(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062001
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】抗PD-1抗体と突然変異IL-2とまたはIL-15とのイムノコンジュゲート
(51)【国際特許分類】
C12N 15/62 20060101AFI20220412BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20220412BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220412BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20220412BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220412BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220412BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220412BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220412BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220412BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20220412BHJP
C07K 14/55 20060101ALI20220412BHJP
C12N 15/26 20060101ALI20220412BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220412BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220412BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220412BHJP
A61K 38/20 20060101ALI20220412BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220412BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
C12N15/62 Z
C07K19/00 ZNA
C07K16/28
C12N15/13
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
C12P21/02 K
C07K14/55
C12N15/26
C12N15/63 Z
A61K47/68
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K38/20
A61P35/00
A61P37/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022000421
(22)【出願日】2022-01-05
(62)【分割の表示】P 2019554375の分割
【原出願日】2018-03-29
(31)【優先権主張番号】17164533.6
(32)【優先日】2017-04-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】306021192
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】コダッリ ディーク, ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】クライン, クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ラウナー, ラウラ
(72)【発明者】
【氏名】ニコリーニ, バレリア ヘ.
(72)【発明者】
【氏名】ゼーベル, シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】ウマーニャ, パブロ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルトハウアー, イニヤ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】免疫療法のために有利な特性を有する突然変異形態のIL-2を、腫瘍細胞よりむしろ細胞傷害性Tリンパ球などの免疫エフェクター細胞に直接標的化する新規な手法を提供する。
【解決手段】本発明は、一般的に、イムノコンジュゲート、特に、突然変異インターロイキン-2ポリペプチドと、PD-1に結合する抗体とを含むイムノコンジュゲートに関する。加えて、本発明は、イムノコンジュゲートをコードするポリヌクレオチド分子、ならびにこのようなポリヌクレオチド分子を含むベクターおよび宿主細胞に関する。本発明は、さらに、突然変異イムノコンジュゲートを産生するための方法、それを含む薬学的組成物、およびその使用に関する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)PD-1に結合する抗体と、(ii)IL-2Rβγを通じてシグナル伝達するポリペプチド、特にIL-2ポリペプチドまたはIL-15ポリペプチドとを含むイムノコンジュゲート。
【請求項2】
IL-2ポリペプチドが、突然変異IL-2ポリペプチドであり、
突然変異IL-2ポリペプチドが、アミノ酸置換F42A、Y45AおよびL72G(ヒトIL-2配列、配列番号19に対する番号付け)を含むヒトIL-2分子である、請求項1に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項3】
IL-2ポリペプチドが、突然変異IL-2ポリペプチドであり、
突然変異IL-2ポリペプチドが、アミノ酸置換F42A、Y45AおよびL72G(ヒトIL-2配列、配列番号19に対する番号付け)を含むヒトIL-2分子であり、
抗体が、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、およびKabat番号付けによる71~73位に配列番号7のアミノ酸配列を含むFR-H3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項4】
IL-2ポリペプチドが、突然変異IL-2ポリペプチドであり、
突然変異IL-2ポリペプチドが、アミノ酸置換F42A、Y45AおよびL72G(ヒトIL-2配列、配列番号19に対する番号付け)を含むヒトIL-2分子であり、
抗体が、(a)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに(b)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項5】
IL-2ポリペプチドが、突然変異IL-2ポリペプチドであり、
突然変異IL-2ポリペプチドが、アミノ酸置換F42A、Y45AおよびL72G(ヒトIL-2配列、配列番号19に対する番号付け)を含むヒトIL-2分子であり、
抗体が、(a)配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに(b)配列番号15、配列番号16、配列番号17、および配列番号18からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、請求項1に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項6】
突然変異IL-2ポリペプチドが、アミノ酸置換T3Aおよび/またはアミノ酸置換C125Aをさらに含む、請求項2から5のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項7】
突然変異IL-2ポリペプチドが、配列番号20の配列を含む、請求項2から6のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項8】
1つ以下の突然変異IL-2ポリペプチドを含む、請求項2から7のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項9】
抗体が、第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFcドメインを含む、請求項2から8のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項10】
Fcドメインが、IgGクラス、特にIgG1サブクラスのFcドメインである、請求項9に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項11】
Fcドメインが、ヒトFcドメインである、請求項9または10に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項12】
抗体が、IgGクラス、特にIgG1サブクラスの免疫グロブリンである、請求項2から11のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項13】
Fcドメインが、Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットとの会合を促進する修飾を含む、請求項9から12のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項14】
Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基が、より大きい側鎖体積を有するアミノ酸残基により置き換えられ、それにより、第2のサブユニットのCH3ドメイン内の空洞に配置可能な、第1のサブユニットのCH3ドメイン内の隆起を生成し、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基が、より小さい側鎖体積を有するアミノ酸残基により置き換えられ、それにより、内部に第1のサブユニットのCH3ドメイン内の隆起が配置可能な、第2のサブユニットのCH3ドメイン内の空洞を生成する、請求項9から13のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項15】
Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、366位のスレオニン残基が、トリプトファン残基により置き換えられ(T366W)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、407位のチロシン残基が、バリン残基により置き換えられ(Y407V)、366位のスレオニン残基が、セリン残基により置き換えられていてもよく(T366S)、368位のロイシン残基が、アラニン残基により置き換えられる(L368A)(Kabat EUインデックスによる番号付け)、請求項9から14のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項16】
Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、追加的に、354位のセリン残基が、システイン残基により置き換えられる(S354C)か、または356位のグルタミン酸残基が、システイン残基により置き換えられ(E356C)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、追加的に、349位のチロシン残基が、システイン残基により置き換えられる(Y349C)(Kabat EUインデックスによる番号付け)、請求項15に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項17】
突然変異IL-2ポリペプチドが、そのアミノ末端アミノ酸でFcドメインのサブユニットのうちの1つ、特にFcドメインの第1のサブユニットのカルボキシ末端アミノ酸と、任意選択的にリンカーペプチドを通じて融合されている、請求項9から16のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項18】
リンカーペプチドが、配列番号21のアミノ酸配列を有する、請求項17に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項19】
Fcドメインが、Fc受容体、特にFcγ受容体への結合性、および/またはエフェクター機能、特に抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を低減する1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、請求項9から17のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項20】
前記1つまたは複数のアミノ酸置換が、L234、L235、およびP329(Kabat EUインデックス番号付け)の群から選択される1つまたは複数の位置にある、請求項19に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項21】
Fcドメインの各サブユニットが、アミノ酸置換L234A、L235AおよびP329G(Kabat EUインデックス番号付け)を含む、請求項9から20のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項22】
配列番号22の配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号23または配列番号24の配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、および配列番号25の配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む、請求項2から21のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項23】
リンカー配列により繋がった突然変異IL-2ポリペプチドおよびIgG1免疫グロブリン分子から本質的になる、請求項2から22のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項24】
請求項2から23のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲートをコードする、1つまたは複数の単離ポリヌクレオチド。
【請求項25】
請求項24に記載のポリヌクレオチドを含む、1つまたは複数のベクター、特に発現ベクター。
【請求項26】
請求項24に記載のポリヌクレオチドまたは請求項25に記載のベクターを含む宿主細胞。
【請求項27】
突然変異IL-2ポリペプチドと、PD-1に結合する抗体とを含むイムノコンジュゲートを産生する方法であって、(a)請求項25に記載の宿主細胞をイムノコンジュゲートの発現に適した条件で培養すること、および任意選択的に(b)イムノコンジュゲートを回収することを含む方法。
【請求項28】
請求項27に記載の方法により産生される、突然変異IL-2ポリペプチドと、PD-1に結合する抗体とを含むイムノコンジュゲート。
【請求項29】
請求項2から23または28のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲートと、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物。
【請求項30】
医薬としての使用のための、請求項2から23または28のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項31】
疾患の治療における使用のための、請求項2から23または28のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲート。
【請求項32】
前記疾患が、がんである、請求項31に記載の疾患の治療における使用のためのイムノコンジュゲート。
【請求項33】
疾患の治療のための医薬の製造における、請求項2から23または28のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲートの使用。
【請求項34】
前記疾患が、がんである、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
個体における疾患を治療する方法であって、薬学的に許容される形態で治療的有効量の請求項2から23または28のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲートを含む組成物を前記個体に投与することを含む方法。
【請求項36】
前記疾患が、がんである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
個体の免疫系を刺激する方法であって、薬学的に許容される形態で有効量の請求項2から23または28のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲートを含む組成物を前記個体に投与することを含む方法。
【請求項38】
本明細書の前記に記載された発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に、イムノコンジュゲート、特に、突然変異インターロイキン-2ポリペプチドと、PD-1に結合する抗体とを含むイムノコンジュゲートに関する。加えて、本発明は、イムノコンジュゲートをコードするポリヌクレオチド分子、ならびにこのようなポリヌクレオチド分子を含むベクターおよび宿主細胞に関する。本発明は、さらに、突然変異イムノコンジュゲートを産生するための方法、それを含む薬学的組成物、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
T細胞増殖因子(TCGF)としても公知のインターロイキン-2(IL-2)は、リンパ球生成、生存およびホメオスタシスに中心的な役割を果たす15.5kDaの球状糖タンパク質である。IL-2は、133アミノ酸長を有し、その機能に不可欠な四次構造を形成する4つの逆平行両親媒性α-ヘリックスからなる(Smith、Science 240、1169-76(1988);Bazan、Science 257、410-413(1992))。異なる種由来のIL-2の配列は、NCBI RefSeq番号NP000577(ヒト)、NP032392(マウス)、NP446288(ラット)またはNP517425(チンパンジー)に見出される。
【0003】
IL-2は、IL-2受容体(IL-2R)への結合によりその作用を媒介し、IL-2Rは、最大3つの個別のサブユニットからなり、これらのサブユニットの異なる会合が、IL-2に対する親和性の異なる受容体形態を産生することができる。α(CD25)、β(CD122)、およびγ(γc、CD132)サブユニットの会合の結果、IL-2に対するトリマー性高親和性受容体が生じる。βおよびγサブユニットからなるダイマー性IL-2受容体は、中親和性IL-2Rと呼ばれる。αサブユニットは、モノマー性低親和性IL-2受容体を形成する。ダイマー性中親和性IL-2受容体は、トリマー性高親和性受容体の約100分の1の親和性でIL-2と結合するものの、ダイマー性およびトリマー性IL-2受容体変異体の両方は、IL-2が結合するとシグナルを伝達することができる(Minamiら、Annu Rev Immunol 11、245-268(1993))。したがって、α-サブユニットであるCD25は、IL-2シグナル伝達に必須ではない。CD25は、その受容体に高親和性の結合性を付与するのに対し、βサブユニットであるCD122およびγ-サブユニットは、シグナル伝達に重要である(Kriegら、Proc Natl Acad Sci 107、11906-11(2010))。CD25を含むトリマー性IL-2受容体は、(静止)CD4+フォークヘッドボックスP3(FoxP3)+制御性T(Treg)細胞により発現される。トリマー性IL-2受容体は、通常型活性化T細胞上にも一過性に誘導されるのに対し、これらの細胞は、静止状態ではダイマー性IL-2受容体だけを発現する。Treg細胞は、最高レベルのCD25をインビボで一貫して発現する(Fontenotら、Nature Immunol 6、1142-51(2005))。
【0004】
IL-2は、主に、活性化T細胞、特にCD4+ヘルパーT細胞によって合成される。これは、T細胞の増殖および分化を刺激し、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の生成および末梢血リンパ球の細胞傷害性細胞およびリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞への分化を誘導し、T細胞によるサイトカインおよび細胞溶解分子の発現を促進し、B細胞の増殖および分化ならびにB細胞による免疫グロブリンの合成を推進し、ナチュラルキラー(NK)細胞の生成、増殖および活性化を刺激する(例えば、Waldmann、Nat Rev Immunol 6、595-601(2009);OlejniczakおよびKasprzak、Med Sci Monit 14、RA179-89(2008);Malek、Annu Rev Immunol 26、453-79(2008)に概説がある)。
【0005】
IL-2がリンパ球集団をインビボで増殖させ、これらの細胞のエフェクター機能を増加できることにより、IL-2に抗腫瘍効果が付与され、IL-2免疫療法がある特定の転移がんのための魅力的な治療選択肢になる。その結果、高用量IL-2治療は、転移性腎細胞癌および悪性メラノーマの患者における使用のために承認されている。
【0006】
しかし、IL-2は、エフェクター細胞の増殖および活性を媒介するだけでなく、末梢性免疫寛容の維持に決定的に関与する点で、免疫応答に二重の機能を有する。
【0007】
末梢性自己寛容の基礎をなす主なメカニズムは、T細胞におけるIL-2誘導性活性化誘導細胞死(AICD)である。AICDは、完全に活性化したT細胞が、CD95(Fasとしても公知)またはTNF受容体などの細胞表面発現デスレセプターの結合によりプログラム細胞死を受けるプロセスである。(IL-2への事前曝露後に)高親和性IL-2受容体を発現している増殖中の抗原活性化T細胞が、T細胞受容体(TCR)/CD3複合体を介して抗原で再刺激されると、Fasリガンド(FasL)および/または腫瘍壊死因子(TNF)の発現が誘導され、細胞がFas媒介性アポトーシスに対して感受性になる。このプロセスは、IL-2依存性であり(Lenardo、Nature 353、858-61(1991))、STAT5を介して媒介される。Tリンパ球におけるAICDプロセスにより、自己抗原だけでなく、腫瘍抗原などの明らかに宿主の構成物の一部ではない持続性抗原に対しても寛容が樹立される可能性がある。
【0008】
そのうえ、IL-2は、また、サプレッサーT細胞としても公知の末梢CD4+CD25+制御性T(Treg)細胞の維持に関与する(Fontenotら、Nature Immunol 6、1142-51(2005);D’CruzおよびKlein、Nature Immunol 6、1152-59(2005);MaloyおよびPowrie、Nature Immunol 6、1171-72(2005)。Treg細胞は、細胞間接触を通じてT細胞の助けおよび活性化を阻害することにより、またはIL-10もしくはTGF-βなどの免疫抑制サイトカインの放出を通じてのいずれかで、エフェクターT細胞がその(自己)標的を破壊するのを抑制する。Treg細胞の枯渇は、IL-2誘導性抗腫瘍免疫を高めることも示された(Imaiら、Cancer Sci 98、416-23(2007))。
【0009】
したがって、IL-2の存在下では、生成したCTLが腫瘍を自己として認識し、AICDを受ける場合があるか、または免疫応答がIL-2依存性Treg細胞により阻害される場合があるかのいずれかであるので、IL-2は、腫瘍増殖を阻害するために最適ではない。
【0010】
IL-2免疫療法に関するさらなる懸念は、組換えヒトIL-2治療により生じる副作用である。高用量IL-2治療を受けている患者は、集中監視および入院患者管理を要する、重症の心血管、肺、腎、肝、消化管、神経、皮膚、血液および全身の有害事象をしばしば経験する。これらの副作用の大部分は、いわゆる血管(または毛細血管)漏出症候群(VLS)の発生、多臓器において体液溢出をもたらす血管透過性の病的増加(例えば、肺および皮膚浮腫ならびに肝細胞損傷を引き起こす)および血管内液減少(血圧低下および心拍数における代償性増加を引き起こす)により説明することができる。IL-2の中止以外にVLSの治療はない。VLSを回避するために、患者において低用量IL-2レジメンが試験されてきたが、最適以下の治療結果という犠牲を払ったものである。VLSは、IL-2活性化NK細胞からの腫瘍壊死因子(TNF)-αなどの、炎症性サイトカインの放出によって引き起こされると考えられていたが、低~中レベルの機能性αβγIL-2受容体を発現している肺内皮細胞へのIL-2の直接結合が原因で、IL-2誘導性肺浮腫が起こったことが、最近示されている(Kriegら、Proc Nat Acad Sci USA 107、11906-11(2010))。
【0011】
IL-2免疫療法に関連するこれらの問題を克服するためにいくつかの手法が採られている。例えば、IL-2と、ある特定の抗IL-2モノクローナル抗体との組み合わせがIL-2のインビボ治療効果を高めることが見出されている(Kamimuraら、J Immunol 177、306-14(2006);Boymanら、Science 311、1924-27(2006))。代替的な手法では、IL-2の毒性を低減し、かつ/またはその有効性を増加させるために、IL-2が様々な方法で突然変異されている。Huら(Blood 101、4853-4861(2003)、米国特許公開第2003/0124678号)は、IL-2の血管透過活性を除去するためにIL-2の38位のアルギニン残基をトリプトファンにより置換した。Shanafeltら(Nature Biotechnol 18、1197-1202(2000))は、アスパラギン88をアルギニンに突然変異させて、NK細胞よりもT細胞に対する選択性を高めた。Heatonら(Cancer Res 53、2597-602(1993);米国特許第5,229,109号)は、NK細胞からの炎症性サイトカインの分泌を低減するために2つの突然変異、Arg38AlaおよびPhe42Lysを導入した。Gilliesら(米国特許公開第2007/0036752号)は、VLSを低減するために、中親和性IL-2受容体に対する親和性に寄与するIL-2の3つの残基を置換した(Asp20Thr、Asn88Arg、およびGln126Asp)。Gilliesら(WO2008/0034473)は、有効性を高めるために、アミノ酸置換Arg38TrpおよびPhe42LysによりIL-2とCD25との接触面を突然変異させて、Treg細胞のCD25との相互作用および活性化を低減した。同じ狙いで、Wittrupら(WO2009/061853)は、CD25に対して強化された親和性を有するが、この受容体を活性化しないことでアンタゴニストとして作用するIL-2突然変異体を産生した。導入された突然変異は、この受容体のβ-サブユニットおよび/またはγ-サブユニットとの相互作用を破壊することを狙いとした。
【0012】
IL-2免疫療法に関連する上記問題(VLSの誘導により引き起こされる毒性、AICDの誘導により引き起こされる腫瘍寛容、およびTreg細胞の活性化により引き起こされる免疫抑制)を克服するために設計された特定の突然変異IL-2ポリペプチドが、WO2012/107417に記載されている。IL-2の42位のフェニルアラニン残基のアラニンによる置換、45位のチロシン残基のアラニンによる置換および72位のロイシン残基のグリシンによる置換は、IL-2受容体のα-サブユニット(CD25)への突然変異IL-2ポリペプチドの結合を本質的に消失させる。
【0013】
上記手法に付け加えて、IL-2免疫療法は、例えば、腫瘍細胞上に発現した抗原に結合する抗体を含むイムノコンジュゲートの形態で、IL-2を腫瘍に選択的に標的化することにより改善され得る。いくつかのこのようなイムノコンジュゲートが、記載されている(例えば、Koら、J Immunother(2004)27、232-239;Kleinら、Oncoimmunology(2017)6(3)、e1277306参照)。
【0014】
しかし、腫瘍は、抗体の標的抗原をシェディング、突然変異または下方制御することにより、このような標的化を回避できる場合がある。そのうえ、リンパ球を活発に排除する腫瘍微小環境では、腫瘍を標的化するIL-2が、細胞傷害性Tリンパ球(CTL)などのエフェクター細胞と最適に接触するようにならない場合がある。
【0015】
したがって、IL-2免疫療法をさらに改善する必要性が残る。腫瘍標的化の問題を回避し得る手法は、IL-2をエフェクター細胞、特にCTLに直接標的化することである。
【0016】
Ghasemiらは、IL-2をナチュラルキラー(NK)細胞などのNKG2D担持細胞に標的化するための、IL-2とNKG2D結合タンパク質との融合タンパク質を記載している(Ghashemiら、Nat Comm(2016)7、12878)。
【0017】
プログラム細胞死タンパク質1(PD-1またはCD279)は、CD28、CTLA-4、ICOSおよびBTLAも含むCD28ファミリー受容体の阻害性メンバーである。PD-1は、細胞表面受容体であり、活性化B細胞、T細胞、および骨髄細胞上に発現される(Okazakiら(2002)Curr.Opin.Immunol.14:391779-82;Bennettら(2003)J Immunol 170:711-8)。PD-1の構造は、1つの免疫グロブリン可変様細胞外ドメインならびに免疫受容抑制性チロシンモチーフ(ITIM)および免疫受容スイッチ性チロシンモチーフ(ITSM)を含有する細胞質ドメインからなるモノマー性1型膜貫通タンパク質である。PD-1に対する2つのリガンド、PD-L1およびPD-L2が同定されており、これらのリガンドは、PD-1に結合するとT細胞活性化を下方制御することが示されている(Freemanら(2000)J Exp Med 192:1027-34;Latchmanら(2001)Nat Immunol 2:261-8;Carterら(2002)Eur J Immunol 32:634-43)。PD-L1およびPD-L2の両方は、PD-1に結合するが、他のCD28ファミリーメンバーに結合しないB7ホモログである。PD-1に対する1つのリガンド、PD-L1は、多種多様なヒトがんに豊富に存在する(Dongら(2002)Nat.Med 8:787-9)。PD-1とPD-L1との相互作用は、腫瘍浸潤リンパ球の減少、T細胞受容体媒介増殖の減少、およびがん性細胞による免疫回避を結果として生じる(Dongら(2003)J.MoI.Med.81:281-7;Blankら(2005)Cancer Immunol.Immunother.54:307-314;Konishiら(2004)Clin.Cancer Res.10:5094-100)。免疫抑制は、PD-1とPD-L1との局所相互作用を阻害することにより後退させることができ、PD-1とPD-L2との相互作用も同様にブロックされる場合、その効果は相加的である(Iwaiら(2002)Proc.Nat 7.Acad.ScL USA 99:12293-7;Brownら(2003)J.Immunol.170:1257-66)。
【0018】
PD-1に結合する抗体は、例えば、PCT特許出願PCT/EP2016/073248に記載されている。
【発明の概要】
【0019】
本発明は、免疫療法のために有利な特性を有する突然変異形態のIL-2を、腫瘍細胞よりむしろ細胞傷害性Tリンパ球などの免疫エフェクター細胞に直接標的化する新規な手法を提供する。免疫エフェクター細胞への標的化は、PD-1に結合する抗体への突然変異IL-2分子のコンジュゲーションにより達成される。
【0020】
