(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061964
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】フレックスプレート応力測定システム
(51)【国際特許分類】
G01L 3/10 20060101AFI20220412BHJP
【FI】
G01L3/10 301J
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021164516
(22)【出願日】2021-10-06
(31)【優先権主張番号】10 2020 126 235.3
(32)【優先日】2020-10-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】518201739
【氏名又は名称】メソード・エレクトロニクス・マルタ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】METHODE ELECTRONICS MALTA LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100087815
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 昭二
(72)【発明者】
【氏名】ヨハネス・ギーシブル
(72)【発明者】
【氏名】アーマド・ソウファン
(72)【発明者】
【氏名】サンドロ・カービリ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ディスクを用いたトルクセンサにおいて、プレートに対してコイルを正確に配置することによって一定水準の信号対雑音比を実現する。
【解決手段】車両のドライブトレインの少なくとも2つの部品間に配置されるフレックスプレートであって、動作条件下で前記ドライブトレインに内包されたフレックスプレートは応力に晒される、フレックスプレートと、前記ドライブトレイン内において動作条件下で前記フレックスプレートに作用する応力を測定するための少なくとも1つの磁場検知コイルセンサであって、前記フレックスプレートに近接して位置する磁場検知コイルセンサとを備えるフレックスプレート応力測定システム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドライブトレインの少なくとも2つの部品間に配置されるフレックスプレートであって、
動作条件下で前記ドライブトレインに内包されたフレックスプレートは応力に晒される、フレックスプレートと、
前記ドライブトレイン内において動作条件下で前記フレックスプレートに作用する応力を測定するための少なくとも1つの磁場検知コイルセンサであって、
前記フレックスプレートと前記ドライブトレインの部品との間に埋め込まれた磁場検知コイルセンサと
を備えるフレックスプレート応力測定システム。
【請求項2】
前記磁場検知コイルセンサは、磁場によって生じる磁場勾配に沿って配置されている、請求項1に記載のフレックスプレート応力測定システム。
【請求項3】
前記磁場検知コイルセンサは、スティックボード(stick board)を形成する少なくとも2つのコイルを含む、請求項1または請求項2に記載のフレックスプレート応力測定システム。
【請求項4】
前記磁場検知コイルセンサは可変感度を有する、請求項1に記載のフレックスプレート応力測定システム。
【請求項5】
前記磁場検知コイルセンサの感度は、前記フレックスプレートに対する、前記磁場検知コイルセンサの軸方向距離に依存する、請求項4に記載のフレックスプレート応力測定システム。
【請求項6】
前記磁場検知コイルセンサの感度は、前記フレックスプレートの中心に対する、前記磁場検知コイルセンサの半径方向距離に依存する、請求項4に記載のフレックスプレート応力測定システム。
【請求項7】
前記磁場検知コイルセンサの感度は、前記フレックスプレートの厚さに依存する、請求項4に記載のフレックスプレート応力測定システム。
【請求項8】
前記磁場検知コイルセンサの感度は、前記磁場検知コイルセンサの前記少なくとも2つのコイルの互いに対する距離に依存する、請求項4に記載のフレックスプレート応力測定システム。
【請求項9】
前記フレックスプレートは、前記磁場検知コイルセンサの性能に影響を及ぼす厚さを有する、請求項1に記載のフレックスプレート応力測定システム。
【請求項10】
前記フレックスプレートは、少なくとも1つの取付孔の領域において応力に晒される、先行する請求項の少なくとも一項に記載のフレックスプレート応力測定システム。
【請求項11】
前記フレックスプレートは、不均一な応力分布パターンまたは均一な応力分布パターンを有する、先行する請求項の少なくとも一項に記載のフレックスプレート応力測定システム。
【請求項12】
前記応力は、前記フレックスプレート上に配置された少なくとも1つの取付孔から少なくとも1つの他の取付孔に案内される、請求項5に記載のフレックスプレート応力測定システム。
【請求項13】
前記フレックスプレートは、前記少なくとも1つの磁場のフィールド走査プロファイルを有する、請求項1に記載のフレックスプレート応力測定システム。
【請求項14】
前記フレックスプレートは、少なくとも2つの磁場検知コイルの最小実装空間(minimum packing space)を有する、請求項1に記載のフレックスプレート応力測定システム。
【請求項15】
少なくとも1つの温度センサを備える、請求項1に記載のフレックスプレート応力測定システム。
【請求項16】
少なくとも1つの距離センサを備える、請求項1に記載のフレックスプレート応力測定システム。
【請求項17】
フレックスプレートの応力を測定するためのシステムを用いて、前記フレックスプレートに作用する前記応力を測定する方法であって、
