場が発生するため、蛍光強度をより増大させることができる。
【0023】
(ナノ粒子体)
以下、第1金属ナノ粒子12を例に挙げて説明するが、第2金属ナノ粒子22は第1金属ナノ粒子12と実質的に同一である。第1金属ナノ粒子12は、第1コア12aと、第1コア12aの表面を被覆する第1被覆層12bとを有する。つまり、第1金属ナノ粒子12は、コア-シェル構造を有する。第1被覆層12bは、金属消光防止膜として機能することができる。第1被覆層12bは、第1コア12aを完全に覆っている。第1被覆層12bが第1コア12aを完全に覆っている場合、蛍光物質16が第1コア12aに接触せず、蛍光物質16が第1コア12a表面から所定の距離(少なくとも被覆層12bの厚みに相当する距離)を確実に設けて配置される。かかる場合、励起された蛍光物質16が第1コア12aを構成する材質(例えば、金属(より具体的には、金または銀等))によって消光されにくいため、検出される蛍光強度の低下が抑制され、検出感度が向上するからである。この消光は、励起した蛍光物質16から第1金属ナノ粒子12の材質へのエネルギー移動の過程および/または第1金属ナノ粒子12の材質により誘起される無輻射(熱放出)の過程と考えられる。
【0024】
第1コア12aは、好ましくは金または銀を含んで成り、より好ましくは銀を含んで成る。第1被覆層12bは、例えば、無機物(より具体的には、SiO)を含んで成る。第1被覆層12bが無機物を含んで成ると、プラズモン励起蛍光分析において励起した蛍光物質16が消光されにくく、検出される蛍光強度の低下が抑制されるからである。
【0025】
第1被覆層12bの厚みは、好ましくは、5nm~50nmである。第1被覆層12bの厚みが50nm以下であると、2つの金属ナノ粒子12,22間の空間に近接場が効率的に形成される離間距離となるため、検出感度がさらに向上する。また、第1被覆層12bの厚みが5nm以上であると、第1コア12aと蛍光物質16が所定の距離を設けて配置されるため、測定において励起した蛍光物質16の消光が抑制され、検出感度がさらに向上する。
【0026】
(蛍光物質)
蛍光物質16は、第1ナノ粒子体10に標識されており、第2ナノ粒子体20には標識されていない。蛍光物質16は、局在表面プラズモン共鳴で形成される近接場により励起され、蛍光を発する。蛍光物質16は、例えば、ユーロピウム、ルテニウムのような金属の錯体(金属錯体)である。蛍光物質16は、図2に示すように、第1金属ナノ粒子12と第2金属ナノ粒子22との間に位置づけられていることが好ましい。金属ナノ粒子12,22間では近接場が効率的に生じる空間であるため、金属ナノ粒子12,22間の空間に蛍光物質16が位置づけられることで蛍光強度が増大されやすいからである。
【0027】
蛍光物質16は、ストークスシフトが大きいことが好ましい。ここで、ストークスシフトは、蛍光物質16の吸収スペクトルにおける吸収ピーク波長(最大励起波長)と、蛍光スペクトルにおける蛍光ピーク波長(最大蛍光波長)との差である。蛍光物質16のストークスシフトが大きい場合、吸収スペクトルと蛍光スペクトルとが重なりにくく、検出する蛍光に励起光(の散乱光)が入りにくく、より正確な蛍光強度を測定することができる。
【0028】
蛍光物質16の蛍光スペクトルは、シャープであることが好ましい。蛍光スペクトルがシャープであると、吸収スペクトルとの重なりにくいため、検出する蛍光に励起光(の散乱光)が入りにくく、より正確な蛍光強度を測定することができる。
【0029】
(抗原)
抗原30は、少なくとも2つの抗原決定基(epitope)を有し、抗原決定基で第1,第2ナノ抗体14,24と特異的結合を形成する。抗原30は、例えば、TnT(登録商標)のようなタンパク質およびウィルスである。抗原30は、例えば、血液、血漿、血清、尿、および唾液に由来する抗原である。つまり、抗原30を含む検体としては、例えば、血液、血漿、血清、尿、および唾液である。検体は、溶媒および緩衝液(より具体的には、リン酸緩衝生理食塩水(phosphate-buffered saline:PBS)、Tris緩衝液、HEPES緩衝液、MOPS緩衝液、およびMES緩衝液など)をさらに含んでもよい。
【0030】
<第3実施形態:測定装置>
図3を参照して、測定装置を説明する。図3は、測定装置を示す図である。図3に示すように、測定装置100は、励起用光源110と、励起光照射光学系120と、試薬容器130と、受光光学系140と、受光素子150とを備える。
