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  • 特開-不燃性磁着パネルおよびその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061892
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】不燃性磁着パネルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20220412BHJP
   E04F 13/12 20060101ALI20220412BHJP
   B32B 15/12 20060101ALI20220412BHJP
   D21H 27/30 20060101ALI20220412BHJP
   D21H 21/34 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
E04F13/08 A
E04F13/12 A
B32B15/12
D21H27/30 A
D21H21/34
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020170136
(22)【出願日】2020-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】515277827
【氏名又は名称】株式会社ラ・ポルタ
(71)【出願人】
【識別番号】397075788
【氏名又は名称】角林商事株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002804
【氏名又は名称】特許業務法人フェニックス特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 治士
【テーマコード(参考)】
2E110
4F100
4L055
【Fターム(参考)】
2E110AA02
2E110AA42
2E110AB04
2E110AB23
2E110BA02
2E110DA12
2E110GA15W
2E110GA28Z
2E110GA32W
2E110GB02W
2E110GB54Z
2E110GB63X
4F100AB03A
4F100BA02
4F100CA08B
4F100DG10B
4F100EH46
4F100EJ82
4F100EJ86
4F100GB90
4F100JG06A
4F100JJ07B
4F100JK17A
4F100YY00A
4F100YY00B
4L055AH26
4L055AJ01
4L055BD16
4L055BE10
4L055EA08
4L055FA30
4L055GA21
4L055GA50
(57)【要約】
【課題】 軽量かつ薄型で可撓性を有しており、コンパクトに巻き取ることができて建築現場での取り扱いが容易で運搬性や施工性に優れており、かつ、温度上昇を抑制した確実な不燃性を備えた不燃性磁着パネルを提供すること。
【解決手段】 マグネットが磁着可能で、かつ、可撓性を有する厚みの鋼板と、不燃剤が含浸した板紙材とを貼り合わせて構成するという技術的手段を採用した。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネットが磁着可能で、かつ、可撓性を有する厚みの鋼板と、
不燃剤が含浸した板紙材とが貼り合わされて構成されていることを特徴とする不燃性磁着パネル。
【請求項2】
前記板紙材が漉き合わせにより抄造された複層構造であることを特徴とする請求項1記載の不燃性磁着パネル。
【請求項3】
前記板紙材の厚みが0.5~1.5mmであり、かつ、前記鋼板の厚みが0.2~0.5mmであることを特徴とする請求項1または2記載の不燃性磁着パネル。
【請求項4】
浸漬状態で不燃剤を含ませたロールによって、板紙材に不燃剤を塗布して含浸させ、乾燥させた後、この板紙材と鋼板とを貼り合わせることを特徴とする不燃性磁着パネルの製造方法。
【請求項5】
前記板紙材を重ね漉きにより抄造して複層構造にすることを特徴とする請求項4記載の不燃性磁着パネルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁着パネルの改良、更に詳しくは、軽量かつ薄型で可撓性を有しており、コンパクトに巻き取ることができて建築現場での取り扱いが容易で運搬性や施工性に優れており、かつ、温度上昇を抑制した確実な不燃性を備えた不燃性磁着パネルおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、マグネットの磁力を利用して、メモやチラシ等の掲示物を壁面に留めることが広く行われており、また、マグネット付き小物も多数販売されているが、室内等において、マグネットを直接、磁着可能な壁面は限られており、例えばホワイトボード等を別途準備するか、冷蔵庫やスチール製本棚や机等の壁面を利用するより仕方がなかったことから、本件出願人は、マグネットを磁着可能な建築用の壁材を提案している(特許文献1参照)。
【0003】
ところで、かかるマグネットを磁着可能な壁材が建築用材料として採用されるためには、その壁材が所定の不燃性基準(例えば、ISO5660-1:コーンカロリーメーター発熱性試験、20分間の加熱時間で、(1)総発熱量8MJ/m以下、(2)最高発熱速度が10秒を超えて連続して200kw/mを超えることがないこと、(3)防炎上有害な裏面まで貫通する亀裂および穴がないこと)を満たす必要がある。
