(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061940
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】ガラス長繊維強化熱可塑性樹脂組成物およびこれを含む成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20220412BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20220412BHJP
C08K 9/02 20060101ALI20220412BHJP
C08K 5/5465 20060101ALI20220412BHJP
C08J 5/06 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K7/14
C08K9/02
C08K5/5465
C08J5/06 CFG
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021086262
(22)【出願日】2021-05-21
(31)【優先権主張番号】10-2020-0129251
(32)【優先日】2020-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】513132586
【氏名又は名称】ジーエス カルテックス コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100187159
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 英明
(72)【発明者】
【氏名】ソ、キョンベ
(72)【発明者】
【氏名】ノ、ワンキ
(72)【発明者】
【氏名】カン、インソク
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ミンシク
(72)【発明者】
【氏名】イ、ハンソル
(72)【発明者】
【氏名】パク、サンソン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ジェハン
(72)【発明者】
【氏名】イ、ヒョンタク
(72)【発明者】
【氏名】ヨン、ソクジン
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
【Fターム(参考)】
4F072AA02
4F072AA08
4F072AB09
4F072AB14
4F072AB15
4F072AB21
4F072AC15
4F072AD44
4F072AH04
4F072AH23
4F072AK02
4F072AK15
4F072AL02
4J002CL011
4J002CL031
4J002DL006
4J002EX077
4J002FA046
4J002FB276
4J002FD016
4J002FD207
4J002GN00
(57)【要約】 (修正有)
【課題】パノラマサンルーフのフレームに必要な高い物理的物性および寸法安定性を確保でき、かつ、軽量化および生産単価の低減に役立つ熱可塑性樹脂組成物を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂組成物は、ポリアミド30重量%~70重量%;ガラス繊維を含み、平板の形状を有する強化剤20重量%~60重量%;および、シラン系カップリング剤1重量%~5重量%を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド30重量%~70重量%;
ガラス繊維を含み、平板の形状を有する強化剤20重量%~60重量%;および
シラン系カップリング剤1重量%~5重量%
を含む熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリアミドは、脂肪族ポリアミドを含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記脂肪族ポリアミドは、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6/12、ポリアミド1010、ポリアミド11、ポリアミド1012、ポリアミド12、ポリアミド1212、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくともいずれか1つを含む、請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記ポリアミドは、数平均分子量が20,000~70,000のものである、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記強化剤は、下記式1で表される扁平率が2~5のものである、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
[式1] 断面の平均長辺長さ/断面の平均短辺長さ
【請求項6】
前記強化剤は、断面の平均短辺長さが3μm~15μmのものである、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記強化剤は、長さが5mm~15mmのものである、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記強化剤は、その表面にサイジング剤が付着しているものである、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記サイジング剤は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された少なくともいずれか1つを含む、請求項8に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
