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特開2022-61905車両用洗浄装置およびその組み立て方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061905
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】車両用洗浄装置およびその組み立て方法
(51)【国際特許分類】
   B60S 1/48 20060101AFI20220412BHJP
   B60S 1/62 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
B60S1/48 Z
B60S1/62 120B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020170159
(22)【出願日】2020-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100109047
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 雄祐
(74)【代理人】
【識別番号】100109081
【弁理士】
【氏名又は名称】三木 友由
(72)【発明者】
【氏名】阪井 健
(72)【発明者】
【氏名】市川 靖洋
【テーマコード(参考)】
3D025
3D225
【Fターム(参考)】
3D025AA04
3D025AC02
3D025AD12
3D025AF07
3D025AF17
3D225AA04
3D225AA11
3D225AC02
3D225AD12
3D225AD22
3D225AF07
3D225AF17
(57)【要約】
【課題】車両用洗浄装置の全長を短くする。
【解決手段】車両用洗浄装置1は、シリンダ筒部10と、シリンダ筒部10の外周に結合され、当該外周に形成された流入口10gを通じてシリンダ筒部10に連通され、車体内部に設けられる洗浄流体貯留タンクとチューブを介して連結される連結部18と、を含むシリンダ8と、シリンダ筒部10内に移動可能に挿入される両端が開口したピストン筒部20を含むピストン12と、シリンダ筒部10から突出するピストン筒部20の延在方向の先端12aに取り付けられ、ピストン筒部20内を通って供給される洗浄流体Fを被洗浄物へ向けて噴射する噴射ノズル部14と、を備える。連結部18は、シリンダ筒部10の反噴射ノズル部側の外周に結合される。ピストン12が収納位置にあり、かつ、延在方向に直交する方向に連結部18を見たとき、ピストン筒部20と連結部18内の洗浄流体の流路18aとが重なる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄流体が供給されるシリンダであって、シリンダ筒部と、前記シリンダ筒部の外周に結合され、当該外周に形成された流入口を通じて前記シリンダ筒部に連通され、車体内部に設けられる洗浄流体貯留タンクとチューブを介して連結される連結部と、を含むシリンダと、
前記シリンダ筒部内に移動可能に挿入される両端が開口したピストン筒部を含むピストンと、
前記シリンダ筒部から突出する前記ピストン筒部の延在方向の先端に取り付けられ、前記ピストン筒部内を通って供給される洗浄流体を被洗浄物へ向けて噴射する噴射ノズル部と、
を備え、
前記連結部は、前記シリンダ筒部の反噴射ノズル部側の外周に結合され、
前記ピストンが収納位置にあり、かつ、前記延在方向に直交する方向に前記連結部を見たとき、前記ピストン筒部と前記連結部内の洗浄流体の流路とが重なる車両用洗浄装置。
【請求項2】
前記ピストンが収納位置にあり、かつ、前記延在方向に直交する方向に前記連結部を見たとき、前記ピストン筒部と前記流入口とが重なる請求項1に記載の車両用洗浄装置。
【請求項3】
前記ピストンは、前記ピストン筒部の反噴射ノズル部側から外側へ張り出したフランジ部を含み、
前記フランジ部よりも反噴射ノズル部側において前記ピストン筒部に外嵌するシール部材を備え、
前記シール部材は、当該シール部材よりも噴射ノズル部側のシリンダ筒部とピストン筒部との径方向の隙間に洗浄流体が流入しないようにシールし、
