IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ チューリッヒ大学の特許一覧 ▶ ウニヴェルズィテート バーゼルの特許一覧

特開2022-61982MHCクラスIaオープンコンフォーマー
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061982
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】MHCクラスIaオープンコンフォーマー
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/62 20060101AFI20220412BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20220412BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20220412BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20220412BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20220412BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20220412BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220412BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20220412BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20220412BHJP
   A61P 31/20 20060101ALI20220412BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20220412BHJP
   A61P 31/22 20060101ALI20220412BHJP
   A61P 31/16 20060101ALI20220412BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220412BHJP
   C07K 16/00 20060101ALN20220412BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220412BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20220412BHJP
   C07K 14/74 20060101ALN20220412BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C12N15/86 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61P31/12
A61P31/20
A61P31/14
A61P31/22
A61P31/16
A61P35/00
C07K16/00
C12N15/12
C12N15/13
C07K14/74
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021211857
(22)【出願日】2021-12-27
(62)【分割の表示】P 2019507306の分割
【原出願日】2017-08-09
(31)【優先権主張番号】16183626.7
(32)【優先日】2016-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17153123.9
(32)【優先日】2017-01-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】515098691
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート チューリッヒ
(71)【出願人】
【識別番号】515160921
【氏名又は名称】ウニヴェルズィテート バーゼル
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】マロクイン ベラウザラン,オシリス
(72)【発明者】
【氏名】レナー,クリストフ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特に癌の治療又は予防における、免疫調節剤としてのMHC-Iaオープンコンフォーマーを提供する。
【解決手段】オープンコンフォーマーは、第1及び第2の単量体を含み又はからなり、かつ各単量体はMHC-Ia分子由来のHLA重鎖を含む。オープンコンフォーマーは、タンパク質安定化ポリペプチド配列及び任意にアミノ酸リンカーをさらに含む。本発明のさらなる態様は、MHC-Iaオープンコンフォーマーと免疫チェックポイント阻害剤とを含む併用薬剤を提供する。さらに、本発明は、特にKIR3DL1、KIR3DL2、KIR3DL3、LILRB1、LILRB2、及び10PTPRJなどの多様な免疫調節受容体との相互作用が免疫応答を調節する疾患、及びTregのネガティブ調節が治療的戦略である疾患、例えば感染症において、免疫調節剤としてのMHC-Iaオープンコンフォーマーの使用に関する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
融合MHC-IaオープンコンフォーマーがHLA-B27又はHLA-B57オープンコンフォーマーではないことを条件とする、融合MHC-Iaオープンコンフォーマーであって、前記融合MHC-Iaオープンコンフォーマーは第1の単量体又は第1及び第2の単量体を含み、又はからなり、
a.前記第1の単量体、又は他の単量体と独立する前記第1及び第2の単量体のそれぞれは、HLA重鎖のアルファ1、2及び3ドメインを含み、かつ
b.前記第1の単量体、又は前記第1及び第2の単量体のそれぞれは、Fcポリペプチド配列に共有結合的に連結される、
前記融合MHC-Iaオープンコンフォーマー。
【請求項2】
アミノ酸リンカーがHLA重鎖とFcポリペプチド配列とを連結する、請求項1に記載の融合MHC-Iaオープンコンフォーマー。
【請求項3】
第1の単量体と第2の単量体とが同一である、請求項1又は2に記載の融合MHC-Iaオープンコンフォーマー。
【請求項4】
融合MHC-Iaオープンコンフォーマーが、ペプチドエピトープ断片をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の融合MHC-Iaオープンコンフォーマー。
【請求項5】
前記第1の単量体、又は他の単量体と独立する前記第1及び第2の単量体のそれぞれは、Fcポリペプチド配列に共有結合的に連結した前記HLA重鎖のアルファ1、2及び3ドメインのみからなる、請求項1~4のいずれか一項に記載の融合MHC-Iaオープンコンフォーマー。
【請求項6】
HLA重鎖は、A25、B58、C08、A30、B53、及びC12から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の融合MHC-Iaオープンコンフォーマー。
【請求項7】
Fcドメインは、免疫グロブリンG型(IgG)、A型(IgA)、D型(IgD)、E型(IgE)又はM型(IgM)のいずれか1つから選択される重鎖定常領域C2及びC3を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の融合MHC-Iaオープンコンフォーマー。
【請求項8】
アミノ酸リンカーが、1~50個のアミノ酸を含み、HLA重鎖を1本の単一ポリペプチド鎖としてFcドメインに連結する、請求項1~7のいずれか一項に記載の融合MHC-Iaオープンコンフォーマー。
【請求項9】
a.癌の治療又は予防において、又は
b.免疫調節剤として、又は、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染症、はしか、ヘルペス及び黄熱病から選ばれる感染症の治療において、
薬剤として使用するための、請求項1~8のいずれか一項に記載の融合MHC-Iaオープンコンフォーマー。
【請求項10】
癌の治療又は予防における使用のための、免疫調節剤としての使用のための、又は感染症の治療における使用のための核酸分子であって、前記核酸分子は、請求項1~9のいずれか一項に記載の融合MHC-Iaオープンコンフォーマーをコードする、前記核酸分子。
【請求項11】
癌の治療又は予防における使用のための、又は免疫調整剤として使用のための、又は感染症の治療における使用のための、哺乳動物細胞又はヒト細胞において作動可能なプロモーター配列の制御下で、請求項10に記載の核酸分子を含むウイルス。
【請求項12】
請求項10に記載の核酸分子を含むインビトロで遺伝子改変された宿主細胞。
【請求項13】
医薬組成物であって、
a.請求項1~8のいずれか一項で特定される融合MHC-Iaオープンコンフォーマー、及び
b.チェックポイント調節剤であって、
i.チェックポイント阻害剤(CPI)、前記CPIは:
‐ CTLA4とB7-1(cd80)及び/又はB7-2(cd86)のいずれかとの相互作用の阻害剤;
‐ PD-1とPD-L1及び/又はPD-L2のいずれかとの相互作用の阻害剤;及び、
‐ 抗体である、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有3(TIM-3)の阻害性ポリペプチドリガンド;
から選択される前記チェックポイント阻害剤(CPI);及び
ii.チェックポイントアゴニスト剤である、腫瘍壊死因子受容体4-1BBに結合し、かつ活性化するように選択されたチェックポイントアゴニスト抗体、又は4-1BBに対するモノクローナル抗体、
から選択される前記チェックポイント調節剤、を含む、
前記医薬組成物。
【請求項14】
前記チェックポイント調節剤は、抗体、抗体断片、及び抗体様分子から選択されるポリペプチドであり、かつポリペプチドはCTLA4、PD-1、CD80、CD86、PD-L1、PD-L2、TIM-3、4-1BB及び4-1BBLから選択されるチェックポイントメディエータに対して、選択的に反応性である、請求項13に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に、癌の予防又は治療における使用のための、及び免疫調節剤としての使用のための、古典的なMHCクラスIa(MHC-Ia)の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒト白血球抗原(HLA)は、古典的な主要組織適合遺伝子複合体(MHC)タンパク質ファミリーに属する。HLA複合体は、免疫系が、ウイルスや細菌などの外来の侵入物質によって作られたタンパク質から身体自身のタンパク質を区別する働きがある。ヒトは、古典的(MHC-Ia)HLA-A、HLA-B、及びHLA-C、並びに非古典的(MHC-Ib)HLA-E、HLA-F、HLA-G、及びHLA-H分子を含むMHCクラスI分子を有する。両カテゴリーは、それらのペプチド結合、提示及び誘導T細胞応答のメカニズムにおいて類似している。古典的MHC-Iaの最も顕著な特徴はそれらの高い多型性であるが、非古典的MHC-Ibは通常非多型でありそしてそれらのMHC-Iaの対応物よりもより制限された発現パターンを示す傾向がある。
【0003】
HLA命名法では、遺伝子座の特定の名前(例えば、HLA-)によって与えられ、続いて、対立遺伝子ファミリーの血清学的抗原(例えば、HLA-A 02)、及びDNA配列が決定されている数及び順序で割り当てられた対立遺伝子サブタイプが与えられる(例えば、HLA-A02:01)。コード配列内の同義ヌクレオチド置換(サイレント又は非コード置換とも呼ばれる)によってのみ異なる対立遺伝子は、3番目の数字セットの使用によって区別される(例えば、HLA-A02:01:01)。イントロン内、又はエクソンとイントロンに隣接する5’又は3’の非翻訳領域内の配列多型によってのみ異なる対立遺伝子は、4番目の数字セットの使用によって区別される(例えばHLA-A02:01:01:02L)(図1)。
【0004】
MHC-Ia対立遺伝子のリストを表1に提供する。対立遺サブタイプの完全なリストについては、http://hla.alleles.org/alleles/class1.htmlを参照。
【0005】
古典的MHC-Ia分子の主な機能は適応免疫応答の一部としてペプチドを提示することである。MHC-Ia分子は、自己タンパク質、ウイルス又はバクテリアに由来するβ2-ミクログロブリン(β2m)及び小ペプチドと非共有結合的に会合する3つの細胞外ドメイン(α1、α2及びα3)を有する膜結合重鎖を含む三量体構造である。α1及びα2ドメインは高度に多型性であり、そしてペプチド結合溝を生じさせるプラットフォームを形成する。保存されたα3ドメインに並置されているのは、膜貫通ドメインとそれに続く細胞内細胞質尾部である。
【0006】
免疫応答を開始するには、MHC-Ia分子は、CD8細胞傷害性Tリンパ球(CTL)上のTCR(T細胞受容体)の提示によって認識される特定のペプチドを提示するが、ナチュラルキラー細胞(NK)に存在するNK細胞受容体は、個々のペプチドではなくペプチドモチーフを認識する。正常な生理学的条件下では、MHC-Ia分子は、CD8T細胞及びNK細胞へのペプチドを提示することを担当するヘテロ三量体複合体として存在するが、MHC-Ia分子はβ2-ミクログロブリン及びペプチドを欠く遊離重鎖として細胞にも存在し得、オープンコンフォーマーと呼ぶことができる(Arosaら、Trends in Immunology 2007 3月;28(3):115-23)(図2)。HLA-オープンコンフォーマーとT細胞受容体及びNK細胞受容体との相互作用はペプチドとは無関係であり、その機能は未知である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Arosaら、Trends in Immunology 2007 3月;28(3):115-23
【非特許文献2】Raineら、Rheumatology 2006; 45:1338-1344
【非特許文献3】Mahoneyら、Nat Rev Drug Discov 2015 8月;14(8):561-84
【非特許文献4】Fridmanら、Nat.Rev.Cancer.2012、4月:12、298-306
【非特許文献5】Giraldoら、Current Opinion in Immunology 2014,27:8-15
【非特許文献6】Bechtら、Current Opinion in Immunology、2016,39:17-13
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
