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特開2022-61923壁面構造体、木造建物、及び、木造建物の建築方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061923
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】壁面構造体、木造建物、及び、木造建物の建築方法
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/10 20060101AFI20220412BHJP
   E04B 1/64 20060101ALI20220412BHJP
   E04B 1/72 20060101ALI20220412BHJP
   E04B 2/70 20060101ALI20220412BHJP
   E04B 1/343 20060101ALI20220412BHJP
   E04B 2/56 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
E04B1/10 Z
E04B1/64 A
E04B1/72
E04B2/70
E04B1/343 R
E04B2/56 602N
E04B2/56 603J
E04B2/56 604F
E04B2/56 605Z
E04B2/56 611C
E04B2/56 611M
E04B2/56 621A
E04B2/56 632B
E04B2/56 632D
E04B2/56 632J
E04B2/56 642F
E04B2/56 644A
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020170192
(22)【出願日】2020-10-07
(71)【出願人】
【識別番号】307001142
【氏名又は名称】株式会社 エコファクトリー
(74)【代理人】
【識別番号】100194984
【弁理士】
【氏名又は名称】梶原 圭太
(72)【発明者】
【氏名】村上 尊宣
【テーマコード(参考)】
2E001
2E002
【Fターム(参考)】
2E001DB01
2E001DH14
2E001EA08
2E001FA21
2E001GA24
2E001HF03
2E001LA06
2E002EB15
2E002EC08
2E002FA03
2E002FA09
2E002FB05
2E002FB07
2E002JA01
2E002JA03
2E002JB02
2E002JB03
2E002JB13
2E002JB16
2E002LB02
2E002LC03
2E002MA07
2E002MA12
2E002MA22
(57)【要約】
【課題】躯体の主要材に木材を使用して炭素貯蔵効果及び省エネルギー効果を奏すると共に、比較的狭い土地での施工性が良好であり、堅牢な構造の壁面構造体、木造建物、及び、木造建物の建築方法を提供する。
【解決手段】木造建物1は、建物基礎2、少なくとも三方の側壁3、屋根4を備える。建物基礎2は、少なくとも各側壁3下方となる位置に設けられたコンクリート製の基礎本体部21と、基礎本体部21から立設された板状の垂直面部が各側壁の形成方向と略一致するように設けて成る接続部22とを有する構造である。各側壁3は、軸を縦にして立設されると共に、その下部が接続部22に沿って連続して整列配置された、複数本の木製の柱状部材35・36と、隣接した柱状部材35・36を連結する連結構造部とを有する構造である。屋根4は、各側壁3に囲まれた内側領域の上部を覆うように設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎部及び1階部分を構成する第1壁面部を備え、
該基礎部は、コンクリート製の基礎本体部と、該基礎本体部から立設された板状の垂直面部が、前記第1壁面部の形成方向と略一致するように設けて成る接続部とを有する構造であり、
前記第1壁面部は、軸を縦にして立設されると共に、その下部が前記接続部に沿って連続して整列配置された、複数本の木製の柱状部材と、隣接した該柱状部材を連結する連結構造部とを有する構造である、
壁面構造体。
【請求項2】
前記各柱状部材は、前記垂直面部が収まる下部受け溝部が底面に形成され、同各柱状部材の連結状態において前記各下部受け溝部の形成方向が略同一線上で一致し、同各下部受け溝部に前記垂直面部を嵌合させた態様で、前記基礎部と前記第1壁面部を接続させた構造である、
請求項1に記載の壁面構造体。
【請求項3】
前記接続部が、長尺なL字アングル材、及び、該L字アングル材を前記基礎本体部に固定するアンカーボルトにより構成されている、
請求項2に記載の壁面構造体。
【請求項4】
前記接続部は、前記垂直面部に対して板面が交差する配置で立設されたプレート部分が、所定間隔を開けて複数箇所に設けられ、
前記各柱状部材は、前記プレート部分が収まる下部受け溝が下端面に形成された第1柱と、該第1柱の間に挟んで配置された第2柱と、を含み、
前記第1柱及び前記第2柱の下部側面と前記垂直面部とを当接させると共に、前記下部受け溝部に前記プレート部分を嵌合させた同第1柱の間に同第2柱を挟む態様で、前記基礎部と前記第1壁面部を接続させた構造である、
請求項1に記載の壁面構造体。
【請求項5】
前記接続部は、前記垂直面部に相当する垂直部分、該垂直部分の下端縁部から屈曲した水平部分、及び、一方の側端縁が同垂直部分と、使用状態で下方に位置する側端縁が同水平部分に固着された態様の前記プレート部分を有する長尺なアングル材、及び、該アングル材を前記基礎本体部に固定する固定具により構成されている、
請求項4に記載の壁面構造体。
【請求項6】
階上部分を構成する第2壁面部と、該第2壁面部と前記第1壁面部を接続する接続具と、を更に備え、
前記接続具は、設置状態において、前記第2壁面部の底面を受ける水平部分と、該水平部分の上方へ起立した垂直部分と、該垂直部分に対して板面が交差する配置で同垂直部分及び同水平部分に固着され、所定間隔を開けて複数箇所に設けられた第1プレート部分と、前記水平部分下面に垂設された第2プレート部分とを有し、
前記第1壁面部は、その上端面に前記第2プレート部分が収まる上部受け溝が形成され、
前記第2壁面部は、軸を縦にして立設されると共に、その下部が前記接続具の垂直部分に沿って連続して整列配置され、前記第1プレート部分が収まる下部受け溝が下端面に形成された第1柱、及び、該第1柱の間に挟んで配置された第2柱を含む複数本の木製の柱状部材と、隣接した該柱状部材を連結する連結構造部とを有し、
前記第1壁面部の上部受け溝に前記第2プレート部分を嵌合させ、前記第2壁面部の前記第1柱及び前記第2柱の下部側面と前記垂直部分とを当接させると共に、同第1柱の前記下部受け溝部に前記第1プレート部分を嵌合させて同第1柱の間に同第2柱を挟んだ態様の前記接続具を以て、前記第1壁面部と前記第2壁面部を接続させた構造である、
請求項4又は請求項5に記載の壁面構造体。
【請求項7】
前記第1壁面部の側面下方表面及び下端面を覆うように、防蟻能及び防湿能を有する防蟻防湿シート材が配設されている、
請求項1乃至6のいずれかに記載の壁面構造体。
【請求項8】
前記防蟻防湿シート材は、前記第1壁面部の前記下部受け溝部内において、同下部受け溝部と前記接続部との間にも配設されている、
請求項7に記載の壁面構造体。
【請求項9】
建物基礎、少なくとも三方の側壁、及び、屋根を備え、
前記建物基礎は、少なくとも前記各側壁下方となる位置に設けられたコンクリート製の基礎本体部と、該基礎本体部から立設された板状の垂直面部が、前記各側壁の形成方向と略一致するように設けて成る接続部とを有する構造であり、
前記各側壁は、軸を縦にして立設されると共に、その下部が前記接続部に沿って連続して整列配置された、複数本の木製の柱状部材と、隣接した該柱状部材を連結する連結構造部とを有する構造であり、
前記屋根は、前記各側壁に囲まれた内側領域の上部を覆うように設けられている、
木造建物。
【請求項10】
前記接続部は、前記垂直面部に相当する垂直部分、及び、該垂直部分の下端縁部から屈曲した水平部分を有する長尺なL字アングル材、及び、該L字アングル材を前記基礎本体部に固定するアンカーボルトにより構成され、
前記各柱状部材は、前記垂直面部が収まる下部受け溝部が底面に形成され、同各柱状部材の連結状態において前記各下部受け溝部の形成方向が略同一線上で一致し、同各下部受け溝部に前記垂直面部を嵌合させた態様で、前記建物基礎と前記側壁を接続させた構造である、
請求項9又は請求項10に記載の木造建物。
【請求項11】
前記接続部は、前記垂直面部に相当する垂直部分、該垂直部分の下端縁部から屈曲した水平部分、及び、一方の側端縁が同垂直部分に固着されると共に、使用状態で下方に位置する側端縁が前記水平部分に固着され、且つ、前記垂直部分に対して板面が交差する配置で立設されたプレート部分を有し、該プレート部分が所定間隔を開けて複数箇所に設けられた長尺なアングル材と、該アングル材を前記基礎本体部に固定するアンカーボルトとにより構成され、
前記各柱状部材は、前記プレート部分が収まる下部受け溝が下端面に形成された第1柱と、該第1柱の間に挟んで配置された第2柱と、を含み、
前記第1柱及び前記第2柱の下部側面と前記垂直部分とを当接させると共に、前記下部受け溝部に前記プレート部分を嵌合させた同第1柱の間に同第2柱を挟む態様で、前記建物基礎と前記側壁を接続させた構造である、
請求項9又は請求項10に記載の木造建物。
【請求項12】
前記屋根が、前記各側壁のうち対向した一対の同側壁の上端近傍に横設された複数の木製の軸状部材により構成され、隣接した前記軸状部材が連結構造部により連結されると共に、前記屋根と前記側壁が剛接合又は準剛接合された構造である、
請求項9乃至11のいずれかに記載の木造建物。
【請求項13】
前記基礎本体部が、床スラブ構造又は土間コンクリート構造である、
請求項9乃至12のいずれかに記載の木造建物。
【請求項14】
前記各側壁及び前記屋根、又は、前記各側壁あるいは前記屋根のいずれか一方は、その外面に耐候性を有する板材が覆設されている、
請求項9乃至13のいずれかに記載の木造建物。
【請求項15】
少なくとも形成する側壁の下方となる位置にコンクリート製の基礎本体部を設け、該基礎本体部から立設して成る板状の垂直面部を含んだ接続部を、同基礎本体部上における前記側壁の形成予定方向と略一致するように設ける、建物基礎形成工程と、
該建物基礎形成工程により形成された建物基礎上において、複数本の木製の柱状部材を、軸を縦にして立設すると共に、その下部が前記接続部に沿うように連続して整列配置させ、且つ、隣接した前記柱状部材を連結する、側壁形成工程と、
前記側壁形成工程により形成された側壁で囲まれた内側領域を覆う屋根を設ける、屋根形成工程と、
を備える、