本発明に使用されるIL-2突然変異体は、IL-2免疫療法に関連する問題、特に、VLSの誘導により引き起こされる毒性、AICDの誘導により引き起こされる腫瘍寛容、およびTreg細胞の活性化により引き起こされる免疫抑制を克服するために設計されている。上記の腫瘍標的化からの腫瘍の逃避を回避することに加えて、免疫エフェクター細胞へのIL-2突然変異体の標的化は、免疫抑制性Treg細胞と比べたCTLの優先的活性化をさらに増加させる場合がある。PD-1に結合する抗体を使用することにより、PD-1とそのリガンドPD-L1との相互作用により誘導されるT細胞活性抑制が、追加的に後退することで、免疫応答がさらに高まる場合がある。
【0021】
抗PD-L1抗体アテゾリズマブを含むIL-2融合タンパク質が、Chenら(Chenら、Biochem Biophys Res Comm(2016)480、160-165)により記載されている。
【0022】
注目すべきことに、PD-1に結合する抗体を含む本発明のイムノコンジュゲートは、PD-L1を標的化する類似のイムノコンジュゲートと比較して、有意に優れたインビボ抗腫瘍有効性を示す(本明細書下記の実施例3を参照されたい)。
【0023】
一般的な態様では、本発明は、PD-1に結合する抗体と、IL-2Rβγを通じてシグナル伝達するポリペプチドとを含むイムノコンジュゲートを提供する。IL-2Rβγを通じてシグナル伝達するポリペプチドは、特に、IL-2ポリペプチドまたはIL-15ポリペプチドである。第1の態様では、本発明は、突然変異IL-2ポリペプチドと、PD-1に結合する抗体とを含むイムノコンジュゲートを提供し、その際、突然変異IL-2ポリペプチドは、アミノ酸置換F42A、Y45AおよびL72G(ヒトIL-2配列、配列番号19に対する番号付け)を含むヒトIL-2分子である。
【0024】
さらなる態様では、本発明は、突然変異IL-2ポリペプチドと、PD-1に結合する抗体とを含むイムノコンジュゲートを提供し、その際、突然変異IL-2ポリペプチドは、アミノ酸置換F42A、Y45AおよびL72G(ヒトIL-2配列、配列番号19に対する番号付け)を含むヒトIL-2分子であり;抗体は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、およびKabat番号付けによる71~73位に配列番号7のアミノ酸配列を含むFR-H3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含むか、または抗体は、(a)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに(b)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0025】
別の態様では、本発明は、突然変異IL-2ポリペプチドと、PD-1に結合する抗体とを含むイムノコンジュゲートを提供し、その際、突然変異IL-2ポリペプチドは、アミノ酸置換F42A、Y45AおよびL72G(ヒトIL-2配列、配列番号19に対する番号付け)を含むヒトIL-2分子であり;抗体は、(a)配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに(b)配列番号15、配列番号16、配列番号17、および配列番号18からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0026】
本発明によるイムノコンジュゲートの一部の実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、アミノ酸置換T3Aおよび/またはアミノ酸置換C125Aをさらに含む。一部の実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、配列番号20の配列を含む。一部の実施形態では、イムノコンジュゲートは、1つ以下の突然変異IL-2ポリペプチドを含む。一部の実施形態では、抗体は、第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFcドメインを含む。一部のこのような実施形態では、Fcドメインは、IgGクラス、特にIgG1サブクラスのFcドメインであり、かつ/またはFcドメインは、ヒトFcドメインである。一部の実施形態では、抗体は、IgGクラス、特にIgG1サブクラスの免疫グロブリンである。
【0027】
イムノコンジュゲートがFcドメインを含む一部の実施形態では、Fcドメインは、Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットとの会合を促進する修飾を含む。一部の実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基が、より大きい側鎖体積を有するアミノ酸残基により置き換えられ、それにより、第2のサブユニットのCH3ドメイン内の空洞に配置可能な、第1のサブユニットのCH3ドメイン内の隆起を生成し、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基が、より小さい側鎖体積を有するアミノ酸残基により置き換えられ、それにより、内部に第1のサブユニットのCH3ドメイン内の隆起が配置可能な、第2のサブユニットのCH3ドメイン内の空洞を生成する。一部の実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、366位のスレオニン残基が、トリプトファン残基により置き換えられ(T366W)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、407位のチロシン残基が、バリン残基(Y407V)により置き換えられ、場合により、366位のスレオニン残基が、セリン残基により置き換えられ(T366S)、368位のロイシン残基が、アラニン残基により置き換えられる(L368A)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。一部のこのような実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、追加的に、354位のセリン残基が、システイン残基により置き換えられる(S354C)か、または356位のグルタミン酸残基が、システイン残基により置き換えられ(E356C)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、追加的に、349位のチロシン残基が、システイン残基により置き換えられる(Y349C)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。一部の実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、そのアミノ末端アミノ酸でFcドメインのサブユニットのうちの1つ、特にFcドメインの第1のサブユニットのカルボキシ末端アミノ酸と、場合によりリンカーペプチドを通じて融合されている。一部のこのような実施形態では、リンカーペプチドは、配列番号21のアミノ酸配列を有する。
【0028】
イムノコンジュゲートがFcドメインを含む一部の実施形態では、Fcドメインは、Fc受容体、特にFcγ受容体への結合性および/またはエフェクター機能、特に抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を低減する1つまたは複数のアミノ酸置換を含む。一部のこのような実施形態では、前記1つまたは複数のアミノ酸置換は、L234、L235、およびP329(Kabat EUインデックス番号付け)の群から選択される1つまたは複数の位置にある。一部の実施形態では、Fcドメインの各サブユニットは、アミノ酸置換L234A、L235AおよびP329G(Kabat EUインデックス番号付け)を含む。
【0029】
一部の実施形態では、本発明によるイムノコンジュゲートは、配列番号22の配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号23または配列番号24の配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、および配列番号25の配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む。一部の実施形態では、イムノコンジュゲートは、リンカー配列により繋がった突然変異IL-2ポリペプチドおよびIgG1免疫グロブリン分子から本質的になる。
【0030】
本発明は、本発明のイムノコンジュゲートをコードする1つまたは複数の単離ポリヌクレオチド、前記ポリヌクレオチドを含む1つまたは複数のベクター(特に発現ベクター)、および前記ポリヌクレオチドまたは前記ベクターを含む宿主細胞をさらに提供する。
【0031】
また、突然変異IL-2ポリペプチドと、PD-1に結合する抗体とを含むイムノコンジュゲートを産生する方法であって、(a)本発明の宿主細胞をイムノコンジュゲートの発現に適した条件で培養すること、および場合により、(b)イムノコンジュゲートを回収することを含む方法が、提供される。前記方法により産生される、突然変異IL-2ポリペプチドと、PD-1に結合する抗体とを含むイムノコンジュゲートも、本発明により提供される。
【0032】
本発明は、本発明のイムノコンジュゲートと、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物、および本発明のイムノコンジュゲートを使用する方法をさらに提供する。
【0033】
特に、本発明は、医薬としての使用のため、および疾患の治療における使用のための、本発明によるイムノコンジュゲートを包含する。特定の実施形態では、前記疾患は、がんである。
【0034】
また、疾患の治療のための医薬の製造における本発明によるイムノコンジュゲートの使用が、本発明により包含される。特定の実施形態では、前記疾患は、がんである。
【0035】
さらに、個体における疾患を治療する方法であって、薬学的に許容される形態で本発明によるイムノコンジュゲートを含む治療的有効量の組成物を前記個体に投与することを含む方法が提供される。特定の実施形態では、前記疾患は、がんである。
【0036】
また、個体の免疫系を刺激する方法であって、薬学的に許容される形態で本発明によるイムノコンジュゲートを含む有効量の組成物を前記個体に投与することを含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】突然変異IL-2ポリペプチドを含むIgG-IL-2イムノコンジュゲート形式の略図である。
【
図2】PD1 IgGおよびCEA-IL2vと比較した、PHA活性化PBMC内のCD4 T細胞(A)およびCD8 T細胞(B)へのPD1-IL2vの結合性を示す図である。
【
図3】PD1-IL2v、CEA-IL2v、およびPD1 IgG+CEA-IL2vの組み合わせによる、PBMC内のNK細胞(A)、CD8 T細胞(B)およびCD4 T細胞(C)の増殖を示す図である。PD1 IgGをコントロールとして含めた。
【
図4】PD1-IL2v、CEA-IL2v、およびPD1 IgG+CEA-IL2vの組み合わせによる、PBMC内のNK細胞(A)、CD8 T細胞(B)およびCD4 T細胞(C)の活性化を示す図である。PD1 IgGをコントロールとして含めた。NK細胞、CD4 T細胞およびCD8 T細胞上のCD25の発現を活性化マーカーとして使用した。
【
図5】PD1-IL2v、CEA-IL2v、およびPD1 IgG+CEA-IL2の組み合わせによるPBMC内のPHA予備活性化CD8 T細胞(A)およびCD4 T細胞(B)の増殖を示す図である。PD1 IgGをコントロールとして含めた。
【
図6】PD1-IL2v、CEA-IL2v、およびPD1 IgG+CEA-IL2vの組み合わせによるPBMC内のPHA予備刺激CD8 T細胞(A)およびCD4 T細胞(B)の活性化を示す図である。PD1 IgGをコントロールとして含めた。CD4 T細胞およびCD8 T細胞上のCD25発現を活性化のマーカーとして使用した。
【
図7】2日後に測定された、CEA-IL2vと比較したPD-L1-IL2v(A)、またはPD1-IL2vと比較したPD-L1-IL2v(B)により誘導されるヒトNK細胞株NK92の増殖を示す図である。
【
図8】PD-L1陽性マウスT細胞株CTLL2へのPD-L1-muIL2vおよびPD-L1 muIgG1の結合性を示す図である。
【
図9】3日後に決定された、CEA-muIL2vと比較したPD1-muIL2v(A)、またはPD-L1-muIL2vと比較したPD1-muIL2v(B)により誘導されるマウスPD-L1陽性T細胞株CTLL2の増殖を示す図である。
【
図10】単一薬剤としてPD1-IL2v、PD-L1-IL2vまたはPD1抗体およびPD-L1抗体を用いた有効性実験の結果を示す図である。Panc02-H7-Flucトランスフェクタント膵臓癌細胞株をBlack 6マウスの膵臓に注射して、膵臓同所性同系モデルにおける生存を研究した。
【
図11】単一薬剤としてPD1-IL2v、PD-L1-IL2vまたはPD1抗体およびPD-L1抗体を用いた有効性実験の結果を示す図である。Panc02-H7-Flucトランスフェクタント膵臓癌細胞株をBlack 6マウスの膵臓に注射して、膵臓同所性同系モデルにおける生存をバイオルミネッセンスにより研究した。
【
図12】単独、IL-2vとの組み合わせ、または融合タンパク質としての抗PD-1または抗PD-L1のいずれかの存在下でCMV免疫原性タンパク質pp65を用いて48時間リコールしたときの、CD4 T細胞がIL-2(A)、IL-2およびIFN-γ(B)またはIFN-γ(C)を分泌する能力を示す図である。
【
図13】単独、IL-2vとの組み合わせ、または融合タンパク質としての抗PD-1または抗PD-L1のいずれかの存在下でCMV免疫原性タンパク質pp65を用いて48時間リコールしたときの、IL-2のみ(A)、IL-2およびIFN-γの両方(B)、またはIFN-γのみ(CおよびD)を分泌するウイルス特異的CD4 T細胞の分化状態を示す図である。
【
図14】活性化通常型T細胞および制御性T細胞へのPD1およびPD1-IL2vの競合結合アッセイを示す図である。T
regと比べたT
conv上の結合頻度のデルタ(
図14A)およびT
regと比べたT
convへの結合性(
図14B)。
【
図15】PD1-IL2vがT
convのT
reg抑制を後退させることを示す図である。共培養の5日後のT
regによるグランザイムB(
図15A)およびT
convにより分泌されるインターフェロン-γ(
図15B)の抑制パーセンテージ。
【
図16】muPD1-IL2vをmuFAP-IL2vおよびmuPD-1抗体と、単一薬剤としておよび組み合わせで比較する有効性実験の結果を示す図である。
【
図17】muPD1-IL2vをFAP-IL2v、muPD1およびそれらの組み合わせと比較する有効性実験の結果を示す図である。
【
図18A】抗マウスCD3について染色された膵臓腫瘍の免疫組織化学画像を示す図である。
【
図19】抗マウスPD1について染色された膵臓腫瘍の免疫組織化学画像を示す図である。
【
図20】抗マウスICOSについて染色された膵臓腫瘍の免疫組織化学画像を示す図である。
【
図21】muPD1-IL2vをFAP-IL2vおよびmuPD1と、単一薬剤としておよび組み合わせで比較する有効性実験の結果を示す図である。
【
図22】muPD1-IL2vをFAP-IL2v、muPD1および2つの異なる用量のそれらの組み合わせと比較する有効性実験の結果を示す図である。
【
図23】抗マウスCD3について染色された膵臓腫瘍の免疫組織化学画像を示す図である。
【
図24A】抗マウスCD8について染色された膵臓腫瘍の免疫組織化学画像を示す図である。
【
図25A】抗グランザイムBについて染色された膵臓腫瘍の免疫組織化学画像を示す図である。
【
図25B】グランザイムBマーカー面積の定量分析を示す図である。
【
図26A】抗マウスPD1について染色された膵臓腫瘍の免疫組織化学画像を示す図である。
【
図26B】PD1陽性細胞定量分析を示す図である。
【
図27】A-Dは、単独、IL-2vとの組み合わせ、または融合タンパク質としてのいずれかの抗PD-1の存在下でCMV免疫原性タンパク質pp65を用いて48時間リコールしたときに、CD4 T細胞がIL-2(A)、IL-2およびIFN-γ(B)またはIFN-γ(C)を分泌する能力、ならびに増殖する(D)能力を示す図である。
【
図28】単独、IL-2vとの組み合わせ、または融合タンパク質としてのいずれかの抗PD-1の存在下でCMV免疫原性タンパク質pp65を用いて48時間リコールしたときの、CD45ROおよびCD62Lの発現によるIFN-γ分泌ウイルス特異的CD4 T細胞の分化状態。
【
図29】A-Dは、第1のドナーの静止PBMCに対するSTAT5アッセイを示す図である(CD8 T細胞(A)、NK細胞(B)、CD4 T細胞(C)および制御性T細胞(D))。
【
図30】A-Dは、第2のドナーの静止PBMCに対するSTAT5アッセイを示す図である(CD4 T細胞(A)、CD8 T細胞(B)、制御性T細胞(C)およびNK細胞(D))。
【
図31】A-Dは、第3のドナーの静止PBMCに対するSTAT5アッセイを示す図である(CD8 T細胞(A)、NK細胞(B)、CD4 T細胞(C)および制御性T細胞(D))。
【
図32】A-Dは、第4のドナーの静止PBMCに対するSTAT5アッセイを示す図である(CD8 T細胞(A)、NK細胞(B)、CD4 T細胞(C)および制御性T細胞(D)。
【発明を実施するための形態】
【0038】
発明の詳細な説明
定義
以下に特に定義されない限り、用語は、本明細書において当該技術分野で一般的に使用されるように使用される。
【0039】
本明細書に使用される「インターロイキン-2」または「IL-2」という用語は、別途指示がない限り、霊長類(例えば、ヒト)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳類を含む任意の脊椎動物起源の任意のネイティブなIL-2を指す。本用語は、プロセシングされていないIL-2および細胞中でのプロセシングの結果として生じた任意の形態のIL-2を包含する。本用語は、また、IL-2の天然に存在する変異体、例えば、スプライスバリアントまたは対立遺伝子変異体を包含する。例示的なヒトIL-2のアミノ酸配列は、配列番号19に示される。プロセシングされていないヒトIL-2は、追加的に、成熟IL-2分子に不在である、配列番号26の配列を有する20アミノ酸のシグナルペプチドをN末端に含む。
【0040】
本明細書に使用される「IL-2突然変異体」または「突然変異IL-2ポリペプチド」という用語は、完全長IL-2、IL-2のトランケーションされた形態およびIL-2が融合または化学コンジュゲーションなどにより別の分子と連結された形態を含む、IL-2分子の様々な形態の任意の突然変異体形態を包含することが意図される。IL-2に関連して使用される場合の「完全長」は、成熟した天然長IL-2分子を意味することが意図される。例えば、完全長ヒトIL-2は、アミノ酸133個を有する分子(例えば、配列番号19参照)を指す。様々な形態のIL-2突然変異体が、IL-2とCD25との相互作用に影響する少なくとも1つのアミノ酸突然変異を有することで特徴付けられる。この突然変異は、通常その位置に置かれる野生型アミノ酸残基の置換、欠失、トランケーションまたは修飾を伴い得る。アミノ酸置換により得られた突然変異体が好ましい。別途指示がない限り、IL-2突然変異体は、本明細書において突然変異IL-2ペプチド配列、突然変異IL-2ポリペプチド、突然変異IL-2タンパク質または突然変異IL-2アナログと呼ばれる場合がある。
【0041】
IL-2の様々な形態の名称は、本明細書において、配列番号19に示される配列を基準として付けられる。同じ突然変異を示すために、本明細書において様々な名称が使用され得る。例えば、42位のフェニルアラニンからアラニンへの突然変異は、42A、A42、A42、F42A、またはPhe42Alaと表示することができる。
【0042】
本明細書に使用される「ヒトIL-2分子」により、配列番号19のヒトIL-2配列と少なくとも約90%、少なくとも約91%、少なくとも約92%、少なくとも約93%、少なくとも約94%、少なくとも約95%または少なくとも約96%同一であるアミノ酸配列を含むIL-2分子が意味される。特に、配列同一性は、少なくとも約95%であり、より詳細には少なくとも約96%である。特定の実施形態では、ヒトIL-2分子は、完全長IL-2分子である。
【0043】
本明細書に使用される「アミノ酸突然変異」という用語は、アミノ酸置換、欠失、挿入、および修飾を包含することが意味される。最終コンストラクトが所望の特徴、例えば、CD25との低減した結合性を有するならば、最終コンストラクトに到達するために置換、欠失、挿入、および修飾の任意の組み合わせを行うことができる。アミノ酸配列の欠失および挿入は、アミノ末端および/またはカルボキシ末端の欠失ならびにアミノ酸の挿入を含む。末端欠失の例は、完全長ヒトIL-2の1位におけるアラニン残基の欠失である。好ましいアミノ酸突然変異は、アミノ酸置換である。例えば、IL-2ポリペプチドの結合特徴を変えるために、非保存的アミノ酸置換、すなわち、1つのアミノ酸を、異なる構造および/または化学特性を有する別のアミノ酸により置き換えることが、特に好ましい。好ましいアミノ酸置換には、親水性アミノ酸により疎水性アミノ酸を置き換えることが含まれる。アミノ酸置換には、天然に存在しないアミノ酸による、または20種の標準アミノ酸の天然に存在するアミノ酸誘導体(例えば、4-ヒドロキシプロリン、3-メチルヒスチジン、オルニチン、ホモセリン、5-ヒドロキシリジン)による置き換えが含まれる。アミノ酸突然変異は、当該技術分野で周知の遺伝的方法または化学的方法を使用して生成することができる。遺伝的方法には、部位特異的突然変異誘発、PCR、遺伝子合成などが含まれる場合がある。化学修飾などの、遺伝子工学以外の方法によりアミノ酸の側鎖基を変える方法も有用であり得ると考えられている。
【0044】
本明細書に使用される、IL-2の「野生型」形態は、野生型形態が突然変異IL-2ポリペプチドの各アミノ酸位置で野生型アミノ酸を有することを除き、それ以外は突然変異IL-2ポリペプチドと同じであるIL-2の形態である。例えば、IL-2突然変異体が完全長IL-2(すなわち、任意の他の分子と融合もコンジュゲートもしていないIL-2)ならば、この突然変異体の野生型形態は、完全長のネイティブなIL-2である。IL-2突然変異体が、IL-2と、IL-2の下流にコードされる別のポリペプチドとの間の融合体ならば(例えば、抗体鎖)、このIL-2突然変異体の野生型形態は、同じ下流のポリペプチドと融合された、野生型アミノ酸配列を有するIL-2である。さらに、IL-2突然変異体が、IL-2のトランケーションされた形態(IL-2のトランケーションされていない部分内に突然変異または修飾された配列)ならば、このIL-2突然変異体の野生型形態は、野生型配列を有する、同じようにトランケーションされたIL-2である。IL-2突然変異体の様々な形態のIL-2受容体結合親和性または生物活性をIL-2の対応する野生型形態と比較するために、野生型という用語は、例えば、ヒトIL-2の残基125に対応する位置のシステインのアラニンへの置換などの、天然に存在するネイティブなIL-2と比較してIL-2受容体への結合性に影響しない1つまたは複数のアミノ酸突然変異を含むIL-2の形態を包含する。一部の実施形態では、本発明のための野生型IL-2は、アミノ酸置換C125Aを含む(配列番号29参照)。本発明によるある特定の実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドが比較される野生型IL-2ポリペプチドは、配列番号19のアミノ酸配列を含む。他の実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドが比較される野生型IL-2ポリペプチドは、配列番号29のアミノ酸配列を含む。
【0045】
本明細書に使用される「CD25」または「IL-2受容体のα-サブユニット」という用語は、別途指示がない限り、霊長類(例えば、ヒト)およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)などの哺乳類を含む、任意の脊椎動物起源の任意のネイティブなCD25を指す。本用語は、「完全長」のプロセシングされていないCD25および細胞中でのプロセシングに起因するCD25の任意の形態を包含する。本用語は、また、CD25の天然に存在する変異体、例えばスプライスバリアントまたは対立遺伝子変異体を包含する。ある特定の実施形態では、CD25は、ヒトCD25である。ヒトCD25のアミノ酸配列は、例えば、UniProt登録番号P01589(バージョン185)に見出される。
【0046】
本明細書に使用される「高親和性IL-2受容体」という用語は、受容体γ-サブユニット(共通サイトカイン受容体γ-サブユニット、γc、またはCD132としても公知、UniProt登録番号P14784(バージョン192)参照)、受容体β-サブユニット(CD122またはp70としても公知、UniProt登録番号P31785(バージョン197)参照)および受容体α-サブユニット(CD25またはp55としても公知、UniProt登録番号P01589(バージョン185)参照)からなる、IL-2受容体のヘテロトリマー形態を指す。対照的に、「中親和性IL-2受容体」という用語は、α-サブユニットなしでγ-サブユニットおよびβ-サブユニットだけを含むIL-2受容体を指す(概説については、例えば、OlejniczakおよびKasprzak、Med Sci Monit 14、RA179-189(2008)を参照されたい)。
【0047】
「親和性」は、分子(例えば、受容体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、リガンド)との間の非共有結合的相互作用の合計の強度を指す。特に示さない限り、本明細書に使用される「結合親和性」は、結合ペアのメンバーの間(例えば、抗原結合部分および抗原、または受容体およびそのリガンド)の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般的に、解離速度定数と会合速度定数と(それぞれkoffおよびkon)の比である、解離定数(KD)により表すことができる。したがって、速度定数の比が同じままである限り、同等の親和性は、異なる速度定数を含む場合がある。親和性は、本明細書に記載される方法を含む、当該技術分野で公知の十分に確立された方法により測定することができる。親和性を測定するための特定の方法は、表面プラズモン共鳴(SPR)である。
【0048】
IL-2受容体の様々な形態に対する突然変異または野生型IL-2ポリペプチドの親和性は、表面プラズモン共鳴(SPR)により、WO2012/107417に示される方法に従って、BIAcore装置(GE Healthcare)などの標準的な計装を使用して決定することができ、そのような受容体サブユニットは、組換え発現により得られる場合がある(例えば、Shanafeltら、Nature Biotechnol 18、1197-1202(2000)を参照されたい)。あるいは、IL-2受容体の異なる形態に対するIL-2突然変異体の結合親和性は、受容体の1つまたは他のこのような形態を発現することが公知の細胞株を使用して評価される場合がある。結合親和性を測定するための具体的な例証的および例示的の実施形態は、本明細書に後述される。
【0049】
「制御性T細胞」または「Treg細胞」により、他のT細胞の応答を抑制することができる特殊な種類のCD4+ T細胞が意味される。Treg細胞は、IL-2受容体のα-サブユニット(CD25)および転写因子フォークヘッドボックスP3(FOXP3)の発現により特徴付けられ(Sakaguchi、Annu Rev Immunol 22、531-62(2004))、腫瘍により発現される抗原を含む、抗原に対する末梢性自己寛容の誘導および維持に重要な役割を果たす。Treg細胞は、その機能および発生ならびにその抑制特徴の誘導のためにIL-2を必要とする。
【0050】
本明細書に使用される「エフェクター細胞」という用語は、IL-2の細胞傷害効果を媒介するリンパ球集団を指す。エフェクター細胞には、CD8+細胞傷害性T細胞、NK細胞、リンホカイン活性化キラー(LAK)細胞およびマクロファージ/単球などのエフェクターT細胞が含まれる。
【0051】
本明細書に使用される、「PD1」、「ヒトPD1」、「PD-1」または「ヒトPD-1」という用語(プログラム細胞死タンパク質1、またはプログラム死1としても公知)は、ヒトタンパク質PD1(配列番号27、シグナル配列を有さないタンパク質)/(配列番号28、シグナル配列を有するタンパク質)を指す。UniProt登録番号Q15116(バージョン156)も参照されたい。本明細書に使用される、「PD-1に結合性の」、「PD-1と特異的に結合性の」、「PD-1に結合する」抗体または「抗PD-1抗体」は、PD-1、特に細胞表面の発現されたPD-1ポリペプチドと十分な親和性で結合することが可能なことにより、PD-1の標的化における診断および/または治療剤として有用な抗体を指す。一実施形態では、無関係の非PD-1タンパク質に対する抗PD-1抗体の結合性の程度は、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)もしくはフローサイトメトリー(FACS)により、またはBiacore(登録商標)システムなどのバイオセンサーシステムを使用する表面プラズモン共鳴アッセイにより測定するとき、PD-1に対する抗体の結合性の約10%未満である。ある特定の実施形態では、PD-1に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)という、ヒトPD-1に対する結合性についての結合親和性のKD値を有する。一実施形態では、結合親和性のKD値は、ヒトPD-1の細胞外ドメイン(ECD)(PD-1-ECD、配列番号43参照)を抗原として使用する表面プラズモン共鳴アッセイで決定される。
【0052】
「特異的結合」により、結合が抗原に選択的であり、望まれないまたは非特異的な相互作用と識別できることが意味される。抗体が特異的抗原(例えば、PD-1)に結合する能力は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)または当業者が精通している他の技術のいずれか、例えば、表面プラズモン共鳴(SPR)技術(例えば、BIAcore装置を用いる分析)(Liljebladら、Glyco J 17、323-329(2000))および伝統的な結合アッセイ(Heeley、Endocr Res 28、217-229(2002))により測定することができる。一実施形態では、無関係なタンパク質に対する抗体の結合性の程度は、例えば、SPRにより測定されるような、抗原に対する抗体の結合性の約10%未満である。本明細書に記載されるイムノコンジュゲートに含まれる抗体は、PD-1と特異的に結合する。
【0053】
本明細書に使用される、「ポリペプチド」という用語は、アミド結合(ペプチド結合としても公知)により直鎖的に連結されたモノマー(アミノ酸)で構成される分子を指す。「ポリペプチド」という用語は、アミノ酸が2つ以上の任意の鎖を指すのであって、特定長の産物を指すわけではない。したがって、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、またはアミノ酸が2つ以上の鎖を指すために使用される任意の他の用語が、「ポリペプチド」の定義に含まれ、「ポリペプチド」という用語は、これらの用語のいずれかの代わりに、またはそれと互換的に使用され得る。「ポリペプチド」という用語は、また、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護/ブロッキング基による誘導体化、タンパク質分解切断、または天然に存在しないアミノ酸による修飾を含むが、それに限定されない、ポリペプチドの発現後修飾の産物を指すことが意図される。ポリペプチドは、天然の生物学的供給源に由来するか、または組換え技術により産生される場合があるが、指定された核酸配列から必ずしも翻訳されるわけではない。これは、化学合成を含む任意の方法で生成され得る。ポリペプチドは、所定の三次元構造を有する場合があるものの、必ずしもそのような構造を有するわけではない。所定の三次元構造を有するポリペプチドは、フォールディングしていると呼ばれ、所定の三次元構造を有さずに、多数の異なるコンフォメーションを採用することができるポリペプチドは、フォールディングしていないと呼ばれる。
【0054】