オープンコンフォーマーは、細胞の細胞表面で発現することができ、β2m及びペプチドを含まないHLA分子の線状エピトープを認識する抗体(例えば、LA45、L31、HCA2及びHC-10)を用いて検出することができる。これらの抗体は、様々な自己免疫患者及び健康な個人においてオープンコンフォーマーの存在を検出するために使用されてきた(Raineら、Rheumatology 2006; 45:1338-1344)。患者及び細胞株におけるそれらの存在にかかわらず、作用様式は少しも知られていない。オープンコンフォーマーは主に強直性脊椎炎(AS)+HLA-B27患者において多く評価され、HLA-B27オープンコンフォーマーが自己免疫を誘導すると仮定されてきたが、他の自己免疫患者におけるそれらの作用はまだ取り組まれていない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書において、本発明者らは、オープンコンフォーマー(β2mを含まない重鎖)として存在する分子の古典的MHC-Ia(HLA-A、HLA-B及びHLA-C)ファミリーが、癌の治療におけるそれらの免疫調節特性及び使用のために有用な治療薬であることを初めて開示する。
【0010】
癌は、制御されていない及び破壊的な成長を受けている身体の異常細胞によって特徴付けられる疾患群である。癌細胞は体の周りに広がり、転移して腫瘍を形成する;この成長パターンは悪性と呼ばれる。癌は、外科手術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法、標的療法及び免疫療法によって治療することができる。治療の選択は、癌の種類、癌の段階(その広がり具合)、年齢、健康状態、及び追加の個人的特徴に依存する。癌のための単独治療はなく、患者はしばしば療法と緩和ケアの併用を受ける。
【0011】
癌免疫療法は、患者自身の免疫系を誘導して腫瘍と戦うように設計された多様な治療戦略を指し、多様な突然変異の蓄積を含む癌の進行を免疫系によって監視するという見識に基づいている。免疫療法は、免疫系の特定の細胞成分の活性を刺激するか、又は癌細胞によって産生される免疫応答を抑制するシグナルを相殺する(Mahoneyら、Nat Rev Drug Discov 2015 8月;14(8):561-84)。
【0012】
免疫細胞の異なる型が癌に対する免疫応答に関与している。白血球(免疫組織)の画分内で最も有名な細胞は:T細胞(細胞傷害性CD8T-細胞、TヘルパーCD4細胞-Th1、Th2及びTh17表現型)、制御性T細胞(Treg)、マクロファージ(炎症促進性M1型及び腫瘍促進性M2型)、骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)及び樹状細胞(DC)である。これらの免疫細胞は、腫瘍の中心、浸潤マージン(invasive margin)又は隣接する三次リンパ様構造に位置し得る(Fridmanら、Nat.Rev.Cancer.2012、4月:12、298-306)。
【0013】
免疫微小環境の密度及び組成は、患者と腫瘍の間で異質である。細胞傷害性CD8T細胞、Th1表現型細胞及びM1型マクロファージの浸潤は、多くの場合、免疫療法への良好な臨床的結果及び良好な応答につながることが多いが、一般にM2表現型マクロファージ及び骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)による腫瘍浸潤は腫瘍進行を促進することが現在十分に確立されている。他のリンパ球及び骨髄系細胞集団の臨床的影響は一貫性が低く、腫瘍の種類及び段階に依存するようである。Th17及びNK細胞の存在、及び腫瘍浸潤物におけるTreg細胞の不存在/減少は、いくつかの癌適応症における良好な結果と相関する(Giraldoら、Current Opinion in Immunology 2014,27:8-15)。白血球浸潤と臨床的結果の間の均衡の一般的概要を概説する(Bechtら、Current Opinion in Immunology、2016,39:17-13)。
【0014】
全体として、M1型マクロファージ、細胞傷害性CD8T細胞、及びTh1細胞の浸潤に有利な腫瘍の免疫構成を調節し、及び/又はMDSC及びM2型マクロファージの浸潤を減少させることは、ここで検討されるHLAオープンコンフォーマータンパク質の使用を伴う癌を治療するための期待が高い治療手段となる。
【0015】
用語と定義
アミノ酸配列は、アミノ末端からカルボキシル末端へ与えられる。配列位置の大文字は、1文字コードのL-アミノ酸を指す(Stryer、Biochemistry、第3版 p.21)。
【0016】
本明細書中で使用される用語「オープンコンフォーマー(open conformer)」とは、単量体又は二量体(ホモ二量体又はヘテロ二量体)のいずれかとして、β2-ミクログロブリンに会合しない単離されたHLA重鎖分子をいう。本明細書中に開示されるオープンコンフォーマーの特定の実施形態は、HLA重鎖が安定化ポリペプチド領域、特に結晶性断片免疫グロブリンドメインに共有結合的に連結される融合タンパク質単量体又は二量体である。
【0017】
本明細書中で使用される用語「配列同一性」及び「配列同一性のパーセンテージ」は、2つの整列した配列を比較することによって決定される値を指す。比較のために配列のアラインメントを求める方法は当技術分野で周知である。比較のための配列のアラインメントは、Smith及びWaterman、Adv.Appll.Math 2:482(1981)の局所相同性アルゴリズムによって、Needleman及びWunsch、J.Mol.Biol.48:443(1970)のグローバルアライメントアルゴリズムによって、Pearson及びLipman、Proc.Nat.Acad.Sci.85:2444(1988)の類似検索法による検索によって、又はCLUSTAL、GAP、BESTFIT、BLAST、FASTA及びTFASTAを含むがこれらに限定されないこれらアルゴリズムのコンピュータ化された実装によって達成され得る。BLAST分析を実施するためのソフトウェアは、例えば、国立生物工学情報センター(http://blast.ncbi.nlm.nih.gov/)を通じて公的に入手可能である。アミノ酸配列の比較の一例は、BLASTPアルゴリズムであり:期待閾値:10;ワードサイズ:3;クエリ範囲での最大一致:0;マトリックス:BLOSUM62;ギャップコスト:存在11;拡張:1;構成調整:条件付き構成スコアマトリクス調整;のデフォルト設定を使用する。このような核酸配列の比較の一例は、BLASTNアルゴリズムであり:期待閾値:10;ワードサイズ:28;クエリ範囲での最大一致:0;一致/不一致スコア:1.-2;ギャップコスト:リニア;のデフォルト設定を使用する。特に明記しない限り、本明細書で提供される配列同一性値は、それぞれタンパク質及び核酸の比較の上記既定のパラメーターを用いてBLASTプログラム群(Altschulら、J.Mol.Biol.215:403-410(1990))を使用して得られた値を指す。
【0018】
本明細書中で使用される用語「主要組織適合遺伝子複合体(major histocompatibility complex)(MHC)」は、生物学及び免疫学の分野で知られている意味で使用される;それはタンパク質のエピトープとも呼ばれる特定の断片(ペプチド)を提示する細胞表面分子を指す。MHC分子の2つの主要クラス:クラスI及びクラスIIが存在する。MHCクラスI内で、その多型を基に2つの群を区別することができる:a)対応する多型HLA-A、HLA-B、及びHLA-C遺伝子を有する古典的(MHC-Ia)、及びb)対応するより多型性の低いHLA-E、HLA-F、HLA-G及びHLA-H遺伝子を有する非古典的(MHC-Ib)。
【0019】
MHCクラスI重鎖分子は、通常、非MHC分子β2-ミクログロブリンのユニットに連結されたアルファ鎖として生じる(すなわち、オープン型ではない場合)。アルファ鎖は、N末端からC-末端への方向に、シグナルペプチド、3つの細胞外ドメイン(N末端にα1を有するα1~3)、膜貫通ドメイン及びC末端細胞質尾部を含む。表示又は提示されるペプチドは、α1/α2ドメインの中央領域のペプチド結合溝によって保持される。
【0020】
本明細書中で使用される用語「β2-ミクログロブリンドメイン」は、細胞生物学及び生化学の分野で知られている意味で使用される;これは、MHCクラスIヘテロ二量体分子の一部である非MHC分子を指す。換言すれば、それはMHCクラスIヘテロ二量体のβ鎖を構成する。
【0021】
本明細書中で使用される用語「ヒト白血球抗原(HLA)」は、細胞生物学及び生化学の分野で知られている意味で使用される;それは、ヒトMHCクラスIタンパク質をコードする遺伝子座を指す。3つの主要な古典的MHC-Ia遺伝子は、HLA-A、HLA-B及びHLA-Cであり、これらの遺伝子の全ては様々な対立遺伝子数を有する(表1)。密接に関連する対立遺伝子は、特定の対立遺伝子のサブグループに群別される。例えば、HLAシステムの因子に関するWHO命名委員会により対立遺伝子HLA-B57は、HLA-B57:01:01~HLA-B57:82と標識された、一つ以上のアミノ酸に変化した100以上の密接に関連する対立遺伝子を有する。すべての既知のHLA遺伝子及びそれらのそれぞれの対立遺伝子の完全配列又は部分配列は、IMGT/HLA(http://www.ebi.ac.uk/ipd/imgt/hla/)のような専門データベースで当業者に利用可能である。
【0022】
本明細書中で使用される用語「抗体」は、細胞生物学及び免疫学の分野で知られている意味で使用される;それは、免疫グロブリンG型(IgG)、A型(IgA)、D型(IgD)、E型(IgE)又はM型(IgM)のいずれかの抗原結合断片又はその一本鎖及び、関連又は誘導された構築物に限定されないが、これらを含むすべての抗体を指す。全抗体は、ジスルフィド結合によって相互連結された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(V)及び重鎖定常領域(C)を含む。重鎖定常領域は、3つのドメイン、C1、C2及びC3からなる。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVと略す)及び軽鎖定常領域(C)からなる。軽鎖定常領域は、1つのドメインCからなる。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを構成する。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び古典的補体系の第一成分を含む宿主組織又は因子への免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0023】
本明細書中で使用される用語「抗体様分子」は、高い親和性/kd≦10E-8mol/Lで別の分子又は標的に特異的に結合することができる分子を指す。抗体様分子は、抗体の特異的結合と同様にその標的に結合する。用語「抗体様分子」は、設計されたアンキリンリピートタンパク質(モレキュラーパートナーズ(Molecular Partners)、チューリッヒ)、アルマジロリピートタンパク質に由来するポリペプチド、ロイシンリッチリピートタンパク質に由来するポリペプチド、及びテトラリコペプチドリピートタンパク質に由来するポリペプチドのように、リピートタンパク質を包含する。
【0024】
用語「抗体様分子」は、プロテインAドメインに由来するポリペプチド、フィブロネクチンドメインFN3に由来するポリペプチド、コンセンサスフィブロネクチンドメインに由来するポリペプチド、リポカリンに由来するポリペプチド、ジンクフィンガーに由来するポリペプチド、Src相同ドメイン2(SH2)に由来するポリペプチド、Src相同ドメイン3(SH3)に由来するポリペプチド、PDZドメインに由来するポリペプチド、γ-クリスタリンに由来するポリペプチド、ユビキチンに由来するポリペプチド、システインノットポリペプチドに由来するポリペプチド、及びノッティンに由来するポリペプチドをさらに包含する。
【0025】
用語「プロテインAドメイン由来ポリペプチド」は、プロテインAの誘導体であり、免疫グロブリンのFcドメイン及びFab領域に特異的に結合することができる分子を指す。
【0026】
用語「アルマジロリピートタンパク質」は、少なくとも1つのアルマジロリピートを含むポリペプチドを指し、アルマジロリピートは、ヘアピン構造を形成するαヘリックスの対によって特徴付けられる。
【0027】
本明細書中で使用される用語「結晶化可能断片(Fc)領域」は、細胞生物学及び免疫学の分野で知られている意味で使用される;それは、ジスルフィド結合によって共有結合的に連結されたC2及びC3ドメインを含む2つの同一の重鎖断片を含む抗体の画分を指す。
【0028】
本明細書の文脈において、用語「二量体」は、2つのサブユニットからなるユニットを指す。
【0029】
本明細書中で使用される用語「ホモ二量体」は、同じクラスのサブユニットの同一又は非常に類似したメンバーである2つのサブユニットからなる二量体を意味する。ホモ二量体の一例は、HLA対立遺伝子のリストから独立して選択された2つのサブユニットからなる二量体であろう。特定の実施形態では、ホモ二量体は、2つの同一のHLA対立遺伝子からなる。
【0030】
本明細書中で使用される用語「アミノ酸リンカー」は、一本鎖ポリペプチドを生成するために、2つのポリペプチドを連結するため使用される可変長のポリペプチドをいう。本明細書で特定される本発明の実施に有用なリンカーの例示的な実施形態は、1、2、3、4、5、10、20、30、40又は50個のアミノ酸からなるオリゴペプチド鎖である。アミノ酸リンカーの非限定的な例は、HLA重鎖ポリペプチドをFcドメインと連結するポリペプチドGGGGSGGGGS(配列番号001)である。
【0031】
本明細書中で使用される用語「チェックポイント阻害剤」又は「チェックポイント阻害抗体」は、当該分野において免疫チェックポイント機構として知られているものの一部にあるとおり、T細胞活性化後にT細胞阻害をもたらすシグナルカスケードを破壊することができる薬剤、特に(非アゴニスト)抗体(又は抗体様分子)を包含することを意味する。チェックポイント阻害剤又はチェックポイント阻害抗体の非限定的な例には、CTLA-4(Uniprot P16410)、PD-1(Uniprot Q15116)、PD-L1(Uniprot Q9NZQ7)、B7H3(CD276;Uniprot Q5ZPR3)、Tim-3、Gal9、VISTA、Lag3に対する抗体を含む。
【0032】
本明細書中で使用される用語「チェックポイントアゴニスト剤」又は「チェックポイントアゴニスト抗体」は、当該分野において免疫チェックポイント機構として知られているものの一部にあるとおり、T細胞活性化に至るシグナルカスケードに従事することができる、特に抗体(又は抗体様分子)であるが、これに限定されない薬剤を包含することを意味する。T細胞活性化を刺激することが知られている受容体の非限定的な例には、CD122及びCD137(4-1BB;Uniprot Q07011)が含まれる。「チェックポイントアゴニスト剤」又は「チェックポイントアゴニスト抗体」という用語は、CD137(4-1BB)、CD134(O×40)、CD357(GITR)、CD278(ICOS)、CD27、CD28に対するアゴニスト抗体を包含する。
【0033】
本明細書中で使用される用語「(免疫)チェックポイント調節剤」は、チェックポイント阻害剤、チェックポイント阻害抗体、チェックポイントアゴニスト剤及びチェックポイントアゴニスト抗体を包含する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1は、MHCクラスI分子の命名法を示す。
図2図2は、HLAヘテロ三量体及びHLAオープンコンフォーマー(遊離重鎖)の概略図を示す。両方の形態が抗原提示細胞(APC細胞)の細胞表面に存在し得る。本発明者らは、オープンコンフォーマーと免疫調節性受容体(KIR、LIL、PTPRJなど)との相互作用は親和性が異なり、したがって抗腫瘍免疫に有利な免疫応答を誘導するように改変されることを提案する。
