(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061790
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】車両用操作検出装置
(51)【国際特許分類】
E05F 15/73 20150101AFI20220412BHJP
B60J 5/04 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
E05F15/73
B60J5/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020169940
(22)【出願日】2020-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 健太
(72)【発明者】
【氏名】甲斐野 嵩志
(72)【発明者】
【氏名】中山 志穂
(72)【発明者】
【氏名】浅見 瞭
(72)【発明者】
【氏名】金田 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】賀川 賢一郎
【テーマコード(参考)】
2E052
【Fターム(参考)】
2E052AA09
2E052BA07
2E052CA05
2E052EA16
2E052EB01
2E052EC01
2E052LA08
(57)【要約】
【課題】ユーザの操作の検出精度を高めることのできる車両用操作検出装置を提供する。
【解決手段】操作検出装置の制御部は、静電容量C1が第1判定値C1Th以上となるセンサ電極を操作開始電極として判定する開始電極判定部と、複数のセンサ電極のうち、静電容量が増大するセンサ電極が操作開始電極から第1方向に順に切り替わる場合に第1操作が行われたと判定する操作判定部と、を備える。操作判定部は、操作開始電極に隣り合うセンサ電極である隣接電極の静電容量C2が第1判定値C1Thよりも大きな第2判定値C2Th以上となる場合に、隣接電極の静電容量が増大したと判定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
列をなすように設けられ、検出対象の接近に伴って静電容量が大きくなる複数のセンサ電極と、
複数の前記センサ電極の静電容量に基づいて、車両の開閉体を開閉作動させる指令を出力する制御部と、を備え、
複数の前記センサ電極が並ぶ方向において、前記開閉体の開方向に対応する方向を第1方向とし、前記開閉体の閉方向に対応する方向を第2方向としたとき、
前記制御部は、
前記第1方向又は前記第2方向における端部に位置する2つの前記センサ電極のうち、静電容量が第1判定値以上となる前記センサ電極を操作開始電極として確定する開始電極判定部と、
複数の前記センサ電極のうち、静電容量が増大する前記センサ電極が前記操作開始電極から前記第1方向に順に切り替わる場合に第1操作が行われたと判定し、静電容量が増大する前記センサ電極が前記操作開始電極から前記第2方向に順に切り替わる場合に第2操作が行われたと判定する操作判定部と、
前記第1操作が行われたと判定される場合に前記開閉体を開作動させる指令を出力し、前記第2操作が行われたと判定される場合に前記開閉体を閉作動させる指令を出力する指令部と、を備え、
前記操作判定部は、前記操作開始電極に隣り合う前記センサ電極である隣接電極の静電容量が前記第1判定値よりも大きな第2判定値以上となる場合に、前記隣接電極の静電容量が増大したと判定する
車両用操作検出装置。
【請求項2】
前記開始電極判定部は、前記第1方向又は前記第2方向における端部に位置する2つの前記センサ電極のうち、静電容量が前記第1判定値以上となる状態が継続する前記センサ電極を前記操作開始電極として確定し、
前記操作判定部は、前記操作開始電極の確定タイミングにおける前記隣接電極の静電容量の大きさに基づいて前記第2判定値を算出する
請求項1に記載の車両用操作検出装置。
【請求項3】
前記操作判定部は、前記操作開始電極の確定タイミングにおける前記隣接電極の静電容量にオフセット値を加算した値を前記第2判定値とする
請求項2に記載の車両用操作検出装置。
【請求項4】
前記開始電極判定部は、前記第1方向又は前記第2方向における端部に位置する2つの前記センサ電極のうち、静電容量が前記第1判定値以上となる状態が継続する前記センサ電極を前記操作開始電極として確定し、
前記操作判定部は、前記操作開始電極の確定タイミングにおける前記隣接電極の静電容量が前記第1判定値以上の場合、前記第2判定値を前記第1判定値よりも大きな値とし、前記操作開始電極の確定タイミングにおける前記隣接電極の静電容量が前記第1判定値未満の場合、前記第2判定値を前記第1判定値と等しい値とする
請求項1~請求項3の何れか一項に記載の車両用操作検出装置。
【請求項5】
複数の前記センサ電極は、3つの前記センサ電極から構成され、
前記操作判定部は、前記隣接電極から見て、前記操作開始電極とは反対側に位置する操作終了電極の静電容量が前記第1判定値よりも大きな第3判定値以上となる場合に、前記操作終了電極の静電容量が増大したと判定する
請求項1~請求項4の何れか一項に記載の車両用操作検出装置。
【請求項6】
前記検出対象が前記センサ電極に接近し過ぎていることを判定するための判定値を上限判定値としたとき、
前記操作判定部は、静電容量が前記上限判定値以上となる前記センサ電極が存在する場合、前記第1操作及び前記第2操作が行われたか否かの判定を中止する
請求項1~請求項5の何れか一項に記載の車両用操作検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用操作検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ユーザのハンドモーションを検出して、スライドドアを開閉作動させる車両用操作検出装置が知られている。例えば、特許文献1に記載の車両用操作検出装置は、検出対象との間隔に応じて静電容量が変化する複数のセンサ電極と、静電容量に基づいてアクチュエータを駆動してスライドドアを開閉作動させる制御回路と、を備えている。
【0003】
そして、車両用操作検出装置は、複数のセンサ電極のうち、静電容量の変化を示すセンサ電極がスライドドアの開方向に順に変化する場合に、スライドドアを開作動させるための信号を出力する。一方、車両用操作検出装置は、複数のセンサ電極のうち、静電容量の変化を示すセンサ電極がスライドドアの閉方向に順に変化する場合に、スライドドアを閉作動させるための信号を出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような車両用操作検出装置は、ユーザの操作の検出精度を高める点において改善の余地が残されていた。本発明の課題は、ユーザの操作の検出精度を高めることのできる車両用操作検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する車両用操作検出装置は、列をなすように設けられ、検出対象の接近に伴って静電容量が大きくなる複数のセンサ電極と、複数の前記センサ電極の静電容量に基づいて、車両の開閉体を開閉作動させる指令を出力する制御部と、を備え、複数の前記センサ電極が並ぶ方向において、前記開閉体の開方向に対応する方向を第1方向とし、前記開閉体の閉方向に対応する方向を第2方向としたとき、前記制御部は、前記第1方向又は前記第2方向における端部に位置する2つの前記センサ電極のうち、静電容量が第1判定値以上となる前記センサ電極を操作開始電極として確定する開始電極判定部と、複数の前記センサ電極のうち、静電容量が増大する前記センサ電極が前記操作開始電極から前記第1方向に順に切り替わる場合に第1操作が行われたと判定し、静電容量が増大する前記センサ電極が前記操作開始電極から前記第2方向に順に切り替わる場合に第2操作が行われたと判定する操作判定部と、前記第1操作が行われたと判定される場合に前記開閉体を開作動させる指令を出力し、前記第2操作が行われたと判定される場合に前記開閉体を閉作動させる指令を出力する指令部と、を備え、前記操作判定部は、前記操作開始電極に隣り合う前記センサ電極である隣接電極の静電容量が前記第1判定値よりも大きな第2判定値以上となる場合に、前記隣接電極の静電容量が増大したと判定する。
【0007】
複数のセンサ電極は隣り合っているため、第1操作又は第2操作を行うためにユーザが操作開始電極となるセンサ電極に手などを接近させると、操作開始電極となるセンサ電極の静電容量だけでなく、隣接電極となるセンサ電極の静電容量も増大することがある。
【0008】
