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特開2022-61777エレベーターの中央管理装置、およびエレベーターの管理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061777
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】エレベーターの中央管理装置、およびエレベーターの管理システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/02 20060101AFI20220412BHJP
【FI】
B66B5/02 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020169919
(22)【出願日】2020-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルテクノサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082175
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 守
(74)【代理人】
【識別番号】100106150
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142642
【弁理士】
【氏名又は名称】小澤 次郎
(72)【発明者】
【氏名】秋野 圭吾
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304BA26
3F304CA04
3F304EB02
3F304EB06
3F304ED01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】地震の揺れによる閉じ込めをより確実に回避しうるエレベーターの中央管理装置、および管理システムを提供する。
【解決手段】管理システム1の中央管理装置13は、履歴記憶部14と、入力部15と、予測部18と、生成部19と、配信部16と、を備える。履歴記憶部14は、各々のエレベーター2について履歴情報を蓄積して記憶する。履歴情報は、過去の地震の震源情報および各々のエレベーター2における地震波の到達情報を関連付けた情報である。入力部15は、新たな地震の震源情報を含む緊急地震速報を受けた遠隔管理装置12から、当該震源情報の入力を受ける。予測部18は、震源情報が入力されるときに、地震波の到達を震源情報および履歴情報に基づいて予測する。生成部19は、予測結果に基づいて退避指令を各々のエレベーター2について生成する。配信部16は、生成された退避指令を各々のエレベーター2に配信する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
予め設定された地域に設けられる複数のエレベーターの各々について、過去に発生した地震の震源情報および前記複数のエレベーターの各々における当該地震の地震波の到達情報を関連付けた履歴情報を蓄積して記憶する履歴記憶部と、
新たに地震が発生するときに当該地震による揺れが発生する前に前記地域に配信され当該地震の震源情報を含む地震速報を受けた遠隔管理装置から、当該地震の震源情報の入力を受ける入力部と、
新たに発生した地震の震源情報が前記入力部に入力されるときに、当該地震の震源情報および前記履歴記憶部が記憶する前記履歴情報に基づいて前記複数のエレベーターの各々における当該地震の地震波の到達を予測する予測部と、
前記予測部による到達の予測結果に基づいて、退避処理を行わせる退避指令を前記複数のエレベーターの各々について生成する生成部と、
新たに発生した地震について前記生成部が生成した退避指令を、前記地域において当該地震による揺れが発生する前に前記複数のエレベーターの各々に配信する配信部と、
を備えるエレベーターの中央管理装置。
【請求項2】
前記履歴記憶部は、地震の震源情報として当該地震の震源の位置、当該地震の発生時刻、および当該地震の震源の強度の情報を記憶し、前記複数のエレベーターの各々における地震の地震波の到達情報として当該エレベーターに設けられた地震感知器による当該地震の地震波の感知の有無、および前記地震感知器が当該地震の地震波を感知した場合の感知時刻の情報を記憶する
請求項1に記載のエレベーターの中央管理装置。