前記ピストンが収納位置にあり、かつ、前記延在方向に直交する方向に前記連結部を見たとき、前記シール部材と前記記連結部内の前記流路とが重なる請求項1または2に記載の車両用洗浄装置。
【請求項4】
前記ピストン筒部内に収容され、前記ピストンを反噴射ノズル部側に付勢するバネを備え、
前記シリンダ筒部の反噴射ノズル部側の端部は、本車両用洗浄装置の組み立て時に前記バネを挿入するための開口部を有し、当該開口部はキャップにより閉塞され、
前記バネの噴射ノズル部側の端部は前記ピストン筒部に固定され、前記バネの反噴射ノズル部側は前記シリンダ筒部に固定され、
前記バネの反噴射ノズル部側は、少なくとも一部が前記流入口よりも反噴射ノズル部側に位置することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車両用洗浄装置。
【請求項5】
前記バネは、本体部と、前記本体部の噴射ノズル部側に設けられるフック状の引掛け部と、前記本体部の反噴射ノズル部側に設けられる、前記本体部よりも大きな径で巻回された環状係合部と、を含み、
前記引掛け部は、前記ピストン筒部の内部に設けられるバネ掛け部に引掛けられることにより前記バネ掛け部と係合され、
前記環状係合部は、シリンダ筒部の内部に設けられるバネ支持部に外嵌されることにより前記バネ支持部と係合され、
前記環状係合部の反噴射ノズル部側の端部は、前記流入口よりも反噴射ノズル部側に位置することを特徴とする請求項4に記載の車両用洗浄装置。
【請求項6】
洗浄流体が供給されるシリンダであって、シリンダ筒部と、前記シリンダ筒部の外周に結合され、当該外周に形成された流入口を通じて前記シリンダ筒部に連通され、車体内部に設けられる洗浄流体貯留タンクとチューブを介して連結される連結部と、を含むシリンダと、
前記シリンダ筒部に移動可能に挿入される両端が開口したピストン筒部を含むピストンと、
前記シリンダ筒部から突出する前記ピストン筒部の延在方向の先端に取り付けられ、前記ピストン筒部内を通って供給される洗浄流体を被洗浄物へ向けて噴射する噴射ノズル部と、
前記ピストン筒部内に収容され、前記ピストンを反噴射ノズル部側に付勢するバネと、
を備え、
前記連結部は、前記シリンダ筒部の反噴射ノズル部側の外周に結合され、
前記シリンダ筒部の反噴射ノズル部側の端部は、本車両用洗浄装置の組み立て時に前記バネを挿入するための開口部を有し、当該開口部はキャップにより閉塞され、
前記バネの反噴射ノズル部側の端部は、前記流入口よりも反噴射ノズル部側に位置することを特徴とする車両用洗浄装置。
【請求項7】
車両用洗浄装置の組み立て方法であって、
前記車両用洗浄装置は、洗浄流体が供給されるシリンダであって、シリンダ筒部と、前記シリンダ筒部の外周に結合され、当該外周に形成された流入口を通じて前記シリンダ筒部に連通され、車体内部に設けられる洗浄流体貯留タンクとチューブを介して連結される連結部と、を含むシリンダと、前記シリンダ筒部に移動可能に挿入される両端が開口したピストン筒部を含むピストンと、前記シリンダ筒部から突出する前記ピストン筒部の延在方向の先端に取り付けられ、前記ピストン筒部内を通って供給される洗浄流体を被洗浄物へ向けて噴射する噴射ノズル部と、を備え、前記連結部は、前記シリンダ筒部の反噴射ノズル部側の外周に結合され、
本組み立て方法は、
前記シリンダ筒部の反噴射ノズル部側の端部に設けられた開口部から前記シリンダ筒部内の前記ピストン筒部内にバネを挿入し、バネの噴射ノズル部側を前記ピストン筒部に固定し、バネの反噴射ノズル部側の端部が前記流入口よりも反噴射ノズル部側に位置するようにバネの反噴射ノズル部側を前記シリンダ筒部に固定する工程と、
前記開口部をキャップで塞ぐ工程と、
を含むことを特徴とする車両用洗浄装置の組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用洗浄装置およびその組み立て方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車体またはバンパーに形成された開口から噴射ノズル部が外部へ突出され、噴射ノズル部から流体を噴射して、例えば車両用灯具などの被洗浄物を洗浄するための車両用洗浄装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-218705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車体の内部またはバンパーの裏側の収納スペースの制約から、噴射ノズルの移動方向における車両用洗浄装置の全長を短縮することが望まれている。