このため、隣接電極の静電容量の増大を判定するための判定値が小さい比較例では、操作開始電極の確定タイミング前に隣接電極の静電容量が当該判定値以上となる場合がある。この場合、操作開始電極の確定タイミング後に隣接電極の静電容量が上記判定値以上とならない点で、静電容量が増大するセンサ電極が操作開始電極から第1方向又は第2方向に順に切り替わらなくなる。したがって、比較例の操作検出装置は、第1操作又は第2操作が行われることを正しく検出できなくなるおそれがある。
【0009】
この点、上記構成の操作検出装置は、隣接電極の静電容量が第1判定値よりも大きな第2判定値以上となる場合に、隣接電極の静電容量が増大したと判定する。つまり、操作検出装置は、静電容量が増大するセンサ電極が操作開始電極から第1方向又は第2方向に順に切り替わりやすくなる。このため、操作検出装置は、ユーザの操作の検出精度を高めることができる。
【0010】
上記車両用操作検出装置において、前記開始電極判定部は、前記第1方向又は前記第2方向における端部に位置する2つの前記センサ電極のうち、静電容量が前記第1判定値以上となる状態が継続する前記センサ電極を前記操作開始電極として確定し、前記操作判定部は、前記操作開始電極の確定タイミングにおける前記隣接電極の静電容量の大きさに基づいて前記第2判定値を算出することが好ましい。
【0011】
操作開始電極の確定タイミングにおける隣接電極の静電容量は、ユーザの操作開始電極に対する手などの接近態様に応じて変動する。この点、上記構成の操作検出装置は、操作開始電極の確定タイミングにおける隣接電極の静電容量の大きさに基づいて第2判定値を算出する。したがって、操作検出装置は、第2判定値を適切な大きさに算出できる。
【0012】
上記車両用操作検出装置において、前記操作判定部は、前記操作開始電極の確定タイミングにおける前記隣接電極の静電容量にオフセット値を加算した値を前記第2判定値とすることが好ましい。
【0013】
上記構成の操作検出装置は、操作開始電極の確定タイミングにおける隣接電極の静電容量の大きさに基づいた第2判定値を容易に算出できる。
上記車両用操作検出装置において、前記開始電極判定部は、前記第1方向又は前記第2方向における端部に位置する2つの前記センサ電極のうち、静電容量が前記第1判定値以上となる状態が継続する前記センサ電極を前記操作開始電極として確定し、前記操作判定部は、前記操作開始電極の確定タイミングにおける前記隣接電極の静電容量が前記第1判定値以上の場合、前記第2判定値を前記第1判定値よりも大きな値とし、前記操作開始電極の確定タイミングにおける前記隣接電極の静電容量が前記第1判定値未満の場合、前記第2判定値を前記第1判定値と等しい値とすることが好ましい。
【0014】
上記構成の操作検出装置は、第2判定値を第1判定値よりも大きな値としなくても、隣接電極の静電容量が増大したか否かを正しく判定できる場合には、第2判定値を第1判定値と等しい値とする。このため、上記構成の操作検出装置は、第2判定値を適切な大きさに設定できる。
【0015】
上記車両用操作検出装置において、複数の前記センサ電極は、3つの前記センサ電極から構成され、前記操作判定部は、前記隣接電極から見て、前記操作開始電極とは反対側に位置する操作終了電極の静電容量が前記第1判定値よりも大きな第3判定値以上となる場合に、前記操作終了電極の静電容量が増大したと判定することが好ましい。
【0016】
センサ電極の大きさによっては、第1操作又は第2操作を行うためにユーザが操作開始電極となるセンサ電極に手などを接近させる際に、隣接電極となるセンサ電極だけでなく、操作終了電極となるセンサ電極の静電容量も増大する可能性がある。この点、上記構成の操作検出装置は、操作終了電極の静電容量が第1判定値よりも大きな第3判定値以上となる場合に、操作終了電極の静電容量が増大したと判定する。このため、操作検出装置は、ユーザの操作の検出精度をより高めることができる。
【0017】
上記車両用操作検出装置において、前記検出対象が前記センサ電極に接近し過ぎていることを判定するための判定値を上限判定値としたとき、前記操作判定部は、静電容量が前記上限判定値以上となる前記センサ電極が存在する場合、前記第1操作及び前記第2操作が行われたか否かの判定を中止することが好ましい。
【0018】
例えば、ユーザが第1操作又は第2操作を行う場合には、ユーザが手を接近させた後のセンサ電極、言い換えれば、相対的にユーザの手から遠ざかるセンサ電極の静電容量が大きくなることはない。また、ユーザが第1操作又は第2操作を行う場合には、ユーザの手が接近する前のセンサ電極、言い換えれば、ユーザの手から離れた位置にあるセンサ電極の静電容量が大きくなることもない。この点、上記構成の操作検出装置は、例えば、雨などの影響により、センサ電極の静電容量が上限判定値以上となる場合には、第1操作又は第2操作が行われたか否かの判定を中止する。このため、操作検出装置は、第1操作又は第2操作を誤判定するおそれを低減できる。
【発明の効果】
【0019】
車両用操作検出装置は、ユーザの操作の検出精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】第1実施形態に係る車両用操作検出装置を備える車両の模式図。
【
図2】第1実施形態に係る車両用操作検出装置の概略構成を示す模式図。
【
図3】ユーザが第1操作を行う状況下において、比較例に係る車両用操作検出装置のセンサ電極の静電容量の推移を示すタイミングチャート。
【
図4】第1実施形態に係る車両用操作検出装置の制御部が実行する処理の流れを説明するフローチャート。
【
図5】ユーザが第1操作を行う状況下において、第1実施形態に係る車両用操作検出装置のセンサ電極の静電容量の推移を示すタイミングチャート。
【
図6】第2実施形態に係る車両用操作検出装置の概略構成を示す模式図。
【
図7】センサ電極の校正が実施される状況下において、第2実施形態に係る車両用操作検出装置のセンサ電極の静電容量の推移を示すタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1実施形態)
以下、車両用操作検出装置(以下、「操作検出装置」ともいう。)の第1実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0022】
図1に示すように、車両10は、側部にドア開口部21が形成される車体20と、ドア開口部21を開閉するスライド式の車両ドア30と、車両ドア30を車体20に拘束するドアロック40と、を備える。また、車両10は、車両ドア30を駆動するドア駆動部60と、ドアロック40を駆動するドアロック駆動部70と、車両ドア30を開閉作動させるためのユーザの操作を検出する操作検出装置80と、操作検出装置80から出力される信号に基づいて、ドア駆動部60及びドアロック駆動部70を制御するドア制御装置100と、を備える。
【0023】
車両ドア30は、ドア開口部21を全閉する全閉位置及びドア開口部21を全開する全開位置の間で作動する。第1実施形態では、車両ドア30は、全閉位置から全開位置に向かう方向が車両後方となり、全開位置から全閉位置に向かう方向が車両前方となる。
【0024】
ドア駆動部60は、全閉位置に向けて車両ドア30を閉作動させたり、全開位置に向けて車両ドア30を開作動させたりする。ドアロック40は、車両ドア30を全閉位置において車体20に拘束したり、車両ドア30を拘束する状態を解除したりする。ドアロック駆動部70は、ドアロック40の状態を、車両ドア30を拘束する状態及び車両ドア30の拘束を解除する状態に切り替える。
【0025】
以下、操作検出装置80について説明する。
操作検出装置80は、車両ドア30の外側からユーザが操作可能な位置に配置される。第1実施形態において、操作検出装置80は、車両ドア30の内装を構成するドアトリムの内側に配置される。また、操作検出装置80は、車両ドア30の窓ガラス31を介して車両外側からユーザが目視できる位置に配置される。他の実施形態において、操作検出装置80は、車両ドア30の外側を構成するアウタパネルに埋め込むこともできる。
【0026】
図2に示すように、操作検出装置80は、車両ドア30の開閉方向に間隔をあけて配置される第1センサ電極81、第2センサ電極82及び第3センサ電極83と、第1センサ電極81、第2センサ電極82及び第3センサ電極83の検出結果に基づいてドア制御装置100に信号を出力する制御部85と、を備える。
【0027】
第1センサ電極81、第2センサ電極82及び第3センサ電極83は、矩形板状をなしている。第1センサ電極81、第2センサ電極82及び第3センサ電極83において、板厚方向と直交する面積は互いに等しくなっている。第1センサ電極81、第2センサ電極82及び第3センサ電極83は、長手方向における長さが利用者の手に応じた長さになっている。一例として、第1センサ電極81、第2センサ電極82及び第3センサ電極83は、長手方向における長さが10cm~20cm程度であることが好ましい。