図3AB図3はHLA-Fc及びβ2mDNAカセットの概略図及びCHO細胞からのHLA-β2m-Fc分子の発現を示す。A)ヒトIgG4-Fcベクターカセットに挿入されたMHC-Ia重鎖(HLA重鎖)のアルファ1、2及び3ドメイン;及び別のベクターカセットに挿入されたヒトβ2ミクログロブリン。B)チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)細胞でのトランスフェクションは、HLA-β2m-Fcタンパク質の細胞外生産のために、1:1の比率でHLA-Fcベクター+β2mベクターの両方を使用して行う。標準的な抗体精製の手順を用いて上清を回収し、HLA-β2m-Fcを精製した。β2mをHLA-β2m-Fc複合体から除去し、その後のHLA-Fc単量体をリフォールディングしてHLA-Fcホモ二量体を形成する。
図4ABC図4は、HLA-β2m-Fc複合体からのβ2mの分離及びSECによるHLA-Fcの精製及びリフォールディングを示す。A)尿素-トリス-BME変性緩衝液中のHLA-β2m-Fc分子のクロマトグラフィーヒストグラムプロットは、SECによるセファクリル(Sephacryl)S-100HRカラムを用いたβ2mからのHLA-Fc遊離重鎖の解離を示す。B)及びC)クマシーブルーで染色したSDS-ポリアクリルアミド電気泳動ゲルは、SECの前後のβ2mの存在を示す。B)はSEC中で分離される前のHLA-B2m-Fc分子を示し、そしてC)はSEC後に回収され、そしてリフォールディングされたHLA-Fc分子を示す。
図5ABCD図5は酵素結合免疫吸着法(ELISA)により白血球集団の異なる免疫調節受容体に対するHLA-Fc(A25-Fc、A30-Fc、B27-Fc、B53-Fc、B57-Fc、B58-Fc、C08-Fc及びC12-Fc)の相互作用を示す。A)ヒトKIR3DL1、B)ヒトKIR3DL2、及びC)ヒトKIR3DL3は、NK細胞及びT細胞の亜集団において発現される。D)LILRB1、及びE)LILRB2は主に骨髄細胞で発現され、F)PirB(LILRBに対するマウスのホモログ)及びG)PTPRJ(白血球上ではMDSC細胞及び活性化T細胞で優先的に発現される)
図5EFG図5は酵素結合免疫吸着法(ELISA)により白血球集団の異なる免疫調節受容体に対するHLA-Fc(A25-Fc、A30-Fc、B27-Fc、B53-Fc、B57-Fc、B58-Fc、C08-Fc及びC12-Fc)の相互作用を示す。A)ヒトKIR3DL1、B)ヒトKIR3DL2、及びC)ヒトKIR3DL3は、NK細胞及びT細胞の亜集団において発現される。D)LILRB1、及びE)LILRB2は主に骨髄細胞で発現され、F)PirB(LILRBに対するマウスのホモログ)及びG)PTPRJ(白血球上ではMDSC細胞及び活性化T細胞で優先的に発現される)
図6A図6は、HLA-Fc分子(A25-Fc、A30-Fc、B27-Fc、B53-Fc、B57-Fc、B58-Fc、C08-Fc、及びC12-Fc)がiTregへのマウスCD4T細胞の変換を常に遮断することを示す。ナイーブCD4T細胞との用量依存的な様式でのHLA-Fcのインキュベーションは、iTregへの変換を阻止する。A~B)HLA-Fc分子は、iTregの分化に最適な培養条件(10μg/mL)でFoxP3(Tregの分化マーカー)の発現を阻止し、コントロールHLA-β2m-Fc分子、アイソタイプ、TGFβ及びIL-2を補充した培地及び補充なしの培地は、iTreg変換においてHLA-Fcの特異的な影響を実証する。
図6B図6は、HLA-Fc分子(A25-Fc、A30-Fc、B27-Fc、B53-Fc、B57-Fc、B58-Fc、C08-Fc、及びC12-Fc)がiTregへのマウスCD4T細胞の変換を常に遮断することを示す。ナイーブCD4T細胞との用量依存的な様式でのHLA-Fcのインキュベーションは、iTregへの変換を阻止する。A~B)HLA-Fc分子は、iTregの分化に最適な培養条件(10μg/mL)でFoxP3(Tregの分化マーカー)の発現を阻止し、コントロールHLA-β2m-Fc分子、アイソタイプ、TGFβ及びIL-2を補充した培地及び補充なしの培地は、iTreg変換においてHLA-Fcの特異的な影響を実証する。
図7AB図7は、HLA-Fc分子(A25-Fc、A30-Fc、B27-Fc、B53-Fc、B57-Fc、B58-Fc、C08-Fc、及びC12-Fc)がT細胞リンパ腫を抑制することを示す。A~E)HLA-Fc分子又はコントロールHLA-β2m-Fc分子の存在下で細胞の増殖を測定するための抑制アッセイ。HLA-Fcは、ヒト(Jurkat)及びマウス(EG.7)のリンパ腫細胞株を用量依存的様式で抑制し(μg/200μL)、Daudi、B細胞リンパ腫;SK-N-AS、神経芽細胞腫;及びL540、ヒトホジキンリンパ腫などのその他の細胞株を評価したが、抑制は最適な培養条件ではHLA-Fc分子から観察されたものではなかった。L428、ヒトホジキンリンパ腫;L1236、ヒトホジキンリンパ腫;IMR-5、神経芽細胞腫;及びM130428、黒色腫などの他の細胞株も試験したが抑制は観察されなかった。
図7CD図7は、HLA-Fc分子(A25-Fc、A30-Fc、B27-Fc、B53-Fc、B57-Fc、B58-Fc、C08-Fc、及びC12-Fc)がT細胞リンパ腫を抑制することを示す。A~E)HLA-Fc分子又はコントロールHLA-β2m-Fc分子の存在下で細胞の増殖を測定するための抑制アッセイ。HLA-Fcは、ヒト(Jurkat)及びマウス(EG.7)のリンパ腫細胞株を用量依存的様式で抑制し(μg/200μL)、Daudi、B細胞リンパ腫;SK-N-AS、神経芽細胞腫;及びL540、ヒトホジキンリンパ腫などのその他の細胞株を評価したが、抑制は最適な培養条件ではHLA-Fc分子から観察されたものではなかった。L428、ヒトホジキンリンパ腫;L1236、ヒトホジキンリンパ腫;IMR-5、神経芽細胞腫;及びM130428、黒色腫などの他の細胞株も試験したが抑制は観察されなかった。
図7E図7は、HLA-Fc分子(A25-Fc、A30-Fc、B27-Fc、B53-Fc、B57-Fc、B58-Fc、C08-Fc、及びC12-Fc)がT細胞リンパ腫を抑制することを示す。A~E)HLA-Fc分子又はコントロールHLA-β2m-Fc分子の存在下で細胞の増殖を測定するための抑制アッセイ。HLA-Fcは、ヒト(Jurkat)及びマウス(EG.7)のリンパ腫細胞株を用量依存的様式で抑制し(μg/200μL)、Daudi、B細胞リンパ腫;SK-N-AS、神経芽細胞腫;及びL540、ヒトホジキンリンパ腫などのその他の細胞株を評価したが、抑制は最適な培養条件ではHLA-Fc分子から観察されたものではなかった。L428、ヒトホジキンリンパ腫;L1236、ヒトホジキンリンパ腫;IMR-5、神経芽細胞腫;及びM130428、黒色腫などの他の細胞株も試験したが抑制は観察されなかった。
図8ABCD図8は、単独療法として、又はPD-1抗体との併用療法としてHLA-Fc(A30-Fc、B58-Fc、及びC08-Fc)は、C38マウス同系結腸癌モデルにおける腫瘍のサイズを縮小することができることを示す。A)結腸癌細胞(C38)の注射時点及び化合物注射の実験設計。B)A30-Fc処置群の平均腫瘍体積の平均(Mean average tumor volume)mm(n=5)。C)B58-Fc処置群(n=5)の平均腫瘍体積の平均。D)C08-Fc処置群(n=5)の平均腫瘍体積の平均。細胞の注入時点及び物質の注入の実験設計は以下の通りであった:ビヒクルPBS Q3D×6、アイソタイプ(10mg/Kg)Q3D×6;HLA-Fc(10mg/kg)Q3D×6;PD-1 biwk×2(200μg);及びHLA-Fc+PD-1(それぞれQ3D×6及びbiwk×2)。腫瘍体積を平均±SEMとして表し、二元配置分散分析(two-way ANOVA)により解析し、続いてボンフェローニポストホック(Bonferroni post-hoc)分析、p<0.05;**p<0.01、により分析した。n.s.=有意ではない。Q=注入間の日数。Dx=注入回数。biwk=週に2回。
図9AB図9は、CTLA4又はPD-1抗体との併用においてHLA-Fc(B27-Fc及びB57-Fc)がMC38-OVA又はC38マウス同系結腸癌モデルにおいて腫瘍のサイズを縮小することを示す。A)B27-Fc処置群(n=6)の平均腫瘍体積の平均mm。B)B57-Fc処置群の平均腫瘍体積の平均mm(n=6)。細胞の注入時点及び物質の注入の実験計画は以下の通りであった:ビヒクルPBS Q3Dx6、アイソタイプ(10mg/Kg)Q3Dx6;HLA-Fc(10mg/Kg)Q3Dx6;CTLA-4 Q3D×2(d1=100μg;d4=50μg)、PD-1 biwk×2(200μg);HLA-Fc+CTLA-4(それぞれQ3Dx6及びQ3Dx2)、及びHLA-Fc+PD-1(それぞれQ3Dx6及びbiwk×2)。腫瘍体積を平均±SEMとして表し、二元配置分散分析により解析し、続いてボンフェローニポストホック分析、**p<0.01、***p<0.001により分析した。n.s.=有意ではない。Q=注入間の日数。Dx=注入回数。biwk=週に2回
図10AB図10は、膵臓Pan02同系マウスモデルの大きな腫瘍におけるPD-1及び4-1BB抗体との併用におけるA25-Fcのインビボ試験を示す。A)A25-Fc処置動物のmmでの平均腫瘍体積の平均(n=6)。B)コントロールと比較した処置マウス群の%Δ腫瘍阻害。物質の注入時点の実験計画は以下の通りであった:アイソタイプ(5mg/Kg)biwk×2;A25-Fc(5mg/Kg)biwk×2;4-1BB抗体(1mg/Kg)をbiwk×2回注入;A25-Fc+4-1BB(それぞれ5mg/Kg及び1mg/Kg)biwk×2;PD-1抗体(5mg/Kg)biwk×2;及びA25-Fc+PD-1(各5mg/kg)biwk×2。腫瘍体積は平均±SEMとして表し、二元配置分散分析により解析し、続いてボンフェローニポストホック分析p<0.05により分析した。Δ腫瘍阻害は、アイソタイプと比較した、治療の開始時(例えば300mm)から治療の終了時体積(例えば1000mm)までの%の腫瘍の成長を表すΔT/ΔC腫瘍成長率から計算される。biwk=週に2回
図11ABC図11は、フローサイトメトリーによるA25-Fc、4-1BB及びPD-1で処置された大きな腫瘍を有するPan02膵臓癌マウスからの腫瘍浸潤リンパ球(TIL)分析の免疫構成を示す(図10における実験の継続)。腫瘍に浸潤している関連白血球を分析:A)CD3+T細胞、CD4+T細胞、調節性T細胞(Treg)、CD8+T細胞、及びCD8+/Treg比。B)顆粒球、マクロファージ、マクロファージM1型、マクロファージM2型、及び骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)。C)M1/M2マクロファージ比、単球、ナチュラルキラー細胞(NK)、及びナチュラルキラーT細胞(NKT)。白血球%は、試料の最大値及び最小値を示すボックスプロットとして表し、各群を一元配置分散分析(one-way ANOVA)、続いてダネットポストホック(Dunnet post-hoc)分析p<0.05、**p<0.01、***p<0.001によって分析した。
図12ABC図12は、フローサイトメトリーによるA25-Fc、4-1BB及びPD-1で処置された大きな腫瘍を有するPan02膵臓癌マウスからの血液白血球分析の免疫組織図を示す(図10における実験の継続)。血液中に存在する関連白血球を分析:A)CD3+T細胞、CD4+T細胞、調節性T細胞(Treg)、CD8+T細胞、及びCD8+/Treg比。B)Th1細胞(CD4+T細胞IFNγ+)、ナチュラルキラー細胞(NK)、及びナチュラルキラーT細胞(NKT)。C)単球、顆粒球-骨髄由来免疫抑制細胞(G-MDSC)、及び単球-骨骨髄由来免疫抑制細胞(M-MDSC)。白血球%は、試料の最大値及び最小値を示すボックスプロットとして表し、各群を一元配置分散分析、続いてダネットポストホック分析p<0.05。**p<0.01。***p<0.001によって分析した。
図13AB図13は、膵臓Pan02同系マウスモデルの大きな腫瘍におけるPD-1及び4-1BB抗体との併用におけるA30-Fcのインビボ試験を示す。A)A30-Fc処置動物のmmでの平均腫瘍体積の平均(n=6)。B)コントロールと比較した処置マウス群の%Δ腫瘍阻害。物質の注入時点の実験計画は以下の通りであった:アイソタイプ(5mg/Kg)biwk×2;A30-Fc(5mg/Kg)biwk×2;4-1BB抗体(1mg/Kg)biwk×2注入;A30-Fc+4-1BB(それぞれ5mg/Kg及び1mg/Kg)biwk×2;PD-1抗体(5mg/Kg)biwk×2;及びA30-Fc+PD-1(それぞれ5mg/Kg)biwk×2。腫瘍体積を平均±SEMとして表し、二元配置分散分析、続いてボンフェローニポストホック分析によって分析する。Δ腫瘍阻害は、アイソタイプと比較した、治療の開始時(例えば300mm)から治療の終了時体積(例えば1000mm)までの%の腫瘍の成長を表すΔT/ΔC腫瘍成長率から計算される。biwk=週に2回
図14ABC図14は、フローサイトメトリーによるA30-Fc、4-1BB及びPD-1で処置された大きな腫瘍を有するPan02膵臓癌マウスからの腫瘍浸潤リンパ球(TIL)分析の免疫構成を示す(図13における実験の続き)。腫瘍に浸潤している関連白血球を分析し:A)CD3+T細胞、CD4+T細胞、調節性T細胞(Treg)、CD8+T細胞、及びCD8+/Treg比。B)顆粒球、マクロファージ、マクロファージM1型、マクロファージM2型、及び骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)。C)M1/M2マクロファージ比、単球、ナチュラルキラー細胞(NK)、及びナチュラルキラーT細胞(NKT)。白血球%は、試料の最大値及び最小値を示すボックスプロットとして表し、各群を一元配置分散分析、続いてダネットポストホック分析p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001によって分析した。
図15ABC図15は、フローサイトメトリーによるA30-Fc、4-1BB及びPD-1で処置された大きな腫瘍を有する処置されたPan02膵臓癌マウスからの血液白血球分析の免疫構成を示す(図13における実験の継続)。血液中に存在する関連白血球を分析:A)CD3+T細胞、CD4+T細胞、調節性T細胞(Treg)、CD8+T細胞、及びCD8+/Treg比。B)Th1細胞(CD4+T細胞IFNγ+)、ナチュラルキラー細胞(NK)、及びナチュラルキラーT細胞(NKT)。C)単球、顆粒球-骨髄由来免疫抑制細胞(G-MDSC)、及び単球-骨髄由来免疫抑制細胞(M-MDSC)。白血球%は、試料の最大値及び最小値を示すボックスプロットとして表し、各群を一元配置分散分析、続いてダネットポストホック分析p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001によって分析した。
