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特開2022-61997溶剤/界面活性剤処理された血漿(S/D血漿)を含む製剤及びその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022061997
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】溶剤/界面活性剤処理された血漿(S/D血漿)を含む製剤及びその使用
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/16 20150101AFI20220412BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220412BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20220412BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20220412BHJP
   A61K 38/22 20060101ALI20220412BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20220412BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
A61K35/16
A61K47/36
A61K9/08
A61K45/00
A61K38/22
A61P19/00
A61P21/00
【審査請求】有
【請求項の数】21
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022000211
(22)【出願日】2022-01-04
(62)【分割の表示】P 2019202677の分割
【原出願日】2013-09-26
(31)【優先権主張番号】12186027.4
(32)【優先日】2012-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】510172826
【氏名又は名称】ボーン セラピューティクス エス.アー.
(71)【出願人】
【識別番号】515051021
【氏名又は名称】エンリコ バスチアネッリ エス.ピー.アール.エル
【氏名又は名称原語表記】ENRICO BASTIANELLI S.P.R.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】バスチアネッリ, エンリコ
(72)【発明者】
【氏名】アルバラーニ, ヴァレンティナ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】骨格筋疾患、特に骨又は関節疾患のような疾患を処置するための医薬製剤を提供する。
【解決手段】溶剤/界面活性剤(S/D)処理された血漿とグリコサミノグリカン(例えばヒアルロン酸)とを含む医薬製剤であって、二価カルシウムイオン(Ca2+)をさらに含み、約1.0mg/ml~約20mg/mlの範囲の濃度でヒアルロン酸又はその塩を含む、医薬製剤である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤/界面活性剤処理された血漿(S/D血漿)とグリコサミノグリカンとを含む医薬製剤。
【請求項2】
S/D血漿はヒトS/D血漿である、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
グリコサミノグリカンはヒアルロン酸又はその誘導体である、請求項1又は2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
1つ又は複数の医薬活性成分をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項5】
血清、好ましくはヒト血清をさらに含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項6】
全血又は全血の分画構成成分をさらに含み、好ましくは全血はヒト全血である、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項7】
1つ又は複数の医薬活性成分は、各々独立して、細胞組成物、医薬活性化合物、タンパク質、ペプチド、及び小有機分子からなる群から選択される、請求項4~6のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項8】
細胞組成物は、間葉系幹細胞(MSC)、骨前駆細胞、骨芽細胞性細胞、骨細胞、軟骨芽細胞性細胞、及び/又は軟骨細胞を含む、請求項7に記載の医薬製剤。
【請求項9】
医薬活性化合物はアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストであり、好ましくは、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストはクロニジン及びその誘導体からなる群から選択される、請求項7に記載の医薬製剤。
【請求項10】
医薬活性タンパク質又はペプチドは、増殖因子、好ましくは、線維芽細胞増殖因子(FGF)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFB)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インターロイキン-8(IL-8)、骨形成タンパク質(BMP)、副甲状腺ホルモン(PTH)、副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrp)、及び幹細胞因子(SCF)からなる群から選択される増殖因子、より好ましくは、FGF-2、TGFB-1、PDGF、IL-8、BMP-2、BMP-4、BMP-6、BMP-7、PTH、PTHrp、及びSCFからなる群から選択される増殖因子である、請求項7に記載の医薬製剤。
【請求項11】
非経口投与用、好ましくは、骨内、骨周囲、関節内若しくは関節周囲投与用又は腱内、腱周囲、靭帯内若しくは靭帯周囲投与用に構成されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項12】
骨格筋疾患の処置における使用のための、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬製剤であって、好ましくは骨格筋疾患は骨疾患又は関節疾患である、医薬製剤。
【請求項13】
S/D血漿及びグリコサミノグリカンを含む製剤の、医薬添加剤としての使用。
【請求項14】
S/D血漿はヒトS/D血漿である、請求項13に記載の使用。
【請求項15】
医薬製剤は、非経口投与用、好ましくは、骨内、骨周囲、関節内若しくは関節周囲投与用又は腱内、腱周囲、靭帯内若しくは靭帯周囲投与用に構成されている、請求項13又は14に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【分野】
【0001】
本発明は、骨格筋疾患、特に骨又は関節疾患のような疾患を処置するための医薬製剤、及びその使用に関する。
【背景】
【0002】
骨格筋疾患又は障害は、骨、筋肉、関節、軟骨、腱、靭帯並びに組織及び臓器を支持して結び付ける他の結合組織を侵し得る。これらの疾患は、時間をかけて発症し得るか、又は例えば骨格筋系の過剰使用によって、若しくは外傷により起こり得る。骨格筋疾患は、骨格筋系の他の内部体系に対する密接な関係に起因して診断及び/又は処置が困難であり得る。
【0003】
骨格筋疾患、特に骨疾患及び関節疾患の処置に関する考え得る前途有望なアプローチは、骨形成性又は軟骨形成性の分化が可能な間葉系幹細胞(MSC)、又は骨芽細胞若しくは軟骨芽細胞系列への分化が保証されている細胞の移植である。
【0004】
MSCは、骨障害を処置するのに従来使用されている(Gangji他 Expert Opin Biol Ther、2005、5巻、437~42頁)。しかしながら、そのような比較的未分化の幹細胞は移植できるものの、それらは、骨芽細胞又は軟骨芽細胞系列への分化が保証されておらず、それ故、そのように移植された幹細胞のうちのかなりの部分が最終的に所望の組織の形成に寄与し得ない。さらに、任意の考え得る供給源組織から獲得可能なそのような幹細胞の量は不十分であることが多い。
【0005】
医薬活性成分の局所送達、特にそれらの局在化された骨内若しくは周囲、又は関節内若しくは周囲投与は、骨格筋疾患において非常に興味深いものであり、成分の局所濃度及び有効性を増大させて、また潜在的な全身副作用を回避するのを助長する。例えば、高分子量のヒアルロン酸(HA)の関節内注入は、変形性関節症を患う関節の機械的完全性を回復するのに有効であった。しかしながら、高分子量のHAは、ゲル化により完全に満足できるスキャフォールドを供給しないという不利益を有する。別の例では、骨壊死帯域への骨髄移植は、大腿骨頭の無菌性非外傷性骨壊死に罹患している患者において有益な効果を示した(Gangji他 2005、上記)
【0006】
したがって、局在化された投与用に、例えば、骨内、骨周囲、関節内若しくは関節の周囲投与用又は腱内、腱周囲、靭帯内若しくは靭帯周囲投与用に構成されているさらなる及び/又は改善された医薬製剤が引き続き必要とされている。特に有用な製剤は、投与時にゲル粘稠性を示し得る又は達成し得る。それにより、製剤中に含まれる医薬活性成分はin situでゲル中に保持され、ゲルから徐々に放出される(すなわち、持続放出又は徐放)。同様に、製剤が治療用細胞を含有する場合、ゲル粘稠性は細胞支持環境を提供して、細胞と、細胞の生存、増殖(伝播)及び/又は分化を刺激する増殖因子のような任意の有益な物質と、の近接を保証し得る。
【0007】
新鮮凍結血漿(FFP)は、主に赤血球濃縮調製物の副生成物として世界中で血液バンクにおいて調製される。FFPの安全性を改善するという観点で、血漿の溶剤/界面活性剤(solvent/detergent)(S/D)処理が1980年代に開発されて、1992年に工業製品をもたらした。S/D処理及びS/D処理された血漿は、とりわけHorowitz他 1992、米国特許第4764369号、欧州特許第0322786号及び米国特許出願公開第2002/018777号に記載されている。血漿のS/D処理は、脂質エンベロープ型ウイルス、細胞及びほとんどの原生動物の膜を崩壊する一方で、不安定な凝固因子を無傷のままにする。処理は、細菌に対して可変的な効力を有し、非脂質エンベロープ型ウイルスに対しては実質的に無効である。FFPと比較して、S/D処理された血漿は、輸血関連急性肺障害(TRALI)に関するきわめて高い安全性、アレルギー反応を誘発する有意により低い見込み、及び血漿レベル凝固因子の低いバッチ間変動を示す。特開2011229508号公報(要約書)は、血漿を含むゲルに包埋された骨格筋芽細胞を含む細胞組成物に関する。
【0008】
国際公開第2009/016451号は、関節疾患、関節痛又は皮膚を処置するための単独での又はヒアルロン酸と組み合わせた、同種又は自家性血液由来物質の使用に関する。Park他(2009)は、軟骨修復における適用でのウサギ軟骨細胞用の細胞送達手段(deliver vehicle)としてのフィブリン及びヒアルロン酸の組み合わせに関する。
【概要】
【0009】
本発明者らは、当技術分野における上述の問題の1つ又は複数に対処する医薬製剤を見出した。
【0010】
本発明の一態様は、溶剤/界面活性剤処理された血漿(S/D血漿)とグリコサミノグリカンとを含む医薬製剤に関する。
【0011】
実施例セクションで明らかにされるように、本発明の原理を適用する製剤は、例えば変形性膝関節症又は骨疾患を患う患者由来のヒト対象のような対象の体液、特に血清又は滑液とin vitroで接触してゲル化するための有利な特性を有する。本発明の原理を適用するそのような製剤は、全血のような体液とin vitroで接触してゲル化すること、そのため、全血のような体液と接触すると、in situでゲル化する特性(in situでの凝固)を有することが示されている。例えば、本発明の製剤が、全血に由来する自家性増殖因子の自然環境を提供し得ることは有利である。製剤は、in situで(すなわち、対象の身体の所定の場所又は部位(例えば、骨、関節、腱又は靭帯)で投与される場合に)特に良好なゲル形成挙動を示し、有利に粘性のある製剤を生じる。例えば、いったん関節欠損に注入されると、本発明の製剤は、in situでのゲル化を可能にし、関節炎にかかった膝関節のような関節炎にかかった関節の生理学的及びレオロジー的状態を回復させることを可能にする。さらに、この粘性のある性質は、すなわちS/D血漿(これは、内因性増殖因子のような有益な生物学的物質を含み得る。)及び/又はグリコサミノグリカンの製剤の構成成分の局在化された送達及び/又は持続放出を保証することができる。粘性のある性質はまた、さらなる医薬活性成分(例えば、細胞組成物、医薬活性化合物、タンパク質、ペプチド、及び/又は小有機分子(それらに限定されない。))を製剤中に取り込むことを可能にし、それによりそのような成分の局在化された送達及び/又は持続性放出を達成する。本発明者らは、粘性のある性質が、製剤の構成成分及び/又は製剤中に含まれるさらなる医薬活性成分を物理的環境から保護して、それによりin vivoで構成成分及び成分の全体的な安定性(例えば、酵素分解に対する安定性)を改善し得るものと想定している。本発明者らはまた、粘性のある特性が、関節に対する長期にわたる潤滑作用により関節機能を改善し、それにより関節の機械的完全性をより良好に回復することを可能にし得るものと想定している。本発明者らはさらに、製剤が骨誘導作用により骨治癒を改善することを可能にし得るものと想定している。
