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特開2022-61784運動解析装置、運動解析方法、及び運動解析プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061784
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】運動解析装置、運動解析方法、及び運動解析プログラム
(51)【国際特許分類】
   A63B 69/00 20060101AFI20220412BHJP
   A63B 71/06 20060101ALI20220412BHJP
   A63B 69/36 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
A63B69/00 A
A63B71/06 T
A63B69/36 541Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020169934
(22)【出願日】2020-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】500140921
【氏名又は名称】株式会社ライズシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】特許業務法人湘洋内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野村 昇
(57)【要約】
【課題】コンピュータを用いた身体運動(例えばゴルフスイング)の診断の精度及び信頼性を向上する。
【解決手段】運動解析装置1は、対象ユーザの身体運動の運動データ及び当該身体運動によって生じた結果データを取得する取得部11と、前記取得された運動データ及び結果データに基づき、前記対象ユーザの身体運動が目標とすべき目標の身体運動に対する、前記対象ユーザの身体運動の差分を抽出する解析部12と、前記抽出された差分に基づくアドバイスを出力するアドバイス部13とを有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象ユーザの身体運動の運動データ及び当該身体運動によって生じた結果データを取得する取得部と、
前記取得された運動データ及び結果データに基づき、前記対象ユーザの身体運動が目標とすべき目標の身体運動に対する、前記対象ユーザの身体運動の差分を抽出する解析部と、
前記抽出された差分に基づくアドバイスを出力するアドバイス部と
を有する運動解析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運動解析装置であって、
前記解析部は、前記対象ユーザの身体部位ごとに差分を抽出する
運動解析装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の運動解析装置であって、
前記解析部は、入力される前記運動データ及び前記結果データに対して、前記目標の身体運動との差分を出力する学習済モデルを用いて前記差分を抽出する
運動解析装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の運動解析装置であって、
前記アドバイス部は、前記身体運動の差分を小さくすることを前記アドバイスとして出力する
運動解析装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の運動解析装置であって、
前記運動データは、前記対象ユーザの身体運動と共に動く器具の運動データを含む
運動解析装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一項に記載の運動解析装置であって、
前記身体運動は、ゴルフのスイングであり、
前記結果データは、ゴルフクラブ及びゴルフボールの少なくとも一方に関する測定データである
運動解析装置。
【請求項7】
コンピュータによる運動解析方法であって、
対象ユーザの身体運動の運動データ及び当該身体運動によって生じた結果データを取得する取得ステップと、
前記取得された運動データ及び結果データに基づき、前記対象ユーザの身体運動が目標とすべき目標の身体運動に対する、前記対象ユーザの身体運動の差分を抽出する解析ステップと、
前記抽出された差分に基づくアドバイスを出力するアドバイスステップと
を含む運動解析方法。
【請求項8】
コンピュータに運動解析方法を実行させるプログラムであって、
対象ユーザの身体運動の運動データ及び当該身体運動によって生じた結果データを取得する取得ステップと、
前記取得された運動データ及び結果データに基づき、前記対象ユーザの身体運動が目標とすべき目標の身体運動に対する、前記対象ユーザの身体運動の差分を抽出する解析ステップと、
前記抽出された差分に基づくアドバイスを出力するアドバイスステップと
