特開 2022-61853 駆動工具

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)

(12)【公報種別】公開特許公報(A)

(11)【公開番号】P2022061853

(43)【公開日】2022-04-19

(54)【発明の名称】駆動工具

(51)【国際特許分類】

   B25F 5/00 20060101AFI20220412BHJP

   B23D 49/10 20060101ALI20220412BHJP

   B23D 69/00 20060101ALI20220412BHJP

【ＦＩ】

B25F5/00 Z

B23D49/10

B23D69/00

【審査請求】未請求

【請求項の数】5

【出願形態】ＯＬ

(21)【出願番号】P 2020170055

(22)【出願日】2020-10-07

(71)【出願人】

【識別番号】303003225

【氏名又は名称】ＵＨＴ株式会社

(74)【代理人】

【識別番号】100105957

【弁理士】

【氏名又は名称】恩田 誠

(74)【代理人】

【識別番号】100068755

【弁理士】

【氏名又は名称】恩田 博宣

(72)【発明者】

【氏名】古市 和也

(72)【発明者】

【氏名】山田 俊輔

(72)【発明者】

【氏名】前沢 忠

【テーマコード（参考）】

3C040

3C064

【Ｆターム（参考）】

3C040AA12

3C040DD08

3C040GG36

3C040LL16

3C064AA06

3C064AA20

3C064AB01

3C064AC09

3C064BA01

3C064BA34

3C064BB47

3C064CB06

3C064CB42

3C064CB64

3C064CB72

(57)【要約】

【課題】使用時の振動を低減しつつ、小型化を図ることができる駆動工具を提供する。
【解決手段】駆動工具は、軸線Ｊを回転中心として回転駆動され、軸線Ｊからずれた位置に中心が位置する偏心部２５が設けられた主軸１８と、偏心部２５が挿入される長孔３５を有し、主軸１８の回転に伴って偏心部２５が長孔３５に接触しながら軸線Ｊを中心として回転移動することにより軸線Ｊと直交するＸ方向に往復直線移動され、且つ先端工具を取り付け可能な移動体３８と、Ｘ方向に往復直線移動可能に配置されたカウンターウエイト３２と、移動体３８が往復直線移動するときの移動力をカウンターウエイト３２に伝達してカウンターウエイト３２をＸ方向において移動体３８とは逆の方向に往復直線移動させる伝達機構４９とを備える。カウンターウエイト３２は、軸線Ｊ上に配置されている。
【選択図】図４

【特許請求の範囲】

【請求項1】

軸線を回転中心として回転駆動され、前記軸線からずれた位置に中心が位置する偏心部が設けられた主軸と、
前記偏心部が挿入される挿入部を有し、前記主軸の回転に伴って前記偏心部が前記挿入部に接触しながら前記軸線を中心として回転移動することにより前記軸線と直交する直交方向に往復直線移動され、且つ先端工具を取り付け可能な移動体と、
前記直交方向に往復直線移動可能に配置されたカウンターウエイトと、
前記移動体が往復直線移動するときの移動力を前記カウンターウエイトに伝達して前記カウンターウエイトを前記直交方向において前記移動体とは逆の方向に往復直線移動させる伝達機構と、
を備え、
前記カウンターウエイトは、前記軸線上に配置されていることを特徴とする駆動工具。

【請求項2】

前記伝達機構は、前記主軸の軸線方向における前記移動体と前記カウンターウエイトとの間に配置されていることを特徴とする請求項１に記載の駆動工具。

【請求項3】

前記移動体は、錘を着脱自在に取り付け可能な錘取付部を備えていることを特徴とする請求項１または請求項２に記載の駆動工具。

【請求項4】

前記偏心部は、その中心から前記主軸の径方向における前記軸線までの距離を変更可能に設けられていることを特徴とする請求項１～請求項３のうちいずれか一項に記載の駆動工具。