図16AB図16は、膵臓Pan02同系マウスモデルの大きな腫瘍におけるPD-1及び4-1BB抗体との併用におけるB27-Fcのインビボ試験を示す。A)B27-Fc処置動物のmmでの平均腫瘍体積の平均(n=6)。B)コントロールと比較した処置マウス群の%Δ腫瘍阻害。物質の注入時点の実験計画は以下の通りであった;アイソタイプ(5mg/Kg)biwk×2;B27-Fc(5mg/Kg)biwk×2;4-1BB抗体(1mg/Kg)biwk×2注入;B27-Fc+4-1BB(それぞれ5mg/Kg及び1mg/Kg)biwk×2;PD-1抗体(5mg/Kg)biwk×2;及びB27-Fc+PD-1(それぞれ5mg/Kg)biwk×2。腫瘍体積は平均±SEMとして表し、二元配置分散分析、続いてボンフェローニポストホック分析によって分析した。Δ腫瘍阻害は、アイソタイプと比較した、治療の開始時(例えば300mm)から治療の終了時体積(例えば1000mm)までの%の腫瘍の成長を表すΔT/ΔC腫瘍成長率から計算される。biwk=週に2回
図17ABC図17は、フローサイトメトリーによるB27-Fc、4-1BB及びPD-1で処置された大きな腫瘍を有するPan02膵臓癌マウスからの腫瘍浸潤リンパ球(TIL)分析の免疫構成を示す(図16における実験の継続)。腫瘍に浸潤している関連白血球を分析:A)CD3+T細胞、CD4+T細胞、調節性T細胞(Treg)、CD8+T細胞、及びCD8+/Treg比。B)顆粒球、マクロファージ、マクロファージM1型、マクロファージM2型、及び骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)。C)M1/M2マクロファージ比、単球、ナチュラルキラー細胞(NK)、及びナチュラルキラーT細胞(NKT)。白血球%は、試料の最大値及び最小値を表すボックスプロットとして表し、並びに各群は一元配置分散分析、続いてダネットポストホック分析p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001によって分析した。
図18ABC図18は、フローサイトメトリーによるB27-Fc、4-1BB及びPD-1で処置された大きな腫瘍を有する処置されたPan02膵臓癌マウスからの血液白血球分析の免疫構成を示す(図16における実験の継続)。血液中に存在する関連白血球を分析:A)CD3+T細胞、CD4+T細胞、調節性T細胞(Treg)、CD8+T細胞、及びCD8+/Treg比。B)Th1細胞(CD4+T細胞IFNγ+)、ナチュラルキラー細胞(NK)、及びナチュラルキラーT細胞(NKT)。C)単球、顆粒球-骨髄由来免疫抑制細胞(G-MDSC)、及び単球-骨髄由来免疫抑制細胞(M-MDSC)。白血球%は、試料の最大値及び最小値を示すボックスプロットとして表し、各群を一元配置分散分析、続いてダネットポストホック分析p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001によって分析した。
図19AB図19は、膵臓Pan02同系マウスモデルの大きな腫瘍におけるPD-1及び4-1BB抗体との併用においてB53-Fcのインビボ試験を示す。A)B53-Fc処置動物のmmでの平均腫瘍体積の平均(n=6)。B)コントロールと比較した処置マウス群の%Δ腫瘍阻害。物質の注入時点の実験計画は以下の通りであった:アイソタイプ(5mg/Kg)biwk×2;B53-Fc(5mg/Kg)biwk×2;4-1BB抗体(1mg/Kg)biwk×2注入;B53-Fc+4-1BB(それぞれ5mg/Kg及び1mg/Kg)biwk×2;PD-1抗体(5mg/Kg)biwk×2;及びB53-Fc+PD-1(それぞれ5mg/Kg)biwk×2。腫瘍体積を平均±SEMとして表し、二元配置分散分析、続いてボンフェローニポストホック分析によって分析する。Δ腫瘍阻害は、アイソタイプと比較した、治療の開始時(例えば300mm)から治療の終了時体積(例えば1000mm)までの%の腫瘍の成長を表すΔT/ΔC腫瘍成長率から計算される。biwk=週に2回
図20ABC図20は、フローサイトメトリーによるB53-Fc、4-1BB及びPD-1で処置された大きな腫瘍を有するPan02膵臓癌マウスからの腫瘍浸潤リンパ球(TIL)分析の免疫構成を示す(図19における実験の継続)。腫瘍に浸潤している関連白血球を分析:A)CD3+T細胞、CD4+T細胞、調節性T細胞(Treg)、CD8+T細胞、及びCD8+/Treg比。B)顆粒球、マクロファージ、マクロファージM1型、マクロファージM2型、及び骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)。C)M1/M2マクロファージ比、単球、ナチュラルキラー細胞(NK)、及びナチュラルキラーT細胞(NKT)。白血球%は、試料の最大値及び最小値を示すボックスプロットとして表し、各群を一元配置分散分析、続いてダネットポストホック分析p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001によって分析した。
図21ABC図21は、フローサイトメトリーによるB53-Fc、4-1BB及びPD-1で処置された大きな腫瘍を有する処置されたPan02膵臓癌マウスからの血液白血球分析の免疫構成を示す(図19における実験の継続)。血液中に存在する関連白血球を分析:A)CD3+T細胞、CD4+T細胞、調節性T細胞(Treg)、CD8+T細胞、及びCD8+/Treg比。B)Th1細胞(CD4+T細胞IFNγ+)、ナチュラルキラー細胞(NK)、及びナチュラルキラーT細胞(NKT)。C)単球、顆粒球-骨髄由来免疫抑制細胞(G-MDSC)、及び単球-骨髄由来免疫抑制細胞(M-MDSC)。白血球%は、試料の最大値及び最小値を示すボックスプロットとして表し、各群を一元配置分散分析、続いてダネットポストホック分析p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001によって分析した。
図22AB図22は、膵臓Pan02同系マウスモデルの大きな腫瘍におけるPD-1及び4-1BB抗体との併用におけるB57-Fcのインビボ試験を示す。A)B57-Fc処置動物のmmでの平均腫瘍体積の平均(n=6)。B)コントロールと比較した処置マウス群の%Δ腫瘍阻害。物質の注入時点の実験計画は以下の通りであった:アイソタイプ(5mg/Kg)biwk×2;B57-Fc(5mg/Kg)biwk×2;4-1BB抗体(1mg/Kg)biwk×2注入;B57-Fc+4-1BB(それぞれ5mg/Kg及び1mg/Kg)biwk×2;PD-1抗体(5mg/Kg)biwk×2;及びB57-Fc+PD-1(それぞれ5mg/Kg)biwk×2。腫瘍体積は平均±SEMとして表し、二元配置分散分析、続いてボンフェローニポストホック分析によって分析する。Δ腫瘍阻害は、アイソタイプと比較した、治療の開始時(例えば300mm)から治療の終了時体積(例えば1000mm)までの%の腫瘍の成長を表すΔT/ΔC腫瘍成長率から計算される。biwk=週に2回
図23ABC図23は、フローサイトメトリーによるB57-Fc、4-1BB及びPD-1で処置された大きな腫瘍を有するPan02膵臓癌マウスからの腫瘍浸潤リンパ球(TIL)分析の免疫構成を示す(図22における実験の継続)。腫瘍に浸潤している関連白血球を分析:A)CD3+T細胞、CD4+T細胞、調節性T細胞(Treg)、CD8+T細胞、及びCD8+/Treg比。B)顆粒球、マクロファージ、マクロファージM1型、マクロファージM2型、及び骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)。C)M1/M2マクロファージ比、単球、ナチュラルキラー細胞(NK)、及びナチュラルキラーT細胞(NKT)。白血球%は、試料の最大値及び最小値を示すボックスプロットとして表し、各群を一元配置分散分析、続いてダネットポストホック分析p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001によって分析した。
図24ABC図24は、フローサイトメトリーによるB57-Fc、4-1BB及びPD-1で処置された大きな腫瘍を有する処置されたPan02膵臓癌マウスからの血液白血球分析の免疫構成を示す(図22における実験の継続)。血液中に存在する関連白血球を分析:A)CD3+T細胞、CD4+T細胞、調節性T細胞(Treg)、CD8+T細胞、及びCD8+/Treg比。B)Th1細胞(CD4+T細胞IFNγ+)、ナチュラルキラー細胞(NK)、及びナチュラルキラーT細胞(NKT)。C)単球、顆粒球-骨髄由来免疫抑制細胞(G-MDSC)、及び単球-骨髄由来免疫抑制細胞(M-MDSC)。白血球%は、試料の最大値及び最小値を示すボックスプロットとして表し、各群を一元配置分散分析、続いてダネットポストホック分析p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001によって分析した。
図25AB図25は、膵臓Pan02同系マウスモデルの大きな腫瘍におけるPD-1及び4-1BB抗体との併用においてB58-Fcのインビボ試験を示す。A)B58-Fc処置動物のmmにおける平均腫瘍体積の平均(n=6)。B)コントロールと比較した処置マウス群の%Δ腫瘍阻害。物質の注入時点の実験計画は以下の通りであった:アイソタイプ(5mg/Kg)biwk×2;B58-Fc(5mg/Kg)biwk×2;4-1BB抗体(1mg/Kg)biwk×2注入;B58-Fc+4-1BB(それぞれ5mg/Kg及び1mg/Kg)biwk×2;PD-1抗体(5mg/Kg)biwk×2;及びB58-Fc+PD-1(それぞれ5mg/Kg)biwk×2。腫瘍体積は平均±SEMとして表し、二元配置分散分析、続いてボンフェローニポストホック分析によって分析する。Δ腫瘍阻害は、アイソタイプと比較した、治療の開始時(例えば300mm)から治療の終了時体積(例えば1000mm)までの%の腫瘍の成長を表すΔT/ΔC腫瘍成長率から計算される。biwk=週に2回
図26ABC図26は、フローサイトメトリーによるB58-Fc、4-1BB及びPD-1で処置された大きな腫瘍を有するPan02膵臓癌マウスからの腫瘍浸潤リンパ球(TIL)分析の免疫構成を示す(図25における実験の継続)。腫瘍に浸潤している関連白血球を分析:A)CD3+T細胞、CD4+T細胞、調節性T細胞(Treg)、CD8+T細胞、及びCD8+/Treg比。B)顆粒球、マクロファージ、マクロファージM1型、マクロファージM2型、及び骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)。C)M1/M2マクロファージ比、単球、ナチュラルキラー細胞(NK)、及びナチュラルキラーT細胞(NKT)。白血球%は、試料の最大値及び最小値を示すボックスプロットとして表し、各群を一元配置分散分析、続いてダネットポストホック分析p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001によって分析した。
図27ABC図27は、フローサイトメトリーによるB58-Fc、4-1BB及びPD-1で処置された大きな腫瘍を有する処置されたPan02膵臓癌マウスからの血液白血球分析の免疫構成を示す(図25における実験の継続)。血液中に存在する関連白血球を分析:A)CD3+T細胞、CD4+T細胞、調節性T細胞(Treg)、CD8+T細胞、及びCD8+/Treg比。B)Th1細胞(CD4+T細胞IFNγ+)、ナチュラルキラー細胞(NK)、及びナチュラルキラーT細胞(NKT)。C)単球、顆粒球-骨髄由来免疫抑制細胞(G-MDSC)、及び単球-骨髄由来免疫抑制細胞(M-MDSC)。白血球%は、試料の最大値及び最小値を示すボックスプロットとして表し、各群を一元配置分散分析、続いてダネットポストホック分析p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001によって分析した。
図28AB図28は、膵臓Pan02同系マウスモデルの大きな腫瘍におけるPD-1及び4-1BB抗体の併用においてC08-Fcのインビボ試験を示す。A)C08-Fc処置動物のmmにおいての平均腫瘍体積の平均(n=6)。B)コントロールと比較した処置マウス群の%Δ腫瘍阻害。物質の注入時点の実験計画は以下の通りであった:アイソタイプ(5mg/Kg)biwk×2;CO8-Fc(5mg/Kg)biwk×2;4-1BB抗体(1mg/Kg)biwk×2注入;C08-Fc+4-1BB(それぞれ5mg/Kg及び1mg/Kg)biwk×2;PD-1抗体(5mg/Kg)biwk×2;及びC08-Fc+PD-1(それぞれ5mg/Kg)biwk×2。腫瘍体積を平均±SEMとして表し、二元配置分散分析、続いてボンフェローニポストホック分析によって分析する。Δ腫瘍阻害は、アイソタイプと比較した、治療の開始時(例えば300mm)から治療の終了時体積(例えば1000mm)までの%の腫瘍の成長を表すΔT/ΔC腫瘍成長率から計算される。biwk=週に2回
図29ABC図29は、フローサイトメトリーによる、C08-Fc、4-1BB及びPD-1で処置された大きな腫瘍を有するPan02膵臓癌マウスからの腫瘍浸潤リンパ球(TIL)分析の免疫構成を示す(図28における実験の継続)。腫瘍に浸潤している関連白血球を分析:A)CD3+T細胞、CD4+T細胞、調節性T細胞(Treg)、CD8+T細胞、及びCD8+/Treg比。B)顆粒球、マクロファージ、マクロファージM1型、マクロファージM2型、及び骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)。C)M1/M2マクロファージ比、単球、ナチュラルキラー細胞(NK)、及びナチュラルキラーT細胞(NKT)。白血球%は、試料の最大値及び最小値を示すボックスプロットとして表し、各群を一元配置分散分析、続いてダネットポストホック分析p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001によって分析した。
図30ABC図30は、フローサイトメトリーによる、C08-Fc、4-1BB及びPD-1で処置された大型腫瘍を有する処置されたPan02膵臓癌マウスからの血液白血球分析の免疫構成を示す(図28における実験の継続)。血液中に存在する関連白血球を分析:A)CD3+T細胞、CD4+T細胞、調節性T細胞(Treg)、CD8+T細胞、及びCD8+/Treg比。B)Th1細胞(CD4+T細胞IFNγ+)、ナチュラルキラー細胞(NK)、及びナチュラルキラーT細胞(NKT)。C)単球、顆粒球-骨髄由来免疫抑制細胞(G-MDSC)、及び単球-骨髄由来免疫抑制細胞(M-MDSC)。白血球%は、試料の最大値及び最小値を示すボックスプロットとして表し、各群を一元配置分散分析、続いてダネットポストホック分析p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001によって分析した。
図31AB図31は、膵臓Pan02同系マウスモデルの大きな腫瘍におけるPD-1及び4-1BB抗体との併用におけるC12-Fcのインビボ試験を示す。A)C12-Fc処置動物のmmでの平均腫瘍体積の平均(n=6)。B)コントロールと比較した処置マウス群の%Δ腫瘍阻害。物質の注入時点の実験計画は以下の通りであった:アイソタイプ(5mg/Kg)biwk×2;C12-Fc(5mg/Kg)biwk×2;4-1BB抗体(1mg/Kg)biwk×2注入;C12-Fc+4-1BB(それぞれ5mg/Kg及び1mg/Kg)biwk×2;PD-1抗体(5mg/Kg)biwk×2;及びC12-Fc+PD-1(それぞれ5mg/Kg)biwk×2。腫瘍体積を平均±SEMとして表し、二元配置分散分析、続いてボンフェローニポストホック分析によって分析する。Δ腫瘍阻害は、アイソタイプと比較した、治療の開始時(例えば300mm)から治療の終了時体積(例えば1000mm)までの%の腫瘍の成長を表すΔT/ΔC腫瘍成長率から計算される。biwk=週に2回