前記フレックスプレートは
車両のドライブトレインの少なくとも2つの部品間に配置され、かつ
応力に晒され、
前記ドライブトレイン内において動作条件下で前記フレックスプレートに作用する前記応力を測定するための少なくとも1つの磁場検知コイルセンサが前記フレックスプレートに近接して位置している、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
欧州特許出願第3550165号は、内径部、外径部、および内径部と外径部との間に延びる輪郭断面(contoured profile)を有するディスク体を備えるフレックスプレートを開示している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
ディスクを用いたトルクセンサは、従来技術において公知である。しかし、近代産業においては、応力下でディスクからの利用可能な信号の最大化も行う、ディスクを用いたトルクセンサには、プレートに対してコイルを正確に配置することによって一定水準の信号対雑音比を実現することが要求される。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、車両のドライブトレインの少なくとも2つの部品間に配置されるフレックスプレートを備えるフレックスプレート応力測定システムのための装置および関連する方法に関する。
【0004】
フレックスプレートは、動作条件下でドライブトレインに内包されている。フレックスプレートは、応力に晒される。
【0005】
フレックスプレート応力測定システムは、ドライブトレイン内において動作条件下でフレックスプレートに作用する応力を測定するための少なくとも1つの磁場検知コイルセンサをさらに備える。
【0006】
磁場検知コイルは、フレックスプレートに近接している。
【0007】
フレックスプレート応力測定システムは、フレックスプレートに、好ましくはトルクとして印加される応力を測定する。応力は、少なくとも1つの磁場検知コイルによって測定される。
【0008】
フレックスプレートおよび磁場検知コイルを備えるフレックスプレート応力測定システムの実施形態について、以下に詳細に説明する。
【0009】
本発明の実施例および更なる利点は、添付の図面に関連して説明および記載されている。
【0010】
[磁場検知コイルセンサ]
【0011】
本発明によって言及される磁場検知コイルセンサは、一般に、磁場センサとして知られている。
【0012】
磁場センサは、磁場の磁束密度および磁場強度を測定し、それらを分析可能な形式で、好ましくは信号処理用の電子機器に送信する。磁束密度は、単位T(テスラ)で測定される。
【0013】
センサは、その動作原理に応じて、例えば、磁気センサ、光学センサ、誘導センサおよび機械センサに分類され得る。
【0014】
磁場センサは、例えば、磁場検知コイル、ホールプローブまたはAMR/GMRとして使用される。
【0015】
磁場センサは、非接触方式で、したがって、外部の機械的操作力なしで動作する。
【0016】
好ましくは、それぞれのセンサにおける磁場によって生成された信号の評価は、連続的、アナログ的またはデジタル的に、すなわち、直接的に行われるか、あるいは一体化された電子機器または下流の電子機器によって行われる。
【0017】
本例では、各磁場センサは、少なくとも1つの磁場センサコイルを備える。少なくとも1つのコイルは、好ましくは、ワイヤ巻線を含む。
【0018】
よって、2つの磁場センサは、少なくとも2つの磁場センサコイルを含む。磁場センサコイルは、好ましくは互いに隣接して配置されている。互いに対するそれらの位置において、上記コイルは、いわゆる内側磁気帯域および外側磁気帯域、ならびにこれらの磁気帯域から放射される磁場を測定する。
【0019】
以下において、磁場センサは、磁場検知コイルセンサまたは磁場検知コイルと称する。
【0020】
[磁場検知コイルセンサの感度]
【0021】
フレックスプレート応力測定システムは、可変感度を有する磁場検知コイルセンサを提供する。
【0022】
本発明の一実施形態によると、磁場検知コイルセンサの感度は、フレックスプレートに対する、磁場検知コイルセンサの軸方向距離に依存する。
【0023】
別の実施形態によると、磁場検知コイルセンサの感度は、フレックスプレートの厚さに依存する。
【0024】
また、磁場検知コイルセンサの感度は、フレックスプレートの中心に対する、磁場検知コイルセンサの半径方向距離に依存し得る。
【0025】
また、磁場検知コイルセンサの感度は、磁場検知コイルセンサの少なくとも2つのコイルの互い対する距離に依存し得る。
【0026】
外部浮遊磁場の影響を補償し、ひいては、部品の形状寸法に起因して形成される磁場勾配の影響を補償すると共に様々な感度を実現するために、自身の電子回路を有する個々の磁場検知コイルは、個別チャンネルである。個別チャンネルに代えて、感度が異なる磁場検知コイルを使用してもよい。
【0027】
上記チャンネルは、それを介して信号伝送が行われる媒体と、送信機から受信機への全伝送路とを含む。
【0028】
2つの磁場検知コイルセンサにおいて磁場勾配の影響を補償する目的で、それぞれの磁場検知コイルセンサのチャンネルは、磁場検知コイルセンサ上の磁場勾配の影響を、対応するチャンネルの感度によって制御することができるように制御可能である。
【0029】
いわゆる磁場検知コイルセンサは、高感度の磁場センサである。磁気弾性技術は、材料の基本的な機械特性および磁気特性を用いて、様々なパラメータを測定する。この場合、測定値は、機械特性における変化、例えば、機械部品に対する外力の作用下でのせん断応力に伴う磁場の特性における変化で構成される。この技術は、例えば、リングゲージやひずみゲージなどの追加要素を装着する代わりに、フレックスプレートなどの機械要素を直接磁化することによって適用される。磁化された要素(フレックスプレート)の極近傍にある高感度の磁場検知コイルセンサは、印加された力に比例する磁場特性の変化を特定する。これらの変化は、直線的であり、材料の弾性限度内で再現可能である。これらは、通常の適用条件下において正確である。