【0005】
本発明はこうした状況においてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、車両用洗浄装置の全長を短くすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車両用洗浄装置は、洗浄流体が供給されるシリンダであって、シリンダ筒部と、シリンダ筒部の外周に結合され、当該外周に形成された流入口を通じてシリンダ筒部に連通され、車体内部に設けられる洗浄流体貯留タンクとチューブを介して連結される連結部と、を含むシリンダと、シリンダ筒部内に移動可能に挿入される両端が開口したピストン筒部を含むピストンと、シリンダ筒部から突出するピストン筒部の延在方向の先端に取り付けられ、ピストン筒部内を通って供給される洗浄流体を被洗浄物へ向けて噴射する噴射ノズル部と、を備える。連結部は、シリンダ筒部の反噴射ノズル部側の外周に結合され、ピストンが収納位置にあり、かつ、延在方向に直交する方向に連結部を見たとき、ピストン筒部と連結部内の洗浄流体の流路とが重なる。
【0007】
本発明の別の態様もまた、車両用洗浄装置である。この装置は、洗浄流体が供給されるシリンダであって、シリンダ筒部と、シリンダ筒部の外周に結合され、当該外周に形成された流入口を通じてシリンダ筒部に連通され、車体内部に設けられる洗浄流体貯留タンクとチューブを介して連結される連結部と、を含むシリンダと、シリンダ筒部に移動可能に挿入される両端が開口したピストン筒部を含むピストンと、シリンダ筒部から突出するピストン筒部の延在方向の先端に取り付けられ、ピストン筒部内を通って供給される洗浄流体を被洗浄物へ向けて噴射する噴射ノズル部と、ピストン筒部内に収容され、ピストンを反噴射ノズル部側に付勢するバネと、を備える。連結部は、シリンダ筒部の反噴射ノズル部側の外周に結合され、シリンダ筒部の反噴射ノズル部側の端部は、本車両用洗浄装置の組み立て時にバネを挿入するための開口部を有し、当該開口部はキャップにより閉塞され、バネの反噴射ノズル部側の端部は、流入口よりも反噴射ノズル部側に位置する。
【0008】
本発明のさらに別の態様は、車両用洗浄装置の組み立て方法である。この方法は、車両用洗浄装置の組み立て方法であって、車両用洗浄装置は、洗浄流体が供給されるシリンダであって、シリンダ筒部と、シリンダ筒部の外周に結合され、当該外周に形成された流入口を通じてシリンダ筒部に連通され、車体内部に設けられる洗浄流体貯留タンクとチューブを介して連結される連結部と、を含むシリンダと、シリンダ筒部に移動可能に挿入される両端が開口したピストン筒部を含むピストンと、シリンダ筒部から突出するピストン筒部の延在方向の先端に取り付けられ、ピストン筒部内を通って供給される洗浄流体を被洗浄物へ向けて噴射する噴射ノズル部と、を備え、連結部は、シリンダ筒部の反噴射ノズル部側の外周に結合され、本組み立て方法は、シリンダ筒部の反噴射ノズル部側の端部に設けられた開口部からシリンダ筒部内のピストン筒部内にバネを挿入し、バネの噴射ノズル部側をピストン筒部に固定し、バネの反噴射ノズル部側の端部が流入口よりも反噴射ノズル部側に位置するようにバネの反噴射ノズル部側をシリンダ筒部に固定する工程と、開口部をキャップで塞ぐ工程と、を含む。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、車両用洗浄装置の全長を短くできる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る車両用洗浄装置の斜視図である。
図2】実施の形態に係る車両用洗浄装置の縦断面図である。
図3】実施の形態に係る車両用洗浄装置の斜視断面図である。
図4図4(a)~(d)は、図1の車両用洗浄装置の組み立て手順を示す図である。
図5図5(a)、(b)は、図1の車両用洗浄装置の効果を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。
【0013】