図32ABC図32は、フローサイトメトリーによるC12-Fc、4-1BB及びPD-1で処置された大きな腫瘍を有するPan02膵臓癌マウスからの腫瘍浸潤リンパ球(TIL)分析の免疫構成を示す(図31における実験の続き)。腫瘍に浸潤している関連白血球を分析:A)CD3+T細胞、CD4+T細胞、調節性T細胞(Treg)、CD8+T細胞、及びCD8+/Treg比。B)顆粒球、マクロファージ、マクロファージM1型、マクロファージM2型、及び骨髄由来免疫抑制細胞(MDSC)。C)M1/M2マクロファージ比、単球、ナチュラルキラー細胞(NK)、及びナチュラルキラーT細胞(NKT)。白血球%は、試料の最大値及び最小値を示すボックスプロットとして表し、各群を一元配置分散分析、続いてダネットポストホック分析p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001によって分析した。
図33ABC図33は、フローサイトメトリーによるC12-Fc、4-1BB及びPD-1で処置された大きな腫瘍を有する処置されたPan02膵臓癌マウスからの血液白血球分析の免疫構成を示す(図31における実験の継続)。血液中に存在する関連白血球を分析:A)CD3+T細胞、CD4+T細胞、調節性T細胞(Treg)、CD8+T細胞、及びCD8+/Treg比。B)Th1細胞(CD4+T細胞IFNγ+)、ナチュラルキラー細胞(NK)、及びナチュラルキラーT細胞(NKT)。C)単球、顆粒球-骨髄由来免疫抑制細胞(G-MDSC)、及び単球-骨髄由来免疫抑制細胞(M-MDSC)。白血球%は、試料の最大値及び最小値を示すボックスプロットとして表し、各群を一元配置分散分析、続いてダネットポストホック分析p<0.05;**p<0.01;***p<0.001;****p<0.0001によって分析した。
【発明を実施するための形態】
【0035】
発明の詳細な説明
本発明は、MHC-Iaオープンコンフォーマー(HLA-オープンコンフォーマー)を提供する。MHC-Iaオープンコンフォーマーには、HLA-A、HLA-B及びHLA-Cオープンコンフォーマーが含まれる。表1に、既知のMHC-Ia対立遺伝子のリストを示す。本発明は、HLA-B27又はHLA-B57対立遺伝子を含むMHC-Iaオープンコンフォーマーを含まない。
【0036】
本発明の一態様によれば、単離されたMHC-IaオープンコンフォーマーがHLA-B27又はHLA-B57オープンコンフォーマーではないことを条件とする、単離されたMHC-Iaオープンコンフォーマーが提供される。
【0037】
特定の実施形態では、単離されたMHC-Iaオープンコンフォーマーは、第1の単量体、又は第1及び第2の単量体を含み、かつ他の単量体と独立する各単量体は、HLA重鎖を含む。
【0038】
本発明の第1の態様の代替によれば、単離されたHLA-Aオープンコンフォーマーが提供される。
【0039】
本発明の第1の様態の他の代替によれば、単離されたHLA-BオープンコンフォーマーがHLA-B27又はHLA-B57オープンコンフォーマーではないことを条件とする、単離されたHLA-Bオープンコンフォーマーが提供される。
【0040】
本発明の第1の様態のさらに別の代替によれば、単離されたHLA-Cオープンコンフォーマーが提供される。
【0041】
本発明の第1の様態のさらに別の代替によれば、単離されたHLA-Aオープンコンフォーマー及びHLA-Cオープンコンフォーマーが提供される。
【0042】
本発明の第2の態様によれば、単離されたMHC-IaオープンコンフォーマーはHLA-B27又はHLA-B57オープンコンフォーマーではないことを条件とする、単離されたMHC-Iaオープンコンフォーマーが:
‐ 薬剤としての使用のために、
‐ 特に癌の治療又は予防に使用するために、
若しくは、
‐ 特に免疫調節剤としての使用のために、
‐ 特に感染症の治療のために、
‐ さらに特にヒト免疫不全ウイルス(HIV)、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎ウイルス(それぞれHAV、HBV、HCV)、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、はしかウイルス、ヘルペスウイルス及び/又は黄熱病ウイルスの予防、治療又は療法のために、
提供される。
【0043】
本発明の第2の態様の代替によれば、単離されたHLA-Aオープンコンフォーマーは:
‐ 薬剤としての使用のために、
‐ 特に癌の治療又は予防に使用するために、
若しくは、
‐ 特に免疫調節剤としての使用のために、
‐ 特に感染症の治療のために、
‐ さらに特にヒト免疫不全ウイルス(HIV)、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎ウイルス(それぞれHAV、HBV、HCV)、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、はしかウイルス、ヘルペスウイルス及び/又は黄熱病ウイルスの予防、治療又は療法のために、
提供される。
【0044】
本発明の第2の態様の別の代替によれば、単離されたHLA-BオープンコンフォーマーはHLA-B27又はHLA-B57オープンコンフォーマーではないことを条件とする、単離されたHLA-Bオープンコンフォーマーが:
‐ 薬剤としての使用のために、
‐ 特に癌の治療又は予防に使用するために、
若しくは、
‐ 特に免疫調節剤としての使用のために、
‐ 特に感染症の治療のために、
‐ さらに特にヒト免疫不全ウイルス(HIV)、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎ウイルス(それぞれHAV、HBV、HCV)、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、はしかウイルス、ヘルペスウイルス及び/又は黄熱病ウイルスの予防、治療又は療法のために、
提供される。
【0045】
本発明の第2の態様のさらなる別の代替によれば、単離されたHLA-Cオープンコンフォーマーは:
‐ 薬剤としての使用のために、
‐ 特に癌の治療又は予防に使用するために、
若しくは、
‐ 特に免疫調節剤としての使用のために、
‐ 特に感染症の治療のために、
‐ さらに特にヒト免疫不全ウイルス(HIV)、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎ウイルス(それぞれHAV、HBV、HCV)、インフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、はしかウイルス、ヘルペスウイルス及び/又は黄熱病ウイルスの予防、治療又は療法のために、
提供される。
【0046】
免疫調節剤としての機能は感染症などの白血球反応の改変を必要とする疾患の治療に特に有用である。本発明によって好ましくは治療できる感染症には、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染症、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザ、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)感染、はしか、ヘルペス及び黄熱病が含まれる。
【0047】
本発明の第2の態様の特定の実施形態において、又は本発明の第2の態様のいかなる上述の代替の実施形態において、癌は大腸癌又は膵臓癌である。
【0048】
本発明の第3の態様は、融合MHC-Iaオープンコンフォーマーは、HLA-B27又はHLA-B57オープンコンフォーマーではないことを条件とする、融合MHC-Iaオープンコンフォーマーに関する。融合MHC-Iaオープンコンフォーマーは、第1のHLA重鎖単量体又は第1及び第2のHLA重鎖単量体又を含む、又は、から本質的になる。これらの他のものと独立するHLA重鎖単量体のそれぞれは、HLA重鎖を含む、又は、から本質的になる。融合MHCオープンコンフォーマーは、Fcポリペプチド配列をさらに含む。特定の実施形態において、HLA単量体配列は融合MHCオープンコンフォーマーのN末端に配置し、かつFc構築物はC末端に向かって位置する。特定の実施形態において、アミノ酸リンカーはHLA重鎖とFc断片を結合する。
【0049】
融合MHC-Iaオープンコンフォーマーは、インビボでポリペプチドを代謝的に安定化することが知られているポリペプチドドメインをさらに含む。そのような安定化ドメインの一例は、免疫グロブリンのFc(結晶化可能断片)ドメイン、特にγ免疫グロブリンのFcポリペプチドドメインである。HLA重鎖及び安定化ドメインは、任意にアミノ酸リンカーによって連結されていてもよい。HLA鎖及び免疫グロブリンFc断片を含むオープンコンフォーマー融合タンパク質は、以後、HLA-Fcオープンコンフォーマー又はHLA-Fcと称する。
【0050】
融合タンパク質中のFcドメインの存在は、哺乳動物系(プロテインA又はG精製)における溶解性、安定性、結合活性、半減期、及び技術的観点からの費用効果の高い産生及び精製の増大を促進する。
【0051】
本発明の第3の態様の代替によれば、HLA-Aオープンコンフォーマーが提供され、HLA-Aオープンコンフォーマーは、第一の単量体又は第1及び第2の単量体を含み、かつ他の単量体と独立する各単量体は、Fcポリペプチド配列、及び任意に、HLA重鎖とFc断片とを連結するアミノ酸リンカーをさらに含むHLA重鎖を含む。
【0052】
本発明の第3の態様の別の代替によれば、HLA-Bオープンコンフォーマーは、HLA-B27又はHLA-B57オープンコンフォーマーではないことを条件とする、HLA-Bオープンコンフォーマーを提供され、HLA-Bオープンコンフォーマーは、第1の単量体又は第1及び第2の単量体を含み、かつ他の単量体と独立する各単量体は、Fcポリペプチド配列、及び任意に、HLA重鎖とFc断片とを連結するアミノ酸リンカーをさらに含むHLA重鎖を含む。
【0053】
本発明の第3の態様のさらに別の代替によれば、HLA-Cオープンコンフォーマーが提供され、HLA-Cオープンコンフォーマーは、第1の単量体又は第1及び第2の単量体を含み、かつ他の単量体と独立する各単量体は、Fcポリペプチド配列、及び任意に、HLA重鎖とFc断片とを連結するアミノ酸リンカーをさらに含むHLA重鎖を含む。
【0054】
本発明の代替の態様によれば、MHC-Iaオープンコンフォーマー単量体(すなわち、第2のHLA重鎖ポリペプチドに結合しておらず、かつβ2-ミクログロブリンにより結合しないHLA重鎖)は、MHC-Iaオープンコンフォーマー単量体は、HLA-B27又はHLA-B57オープンコンフォーマーではないことを条件とし、癌の治療又は予防における使用のために、又は免疫調節剤としての使用のために提供される。この態様の特定の実施形態では、MHC-Ia単量体は、ペプチドエピトープ断片をさらに含む。
【0055】
この態様は、以下の項目で要約することができる:
項目1:薬剤として使用するための、特に癌の治療又は予防に使用するため又は免疫調節剤としての使用のための、会合β2-ミクログロブリンを本質的に含まない、MHC-Ia対立遺伝子由来の単離された単一HLA重鎖ポリペプチド単量体。
項目2:単量体がペプチドエピトープ断片をさらに含む、項目1に記載の癌の治療又は予防、又は免疫調節剤として使用するための、MHC-Ia対立遺伝子由来の単離された単一HLA重鎖ポリペプチド単量体。
項目3:HLA重鎖がHLAアルファ1、2及び3ドメインのみからなる、項目1又は2に記載の癌の治療又は予防、又は免疫調節剤として使用するための、MHC-Ia対立遺伝子由来の単離された単一HLA重鎖ポリペプチド単量体。
項目4:HLA重鎖が膜貫通ドメインを含み、かつ細胞内ドメイン(細胞質尾部)を含まない、前記項目のいずれか1項に記載の癌の治療又は予防、又は免疫調節剤として使用するための、MHC-Ia対立遺伝子由来の単離された単一HLA重鎖ポリペプチド単量体。
項目5:併用薬剤であって、:
a.項目1~4のいずれか一項に特定されるとおり、MHC-Ia対立遺伝子由来の単離された単一HLA重鎖ポリペプチド単量体と、
b.チェックポイント阻害剤、特にチェックポイント阻害抗体及び/又はチェックポイントアゴニスト剤、特にチェックポイントアゴニスト抗体、
とを含む前記併用薬剤。
項目6:項目5に記載の併用薬剤であって、前記チェックポイント阻害剤が、CD80又はCD86とのCTLA4相互作用の阻害剤、及びPD-1とそのリガンドPD-L1との相互作用の阻害剤、特にCTLA4、CD80、CD86、PD-1、PD-L1のいずれか一つに対する抗体、さらに特にヒトCTLA4、PD-1又はPD-L1に対するモノクローナル抗体から選択され、及び/又は前記チェックポイントアゴニスト剤はアゴニスト抗体又は4-1BB及び/又は4-1BBL(CD137L、Uniprot P41273)に対するリガンドから選択される、前記併用薬剤。
【0056】
本発明のこの代替の態様の特定の実施形態において、癌は結腸癌又は膵臓癌である。
【0057】
本発明の別の態様によれば、MHC-IaオープンコンフォーマーがHLA-B27又はHLA-B57オープンコンフォーマーではないことを条件とする、MHC-Iaオープンコンフォーマータンパク質は免疫調節剤として提供される。理論に縛られることを望まずに、本発明者らは特に、白血球に存在する様々な免疫調節受容体に結合し、かつT細胞リンパ腫細胞の増殖を改変する、その能力が特に有用であると考える。さらに制御性T細胞(Treg)のネガティブモジュレーターとしてMHC-Iaオープンコンフォーマーは、癌及び感染症のようなTregが防御免疫の発達を害するヒトの疾患における使用のために特に適している(Boehmerら、前出)。
【0058】
本発明のこの他の態様の代替によれば、HLA-Aオープンコンフォーマーは免疫調節剤としに提供される。
【0059】
本発明のこの他の態様の別の代替によれば、HLA-Bオープンコンフォーマーは、HLA-B27又はHLA-B57のオープンコンフォーマーでないことを条件とする、HLA-Bオープンコンフォーマーが、免疫調節剤として提供される。
【0060】
本発明のこの他の態様のさらなる別の代替によれば、HLA-Cオープンコンフォーマーは免疫調節剤として提供される。
【0061】
本発明のいずれか一つの態様の特定の実施形態において、HLA重鎖は膜貫通ドメインを含み、かつ細胞内ドメイン(細胞質尾部)を含まない。
【0062】
本発明のいずれか一つの態様の特定の実施形態において、単離されたMHC-Iaオープンコンフォーマー又は融合MHC-Iaオープンコンフォーマーは、上記のHLA対立遺伝子から独立して選択される2つのサブユニットからなる。特定の実施形態において、ホモ二量体は2つの同一のHLA対立遺伝子からなる。
【0063】
本発明のいずれか一つの態様の特定の実施形態において、単離されたMHC-Iaオープンコンフォーマー又は融合MHC-Iaオープンコンフォーマーは、2つの同一のHLAポリペプチド鎖を含む。特定の実施形態では、単離されたMHC-Iaオープンコンフォーマー又は融合MMHC-Iaオープンコンフォーマーは、2つの異なるHLAポリペプチド鎖を含む。
【0064】
本発明のいずれか一つの態様の特定の実施形態において、単離されたMHC-Iaオープンコンフォーマー又は融合MHC-Iaオープンコンフォーマーは、ペプチドエピトープ断片をさらに含む。
【0065】