【請求項5】

前記移動体は、前記先端工具に衝撃が加わった場合に当該衝撃を吸収する衝撃吸収部を備えていることを特徴とする請求項１～請求項４のうちいずれか一項に記載の駆動工具。

【発明の詳細な説明】

【技術分野】

【0001】

本発明は、例えば鑢などの先端工具を往復直線移動させて使用する駆動工具に関する。

【背景技術】

【0002】

従来、この種の駆動工具として、例えば特許文献１に示す電動工具が知られている。こうした電動工具は、モーターによって回転する駆動ギアと、駆動ギアに対してカム面の長辺が互いに逆側となるように配置されるとともに駆動ギアの回転に伴って回転する２つの偏心カムと、一方の偏心カムに接続されたブレードアーバーと、他方の偏心カムに接続されたウエイト保持プレートとを備えている。

【0003】

ブレードアーバーは、工具を着脱自在に取り付け可能な工具取付部を有している。ウエイト保持プレートは、バランスウエイトを有している。そして、モーターを駆動すると、カム面の長辺が互いに逆側となるように配置された２つの偏心カムの作用により、ブレードアーバーとバランスウエイトとが前後方向において互いに逆の位置に位置するように往復直線運動を行う。このため、ブレードアーバーの前後方向での往復直線運動に基づく重心位置の移動がバランスウエイトによって打ち消されるので、ブレードアーバーの往復直線運動による振動が低減される。

【先行技術文献】

【特許文献】

【0004】

【特許文献1】特許第５８４４２０２号公報

【発明の概要】

【発明が解決しようとする課題】

【0005】

ところで、上述のような電動工具では、ブレードアーバーの往復直線運動による振動を低減できるものの、偏心カムの回転中心となる軸とバランスウエイトとが前後方向に並んで配置された構造になっている。このため、電動工具の前後方向の大きさが大きくなってしまう。

【課題を解決するための手段】

【0006】

以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
上記課題を解決する駆動工具は、軸線を回転中心として回転駆動され、前記軸線からずれた位置に中心が位置する偏心部が設けられた主軸と、前記偏心部が挿入される挿入部を有し、前記主軸の回転に伴って前記偏心部が前記挿入部に接触しながら前記軸線を中心として回転移動することにより前記軸線と直交する直交方向に往復直線移動され、且つ先端工具を取り付け可能な移動体と、前記直交方向に往復直線移動可能に配置されたカウンターウエイトと、前記移動体が往復直線移動するときの移動力を前記カウンターウエイトに伝達して前記カウンターウエイトを前記直交方向において前記移動体とは逆の方向に往復直線移動させる伝達機構と、を備え、前記カウンターウエイトは、前記軸線上に配置されていることを要旨とする。

【0007】

この構成によれば、移動体が主軸の軸線と直交する直交方向で往復直線移動するときの移動力によってカウンターウエイトが当該直交方向において移動体とは逆の方向に往復直線移動する。このため、移動体の往復直線移動による慣性力をカウンターウエイトによって打ち消すことができるので、移動体の往復直線移動によって発生する振動を低減できる。加えて、カウンターウエイトが主軸の軸線上に配置されているため、カウンターウエイトが主軸と上記直交方向で並んで配置される場合に比べて、当該直交方向における駆動工具の大きさを小さくすることができる。したがって、使用時の振動を低減しつつ、小型化を図ることができる。

【0008】

上記駆動工具において、前記伝達機構は、前記主軸の軸線方向における前記移動体と前記カウンターウエイトとの間に配置されていることが好ましい。
この構成によれば、移動体、カウンターウエイト、及び伝達機構が主軸の軸線方向において積層して配置されるため、駆動工具における上記直交方向の大きさをより一層小さくすることができる。

【0009】

上記駆動工具において、前記移動体は、錘を着脱自在に取り付け可能な錘取付部を備えていることが好ましい。
この構成によれば、先端工具の重量が変わっても、先端工具の重量に合わせて移動体に適切な重量の錘を取り付けるだけで、先端工具及び移動体と、カウンターウエイトとの重量バランスを容易に維持できる。

【0010】

上記駆動工具において、前記偏心部は、その中心から前記主軸の径方向における前記軸線までの距離を変更可能に設けられていることが好ましい。
この構成によれば、偏心部の中心から主軸の径方向における主軸の軸線までの距離を変更することで、移動体が往復直線移動する際の振幅を変更することができる。

【0011】

上記駆動工具において、前記移動体は、前記先端工具に衝撃が加わった場合に当該衝撃を吸収する衝撃吸収部を備えていることが好ましい。
この構成によれば、移動体に取り付けられた先端工具に衝撃が加わった場合に当該衝撃を衝撃吸収部によって吸収できるので、当該衝撃が移動体側から主軸側へ伝わることを抑制できる。