【0030】
[フレックスプレート]
【0031】
簡略化のため、上述の磁場検知コイルセンサは、フレックスプレート上に配置されているものとする。
【0032】
言うまでもなく、センサ、好ましくはフレックスプレートセンサは、フライホイールおよび/またはフレックスプレート上に配置することができる。しかし、センサは、他の用途において任意のディスク状トルク伝達部品上に設置されてもよい。
【0033】
本発明によると、フレックスプレートは、特に、車両のエンジンに取り付けられたドライブトレインの1つの部品の出力トルクを当該ドライブトレインの隣接する部品に伝達する金属製ディスクである。ドライブトレインの隣接する部品は、このトルクを入力トルクとして受け取る。
【0034】
本発明は、その主軸にわたって撓みかつ一方側から他方側に曲がるディスクを有するフレックスプレートに関する。
【0035】
上記フレックスプレートは、トルク変換器からの動きを回転速度の変化として受け取る。トルク変換器は、手動変速システムのクラッチであってもよい。
【0036】
当該技術分野において公知である、いわゆるフライホイールと比較して、フレックスプレートは、かなり薄くかつ軽量である。フライホイールとは、回転エネルギー(運動エネルギー)を効率的に蓄積するように特別に設計された機械装置である。これは、トルク変換器の結合作用を平滑にし、使用されるクラッチの点検を減少させるためである。
【0037】
公知のフレックスプレートは、通常、モータ駆動車両のエンジンに対するドライブトレインの部品(継手;ギアボックス)の適切な結合を確実にする。磁場検知コイルセンサは、フレックスプレートとエンジンハウジングとの間に埋め込まれてもよい。
【0038】
公知のフレックスプレートは、フレックスプレートの周縁に切削された歯を備えていてもよい。
【0039】
本発明によって言及されるフレックスプレートは、エンジンによって生成されたエネルギーを有効に伝達する。
【0040】
フレックスプレートは、通常、その表面に掘削された様々な孔を有している。
【0041】
上記孔は、クランク軸に対するフレックスプレートの取り付けを容易にするよう意図されている。フレックスプレートは、車両のエンジンのクランク軸に接続されてもよい。これにより、クランク軸は、磁性鋼軸となる。
【0042】
磁気特性およびクランク軸の質量により、クランク軸は、磁場を偏向させる。
【0043】
当該磁場は、フレックスプレートに作用する。
【0044】
フレックスプレートは、クランク軸の表面側に装着されている。
【0045】
クランク軸の表面側の領域において、少なくとも2つの磁場検知コイルセンサが上記のような距離を空けて配置されている。
【0046】
フレックスプレート/フライホイールは、応力下で磁場を生成するものとする。
【0047】
また、フレックスプレートは、外部浮遊磁場の影響を受ける。
【0048】
クランク軸の少なくとも一端において、磁場は偏向される。
【0049】
当該磁場は拡散し、磁場の強度に、フレックスプレートの中心から半径方向外側に向かう磁場勾配が生じる。
【0050】
上記孔のうちの一部は、トルク変換器設定および重量平衡手段を用いる。
【0051】
一般に知られているように、フレックスプレートは、鋼鉄から製造され得る。
【0052】
フレックスプレートは、当該フレックスプレートがエンジンと変速機との間のわずかな位置ずれを調整することを可能にする一定の可撓性を有する。
【0053】
フレックスプレートの可撓性により、フレックスプレートの割れまたはその他の損傷が防止される。
【0054】
フレックスプレートは、強力なエンジンの大きな力によってフレックスプレートが高速でスピンした場合および/または自動ギアボックスのギアを切替えるためにトルク変換器が作動する場合にその可撓性を示す。
【0055】
[フレックスプレートの厚さ]
【0056】
フレックスプレートは、通常、少なくとも2mm~15mmの厚さを有する。
【0057】
フレックスプレートの厚さは、他の値を取り得ることが理解される。
【0058】
フレックスプレートの厚さは、フレックスプレート応力測定システムの性能に影響を及ぼし得る。
【0059】
フレックスプレートの厚さの増加は、トルクがフレックスプレートに印加される際の応力レベルの低下をもたらす。
【0060】
その結果、低下した応力がフレックスプレートに印加されると、フレックスプレート応力測定センサは、同じレベルのトルクに対して、より小さいセンサ信号を送出する。
【0061】
しかし、フレックスプレートが磁場を適切に伝えるためには、フレックスプレートの厚さを最小とする必要がある。
【0062】
フレックスプレートの厚さを最小とすることは、フレックスプレート内での均一な応力分布のためにも必須である。
【0063】
フレックスプレートの厚さは、少なくとも2mmの値を有するべきである。
【0064】
[フレックスプレートの取付孔]
【0065】
フレックスプレートは、少なくとも2つのボアホールを提供する。
【0066】
各ボアホールには少なくとも1つのねじが挿通され、それにより、フレックスプレートが車両のドライブトレインの隣接する部品に固定される。
【0067】
以下において、ボアホールを取付孔と称する。当該取付孔は、フレックスプレート上に奇数個または偶数個配置され得る。
【0068】
取付孔は、フレックスプレートの中心の周囲に環状に配置されてもよい。
【0069】
フレックスプレートの中心に対して放射状に、取付孔からなる少なくとも2つのリングが互いに隣接してフレックスプレート上に配置されてもよい。