木造建物の建築方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面構造体、木造建物、及び、木造建物の建築方法に関する。更に詳しくは、躯体の主要材に木材を使用して炭素貯蔵効果及び省エネルギー効果を奏すると共に、比較的狭い土地での施工性が良好であり、堅牢な構造の壁面構造体、木造建物、及び、木造建物の建築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ガレージや倉庫等として、プレハブ工法による小規模建物が利用されている。プレハブ工法では、プレカットやプレキャスト工法等により工場で部材を生産しており、建築現場での工期が短縮されるといったメリットがある。一方で、プレハブ工法では、多くの場合、鉄骨や金属製の壁面パネルが材料として使用されるため、その製造にあたって二酸化炭素を多く排出し、エネルギーを多く消費する。
【0003】
このような課題を解消する技術の一例として、特許文献1に示すような発明が提案されている。特許文献1記載の発明は、同一横断面形の角柱木軸材の3以上の複数本を土台に立設させて、それぞれ側面当接させて面一状にして固定一体化した耐力面材であって、該固定一体化が、前記木軸材ごとに、前記木軸材の1本又は2本を貫通し得る長さを有する2種類の複数本の木材用ビスを、同方向側に当接した1本又は2本の木軸材に向けて、かつ適宜の間隔をもってねじ込み締結して成り、上記各ねじ込み箇所には、当該箇所にねじ込む木材用ビス長とほぼ同じ長さでかつ小径で直線状の下穴を、予め開孔して成ることを特徴とする木軸材構成の耐力面材である。
【0004】
当該発明によれば、複数の角柱木軸材間に跨るようにねじ込み締結させた複数の木材用ビスによって木軸材の連結状態を高めることができるとされており、当該木軸材構成の耐力面材を建物の壁面構成材として採用すれば、前述の鉄骨及び壁面パネルを使用しないか又は使用量を減らすことができ、材料の生産における二酸化炭素排出量の低減化、省エネルギーが期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第6522055号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、一般的な木軸材を使用した工法では、柱材は下部に横架した「土台」に接合されており、柱材下端に形成されたほぞと土台上面に形成したほぞ孔を嵌合させる場合が多い。そして、特許文献1記載の発明のように木軸材を縦に立設するときには、土台上面に多数のほぞ穴が形成されることになるため、土台の強度(特に水平方向の耐荷重性)が著しく低下する。
【0007】
なお、特許文献1記載の発明では「土台用には短めの固定ビス6aを用い、本面材2から斜めに突き通し先端の一部を土台92にねじ込み締結している。・・・また、本面材2と土台92と接合部分は、ホゾとホゾ穴の係合としても良い」とされているが、柱材毎に固定ビスを打設するのであれば非常に手間が掛かり、固定ビスのみで土台との接合部分を支えるのであれば、水平方向から外力に対して脆弱(土台と各柱材の接合部分の耐荷重性が低い)部分となり得る。
【0008】
一方、昨今、建築分野における熟練工が不足傾向にあり、本来ある程度の熟練を要する作業である、ほぞ及びほぞ孔の形成を伴うほぞ継ぎ作業、又は、固定ビスの打設作業を行うためには、熟練工による着手の順番を待つか、又は、熟練工ではない者が作業を担当することになる。しかしながら、熟練工の順番を待つ場合は工期の遅れに繋がり、熟練工ではない者が作業を担当した場合も工期の遅れが予期され、加えて、十分な作業品質が確保されないおそれもある。
【0009】
本発明は、以上の点を鑑みて創案されたものであり、躯体の主要材に木材を使用して炭素貯蔵効果及び省エネルギー効果を奏すると共に、比較的狭い土地での施工性が良好であり、堅牢な構造の壁面構造体、木造建物、及び、木造建物の建築方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために本発明の壁面構造体は、基礎部及び1階部分を構成する第1壁面部を備え、該基礎部は、コンクリート製の基礎本体部と、該基礎本体部から立設された板状の垂直面部が、前記第1壁面部の形成方向と略一致するように設けて成る接続部とを有する構造であり、前記第1壁面部は、軸を縦にして立設されると共に、その下部が前記接続部に沿って連続して整列配置された、複数本の木製の柱状部材と、隣接した該柱状部材を連結する連結構造部とを有する構造である。なお、「略一致」の語は、完全一致を含むと共に、概ね一致する態様を含む意味で使用している。
【0011】
ここで、基礎部は、第1壁面部の荷重を支持することができる。そして、基礎部は、前述した接続部を有することにより、これに柱状部材の下部を沿わせるようにして、複数本の柱状部材を連続して直線状に整列配置する作業を、非熟練工であっても精度良く且つ容易に行うことができる。なお、柱状部材の下部を接続部に沿わせる態様としては、例えば、各柱状部材の下端面に形成する受け溝部と接続部を嵌合させる態様、又は、各柱状部材の下部側面と接続部を当接させて取り付ける態様等が挙げられる。
【0012】
第1壁面部は、基礎部上に複数の木製の柱状部材を連続して立設し、連結構造部により隣接した柱状部材を連結し一体化することで、建物等の内外を区画する所望の大きさの木造の壁面構造体を作業現場で形成することができる。
【0013】
なお、柱状部材は、断面形状が四角形等である角柱が好適に使用されるが、これに限定するものではなく、例えば、断面形状が円形あるいは楕円形等である円柱、断面形状がD型の柱材等であっても良い。また、柱状部材は、その一面に溝等の凹部を形成し、同柱状部材の長軸を挟んで凹部の反対方向に凸条等の凸部を形成し、前述の凹部及び凸部を嵌合させて隣接する柱状部材を連結する構造であってもよい。
【0014】
ところで、一般的なガレージ等の建物壁面を構成する大型パネルを使用する場合は積載する車両やこれを懸架するクレーン車を要するが、前述の壁面構造体によれば、例えば、大型パネルが搬入困難な狭い場所であっても壁面構造体を設けることができ、加えて、大型パネルを積載した車両やこれを懸架するクレーン車が入り込みにくい、幹線道路から離れた細い路地奥の土地や、周囲に住宅が立て込んだ比較的狭い土地での施工に適している。
【0015】
そして、第1壁面部は、各柱状部材の下部を接続部に沿って連続して整列配置するだけで、複数の柱状部材を容易に直線状に配置することができ、非熟練工であっても精度良く且つ容易な施工が可能となる。また、第1壁面部は、連結構造部によって隣接した各柱状部材が連結され、一面の壁面構造体と成すことができる。更にまた、第1壁面部は、接続部に沿って各柱状部材を基礎部の長手方向の端部側から順番に立設し、且つ、隣接した柱状部材を連結して成るものであるため、構成材である柱状部材の上端下端の位置合わせも容易である点においても、施工性が良好である。
【0016】
なお、「連結構造部」としては、例えば、一の柱状部材の軸方向に対して交差方向に貫通し隣接する柱状部材に至る長さに穿設されるスクリューボルト、あるいは、各柱状部材の軸方向に対して交差方向に設けられるボルト及びナットの組み合わせ等が挙げられ、これらは完成後の壁面に部材が現れず見た目が良いため好適に使用される。しかしながら、「連結構造部」は、スクリューボルト等に限定するものではなく、各柱状部材の間に接着剤を塗布して成る構造、スクリューボルト等と接着剤を組み合わせた構造、プレート金具やほぞ継ぎ等の公知手段による連結構造をも含む意味で使用している。
【0017】
本発明の壁面構造体は、住宅、店舗、車庫や物置等の側壁として好適に使用することができる。そして、同壁面構造体は、第1壁面部の構成材として木材を使用しているので、材料に起因する炭素貯蔵効果、及び、建材製造で生じるエネルギーの削減による省エネルギー効果を奏し、そして、同壁面構造体を適用した建物にも炭素貯蔵効果及び省エネルギー効果を付加する。加えて、本発明の壁面構造体は、上面に多数のほぞ穴が形成された土台を使用しない構造であるため、一般的な木造の壁面構造体と比較して堅牢な構造になっている。
即ち、本発明の壁面構造体は、炭素貯蔵効果及び省エネルギー効果を奏すると共に、比較的狭い土地での施工性が良好であり、堅牢な構造となっている。
【0018】
また、各柱状部材は、垂直面部が収まる下部受け溝部が底面に形成され、同各柱状部材の連結状態において各下部受け溝部の形成方向が略同一線上で一致し、同各下部受け溝部に垂直面部を嵌合させた態様で、基礎部と第1壁面部を接続させた構造である場合は、更に施工性が向上している。詳しくは、第1壁面部を構成するにあたり、基礎部上に設けた接続部と柱状部材の下部受け溝部を嵌合させながら、基礎部の長手方向の端部側から順番に複数を立設しやすく、構成材である柱状部材の上端下端の位置合わせが更に容易で施工性が向上している。なお、「略同一線上」の語は、同一線上を含むと共に、同一線上で概ね一致する態様を含む意味で使用している。
【0019】
また、接続部が、長尺なL字アングル材、及び、同L字アングル材を基礎本体部に固定するアンカーボルトにより構成されている場合は、基礎本体部上において接続部を設ける作業を更に容易に行うことができる。詳しくは、L字アングル材の水平部分が同基礎本体部に当接し固定する部分となり、垂直部分が垂直面部となる。また、アンカーボルトは、例えば、同水平部分の板厚方向に貫通して形成された孔に嵌挿され、基礎本体部に埋入した軸部分を以て同基礎本体部との固定構造を成す。
【0020】
更にまた、この接続部の構成であれば、調達容易な材料であることから材料費を低減できると共に、非熟練工であっても作業を容易に行うことができるので、作業人員の調達が容易で人件費削減も図ることができ、この結果、施工コストの更なる低減化を図ることができる。
【0021】
また、接続部は、垂直面部に対して板面が交差する配置で立設されたプレート部分が、所定間隔を開けて複数箇所に設けられ、各柱状部材は、プレート部分が収まる下部受け溝が下端面に形成された第1柱と、同第1柱の間に挟んで配置された第2柱と、を含み、第1柱及び第2柱の下部側面と垂直面部とを当接させると共に、下部受け溝部にプレート部分を嵌合させた同第1柱の間に同第2柱を挟む態様で、基礎部と第1壁面部を接続させた構造である場合は、更に施工性が向上している。
【0022】
詳しくは、第1壁面部を構成するにあたり、基礎部上に設けた接続部のプレート部分と第1柱の下部受け溝部を嵌合させ、且つ、第1柱及び第2柱の下部側面と垂直面部とを当接させると共に同第1柱の間に同第2柱を挟む態様により、基礎部の長手方向の端部側から順番に複数を立設しやすく、構成材である柱状部材の上端下端の位置合わせが更に容易で施工性が向上している。
【0023】
そして、全ての柱状部材ではなく、第1柱のみをプレート部分と嵌合させる態様であるため、第2柱はプレート部分との嵌合が不要で、作業の手間を軽減することができる。また、第2柱に必ずしも下部受け溝部を形成せずに済むため、同加工の手間及びコストが不要となる(なお、第2柱に下部受け溝部を形成したものを使用する態様を除外するものではない)。