【請求項3】
前記複数のエレベーターの各々が前記地震速報を受けたときに退避の要否の判定に用いられる地震による揺れの強さについての閾値を、前記複数のエレベーターの各々について算出する算出部
を備え、
前記履歴記憶部は、過去に発生した地震において予測された揺れの強さの情報を当該地震の履歴情報に含めて記憶し、
前記入力部は、新たに地震が発生するときに配信される地震速報が当該地震による揺れの強さの予測値を含む場合に、当該地震速報を受けた前記遠隔管理装置から、当該地震による揺れの強さの予測値の入力を受け、
前記算出部は、前記閾値を前記履歴情報に基づいて算出し、
前記配信部は、前記算出部が算出した閾値を、前記複数のエレベーターの各々に予め配信する
請求項1または請求項2に記載のエレベーターの中央管理装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の中央管理装置と、
前記複数のエレベーターのいずれかに設けられ、前記中央管理装置から前記退避指令の配信を受けるときに、当該エレベーターに退避を行わせる遠隔管理装置と、
を備えるエレベーターの管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、エレベーターの中央管理装置、およびエレベーターの管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、エレベーターの管理システムの例を開示する。管理システムにおいて、緊急地震速報の情報に基づいて地震波の到達時刻および最大加速度が予測される。エレベーターにおいて、予測された到達時刻および最大加速度に基づいて、避難階への停止動作が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-161378号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の管理システムにおいて、地震波の到達時刻および最大加速度は震源の位置および建物の位置に基づく計算によって予測される。一方、エレベーターへの地震の影響は、当該エレベーターが適用される建物の位置のみならず建物自体の構造などによっても変化しうる。エレベーターへの地震の影響の予測に誤差がある場合に、避難階への停止などの退避の要否に誤判定が生じる可能性がある。退避の要否に誤判定が生じるときに、エレベーターの利用者のかごへの閉じ込めが発生することがある。
【0005】
本開示は、このような課題の解決に係るものである。本開示は、地震の揺れによる閉じ込めをより確実に回避しうるエレベーターの中央管理装置、および管理システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るエレベーターの中央管理装置は、予め設定された地域に設けられる複数のエレベーターの各々について、過去に発生した地震の震源情報および前記複数のエレベーターの各々における当該地震の地震波の到達情報を関連付けた履歴情報を蓄積して記憶する履歴記憶部と、新たに地震が発生するときに当該地震による揺れが発生する前に前記地域に配信され当該地震の震源情報を含む地震速報を受けた遠隔管理装置から、当該地震の震源情報の入力を受ける入力部と、新たに発生した地震の震源情報が前記入力部に入力されるときに、当該地震の震源情報および前記履歴記憶部が記憶する前記履歴情報に基づいて前記複数のエレベーターの各々における当該地震の地震波の到達を予測する予測部と、前記予測部による到達の予測結果に基づいて、退避処理を行わせる退避指令を前記複数のエレベーターの各々について生成する生成部と、新たに発生した地震について前記生成部が生成した退避指令を、前記地域において当該地震による揺れが発生する前に前記複数のエレベーターの各々に配信する配信部と、を備える。
【0007】
本開示に係るエレベーターの管理システムは、上記の中央管理装置と、前記複数のエレベーターのいずれかに設けられ、前記中央管理装置から前記退避指令の配信を受けるときに、当該エレベーターに退避を行わせる遠隔管理装置と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示に係る中央管理装置または管理システムであれば、地震の揺れによる閉じ込めをより確実に回避しうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施の形態1に係る管理システムの構成図である。