【0070】
フレックスプレートが車両のドライブトレインの部品にねじ止めされると、ねじは、取付孔を貫通して、隣接する部品に延びる。
【0071】
フレックスプレートがドライブトレインの部品にねじ止めされると、取付孔の領域において、材料応力がフレックスプレートに作用する。
【0072】
別の例において、フレックスプレートは、取付孔からなる内側円環部に配置された6つの取付孔、および取付孔からなる外側円環部に配置された別の6つの取付孔を有する。
【0073】
言うまでもなく、取付孔は、異なるパターンでフレックスプレート上に配置されてもよい。
【0074】
取付孔からなる内側円環部および取付孔からなる外側円環部の両方に6つの取付孔を配置することにより、60度ごとの繰り返し信号特性がもたらされる。
【0075】
本発明によると、フレックスプレート上におけるスティックボード(stick boards)の数および/または磁場検知コイルの位置は、シミュレーションによって評価することができる。
【0076】
言うまでもなく、スティックボードの数および磁場検知コイルの適切な位置は、手動または自動で評価してもよい。
【0077】
[トルク]
【0078】
トルクがフレックスプレートに作用する。これは、トルクセンサ(磁場検知コイルセンサ)で検出することができる。
【0079】
特に、自動車、自転車、家庭用電化製品ならびに工作機械技術および/または宇宙航空技術においては、トルクに関連した磁場および外部磁場の両方をトルクセンサを用いて検出することが可能であるということが、業界の必要条件として課されている。
【0080】
上記に説明した通り、本発明では、トルクセンサを磁場検知コイルセンサと称する。
【0081】
したがって、業界においては、トルクに関連し得る信号以外の信号を検出するか、あるいは信号挙動の異なる信号を検出することが可能な装置を提供することが必要とされる。
【0082】
必要とされる装置は、トルクによって生じ得る、信号を妨害する影響を制限することが可能であるべきである。
【0083】
磁場検知コイルセンサは、磁場センサおよび/または磁気弾性センサであってもよい。
【0084】
トルクは、上記フレックスプレートに作用する力の回転因子を示す。
【0085】
[外部磁場]
【0086】
製品に関連する磁場およびトルクに関連し得る信号以外のこのような磁場は、例えば、フレックスプレートの磁化領域における、検査対象製品の、特に上流または下流の欠陥、干渉作用および他の影響によって生じ得る。
【0087】
例えば、電源線やレール線といった環境的な影響に起因し得るこれら追加の影響パラメータは、トルクによって生じ得る、直接的に製品に関連する(フレックスプレート)疑似標的効果(quasi-targeted effects)により、外部磁場を生成し、磁場(上述の通り、それ自体が磁場検知コイルによって検出されるべきである)の検出に影響を及ぼす可能性がある。
【0088】
これらの外部磁場は、例えば、検出結果を評価する際に、場合によってはトルクに対して標的作用を発生させないだけでなく、そのような外部事象の影響を受けない結果であるかが不明である製造公差によって、磁場検知コイルセンサが検出それ自体においては好ましくない補助的な影響を検出する場合に、特に重要となり得る。したがって、目的は、具体的には、発生する磁場の発生源を区別することを可能にすることである。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【
図1】フレックスプレートに作用する応力、好ましくはせん断応力を示す図である。
【
図2】印加されるトルクとしての応力が存在しないと仮定した場合の、フレックスプレート上の応力の分布を示す図である。
【
図3】
図2のフレックスプレートと同様のフレックスプレートを示す図である。
【
図4】3つの異なる半径方向位置における、プレート表面までの異なる距離での磁場検知コイルの信号を表す3つの曲線を示す図である。
【
図5】3つの異なる半径方向位置における、プレート表面までの異なる距離での磁場検知コイルの信号を表す3つの曲線を示す図である。
【
図6】フレックスプレート上でスティックボード(一対の磁場検知コイル)を配置することが可能な5つのセクタの番号を表すデータを示す図である。
【
図7】磁化設定のための少なくとも2つのパラメータを示す図である。
【
図8】それぞれが少なくとも2つの磁場検知コイルセンサを保持する、一般に知られているセンサホルダを示す図である。
【
図9】緑色で示されたグラフが距離センサの信号を示す図であり、図中、青色のグラフおよび赤色のグラフは、異なるトルク信号を示す。
【
図10】磁場検知コイルの単一コイルに作用する地球磁場のコンパス作用(compassing effect)を示す図である。
【
図11】磁場検知コイルの内側コイルと外側コイルとの最適な感度差を特定する、本発明を用いて実施された試験の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0090】
[プレートの応力分布]
【0091】
図1は、フレックスプレートに作用する応力、好ましくはせん断応力を示す。
【0092】
応力(応力値)の大きさは、トルクとフレックスプレートの半径とに依存する。
【0093】
例として、フレックスプレートは少なくとも2mmの厚さを有するものとする。
【0094】
フレックスプレート応力測定システムは、同一レベルの磁場が磁場検知コイルに作用するという点で有利であることが分かっている。磁場は、フレックスプレートに作用する応力、好ましくはトルクによって生じる。
【0095】
フレックスプレート上に配置された上記少なくとも1つの磁場検知コイルは、距離勾配の観点で、磁場の減少に対して同レベルに配置されるものとする。
【0096】