図1~3は、実施の形態に係る車両用洗浄装置1を示す図である。図1は、車両用洗浄装置1の斜視図である。図2、3は、シリンダ筒部10の中心軸を含む鉛直断面で切断した車両用洗浄装置1の縦断面図、斜視断面図である。
【0014】
車両用洗浄装置1は、シリンダ8と、シリンダ8内に摺動自在に挿入されるピストン12と、ピストン12の先端(すなわちピストン筒部20の前端)12aに取り付けられ、被洗浄物に向けて洗浄流体(例えば洗浄液)Fを噴射するための噴射ノズル部14と、を備える。
【0015】
車両用洗浄装置1は、車体の内部またはバンパーの裏側に収納され、洗浄時には噴射ノズル部14が車体またはバンパーから外部に突出し、噴射ノズル部14から洗浄流体Fを噴射して被洗浄物を洗浄する。被洗浄物は、例えば灯具ユニット、カメラおよびセンサ(例えばLiDAR)の少なくとも1つを内蔵する筐体カバーであってもよいし、また例えば車体、窓、ミラーなどであってもよい。
【0016】
以降、シリンダ8のシリンダ筒部10およびピストン12のピストン筒部20が延在する方向を軸方向Aとし、シリンダ筒部10およびピストン筒部20の中心軸を通り当該中心軸に垂直な(すなわち軸方向Aに直交する方向、ひいてはシリンダ筒部10およびピストン筒部20の延在方向に直交する)方向を径方向Bとし、軸方向Aにおいてピストン筒部20に対して噴射ノズル部14が設けられる側を前側、その反対側(すなわち反噴射ノズル部側)を後ろ側として説明する。なお、軸方向Aは、ピストン12および噴射ノズル部14が移動する方向とも一致する。なお、これらの表記は車両用洗浄装置1が使用される姿勢を制限するものではなく、車両用洗浄装置1は任意の姿勢で使用されうる。
【0017】
シリンダ8は、円筒状に形成されるシリンダ筒部10と、シリンダ筒部10の外周の後端寄りに結合され、そこから鉛直上方(すなわち軸方向Aに直行する方向)に延びる円筒状の連結部18と、シリンダ筒部10内の後端側に設けられるバネ支持部19と、を含む。連結部18は、図示の例では、シリンダ筒部10の外周の後端に結合されている。
【0018】
軸方向Aにおけるシリンダ筒部10の両端は開口している。シリンダ筒部10の外周には、連結部18の内側に開口する流入口10gが形成されている。流入口10gを介して、シリンダ筒部10の内部と連結部18の内部とが連通される。流入口10gは、連結部18内の流路18aの流路面積S1よりも小さい開口面積S2を有する。なお、流路面積S1は、連結部18の延在方向である上下方向に直交する方向の断面積をいう。流入口は、連結部18内の後方寄りに開口する。シリンダ筒部10は、上下に延びる流路18aの幅方向における前側に臨む対面部10hを有する。
【0019】
連結部18には、図示しないチューブが連結される。チューブは、車体の内部に配置される図示しない洗浄流体貯留タンクに連結される。洗浄流体貯留タンクから送り出される洗浄流体Fは、チューブおよび連結部18を通って流入口10gからシリンダ筒部10に流入される。本実施の形態では、上述のように連結部18はシリンダ筒部10の外周から軸方向Aに直交する方向に延びるため、従来の車両用洗浄装置のように連結部がシリンダ筒部の後端から軸方向後方に延びる場合と比べて、ピストン12のストローク長を短くすることなく車両用洗浄装置1の軸方向Aの全長を短くできる。
【0020】
バネ支持部19は、シリンダ筒部10内の後端側から径方向内側へ張り出したバネ受け部19aと、バネ受け部19aの径方向内側から軸方向後方に延びるバネ嵌合部19bと、を含む。バネ受け部19aは、軸方向Aに見て半円弧状である。バネ嵌合部19bは、略半円筒状である。
【0021】
ピストン12は、円筒状のピストン筒部20と、ピストン筒部20の後端側の位置から径方向外側へ張り出した環状のフランジ部22と、ピストン筒部20の前端側においてピストン筒部20の内側に突出するバネ掛け部23と、を含む。ピストン筒部20は、シリンダ筒部10内に移動可能に挿入される。軸方向Aにおけるピストン筒部20の両端は開口している。ピストン筒部20は、断面が多角形(ここでは六角形)である角筒であるが、断面が円形である円筒であってもよい。
【0022】