【0012】
医薬製剤は通常、1つ又は複数の薬学的に許容される添加剤(例えば、溶媒、担体、希釈剤等)、特に製剤の所定の投与様式、例えば、特に製剤の非経口投与、好ましくは骨内、骨周囲、関節内若しくは関節周囲投与又は製剤の腱内、腱周囲、靭帯内若しくは靭帯周囲投与と適合性の添加剤を含み得る。
【0013】
医薬製剤は、S/D血漿及びグリコサミノグリカンを組み合わせる(例えば、混合する又はキットオブパーツ中に包含する)ことを含む方法によって製造され得、そのような方法は本明細書に包含される。したがって、グリコサミノグリカンは、外因性であるか若しくは外因的にS/D血漿に添加されたものとして、又はS/D血漿に加えて供給されたものとして適切に表示され得る。
【0014】
医薬製剤は、S/D血漿及びグリコサミノグリカン並びに(含まれる場合は)さらなる医薬活性成分の別々の、同時の、又は任意の順序の逐次の投与に関して構成され得る。したがって、医薬製剤は、その個々の構成物のすべての混合物であってもよく、又は医薬製剤は、個々の構成物を別々に含むか、若しくは個々の構成物の2つ以上であるが、すべてではない混合物を含むキットオブパーツのような組み合わせであってもよい。したがって、製剤は、S/D血漿及びグリコサミノグリカンを含むキットオブパーツとして構成され得る。
【0015】
医薬製剤は医療用デバイス中に供給され得る。有利なことに、そのような医療用デバイスは、投与を必要とする対象への製剤の非経口投与、例えば、骨内、骨周囲、関節内若しくは関節周囲投与又は腱内、腱周囲、靭帯内若しくは靭帯周囲投与を可能にする。
【0016】
好ましくは、ヒトS/D血漿を含む医薬製剤がヒト対象への投与に特に適するように、S/D血漿はヒトS/D血漿であり得る。
【0017】
ある特定の実施形態では、グリコサミノグリカンは、ヒアルロン酸及びその誘導体、プロテオグリカン及びその誘導体、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、キトサン及びその誘導体、キチン及びその誘導体からなる群から選択され得る。製剤は、1つ又は複数のグリコサミノグリカンを含み得る。したがって、製剤は、ヒアルロン酸及びその誘導体、プロテオグリカン及びその誘導体、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、キトサン及びその誘導体、キチン及びその誘導体からなる群から選択される1つのグリコサミノグリカン又はグリコサミノグリカンの混合物を含み得る。
【0018】
医薬製剤は、約0.10mg/ml~約200mg/ml、好ましくは約1.0mg/ml~約100mg/ml、より好ましくは約2.0mg/ml~約50mg/mlの範囲の濃度、例えば約10mg/ml、約20mg/ml、約30mg/ml又は約40mg/mlでグリコサミノグリカンを含み得る(但し、それらに限定されない)。
【0019】
通常、骨内若しくは周囲注入又は関節内若しくは周囲注入は約2ml~約4mlの容量を有し得る。
【0020】
グリコサミノグリカンがそれ自体の治療効果を示す場合、グリコサミノグリカンは、この段落で列挙される例示的な量のような治療有効量で含まれ得る。
【0021】
特に好ましい実施形態において、グリコサミノグリカンはヒアルロン酸又はその誘導体であり得る。
【0022】
適した誘導体は、好ましくはヒアルロン酸ナトリウムのようなヒアルロン酸の塩であり得る(但し、それに限定されない)。ヒアルロン酸又はその誘導体は低(900kDa未満)又は高(900kDaを上回る)分子量を有し得る。高(900kDaを上回る)分子量を有するヒアルロン酸又はその誘導体が特に好ましい場合がある。例えば、ヒアルロン酸又はその誘導体は、約1×10Da~約6×10Da又はそれ以上の範囲、例えば約1×10Da~約4×10Daの範囲、例えば約1.3×10Da~約3×10Daの範囲の分子量を有し得る。
【0023】
医薬製剤は、約0.10mg/ml~約200mg/ml、好ましくは約1.0mg/ml~約100mg/ml、より好ましくは約2.0mg/ml~約50mg/mlの範囲の濃度でヒアルロン酸又はその誘導体を含み得る(但し、それに限定されない)。
【0024】
ある特定の実施形態では、医薬製剤は、S/D血漿及びグリコサミノグリカンに加えて1つ又は複数の他の成分を含み得る。他の実施形態では、S/D血漿及びグリコサミノグリカンのみが製剤の構成成分であり得、したがって、そのような実施形態では、医薬製剤はS/D血漿及びグリコサミノグリカンからなり得るか又は本質的にそれらからなり得る。さらなる実施形態では、医薬製剤は、S/D血漿及びグリコサミノグリカンに加えて1つ又は複数の他の成分を含み得るが、そのようなさらなる成分は医薬活性成分ではない。
【0025】
ある特定の実施形態では、有利なことに、医薬製剤は1つ又は複数の医薬活性成分をさらに含み得る。
【0026】
本発明の適用可能性は、任意の医薬活性成分又は医薬活性成分の種類に限定されない。医薬活性成分は、それ自体が薬理学的に活性であってもよく、又は身体中で化学又は酵素プロセスにより薬理学的に活性な種へ変換されてもよく、すなわち、医薬活性成分はプロドラッグであり得る。本医薬製剤は、安定性に乏しい医薬活性成分に特に有用であり得る。安定性に乏しい医薬活性成分の非限定的な例として、増殖因子のようなペプチド及びタンパク質、ペプチド様活性成分、抗体及びワクチン、低分子干渉RNA(siRNA)、DNA、ホルモン等が挙げられる。
【0027】
「医薬活性成分」という用語はまた、表題化合物又は物質の任意の薬理学的に活性な塩、エステル、N-オキシド、又はプロドラッグも包含する。
【0028】
さらに、2つ以上の医薬活性成分の組み合わせ又は用量の組み合わせが薬剤構成成分として含まれ得る。この場合、各活性成分の放出は、同一であってもよく、又は例えば第1の活性成分が即時放出型として、第2の活性成分が制御放出として提示される2つの活性成分の組み合わせの場合のように異なってもよい。同様に、即時放出及び制御放出の組み合わせはまた、迅速な効果及び持続性の効果を提供するために、同じ活性成分に関して獲得されてもよい。
【0029】
ある特定の実施形態において、医薬製剤は血清をさらに含み得る。本製剤への血清の添加により、製剤のゲル化をある程度改善することが可能であり得る。
【0030】
例えば、血清は、製剤を受け入れる対象に関してアロジェニック又は自家性であり得る。好ましくは、ヒト血清をさらに含む医薬製剤がヒト対象への投与に特に適するように、血清はヒト血清であり得る。例えば、(製剤中の血清の容量)/(製剤中の血清の容量+製剤中のS/D血漿の容量)として算出される値が約0.01~約0.40、好ましくは約0.05~約0.15、より好ましくは約0.10であるように、製剤は血清及びS/D血漿を含有し得る。
【0031】
ある特定の実施形態において、医薬製剤は、全血又は全血の分画構成成分をさらに含み得る。全血、又は好ましくは全血の前記分画構成成分の、本製剤への添加により、製剤のゲル化を少なくとも部分的に改善することが可能であり得る。
【0032】
有利なことに、全血又は前記その分画構成成分を含む本製剤は、再生医療で、特に骨、軟骨、腱若しくは靭帯の欠損の修復を刺激するのに、又は損傷を受けた骨、軟骨、腱若しくは靭帯を置換するのに有用な血小板由来増殖因子を含む(Gobbi他、2009;Grimaud他、2002;Cole他、2010)。
【0033】
例えば、全血は、製剤を受け入れる対象に関して、アロジェニック又は自家性であり得る。好ましくは、ヒト全血をさらに含む医薬製剤がヒト対象への投与に特に適するように、全血はヒト全血であり得る。例えば、(製剤中の全血の容量)/(製剤中の全血の容量+製剤中のS/D血漿の容量)として算出される値が約0.01~約0.40、好ましくは約0.05~約0.15、より好ましくは約0.10であるように、製剤は全血及びS/D血漿を含有し得る。
【0034】
好ましい実施形態では、1つ又は複数の医薬活性成分は、各々独立して、細胞組成物、医薬活性化合物、タンパク質、ペプチド、及び小有機分子からなる群から選択される。
【0035】
好ましくは、細胞組成物は、間葉系幹細胞(MSC)、骨前駆細胞、骨芽細胞性細胞、骨細胞、軟骨芽細胞性細胞、及び/又は軟骨細胞を含み得る。医薬製剤は、そのような細胞組成物の送達を可能にする。本医薬製剤のこの粘性のある性質は、送達される細胞の局在化された送達及び送達される細胞に適した支持的環境を保証し得る。
【0036】
特に好ましくは、細胞組成物の細胞は、動物細胞、好ましくは温血動物細胞、より好ましくはヒト細胞及び非ヒト哺乳動物細胞のような哺乳動物細胞、最も好ましくはヒト細胞であり得る。
【0037】
さらなる実施形態では、医薬活性化合物は抗炎症性物質であり得る。好ましい実施形態では、医薬活性化合物はアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストであり得る。好ましくは、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストはクロニジン及びその誘導体からなる群から選択され得る。
【0038】
ある特定の実施形態では、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストは、クロニジン及びその誘導体、例えば、2,6-ジメチルクロニジン、4-アジドクロニジン、4-カルボキシクロニジン-メチル3,5-ジクロロチロシン、4-ヒドロキシキクロニジン、4-ヨードクロニジン、アリニジン、アプラクロニジン、クロロエチルクロニジン、クロニジン4-イソチオシアネート、クロニジン4-メチルイソチオシアネート、クロニジン受容体、クロニジン置換物質、ヒドロキシフェナセチルアミノクロニジン、N,N’-ジメチルクロニジン、p-アミノクロニジン、及びチアメニジン;イミダゾリジン、例えば、イミダゾリン、インプロミジン、デトミジン、メデトミジン、デクスメデトミジン、レバミゾール、ロサルタン、ロフェキシジン、ミコナゾール、ナファゾリン、ニリダゾール、ニトロイミダゾール、オンダンセトロン、オキシメタゾリン、フェントラミン、テトラミゾール、チアマゾール、チザニジン、トラゾリン、トリメタファン;イミダゾール、例えば、4-(3-ブトキシ-4-メトキシベンジル)イミダゾリジン-2-オン、ウロカニン酸、アミノ-イミダゾールカルボキシアミド、アンタゾリン、ビオチン、ビス(4-メチル-1-ホモピペラジニルチオカルボニル)ジスルフィド、カルビマゾール、シメチジン、クロトリマゾール、クレアチニン、ダカルバジン、デクスメデトミジン、エコナゾール、エノキシモン、エチミゾール、エトミデート、ファドロゾール、フルスピリレン、イダゾキサン、ミバゼロール;グアニジン、例えば、アグマチン、ベタニジン、ビグアナイド、シメチジン、クレアチン、ガベキサート、グアネチジン、硫酸グアネチジン、グアンクロフィン、グアンファシン、グアニジン、グアノキサベンズ、インプロミジン、ヨード-3ベンジルグアニジン、メチルグアニジン、ミトグアゾン、ニトロソグアニジン、ピナシジル、ロベニジン、スルファグアニジン、ザナミビル;アルファ-メチイノレフェリン(alpha-methyinorepherine)、アゼペキソール、5-ブロモ-6-(2-イミダゾリジン-2-イルアミノ)キノキサリン、ホルモテロール、フマル酸塩、インドラミン、6-アリル-2-アミノ-5,6,7,8-テトラヒドロ4H-チアゾロ[4,5-d]アゼピンジHCl、ニセルゴリン、リルメニジン、及びキシラジンからなる群から選択され得る。
【0039】
ある特定の実施形態において、医薬製剤は、骨形成性、骨誘導及び/又は骨誘引特性を有する1つ又は複数の物質をさらに含み得る。好ましい実施形態では、そのような物質は、線維芽細胞増殖因子(FGF)(好ましくはFGF-2)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFB)(好ましくはTGFB-1)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インターロイキン-8(IL-8)、骨形成タンパク質(BMP)(例えば、BMP-2、BMP-4、BMP-6、及びBMP-7のいずれか1つ又は複数)、副甲状腺ホルモン(PTH)、副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrp)、及び幹細胞因子(SCF)を含むか又はそれらからなる群から選択され得る。
【0040】
したがって、ある特定の実施形態では、医薬活性タンパク質又はペプチドは、増殖因子、好ましくは、FGF、TGFB、PDGF、IL-8、BMP、PTH、PTHrp、及びSCFからなる群から選択される増殖因子、より好ましくは、FGF-2、TGFB-1、PDGF、IL-8、BMP-2、BMP-4、BMP-6、BMP-7、PTH、PTHrp、及びSCFからなる群から選択される増殖因子であり得る。
【0041】
好ましくは、医薬製剤は、非経口投与(例えば非経口注入)用、より好ましくは、骨内、骨周囲、関節内若しくは関節周囲投与(例えば、骨内、骨周囲、関節内若しくは関節周囲注入)用又は腱内、腱周囲、靭帯内若しくは靭帯周囲投与(例えば、腱内、腱周囲、靭帯内若しくは靭帯周囲注入)用に構成され得る。
【0042】
関連態様は、骨格筋疾患の処置(本明細書全体にわたって治療的及び/又は予防的措置を含む。)における使用のための上述の医薬製剤に関する。好ましくは、前記骨格筋疾患は骨疾患又は関節疾患であり得る。代替的又は追加的に、前記骨格筋疾患は腱及び/又は靭帯を侵し得る。
【0043】
同様に、骨格筋疾患、好ましくは骨疾患又は関節疾患の処置のための医薬の製造のための上述の医薬製剤の使用も意図される。代替的又は追加的に、前記骨格筋疾患は腱及び/又は靭帯を侵し得る。
【0044】