フレックスプレート応力測定システムでは、少なくとも2つの磁場検知コイルが、上記勾配に沿って配置されている。フレックスプレートの中心に対してより大きい距離に配置された磁場検知コイルは、より低い磁場レベルを測定する。
【0097】
[取付孔の応力分布]
【0098】
図2は、印加されるトルクとしての応力が存在しないと仮定した場合の、フレックスプレート上の応力の分布を示す。
【0099】
フレックスプレートに作用する外部応力(好ましくはトルク)が存在しない場合であっても、少なくとも、取付孔の領域において、フレックスプレートに応力が作用することを
図2は示している。
【0100】
取付孔の領域において、フレックスプレートに作用する応力は、取付孔を貫通してフレックスプレート内に達するねじによって生じる。これらのねじは、フレックスプレートを車両のドライブトレインの隣接する部品に連結する。
【0101】
図2において、取付孔からなる、環状の内側円環部および環状の外側円環部が存在する。
【0102】
取付孔からなる各円環部は、8つの取付孔を含む。
【0103】
言うまでもなく、フレックスプレートは、
図2に示すものとは異なる数の取付孔を有してもよい。
【0104】
上記取付孔は、フレックスプレート上に均一にまたは不均一に配置されてもよい。
【0105】
換言すると、フレックスプレートは、フレックスプレートに掘削された取付孔を貫通する多数のねじによって、車両のドライブトレインの少なくとも1つの部品に固定されるものとする。
【0106】
図2に示す例では、フレックスプレートに影響を及ぼす外部応力が存在しないと仮定すると、応力は、フレックスプレートに掘削された取付孔の領域においてのみフレックスプレートに作用して、ねじが収容され、フレックスプレートが車両のドライブトレインの隣接する部品に固定される。
【0107】
本発明によると、取付孔を貫通するねじによって生じる、フレックスプレートに作用する応力は、回転信号の均一性(RSU)に影響を及ぼす。
【0108】
図2のフレックスプレートに作用する応力は、N/mm
2で示される。
よって、
図2のフレックスプレートに作用する応力の想定値は、
図2の下方に示す
図2aの列に示される。
【0109】
図3は、
図2のフレックスプレートと同様のフレックスプレートを示す。
【0110】
しかし、
図2のフレックスプレートと異なり、
図3においては、外部応力、好ましくはトルクとしての応力がフレックスプレートに作用し、フレックスプレート上に異なる応力分布が生じている。
【0111】
図2に示すフレックスプレートおよび
図3に示すフレックスプレートは、いずれも、車両のドライブトレインの隣接する部品に強固にねじ止めされる。
【0112】
図2とは異なり、
図3に示すフレックスプレートの場合、トルクとしての更なる応力がフレックスプレートに印加される。
【0113】
印加された更なるトルクにより、
図3に示すような補正された応力分布パターンが生じる。
【0114】
図3の例において、トルクとしての応力は、フレックスプレートに配置された少なくとも1つの取付孔から少なくとも1つの他の取付孔に案内される。
【0115】
さらに、
図3の場合、トルクとしての応力は、フレックスプレート上において、フレックスプレートの取付孔からなる外側円環部の少なくとも1つの取付孔から、取付孔からなる内側円環部の少なくとも1つの取付孔に案内される。
【0116】
取付孔からなる、外側円環部の少なくとも1つの取付孔と内側円環部の少なくとも1つの取付孔との間の距離の長さによっては、
図3のフレックスプレート上に示すような、不均一な応力分布パターンが存在する。
【0117】
図2および
図3においては、フレックスプレートに配置された取付孔の領域における応力量の増加を示す応力分布パターンが存在しており、
図3においては、外部応力がフレックスプレートに作用する。
【0118】
これにより、応力分布パターンが不均一となる。
【0119】
図3に示す例において、この不均一な応力分布パターンは、フレックスプレート上に配置された取付孔からなる外側円環部の取付孔の少なくとも1つの取付孔を、取付孔からなる内側円環部の少なくとも1つの取付孔と接続する線で示されている。
【0120】
言うまでもなく、
図3のフレックスプレートに作用する外部応力によって生じる不均一な応力分布パターンは、他の形態の応力分布パターンにもなり得る。換言すると、
図3に示すフレックスプレートに作用する、トルクとしての外部応力は、フレックスプレート上に配置された取付孔からなる外側円環部の少なくとも1つの取付孔と取付孔からなる内側円環部の少なくとも1つの取付孔とにわたる外部応力の線および/または領域をもたらす。
【0121】
例として、
図3に示すフレックスプレートに作用する更なる外部応力(トルク)は、フレックスプレートに作用する星形の応力分布パターンをもたらす。
【0122】
応力に関連する星形の応力分布パターン間に配置された、
図3に示すフレックスプレートの領域は、応力レベルが低い領域を表す。
【0123】
図2aと比較して、
図3aは、
図3に示す応力分布パターンによって表される変動応力レベルに関連する応力の想定値(N/mm
2で示す)を示す。
【0124】
[フレックスプレートのフィールド走査およびラジアル走査]
【0125】
いわゆるフィールド走査は、プレート、好ましくは、フレックスプレートの表面に配置された磁場のプロファイルを示す。分割画像は、1mmの放射段差状に生成される。これらは、360°の回転にわたって0.1°の解像度で生成される。
【0126】
ラジアル走査に関する限り、磁場は、半径方向に1mm段差状に走査される。ラジアル走査は、トルクを加えながら行われてもよく、トルクを加えずに行ってもよい。したがって、ラジアル走査により、コイルの半径方向位置を判定するための感度プロファイルが提供される。
【0127】