前記サイジング剤の含有量が前記熱可塑性樹脂組成物の全重量を基準として0.1重量~3重量%のものである、請求項8に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
前記シラン系カップリング剤は、イソシアネート官能基を含むものである、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
前記シラン系カップリング剤のイソシアネート官能基は、前記ポリアミドと水素結合するか;前記ポリアミドのアミン基と共有結合を形成するものである、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項13】
前記シラン系カップリング剤は、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(3-Isocyanate propyl trimethoxysilane)、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(3-Isocyanate propyl triethoxysilane)、トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート(Tris[3-(trimethoxysilyl)propyl]isocyanurate)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された少なくともいずれか1つを含む、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含むサンルーフフレーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス長繊維強化熱可塑性樹脂組成物およびこれを含む成形品に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、自動車産業は軽量化、高級化および環境配慮型へ移りつつある。特に、軽量化は自動車の燃費および走行性能に大きな影響を及ぼす重要な事項である。
【0003】
パノラマサンルーフは自動車の内部換気と開けた開放感を与えるために開発されたもので、フレームにガラスおよび電動モータなどを設ける。
【0004】
周辺部品の荷重に耐え、外部からの衝撃に耐えるために、パノラマサンルーフのフレームとしては、主に物理的物性に優れたスチール(Steel)を使用した。最近は、軽量化のためにスチールが挿入されたエンジニアリングプラスチックを使用しようとする試みがあった。一例として、ポリブチレンテレフタレート(Polybutylene terephthalate、PBT)をガラス繊維で強化した素材を用いることで、スチールより約30%以上の軽量化を実現した。
【0005】
しかし、ポリブチレンテレフタレート(PBT)/ガラス繊維素材は射出後変形するという欠点があり、実際の適用には無理があった。
【0006】
また、炭素繊維を適用して従来技術の問題点を解決しようとする試みがあった。しかし、炭素繊維のコストが高いため、前記技術の拡大適用が困難であった。
【0007】
したがって、射出後変形の問題がない程度に寸法安定性が良く、剛性を高められる素材の開発が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】日本国登録特許第0130491号
【特許文献2】日本国公開特許第2012-509381号
【特許文献3】日本国公開特許第2011-529986号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、パノラマサンルーフのフレームに必要な高い物理的物性および寸法安定性を確保でき、かつ、軽量化および生産単価の低減に役立てる熱可塑性樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0010】
本発明の目的は以上に述べた目的に限定されない。本発明の目的は以下の説明でより明らかになり、特許請求の範囲に記載の手段およびその組み合わせで実現されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施例による熱可塑性樹脂組成物は、ポリアミド30重量%~70重量%;ガラス繊維を含み、平板の形状を有する強化剤20重量%~60重量%;およびシラン系カップリング剤1重量%~5重量%を含む。
【0012】
前記ポリアミドは、脂肪族ポリアミドを含むことができる。
【0013】
前記脂肪族ポリアミドは、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6/12、ポリアミド1010、ポリアミド11、ポリアミド1012、ポリアミド12、ポリアミド1212、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくともいずれか1つを含むことができる。
【0014】
前記ポリアミドは、数平均分子量が20,000~70,000のものであってもよい。
【0015】
前記強化剤は、下記式1で表される扁平率が2~5のものであってもよい。
[式1] 断面の平均長辺長さ/断面の平均短辺長さ
【0016】
前記強化剤は、断面の平均短辺長さが3μm~15μmのものであってもよい。
【0017】
前記強化剤は、長さが5mm~15mmのものであってもよい。
【0018】
前記強化剤は、その表面にサイジング剤が付着しているものであってもよい。
【0019】
前記サイジング剤は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された少なくともいずれか1つを含むことができる。
【0020】
前記熱可塑性樹脂組成物は、前記サイジング剤の含有量が前記熱可塑性樹脂組成物の全重量を基準として0.1重量~3重量%のものであってもよい。
【0021】
前記シラン系カップリング剤は、イソシアネート官能基を含むものであってもよい。