「単離」ポリペプチドもしくは変異体、またはその誘導体により、その自然ミリューにないポリペプチドが意図される。特定の精製レベルは、必要とされない。例えば、単離ポリペプチドは、そのネイティブまたは自然環境から取り出すことができる。宿主細胞中に発現される、組換え産生ポリペプチドおよびタンパク質は、任意の適切な技術により分離、分画、または部分的もしくは実質的に精製されたネイティブまたは組換えポリペプチドであるとして、本発明の目的で単離されたと見なされる。
【0055】
参照ポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一パーセント(%)」は、配列を整列させ、必要に応じてギャップを導入して、最大配列同一パーセントを達成した後で、いかなる保存的置換も配列同一性の一部として考慮せずに、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である、候補配列中のアミノ酸残基のパーセントとして定義される。アミノ酸配列同一パーセントを決定するための整列は、当該技術分野における技能の範囲内である様々な方法で、例えば、BLAST、BLAST-2、Clustal W、Megalign(DNASTAR)ソフトウェアまたはFASTAプログラムパッケージなどの公的に入手可能なコンピューターソフトウェアを使用して達成することができる。当業者は、比較される配列の完全長にわたり最大の整列を達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列を整列させるために適したパラメーターを決定することができる。しかし、本明細書における目的のために、アミノ酸配列同一%の値は、FASTAパッケージバージョン36.3.8c以降のggsearchプログラムを使用してBLOSUM50比較行列を用いて生成される。FASTAプログラムパッケージは、W.R.PearsonおよびD.J.Lipman(1988)、「Improved Tools for Biological Sequence Analysis」、PNAS 85:2444-2448;W.R.Pearson(1996)「Effective protein sequence comparison」Meth.Enzymol.266:227-258;およびPearsonら(1997)Genomics 46:24-36により著作されたものであり、http://fasta.bioch.virginia.edu/fasta_www2/fasta_down.shtmlから公的に利用可能である。あるいは、局所的ではなく大域的整列が行われることを保証するために、http://fasta.bioch.virginia.edu/fasta_www2/index.cgiからアクセス可能な公的サーバーを使用して、ggsearch(global protein:protein)プログラムおよびデフォルトのオプション(BLOSUM50;open:-10;ext:-2;Ktup=2)を使用して配列を比較することができる。アミノ酸同一パーセントは、出力整列ヘッダー中に与えられる。
【0056】
「ポリヌクレオチド」という用語は、単離核酸分子またはコンストラクト、例えば、メッセンジャーRNA(mRNA)、ウイルス由来RNA、またはプラスミドDNA(pDNA)を指す。ポリヌクレオチドは、一般的ホスホジエステル結合または非一般的結合(例えば、ペプチド核酸(PNA)などに見られるアミド結合を含み得る。「核酸分子」という用語は、ポリヌクレオチド中に存在する任意の1つまたは複数の核酸セグメント、例えば、DNAまたはRNA断片を指す。
【0057】
「単離」核酸分子またはポリヌクレオチドにより、そのネイティブ環境から取り出された核酸分子、DNAまたはRNAが意図される。例えば、ベクター中に含有されるポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドは、本発明の目的で単離されていると見なされる。単離ポリヌクレオチドのさらなる例には、異種宿主細胞中に維持される組換えポリヌクレオチドまたは溶液中の(部分的または実質的に)精製されたポリヌクレオチドが含まれる。単離ポリヌクレオチドには、通常、ポリヌクレオチド分子を含有する細胞中に含有されるポリヌクレオチド分子が含まれるが、ポリヌクレオチド分子は、染色体外またはその自然の染色体位置と異なる染色体位置に存在する。単離RNA分子には、本発明のインビボまたはインビトロRNA転写物のみならず、プラス鎖およびマイナス鎖形態ならびに二本鎖形態が含まれる。本発明による単離ポリヌクレオチドまたは核酸には、合成的に産生されたこのような分子がさらに含まれる。加えて、ポリヌクレオチドまたは核酸は、プロモーター、リボソーム結合部位、または転写ターミネーターなどの調節エレメントの場合がある、またはそれを含む場合がある。
【0058】
「[例えば、本発明のイムノコンジュゲート]をコードする単離ポリヌクレオチド(または核酸)」は、抗体重鎖および軽鎖ならびに/またはIL-2ポリペプチド(もしくはその断片)をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチド分子を、単一のベクターまたは別々のベクター中のこのようなポリヌクレオチド分子および宿主細胞中の1つまたは複数の位置に存在するこのような核酸分子を含めて、指す。
【0059】
「発現カセット」という用語は、標的細胞における特定の核酸の転写を可能にする一連の特定の核酸エレメントを用いて組換え的または合成的に生成されたポリヌクレオチドを指す。組換え発現カセットは、プラスミド、染色体、ミトコンドリアDNA、色素体DNA、ウイルス、または核酸断片内に組み込むことができる。典型的には、発現ベクターの組換え発現カセット部分は、数ある配列の中でとりわけ、転写すべき核酸配列およびプロモーターを含む。ある特定の実施形態では、発現カセットは、本発明のイムノコンジュゲートまたはその断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む。
【0060】
「ベクター」または「発現ベクター」という用語は、細胞においてそれが動作可能に関連する特定の遺伝子を導入し、その発現を指示するために使用されるDNA分子を指す。本用語には、自己複製核酸構造としてのベクターおよびそれが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターが含まれる。本発明の発現ベクターは、発現カセットを含む。発現ベクターは、多量の安定mRNAの転写を可能にする。発現ベクターが細胞内部に入った後、遺伝子によりコードされるリボ核酸分子またはタンパク質が、細胞転写および/または翻訳機構により産生される。一実施形態では、本発明の発現ベクターは、本発明のイムノコンジュゲートまたはその断片をコードするポリヌクレオチド配列を含む発現カセットを含む。
【0061】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」、および「宿主細胞培養物」という用語は、互換的に使用され、外因性核酸が導入された細胞を、このような細胞の子孫を含めて指す。宿主細胞には、初代形質転換細胞および継代回数に関係なくそれに由来する子孫が含まれる「形質転換体」および「形質転換細胞」が含まれる。子孫は、親細胞と核酸含有量が完全には同一でない場合があり、突然変異を含有し得る。本来の形質転換細胞においてスクリーニングまたは選択されたのと同じ機能または生物活性を有する突然変異子孫が、本明細書に含まれる。宿主細胞は、本発明のイムノコンジュゲートを生成するために使用することができる任意の種類の細胞系である。宿主細胞には、培養細胞、例えば、いくつかだけを挙げるならばHEK細胞、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞またはハイブリドーマ細胞などの哺乳類培養細胞、酵母細胞、昆虫細胞、および植物細胞だけでなく、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物または培養植物もしくは動物組織内に含まれる細胞が含まれる。
【0062】
本明細書における「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および所望の抗原結合活性を示す限り抗体断片を含むが、それに限定されない、様々な抗体構造を包含する。
【0063】
本明細書に使用される「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集団から得られる抗体を指し、すなわち、集団中に含まれる個別の抗体は、例えば、天然に存在する突然変異を含有する、またはモノクローナル抗体調製物の精製の間に生じる、可能性のある変異抗体(このような変異体は、一般的に少量存在する)を除き、同一であり、かつ/または同じエピトープに結合する。典型的には、異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物と対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。したがって、修飾語「モノクローナル」は、実質的に均一な抗体集団から得られるという抗体の特性を示すのであって、任意の特定の方法により抗体を産生することを必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明により使用されるべきモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージ-ディスプレイ法、およびヒト免疫グロブリン座位の全てまたは一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含むが、それに限定されない多様な技術により製造される場合があり、モノクローナル抗体を製造するための、このような方法および他の例示的な方法が、本明細書に記載される。
【0064】
「単離」抗体は、その自然環境の成分から分離された抗体、すなわち、その自然ミリューにない抗体である。特定の精製レベルは、必要とされない。例えば、単離抗体は、そのネイティブまたは自然環境から取り出すことができる。宿主細胞において発現された、組換え産生された抗体は、任意の適切な技術により分離、分画、または部分的もしくは実質的に精製されたネイティブまたは組換え抗体と同様に、本発明の目的で単離されたと見なされる。このように、本発明のイムノコンジュゲートは、単離されている。一部の実施形態では、抗体は、例えば、電気泳動法(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動法(IEF)、キャピラリー電気泳動法)またはクロマトグラフィー法(例えば、イオン交換もしくは逆相HPLC)により決定されるとき、95%または99%よりも高い純度に精製される。抗体の純度の評定のための方法の概説については、例えば、Flatmanら、J.Chromatogr.B 848:79-87(2007)を参照されたい。
【0065】
「完全長抗体」、「インタクトな抗体」、および「全抗体」という用語は、ネイティブな抗体構造に実質的に類似する構造を有する抗体を指すために、本明細書において互換的に使用される。
【0066】
「抗体断片」は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部分を含む、インタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例には、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2、ダイアボディ、直鎖状抗体、単鎖抗体分子(例えば、scFv)、および単一ドメイン抗体が含まれるが、それに限定されない。ある特定の抗体断片の概説については、HolligerおよびHudson、Nature Biotechnology 23:1126-1136(2005)を参照されたい。scFv断片の概説については、例えば、Plueckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、113巻、RosenburgおよびMoore編、Springer-Verlag、New York、269-315頁(1994)を参照されたく;また、WO93/16185;ならびに米国特許第5,571,894号および同第5,587,458号を参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、増加したインビボ半減期を有するFabおよびF(ab’)2断片の議論については、米国特許第5,869,046号を参照されたい。ダイアボディは、二価または二重特異性であり得る2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、EP404,097;WO1993/01161;Hudsonら、Nat Med 9、129-134(2003);およびHollingerら、Proc Natl Acad Sci USA 90、6444-6448(1993)を参照されたい。トリアボディおよびテトラボディは、また、Hudsonら、Nat Med 9、129-134(2003)に記載されている。単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全てもしくは一部分または軽鎖可変ドメインの全てもしくは一部分を含む抗体断片である。ある特定の実施形態では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis、Inc.、Waltham、MA;例えば、米国特許第6,248,516 B1号参照)。抗体断片は、インタクトな抗体のタンパク質分解消化を含むが、それに限定されない、様々な技術ならびに本明細書に記載される組換え宿主細胞(例えば、大腸菌(E.coli)またはファージ)による産生によって製造することができる。
【0067】
「免疫グロブリン分子」という用語は、天然に存在する抗体の構造を有するタンパク質を指す。例えば、IgGクラスの免疫グロブリンは、2つの軽鎖および2つの重鎖がジスルフィド結合したもので構成される約150,000ダルトンのヘテロテトラマー性糖タンパク質である。N末端からC末端に、各重鎖は、可変重鎖ドメインまたは重鎖可変領域とも呼ばれる可変ドメイン(VH)に続く、重鎖定常領域とも呼ばれる3つの定常ドメイン(CH1、CH2、およびCH3)を有する。同様に、N末端からC末端に、各軽鎖は、可変軽鎖ドメインまたは軽鎖可変領域とも呼ばれる可変ドメイン(VL)に続く、軽鎖定常領域とも呼ばれる定常軽鎖(CL)ドメインを有する。免疫グロブリン重鎖は、α(IgA)、δ(IgD)、ε(IgE)、γ(IgG)、またはμ(IgM)と呼ばれる5種類のうち1つに割り当てられる場合があり、これらのうちいくつかは、サブタイプ、例えば、γ1(IgG1)、γ2(IgG2)、γ3(IgG3)、γ4(IgG4)、α1(IgA1)およびα2(IgA2)にさらに分けられる場合がある。免疫グロブリンの軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる2種類のうち1つに割り当てられる場合がある。免疫グロブリンは、本質的に、2つのFab分子およびFcドメインが免疫グロブリンヒンジ領域を介して連結したものからなる。
【0068】
「抗原結合ドメイン」という用語は、抗原の一部または全てに特異的に結合し、それと相補的な区域を含む、抗体の部分を指す。抗原結合ドメインは、例えば、1つまたは複数の抗体可変ドメイン(抗体可変領域とも呼ばれる)により提供され得る。特に、抗原結合ドメインは、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)および抗体重鎖可変ドメイン(VH)を含む。
【0069】
「可変領域」または「可変ドメイン」という用語は、抗原への抗体の結合に関与する抗体重鎖または軽鎖のドメインを指す。ネイティブな抗体の重鎖および軽鎖の可変ドメイン(それぞれVHおよびVL)は、一般的に、各ドメインが4つの保存されたフレームワーク領域(FR)および3つの超可変領域(HVR)を含む、類似構造を有する。例えば、Kindtら、Kuby Immunology、第6版、W.H.Freeman and Co.、91頁(2007)を参照されたい。単一のVHまたはVLドメインが、抗原結合特異性を付与するために十分であり得る。可変領域配列に関連して本明細書に使用される「Kabat番号付け」は、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991)により示される番号付けシステムを指す。
【0070】
本明細書に使用される、重鎖および軽鎖の全ての定常領域およびドメインのアミノ酸位置は、本明細書において「Kabatによる番号付け」または「Kabat番号付け」と呼ばれる、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991)に記載されるKabat番号付けシステムにより番号付けされる。具体的には、Kabat番号付けシステム(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991)の647~660頁参照)は、カッパおよびラムダアイソタイプの軽鎖定常ドメインCLのために使用され、Kabat EUインデックス番号付けシステム(661~723頁参照)は、重鎖定常ドメイン(CH1、ヒンジ、CH2およびCH3)のために使用され、これは、この場合にKabat EUインデックスによる番号付け」と呼ぶことにより、本明細書においてさらに明らかにされる。
【0071】
本明細書に使用される「超可変領域」または「HVR」という用語は、配列が超可変(「相補性決定領域」または「CDR」)であり、かつ/または構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成し、かつ/または抗原接触残基(「抗原接触部」)を含有する、抗体可変ドメインの各領域を指す。一般的に、抗体は、VH(H1、H2、H3)中に3つおよびVL(L1、L2、L3)中に3つの、6つのHVRを含む。本明細書における例示的なHVRには:
(a)アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、および96~101(H3)に存在する超可変ループ(ChothiaおよびLesk、J.Mol.Biol.196:901-917(1987));
(b)アミノ酸残基24~34(L1)、50~56(L2)、89~97(L3)、31~35b(H1)、50~65(H2)、および95~102(H3)に存在するCDR(Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD(1991));
(c)アミノ酸残基27c~36(L1)、46~55(L2)、89~96(L3)、30~35b(H1)、47~58(H2)、および93~101(H3)に存在する抗原接触部(MacCallumら、J.Mol.Biol.262:732-745(1996));ならびに
(d)HVRアミノ酸残基46~56(L2)、47~56(L2)、48~56(L2)、49~56(L2)、26~35(H1)、26~35b(H1)、49~65(H2)、93~102(H3)、および94~102(H3)を含む、(a)、(b)、および/または(c)の組み合わせ
が含まれる。
【0072】
別途指示がない限り、HVR残基および可変ドメイン中の他の残基(例えば、FR残基)は、本明細書において、Kabatら、上記により番号付けされる。
【0073】
「フレームワーク」または「FR」は、超可変領域(HVR)残基以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは、一般的に、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、およびFR4からなる。したがって、HVRおよびFR配列は、一般的に、VH(またはVL)中に以下の順序で出現する:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0074】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVR由来のアミノ酸残基およびヒトFR由来のアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。ある特定の実施形態では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインのうち実質的に全てを含み、可変ドメイン中のHVR(例えば、CDR)のうち全てまたは実質的に全ては、非ヒト抗体のHVRに対応し、FRのうち全てまたは実質的に全ては、ヒト抗体のFRに対応する。このような可変ドメインは、本明細書において「ヒト化可変領域」と呼ばれる。ヒト化抗体は、場合により、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部分を含み得る。一部の実施形態では、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性または親和性を回復または改善するために、非ヒト抗体(例えば、HVR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換されている。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を受けた抗体を指す。本発明により包含される「ヒト化抗体」の他の形態は、定常領域が本来の抗体の定常領域から追加的に修飾または変更されて、特に、C1q結合性および/またはFc受容体(FcR)結合性に関して本発明による特性を生じる形態である。
【0075】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞により産生される抗体、またはヒト抗体レパートリーもしくは他のヒト抗体コード配列を利用する、非ヒト起源に由来する抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列を有する抗体である。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特異的に除外する。ある特定の実施形態では、ヒト抗体は、非ヒトトランスジェニック哺乳類、例えば、マウス、ラット、またはウサギに由来する。ある特定の実施形態では、ヒト抗体は、ハイブリドーマ細胞株に由来する。ヒト抗体ライブラリーから単離された抗体または抗体断片も、本明細書においてヒト抗体またはヒト抗体断片と見なされる。
【0076】
抗体または免疫グロブリンの「クラス」は、その重鎖により有される定常ドメインまたは定常領域の種類を指す。抗体の5つの主クラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けられる場合がある。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれα、δ、ε、γ、およびμと呼ばれる。
【0077】
本明細書における「Fcドメイン」または「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部分を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。本用語は、ネイティブな配列のFc領域および変異Fc領域を含む。IgG重鎖のFc領域の境界はわずかに異なり得るものの、ヒトIgG重鎖のFc領域は、通常、重鎖のCys226またはPro230からカルボキシル末端に伸びると定義される。しかし、宿主細胞により産生される抗体は、重鎖のC末端から1つまたは複数、特に1つまたは2つのアミノ酸の翻訳後切断を受ける場合がある。したがって、完全長重鎖をコードする特定の核酸分子の発現により、宿主細胞により産生される抗体は、完全長重鎖を含む場合または完全長重鎖の切断変異体(本明細書において「切断変異体重鎖」とも呼ばれる)を含む場合がある。これは、重鎖の最後の2つのC末端アミノ酸が、グリシン(G446)およびリジン(K447、Kabat EUインデックスによる番号付け)である場合であり得る。したがって、Fc領域のC末端リジン(Lys447)、またはC末端グリシン(Gly446)およびリジン(K447)は、存在する場合も存在しない場合もある。Fcドメイン(または本明細書に定義されるFcドメインのサブユニット)を含む重鎖のアミノ酸配列は、特に示されない限り、本明細書においてC末端グリシン-リジンジペプチドを有さずに表示される。本発明の一実施形態では、本発明によるイムノコンジュゲート中に含まれる、本明細書に詳記されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖は、追加的なC末端グリシン-リジンジペプチド(G446およびK447、Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む。本発明の一実施形態では、本発明によるイムノコンジュゲート中に含まれる、本明細書に詳記されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖は、追加的なC末端グリシン残基(G446、Kabat EUインデックスによる番号付け)を含む。本明細書に記載される薬学的組成物などの、本発明の組成物は、本発明のイムノコンジュゲートの集団を含む。イムノコンジュゲートの集団は、完全長重鎖を有する分子および切断変異重鎖を有する分子を含み得る。イムノコンジュゲートの集団は、完全長重鎖を有する分子と切断変異体重鎖を有する分子との混合物からなる場合があり、その際、イムノコンジュゲートの少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%は、切断変異重鎖を有する。本発明の一実施形態では、本発明のイムノコンジュゲートの集団を含む組成物は、本明細書に詳記されるFcドメインのサブユニットを追加的なC末端グリシン-リジンジペプチド(G446およびK447、Kabat EUインデックスによる番号付け)と共に含む重鎖を含むイムノコンジュゲートを含む。本発明の一実施形態では、本発明のイムノコンジュゲートの集団を含む組成物は、本明細書に詳記されるFcドメインのサブユニットを追加的なC末端グリシン残基(G446、Kabat EUインデックスによる番号付け)と共に含む重鎖を含むイムノコンジュゲートを含む。本発明の一実施形態では、このような組成物は、本明細書に詳記されるFcドメインのサブユニットを含む重鎖を含む分子;本明細書に詳記されるFcドメインのサブユニットを追加的なC末端グリシン残基(G446、Kabat EUインデックスによる番号付け)と共に含む重鎖を含む分子;および本明細書に詳記されるFcドメインのサブユニットを追加的なC末端グリシン-リジンジペプチド(G446およびK447、Kabat EUインデックスによる番号付け)共に含む重鎖を含む分子で構成されるイムノコンジュゲートの集団を含む。本明細書に特に詳記しない限り、Fc領域または定常領域中のアミノ酸残基の番号付けは、Kabatら、Sequences of Proteins of Immunological Interest、第5版、Public Health Service、National Institutes of Health、Bethesda、MD、1991(上記も参照)に記載されるような、EUインデックスとも呼ばれるEU番号付けシステムによる。本明細書に使用されるFcドメインの「サブユニット」は、ダイマー性Fcドメインを形成する2つのポリペプチドのうち1つ、すなわち、安定に自己会合することができる免疫グロブリン重鎖のC末端定常領域を含むポリペプチドを指す。例えば、IgG Fcドメインのサブユニットは、IgG CH2およびIgG CH3定常ドメインを含む。
【0078】
「Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットとの会合を促進する修飾」は、Fcドメインサブユニットを含むポリペプチドと、同一のポリペプチドとが会合してホモダイマーを形成するのを低減または防止する、ペプチド主鎖の操作またはFcドメインサブユニットの翻訳後修飾である。本明細書に使用される、会合を促進する修飾には、特に、会合することが望まれる2つのFcドメインサブユニット(すなわち、Fcドメインの第1のサブユニットおよび第2のサブユニット)のそれぞれに対する別々の修飾が含まれ、その際、修飾は、2つのFcドメインサブユニットの会合を促進するように互いに相補的である。例えば、会合を促進する修飾は、Fcドメインサブユニットの会合をそれぞれ立体的または静電的に好都合にするために、それらの一方または両方の構造または電荷を変える場合がある。したがって、第1のFcドメインサブユニットを含むポリペプチドと、第2のFcドメインサブユニットを含むポリペプチドとの間に(ヘテロ)ダイマー化が起き、これらのサブユニットは、各サブユニットに融合したさらなる構成成分(例えば抗原結合部分)が同じではないという意味で、非同一である場合がある。一部の実施形態では、会合を促進する修飾は、Fcドメイン中にアミノ酸突然変異、具体的にはアミノ酸置換を含む。特定の実施形態では、会合を促進する修飾は、Fcドメインの2つのサブユニットのそれぞれに別々のアミノ酸突然変異、具体的にはアミノ酸置換を含む。
【0079】
抗体に関して使用される場合の「エフェクター機能」という用語は、抗体アイソタイプにより異なる、抗体のFc領域に起因し得る生物活性を指す。抗体のエフェクター機能の例には:C1q結合および補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、サイトカイン分泌、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性抗原取り込み、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方制御、ならびにB細胞活性化が含まれる。
【0080】
抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)は、抗体で被覆された標的細胞の、免疫エフェクター細胞による溶解をもたらす免疫メカニズムである。標的細胞は、抗体またはFc領域を含むその誘導体が、一般的にFc領域のN末端側のタンパク質部分を介して特異的に結合する細胞である。本明細書に使用される「低減したADCC」という用語は、所与の時間で、標的細胞周囲の培地中に所与の抗体濃度で、上に定義されたADCCのメカニズムにより溶解される標的細胞数における減少、および/または所与の時間で、ADCCのメカニズムにより所与の数の標的細胞の溶解を達成するために必要な、標的細胞周囲の培地中の抗体濃度における増加のいずれかとして定義される。ADCCにおける低減は、同じ標準的な産生、精製、製剤および保存方法(当業者に公知の)を使用するが、操作されていない、同じ種類の宿主細胞により産生される同じ抗体により媒介されるADCCと比べたものである。例えば、ADCCを低減するアミノ酸置換をそのFcドメイン中に含む抗体により媒介されるADCCにおける低減は、Fcドメイン中にこのアミノ酸置換を有さない同じ抗体により媒介されるADCCと比べたものである。ADCCを測定するのに適したアッセイは、当該技術分野で周知である(例えば、PCT公報WO2006/082515またはPCT公報WO2012/130831を参照されたい)。
【0081】
「活性化Fc受容体」は、抗体のFcドメインによる結合後に、受容体担持細胞を刺激してエフェクター機能を遂行するシグナル伝達事象を誘発するFc受容体である。ヒト活性化Fc受容体には、FcγRIIIa(CD16a)、FcγRI(CD64)、FcγRIIa(CD32)、およびFcαRI(CD89)が含まれる。
【0082】
本明細書に使用される「操作する、操作された、操作すること」という用語は、ペプチド主鎖の任意の操作、または天然に存在するもしくは組換えのポリペプチドもしくはその断片の翻訳後修飾を含むと考えられる。操作には、アミノ酸配列、グリコシル化パターン、または個別のアミノ酸の側鎖基の修飾のみならず、これらの手法の組み合わせが含まれる。
【0083】
「低減した結合性」、例えば、Fc受容体またはCD25との低減した結合性は、例えば、SPRにより測定されたときの、それぞれの相互作用についての親和性の減少を指す。明確にするために、この用語は、ゼロ(または分析方法の検出限界未満)への親和性の低減、すなわち相互作用の完全な消失も含む。逆に、「増加した結合性」は、それぞれの相互作用についての結合親和性における増加を指す。
【0084】