本発明によると、フレックスプレートに作用する応力、好ましくはトルクとしての応力は、ラジアル走査および/またはフィールド走査によって検査することができる。
【0128】
ラジアル走査に対して、フィールド走査は、半径方向のオフセットの分析を周方向および/または半径方向に沿って行うことを可能にする。
【0129】
フィールド走査はまた、個々の磁場検知コイルの各半径方向位置について360°のフルスキャンをもたらす(0.1°刻み)。
【0130】
上述のラジアル走査は、フレックスプレートの中心に対する少なくとも2つの半径方向位置においてフレックスプレート応力測定システムの信号を走査する。
【0131】
ラジアル走査はまた、フレックスプレートの中心からの少なくとも2つの異なる距離において信号を走査する。
【0132】
ラジアル走査はまた、様々な応力レベルにおいて信号を操作する。様々な応力のレベルは、様々なトルクのレベルを表す。
【0133】
少なくとも2つの異なる応力(トルク)レベルの測定は、フレックスプレートに対する磁場検知コイルの半径方向位置に関する感度レベルを変化させて行ってもよい。
【0134】
図4および
図5は、磁場検知コイルの感度を表す。ここで、磁場検知コイルのコイル表面のフレックスプレートまでの距離について考察する。
【0135】
図4および
図5は、いずれも、3つの異なる半径方向位置における、プレート表面までの異なる距離での磁場検知コイルの信号を表す3つの曲線を示す。
【0136】
フレックスプレートの中心に対する磁場検知コイルの半径方向位置が58mm、68mmおよび73mmであるとすると、互いに対するコイル距離が10mmおよび15mmであるスティックボード(一対の磁場検知コイル)によって送出される少なくとも1つの信号が計算され得る。
【0137】
図4および
図5のグラフは、1.7mmから3.2mmの範囲のコイルからプレートまでの距離を示している。
【0138】
左から右へ、1.7mmおよび3.2mmにおいて、
図4は、上記距離にわたるオフセットの変化を示し、
図5は、所与の距離にわたる磁場検知コイルの感度を表す。
【0139】
[磁場検知コイルスティックボード]
【0140】
本発明によると、一対の2つの磁場検知コイルは、スティックボードと称される。スティックボードは、PCB上に互いに少なくとも10mmまたは15mmの距離で配置された2つのコイルを組み合わせたものである。
【0141】
フレックスプレート上に配置されるスティックボードの数は、フレックスプレートの直径および/またはフレックスプレートの中心とフレックスプレートの周方向外縁との間における利用可能な半径方向空間に依存する。
【0142】
例として、二対の磁場検知コイルである2つのスティックボードを用いてフレックスプレート上の磁気正弦波(sinus)を補償する。言うまでもなく、より大きい数のスティックボードを実装してもよい。
【0143】
フレックスプレート上の磁気正弦波は、ワン・スティックRSU試験(one stick RSU test)によって測定することができる。
【0144】
本発明によると、好ましくは二対の磁場検知コイル(2つのスティックボードである)が互いに対向して配置される。換言すると、この二対の磁場検知コイルは、0度位置および180度位置で円形に配置されてもよい。
【0145】
二対の磁場検知コイルを実装して、フレックスプレートに作用する正弦波を完全に補償することができる。これは、少なくとも2つの測定位置にわたって信号を平均化することによって行われる。
【0146】
図6に示すデータは、フレックスプレート上でスティックボード(一対の磁場検知コイル)を配置することが可能な5つのセクタの番号を示している。
【0147】
本例では、第1ステップにおいて、フレックスプレートに対して磁場検知コイルが配置されるセクタの数が選択される。
【0148】
上記セクタは、既知の繰返し作用(repeating effects)を補償するのに最適な位置が見つかるように選択される。
【0149】
第2ステップにおいて、従来法に従ってシミュレーションが実行され、
図6のグラフに示すドット状の位置が得られる。
【0150】
図6の例では、15度、30度および60度ごとの繰返しパターンが正常に補償され得る。
【0151】
[半径方向コイル位置]
【0152】
例えば磁場検知コイルとして使用される磁場センサは、ホールプローブである。本発明において言及される磁場検知コイルは、接続された公知の磁場センサである。
【0153】
本例では、各磁場センサ(磁場検知コイル)は、少なくとも1つの磁場センサコイルを含む。少なくとも1つのコイルは、好ましくはワイヤ巻線を含む。
【0154】
したがって、2つの磁場検知コイルセンサは、少なくとも2つの磁場センサコイルを有する。磁場センサコイルは、好ましくは、互いに隣接して配置される。互いに対する位置において、上記コイルは、いわゆる内側帯域(inner band)および外側帯域(outer band)、ならびにこれらの帯域から放射される磁場を測定する。
【0155】
以下において、磁場センサは、磁場検知コイルセンサまたは磁場検知コイルと称する。
【0156】
本発明によると、フレックスプレートに対する磁場検知コイルの半径方向位置は、フレックスプレートに対する磁場検知コイルの半径方向位置に対する磁場強度のパラメータに依存する。
【0157】
フレックスプレートの磁場強度は、使用される磁石、磁石の異なる種類、およびフレックスプレートに対する磁石の位置に依存する。
【0158】
フレックスプレート応力測定システムから送出されるセンサ信号は、使用される磁気帯域の強度に依存し、これらはそれ自体で、上記2つの磁気帯域間の最も高いデルタをもたらすための最適なパラメータを提供する。
【0159】
例として、
図7は、磁化設定のための少なくとも2つのパラメータを示す。
【0160】
図7の例では、内側コイルが、フレックスプレートの中心に対して58mmの距離に配置されている。