図2】実施の形態1に係る中央管理装置の動作の例を示すフローチャートである。
図3】実施の形態1に係る遠隔管理装置の動作の例を示すフローチャートである。
図4】実施の形態1に係る制御盤の動作の例を示すフローチャートである。
図5】実施の形態1に係る管理システムの主要部のハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示を実施するための形態について添付の図面を参照しながら説明する。各図において、同一または相当する部分には同一の符号を付して、重複する説明は適宜に簡略化または省略する。
【0011】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1に係る管理システム1の構成図である。
【0012】
管理システム1は、複数のエレベーター2を遠隔管理するシステムである。管理システム1における遠隔管理は、各々のエレベーター2における地震への応答などを含む。管理システム1における遠隔管理は、例えば緊急地震速報などの地震速報に基づいて行われる。
【0013】
緊急地震速報は、地震が発生するときに気象庁または配信事業者などの配信機関3によって配信される地震速報である。緊急地震速報は、発生した地震の震源情報、ならびに予め設定された地域ごとの当該地震による揺れの強さの予測値、および当該地域への地震波の到達時刻の予測値の情報を含む。地震の震源情報は、地震の震源の位置、地震の発生時刻、地震の震源の強度の情報を含む。震源の位置は、例えば震央の緯度および経度、ならびに深さを含む。震源の強度は、例えばマグニチュードなどによって表される。揺れの強さの情報は、例えば震度階級などである。地震速報に含まれる揺れの強さの情報は、最大加速度などであってもよい。
【0014】
管理システム1において、複数の地域が予め設定されている。管理システム1が遠隔管理する複数のエレベーター2は、管理システム1において設定されたいずれかの地域に設けられている。管理システム1において設定された地域は、例えば緊急地震速報において設定されている地域などである。この例において、地域Aおよび地域Bなどが管理システム1の地域として設定されている。
【0015】
管理システム1によって遠隔管理されるエレベーター2は、例えば複数の階床を有する建物4に適用される。建物4において、エレベーター2の昇降路5が設けられる。昇降路5は、複数の階床にわたる鉛直方向に長い空間である。各々のエレベーター2は、巻上機6と、主ロープ7と、かご8と、釣合い錘9と、地震感知器10と、制御盤11と、遠隔管理装置12と、を備える。
【0016】
巻上機6は、駆動力を発生させるモーター、およびモーターが発生させる駆動力によって回転するシーブを備える。巻上機6は、例えば昇降路5の上部または下部などに配置される。あるいは、エレベーター2において例えば昇降路5の上方などに機械室が設けられる場合に、巻上機6は機械室に配置されてもよい。
【0017】
主ロープ7は、昇降路5においてかご8および釣合い錘9の荷重を支持するロープである。主ロープ7は、巻上機6のシーブに巻きかけられる。主ロープ7は、巻上機6のシーブの一方側においてかご8の荷重を受ける。主ロープ7は、巻上機6のシーブの他方側において釣合い錘9の荷重を受ける。
【0018】
かご8は、昇降路5を鉛直方向に走行することでエレベーター2の利用者を複数の階床の間で輸送する機器である。釣合い錘9は、巻上機6のシーブの両側にかかる荷重の釣合いをかご8との間でとる機器である。かご8および釣合い錘9は、巻上機6のモーターが発生させる駆動力によって昇降路5を互いに反対方向に走行する。
【0019】
地震感知器10は、地震のP波(Primary Wave)またはS波(Secondary Wave)などの地震波を感知する機器である。地震感知器10は、例えば昇降路5の底部のピットなどに配置される。あるいは、機械室が設けられる場合に、地震感知器10は、機械室に配置されてもよい。地震感知器10は、例えば予め設定された大きさより振幅の大きい地震波を感知するときに感知信号を出力しうるように、制御盤11に接続される。
【0020】
制御盤11は、当該制御盤11が設けられたエレベーター2の動作を制御する機器である。エレベーター2の動作は、例えばかご8の走行を含む。制御盤11は、例えば昇降路5の上部または下部などに配置される。あるいは、機械室が設けられる場合に、制御盤11は機械室に配置されてもよい。制御盤11は、例えば地震感知器10から出力された感知信号を受け付けるときなどに、管制運転に移行する。管制運転は、例えば地震によるエレベーター2への影響を自動診断する診断運転などを含んでもよい。