を前記コンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運動解析装置、運動解析方法、及び運動解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ゴルフのレッスンにおいて、インストラクターが、様々なセンサ(モーションセンサ、カメラなど)の測定結果に基づいて、ゴルファーに指導を行うことがある。この指導方法は、指導を受けるゴルファーの上達の程度がインストラクターの技量に依存する部分が多く残されている。
【0003】
特許文献1には、ゴルフクラブに取り付けた小型センサを用いてスイング軌道を測定することについて記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-144733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ゴルフスイング等の身体運動は、多数の要素が複雑に絡み合って成り立つものであるため、上達方法を決定するのは容易ではない。インストラクターは、指導対象のプレイヤの身体運動について、経験に基づいて診断及びアドバイスを行うのだが、当然それらが不適切であることも多い。誤った診断及びアドバイスによって、却って上達が阻害されることもある。インストラクターの技量に依存せず、身体運動の上達に不足している事項を適切に診断しかつ適切にアドバイスできる技術が要望されている。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、コンピュータを用いた身体運動の診断の精度及び信頼性を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決する本発明の一態様は、運動解析装置であって、対象ユーザの身体運動の運動データ及び当該身体運動によって生じた結果データを取得する取得部と、前記取得された運動データ及び結果データに基づき、前記対象ユーザの身体運動が目標とすべき目標の身体運動に対する、前記対象ユーザの身体運動の差分を抽出する解析部と、前記抽出された差分に基づくアドバイスを出力するアドバイス部とを有する。
【0008】
前記解析部は、前記対象ユーザの身体部位ごとに差分を抽出してもよい。
【0009】
前記解析部は、入力される前記運動データ及び前記結果データに対して、前記目標の身体運動との差分を出力する学習済モデルを用いて前記差分を抽出してもよい。
【0010】
前記アドバイス部は、前記身体運動の差分を小さくすることを前記アドバイスとして出力してもよい。
【0011】
前記運動データは、前記対象ユーザの身体運動と共に動く器具の運動データを含んでもよい。
【0012】
前記身体運動は、ゴルフのスイングであり、前記結果データは、ゴルフクラブ及びゴルフボールの少なくとも一方に関する測定データであってもよい。
【0013】
上記の課題を解決する本発明の他の態様は、コンピュータによる運動解析方法であって、対象ユーザの身体運動の運動データ及び当該身体運動によって生じた結果データを取得する取得ステップと、前記取得された運動データ及び結果データに基づき、前記対象ユーザの身体運動が目標とすべき目標の身体運動に対する、前記対象ユーザの身体運動の差分を抽出する解析ステップと、前記抽出された差分に基づくアドバイスを出力するアドバイスステップとを含む。
【0014】
上記の課題を解決する本発明のさらに他の態様は、コンピュータに運動解析方法を実行させるプログラムであって、対象ユーザの身体運動の運動データ及び当該身体運動によって生じた結果データを取得する取得ステップと、前記取得された運動データ及び結果データに基づき、前記対象ユーザの身体運動が目標とすべき目標の身体運動に対する、前記対象ユーザの身体運動の差分を抽出する解析ステップと、前記抽出された差分に基づくアドバイスを出力するアドバイスステップとを前記コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コンピュータを用いた身体運動の診断の精度及び信頼性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る運動解析装置の概要を示す図である。
図2図2は、運動解析装置の構成例を示す図である。
図3図3は、ルールベースによる解析処理の一例を説明する図である。
図4図4は、アドバイスを表示する画面の一例を示す図である。
図5図5は、運動解析処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の複数の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、各実施形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の各実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。また、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除するものでないことは言うまでもない。同様に、以下の各実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状、位置関係等に近似または類似するもの等を含むものとする。
【0018】
以下では、ゴルフのスイングを解析する場合を例に挙げて説明する。
【0019】