本発明のいずれか一つの態様の特定の実施形態において、ペプチドエピトープ断片は、HLAペプチド鎖の抗原提示ドメイン内のポリペプチドに非共有結合的に結合される。
【0066】
本発明のいずれか一つの態様の特定の実施形態において、第1及び/又は第2の単量体はペプチドエピトープ断片をさらに含む。
【0067】
本発明のいずれか一つの態様の特定の実施形態において、融合MHC-Iaオープンコンフォーマーは、細胞外HLA-アルファ1、HLA-アルファ2及びHLA-アルファ3ドメインのみを含む。これらの実施形態において、HLA重鎖の膜貫通ドメイン及び細胞内ドメインは、組換え細胞におけるその細胞外発現を可能にするために、本発明の治療用ポリペプチドに含まれない。当業者であれば、注釈付きのHLA配列とのペアワイズ配列アライメントにより、以前に未知のHLA配列であっても、それぞれのドメインを容易に同定することができる。
【0068】
本発明のいずれか一つの態様の特定の実施形態において、融合MHC-IaオープンコンフォーマーはFcドメインを含む。特定の特別な実施形態では、Fcドメインは、免疫グロブリンG型(IgG)、A型(IgA)、D型(IgD)、E型(IgE)又はM型(IgM)の重鎖定常領域C2及びC3を含む。
【0069】
本発明のいずれか一つの態様の特定の実施形態において、融合MHC-Iaオープンコンフォーマーは、安定化ドメイン、特にFcドメインをHLAポリペプチドに連結するアミノ酸リンカーを含む。特定の特別な実施形態では、アミノ酸リンカーは、一つの単一ポリペプチド鎖としてHLA重鎖をFcドメインに連結する1~50個のアミノ酸、特に5~40個のアミノ酸、さらに特に10~30個のアミノ酸、なおさらに特に15~25個のアミノ酸を含む。
【0070】
本発明のいずれか一つの態様の特定の実施形態において、単離されたMHC-Iaオープンコンフォーマー又は融合MHC-Iaオープンコンフォーマーは、特に注射用に調合された非経口剤形として提供される。特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤又はアゴニスト剤は、特に注射用に調合された非経口剤形として提供される。特定の実施形態では、MHC-Iaオープンコンフォーマーと免疫チェックポイント阻害剤又はアゴニスト剤の両方が同じ投与形態で存在する。
【0071】
本発明の第3の態様の特定の実施形態において、融合MHC-Iaオープンコンフォーマーは薬剤として使用するためのものである。
【0072】
本発明の第3の態様の特定の実施形態において、融合MHC-Iaオープンコンフォーマーは、癌、特に結腸癌又は膵臓癌の治療又は予防に使用するためのものである。
【0073】
本発明の第3の態様の特定の実施形態において、融合MHC-Iaオープンコンフォーマーは免疫調節剤としての使用、特に調節性T細胞(Treg)のネガティブモジュレーターとしての使用のためのものである。特定の実施形態では、融合MHC-Iaオープンコンフォーマーは感染症の治療に使用するためのものである。特定の実施形態において、融合MHC-Iaオープンコンフォーマーは、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染、A型肝炎、B型肝炎、C型肝炎、インフルエンザ、RSウイルス(RSV)感染、はしか、ヘルペス及び黄熱病の治療に使用するためのものである。
【0074】
本発明の第4の態様によれば、本発明の上記態様に記載のMHC-Iaオープンコンフォーマー単量体、特にFcオープンコンフォーマー単量体をコードする核酸分子が、癌の治療又は療法における使用のために、又は免疫調節剤としての使用のために、特に感染症の治療において、提供される。核酸分子からのインビボでのオープンコンフォーマーの発現は、二量体化の後に、本発明の融合タンパク質ポリペプチドをもたらす。患者の体内でそれらをコードする核酸から薬学的に活性なポリペプチドを発現させるという概念は周知であり、患者に大きな利益を与えることができる。
【0075】
本発明の第4の態様の代替によれば、癌の治療又は療法においての使用のための、又は免疫調節剤としての使用のための、特に感染症の治療においての使用のための、HLA-Aオープンコンフォーマー単量体をコードする核酸が提供される。
【0076】
本発明の第4の態様の別の代替によれば、HLA-BオープンコンフォーマーがHLA-B27又はHLA-B57オープンコンフォーマーではないことを条件とする、癌の治療又は療法においての使用のための、又は免疫調節剤としての使用のための、特に感染症の治療においての使用のための、HLA-Bオープンコンフォーマー単量体をコードする核酸が提供される。
【0077】
本発明の第4の態様のさらなる別の代替によれば、癌の治療又は療法においての使用のための、又は免疫調節剤としての使用のための、特に感染症の治療においての使用のための、HLA-Cオープンコンフォーマー単量体をコードする核酸が提供される。
【0078】
本発明の第4の態様の特定の実施形態又は任意の上述のその代替において、癌は結腸癌又は膵臓癌である。
【0079】
特定の実施形態では、核酸分子は、MHC-Iaオープンコンフォーマー単量体、特にペプチドエピトープ断片を含むFcオープンコンフォーマー単量体をコードする。特定の実施形態では、核酸分子は、MHC-Iaオープンコンフォーマー単量体、特に、細胞外HLAアルファ1、2及び3ドメインのみを含むFcオープンコンフォーマー単量体をコードする。特定の実施形態では、核酸分子は、HLAオープンコンフォーマー単量体、特に細胞外HLAアルファ1、2及び3ドメインのみを含むFcオープンコンフォーマー単量体及びペプチドエピトープ断片をコードする。
【0080】
特定の実施形態では、核酸分子は、MHC-Iaオープンコンフォーマー単量体、特にアミノ酸リンカー及び/又はFc(結晶化可能な断片)ドメインを含むFcオープンコンフォーマー単量体をコードし、癌、特に結腸癌又は膵臓癌においての治療又は療法において使用される。
【0081】
本発明の代替の態様によれば、本発明の第4の態様(及び代替の態様)に記載の核酸分子を含む組換え発現ベクターは、癌、特に結腸癌又は膵臓癌の治療又は療法における使用のために提供される。
【0082】
特定の実施形態では、組換え発現ベクターは、哺乳動物細胞、特にヒト細胞において作動可能なプロモーターを含むプラスミドである。プロモーターは、本発明の核酸分子に作動可能に連結される。
【0083】
本発明の第5の態様によれば、本発明の第4の態様(及び代替の様態)に記載の核酸分子を含むウイルスは、癌、特に結腸癌又は膵臓癌の治療又は療法における使用のために、又は免疫調節剤として、特に感染症の治療における使用のために、提供される。核酸分子は、哺乳動物細胞、特にヒト細胞において作動可能なプロモーター配列の制御下にある。特定の実施形態では、ウイルスは、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、ヘルペスウイルス又はレンチウイルスである。
【0084】
本発明の第6の態様によれば、本発明の第4の態様(及び代替の態様)に記載の核酸分子を含むインビトロで遺伝子改変された宿主細胞が提供される。
【0085】
本発明の別の態様は、癌、特に結腸癌又は膵臓癌の治療又は予防のための薬剤の製造において、本発明の第1及び第2の態様(及びそれらの代替)に記載の単離されたMHC-Iaオープンコンフォーマーホモ二量体又は融合MHC-Iaオープンコンフォーマーホモ二量体の使用を提供する。
【0086】
本発明のさらなる別の態様によれば、本発明は、本発明の第1及び第2の態様(及びそれらの代替の態様)に記載のMHC-Iaオープンコンフォーマーを、それを必要とする患者に投与することを含む、癌、特に結腸癌又は膵臓癌の治療方法を提供する。
【0087】
本発明の第7の態様によれば、併用薬剤が提供され、併用薬剤は:
- 本発明の上記態様又は実施形態のいずれか一つに記載の単離されたMHC-Iaオープンコンフォーマー、又は融合MHC-Iaオープンコンフォーマー、及び、
- 免疫チェックポイント調節剤であって、
○ 免疫チェックポイント阻害剤(CPI)であって:
・ B7-1(CD80)及び/又はB7-2(CD86)との細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4;CD152としても知られている)相互作用の阻害剤、特に例えば抗体のようなCTLA-4又はcd80又はcd86に対するポリペプチドリガンド、
・ プログラム細胞死タンパク質1(PD-1;CD279としても知られている)とそのリガンドPD-L1(CD274としても知られる;UniProt ID:Q9NZQ7)及び/又はPD-L2(CD273としても知られる;UniProt ID:Q9BQ51)との相互作用の阻害剤。特に、例えば抗体のような、PD-1又はPD-L1又はPD-L2に対するポリペプチドリガンド、及び
・ 特に抗体のような、T細胞免疫グロブリン及びムチンドメイン含有3(TIM-3)の阻害性ポリペプチドリガンド、
から選択される前記免疫チェックポイント阻害剤(CPI)、及び
○ チェックポイントアゴニスト剤、特に、腫瘍壊死因子受容体4-1BB(CD137又はTNFRSF9としても知られている)に結合して活性化するように選択されたチェックポイントアゴニスト抗体、
から選択される前記免疫チェックポイント調節剤、
とを含む。
【0088】
本発明の第7の態様の代替によれば、併用薬剤内に含まれる単離されたMHC-Iaオープンコンフォーマー又は融合MHC-Iaオープンコンフォーマーは、HLA-Aオープンコンフォーマー、HLA-Bオープンコンフォーマー(但しHLA-Bオープンコンフォーマーは、HLA-B27又はHLA-B57オープンコンフォーマーでないことを条件とする)又はHLA-Cオープンコンフォーマーから選択される。
【0089】
特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、CTLA4とCD80又はCD86との相互作用の阻害剤である。
【0090】
特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤はイピリムマブ(ヤーボイ(Yervoy);CAS番号477202-00-9)である。
【0091】
特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、プログラム細胞死タンパク質1(PD-1)とその受容体PD-L1との相互作用の阻害剤である。ある特定の実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤は、臨床的に利用可能な抗体薬であるニボルマブ(ブリストル・マイヤーズ スクイブ(Bristol-Myers Squibb);CAS番号946414-94-4)、ペンブロリズマブ(メルク社(Merck Inc.);CAS番号1374853-91-4)、ピジリズマブ(CAS番号1036730-42-3)、アテゾリズマブ(ロシュ社(Roche AG);CAS番号1380723-44-3)、及びアベルマブ(メルク社(Merck KGaA);CAS番号1537032-82-8)から選択される。
【0092】
特定の実施形態では、免疫チェックポイントアゴニスト剤は、現在臨床試験中の4-1BBに対する完全ヒトIgG2モノクローナル抗体であるウトミルマブ(PF-05082566)である。
【0093】
特定の実施形態において、チェックポイント調節剤は、抗体、抗体断片、及び抗体様分子から選択されるポリペプチドであり、そしてこのポリペプチドは、チェックポイントメディエータに対して選択的に反応性である。特定の実施形態において、チェックポイントメディエータは、CTLA4、PD-1、CD80、CD86、PD-L1、及びPD-L2、TIM-3、4-1BB及び4-1BBLから選択される。
【0094】
さらなる別の態様において、本発明は、組換えHLA重鎖ポリペプチドを産生するための方法に関する。この方法を以下の項目に概要する:
項目A:組換えバイオテクノロジーの方法により、ヒトHLA重鎖ポリペプチドを産生するための方法であって、前記方法は以下の工程を含む:
a.発現段階:
i.細胞、特に真核細胞、さらに特に哺乳類細胞において作動可能なプロモーター配列の制御下でHLA重鎖の少なくともα1鎖、α2鎖及びα3鎖をコードするHLAコード核酸配列、及び
ii.前記細胞(項目1のaと同じ細胞)において作動可能なプロモーター配列の制御下で、ヒトHLAβ2ミクログロブリン(UniProt P61769)をコードするβ2-ミクログロブリンコード核酸配列を、哺乳動物細胞(「産生細胞株」)において同時発現させる;
b.精製工程:得られたHLA-重鎖/β2-ミクログロブリン複合体を哺乳動物細胞(産生細胞株)から精製し;
c.解離工程:精製されたHLA-重鎖/β2-ミクログロブリン複合体を適切な条件下で解離させ、HLA重鎖ポリペプチドをβ2-ミクログロブリンポリペプチドから分離し;
d.リフォールディング段階:分離されたHLA重鎖ポリペプチドを、リフォールディング(生理的に活性なHLAオープンコンフォーマー分子に見られるそれらの天然の三次タンパク質構造へ)することを誘導する条件下でインキュベートする。
項目AA:ヒトHLA重鎖ポリペプチドがB27重鎖でもB57重鎖でもないということを条件とする項目A。
項目B:項目A又は項目AAに記載のヒトHLA重鎖ポリペプチドの製造方法であって、HLAコード核酸配列が、コードされたポリペプチドのN末端からC末端へ、α1鎖、α2鎖、α3鎖と安定化配列とを含む。
項目C:項目Bに記載のヒトHLA重鎖ポリペプチドの製造方法であって、安定化配列が、ウシ血清アルブミン及び免疫グロブリン定常断片(Fc)、特に免疫グロブリンG定常断片、さらに特にIgG4Fcから選択される。
項目D:上記項目のいずれかに記載のヒトHLA重鎖ポリペプチドの製造方法であって、HLAコード核酸配列及びβ2ミクログロブリンコード核酸配列が、同一の核酸ベクター分子(特に、DNA発現プラスミド)上に存在する。
項目E:上記項目A~Cのいずれかに記載のヒトHLA重鎖ポリペプチドの製造方法であって、HLAコード核酸配列及びβ2ミクログロブリンコード核酸配列が異なる核酸ベクター分子(特に、異なるDNA発現プラスミド)上に存在する。
項目F:項目Eの方法であって、HLAコード核酸配列を含む核酸ベクターが、β2-ミクログロブリンコード核酸配列、特に約3重過剰に含む核酸ベクターに対して、約1~5重過剰、特に1.5~5重過剰に存在する。
項目G:前記項目のいずれかに記載の方法であって、HLAコード核酸配列が安定化配列としての免疫グロブリンFc断片を含み、精製工程は、プロテインAへ連結された表面に組換えHLA重鎖ポリペプチドを吸着させることによって行われる。
項目H:上記項目のいずれかに記載の方法であって、解離工程は、酸性条件下、特に約pH 2での処理により、かつ還元条件下での透析により行われる。
項目I:前記項目のいずれかに記載の方法であって、リフォールディング工程が、中性条件下での処理により行われる。
【0095】
本明細書で特定されるMHC-Iaオープンコンフォーマーをより具体的に指摘すると、その方法は以下の項目に要約することができる:
項目A’:組換えバイオテクノロジーの方法により、ヒトHLA重鎖ポリペプチドを製造する方法であって、前記方法は以下の工程を含む:
a.発現段階:
i.細胞、特に真核細胞、さらに特に哺乳動物細胞において作動可能なプロモーター配列の制御下でHLA重鎖の少なくともアルファ1鎖、アルファ2鎖及びアルファ3鎖をコードするHLA重鎖コード核酸配列、及び