【0028】
第1センサ電極81、第2センサ電極82及び第3センサ電極83は、列をなすように設けられている。第1実施形態では、第1センサ電極81、第2センサ電極82及び第3センサ電極83の並び方向が車両前後方向となる。詳しくは、第1センサ電極81は最も車両前方に位置し、第3センサ電極83は最も車両後方に位置し、第2センサ電極82は第1センサ電極81及び第3センサ電極83の間に位置している。
【0029】
以降の説明では、第1センサ電極81から第3センサ電極83に向かう方向を第1方向D1とし、第3センサ電極83から第1センサ電極81に向かう方向を第2方向D2とする。複数のセンサ電極の並び方向のうち、第1方向D1は、車両ドア30の開方向に対応する方向であり、第2方向D2は、車両ドア30の閉方向に対応する方向である。複数のセンサ電極において、第1センサ電極81は第2方向D2における端部に位置し、第3センサ電極83は第1方向D1における端部に位置している。
【0030】
第1センサ電極81、第2センサ電極82及び第3センサ電極83は、センサ電極に接近した検出対象とともに擬似的なコンデンサを構成する。そのため、第1センサ電極81、第2センサ電極82及び第3センサ電極83は、センサ電極に検出対象が接近するほど、検出対象との位置関係で定まる静電容量が大きくなる。センサ電極は、車両外側から検出対象が接近する際に静電容量が大きくなるように、検出対象の検出範囲が車両外側に広がっている。以降の説明では、センサ電極と検出対象との位置関係で定まる静電容量を単に「センサ電極の静電容量」ともいう。
【0031】
操作検出装置80は、車両ドア30を開作動させるための操作として、ユーザが手を第1センサ電極81にかざした後、第1方向D1に移動させる操作を想定する。以降の説明では、複数のセンサ電極のうち、利用者が手を接近させるセンサ電極を第1方向D1に切り替える操作を「第1操作」とする。ユーザが第1操作を行う場合には、第1センサ電極81が「操作開始電極」となり、第2センサ電極82が操作開始電極に隣接する「隣接電極」となり、第3センサ電極83が「操作終了電極」となる。
【0032】
また、操作検出装置80は、車両ドア30を閉作動させるための操作として、ユーザが手を第3センサ電極83にかざした後、第2方向D2に移動させる操作を想定する。以降の説明では、複数のセンサ電極のうち、利用者が手を接近させるセンサ電極を第2方向D2に切り替える操作を「第2操作」とする。ユーザが第2操作を行う場合には、第3センサ電極83が「操作開始電極」となり、第2センサ電極82が操作開始電極に隣接する「隣接電極」となり、第1センサ電極81が「操作終了電極」となる。なお、利用者は、第1操作又は第2操作を行う場合、手を除く身体の一部をセンサ電極に接近させたり、持ち物をセンサ電極に接近させたりしてもよい。
【0033】
続いて、制御部85について説明する。
制御部85は、操作開始電極を判定する開始電極判定部91と、第1操作又は第2操作が行われたか否かを判定する操作判定部92と、第1操作又は第2操作が行われた場合に開作動指令信号又は閉作動指令信号を出力する指令部93と、を有する。
【0034】
開始電極判定部91は、第1方向D1又は第2方向D2における端部に位置する2つのセンサ電極のうち、静電容量が第1判定値C1Th以上となる状態が第1判定時間Txにわたって継続するセンサ電極を操作開始電極として確定する。言い換えれば、開始電極判定部91は、第1センサ電極81及び第3センサ電極83のどちらが操作開始電極であるかを判定する。第1判定値C1Th及び第1判定時間Txは、事前に設定されることが好ましい。例えば、第1判定時間Txは、0.5秒から1.0秒程度の時間とすればよい。以降の説明では、開始電極を確定させるための判定を「開始電極判定」ともいい、開始電極判定において、開始電極が確定することを「開始電極判定が成立する」という。
【0035】
操作判定部92は、操作開始電極が第1センサ電極81であるとき、静電容量が増大するセンサ電極が第1センサ電極81から第1方向D1に順に切り替わる場合に第1操作が行われたと判定する。詳しくは、操作開始電極が第1センサ電極81であるとき、隣接電極としての第2センサ電極82の静電容量C2が第2判定値C2Th以上となった後に、操作終了電極としての第3センサ電極83の静電容量C3が第3判定値C3Th以上となった場合に、第1操作が行われたと判定する。
【0036】
一方、操作判定部92は、操作開始電極が第3センサ電極83であるとき、静電容量が増大するセンサ電極が第3センサ電極83から第2方向D2に順に切り替わる場合に第2操作が行われたと判定する。詳しくは、操作開始電極が第3センサ電極83であるとき、隣接電極としての第2センサ電極82の静電容量C2が第2判定値C2Th以上となった後に、操作終了電極としての第1センサ電極81の静電容量C1が第3判定値C3Th以上となった場合に、第2操作が行われたと判定する。以降の説明では、第1操作又は第2操作が行われたか否かの判定を「スワイプ判定」ともいい、スワイプ判定において、第1操作又は第2操作が行われたと判定することを「スワイプ判定が成立する」という。
【0037】
ここで、第1判定値C1Thは、操作開始電極に対応する判定値であり、第3判定値C3Thは、操作終了電極に対応する判定値である。言い換えれば、第1判定値C1Thは、必ずしも第1センサ電極81に対応する判定値ではないし、第3判定値C3Thは、必ずしも第3センサ電極83に対応する判定値ではない。
【0038】
ここで、
図3を参照して、比較例の制御部の第1操作の検出態様について説明する。比較例の制御部は、第2判定値C2Th及び第3判定値C3Thを第1判定値C1Thと等しい値とする。
【0039】
図3に実線で示すように、ユーザが第1操作を行う場合には、第1センサ電極81にユーザの手が接近するのに伴い、第1のタイミングt11から第1センサ電極81の静電容量C1が増大し始める。そして、第2のタイミングt12において、第1センサ電極81の静電容量C1が第1判定値C1Th以上となる。第2のタイミングt12からの経過時間が第1判定時間Txとなる第4のタイミングt14になると、第1センサ電極81が操作開始電極であると確定される。その後、ユーザが第1センサ電極81に接近させた手を第1方向D1に移動させることにより、第5のタイミングt15において、第2センサ電極82の静電容量C2が第2判定値C2Th以上となり、第6のタイミングt16において、第3センサ電極83の静電容量C3が第3判定値C3Th以上となる。こうして、比較例の制御部は、第6のタイミングt16で、第1操作が行われたと判定する。
【0040】
ここで、操作検出装置80に対するユーザの操作態様によっては、例えば、ユーザが第1操作を行う場合に、
図3に一点鎖線で示すように、第2センサ電極82の静電容量C2が第1センサ電極81の静電容量C1とともに増大することがある。詳しくは、ユーザが大きく開いた手を第1センサ電極81に接近させたり、ユーザが手を第1センサ電極81における第2センサ電極82寄りの位置に接近させたりする場合には、第1センサ電極81の静電容量C1及び第2センサ電極82の静電容量C2がともに増大するおそれがある。
【0041】
この場合、
図3に示すように、操作開始電極の確定タイミングである第4のタイミングt14よりも前の第3のタイミングt13において、第2センサ電極82の静電容量C2が第2判定値C2Th以上となる。言い換えれば、第1センサ電極81が操作開始電極に確定した後に、第2センサ電極82の静電容量C2が第2判定値C2Th未満から第2判定値C2Th以上にならなくなる。したがって、
図3に一点鎖線で示すように、第2センサ電極82の静電容量C2が変化する場合、比較例の制御部は、第1操作が行われたと判定できなくなる。
【0042】
そこで、操作判定部92は、まず、操作開始電極の確定タイミングにおける隣接電極の静電容量が第1判定値C1Th以上か否かを判定する。そして、操作開始電極の確定タイミングにおける隣接電極の静電容量が第1判定値C1Th以上である場合、操作判定部92は、第2判定値C2Thを第1判定値C1Thよりも大きな値に設定する。そして、操作判定部92は、隣接電極の静電容量が第2判定値C2Th以上の場合、隣接電極の静電容量が増大したと判定し、隣接電極の静電容量が第2判定値C2Th未満の場合、隣接電極の静電容量が増大していないと判定する。
【0043】