ピストン筒部20の内部にはバネ24が収納される。バネ24は、引張コイルバネである。バネ24は、同じ径で巻回された本体部24aと、本体部24aの前端側にフック状に形成された引掛け部24bと、本体部24aの後端側に形成された本体部24aよりも大きな径で巻回された環状係合部24cと、を有する。
【0023】
バネ24は、シリンダ筒部10の後端の開口部10eを通して、ピストン筒部20内に後方から挿入される。引掛け部24bは、ピストン12のバネ掛け部23に引掛けられることによりバネ掛け部23に係合される。環状係合部24cは、シリンダ8のバネ支持部19のバネ嵌合部19bに外嵌するとともにバネ受け部19aに着座する。つまり、バネ24の前端側はピストン12に固定され、後端側はシリンダ8に固定される。したがってピストン12は、バネ24によって、シリンダ8に対して軸方向後方、すなわちシリンダ筒部10に収納される方向へ付勢される。
【0024】
シリンダ筒部10の後端の開口部10eは、第1キャップ15によって塞がれる。第1キャップ15は、円板部15aと、円板部15aの前面から軸方向前方に突出する環状突起15bと、を含む。環状突起15bは、バネ嵌合部19bおよび環状係合部24cを環囲する。第1キャップ15によって環状係合部24cの後方への移動が規制され、環状係合部24cがバネ支持部19から外れるのが防止される。
【0025】
ピストン12は、車両用洗浄装置1の非洗浄時は、バネ24の付勢力によって後方の移動端(図1、2の位置)に保持される。この時のピストン12の位置を収納位置とも呼ぶ。ピストン筒部20の前端部は、ピストン12が収納位置にあるときにもシリンダ筒部10の前端の開口部10fから軸方向前方に突出する、すなわちシリンダ筒部10の外部に位置する。ピストン筒部20の内部には、シリンダ筒部10に流入した洗浄流体Fが流入される。
【0026】
フランジ部22の後ろ側には環状のシール部材26が取り付けられている。シール部材26は、ゴム材料等の弾性変形可能な材料によって形成される。シール部材26はピストン筒部20に外嵌し、ピストン筒部20とともに移動する。また、シール部材26の外径はシリンダ筒部10の内径よりも僅かに大きく形成されており、シール部材26の外周部はシリンダ筒部10の内周面10aに密着する。したがって、シリンダ筒部10に洗浄流体Fが供給されたときに、シール部材26よりも前側のシリンダ筒部10とピストン筒部20との径方向Bの隙間G1への洗浄流体Fの流入は防止される。
【0027】
シリンダ筒部10の前端の開口部10fにおけるシリンダ筒部10とピストン筒部20との隙間G2は、第2キャップ16によって閉塞される。第2キャップ16は、円環部30と、円環部30から軸方向後方に延びる筒部32と、を含む。円環部30は、ピストン筒部20に外嵌される。円環部30の外径はシリンダ筒部10の内径よりも大きく形成される。円環部30がシリンダ筒部10の前端に当接するように第2キャップ16が取り付けられることにより、シリンダ筒部10の開口部におけるシリンダ筒部10とピストン筒部20との隙間G2を閉塞する。
【0028】
第2キャップ16の筒部32は、ピストン筒部20を環囲するようにシリンダ筒部10内に位置する。第2キャップ16の筒部32は、ピストン筒部20に外嵌される。第2キャップ16の筒部32の外径は、シリンダ筒部10の内径と同じ大きさに形成される。洗浄時において、ピストン12はフランジ部22が第2キャップ16の筒部32の後端32aに当接するまで軸方向前方に移動する。
【0029】
シリンダ筒部10の前端側には、シリンダ筒部10とピストン筒部20との隙間G1をシリンダ筒部10の外側と連通する空気穴10bが形成されている。空気穴10bは、図示の例では切り欠き穴であるが、貫通穴であってもよい。空気穴10bが設けられることにより、隙間G1に対して空気が出入りできるため、ピストン12の移動が可能となる。
【0030】
第2キャップ16の前側には、シール部材36が取り付けられる。シール部材36は、ゴム材料等の弾性変形可能な材料によって形成される。シール部材36は、円環状に形成され、内周面36aがピストン筒部20の外周面に密着される。これにより、第2キャップ16とピストン筒部20との間がシールされ、シリンダ筒部10への塵埃や水分等の侵入が抑止され、またシリンダ筒部10からの洗浄流体Fの漏れが抑止される。
【0031】