【0024】
また、接続部は、垂直面部に相当する垂直部分、同垂直部分の下端縁部から屈曲した水平部分、及び、一方の側端縁が同垂直部分と、使用状態で下方に位置する側端縁が同水平部分に固着された態様のプレート部分を有する長尺なアングル材、及び、同アングル材を基礎本体部に固定する固定具により構成されている場合は、基礎本体部上において接続部を設ける作業を更に容易に行うことができる。
【0025】
詳しくは、アングル材の水平部分が基礎本体部に当接し固定する部分となり、垂直部分が垂直面部となる。また、プレート部分が垂直部分及び水平部分に固着されているため、垂直部分と水平部分との間が拡大しにくい構造であり、剛性が向上している。更にまた、固定具は、水平部分と同基礎本体部との固定構造を成し、例えば、固定具としてはアンカーボルトが挙げられ、アンカーボルトが水平部分の板厚方向に貫通して形成された孔に嵌挿され、基礎本体部に埋入した軸部分を以て同基礎本体部との固定構造を成す態様が挙げられる。
【0026】
更にまた、この接続部の構成であれば、調達容易な材料で容易に形成できることから材料費を低減できると共に、非熟練工であっても作業を容易に行うことができるので、作業人員の調達が容易で人件費削減も図ることができ、この結果、施工コストの更なる低減化を図ることができる。
【0027】
また、階上部分を構成する第2壁面部と、同第2壁面部と第1壁面部を接続する接続具と、を更に備え、接続具は、設置状態において、第2壁面部の底面を受ける水平部分と、同水平部分の上方へ起立した垂直部分と、同垂直部分に対して板面が交差する配置で同垂直部分及び同水平部分に固着され、所定間隔を開けて複数箇所に設けられた第1プレート部分と、水平部分下面に垂設された第2プレート部分とを有し、第1壁面部は、その上端面に前記第2プレート部分が収まる上部受け溝が形成され、第2壁面部は、軸を縦にして立設されると共に、その下部が接続具の垂直部分に沿って連続して整列配置され、第1プレート部分が収まる下部受け溝が下端面に形成された第1柱、及び、同第1柱の間に挟んで配置された第2柱を含む複数本の木製の柱状部材と、隣接した柱状部材を連結する連結構造部とを有し、第1壁面部の上部受け溝に第2プレート部分を嵌合させ、第2壁面部の第1柱及び第2柱の下部側面と垂直部分とを当接させると共に、同第1柱の前記下部受け溝部に第1プレート部分を嵌合させて同第1柱の間に同第2柱を挟んだ態様の接続具を以て、第1壁面部と第2壁面部を接続させた構造である場合は、接続具等の各部の作用効果により、第1壁面部の直上に、階上部分を構成する第2壁面部を効率良く設けることができる。
【0028】
詳しくは、設置された第1壁面部の上部に接続具を取り付ける。このとき、接続具は、第1壁面部における第1柱の上部受け溝に第2プレート部分を嵌着させる。これにより、第1壁面部における第1柱の上端位置が固定され、そして、一対の第1柱の間に挟まれた第1壁面部における第2柱の上端位置についても自ずと定まり固定される。
【0029】
次に、第1壁面部に設置された接続具を介し、同接続具の上に第2壁面部を設ける。第2壁面部を構成するにあたり、接続具の第1プレート部分と、第2壁面部の第1柱の下部受け溝部を嵌合させ、且つ、同第1柱の下部側面を接続具の垂直部分に当接させて取り付ける。そして、第2壁面部の第2柱の下部側面を接続具の垂直部分に当接させる。第2壁面部は、接続具を以て、第1壁面部と同様に第1柱の間に第2柱が挟む態様となり、基礎部の長手方向の端部側から順番に複数を立設しやすく、構成材である柱状部材の上端下端の位置合わせが更に容易で施工性が向上している。
【0030】
接続具は、第2壁面部の第1柱のみを第1プレート部分と嵌合させる態様であるため、第2壁面部の第2柱は第1プレート部分との嵌合が不要で、作業の手間を軽減することができる。また、第2壁面部の第2柱に必ずしも下部受け溝部を形成せずに済むため、同加工の手間及びコストが不要となる(なお、第2柱に下部受け溝部を形成したものを使用する態様を除外するものではない)。
【0031】
また、第1壁面部の側面下方表面及び下端面を覆うように、防蟻能及び防湿能を有する防蟻防湿シート材が配設されている場合は、第1壁面部の内部にシロアリが侵入したり、水分の滲入によって第1壁面部の下部が腐食したりすることを抑制することができる。なお、シート材であることにより、塗剤のように含浸、乾燥を待つことなく施工を進めることができる。
【0032】
また、防蟻防湿シート材は、第1壁面部の下部受け溝部内において、同下部受け溝部と接続部との間にも配設されている場合は、下部受け溝部を介して第1壁面部の内部にシロアリが侵入したり、水分の滲入によって第1壁面部の下部が腐食したりすることを更に抑制することができる。なお、シート材であることにより、塗剤のように含浸、乾燥を待つことなく施工を進めることができる。
【0033】
上記の目的を達成するために本発明の木造建物は、建物基礎、少なくとも三方の側壁、及び、屋根を備え、前記建物基礎は、少なくとも前記各側壁下方となる位置に設けられたコンクリート製の基礎本体部と、該基礎本体部から立設された板状の垂直面部が、前記各側壁の形成方向と略一致するように設けて成る接続部とを有する構造であり、前記各側壁は、軸を縦にして立設されると共に、その下部が前記接続部に沿って連続して整列配置された、複数本の木製の柱状部材と、隣接した該柱状部材を連結する連結構造部とを有する構造であり、前記屋根は、前記各側壁に囲まれた内側領域の上部を覆うように設けられている。
【0034】
ここで、木造建物は、前述した建物基礎、側壁及び屋根を備えることにより、開口した一面を出入口とする屋根付きの木造建物を得ることができる。同木造建物は、住宅、店舗、車庫や物置等のスペースとして好適に使用することができる。なお、前述の出入口にはシャッターや扉等の閉塞部材を配置することが好適であり、この場合、閉塞部材の周囲に、垂れ壁や袖壁等の部分的な側壁を設けてもよい。
【0035】
建物基礎は、前述した基礎本体部を有することにより、側壁及び屋根を含む建物の荷重を支持することができる。なお、基礎本体部は、各側壁下方となる位置に設けることを最小限構成としているが、例えば、上記位置と共に建物内側で床を構成する部分を含む態様等(いわゆる布基礎やベタ基礎、土間コンクリート)であることが好ましい。
【0036】
そして、建物基礎は、前述した接続部を有することにより、これに柱状部材の下部を沿わせるようにして、複数本の柱状部材を連続して直線状に整列配置する作業を、非熟練工であっても精度良く且つ容易に行うことができる。なお、接続部は、帯状に連続した態様であることが好ましいが、これに限定するものではなく、例えば、長手方向において所定長さの複数の接続部が断続的に配置された態様であってもよい。
【0037】
側壁は、少なくとも三方に設けられていることにより、木造建物における奥方向の側壁と、同奥方向の側壁の両側に位置する側壁を有する構造となり、側壁が無い一面(開口した一面)が出入口となる。なお、前述の通り、出入口にはシャッター等を配置することが好適であるが、例えば、出入口側の一部にも側壁を設け、同側壁に扉等も設置する(すなわち、側壁が四方に設けられた)態様であってもよい。
【0038】
各側壁は、建物基礎上に複数の柱状部材を連続して立設し、連結構造部により隣接した柱状部材を連結することで、木造建物における壁面構造体を成すことができる。当該構造により、例えば、壁面を構成する大型パネルの搬入が困難な狭い場所であっても、壁面構造体を設けることができる。前述の通り「連結構造部」は、例えばスクリューボルト等が挙げられる。また、柱状部材は、断面形状が四角形等である角柱が好適に使用されるが、前述の通り、断面形状が円形である円柱等であってもよい。
【0039】
屋根は、屋内外を区画し、屋内の収納物を雨雪、日光及び外気等から保護することができる。なお、「屋根」としては、例えば、金属素材、木材、石質素材、又は合成樹脂素材で形成された単一又は複数の板から成る構造物であってよい。この場合、構造が比較的単純なため、施工が容易であり、また、板状であるため屋根の構造重量が比較的軽量で、地震等の振動による水平荷重が生じた際に、屋根に起因して各側壁に加わる力を軽減することができる。
【0040】
なお、前述した各側壁と屋根については、後述するように、その外面に耐候性を有する板材を覆設してもよく、また、塗剤を塗布して建物に耐候性を付加する態様であってもよい。
【0041】
本発明の木造建物は、躯体の大部分を占める側壁に木材を使用しているので、材料に起因する炭素貯蔵効果、及び、建材製造で生じるエネルギーの削減による省エネルギー効果を奏する。
【0042】
更に、本発明の木造建物は、側壁が立設した複数の木製の柱状部材を連結して成る構成であって、一般的なガレージ等の同種の建物のように壁面を構成する大型パネルを使用しない。このため、大型パネルを積載した車両やこれを懸架するクレーン車が入り込みにくい、幹線道路から離れた細い路地奥の土地や、周囲に住宅が立て込んだ比較的狭い土地での施工に適している。また、側壁を構成する作業が、接続部に柱状部材の下部を沿わせるようにして、複数本の柱状部材を連続して直線状に整列配置する態様であるため、構成材である柱状部材の上端下端の位置合わせが容易であり、パネル体やクレーンを不使用で側壁を構成できる点においても、施工性が良好である。
【0043】
なお、一般的な木造建物で同種の側壁構造(複数の木製の柱状部材を立設して成る側壁)を採用する場合、基礎上に土台を配置し、土台上面と柱材下面とをほぞ継ぎすることが多いが、土台上面に多数のほぞ穴が形成されることになるため、土台の強度(特に水平方向の耐荷重性)が著しく低下する。しかしながら、本発明の木造建物は、上面に多数のほぞ穴が形成された土台を使用しない構造であるため、前述した一般的な木造建物と比較して堅牢な構造になっている。
即ち、本発明の木造建物は、炭素貯蔵効果及び省エネルギー効果を奏すると共に、比較的狭い土地での施工性が良好であり、堅牢な構造となっている。
【0044】
また、接続部は、垂直面部に相当する垂直部分、及び、同垂直部分の下端縁部から屈曲した水平部分を有する長尺なL字アングル材、及び、同L字アングル材を基礎本体部に固定するアンカーボルトにより構成され、各柱状部材は、垂直面部が収まる下部受け溝部が底面に形成され、同各柱状部材の連結状態において各下部受け溝部の形成方向が略同一線上で一致し、同各下部受け溝部に垂直面部を嵌合させた態様で、建物基礎と側壁を接続させた構造である場合は、更に施工性が向上している。
【0045】
詳しくは、接続部が、基礎本体部にL字アングル材を載置し、これをアンカーボルトで固定する簡易な構造であるため、基礎本体部上において接続部を設ける作業が更に容易なものとなっている。設置に際にしては、L字アングル材の水平部分が基礎本体部に当接し固定する部分となり、垂直部分が垂直面部となる。また、アンカーボルトは、例えば、水平部分の板厚方向に貫通して形成された孔に嵌挿され、基礎本体部に埋入した軸部分を以て同基礎本体部との固定構造を成す。