操作判定部92は、操作開始電極の確定タイミングにおける隣接電極の静電容量の大きさに基づいて第2判定値C2Thを算出する。詳しくは、操作判定部92は、操作開始電極の確定タイミングにおける隣接電極の静電容量に事前に設定されるオフセット値COffを加算した値を第2判定値C2Thとする。第1実施形態において、オフセット値COffは事前に設定される固定値である。
【0044】
一方、操作開始電極の確定タイミングにおける隣接電極の静電容量が第1判定値C1Th未満の場合、操作判定部92は、第2判定値C2Thを第1判定値C1Thと同じ値に設定する。そして、操作判定部92は、隣接電極の静電容量が第2判定値C2Th以上の場合、隣接電極の静電容量が増大したと判定し、隣接電極の静電容量が第2判定値C2Th未満の場合、隣接電極の静電容量が増大していないと判定する。
【0045】
なお、第1実施形態において、操作終了電極の静電容量の増大を判定する第3判定値C3Thは、第1判定値C1Thと同じ値に設定すればよい。他の実施形態において、第3判定値C3Thは、第1判定値C1Th未満の値でもよいし、第1判定値C1Thよりも大きな値でもよい。
【0046】
開始電極判定部91は、操作開始電極の判定中に他のセンサ電極の静電容量が事前に設定される上限判定値CLThとなる場合、操作開始電極の判定を中止する。また、操作判定部92は、隣接電極及び操作終了電極の静電容量が増大したか否かの判定中において、判定対象でない他のセンサ電極の静電容量が上限判定値CLTh以上となる場合、第1操作又は第2操作が行われたか否かの判定を中止する。
【0047】
上限判定値CLThは、検出対象がセンサ電極に接近し過ぎていることを判定するための判定値であって、ユーザがセンサ電極に手を接近させた程度では到達しないような値である。つまり、上限判定値CLThは、第1判定値C1Th、第2判定値C2Th及び第3判定値C3Thよりも大きな値に設定される。
【0048】
また、操作判定部92は、静電容量が増大するセンサ電極が第1方向D1又は第2方向D2に隣り合うセンサ電極に切り替わるのに要する時間が長くなる場合には、ユーザの第1操作又は第2操作が中止されたとして、第1操作又は第2操作が行われたか否かの判定を中止する。詳しくは、操作判定部92は、操作開始電極が確定されてから隣接電極の静電容量が増大するまでの期間及び隣接電極の静電容量が増大してから操作終了電極の静電容量が増大するまでの期間が事前に設定される第2判定時間Ty以上となる場合、第1操作又は第2操作が行われたか否かの判定を中止する。第2判定時間Tyの長さは、適宜に設定すればよい。
【0049】
指令部93は、第1操作が行われたと判定できる場合には、車両ドア30を開作動させるための開作動指令信号をドア制御装置100に出力する。一方、指令部93は、第2操作が行われたと判定できる場合には、車両ドア30を閉作動させるための閉作動指令信号をドア制御装置100に出力する。
【0050】
ドア制御装置100は、開作動指令信号が入力される場合、ドア駆動部60及びドアロック駆動部70により、車両ドア30を開作動させる。一方、ドア制御装置100は、閉作動指令信号が入力される場合、ドア駆動部60及びドアロック駆動部70により、車両ドア30を閉作動させる。
【0051】
次に、
図4に示すフローチャートを参照して、制御部85が第1操作を検出するために実施する処理の流れについて説明する。以降の説明では、第1センサ電極81、第2センサ電極82及び第3センサ電極83の静電容量C1~C3は、特に断りのない限りステップの実施時に取得される現時点での静電容量であるとする。
【0052】
図4に示すように、制御部85は、第1センサ電極81の静電容量C1が第1判定値C1Th以上か否かを判定する(S11)。第1センサ電極81の静電容量C1が第1判定値C1Th未満の場合(S11:NO)、制御部85は、本処理を終了する。一方、第1センサ電極81の静電容量C1が第1判定値C1Th以上の場合(S11:YES)、すなわち、検出対象が第1センサ電極81に接近している場合、制御部85は、第2センサ電極82及び第3センサ電極83の静電容量C2,C3が上限判定値CLTh以上か否かを判定する(S12)。
【0053】
第2センサ電極82及び第3センサ電極83のうち少なくとも一方の静電容量C2,C3が上限判定値CLTh以上の場合(S12:YES)、制御部85は、本処理を終了する。一方、第2センサ電極82及び第3センサ電極83の静電容量C2,C3がともに上限判定値CLTh未満の場合(S12:NO)、制御部85は、ステップS11が最初に肯定判定されてから第1判定時間Txが経過したか否かを判定する(S13)。
【0054】
第1判定時間Txが経過していない場合(S13:NO)、制御部85は、ステップS11に処理を移行する。一方、第1判定時間Txが経過している場合(S13:YES)、言い換えれば、第1センサ電極81が操作開始電極として確定される場合、制御部85は、操作開始電極の確定タイミングにおける第2センサ電極82の静電容量C2*が第1判定値C1Th以上か否かを判定する(S14)。ここで、第2センサ電極82の静電容量C2*とは、操作開始電極の確定タイミングにおける第2センサ電極82の静電容量C2である。
【0055】
第2センサ電極82の静電容量C2*が第1判定値C1Th未満の場合(S14:NO)、制御部85は、第2判定値C2Thを第1判定値C1Thと等しい値とする(S15)。一方、第2センサ電極82の静電容量C2*が第1判定値C1Th以上の場合(S14:YES)、制御部85は、第2判定値C2Thを第2センサ電極82の静電容量C2*にオフセット値COffを加算した値とする(S16)。
【0056】
続いて、制御部85は、第1センサ電極81及び第3センサ電極83の静電容量C1,C3が上限判定値CLTh以上か否かを判定する(S17)。第1センサ電極81及び第3センサ電極83のうち少なくとも一方の静電容量C1,C3が上限判定値CLTh以上の場合(S17:YES)、制御部85は、本処理を終了する。
【0057】
一方、第1センサ電極81及び第3センサ電極83の静電容量C1,C3がともに上限判定値CLTh未満の場合(S17:NO)、制御部85は、ステップS13が肯定判定されてから第2判定時間Tyが経過したか否かを判定する(S18)。言い換えれば、制御部85は、操作開始電極の確定タイミングから第2判定時間Tyが経過したか否かを判定する。
【0058】
操作開始電極の確定タイミングから第2判定時間Tyが経過している場合(S18:YES)、例えば、ユーザが第1操作を中止した場合、制御部85は、本処理を終了する。操作開始電極の確定タイミングから第2判定時間Tyが経過していない場合(S18:NO)、制御部85は、隣接電極としての第2センサ電極82の静電容量C2が第2判定値C2Th以上か否かを判定する(S19)。
【0059】
第2センサ電極82の静電容量C2が第2判定値C2Th未満の場合(S19:NO)、制御部85は、ステップS17に処理を移行する。一方、第2センサ電極82の静電容量C2が第2判定値C2Th以上の場合(S19:YES)、言い換えれば、第2センサ電極82の静電容量C2が増大する場合、制御部85は、第1センサ電極81及び第2センサ電極82の静電容量C1,C2が上限判定値CLTh以上か否かを判定する(S20)。第1センサ電極81及び第2センサ電極82のうち少なくとも一方の静電容量C1,C2が上限判定値CLTh以上の場合(S20:YES)、制御部85は、本処理を終了する。
【0060】
一方、第1センサ電極81及び第2センサ電極82の静電容量C1,C2がともに上限判定値CLTh未満の場合(S20:NO)、制御部85は、ステップS19が肯定判定されてから第2判定時間Tyが経過したか否かを判定する(S21)。言い換えれば、制御部85は、隣接電極の静電容量が増大したと判定してから、第2判定時間Tyが経過したか否かを判定する。
【0061】
ステップS19が肯定判定されてから第2判定時間Tyが経過している場合(S21:YES)、例えば、ユーザが第1操作を中止した場合、制御部85は、本処理を終了する。ステップS19が肯定判定されてから第2判定時間Tyが経過していない場合(S21:NO)、制御部85は、第3センサ電極83の静電容量C3が第3判定値C3Th以上か否かを判定する(S22)。
【0062】
第3センサ電極83の静電容量C3が第3判定値C3Th未満の場合(S22:NO)、制御部85は、ステップS20に処理を移行する。一方、第3センサ電極83の静電容量C3が第3判定値C3Th以上の場合(S22:YES)、言い換えれば、第3センサ電極83の静電容量C3が増大する場合、制御部85は、開作動指令信号を出力する(S23)。その後、制御部85は、本処理を終了する。
【0063】