【0161】
一方、フレックスプレート応力測定システムによって送出される最も高い信号レベルは、外側コイルをフレックスプレートの中心に対して73mmの位置に配置した場合に得られる。
【0162】
よって、フレックスプレート応力測定システムによって送出される信号は、フレックスプレートの中心に対するコイルの個々の配置だけに依存するものではない。
【0163】
上記信号は、フレックスプレート上に配置された両コイルの互いに対する距離にも依存する。
【0164】
上記2つのコイル間の距離が大きいと、磁場強度におけるデルタは高くなり、それによって、フレックスプレート応力測定の信号出力が高くなる。したがって、コイル間の距離が大きいほど、外部磁場除去(external magnetic field rejection)が低下する。
【0165】
上記2つのコイル間の距離が小さいと、磁場強度におけるデルタが小さくなる。これによってもフレックスプレート応力測定システムの出力信号が低くなるが、外部磁場除去は向上する。
【0166】
[温度センサ]
【0167】
一般に知られる温度センサは、通常、電気素子または電子素子である。
【0168】
温度センサは、通常、温度の測定値として電気信号を提供する。
【0169】
本発明によると、フレックスプレート応力測定システムは、温度センサを備える。
【0170】
この温度センサにより、フレックスプレート応力測定システムの温度挙動を補償することが可能となる。温度センサにより、フレックスプレート内での温度挙動を補償することも可能となる。
【0171】
言うまでもなく、温度センサは、封止された温度センサまたは封止されていない温度センサとして製造することができる。
【0172】
封止された温度センサによって得られる結果は、封止されていない温度センサによる結果と広範囲にわたって同一であることが実験によって分かっている。したがって、フレックスプレートセンサ構成内に埋め込まれる温度センサの大部分は、封止された温度センサである。
【0173】
温度センサを封止することで、環境に対するセンサの保護が改善される。
【0174】
[フレックスプレート内の磁場検知コイルの最小実装空間(minimum packing space)]
【0175】
フレックスプレート内の少なくとも2つの磁場検知コイルの最小実装空間は、個々の磁場検知コイルの大きさによって規定される。
【0176】
一般的な磁場検知コイルセンサは、好ましくは2mmの高さを有する。
【0177】
半径方向において、フレックスプレートは、少なくとも2つの磁場検知コイルセンサを保持することができる最小サイズを有する。
【0178】
磁場検知コイルセンサは、フレックスプレートに対して半径方向に配置されている。
【0179】
少なくとも15mmのコイル距離を有しているので、2つの磁場検知コイルを配置すると、フレックスプレートの半径方向最小空間は約23mmとなる。
【0180】
図8に、それぞれが少なくとも2つの磁場検知コイルセンサを保持する、一般的に知られるセンサホルダが示されている。
【0181】
[距離センサ]
【0182】
本発明によると、距離センサ(変位センサとも呼ばれる)は、2つの別個の物体間の距離を測定する。換言すると、距離センサは、物体と基準点との間の距離を測定する。
【0183】
距離センサは、長さの変化を測定するようにも設計されている。
【0184】
本発明の文脈において、フレックスプレートセンサと、フレックスプレートが強固にねじ止めされたドライブトレインのフレックスプレートとの間の距離は、ドライブトレインの動作中に変化し得る。
【0185】
フレックスプレートは、応力および/または負荷および/またはトルクがフレックスプレートに印加されている間、屈曲しかつ/または移動する。
【0186】
例として、ドライブトレインに印加される応力負荷(トルク)が高い場合、好ましくは、フレックスプレートに隣接するドライブトレインの部品は、フレックスプレートを押圧する。
【0187】
それに応じて、フレックスプレートは、磁場検知コイルの方向に押圧される。
【0188】
よって、フレックスプレートに対する磁場検知コイルの距離は減少する。
【0189】
したがって、フレックスプレートと磁場検知コイルとの間の距離が短くなる。
【0190】
フレックスプレートと磁場検知コイルとの間の距離が短いと、測定信号は一般に高くなる。
【0191】
言うまでもなく、フレックスプレートの移動は、印加されたトルクだけによるものではない。
【0192】
フレックスプレートの関連する移動は、トルクにも依存し、かつ/またはフレックスプレートの回転速度に依存する。
【0193】
さらに、この移動は、変換器(フレックスプレートに隣接する部品としての)が閉じているか否かに依存する。
【0194】
よって、距離センサは、隣接する部品に対するフレックスプレートの移動の影響を補償する。
【0195】
無応力状態(
図3に示すような)における磁場検知コイルとフレックスプレートとの間の正確な距離は既知であるため、増大または減衰した信号をリアルタイムで補正され得る。
【0196】
以下の
図9において、緑色で示すグラフは、距離センサの信号を表し、青色のグラフおよび赤色のグラフは、異なるトルク信号を表す。
【0197】
各信号は、フレックスプレートから伝達されたトルクを表す。
【0198】
図9に示すグラフは、フレックスプレートの中心においては、フレックスプレートと、ドライブトレインの隣接する部品との間の移動がほぼないということを明らかにしている。フレックスプレートの中心からフレックスプレートの外縁に近づくと、フレックスプレートとドライブトレインの隣接する部品との間の移動は増加する。
【0199】
[フレックスプレートに対する外部浮遊磁場の影響]
【0200】
例えばトルク印加時に、フレックスプレートが磁場を放射する場合、磁場検知コイルは、磁場を検出することができるものでなくてはならない。