【0022】
前記シラン系カップリング剤のイソシアネート官能基は、前記ポリアミドと水素結合するか;前記ポリアミドのアミン基と共有結合を形成してもよい。
【0023】
前記シラン系カップリング剤は、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(3-Isocyanate propyl trimethoxysilane)、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(3-Isocyanate propyl triethoxysilane)、トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート(Tris[3-(trimethoxysilyl)propyl]isocyanurate)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された少なくともいずれか1つを含むことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、パノラマサンルーフのフレームに必要な高い物理的物性および寸法安定性を確保でき、かつ、軽量化および生産単価の低減に役立てる熱可塑性樹脂組成物を提供することができる。
【0025】
本発明の効果は以上に述べた効果に限定されない。本発明の効果は以下の説明で推論可能なすべての効果を含むことが理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の実施例1で使用した強化剤の断面を測定した走査電子顕微鏡(Scanning electron microscope、SEM)分析の結果である。
【
図2】比較例8で使用した強化剤の断面を測定した走査電子顕微鏡分析の結果である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以上の本発明の目的、他の目的、特徴および利点は、添付した図面と関連する以下の好ましい実施例により容易に理解されるであろう。しかし、本発明は、ここで説明される実施例に限定されず、他の形態で具体化されてもよい。むしろ、ここで紹介される実施例は、開示された内容が徹底かつ完全になるように、そして通常の技術者に本発明の思想が充分に伝達されるようにするために提供される。
【0028】
各図面を説明するにあたり、類似の参照符号を類似の構成要素に対して使った。添付した図面において、構造物の寸法は本発明の明確性のために実際より拡大して示した。第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使われるが、前記構成要素は前記用語によって限定されてはならない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ使われる。例えば、本発明の権利範囲を逸脱することなく、第1構成要素は第2構成要素と名付けられ、同じく、第2構成要素も第1構成要素と名付けられてもよい。単数の表現は、文脈上明らかに異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0029】
本明細書において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品、またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素、部分品、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性を予め排除しないことが理解されなければならない。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あるとする場合、これは、他の部分の「真上に」ある場合のみならず、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。逆に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下部に」あるとする場合、これは、他の部分の「真下に」ある場合のみならず、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。
【0030】
他に断らない限り、本明細書で使用された成分、反応条件、ポリマー組成物、および配合物の量を表現するすべての数字、値および/または表現は、このような数字が本質的に他のものの中からかかる値を得るのに発生する測定の多様な不確実性が反映された近似値であるので、すべての場合、「約」という用語によって修飾されることが理解されなければならない。また、本記載において、数値範囲が開示される場合、このような範囲は連続的であり、他に指摘されない限り、このような範囲の最小値から最大値が含まれた前記最大値までのすべての値を含む。さらに、このような範囲が整数を指し示す場合、他に指摘されない限り、最小値から最大値が含まれた前記最大値までを含むすべての整数が含まれる。
【0031】
本発明による熱可塑性樹脂組成物は、(A)ポリアミド30重量%~70重量%、(B)ガラス繊維を含む強化剤20重量%~60重量%、および(C)シラン系カップリング剤1重量%~5重量%を含む。
【0032】
以下、本発明の各構成を具体的に説明する。
【0033】
(A)ポリアミド
前記ポリアミドは、熱可塑性組成物で製造した成形体の機械的物性、耐衝撃性、耐熱性の向上のための構成である。前記ポリアミドは、一種のベース樹脂の役割を果たす。
【0034】
前記ポリアミドは、脂肪族ポリアミドであってもよい。前記脂肪族ポリアミドは、ポリアミド6、ポリアミド46、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド6/12、ポリアミド1010、ポリアミド11、ポリアミド1012、ポリアミド12、ポリアミド1212、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される少なくともいずれか1つを含むことができ、好ましくは、ポリアミド6であってもよい。