【発明の効果】

【0012】

本発明によれば、使用時の振動を低減しつつ、小型化を図ることができる。

【図面の簡単な説明】

【0013】

【図1】一実施形態の駆動工具の斜視図。

【図2】駆動工具の本体ケース内とその周辺を示す斜視図。

【図3】主軸の側面図。

【図4】本体ケース内を後側から見たときの斜視図。

【図5】カウンターウエイトの斜視図。

【図6】カウンターウエイトと伝達機構との位置関係を示す斜視図。

【図7】移動体が前側に移動したときの状態を示す平面図。

【図8】移動体が後ろ側に移動したときの状態を示す平面図。

【図9】変更例の主軸の斜視図。

【図10】図９の底面図。

【図11】変更例の先端工具支持部の一部を示す断面図。

【図12】図１１において板ばねが収縮したときの状態を示す断面図。

【図13】変更例の伝達機構の取り付け状態を示す斜視図。

【図14】図１３の伝達機構を示す斜視図。

【図15】変更例の移動体の要部とその周辺を示す断面図。

【図16】図１５の分解斜視図。

【発明を実施するための形態】

【0014】

以下、駆動工具の一実施形態について図面を参照して説明する。
図１に示すように、駆動工具１１は、ブロック状の本体部１２と、本体部１２の一側部における上部に連結された円筒状の把持部１３と、本体部１２における把持部１３が連結された側とは反対側の側部の下部に位置して本体部１２内から真っ直ぐに突出して延びる円筒状の先端工具支持部１４とを備えている。先端工具支持部１４の先端部には、例えば鑢や鋸などの先端工具１５が着脱自在に取り付け可能な先端工具取付部１６が設けられている。

【0015】

以下、図１の駆動工具１１における先端工具取付部１６が位置する側の方向を前方としたときの前後方向をＸ方向、左右方向をＹ方向、上下方向（鉛直方向）をＺ方向として説明する。Ｘ方向、Ｙ方向、及びＺ方向は、互いに直交する方向である。したがって、上述した先端工具支持部１４及び把持部１３は、共にＸ方向に延びている。

【0016】

図１及び図２に示すように、本体部１２は、本体ケース１７と、本体ケース１７内に収容されたＺ方向に延びる主軸１８とを備えている。本体ケース１７は、上ケース１９と、上ケース１９の下側に配置された中ケース２０と、中ケース２０の下側に配置された下ケース２１とを備えている。上ケース１９及び中ケース２０は、主軸１８をそのＺ方向に延びる軸線Ｊを中心として回転可能に支持している。

【0017】

主軸１８におけるＺ方向の中央部には、主軸１８と共に軸線Ｊを回転中心として回転する第１傘歯車２２が設けられている。把持部１３における本体部１２側の端部には、Ｘ方向に延びる軸線を中心として回転する第２傘歯車２３が設けられている。第２傘歯車２３の径は、第１傘歯車２２の径よりも小さくなっている。把持部１３における本体部１２側とは反対側の端部には、エアコンプレッサ（図示略）から延びるエアホース（図示略）の先端部が接続される接続部２４が設けられている。

【0018】

把持部１３内には、エアコンプレッサ（図示略）からエアホース（図示略）及び接続部２４を介して供給される圧縮空気を利用して第２傘歯車２３を回転駆動する駆動機構（図示略）が設けられている。そして、第２傘歯車２３が回転駆動されると、第２傘歯車２３の回転力が第１傘歯車２２を介して主軸１８に伝達されて主軸１８がその軸線Ｊを回転中心として回転駆動される。この場合、第２傘歯車２３の径は第１傘歯車２２の径よりも小さいので、第１傘歯車２２及び主軸１８の回転速度は第２傘歯車２３の回転速度よりも遅くなる。