【0021】
遠隔管理装置12は、当該遠隔管理装置12が設けられたエレベーター2を遠隔管理する装置である。遠隔管理装置12は、例えば地震の発生に応じた退避、および管制運転への移行などをエレベーター2に行わせる。遠隔管理装置12は、エレベーター2の運行を管理しうるように、制御盤11に接続される。遠隔管理装置12は、管理システム1に含まれる。
【0022】
少なくともいずれかのエレベーター2の遠隔管理装置12は、配信機関3から当該エレベーター2が設けられる地域に配信される緊急地震速報を受信する機能を搭載する。遠隔管理装置12は、緊急地震速報を受信するときに、当該緊急地震速報に含まれる震源情報を管理システム1内において転送する機能を搭載する。このとき、遠隔管理装置12は、受信した緊急地震速報をそのまま転送してもよい。
【0023】
管理システム1は、中央管理装置13を備える。中央管理装置13は、各々のエレベーター2の遠隔管理装置12にインターネットまたは電話回線網などの通信網を通じて接続される。中央管理装置13は、履歴記憶部14と、入力部15と、配信部16と、分析部17と、を備える。
【0024】
履歴記憶部14は、履歴情報を蓄積して記憶する部分である。履歴情報は、過去に発生した地震の震源情報および各々のエレベーター2における当該地震の地震波の到達情報を関連付けた情報である。地震波の到達情報は、エレベーター2に設けられた地震感知器10による当該地震波の感知の有無、および地震感知器10が当該地震波を感知した場合の感知時刻の情報を含む。地震感知器10による地震波の感知の有無は、例えば制御盤11への感知信号の出力の有無などに対応する。この例において、履歴情報は、当該地震による揺れの強さの情報を含む。ここで、揺れの強さの情報は、例えば当該地震の発生に伴って各々のエレベーター2が設けられる地域に配信された緊急地震速報などの地震速報による揺れの強さの予測値などである。
【0025】
入力部15は、緊急地震速報を受信した遠隔管理装置12から、当該緊急地震速報に含まれる震源情報の転送を受け付ける部分である。この例において、入力部15は、地震が収束した後などに各々のエレベーター2の遠隔管理装置12から当該地震の地震波の到達情報を収集する機能を搭載する。ここで、到達情報は、例えば各々のエレベーター2の遠隔管理装置12または制御盤11などに動作ログとして記憶されている。入力部15によって収集された到達情報は、履歴記憶部14に履歴情報として蓄積される。
【0026】
配信部16は、遠隔管理を行うための動作の指令などの情報を各々のエレベーター2に配信する部分である。
【0027】
分析部17は、入力部15が受け付けた地震の震源情報に基づいて、各々のエレベーター2における当該地震への応答の要否などを分析する部分である。分析部17による分析の結果は、配信部16によって各々のエレベーター2に配信される。この例において、分析部17による分析の結果は、各々のエレベーター2の遠隔管理装置12に配信される。分析部17は、予測部18と、生成部19と、算出部20と、を備える。
【0028】
予測部18は、新たに発生した地震の地震波の各々のエレベーター2への到達を予測する部分である。予測部18は、新たに発生した地震の震源情報が入力部15に入力されるときに予測を行う。予測部18による予測は、入力部15に入力される震源情報および履歴記憶部14が記憶する履歴情報に基づいて行われる。予測部18による予測は、例えば機械学習の手法による予測などである。この例において、予測部18は、履歴情報に基づいて予め学習を行う。予測部18が行う学習は、例えば教師データとして履歴情報を用い、震源情報を入力として到達情報を出力とする教師あり学習などである。予測部18は、例えば到達情報として地震感知器10に感知される地震波の到達の有無、および当該地震波の到達時刻を予測する。地震波の到達時刻は、例えば震源情報の発生時刻を基準とした相対的な時刻として予測される。
【0029】
生成部19は、予測部18による到達の予測結果に基づいて、各々のエレベーター2について退避指令を生成する部分である。退避指令は、各々のエレベーター2に退避処理を行わせる動作の指令である。生成部19は、例えば地震感知器10に感知される地震波が到達すると予測部18が予測したエレベーター2について、退避指令を生成する。生成部19は、当該地震波の到達時刻の予測値を含めて退避指令を生成する。生成部19によって生成された退避指令は、配信部16によって各々のエレベーター2に配信される。