さらに、骨格筋疾患、好ましくは骨疾患又は関節疾患(代替的又は追加的に、前記疾患は腱及び/又は靭帯を侵し得る。)を、そのような処置を必要とする対象において処置する方法であって、前記対象に、治療上又は予防上有効な量の上述の医薬製剤を投与することを含む方法が意図される。
【0045】
これらの知見を展開させて、本発明者らは、医薬添加剤としての、より好ましくは持続放出又は徐放医薬添加剤としての、上述の製剤の使用を実現してきた。したがって、関連態様は、S/D血漿及びグリコサミノグリカンを含む製剤の、医薬添加剤としての、好ましくは非経口投与用、より好ましくは骨内、骨周囲、関節内若しくは関節周囲投与用又は腱内、腱周囲、靭帯内若しくは靭帯周囲投与用に構成されている医薬製剤中の医薬添加剤としての使用を提供する。
【0046】
したがって、S/D血漿及びグリコサミノグリカンを含む製剤であって、医薬添加剤としての使用のための、より好ましくは持続放出又は徐放医薬添加剤としての使用のための、好ましくは骨格筋疾患、好ましくは骨疾患又は関節疾患(代替的又は追加的に、上記疾患は腱及び/又は靭帯を侵し得る。)の処置のための医薬添加剤としての使用のための製剤もまた開示される。さらに、S/D血漿及びグリコサミノグリカンを含む製剤であって、医薬添加剤、より好ましくは持続放出又は徐放医薬添加剤の製造のための、好ましくは骨格筋疾患、好ましくは骨疾患又は関節疾患(代替的又は追加的に、前記疾患は腱及び/又は靭帯を侵し得る。)の処置のための医薬添加剤の製造のための製剤の使用が開示される。さらには、骨格筋疾患、好ましくは骨疾患又は関節疾患(代替的又は追加的に、前記疾患は腱及び/又は靭帯を侵し得る。)を、そのような処置を必要とする対象において処置する方法であって、前記対象に、S/D血漿及びグリコサミノグリカンを含む製剤を医薬添加剤として、より好ましくは持続放出又は徐放医薬添加剤として投与することを含む方法が提供される。
【0047】
好ましくは、ヒトS/D血漿を含む医薬製剤がヒト対象への投与に特に適するように、S/D血漿はヒトS/D血漿であり得る。
【0048】
同様に、医薬添加剤としての、好ましくは非経口投与用、より好ましくは骨内、骨周囲、関節内若しくは関節周囲投与用又は腱内、腱周囲、靭帯内若しくは靭帯周囲投与用に構成されている医薬製剤中の医薬添加剤としての、S/D血漿の使用が本明細書で開示される。
【0049】
したがって、医薬添加剤としての使用のための、より好ましくは持続放出又は徐放医薬添加剤としての使用のための、好ましくは骨格筋疾患、好ましくは骨疾患又は関節疾患(代替的又は追加的に、前記疾患は腱及び/又は靭帯を侵し得る。)の処置のための医薬添加剤としての使用のためのS/D血漿がさらに開示される。さらに、医薬添加剤、より好ましくは持続放出又は徐放医薬添加剤の製造のための、好ましくは骨格筋疾患、好ましくは骨疾患又は関節疾患(代替的又は追加的に、前記疾患は腱及び/又は靭帯を侵し得る。)の処置のための医薬添加剤の製造のための、S/D血漿の使用が本明細書で開示される。さらには、骨格筋疾患、好ましくは骨疾患又は関節疾患(代替的又は追加的に、前記疾患は腱及び/又は靭帯を侵し得る。)を、そのような処置を必要とする対象において処置する方法であって、前記対象に、医薬添加剤として、より好ましくは持続放出又は徐放医薬添加剤としてS/D血漿を投与することを含む方法が提供される。
【0050】
好ましくは、ヒトS/D血漿を含む医薬製剤がヒト対象への投与に特に適するように、S/D血漿はヒトS/D血漿であり得る。
【0051】
また、細胞培養培地サプリメントとしての、上述の製剤の使用が本明細書で開示される。したがって、関連態様は、S/D製剤及びグリコサミノグリカンを含む製剤の、細胞培養培地サプリメントとしての使用を提供する。有利なことに、そのような製剤は、改善された特性を有する細胞又は細胞培養液を得ることを可能とし得る。
【0052】
本発明のこの態様及びその実施形態のいずれか全体にわたって、S/D血漿は、好ましくは哺乳動物S/D血漿、より好ましくはヒトS/D血漿であり得る。また、本発明のこの態様及びその実施形態のいずれか全体にわたって、血清は、哺乳動物血清、より好ましくはヒト血清であり得る。同様に、S/D血漿は哺乳動物S/D血漿であり得、血清は哺乳動物血清であり得るか、あるいは好ましくは、S/D血漿はヒトS/D血漿であり得、血清はヒト血清であり得る。ヒト血漿及び/又は血清はヒト対象への投与に関して特に有利であり得る。また、本発明のこの態様及びその実施形態のいずれか全体にわたって、全血は、哺乳動物全血、より好ましくはヒト全血であり得る。同様に、S/D血漿は哺乳動物S/D血漿であり得、全血は哺乳動物全血であり得るか、あるいは好ましくは、S/D血漿はヒトS/D血漿であり得、全血はヒト全血であり得る。ヒト血漿及び/又は全血はヒト対象への投与に関して特に有利であり得る。
【0053】
また、グリコサミノグリカンが製剤から除外される上記医薬製剤及び対応するその使用が本明細書で開示される。したがって、そのような製剤は、S/D血漿(好ましくはヒトS/D血漿)、及び1つ又は複数の上記構成成分、特に血清、全血若しくはその分画構成成分、及び1つ若しくは複数の医薬活性成分(これらは、例えば、各々独立して、細胞組成物、医薬活性化合物、タンパク質、ペプチド、及び小有機分子からなる群から選択される。)のいずれか1つ又は複数を特に含み得る。そのような製剤はまた、良好なゲル形成挙動を示し得る。
【0054】
本発明の上記及びさらなる態様、並びに好ましい実施形態は、以下のセクションで、及び併記の特許請求の範囲で記載される。併記の特許請求の範囲の主題は、本明細書において参照により具体的に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1図1(Fig.1)は、頭蓋冠骨切術の免疫適格マウスモデルにおける骨欠損部位への、S/D血漿、IL-8及びCaClを含有する製剤の投与の4週間後の骨組織修復/形成のX線画像を示す。骨修復は、IL-8を含有しない対照(A)と比較して処置マウス(B)において明瞭に観察することができる(石灰化領域)。
図2図2(Fig.2)は、図1Bに示される新たに形成された組織の、20倍(A)及び40倍の倍率での顕微鏡分析を提供する。頭蓋冠骨切術の免疫適格マウスモデルにおける骨欠損部位への、S/D血漿、IL-8及びCaClを含有する製剤の投与の4週間後に、空のコラーゲン基質が、広範囲の石灰化した類骨及び石灰化していない類骨並びに多数の血管を提示する。
【実施形態の説明】
【0056】
本明細書において、単数形(“a”,“an”,“the”)は、文脈が明らかに他に影響されない限りは、単数及び複数の両方の指示対照を包含する。
【0057】
本明細書において、用語「含む」(“comprising”,“comprises”,“comprised of”)は、「包含する」(“including”,“includes”)又は「含有する」(“containing”,“contains”)と同義であり、包括的であるか、又は制約がなく、さらなる非列挙メンバー、要素又は方法ステップを排除しない。この用語はまた、「~からなる」(“consisting of”)及び「~から本質的になる」(“consisting essentially of”)を包含する。
【0058】
端点による数的範囲の列挙は、各々の範囲内に包含されるすべての数及び割合、並びに列挙された端点を含む。
【0059】
本明細書において、「約」という用語は、パラメーター、量、経時的な持続期間等のような測定可能な値を参照する際に、指定値の及び指定値からの変動、特に指定値の及び指定値からの+/-10%以下、好ましくは+/-5%以下、より好ましくは+/-1%以下、さらに好ましくは+/-0.1%以下の変動を包含すると意図される。但し、そのような変動が、開示される本発明で機能するのに適切である場合に限る。修飾語句「約」が指す値はまた、それ自体が詳細に、及び好ましく開示されることが理解されよう。
【0060】
一群のメンバーのうちの1つ又は複数のような「1つ又は複数」の用語はそれ自体明確であるが、さらなる例を示すと、その用語は、とりわけ、例えば、前記メンバーの任意の3以上、4以上、5以上、6以上若しくは7以上等及び最大前記メンバーのすべてのような、前記メンバーのいずれか1つ又は前記メンバーの任意の2つ以上に対する言及を包含する。
【0061】
本明細書で引用される文書はすべて、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0062】
別記しない限り、技術用語及び科学用語を含む本発明を開示するのに使用される用語すべてが、本発明が属する技術分野の当業者により一般に理解される意義を有する。さらなるガイダンスとして言及すると、用語定義は、本発明の教示をより良好に理解するように包含され得る。
【0063】
細胞培養及び培地使用における一般的な技術は、とりわけ大規模な哺乳動物細胞培養(Large Scale Mammalian Cell Culture)(Hu他 1997.Curr Opin Biotechnol 8:148頁);無血清培(Serum-free Media)(K.Kitano.1991.Biotechnology 17:73頁);又は大規模な哺乳動物細胞培養(Curr Opin Biotechnol 2:375頁、1991)に概説される。
【0064】
本明細書において、「医薬製剤」、「医薬組成物」又は「医薬調製物」という用語は交換可能に使用され得る。同様に、本明細書において、「製剤」、「組成物」又は「調製物」という用語は交換可能に使用され得る。
【0065】
「血漿」という用語は従来の定義と同義である。血漿は通常、全血の試料から得られ、抗凝固薬(例えば、ヘパリン、クエン酸塩、シュウ酸塩、又はEDTA)とともに提供されるか、又はそれらと接触される。続いて、血液試料の細胞構成成分は、適切な技術により、通常は遠心分離により、液体構成成分(血漿)と分離される。したがって、「血漿」という用語は、ヒト又は動物の身体の一部を形成しない組成物を指す。
【0066】
「溶剤/界面活性剤処理された血漿」、「S/D処理された血漿」又は「S/D血漿」という用語は、概して、(a)血漿を溶剤及び界面活性剤で処理するステップと、(b)溶剤/界面活性剤処理された血漿を濾過するステップと、を含む方法によって得ることが可能であるか又はそれによって得られた血漿であって、細胞が除去された(decellularised)血漿を指す。
【0067】
ステップ(a)で処理されるべき血漿は、新鮮血漿、新鮮凍結血漿、解凍された凍結血漿、又は凍結血漿からの寒冷沈降物、寒冷上清若しくは濃縮物並びにそれらの希釈製品のような従来定義されている任意の血漿であり得る。血漿は通常、全血の試料から、又はアフェレーシスにより得られる試料から得られる。
【0068】
ジ又はトリアルキルリン酸ホスフェートのような溶剤及び界面活性剤は米国特許第4764369号に記載されている。好ましくは、S/D血漿を調製するのに使用される溶剤は、ともに1~10個の炭素原子、特に2~10個の炭素を含有するアルキル基を有するジアルキルホスフェート又はトリアルキルリホスフェートである。溶剤の例として、トリ(n-ブチル)ホスフェート、トリ(t-ブチル)ホスフェート、トリ(n-へキシル)ホスフェート、トリ(2-エチルへキシル)ホスフェート又はトリ(n-デシル)ホスフェートが挙げられ得る。好ましい溶剤はトリ(n-ブチル)ホスフェートである。また、異なるトリアルキルホスフェートの混合物、並びに異なるアルキル鎖のアルキル基を有するホスフェート、例えばエチル、ジ(n-ブチル)ホスフェートの混合物を使用することができる。同様に、各ジアルキルジホスフェート(異なるアルキル基のジアルキルホスフェートの混合物のそれを含む。)を使用することができる。さらに、ジ及びトリアルキルホスフェートの混合物を使用することができる。
【0069】
好ましくは、処理ステップ(a)における使用のためのジ又はトリアルキルホスフェートのような溶剤は、約0.01mg/ml~約100mg/ml、好ましくは約0.1mg/ml~約10mg/mlの範囲の量で用いられる。別の言い方をすると、好ましくは、処理ステップ(a)における使用のためのジ又はトリアルキルホスフェートは、約0.001%w/v~約10%w/v、好ましくは約0.01%w/v~約1%w/vの範囲の量で用いられる。
【0070】
好ましくは、S/D血漿を調製するのに使用される界面活性剤は無毒性界面活性剤である。意図される非イオン性界面活性剤としては、溶液100ml当たり1グラムの界面活性剤が水溶液中に導入される場合に、一般的な温度で、界面活性剤を含有する水溶液中に少なくとも0.1重量%の脂質を分散する界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の例として、脂肪酸のポリオキシエチレン誘導体、ソルビトール無水物の部分エステル、例えば、「ツイーン(Tween)80」、「ツイーン20」及び「ポリソルベート80」として商業的に知られている製品、及び商標「トリトン(Triton)X100」(オキシエチル化アルキルフェノール)で市販されるもののような非イオン性で油溶性の水性界面活性剤が挙げられ得る。同様に、デオキシコール酸ナトリウム、並びにN-ドデシル-N,N-メチル-2-アンモニオ-1エタンスルホン酸塩及びその同類物のような「スルホベタイン」として知られている合成の両性イオン性界面活性剤、又はオクチル-ベータ-D-グルコピラノシドのような非イオン性界面活性剤である「両性界面活性剤」が意図される。
【0071】
界面活性剤の量は、約0.001%v/v~約10%v/v、好ましくは約0.01%v/v~約1.5%v/vの範囲であり得る。
【0072】
好ましくは、溶剤及び界面活性剤による処理は、-5℃~70℃、好ましくは0℃~60℃の温度で達成される。そのような処理(接触)の時間は少なくとも1分、好ましくは少なくとも1時間、概して4~24時間である。処理は、大気圧で概して有効であるが、大気圧より低い圧力及び大気圧よりも高い圧力もまた用いられ得る。