【0019】

図２及び図３に示すように、主軸１８の下端には、軸線Ｊから主軸１８の径方向に距離Ｄだけずれた位置に中心が位置する円柱状の偏心部２５が設けられている。本実施形態における偏心部２５は、一例として、主軸１８の下面に一体形成された円柱状の凸部２６と、凸部２６に対して内輪２７が締まり嵌めによって嵌合した円環状のベアリング２８とによって構成されている。ベアリング２８は、複数のボール（図示略）が内輪２７と外輪２９との間に配置された構造になっており、内輪２７に対して外輪２９が回転するようになっている。

【0020】

凸部２６の中心とベアリング２８の中心とは、一致している。主軸１８の軸線Ｊと偏心部２５の軸線とは、平行になっている。したがって、主軸１８が軸線Ｊを中心として回転すると、偏心部２５が主軸１８の軸線Ｊを中心とした円軌道に沿って移動する。主軸１８の上端部における偏心部２５に対して軸線Ｊを中心として１８０°位相をずらした位置には、主軸１８の回転バランスをとるためのバランスウエイト３０が設けられている。

【0021】

図１及び図２に示すように、主軸１８の下端部と対応する位置には、略矩形状の移動板３１が配置されている。移動板３１の下側には移動板３１と積層されるように略矩形板状のカウンターウエイト３２が配置されている。すなわち、カウンターウエイト３２は、主軸１８の軸線Ｊ上に配置されている。移動板３１及びカウンターウエイト３２のＹ方向の両側には、これらを挟むようにＸ方向に延びる一対の矩形状をなすガイド板３３が配置されている。一対のガイド板３３は、下ケース２１に固定されている。

【0022】

一対のガイド板３３の内面には、Ｘ方向に延びるガイド溝３４が上下に並ぶようにそれぞれ形成されている。すなわち、一対のガイド板３３の内面には、ガイド溝３４が２つずつ形成されている。一対のガイド板３３の上側のガイド溝３４には、移動板３１のＹ方向の両端部がそれぞれ摺動可能に挿入されている。一対のガイド板３３の下側のガイド溝３４には、カウンターウエイト３２のＹ方向の両端部がそれぞれ摺動可能に挿入されている。したがって、移動板３１及びカウンターウエイト３２は、一対のガイド板３３により、主軸１８の軸線Ｊと直交する直交方向であるＸ方向に往復直線移動可能に支持されている。

【0023】

図２及び図４に示すように、移動板３１の中央部には、偏心部２５が挿入される挿入部の一例としてのＹ方向に延びる長孔３５が貫通して形成されている。長孔３５は、Ｙ方向の長さが偏心部２５の径よりも長くなっており、Ｘ方向の長さが偏心部２５の径とほぼ同じになっている。長孔３５は、Ｚ方向から見て、Ｙ方向の両側の輪郭がＹ方向の外側に膨らむように湾曲した半円弧状をなしており、Ｘ方向の両側の輪郭がＹ方向に延びる直線状をなしている。

【0024】

移動板３１の前端部におけるＹ方向の中央部には、前方に向かって突出するブロック状の突出部３６が設けられている。突出部３６の下部は、移動板３１の下面よりも下側に突出しており、長孔３５の近傍まで延びている。突出部３６の前面の穴３７には、先端側に先端工具取付部１６（図１参照）が設けられた先端工具支持部１４の基端側が連結されている。本実施形態では、移動板３１、先端工具支持部１４、及び先端工具取付部１６（図１参照）によって移動体３８が構成されている。

【0025】

図２及び図５に示すように、カウンターウエイト３２の上面には、Ｘ方向の中央部に段差３９が形成されている。段差３９は、Ｙ方向の中央部が前側に膨らむように湾曲して円弧状に延びている。カウンターウエイト３２の上面は、段差３９よりも前側の領域の高さが段差３９よりも後側の領域の高さよりも高くなっている。カウンターウエイト３２の上面の段差３９よりも前側の領域におけるＹ方向の中央部には、Ｘ方向に延びる溝４０が形成されている。

【0026】

溝４０は、カウンターウエイト３２の上面における段差３９から前端まで延びている。溝４０には、移動板３１の突出部３６の下部が収容されている。溝４０の底面の高さは、カウンターウエイト３２の上面における段差３９よりも後側の領域の高さよりも若干高くなっている。