【0030】
退避指令の生成および配信は、例えば次のように行われる。新たな地震が発生するときに、地域Aのいずれかのエレベーター2の遠隔管理装置12は、地域Aに配信される緊急地震速報を受信する。このとき、当該遠隔管理装置12は、当該地震の震源情報を中央管理装置13の入力部15に転送する。予測部18は、予め行っている学習の結果に基づいて、地域Aに設けられるエレベーター2の各々について当該地震の地震波の到達を予測する。生成部19は、予測部18による予測結果に基づいて、地域Aに設けられるエレベーター2のうち地震感知器10に感知される地震波の到達が予測されたエレベーター2について退避指令を生成する。配信部16は、地域Aに設けられるエレベーター2のうち退避指令が生成されたエレベーター2に退避指令の配信を行う。この例において、配信部16は、退避指令の生成から間を置かずに退避指令の配信を行う。新たに発生する地震の震源情報の入力から退避指令の生成までに要する中央管理装置13における処理時間が十分短い場合に、配信部16による配信は、当該地震による揺れが地域Aにおいて発生する前に行われる。中央管理装置13から退避指令の配信を受けたエレベーター2の遠隔管理装置12は、制御盤11に退避処理の動作を行わせる。
【0031】
算出部20は、地震による揺れの強さについての閾値を各々のエレベーター2について算出する部分である。算出部20が算出する閾値は、各々のエレベーター2において退避の要否の判定に用いられる。算出部20は、例えば二項分類の手法などによって閾値を算出する。二項分類の手法は、例えば、過去に発生した地震の履歴情報に含まれる当該地震において予測された揺れの強さの情報を、エレベーター2に設けられた地震感知器10による当該地震の地震波の感知の有無によって分類する手法などである。算出部20によって算出された閾値は、配信部16によって各々のエレベーター2に配信される。
【0032】
閾値の算出および配信は、例えば次のように行われる。算出部20は、例えば予め設定された閾値算出のタイミングにおいて、閾値の算出を開始する。閾値算出のタイミングは、例えば予め設定された期間に一回のタイミングなどである。配信部16は、算出部20が算出した閾値を各々のエレベーター2に配信する。配信部16による配信は、例えば入力部15が震源情報を受信していないときに行われる。中央管理装置13から閾値の配信を受けたエレベーター2の遠隔管理装置12は、新たに発生する地震の緊急地震速報を受けるときに、配信された閾値に基づいて退避処理の要否を判定する。遠隔管理装置12は、例えば緊急地震速報に含まれる揺れの強さの予測値が予め配信された閾値を超えるときに、退避処理が必要と判定する。このとき、遠隔管理装置12は、制御盤11に退避処理の動作を行わせる。
【0033】
図2は、実施の形態1に係る中央管理装置13の動作の例を示すフローチャートである。
【0034】
ステップS20において、中央管理装置13は、新たに発生する地震の震源情報を入力部15が受信したかを判定する。判定結果がYesの場合に、中央管理装置13の動作は、ステップS21に進む。判定結果がNoの場合に、中央管理装置13の動作は、ステップS24に進む。
【0035】
ステップS21において、予測部18は、入力部15が受信した新たに発生する地震の震源情報および履歴記憶部14に記憶された履歴情報に基づいて、当該地震の地震波の到達を予測する。その後、中央管理装置13の動作は、ステップS22に進む。
【0036】
ステップS22において、生成部19は、予測部18の予測結果に基づいて退避指令を生成する。その後、中央管理装置13の動作は、ステップS23に進む。
【0037】
ステップS23において、配信部16は、生成部19が生成した退避指令を各々のエレベーター2に配信する。その後、中央管理装置13の動作は、ステップS20に進む。
【0038】
ステップS24において、算出部20は、今が閾値算出のタイミングであるかを判定する。判定結果がYesの場合に、中央管理装置13の動作は、ステップS25に進む。判定結果がNoの場合に、中央管理装置13の動作は、ステップS20に進む。
【0039】
