(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061744
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】蓋材
(51)【国際特許分類】
B65D 81/34 20060101AFI20220412BHJP
【FI】
B65D81/34 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020169878
(22)【出願日】2020-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 晃
【テーマコード(参考)】
3E013
【Fターム(参考)】
3E013BA08
3E013BB06
3E013BB09
3E013BC01
3E013BC04
3E013BC13
3E013BC14
3E013BE01
3E013BF02
3E013BF08
(57)【要約】
【課題】本発明の解決しようとする課題は、トレー型紙容器に用いる電子レンジ加熱用蓋材において、高価な易開封性シーラントを用いることなく、また特別に困難な加工手段を用いることもなく、低コストの蓋材を実現しようとするものである。
【解決手段】トレー型紙容器2の開口部3のフランジ部5に熱圧着して使用する蓋材1であって、紙基材10の裏面にシーラント層11を有し、前記開口部を取り囲むようにフランジ部の内縁4に沿って形成された、蓋材の表面側から蓋材の総厚のほぼ中間に到達する表面半切れ線6と、蓋材の裏面側から蓋材の総厚のほぼ中間に到達する裏面半切れ線7を有し、該裏面半切れ線の総面積は1mm
2以上であることを特徴とする蓋材である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレー型紙容器の開口部のフランジ部に熱圧着して使用する蓋材であって、紙基材の裏面にシーラント層を有し、
前記開口部を取り囲むようにフランジ部の内縁に沿って形成された、蓋材の表面側から蓋材の総厚のほぼ中間に到達する表面半切れ線と、
蓋材の裏面側からシーラント層を貫通し、蓋材の総厚のほぼ中間に到達する裏面半切れ線を有し、該裏面半切れ線の総面積は1mm2以上であることを特徴とする蓋材。
【請求項2】
前記裏面半切れ線は、直線状、曲線状、直線状の破線、曲線状の破線、複数の細孔から選択される1以上の半切れ線の組み合わせからなることを特徴とする請求項1に記載の蓋材。
【請求項3】
前記裏面半切れ線は、前記トレー型紙容器のフランジ部の内縁から5mm以上内側に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の蓋材。
【請求項4】
前記裏面半切れ線は、前記トレー型紙容器のフランジ部の内縁から15mm以上内側に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の蓋材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は紙製容器の蓋材に関し、特に開封せずに容器ごと電子レンジで加熱した場合にも、問題の生じない蓋材に関する。
【背景技術】
【0002】
地球環境を保全しようとする意識の高まりから、海洋汚染の原因となっているプラスチック容器を、再生産可能な資源であり、しかも生分解性を有する紙を主材料として用いた容器に代替する試みが種々なされている。
【0003】
トレー型の容器は、単にトレーとして用いる用途と、開口部を蓋材で密封して保存容器として用いる用途とに大別される。後者の場合、蓋材をシールし易いように、開口部の周縁に水平なフランジ部を設けることが一般的である。
【0004】
プラスチック容器の場合には、水平でかつ平坦なフランジ部を形成することは容易であるが、紙容器の場合、フランジ部に繋ぎ目やしわや段差が生じ易いため平坦なフランジ部を安定的に形成することは、容易ではなかった。
【0005】
出願人の出願になる特許文献1に記載されたトレー容器用ブランクは、従来のトレー型紙容器において、立壁同士が接続するコーナー部において、フランジ部付け根部分にピンホールができ易く、液もれが生じる場合があったのを改善したものである。このようなトレー型の紙容器は、紙が本来耐熱性を有するものであるため、電子レンジで加熱することができる。
【0006】
特許文献2に記載された食品容器及び該容器に使用する易開封性の蓋材は、容器、蓋とも紙を基材として使用し、蓋材に設けた界面剥離タイプの易開封シーラントの接着層のみにハーフカット線を入れ、接着層と剥離層の間で界面剥離を生じさせることにより、電子レンジ加熱によって生じた水蒸気を逃がそうとするものである。
【0007】
特許文献2に記載された蓋材は、易開封シーラントを用いるため、コストがかかるという問題点の他、接着層のみにハーフカット線を入れる場合の半切れの深さの制御が困難であるという問題があった。
【0008】
特許文献3に記載された電子レンジ加熱用のトレー包装体は、トレー型容器の角部に蓋材が接着されていない部分を設け、この非接着部分から発生した蒸気を逃がすというものである。この容器の場合、密封されていないため、容器全体を外袋に入れて密封する等の必要があり、コストアップにつながることは避けられない。