【0027】

図４及び図５に示すように、カウンターウエイト３２の後端におけるＹ方向の中央部には、前方に向かって真っ直ぐに延びるＵ字状の切欠溝４１が形成されている。切欠溝４１の前端は、段差３９の近傍まで達している。カウンターウエイト３２の上面の後部における切欠溝４１の右側の位置には、下側ピン孔４２が貫通して形成されている。下側ピン孔４２には、略円柱状の下側ピン４３の基端部が嵌合している。下側ピン４３における先端側の部分は、上方に向かって突出している。下側ピン４３の上端の高さは、段差３９の上端の高さと同じになっている。

【0028】

図４及び図６に示すように、カウンターウエイト３２の切欠溝４１には、Ｚ方向に延びる支持軸４４が挿通されている。支持軸４４は、カウンターウエイト３２と接触しないように配置されている。支持軸４４は、下端側が下ケース２１（図１参照）に固定されている。支持軸４４の上端の高さは、段差３９の上端の高さと同じになっている。支持軸４４の上端部には、円環状の回動部材４５が回動可能に支持されている。

【0029】

すなわち、支持軸４４は、支持軸４４を回動中心として回動部材４５を正逆両方向に回動可能に支持している。回動部材４５の上面の高さは、段差３９の上端の高さと同じになっている。回動部材４５は、移動板３１及びカウンターウエイト３２に対して接触しないように配置されている。

【0030】

移動板３１の左後端部には、上側ピン孔４６が貫通して形成されている。上側ピン孔４６には、略円柱状の上側ピン４７の基端部が嵌合している。上側ピン４７における先端側の部分は、下方に向かって突出している。上側ピン４７の下端の高さは、回動部材４５の下面の高さと同じになっている。回動部材４５の周縁部には、２つのＵ字状の切欠部４８が形成されている。

【0031】

２つの切欠部４８は、回動部材４５の中心を挟んで互いに対向する位置に配置されている。すなわち、２つの切欠部４８は、回動部材４５の中心に対して互いに位相が１８０°ずれた位置に配置されている。２つの切欠部４８のうち、一方には上側ピン４７における先端側の部分が挿入され、他方には下側ピン４３における先端側の部分が挿入されている。そして、移動板３１がＸ方向に往復直線移動されると、移動板３１の移動力が上側ピン４７、回動部材４５、及び下側ピン４３を介してカウンターウエイト３２に伝達され、カウンターウエイト３２がＸ方向において移動板３１とは逆の方向に往復直線移動される。

【0032】

本実施形態では、一例として、回動部材４５、上側ピン４７、及び下側ピン４３により、移動板３１がＸ方向に往復直線移動するときの移動力をカウンターウエイト３２に伝達してカウンターウエイト３２をＸ方向において移動板３１とは逆の方向に往復直線移動させる伝達機構４９が構成されている。なお、本実施形態の伝達機構４９は、一例として、主軸１８の軸線方向であるＺ方向における移動板３１とカウンターウエイト３２との間に配置されている。

【0033】

次に、駆動工具１１の作用について説明する。
エアコンプレッサ（図示略）から供給される圧縮空気の圧力によって第２傘歯車２３が回転駆動されると、第２傘歯車２３の回転力が第１傘歯車２２を介して主軸１８に伝達されて主軸１８がその軸線Ｊを回転中心として回転駆動される。すると、偏心部２５は、主軸１８の軸線Ｊを中心とした円軌道に沿って移動される。すなわち、偏心部２５は、主軸１８の軸線Ｊを中心として回転移動（公転）する。

【0034】

このとき、主軸１８の軸線Ｊからの偏心部２５の中心位置のずれによって生じる主軸１８の回転時のアンバランスは、バランスウエイト３０によって抑制される。このため、主軸１８の軸線Ｊを中心とした回転が安定する。そして、偏心部２５が主軸１８の軸線Ｊを中心として回転移動すると、偏心部２５を構成するベアリング２８の外輪２９が移動板３１の長孔３５の内面に接触しながら回転する。

【0035】

この場合、偏心部２５は、長孔３５の内面に対して、Ｘ方向において接触することができるが、Ｙ方向において接触することができない。すなわち、偏心部２５は、長孔３５の内面に対して、Ｘ方向において押圧力を付与することができるが、Ｙ方向において押圧力を付与することができない。このため、偏心部２５は、主軸１８の軸線Ｊを中心として回転移動すると、長孔３５の内面において移動板３１をＸ方向における前方及び後方に向かって交互に押圧する。