ステップS25において、算出部20は、履歴記憶部14に記憶された履歴情報に基づいて、退避の要否の判定に用いられる閾値をエレベーター2ごとに算出する。その後、中央管理装置13の動作は、ステップS26に進む。
【0040】
ステップS26において、配信部16は、算出部20が算出した閾値を各々のエレベーター2に配信する。その後、中央管理装置13の動作は、ステップS20に進む。
【0041】
図3は、実施の形態1に係る遠隔管理装置12の動作の例を示すフローチャートである。
【0042】
ステップS30において、遠隔管理装置12は、中央管理装置13から退避指令を受信したかを判定する。判定結果がNoの場合に、遠隔管理装置12の動作は、ステップS31に進む。判定結果がYesの場合に、遠隔管理装置12の動作は、ステップS34に進む。
【0043】
ステップS31において、遠隔管理装置12は、配信機関3から緊急地震速報などの地震速報を受信したかを判定する。判定結果がNoの場合に、遠隔管理装置12の動作は、ステップS30に進む。判定結果がYesの場合に、遠隔管理装置12の動作は、ステップS32に進む。なお、緊急地震速報を受信する機能を搭載していない遠隔管理装置12は、ステップS31における判定を行わずに、緊急地震速報を受信していないものとしてステップS30の動作に進んでもよい。
【0044】
ステップS32において、遠隔管理装置12は、受信した緊急地震速報に含まれる震源情報を中央管理装置13に転送する。その後、遠隔管理装置12の動作は、ステップS33に進む。
【0045】
ステップS33において、遠隔管理装置12は、受信した緊急地震速報に含まれる揺れの強さの予測値が、中央管理装置13から配信された閾値より大きいかを判定する。判定結果がNoの場合に、遠隔管理装置12の動作は、ステップS30に進む。判定結果がYesの場合に、遠隔管理装置12の動作は、ステップS34に進む。
【0046】
ステップS34において、遠隔管理装置12は、制御盤11に退避の動作を行わせる。その後、遠隔管理装置12の動作は、終了する。
【0047】
図4は、実施の形態1に係る制御盤11の動作の例を示すフローチャートである。
図4において、退避の動作についての制御盤11の動作が示される。
【0048】
ステップS40において、制御盤11は、登録されている乗場呼びを無効にする。その後、制御盤11の動作は、ステップS41に進む。
【0049】
ステップS41において、制御盤11は、かご8が走行中であるかを判定する。判定結果がYesの場合に、制御盤11の動作は、ステップS42に進む。判定結果がNoの場合に、制御盤11の動作は、ステップS46に進む。
【0050】
ステップS42において、制御盤11は、避難階がかご8の走行方向にあるかを判定する。ここで、避難階は、複数の階床のうちから予め設定された階床である。判定結果がYesの場合に、制御盤11の動作は、ステップS43に進む。判定結果がNoの場合に、制御盤11の動作は、ステップS45に進む。
【0051】
ステップS43において、制御盤11は、走行中のかご8が地震の地震波の予測された到達時刻までに避難階に停止可能であるかを判定する。ここで、退避指令などとともに予測部18による到達時刻の予測値が遠隔管理装置12に配信されている場合に、制御盤11は、予測部18による予測値に基づいて判定を行う。あるいは、退避指令によらずに緊急地震速報などによって退避をおこなう場合に、制御盤11は、緊急地震速報に含まれる到着時刻の予測値に基づいて判定を行う。判定結果がYesの場合に、制御盤11の動作は、ステップS44に進む。判定結果がNoの場合に、制御盤11の動作は、ステップS45に進む。
【0052】
ステップS44において、制御盤11は、走行中のかご8を避難階に停止させる。その後、制御盤11の動作は、ステップS46に進む。
【0053】
ステップS45において、制御盤11は、走行中のかご8を最寄階に停止させる。その後、制御盤11の動作は、ステップS46に進む。
【0054】
ステップS46において、制御盤11は、休止動作を開始する。休止動作は、予め設定された休止時間だけ継続して行われるエレベーター2の動作である。休止動作において、かご8はいずれかの階床において停止している。その後、制御盤11の動作は、ステップS47に進む。
【0055】
ステップS47において、制御盤11は、休止時間内に地震感知器10が地震波を感知したかを判定する。判定結果がYesの場合に、制御盤11の動作は、ステップS48に進む。判定結果がNoの場合に、制御盤11の動作は、ステップS49に進む。