【0035】
前記ポリアミドは、比重が1.12~1.16である低比重のものであってもよい。それによって前記成形体の軽量性を確保できる。
【0036】
前記ポリアミドは、数平均分子量が20,000~70,000のものであってもよい。前記ポリアミドは、単独で使用するか、数平均分子量が互いに異なる2種以上のポリアミドを混合して使用することができる。前記ポリアミドの数平均分子量が前記範囲に属する場合、熱可塑性組成物の成形性、成形品の機械的物性、耐衝撃性および耐熱性を目的の水準に向上させることができる。具体的には、前記ポリアミドの数平均分子量が70,000を超えると、引抜成形含浸工程(Pultrusion impregnation Process)時に後述する強化剤の含浸性に劣り機械的物性が低下することがあり、射出加工時に流動性不足による未成形の問題が発生することがある。
【0037】
前記ポリアミドの含有量は、30重量%~70重量%であってもよい。前記ポリアミドの含有量が30重量%未満であれば、流動性に劣り成形品の外観および耐衝撃性が低下し、70重量%を超えると、成形品の機械的強度に劣ることがある。
【0038】
(B)強化剤
前記強化剤は、前記成形体の機械的物性、耐衝撃性、寸法安定性を確保しながら軽量化を達成するための構成である。
【0039】
前記強化剤は、ガラス繊維を含み、
図1のように、断面が四角形、楕円形、または多角形である平板の形状を有する繊維状強化剤であってもよい。
【0040】
前記強化剤は、下記式1で表される扁平率が2~5のものであってもよい。
[式1] 断面の平均長辺長さ/断面の平均短辺長さ
【0041】
前記強化剤の断面の長辺の長さは、前記強化剤の断面の周りに位置するある一点と、これから始まって前記断面の中心を通過する仮想の直線が接する他の一点までの距離のうち最も長い長さに等しい。
【0042】
前記強化剤の断面の短辺の長さは、前記強化剤の断面の周りに位置するある一点と、これから始まって前記断面の中心を通過する仮想の直線が接する他の一点までの距離のうち最も短い長さに等しい。
【0043】
前記強化剤の扁平率が2未満であれば、成形品の後変形が発生することがあり、5を超えると、成形品の機械的物性に劣る恐れがある。
【0044】
前記強化剤は、断面の平均短辺長さが3μm~15μmのものであってもよい。前記強化剤の断面の平均短辺長さが3μm未満であれば、前記ポリアミド内において前記強化剤の分散性が悪くなり、15μmを超えると、成形品の機械的物性および耐衝撃性に劣ることがある。
【0045】
前記強化剤は、長さが5mm~15mmのものであってもよい。前記強化剤の長さが5mm未満であれば、成形品の強度、剛性および耐衝撃性に劣り、寸法安定性も低下することがある。
【0046】
前記強化剤は、サイジング剤(Sizing material)で処理されたものであってもよい。具体的には、前記強化剤は、その表面にサイジング剤が付着しているものであってもよい。
【0047】
前記サイジング剤は、前記ポリアミドと前記強化剤との結合を強化するための構成である。前記強化剤をサイジング剤に含浸させて前記強化剤の表面に前記サイジング剤を付着させることができる。ただし、前記強化剤の処理方法はこれに限定されるものではなく、本発明の属する技術分野で一般的に用いられるものであれば、いかなる方法でも処理可能である。
【0048】
前記サイジング剤は、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された少なくともいずれか1つを含むことができる。
【0049】
前記サイジング剤の含有量は、前記熱可塑性樹脂組成物の全重量を基準として0.1重量%~3重量%であってもよい。前記サイジング剤の含有量が0.1重量%未満であれば、前記ポリアミド内において前記強化剤の分散性が低下して成形品の強度に劣り、3重量%を超えると、前記サイジング剤自体の含有量が過剰になり成形品の強度に劣ることがある。
【0050】
前記強化剤の含有量は、20重量%~60重量%、または30重量%~50重量%であってもよい。前記強化剤の含有量が20重量%未満であれば、成形品の強度および耐衝撃性に劣り、60重量%を超えると、成形品の重量が増加し、前記熱可塑性樹脂組成物の流動性に劣ることがある。
【0051】
(C)シラン系カップリング剤
前記シラン系カップリング剤は、前記ポリアミドと前記強化剤との相溶性を高めて成形品の機械的物性および耐衝撃性を向上させるための構成である。
【0052】
前記シラン系カップリング剤は、イソシアネート官能基を含むものであってもよい。前記シラン系カップリング剤のイソシアネート官能基は、前記ポリアミドと水素結合するか、前記ポリアミドに残留するアミン基と共有結合を形成して熱可塑性樹脂組成物の各成分間の接着力を大きく向上させることができる。
【0053】
また、イソシアネート官能基を含むシラン系カップリング剤は分子量が高く、低分子量のカップリング剤と比較して、長期耐熱の条件下で離脱(Migration)現象が発生しないという利点がある。
【0054】
前記シラン系カップリング剤は、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン(3-Isocyanate propyl trimethoxysilane)、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン(3-Isocyanate propyl triethoxysilane)、トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート(Tris[3-(trimethoxysilyl)propyl]isocyanurate)、およびこれらの組み合わせからなる群より選択された少なくともいずれか1つを含むことができる。
【0055】