励起用光源110は、励起光112を照射する。励起用光源110は、例えば、レーザーである。励起光照射光学系120は、励起光112の集光のように断面径の調整等を行い、入射励起光122を出力する。励起光照射光学系120は、レンズ124および偏光素子(λ/2板)126である。励起光照射光学系120から出力した入射励起光122は、試薬容器130に入射し、試薬容器130内の測定試料に照射される。試薬容器130は、例えば、着脱可能な容器(より具体的には、セル、およびプレパラート等)、およびマイクロ流路チップである。マイクロ流路チップは、微小な流路を有するチップである。試薬容器130がマイクロ流路チップである場合、例えば、第1実施形態に係るナノ粒子体(試薬)と検体とを混合して連続的に供給することができる。このため、あらかじめ測定試料を混合して調製する必要がなく、連続的に測定することが可能となる。
【0031】
入射励起光122が照射された測定試料は、蛍光(検出光132)を発する。受光光学系140は、試薬容器130への入射励起光122の進行方向に対して直角方向に配置される。受光光学系140は、測定試料から発せられた検出光132の断面径等を調整し、入射励起光122の散乱光を取り除く、もしくは光量を調整することが出来る。受光光学系140は、レンズ144および光学フィルタ146である。光学フィルタ146は、例えば、バンドパスフィルタ、およびダイクロイックミラーである。
【0032】
受光光学系140を通過した蛍光142は、受光素子150で検出される。受光素子150は、例えば、PD、APD、PMT、CCDカメラ、および分光器である。受光素子150は、単一波長の蛍光量の測定、蛍光スペクトルの測定、および2次元平面の蛍光イメージング作成が可能である。
【0033】
本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。
【0034】
前記実施形態では、ナノ粒子体1,10,20は、それぞれ1つのナノ抗体4,14,24を有していたが、これに限定されない。ナノ粒子体1,10,20は、それぞれ2以上のナノ抗体4,14,24を有してもよい。
【0035】
前記実施形態では、蛍光物質16が第1ナノ粒子体10に標識されている一方、第2ナノ粒子体20に標識されていないが、これに限定されない。蛍光物質16は、第1ナノ粒子体10および第2ナノ粒子体20の少なくとも一方に標識され得る。より具体的には、第2ナノ粒子体20のみに標識されてもよく、第1ナノ粒子体10および第2ナノ粒子体20の両方に標識されてもよい。
【0036】
前記実施形態では、ナノ抗体4,14,24は、金属ナノ粒子2,12,22の表面に直接結合しているが、これに限定されない。金属ナノ粒子2,12,22の表面とナノ抗体4,14,24との間に、例えば、ビオジン‐アビジン結合を形成する任意の化合物を介在させることによって、ナノ抗体4,14,24が金属ナノ粒子2,12,22の表面に間接的に結合してもよい。
【0037】
前記実施形態では、金属ナノ粒子12,22はコア-シェル構造を有していたが、有していなくてもよい。また、前記実施形態では、被覆層12b,22bはコア12a,22aを完全に(連続的に)覆っていたが、コア12a,22aを部分的に覆っていてもよい。
【0038】
前記実施形態では、蛍光物質16は、第1ナノ抗体14に標識されていたが、これに限定されない。蛍光物質16は、第1金属ナノ粒子12に標識されてもよい。
【0039】
前記実施形態では、測定装置100における受光光学系140は、試薬容器130への入射励起光122の進行方向に対して直角方向に配置されているが、これに限定されない。受光光学系140は、例えば、入射励起光122の進行方向に対して平行方向に配置されてもよく、または入射励起光122の進行方向に対して鋭角もしくは鈍角となる方向に配置されてもよい。
【符号の説明】
【0040】
1 ・・・ナノ粒子体
2 ・・・金属ナノ粒子
4 ・・・ナノ抗体
10 ・・・第1ナノ粒子体
12 ・・・第1金属ナノ粒子
12a ・・・第1コア
12b ・・・第1被覆層
14 ・・・第1ナノ抗体
16 ・・・蛍光物質
20 ・・・第2ナノ粒子体
22 ・・・第2金属ナノ粒子
22a ・・・第2コア
22b ・・・第2被覆層
24 ・・・第2ナノ抗体
30 ・・・抗原
40 ・・・複合体
L ・・・離間距離
図1
図2
図3