ピストン12が収納位置にあり、かつ、径方向Bに連結部18を見たとき、ピストン筒部20の後端部20bは、連結部18内の洗浄流体Fの流路18aと重なる。図示の例では、ピストン筒部20の後端部20bは、流入口10gとも重なっている。つまり、ピストン12が収納位置にあるとき、ピストン筒部20の後端部20bは、径方向Bにおいて流路18aの内側に位置し、図示の例ではさらに、径方向Bにおいて流入口10gの内側に位置する。これらの場合、ピストン12が収納位置にあるときにピストン筒部20がシリンダ筒部10から突出する軸方向Aの長さが短くなるため、ピストン12が収納位置にあるときの車両用洗浄装置1の軸方向Aの全長を短くできる。
【0032】
また、ピストン12が収納位置にあり、かつ、径方向Bに連結部18を見たとき、シール部材26は対面部10hひいては流路18aと重なっている。つまり、ピストン12が収納位置にあるとき、シール部材26は径方向Bにおいて対面部10hひいては流路18aの内側に位置する。この場合、ピストン12が収納位置にあるときにフランジ部22が比較的後方に位置するようにフランジ部22を設けることが可能となる。これにより、ピストン12が収納位置にあるときのフランジ部22の前端22aと筒部32の後端32aとの軸方向Aにおける距離S、すなわちピストン12のストローク長を長くできる。なお、より軸方向後方に対面部10hを延ばせばより軸方向後方にシール部材26を位置させることができる。しかしながら、より軸方向後方に対面部10hを延ばすと、その分、流入口10gの開口面積S2は小さくなる。したがって、所望の流入流量を実現できるように、流入口10gの開口面積S2ひいては対面部10hの軸方向長さを決定すればよい。
【0033】
径方向Bに連結部18を見たとき、バネ24の環状係合部24cは連結部18の流路18aと重なる。つまり、環状係合部24cは、径方向Bにおいて流路18aの内側に位置する。図示の例では、環状係合部24cの後端部24dは流入口10gよりも軸方向後方に位置する。バネ嵌合部19bおよび環状係合部24cを環囲する第1キャップ15の環状突起15bは、径方向Bにおいて連結部18の流路18aの内側に位置する。環状突起15bの前端部15cは、径方向Bにおいて流入口10gの内側に位置する。これらの場合、シリンダ筒部10の後端の開口部10eから挿入されるバネ24の環状係合部24cは、シリンダ筒部10のより後端側においてシリンダ筒部10に固定されるため、比較的容易に環状係合部24cを固定できる。
【0034】
噴射ノズル部14は、ピストン筒部20から噴射ノズル部14への洗浄流体の流通を制御するバルブ37と、2つのノズルホルダ40と、2つの噴射ノズル42と、を含む。バルブ37は、バルブケース38と、弁体39と、を含む。バルブケース38は、筒状に形成される。バルブケース38の後端側は、ピストン筒部20の前端側に圧入嵌合される。具体的には、バルブケース38の後端38eがピストン筒部20内に位置するように、ピストン筒部20の前端側の内周20aにバルブケース38の後端側の外周38fが嵌合される。図示の例では、ピストン12が収納位置にあるとき、バルブケース38の後端38eはシリンダ筒部10の径方向内側にまで到達している。したがって、径方向Bに見たときに、バルブケース38の後端側は第2キャップ16およびシール部材36と重なっている。
【0035】
バルブケース38内には、弁室38aと、弁室38aの軸方向後方に連設される、弁室38aよりも小径の弁孔38bとが形成されている。弁室38aの内壁面の後端側はテーパ状であり、テーパ面38gの後端部は弁体39が着座する弁座38cを構成する。本実施の形態では、弁座38cは、ピストン筒部20の前端側の径方向内側に位置する。さらに、図示の例では、ピストン12が収納位置にあるとき、弁座38cはシール部材36の径方向内側に位置する。なお、弁座38cは、図示の例よりもさらに軸方向後方に位置してもよく、ピストン12が収納位置にあるとき、第2キャップ16の径方向内側に位置してもよく、シリンダ筒部10の径方向内側に位置してもよい。
【0036】