【0046】
更にまた、この接続部の構成であれば、調達容易な材料であることから材料費を低減できると共に、非熟練工であっても作業を容易に行うことができるので、作業人員の調達が容易で人件費削減も図ることができ、この結果、施工コストの更なる低減化を図ることができる。
【0047】
そして、前述した各柱状部材による各側壁部の構成によれば、柱状部材の立設が、基礎本体部上に設けた接続部の垂直部分と柱状部材の下部受け溝部とを嵌合させる簡易な作業であり、また、基礎本体部の長手方向の端部側から垂直部分に沿って順番に行われるため、複数である柱状部材の立設がしやすく、その上端下端の位置合わせも容易で、施工性が更に向上している。
【0048】
また、接続部は、垂直面部に相当する垂直部分、同垂直部分の下端縁部から屈曲した水平部分、及び、一方の側端縁が同垂直部分に固着されると共に、使用状態で下方に位置する側端縁が水平部分に固着され、且つ、垂直部分に対して板面が交差する配置で立設されたプレート部分を有し、同プレート部分が所定間隔を開けて複数箇所に設けられた長尺なアングル材と、同アングル材を基礎本体部に固定するアンカーボルトとにより構成され、各柱状部材は、プレート部分が収まる下部受け溝が下端面に形成された第1柱と、同第1柱の間に挟んで配置された第2柱と、を含み、第1柱及び第2柱の下部側面と垂直部分とを当接させると共に、下部受け溝部にプレート部分を嵌合させた同第1柱の間に同第2柱を挟む態様で、建物基礎と側壁を接続させた構造である場合は、更に施工性が向上している。
【0049】
詳しくは、アングル材の水平部分が基礎本体部に当接し固定する部分となり、垂直部分が垂直面部となる。また、プレート部分が垂直部分及び水平部分に固着されているため、垂直部分と水平部分との間が拡大しにくいように剛性が向上している。更にまた、アンカーボルトは、例えば、水平部分の板厚方向に貫通して形成された孔に嵌挿され、基礎本体部に埋入した軸部分を以て同基礎本体部との固定構造を成す。
【0050】
つまり、前述した接続部によれば、基礎本体部上において接続部を設ける作業を更に容易に行うことができる。また、この接続部の構成であれば、調達容易な材料で容易に形成できることから材料費を低減できると共に、非熟練工であっても作業を容易に行うことができるので、作業人員の調達が容易で人件費削減も図ることができ、この結果、施工コストの更なる低減化を図ることができる。
【0051】
そして、側壁を構成するにあたり、基礎部上に設けた接続部のプレート部分と第1柱の下部受け溝部を嵌合させ、且つ、第1柱及び第2柱の下部側面と垂直面部とを当接させると共に同第1柱の間に同第2柱を挟む態様により、基礎部の長手方向の端部側から順番に複数を立設しやすく、構成材である柱状部材の上端下端の位置合わせが容易で、施工性が更に向上している。加えて、パネル体やクレーンを不使用で側壁を構成できる点においても、施工性が良好である。
【0052】
更に、全ての柱状部材ではなく、第1柱のみをプレート部分と嵌合させる態様であるため、第2柱はプレート部分との嵌合が不要で、作業の手間を軽減することができる。また、第2柱に必ずしも下部受け溝部を形成せずに済むため、同加工の手間及びコストが不要となる(なお、第2柱に下部受け溝部を形成したものを使用する態様を除外するものではない)。
【0053】
また、屋根が、各側壁のうち対向した一対の同側壁の上端近傍に横設された複数の木製の軸状部材により構成され、隣接した軸状部材が連結構造部により連結されると共に、屋根と側壁が剛接合又は準剛接合された構造である場合は、屋根にも木材が使用されたことで、炭素貯蔵効果及び省エネルギー効果が更に向上している。
【0054】
更に、屋根は、側壁と同様の材料及び工法で屋根を形成することができるため、比較的狭い土地での施工性が良好である。更にまた、屋根は、側壁と剛接合又は準剛接合されていることにより、建物躯体(建物基礎上に位置する部分)がいわゆるモノコック構造となり、建物の堅牢性が更に高まる。
【0055】
なお、軸状部材は、その形状を特に限定するものではなく、例えば、断面形状が四角形等である角柱や、断面形状が円形あるいは楕円形等である円柱等が挙げられる。また、軸状部材は、その一面に溝等の凹部を形成し、同軸状部材の長軸を挟んで凹部の反対方向に凸条等の凸部を形成し、前述の凹部及び凸部を嵌合させて隣接する軸状部材を連結する構造であってもよい。
【0056】
また、基礎本体部が、床スラブ構造又は土間コンクリート構造である場合は、側壁及び建物基礎から成る構造体がいわゆるモノコック構造となり、建物の堅牢性が更に高まる。加えて、側壁と同様の材料及び工法で形成されて側壁と剛接合又は準剛接合された構造である屋根を有するときは、屋根、側壁及び建物基礎から成る構造体がモノコック構造となり、側壁及び建物基礎から成る構造体よりも更に堅牢な構造となっている。
【0057】
また、各側壁及び屋根、又は、各側壁あるいは屋根のいずれか一方は、その外面に耐候性を有する板材が覆設されている場合は、建物に耐候性を付加することができる。更にまた、側壁(屋根が木材の場合は加えて屋根も)の表面が、雨雪や乾燥で痩せることを抑制することができる。
【0058】
上記の目的を達成するために本発明の木造建物の建築方法は、少なくとも形成する側壁の下方となる位置にコンクリート製の基礎本体部を設け、同基礎本体部から立設して成る板状の垂直面部を含んだ接続部を、同基礎本体部上における側壁の形成予定方向と略一致するように設ける、建物基礎形成工程と、同建物基礎形成工程により形成された建物基礎上において、複数本の木製の柱状部材を、軸を縦にして立設すると共に、その下部が接続部に沿うように連続して整列配置させ、且つ、隣接した柱状部材を連結する、側壁形成工程と、前記側壁形成工程により形成された側壁で囲まれた内側領域を覆う屋根を設ける、屋根形成工程と、を備える。
【0059】
ここで、建物基礎形成工程によれば、少なくとも側壁下方となる位置にコンクリート製の基礎本体部を設けることができる。また、基礎本体部上に接続部を立設し、接続部の板面が同側壁の形成方向に沿うように配置することができる。
【0060】
そして、側壁形成工程によれば、前述した建物基礎上に、複数の木製の柱状部材を、建物基礎の長手方向の端部側から順番に接続部に沿わせながら立設し、且つ、隣接した柱状部材を連結することができる。また、屋根形成工程によれば、側壁で囲まれた内側領域を覆う屋根を設けることができる。
【0061】
本発明の建築方法により建築された木造建物は、躯体の大部分を占める側壁に木材を使用しているので、材料に起因する炭素貯蔵効果、及び、建材製造で生じるエネルギーの削減による省エネルギー効果を奏する。
【0062】
更に、本発明の木造建物の建築方法は、側壁が立設した複数の木製の柱状部材を連結して成る構成であって、一般的なガレージ等の同種の建物のように壁面を構成する大型パネルを使用しない。このため、大型パネルを積載した車両やこれを懸架するクレーン車が入り込みにくい、幹線道路から離れた細い路地奥の土地や、周囲に住宅が立て込んだ比較的狭い土地での施工に適している。
【0063】
更にまた、側壁は、建物基礎上に設けた接続部に各柱状部材を沿わせながら、且つ、隣接した柱状部材を連結して成るものであるため、構成材である柱状部材を建物基礎の長手方向の端部側から順番に複数を立設させやすく、同各柱状部材の上端下端の位置合わせが容易であり、パネル体やクレーンを不使用で側壁を構成できる点においても、施工性が良好である。
【0064】
なお、本発明の木造建物の建築方法は、上面に多数のほぞ穴が形成された土台を使用せず、基礎上面に設けた接続部と柱材下面の受け溝が嵌合する構成であるため、一般的な木造の壁面構造体と比較して堅牢な構造になっている。
【0065】
即ち、本発明は、炭素貯蔵効果及び省エネルギー効果を奏すると共に、比較的狭い土地での施工性が良好であり、堅牢な構造木造建物の建築方法となっている。
【発明の効果】
【0066】
本発明によれば、躯体の主要材に木材を使用して炭素貯蔵効果及び省エネルギー効果を奏すると共に、比較的狭い土地での施工性が良好であり、堅牢な構造の壁面構造体、木造建物、及び、木造建物の建築方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】本発明の第1実施形態に係る木造建物の全体外観を示す斜視図である。
図2図1に示す木造建物の構造を横幅方向及び高さ方向で中間省略した縦断面視の模式図である。
図3図1の木造建物における建物基礎と側壁との接続構造を示す説明図であり、(a)は接続部の設置態様を示す斜視説明図、(b)は接続部に対する柱状部材の設置態様を示す斜視説明図、(c)は接続部と柱状部材を接続した状態を示す断面視説明図、(d)は接続部と柱状部材の接続が完了した状態を示す斜視図、である。
図4図1の木造建物において、建物基礎上における接続部の配置を示す平面視説明図である。
図5図1の木造建物において、屋根を省略して各側壁の配置を示す平面視説明図である。
図6図1の木造建物における柱状部材と軸状部材の接合構造を示し、(a)は分解説明図、(b)は一部拡大した断面視説明図、である。
図7図1の木造建物における側壁形成工程の一部を示し、(a)は2本目の柱状部材を連結する工程、(b)は3本目の柱状部材の連結する工程、(c)は4本目の柱状部材の連結する工程、をそれぞれ示している。
図8図7に示す側壁形成工程により形成された側壁の連結構造部を一部拡大して示し、(a)は平面視模式図、(b)正面視模式図、である。
図9】本発明の第2実施形態に係る木造建物の要部を拡大して示す縦断面視説明図である。
図10図9の木造建物における側壁の接続部分を示し、(a)は建物基礎と1階部分の柱状部材の接続部分の模式図、(b)は1階部分と2階部分の接続部分の模式図、(c)は2階部分と上部構造物の接続部分の模式図、である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
図1図10を参照して、本発明の実施の形態を更に詳細に説明する。なお、以下の説明は、〔第1実施形態〕、〔第2実施形態〕の順序により行う。また、図面各図における符号は、煩雑さを軽減し理解を容易にする範囲内で付しており、同一符号が付される複数の同等物についてはその一部にのみ符号を付す場合がある。
【0069】
〔第1実施形態〕
(木造建物1)
図1に示す木造建物1は、本発明の実施の一形態(第1実施形態)である。木造建物1は、平屋構造の建物であり、本実施形態ではガレージ或いは倉庫として使用している。木造建物1は、建物基礎2、側壁3、及び、屋根4を備えている。なお、側壁3は、出入口30が設けられた正面部分を正面側壁部31として、正面側壁部31と対向方向を奥側壁部32、正面側壁部31の右に位置する右側壁部33、及び、正面側壁部31の左に位置する左側壁部34、と称して説明する。各部について、以下で詳述する。
【0070】
(建物基礎2)