【0004】
従来、このような不燃性基準を満たすパネル材として、セメント等の窯業系の不燃性基材を鋼板と貼り合わせて構成したものがあるが、単に不燃性基材同士を一体にしているに過ぎない。また、パネル材の大きさは、一般的には横3尺×縦6尺(横910mm×縦1820mm)あるいは横3尺×縦8尺(横910mm×縦2420mm)であるため、平らな一枚物では場所も取るし重量でもあることから、建築現場での取り扱いが面倒で運搬性や施工性も悪いという問題がある。
【0005】
また、不燃剤を板紙材等に含浸させたとしても、あまりに高温になってしまえば、結局は燃焼してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2019-90235号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の磁着パネルに上記のような問題があったことに鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、軽量かつ薄型で可撓性を有しており、コンパクトに巻き取ることができて建築現場での取り扱いが容易で運搬性や施工性に優れており、かつ、温度上昇を抑制した確実な不燃性を備えた不燃性磁着パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者が上記技術的課題を解決するために採用した手段を、添付図面を参照して説明すれば、次のとおりである。
【0009】
即ち、本発明は、マグネットが磁着可能で、かつ、可撓性を有する厚みの鋼板と、不燃剤が含浸した板紙材とを貼り合わせて構成するという技術的手段を採用したことによって、不燃性磁着パネルを完成させた。
【0010】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、前記板紙材を漉き合わせにより抄造された複層構造にするという技術的手段を採用することができる。
【0011】
更にまた、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、前記板紙材の厚みを0.5~1.5mmにして、かつ、前記鋼板の厚みを0.2~0.5mmにするという技術的手段を採用することができる。
【0012】
また、本発明は、浸漬状態で不燃剤を含ませたロールによって、板紙材に不燃剤を塗布して含浸させ、乾燥させた後、この板紙材と鋼板とを貼り合わせるという技術的手段を採用することによって、不燃性磁着パネルの製造方法を完成させた。
【0013】
また、本発明は、上記課題を解決するために、必要に応じて上記手段に加え、前記板紙材を重ね漉きにより抄造して複層構造にするという技術的手段を採用することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、マグネットが磁着可能で、かつ、可撓性を有する厚みの鋼板と、不燃剤が含浸した板紙材とを貼り合わせて構成したことによって、軽量かつ薄型で可撓性を有しているために、コンパクトに巻き取ることができて建築現場での取り扱いが容易で運搬性や施工性に優れている。
【0015】
即ち、板紙材を貼り合わせて一体に構成しているため、パネルを曲げる力がかかっても力が分散されて撓み、鋼板単独やガラス質のホーローを積層したパネル材のように、局部的に力を受けて塑性変形(所謂「腰折れ」)を起こすようなことがないので、非常に取り扱いやすい。
【0016】
また、丸ノコ等の電動工具でパネルを切断する場合において、鋼板の弾性的な振動を吸収して抑制することができるので、きれいに切断することができ、作業を円滑に行うことができる。
【0017】
更にまた、パネルを巻き取ることによって約40cm×40cm×90cmに収めることができるため、宅配便でも対応できるサイズに梱包することができるし、マンション等において階段を使用しなくてもエレベーターにも載せることができることから、搬入や運搬が容易になる。
【0018】
また、マグネットを磁着可能な鋼板を備えているので、不燃性磁着パネルを壁下地材等に設置した場合、鋼板に対してマグネットを磁着させることができ、壁面の場所を選ばず、所望の位置に掲示物等をマグネットで留めることが可能となる。
【0019】
更にまた、不燃剤が板紙材に含浸しており、かつ、鋼板によるガードによって発熱量が抑制されることによって、板紙材の温度上昇を抑えて燃焼を防止することができるために確実な不燃性を備えており、他の不燃性部材を貼り合わせて付加しなくても、本発明のパネル単独で不燃性基準を満たすことができる。しかも、板紙材のみの場合よりも膨潤量および膨潤率が小さくなり、パネルの反りや変形を防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態の不燃性磁着パネルの部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態を図1に基づいて説明する。図中、符号1で指示するものは鋼板であり、符号2で指示するものは板紙材である。
【0022】