ゴルフは、身体の動きにより、ゴルフクラブを操り、ゴルフクラブでボールを打ち、ボールを適切な場所に飛ばし、カップに寄せる事を目的とする。ここで、ゴルフボールを打ち放つ動作すなわちスイングを「運動過程」と定義し、結果として得られるボールの飛距離などを「運動結果」とした場合、「運動結果」はまさに、「運動過程」により得られた結果そのものであるが故、その結果を求めたものに対し、適切性、正確性などを点数などで評価することができる。
【0020】
1回のスイングから得られた「運動結果」は、その1回のスイングを司る「運動過程」により成り立ち、身体部位の例えば、頭部中央、顎部、手右下腿、右大腿、左下腿、左大腿、骨盤、上部胴体、右上腕、右前腕、左上腕、左前腕ごとに「運動過程」が存在する。つまり、1回のスイングで得られた「運動結果」のデータ(結果データ)と、それを生み出した「運動過程」のデータ(運動データ)が存在する訳で、それらを全て紐づけて「1回のスイング」と捉えることができる。
【0021】
これにより、プロゴルファーやゴルフ上級者に見られる優良の結果に紐付く身体の動きと、初級者や中級者の身体の動きと差分を、学習によりあるいは統計的に把握して管理することができるようになる
【0022】
本実施形態は、上記の新規な技術思想に基づくものである。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る運動解析装置1の概要を示す図である。運動解析装置1は、解析対象のゴルフプレイヤである対象ユーザのスイングデータの入力を受け付け、当該対象ユーザのスイングが目標とすべきスイングを行う目標プレイヤのスイングデータに対する差分を抽出し、当該抽出された差分に基づくアドバイスを出力する。
【0024】
本実施形態の入力スイングデータは、上述したように、スイング時の身体運動の運動データに加え、当該身体運動により生じた結果データを含む。
【0025】
運動データの内容及び形式は、特に限定されない。運動データは、例えば、対象ユーザのスイングをカメラにより撮影した動画像データ、モーションキャプチャシステムにより対象ユーザに装着したマークやセンサから得られた測定データなどである。測定データには、例えば、対象ユーザの関節を含む身体部位の位置及びそれらの時系列変化を示すデータが含まれる。身体部位は、点で表せる関節に限らず、前腕、手、腰などの2次元形状や3次元形状で表せる部分を含み得る。運動データには、身体部位の運動データに限らず、身体運動と共に動くゴルフクラブ等の器具の運動データが含まれていてもよい。運動データは、1回のスイングのデータに限られず、複数回のスイングのデータを統計的に平均化したデータであってもよい。運動データは、様々な公知技術により取得できるため、詳細な説明は省略する。以下では、動画像データを取得する場合を例に説明する。
【0026】
結果データの内容及び形式は、特に限定されない。結果データは、例えば、測定システムにより測定された、ボールスピード、打出角、打出方向、スピン量、スピン方向、滞空時間、飛距離、フェイス面上のインパクト位置、インパクト時のフェイス面角度、ヘッドスピードなどの、ゴルフクラブやゴルフボールに関する測定データである。結果データは、1回のスイングにおけるデータに限られず、複数回のスイングにおけるデータを統計的に平均化したデータであってもよい。結果データは、様々な公知技術により取得できるため、詳細な説明は省略する。
【0027】
運動解析装置1は、例えば、1台又は複数台のサーバ装置やPC(Personal Computer)等のコンピュータにより実現できる。運動解析装置1は、例えば、スマートフォン、PC、カメラなどの他の装置から、スイングデータを受け付け、アドバイス情報を自装置のディスプレイに表示させるか、他の装置に出力してディスプレイに表示させる。他の例としては、運動解析装置1は、例えば、スマートフォン、タブレットコンピュータ、ウェアラブルコンピュータなどの端末装置であり、自装置のカメラあるいは他の装置からスイングデータを取得すると、アドバイス情報を自装置のディスプレイに表示させる。
【0028】
図2は、運動解析装置1の構成例を示す図である。運動解析装置1は、処理部10、記憶部20、入力部30、出力部40、及び通信部50を有する。これらの構成要素は、それぞれ例えば、プロセッサ、メモリ又はストレージ、キーボードやタッチパネル等の入力装置、ディスプレイやスピーカ等の出力装置、及び通信インターフェイスにより実現できる。
【0029】
処理部10は、運動解析装置1を統合的に制御する。処理部10は、取得部11、解析部12、アドバイス部13、及び学習部14を含む機能を有する。これらの機能は、例えばプロセッサが所定のプログラムを実行することで実現される。記憶部20は、解析用学習済モデル21、及びアドバイス情報22を格納する。
【0030】
取得部11は、対象ユーザのスイングデータ(運動データ及び結果データ)を取得する。例えば、取得部11は、入力部30又は通信部50を介して、対象ユーザのスイングを撮像した動画像データを、カメラから取得する。上述したように外部システムからスイングの測定データを取得してもよい。また、取得部11は、入力部30又は通信部50を介して、対象ユーザのスイングの結果データを外部システムから取得する。