【0073】
概して、処理後に、トリアルキルホスフェートのような溶剤及び界面活性剤が除去される。溶剤及び界面活性剤は、溶剤及び界面活性剤を血漿と分離するのに適した任意の技術により除去され得る。非イオン性界面活性剤がトリアルキルホスフェートのような溶剤とともに用いられる場合、それらは、(1)血漿タンパク質を保持するTEFLONのような微多孔膜を使用したダイアフィルトレーション、(2)クロマトグラフィー又は親和性クロマトグラフィー支持体上の所望の血漿構成成分の吸着、(3)例えば血漿タンパク質の塩析による沈殿、(4)凍結乾燥等により除去され得る。
【0074】
ジアルキルホスフェート又はトリアルキルリホスフェートのような溶剤は次のように除去され得る。(a)抗血友病因子(AHF)からの除去は、2.2モルのグリシン及び2.0M塩化ナトリウムによるAHFの沈降により達成することができ、(b)フィブロネクチンからの除去は、不溶化ゼラチンのカラム上にフィブロネクチンを結合させることと、試薬を含まない結合されたフィブロネクチンを洗浄することと、によって達成することができる。
【0075】
濾過ステップ(b)は、概して、細胞及び細胞片を除去するために1μmフィルターで行われ、続いて0.2μmフィルターを使用する滅菌濾過が行われる。
【0076】
Horowitz他、(1992)(Blood、3、826~831頁)により記載されるように、好ましい例に基づいて、S/D血漿は下記の通りに調製され得る:FFPを迅速に解凍してもよく、30℃において1%(v/v)トリ-(N-ブチル)ホスフェート(TNBP)及び1%(v/v)ポリオキシエチレン-p-t-オクチルフェノール(Triton X-100)で4時間、撹拌しながら処理され得る。処理後、ダイズ油(5%v/v)又はヒマシ油のような食用油を添加して、30分間穏やかに混合してもよく、10000gで20分間、遠心分離により除去され得る。血漿対カラム容量の比が6であり、接触時間が3分間であり得るように、浄化血漿をWaters Prep C18樹脂のカラムにかけてもよい。カラム溶離液は0.2μmフィルター上で濾過され得る。
【0077】
例えば、S/D血漿は、オクタプラス(Octaplas)(登録商標)(Octapharma AG、ラチェン、スイス)として市販されている。
【0078】
「S/D血漿」という用語は、0.60IU/ml以下の、又は0.50IU/ml以下のプラスミンインヒビターレベル、例えば0.20~0.30IU/ml、特に0.22~0.25IU/mlのプラスミンインヒビターレベルのようなプラスミンインヒビターの低減された濃度又は活性を含む血漿を包含する。
【0079】
新鮮凍結血漿(FFP)と比較した場合、S/D血漿は、プラスミンインヒビター、プロテインS、第XI因子、第V因子、第VIII因子、第X因子、α2抗プラスミン、抗トリプシン、フォンビルブラント因子(vWF)と、メンバー13(ADAMTS-13)であるトロンボスポンジン1型モチーフを有するディスインテグリン及びメタロプロテイナーゼとしても知られているフォンビルブラント因子切断プロテアーゼ(VWFCP)、腫瘍壊死因子-アルファ(TNFα)、インターロイキン-8(IL-8)、インターロイキン-10(IL-10)の1つ若しくは複数の低減された量及び/又は活性を含み得(Benjamin及びMcLaughlin、2012、Svae他、2007;Beeck及びHellstern、1998;Doyle他、2003;Mast他、1999、Theusinger他、2011)、及び/又は第VII因子の増大された量及び/又は活性を含み得る(Doyle他、2003)。
【0080】
S/D血漿は本医薬製剤中で直接使用され得る。S/D血漿はまた、後の使用のために適切に保管することができる(例えば、より短期間(例えば最大約1~2週間)の保管に関しては、血漿又は血清の各々の凝固点より高い温度であるが、外気温未満(通常約4℃~5℃)で、あるいは凍結保管によるより長期間の保管に関しては通常約-70℃~約-80℃で保管される)。
【0081】
S/D血漿は、特に補体を除去するために、当技術分野で公知であるように熱失活させてもよい。本医薬製剤が、処理されるべき対象に対して自家性であるS/D血漿を用いる場合、S/D血漿を熱失活させることは不要であり得る。S/D血漿が、処理されるべき対象に対して少なくとも部分的にアロジェニックである場合、S/D血漿を熱失活させることは有利であり得る。
【0082】
本発明の医薬製剤は、処理されるべき対象に対して自家性であるS/D血漿を含み得る。S/D血漿に関連して、「自家性」という用語は、S/D血漿が、S/D血漿と接触されるか、又はS/D血漿で処理されるべき同じ対象から得られることを意味する。本発明の医薬製剤は、処理されるべき対象にとって「同種」又は「アロジェニック」である、すなわちS/D血漿と接触されるか、又はS/D血漿で処理されるべき対象以外の1つ又は複数の(プールされた)対象から得られるS/D血漿を含み得る。本発明の医薬製剤はまた、上記の自家性及び同種(アロジェニック)S/D血漿の混合物を含み得る。好ましくは、医薬製剤は、処理されるべき対象にとって「アロジェニック」であるS/D血漿を含み得る。有利なことに、アロジェニックS/D血漿は市販されており、それ故、無制限の血漿の供給源である。
【0083】
「血清」という用語は従来の定義と同義である。血清は通常、まず試料中で凝固が起こさせること、続いて、適切な技術により、通常は遠心分離により、そのように形成された血塊及び血液試料の細胞構成成分を液体構成成分(血清)と分離させることによって全血の試料から得ることができる。凝固は、不活性触媒、例えばガラスビーズ又は粉末により促進され得る。あるいは、血清は、抗凝固薬及びフィブリンを除去することによって血漿から得ることができる。したがって、「血清」という用語は、ヒト又は動物の身体の一部を形成しない組成物を指す。
【0084】
血清は、本明細書で教示される医薬製剤中で直接使用され得る。血清はまた、後の使用のために適切に保管することができる(例えば、より短期間(例えば最大約1~2週間)の保管に関しては、血漿又は血清の各々の凝固点より高い温度であるが、外気温未満(通常約4℃~5℃)で、あるいは凍結保管によるより長期間の保管に関しては通常約-70℃~約-80℃で保管される)。
【0085】
血清は、特に補体を除去するために、当技術分野で公知であるように熱失活され得る。本医薬製剤が、その存在下で培養される細胞に対して自家性である血清を用いる場合、血清を熱失活させることは不要であり得る。血清が、培養される細胞に対して少なくとも部分的にアロジェニックである場合、血清を熱失活させることは有利であり得る。
【0086】
任意選択で、血清はまた、好ましくは0.2μm以下の孔径を有する従来の微生物学的フィルターを使用して、保管又は使用に先立って滅菌してもよい。
【0087】
ある特定の実施形態では、医薬製剤は、処理されるべき対象に対して自家性である血清を用いてもよい。血清に関連して、「自家性」という用語は、血清が、血清と接触されるべき同じ対象から得られることを意味する。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、処理されるべき対象にとって「同種」又は「アロジェニック」である、すなわち血清と接触されるべき対象以外の1つ又は複数の(プールされた)対象から得られる血清を用い得る。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、上記の自家性及び同種(アロジェニック)血清の混合物を用い得る。
【0088】
「全血」という用語は従来の定義と同義である。試料としては、対象からの全血の除去又は単離を可能にする低侵襲的な方法により容易に得られるものが好ましい。全血は通常、抗凝固薬(例えば、ヘパリン、クエン酸塩、シュウ酸塩、又はEDTA)とともに供給されるか、又は抗凝固薬と接触される。
【0089】
全血は、本明細書で教示される医薬製剤中で直接使用され得る。全血はまた、後の使用のために適切に保管することができる(例えば、より短期間(例えば最大約1~4週間)の保管に関しては、全血の凝固点より高い温度であるが、外気温未満(通常約4℃~5℃)で、あるいは凍結保管によるより長期間の保管に関しては、通常約-70℃~約-160℃(例えば、約-70℃~約-80℃;又は約-160℃)で保管される)。
【0090】
ある特定の実施形態では、医薬製剤は、処理されるべき対象に対して自家性である全血を用いてもよい。全血に関連して、「自家性」という用語は、全血が、全血と接触されるべき同じ対象から得られることを意味する。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、処理されるべき対象にとって「同種」又は「アロジェニック」である、すなわち全血と接触されるべき対象以外の1つ又は複数の(プールされた)対象から得られる全血を用い得る。ある特定の実施形態では、医薬製剤は、上記の自家性及び同種(アロジェニック)全血の混合物を用い得る。
【0091】
ある特定の実施形態では、グリコサミノグリカンは、ヒアルロン酸及びその誘導体、プロテオグリカン及びその誘導体、コンドロイチン硫酸、ケラタン硫酸、キトサン及びその誘導体、キチン及びその誘導体からなる群から選択され得る。
【0092】
「ヒアルロン酸」(“hyaluronic acid”)又は「HA」という用語は「ヒアルロナン」(“hyaluronan”)又は「ヒアルロナート」(“hyaluronate”)と交換可能に使用され得る。「ヒアルロン酸」という用語は、交互β-1,4及びβ-1,3グリコシド結合を介して連結されるD-グルクロン酸及びN-アセチル-D-グルコサミンで構成される二糖の陰イオン性非硫化ポリマーを指す。ヒアルロン酸誘導体としては、ヒアルロン酸ナトリウムのようなヒアルロン酸の塩、又は脂肪族系、複素環系若しくは脂環系のアルコールとのヒアルロン酸のエステル、又はヒアルロン酸の硫酸化形態、又はヒアルロン酸を含む物質の組み合わせが挙げられる(但し、それらに限定されない)。
【0093】
「プロテオグリカン」という用語は、1つ又は複数の共有結合されたグリコサミノグリカン(GAG)鎖を有するタンパク質を指す。グリコサミノグリカンは、デコリン、バイグリカン、テスティカン、フィブロモジュリン、ルミカン、バーシカン、パールカン、ニューロカン又はアグリカンから選択されるプロテオグリカンであり得る。
【0094】
「コンドロイチン硫酸」という用語は、N-アセチルガラクトサミン及びグルクロン酸で構成される二糖のポリマー(そのそれぞれが可変位置及び量で硫酸化され得る)を指す。コンドロイチン硫酸は、コンドロイチン-4-硫酸、コンドロイチン-6-硫酸、コンドロイチン-2,6-硫酸、コンドロイチン-4,6-硫酸から選択され得る。
【0095】
「ケラタン硫酸」は「ケラト硫酸」と交換可能に使用され得、Gal又はGlcNAc単糖のいずれか又は両方の炭素6位(C6)で硫酸化され得る反復二糖-3Galβ1-4GlcNAcβ1-のポリマーを指す。
【0096】
「キトサン」という用語は、無作為に分布されたβ-(1,4)結合したD-グルコサミン(脱アセチル化単位)及びN-アセチル-D-グルコサミン(アセチル化単位)で構成される線状ポリマーを指す。
【0097】
「キチン」という用語は、β-(1,4)結合したN-アセチルグルコサミンで構成されるポリマーを指す。
【0098】
ある特定の実施形態では、医薬製剤は1つ又は複数の医薬活性成分をさらに含む。
【0099】
そのような医薬活性成分は例えば細胞組成物を包含し得る。
【0100】
ある特定の実施形態において、細胞組成物は、間葉系幹細胞(MSC)、骨前駆細胞、骨芽細胞性細胞、骨細胞、軟骨芽細胞性細胞、及び/又は軟骨細胞を含み得る。
【0101】
本明細書において、「間葉系幹細胞」又は「MSC」という用語は、間葉系譜の、典型的には2つ以上の間葉系譜の細胞、例えば骨細胞(骨)、軟骨細胞(軟骨)、筋細胞(筋肉)、腱細胞(腱)、線維芽細胞(結合組織)、脂肪細胞(脂肪)及び間質形成(stromogenic)(骨髄基質)系列を生成することが可能である成体、中胚葉由来幹細胞を指す。MSCは、例えば骨髄、海綿骨、血液、臍帯、胎盤、胎児卵黄嚢、皮膚(真皮)、詳細には胎児及び青年期の皮膚、骨膜及び脂肪組織から単離され得る。ヒトMSC、それらの単離、in vitroでの増大及び分化は、米国特許第5486359号、同第5811094号、同第5736396号、同第5837539号又は同第5827740号に記載されている。当技術分野の文献に記載される任意のMSC及び当技術分野の文献に記載される任意の方法により単離される任意のMSCが本医薬製剤に適切であり得る。
【0102】
MSCという用語はまた、MSCの子孫、例えば動物又はヒト対象の生物学的試料から得られるMSCのin vitro又はex vivo増殖(伝播)により得られる子孫を包含する。
【0103】
好適なMSCは、少なくとも骨形成(骨)系列の細胞(例えば、骨前駆細胞及び/又は前骨芽細胞及び/又は骨芽細胞及び/又は骨細胞)又は少なくとも軟骨形成(軟骨)系列の細胞(例えば、軟骨形成性細胞及び/又は軟骨芽細胞及び/又は軟骨細胞)を生成する可能性を有する。
【0104】
「幹細胞」という用語は概して、自己再生が可能である、すなわち分化を伴わずに増殖ことができるか、又はその子孫が少なくとも1つの比較的より特殊化された細胞型を生じることができる非特殊化又は比較的あまり特殊化されていない増殖適格細胞を指す。この用語は、実質的に無制限の自己再生が可能な幹細胞(すなわち、ここで、幹細胞の子孫又はその少なくとも一部が、親幹細胞の非特殊化又は比較的あまり特殊化されていない表現型、分化能、及び増殖能力を実質的に保持する)、並びに限られた自己再生を示す幹細胞(すなわち、ここで、さらなる増殖及び/又は分化に関する子孫又はその一部の能力が、親細胞と比較して明らかに低減されている。)を包含する。例を示す(それに限定されるものではない。)と、幹細胞は、ますます比較的より特殊化された細胞を産生するように、又はさらには最終分化された細胞、すなわち完全に特殊化された細胞を産生する(これは有糸分裂後であり得る。)ように1つ若しくは複数の系列に沿って分化し得る子孫を生じ得る(ここで、そのような子孫及び/又はますます比較的より特殊化された細胞はそれ自体、本明細書で定義される幹細胞であり得る)。