図2を参照する。建物基礎2は、基礎本体部21と接続部22を有する。基礎本体部21は、建物の床面及び各側壁下方となる位置を含んだ面積の平面視長方形であり、略平坦なコンクリート製である(いわゆるベタ基礎あるいは土間床基礎)。なお、「略平坦」の語は、完全に平坦な態様を含むと共に、概ね平坦な態様を含む意味で使用している。
【0071】
図2~4を参照する。接続部22は、基礎本体部21上における側壁3(31、32、33、34)の立設予定位置(基礎本体部21の外縁)に配置され、長尺なL字アングル材220及びアンカーボルト223により構成されている。接続部22を構成するL字アングル材220は、その長手方向と、正面側壁部31、奥側壁部32、右側壁部33、左側壁部34の各々の形成方向が沿うように配置されている。
【0072】
L字アングル材220は、基礎本体部21への設置状態において、基礎本体部21から立ち上がる垂直部分と、基礎本体部21に当接する水平部分とを有する。なお、基礎本体部21への設置状態における垂直部分は、前述した「垂直面部」に相当する。
【0073】
水平部分には、板厚方向に貫通する第1挿通孔221が所定間隔で複数形成され、垂直部分には、板厚方向に貫通する第2挿通孔222が所定間隔で複数形成されている。第1挿通孔221と第2挿通孔222の形成位置は、L字アングル材220の短手方向で略同一直線上となっている(図3(a)参照)。
【0074】
L字アングル材220は、第1挿通孔221にアンカーボルト223を挿通固定し、アンカーボルト223の軸部分が基礎本体部21内に埋設されて固着されることで、同固着部分を以て接続部22と基礎本体部21の固定構造を成している(図3(a)、(b)参照)。L字アングル材220の垂直部分に形成された第2挿通孔222は、後述するように、柱状部材35の径方向又は幅方向にドリフトピン等の軸状の固定具224を挿着することで、接続部22と柱状部材35とが分離しないように固定されている(図3(c)、(d)参照)
【0075】
基礎本体部21上面とL字アングル材220下面の間には、複数の免震部材24(減震部材、制震部材であってもよい)が配設されている。本実施形態において各免震部材24は、複数の第1挿通孔221の内の一部と重複する位置で、基礎本体部21上面とL字アングル材220下面の間に挟み込まれるように設置されている(図4参照)。なお、免震部材24は、各側壁が交わる角部における第1挿通孔221と、その隣接する第1挿通孔221に配設し、かつ、各側壁の中間部(両端角部の間)においては所定間隔を開けて配設されている。
【0076】
(側壁3)
図2~3、図5~8を参照する。側壁3を構成する正面側壁部31、奥側壁部32、右側壁部33及び左側壁部34は、建物基礎2上に軸方向が上下となるように立設された複数の木製の柱状部材35、36により、主に構成されている。
【0077】
柱状部材35、36は、所定長さの軸長である断面視正方形の角柱である。本実施形態において、柱状部材35、36は、端面の一辺が10.5cmである。また、柱状部材35、36は、右側壁部33に配置される分の軸長が約286cmであり、左側壁部34に配置される分の軸長が約278cmである。なお、奥側壁部32に使用される柱状部材35、36は、右側壁部33から左側壁部34に向かって徐々に短尺(0.5cmずつ短く)となっている。
【0078】
柱状部材35は、下端面にスリット351(前述した「下部受け溝部」に相当)が、上端面にスリット352が設けられている。スリット351は、これと交差する方向であり、L字アングル材220との嵌合状態において第2挿通孔222と対応する位置に、貫通孔である下孔353が形成されている。スリット351とスリット352は、端面における一対の対向辺と直交する中央(端面が線対称となる位置)に所定の深さで形成されており、スリット351とスリット352は、これらが形成された各端面から見て各々が柱中心軸で略直交する態様で、交差方向に形成されている。なお、「略直交」の語は、直交を含むと共に、概ね直交する態様を含む意味で使用している。
【0079】
柱状部材35の下端面は、スリット351を挟んで、その半分となる一方の領域が、他の半分となる領域よりも窪んだ(換言すると一方の領域が他方の領域よりも長手方向に短尺である)形状に設けられている。そして、柱状部材35は、下端面の窪んだ方の領域が室内側、且つ、アンカーボルト223の位置と重なるように、L字アングル材220の上方から下降させ、垂直部分の第2挿通孔222と位置合わせしてスリット351と嵌合させている(図3(b)、(c)、(d)参照)。
【0080】
なお、嵌合前に、L字アングル材220の垂直部分の両面及び垂直部分の周縁に沿うように、防蟻能及び防湿能を有するシート材23を配置し、嵌合後は、L字アングル材220の垂直部分の表面とスリット351内面との間、及び、柱状部材35の下端面にシート材23が挟まった状態となっている。そして、シート材23の残りの部分を折り返し、柱状部材35の下部表面に沿わせる。この結果、シート材23は、柱状部材35の下部表面及び下端面を覆う態様となる(図3(b)、(c)、(d)参照)。
【0081】
柱状部材35は、L字アングル材220をスリット351の奥まで押し込んで嵌合させた後、第2挿通孔222と下孔353の位置を合わせ、下孔353に軸状の固定具224を挿着する。この結果、各側壁を構成する柱状部材35と接合部22を構成するL字アングル材220が連結される(図3(c)、(d)参照)。本実施形態の固定具224はドリフトピンであるが、これに限定するものではなく、例えば、スクリューボルト等であってもよい。
【0082】
柱状部材36は、略平坦に設けられたその下端面にスリット361(前述した「下部受け溝部」に相当)が設けられている。スリット361は、端面における一対の対向辺と直交する中央(端面が線対称となる位置)に所定の深さで形成されている。そして、柱状部材35は、L字アングル材220の上方から下降させてスリット361と嵌合させている(図3(b)参照)。
【0083】
なお、柱状部材35と同様、柱状部材36についても、嵌合前にL字アングル材220に配置したシート材23が、L字アングル材220の垂直部分の表面とスリット361内面との間、及び、柱状部材36の下端面にシート材23が挟まるように取り付ける。そして、シート材23の残りの部分を折り返し、柱状部材36の下部表面に沿わせる。この結果、シート材23は、柱状部材36の下部表面及び下端面を覆う態様となる(図3(b)参照)。
【0084】
側壁3の各々は、接続部22に沿う形で建物基礎2上に複数の柱状部材35、36を連続して立設し、隣接した柱状部材35及び36、そして柱状部材36同士、を連結構造部により連結することで構成されている。なお、前述した壁面構造体と、側壁3を構成する一の壁面は、同様の構造物である。
【0085】
本実施形態において、側壁3の各々は、各側壁3の角となる部分の近傍を除き、立設した1本の柱状部材35の次には4本の柱状部材36が立設され、4本目の柱状部材36の次に柱状部材35が立設され、この組み合わせを繰り返して側壁3の各々を構成した態様である(図6参照)。しかしながら、同態様に限定するものではなく、柱状部材35の間に配置される柱状部材36の数は4以下6以上であってもよく、更に3以上9以下であってもよい。
【0086】
なお、柱状部材35の間に配置する柱状部材36の数が10を超えると、鉛直方向への引張荷重に対する強度が低下し、建物基礎と側壁との一体性が低減して、建物全体の剛性が低下するため好ましくない。また、柱状部材35の間に配置する柱状部材36の数が3未満の場合、鉛直方向への引張荷重に対する強度は更に向上するが、柱状部材35と接合部22の連結箇所が増加し、作業効率が低下し、材料費及び人件費等のコスト増に繋がるため好ましくない。
【0087】
本実施形態において、連結構造部は、軸長が15cmのスクリューボルト37と、1液型シリコンエポキシ樹脂系接着剤(以下「接着剤」という)から成る。
【0088】
まず、図7(a)に示すように、柱状部材35の一面側に接着剤を塗布し、塗布面側に柱状部材36を立設し、柱状部材35と柱状部材36とを接合する。その後、図示の通り、柱状部材35の反対に位置する柱状部材36の側面から、スクリューボルト37を螺挿する。
【0089】
スクリューボルト37は、前述の長さ(即ち、一の柱状部材を貫通し隣接する柱状部材に至る長さ)であるため、柱状部材36を幅方向に貫通して柱状部材35の幅方向半ばに至り、柱状部材35と柱状部材36とを連結する。そして、スクリューボルト37は、柱状部材36の軸方向において所定の間隔を開けて複数本が螺挿される。
【0090】
このようにして、柱状部材35と柱状部材36の連結構造部が構成されている。
【0091】
更に、図7(b)に示すように、左側に位置する柱状部材36と右側に位置する柱状部材36の連結に際しても、両柱状部材36の間に接着剤を塗布し、左側に位置する柱状部材36の側面から右側に位置する柱状部材36の方向にスクリューボルト37を螺挿し、両柱状部材36を連結する。なお、図7(b)において両柱状部材36を連結すべく新たに螺挿されるスクリューボルト37は、図7(a)で示したスクリューボルト37の螺挿位置と高さ方向にずらした位置に螺挿されている。このようにして、柱状部材36と柱状部材36の連結構造部が構成されている。
【0092】
更にまた、図7(c)に示すように、左側に位置する柱状部材36と右側に位置する柱状部材36の連結に際しても、両柱状部材36の間に接着剤を塗布し、左側に位置する柱状部材36の側面から右側に位置する柱状部材36の方向にスクリューボルト37を螺挿し、両柱状部材36を連結する。なお、図7(c)において両柱状部材36を連結すべく新たに螺挿されるスクリューボルト37は、図7(b)で示したスクリューボルト37の螺挿位置と高さ方向にずらした位置(図7(a)で示したスクリューボルト37の螺挿位置と略同一軸線上)に螺挿されている。このようにして、柱状部材36と柱状部材36の連結構造部が構成されている。
【0093】
図8は、図7の工程を経て形成された各側壁3を示す。
各側壁3では、隣接する柱状部材におけるスクリューボルト37の螺挿位置は、高さ方向に約80cmの間隔(符号S1)を空けて設けている。また、スクリューボルト37の軸長(符号S2)は約15cmである。また、隣接する柱状部材において螺挿されたスクリューボルト37は、1本目の柱状部材を貫通すると共に、その先部が2本目の柱状部材の太さの半分程に至り、約5cmの幅(符号S3)を残して2本目は未貫通となる。
このようにして成した各側壁3では、隣接する柱状部材においてスクリューボルト37の螺挿位置が高さ方向に交互に異なり(非直線状)、これにより各側壁3における柱状部材の連結力を高めている。
【0094】
上記の構造により、出入口30の左右両側に係る正面側壁部31、奥側壁部32、右側壁部33及び左側壁部34は形成されている。なお、正面側壁部31の出入口30上側の垂れ壁は、短尺な柱状部材(符号省略)の連結により形成されている。