【0031】
解析部12は、取得部11により取得された対象ユーザのスイングデータに基づき、対象ユーザの身体運動が目標とすべき目標プレイヤの身体運動に対する、対象ユーザの身体運動の差分を抽出する。以下、具体的に説明する。
【0032】
まず、解析部12は、取得した運動データに対して前処理を行う。例えば、解析部12は、スイングの動画像データから、関節を含む身体部位の位置及びそれらの時系列変化を解析する。また、解析部12は、スイング動作の時間区分毎に、各身体部位に関して、各種の動きパラメータ値群を得る。スイング動作の時間区分は、例えば、アドレス、テイクバック、バックスイング、トップ、ダウンスイング、インパクト、フォロースルー、フィニッシュである。動きパラメータ群は、例えば、移動方向、移動距離、移動速度、移動加速度などである。外部システムから測定データが取得される場合、動きパラメータ値群は、測定データに含まれていてもよいし、前処理により得られてもよい。運動データの前処理は、画像認識や画像解析など様々な公知技術により実現できるため、詳細な説明は省略する。
【0033】
また、解析部12は、取得した結果データに対して前処理を行う。例えば、解析部12は、取得された測定データを用いて、所定の評価項目毎に定量化したスコアパラメータ値群を得る。スコアパラメータ群は、例えば、パワー、正確性、飛距離、直進性などの各評価と、これらの評価を集計した総合評価を含む。外部システムから結果データが取得される場合、スコアパラメータ値群は、結果データに含まれていてもよいし、前処理により得られてもよい。結果データの前処理は、様々な公知技術により実現できるため、詳細な説明は省略する。
【0034】
次に、解析部12は、対象ユーザのスイング身体運動が目標とすべき目標プレイヤのスイング身体運動に対する、対象ユーザのスイング身体運動の差分を抽出する。本実施形態では、解析部12は、解析用学習済モデル21を用いる。つまり、解析部12は、対象ユーザのスイングデータ(前処理により得た動きパラメータ値群及びスコアパラメータ値群)を、解析用学習済モデル21に入力し、目標となるスイングデータ(動きパラメータ値群及びスコアパラメータ値群)に対する差分を得る。
【0035】
解析用学習済モデル21は、例えば、機械学習又は深層学習により構築された学習済モデルである。この学習済モデルは、例えば、指導を受ける前のゴルファーのスイングデータと、当該スイングデータと目標スイングデータ(当該ゴルファーを指導した結果上達した又は上達しなかった指導の際に目標としたスイングデータ)の差分とを1セットとして、複数セットを含む教師データに基づいて、解析対象ユーザのスイングデータを入力すると、上達するための目標スイングのスイングデータとの差分を出力するように学習される。2つスイングデータの差分は、例えば、運動データの対応する時間区分及び身体部位に関して求められ、結果データの対応する評価項目に関して求められる。
【0036】
なお、学習済モデルは、ニューラルネットワークで構成される場合、例えば、入力値に対して所定の演算を行って出力値を出力する複数のノードで構成されており、解析用学習済モデル21には各ノードの演算を規定する関数の係数や閾値等のデータが記憶される。
【0037】
ニューラルネットワークの具体例としては、入力層に解析対象ユーザの運動パラメータ値群及びスコアパラメータ値群が入力され、複数段の中間層を経て、出力層から目標スイングの運動パラメータ値群及びスコアパラメータ値群に対する差分値群の組み合わせパターンに対する一致率が出力される。出力層では、差分値群の取り得る値の組み合わせパターン毎に分類されており、入力されたパラメータ値群の、各組み合わせパターンに対する一致率が出力される。
【0038】
例えば、解析部12は、解析対象ユーザのスイングのパラメータ値群を解析用学習済モデル21に入力し、その出力に基づいて、一致率が最も高い組み合わせパターンを取得することにより、差分値群を算出する。
【0039】
なお、解析部12は、本実施形態では解析用学習済モデル21を用いるが、ルールベースの処理により解析処理を行ってもよい。例えば図3に示すように、予め統計的にルールとして、各目標スイングの動きパラメータ条件及びスコアパラメータ条件を定義しおく。パラメータ条件は、例えば各パラメータの値範囲として表現される。解析部12は、データベースあるいはアルゴリズムとして実装された上記ルールに基づき、解析対象ユーザのスイングのパラメータ値群が条件に合致する目標スイングを選定すると共に、目標スイングのパラメータ値群との差分値群を抽出する。
【0040】
上述のようにして抽出された差分値群は、目標スイングに対する解析対象ユーザのスイングの差分である。ここで、目標スイングは、学習あるいは統計に基づいて、上達することが推測されているスイングである。つまり、比較対象としても適切なスイングである。従って、この目標スイングとの差分が小さくなるように指導することで、対象ユーザを上達へと導くことができる。
【0041】