バルブケース38は、その後端部において内側に突出する規制部38dを有する。規制部38dは、バネ24の引掛け部24bに前方側から当接してもよく、図示のように引掛け部24bとの間にわずかな隙間を介して設けられてもよい。規制部38dは、特に限定しないが、本実施の形態ではバネ掛け部23と軸方向Aに対向する。規制部38dは、引掛け部24bの軸方向前方への移動を規制して、引掛け部24bとバネ掛け部23との係合が解除されること、すなわち引掛け部24bがバネ掛け部23から外れることを抑制する。
【0037】
弁体39は、例えば、弾性変形可能なゴム材料によって形成される。弁体39は、弁室38aに配置される後端がボール型の弁本体39aと、弁本体39aから軸方向後方に突出して弁孔38bに進入する突状部39bと、を含む。弁体39は、図示しないバネ、例えば圧縮コイルバネによって軸方向後方へ付勢される。この付勢力により、弁本体39aは弁座38cに着座する。つまり、バルブ37は閉弁される。このとき、弁室38aひいてはノズルホルダ40と、弁孔38bひいてはピストン筒部20とが遮断(連通が阻止)される。
【0038】
ピストン筒部20に流入した洗浄流体Fが弁孔38bに供給され、弁体39に作用する洗浄流体Fの圧力が弁体39を付勢するバネの付勢力よりも大きくなると、弁体39がバネの付勢力に反して弁座38cから離間する。つまり、バルブ37は開弁される。このとき、弁室38aひいてはノズルホルダ40と、弁孔38bひいてはピストン筒部20とが連通するため、洗浄流体Fがノズルホルダ40に流入する。
【0039】
ノズルホルダ40は、バルブケース38の側方(左右)に回動可能に支持される。ノズルホルダ40はそれぞれ、噴射ノズル42を支持する。ノズルホルダ40に流入した洗浄流体Fは、噴射ノズル42の噴射口42aから噴射される。
【0040】
噴射ノズル部14の前側には、図示しないカバーが取り付けられる。カバーは、非洗浄時(すなわちピストン12が収納位置にあるとき)に車体またはバンパーの開口部を塞ぐ。
【0041】
以上が車両用洗浄装置1の基本構成である。続いて、その動作を説明する。
【0042】
洗浄流体貯留タンクから連結部18を介してシリンダ筒部10に洗浄流体Fが供給されると、ピストン筒部20内に洗浄流体Fが流入するとともに、フランジ部22が洗浄流体Fの圧力を受け、ピストン12はバネ24を伸長させながら収納位置から軸方向前方へ移動する。噴射ノズル部14は、ピストン12とともに軸方向前方へ移動し、車体またはバンパーの開口部から外に突出する。ピストン12が軸方向前方の移動端まで移動すると、具体的にはピストン12のフランジ部22が第2キャップ16に当接すると、ピストン12および噴射ノズル部14の軸方向前方への移動が停止する。ピストン12および噴射ノズル部14の軸方向前方への移動が停止すると、さらに供給される洗浄流体Fによってピストン筒部20内の洗浄流体Fの圧力が上昇し、バルブ37が開弁して洗浄流体Fがノズルホルダ40に流入し、噴射ノズル42の噴射口42aから被洗浄物へ向けて洗浄流体Fが噴射される。
【0043】
洗浄流体貯留タンクからの洗浄流体Fの供給が停止されると、弁体39に作用する洗浄流体Fの圧力が低下し、バルブ37が閉弁して洗浄流体Fがノズルホルダ40に流入しなくなり、噴射ノズル42からの洗浄流体Fの噴射が停止される。洗浄流体Fの圧力がさらに低下すると、バネ24の付勢力によってピストン12および噴射ノズル部14は軸方向後方へ移動し、ピストン12は収納位置に戻る。
【0044】
続いて、上述の車両用洗浄装置1の組み立て方法を説明する。
【0045】
図4(a)~(d)は、車両用洗浄装置1の組み立て手順を示す図である。図4(a)に示すように、シリンダ筒部10の前端の開口部10fからシリンダ筒部10内にピストン12を挿入する。
【0046】
図4(b)に示すように、シリンダ筒部10の後端の開口部10eから、シリンダ筒部10内のピストン筒部20内にバネ24を挿入し、バネ24の引掛け部24bをピストン12のバネ掛け部23(図4では不図示)に係合させ、環状係合部24cをシリンダ8のバネ支持部19(図4では不図示)に係合させる。すなわち、ピストン筒部20内にバネ24を挿入するとともに、バネ24の前端をピストン12に固定し、バネ24の後端をシリンダ8に固定する。
【0047】
図4(c)に示すように、第1キャップ15をシリンダ筒部10の後端に取り付け、シリンダ筒部10の後端の開口部10eを塞ぐ。また、第2キャップ16、シール部材36をシリンダ筒部10の前端に取り付け、シリンダ筒部10の前端の開口部10fを塞ぐ。