【0056】
ステップS48において、制御盤11は、管制運転に移行する。その後、退避の動作についての制御盤11の動作は、終了する。
【0057】
ステップS49において、制御盤11は、通常運転に復旧する。その後、退避の動作についての制御盤11の動作は、終了する。
【0058】
以上に説明したように、実施の形態1に係る管理システム1は、中央管理装置13と、複数の遠隔管理装置12と、を備える。中央管理装置13は、履歴記憶部14と、入力部15と、予測部18と、生成部19と、配信部16と、を備える。履歴記憶部14は、予め設定された地域に設けられる各々のエレベーター2について、履歴情報を蓄積して記憶する。履歴情報は、過去に発生した地震の震源情報および各々のエレベーター2における当該地震の地震波の到達情報を関連付けた情報である。入力部15は、新たに地震が発生するときに緊急地震速報などの地震速報を受けた遠隔管理装置12から、当該地震の震源情報の入力を受ける。地震速報は、当該地震による揺れが発生する前に複数のエレベーター2が設けられる地域に配信される。地震速報は、当該地震の震源情報を含む。予測部18は、新たに発生した地震の震源情報が入力部15に入力されるときに、各々のエレベーター2における当該地震の地震波の到達を予測する。予測部18による予測は、当該地震の震源情報および履歴記憶部14が記憶する履歴情報に基づいて行われる。生成部19は、予測部18による到達の予測結果に基づいて、退避処理を行わせる退避指令を各々のエレベーター2について生成する。配信部16は、新たに発生した地震について生成部19が生成した退避指令を、複数のエレベーター2が設けられる地域において当該地震による揺れが発生する前に、各々のエレベーター2に配信する。複数の遠隔管理装置12の少なくともいずれかは、いずれかのエレベーター2に設けられる。いずれかのエレベーター2に設けられた遠隔管理装置12は、中央管理装置13から退避指令の配信を受けるときに、当該エレベーター2に退避を行わせる。
【0059】
このような構成により、退避指令は、過去の到達情報を用いた予測結果に基づいて生成される。過去の地震についての履歴情報が用いられるので、震源からエレベーター2が設けられる位置までの地中の岩盤などの構造の影響を繰り込んだ予測が行われる。また、地震波の伝播の計算による予測を行わないので、予測結果が速やかに得られるようになる。このため、到達予測に基づく退避指令の配信が地震波の到達より前に行われるようになる。新たに発生した地震による揺れがエレベーター2において生じる前に退避指令が配信されるので、より避難階または最寄階などへのかご8の退避がより確実に行われるようになる。したがって、地震の揺れによる閉じ込めの発生がより確実に回避されうる。
【0060】
また、履歴記憶部14は、地震の震源情報として、当該地震の震源の位置、当該地震の発生時刻、および当該地震の震源の強度の情報を記憶する。履歴記憶部14は、各々のエレベーター2における地震の地震波の到達情報として、当該エレベーター2に設けられた地震感知器10による当該地震の地震波の感知の有無、および地震感知器10が当該地震の地震波を感知した場合の感知時刻の情報を記憶する。
【0061】
このような構成により、エレベーター2が適用される建物4の構造などの影響を取り込んだ予測が行われるようになる。このため、退避の要否の判定がより高い精度で行われるので、地震の揺れによる閉じ込めの発生がより確実に回避されうる。
【0062】
また、中央管理装置13は、算出部20を備える。履歴記憶部14は、過去に発生した地震において予測された揺れの強さの情報を当該地震の履歴情報に含めて記憶する。入力部15は、新たに地震が発生するときに配信される地震速報が当該地震による揺れの強さの予測値を含む場合に、当該地震速報を受けた遠隔管理装置12から、当該地震による揺れの強さの予測値の入力を受ける。算出部20は、地震による揺れの強さについての閾値を、各々のエレベーター2について算出する。ここで算出される閾値は、各々のエレベーター2が地震速報を受けたときに退避の要否の判定に用いられる。算出部20は、閾値を前記履歴情報に基づいて算出する。配信部16は、算出部20が算出した閾値を、各々のエレベーター2に予め配信する。
【0063】