本明細書に使用される、「イムノコンジュゲート」という用語は、少なくとも1つのIL-2分子および少なくとも1つの抗体を含むポリペプチド分子を指す。IL-2分子は、本明細書に記載の多様な相互作用により、多様な立体配置で抗体と繋ぐことができる。特定の実施形態では、IL-2分子は、ペプチドリンカーを介して抗体に融合されている。本発明による特定のイムノコンジュゲートは、本質的に、1つまたは複数のリンカー配列により繋がった1つのIL-2分子および抗体からなる。
【0085】
「融合されている」により、成分(例えば、抗体およびIL-2分子)が、直接または1つもしくは複数のペプチドリンカーを介してのいずれかで、ペプチド結合により連結されていることが意味される。
【0086】
本明細書に使用される、Fcドメインサブユニットなどに関する「第1の」および「第2の」という用語は、部分の各種類が1つよりも多くある場合に、識別の都合のために使用されるものである。これらの用語の使用は、そのように明白に述べられない限り、イムノコンジュゲートの特定の順序または方向を付与することを意図しない。
【0087】
薬剤の「有効量」は、それが投与される細胞または組織に生理的変化を結果として生じるために必要な量を指す。
【0088】
薬剤、例えば、薬学的組成物の「治療的有効量」は、所望の治療的または予防的結果を達成するために必要な投薬量および時間で有効な量を指す。治療的有効量の薬剤は、例えば、疾患の有害作用を除去する、減少させる、遅延させる、最小限にするまたは予防する。
【0089】
「個体」または「対象」は、哺乳類である。哺乳類には、家畜動物(例えば、ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、およびウマ)、霊長類(例えば、ヒトおよびサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、およびげっ歯類(例えば、マウスおよびラット)が含まれるが、それに限定されない。特に、個体または対象は、ヒトである。
【0090】
「薬学的組成物」という用語は、その中に含有される有効成分の生物活性を有効にさせるような形態の調製物であって、組成物が投与される対象に容認できないほど有毒な追加的な成分を含有しない調製物を指す。
【0091】
「薬学的に許容される担体」は、有効成分以外の、薬学的組成物中の対象に無毒な成分を指す。薬学的に許容される担体には、バッファー、賦形剤、安定剤、または防腐剤が含まれるが、それに限定されない。
【0092】
本明細書に使用される、「治療」(および「治療する」または「治療すること」などのその文法的変形)は、治療されている個体における疾患の自然経過を変えようとする臨床的介入を指し、予防のためまたは臨床病理経過中のいずれかに行うことができる。治療の望ましい効果には、疾患の発生または再発を予防すること、症候の緩和、疾患の任意の直接または間接的病理学的帰結の縮小、転移の防止、疾患の進行速度を減少させること、病態の改善または緩和、および寛解または予後の改善が含まれるが、それに限定されない。一部の実施形態では、本発明のイムノコンジュゲートは、疾患の発生を遅らせるため、または疾患の進行を減速するために使用される。
【0093】
実施形態の詳細な説明
突然変異IL-2ポリペプチド
本発明によるイムノコンジュゲートは、免疫療法のための有利な特性を有する突然変異IL-2ポリペプチドを含む。特に、毒性の原因となるが、IL-2の有効性に必須ではないIL-2の薬理的特性は、突然変異IL-2ポリペプチドから除去される。このような突然変異IL-2ポリペプチドは、その全内容が本明細書に参照により援用されるWO2012/107417に詳細に記載されている。上記のように、IL-2受容体の異なる形態は、異なるサブユニットからなり、IL-2に対して異なる親和性を示す。βおよびγ受容体サブユニットからなる中親和性IL-2受容体は、静止エフェクター細胞上に発現され、IL-2シグナル伝達するために十分である。この受容体のα-サブユニットを追加的に含む高親和性IL-2受容体は、制御性T(Treg)細胞上のみならず、活性化エフェクター細胞上に主として発現され、そこで、IL-2による結合が、それぞれTreg細胞媒介性免疫抑制または活性化誘導細胞死(AICD)を促進することができる。したがって、理論に縛られることを望むわけではないが、IL-2受容体のα-サブユニットに対するIL-2の親和性を低減または消失させることは、制御性T細胞によるエフェクター細胞機能のIL-2誘導性下方制御およびAICD過程による腫瘍寛容の発生を低減するはずである。他方、中親和性IL-2受容体に対する親和性を維持することは、IL-2によるNK細胞およびT細胞のようなエフェクター細胞の増殖および活性化の誘導を保つはずである。
【0094】
本発明によるイムノコンジュゲートに含まれる突然変異インターロイキン-2(IL-2)ポリペプチドは、それぞれ野生型IL-2ポリペプチドと比較して、IL-2受容体のα-サブユニットに対する突然変異IL-2ポリペプチドの親和性を消失または低減させ、かつ中親和性IL-2受容体に対する突然変異IL-2ポリペプチドの親和性を保つ、少なくとも1つのアミノ酸突然変異を含む。
【0095】
CD25に対する親和性が減少したヒトIL-2(hIL-2)突然変異体は、例えば、アミノ酸35、38、42、43、45もしくは72位またはそれらの組み合わせ(ヒトIL-2配列、配列番号19に対する番号付け)でのアミノ酸置換により生成され得る。例示的なアミノ酸置換には、K35E、K35A、R38A、R38E、R38N、R38F、R38S、R38L、R38G、R38Y、R38W、F42L、F42A、F42G、F42S、F42T、F42Q、F42E、F42N、F42D、F42R、F42K、K43E、Y45A、Y45G、Y45S、Y45T、Y45Q、Y45E、Y45N、Y45D、Y45R、Y45K、L72G、L72A、L72S、L72T、L72Q、L72E、L72N、L72D、L72R、およびL72Kが含まれる。本発明のイムノコンジュゲートに有用な特定のIL-2突然変異体は、ヒトIL-2の残基42、45、もしくは72、またはその組み合わせに対応するアミノ酸位置にアミノ酸突然変異を含む。一実施形態では、前記アミノ酸突然変異は、F42A、F42G、F42S、F42T、F42Q、F42E、F42N、F42D、F42R、F42K、Y45A、Y45G、Y45S、Y45T、Y45Q、Y45E、Y45N、Y45D、Y45R、Y45K、L72G、L72A、L72S、L72T、L72Q、L72E、L72N、L72D、L72R、およびL72Kの群から選択されるアミノ酸置換、より具体的には、F42A、Y45AおよびL72Gの群から選択されるアミノ酸置換である。これらの突然変異体は、中親和性IL-2受容体に対して実質的に類似の結合親和性を示し、野生型形態のIL-2突然変異体と比較して、IL-2受容体のα-サブユニットおよび高親和性IL-2受容体に対して実質的に低減した親和性を有する。
【0096】
有用な突然変異体の他の特性には、IL-2受容体担持T細胞および/またはNK細胞の増殖を誘導する能力、IL-2受容体担持T細胞および/またはNK細胞においてIL-2シグナル伝達を誘導する能力、NK細胞によりインターフェロン(IFN)-γを第2のサイトカインとして生成する能力、末梢血単核細胞(PBMC)により第2のサイトカイン、特にIL-10およびTNF-αの同化を誘導する能力の低減、制御性T細胞を活性化する能力の低減、T細胞におけるアポトーシスを誘導する能力の低減、ならびに低減したインビボ毒性プロファイルが含まれる場合がある。
【0097】
本発明に有用な特定の突然変異IL-2ポリペプチドは、IL-2受容体のα-サブユニットに対する突然変異IL-2ポリペプチドの親和性を消失または低減させるが、中親和性IL-2受容体に対する突然変異IL-2ポリペプチドの親和性を保つ3つのアミノ酸突然変異を含む。一実施形態では、前記3つのアミノ酸突然変異は、ヒトIL-2の残基42、45および72に対応する位置にある。一実施形態では、前記3つのアミノ酸突然変異は、アミノ酸置換である。一実施形態では、前記3つのアミノ酸突然変異は、F42A、F42G、F42S、F42T、F42Q、F42E、F42N、F42D、F42R、F42K、Y45A、Y45G、Y45S、Y45T、Y45Q、Y45E、Y45N、Y45D、Y45R、Y45K、L72G、L72A、L72S、L72T、L72Q、L72E、L72N、L72D、L72R、およびL72Kの群から選択されるアミノ酸置換である。特定の実施形態では、前記3つのアミノ酸突然変異は、アミノ酸置換F42A、Y45AおよびL72Gである(配列番号19のヒトIL-2配列に対する番号付け)。
【0098】
ある特定の実施形態では、前記アミノ酸突然変異は、IL-2受容体のα-サブユニットに対する突然変異IL-2ポリペプチドの親和性を5分の1以下、具体的には10分の1以下、より詳細には25分の1以下に低減する。IL-2受容体のα-サブユニットに対する突然変異IL-2ポリペプチドの親和性を低減する1つよりも多いアミノ酸突然変異がある実施形態では、これらのアミノ酸突然変異の組み合わせは、IL-2受容体のα-サブユニットに対する突然変異IL-2ポリペプチドの親和性を30分の1以下、50分の1以下、またはさらには100分の1以下に低減し得る。一実施形態では、前記アミノ酸突然変異またはアミノ酸突然変異の組み合わせは、IL-2受容体のα-サブユニットに対する突然変異IL-2ポリペプチドの親和性を消失させることにより、結合は、表面プラズモン共鳴により検出不能である。
【0099】
IL-2突然変異体が、中親和性IL-2受容体に対する野生型形態のIL-2突然変異体の親和性の約70%超を示す場合、中親和性受容体への実質的に類似の結合性、すなわち前記受容体に対する突然変異IL-2ポリペプチドの親和性の保存が達成される。本発明のIL-2突然変異体は、このような親和性の約80%超、さらには約90%超を示す場合がある。
【0100】
IL-2のO-グリコシル化の除去と組み合わせたIL-2受容体のα-サブユニットに対するIL-2の親和性の低減は、改善した特性を有するIL-2タンパク質を結果として生じる。例えば、O-グリコシル化部位の除去は、突然変異IL-2ポリペプチドが、CHO細胞またはHEK細胞などの哺乳類細胞において発現される場合、結果としてより均質な産物を生じる。
【0101】
したがって、ある特定の実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、ヒトIL-2の残基3に対応する位置のIL-2のO-グリコシル化部位を除去する追加的なアミノ酸突然変異を含む。一実施形態では、ヒトIL-2の残基3に対応する位置のIL-2のO-グリコシル化部位を除去する前記追加的なアミノ酸突然変異は、アミノ酸置換である。例示的なアミノ酸置換には、T3A、T3G、T3Q、T3E、T3N、T3D、T3R、T3K、およびT3Pが含まれる。特定の実施形態では、前記追加的なアミノ酸突然変異は、アミノ酸置換T3Aである。
【0102】
ある特定の実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、本質的に完全長IL-2分子である。ある特定の実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、ヒトIL-2分子である。一実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、前記突然変異を有さない配列番号19を含むIL-2ポリペプチドと比較して、IL-2受容体のα-サブユニットに対する突然変異IL-2ポリペプチドの親和性を消失または低減させるが、中親和性IL-2受容体に対する突然変異IL-2ポリペプチドの親和性を保つ、少なくとも1つのアミノ酸突然変異を有する配列番号19の配列を含む。別の実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、前記突然変異を有さない配列番号29を含むIL-2ポリペプチドと比較して、IL-2受容体のα-サブユニットに対する突然変異IL-2ポリペプチドの親和性を消失または低減させるが、中親和性IL-2受容体に対する突然変異IL-2ポリペプチドの親和性を保つ、少なくとも1つのアミノ酸突然変異を有する配列番号29の配列を含む。
【0103】
特定の実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、活性化Tリンパ球細胞における増殖、活性化Tリンパ球細胞における分化、細胞傷害性T細胞(CTL)活性、活性化B細胞における増殖、活性化B細胞における分化、ナチュラルキラー(NK)細胞における増殖、NK細胞における分化、活性化T細胞またはNK細胞によるサイトカイン分泌、およびNK/リンパ球活性化キラー(LAK)抗腫瘍細胞傷害性からなる群から選択される1つまたは複数の細胞応答を誘発することができる。
【0104】
一実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、野生型IL-2ポリペプチドと比較して制御性T細胞においてIL-2シグナル伝達を誘導する低減した能力を有する。一実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、野生型IL-2ポリペプチドと比較して小さい活性化誘導細胞死(AICD)をT細胞において誘導する。一実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、野生型IL-2ポリペプチドと比較して低減したインビボ毒性プロファイルを有する。一実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、野生型IL-2ポリペプチドと比較して延長した血清半減期を有する。
【0105】
本発明に有用な特定の突然変異IL-2ポリペプチドは、ヒトIL-2の残基3、42、45および72に対応する位置に4つのアミノ酸置換を含む。特異的アミノ酸置換は、T3A、F42A、Y45AおよびL72Gである。WO2012/107417に示されるように、前記四重突然変異IL-2ポリペプチドは、CD25に対する検出不能の結合性、T細胞においてアポトーシスを誘導する低減した能力、Treg細胞においてIL-2シグナル伝達を誘導する低減した能力、および低減したインビボ毒性プロファイルを示す。しかし、これは、エフェクター細胞においてIL-2シグナル伝達を活性化する、エフェクター細胞の増殖を誘導する、およびNK細胞によりIFN-γを第2のサイトカインとして生成する能力を保持する。
【0106】
そのうえ、前記突然変異IL-2ポリペプチドは、WO2012/107417に記載されたような、低減した表面疎水性、良好な安定性、および良好な発現収率などのさらなる有利な特性を有する。予想外に、前記突然変異IL-2ポリペプチドは、また、野生型IL-2と比較して延長した血清半減期を提供する。
【0107】
本発明に有用なIL-2突然変異体は、CD25またはグリコシル化部位とのIL-2の接触面を形成するIL-2領域に突然変異を有することに加えて、また、これらの領域外のアミノ酸配列に1つまたは複数の突然変異を有する場合がある。ヒトIL-2におけるこのような追加的な突然変異は、発現または安定性の増加などの追加的な利点を提供し得る。例えば、125位のシステインは、米国特許第4,518,584号に記載されたように、セリン、アラニン、スレオニンまたはバリンなどの中性アミノ酸により置き換えられ、それぞれ、C125S IL-2、C125A IL-2、C125T IL-2またはC125V IL-2が得られる場合がある。本明細書に記載されるように、また、IL-2のN末端アラニン残基が欠失され、des-A1 C125Sまたはdes-A1 C125Aなどの突然変異体が得られる場合がある。代替的または接続的に、IL-2突然変異体は、野生型ヒトIL-2の104位に通常存在するメチオニンが、アラニンなどの中性アミノ酸により置き換えられた突然変異を含む場合がある(米国特許第5,206,344号参照)。結果として生じる突然変異体、例えば、des-A1 M104A IL-2、des-A1 M104A C125S IL-2、M104A IL-2、M104A C125A IL-2、des-A1 M104A C125A IL-2、またはM104A C125S IL-2(これらおよび他の突然変異体は、米国特許第5,116,943号およびWeigerら、Eur J Biochem 180、295-300(1989)に見出される場合がある)は、本発明の特定のIL-2突然変異と併せて使用される場合がある。
【0108】
したがって、ある特定の実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、ヒトIL-2の残基125に対応する位置に追加的なアミノ酸突然変異を含む。一実施形態では、前記追加的なアミノ酸突然変異は、アミノ酸置換C125Aである。
【0109】
当業者は、どの追加的な突然変異が本発明のために追加的な利点を提供し得るかを決定することができる。例えば、当業者は、D20T、N88RまたはQ126Dなどの、中親和性IL-2受容体に対するIL-2の親和性を低減または消失させるIL-2配列中のアミノ酸突然変異(例えば、US2007/0036752参照)が、本発明による突然変異IL-2ポリペプチド中に含まれるのに適さない場合があることを認識している。
【0110】
一実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、対応する野生型IL-2配列、例えば、配列番号19のヒトIL-2配列と比較して、12個以下、11個以下、10個以下、9個以下、8個以下、7個以下、6個以下、または5個以下のアミノ酸突然変異を含む。特定の実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、対応する野生型IL-2配列、例えば、配列番号19のヒトIL-2配列と比較して、5個以下のアミノ酸突然変異を含む。
【0111】
一実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、配列番号20の配列を含む。一実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、配列番号20の配列からなる。
【0112】
イムノコンジュゲート
本明細書に記載されるイムノコンジュゲートは、IL分子および抗体を含む。このようなイムノコンジュゲートは、例えば、腫瘍微小環境にIL-2を直接標的化することによりIL-2療法の有効性を顕著に増加させる。本発明によると、イムノコンジュゲート中に含まれる抗体は、全抗体もしくは免疫グロブリン、または抗原特異的結合親和性などの生物学的機能を有するその一部分もしくは変異体であり得る。
【0113】
イムノコンジュゲート療法の一般的な利点は、容易に明らかである。例えば、イムノコンジュゲート中に含まれる抗体は、腫瘍特異的エピトープを認識し、その結果、イムノコンジュゲート分子を腫瘍部位に標的化する。したがって、高濃度のIL-2を腫瘍微小環境に送達することができ、それにより、結果として非コンジュゲートIL-2に必要な用量よりもずっと低い用量のイムノコンジュゲートを使用して、本明細書に言及される多様な免疫エフェクター細胞の活性化および増殖をもたらすことができる。そのうえ、イムノコンジュゲートの形態のIL-2の適用は、このサイトカイン自体をより低い用量にさせるので、IL-2の望ましくない副作用の潜在性が限定される。イムノコンジュゲートにより身体の特定部位にIL-2を標的化することも、結果として、全身曝露を低減することで、非コンジュゲートIL-2で得られるよりも低い副作用をもたらし得る。加えて、非コンジュゲートIL-2と比較して、イムノコンジュゲートの増大した循環半減期は、イムノコンジュゲートの有効性の一因になる。しかし、IL-2イムノコンジュゲートのこの特徴は、また、IL-2分子の潜在的副作用を悪化させる場合があり、非コンジュゲートIL-2と比べた血流中のIL-2イムノコンジュゲートの有意に長い循環半減期のせいで、融合タンパク質分子のIL-2または他の部分が、脈管構造中に一般的に存在する成分を活性化する可能性が高まる。結果として循環中のIL-2の半減期延長を生じる、Fcまたはアルブミンなどの別の部分と融合したIL-2を含有する他の融合タンパク質に、同じ懸念事項が当てはまる。したがって、野生型形態のIL-2と比較して低減した毒性を有する、本明細書およびWO2012/107417に記載されるような突然変異IL-2ポリペプチドを含むイムノコンジュゲートが、特に有利である。
【0114】
本明細書の上記に記載するように、IL-2を腫瘍細胞よりも免疫エフェクター細胞に直接標的化することが、IL-2免疫療法にとって有利であり得る。
【0115】
したがって、本発明は、本明細書の前記に記載された突然変異IL-2ポリペプチドおよびPD-1に結合する抗体を提供する。一実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドおよび抗体は、融合タンパク質を形成し、すなわち、突然変異IL-2ポリペプチドは、抗体とペプチド結合を共有する。一部の実施形態では、抗体は、第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFcドメインを含む。特定の実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、そのアミノ末端アミノ酸でFcドメインのサブユニットのうち1つのカルボキシ末端アミノ酸と、場合によりリンカーペプチドを通じて融合されている。一部の実施形態では、抗体は、完全長抗体である。一部の実施形態では、抗体は、免疫グロブリン分子、特にIgGクラスの免疫グロブリン分子、より詳細には、IgG1サブクラスの免疫グロブリン分子である。このような一実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、免疫グロブリン重鎖のうち1つとアミノ末端ペプチド結合を共有する。ある特定の実施形態では、抗体は、抗体断片である。一部の実施形態では、抗体は、Fab分子またはscFv分子である。一実施形態では、抗体は、Fab分子である。別の実施形態では、抗体は、scFv分子である。イムノコンジュゲートは、また、1種よりも多い抗体を含み得る。1つよりも多い抗体、例えば、第1および第2の抗体が、イムノコンジュゲート中に含まれる場合、各抗体は、独立して、様々な形態の抗体および抗体断片から選択することができる。例えば、第1の抗体は、Fab分子であり得、第2の抗体は、scFv分子であり得る。特定の実施形態では、前記第1および前記第2の抗体のそれぞれは、scFv分子である、または前記第1および前記第2の抗体のそれぞれは、Fab分子である。特定の実施形態では、前記第1および前記第2の抗体のそれぞれは、Fab分子である。一実施形態では、前記第1および前記第2の抗体のそれぞれは、PD-1に結合する。
【0116】
イムノコンジュゲートの形式
例示的なイムノコンジュゲートの形式は、その全内容が本明細書に参照により援用されるPCT公報WO2011/020783に記載されている。これらのイムノコンジュゲートは、少なくとも2種の抗体を含む。したがって、一実施形態では、本発明によるイムノコンジュゲートは、本明細書に記載の突然変異IL-2ポリペプチドと、少なくとも第1および第2の抗体とを含む。特定の実施形態では、前記第1および第2の抗体は、Fv分子、特にscFv分子、およびFab分子からなる群から独立して選択される。特定の実施形態では、前記突然変異IL-2ポリペプチドは、前記第1の抗体とアミノまたはカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、前記第2の抗体は、i)突然変異IL-2ポリペプチドまたはii)第1の抗体のいずれかとアミノまたはカルボキシ末端ペプチド結合を共有する。特定の実施形態では、イムノコンジュゲートは、1つまたは複数のリンカー配列により連結された、突然変異IL-2ポリペプチドと、第1および第2の抗体、特にFab分子とから本質的になる。このような形式は、それらが標的抗原(PD-1)と高い親和性で結合するが、IL-2受容体とモノマー性の結合だけを提供することで、標的部位以外の位置でIL-2受容体担持免疫細胞にイムノコンジュゲートを標的化することを回避するという利点を有する。特定の実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、第1の抗体、特に第1のFab分子とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、さらに第2の抗体、特に第2のFab分子とアミノ末端ペプチド結合を共有する。別の実施形態では、第1の抗体、特に第1のFab分子は、突然変異IL-2ポリペプチドとカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、さらに、第2の抗体、特に第2のFab分子とアミノ末端ペプチド結合を共有する。別の実施形態では、第1の抗体、特に第1のFab分子は、第1の突然変異IL-2ポリペプチドとアミノ末端ペプチド結合を共有し、さらに、第2の抗体、特に第2のFab分子とカルボキシ末端ペプチドを共有する。特定の実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、第1の重鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、さらに、第2の重鎖可変領域とアミノ末端ペプチド結合を共有する。別の実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、第1の軽鎖可変領域とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、さらに、第2の軽鎖可変領域とアミノ末端ペプチド結合を共有する。別の実施形態では、第1の重鎖または軽鎖可変領域は、カルボキシ末端ペプチド結合により突然変異IL-2ポリペプチドと繋がり、さらに、アミノ末端ペプチド結合により第2の重鎖または軽鎖可変領域と繋がっている。別の実施形態では、第1の重鎖または軽鎖可変領域は、アミノ末端ペプチド結合により突然変異IL-2ポリペプチドと繋がり、さらに、カルボキシ末端ペプチド結合により第2の重鎖または軽鎖可変領域と繋がっている。一実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、第1のFab重鎖または軽鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、さらに、第2のFab重鎖または軽鎖とアミノ末端ペプチド結合と共有する。別の実施形態では、第1のFab重鎖または軽鎖は、突然変異IL-2ポリペプチドとカルボキシ末端ペプチド結合を共有し、さらに、第2のFab重鎖または軽鎖とアミノ末端ペプチド結合を共有する。他の実施形態では、第1のFab重鎖または軽鎖は、突然変異IL-2ポリペプチドとアミノ末端ペプチド結合を共有し、さらに、第2のFab重鎖または軽鎖とカルボキシ末端ペプチド結合を共有する。一実施形態では、イムノコンジュゲートは、1つまたは複数のscFv分子とアミノ末端ペプチド結合を共有する突然変異IL-2ポリペプチドであって、さらに、1つまたは複数のscFv分子とカルボキシ末端ペプチド結合を共有する突然変異IL-2ポリペプチドを含む。
【0117】
しかし、本発明によるイムノコンジュゲートに特に適した形式は、抗体として免疫グロブリン分子を含む。このようなイムノコンジュゲートの形式は、その全内容が本明細書に参照により援用されるWO2012/146628に記載されている。
【0118】
したがって、特定の実施形態では、イムノコンジュゲートは、本明細書に記載される突然変異IL-2ポリペプチドと、PD-1に結合する免疫グロブリン分子、特にIgG分子、より詳細にはIgG1分子とを含む。一実施形態では、イムノコンジュゲートは、1つ以下の突然変異IL-2ポリペプチドを含む。一実施形態では、免疫グロブリン分子は、ヒトである。一実施形態では、免疫グロブリン分子は、ヒト定常領域、例えば、ヒトCH1、CH2、CH3および/またはCLドメインを含む。一実施形態では、免疫グロブリンは、ヒトFcドメイン、特にヒトIgG1 Fcドメインを含む。一実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、免疫グロブリン分子とアミノまたはカルボキシ末端ペプチド結合を共有する。一実施形態では、イムノコンジュゲートは、本質的に、1つまたは複数のリンカー配列により繋がった、突然変異IL-2ポリペプチドと、免疫グロブリン分子、特にIgG分子、より詳細にはIgG1分子とからなる。特定の実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、そのアミノ末端アミノ酸で、場合によりリンカーペプチドを通じて、免疫グロブリン重鎖のうち1つのカルボキシ末端アミノ酸と融合されている。
【0119】
突然変異IL-2ポリペプチドは、直接、または1つもしくは複数のアミノ酸、典型的には約2~20個のアミノ酸を含むリンカーペプチドを通じて、抗体と融合されている場合がある。リンカーペプチドは、当該技術分野で公知であり、本明細書に記載されている。適切な非免疫原性リンカーペプチドには、例えば、(G4S)n、(SG4)n、(G4S)nまたはG4(SG4)nリンカーペプチドが含まれる。「n」は、一般的に、1~10、典型的には2~4の整数である。一実施形態では、リンカーペプチドは、少なくとも5アミノ酸長、一実施形態では、5~100、さらなる実施形態では10~50アミノ酸長を有する。特定の実施形態では、リンカーペプチドは、15アミノ酸長を有する。一実施形態では、リンカーペプチドは、(GxS)nまたは(GxS)nGm[G=グリシン、S=セリン](x=3、n=3、4、5もしくは6、およびm=0、1、2もしくは3)または(x=4、n=2、3、4もしくは5およびm=0、1、2もしくは3)であり、一実施形態では、x=4およびn=2または3であり、さらなる実施形態では、x=4およびn=3である。特定の実施形態では、リンカーペプチドは、(G4S)3(配列番号21)である。一実施形態では、リンカーペプチドは、配列番号21のアミノ酸配列を有する(またはそれからなる)。
【0120】
特定の実施形態では、イムノコンジュゲートは、突然変異IL-2分子と、PD-1に結合する免疫グロブリン分子、特にIgG1サブクラスの免疫グロブリン分子とを含み、その際、突然変異IL-2分子は、そのアミノ末端アミノ酸で配列番号21のリンカーペプチドを通じて免疫グロブリン重鎖のうち1つのカルボキシ末端アミノ酸と融合されている。
【0121】
特定の実施形態では、イムノコンジュゲートは、突然変異IL-2分子と、PD-1に結合する抗体とを含み、その際、抗体は、第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFcドメイン、特にヒトIgG1 Fcドメインを含み、突然変異IL-2分子は、そのアミノ末端アミノ酸で配列番号21のリンカーペプチドを通じてFcドメインのサブユニットのうち1つのカルボキシ末端アミノ酸と融合されている。
【0122】
PD-1抗体
本発明のイムノコンジュゲート中に含まれる抗体は、PD-1、特にヒトPD-1に結合し、突然変異IL-2ポリペプチドを、PD-1が発現している標的部位に、特に、例えば腫瘍と関連するPD-1を発現するT細胞に方向付けることができる。
【0123】
本発明のイムノコンジュゲートに使用され得る適切なPD-1抗体は、その全内容が本明細書に参照により援用されるPCT特許出願PCT/EP2016/073248に記載されている。
【0124】
本発明のイムノコンジュゲートは、同じまたは異なる抗原に結合し得る2種以上の抗体を含む場合がある。しかし、特定の実施形態では、これらの抗体のそれぞれがPD-1に結合する。一実施形態では、本発明のイムノコンジュゲート中に含まれる抗体は、単一特異性である。特定の実施形態では、イムノコンジュゲートは、単一の、単一特異性抗体、特に単一特異性免疫グロブリン分子を含む。
【0125】
抗体は、PD-1、特にヒトPD-1に対する特異的結合性を保持する任意の種類の抗体またはその断片であり得る。抗体断片には、Fv分子、scFv分子、Fab分子、およびF(ab’)2分子が含まれるが、それに限定されない。しかし、特定の実施形態では、抗体は、完全長抗体である。一部の実施形態では、抗体は、第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFcドメインを含む。一部の実施形態では、抗体は、免疫グロブリン、特にIgGクラス、より詳細にはIgG1サブクラスの免疫グロブリンである。
【0126】
一部の実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。
【0127】