ii.前記細胞(項目1のaと同じ細胞)において作動可能なプロモーター配列の制御下で、ヒトHLAβ2ミクログロブリン(UniProt P61769)をコードするβ2-ミクログロブリンコード核酸配列を、哺乳動物細胞(「産生細胞株」)において同時発現させる;
b.精製工程:得られたHLA重鎖/β2-ミクログロブリン複合体を哺乳動物細胞(産生細胞株)から精製し;
c.解離工程:精製されたHLA重鎖/β2-ミクログロブリン複合体を適切な条件下で解離させ、HLA重鎖ポリペプチドをβ2-ミクログロブリンポリペプチドから分離し;
d.リフォールディング段階:分離されたHLA重鎖ポリペプチドは、リフォールディング(生理学的に活性なHLAオープンコンフォーマー分子に見られるそれらの天然の三次タンパク質構造へ)することを誘導する条件下でインキュベートする。
項目AA’:ヒトHLA重鎖ポリペプチドがB27重鎖でもB57重鎖でもないということを条件とする項目A’。
項目B’:項目A’又は項目AA’に記載のヒトHLA重鎖ポリペプチドの製造方法であって、HLAコード核酸配列が、コードされたポリペプチドのN末端からC末端へ、アルファ1鎖、アルファ2鎖、アルファ3鎖と安定化配列とを含む。
項目C’:項目B’に記載のヒトHLA重鎖ポリペプチドの製造方法であって、安定化配列が、ウシ血清アルブミン及び免疫グロブリン定常断片(Fc)、特に免疫グロブリンG定常断片、さらに特にIgG4Fcから選択される。
項目D’:上記項目のいずれかに記載のヒトHLA重鎖ポリペプチドの製造方法であって、HLA-B57コード核酸配列及びβ2ミクログロブリンコード核酸配列が同一の核酸ベクター分子(特に、DNA発現プラスミド)上に存在する。
項目E’:上記項目A’~C’のいずれかに記載のヒトHLA重鎖ポリペプチドの製造方法であって、HLA-B57コード核酸配列及びβ2-ミクログロブリンコード核酸配列が異なる核酸ベクター分子(特に、異なるDNA発現プラスミド)上に存在する。
項目F’:項目E’の方法であって、HLA-B57コード核酸配列を含む核酸ベクターが、β2-ミクログロブリンコード核酸配列、特に約3重過剰に含む核酸ベクターに対して、約1~5重過剰、特に1.5~5倍過剰に存在する。
項目G’:前記項目のいずれかに記載の方法であって、HLAコード核酸配列が安定化配列として免疫グロブリンFc断片を含み、精製工程は、プロテインAへ連結された表面に組換えHLA重鎖ポリペプチドを吸着させることによって行われる。
項目H’:前記項目のいずれかに記載の方法であって、解離工程は、酸性条件下、特に約pH 2での処理により、かつ還元条件下での透析により行われる。
項目I’:前記項目のいずれかに記載の方法であって、リフォールディング工程が、中性条件下での処理により行われる。
【0096】
単一の分離可能な特徴のそのような代替、例えば、対立遺伝子又はコード配列などは、本明細書において「実施形態」として示される箇所すべてにおいて、そのような代替は、本明細書に開示される発明の別個の実施形態を形成するために自由に組み合わせられ得る。
【0097】
本発明は、以下の実施例及び図によりさらに説明され、これにより、さらなる実施形態及び利点を引き出すことができる。これらの実施例は、本発明を説明することを意図しているが、その範囲を限定するものではない。
【実施例0098】
驚くべきことに、本発明者らは、MHC-Iaオープンコンフォーマーが、それらのコントロールMHC-Iaヘテロ三量体よりも独特の結合又はより強い親和性で、NK細胞、NKT細胞、T細胞、マクロファージ及びMDSC細胞に存在する種々の免疫調節細胞表面受容体と相互作用することを見出した。HLAクラスI-aオープンコンフォーマーは、癌及び感染症の場合のように、白血球が防御免疫の発達を害する疾患を標的とするための治療薬として使用することができる。
【0099】
さらに、本発明者らは、チェックポイント調節剤を用いた単独療法又は併用療法のアプローチとしてのHLA-Fcの注入による新規のインビボ作用様式を発見した。HLA-Fc療法の単独又は併用療法では、マクロファージM1/M2比の浸潤の増加、NK細胞、NKT細胞、CD3+T細胞及びCD8+T細胞の増加、及びMDSCの減少によって決定されるとおり、多様な白血球セットの腫瘍への浸潤を調節することができる。
【0100】
さらに本発明者らは、全身的血液分析によりHLA-Fc療法が、NKT細胞及びある場合にはTh1細胞の増殖を増加させることを観察し、前臨床及び臨床設定における治療効果のために使用できるバイオマーカーの存在を示している。興味深いことに、本発明者らはまた、4-1BBによる単独療法が動物の血液中のCD3+、CD4+、CD8+T細胞及びTregの増殖を全身的に増加させることを観察し、4-1BBによる免疫系の過剰活性化の潜在的副作用を示している。HLA-Fc+4-1BBの多様な併用は、血中CD3+、CD4+、Treg、及びCD8+T細胞の存在を有意に減少させ、アゴニスト抗体による治療を受けた患者の血液上の望ましくないリンパ球の増殖の場合のポジティブな併用アプローチを示す。
【0101】
全体として、MHC-Iaオープンコンフォーマーの作用様式は、特にFc免疫グロブリン断片を含む融合タンパク質として存在する場合、単独、又はアンタゴニスト/アゴニスト抗体との併用のアプローチにおいて免疫調節剤として疑いなく関連性があり、かつ癌の治療におけるその翻訳のために有用であり得る。
【0102】
HLAオープンコンフォーマーは、癌及び感染症の場合のように、免疫調節が治療的アプローチである疾患を標的とするための治療薬として使用することができる。
【0103】
インビトロ試験
MHC-Iaオープンコンフォーマーは、それらのHLA-β2m-Fcコントロール対応物とは独特の結合又は異なる親和性で、多様な型の白血球に発現している免疫調節受容体に結合する。
【0104】
本発明者らは、MHC-Iaオープンコンフォーマーが酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)によって特定の免疫調節受容体と相互作用するかどうかを決定した。結果は、MHC-IaオープンコンフォーマーがKIR3DL2、及びPTPRJ(HLA-C-β2m-Fcを除く)に対して独自に相互作用し、かつKIR3DL1、KIR3DL3、LILRB1、LILRB2、及びPirb免疫調節受容体に対して、それらのHLA-β2m-Fcコントロール対応物とは異なる親和性を示すことを示した(図5A~G)。このデータは、それらがオープンコンフォーマーとして存在する場合、MHC古典的対立遺伝子(HLA-A、HLA-B及びHLA-C)(MHC-Ia)が免疫調節受容体に対して類似の結合パターンを有することを初めて示す。
【0105】
MHC-IaオープンコンフォーマーはマウスCD4T細胞のiTregへの変換を阻止する
iTreg変換についてのナイーブCD4T細胞におけるMHC-Ia分子の影響を、iTreg変換に最適な培養条件でナイーブCD4T細胞とインキュベートした、10μg/mLのHLA-Fc(A25-Fc、A30-Fc、B27-Fc、B53-Fc、B57-Fc、B58-Fc、C08-Fc及びC12-Fc)、HLA-β2m-Fcコントロール(A25-β2m-Fc、A30-β2m-Fc、B27-β2m-Fc、B53-β2m-Fc、B57-β2m-Fc、B58-β2m-Fc、C08-β2m-Fc及びC12-β2m-Fc)、アイソタイプ、及びPBSで分析した。MHC-Iaオープンコンフォーマーは、FoxP3の誘導(図6)、つまりナイーブCD4T細胞のiTregへの変換を常に下方調節することを実証した。
【0106】
MHC-Iaオープンコンフォーマーは白血病T細胞の増殖を阻害する。
本発明者らは、異なる腫瘍細胞株における増殖の遮断を伴うMHC-Iaオープンコンフォーマー(A25-Fc、A30-Fc、B27-Fc、B53-Fc、B57-Fc、B58-Fc、C08-Fc及びC12-Fc)の効果を測定した。結果、MHC-Iaオープンコンフォーマーは、コントロール対応物のHLA-β2m-Fc(図7)又はアイソタイプIgG4(データは提供しない)と比較して、リンパ腫T細胞株の増殖を常に調節することが示され、標的療法としてのリンパ腫の治療の潜在的適用を示している。
【0107】
インビボ試験
癌治療のための免疫調節治療分子としてのMHC-Iaオープンコンフォーマーの概念のインビボ実証は、有効な前臨床同系マウスC38及びMC38-OVA結腸癌モデル(図8及び9)を用いて、並びに膵臓(Pan02)癌マウスモデルにおいて実証された。(図10、13、16、19、22、25、28及び31)。
【0108】
CHO細胞におけるヒトFc融合タンパク質としてのMHC-Iaオープンコンフォーマーの産生
治療上の観点からの有効な戦略とは、溶解性、安定性、結合活性、半減期の増加、及び哺乳動物系での技術的観点、費用対効果の高い生産及び精製のために安定な型(Fc融合)においてMHC-Iaオープンコンフォーマー分子を産生することである。HLA-β2m-Fc複合体は、HLA-A25、HLA-A30、HLA-B27、HLA-B53、HLA-B57、HLA-B58、HLA-C08及びHLA-C12のアルファ1、2及び3ドメインを、ヒトIgG4-Fcベクターカセット(図3A)に、HLA-β2m-Fcタンパク質の細胞外産生に必要なヒト-β2mベクターと共に挿入することにより産生される(図3A、B)。チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)細胞におけるトランスフェクションは、HLA-Fcベクター+β2mベクターの両方を1:1の比率で用いて行った。上清を回収し、標準的な抗体精製手順(組換えタンパク質精製ハンドブック(Recombinant Protein Purification Handbook)、原則及び方法、2009.GEヘルスケア(GE Healthcare)、18-1142-75)を用いてHLA-β2m-Fcを精製した。HLA-Fc遊離重鎖からのβ2mの分離は、SEC(図4A)又は透析法(データは示さず)により変性状態を利用し行った。リフォールディング緩衝液において希釈法を用いてHLA-Fcのリフォールディングを評価し、ポリアクリルアミド電気泳動(SDS page)(図4B,C)又はウエスタンブロットにより分析した(データは示さず)。
【0109】
マウス同系結腸癌モデルにおけるCTLA4及びPD-1抗体とHLA-Fcの前臨床併用療法試験
免疫調節治療分子としてHLA-Fc(A30-Fc、B27-Fc、B57-Fc、B58-Fc及びC08-Fc)を用いたインビボ概念実証試験は、C38及びMC38-OVAマウス結腸癌腫モデルにおいて、単独療法として、又はマウスCTLA4又はマウスPD-1抗体との併用療法として実証された。
【0110】
確立された手順に従って、同系マウスの脇腹にC38又はMC38-OVA断片腫瘍を皮下注射した。腫瘍が約60mm(腫瘍の移植後1~2週間)に達すると、マウスを腫瘍体積に従って区分した。A30-Fc、B27-Fc、B57-Fc、B58-Fc及びC08-Fcを3日ごとに6回(Q3D×6)腹腔内注射し、CTLA4を2回(Q3D×2)、PD-1は週2回(biwk×2)の4回注射した(図8A)。
【0111】
選択されたHLA-Fcは、同種C38及びMC38-OVA結腸癌マウスモデル(図8及び9)において、単剤療法として(C08-Fc)(図8D)又はチェックポイント抗体との併用において、例えば、PD-1+A30-Fc(図8B)、B58-Fc(図8C)、B57-Fc(図9B)及びCTLA4+B27-Fc(図9A)などのどちらかとして、抗腫瘍反応を相乗及び増強することができる。
【0112】
マウス同系膵臓癌モデルの大腫瘍におけるPD-1及び4-1BB抗体とのHLA-Fcの前臨床併用療法試験
膵臓(Pan02)癌マウスモデルについては、確立された手順に従ってPan02細胞を同系マウスの右側腹部にそれぞれ1×10で注射した。腫瘍が300mmに達したら(細胞注射後約3週間)、マウスをそれらの腫瘍体積に従って統計的に分布させた。大きな腫瘍は小さな腫瘍よりも処置が困難であるが、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)のさらなる分析には有用であることを言及する。さらに、大きな腫瘍は、免疫調節剤による介入が患者の大きなサイズの腫瘍において行われる臨床的設定により近い。
【0113】
膵臓(Pan02)データは、PD-1抗体とのHLA-Fcの併用が、A25-Fc(図10A~B)、B27-Fc(図16A~B)、C08-Fc(図28A~B)及びC12-Fc(図31A~B)との併用において、大きなPan02腫瘍を有意に減らすことができることを示したのに対し、PD-1単独療法は治療効果を示さなかった。PD-1との他のHLA-Fcの併用は統計的有意性を示さなかったが、%Δ腫瘍阻害がB57-Fcの併用において観察された(図22)。さらに、4-1BB抗体とHLA-Fcの併用療法は、腫瘍サイズを有意に減少させることが実証され、又はいくつかのHLA-Fc併用療法(A30-Fc及びC08-Fcを除く)はアイソタイプと比較した場合、実証された。最も著しい腫瘍縮小(p<0.01)は、B53-Fc(図19A~B)、B57-Fc(図22A~B)、及びB58-Fc(図25A~B)で観察された。4-1BB単独療法は、アイソタイプコントロールと比較した場合、有意差はなかった。C08-Fcによる単独療法(図28A-B)は、アイソタイプと比較して有意な腫瘍の減少を示した(p<0.01)。
【0114】
膵臓(Pan02)マウスの腫瘍免疫構成は、A25-Fc(図11A~C)、A30-Fc(14A~C)、B27-Fc(17A~C)、B53-Fc(20A~C)、B57-Fc(23A~C)、B58-Fc(26A~C)、C08-Fc(29A~C及びC12-Fc(32A~C)において観察されるとおり、多様な各HLA-Fcを用いて、マクロファージM1/M2比の浸潤、増加したNK細胞、NKT細胞、CD3+T細胞、及びCD8+T細胞、及びMDSCの減少で観察されるように、多様な組の腫瘍浸潤白血球に対するHLA-Fc療法の影響を示した。血液由来の白血球の全身分析は、いくつかの場合、A25-Fc(図12A~C)、A30-Fc(15A~C)、B27-Fc(18A~C)、B53-Fc(21A~C)、B57-Fc(24A~C)、B58-Fc(27A~C)、C08-Fc(30A~C)、及びC12-Fc(33A~C)について、NKT細胞及びTh1細胞におけるそれらのコントロール単剤療法対応物と比較した場合、ほんのわずかしか変化を示さなかった。
【0115】
結論
本発明は、β2mを有さない重鎖(HLA-A、HLA-B及びHLA-Cオープンコンフォーマー及びそれらの対応するHLA-Fc融合タンパク質)として産生される場合の古典的なMHC-Ia分子のファミリーが、それらのコントロールHLA-β2m対応物とは異なる免疫調節特性を有することを初めて実証する。非限定的な例として、HLA対立遺伝子の多様なセットを使用して、本発明者らは、オープンコンフォーマーとして存在する場合は常にMHC-Ia分子が腫瘍微小環境及び血中に存在する白血球の調節によって実証されるとおりの独特な特性を有する免疫調節剤であることを実証するデータを提供する。さらに、その使用は調節剤だけでなく、結腸癌及び膵臓癌の前臨床癌マウスモデルにおいて単独療法として又はチェックポイント阻害剤抗体(例えばCTLA4及びPD-1)及びチェックポイントアゴニスト抗体(例えば4-1BB)との併用療法として実証されるような癌治療用の治療薬としての使用にも用いられる。
【0116】