このような構成により、分析部17による分析の結果は、算出された閾値として予め各々のエレベーター2の遠隔管理装置12に配信される。これにより、各々のエレベーター2において地震速報が受信されたときに、履歴情報を踏まえた分析結果による応答が速やかに行われるようになる。また、分析結果は地震の発生の前に配信されるので、当該地震によって通信障害などが生じた場合においても、各々のエレベーター2において履歴情報を踏まえた分析結果による応答が行われるようになる。このため、地震の揺れによる閉じ込めの発生がより確実に回避されうる。
【0064】
なお、管理システム1において設定されている地域は、緊急地震速報において設定されている地域と一致していなくてもよい。また、管理システム1において、複数の地域は互いに重複する部分を有していてもよい。管理システム1において設定されている一部または全部の地域は、緊急地震速報において設定されている複数の地域を含んでいてもよい。
【0065】
また、いずれかの遠隔管理装置12は、エレベーター2に設けられていなくてもよい。エレベーター2に設けられない遠隔管理装置12は、例えば複数のエレベーター2が設けられる地域に配置された緊急地震速報を受信する機能を搭載する機器などであってもよい。エレベーター2に設けられない遠隔管理装置12は、当該地域に配信される緊急地震速報を受信できれば、当該地域に配置されていなくてもよい。
【0066】
続いて、図5を用いて、管理システム1のハードウェア構成の例について説明する。
図5は、実施の形態1に係る管理システム1の主要部のハードウェア構成図である。
【0067】
管理システム1の各機能は、中央管理装置13および遠隔管理装置12などに搭載された処理回路により実現し得る。処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ100aと少なくとも1つのメモリ100bとを備える。処理回路は、プロセッサ100aおよびメモリ100bと共に、あるいはそれらの代用として、少なくとも1つの専用ハードウェア200を備えてもよい。
【0068】
処理回路がプロセッサ100aとメモリ100bとを備える場合、管理システム1の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせで実現される。ソフトウェアおよびファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述される。そのプログラムはメモリ100bに格納される。プロセッサ100aは、メモリ100bに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、管理システム1の各機能を実現する。
【0069】
プロセッサ100aは、CPU(Central Processing Unit)、処理装置、演算装置、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、DSPともいう。メモリ100bは、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、EPROM、EEPROMなどの、不揮発性または揮発性の半導体メモリなどにより構成される。
【0070】
処理回路が専用ハードウェア200を備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、またはこれらの組み合わせで実現される。
【0071】
管理システム1の各機能は、それぞれ処理回路で実現することができる。あるいは、管理システム1の各機能は、まとめて処理回路で実現することもできる。管理システム1の各機能について、一部を専用ハードウェア200で実現し、他部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。このように、処理回路は、専用ハードウェア200、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせで管理システム1の各機能を実現する。
【符号の説明】
【0072】
1 管理システム、 2 エレベーター、 3 配信機関、 4 建物、 5 昇降路、 6 巻上機、 7 主ロープ、 8 かご、 9 釣合い錘、 10 地震感知器、 11 制御盤、 12 遠隔管理装置、 13 中央管理装置、 14 履歴記憶部、 15 入力部、 16 配信部、 17 分析部、 18 予測部、 19 生成部、 20 算出部、 100a プロセッサ、 100b メモリ、 200 専用ハードウェア
図1
図2
図3
図4
図5