【0105】
本明細書において、「成体幹細胞」という用語は、例えば成人期に達した後のような胎児期又は誕生後の生物中に存在するか又はそれらから得られる(例えば単離される)幹細胞を指す。
【0106】
本明細書において、「骨前駆細胞」は、初期及び後記骨前駆細胞を特に含み得る。「骨芽細胞性細胞」は、前骨芽細胞、骨芽細胞及び骨細胞を特に包含してもよく、この用語は、より好ましくは前骨芽細胞及び骨芽細胞を意味し得る。これらの用語はすべてそれ自体が公知であり、本明細書において、通常、骨形成性表現型を有し、また骨材料若しくは骨基質の形成に寄与し得るか、又は骨材料若しくは骨基質の形成に寄与し得る細胞へと発達することが可能である細胞を指し得る。
【0107】
さらなるガイダンスとして言及する(それに限定されるものではない。)と、骨前駆細胞及び骨芽細胞性細胞、並びに骨前駆細胞及び/又は骨芽細胞性細胞を含む細胞集団は以下の特徴を示し得る。
a)細胞は、骨芽細胞分化、及び骨芽細胞分化中に多くの細胞外基質タンパク質遺伝子の発現を調節する多官能性転写因子であるRunx2の発現を含む。
b)細胞は、以下の:アルカリホスファターゼ(ALP)、特に骨-肝臓-腎臓型のALPのうちの少なくとも1つの発現を含み、より好ましくは、オステオカルシン(OCN)、プロコラーゲン1型アミノ末端プロペプチド(P1NP)、オステオネクチン(O)、オステオポンチン(OP)及び/又は骨シアロタンパク質(BSP)、及び/又はデクロシン及び/又はオステオプロテゲリン(OPG)のような1つ又は複数のさらなる骨基質タンパク質の少なくとも1つの発現を含む。
c)細胞は、CD45を実質的に発現しない(例えば、細胞の約10%未満、好ましくは約5%未満、より好ましくは約2%未満の細胞が、CD45を発現し得る)。
d)細胞は、外部周囲を石灰化するか、又はカルシウム含有細胞外基質を合成する能力の兆候を示す(例えば、骨形成性培地に曝露される場合;Jaiswal他 J Cell Biochem、1997、vol.64、295~312頁を参照)。細胞内部でのカルシウム蓄積及び基質タンパク質への堆積は、例えば45Ca2+中で培養すること、洗浄すること及び再培養すること、続いて細胞内部に存在するか、又は細胞外基質へ堆積される任意の放射能を決定すること(米国特許第5972703号)、又はアリザンレッドベースの石灰化アッセイを使用することにより従来測定することができる(例えば、Gregory他 Analytical Biochemistry、2004、vol.329、77~84頁を参照)。
e)細胞は、脂肪細胞系列(例えば脂肪細胞)又は軟骨細胞系列(例えば軟骨細胞)の細胞のいずれにも実質的に分化しない。そのような細胞系列へ分化しないことは、当技術分野で確立された条件を誘導する標準的な分化(例えば、Pittenger他 Science、1999、vol.284、143~7頁)、及びアッセイ方法を使用して試験され得る(例えば、誘導されると、脂肪細胞は通常、脂肪蓄積を示すオイルレッドOで染色して、軟骨細胞は通常、アルシアンブルー又はサフラニンOで染色する)。脂肪生成性及び/又は軟骨形成性分化への実質的に欠如した傾向は、通常、試験した細胞の20%未満、又は10%未満、又は5%未満、又は1%未満が、各々の試験に適用されると脂肪生成性又は軟骨形成性分化の兆候を示し得ることを意味し得る。
【0108】
細胞は、IL-6及び/又はVEGFのような1つ又は複数の細胞動員因子の発現をさらに含み得る。
【0109】
本明細書において、「軟骨芽細胞性細胞」は、細胞外基質の分泌において活性な軟骨芽細胞、すなわち若い(成熟していない、未熟)軟骨細胞を特に含み得る。軟骨芽細胞は、間葉系幹細胞からの分化により生じると考えられる。「軟骨細胞」という用語は、より具体的には、軟骨質基質の維持に必要な成熟軟骨細胞を指す。これらの用語はそれ自体周知であり、本明細書において、通常、軟骨形成性表現型を有し、軟骨若しくは軟骨質基質の形成に寄与し得るか、又は軟骨若しくは軟骨質基質の形成に寄与し得る細胞へと発達することが可能である細胞を指し得る。
【0110】
さらなるガイダンスとして言及する(それに限定されるものではない。)と、ヒト関節軟骨細胞は、Diaz-Romero他 (2005)(J Cell Physiol、vol.202(3)、731~42頁)に要約されるように、細胞発現の特徴を示し得、例えば、ヒト関節軟骨細胞は、インテグリン及び他の接着分子(CD49a、CD49b、CD49c、CD49e、CD49f、CD51/61、CD54、CD106、CD166、CD58、CD44)、テトラスパニン(CD9、CD63、CD81、CD82、CD151)、受容体(CD105、CD119、CD130、CD140a、CD221、CD95、CD120a、CD71、CD14)、エクト酵素(CD10、CD26)及び他の表面分子(CD90、CD99)を発現し得る。単層培養中に、軟骨細胞は、間葉系幹細胞に関して特色を示すとされているある特定のマーカー(CD10、CD90、CD105、CD166)をアップレギュレートし得る。したがって、そのようなマーカーはまた、あまり成熟していない軟骨芽細胞性細胞により発現され得る。
【0111】
ここで、細胞は、特定のマーカーに陽性である(又はそれを発現する若しくはその発現を含む)とされており、このことは、当業者が適切な測定を実施する際に、適した対照と比較して当該マーカーに関して特徴的なシグナル(例えば、抗体検出可能なシグナル)の存在若しくは兆候、又は逆転写ポリメラーゼ連鎖反応による検出を結論付けることを意味する。上記方法がマーカーの定量的評価を可能にする場合、陽性細胞は、平均して、対照とは有意に異なり、対照細胞により生成されるそのようなシグナルよりも少なくとも1.5倍高い、例えば少なくとも2倍、少なくとも4倍、少なくとも10倍、少なくとも20倍、少なくとも30倍、少なくとも40倍、少なくとも50倍高いか、又はさらに高い(但し、それらに限定されない)シグナルを生成し得る。
【0112】
上記細胞特異的マーカーの発現は、免疫細胞化学若しくは親和性吸着、ウェスタンブロット分析、FACS、ELISA等のような当技術分野で公知の任意の適した免疫学的方法を使用して、又は(例えばALPに関する)酵素活性の任意の適した生化学的アッセイにより、又はマーカーmRNAの量を測定する任意の適した技術、例えばノーザンブロット、半定量的若しくは定量的RT-PCR等により検出することができる。この開示で列挙されるマーカーに関する配列データは公知であり、GenBank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)のような公共データベースから入手することができる。
【0113】
本発明の医薬製剤は、骨形成性、骨誘導及び/又は骨誘引特性を有する1つ又は複数の物質を含み得る。好ましい実施形態では、そのような物質は、線維芽細胞増殖因子(FGF)(好ましくはFGF-2)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFB)(好ましくはTGFB-1)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インターロイキン-8(IL-8)、骨形成タンパク質(BMP)(例えば、BMP-2、BMP-4、BMP-6及びBMP-7のいずれか1つ又は複数)、副甲状腺ホルモン(PTH)、副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrp)、及び幹細胞因子(SCF)を含むか、又はそれらからなる群から選択され得る。いずれか1つのそのような物質は、対象に投与される場合にその望ましい骨形成性、骨誘導及び/又は骨誘引効果を達成するのに十分な濃度で医薬組成物中に含まれ得、可能な限り、望ましくない副作用を回避する。
【0114】
通常、いずれか1つのそのような物質は、0.01ng/ml~1mg/ml、例えば0.1ng/ml~100μg/ml、例えば1ng/ml~50μg/mlの濃度で医薬製剤中に含まれ得る(但し、それらに限定されない)。
【0115】
「骨誘導」という用語は、ペプチド増殖因子のような構成成分の、幹細胞、MSCのような未熟細胞を漸加して、それらの細胞を刺激して、前骨芽細胞及び成熟骨芽細胞へ分化させて、それにより骨組織を形成する能力を指す。本発明の医薬組成物は、骨誘導タンパク質又はペプチドのような骨誘導特性を有する構成成分、例えばBMP-2、BMP-7又はBMP-4のような骨形成タンパク質;ヒドロゲル又はヒアルロン酸若しくはその誘導体、コラーゲン、フィブリノーゲン、オステオネクチン若しくはオステオカルシンのような生体高分子をさらに含み得る。好ましくは、医薬組成物は、ヒアルロン酸若しくはその誘導体、コラーゲン又はフィブリノーゲンをさらに含み得る。
【0116】
「骨誘引」という用語は、骨細胞が付着、遊走、成長して新たな骨を産生することができるスキャフォールドとしての機能を果たす、構成成分の能力を指す。医薬組成物は、骨誘引特性を有する構成成分、例えば、リン酸三カルシウム、ヒドロキシアパタイト、ヒドロキシアパタイト/リン酸三カルシウム粒子の組み合わせ(HA/TCP)、ゼラチン、ポリ乳酸、ポリ乳酸グリコール酸、ヒアルロン酸、キトサン、ポリL-リシン又はコラーゲンのような(但し、それらに限定されない)骨誘引スキャフォールド又は基質又は表面をさらに含み得る。
【0117】
上述するように、本発明による医薬製剤は、骨創傷及び欠損の修復に有用な構成成分を含み得る。医薬製剤は、骨誘引特性を有するスキャフォールド又は基質を含み得る。医薬製剤は、ミネラル除去された骨基質(DBM)又は他の基質と組み合わせて、複合材を骨形成性並びに骨誘導性及び骨誘引性にさせてもよい。アロジェニックDBMを有する自家性骨髄細胞を使用した類似の方法は良好な結果をもたらした(Connolly他 1995.Clin Orthop 313:8~18頁)。
【0118】
本発明による医薬製剤は、BMP-2、BMP-7若しくはBMP-4又は任意の他の増殖因子のような骨形成タンパク質のような相補的生理活性因子又は骨誘導タンパク質をさらに含み得るか、又はそれらと同時投与され得る。他の潜在的に付随する構成成分として、骨再生を補助するのに適したカルシウム又はリン酸塩の無機供給源が挙げられる(国際公開第00/07639号)。望ましい場合、細胞調製物は、改善された組織再生を提供するようにキャリア基質又は材料に投与することができる。例えば、材料は、ヒドロゲル、又はゼラチン、コラーゲン、ヒアルロン酸若しくはその誘導体、オステオネクチン、フィブリノーゲン若しくはオステオカルシンのような生体分子であり得る。生体材料は標準的な方法に従って合成することができる(例えば、Mikos他、Biomaterials 14:323頁、1993;Mikos他、Polymer 35:1068頁、1994;Cook他、J.Biomed.Mater.Res.35:513頁、1997)。
【0119】
有利なことに、本発明の原理を適用する製剤は特に良好なゲル形成挙動を示し、粘性のある製剤を生産する。ある特定の実施形態において製剤はゲル形成製剤である。
【0120】
本明細書において、「ゲル形成」、「一相」又は「単相」という用語は交換可能に使用することができる。「ゲル形成製剤」という記述は、本明細書全体にわたって意図される場合、製剤の、例えば擬塑性挙動を有する固体、ゼリー状材料(ゲル)を形成する能力を指す。例えば、本医薬製剤は、その構成成分が組み合わせる場合、又はその構成成分がゲル形成につながる材料及び/又は条件と組み合わせるか、又はそれらに曝露させる場合、例えば、髄液、血清又は細胞組成物中に溶解又は分散される場合(但し、その場合に限定されない)、有利なことにゲルを形成する。
【0121】
「粘性」という用語は、一般に、せん断応力又は引張応力のいずれかにより変形される流体の抵抗性の尺度である。本発明の医薬製剤は、少なくとも10Pa.sの粘性を有してもよく、例えば本医薬製剤は、0.560s-1のせん断速度を適用する場合に室温で、約30Pa.s~約500Pa.s、例えば約50Pa.s~約250Pa.sの範囲の粘性を有し得る。
【0122】
本発明の原理を統合する組成物は、特に二価カルシウム(Ca2+)イオンの存在下でそれらのゼラチン状粘稠性を獲得し得る。好ましくは哺乳動物組織のような、より好ましくはヒト組織のような動物組織(滑液のような体液を含む。)は、通常1mM~3mMの濃度で細胞外Ca2+を含有する。さらに、Ca2+濃度は、それがヒドロキシアパタイトの形態で主にリン酸カルシウム結晶として保管される場合に骨組織で高い。
【0123】
したがって、ある特定の実施形態では、例えば骨又は関節組織における本医薬組成物の投与時に、投与部位で見出されるCa2+が組成物の凝固/ゲル化を容易とするため、Ca2+を本医薬組成物に添加する必要はない。
【0124】
ある特定の他の実施形態では、例えばin situでそれらの凝固/ゲル化を高めるために(例えば、投与部位で見出されるCa2+濃度が、単独で組成物の凝固/ゲル化を容易とするのに不適切であると見出されているか、又は予想される場合)、又はそれらの投与に先立ってin vitroである程度の凝固/ゲル化を達成するために(例えば、製品の注入容量及び/又は完全性を改善するために)、Ca2+が本医薬組成物に添加され得る。そのような実施形態では、Ca2+は、約5mM~約100mM、好ましくは約10mM~約50mM、より好ましくは約10mM~約20mM、又は約20mM~約40mM、例えば、約20mM~約30mM、又は約30mM~約40mMの濃度で医薬品組成物中に通常添加され得る。