多様な白血球(例えばNK、NKT、CD4+T細胞、マクロファージ及びMDSC)に分布する、多様な免疫調節受容体(KIR3DL1、KIR3DL2、KIL3DL3、LILRB1、LILRB2、PTPRJ、及びPirb)とHLA-Fcとの相互作用は、該分子のマルチタスク性がHLAオープンコンフォーマーを用いて免疫系を調節する新しい方法を切り開くことを実証する。
【0117】
さらに、HLA-Fc分子は、インビトロでナイーブCD4+T細胞のiTregへの変換を遮断することが実証されており、作動様式は、HLA-FcがiTregの分化及び機能に影響を及ぼす免疫調節分子として作用することであることが指摘されている。標的iTregは、感染症や癌などの多様な治療的表示のためのひとつの戦略である。
【0118】
全体として、アンタゴニスト/アゴニスト抗体を用いた併用のアプローチとしてのHLA-Fcの作用様式は、癌の治療において疑いなく関連性があり、癌免疫療法における現在の臨床的必要性と相関する。
【0119】
HLA-Fc分子は、新規クラスの免疫調節薬として出現している。インビトロ及びインビボのデータは、HLA-Fc分子が抗腫瘍免疫の活性化のためのスイッチオンメカニズムとして作用するというメカニズムを示している。理論に拘束されることを望むものではないが、本発明者らは、多様な免疫調節受容体とのHLA-Fcオープンコンフォーマーの相互作用は、NK、T細胞、マクロファージ及びMDSCに存在し、かつTregの機能的調節が相乗的に関与し、免疫応答を悪化させると仮定する。
【0120】
材料及び方法
細胞株
C38及びMC38-OVA結腸癌マウス細胞株を用いてインビボ実験を行った。
【0121】
使用されたインビトロ実験細胞株は:EL4、マウスT細胞リンパ腫;EG.7、マウスT細胞リンパ腫;Jurkat、ヒトT細胞リンパ腫;L428、ヒトホジキンリンパ腫;L540、ヒトホジキンリンパ腫;L1236、ヒトホジキンリンパ腫;Daudi、B細胞リンパ腫;IMR-5、神経芽細胞腫;SK-N-AS、神経芽細胞腫;及びM130428、メラノーマである。
【0122】
抗体
iTreg変換実験のためのリンパ球集団は:CD4(FITC-BD バイオサイエンス(Bioscience))、FoxP3+(efluor 450- eバイオサイエンス(eBioscience))、CD3(PE-Cy7- eバイオサイエンス)、CD45(PerCP- eバイオサイエンス)で染色した。
【0123】
腫瘍浸潤リンパ球の分析は以下の抗体を用いて実施した:CD45(バイオレジェンド(Biolegend)、クローン30-F11);CD3(BDバイオサイエンス(BD Bioscience)、クローン145-2C11);CD4(バイオレジェンド、クローンGK1.5);CD8(BDバイオサイエンス、クローン53-6.7)、CD25(バイオレジェンド、クローンPC61)、FoxP3(イーバイオサイエンス、クローンFJK-16s)、CD335(バイオレジェンド、クローン29A1.4)、F4/80(バイオレジェンド、クローンBM8)、CD11b(バイオレジェンド、クローンM1/70)、Gr-1(BDバイオサイエンス、クローンRB6-8C5)、MHCII IA/IE(BDバイオサイエンス、クローン2G9)、CD206(バイオレジェンド、クローンC068C2)及びL/D染色(イーバイオサイエンス)。
【0124】
血液白血球の分析は以下の抗体を用いて実施した:CD45(バイオレジェンド、クローン30-F11);CD3(BDバイオサイエンス、クローン145-2C11)、CD4(バイオレジェンド、クローンGK1.5)、CD8(BDバイオサイエンス、クローンFJK-16s)、FoxP3(eバイオサイエンス、クローンFJK-16s)、T-Bet(BDバイオサイエンス、クローン4B10)、CD335(バイオレジェンド、クローン29A1.4)、F4/80(バイオレジェンド、クローンBM8)、CD115(バイオレジェンド、クローンM1/70)、CD11b(バイオレジェンド、クローンM1/70)、Ly6G(バイオレジェンド、クローン1A8)、Ly6C(バイオレジェンド、クローンHK1.4)及びL/D染色(eバイオサイエンス)。
【0125】
チェックポイント阻害抗体CTLA4クローン9H10、PD-1クローンRMP1-14、及びアゴニスト抗体4-1BBクローン3H3は、バイオエックスセル社(Bio X Cell Co.)から入手した。
【0126】
MHC-Ia対立遺伝子のβ2m遊離重鎖へ結合するHC10 mAb(IgG2a)は、Hidde Ploegh博士(マサチューセッツ工科大学(MIT)、マサチューセッツ州)からの贈与であった。
【0127】
HLA-Fcの生産、精製及びリフォールディング
HLA-β2m-Fc(A25-β2m-Fc、A30-β2m-Fc、B27-β2m-Fc、B53-β2m-Fc、B57-β2m-Fc、B58-β2m-Fc、C08-β2m-Fc及びC12-β2m-Fc)の組換え生産は、HLAのアルファ1、2及び3ドメインをヒトIgG4-Fcベクター(インビボゲン(InvivoGen))に挿入し、そしてヒトβ2-ミクログロブリン(β2m)を別のベクターに挿入することによって達成した。組換えHLA-β2m-Fcの産生は、HLA-Fc-ベクターとβ2m-ベクターをチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞へ同時トランスフェクションすることによって行った。HLA-β2m-Fcの生産はEvitria AGに外部委託した。
【0128】
HLA-β2m-Fc構築物の精製は、抗体精製のための従来の手順を用いて実施した。HLA-β2m-Fc複合体からβ2mを除去するための変性工程を追加して、HLA-Fcの産生を行った。
【0129】
簡潔には、HLA-β2m-Fcタンパク質の捕捉ステップは、上清をプロテインGカラム(アマシャム ファルマシア(Amersham Pharmacia))に流した後に行った(5mL/分)。中間精製工程は、溶出緩衝液(100mMグリシン、pH 2.0)を用いてプロテインG-カラムから選択されたHLA-β2m-Fcを溶出し、そして8Mの尿素、100mMのトリス-HCl pH 8.0において画分を回収することにより実施した。第一の精製工程は、AKTAシステム(GE ライフサイエンス)を使用してスーパーデックス200プレップグレード又はセファクリルS-100HR(GE ライフサイエンス(GE Lifescience))を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)、又は50KDaの細孔サイズ(ミリポア(Millipore))の膜を使用した透析のどちらかによりHLA-Fc単量体画分をβ2mから分離することであった。両方の手順から回収したHLA-Fc単量体を、100倍体積のリフォールディング緩衝液(50mMトリス-HCl pH 8.5、500mMのL-アルギニン、1mMのEDTA、0.15mMのNaCl、1%のスクロース、0.01%のTween-20)中、それぞれ8時間間隔で3回、HLA-Fc単量体を振動させた後、希釈法によりリフォールディングした。SECによる第二の精製工程では、さらなる不純物を除去し、そしてHLA-Fcタンパク質の新たに回収された画分を希釈緩衝液(PBS、1%シスクロース及び0.01%Tween-20)にバッファー交換することを行った。HLA-Fcタンパク質(A25-Fc、A25-Fc、B27-Fc、B53-Fc、B57-Fc、B58-Fc、C08-F、C12-Fc)の精製溶液を、0.2μm膜(ミリポア)を用いて濾過滅菌した。
【0130】
画分HLA-β2m-Fc複合体及びHLA-Fcを、勾配4~20%のSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動及びHC10(HLA遊離重鎖に特異的)抗体を用いたウエスタンブロットによって分析した。β2mウエスタンブロットを、変性条件(10mM DTT)の有無にかかわらず実施した(データは示さず)。
【0131】
ELISAアッセイ
競合ELISAアッセイは、クリエイティブバイオマート(Creative Biomart)から購入した10μg/mLの選択された白血球受容体(ヒトKIR3DL1、ヒトKIR3DL2、ヒトKIR3DL3、ヒトLILRB1、ヒトLILRB2、ヒトPTPRJ及びマウスPirb)で被覆したマキシソープ(Maxisorp)(ヌンク(Nunc)、スイス)96ウェルプレートを用いて行った。受容体を4℃で終夜インキュベートし、5%粉乳-TBSで2時間ブロックした。HLA-Fc選択された構築物(A25-Fc、A30-Fc、B27-Fc、B53-Fc、B57-Fc、B58-Fc、C08-F及びC12-Fc)及びそれらのコントロール(A25-β2m-Fc、A30-β2m-Fc、B27-β2m-Fc、B53-β2m-Fc、B57-β2m-Fc、B58-β2m-Fc、C08-β2m-Fc及びC12-β2m-Fc)、並びにアイソタイプIgG4を10μg/mL、室温にて2時間で添加した。ヒトFcに対するHRP結合抗体を検出器として使用した。
【0132】
白血球のフローサイトメトリー
フローサイトメトリー分析は、FACS canto II(BD バイオサイエンス)を用いて行い、データはFlowJoバージョン7.6.4を用いて分析した。
【0133】
Tregの生成
マウスCD4T細胞においてFoxp3の発現を誘導するために、C57BL/6脾細胞から脾臓細胞を採取し、そして精製して(マウスナイーブCD4T細胞単離キット イージーセプ(Easy Sep))CD4Tナイーブ細胞を得た。次いで、細胞を、5μg/mLの抗CD3mAb(eバイオサイエンス)、可溶性2μg/mLの抗CD28mAb(バイオレジェンド)、10μg/mLのTGF-β1(R&Dシステム)及び100IU/mLのIL-2(R&Dシステム)で被膜された96ウェルプレートにおいて10細胞/200μL/ウェルで96時間培養した。
【0134】
HLA-Fc存在下でのiTreg変換
iTreg変換に最適な培養条件のマウスナイーブCD4T細胞を、用量濃度(5μg/200μL)のHLA-Fc(A25-Fc、A30-Fc、B27-Fc、B53-Fc、B57-Fc、B58-Fc、C08-Fc及びC12-Fc)、コントロール(A25-β2m-Fc、A30-β2m-Fc、B27-β2m-Fc、B53-β2m-Fc、B57-β2m-Fc、B58-β2m-Fc、C08-β2m-Fc及びC12-β2m-Fc)、アイソタイプIgG4、分化因子を含まない培地及びPBSの存在下で72時間インキュベートした。iTreg変換はフローサイトメトリーにより測定した。
【0135】
増殖アッセイ
細胞を1日間、異なる濃度(25、10、及び5μg/ウェル)の試薬を添加した後、5×10細胞/ウェルの密度で円形96ウェルプレートに播種した。マニュアルの指示(細胞増殖キットII、ロシュ(Roche))に従って、XTT増殖アッセイを実施した。マイクロタイタープレートリーダーを用いて450nmでのウェルの吸光度で結果を得た。
【0136】
インビボ治療
C38又はMC38-OVA腫瘍断片を6週目に同系雌C57BL/6マウスの右脇腹に皮下注射した。Pan02細胞株を6週目に同系マウスC57BL/6の右脇腹に1×10で注射した。それらの個々の腫瘍体積サイズに従い区分し、そしてそれらの間に統計的差異を示さない群に分けた。C38及びMC38-OVAについては、腫瘍が±60mmに達したときに実験的治療を開始した。膵臓Pan02については、実験治療は300mmの大きさの腫瘍において開始した。キャリパーを用いて腫瘍直径を測定し、式D/2×dに従って体積を計算した。ここで、D及びdはそれぞれmm単位の腫瘍の最長及び最短直径である。
【0137】
物質注入の実験計画は、結腸(C38及びMC38)について以下のように確立された:ビヒクル(PBS 200μL)Q3D×6;アイソタイプ(10mg/Kg)Q3D×6;HLA-Fc(10mg/Kg)Q3D×6;抗CTLA4 Q3D×2(1回目の注入100μg及び2回目の注入50μg);PD-1 biwk×2(200μg);HLA-Fc+CTLA-4(それぞれQ3D×6及びQ3D×2);HLA-F+PD-1(それぞれQ3D×6及びbiwk×2)。膵臓(PanO2)については、物質注入の実験計画は以下の通りであった:アイソタイプ(5mg/kg)biwk×2;HLA-Fc(5mg/Kg)biwk×2;PD-1(5mg/Kg)biwk×2;4-1BB(1mg/Kg)biwk×2;HLA-Fc+PD-1 biwk×2;及びHLA-Fc+4-1BB biwk×2。
【0138】
%Δ阻害は、ΔT/ΔC腫瘍成長率から計算され、これはコントロールと比較し、治療開始時(例えば300mm)から治療終了時体積(例えば1000mm)までの腫瘍の成長を%単位で以下の式を用いて表す:平均%Δ阻害=(平均(C)-平均(C0))-(平均(T)-平均(T0))/(平均(C)-平均(C0))*100%。T=治療群の値、T0-治療群の初期値、C-コントロール群の値、C0-コントロール群の初期値。
【0139】
腫瘍浸潤リンパ球の分析には、以下のゲーティング戦略が使用された:全白血球に対してCD45+;全T細胞に対してCD45+ CD3+;CD4Tヘルパー細胞に対してCD45+ CD3+ CD4+;CD8細胞傷害性T細胞に対してCD45+ CD3+ CD8+;Treg細胞に対してCD45+ CD3+ CD4+ FoxP3+ CD25+;MDSCに対してCD45+ CD3- CD11+ Gr-1+;マクロファージに対してCD45+ CD3- CD11+ F4/80+;M1型マクロファージに対してCD45+ CD3- CD11+ F4/80+ MHCII+;M2型マクロファージに対してCD45+ CD3- CD11+ F4/80+ CD206+;NK細胞に対してCD45+ Gr-1- F4/80- CD335+;及びNKT細胞に対してCD45+ Gr-1- F4/80- CD335+ CD3+。
【0140】
血液白血球の分析には、以下のゲーティング戦略が使用された:全白血球に対してCD45+;T細胞に対してCD45+ CD3+;Tヘルパー細胞に対してCD45+ CD3+ CD4+;CD8細胞傷害性T細胞に対してCD45+ CD3+ CD8+;Treg細胞に対してCD45+ CD3+ CD4+ FoxP3+;Th1細胞に対してCD45+ CD3+ CD4+ T-Bet+;G-MDSC及びM-MDSCに対してCD45+ CD3- CD11+ Ly6C+ Ly6G+;NK細胞に対してCD45+ Ly6C- Ly6G- CD335+;及びNKT細胞に対してCD45+ Ly6C- Ly6G- CD335+ CD3+。
【0141】
フローサイトメトリー用の腫瘍及び血液試料の調製は、eバイオサイエンス(https://www.ebioscience.com/media/pdf/best-protocols/cell-preparation-for-flow-cytometry.pdf、2017年2月21日にアクセス)によって記載されている手順を使用して行った。
【0142】
【表1】
【0143】
【表2】
図1
図2
図3AB
図4ABC
図5ABCD
図5EFG
図6A
図6B
図7AB
図7CD
図7E
図8ABCD
図9AB
図10AB
図11ABC
図12ABC
図13AB
図14ABC
図15ABC
図16AB
図17ABC
図18ABC
図19AB
図20ABC
図21ABC
図22AB
図23ABC
図24ABC
図25AB
図26ABC
図27ABC
図28AB
図29ABC
図30ABC
図31AB
図32ABC
図33ABC
【配列表】
2022061982000001.app