【0095】
また、正面側壁部31、奥側壁部32及び右側壁部33は、その外面にサイディングボード(符号省略)が覆設され、各外面とサイディングボードの間には断熱材(符号省略)が挟まれている。更にまた、左側壁部34は、その外面にガルバリウム鋼板(登録商標。以下省略)が覆設され、各外面とガルバリウム鋼板の間には断熱材(符号省略)が挟まれている。なお、サイディングボード及びガルバリウム鋼板は、前述した「耐候性を有する板材」に相当する。
【0096】
右側壁部33の正面側壁部31近傍には、勝手口331が設けられており、出入口30の開閉の手間をかけなくても利用者が出入りできるようになっている。右側壁部33における勝手口331上側の垂れ壁は、短尺な柱状部材(符号省略)の連結により形成されている。
【0097】
なお、図示は省略するが、正面側壁部31、奥側壁部32、右側壁部33及び左側壁部34には、窓、換気口、木造建物1内に設置されたエアコンの室外機等を設けてもよい。
【0098】
(屋根4)
屋根4は、右側壁部33の上端近傍と左側壁部34の上端近傍の間に横設された複数の木製の軸状部材41、42により構成されている。なお、前述した通り、右側壁部33の上端位置(高さ)と左側壁部34の上端位置(高さ)は相違しており、屋根4は、右側壁部33方向からと左側壁部34方向に下り傾斜する、片流れ形状の屋根となっている。
【0099】
屋根4は、隣接した軸状部材41と軸状部材42、又は、隣接した軸状部材42と軸状部材42とが、連結構造部により連結されて一体化している。なお、連結構造部については、側壁3と同様(スクリューボルト37及び接着剤を使用し、スクリューボルト37が互い違いに螺挿されている)であるため、説明を省略する。
【0100】
屋根4は、これを構成する軸状部材41の一端側が右側壁部33の上端近傍と、他端側が左側壁部34の上端近傍と、それぞれ準剛接合された構造である。
【0101】
より詳しくは、軸状部材41の両端にはスリット411が形成されており、柱状部材35上部に形成されたスリット352と位置を合わせ、スリット411及びスリット352の両方に亘るように長方形のプレート金物43を嵌挿されている。そして、嵌挿されたプレート金物43に形成された貫通孔431と位置を合わせ、貫通孔431の正面となる柱状部材35の表面部分及び軸状部材41の表面部分から軸状の固定具を挿着する。この結果、柱状部材35上端と軸状部材41先端が連結される。
【0102】
本実施形態において、屋根4は、正面側壁部31及び奥側壁部32の近傍を除き、軸状部材41の次には4本の軸状部材42が横設され、4本目の軸状部材42の次に軸状部材41が横設され、この組み合わせを繰り返して屋根4を構成した態様である。しかしながら、同態様に限定するものではなく、軸状部材41の間に配置される軸状部材42の数は4以下6以上であってもよく、更に3以上9以下であってもよい。
【0103】
なお、軸状部材41の間に配置する軸状部材42の数が10を超えると、屋根4と右側壁部33及び左側壁部34との連結強度が低下し、屋根と側壁との一体性が低減して、建物全体の剛性が低下するため好ましくない。また、柱状部材35の間に配置する柱状部材36の数が3未満の場合、左右の側壁部との連結強度は更に向上するが、軸状部材41と側壁の連結箇所が増加し、作業効率が低下し、材料費及び人件費等のコスト増に繋がるため好ましくない。
【0104】
屋根4は、その外面(上面側)に、ガルバリウム鋼板が覆設され、各外面とガルバリウム鋼板の間には断熱材(符号省略)が挟まれている。なお、ガルバリウム鋼板は、前述した「耐候性を有する板材」に相当する。また、右側壁と左側壁は、前述した「各側壁のうち対向した一対の同側壁」に相当する。
【0105】
〔第1実施形態の木造建物の建築方法〕
第1実施形態の木造建物1の建築方法について説明する。同建築方法は、建物基礎形成工程、側壁形成工程、及び、屋根形成工程を備える。
【0106】
建物基礎形成工程では、側壁3の下方となる位置を含む面積のコンクリート製の基礎本体部を設ける。そして、基礎本体部21の外縁に沿って、側壁3の下端面と対応する位置に、L字アングル材220及びアンカーボルト223からなる接続部22を立設すると共に、接続部22を構成するL字アングル材220の垂直面が、側壁3の形成方向に沿うように配置する。
【0107】
側壁形成工程では、建物基礎形成工程により形成された建物基礎2上に、複数の柱状部材35、36を連続的に立設し、隣接する柱状部材35、36をスクリューボルト37及び接着剤により連結し、一体化した側壁3を構成する。
【0108】
柱状部材35、36は、その下部受け溝部であるスリット351、361と、L字アングル材220の垂直面を嵌合させながら立設する。なお、側壁3は、最初に奥側壁部32を構成し、次いで右側壁部33及び左側壁部34を構成し、最後に正面側壁部31を構成する。そして、右側壁部33及び左側壁部34の施工においては、奥側壁部32に近い側の端部側(即ち、建物基礎2の長手方向の端部側)から順番に柱状部材35、36を立設し、且つ、隣接した柱状部材35、36を連結する。同順序での施工により、建物に囲まれた間口が狭い狭小地であっても容易に施工することができると共に、狭小地の有効活用が可能となる。
【0109】
屋根形成工程では、側壁3を覆う屋根を設ける。詳しくは、屋根4は、右側壁部33の上端近傍と左側壁部34の上端近傍の間に横設された複数の木製の軸状部材41、42により構成する。また、屋根4は、隣接した軸状部材41と軸状部材42、又は、隣接した軸状部材42と軸状部材42とが、スクリューボルト37及び接着剤を使用し、スクリューボルト37が互い違いに螺挿されて成る連結構造部により連結されて一体化されている。更にまた、屋根4は、これを構成する軸状部材41の一端側が右側壁部33の上端近傍と、他端側が左側壁部34の上端近傍とを、それぞれ準剛接合する。
【0110】
(作 用)
木造建物1は、建物基礎2、四方の側壁3及び屋根4を備えることにより、正面側壁部31に設けた出入口30を主たる出入口とする屋根付きの木造建物を得ることができ、車庫や物置等のスペースとして好適に使用することができる。
【0111】
建物基礎2は、側壁3及び屋根4を含む建物の荷重を支持することができる。そして、建物基礎2は、前述した構成の接続部22を有することにより、接続部22であるL字アングル材220の垂直部分と、柱状部材35、36下端面のスリット351、361を嵌合させるだけで、複数の柱状部材35、36を直線状に容易に配置することができる。
【0112】
また、接続部22を構成するL字アングル材220は、その水平部分に形成された第1挿通孔221にアンカーボルト223を嵌挿し、アンカーボルト223が基礎本体部21に固着される構造であるため、基礎本体部21上において側壁3の形成方向と垂直部分が略一致するように沿わせて配置する固定作業を、非熟練工であっても容易に行うことができる。加えて、接続部22を構成するL字アングル材220は、調達容易な部材であることから材料費を低減できると共に、施工容易であるため作業者の調達が容易で、人件費削減も図ることができる。この結果、施工コストの更なる低減化を図ることができる。
【0113】
更にまた、L字アングル材220は、その垂直部分に形成された第2挿通孔222に軸状の固定具224を挿着しやすく、固定具223の挿着後は、鉛直方向への引張荷重に対する強度が更に向上する。この結果、建物基礎2と側壁3との一体性が増し、建物全体の剛性が更に向上する。
【0114】
側壁3は、建物基礎2上に複数の柱状部材35、36を連続して立設し、連結構造部により隣接した柱状部材35、36を連結することで、木造建物1における側壁3(壁面構造体)を成すことができる。当該構造により、例えば、壁面を構成する大型パネルの搬入が困難な狭い場所であっても、木造建物1における側壁3(壁面構造体)を設けることができる。
【0115】
そして、複数の柱状部材35、36を直線状に配設する側壁3の施工は、柱状部材35、36の下端面のスリット351、361に、建物基礎の接続部であるL字アングル材220の垂直部分を嵌合させるだけで、非熟練工であっても精度良く且つ容易に行うことができる。
【0116】
また、側壁3の下部表面及び下端面を覆うように設けられたシート材23は、側壁3内にシロアリが侵入したり、水分の滲入によって側壁3下部が腐食したりすることを抑制する。なお、シート材であることにより、塗剤のように含浸、乾燥を待つことなく施工を進めることができる。加えて、シート材23は、受け溝部であるスリット351、361内と接続部であるL字アングル材220の垂直部分の間にも配設されているため、スリット351、361を介して側壁内にシロアリが侵入したり、水分の滲入によって側壁3下部が腐食したりすることを更に抑制している。なお、シート材23は、塗剤のように含浸、乾燥を待つことなく施工を進めることができる。
【0117】
屋根4は、屋内外を区画し、屋内の収納物(車両等)を雨雪、日光及び外気等から保護する。また、屋根4は、側壁3と同様の材料及び工法で屋根4を形成することができ、非熟練工であっても精度良く且つ容易に行うことができる。更にまた、屋根4と側壁3とが準剛接合された木造建物1は、建物躯体がモノコック構造となり、堅牢性を更に向上させている。
【0118】
なお、側壁3と屋根4の外面に覆設されたサイディングボード及びガルバリウム鋼板は、木造建物1に耐候性及び耐火性を付加し、審美性を向上させている。また、木造建物1の側壁3及び屋根4の表面が、雨雪や乾燥で痩せることも抑制する。更にまた、耐火性の付加により、例えば、都市部等において建設された木造建物1が、隣接する建物との距離が近い場合で、隣の建物が火災に遭ったとしても、隣の建物に向いた側の壁面が延焼しにくい構造となる。なお「耐火性」については、立地等に応じて、「耐火性」よりも火熱を遮る時間が短い能力の「防火性」の外面覆設材、あるいは、「耐火性」以下「防火性」以上の火熱を遮る能力の「準耐火性」の外面覆設材で代替することもできる。
【0119】
木造建物1は、建物基礎2と側壁3との接続が前述した接続構造であるため、前述した一般的な木造建物と比較して、施工性が良好であると共に堅牢な構造であり、加えて、屋根4と側壁3とが準剛接合されたことで建物躯体がモノコック構造となり、堅牢性を更に向上させている。
【0120】
木造建物1は、躯体の大部分を占める側壁3及び屋根4に木材を使用しているので、材料に起因する炭素貯蔵効果、及び、建材製造で生じるエネルギーの削減による省エネルギー効果を奏する。また、側壁3を構成する柱状部材35、36、及び、屋根4を構成する軸状部材41、42には、標準的規格(汎用的且つ同一規格)の木材を採用し、上下の端面を適宜加工して使用しているので、調達容易であることから材料費を低減できる。
【0121】