【0009】
特許文献4に記載された電子レンジ加熱用蓋付容器及び電子レンジ加熱容器用の蓋体は、蓋体の23℃における剥離強度が10N/15mm以上であり、60℃における剥離強度が8N/15mm以下である電子レンジ加熱用蓋付容器である。
【0010】
特許文献4に記載された蓋付容器は、カップ形状の容器であり、この方法をトレー型の容器に応用した場合、開封時に蓋材をすべて剥離除去するとトレー形状が歪み易いという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2000-255546号公報
【特許文献2】特開平10-258878号公報
【特許文献3】特開2007-161256号公報
【特許文献4】特開2020-7045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は、トレー型紙容器に用いる電子レンジ加熱用蓋材において、高価な易開封性シーラントを用いることなく、また特別に困難な加工手段を用いることもなく、低コストの蓋材を実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、トレー型紙容器の開口部のフランジ部に熱圧着して使用する蓋材であって、紙基材の裏面にシーラント層を有し、前記開口部を取り囲むようにフランジ部の内縁に沿って形成された、蓋材の表面側から蓋材の総厚のほぼ中間に到達する表面半切れ線と、蓋材の裏面側からシーラント層を貫通し、蓋材の総厚のほぼ中間に到達する裏面半切れ線を有し、該裏面半切れ線の総面積は1mm2以上であることを特徴とする蓋材である。
【0014】
本発明に係る蓋材は、紙を基材とし、裏面のシーラント層を貫通する裏面半切れ線を1mm2以上となるように設けたことにより、蓋材を開封しない状態で電子レンジで加熱しても、発生した水蒸気が紙層を通過して逃げるため、蓋材が破れたり容器が爆発したりすることがない。
【0015】
また、請求項2に記載の発明は、前記裏面半切れ線が、直線状、曲線状、直線状の破線、曲線状の破線、複数の細孔から選択される1以上の半切れ線の組み合わせからなることを特徴とする請求項1に記載の蓋材である。
【0016】
また、請求項3に記載の発明は、前記裏面半切れ線が、前記トレー型紙容器のフランジ部の内縁から5mm以上内側に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の蓋材である。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、前記裏面半切れ線が、前記トレー型紙容器のフランジ部の内縁から15mm以上内側に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の蓋材である。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る蓋材は、紙を基材として用いているため、耐熱性が高く、電子レンジによる加熱にも耐えることができる。
【0019】
本発明に係る蓋材は、開口部を取り囲むようにフランジ部の内縁に沿って形成された、蓋材の表面側から蓋材の総厚のほぼ中間に到達する表面半切れ線を形成したことにより、開封が容易であり、また開封後にフランジ部に蓋材が縁取り状に残るため、フランジ部の強度低下がなく、フランジ部の変形も少なくて済む。
【0020】
本発明に係る蓋材は、蓋材の裏面側からシーラント層を貫通し、蓋材の総厚のほぼ中間に到達する裏面半切れ線を有し、その面積を1mm2以上としたことにより、電子レンジで加熱した時に、発生した水蒸気が紙層を通過して逃げるために、蓋材の一部を開封せずにそのまま加熱した場合であっても、容器が爆発したりする危険性がない。
【0021】
半切れ線をトレー型紙容器のフランジ部の内縁から5mm以上内側に形成した場合には、落下耐性が向上する。半切れ線をトレー型紙容器のフランジ部の内縁から15mm以上内側に形成した場合には、さらに落下耐性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本発明に係る蓋材をシールする紙容器本体の一例を示した斜視図である。
【
図2】
図2は、紙容器本体に蓋材をシールした状態を示した断面模式図である。
【
図3】
図3は、本発明に係る蓋材の一実施態様を示した平面模式図である。
【
図4】
図4は、実施例1の蓋材を示した平面模式図である。
【
図5】
図5は、実施例2の蓋材を示した平面模式図である。
【
図6】
図6は、実施例3の蓋材を示した平面模式図である。
【
図7】
図7は、実施例4の蓋材を示した平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下図面を参照しながら、本発明に係る蓋材について詳細に説明する。
図1は、本発明に係る蓋材をシールして使用する紙容器本体の一例を示した斜視図である。
図2は、紙容器本体に蓋材をシールした状態を示した断面模式図である。
図3は、本発明に係る蓋材の一実施態様を示した平面模式図である。
【0024】