なお、制御部85が第2操作を検出するために実施する処理の流れについては、図示及び説明を省略する。制御部85が第2操作を検出するために実施する処理の流れは、
図4において、ステップS11,S12,S20,S22における「C1」及び「C3」を入れ替えるとともに、ステップS23を「閉作動指令信号を出力」に置き換えたものに等しいためである。
【0064】
第1実施形態の作用について説明する。
詳しくは、
図5を参照して、操作検出装置80が第1操作を検出するときの作用について説明する。なお、
図5は、ユーザが開いた手を第1センサ電極81に接近させたり、ユーザが手を第1センサ電極81における第2センサ電極82寄りの位置に接近させたりする場合のセンサ電極の静電容量の変化を示している。
【0065】
図5に示すように、ユーザの手の接近に伴い、第1のタイミングt21において、第1センサ電極81の静電容量C1及び第2センサ電極82の静電容量C2が増大し始める。ユーザの手が第1センサ電極81にさらに接近することにより、第2のタイミングt22において、第1センサ電極81の静電容量C1が第1判定値C1Th以上となり、第3のタイミングt23において、第1センサ電極81の静電容量C1が第1判定値C1Th以上となる状況が第1判定時間Txにわたって継続する。つまり、第3のタイミングt23において、第1センサ電極81が操作開始電極に確定する。
【0066】
第3のタイミングt23では、隣接電極としての第2センサ電極82の静電容量C2が第1判定値C1Th以上となっている。このため、第2センサ電極82に対する検出対象の接近を判定する第2判定値C2Thは、操作開始電極の確定タイミングにおける第2センサ電極82の静電容量C2(C2*)にオフセット値COffを加算した値となる。
【0067】
その後、第1センサ電極81に接近させた手を第1方向D1に移動させることで、第4のタイミングt24において、第2センサ電極82の静電容量C2が第2判定値C2Th以上となり、第5のタイミングt25において、第3センサ電極83の静電容量C3が第3判定値C3Th以上となる。つまり、操作開始電極としての第1センサ電極81から静電容量が増大するセンサ電極が第1方向D1に順に切り替わる。
【0068】
こうして、第5のタイミングt25では、ユーザが第1操作を行ったと判定され、ドア制御装置100に開操作指令信号が出力される。その結果、車両ドア30が開作動する。
第1実施形態の効果について説明する。
【0069】
(1)操作検出装置80は、隣接電極の静電容量が、操作開始電極を判定するための第1判定値C1Thよりも大きな第2判定値C2Th以上となる場合に、隣接電極の静電容量が増大したと判定する。このため、操作検出装置80は、ユーザが第1操作又は第2操作を開始するときに、隣接電極となるセンサ電極に手が接近する場合であっても、第1操作又は第2操作を正しく判定しやすくなる。つまり、操作検出装置80は、ユーザの操作の検出精度を高めることができる。
【0070】
(2)操作開始電極の確定タイミングにおける隣接電極の静電容量は、ユーザの操作開始電極に対する手の接近態様に応じて変動する。この点、操作検出装置80は、操作開始電極の確定タイミングにおける隣接電極の静電容量の大きさに基づいて第2判定値C2Thを算出する。したがって、操作検出装置80は、第2判定値C2Thを適切な大きさに算出できる。
【0071】
(3)操作検出装置80は、操作開始電極の確定タイミングにおける隣接電極の静電容量にオフセット値COffを加算した値を前記第2判定値C2Thとする。このため、操作検出装置80は、操作開始電極の確定タイミングにおける隣接電極の静電容量の大きさに基づいた第2判定値C2Thを容易に算出できる。
【0072】
(4)操作検出装置80は、第2判定値C2Thを第1判定値C1Thよりも大きな値としなくても、隣接電極の静電容量が増大したか否かを正しく判定できる場合には、第2判定値C2Thを第1判定値C1Thと等しい値とする。詳しくは、操作開始電極の確定タイミングにおける第2センサ電極82の静電容量C2が第1判定値C1Th未満の場合には、第2判定値C2Thを第1判定値C1Thと等しい値とする。このため、操作検出装置80は、第2判定値C2Thを適切な大きさに設定できる。
【0073】
(5)例えば、ユーザが手を接近させるセンサ電極を順に切り替える場合には、ユーザが手を接近させた後のセンサ電極、言い換えれば、相対的にユーザの手から遠ざかるセンサ電極の静電容量が大きくなることはない。また、ユーザが第1操作又は第2操作を行う場合には、ユーザの手が接近する前のセンサ電極、言い換えれば、ユーザの手から離れた位置にあるセンサ電極の静電容量が大きくなることもない。この点、操作検出装置80は、降雨などの被水の影響により、判定対象ではないセンサ電極の静電容量が上限判定値CLTh以上に大きくなる場合には、第1操作又は第2操作が行われたか否かの判定を中止する。このため、操作検出装置80は、第1操作又は第2操作を誤判定するおそれを低減できる。
【0074】
(第2実施形態)
以下、操作検出装置の第2実施形態について説明する。第2実施形態の説明では、第1実施形態と共通又は類似する部材構成について、同一の符号を付して説明を省略する。
【0075】
図6に示すように、第2実施形態において、車両10は、車両ドア30を開閉作動させるためのユーザの操作を検出する操作検出装置80Aを備える。
操作検出装置80Aは、車両ドア30の外側からユーザが操作可能な位置に配置される。詳しくは、操作検出装置80Aは、車両ドア30の内装を構成するドアトリムの内側に配置される。また、操作検出装置80Aは、車両ドア30の窓ガラス31を介して車両外側からユーザが目視できる位置に配置される。
【0076】
図6に示すように、操作検出装置80Aは、第1センサ電極81、第2センサ電極82、第3センサ電極83及び第4センサ電極84と、センサ電極81~84の検出結果に基づいてドア制御装置100に信号を出力する制御部85Aと、を備える。
【0077】
第4センサ電極84は、他のセンサ電極81~83と同様に矩形板状をなしている。第4センサ電極84の長手方向における長さは、第1センサ電極81、第2センサ電極82及び第3センサ電極83の並び方向における長さを合計した長さとなっている。第4センサ電極84は、第1センサ電極81、第2センサ電極82及び第3センサ電極83よりも上方に配置に位置している。第4センサ電極84は、板厚方向が車両上下方向を向いている。
【0078】
センサ電極81~84は、センサ電極81~84に接近した検出対象とともに擬似的なコンデンサを構成する。そのため、センサ電極81~84は、センサ電極81~84に検出対象が接近するほど、検出対象との位置関係で定まる静電容量が大きくなる。第1センサ電極81、第2センサ電極82及び第3センサ電極83は、車両外側から検出対象が接近する際に静電容量が大きくなるように、検出対象の検出範囲が車両外側に広がっている。対して、第4センサ電極84は、車両上方から検出対象が接近する際に静電容量が大きくなるように、検出対象の検出範囲がドアトリムの車両上方に広がっている。ただし、第1センサ電極81、第2センサ電極82及び第3センサ電極83の検出範囲は、ドアトリムの車両上方にも僅かに広がり、第4センサ電極84の検出範囲は、車両外側にも僅かに広がっている。
【0079】
操作検出装置80Aは、車両ドア30を開作動させるための操作として、第1操作を想定し、車両ドア30を閉作動させるための操作として、第2操作を想定する。さらに、操作検出装置80Aは、車両ドア30を開作動させるための操作として、ユーザが手を第2センサ電極82に暫くの間にわたってかざす操作を想定する。以降の説明では、ユーザが手を第2センサ電極82に暫くの間にわたってかざす操作を「長かざし操作」という。
【0080】
続いて、制御部85Aについて説明する。
制御部85Aは、開始電極判定部91と、操作判定部92と、指令部93と、校正部94と、を有する。
【0081】
校正部94は、外部環境の変化に対応するために、センサ電極81~84を校正する。詳しくは、校正部94は、校正条件が成立したとき、校正条件が成立したときのセンサ電極81~84の静電容量C1~C4を「0」として扱う。校正条件は、何れかのセンサ電極の静電容量が校正判定時間TCThにわたって、校正判定値CCTh以上又は校正判定値CCTh以下となる状況が継続する場合に成立する。以下、
図7を参照して、センサ電極81~84の校正について説明する。
【0082】