一部の実施形態では、抗体は、配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、Kabat番号付けによる71~73位に配列番号7のアミノ酸配列を含むFR-H3、配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0128】
一部の実施形態では、抗体は、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、およびKabat番号付けによる71~73位に配列番号7のアミノ酸配列を含むFR-H3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、重鎖および/または軽鎖可変領域は、ヒト化可変領域である。一部の実施形態では、重鎖および/または軽鎖可変領域は、ヒトフレームワーク領域(FR)を含む。
【0129】
一部の実施形態では、抗体は、配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H3、配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0130】
一部の実施形態では、抗体は、配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに(b)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、重鎖および/または軽鎖可変領域は、ヒト化可変領域である。一部の実施形態では、重鎖および/または軽鎖可変領域は、ヒトフレームワーク領域(FR)を含む。
【0131】
一部の実施形態では、抗体は、配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号15、配列番号16、配列番号17、および配列番号18からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。一部の実施形態では、抗体は、(a)配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに(b)配列番号15、配列番号16、配列番号17、および配列番号18からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0132】
特定の実施形態では、抗体は、(a)配列番号14のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および(b)配列番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0133】
一部の実施形態では、抗体は、ヒト化抗体である。一実施形態では、抗体は、ヒト定常領域を含む免疫グロブリン分子、特にヒトCH1、CH2、CH3および/またはCLドメインを含むIgGクラスの免疫グロブリン分子である。ヒト定常ドメインの例示的配列は、配列番号31および32(それぞれヒトカッパCLドメインおよびラムダCLドメイン)ならびに配列番号33(ヒトIgG1重鎖定常ドメインCH1-CH2-CH3)に示される。一部の実施形態では、抗体は、配列番号31または配列番号32のアミノ酸配列、特に配列番号31のアミノ酸配列を含む軽鎖定常領域を含む。一部の実施形態では、抗体は、配列番号33のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖定常領域を含む。特に、重鎖定常領域は、本明細書に記載されるFcドメイン中にアミノ酸突然変異を含み得る。
【0134】
Fcドメイン
特定の実施形態では、本発明によるイムノコンジュゲート中に含まれる抗体は、第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFcドメインを含む。抗体のFcドメインは、免疫グロブリン分子の重鎖ドメインを含むポリペプチド鎖のペアからなる。例えば、免疫グロブリンG(IgG)分子のFcドメインは、ダイマーであり、その各サブユニットは、CH2 IgG重鎖定常ドメインおよびCH3 IgG重鎖定常ドメインを含む。Fcドメインの2つのサブユニットは、相互に安定に会合することができる。一実施形態では、本発明のイムノコンジュゲートは、1つ以下のFcドメインを含む。
【0135】
一実施形態では、イムノコンジュゲート中に含まれる抗体のFcドメインは、IgG Fcドメインである。特定の実施形態では、Fcドメインは、IgG1 Fcドメインである。別の実施形態では、Fcドメインは、IgG4 Fcドメインである。より具体的な実施形態では、Fcドメインは、S228位(Kabat EUインデックス番号付け)にアミノ酸置換、特にアミノ酸置換S228Pを含むIgG4 Fcドメインである。このアミノ酸置換は、IgG4抗体のインビボFabアーム交換を低減する(Stubenrauchら、Drug Metabolism and Disposition 38、84-91(2010))。さらなる特定の実施形態では、Fcドメインは、ヒトFcドメインである。さらにより特定の実施形態では、Fcドメインは、ヒトIgG1 Fcドメインである。ヒトIgG1 Fc領域の例示的な配列は、配列番号30に示される。
【0136】
ヘテロダイマー化を促進するFcドメイン修飾
本発明によるイムノコンジュゲートは、Fcドメインの2つのサブユニットのうち一方または他方と融合した、突然変異IL-2ポリペプチド、特に単一(1つ以下の)突然変異IL-2ポリペプチドを含み、したがって、Fcドメインの2つのサブユニットは、典型的には、2つの非同一ポリペプチド鎖中に含まれる。これらのポリペプチドの組換え共発現およびそれに続くダイマー化は、2つのポリペプチドのいくつかの可能な組み合わせをもたらす。したがって、組換え産生におけるイムノコンジュゲートの収量および純度を改善するために、抗体のFcドメイン中に所望のポリペプチドの会合を促進する修飾を導入することが有利である。
【0137】
したがって、特定の実施形態では、本発明によるイムノコンジュゲート中に含まれる抗体のFcドメインは、Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットとの会合を促進する修飾を含む。ヒトIgG Fcドメインの2つのサブユニット間の最も広範囲のタンパク質-タンパク質相互作用の部位は、FcドメインのCH3ドメイン中である。したがって、一実施形態では、前記修飾は、FcドメインのCH3ドメイン中である。
【0138】
ヘテロダイマー化を強化するためにFcドメインのCH3ドメイン中に修飾を行うためのいくつかの手法が存在し、それらは、例えば、WO96/27011、WO98/050431、EP1870459、WO2007/110205、WO2007/147901、WO2009/089004、WO2010/129304、WO2011/90754、WO2011/143545、WO2012058768、WO2013157954、WO2013096291に十分に記載されている。典型的には、全てのこのような手法では、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインおよびFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインは、両方とも、相補的に操作され、それにより、各CH3ドメイン(またはそれを含む重鎖)は、それ自体ともはやホモダイマー化できず、相補的に操作された他のCH3ドメインと強制的にヘテロダイマー化される(それにより、第1のCH3ドメインと第2のCH3ドメインは、ヘテロダイマー化し、2つの第1のCH3ドメインまたは2つの第2のCH3ドメインの間のホモダイマー化は形成しない)。
【0139】
特定の実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットとの会合を促進する前記修飾は、Fcドメインの2つのサブユニットのうち1つに「ノブ」修飾およびFcドメインの2つのサブユニットのうち他方の1つに「ホール」修飾を含む、いわゆる「ノブ・イントゥー・ホール」修飾である。
【0140】
ノブ・イントゥー・ホール技術は、例えば、US5,731,168;US7,695,936;Ridgwayら、Prot Eng 9、617-621(1996)およびCarter、J Immunol Meth 248、7-15(2001)に記載されている。一般的に、この方法は、隆起(「ノブ」)を第1のポリペプチドの接触面に、対応する空洞(「ホール」)を第2のポリペプチドの接触面に導入することを伴い、それにより、ヘテロダイマーの形成を促進し、ホモダイマーの形成を妨害するように隆起を空洞中に配置できる。第1のポリペプチドの接触面からの小さいアミノ酸側鎖をより大きい側鎖(例えば、チロシンまたはトリプトファン)により置き換えることにより、隆起が構築される。大きいアミノ酸側鎖をより小さいアミノ酸側鎖(例えば、アラニンまたはスレオニン)により置き換えることによって、隆起と同一または類似のサイズの代償的な空洞が、第2のポリペプチドの接触面に創出される。
【0141】
したがって、特定の実施形態では、イムノコンジュゲート中に含まれる抗体のFcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基が、より大きい側鎖体積を有するアミノ酸残基により置き換えられ、それにより、第2のサブユニットのCH3ドメイン内の空洞内に配置可能な、第1のサブユニットのCH3ドメイン内の隆起が生成し、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基が、より小さい側鎖体積を有するアミノ酸残基により置き換えられ、それにより、第1のサブユニットのCH3ドメイン内の隆起を内部に配置可能な、第2のサブユニットのCH3ドメイン内の空洞が生成する。
【0142】
好ましくは、より大きい側鎖体積を有する前記アミノ酸残基は、アルギニン(R)、フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、およびトリプトファン(W)からなる群から選択される。
【0143】
好ましくは、より小さい側鎖体積を有する前記アミノ酸残基は、アラニン(A)、セリン(S)、スレオニン(T)、およびバリン(V)からなる群から選択される。
【0144】
隆起および空洞は、ポリペプチドをコードする核酸を変えることにより、例えば、部位特異的突然変異誘発により、またはペプチド合成により作製することができる。
【0145】
特定の実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニット(「ノブ」サブユニット)のCH3ドメインにおいて、366位のスレオニン残基は、トリプトファン残基(T366W)により置き換えられ、Fcドメインの第2のサブユニット(「ホール」サブユニット)のCH3ドメインにおいて、407位のチロシン残基は、バリン残基(Y407V)により置き換えられる。一実施形態では、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、追加的に、366位のスレオニン残基は、セリン残基(T366S)により置き換えられ、368位のロイシン残基は、アラニン残基(L368A)(Kabat EUインデックスによる番号付け)により置き換えられる。
【0146】
なおさらなる実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、追加的に、354位のセリン残基は、システイン残基(S354C)により置き換えられ、または356位のグルタミン酸残基は、システイン残基により置き換えられ(E356C)(特に、354位のセリン残基は、システイン残基により置き換えられ)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、追加的に、349位のチロシン残基は、システイン残基(Y349C)により置き換えられる(Kabat EUインデックスによる番号付け)。これらの2つのシステイン残基の導入は、Fcドメインの2つのサブユニット間のジスルフィド架橋の形成を結果として生じ、さらにダイマーを安定化する(Carter、J Immunol Methods 248、7-15(2001))。
【0147】
特定の実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換S354CおよびT366Wを含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換Y349C、T366S、L368AおよびY407Vを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0148】
一部の実施形態では、Fcドメインの第2のサブユニットは、追加的に、アミノ酸置換H435RおよびY436Fを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0149】
特定の実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、Fcドメイン(「ノブ」修飾を含む)の第1のサブユニットと融合されている(場合によりリンカーペプチドを通じて)。理論に縛られることを望むわけではないが、突然変異IL-2ポリペプチドと、Fcドメインのノブ含有サブユニットとの融合は、2つの突然変異IL-2ポリペプチドを含むイムノコンジュゲートの生成(2つのノブ含有ポリペプチドの立体衝突)を(さらに)最小限にする。
【0150】
ヘテロダイマー化を強制するCH3修飾の他の技術は、本発明による代替として考えられ、例えば、WO96/27011、WO98/050431、EP1870459、WO2007/110205、WO2007/147901、WO2009/089004、WO2010/129304、WO2011/90754、WO2011/143545、WO2012/058768、WO2013/157954、WO2013/096291に記載されている。
【0151】
一実施形態では、EP1870459に記載されたヘテロダイマー化手法が、代替的に使用される。この手法は、Fcドメインの2つのサブユニット間のCH3/CH3ドメイン接触面の特異的アミノ酸位置に、反対荷電を有する荷電アミノ酸を導入することに基づく。本発明のイムノコンジュゲート中に含まれる抗体に好ましい一実施形態は、(Fcドメインの)2つのCH3ドメインのうち1つにおけるアミノ酸突然変異R409D;K370EおよびFcドメインのCH3ドメインの他方の1つにおけるアミノ酸突然変異D399K;E357Kである(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0152】
別の実施形態では、本発明のイムノコンジュゲート中に含まれる抗体は、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸突然変異T366WおよびFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸突然変異T366S、L368A、Y407V、ならびに追加的に、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸突然変異R409D;K370EおよびFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸突然変異D399K;E357Kを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0153】
別の実施形態では、本発明のイムノコンジュゲート中に含まれる抗体は、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸突然変異S354C、T366WおよびFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸突然変異Y349C、T366S、L368A、Y407Vを含む、または前記抗体は、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸突然変異Y349C、T366WおよびFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸突然変異S354C、T366S、L368A、Y407V、ならびに追加的に、Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸突然変異R409D;K370EおよびFcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにアミノ酸突然変異D399K;E357Kを含む(全て、Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0154】
一実施形態では、WO2013/157953に記載されたヘテロダイマー化手法が、代替的に使用される。一実施形態では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異T366Kを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異L351Dを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。さらなる実施形態では、第1のCH3ドメインは、さらなるアミノ酸突然変異L351Kを含む。さらなる実施形態では、第2のCH3ドメインは、Y349E、Y349DおよびL368Eから選択されるアミノ酸突然変異(好ましくはL368E)をさらに含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0155】
一実施形態では、WO2012/058768に記載されたヘテロダイマー化手法が、代替的に使用される。一実施形態では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異L351Y、Y407Aを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異T366A、K409Fを含む。さらなる実施形態では、第2のCH3ドメインは、位置T411、D399、S400、F405、N390、またはK392に、例えば、a)T411N、T411R、T411Q、T411K、T411D、T411EまたはT411W、b)D399R、D399W、D399YまたはD399K、c)S400E、S400D、S400R、またはS400K、d)F405I、F405M、F405T、F405S、F405VまたはF405W、e)N390R、N390KまたはN390D、f)K392V、K392M、K392R、K392L、K392FまたはK392E(Kabat EUインデックスによる番号付け)から選択されるさらなるアミノ酸突然変異を含む。さらなる実施形態では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異L351Y、Y407Aを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異T366V、K409Fを含む。さらなる実施形態では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異Y407Aを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異T366A、K409Fを含む。さらなる実施形態では、第2のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異K392E、T411E、D399RおよびS400Rをさらに含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0156】
一実施形態では、WO2011/143545に記載されたヘテロダイマー化手法は、例えば、368および409からなる群から選択される位置にアミノ酸修飾を有して代替的に使用される(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0157】
一実施形態では、同じく、上記ノブ・イントゥー・ホール技術を使用する、WO2011/090762に記載されるヘテロダイマー化手法が、代替的に使用される。一実施形態では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異T366Wを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異Y407Aを含む。一実施形態では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異T366Yを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異Y407Tを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0158】
一実施形態では、イムノコンジュゲート中に含まれる抗体またはそのFcドメインは、IgG2サブクラスであり、WO2010/129304に記載されるヘテロダイマー化手法が、代替的に使用される。
【0159】
代替的な実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニットおよび第2のサブユニットの修飾促進会合は、例えば、PCT公報WO2009/089004に記載されるように、静電操縦効果を媒介している修飾を含む。一般的にこの方法は、ホモダイマー形成が、静電的に不利になるが、ヘテロダイマー化が静電的に有利になるような、2つのFcドメインサブユニットの接触面での1つまたは複数のアミノ酸残基の荷電アミノ酸残基による置き換えを伴う。このような一実施形態では、第1のCH3ドメインは、負荷電アミノ酸によるK392またはN392のアミノ酸置換(例えば、グルタミン酸(E)、またはアスパラギン酸(D)、好ましくはK392DまたはN392D)を含み、第2のCH3ドメインは、正荷電アミノ酸によるD399、E356、D356、またはE357のアミノ酸置換(例えば、リジン(K)またはアルギニン(R)、好ましくはD399K、E356K、D356K、またはE357K、より好ましくはD399KおよびE356K)を含む。さらなる実施形態では、第1のCH3ドメインは、負荷電アミノ酸によるK409またはR409のアミノ酸置換(例えば、グルタミン酸(E)、またはアスパラギン酸(D)、好ましくはK409DまたはR409D)をさらに含む。さらなる実施形態では、第1のCH3ドメインは、負荷電アミノ酸(例えば、グルタミン酸(E)、またはアスパラギン酸(D))によるK439および/またはK370のアミノ酸置換をさらにまたは代替的に含む(全て、Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0160】
なおさらなる実施形態では、WO2007/147901に記載されたヘテロダイマー化手法が、代替的に使用される。一実施形態では、第1のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異K253E、D282K、およびK322Dを含み、第2のCH3ドメインは、アミノ酸突然変異D239K、E240K、およびK292Dを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0161】
なお別の実施形態では、WO2007/110205に記載されたヘテロダイマー化手法を代替的に使用することができる。
【0162】
一実施形態では、Fcドメインの第1のサブユニットは、アミノ酸置換K392DおよびK409Dを含み、Fcドメインの第2のサブユニットは、アミノ酸置換D356KおよびD399Kを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0163】
Fc受容体の結合性および/またはエフェクター機能を低減するFcドメイン修飾
Fcドメインは、標的組織中での良好な蓄積および好都合な組織-血液分布比の原因となる長い血清半減期を含む、好都合な薬物動態特性をイムノコンジュゲートに付与する。しかし、同時に、Fcドメインは、好ましい抗原担持細胞よりもむしろFc受容体発現細胞へのイムノコンジュゲートの望まれない標的化をもたらすおそれがある。そのうえ、Fc受容体シグナル伝達経路の共活性化は、IL-2ポリペプチドおよびイムノコンジュゲートの長い半減期と共に、全身投与されたときにサイトカイン受容体の過度の活性化および重症の副作用を生じる、サイトカイン放出をもたらし得る。これと一致して、通常のIgG-IL-2イムノコンジュゲートは、急性輸液反応と関連すると記載されている(例えば、Kingら、J Clin Oncol 22、4463-4473(2004)を参照されたい)。
【0164】
したがって、特定の実施形態では、本発明によるイムノコンジュゲート中に含まれる抗体のFcドメインは、ネイティブなIgG1 Fcドメインと比較して、Fc受容体に対する低減した結合親和性および/または低減したエフェクター機能を示す。このような一実施形態では、Fcドメイン(または前記Fcドメインを含む抗体)は、ネイティブなIgG1 Fcドメイン(もしくはネイティブなIgG1 Fcドメインを含む抗体)と比較して、Fc受容体に対して50%未満、好ましくは20%未満、;より好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満の結合親和性、および/またはネイティブなIgG1 Fcドメインドメイン(もしくはネイティブなIgG1 Fcドメインを含む抗体)と比較して、50%未満、好ましくは20%未満、より好ましくは10%未満、最も好ましくは5%未満のエフェクター機能を示す。一実施形態では、Fcドメインドメイン(または前記Fcドメインを含む抗体)は、Fc受容体と実質的に結合せず、かつ/またはエフェクター機能を誘導しない。特定の実施形態では、Fc受容体は、Fcγ受容体である。一実施形態では、Fc受容体は、ヒトFc受容体である。一実施形態では、Fc受容体は、活性化Fc受容体である。特定の実施形態では、Fc受容体は、活性化ヒトFcγ受容体、より詳細にはヒトFcγRIIIa、FcγRIまたはFcγRIIa、最も具体的にはヒトFcγRIIIaである。一実施形態では、エフェクター機能は、CDC、ADCC、ADCP、およびサイトカイン分泌の群から選択される1つまたは複数である。特定の実施形態では、エフェクター機能は、ADCCである。一実施形態では、Fcドメインドメインは、ネイティブなIgG1 Fcドメインドメインと比較して、新生児Fc受容体(FcRn)に対して実質的に類似の結合親和性を示す。FcRnに対する実質的に類似の結合性は、Fcドメイン(または前記Fcドメインを含む抗体)が、FcRnに対して、ネイティブなIgG1 Fcドメイン(またはネイティブなIgG1 Fcドメインを含む抗体)の結合親和性の約70%超、特に約80%超、より詳細には約90%超を示す場合に達成される。
【0165】
ある特定の実施形態では、Fcドメインは、非操作Fcドメインと比較して、Fc受容体に対して低減した結合親和性および/または低減したエフェクター機能を有するように操作される。特定の実施形態では、イムノコンジュゲート中に含まれる抗体のFcドメインは、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性および/またはエフェクター機能を低減する1つまたは複数のアミノ酸突然変異を含む。典型的には、Fcドメインの2つのサブユニットの各々に同じ1つまたは複数のアミノ酸突然変異が存在する。一実施形態では、アミノ酸突然変異は、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性を低減する。一実施形態では、アミノ酸突然変異は、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性を2分の1以下、5分の1以下、または10分の1以下に低減する。Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性を低減する、1つよりも多いアミノ酸突然変異がある実施形態では、これらのアミノ酸突然変異の組み合わせは、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性を、10分の1以下、20分の1以下、またはさらには50分の1以下に低減し得る。一実施形態では、操作Fcドメインを含む抗体は、非操作Fcドメインを含む抗体と比較して、Fc受容体に対して20%未満、特に10%未満、より詳細には5%未満の結合親和性を示す。特定の実施形態では、Fc受容体は、Fcγ受容体である。一部の実施形態では、Fc受容体は、ヒトFc受容体である。一部の実施形態では、Fc受容体は、活性化Fc受容体である。特定の実施形態では、Fc受容体は、活性化ヒトFcγ受容体、より詳細にはヒトFcγRIIIa、FcγRIまたはFcγRIIa、最も具体的にはヒトFcγRIIIaである。好ましくは、これらの受容体の各々に対する結合性は、低減される。一部の実施形態では、補体成分に対する結合親和性、具体的にはC1qに対する結合親和性が、また、低減される。一実施形態では、新生児Fc受容体(FcRn)に対する結合親和性は、低減されない。FcRnに対する実質的に類似の結合性、すなわち、前記受容体に対するFcドメインの結合親和性の保存は、Fcドメイン(または前記Fcドメインを含む抗体)が、FcRnに対する非操作形態のFcドメイン(または前記非操作形態のFcドメインを含む抗体)の結合親和性の約70%超を示す場合に達成される。Fcドメイン、または前記Fcドメインを含む本発明のイムノコンジュゲート中に含まれる抗体は、このような親和性の約80%超、さらには約90%超を示し得る。ある特定の実施形態では、イムノコンジュゲート中に含まれる抗体のFcドメインは、非操作Fcドメインと比較して低減したエフェクター機能を有するように操作される。低減したエフェクター機能には、以下:低減した補体依存性細胞傷害(CDC)、低減した抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)、低減した抗体依存性細胞性食作用(ADCP)、低減したサイトカイン分泌、低減した抗原提示細胞による補体媒介性抗原取り込み、NK細胞に対する低減した結合性、マクロファージに対する低減した結合性、単球に対する低減した結合性、多形核細胞に対する低減した結合性、低減したアポトーシス誘導直接シグナル伝達、低減した標的結合抗体の交差結合、低減した樹状細胞成熟、または低減したT細胞プライミングのうち1つまたは複数が含まれ得るが、それに限定されない。一実施形態では、低減したエフェクター機能は、低減したCDC、低減したADCC、低減したADCP、および低減したサイトカイン分泌の群から選択される1つまたは複数である。特定の実施形態では、低減したエフェクター機能は、低減したADCCである。一実施形態では、低減したADCCは、非操作Fcドメイン(または非操作Fcドメインを含む抗体)により誘導されるADCCの20%未満である。
【0166】