前記シラン系カップリング剤の含有量は、1重量%~5重量%、または2重量%~4重量%であってもよい。前記シラン系カップリング剤の含有量が1重量%未満であれば、成形品の機械的物性および耐衝撃性に劣り、5重量%を超えると、熱可塑性樹脂組成物の溶融粘度が上昇して流動性の低下による加工性低下の問題が生じることがある。
【0056】
前記熱可塑性樹脂組成物は、前記ポリアミド、前記強化剤、および前記シラン系カップリング剤を混合して得ることができる。混合方法は特に限定されず、バンバリーミキサー、一軸押出機、二軸押出機、および多軸スクリュー押出機、引抜成形機などの一般的な溶融混練機を用いることができる。
【0057】
このように得られた熱可塑性樹脂組成物を、押出成形、圧縮成形、射出成形などの方法を利用して目的の成形品を得ることができる。
【0058】
前記熱可塑性樹脂組成物は、優れた機械的物性、寸法安定性を要求する多様な自動車用部品に使用可能である。また、このような物理的物性のほか、軽量化、生産単価の低減が必要な自動車用部品にも有用に使用可能である。具体的には、前記熱可塑性樹脂組成物は、サンルーフフレームに使用可能である。
【0059】
以下、本発明を実施例に基づいてより具体的に説明する。ただし、本発明が以下の実施例により限定されるものではない。
【0060】
実施例1、実施例2および比較例1~比較例9
下記表1のような組成で熱可塑性樹脂組成物を用意した。
【0061】
【表1】
(A)ポリアミド:数平均分子量が約50,000のポリアミド6
(B1)平板形状の繊維状強化剤:
図1に示された強化剤であって、断面の平均短辺長さが約6μm、扁平率が約4、長さが約10mmのガラス繊維。サイジング剤1.5重量%が付着したものを使用
(B2)平板形状の繊維状強化剤:断面の平均短辺長さが約7μm、扁平率が約3、長さが約10mmのガラス繊維。サイジング剤1.5重量%が付着したものを使用
(B3)平板形状の繊維状強化剤:断面の平均短辺長さが約10μm、扁平率が約1.5、長さが約10mmのガラス繊維。サイジング剤1.5重量%が付着したものを使用
(B4)平板形状の繊維状強化剤:断面の平均短辺長さが約5μm、扁平率が約5.5、長さが約10mmのガラス繊維。サイジング剤1.5重量%が付着したものを使用
(B5)平板形状の繊維状強化剤:断面の平均短辺長さが約7μm、扁平率が約3、長さが約4mmのガラス繊維。サイジング剤1.5重量%が付着したものを使用
(B6)繊維状強化剤:
図2に示されるように、断面が円形のガラス繊維。直径が約12μm、長さが約10mmのガラス繊維。サイジング剤1.5重量%が付着したものを使用
(B7)繊維状強化剤:断面が円形のガラス繊維。直径が約12μm、長さが約4mmのガラス繊維。サイジング剤1.5重量%が付着したものを使用
(C1)トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル]イソシアヌレート(Tris[3-(trimethoxysilyl)propyl]isocyanurate)
(C2)3-アミノプロピルトリエトキシシラン(3-Aminopropyltriethoxysilane)
(C3)無水マレイン酸がポリプロピレンに約8重量%グラフト(Graft)されている変性ポリプロピレン
【0062】
このように用意した熱可塑性樹脂組成物で成形品を製造した。具体的には、実施例1、実施例2、比較例1~比較例6および比較例8の熱可塑性樹脂組成物は、引抜成形機で押出した後、射出成形して成形品を得た。比較例7および比較例9の熱可塑性樹脂組成物は、二軸押出機で押出した後、射出成形して成形品を得た。
【0063】
前記成形品の物性を下記の方法で測定および評価した。
-引張強度(Mpa):ASTM D638により測定した。
-屈曲強度(MPa):ASTM D790により測定した。
-屈曲弾性率(MPa):ASTM D790の規定により測定した。
-IZOD衝撃強度(kJ/m2):ASTM D256により、1/4”ノッチ(Notched)条件下、常温(23℃)および低温(-30℃)で測定した。
-熱変形温度(℃):ASTM D648により、1.82MPaの表面圧力を加えた時、熱変形温度を測定した。
-後変形:100mm(幅)×200mm(長さ)×3mm(厚さ)の平板試験片金型に同じ射出条件で射出した後、試験片の変形の程度を確認した。評価基準は次の通りである。O:ほとんど反らない、△:やや反る、X:ひどく反る
【0064】
【0065】
(カップリング剤の種類)実施例と、比較例1および比較例2とを比較すれば、本発明のようなイソシアネート官能基を含むシラン系カップリング剤を用いた場合、機械的物性に優れ、後変形を防止できることが分かる。
【0066】
(シラン系カップリング剤の含有量)実施例と、比較例3および比較例4とを比較すれば、本発明のようなシラン系カップリング剤を1重量%~5重量%含んでいる場合、ポリアミドと強化剤との間の界面接着力が高くなって強度および耐衝撃性が向上し、後変形がないことが分かる。
【0067】
(強化剤の扁平率)実施例と、比較例5および比較例6とを比較すれば、本発明のような扁平率が2~5の強化剤を用いた場合、後変形が起こらない程度に寸法安定性が高くなり、機械的物性が向上することが分かる。
【0068】
(強化剤の長さ)実施例と、比較例7とを比較すれば、本発明のような長さの長いガラス長繊維を適用した場合、強度、剛性および耐衝撃性が向上し、寸法安定性にも優れていることが分かる。
【0069】
(強化剤の種類)実施例と、比較例8および比較例9とを比較すれば、本発明のような平板の形状を有する強化剤を用いた場合、寸法安定性が大きく向上することが分かる。
【0070】
以上、添付した図面を参照して本発明の実施例を説明したが、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施できることを理解するであろう。そのため、以上に述べた実施例はあらゆる面で例示的であり、限定的ではないと理解しなければならない。