図7に示すように、センサ電極81~84の静電容量C1~C4に影響を与えるような外部環境の変化が発生することにより、第1のタイミングt31において、センサ電極81~84の静電容量C1~C4が「0」から増大し始める。外部環境の変化は、例えば、車両10が雨に当たらない環境から雨に当たる環境に移動する場合である。そして、第2のタイミングt32において、第2センサ電極82の静電容量C2が他のセンサ電極81,83,84の静電容量C1,C3,C4よりも先に校正判定値CCTh以上となる。続いて、第2のタイミングt32以降において、センサ電極81~84の静電容量C1~C4は、暫く増大した後、略一定となる。
【0083】
その後、第2のタイミングt32からの経過時間が校正判定時間TCTh以上となる第3のタイミングt33になると、全てのセンサ電極81~84の校正が実施される。つまり、センサ電極81~84において、「0」として扱う基準値が変化する。このため、第3のタイミングt33において、第1センサ電極81の静電容量C1が「0」となり、第2センサ電極82の静電容量C2が「0」となり、第3センサ電極83の静電容量C3が「0」となり、第4センサ電極84の静電容量C4が「0」となる。
【0084】
こうして、校正部94がセンサ電極81~84の校正を行うことで、降雨などの外部環境に起因して、センサ電極81~84の静電容量C1~C4が増減している場合であっても、操作検出装置80Aがユーザの操作を正しく検出できるようになる。なお、校正判定時間TCThは、例えば、数秒~10秒程度の時間とすることが好ましい。また、校正判定値CCThは、車両10が使用される環境に応じた可変値としてもよいし、事前に設定した固定値としてもよい。
【0085】
操作判定部92は、第2センサ電極82の静電容量C2が長かざし判定時間TPThにわたって長かざし判定値CPTh以上となる場合に、長かざし操作が行われたと判定する。長かざし判定時間TPThは、校正判定時間TCThよりも短く、例えば、1~数秒程度であればよい。長かざし判定値CPThは、例えば、第2判定値C2Thと同等の大きさとしてもよいし、第2判定値C2Thと異なる大きさとしてもよい。以降の説明では、本判定を「長かざし判定」という。
【0086】
指令部93は、第1操作又は長かざし操作が行われたと判定できる場合には、車両ドア30を開作動させるための開作動指令信号をドア制御装置100に出力する。一方、指令部93は、第2操作が行われたと判定できる場合には、車両ドア30を閉作動させるための閉作動指令信号をドア制御装置100に出力する。
【0087】
操作検出装置80Aの第1センサ電極81、第2センサ電極82及び第3センサ電極83は、窓ガラス31を介して車両外側を向いている。このため、第1センサ電極81、第2センサ電極82及び第3センサ電極83の静電容量C3は、例えば、窓ガラス31に水滴が付着したり窓ガラス31に沿って水滴が流れたりする場合、窓ガラス31が昇降される場合及び車両ドア30にユーザがもたれ掛かる場合など、様々な外乱によっても変化する。
【0088】
このため、開始電極判定部91は、外乱が作用する場合には、操作開始電極を確定しないことが望ましく、操作判定部92は、外乱が作用する場合には、スワイプ判定及び長かざし判定が行われたと判定しないことが望ましい。そこで、開始電極判定部91及び操作判定部92は、ユーザの操作と外乱とを区別するために、以下の複数の補助判定を実施する。
【0089】
つまり、開始電極判定部91は、開始電極判定が成立しても、以下の何れかの補助判定が成立しない場合、すなわち、ユーザの操作でないと判定される場合には、操作開始電極を確定しない。また、操作判定部92は、スワイプ判定及び長かざし判定が成立しても、以下の何れかの補助判定が成立しない場合、すなわち、ユーザの操作でないと判定される場合には、スワイプ操作及び長かざし操作が行われたと判定しない。なお、開始電極判定部91及び操作判定部92は、以下の複数の補助判定のうち、一部の補助判定のみを実施することもできる。
【0090】
以下、操作判定部92が実施する長かざし判定の補助判定について説明する。
(長かざし判定の第1補助判定)
ユーザが長かざし操作を行う場合には、ユーザの手と第2センサ電極82との間隔が略一定に保たれやすい。一方、降雨時には、第2センサ電極82の検出範囲に雨粒が頻繁に出入りしやすい。このため、ユーザが長かざし操作を行う場合には、長かざし判定時間TPTh中の第2センサ電極82の静電容量C2の変動幅が小さくなりやすく、降雨時には、長かざし判定時間TPTh中の第2センサ電極82の静電容量C2の変動幅が大きくなりやすい。
【0091】
そこで、操作判定部92は、長かざし判定中において、所定の判定時間にわたって、第2センサ電極82の静電容量C2が所定の変動範囲に収まっている場合、ユーザの操作であると判定する。一方、操作判定部92は、長かざし判定中において、所定の判定時間にわたって、第2センサ電極82の静電容量C2が所定の変動範囲に収まっていない場合、ユーザの操作でないと判定する。本判定は、例えば、ユーザの手が第2センサ電極82に接近し終わったタイミング、言い換えれば、第2センサ電極82の静電容量C2の変化速度が緩やかになったタイミングから実施される。所定の判定時間は、長かざし判定時間TPThよりも短い時間であることが好ましい。
【0092】
(長かざし判定の第2補助判定)
ユーザが長かざし操作を行う場合には、第4センサ電極84の車両外側に広がる検出範囲に比較的大きなユーザの手が存在するため、第4センサ電極84の静電容量C4が増大しやすい。一方、降雨時には、第4センサ電極84の車両外側に広がる検出範囲に小さな雨粒しか存在しないため、第4センサ電極84の静電容量C4が増大しにくい。
【0093】
そこで、操作判定部92は、長かざし判定中において、所定の判定時間にわたって、第4センサ電極84の静電容量C4が所定の判定値以上になる場合、ユーザの操作であると判定する。一方、操作判定部92は、長かざし判定中において、所定の判定時間にわたって、第4センサ電極84の静電容量C4が所定の判定値未満になる場合、ユーザの操作でないと判定する。本判定も、例えば、ユーザの手が第2センサ電極82に接近し終わったタイミング、言い換えれば、第2センサ電極82の静電容量C2の変化速度が緩やかになったタイミングから実施される。所定の判定時間は、長かざし判定時間TPThよりも短い時間であることが好ましく、所定の判定値は、長かざし判定値CPThよりも小さな値に設定されることが好ましい。
【0094】
(長かざし判定の第3補助判定)
ユーザが長かざし操作を行う場合には、ユーザが第2センサ電極82に向けて手を接近させるため、第2センサ電極82の静電容量C2のみが大きくなりやすい。一方、窓ガラス31が昇降する場合及びユーザが車両ドア30にもたれ掛かる場合には、窓ガラス31及びユーザの身体が第2センサ電極82だけでなく第1センサ電極81及び第3センサ電極83にも接近する。このため、第2センサ電極82の静電容量C2だけでなく、第1センサ電極81の静電容量C1及び第3センサ電極83の静電容量C3も大きくなりやすい。なお、降雨時にも、センサ電極81~83の静電容量C1~C3が同様に変化することがある。
【0095】
そこで、操作判定部92は、長かざし判定中において、第2センサ電極82の静電容量C2と第1センサ電極81の静電容量C1との差分である第1差分と、第2センサ電極82の静電容量C2と第3センサ電極83の静電容量C3との差分である第2差分と、を算出する。続いて、操作判定部92は、第1差分及び第2差分の双方が所定の差分判定値以上の場合、ユーザの操作であると判定し、第1差分及び第2差分の少なくとも一方が所定の差分判定値未満の場合、ユーザの操作でないと判定する。本判定は、長かざし判定時間TPTh中の任意のタイミングで実施することが好ましい。
【0096】
(長かざし判定の第4補助判定)
以上説明したように、第1補助判定及び第2補助判定が判定時間を有するのに対して、第3補助判定は判定時間を有しない。このため、ユーザが長かざし操作を行う場合には、第3補助判定の成立後に、第1補助判定及び第2補助判定が成立する。これに対し、降雨時には、センサ電極81~84の静電容量C1~C4が不規則に増減するため、仮に、第1補助判定、第2補助判定及び第3補助判定の全てが成立することがあったとしても、第1補助判定、第2補助判定及び第3補助判定の成立順序が不規則となりやすい。
【0097】
そこで、操作判定部92は、長かざし判定中において、第1補助判定、第2補助判定及び第3補助判定のうち、第3補助判定が1番目に成立する場合に、ユーザの操作であると判定する。一方、操作判定部92は、長かざし判定中において、第1補助判定、第2補助判定及び第3補助判定のうち、第3補助判定が3番目に成立する場合に、ユーザの操作でないと判定する。
【0098】