【0125】
ある特定の実施形態において、関節内又は関節周囲投与が意図される製品は、約20mM~約40mM、例えば約20mM~約30mMのCa2+を含み得る。ある特定の他の実施形態において、骨内又は骨周囲投与が意図される製品は約10mM~約20mMのCa2+を含み得る。
【0126】
Ca2+は、適した量の薬学的に許容されるカルシウム塩、好ましくは可溶性カルシウム塩の医薬組成物における添加により、医薬組成物中に適切に含まれ得る。そのようなCa2+塩は、無機又は有機酸をともに形成され得る。そのような塩の例としては、塩化カルシウム(CaCl)、グリセロリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、クエン酸カルシウム、硫酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム及びそれらの混合物が挙げられる。CaClが特に好ましく、これは、有利なことに良好な溶解度を示し、注入可能な溶液中で良好な耐容性を示す。
【0127】
本明細書で意図される医薬製剤は、約1mg/ml~約10mg/mlのCaCl、好ましくは約2mg/ml~約4mg/mlのCaClを含み得る。ある特定の実施形態では、関節内又は関節周囲投与が意図される製品は、約1mg/ml~約10mg/mlのCaCl、好ましくは約2mg/ml~約5mg/mlのCaCl、より好ましくは約4mg/mlのCaClを含み得る。ある特定の実施形態では、骨内又は骨周囲投与が意図される製品は、約1mg/ml~約10mg/mlのCaCl、好ましくは約2mg/ml~約5mg/mlのCaCl、より好ましくは約2mg/mlのCaClを含み得る。
【0128】
ある特定の実施形態では、医薬製剤は、非経口注入のような非経口投与用に、より好ましくは骨内、骨周囲、関節内若しくは関節周囲の注入のような骨内、骨周囲、関節内若しくは関節周囲投与用に、又は腱内、腱周囲、靭帯内若しくは靭帯周囲の注入のような腱内、腱周囲、靭帯内若しくは靭帯周囲投与用に構成され得る。
【0129】
本明細書で教示される医薬製剤又はキットオブパーツは局所投与用に構成され得る。すなわち、本医薬製剤又はキットオブパーツは、例えば、骨内、骨周囲、関節内、関節周囲、筋内、皮下、静脈内及び胸骨内投与の1つ又は複数を含む骨内、骨周囲、関節内、関節周囲、筋内、皮下、静脈内、胸骨内、腱内、腱周囲、靭帯内若しくは靭帯周囲投与の1つ又は複数を含む非経口投与用に構成され得る。
【0130】
好ましくは、本明細書で教示される医薬製剤又はキットオブパーツは骨内又は骨周囲投与用に構成される。骨内投与又は送達は概して、処置が骨(海綿又は皮質)へ直接的又は間接的に送達される方法を指す。骨周囲投与又は送達は概して、処置が骨の周囲(特に骨折/損傷部位周辺)に送達される方法を指す。
【0131】
特に好ましくは、本明細書で教示される医薬製剤又はキットオブパーツは関節内又は関節周囲投与用に構成される。関節内投与又は送達は概して、処置が関節結合部の滑液包へ直接的又は間接的に送達される方法を指す。関節周囲投与又は送達は概して、処置が関節結合の滑液包及び/又は軟骨下骨の周囲に送達される方法を指す。
【0132】
同様に、本明細書で教示される医薬製剤又はキットオブパーツは腱内又は腱周囲投与用に構成され得る。同様に、本明細書で教示される医薬製剤又はキットオブパーツは靭帯内又は靭帯周囲投与用に構成され得る。
【0133】
関連態様は、骨格筋疾患の処置(本明細書全体にわたって治療的及び/又は予防的措置を含む。)における使用のための上述の医薬製剤に関する。
【0134】
本明細書において、「骨格筋疾患」という用語は、任意のタイプの骨疾患、筋肉疾患、関節疾患又は軟骨形成異常を指し、それらの処置は、疾患を有する対象への本医薬製剤の投与の利益を享受し得る。この用語はまた、腱及び/又は靭帯を侵す疾患を包含する。特に、そのような疾患は、例えば骨及び/又は軟骨形成の減少、又は過剰な骨及び/又は軟骨吸収、骨中に存在する骨芽細胞若しくは骨細胞及び/又は軟骨中に存在する軟骨芽細胞若しくは軟骨細胞の数、生存度又は機能の減少、対象における骨量及び/又は軟骨量の減少、骨の細線化、骨強度又は弾力の減弱等を特徴とし得る。
【0135】
骨格筋疾患の非限定的な例として、任意のタイプの骨粗鬆症又は骨減少症(例えば原発性、閉経後、老人性、コルチコイド誘導性、ビスホスホネート誘導性及び放射線療法誘導性);任意の続発性、単一又は多点骨壊死;任意のタイプの骨折、例えば癒着不能、変形治癒、遷延治癒の骨折又は圧迫、骨の癒着(例えば、脊椎固定及び再建)を必要とする状態、顎顔面骨折、先天性骨形成不全、骨再構築(例えば、外傷性負傷又は癌手術後)及び頭顔骨再構築;外傷性関節炎、限局性軟骨及び/又は関節欠損、限局性変形性関節炎;骨関節炎、変形性関節炎、変形性膝関節炎及び変形性股関節炎;骨形成不全症;溶骨性骨肉腫;パジェット病、内分泌障害、低リン血症、低カルシウム血症、腎性骨ジストロフィー、骨軟化症、無形成骨症、副甲状腺機能亢進症、原発性副甲状腺機能亢進症、二次性副甲状腺機能亢進症;歯周病;ゴーハム-スタウト疾患及びマキューン-アルブライト症候群;関節リウマチ;強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、腸疾患性関節症及び未分化脊椎関節症並びに反応性関節炎を含む脊椎関節症;全身性紅斑性エリテマトーデス及び関連症候群;強皮症及び関連障害;シェーグレン症候群;巨細胞性動脈炎(ホートン病)、高安動脈炎、リウマチ性多発筋痛症、ANCA関連血管炎(例えば、ヴェグナー肉芽腫、顕微鏡的多発性血管炎、及びチャーグ-ストラウス症候群)、ベーチェット症候群及び他の多発性動脈炎及び関連障害(例えば、結節性多発動脈炎、コーガン症候群、及びバージャー病)を含む全身性血管炎;アミロイドーシス及びサルコイドーシスを含む他の全身性炎症疾患に付随する関節炎;痛風、リン酸カルシウム若しくはシュウ酸カルシウム結晶の関節沈着に関連したピロリン酸カルシウム二水和物疾患、障害又は症候群を含む結晶性関節症;軟骨石灰化症及び神経障害性関節症;フェルティ症候群及びライター症候群;ライム病及びリウマチ熱のような局所又は全身障害が挙げられ得る。
【0136】
「予防上有効な量」という用語は、研究者、獣医師、医師又は他の臨床医により求められるような、対象において障害の発症を阻害又は遅延させる活性化合物又は医薬活性成分の量を指す。本明細書において、「治療上有効な量」という用語は、研究者、獣医師、医師又は他の臨床医により求められる対象における生物学的又は医療的応答を誘発する活性化合物又は治療剤の量を指し、これはとりわけ、処置される疾患又は状態の症状の軽減を含み得る。本製剤又は医薬製剤に関して治療上及び予防上有効な用量を決定する方法は当技術分野で公知である。
【0137】
本発明において、「治療上有効な用量」は、投与されると、骨疾患又は関節疾患のような骨格筋疾患(代替的又は追加的に、前記疾患は腱及び/又は靭帯を侵し得る。)を有する患者の処置に関して、肯定的な治療的応答をもたらす医薬活性成分又は製剤の量を意味する。
【0138】
本製剤中の医薬活性化合物又は医薬活性成分の適切な治療上有効な用量は、医薬活性化合物又は医薬活性成分の性質、疾患状態及び重篤性、並びに患者の年齢、大きさ及び状態に関して認定医師により決定され得る。
【0139】
例えば、投与されるべきグリコサミノグリカンの典型的な用量は、注入1回当たりグリコサミノグリカン約2mg~400mgの範囲であり得る(但し、それに限定されない)。例えば、投与されるべき用量は、注入1回当たりグリコサミノグリカン約4mg~300mg、例えば注入1回当たりグリコサミノグリカン約8mg~200mgの範囲であり得る。好ましくは、投与されるべき用量は、注入1回当たりグリコサミノグリカン約8mg~160mgの範囲である。
【0140】
例えば、投与されるべき細胞組成物の典型的な用量は、注入1回当たり約0.05×10個の細胞~5×10個の細胞の範囲であり得る(但し、それに限定されない)。例えば、投与されるべき用量は、注入1回当たり約0.05×10個の細胞~1×10個の細胞の範囲であり得る。好ましくは、投与されるべき用量は、注入1回当たり約4×10個の細胞~250×10個の細胞の範囲である。
【0141】
本発明の処置は、製剤又は医薬製剤の単回の治療上有効な用量の投与、又は複数回の治療上有効な用量の投与を含み得ることが理解される。
【0142】
特に断らない限り、「対象」又は「患者」は交換可能に使用され、動物、好ましくは温血動物、より好ましくは脊椎動物、さらに好ましくは哺乳動物、より一層好ましくは霊長類を指し、詳細にはヒト患者及び非ヒト哺乳動物及び霊長類を包含する。好ましい患者はヒト対象である。
【0143】
本明細書において、「治療を必要とする対象」のような語句は、特に骨疾患又は関節疾患のような骨格筋疾患(代替的又は追加的に、前記疾患は腱及び/又は靭帯を侵し得る。)の所定の状態の処置の利益を享受する対象を包含する。そのような対象は、前記状態であると診断されたもの、前記状態を発症しやすいもの、及び/又は前記状態が防止されるべきであるものを包含し得る(但し、それらに限定されない)。
【0144】
「処置する」又は「処置」という用語は、すでに発症した疾患又は状態の治療的処置、並びに予防的又は防止的措置の両方を包含し、ここでその目的は、疾患又は状態の進行の見込みを防止することのような、望ましくない苦痛の出現の見込みを防止又は減少させることである。有益な又は所望の臨床結果としては、1つ若しくは複数の症状、又は1つ若しくは複数の生物学的マーカーの軽減、疾患の程度の縮小、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化させないこと)、疾患の進行の遅延又は減速、疾患状態の寛解又は緩和等が挙げられ得る(但し、それらに限定されない)。「処置」はまた、処置を受けない場合の予測生存と比較して生存を延長させることを意味する。
【0145】
本医薬製剤は、本明細書で特に指定される構成成分に加えて、1つ又は複数の薬学的に許容される添加剤を含み得る。適した医薬添加剤は、活性成分の投薬形態及び独自性に依存し、当業者により選択され得る(例えば、the Handbook of Pharmaceutical Excipients 第6版 2009、Rowe他編を参照することにより)。本明細書において、「担体」又は「添加剤」は、任意及びすべての溶媒、希釈剤、緩衝液(例えば、中性緩衝生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水)、可溶化剤、コロイド、分散媒、ビヒクル、充填剤、キレート剤(例えば、EDTA又はグルタチオン)、アミノ酸(例えばグリシン)、タンパク質、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、湿潤剤、乳化剤、甘味剤、着色剤、香味料、着香剤(aromatiser)、増粘剤、デポ効果を達成するための薬剤、コーティング、抗真菌剤、防腐剤、安定剤、酸化防止剤、張度制御剤、吸収遅延剤等を包含する。医薬活性物質のためのそのような媒体及び薬剤の使用は当技術分野で周知である。そのような材料は非毒性であるべきであり、薬学的に活性な成分の活性を妨げるべきではない。
【0146】
担体又は他の材料の正確な性質は投与の経路に依存し得る。例えば、製剤は、非経口的に許容される水溶液の形態で存在してもよく、非経口的に許容される水溶液は発熱物質を含まず、適したpH、等張性及び安定性を有する。
【0147】
製剤は、pH調節剤及び緩衝剤、防腐剤、錯化剤、張度調節剤、湿潤剤等、例えば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、塩化水素、ベンジルアルコール、パラベン、EDTA、オレイン酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン等のようなほぼ生理学的条件に必要とされるような薬学的に許容される補助物質を含み得る。好ましくは、製剤のpH値は生理学的pHの範囲にあり、例えば、特に、製剤のpHは約5~9.5、より好ましくは約6~約8.5、さらに好ましくは約7~約7.5である。そのような医薬製剤の調製は当業者の通常の技術の範囲内である。
【0148】
別の態様は、医薬添加剤としての、より好ましくは持続放出又は徐放医薬添加剤としての上述の製剤の使用に関する。
【0149】
本明細書において、「持続放出」、「徐放」又は「長期放出」という用語は、広範には当技術分野で公知の製剤のような参照製剤からの全記化合物の放出と比較して、延長された期間、長期間又は増大された期間にわたる製剤からの化合物の放出を指す。本明細書において、持続放出は、製剤の構成成分の1つ又は複数の、すなわち、S/D血漿(これは、内因性増殖因子のような有益な生物学的物質を含み得る。)の、及びグリコサミノグリカンの、細胞組成物の、又は1つ若しくは複数の医薬活性化合物の、及び任意選択で1つ若しくは複数のさらなる活性医薬成分の長期放出を指す。例えば、関節における高分子量ヒアルロン酸の半減期が約6~8時間であることは従来技術から知られている。したがって、持続放出は、本明細書において、本製剤からのヒアルロン酸のようなグリコサミノグリカンの延長された放出、例えば、1日若しくは数日間(例えば、2日、3日、4日、5日、6日間)、又は1週若しくは数週間(例えば、1.5週、2週、3週間)、又は1ヶ月若しくは数ヶ月間の放出を指す。したがって、これらの用語はまた、延長された放出、遅延放出又は制御放出を包含し得る。
【実施例0150】
実施例1(ヒト溶剤/界面活性剤処理血漿(S/D血漿)とヒト新鮮凍結血漿(FFP)との比較):