一実施形態では、Fc受容体に対するFcドメインの結合親和性および/またはエフェクター機能を低減するアミノ酸突然変異は、アミノ酸置換である。一実施形態では、Fcドメインは、E233、L234、L235、N297、P331およびP329(Kabat EUインデックスによる番号付け)の群から選択される位置にアミノ酸置換を含む。より具体的な実施形態では、Fcドメインは、L234、L235およびP329の群から選択される位置にアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。一部の実施形態では、Fcドメインは、アミノ酸置換L234AおよびL235Aを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。このような一実施形態では、Fcドメインは、IgG1 Fcドメイン、特にヒトIgG1 Fcドメインである。一実施形態では、Fcドメインは、位置P329にアミノ酸置換を含む。より具体的な実施形態では、アミノ酸置換は、P329AまたはP329G、特にP329Gである(Kabat EUインデックスによる番号付け)。一実施形態では、Fcドメインは、位置P329にアミノ酸置換ならびにE233、L234、L235、N297およびP331から選択される位置にさらなるアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。より具体的な実施形態では、さらなるアミノ酸置換は、E233P、L234A、L235A、L235E、N297A、N297DまたはP331Sである。特定の実施形態では、Fcドメインは、位置P329、L234およびL235にアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。より特定の実施形態では、Fcドメインは、アミノ酸突然変異L234A、L235AおよびP329Gを含む(「P329G LALA」、「PGLALA」または「LALAPG」)。具体的には、特定の実施形態では、Fcドメインの各サブユニットは、アミノ酸置換L234A、L235AおよびP329Gを含み(Kabat EUインデックス番号付け)、すなわち、Fcドメインの第1のサブユニットおよび第2のサブユニットの各々において、234位のロイシン残基は、アラニン残基により置き換えられ(L234A)、235位のロイシン残基は、アラニン残基により置き換えられ(L235A)、329位のプロリン残基は、グリシン残基により置き換えられる(P329G)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。このような一実施形態では、Fcドメインは、IgG1 Fcドメイン、特にヒトIgG1 Fcドメインである。アミノ酸置換の「P329G LALA」組み合わせは、その全内容が本明細書に参照により援用されるPCT公報WO2012/130831に記載されるように、ヒトIgG1 FcドメインのFcγ受容体(および補体)結合性をほぼ完全に消失させる。WO2012/130831は、また、このような突然変異Fcドメインを調製する方法およびFc受容体の結合性またはエフェクター機能などのその特性を決定するための方法を記載している。
【0167】
IgG4抗体は、IgG1抗体と比較してFc受容体に対する低減した結合親和性および低減したエフェクター機能を示す。したがって、一部の実施形態では、本発明のイムノコンジュゲート中に含まれる抗体のFcドメインは、IgG4 Fcドメイン、特にヒトIgG4 Fcドメインである。一実施形態では、IgG4 Fcドメインは、位置S228にアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換S228Pを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。Fc受容体に対するその結合親和性および/またはそのエフェクター機能をさらに低減するために、一実施形態では、IgG4 Fcドメインは、位置L235にアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換L235Eを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。別の実施形態では、IgG4 Fcドメインは、位置P329にアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換P329Gを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。特定の実施形態では、IgG4 Fcドメインは、位置S228、L235およびP329にアミノ酸置換、具体的にはアミノ酸置換S228P、L235EおよびP329Gを含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。このようなIgG4 Fcドメイン突然変異体およびそれらのFcγ受容体結合特性は、その全内容が本明細書に参照により援用されるPCT公報WO2012/130831に記載されている。
【0168】
特定の実施形態では、ネイティブなIgG1 Fcドメインと比較してFc受容体に対する低減した結合親和性および/または低減したエフェクター機能を示すFcドメインは、アミノ酸置換L234A、L235Aおよび場合によりP329Gを含むヒトIgG1 Fcドメイン、またはアミノ酸置換S228P、L235Eおよび場合によりP329Gを含むヒトIgG4 Fcドメインである(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0169】
ある特定の実施形態では、FcドメインのN-グリコシル化は、除去されている。このような一実施形態では、Fcドメインは、位置N297にアミノ酸突然変異、特にアスパラギンをアラニンにより(N297A)またはアスパラギン酸(N297D)により置き換えるアミノ酸置換を含む(Kabat EUインデックスによる番号付け)。
【0170】
本明細書の上およびPCT公報WO2012/130831に記載されるFcドメインに加えて、低減したFc受容体結合性および/またはエフェクター機能を有するFcドメインには、また、Fcドメイン残基238、265、269、270、297、327および329のうち1つまたは複数の置換を有するFcドメインが含まれる(米国特許第6,737,056号)(Kabat EUインデックスによる番号付け)。このようなFc突然変異体には、残基265および297のアラニンへの置換を有する、いわゆる「DANA」Fc突然変異体(米国特許第7,332,581号)を含む、アミノ酸位置265、269、270、297および327のうち2つ以上に置換を有するFc突然変異体が含まれる。
【0171】
突然変異Fcドメインは、当該技術分野で周知の遺伝的または化学的方法を使用するアミノ酸欠失、置換、挿入または修飾により調製することができる。遺伝的方法には、コードDNA配列の部位特異的突然変異誘発、PCR、遺伝子合成、およびその他が含まれる場合がある。正確なヌクレオチド変化は、例えば、配列決定により検証することができる。
【0172】
Fc受容体との結合は、例えば、BIAcore装置(GE Healthcare)などの標準的な計装を使用して、ELISA、または表面プラズモン共鳴(SPR)により容易に決定することができ、このようなFc受容体は、組換え発現により得られる場合がある。あるいは、Fc受容体に対するFcドメインまたはFcドメインを含む抗体の結合親和性は、FcγIIIa受容体を発現しているヒトNK細胞などの特定のFc受容体を発現することが公知の細胞株を使用して評価される場合がある。
【0173】
Fcドメイン、またはFcドメインを含む抗体のエフェクター機能は、当該技術分野で公知の方法により測定することができる。対象となる分子のADCC活性を評定するためのインビトロアッセイの例は、米国特許第5,500,362号;Hellstromら、Proc Natl Acad Sci USA 83、7059-7063(1986)およびHellstromら、Proc Natl Acad Sci USA 82、1499-1502(1985);米国特許第5,821,337号;Bruggemannら、J Exp Med 166、1351-1361(1987)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法が、採用される場合がある(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology、Inc.Mountain View、CA);およびCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega、Madison、WI)を参照されたい)。このようなアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。代替的または追加的に、対象となる分子のADCC活性は、例えば、Clynesら、Proc Natl Acad Sci USA 95、652-656(1998)に開示されているような動物モデルにおいて、インビボで評定される場合がある。
【0174】
一部の実施形態では、補体成分、具体的にはC1qに対するFcドメインの結合性は、低減される。したがって、低減したエフェクター機能を有するようにFcドメインが操作された一部の実施形態では、前記低減したエフェクター機能は、低減したCDCを含む。Fcドメイン、またはFcドメインを含む抗体が、C1qに結合することができ、それゆえにCDC活性を有するかどうかを判定するために、C1q結合アッセイが実施される場合がある。例えば、WO2006/029879およびWO2005/100402におけるC1qおよびC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評定するために、CDCアッセイが行われる場合がある(例えば、Gazzano-Santoroら、J Immunol Methods 202、163(1996);Craggら、Blood 101、1045-1052(2003);ならびにCraggおよびGlennie、Blood 103、2738-2743(2004)を参照されたい)。
【0175】
FcRn結合性およびインビボクリアランス/半減期の決定も、当該技術分野で公知の方法を使用して行うことができる(例えば、Petkova、S.B.ら、Int’l.Immunol.18(12):1759-1769(2006);WO2013/120929を参照されたい)。
【0176】
本発明の特定の態様
一態様では、本発明は、突然変異IL-2ポリペプチドと、PD-1に結合する抗体とを含むイムノコンジュゲートを提供し、
その際、突然変異IL-2ポリペプチドは、アミノ酸置換F42A、Y45AおよびL72G(ヒトIL-2配列、配列番号19に対する番号付け)を含むヒトIL-2分子であり;
抗体は、(a)配列番号14のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および(b)配列番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0177】
一態様では、本発明は、突然変異IL-2ポリペプチドと、PD-1に結合する抗体とを含むイムノコンジュゲートを提供し、
その際、突然変異IL-2ポリペプチドは、アミノ酸置換T3A、F42A、Y45A、L72GおよびC125A(ヒトIL-2配列、配列番号19に対する番号付け)を含むヒトIL-2分子であり;
抗体は、(a)配列番号14のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および(b)配列番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0178】
一態様では、本発明は、突然変異IL-2ポリペプチドと、PD-1に結合する抗体とを含むイムノコンジュゲートを提供し、
その際、突然変異IL-2ポリペプチドは、配列番号20のアミノ酸配列を含み;
抗体は、(a)配列番号14のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、および(b)配列番号15のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む。
【0179】
本発明の上記態様のいずれかによる一実施形態では、抗体は、第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるヒトIgG1 Fcドメインを含むIgGクラスの免疫グロブリンであり、
その際、Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、366位のスレオニン残基は、トリプトファン残基により置き換えられており(T366W)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、407位のチロシン残基は、バリン残基により置き換えられており(Y407V)、場合により、366位のスレオニン残基は、セリン残基により置き換えられており(T366S)、368位のロイシン残基は、アラニン残基により置き換えられており(L368A)(Kabat EUインデックスによる番号付け)、
さらに、Fcドメインの各サブユニットは、アミノ酸置換L234A、L235AおよびP329Gを含む(Kabat EUインデックス番号付け)。
【0180】
この実施形態では、突然変異IL-2ポリペプチドは、そのアミノ末端アミノ酸で、配列番号21のリンカーペプチドを通じてFcドメインの第1のサブユニットのカルボキシ末端アミノ酸と融合されている場合がある。
【0181】
一態様では、本発明は、配列番号22の配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号23または配列番号24の配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、および配列番号25の配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含むイムノコンジュゲートを提供する。
【0182】
ポリヌクレオチド
本発明は、本明細書に記載のイムノコンジュゲートまたはその断片をコードする単離ポリヌクレオチドをさらに提供する。一部の実施形態では、前記断片は、抗原結合断片である。
【0183】
本発明のイムノコンジュゲートをコードするポリヌクレオチドは、イムノコンジュゲート全体をコードする単一のポリヌクレオチドまたは共発現される複数(例えば、2つ以上)のポリヌクレオチドとして発現される場合がある。共発現されるポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドは、例えば、ジスルフィド結合または他の手段により会合して、機能的イムノコンジュゲートを形成する場合がある。例えば、抗体の軽鎖部分は、抗体の重鎖部分と突然変異IL-2ポリペプチドとを含むイムノコンジュゲートの部分と別のポリヌクレオチドによりコードされる場合がある。共発現されると、重鎖ポリペプチドは、軽鎖ポリペプチドと会合してイムノコンジュゲートを形成する。別の例では、2つのFcドメインサブユニットのうち1つと、突然変異IL-2ポリペプチドとを含むイムノコンジュゲートの部分が、2つのFcドメインサブユニットのうち他方を含むイムノコンジュゲートの部分と別のポリヌクレオチドによりコードされることができる。共発現されると、Fcドメインサブユニットが会合してFcドメインを形成する。
【0184】
一部の実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、本明細書に記載の本発明によるイムノコンジュゲート全体をコードする。他の実施形態では、単離ポリヌクレオチドは、本明細書に記載の本発明によるイムノコンジュゲートに含まれるポリペプチドをコードする。
【0185】
一実施形態では、本発明の単離ポリヌクレオチドは、イムノコンジュゲート中に含まれる抗体の重鎖(例えば、免疫グロブリン重鎖)、および突然変異IL-2ポリペプチドをコードする。別の実施形態では、本発明の単離ポリヌクレオチドは、イムノコンジュゲート中に含まれる抗体の軽鎖をコードする。
【0186】
ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドまたは核酸は、DNAである。他の実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、例えばメッセンジャーRNA(mRNA)の形態の、RNAである。本発明のRNAは、一本鎖または二本鎖であり得る。
【0187】
組換え方法
本発明に有用な突然変異IL-2ポリペプチドは、当該技術分野で周知の遺伝的または化学的方法を使用して、欠失、置換、挿入または修飾により調製することができる。遺伝的方法は、コードDNA配列の部位特異的突然変異誘発、PCR、遺伝子合成、およびその他を含む場合がある。正しいヌクレオチド変化は、例えば、配列決定により検証することができる。これに関して、ネイティブなIL-2のヌクレオチド配列は、Taniguchiら(Nature 302、305-10(1983))により記載されており、ヒトIL-2をコードする核酸は、アメリカンタイプカルチャーコレクション(Rockville MD)などの公的寄託期間から入手可能である。ネイティブなヒトIL-2の配列は、配列番号19に示される。置換または挿入は、天然および非天然アミノ酸残基を伴い得る。アミノ酸修飾には、グリコシル化部位の付加または糖の結合、およびその他などの周知の化学修飾法が含まれる。
【0188】
本発明のイムノコンジュゲートは、例えば、固体ペプチド合成(例えば、メリフィールド固相合成)または組換え産生により得られる場合がある。組換え産生のために、例えば上記のようなイムノコンジュゲート(断片)をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドが、単離され、宿主細胞におけるさらなるクローニングおよび/または発現のために1つまたは複数のベクターに挿入される。このようなポリヌクレオチドは、通常の手順を使用して容易に単離および配列決定され得る。一実施形態では、本発明のポリヌクレオチドのうち1つまたは複数を含むベクター、好ましくは発現ベクターが、提供される。当業者に周知の方法を使用して、イムノコンジュゲート(断片)のコード配列を、適切な転写/翻訳コントロールシグナルと共に含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法には、インビトロ組換えDNA技術、合成技術およびインビボ組換え/遺伝子組換えが含まれる。例えば、Maniatisら、MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、Cold Spring Harbor Laboratory、N.Y.(1989);およびAusubelら、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY、Greene Publishing Associates and Wiley Interscience、N.Y(1989)に記載されている技術を参照されたい。発現ベクターは、プラスミド、ウイルスの一部の可能性があり、または核酸断片であり得る。発現ベクターは、イムノコンジュゲート(断片)をコードするポリヌクレオチド(すなわち、コード化領域)が、プロモーターおよび/または他の転写もしくは翻訳コントロールエレメントと動作可能に関連してクローニングされる、発現カセットを含む。本明細書に使用される「コード化領域」は、アミノ酸に翻訳されるコドンからなる核酸の一部分である。「停止コドン」(TAG、TGA、またはTAA)はアミノ酸に翻訳されないものの、存在する場合はコード化領域の一部と見なされる場合があるが、いかなるフランキング配列、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、イントロン、5’および3’非翻訳領域、ならびにその他も、コード化領域の一部ではない。2つ以上のコード化領域が、例えば、単一のベクター上の単一のポリヌクレオチドコンストラクト、または例えば、別々の(異なる)ベクター上の別々のポリヌクレオチドコンストラクト中に存在し得る。さらに、任意のベクターが、単一のコード化領域を含有する場合または2つ以上のコード化領域を含む場合があり、例えば、本発明のベクターは、1つまたは複数のポリペプチドをコードする場合があり、それらのポリペプチドは、翻訳後または翻訳と同時にタンパク質分解切断により最終タンパク質中に分離される。加えて、本発明のベクター、ポリヌクレオチド、または核酸は、本発明のイムノコンジュゲート、またはその変異体もしくは誘導体をコードするポリヌクレオチドに融合されたまたは融合されていない、異種コード化領域をコードする場合がある。異種コード化領域には、分泌シグナルペプチドまたは異種機能的ドメインなどの専門のエレメントまたはモチーフが含まれるが、それに限定されない。動作可能な関連は、遺伝子産物、例えば、ポリペプチドについてのコード化領域が、遺伝子産物の発現を調節配列の影響またはコントロール下に置く方法で1つまたは複数の調節配列と関連する場合である。プロモーター機能の誘導が、所望の遺伝子産物をコードするmRNAの転写を結果として生じ、2つのDNA断片の間の連結の性質が、遺伝子産物の発現を指示する発現調節配列の能力に干渉せず、DNA鋳型が転写される能力にも干渉しないならば、2つのDNA断片(ポリペプチドコード化領域およびそれに関連するプロモーターなど)は、「動作可能に関連している」。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の転写をプロモーターが引き起こすことができたならば、プロモーター領域は、その核酸と動作可能に関連している。プロモーターは、事前に決定された細胞だけにDNAの実質的な転写を指示する細胞特異的プロモーターであり得る。プロモーター以外に、他の転写コントロールエレメント、例えば、エンハンサー、オペレーター、リプレッサー、および転写終結シグナルは、ポリヌクレオチドと動作可能に関連して細胞特異的転写を指示することができる。適切なプロモーターおよび他の転写コントロール領域が、本明細書に開示されている。多様な転写コントロール領域は、当業者に公知である。これらには、非限定的に、サイトメガロウイルス(例えば、最初期プロモーター、イントロン-Aと併用)、シミアンウイルス40(例えば、初期プロモーター)、およびレトロウイルス(例えば、ラウス肉腫ウイルスなど)由来のプロモーターおよびエンハンサーセグメントなどの脊椎動物細胞において機能する転写コントロール領域が含まれるが、それに限定されない。他の転写コントロール領域には、アクチン、熱ショックタンパク質、ウシ成長ホルモンおよびウサギβ-グロビン、ならびに真核細胞における遺伝子発現をコントロールすることができる他の配列などの脊椎動物遺伝子に由来するものが含まれる。追加的な適切な転写コントロール領域には、組織特異的プロモーターおよびエンハンサーならびに誘導性プロモーター(例えば、テトラサイクリン誘導可能プロモーター)が含まれる。同様に、多様な翻訳コントロールエレメントが、当業者に公知である。これらには、リボソーム結合部位、翻訳開始および終止コドン、ならびにウイルス系に由来するエレメント(特に、CITE配列とも呼ばれる配列内リボソーム進入部位、またはIRES)が含まれるが、それに限定されない。発現カセットは、複製開始点、および/もしくはレトロウイルス長末端反復(LTR)、またはアデノ随伴ウイルス(AAV)末端逆位配列(ITR)などの染色体組み込みエレメントなどの他の特徴も含む場合がある。
【0189】
本発明のポリヌクレオチドおよび核酸コード化領域は、本発明のポリヌクレオチドによりコードされるポリペプチドの分泌を指示する分泌ペプチドまたはシグナルペプチドをコードする追加的なコード化領域と関連し得る。シグナル仮説によると、哺乳類細胞により分泌されるタンパク質は、粗面小胞体を通過する成長中タンパク質鎖の搬出が開始された後、成熟タンパク質から切断されるシグナルペプチドまたは分泌リーダー配列を有する。当業者は、脊椎動物細胞により分泌されるポリペプチドが、一般的に、ポリペプチドのN末端と融合されたシグナルペプチドを有し、それが、翻訳されたポリペプチドから切断されて分泌型または「成熟」型のポリペプチドを産生することを認識している。例えば、ヒトIL-2は、ポリペプチドのN末端に20アミノ酸のシグナル配列を有して翻訳され、それが続いて切り離されて、133アミノ酸の成熟ヒトIL-2を産生する。ある特定の実施形態では、ネイティブなシグナルペプチド、例えば、IL-2シグナルペプチドまたは免疫グロブリン重鎖もしくは軽鎖シグナルペプチド、あるいはそれと動作可能に関連するポリペプチドの分泌を指示する能力を保持する配列の機能的誘導体が使用される。あるいは、異種哺乳類シグナルペプチド、またはその機能的誘導体が、使用される場合がある。例えば、野生型リーダー配列が、ヒト組織プラスミノーゲン活性化因子(TPA)またはマウスβ-グルクロニダーゼのリーダー配列により置換される場合がある。
【0190】
その後の精製を容易にするまたはイムノコンジュゲートの標識を援助するために使用することができる短タンパク質配列(例えば、ヒスチジンタグ)をコードするDNAが、ポリヌクレオチドをコードするイムノコンジュゲート(断片)内またはその末端に含まれる場合がある。
【0191】
さらなる実施形態では、1つまたは複数の本発明のポリヌクレオチドを含む宿主細胞が、提供される。ある特定の実施形態では、本発明の1つまたは複数のベクターを含む宿主細胞が、提供される。ポリヌクレオチドおよびベクターは、それぞれポリヌクレオチドおよびベクターと関係して、本発明に記載の特徴のうちいずれかを単一でまたは組み合わせて組み込む場合がある。このような一実施形態では、宿主細胞は、本発明のイムノコンジュゲートをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを含む1つまたは複数のベクターを含む(例えば、それで形質転換またはそれをトランスフェクトされている)。本明細書に使用される「宿主細胞」という用語は、本発明のイムノコンジュゲートまたはその断片を生成するように操作することができる任意の種類の細胞系を指す。イムノコンジュゲートの発現を複製および支持するために適した宿主細胞は、当該技術分野で周知である。このような細胞は、特定の発現ベクターを必要に応じてトランスフェクトまたは形質導入される場合があり、大規模発酵槽に接種するために大量のベクター含有細胞を成長させて、臨床応用のために十分な量のイムノコンジュゲートを得ることができる。適切な宿主細胞には、大腸菌などの原核微生物、またはチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)、昆虫細胞、もしくはその他などの様々な真核細胞が含まれる。例えば、特にグリコシル化が必要でない場合、ポリペプチドは、細菌において産生され得る。発現後、ポリペプチドが、細菌細胞ペーストから可溶型画分中に単離される場合があり、それをさらに精製することができる。原核生物に加えて、糸状菌または酵母などの真核微生物は、グリコシル化経路が「ヒト化」されていて部分的または完全なヒトグリコシル化パターンを有するポリペプチドの産生を結果として生じる真菌および酵母株を含む、ポリペプチドコードベクターに適したクローニング宿主または発現宿主である。Gerngross、Nat Biotech 22、1409-1414(2004)、およびLiら、Nat Biotech 24、210-215(2006)を参照されたい。(グリコシル化)ポリペプチドの発現に適した宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物および脊椎動物)にも由来する。無脊椎動物細胞の例には、植物細胞および昆虫細胞が含まれる。昆虫細胞と共に、特にヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションのために使用され得る数多くのバキュロウイルス株が、同定されている。植物細胞培養物も宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、および同第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術を記載している)を参照されたい。脊椎動物細胞も宿主として使用される場合がある。例えば、懸濁状態での成長に適応した哺乳類細胞株が、有用な場合がある。有用な哺乳類宿主細胞株の他の例は、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7);ヒト胎児性腎臓株(例えば、Grahamら、J Gen Virol 36、59(1977)に記載の293または293T細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather、Biol Reprod 23、243-251(1980)に記載のTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK)、buffalo系ラット肝臓細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、マウス乳房腫瘍細胞(MMT 060562)、TRI細胞(例えば、Matherら、Annals N.Y.Acad Sci 383、44-68(1982)に記載)、MRC 5細胞、およびFS4細胞である。他の有用な哺乳類宿主細胞株には、dhfr-チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞を含むCHO細胞(Urlaubら、Proc Natl Acad Sci USA 77、4216(1980));ならびにYO、NS0、P3X63およびSp2/0などの骨髄腫細胞株が含まれる。タンパク質産生に適したある特定の哺乳類宿主細胞株の概説については、例えば、YazakiおよびWu、Methods in Molecular Biology、248巻(B.K.C.Lo編、Humana Press、Totowa、NJ)、255-268頁(2003)を参照されたい。宿主細胞には、いくつかを挙げるならば、培養細胞、例えば、哺乳類培養細胞、酵母細胞、昆虫細胞、細菌細胞および植物細胞だけでなく、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物または培養植物または動物組織内に含まれる細胞も含まれる。一実施形態では、宿主細胞は、真核細胞、好ましくは、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胎児性腎臓(HEK)細胞またはリンパ球系細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)などの哺乳類細胞である。
【0192】
これらの系において外来遺伝子を発現させるための標準的な技術は、当該技術分野で公知である。抗体の重鎖または軽鎖のいずれかと融合した突然変異IL-2ポリペプチドを発現している細胞は、発現される突然変異IL-2融合産物が、重鎖および軽鎖の両方を有する抗体であるように、他方の抗体鎖も発現するように操作される場合がある。
【0193】
一実施形態では、本発明によるイムノコンジュゲートを産生する方法であって、本明細書に提供されるイムノコンジュゲートをコードする1つまたは複数のポリヌクレオチドを含む宿主細胞を、イムノコンジュゲートの発現に適した条件で培養すること、および場合により宿主細胞(または宿主細胞の培地)からイムノコンジュゲートを回収することを含む方法が提供される。
【0194】
本発明のイムノコンジュゲートでは、突然変異IL-2ポリペプチドが、抗体と遺伝的に融合されている場合、または抗体と化学的にコンジュゲートされる場合がある。IL-2ポリペプチドと抗体との遺伝的融合は、IL-2配列がポリペプチドと直接またはリンカー配列を通じて間接的に融合されているように設計することができる。組成物およびリンカー長は、当該技術分野で周知の方法により決定される場合があり、有効性について試験される場合がある。特定のリンカーペプチドが、本明細書に記載されている。融合物の個別の成分を分離するための切断部位を組み込むために、追加的な配列、所望により例えばエンドペプチダーゼ認識配列が含まれる場合もある。加えて、IL-2融合タンパク質は、また、当該技術分野で周知であるポリペプチド合成方法(例えば、メリフィールド固相合成)を使用して、化学的に合成される場合がある。突然変異IL-2ポリペプチドは、周知の化学的コンジュゲーション法を使用して、他の分子、例えば、抗体と化学的にコンジュゲートされる場合がある。当該技術分野で周知のホモ機能性およびヘテロ機能性架橋試薬などの二機能性架橋試薬をこの目的のために使用することができる。使用すべき架橋試薬の種類は、IL-2とカップリングすべき分子の性質に依存し、当業者により容易に同定されることができる。代替的または追加的に、コンジュゲートされることが意図される突然変異IL-2および/または分子が、化学的に誘導体化される場合があり、それにより、これら2つを当該技術分野でも周知のように別々の反応でコンジュゲートすることができる。
【0195】
本発明のイムノコンジュゲートは、抗体を含む。抗体を産生する方法は、当該技術分野で周知である(例えば、HarlowおよびLane、「Antibodies、a laboratory manual」、Cold Spring Harbor Laboratory、1988を参照されたい)。天然に存在しない抗体は、固相ペプチド合成を使用して構築することができ、組換え産生することができ(例えば、米国特許第4,186,567号に記載のように)、または例えば可変重鎖および可変軽鎖を含むコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることにより得ることができる(例えば、McCaffertyに授与された米国特許第5,969,108号参照)。イムノコンジュゲート、抗体、およびそれを産生するための方法は、また、例えばPCT公報WO2011/020783、WO2012/107417、およびWO2012/146628に詳細に記載されており、これらの各々は、全体として参照により本明細書に援用される。