なお、操作判定部92は、長かざし判定中において、第1補助判定、第2補助判定及び第3補助判定のうち、第3補助判定が2番目に成立し、かつ、第1補助判定又は第2補助判定が3番目に成立する場合であっても、ユーザの操作であると判定してもよい。
【0099】
(長かざし判定の第5補助判定)
ユーザが長かざし操作を行うために第2センサ電極82に手を接近させている場合には、第1センサ電極81の静電容量C1及び第3センサ電極83の静電容量C3が負の値を取りにくい。この点で、上記の場合には、第1センサ電極81の静電容量C1の変化速度及び第3センサ電極83の静電容量C3の変化速度が負の値を取りにくい。一方、降雨時には、第1センサ電極81の検出範囲内に位置する窓ガラス31の表面に水滴が付着した状態で、センサ電極81~84の校正が実施される場合がある。この場合、窓ガラス31に水滴が付着していた状態の第1センサ電極81の静電容量C1が基準値となるため、第1センサ電極81の検出範囲から水滴が流れ出ると、第1センサ電極81の静電容量C1が負の値を取ることがある。この場合、第1センサ電極81の静電容量C1の変化速度も負の値を取ることがある。第3センサ電極83の静電容量C3及び第3センサ電極83の静電容量C3の変化速度についても同様である。
【0100】
そこで、操作判定部92は、長かざし判定中において、第1センサ電極81の静電容量C1及び第3センサ電極83の静電容量C3の双方が所定の判定値以上の場合、ユーザの操作であると判定する。一方、操作判定部92は、長かざし判定中において、第1センサ電極81の静電容量C1及び第3センサ電極83の静電容量C3の少なくとも一方が所定の判定値未満の場合、ユーザの操作でないと判定する。所定の判定値は、「0」としてもよいし、ノイズ等の影響を踏まえて「0」よりも小さな値に設定してもよい。
【0101】
また、操作判定部92は、長かざし判定中において、第1センサ電極81の静電容量C1の変化速度及び第3センサ電極83の静電容量C3の変化速度の双方が所定の速度判定値以上の場合、ユーザの操作であると判定する。一方、操作判定部92は、長かざし判定中において、第1センサ電極81の静電容量C1の変化速度及び第3センサ電極83の静電容量C3の変化速度の少なくとも一方が所定の速度判定値未満の場合、ユーザの操作でないと判定する。所定の速度判定値は、「0」としてもよいし、ノイズ等の影響を踏まえて「0」よりも小さな値に設定してもよい。
【0102】
(長かざし判定の第6補助判定)
ただし、降雨などの外乱が車両10に作用する場合であっても、外乱の程度が小さかったり、上記の判定値を「0」未満の値に設定したりすると、第1センサ電極81の静電容量C1及び第3センサ電極83の静電容量C3の双方が上述した判定値以上の状態が維持される場合がある。同様に、外乱の程度が小さかったり、上記の速度判定値を「0」未満の値に設定したりすると、第1センサ電極81の静電容量C1の変化速度及び第3センサ電極83の静電容量C3の変化速度の双方が上述した速度判定値以上の状態が維持される場合がある。ただし、これらの場合には、第1センサ電極81の静電容量C1及び第3センサ電極83の静電容量C3がともに負の値を取り続けやすい。
【0103】
そこで、操作判定部92は、長かざし判定中において、第1センサ電極81の静電容量C1及び第3センサ電極83の静電容量C3がともに負の値を維持する場合、ユーザの操作でないと判定する。例えば、操作判定部92は、長かざし判定中において、一定の周期ごとに第1センサ電極81の静電容量C1及び第3センサ電極83の静電容量C3を監視する。そして、操作判定部92は、長かざし判定中の全ての周期において、第1センサ電極81の静電容量C1及び第3センサ電極83の静電容量C3の双方が正の値を取らなければ、長かざし判定の第5補助判定が成立していても、ユーザの操作でないと判定する。ここで、一定の周期とは、例えば、数ミリ秒~数十ミリ秒程度とすればよい。
【0104】
(長かざし判定の第7補助判定)
操作検出装置80Aは、車両ドア30の内装を構成するドアトリムの内側に配置されるため、車両ドア30と隣り合う座席に着座するユーザがドアトリムの上に肘などを置く場合においても、長かざし判定が成立する可能性がある。ただし、車両ドア30と隣り合う座席に着座するユーザがドアトリムの上に肘などを置く場合には、ユーザの肘などが第4センサ電極84に正面から接近するため、第4センサ電極84の静電容量C4の変化速度が高速になりやすい。一方、ユーザが長かざし操作を行う場合には、ユーザの手が第4センサ電極84に正面から接近しないため、第4センサ電極84の静電容量C4の変化速度が低速になりやすい。
【0105】
そこで、操作判定部92は、長かざし判定中において、第4センサ電極84の静電容量C4の変化速度が所定の速度判定値未満の場合、車両外側からのユーザの操作であると判定する。一方、操作判定部92は、長かざし判定中において、第4センサ電極84の静電容量C4の変化速度が所定の速度判定値以上の場合、車両外側からのユーザの操作でないと判定する。本判定は、第4センサ電極84の静電容量C4の変化速度が顕著に大きくなりやすいタイミング、例えば、第2センサ電極82の静電容量C2が長かざし判定値CPTh以上となるタイミングで実施することが好ましい。なお、操作判定部92は、他の補助判定として、第4センサ電極84の静電容量C4と所定の判定値との比較により、車両外側からのユーザの操作か否かを判定してもよい。
【0106】
(長かざし判定の第8補助判定)
車両10の洗車中には、窓ガラス31が泡で覆われたり窓ガラス31に向けて放水されたりする場合がある。このため、車両10の洗車中にセンサ電極81~84の校正が実施されると、第2センサ電極82の静電容量C2が急激に増大することにより、第2センサ電極82の静電容量C2が長かざし判定値CPTh以上となることがある。言い換えれば、ユーザが長かざし操作を行うときの手の接近速度では到達できないような速度で、第2センサ電極82の静電容量C2が長かざし判定値CPTh以上に増大することがある。
【0107】
そこで、操作判定部92は、長かざし判定の開始時において、言い換えれば、第2センサ電極82が長かざし判定値CPThを超えたタイミングにおいて、第2センサ電極82の静電容量C2の変化速度が所定の速度判定値未満である場合、ユーザの操作であると判定する。一方、操作判定部92は、長かざし判定の開始時において、第2センサ電極82の静電容量C2の変化速度が所定の速度判定値以上である場合、ユーザの操作でないと判定する。
【0108】
以下、開始電極判定部91が実施する開始電極判定の補助判定及び操作判定部92が実施するスワイプ判定の補助判定について説明する。
(開始電極判定の第1補助判定)
ユーザが操作開始電極を確定させるために、第1センサ電極81又は第3センサ電極83に手を接近させる場合には、操作開始電極の静電容量が増大する一方で、操作終了電極の静電容量が増大しにくい。一方、降雨時には、第1センサ電極81、第2センサ電極82及び第3センサ電極83の静電容量C3が不規則に増減する。言い換えれば、降雨時には、操作開始電極の静電容量が増大するときに、操作終了電極の静電容量が増大することもある。
【0109】
そこで、開始電極判定部91は、開始電極判定中において、操作終了電極となるセンサ電極の静電容量が所定の判定値未満の場合、ユーザの操作であると判定する。一方、開始電極判定部91は、開始電極判定中において、操作終了電極となるセンサ電極の静電容量が所定の判定値以上の場合、ユーザの操作でないと判定する。本判定は、開始電極判定中にわたって実施してもよいし、開始電極判定中の任意のタイミングで実施してもよい。
【0110】
(開始電極判定の第2補助判定)
ユーザは、操作開始電極を確定するために、第1センサ電極81又は第3センサ電極83に手を接近させた後、第1センサ電極81又は第3センサ電極83に手を接近させた状態を維持する必要がある。つまり、操作開始電極が確定される場合、第1センサ電極81の静電容量C1又は第3センサ電極83の静電容量C3は、増大した後に一定の値を維持するため、減少することはない。一方、降雨時には、第1センサ電極81の静電容量C1又は第3センサ電極83の静電容量C3が増大したり一定の値を維持したりするのに加え、減少することもある。言い換えれば、降雨時には、第1センサ電極81の静電容量C1の変化速度又は第3センサ電極83の静電容量C3の変化速度が負の値を取ることがある。
【0111】
そこで、開始電極判定部91は、開始電極判定の対象となるセンサ電極の静電容量の変化速度が所定の速度判定値以上である場合、ユーザの操作であると判定する。一方、開始電極判定部91は、開始電極判定の対象となるセンサ電極の静電容量の変化速度が所定の速度判定値未満である場合、ユーザの操作でないと判定する。ここで、速度判定値は、「0」としてもよいし、ノイズ等の影響を踏まえて「0」よりも小さな値に設定してもよい。