例示的な製剤の組成上の特徴:
表1に示されるように、S/D血漿、すなわちOctapharma AG(ラチェン、スイス)からのオクタプラス(登録商標)の製品モノグラフは、S/D血漿及びヒト新鮮凍結血漿(FFP)の間の組成上の特徴の比較を提供する。この情報によれば、製品はほぼ同等の血漿タンパク質組成を大幅に有し、S/D血漿は有意に低いレベルのプラスミンインヒビターを示し得る。
【0151】
表1(オクタプラス(登録商標)製品モノグラフに基づくS/D血漿(特にオクタプラス(登録商標))及び新鮮凍結血漿(FFP)の組成上の特徴):
【表1】
【0152】
S/D血漿(特にオクタプラス(登録商標))及び新鮮凍結血漿の組成について概説すると、Svae他(2007)は、S/D処理を含む製造プロセスにより引き起こされる凝固因子及び天然に存在する阻害剤の活性の重大な低減は存在しないと結論付けたのに対して、プロテインS及びプラスミンインヒビターは、それぞれ35%及び76%の減少を示すことができた(Beeck & Hellsternm、1998)。Doyle他(2003)は、16個のオクタプラス(登録商標)バッチを48個の不対FFPユニットと比較することにより、S/D血漿中の有意により低いレベルのプロテインS(38%)、プラスミンインヒビター(78%)並びに第XI因子(13%)及び第V因子(13%)、及び有意に増大されたレベルの第VII因子(15%)を報告した。
【0153】
貯留保管(quarantine)されたFFPの12個の無作為ユニットに対するオクタプラス(登録商標)の12個の連続したバッチの組成の特徴を示すSvae他(2007)の表1について言及する。ほとんどの構成成分が有意に変更されなかったが、下記表2は、有意差を示したSvae他(2007)の表1の構成成分を再現する(P値<0.05、対応のないt検定)。
【0154】
表2(Svae他(2007)の表1に基づくS/D血漿(すなわちオクタプラス(登録商標))及びFFPの間の組成上の相違):
【表2】
【0155】
また、Theusinger他(2011)(Br.J.Anaesth.、106(4):505~11頁)は、S/D血漿(すなわちオクタプラス(登録商標))及び新鮮凍結血漿中の凝血因子及びサイトカインの相対濃度を研究した(n=25)。Theusinger他は、凝固因子含有量がS/D血漿及びFFPに関して類似しているものの、S/D血漿はより少ない第V因子、フォンビルブランド因子(vWF)、及びフォンビルブランド因子切断プロテアーゼ(vWFCP、ADAMTS-13)を含有することを観察した。サイトカイン濃度(TNFα、IL-8、及びIL-10)はFFPにおいて有意に高かった。
【0156】
さらに、S/Dプロセスは、不安定な第V因子、第VII因子、α1-抗トリプシン及びα2-抗プラスミンのセリンプロテアーゼ阻害剤(セルピン)活性の損失をもたらし得るが、抗トロンビンの損失はもたらさなかった(Benjamin & McLaughtin、2012;Mast他 1999)。第VIII因子損失は高分子量フォンビルブランド因子(vWF)の減少と関連付けられる。Sachs他(2005)の研究では、S/D血漿試料(n=5)は、顆粒球特異的抗体並びにHLAクラスI及びクラスII抗体に関して検査して、陰性であった。
【0157】
表3は、上述の研究で検出されるように、S/D血漿(すなわちオクタプラス(登録商標))と新鮮凍結血漿との実証可能な差異の概説を提供する。
【0158】
表3(S/D血漿(すなわちオクタプラス(登録商標))及び新鮮凍結血漿の間の例示的な相違):
【表3】
【0159】
結論として、ヒトS/D血漿と新鮮凍結血漿との無数の組成上の相違が文書化されている。S/D血漿の特に顕著な特徴は、0.60IU/ml以下、又は0.50IU/ml以下のプラスミンインヒビターレベル、例えば0.20~0.30IU/ml、より詳細には0.22~0.25IU/mlのプラスミンインヒビターレベルのようなFFPに対する血漿阻害剤の低減されたレベルであり得る。
【0160】
凝固挙動:
保証実験は、下記のヒト血漿タイプ:S/D血漿、すなわちオクタプラス(登録商標)、ヘパリン処理されたチューブ中で加工処理された血漿、EDTAを含有するチューブ中で加工処理された血漿、又はクエン酸処理された(citrated)チューブ中で加工処理された血漿を用いた。血漿を次のように調製した。血液を、相当するチューブ、すなわちヘパリン処理されたチューブ、EDTAチューブ又はクエン酸処理されたチューブ中に直接収集して、チューブを室温において1500gで10分間遠心分離して、上清として血漿を収集した。S/D血漿が濾過により細胞を除去した血漿であるため、他の血漿タイプは、そのように示される場合、血小板又は細胞片のような細胞の不存在を保証するために0.2μmフィルターに通して濾過した。混合物反応の容量は250μl又は500μlであった。各構成物及び混合物は、37℃で維持した。凝固時間は、各々の血漿タイプ、10又は20%v/vの血清及び2.5又は5%v/v CaCl(0.546M)を含有する混合物に関して37℃で決定した。凝固時間は、任意選択でチューブの撹拌中又は後に、目視観察により測定した。5個の試料を試験した。結果を表4に要約する。
【0161】
2.5%及び5% CaClに関して、並びに10%又は20%血清に関して得られる結果において差異はなかった。
【0162】
表4(他の血漿タイプに対するS/D血漿(すなわちオクタプラス(登録商標))の凝固挙動):
【表4】
【0163】
血塊形成は、(濾過されていない又は濾過された(細胞が除去された))ヘパリン処理血漿では観察されなかった。S/D血漿の濾過は凝固時間において有意差を示さなかった(p=0.7780、対応のあるt検定)が、EDTA血漿(p=0.0053、対応のあるt検定)に関して、及びクエン酸処理血漿(p=0.0143、対応のあるt検定)に関して、有意な増加が観察された。しかしながら、S/D血漿を用いた場合の血塊形成は、それぞれクエン酸処理血漿及びEDTA血漿と比較して約50%~100%上回って速かった。結果的に、オクタプラス(登録商標)により例示されるS/D血漿は、凝固特性に関して他の血漿タイプと異なる。
【0164】
したがって、S/D血漿、特に細胞を除去したS/D血漿の顕著な特徴は凝固時間の低減であり得る。例えば、凝固時間は、ヒト細胞除去S/D血漿、10又は20%v/vの血清及び2.5又は5%w/v CaCl(0.546M)を含む混合物中において37℃で測定した場合、700秒以下か、又は600秒以下か、例えば500~700秒、又は550~600秒であり得る。
【0165】
実施例2(ヒト溶剤/界面活性剤(S/D)処理血漿(オクタプラス(登録商標))及びヒアルロン酸(HA)によるゲル形成):
オクタプラス(登録商標)及びHAによる血塊/ゲル形成:
ヒトS/D血漿、特にオクタプラス(登録商標)の挙動を、関節炎の患者由来の滑液と組み合わせて試験した(n=2)。滑液を、オクタプラス(登録商標)、ヒアルロン酸(10mg/ml ヒアルロン酸ナトリウム、分子量1.8~2.10Da、Contipro、チェコ共和国により提供)及びCaClを含む本発明の実施形態による製剤と1:1の比で接触させた。CaClの3つの濃度、すなわち0、2及び4mg/ml CaClを試験した。ゲル形成は、タイマーを使用して異なる時点(20~30分、1時間、2時間)で目視で評価した。粘性は、反応チューブが逆さまにした際に容器の壁上の規定スケールに達するのに、溶液が必要とする時間を測定することにより評価した。試験は、2人の関節炎患者由来の滑液に関して二度実施した。
【0166】
4mg/ml CaClを含む製剤と滑液とのインキュベーションは、滑液を、2mg/ml CaClを含む製剤と接触させることによって得られるゲルと比較して、より粘性が高いゲルの製剤を誘導した。CaClを含まない製剤を滑液と接触されると、血塊形成は観察されなかった。
【0167】
滑液の存在下でのオクタプラスLG AB(OctaplasLG AB)(登録商標)及びHAによる血塊/ゲル形成:
ヒトS/D血漿、特にオクタプラスLG AB(登録商標)の挙動を、骨関節炎の患者由来の滑液と組み合わせて試験した(n=5)。これらの患者の滑液を、オクタプラスLG AB(登録商標)、HA(10mg/ml ヒアルロン酸ナトリウム、分子量2~3.10Da、HTL Biotechnology、フランスにより提供)、クロニジン塩酸塩(HCl)(200μg/ml、PCAS laboratory、フィンランドから購入)及びCaCl(4mg/ml カルシクロ(Calciclo)(登録商標)、Sterop Group、ベルギーにより提供)を含む本発明の実施形態による製剤と1:2(v/v)の比で混合して、臨床条件を模倣した。血塊/ゲル形成は、30分後に37℃(加湿インキュベーター、5%CO)において目視で評価した。
【0168】
いったん滑液と接触させると、この製剤は30分以内に血塊を形成した。
【0169】
別の実験では、CaClの3つの濃度(すなわち0、2及び4mg/ml CaCl)を上述の製剤中で試験した。試験は、骨関節炎患者由来の滑液に関して二度実施した(n=2)。4mg/ml又は2mg/ml CaClを含む製剤と滑液とのインキュベーションは同じ粘性のゲルの形成を誘導した。しかしながら、CaClを含有しない製剤を滑液と混合すると、血塊形成は観察されなかった。したがって、2mg/ml CaCl(14mM)の用量が最終製剤において選択された。
【0170】
結論として、この実験では、Ca2+は、滑液の存在下での血塊形成に必要とされた。Ca2+は、特にそれが関節組織で適正なレベルで存在しないと判明している又は予測される場合に、本発明を示す製剤に添加される必要があり得る。
【0171】
全血の存在下でのオクタプラスLG AB(登録商標)及びHAによる血塊/ゲル形成:
健常なドナー(n=1)由来の全血と組み合わせてHAを伴うオクタプラスLG AB(登録商標)のゲル化効果を、血小板由来増殖因子を含む基質を形成するその可能性を評価するために研究した。この研究では、オクタプラスLG AB(登録商標)、HA(4mg/ml ヒアルロン酸ナトリウム、分子量2~3.10Da、HTL Biotechnology、フランスにより提供)及びCaCl(2mg/ml カルシクロ(登録商標)、Sterop Group、ベルギーにより提供)を含む製剤の挙動を、クエン酸処理されたチューブ(#VF054SBCS07、Venosafe、テルモ)中に収集した全血と組み合わせて試験した。凝固時間は、チューブ撹拌/溶液均質化後に目視観察により測定した。
【0172】
結果により、いったんクエン酸処理血液と1:1(v/v)の比で接触すると、この製剤は37℃(加湿インキュベーター、5%CO)で15分以内に血塊を形成することが示された。
【0173】
他の血漿タイプと比較したオクタプラス(登録商標)及びHAによる血塊/ゲル形成:
いくつかの製剤の粘稠度を試験した。製剤は、ヒアルロン酸(ヒアルロン酸ナトリウム、分子量2~3.10Da、HTL、フランスにより提供)、CaCl及びオクタプラス(登録商標)又は同容量の次のヒト血漿タイプ(濾過されていない):ヘパリン処理されたチューブ中で加工処理された血漿、EDTAを含有するチューブ中で加工処理された血漿、又はクエン酸処理されたチューブ中で加工処理された血漿を含有した(製剤の組成に関しては表5を参照)。
【0174】
表5(製剤の組成):
【表5】
【0175】
1:1v/vの比で末梢血から調製したヒト血清を製品に添加して、撹拌しながら37℃でインキュベートした。30分、1時間及び24時間後に、粘稠度を目視で観察した。
【0176】
表6は、各種血漿タイプを用いたゲル化の半定量的評価を提供する。1時間後、オクタプラス(登録商標)を含有する製剤は、粘性のある粘稠度、さらにはゲル化された粘稠度を示した。ヘパリン処理血漿を含有する製剤は、1時間後に液体のままであった(表6)。オクタプラス(登録商標)を含有する製剤は、EDTAを含有するチューブ中で加工処理された血漿、又はクエン酸処理されたチューブ中で加工処理された血漿を含有する製剤よりも粘性が高かった(表6)。結果的に、オクタプラス(登録商標)を含有する製剤は、他の血漿タイプを含有する製剤よりも粘性が高かった。
【0177】
表6(HAの存在下での他の血漿タイプ(濾過されていない)に対するオクタプラス(登録商標)によるゲル化):
【表6】

オクタプラス(登録商標)は、濾過血漿、すなわち細胞構成物/構成成分を含有しない血漿である。
** 撹拌後に得られる結果
【0178】
HAの存在下又は不存在下でのオクタプラス(登録商標)による血塊/ゲル形成:
オクタプラス(登録商標)、CaCl、及び血清を含有する製剤について、ヒアルロン酸(ヒアルロン酸ナトリウム、分子量2~3.10Da、HTL、フランスにより提供)を含有するものと含有しないものとの間で粘稠性を比較した。ヒアルロン酸を含有しない製剤は、37℃で下記構成成分:オクタプラス(登録商標)2ml、血清222μl及び30mg/ml CaClストック溶液(水中でSigmaのCaCl塩から調製)22μlを混合することによって調製した。ヒアルロン酸を有する製剤は、37℃で下記構成成分:オクタプラス(登録商標)2ml中にあらかじめ溶解されたHA 8mg、血清222μl及び30mg/ml CaClストック溶液(水中でSigmaのCaCl塩から調製)22μlを混合することによって調製した。凝固時間は、チューブの目視観察及び撹拌により測定した。試験は一度実施した。
【0179】
目視検査時に、血塊又はゲル化相は、両方の製剤中で形成された。しかしながら、HAを有する製剤は、著しく少ない液体相を含有し、変化なく操作することができた。それに対して、HAを含有しない血塊は、血塊の操作時に破損して液体を放出した。
【0180】
S/D血漿及びHAに基づく細胞送達製剤:
ヒト対象への細胞の骨内送達に適した例示的かつ非限定的な製剤は、ヒトS/D血漿、特にオクタプラス(登録商標)と、20mg/ml HAと、ヒト骨髄から単離された自家性若しくはアロジェニック間葉系幹細胞(MSC)を含む細胞組成物又は骨芽細胞性細胞を含む細胞組成物と、20mg/ml CaClと、を含むか、それらから本質的になるか、又はそれらからなる。製剤は患者の骨欠損部位へ投与される。
【0181】
実施例3(ヒトS/D血漿(例えばオクタプラス(登録商標))及び細胞組成物によるゲル形成):
オクタプラス(登録商標)及びCa2+含有細胞培養培地による血塊/ゲル形成:
血塊形成を、細胞を有さず、ヒトS/D血漿(特にオクタプラス(登録商標))と通常培地(CaClを含有)とヒト血清とを含むいくつかの製剤に関して試験した。種々の条件:種々の濃度(例えば、5%v/v、7.5%v/v、又は10%v/vでのオクタプラス(登録商標));種々の通常培地(例えば、DMEM、MEM、PBS、又はPBS+CaCl);及び5若しくは10%v/v血清の不存在若しくは存在を試験して37℃での血塊形成を確証した。オクタプラス(登録商標)、通常培地(CaClを含有)、及び血清を細胞の不存在下で組み合わせた場合、血塊の形成は目視で観察された。
【0182】
培地中の血清の存在及びカルシウムの存在は、細胞の不存在下での血塊形成に必須であるようであると結論付けることができる。
【0183】
オクタプラス(登録商標)及び細胞組成物による血塊/ゲル形成:
骨髄MSCは、5%v/v、10%v/v又は15%v/v SD血漿、特にオクタプラス(登録商標)を含有する通常培地(DMEM)中で、プラスチックフラスコで57000個の細胞/cmで蒔いた。フラスコを37℃で5%COインキュベーター中に直接配置した。培地のゲル化が、37℃において1時間未満で観察された。ヒトS/D血漿、特にオクタプラス(登録商標)を含有する細胞培地は、接触後30分以内に液体からゲル化(ゲル)に粘稠性を変化させた。
【0184】
上記データは、血清を有するCa2+含有細胞培養培地中の、すなわち従来の細胞培養条件(その条件ではこれらが液体のままであることが一般に知られている。)下の細胞培養と比較した、Ca2+含有細胞培養培地中にS/D血漿及び細胞を含む製剤のゲル化能力を示す。
【0185】
オクタプラス(登録商標)、他の血漿タイプ及び細胞組成物による血塊/ゲル形成:
種々のタイプのヒト血漿-オクタプラス(登録商標)、ヘパリン処理されたチューブ中で加工処理された血漿、EDTAを含有するチューブ中で加工処理された血漿、又はクエン酸処理されたチューブ中で加工処理された血漿を有する細胞培養組成物の粘稠性を評価した。
【0186】
骨髄細胞から培養した57000個の細胞/cmの骨前駆細胞を、37℃で15%v/vのそれぞれの血漿を補充した培地(85%v/v)6ml中、プラスチックT25フラスコに播種した。結果を表7に要約する。培地は、ヘパリン処理血漿を有する液体のままであった(表7)。オクタプラス(登録商標)、EDTA-血漿、及びクエン酸処理血漿に関して、この初期実験では相違が観察されなかった(表7)。
【0187】
表7(細胞の存在下での種々の試験した血漿タイプに関するゲル化/凝固時間):
【表7】

オクタプラスは、濾過血漿、すなわち細胞構成物/構成成分を含有しない血漿である。
** 3つの細胞培養物は各血漿タイプに関して試験した。
【0188】
S/D血漿に基づく細胞送達製剤:
哺乳動物対象への細胞の骨内送達に適した例示的かつ非限定的な製剤は、S/D血漿、特にオクタプラス(登録商標)と、骨髄から単離された自家性若しくはアロジェニック間葉系幹細胞(MSC)を含む細胞組成物又は骨芽細胞性細胞を含む細胞組成物と、2~8mg/ml CaClと、を含むか、それらから本質的になるか、又はそれらからなる。製剤は、頭蓋冠骨切術のマウスモデルにおいて骨欠損部位へ投与される。
【0189】
実施例4(ヒトS/D血漿(例えばオクタプラス(登録商標))によるゲル形成):
S/D血漿及び医薬活性成分を含む例示的かつ非限定的な医薬製剤(ここで、製剤は、骨欠損における治療上の使用に適している。)は、S/D血漿、特にオクタプラス(登録商標)と、増殖因子(30μg/mlでのIL-8)と、2~8mg/ml CaClと、から本質的になるか、又はそれらからなる。製剤は、頭蓋冠骨切術のヌードマウスモデルにおいて骨欠損部位へ投与される。製剤の投与の4週後に、IL-8を含有しない対照と比較して処置マウスでは骨修復が明瞭に観察され得る(図1及び図2)。
【参考文献】
【0190】
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図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2022-02-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0054
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0054】
本発明の上記及びさらなる態様、並びに好ましい実施形態は、以下のセクションで、及び併記の特許請求の範囲で記載される。併記の特許請求の範囲の主題は、本明細書において参照により具体的に援用される。
本発明の実施形態は例えば下記実施形態1~15を含む。
実施形態1:
溶剤/界面活性剤処理された血漿(S/D血漿)とグリコサミノグリカンとを含む医薬製剤。
実施形態2:
S/D血漿はヒトS/D血漿である、実施形態1に記載の医薬製剤。
実施形態3:
グリコサミノグリカンはヒアルロン酸又はその誘導体である、実施形態1又は2に記載の医薬製剤。
実施形態4:
1つ又は複数の医薬活性成分をさらに含む、実施形態1~3のいずれかに記載の医薬製剤。
実施形態5:
血清、好ましくはヒト血清をさらに含む、実施形態1~4のいずれかに記載の医薬製剤。
実施形態6:
全血又は全血の分画構成成分をさらに含み、好ましくは全血はヒト全血である、実施形態1~4のいずれかに記載の医薬製剤。
実施形態7:
1つ又は複数の医薬活性成分は、各々独立して、細胞組成物、医薬活性化合物、タンパク質、ペプチド、及び小有機分子からなる群から選択される、実施形態4~6のいずれかに記載の医薬製剤。
実施形態8:
細胞組成物は、間葉系幹細胞(MSC)、骨前駆細胞、骨芽細胞性細胞、骨細胞、軟骨芽細胞性細胞、及び/又は軟骨細胞を含む、実施形態7に記載の医薬製剤。
実施形態9:
医薬活性化合物はアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストであり、好ましくは、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストはクロニジン及びその誘導体からなる群から選択される、実施形態7に記載の医薬製剤。
実施形態10:
医薬活性タンパク質又はペプチドは、増殖因子、好ましくは、線維芽細胞増殖因子(FGF)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFB)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インターロイキン-8(IL-8)、骨形成タンパク質(BMP)、副甲状腺ホルモン(PTH)、副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrp)、及び幹細胞因子(SCF)からなる群から選択される増殖因子、より好ましくは、FGF-2、TGFB-1、PDGF、IL-8、BMP-2、BMP-4、BMP-6、BMP-7、PTH、PTHrp、及びSCFからなる群から選択される増殖因子である、実施形態7に記載の医薬製剤。
実施形態11:
非経口投与用、好ましくは、骨内、骨周囲、関節内若しくは関節周囲投与用又は腱内、腱周囲、靭帯内若しくは靭帯周囲投与用に構成されている、実施形態1~10のいずれかに記載の医薬製剤。
実施形態12:
骨格筋疾患の処置における使用のための、実施形態1~11のいずれかに記載の医薬製剤であって、好ましくは骨格筋疾患は骨疾患又は関節疾患である、医薬製剤。
実施形態13:
S/D血漿及びグリコサミノグリカンを含む製剤の、医薬添加剤としての使用。
実施形態14:
S/D血漿はヒトS/D血漿である、実施形態13に記載の使用。
実施形態15:
医薬製剤は、非経口投与用、好ましくは、骨内、骨周囲、関節内若しくは関節周囲投与用又は腱内、腱周囲、靭帯内若しくは靭帯周囲投与用に構成されている、実施形態13又は14に記載の使用。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶剤/界面活性剤処理された血漿(S/D血漿)とヒアルロン酸又はその塩とを含む医薬製剤であって、
二価カルシウムイオン(Ca2+)をさらに含み、
1.0mg/ml~約20mg/mlの範囲の濃度でヒアルロン酸又はその塩を含む、
医薬製剤。
【請求項2】
塩化カルシウム(CaCl)、グリセロリン酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸水素カルシウム、クエン酸カルシウム、硫酸カルシウム、乳酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、アスコルビン酸カルシウム、又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載の医薬製剤。
【請求項3】
約1mg/ml~約10mg/mlのCaClを含む、請求項1又は2に記載の医薬製剤。
【請求項4】
約2mg/ml~約4mg/mlのCaClを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項5】
約2.0mg/ml~約10mg/mlの範囲の濃度でヒアルロン酸又はその塩を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項6】
ヒアルロン酸の塩はヒアルロン酸ナトリウムである、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項7】
S/D血漿はヒトS/D血漿である、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項8】
S/D血漿は、トリ(n-ブチル)ホスフェート及び2-[4-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェノキシ]エタノールで処理された血漿である、請求項1~7のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項9】
S/D血漿はオクタプラス(Octaplas)又はオクタプラスLG AB(OctaplasLG AB)である、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項10】
1つ又は複数のさらなるグリコサミノグリカンをさらに含む、請求項1~のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項11】
さらなるグリコサミノグリカンの1つはコンドロイチン硫酸である、請求項10に記載の医薬製剤。
【請求項12】
1つ又は複数の医薬活性成分をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項13】
血清、好ましくはヒト血清をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項14】
全血又は全血の分画構成成分をさらに含み、好ましくは全血はヒト全血である、請求項1~13のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項15】
1つ又は複数の医薬活性成分は、各々独立して、細胞組成物、医薬活性化合物、タンパク質、ペプチド、及び小有機分子からなる群から選択される、請求項1214のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項16】
細胞組成物は、間葉系幹細胞(MSC)、骨前駆細胞、骨芽細胞性細胞、骨細胞、軟骨芽細胞性細胞、及び/又は軟骨細胞を含む、請求項15に記載の医薬製剤。
【請求項17】
医薬活性化合物はアルファ-2アドレナリン受容体アゴニストであり、好ましくは、アルファ-2アドレナリン受容体アゴニストはクロニジン、2,6-ジメチルクロニジン、4-アジドクロニジン、4-カルボキシクロニジン-メチル3,5-ジクロロチロシン、4-ヒドロキシキクロニジン、4-ヨードクロニジン、アリニジン、アプラクロニジン、クロロエチルクロニジン、クロニジン4-イソチオシアネート、クロニジン4-メチルイソチオシアネート、クロニジン受容体、クロニジン置換物質、ヒドロキシフェナセチルアミノクロニジン、N,N’-ジメチルクロニジン、p-アミノクロニジン、及びチアメニジンからなる群から選択される、請求項15に記載の医薬製剤。
【請求項18】
医薬活性タンパク質又はペプチドは、線維芽細胞増殖因子(FGF)、トランスフォーミング増殖因子ベータ(TGFB)、血小板由来増殖因子(PDGF)、インターロイキン-8(IL-8)、骨形成タンパク質(BMP)、副甲状腺ホルモン(PTH)、副甲状腺ホルモン関連タンパク質(PTHrp)、及び幹細胞因子(SCF)からなる群から選択される増殖因子である、請求項15に記載の医薬製剤。
【請求項19】
非経口投与用に構成されている、請求項1~18のいずれか一項に記載の医薬製剤。
【請求項20】
骨格筋疾患の処置における使用のための、請求項1~19のいずれか一項に記載の医薬製剤であって、骨格筋疾患は変形性膝関節症である、医薬製剤。
【請求項21】
前記医薬製剤の単回の治療上有効な用量の投与が行われるように用いられる、請求項20に記載の医薬製剤。
【外国語明細書】