【0048】
図4(d)に示すように、ピストン12の前端側に噴射ノズル部14を取り付ける。具体的には、噴射ノズル部14のバルブケース38の後端側をピストン筒部20の内周に圧入嵌合する。
【0049】
続いて、実施の形態が奏する効果について説明する。
【0050】
図5(a)、(b)は、実施の形態に係る車両用洗浄装置1の効果を説明するための図である。図5(a)は、実施の形態に係る車両用洗浄装置1の断面図であり、図5(b)は、比較例に係る車両用洗浄装置101の断面図である。
【0051】
比較例に係る車両用洗浄装置101では、バルブ137のバルブケース138の後端側の内周が、ピストン筒部20の前端側の外側に嵌合されている。この場合、ピストン筒部20の外周にピストン筒部20とバルブケース138との境界140が露出する。ピストン筒部20は、シール部材36がこの境界を越えないように構成される。
【0052】
これに対し、実施の形態係る車両用洗浄装置1では、ピストン筒部20の前端側の内周にバルブケース38の後端側の外周が嵌合される。したがって、ピストン筒部20の外周に、比較例のようなピストン筒部20とバルブケース38との境界は露出しない。したがって、シール部材36がピストン筒部20の前端付近に位置するところまで、ピストン筒部20をシリンダ筒部10に収納できる。つまり、ピストン12のストローク長は比較例と同程度としつつも、ピストン12が収納位置にあるときの車両用洗浄装置1の軸方向Aの全長を短くできる。
【0053】
また、比較例に係る車両用洗浄装置101では、弁座138cは、ピストン筒部20の外部(軸方向前方)に位置する。この場合、噴射ノズル部14がピストン筒部20から軸方向前方に突出する長さは長くなり、ピストン12が収納位置にあるときの車両用洗浄装置1の軸方向Aの全長は長くなる。
【0054】
これに対し、実施の形態係る車両用洗浄装置1では、弁座38cは、ピストン筒部20内に位置する。弁座38cは、ピストン12が収納位置にあるとき、シール部材36の径方向内側に位置してもよいし、それよりも軸方向後方に位置してもよい。すなわち、弁座38cは、シール部材36、第2キャップ16またはシリンダ筒部10の径方向内側に位置してもよい。これらの場合、噴射ノズル部14がピストン筒部20から前方に突出する長さは比較例に比べて短くなる。したがって、ピストン12のストローク長は比較例と同程度としつつも、ピストン12が収納位置にあるときの車両用洗浄装置1の軸方向Aの全長を短くできる。
【0055】
また、実施の形態に係る車両用洗浄装置1では、ピストン12が収納位置にあるとき、ピストン筒部20の後端部20bは、径方向Bにおいて連結部18の流路18aの内側に位置する。ピストン筒部20の後端部20bは、径方向Bにおいて流入口10gの内側に位置してもよい。これらの場合、ピストン12が収納位置にあるときにピストン筒部20がシリンダ筒部10から突出する軸方向Aの長さが短くなるため、ピストン12が収納位置にあるときの車両用洗浄装置1の軸方向Aの全長を短くできる。
【0056】
また、実施の形態に係る車両用洗浄装置1では、ピストン12が収納位置にあるとき、シール部材26は径方向Bにおいて連結部18の流路18aの内側に位置する。この場合、ピストン12が収納位置にあるときにフランジ部22が比較的後方に位置するようにフランジ部22を設けることが可能となり、ピストン12のストローク長を長くできる。
【0057】
また、実施の形態に係る車両用洗浄装置1では、径方向Bに連結部18を見たとき、バネ24の環状係合部24cは、径方向Bにおいて流路18aの内側に位置する。環状係合部24cの後端部24dは流入口10gよりも軸方向後方に位置してもよい。これらの場合、シリンダ筒部10の後端の開口部10eから挿入されるバネ24の環状係合部24cは、シリンダ筒部10のより後端側においてシリンダ筒部10に固定されるため、比較的容易に環状係合部24cを固定できる。
【0058】
以上、本発明について、実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0059】
1 車両用洗浄装置、 8 シリンダ、 12 ピストン、 14 噴射ノズル部。
図1
図2
図3
図4
図5