【0112】
(スワイプ判定の第1補助判定)
ユーザがスワイプ操作を行う場合には、ユーザが手を動かす速度がある一定の速度範囲に収まりやすい。言い換えれば、スワイプ判定中において、隣接電極の静電容量が第2判定値C2Th以上となってから、操作終了電極の静電容量が第3判定値C3Th以上となるまでの時間がある一定の時間範囲に収まりやすい。一方、降雨時には、スワイプ判定中において、隣接電極の静電容量が第2判定値C2Th以上となってから、操作終了電極の静電容量が第3判定値C3Th以上となるまでの時間が極端に早くなることもあれば、極端に遅くなることもある。
【0113】
そこで、操作判定部92は、スワイプ判定中において、隣接電極の静電容量が第2判定値C2Th以上となってから操作終了電極の静電容量が第3判定値C3Th以上となるまでの時間が所定の時間範囲に収まる場合、ユーザの操作であると判定する。一方、操作判定部92は、スワイプ判定中において、隣接電極の静電容量が第2判定値C2Th以上となってから操作終了電極の静電容量が第3判定値C3Th以上となるまでの時間が所定の時間範囲に収まらない場合、ユーザの操作でないと判定する。
【0114】
(スワイプ判定の第2補助判定)
ユーザがスワイプ操作を行う場合には、スワイプ操作を終えるタイミングにおいて、ユーザの手は、操作終了電極に最も接近する一方で、操作開始電極及び隣接電極から離れている。このため、操作終了電極の静電容量は、スワイプ操作の確定タイミング、例えば、
図4であればステップS22が肯定判定されたタイミングで、操作開始電極の静電容量よりも隣接電極の静電容量よりも大きくなる。一方、降雨時には、操作終了電極の静電容量は、スワイプ操作の確定タイミングで、操作開始電極の静電容量よりも隣接電極の静電容量よりも大きくなるとは限らない。
【0115】
そこで、操作判定部92は、スワイプ判定におけるスワイプ操作の確定タイミングにおいて、操作終了電極の静電容量が操作開始電極の静電容量及び隣接電極の静電容量の双方よりも大きい場合、ユーザの操作であると判定する。一方、操作判定部92は、スワイプ判定におけるスワイプ操作の確定タイミングにおいて、操作終了電極の静電容量が操作開始電極の静電容量及び隣接電極の静電容量の少なくとも一方よりも小さい場合、ユーザの操作でないと判定する。
【0116】
(スワイプ判定の第3補助判定)
ユーザがスワイプ操作を行う場合には、センサ電極81~84の静電容量C1~C4が負の値を取りにくい。一方、長かざし判定の第5補助判定で記載したように、降雨時には、センサ電極81~84のキャリブレーションの実施に伴い、センサ電極81~84の静電容量C1~C4が負の値を取る場合がある。
【0117】
そこで、操作判定部92は、スワイプ判定中において、センサ電極81~83の静電容量C1~C3が所定の判定値以上の場合、ユーザの操作であると判定する。一方、操作判定部92は、スワイプ判定中において、センサ電極81~83の静電容量C1~C3が所定の判定値未満の場合、ユーザの操作でないと判定する。所定の判定値は、「0」としてもよいし、ノイズ等の影響を踏まえて「0」よりも小さな値に設定してもよい。なお、本判定は、開始電極判定中に実施することもできる。
【0118】
以上説明した各種の補助判定において、各種のパラメータとの比較対象となる判定値は、事前に実験及びシミュレーションなどに基づいて決定されることが好ましい。
第2実施形態において、制御部85Aは、長かざし判定、開始電極判定及びスワイプ判定を実施するにあたり、複数の補助判定を実施する。このため、制御部85Aは、補助判定を追加で実施する分、各種判定の精度を高めることができる。
【0119】
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・操作検出装置80,80Aにおいて、第1センサ電極81、第2センサ電極82及び第3センサ電極83の大きさは、同じでなくてもよい。この場合、センサ電極に対する検出対象の接近を判定する判定値は、センサ電極の大きさに応じて適宜に設定されることが好ましい。
【0120】
・操作検出装置80,80Aにおいて、センサ電極は2つだけ設けてもよい。この場合、一方のセンサ電極が操作開始電極となる場合、他方のセンサ電極が隣接電極かつ操作終了電極となる。
【0121】
・操作検出装置80,80Aにおいて、センサ電極は4以上設けてもよい。この場合、操作開始電極、隣接電極及び操作終了電極を除くセンサ電極の静電容量が大きくなったか否かを判定するための判定値は、適宜に設定することが好ましい。一例として当該判定値は、第1判定値C1Thと同じ値とすればよい。
【0122】
・開始電極判定部91は、第1センサ電極81及び第3センサ電極83の一方の静電容量が第1判定値C1Th以上となった場合に、静電容量が第1判定値C1Th以上となったセンサ電極を操作開始電極としてもよい。言い換えれば、第1判定時間Txは、「0秒」としてもよい。
【0123】
・操作検出装置80,80Aは、操作開始電極の確定タイミングにおける隣接電極の静電容量と第2判定値C2Thとの関係を示すマップを事前に記憶しておいてもよい。この場合、第2判定値C2Thは、操作開始電極の確定タイミングにおける隣接電極の静電容量に応じて線形に変化してもよいし、段階的に変化してもよい。
【0124】
・オフセット値COffは、第1判定値C1Thに可変値としてのオフセット値COffを加算して算出してもよい。この場合、オフセット値COffは、操作開始電極の確定タイミングにおける隣接電極の静電容量の大きさに応じた可変値とすることが好ましい。
【0125】
・第2判定値C2Thは、固定値としてもよい。この場合、第2判定値C2Thは、第1判定値C1Thよりも大きな値に設定される。
・センサ電極の大きさによっては、第1操作又は第2操作を行うためにユーザが操作開始電極となるセンサ電極に手などを接近させる際に、隣接電極となるセンサ電極だけでなく、操作終了電極となるセンサ電極の静電容量も増大する可能性がある。したがって、操作判定部92は、操作終了電極の静電容量が第1判定値C1Thよりも大きな第3判定値C3Th以上となる場合に、操作終了電極の静電容量が増大したと判定してもよい。この場合、制御部85は、第3センサ電極83の静電容量と第3判定値C3Thとに対して、
図4のステップS14~S16に相当する処理を実施することが好ましい。
【0126】
・制御部85,85Aは、ユーザの手がセンサ電極から離れた場合、スワイプ操作及び長かざし操作が中止されたと判定してもよい。例えば、制御部85,85Aは、センサ電極の静電容量の変化速度が負の値を取る場合に、ユーザの手がセンサ電極から離れたと判定すればよい。この場合、
図4に示すフローチャートにおいて、ステップS18,S21を省略することもできる。
【0127】
・車両ドア30は、スライドドアでなくてもよい。車両ドア30は、スイングドアでもよいし、バックドアでもよい。これらの場合、車両ドア30の開閉方向と第1方向D1及び第2方向D2とは対応していればよい。つまり、車両ドア30の開方向と第1方向D1とは必ずしも一致していなくてもよい。
【0128】
・開閉体は、車両ドア30でなくてもよい。開閉体は、開閉作動可能な開閉体であればよく、例えば、サンルーフパネルでもよいし、窓ガラスでもよいし、ボンネットパネルでもよい。
【0129】
・制御部85は、コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ、各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する専用のハードウェア(特定用途向け集積回路:ASIC)等の1つ以上の専用のハードウェア回路又はこれらの組み合わせを含む回路として構成し得る。プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。メモリ、すなわち記憶媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【符号の説明】
【0130】
10…車両
30…車両ドア
80,80A…操作検出装置
81…第1センサ電極
82…第2センサ電極
83…第3センサ電極
84…第4センサ電極
85,85A…制御部
91…開始電極判定部
92…操作判定部
93…指令部
C1,C2,C3…静電容量
C1Th…第1判定値
C2Th…第2判定値
C3Th…第3判定値
CLTh…上限判定値
COff…オフセット値
D1…第1方向
D2…第2方向
Tx…第1判定時間
Ty…第2判定時間