更に、木造建物1は、側壁3が立設した複数の木製の柱状部材35、36を連結して成り、且つ、屋根4が横架した複数の木製の軸状部材41、42を連結して成る構成であって、これらに標準的規格の木材を採用しており、一般的なガレージ等の同種の建物のように壁面を構成する大型パネルを使用しない。このため、大型パネルを積載した車両やこれを懸架するクレーン車が入り込みにくい、幹線道路から離れた細い路地奥の土地や、周囲に住宅が立て込んだ比較的狭い土地での施工に適している。更にまた、側壁3と建物基礎2の接合構造が、前述の通り、接続部22と柱状部材35、36を嵌合させながら、建物基礎2の長手方向の端部側から順番に複数を立設し、且つ、隣接した柱状部材35、36を連結して成るものであるため、柱状部材35、36の上端下端の位置合わせが容易であり、パネル体やクレーンを不使用で側壁3を構成できる点においても、施工性が良好である。
【0122】
以上の通り、木造建物1は、炭素貯蔵効果及び省エネルギー効果を奏すると共に、比較的狭い土地での施工性が良好であり、堅牢な構造となっている。
【0123】
本実施の形態において、建物は平屋であるが、これに限定するものではなく、2階建て以上であってもよい。この場合、側壁3の屋内側等に、鉄骨柱や耐力壁等の耐力構造体を設けた構造であってもよい。
【0124】
〔第2実施形態〕
(木造建物1a)
図9~10に示す木造建物1aは、本発明の他の実施形態(第2実施形態)である。木造建物1aは、2階建て構造の建物であり、建物基礎5、側壁6、及び、屋根7を備えている。各部について、以下で詳述する。なお、木造建物1aにおいて、第1実施形態で説明した木造建物1と共通する構成及びその作用効果については説明を省略し、後述する相違点を主に説明する。
【0125】
(建物基礎5)
建物基礎5は、基礎本体部51と接続部52を有する。なお、基礎本体部51については、第1実施形態の基礎本体部21とほぼ同様であるため、その構成及び作用効果の説明を省略する。
【0126】
<接続部52>
図9及び図10(a)を参照する。接続部52は、長尺なアングル材520により構成されている。アングル材520は、その長手方向と、第1壁面部61の形成方向が沿うように配置されている。
【0127】
アングル材520は、長尺であり、基礎本体部51への設置状態において、基礎本体部51から立ち上がる垂直部分521、垂直部分51の下端縁部から屈曲した水平部分522、及び、垂直部分521に対して板面が交差する配置で立設された複数のプレート部分523を有する。そして、プレート部分523は、一方の側端縁が垂直部分521と、使用状態で下方に位置する側端縁が水平部分522に固着された態様であり、相互に所定間隔で設けられている。
【0128】
アングル材520は、水平部分522が基礎本体部51上に当接し、固定具(符号省略)により基礎本体部51に固着されることで、接続部52と基礎本体部51との固定構造を成している。また、第1実施形態と同様、基礎本体部21上面とL字アングル材220下面の間には、複数の免震部材(符号省略)が配設されている。
【0129】
本実施形態では、一のプレート部分523と他のプレート部分523の間に、4本の柱状部材を挟むことができる間隔であるが、これに限定するものではなく、例えば、1~3本の柱状部材を挟むことができる間隔であってもよいし、5本以上の柱状部材を挟むことができる間隔であってもよい。
【0130】
(側壁6)
側壁6は、1階部分を構成する第1壁面部61、2階部分を構成する第2壁面部62、第1壁面部61と第2壁面部62を接続する接続具63、及び、第2壁面部62上端に取り付けられる上端接続具64、から成る。なお、第1壁面部61と第2壁面部62は、第1実施形態の側壁3と同様に、連結構造部により連結されて成る構造であり、連結構造に関する連結方法及び作用効果について説明を省略する。
【0131】
<第1壁面部61>
第1壁面部61は、複数本の柱状部材により構成され、2種類の第1柱611と第2柱615からなる。第1柱611と第2柱615は、所定長さの軸長である断面視正方形の木製の角柱である。なお、第1柱611と第2柱615の軸長は同じである。
【0132】
第1柱611は、下端面にスリット(前述した「下部受け溝部」に相当。図示省略)が、上端面にスリット(前述した「上部受け溝部」に相当。図示省略)が各々設けられ、第1柱611の上端面に形成されたスリットは、後述する接続具63の第2プレート部分634が収まる部分である。第1柱611の上下端面に形成された各スリットは、各端面から見て各々が柱中心軸を通って略重複する態様で形成されている。なお、「略重複」の語は、完全に重複する状態を含むと共に、概ね重複する態様を含む意味で使用している。
【0133】
第2柱材615は、上端面及び下端面にスリット非形成の一般的な角柱である。
第1柱611及び第2柱615は、その下端面と水平部分522上面を当接させ、且つ、その下部側面と垂直部分51を当接させている。そして、第1柱611下端面のスリットには、プレート部分523が嵌合し、第1柱611の間に第2柱615が挟まれている。建物基礎5と第1壁面部61は、当該態様により接続した構造となっている。
【0134】
<第2壁面部62>
第2壁面部62は、複数本の柱状部材により構成され、2種類の第1柱材621と第2柱材625からなる。第1柱材621と第2柱材625は、所定長さの軸長である断面視正方形の木製の角柱である。なお、第1柱621と第2柱625の軸長は同じである。
【0135】
第1柱621は、下端面にスリット(前述した「下部受け溝部」に相当。図示省略)が、上端面にスリット(前述した「上部受け溝部」に相当。図示省略)が各々設けられ、前述した第1柱621と同様の構成であるため、説明を省略する。なお、第2柱材625は、第2柱材615と同様に、スリット非形成の角柱である。
【0136】
<接続具63>
図10(b)を参照する。接続具63は、第1壁面部61と第2壁面部62の間に配置され、これらを接続する器具である。接続具63は、垂直部分631、水平部分632、第1プレート部分633、及び、第2プレート部分634を有する。
【0137】
水平部分632は、接続具63の設置状態において、底面部分が第1壁面部61上端面と相対し、上面部分が第2壁面部62の底面を受ける部分である。
垂直部分631は、水平部分632の端縁から上方へ屈曲して起立した部分である。
【0138】
第1プレート部分633は、垂直部分631に対して板面が交差する配置で、垂直部分631及び水平部分632に固着されている。そして、第1プレート部分633は、所定間隔を開けて複数箇所に設けられている。
【0139】
第2プレート部分634は、その上端縁が水平部分632下面に固着して垂設されている。そして、第2プレート部分634は、所定間隔を開けて複数箇所に設けられ、各第1プレート部分633の直下となる箇所に配設されている。
【0140】
<上端接続具64>
図10(c)を参照する。上端接続具64は、垂下部分641、天面部分642、及び、垂下プレート部分643を有する。
天面部分642は、上端接続具64の設置状態において、底面部分が第2壁面部62上端面と相対し、上面部分が屋根7方向に向いている。
垂下部分641は、天面部分642の端縁から下方へ屈曲して垂下した部分である。
【0141】
垂下プレート部分643は、垂下部分641に対して板面が交差する配置で、垂下部分641及び天面部分642に固着されている。そして、垂下プレート部分643は、所定間隔を開けて複数箇所に設けられている。
【0142】
屋根7は、複数の隣接した軸状部材を連結構造部により連結されて一体化し、外面をガルバリウム鋼板等の外面覆設材を覆設しており、第1実施形態の屋根4とほぼ同様であるため、その構成及び作用効果の説明を省略する。
【0143】
(作 用)
木造建物1aの作用効果を説明する。
図9及び図10(a)を参照する。木造建物1aは、建物基礎5上に第1壁面部61を構成するにあたり、接続部52を設ける。接続部52は、アングル材520の水平部分522が基礎本体部51上面に位置し、垂直部分521とプレート部分523が基礎本体部51上方へ立ち上がるようにして、基礎本体部51上面にアングル材520を配設することで形成でき、基礎本体部51上において接続部52を設ける作業を更に容易に行うことができる。
【0144】
そして、接続部52においては、アングル材520のプレート部分523と第1柱611下端面に形成されたスリットを嵌合させ、第1柱材611及び第2柱材615の下部側面と垂直部分521とを当接させ、第1柱材611の間に第2柱615材を挟む。これにより、建物基礎5の長手方向の端部側から順番に複数を立設しやすく、第1柱材611及び第2柱材615の上端下端の位置合わせも容易で施工性が良い。
【0145】
そして、木造建物1aは、全ての柱状部材ではなく、第1柱材611のみをプレート部分523と嵌合させる態様であるため、第2柱材615はプレート部分との嵌合が不要で、作業の手間を軽減することができる。また、第2柱に必ずしも下部受け溝部であるスリットを形成せずに済むため、同加工の手間及びコストが不要となる。
【0146】
このように、前述したアングル材520を使用した接続部52によれば、基礎本体部51上において第1壁面部61の形成方向と垂直部分521が略一致するように沿わせて配置する固定作業を、非熟練工であっても容易に行うことができる。
【0147】
加えて、接続部52を構成するアングル材520は、調達容易なL字アングル材を加工したものであることから、材料費を低減できる。また、アングル材520は、プレート部分523が垂直部分521及び水平部分522に固着されているため、垂直部分521と水平部分522との間が拡大しにくい(荷重により曲がりにくい)構造であり、剛性が向上している。
【0148】
図9及び図10(b)を参照する。木造建物1aは、前述した第1壁面部61の階上方向に第2壁面部62を構成するにあたり、第1壁面部61と第2壁面部62の間に接続具63を配置する。
【0149】
まず、接続具63は、その第2プレート部分634を、第1壁面部61の第1柱611上端面に形成されたスリットに嵌着させ、その水平部分632の底面部分を(第1柱材611と第2柱材615を含む)第1壁面部61上端面に当接させる。これにより、第1柱材611及び第2柱材615の上端の位置合わせ及び固定が容易に行われる。
【0150】
次に、接続具63においては、第1プレート部分633を、第2壁面部62の第1柱621下端面に形成されたスリットに嵌合させ、第1柱材621及び第2柱材625の下部側面と垂直部分631とを当接させ、第1柱材621の間に第2柱材625を挟み、(第1柱材621及び第2柱材625を含む)第2壁面部62下端面を水平部分632の上面部分に当接させる。これにより、側壁6の長手方向の端部側から順番に複数を立設しやすく、第1柱材621及び第2柱材625の上端下端の位置合わせも容易で施工性が良い。
【0151】