【0201】
検出された磁場は、様々に影響され得る。少なくとも2つの金属体(フレックスプレートおよびクランク軸)からなる構成が存在し得る。また、磁場検知コイルは、フレックスプレートに対して非対称に配置してもよい。
【0202】
しかし、磁場検知コイルが磁束密度が異なる2つ以上の磁場を検出する場合は、磁場の密度の差異が大きいほど、磁場勾配は高くなる。
【0203】
フレックスプレート上に配置された磁場検知コイルは、外部磁場によって妨害され得る。例えば、このような外部磁場は、(均一な)地球磁場であり得る。
【0204】
別の磁場が、例えば一時的にフレックスプレートに作用することも考えられる。このような状況は、フレックスプレートが更なる電気部品に近接して配置される場合に起こり得る。あるいは、フレックスプレートが、例えば、路面電車の電気ケーブル付近を移動したり、路面電車の軌道を横切ったりする車両に設置されている場合にも起こり得る。このようなあらゆる外部磁場が、上述のフレックスプレートに作用する。これらは、いわゆる浮遊磁場である。
【0205】
これらの浮遊磁場は、フレックスプレートに作用する力によって生じる、上述の磁場位置に影響を及ぼすか、あるいは重なり得る。
【0206】
磁場検知コイルが地球磁場によって妨害された場合、磁場検知コイルが受信する磁気測定信号(好ましくはトルク)の大きさは、地球磁場のおよそ10倍を超える。
【0207】
本発明によると、磁場検知コイルは、同相除去のための少なくとも2つの差分信号を用いて地球磁場の影響を補償する。
【0208】
本発明は、同相除去を、少なくとも2つの磁場検知コイルの出力信号を合計することであると称し、この同相除去において、同相外部磁場はすべて相殺される。
【0209】
上述の通り、このような同相外部磁場は、いかなる種類の近接場であってもよい。
【0210】
従来技術において公知である同相除去は、フレックスプレート上に配置された、少なくとも2つの対向する磁気コード化された磁場帯域(magnetically coded field bands)を生成することによって実現することができる。
【0211】
磁気コード化された磁場帯域は、それぞれ、少なくとも1つのコイルによって測定される。
【0212】
少なくとも2つのコイルの差動配線(differential interconnection)により、同相除去がもたらされる。
【0213】
車両のクランク軸が均一地球磁場を偏向させるという理論上のケースにおいて、地球磁場の補償は、少なくとも1つのスティックボードの両方のコイルが等しい感度を有する場合に、更に改善される。換言すると、通常走行状態において、車両は、車両が地球表面に対して垂直な軸周りに回転しているかのように、地球磁場の影響下に置かれる。
【0214】
それぞれ内側磁気帯域および外側磁気帯域においてフレックスプレートに含まれる上記のコイルは、異なる半径方向位置に配置される。
【0215】
最終的に、地球磁場は、磁場検知コイルにコンパス作用を及ぼし、磁場検知コイルが地球磁場において移動すると、磁場検知コイルの出力信号を妨害する。
【0216】
以下に示す
図10は、磁場検知コイルの単一コイルに影響を及ぼす地球磁場のコンパス作用を表す。ここで、磁場検知コイルの当該コイルは、好ましくはクランク軸に取り付けられたフレックスプレートが、車両が移動している道路に対して垂直な軸上で、異なる半径方向位置において360°回転した場合、補償されない。
【0217】
これは、磁場の大きさは、フレックスプレートに隣接する部品に対する、磁場検知コイルのコイル距離が増加するにつれて小さくなることを示すものである。
【0218】
本発明によると、コンパス作用を低減するために、異なる半径方向位置においてコンパス作用を及ぼす(compassing)、磁場検知コイルの差動コイルの振幅を同調(harmonized)させなければならない。
【0219】
同調を目的として、磁場をリダイレクトすることによって遮蔽を行ってもよい。
【0220】
単一コイルの利得調整を実現するために、コンパス作用を及ぼす振幅は、コイルの利得を減少させるか、または隣接する部品に近づけることによって同調させることができる。あるいは、隣接する部品から遠く離れたコイルの利得を増大させることによって実現することができる。
【0221】
磁場検知コイルの内側コイルと外側コイルとの最適な感度差を特定する、本発明を用いて実施された試験の結果を
図11(下記)のグラフに示す。
【0222】
図11に示す特定の例では、地球磁場の最低感度は、およそ42%の差を適用することによって達成された。
【0223】
[フレックスプレート応力測定システムの遮蔽]
【0224】
フレックスプレート応力測定システムを遮蔽する効果は、逆バイアスされた(back-biased)磁気速度センサを遮蔽することによって実現することができる。
【0225】
クランク軸センサが、フレックスプレートの遮蔽されていない磁場検知コイルトルクセンサ付近に設置されてもよい。クランク軸センサが遮蔽されていない場合、フレックスプレートが永久磁化されることになり得る。
【0226】
上記遮蔽効果は、磁場検知コイルの両方の検知コイルに対して均一な作用を有するように地球磁場をリダイレクトすることによっても実現され得る。
【0227】
[方法]
【0228】
フレックスプレートの応力を測定するためのシステムを用いて、当該フレックスプレートに作用する応力を測定する方法。
【0229】
動作条件下で車両のドライブトレインの少なくとも2つの部品間に配置され、応力に晒されるフレックスプレートであって、
ドライブトレイン内において動作条件下でフレックスプレートに作用する応力を測定するための少なくとも1つの磁場検知コイルセンサがフレックスプレートに近接して位置しているフレックスプレート。
【外国語明細書】