【0036】

すると、移動板３１は、先端工具支持部１４、先端工具支持部１４に設けられた先端工具取付部１６、及び先端工具取付部１６に取り付けられた先端工具１５と一緒にＸ方向に往復直線移動する。すなわち、移動体３８と先端工具１５とが一緒にＸ方向に往復直線移動する。これにより、先端工具１５の機能が発揮される。

【0037】

この場合、図７に示すように、移動板３１が偏心部２５によって前方に押圧されて所定距離だけ前方に移動されると、移動板３１の移動分と同じ所定距離だけ上側ピン４７も前方に移動する。この上側ピン４７の前方への所定距離の移動により、回動部材４５が図７において時計回り方向に所定角度だけ回動される。この回動部材４５の時計回り方向への所定角度の回動により、下側ピン４３が上側ピン４７の前方への所定距離と同じ距離だけ後方に移動される。下側ピン４３が所定距離だけ後方に移動されると、下側ピン４３の移動分と同じ所定距離だけカウンターウエイト３２も後方に移動する。

【0038】

一方、図８に示すように、移動板３１が偏心部２５によって後方に押圧されて所定距離だけ後方に移動されると、移動板３１の移動分と同じ所定距離だけ上側ピン４７も後方に移動する。この上側ピン４７の後方への所定距離の移動により、回動部材４５が図８において反時計回り方向に所定角度だけ回動される。この回動部材４５の反時計回り方向への所定角度の回動により、下側ピン４３が上側ピン４７の後方への所定距離と同じ距離だけ前方に移動される。下側ピン４３が所定距離だけ前方に移動されると、下側ピン４３の移動分と同じ所定距離だけカウンターウエイト３２も前方に移動する。

【0039】

このように、先端工具１５が取り付けられた移動体３８とカウンターウエイト３２とは、Ｘ方向（前後方向）において互いに逆の方向に往復直線移動する。このため、先端工具１５が取り付けられた移動体３８の往復直線移動による慣性力がカウンターウエイト３２によって打ち消される。したがって、先端工具１５が取り付けられた移動体３８の往復直線移動によって発生する振動が低減される。

【0040】

以上詳述した実施形態によれば、次のような効果が発揮される。
（１）駆動工具１１は、軸線Ｊを回転中心として回転駆動され、軸線Ｊからずれた位置に中心が位置する偏心部２５が設けられた主軸１８と、偏心部２５が挿入される長孔３５を有し、主軸１８の回転に伴って偏心部２５が長孔３５の内面に接触しながら軸線Ｊを中心として回転移動することにより軸線Ｊと直交するＸ方向に往復直線移動され、且つ先端工具１５を取り付け可能な移動体３８と、Ｘ方向に往復直線移動可能に配置されたカウンターウエイト３２と、移動体３８が往復直線移動するときの移動力をカウンターウエイト３２に伝達してカウンターウエイト３２をＸ方向において移動体３８とは逆の方向に往復直線移動させる伝達機構４９とを備えている。カウンターウエイト３２は、主軸１８の軸線Ｊ上に配置されている。この構成によれば、移動体３８が主軸１８の軸線Ｊと直交するＸ方向で往復直線移動するときの移動力によってカウンターウエイト３２がＸ方向において移動体３８とは逆の方向に往復直線移動する。このため、移動体３８の往復直線移動による慣性力をカウンターウエイト３２によって打ち消すことができるので、移動体３８の往復直線移動によって発生する振動を低減できる。加えて、カウンターウエイト３２が主軸１８の軸線Ｊ上に配置されているため、カウンターウエイト３２が主軸１８とＸ方向で並んで配置される場合に比べて、Ｘ方向における本体部１２の大きさを小さくすることができる。したがって、使用時の振動を低減しつつ、小型化を図ることができる駆動工具１１を提供できる。

【0041】

（２）駆動工具１１において、伝達機構４９は、主軸１８の軸線方向であるＺ方向における移動板３１（移動体３８）とカウンターウエイト３２との間に配置されている。この構成によれば、移動板３１、カウンターウエイト３２、及び伝達機構４９が主軸１８の軸線方向であるＺ方向において積層して配置されるため、本体部１２におけるＸ方向の大きさをより一層小さくすることができ、ひいては駆動工具１１の小型化に寄与できる。