このように、前述した接続具63によれば、第1壁面部61上において、第2壁面部62の形成方向と第1壁面部61とを略一致するように沿わせて配置する固定作業を、非熟練工であっても容易に行うことができる。加えて、第1プレート部分633と第2プレート部分634は、水平部分632を挟んで鉛直方向に配置されており、これにより、第1プレート部分633に嵌着した第2壁面部62の第1柱材621と、第2プレート部分634に嵌着した第1壁面部61の第1柱材615とが通し柱状になり、木造建物1aの耐震性向上に寄与している。
【0152】
図9及び図10(c)を参照する。木造建物1aは、第2壁面部62の上端に、上端接続具64を取り付けている。
上端接続具64は、その垂下プレート部分643を、第2壁面部62の第1柱621上端面に形成されたスリットに嵌着させ、その天面部分642の底面部分を(第1柱材621と第2柱材625を含む)第2壁面部62上端面に当接させ、第1柱材621の間に第2柱材625を挟む。
【0153】
これにより、第2壁面部62は、第1柱材621及び第2柱材625の上端の位置合わせ及び固定が容易に行われる。更に、第2壁面部62は、側壁6の長手方向の端部側から順番に複数を立設しやすく、第1柱材621及び第2柱材625の上端下端の位置合わせも容易で施工性が良い。
【0154】
なお、木造建物1aは、第1壁面部61を構成する第1柱材611及び第2柱材615、第2壁面部62を構成する第1柱材621及び第2柱材625、の太さによって、側壁6を耐力壁とすることもできる。一方、図9において、第1壁面部61及び第2壁面部62よりも屋内側に破線で示す位置に耐力構造体(符号省略)を設けてもよく、この場合、側壁6に加わる水平荷重等の応力を耐力構造体に負担させることができ、耐震性が向上した構造となる。
【0155】
以上の通り、木造建物1aについても、木造建物1と同様、炭素貯蔵効果及び省エネルギー効果を奏すると共に、比較的狭い土地での施工性が良好であり、堅牢な構造となっている。
【0156】
本明細書および特許請求の範囲で使用している用語と表現は、あくまでも説明上のものであって、なんら限定的なものではなく、本明細書および特許請求の範囲に記述された特徴およびその一部と等価の用語や表現を除外する意図はない。また、本発明の技術思想の範囲内で、種々の変形態様が可能であるということは言うまでもない。また、第一、第二などの言葉は、等級や重要度を意味するものではなく、一つの要素を他の要素から区別するために使用したものである。
【符号の説明】
【0157】
1、1a 木造建物
2 建物基礎
21 基礎本体部
22 接続部
220 L字アングル材
221 第1挿通孔
222 第2挿通孔
223 アンカーボルト
224 固定具
23 シート材
24 免震部材
3 側壁
30 出入口
31 正面側壁部
32 奥側壁部
33 右側壁部
331 勝手口
34 左側壁部
35 柱状部材
351 スリット
352 スリット
353 下孔
36 柱状部材
361 スリット
37 スクリューボルト
4 屋根
41 軸状部材
411 スリット
42 軸状部材
43 プレート金物
431 貫通孔
5 建物基礎
51 基礎本体部
52 接続部
520 アングル材
521 垂直部分
522 水平部分
523 プレート部分
6 側壁
61 第1壁面部
611 第1柱材
612 スリット
613 スリット
615 第2柱材
62 第2壁面部
621 第1柱材
622 スリット
623 スリット
625 第2柱材
63 接続具
631 垂直部分
632 水平部分
633 第1プレート部分
634 第2プレート部分
64 上端接続具
641 垂下部分
642 天面部分
643 垂下プレート部分
7 屋根
S1 間隔
S2 スクリューボルトの軸長
S3 未貫通の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-03-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基礎部及び1階部分を構成する第1壁面部を備え、
該基礎部は、コンクリート製の基礎本体部と、該基礎本体部から立設された板状の垂直面部が、前記第1壁面部の形成方向と略一致するように設けて成る接続部とを有する構造であり、
前記第1壁面部は、軸を縦にして立設されると共に、その下部が前記接続部に沿って連続して整列配置された、複数本の木製の柱状部材と、隣接した該柱状部材を連結する連結構造部とを有する構造であり、
前記接続部は、前記垂直面部に対して板面が交差する配置で立設されたプレート部分が、所定間隔を開けて複数箇所に設けられ、
前記各柱状部材は、前記プレート部分が収まる下部受け溝が下端面に形成された第1柱と、該第1柱の間に挟んで配置された第2柱と、を含み、
前記第1柱及び前記第2柱の下部側面と前記垂直面部とを当接させると共に、前記下部受け溝に前記プレート部分を嵌合させた同第1柱の間に同第2柱を挟む態様で、前記基礎部と前記第1壁面部を接続させた構造である、
壁面構造体。
【請求項2】
前記接続部は、前記垂直面部に相当する垂直部分、該垂直部分の下端縁部から屈曲した水平部分、及び、一方の側端縁が同垂直部分と、使用状態で下方に位置する側端縁が同水平部分に固着された態様の前記プレート部分を有する長尺なアングル材、及び、該アングル材を前記基礎本体部に固定する固定具により構成されている、
請求項1に記載の壁面構造体。
【請求項3】
階上部分を構成する第2壁面部と、該第2壁面部と前記第1壁面部を接続する接続具と、を更に備え、
前記接続具は、設置状態において、前記第2壁面部の底面を受ける水平部分と、該水平部分の上方へ起立した垂直部分と、該垂直部分に対して板面が交差する配置で同垂直部分及び同水平部分に固着され、所定間隔を開けて複数箇所に設けられた第1プレート部分と、前記水平部分下面に垂設された第2プレート部分とを有し、
前記第1壁面部は、その上端面に前記第2プレート部分が収まる上部受け溝が形成され、
前記第2壁面部は、軸を縦にして立設されると共に、その下部が前記接続具の垂直部分に沿って連続して整列配置され、前記第1プレート部分が収まる下部受け溝が下端面に形成された第1柱、及び、該第1柱の間に挟んで配置された第2柱を含む複数本の木製の柱状部材と、隣接した該柱状部材を連結する連結構造部とを有し、
前記第1壁面部の上部受け溝に前記第2プレート部分を嵌合させ、前記第2壁面部の前記第1柱及び前記第2柱の下部側面と前記垂直部分とを当接させると共に、同第1柱の前記下部受け溝部に前記第1プレート部分を嵌合させて同第1柱の間に同第2柱を挟んだ態様の前記接続具を以て、前記第1壁面部と前記第2壁面部を接続させた構造である、
請求項1又は請求項2に記載の壁面構造体。
【請求項4】
前記第1壁面部の側面下方表面及び下端面を覆うように、防蟻能及び防湿能を有する防蟻防湿シート材が配設されている、
請求項1乃至3のいずれかに記載の壁面構造体。
【請求項5】
前記防蟻防湿シート材は、前記第1壁面部の前記下部受け溝部内において、同下部受け溝部と前記接続部との間にも配設されている、
請求項4に記載の壁面構造体。
【請求項6】
建物基礎、少なくとも三方の側壁、及び、屋根を備え、
前記建物基礎は、少なくとも前記各側壁下方となる位置に設けられたコンクリート製の基礎本体部と、該基礎本体部から立設された板状の垂直面部が、前記各側壁の形成方向と略一致するように設けて成る接続部とを有し、該接続部は、前記垂直面部に対して板面が交差する配置で立設されたプレート部分が、所定間隔を開けて複数箇所に設けられた構造であり、
前記各側壁は、軸を縦にして立設されると共に、その下部が前記接続部に沿って連続して整列配置された、複数本の木製の柱状部材と、隣接した該柱状部材を連結する連結構造部とを有し、前記各柱状部材は、前記プレート部分が収まる下部受け溝が下端面に形成された第1柱と、該第1柱の間に挟んで配置された第2柱と、を含み、前記第1柱及び前記第2柱の下部側面と前記垂直面部とを当接させると共に、前記下部受け溝部に前記プレート部分を嵌合させた同第1柱の間に同第2柱を挟む態様で、前記基礎部と前記第1壁面部を接続させた構造であり、
前記屋根は、前記各側壁に囲まれた内側領域の上部を覆うように設けられている、
木造建物。
【請求項7】
前記接続部は、前記垂直面部に相当する垂直部分、及び、該垂直部分の下端縁部から屈曲した水平部分を有する長尺なL字アングル材、及び、該L字アングル材を前記基礎本体部に固定するアンカーボルトにより構成され、
前記各柱状部材は、前記下部受け溝に相当し前記垂直部分が収まる下部受け溝部が底面に形成され、同各柱状部材の連結状態において前記各下部受け溝部の形成方向が略同一線上で一致し、同各下部受け溝部に前記垂直部分を嵌合させた態様で、前記建物基礎と前記側壁を接続させた構造である、
請求項6に記載の木造建物。
【請求項8】
前記接続部は、前記垂直面部に相当する垂直部分、該垂直部分の下端縁部から屈曲した水平部分、及び、一方の側端縁が同垂直部分に固着されると共に、使用状態で下方に位置する側端縁が前記水平部分に固着され、且つ、前記垂直部分に対して板面が交差する配置で立設されたプレート部分を有し、該プレート部分が所定間隔を開けて複数箇所に設けられた長尺なアングル材と、該アングル材を前記基礎本体部に固定するアンカーボルトとにより構成されている、
請求項6に記載の木造建物。
【請求項9】
前記屋根が、前記各側壁のうち対向した一対の同側壁の上端近傍に横設された複数の木製の軸状部材により構成され、隣接した前記軸状部材が連結構造部により連結されると共に、前記屋根と前記側壁が剛接合又は準剛接合された構造である、
請求項6乃至8のいずれかに記載の木造建物。
【請求項10】
前記基礎本体部が、床スラブ構造又は土間コンクリート構造である、
請求項6乃至9のいずれかに記載の木造建物。
【請求項11】
前記各側壁及び前記屋根、又は、前記各側壁あるいは前記屋根のいずれか一方は、その外面に耐候性を有する板材が覆設されている、
請求項6乃至10のいずれかに記載の木造建物。
【請求項12】
少なくとも形成する側壁の下方となる位置にコンクリート製の基礎本体部を設け、該基礎本体部から立設して成る板状の垂直面部及び該垂直面部に対して板面が交差する配置で所定間隔を開けて複数箇所に立設されたプレート部分を含んだ接続部を、同基礎本体部上における前記側壁の形成予定方向と略一致するように設ける、建物基礎形成工程と、
該建物基礎形成工程により形成された建物基礎上において、前記プレート部分が収まる下部受け溝が下端面に形成された第1柱と、該第1柱の間に挟んで配置する第2柱とを含む構成の複数本の木製の柱状部材を、軸を縦にし、前記第1柱及び前記第2柱の下部側面と前記垂直面部とを当接させて立設すると共に、前記下部受け溝に前記プレート部分を嵌合させた同第1柱の間に同第2柱を挟む態様で、同第1柱と同第2柱の下部が前記接続部に沿うように連続して整列配置させ、且つ、隣接した前記柱状部材を連結し、前記基礎本体部と接続する、側壁形成工程と、
前記側壁形成工程により形成された側壁で囲まれた内側領域を覆う屋根を設ける、屋根形成工程と、
を備える、
木造建物の建築方法。