【0196】
任意の動物種の抗体が、本発明のイムノコンジュゲートに使用される場合がある。本発明に有用な非限定的な抗体は、マウス、霊長類、またはヒト起源であり得る。イムノコンジュゲートが、ヒトの使用を目的とするならば、抗体の定常領域がヒト由来であるキメラ形態の抗体が使用され得る。ヒト化または完全ヒト型の抗体は、また、当該技術分野で周知の方法により調製することができる(例えば、Winterに授与された米国特許第5,565,332号を参照されたい)。ヒト化は、(a)重要なフレームワーク残基(例えば、良好な抗原結合親和性もしくは抗体機能の保持に重要な残基)を保持するまたは保持しないヒト(例えば、レシピエント抗体)フレームワーク領域および定常領域上に非ヒト(例えば、ドナー抗体)CDRをグラフトすること、(b)ヒトフレームワーク領域および定常領域上に非ヒト特異性決定領域(SDRもしくはa-CDR;抗体-抗原相互作用に重要な残基)だけをグラフトすること、または(c)非ヒト可変ドメイン全体を移植するが、表面残基の置き換えによりそれらをヒト様区分で「覆い隠すこと」を含むが、それに限定されない様々な方法により達成される場合がある。ヒト化抗体およびそれらを作製する方法は、例えば、AlmagroおよびFransson、Front.Biosci.13:1619-1633(2008)に概説があり、例えば、Riechmannら、Nature 332:323-329(1988);Queenら、Proc.Nat’l Acad.Sci.USA 86:10029-10033(1989);米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、および同第7,087,409号;Kashmiriら、Methods 36:25-34(2005)(特異性決定領域(SDR)のグラフト化を記載している);Padlan、Mol.Immunol.28:489-498(1991)(「リサーフェシング(resurfacing)」を記載している);Dall’Acquaら、Methods 36:43-60(2005)(「FRシャフリング」を記載している);ならびにOsbournら、Methods 36:61-68(2005)およびKlimkaら、Br.J.Cancer、83:252-260(2000)(FRシャフリングへの「ガイド下選択」手法を記載している)にさらに記載されている。ヒト化のために使用され得るヒトフレームワーク領域には、「best-fit」法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Simsら J.Immunol.151:2296(1993)参照);特定のサブグループの軽鎖または重鎖可変領域のヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carterら Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:4285(1992);およびPrestaら、J.Immunol.、151:2623(1993)参照);ヒト成熟(体細胞突然変異)フレームワーク領域またはヒト生殖系列フレームワーク領域(例えば、AlmagroおよびFransson、Front.Biosci.13:1619-1633(2008)参照);ならびにFRライブラリーをスクリーニングすることに由来するフレームワーク領域(例えば、Bacaら、J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)およびRosokら、J.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)参照)が含まれるが、それに限定されない。
【0197】
当該技術分野で公知の様々な技術を使用してヒト抗体が産生され得る。ヒト抗体は、一般的に、van Dijkおよびvan de Winkel、Curr Opin Pharmacol 5、368-74(2001)およびLonberg、Curr Opin Immunol 20、450-459(2008)に記載されている。ヒト抗体は、抗原誘発に応答してインタクトなヒト抗体またはヒト可変領域を有するインタクトな抗体を産生するように修飾されたトランスジェニック動物に、免疫原を投与することにより調製される場合がある。このような動物は、典型的には、ヒト免疫グロブリン座位の全てまたは一部分を含有する。これらの座位は、内因性の免疫グロブリン座位を置き換える、または染色体外に存在するもしくは動物の染色体内にランダムに組み込まれる。このようなトランスジェニックマウスでは、内因性の免疫グロブリン座位は、一般的に不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg、Nat.Biotech.23:1117-1125(2005)を参照されたい。例えば、XENOMOUSE(商標)技術を記載している米国特許第6,075,181号および同第6,150,584号;HUMAB(登録商標)技術を記載している米国特許第5,770,429号;K-M MOUSE(登録商標)技術を記載している米国特許第7,041,870号、ならびにVELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載している米国特許出願公開第2007/0061900号)も参照されたい。このような動物により生成されるインタクトな抗体からのヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることにより、さらに修飾される場合がある。
【0198】
ヒト抗体は、また、ハイブリドーマ-ベース法により作製することができる。ヒトモノクローナル抗体の産生のためのヒト骨髄腫細胞株およびマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株が、記載されている。(例えば、Kozbor J.Immunol.、133:3001(1984);Brodeurら、Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications、51-63頁(Marcel Dekker、Inc.、New York、1987);およびBoernerら、J.Immunol.、147:86(1991)を参照されたい)。ヒトB細胞ハイブリドーマ技術により生成されるヒト抗体は、また、Liら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、103:3557-3562(2006)に記載されている。追加的な方法には、例えば、米国特許第7,189,826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載している)およびNi、Xiandai Mianyixue、26(4):265-268(2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載している)に記載された方法が含まれる。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)は、また、VollmersおよびBrandlein、Histology and Histopathology、20(3):927-937(2005)ならびにVollmersおよびBrandlein、Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology、27(3):185-91(2005)に記載されている。
【0199】
ヒト抗体は、また、本明細書に記載のヒト抗体ライブラリーからの単離により生成され得る。
【0200】
本発明に有用な抗体は、所望の1つまたは複数の活性を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングすることにより単離される場合がある。コンビナトリアルライブラリーをスクリーニングするための方法は、例えば、Lernerら、Nature Reviews 16:498-508(2016)に概説がある。例えば、ファージディスプレイライブラリーを生成し、所望の結合特徴を有する抗体についてこのようなライブラリーをスクリーニングするために、当該技術分野で多様な方法が公知である。このような方法は、例えば、Frenzelら、mAbs 8:1177-1194(2016);Bazanら、Human Vaccines and Immunotherapeutics 8:1817-1828(2012)およびZhaoら、Critical Reviews in Biotechnology 36:276-289(2016)だけでなく、Hoogenboomら、Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brienら編、Human Press、Totowa、NJ、2001)MarksおよびBradbury、Methods in Molecular Biology 248:161-175(Lo編、Human Press、Totowa、NJ、2003)に概説がある。
【0201】
ある特定のファージディスプレイ法では、VH遺伝子およびVL遺伝子のレパートリーが、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により別々にクローニングされ、ファージライブラリー中にランダムに組み換えられ、次いで、Winterら、Annual Review of Immunology 12:433-455(1994)に記載されるように、抗原結合性ファージについてファージライブラリーをスクリーニングすることができる。ファージは、典型的には、抗体断片を単鎖Fv(scFv)断片またはFab断片のいずれかとしてディスプレイする。免疫化された供給源からのライブラリーは、ハイブリドーマを構築する必要なしに免疫原に対する高親和性抗体を提供する。あるいは、ナイーブレパートリーを(例えばヒトから)クローニングして、Griffithsら、EMBO Journal 12:725-734(1993)により記載されるように、全く免疫化せずに広範囲の非自己抗原およびまた自己抗原に対する単一起源の抗体を提供することができる。最終的に、HoogenboomおよびWinterによりJournal of Molecular Biology 227:381-388(1992)に記載されるように、幹細胞から再配列されていないV遺伝子セグメントをクローニングすること、ならびに高可変CDR3領域をコードし、インビトロ再配列を達成するランダム配列を含有するPCRプライマーを使用することにより、ナイーブライブラリーを合成的に作製することもできる。ヒト抗体のファージライブラリーを記載している特許公開には、例えば:米国特許第5,750,373号;同第7,985,840号;同第7,785,903号および同第8,679,490号ならびに米国特許公開第2005/0079574号、同第2007/0117126号、同第2007/0237764号および同第2007/0292936号が含まれる。所望の1つまたは複数の活性を有する抗体についてコンビナトリアルライブラリーをスクリーニングする、当該技術分野で公知の方法のさらなる例には、リボソームおよびmRNAディスプレイのみならず、細菌、哺乳類細胞、昆虫細胞または酵母細胞への抗体ディスプレイおよび選択のための方法が含まれる。酵母表面ディスプレイのための方法は、例えば、Schollerら、Methods in Molecular Biology 503:135-56(2012)およびCherfら、Methods in Molecular biology 1319:155-175(2015)のみならず、Zhaoら、Methods in Molecular Biology 889:73-84(2012)に概説がある。リボソームディスプレイのための方法は、例えば、Heら、Nucleic Acids Research 25:5132-5134(1997)およびHanesら、PNAS 94:4937-4942(1997)に記載されている。
【0202】
本発明のイムノコンジュゲートのさらなる化学修飾が、望ましい場合がある。例えば、免疫原性および短い半減期の問題が、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール(PPG)などの実質的に直鎖のポリマーとのコンジュゲーションにより改善され得る(例えば、WO87/00056参照)。
【0203】
本明細書に記載のように調製されたイムノコンジュゲートは、高速液体クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、アフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、およびその他などの当技術分野において公知の技術により精製される場合がある。特定のタンパク質を精製するために使用される実際の状況は、一部、実効電荷、疎水性、親水性などの要因に依存し、当業者に明白であろう。アフィニティークロマトグラフィー精製のために、イムノコンジュゲートが結合する抗体、リガンド、受容体または抗原を使用することができる。例えば、突然変異IL-2ポリペプチドと特異的に結合する抗体が、使用される場合がある。本発明のイムノコンジュゲートのアフィニティークロマトグラフィー精製のために、プロテインAまたはプロテインGを有するマトリックスが使用される場合がある。例えば、順次プロテインAまたはGアフィニティークロマトグラフィーおよびサイズ排除クロマトグラフィーを使用して、本質的に実施例に記載されるようにイムノコンジュゲートを単離することができる。イムノコンジュゲートの純度は、ゲル電気泳動、高速液体クロマトグラフィー、およびその他を含む、多様な周知の分析法のいずれかにより決定することができる。
【0204】
組成物、製剤、および投与経路
さらなる態様では、本発明は、例えば、下記の治療法のいずれかに使用するための、本明細書に記載のイムノコンジュゲートを含む薬学的組成物を提供する。一実施形態では、薬学的組成物は、本明細書に提供されるイムノコンジュゲートのいずれかと、薬学的に許容される担体とを含む。別の実施形態では、薬学的組成物は、本明細書に提供されるイムノコンジュゲートのいずれか、および少なくとも1つの追加的な治療剤、例えば下記の治療剤を含む。
【0205】
本発明のイムノコンジュゲートをインビボ投与に適した形態で産生する方法であって、(a)本発明によるイムノコンジュゲートを得ること、および(b)イムノコンジュゲートを、少なくとも1つの薬学的に許容される担体と共に製剤化することであって、イムノコンジュゲートの調製物が、インビボ投与のために製剤化されることを含む方法が、さらに提供される。
【0206】
本発明の薬学的組成物は、薬学的に許容される担体中に溶解または分散された治療的有効量のイムノコンジュゲートを含む。「薬学的または薬理学的に許容される」という語句は、採用される投薬量および濃度でレシピエントに一般的に無毒であり、すなわち、例えば必要に応じてヒトなどの動物に投与されたときに有害反応、アレルギー反応または他の不都合な反応を産生しない、分子実体および組成物を指す。イムノコンジュゲートと、場合により追加的な有効成分とを含有する薬学的組成物の調製物は、参照により本明細書に援用されるRemington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Printing Company、1990により例示されるように、本開示に照らして当業者に公知である。そのうえ、動物(例えば、ヒト)の投与のために、調製物が、FDA生物学的基準部署または他の国の相当する当局により要求される無菌状態、発熱性、全般安全性および純度基準に適合すべきであることが理解されている。好ましい組成物は、凍結乾燥製剤または水溶液である。本明細書に使用される「薬学的に許容される担体」には、任意および全ての溶媒、バッファー、分散媒、コーティング剤、界面活性剤、抗酸化剤、防腐剤(例えば、抗細菌剤、抗真菌剤)、等張化剤、吸収遅延剤、塩、防腐剤、抗酸化剤、タンパク質、薬物、薬物安定剤、ポリマー、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、香味剤、色素、当業者に公知の物質およびその組み合わせなどが含まれる(例えば、本明細書に参照により援用されるRemington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Mack Printing Company、1990、1289-1329頁を参照されたい)。任意の一般的担体が有効成分と不適合な場合を除き、治療用組成物または薬学的組成物中でのその使用が考えられている。
【0207】
本発明のイムノコンジュゲート(および任意の追加的な治療剤)は、非経口、肺内、および鼻腔内を含む、任意の適切な手段により、所望であれば局所治療、病巣内投与のために投与することができる。非経口点滴には、筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。投薬は、投与が急速または慢性であるかどうかに一部依存して、任意の適切な経路により、例えば、静脈内または皮下注射などの注射によることができる。
【0208】
非経口組成物には、注射、例えば、皮下、皮内、病巣内、静脈内、動脈内、筋肉内、髄腔内または腹腔内注射による投与のために設計されたものが含まれる。注射のために、本発明のイムノコンジュゲートは、水溶液、好ましくはハンクス液、リンゲル液、または生理食塩水バッファーなどの生理学的に適合するバッファー中に製剤化され得る。溶液は、懸濁化剤、安定化剤および/または分散剤などの調合剤を含有する場合がある。あるいは、イムノコンジュゲートは、使用前に適切なビヒクル、例えば、滅菌された発熱物質不含水で構成するために粉末形態であり得る。滅菌注射用溶液は、適切な溶媒中に本発明のイムノコンジュゲートを所要の量で、必要に応じて、下に挙げた様々な他の成分と共に組み込むことにより調製される。無菌状態は、例えば、滅菌濾過膜を通した濾過により容易に達成され得る。一般的に、分散体は、基本分散媒および/または他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に様々な滅菌有効成分を組み込むことにより調製される。滅菌注射用溶液、懸濁物またはエマルジョンの調製のための滅菌粉末の場合、好ましい調製方法は、事前に滅菌濾過されたその液体培地から有効成分と、任意の追加的な所望の成分との粉末を回収する真空乾燥または凍結乾燥技術である。液体培地は、必要に応じて適切に緩衝化されるべきであり、液体希釈剤は、最初に等張にされ、その後十分な食塩水またはグルコースと共に注射される。組成物は、製造および保存の条件下で安定であり、細菌および真菌などの微生物の混入作用から保護されなければならない。エンドトキシンの混入は、最小限に、例えば、0.5ng/mgタンパク質未満の安全レベルに保つべきであることが認識されている。適切な薬学的に許容される担体には、リン酸、クエン酸、および他の有機酸などのバッファー;アスコルビン酸およびメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド;ベンゼトニウムクロリド;フェノール、ブチルアルコールもしくはベンジルアルコール;メチルパラベンもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満の)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、もしくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、もしくはリジンなどのアミノ酸;グルコース、マンノース、またはデキストリンを含む単糖類、二糖類、および他の糖;EDTAなどのキレート剤;スクロース、マンニトール、トレハロースもしくはソルビトールなどの糖類;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/またはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤が含まれるが、それに限定されない。水性注射用懸濁液は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、デキストラン、またはその他などの、懸濁液の粘度を増加させる化合物を含有する場合がある。場合により、懸濁液は、また、化合物の溶解度を増加させて、高濃度溶液の調製を可能にする、適切な安定剤または薬剤を含有する場合がある。追加的に、活性化合物の懸濁液が、必要に応じて油性注射用懸濁液として調製され得る。適切な親油性溶媒またはビヒクルには、ゴマ油などの脂肪油、またはエチルクレエート(ethyl cleats)もしくはトリグリセリドなどの合成脂肪酸エステル、またはリポソームが含まれる。
【0209】
有効成分は、例えば、コアセルベーション技術もしくは界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースもしくはゼラチン-マイクロカプセルおよびポリ-(メチルメタクリレート)マイクロカプセル、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルジョン中に封入される場合がある。このような技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第18版、Mack Printing Company、1990)に開示されている。徐放性調製物が調製される場合がある。徐放性調製物の適切な例には、ポリペプチドを含有する固体疎水性ポリマーの半透性マトリックスが含まれ、このマトリックスは、造形品、例えば、フィルム、またはマイクロカプセルの形態である。特定の実施形態では、注射用組成物の長期吸収は、例えば、モノステアリン酸アルミニウム、ゼラチンまたはその組み合わせなどの吸収遅延剤の組成物中での使用によりもたらすことができる。
【0210】
上記組成物に加えて、イムノコンジュゲートは、また、持効性製剤として製剤化される場合がある。このような長期作用製剤は、植え込み(例えば、皮下もしくは筋肉内)または筋肉内注射により投与される場合がある。したがって、例えば、イムノコンジュゲートは、適切なポリマー材料もしくは疎水性材料(例えば、許容される油中のエマルジョンとして)またはイオン交換樹脂と共に、あるいはやや溶けにくい誘導体、例えば、やや溶けにくい塩として製剤化される場合がある。
【0211】
本発明のイムノコンジュゲートを含む薬学的組成物は、一般的な混合、溶解、乳化、カプセル化、封入または凍結乾燥プロセスにより製造される場合がある。薬学的組成物は、1つまたは複数の生理学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤またはタンパク質のプロセシングを促進する助剤を使用して、一般的な方法で、薬学的に使用できる調製物に製剤化される場合がある。妥当な製剤は、選ばれる投与経路に依存する。
【0212】
イムノコンジュゲートは、遊離酸または塩基、中性または塩形態として組成物に製剤化される場合がある。薬学的に許容される塩は、遊離酸または塩基の生物活性を実質的に保持する塩である。これらには、酸付加塩、例えば、タンパク質様組成物の遊離アミノ基と形成されるもの、あるいは例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、シュウ酸、酒石酸もしくはマンデル酸などの有機酸と形成されるものが含まれる。遊離カルボキシル基と形成される塩は、また、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化カルシウムもしくは水酸化第二鉄などの無機塩基;またはイソプロピルアミン、トリメチルアミン、ヒスチジンもしくはプロカインなどの有機塩基から誘導することができる。薬学的な塩は、対応する遊離塩基形態よりも水性溶媒および他のプロトン性溶媒中の溶解性が高い傾向にある。
【0213】
治療方法および組成物
本明細書に提供されるイムノコンジュゲートのいずれかが、治療方法に使用され得る。本発明のイムノコンジュゲートは、免疫療法剤として、例えば、がんの治療に使用される場合がある。
【0214】
治療方法に使用するために、本発明のイムノコンジュゲートは、医学行動規範と一致した様式で製剤化、用量決定、および投与される。これに関連して考慮するための要因には、治療されている特定の障害、治療されている特定の哺乳類、個別の患者の臨床状態、障害の経過、薬剤の送達部位、投与方法、投与計画作成、および医学施術者に公知の他の要因が含まれる。
【0215】
本発明のイムノコンジュゲートは、宿主の免疫系の刺激が有益である病状、特に、増強した細胞性免疫応答が望ましい状態を治療するのに特に有用であり得る。これらには、宿主免疫応答が不十分または欠損している病状が含まれ得る。本発明のイムノコンジュゲートが投与され得る病状は、例えば、細胞性免疫応答が特異的免疫に重要なメカニズムである腫瘍または感染症である。本発明のイムノコンジュゲートは、それ自体で、または任意の適切な薬学的組成物として投与され得る。
【0216】
一態様では、医薬として使用するための本発明のイムノコンジュゲートが提供される。さらなる態様では、疾患の治療に使用するための本発明のイムノコンジュゲートが提供される。ある特定の実施形態では、治療方法に使用するための本発明のイムノコンジュゲートが提供される。一実施形態では、本発明は、それを必要とする個体における疾患の治療に使用するための、本明細書に記載のイムノコンジュゲートを提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、治療的有効量のイムノコンジュゲートを個体に投与することを含む、疾患を有する個体を治療する方法に使用するためのイムノコンジュゲートを提供する。ある特定の実施形態では、処置すべき疾患は、増殖性障害である。特定の実施形態では、疾患は、がんである。ある特定の実施形態では、この方法は、個体に、治療的有効量の少なくとも1つの追加的な治療剤、例えば、治療すべき疾患ががんならば抗がん剤を投与することをさらに含む。さらなる実施形態では、本発明は、免疫系の刺激に使用するためのイムノコンジュゲートを提供する。ある特定の実施形態では、本発明は、有効量のイムノコンジュゲートを個体に投与して免疫系を刺激することを含む、個体における免疫系を刺激する方法に使用するためのイムノコンジュゲートを提供する。上記実施形態のいずれかによる「個体」は、哺乳類、好ましくはヒトである。上記実施形態のいずれかによる「免疫系の刺激」には、免疫機能における全般的増加、T細胞機能における増加、B細胞機能における増加、リンパ球機能の回復、IL-2受容体の発現における増加、T細胞応答性における増加、ナチュラルキラー細胞活性またはリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞活性における増加、およびその他のうち任意の1つまたは複数が含まれる場合がある。
【0217】
さらなる態様では、本発明は、医薬の製造または調製における本発明のイムノコンジュゲートの使用を提供する。一実施形態では、医薬は、それを必要とする個体における疾患の治療のためである。一実施形態では、医薬は、治療的有効量の医薬を、疾患を有する個体に投与することを含む、疾患を治療する方法に使用するためである。ある特定の実施形態では、治療すべき疾患は、増殖性障害である。特定の実施形態では、疾患は、がんである。一実施形態では、この方法は、治療的有効量の少なくとも1つの追加的な治療剤、例えば、治療すべき疾患ががんならば、抗がん剤を個体に投与することをさらに含む。さらなる実施形態では、医薬は、免疫系を刺激するためである。さらなる実施形態では、医薬は、有効量の医薬を個体に投与して、免疫系を刺激することを含む、個体における免疫系を刺激する方法に使用するためである。上記実施形態のいずれかによる「個体」は、哺乳類、好ましくはヒトであり得る。上記実施形態のいずれかによる「免疫系の刺激」には、免疫機能における全般的増加、T細胞機能における増加、B細胞機能における増加、リンパ球機能の回復、IL-2受容体の発現における増加、T細胞応答性における増加、ナチュラルキラー細胞活性またはリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞活性における増加、およびその他のうち任意の1つまたは複数が含まれる場合がある。
【0218】
さらなる態様では、本発明は、個体における疾患を治療するための方法を提供する。一実施形態では、この方法は、治療的有効量の本発明のイムノコンジュゲートを、このような疾患を有する個体に投与することを含む。一実施形態では、薬学的に許容される形態で本発明のイムノコンジュゲートを含む組成物が、前記個体に投与される。ある特定の実施形態では、治療すべき疾患は、増殖性障害である。特定の実施形態では、疾患は、がんである。ある特定の実施形態では、この方法は、治療的有効量の少なくとも1つの追加的な治療剤、例えば、治療すべき疾患ががんならば、抗がん剤を個体に投与することをさらに含む。さらなる態様では、本発明は、有効量のイムノコンジュゲートを個体に投与して免疫系を刺激することを含む、個体における免疫系を刺激するための方法を提供する。上記実施形態のいずれかによる「個体」は、哺乳類、好ましくはヒトであり得る。上記実施形態のいずれかによる「免疫系の刺激」には、免疫機能における全般的増加、T細胞機能における増加、B細胞機能における増加、リンパ球機能の回復、IL-2受容体の発現における増加、T細胞応答性における増加、ナチュラルキラー細胞活性またはリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞活性における増加、およびその他のうち任意の1つまたは複数が含まれる場合がある。
【0219】
ある特定の実施形態では、治療すべき疾患は、増殖性障害、特にがんである。がんの非限定的な例には、膀胱がん、脳がん、頭頸部がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、卵巣がん、子宮がん、子宮頸がん、子宮内膜がん、食道がん、結腸がん、結腸直腸がん、直腸がん、胃がん、前立腺がん、血液がん、皮膚がん、扁平上皮癌、骨がん、および腎臓がんが含まれる。本発明のイムノコンジュゲートを使用して治療され得る他の細胞増殖障害には、腹、骨、乳房、消化器系、肝臓、膵臓、腹膜、内分泌腺(副腎、副甲状腺、下垂体、睾丸、卵巣、胸腺、甲状腺)、眼、頭頸部、神経系(中枢および末梢)、リンパ系、骨盤、皮膚、軟組織、脾臓、胸部、および泌尿生殖器系に位置する腫瘍が含まれるが、それに限定されない。また、前がん状態または病変およびがん転移が含まれる。ある特定の実施形態では、がんは、腎臓がん、皮膚がん、肺がん、結腸直腸がん、乳がん、脳がん、頭頸部がん、前立腺がんおよび膀胱がんからなる群から選ばれる。熟練の専門家は、多くの場合にイムノコンジュゲートが治癒を与えない場合があり、部分的利益だけを与える場合があることを容易に認識している。一部の実施形態では、いくらかの利益を有する生理的変化も、治療的に有益と見なされる。したがって、一部の実施形態では、生理的変化を与えるイムノコンジュゲートの量は、「有効量」または「治療的有効量」と見なされる。治療を必要とする対象、患者、または個体は、典型的には哺乳類、より詳細にはヒトである。
【0220】
一部の実施形態では、有効量の本発明のイムノコンジュゲートが、細胞に投与される。他の実施形態では、治療的有効量の本発明のイムノコンジュゲートが、疾患の治療のために個体に投与される。
【0221】
疾患の予防または治療のために、本発明のイムノコンジュゲート(単独で、または1つもしくは複数の他の追加的な治療剤と組み合わせて使用する場合)の適切な投薬量は、治療すべき疾患の種類、投与経路、患者の体重、分子の種類(例えば、Fcドメインを含むまたは含まない)、疾患の重症度および経過、イムノコンジュゲートが予防目的それとも治療目的で投与されるか、事前のまたは同時的な治療的介入、患者の病歴およびイムノコンジュゲートに対する応答、ならびに主治医の裁量に依存する。投与を担当する施術者が、いずれにせよ、組成物中の有効成分の濃度および個別の対象に適した用量を決定する。様々な時点にわたる単回投与または複数回投与、ボーラス投与、およびパルス点滴を含むが、それに限定されない様々な投与計画が、本明細書において考えられている。
【0222】