本発明に係る蓋材1は、トレー型紙容器2の開口部3のフランジ部5に熱圧着して使用する蓋材であって、紙基材10の裏面にシーラント層11を有する。開口部3を取り囲むようにフランジ部の内縁4に沿って形成された、蓋材1の表面側から蓋材1の総厚のほぼ中間に到達する表面半切れ線6と、蓋材1の裏面側からシーラント層11を貫通し、蓋材1の総厚のほぼ中間に到達する裏面半切れ線7を有し、裏面半切れ線7の総面積は1mm2以上であることを特徴とする。
【0025】
本発明に係る蓋材1をシールして使用する紙容器本体としては、
図1に例として示したようなトレー型紙容器2が挙げられるが、トレー型紙容器2の詳細な構造については、特に制約はない。一般的には、開口部3の周縁に平坦なフランジ部5を有し、このフランジ部5に蓋材1を熱シールして密封することができる。
【0026】
本発明に係る蓋材1は、トレー型紙容器2の内面側に向いた蓋材1の裏面に、裏面半切れ線7を設けたので、開封せずに容器ごと電子レンジで加熱しても、発生した水蒸気は裏面半切れ線7から紙基材10の紙層を通って外部に抜けるので、容器が破裂したりすることがない。この時、裏面半切れ線7の総面積として、最低1mm2以上は必要なことが実験的に確認されている。なお、裏面半切れ線7の面積とは、線の幅に長さを掛けたものである。
【0027】
裏面半切れ線7は、トレー型紙容器のフランジ部の内縁から5mm以上、さらに望ましくは15mm以上内側に形成されていることが望ましい。このようにすることにより、落下耐性が向上する。
【0028】
表面半切れ線6は、電子レンジでの加熱終了後に蓋材1を開封するのを円滑にすると伴
に、発生した水蒸気を逃がすためにも効果的である。また、表面半切れ線6は、開口部3を取り囲むようにフランジ部5の内縁4に沿って形成されているので、開封後も外側がフランジ部5上に残る。このため、開封後のフランジ部の強度が保持されるため、紙容器の取り扱い性が向上する。
【0029】
また、本発明に係る蓋材1は、水蒸気を逃がす機構として、表裏面の半切れ線を用いており、容器内外を貫通する孔が存在しないため、外部から異物が混入する心配がない。また、易開封シーラントを用いていないため、コスト面においても有利である。
【0030】
本発明に係る蓋材1に使用する材料について説明する。紙基材10としては、坪量が200~500g/m2程度の各種印刷用紙が使用される。表面側には印刷加工が施されるのが一般的である。紙基材の裏面側に貼り合わせて用いられるシーラント層11としては、低密度ポリエチレン樹脂(LDPE)、中密度ポリエチレン樹脂(MDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン樹脂(LLDPE)、エチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン-αオレフィン共重合体、エチレン-メタアクリル酸樹脂共重合体などのエチレン系樹脂や、ポリエチレンとポリブテンのブレンド樹脂や、ホモポリプロピレン樹脂(PP)、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂等が使用される。
【0031】
半切れ線を施す方法としては、一般的な刃物を用いる方法の他、レーザー加工機を用いることもできる。以下実施例および比較例に基づいて、本発明に係る蓋材についてさらに具体的に説明する。
【0032】
<実施例1>
坪量320g/m
2の印刷用紙(厚さ350μm)と厚さ30μmのPP樹脂フィルムを貼り合わせて総厚380μmの蓋材とした。蓋材には、
図4に示したように、幅0.04mm、深さ200μm、長さ50mmの実線の裏面半切れ線を3本形成した。裏面半切れ線の総面積は、6mm
2である。開口径が140mm×170mm、高さが35mmのトレー型紙容器にスパゲティ290gを充填し、蓋材をシールした後、電子レンジにより1000Wで3分加熱し、容器の膨張、蓋の破れを観察した。
【0033】
<実施例2>
裏面半切れ線を、
図5に示したように長さ150mmとした以外は、実施例1と同様にして蓋材をトレー型紙容器にシールし、同様に評価した。裏面半切れ線の総面積は、18mm
2である。
【0034】
<実施例3>
裏面半切れ線を、
図6に示したように長さ50mmの破線状の裏面半切れ線を4本形成した以外は、実施例1と同様にして蓋材をトレー型紙容器にシールし、同様に評価した。破線は、半切れ3mm+つなぎ1mmである。裏面半切れ線の総面積は、6mm
2である。
【0035】
<実施例4>
裏面半切れ線を、
図7に示したように長さ150mmの破線状の裏面半切れ線を4本形成した以外は、実施例1と同様にして蓋材をトレー型紙容器にシールし、同様に評価した。破線は、半切れ3mm+つなぎ1mmである。裏面半切れ線の総面積は、18mm
2である。
【0036】
<比較例>
比較例として、半切れ線を設けなかった以外は、実施例1と同様にして蓋材をトレー型紙
容器にシールし、同様に評価した。結果を表1に示す。
【0037】
【0038】
表1から分かるように、裏面半切れ線を設けた本発明に係る蓋材は、直接電子レンジで加熱しても容器が破裂するようなことがなかった。
【符号の説明】
【0039】
1・・・蓋材
2・・・トレー型紙容器
3・・・開口部
4・・・フランジ部の内縁
5・・・フランジ部
6・・・表面半切れ線
7・・・裏面半切れ線
10・・・紙基材
11・・・シーラント層
12・・・容器紙基材
13・・・シーラント層