【0042】

（変更例）
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。また、上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。

【0043】

・図３、図９及び図１０に示すように、偏心部２５の凸部２６は、主軸１８の下面に対して凸部２６の中心から主軸１８の径方向における軸線Ｊまでの距離Ｄを変更可能に設けられていてもよい。例えば、凸部２６に雄ねじ部５０を形成し、主軸１８の下面に凸部２６の雄ねじ部５０が螺合可能な雌ねじ孔５１を複数（ここでは一例として４つ）設けるようにしてもよい。この場合、複数の雌ねじ孔５１は、主軸１８の径方向における軸線Ｊからの距離が互いに異なるように配置されている。このようにすれば、偏心部２５の凸部２６を螺合させる雌ねじ孔５１を変更することで、偏心部２５の凸部２６の中心から主軸１８の径方向における主軸１８の軸線Ｊまでの距離を変更することができる。このため、移動体３８が往復直線移動する際の振幅（ストローク）を変更することができる。

【0044】

・図１及び図１１に示すように、移動体３８の先端工具支持部１４は、先端工具１５に対してＸ方向における前方からの衝撃が加わった場合に当該衝撃を吸収する衝撃吸収部５２を備えていてもよい。この場合、先端工具支持部１４は、円柱状の第１部材５３と、第１部材５３におけるフランジ５４を有した後端部５５が摺動可能に挿入される円筒状の第２部材５６と、第１部材５３のフランジ５４と第２部材５６の前端面との間に衝撃吸収部５２の一例として配置された複数（ここでは一例として２つ）の円環状の板ばね５７と、第２部材５６内に設けられて第２部材５６から第１部材５３の後端部５５が抜けないようにするためのストッパー機構５８とを備えている。

【0045】

各板ばね５７には、第１部材５３の後端部５５が挿通されている。フランジ５４の外径は第２部材５６の外径と同じになっている。ストッパー機構５８は、中心部に貫通孔５９を有して第２部材５６内に固定された円板状の隔壁６０と、貫通孔５９に摺動可能に挿通された状態で前端部が第１部材５３の後端部５５と例えば凹凸嵌合によって連結された略円柱状の挿通部材６１とを備えている。挿通部材６１の後端部には貫通孔５９よりも径が大きい円板状の拡径部６２が形成され、拡径部６２は隔壁６０の後面に接触している。

【0046】

そして、図１及び図１１に示すように例えば先端工具１５に対してＸ方向における前方からの衝撃が加わった場合には、図１２に示すように各板ばね５７が収縮するように弾性変形することで、当該衝撃が吸収される。このとき、第１部材５３は挿通部材６１と一緒に後方へ移動し、挿通部材６１の拡径部６２は隔壁６０の後面から離れる。このように、移動体３８に取り付けられた先端工具１５に前方から衝撃が加わった場合に当該衝撃を衝撃吸収部５２によって吸収できるので、当該衝撃が移動体３８側から主軸１８側へ伝わることを抑制できる。

【0047】

・図１３及び図１４に示すように、伝達機構４９は、伝達機構６３に変更してもよい。伝達機構６３は、移動板３１の後部に設けられたＹ方向に延びる上軸６４と、カウンターウエイト３２の後部に設けられたＹ方向に延びる下軸６５と、Ｙ方向に延びるとともに中央部に略直方体状の係合部６６が設けられた中心軸６７とによって構成されている。係合部６６の長手方向における両端部には、上軸６４及び下軸６５がそれぞれ挿入されるＵ字状の切欠凹部６８が形成されている。２つの切欠凹部６８は、中心軸６７を挟んで対向している。中心軸６７の両端部は、一対のガイド板３３（図２参照）によってそれぞれ回転可能に支持される。このようにすれば、移動体３８が往復直線移動するときの移動力をカウンターウエイト３２に対して伝達機構４９よりも効率よく伝達することができる。

【0048】

・伝達機構４９は、必ずしも主軸１８の軸線方向であるＺ方向における移動板３１（移動体３８）とカウンターウエイト３２との間に配置する必要はない。
・上側ピン４７及び下側ピン４３は、上記実施形態のような片持ち支持ではなく、両持ち支持するように構成してもよい。