本実施形態の不燃性磁着パネルは、マグネットが磁着可能で、かつ、可撓性を有する厚みの鋼板1と、不燃剤が含浸した板紙材2とが貼り合わされて構成されている。
【0023】
具体的には、鋼板1は、横3尺×縦6尺(横910mm×縦1820mm)あるいは横3尺×縦8尺(横910mm×縦2420mm)で、厚みは0.2~0.5mmが好ましい(より好ましくは0.3mm程度)。0.2mmより小さいと、必要なマグネット磁着力が得られず、0.5mmより大きいと、パネルが重くなり取り扱い性を損ない、また、電動カッターによる現場切断が困難になり施工性を損なうからである。
【0024】
また、鋼板1の材料には溶融亜鉛メッキ鋼板を採用することが好ましく、耐食性、防錆性、塗装性、溶接性、成形性、加工性などに優れている。亜鉛メッキ被膜の成形は、高温で加工処理する通常の溶融亜鉛メッキでも良いし、亜鉛含有塗料の塗布による常温亜鉛メッキでも良い。
【0025】
なお、鋼板1の表面(板紙材2の貼り合わせ面と反対の、室内側に露出する面)には、マグネットの磁着を阻害しない範囲の厚みの塗装や装飾フィルムによる化粧層を設けることができる。
【0026】
そして、本実施形態では、前記板紙材2の厚みは、0.5~1.5mmが好ましい(より好ましくは1.0mm程度)。0.5mmより小さいと必要な強度および剛性が得られず、1.5mmより大きいと、可撓性がなくなりパネルも重くなって取扱い性を損なうからである。また、板紙材2の材料には、安価で紙管等にも使用される再生パルプ紙を使用することができる。
【0027】
また、本実施形態では、前記板紙材2が漉き合わせ(重ね漉き)により抄造された複層構造のものを採用することができる。漉き合わせとは、一旦紙を漉いた後に、更に紙料溶液を加えて重ねて漉くことによって、先に抄造された内側紙層に外側紙層が付着して境界が形成されて層状をなす。この抄造工程は複数回繰り返すこともできる。
【0028】
このように板紙材2を複層構造にすることにより、十分な強度を有するとともに、層内における毛管現象によって、少量かつ短時間で不燃剤を浸透させることができる。
【0029】
また、本実施形態では、板紙材2に含浸させる不燃剤として親水性液剤を採用することができ、例えば、硼素化合物を含む弱酸または弱アルカリの金属塩水溶液に、燐酸およびシランカップリング剤を加えて混合水溶液とし、該混合水溶液にポリフェノール系化合物を主成分とする植物抽出物を加えたものにすることができる。
【0030】
このような不燃剤を使用することによって、水溶性による溶脱の発生を抑えることができ、効率よく浸透させることができ、板紙材2に対する薬剤の定着性がよく、燃焼抑制効果を高めることができる。
【0031】
また、本実施形態では、必要に応じて、板紙材2の表面に撥水剤を塗布して被覆することもでき、板紙材2が湿気を吸収することによる部材の膨潤や反りの発生を防止することができる。
【0032】
<製造方法>
本実施形態における不燃性磁着パネルの製造方法は以下のとおりである。まず、板紙材2の加工について、浸漬状態で不燃剤を含ませたロールによって、板紙材2に不燃剤を塗布して含浸させる。
【0033】
不燃剤は、固形分を水で約8倍に希釈して濃度15%の水溶液とし、乾燥後に固形分を残留させることができ、少量の不燃剤の使用で済む。例えば、700g/mの板紙材2に対して、1~2%の不燃剤固形分を残留させることができる。なお、不燃剤の浸透を促進させるために浸透剤(湿潤剤)や界面活性剤を添加することもできる。
【0034】
ロールによる不燃剤の塗布装置としては、グラビアコーター等を使用することができ、この際、ドクターブレードで不燃剤を掻き落とすことなく液溜まりで浸すように塗布することによって、多量の不燃剤を板紙材2に一度に付着させることができ、一度塗りでも十分な量を含浸させることができる。
【0035】
そして、この板紙材2を乾燥させた後、板紙材2と鋼板1とを貼り合わせる。これらの貼り合わせには、接着剤により接着する。接着剤としては、例えば、ウレタン系、エポキシ系、オレフィン系などを採用することができる。
【0036】
また、鋼板1および板紙材2は、板紙材2をロールから解舒しながら、予め所定のサイズ(例えば、横3尺×縦6尺(横910mm×縦1820mm)あるいは横3尺×縦8尺(横910mm×縦2420mm))に形成された鋼板1を一枚ずつ挿入して、連続的に貼り合わせていくことができる。なお、鋼板1も薄くて可撓性があるため、鋼板1および板紙材2がそれぞれ巻かれたロールから解舒しながら貼り合わせていくこともできる。そして、貼り合わせたパネルも、厚さ約1.3mm程度であるため、ロール状に巻き取っていくことができ、任意のサイズに切断して使用することができる。
【0037】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、図示の実施形態に限定されるものでは決してなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、板紙材2の材料は、再生パルプ紙に限らず、他の紙材料を使用することもできる。また、不燃剤の種類は、他の親水性液剤や親油性液剤を採用することもでき、これら何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0038】
10 不燃性磁着パネル
1 鋼板
2 板紙材
図1