アドバイス部13は、解析部12により抽出された差分に基づくアドバイスを出力する。例えば、アドバイス部13は、抽出された差分値群を小さくするためのアドバイスを、アドバイス情報22から取得し、出力部40に表示させる、又は通信部50を介して他の装置に出力して表示させる。アドバイス情報22には、例えば、差分値群の組み合わせパターン毎に、それらの差分値を小さくするためのアドバイス内容が格納されている。アドバイス内容は、例えば、スイングの時間区分及び身体部位毎の位置及び姿勢の修正方向や修正量などである。アドバイス部13は、例えば図4に示すように、対象ユーザ及び目標プレイヤのスイングの画像とともに、差分及びアドバイス内容を提示する画面を出力する。
【0042】
学習部14は、解析用学習済モデル21に対する学習を行う。例えば、学習部14は、指導を受ける前のゴルファーのスイングデータ(パラメータ値群)と、当該スイングデータと目標スイングデータ(パラメータ値群)の差分値群と、上達結果(例えば上達した又は上達しなかった度合)を定量化したラベルデータとを1セットとして、複数セットの教師データを生成し、所定の学習アルゴリズムにより学習済モデルに学習させる。例えば、学習部14は、解析対象ユーザのスイングデータを入力した場合に、上達度合がより良好な目標スイングデータとの差分値組み合わせパターンに対応する出力ノードからの出力値が1.0に近づき、その他の出力ノードからの出力値が0に近づくように学習する。また、学習部14は、入力値に対して行う所定の演算を規定する関数の係数や閾値等のデータを最適化する。これにより、特定のスイングに関して実際に上達が見られた目標スイングとの関連性及び差分値が、学習済モデルに反映される。もちろん、目標スイングは、実在のプレイヤのスイングに限らず、仮想的なプレイヤのスイングとすることもできる。
【0043】
なお、ルールベースの場合、学習部14は、外部のコンピュータで学習されたルール、又は、自ら学習したルールを取得し、データベースあるいはアルゴリズムとして実装されたルールを更新すればよい。
【0044】
図5は、運動解析処理の一例を示すフローチャートである。本フローチャートは、例えば、解析対象ユーザがスイングを行う際に実行される。
【0045】
まず、取得部11は、解析対象ユーザのスイングデータを取得する(ステップS1)。
【0046】
次に、解析部12は、ステップS1で取得された運動データに基づき、関節を含む身体部位の位置及びそれらの時系列変化を解析するとともに、スイング動作の時間区分毎に、各身体部位に関して、各種の動きパラメータ値群を得る(ステップS2)。
【0047】
また、解析部12は、ステップS1で取得された結果データに基づき、所定の評価項目毎に定量化したスコアパラメータ値群を得る(ステップS3)。
【0048】
次に、解析部12は、ステップS2及びS3で得られた動きパラメータ値群及びスコアパラメータ値群)を、解析用学習済モデル21に入力し、目標スイングのスイングデータに対する差分値群を抽出する(ステップS4)。
【0049】
最後に、アドバイス部13は、ステップS4で抽出された差分を小さくするためのアドバイスを、アドバイス情報22から取得し、出力部40に表示させる、又は通信部50を介して他の装置に出力して表示させる(ステップS5)。
【0050】
以上、本発明の一実施形態について説明した。本実施形態によれば、コンピュータを用いた身体運動(例えばゴルフスイング)の診断の精度及び信頼性を向上することができる。
【0051】
例えば、本実施形態では、どのようなスイングの場合にどの目標スイングに対してどの差分を埋めれば上達するかが学習されている。従って、より適切な比較対象を選定できるだけでなく、より精度及び信頼性の高い診断及びアドバイスを行うことができる。学習させる教師データのセットによっては、解析対象プレイヤのスイングタイプに似た、当該プレイヤの手の届く範囲の上位レベルのプレイヤ(実在のプレイヤに限らず、仮想的なプレイヤでもよい)のスイングとの差分を抽出して、アドバイスを行うことができる。
【0052】
また例えば、本実施形態では、スイングを構成する運動データだけでなく結果データにも基づいて、目標スイングが選定されるため、より適切な比較対象を選ぶことができる。
【0053】
また例えば、本実施形態では、差分値群は、運動データの対応する時間区分及び身体部位に関して求められるため、より詳細な診断及びアドバイスを行うことができる。
【0054】
本発明は、上記の実施形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能であり、それらの態様を含むものである。ある実施形態の一部の構成要素を、他の実施形態に加えたり、他の実施形態の一部の構成要素と置換したりしてもよい。ある実施形態の構成要素のうち、一部の構成要素を省略することもできる。
【0055】
本発明は、ゴルフスイングの解析に限らず、スポーツに代表される様々な身体運動の解析に適用することができる。また、本発明は、装置に限らず、装置を含むシステム、方法、コンピュータ読み取り可能なプログラムなどの様々な態様で提供することができる。
【符号の説明】
【0056】
1…運動解析装置、10…処理部、11…取得部、12…解析部、13…アドバイス部、14…学習部、20…記憶部、21…解析用学習済モデル、22…アドバイス情報、30…入力部、40…出力部、50…通信部
図1
図2
図3
図4
図5