【0049】

・挿入部は、長孔３５に限らず、凹部や切欠溝によって構成してもよい。
・ベアリング２８を省略し、偏心部２５を凸部２６のみによって構成してもよい。この場合、凸部２６の外径をベアリング２８と同じ程度まで大きくすることが好ましい。

【0050】

・カウンターウエイト３２は、錘が着脱自在に取り付けられる構成にしてもよい。このようにすれば、カウンターウエイト３２に所望の重量の錘を取り付けることができるので、カウンターウエイト３２の重量を容易に調整できる。

【0051】

・図１５及び図１６に示すように、移動体３８を構成する先端工具支持部１４は、錘６９を着脱自在に取り付け可能な錘取付部の一例としての錘収容部７０を備えていてもよい。この場合、錘収容部７０は、複数（図１５では一例として３つ）の円柱状の錘６９を収容可能な円筒状の先端工具支持部１４の内部空間によって構成される。先端工具支持部１４の錘収容部７０に対する錘６９の着脱作業は、図１６に示すように、先端工具支持部１４の先端部から先端工具取付部１６を取り外した状態で行われる。つまり、先端工具支持部１４の先端開口から錘収容部７０に対して錘６９を入れたり出したりすることによって錘収容部７０に対して錘６９が着脱される。このようにすれば、先端工具１５の重量が変わっても、先端工具１５の重量に合わせて先端工具支持部１４の錘収容部７０に適切な重量（数）の錘６９を収容するだけで、先端工具１５及び移動体３８と、カウンターウエイト３２との重量バランスを容易に維持できる。なお、カウンターウエイト３２の重量は、予め重くしておくことが好ましい。

【0052】

・移動体３８を構成する先端工具取付部１６は、錘を着脱自在に取り付け可能な錘取付部を備えていてもよい。この場合、一例として、錘取付部を雌ねじ孔として先端工具取付部１６に形成するとともに当該雌ねじ孔と螺合可能な雄ねじ部を錘に形成し、錘の雄ねじ部を先端工具取付部１６の雌ねじ孔に螺入することによって錘が先端工具取付部１６に対して着脱自在に取り付けられる構成にしてもよい。

【0053】

・移動体３８を構成する移動板３１は、錘を着脱自在に取り付け可能な錘取付部を備えていてもよい。この場合、一例として、錘取付部を雌ねじ孔として移動板３１に形成するとともに当該雌ねじ孔と螺合可能な雄ねじ部を錘に形成し、錘の雄ねじ部を移動板３１の雌ねじ孔に螺入することによって錘が移動板３１に対して着脱自在に取り付けられる構成にしてもよい。

【0054】

・第２傘歯車２３は、例えば電動モーターを利用して回転駆動されるように構成してもよい。

【符号の説明】

【0055】

１１…駆動工具
１２…本体部
１３…把持部
１４…先端工具支持部
１５…先端工具
１６…先端工具取付部
１７…本体ケース
１８…主軸
１９…上ケース
２０…中ケース
２１…下ケース
２２…第１傘歯車
２３…第２傘歯車
２４…接続部
２５…偏心部
２６…凸部
２７…内輪
２８…ベアリング
２９…外輪
３０…バランスウエイト
３１…移動板
３２…カウンターウエイト
３３…ガイド板
３４…ガイド溝
３５…長孔
３６…突出部
３７…穴
３８…移動体
３９…段差
４０…溝
４１…切欠溝
４２…下側ピン孔
４３…下側ピン
４４…支持軸
４５…回動部材
４６…上側ピン孔
４７…上側ピン
４８…切欠部
４９，６３…伝達機構
５０…雄ねじ部
５１…雌ねじ孔
５２…衝撃吸収部
５３…第１部材
５４…フランジ
５５…後端部
５６…第２部材
５７…板ばね
５８…ストッパー機構
５９…貫通孔
６０…隔壁
６１…挿通部材
６２…拡径部
６４…上軸
６５…下軸
６６…係合部
６７…中心軸
６８…切欠凹部
６９…錘
７０…錘取付部の一例としての錘収容部
Ｄ …距離
Ｊ …軸線

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】

【図16】