イムノコンジュゲートは、患者に単回、または一連の治療にわたって適切に投与される。疾患の種類および重症度に応じて、約1μg/kg~15mg/kg(例えば、0.1mg/kg~10mg/kg)のイムノコンジュゲートが、例えば、1つもしくは複数の別々の投与、または連続的注入のいずれにせよ、患者に投与するための初回候補投薬量であり得る。1つの典型的な1日投薬量は、上述の要因に応じて、約1μg/kg~100mg/kg以上の範囲であり得る。状態に応じて数日以上にわたる反復投与のために、治療は、病徴の所望の抑制が起こるまで、一般的に持続する。イムノコンジュゲートの1つの例示的な投薬量は、約0.005mg/kg~約10mg/kgの範囲である。他の非限定的な例では、用量は、また、投与1回当たり約1マイクログラム/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重、約10マイクログラム/kg/体重、約50マイクログラム/kg/体重、約100マイクログラム/kg/体重、約200マイクログラム/kg/体重、約350マイクログラム/kg/体重、約500マイクログラム/kg/体重、約1ミリグラム/kg/体重、約5ミリグラム/kg/体重、約10ミリグラム/kg/体重、約50ミリグラム/kg/体重、約100ミリグラム/kg/体重、約200ミリグラム/kg/体重、約350ミリグラム/kg/体重、約500ミリグラム/kg/体重~約1000mg/kg/体重以上、およびその中から導き出せる任意の範囲を含み得る。本明細書に挙げられた数字から導き出せる範囲の非限定的な例では、約5mg/kg/体重~約100mg/kg/体重、約5マイクログラム/kg/体重~約500ミリグラム/kg/体重などの範囲が、上記数字に基づき投与することができる。したがって、約0.5mg/kg、2.0mg/kg、5.0mg/kgまたは10mg/kg(またはその任意の組み合わせ)の1つまたは複数の用量が、患者に投与され得る。このような用量は、(例えば、患者が、イムノコンジュゲートを約2~約20、または例えば、約6用量受け入れるように)間欠的に、例えば、毎週または3週毎に投与される場合がある。より高い初回負荷用量に続く、1つまたは複数のより低い用量が投与され得る。しかし、他の投薬レジメンが有用であり得る。この治療法の進歩は、一般的な技術およびアッセイにより容易に監視される。
【0223】
本発明のイムノコンジュゲートは、意図される目的を達成するために有効な量で一般的に使用される。病状を治療または予防するために使用するために、本発明のイムノコンジュゲートまたはその薬学的組成物は、治療的有効量で投与または適用される。治療的有効量の決定は、特に、本明細書に提供される詳細な開示に照らして、当業者の能力の範囲内に十分入る。
【0224】
全身投与のために、治療有効用量は、最初に、細胞培養アッセイなどのインビトロアッセイから推定することができる。次いで、用量を動物モデルで設定して、細胞培養で決定されるようなIC50を含む循環濃度範囲を達成することができる。このような情報を使用して、ヒトにおける有用用量をより正確に決定することができる。
【0225】
初回投薬量は、また、当該技術分野で周知である技術を使用して、インビボデータ、例えば、動物モデルから推定することができる。当業者は、動物データに基づきヒトへの投与を容易に最適化することができる。
【0226】
投薬量および投薬間隔は、治療効果を維持するために十分なイムノコンジュゲートの血漿レベルを提供するために個別に調整される場合がある。注射による投与のための通常の患者投薬量は、約0.1~50mg/kg/日、典型的には約0.5~1mg/kg/日の範囲である。治療有効血漿レベルは、毎日複数用量を投与することにより達成される場合がある。血漿中レベルは、例えば、HPLCにより測定される場合がある。
【0227】
局所投与または選択的取り込みの場合、イムノコンジュゲートの有効局所濃度は、血漿濃度と無関係な場合がある。当業者は、過度の実験なしに治療有効局所投薬量を最適化することができる。
【0228】
本明細書に記載のイムノコンジュゲートの治療有効用量は、実質的な毒性を引き起こさずに治療上の利益を一般的に提供する。イムノコンジュゲートの毒性および治療的有効性は、細胞培養物または実験動物において標準的な薬学的手順により決定することができる。細胞培養アッセイおよび動物試験を使用して、LD50(集団の50%に致死的な用量)およびED50(集団の50%に治療上有効な用量)を決定することができる。有毒作用と治療効果との間の用量比は、比LD50/ED50として表現することができる治療指数である。大きい治療指数を示すイムノコンジュゲートが好ましい。一実施形態では、本発明によるイムノコンジュゲートは、高い治療指数を示す。細胞培養アッセイおよび動物試験から得られるデータを、ヒトにおける使用に適した投薬量範囲を設定するのに使用することができる。投薬量は、好ましくは、ほとんどまたは全く毒性を有さずにED50を含む一連の循環濃度内にある。投薬量は、多様な要因、例えば、採用される剤形、利用される投与経路、対象の状態、およびその他に応じてこの範囲内で変動する場合がある。正確な製剤、投与経路および投薬量は、患者の状態を考慮して個別の医師により選ばれることができる。(例えば、その全内容が本明細書に参照により援用されるFinglら、1975、The Pharmacological Basis of Therapeutics、第1章、1頁を参照されたい)。
【0229】
本発明のイムノコンジュゲートを用いて治療される患者の主治医は、毒性、臓器不全、およびその他のせいで投与をどのように、いつ終了、中断、または調整すべきか分かっている。逆に、主治医は、臨床応答が不十分(毒性を除く)ならば、治療をより高いレベルに調整することも分かっている。対象となる障害の管理における投与される用量の大きさは、治療すべき状態の重症度、投与経路、およびその他に応じて変動する。状態の重症度は、例えば、標準的な予後評価法により部分的に評価される場合がある。さらに、用量およびおそらく投薬回数は、また、個別の患者の年齢、体重、および応答に応じて変動する。
【0230】
本明細書に記載の突然変異IL-2ポリペプチドを含むイムノコンジュゲートの最大治療用量は、野生型IL-2を含むイムノコンジュゲートのために使用される用量から増加される場合がある。
【0231】
他の薬剤および治療
本発明によるイムノコンジュゲートは、療法において1つまたは複数の他の薬剤と組み合わせて投与される場合がある。例えば、本発明のイムノコンジュゲートは、少なくとも1つの追加的な治療剤と共に同時投与される場合がある。「治療剤」という用語は、このような治療を必要とする個体における症候または疾患を治療するために投与される任意の薬剤を包含する。このような追加的な治療剤は、治療される特定の適応に適した任意の有効成分、好ましくは相互に不利に影響しない相補活性を有する有効成分を含む場合がある。ある特定の実施形態では、追加的な治療剤は、免疫調節剤、細胞増殖抑制剤、細胞接着阻害剤、細胞傷害性剤、細胞アポトーシス活性化物質、またはアポトーシス誘導物質に対する細胞の感受性を増加させる薬剤である。特定の実施形態では、追加的な治療剤は、抗がん剤、例えば微小管破壊物質、代謝拮抗薬、トポイソメラーゼ阻害剤、DNAインターカレーター、アルキル化剤、ホルモン療法、キナーゼ阻害剤、受容体アンタゴニスト、腫瘍細胞アポトーシス活性化物質、または抗血管新生剤である。
【0232】
このような他の薬剤は、組み合わせで、意図される目的のために有効な量で適切に存在する。このような他の薬剤の有効量は、使用されるイムノコンジュゲートの量、障害または治療の種類、および上述の他の要因に依存する。イムノコンジュゲートは、一般的に、上記と同じ投薬量および投与経路で、または本明細書に記載の投薬量の約1~99%で、または適切であると経験的/臨床的に決定された任意の投薬量および経路により使用される。
【0233】
上述のこのような併用療法は、併用投与(2つ以上の治療剤が同じまたは別々の組成物中に含まれる場合)、および分別投与を包含し、この場合、本発明のイムノコンジュゲートの投与は、追加的な治療剤および/またはアジュバントの投与の前、それと同時、および/またはその後に起こり得る。本発明のイムノコンジュゲートは、また、放射線療法と組み合わせて使用される場合がある。
【0234】
製造品
本発明の別の態様では、上記の障害の治療、予防および/または診断に有用な物質を含有する製造品が、提供される。製造品は、容器と、容器上または容器に関連するラベルまたは添付文書とを含む。適切な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、IV溶液バッグなどが含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックなどの多様な物質から形成される場合がある。容器は、それ自体である、または状態を治療、予防および/もしくは診断するために有効な別の組成物と組み合わせた、組成物を収容し、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針により穿刺可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグまたはバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1つの活性薬剤は、本発明のイムノコンジュゲートである。ラベルまたは添付文書は、選ばれた状態を治療するために組成物が使用されることを示す。そのうえ、製造品は、(a)組成物がその中に含有される第1の容器であって、組成物が、本発明のイムノコンジュゲートを含む、第1の容器;および(b)組成物がその中に含有される第2の容器であって、組成物が、さらなる細胞傷害性剤またはその他の治療剤を含む第2の容器を含み得る。本発明のこの実施形態における製造品は、組成物を使用して特定の状態を治療できることを示す添付文書をさらに含み得る。代替的または追加的に、製造品は、静菌性の注射用水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンゲル液およびデキストローズ溶液などの薬学的に許容されるバッファーを含む第2(または第3)の容器をさらに含む場合がある。製造品は、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジを含む、市販および使用者の観点から望ましい他の物質をさらに含む場合がある。
【実施例0235】
以下は、本発明の方法および組成物の例である。上に提供される全般的な説明から、様々な他の実施形態が実施され得ることが理解される。
【0236】
実施例1
実施例1A
PD1-IL2v融合タンパク質の調製
抗体重鎖-インターロイキン-2(IL-2)融合タンパク質[抗ヒトPD-1抗体の重鎖可変領域、ヒトIgG1重鎖(エフェクター機能の除去のための突然変異L234A、L235AおよびP329G(EU番号付け)、ならびにヘテロダイマー化のための突然変異S354CおよびT366W(EU番号付け)(「ノブ」)を担持する)、(G4S)3リンカー、およびヒトIL-2v(突然変異T3A、F42A、Y45A、L72GおよびC125Aを担持する)]のための発現カセット、抗体重鎖[抗ヒトPD-1抗体の重鎖可変領域、およびヒトIgG1重鎖(エフェクター機能の除去のための突然変異L234A、L235AおよびP329G(EU番号付け)、ヘテロダイマー化のための突然変異Y349C、T366S、L368AおよびY410V(EU番号付け)(「ホール」)、ならびに場合により突然変異H435RおよびY436F(EU番号付け)を担持する]のための発現カセットならびに抗体軽鎖[抗ヒトPD-1抗体の軽鎖可変領域、およびヒトCカッパ定常領域]のための発現カセットを遺伝子合成により産生した。
【0237】
それぞれHindIIIおよびNheI消化により、これらを、CMV-プロモーターのコントロール下で、イントロンAが続き、BGH-ポリAシグナルにより終止するように発現ベクター中にクローニングした。ベクターは、細菌性アンピシリン耐性遺伝子および大腸菌由来の複製開始点をさらに含有した。
【0238】
ヒトPD1-IL-2v融合タンパク質(配列番号22、24および25)を、振盪フラスコ中で1:1:1の比の上記ベクターによるHEK293F細胞(Invitrogen)の共トランスフェクションにより生成した。1週間後に上清を回収し、滅菌フィルターを通して濾過した。
【0239】
プロテインAアフィニティークロマトグラフィーとサイズ排除クロマトグラフィーとの組み合わせにより、融合タンパク質を上清から精製した。質量分析により同一性について、ならびにキャピラリー電気泳動(CE-SDS)により純度、モノマー含有率および安定性などの分析特性について、得られた産物を特徴付けた。
【0240】
マウス代用PD1-IL2v融合タンパク質(配列番号34~36)を同じように産生した。代用分子は、マウスIgG1抗マウスPD-1抗体(エフェクター機能の除去およびヘテロダイマー化のためのFc突然変異を担持する)と、ヒト分子と類似の突然変異を有するマウスインターロイキン-2とを含む。
【0241】
両方の融合タンパク質は、十分な収量で産生することができ、安定である。
【0242】
実施例1B
PD-L1-IL2v融合タンパク質の調製
抗体重鎖-インターロイキン-2(IL-2)融合タンパク質[抗ヒトPD-L1抗体の重鎖可変領域、ヒトIgG1重鎖(エフェクター機能の除去のための突然変異L234A、L235AおよびP329G(EU番号付け)、ならびにヘテロダイマー化のための突然変異S354CおよびT366W(EU番号付け)(「ノブ」)を担持する)、(G4S)3リンカー、およびヒトIL-2v(突然変異T3A、F42A、Y45A、L72GおよびC125Aを担持する)]のための発現カセット、抗体重鎖[抗ヒトPD-L1抗体の重鎖可変領域、およびヒトIgG1重鎖(エフェクター機能の除去のための突然変異L234A、L235AおよびP329G(EU番号付け)、ヘテロダイマー化のための突然変異Y349C、T366S、L368AおよびY410V(EU番号付け)(「ホール」)を担持する)]のための発現カセット、ならびに抗体軽鎖[抗ヒトPD-L1抗体の軽鎖可変領域、およびヒトCカッパ定常領域]のための発現カセットを遺伝子合成により産生した。抗体発現は、キメラMPSVプロモーターにより推進され、合成ポリAシグナル配列は、CDSの3’末端に位置した。加えて、各ベクターは、EBV OriP配列を含有した。
【0243】
懸濁状態で成長しているHEK293-EBNA細胞に、ポリエチレンイミンを使用して哺乳類発現ベクターを共トランスフェクトすることにより、分子を産生した。対応する発現ベクターを細胞に1:1:2の比(「ベクター重鎖(VH-CH1-CH2-CH3-IL2v)」:「ベクター重鎖(VH-CH1-CH2-CH3)」:「ベクター軽鎖(VL-CL)」)でトランスフェクトした。
【0244】
トランスフェクションのために、6mM L-グルタミンおよび250mg/l G418培地を含有する無血清Excell培地中でHEK293 EBNA細胞を懸濁培養した。600mlチューブスピンフラスコ(最大稼働容積400mL)中での産生のために、6億個のHEK293 EBNA細胞をトランスフェクションの24時間前に播種した。トランスフェクションのために、細胞を210×gで5分間遠心分離し、上清を予め加温したCD CHO培地20mlに交換した。発現ベクターをCD CHO培地、20ml中に混合し、最終量400μgのDNAとした。PEI溶液(2.7μg/ml)1080μlの添加後、混合物を15秒間ボルテックスし、続いて室温で10分間インキュベートした。その後、細胞をDNA/PEI溶液と混合し、600mlチューブスピンフラスコに移し、5%CO2雰囲気のインキュベーター中で、37℃で3時間インキュベートした。インキュベーション時間の後、Excell+6mM L-グルタミン+5g/L Pepsoy+1.0mM VPA培地360mlを添加し、細胞を24時間培養した。トランスフェクションの1日後に7% Feed 7を添加した。7日間培養後、3600×gで20~30分間遠心分離することにより(Sigma 8K遠心分離機)、精製のための上清を集め、溶液をフィルター滅菌し(0.22mmフィルター)、アジ化ナトリウムを最終濃度0.01%(w/v)で添加した。溶液を4℃に保った。
【0245】
ヒトPD-L1-IL2vコンストラクト(配列番号37~39)を、プロテインAを用いた1つのアフィニティー段階(MabSelectSure、GE Healthcare)に続くサイズ排除クロマトグラフィー(HiLoad 16/60 Superdex 200、GE Healthcare)により精製した。アフィニティークロマトグラフィーのために、上清を20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、pH7.5、25mlで平衡化したHiTrap ProteinA HPカラム(CV=5mL、GE Healthcare)にロードした。少なくとも10カラム容積の20mMリン酸ナトリウム、20mMクエン酸ナトリウム、pH7.5で洗浄することによって未結合のタンパク質を除去し、6カラム容積の20mMクエン酸ナトリウム、100mM塩化ナトリウム、100mMグリシン、0.01% Tween20、pH3.0中に標的タンパク質を溶出した。1/10の0.5Mリン酸ナトリウム、pH8.0を添加することによってタンパク質溶液を中和した。標的タンパク質を濃縮し、濾過し、その後、20mMヒスチジン、140mM塩化ナトリウム、pH6.0、0.01% Tween20で平衡化したHiLoad Superdex 200カラム(GE Healthcare)にロードした。
【0246】
マウスPD-L1-IL2vコンストラクト(配列番号40~42)を、プロテインAを用いた1つのアフィニティー段階(MabSelectSure、GE Healthcare)に続くサイズ排除クロマトグラフィー(HiLoad 16/60 Superdex 200、GE Healthcare)により、同じように精製した。アフィニティークロマトグラフィーのために、上清を2Mグリシン、0.6M NaCl、pH8.6と1:1に混合し、1Mグリシン、0.3M NaCl、pH8.6、25mlで平衡化したHiTrap ProteinA HPカラム(CV=5 mL、GE Healthcare)にロードした。少なくとも10カラム容積の1Mグリシン、0.3M NaCl、pH8.6で洗浄することによって未結合のタンパク質を除去し、標的タンパク質を、6カラム容積の1Mグリシン、0.3M NaCl、pH4.0中に溶出した。1/10の0.5Mリン酸ナトリウム、pH8.0を添加することによってタンパク質溶液を中和した。標的タンパク質を濃縮し、濾過し、その後、20mMヒスチジン、140mM塩化ナトリウム、pH6.0、0.01% Tween20で平衡化したHiLoad Superdex 200カラム(GE Healthcare)にロードした。
【0247】
ヒトPD-L1-IL2vの最終調製物は、モノマーを99%含有し(25℃の25mM K2HPO4、125mM NaCl、200mM L-アルギニン一塩酸塩、0.02%(w/v) NaN3、pH6.7のランニングバッファー中、TSKgel G3000 SW XL分析用サイズ排除カラム(Tosoh)で決定)、純度100%を有した(非還元SDSキャピラリー電気泳動により、製造業者の説明書に従って使用したCaliper LabChip GXIIシステム(Caliper lifescience)で決定)。産生収量は、23mg/Lであった。質量分析により、大部分は正しく集合した分子で、痕跡量(<5%)の分子がインターロイキン-2を有さないことが明らかになった(Agilent LC-MSシステム(Agilent Technologies)でNUCLEOGEL RP1000-8、250mm×4.6mmカラム(MACHEREY-NAGEL GmbH)を用い、アセトニトリル-ギ酸勾配をかけて質量分析を行った)。
【0248】
マウス代用PD-L1-IL2vについて、モノマー含有率は96%、純度は100%、産生収量は3.8mg/Lであった。
【0249】
実施例1C
マウス代用CEA-IL2vおよびマウス代用FAP-IL2vの調製
抗薬物抗体(ADA)の形成を低減するために、完全免疫適格マウスにおいてインビボ腫瘍モデルを使用するためのmuCEA-muIL2vと呼ばれる(muCEA-IL2vとも呼ばれる)CEA-標的化IL-2変異イムノサイトカインCEA-IL2vのマウス化代用分子を生成した。加えて、抗薬物抗体(ADA)の形成を低減するために、完全免疫適格マウスにおいてインビボ腫瘍モデルを使用するための、それぞれmuFAP-muIL2vと呼ばれる(muFAP-IL2vとも呼ばれる)マウス化キメラバージョンのFAP-標的化IL-2変異イムノサイトカインFAP-IL2vを生成した。マウス化代用分子では、Fcドメインのノブ・イントゥー・ホール突然変異は、muIgG1でのDDKK突然変異により置き換えられ、LALA P329G突然変異は、muIgG1でのDAPG突然変異により置き換えられていた(全体として参照により援用されるPCT出願WO2016/0330350A1に開示)。
【0250】
例えば、muCEA-muIL2vは、以下の特徴により特徴付けられる。親抗体として、ヒト(化)可変領域を有するが、マウス定常領域を有するヒト-マウスキメラIgG1抗体が適用される。潜在的な免疫原性を回避するために、対応するBlack 6アロタイプを使用した(Mouse Genomes Projectにより配列が公開されている)。ヒトIL-2vに確認される突然変異と相同の3つの突然変異により、muIL2Rαへの結合性は消失し、それぞれのO-グリコシル化部位を除去した:T23A(O-グリコ)、F76A、Y79A、L106G。加えて、アルデスロイキンのように、C160A突然変異(UniProt ID P04351に基づく番号付け、シグナルペプチドを含む)によりシステイン残基を突然変異させて、凝集を回避した。muIgG1は、すでに低減したFcγR結合性を有するものの、マウスFcγRへの結合性は、DAPG突然変異(D265A、P329G)の導入により完全に消失し、それに対し、muFcRn結合性は保持される。非免疫原性(G4S)2-コネクターだけを介して、muIL-2vをmuIgG1抗体の1つの重鎖のC末端に融合した。これを達成するために静電操縦を使用してFcドメインにおけるDDKK突然変異を介してイムノサイトカインを操作して、マウスのバックグラウンドにおけるヘテロダイマー化を可能にした。
【0251】
muCEA-muIL2vのポリペプチド配列は、以下の通りである:
DD突然変異を有し、muIL2vが融合した重鎖(配列番号44):
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTEFGMNWVRQAPGQGLEWMGWINTKTGEATYVEEFKGRVTFTTDTSTSTAYMELRSLRSDDTAVYYCARWDFAYYVEAMDYWGQGTTVTVSSAKTTPPSVYPLAPGSAAQTNSMVTLGCLVKGYFPEPVTVTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVPSSTWPSQTVTCNVAHPASSTKVDKKIVPRDCGCKPCICTVPEVSSVFIFPPKPKDVLTITLTPKVTCVVVAISKDDPEVQFSWFVDDVEVHTAQTKPREEQINSTFRSVSELPIMHQDWLNGKEFKCRVNSAAFGAPIEKTISKTKGRPKAPQVYTIPPPKEQMAKDKVSLTCMITNFFPEDITVEWQWNGQPAENYDNTQPIMDTDGSYFVYSDLNVQKSNWEAGNTFTCSVLHEGLHNHHTEKSLSHSPGGGGGSGGGGSGGGGSAPASSSTSSSTAEAQQQQQQQQQQQQHLEQLLMDLQELLSRMENYRNLKLPRMLTAKFALPKQATELKDLQCLEDELGPLRHVLDGTQSKSFQLEDAENFISNIRVTVVKLKGSDNTFECQFDDESATVVDFLRRWIAFAQSIISTSPQ
KK突然変異を有する重鎖(配列番号45):
QVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTEFGMNWVRQAPGQGLEWMGWINTKTGEATYVEEFKGRVTFTTDTSTSTAYMELRSLRSDDTAVYYCARWDFAYYVEAMDYWGQGTTVTVSSAKTTPPSVYPLAPGSAAQTNSMVTLGCLVKGYFPEPVTVTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVPSSTWPSQTVTCNVAHPASSTKVDKKIVPRDCGCKPCICTVPEVSSVFIFPPKPKDVLTITLTPKVTCVVVAISKDDPEVQFSWFVDDVEVHTAQTKPREEQINSTFRSVSELPIMHQDWLNGKEFKCRVNSAAFGAPIEKTISKTKGRPKAPQVYTIPPPKKQMAKDKVSLTCMITNFFPEDITVEWQWNGQPAENYKNTQPIMKTDGSYFVYSKLNVQKSNWEAGNTFTCSVLHEGLHNHHTEKSLSHSPGK
軽鎖(配列番号46):
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASAAVGTYVAWYQQKPGKAPKLLIYSASYRKRGVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCHQYYTYPLFTFGQGTKLEIKRADAAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRNEC
【0252】
muFAP-muIL2vのポリペプチド配列は、以下の通りである:
DD突然変異を有し、muIL2vが融合した重鎖(配列番号47):
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAIIGSGASTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKGWFGGFNYWGQGTLVTVSSAKTTPPSVYPLAPGSAAQTNSMVTLGCLVKGYFPEPVTVTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVPSSTWPSQTVTCNVAHPASSTKVDKKIVPRDCGCKPCICTVPEVSSVFIFPPKPKDVLTITLTPKVTCVVVAISKDDPEVQFSWFVDDVEVHTAQTKPREEQINSTFRSVSELPIMHQDWLNGKEFKCRVNSAAFGAPIEKTISKTKGRPKAPQVYTIPPPKEQMAKDKVSLTCMITNFFPEDITVEWQWNGQPAENYDNTQPIMDTDGSYFVYSDLNVQKSNWEAGNTFTCSVLHEGLHNHHTEKSLSHSPGGGGGSGGGGSGGGGSAPASSSTSSSTAEAQQQQQQQQQQQQHLEQLLMDLQELLSRMENYRNLKLPRMLTAKFALPKQATELKDLQCLEDELGPLRHVLDGTQSKSFQLEDAENFISNIRVTVVKLKGSDNTFECQFDDESATVVDFLRRWIAFAQSIISTSPQ
KK突然変異を有する重鎖(配列番号48):
EVQLLESGGGLVQPGGSLRLSCAASGFTFSSYAMSWVRQAPGKGLEWVSAIIGSGASTYYADSVKGRFTISRDNSKNTLYLQMNSLRAEDTAVYYCAKGWFGGFNYWGQGTLVTVSSAKTTPPSVYPLAPGSAAQTNSMVTLGCLVKGYFPEPVTVTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVPSSTWPSQTVTCNVAHPASSTKVDKKIVPRDCGCKPCICTVPEVSSVFIFPPKPKDVLTITLTPKVTCVVVAISKDDPEVQFSWFVDDVEVHTAQTKPREEQINSTFRSVSELPIMHQDWLNGKEFKCRVNSAAFGAPIEKTISKTKGRPKAPQVYTIPPPKKQMAKDKVSLTCMITNFFPEDITVEWQWNGQPAENYKNTQPIMKTDGSYFVYSKLNVQKSNWEAGNTFTCSVLHEGLHNHHTEKSLSHSPGK
軽鎖(配列番号49):
EIVLTQSPGTLSLSPGERATLSCRASQSVTSSYLAWYQQKPGQAPRLLINVGSRRATGIPDRFSGSGSGTDFTLTISRLEPEDFAVYYCQQGIMLPPTFGQGTKVEIKRADAAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRNEC
【0253】
muPD1のポリペプチド配列は、以下の通りである:
重鎖(配列番号50):
EVQLQESGPGLVKPSQSLSLTCSVTGYSITSSYRWNWIRKFPGNRLEWMGYINSAGISNYNPSLKRRISITRDTSKNQFFLQVNSVTTEDAATYYCARSDNMGTTPFTYWGQGTLVTVSSASTTAPSVYPLAPVCGDTTGSSVTLGCLVKGYFPEPVTLTWNSGSLSSGVHTFPAVLQSDLYTLSSSVTVTSSTWPSQSITCNVAHPASSTKVDKKIEPRGPTIKPCPPCKCPAPNAAGGPSVFIFPPKIKDVLMISLSPIVTCVVVDVSEDDPDVQISWFVNNVEVHTAQTQTHREDYNSTLRVVSALPIQHQDWMSGKEFKCKVNNKDLGAPIERTISKPKGSVRAPQVYVLPPPEEEMTKKQVTLTCMVTDFMPEDIYVEWTNNGKTELNYKNTEPVLDSDGSYFMYSKLRVEKKNWVERNSYSCSVVHEGLHNHHTTKSFSRTPGK
軽鎖(配列番号51):
DIVMTQGTLPNPVPSGESVSITCRSSKSLLYSDGKTYLNWYLQRPGQSPQLLIYWMSTRASGVSDRFSGSGSGTDFTLKISGVEAEDVGIYYCQQGLEFPTFGGGTKLELKRTDAAPTVSIFPPSSEQLTSGGASVVCFLNNFYPKDINVKWKIDGSERQNGVLNSWTDQDSKDSTYSMSSTLTLTKDEYERHNSYTCEATHKTSTSPIVKSFNRNEC
【0254】
本実施例で調製されたイムノコンジュゲートを以下の実施例でさらに使用した。
【0255】
実施例2
実施例2A
活性化CD8 T細胞およびCD4 T細胞に対するPD1-IL2vの結合性
健康ヒトドナーから新鮮単離されたPBMCをCD3およびCD28で一晩刺激して、T細胞上のPD1の上方制御を誘導した。1μg/ml CD3(クローンOKT3、#317304、BioLegend)で、37℃で1時間被覆された細胞培養フラスコ中の培地(RPMI1640、10% FCS、2mMグルタミン)にPBMCを播種した。CD28(クローンCD28.2、#302914、BioLegend)を濃度2μg/mlの溶液としてPBMCに添加した。翌日、PBMCを回収し、96ウェル丸底プレートに移した(200’000細胞/ウェル)。細胞をFACSバッファー(PBS、2% FBS、5mM EDTA、0.025% NaN3)で洗浄し、FACSバッファー中の表示の分子(PD1 IgG、PD1-IL2vおよびCEA-IL2v)40μlにより4℃で30分間染色した。細胞をFACSバッファーで2回洗浄して未結合の分子を除去した。次いで、希釈したPE抗ヒトFc特異的二次抗体(#109-116-170、Jackson ImmunoResearch)40μlを細胞に添加した。4℃で30分間インキュベーション後、細胞をFACSバッファーで2回洗浄した。T細胞を検出するために、PBMCをCD3 FITC(クローンUCHT1、#300406、BioLegend)、CD4 APC(クローンRPA-T4、300514、BioLegend)およびCD8 BV421(クローンRPA-T8、#301036、BioLegend)の混合物40μlにより4℃で30分間染色した。FACSバッファーで2回洗浄することにより未結合の抗体を除去した。最終的に、細胞をFACSバッファー中の1% PFAで固定し、CD3+CD4+細胞(CD4 T細胞)およびCD3+CD8+細胞(CD8 T細胞)に関するBD Fortessaゲーティングを使用して測定した。
【0256】
図2に示すように、PD1-IL2vおよび対応するPD1 IgGは、CD4 T細胞およびCD8 T細胞と同様に結合した。PD1の代わりに腫瘍細胞上のCEAを標的化する同じようなイムノサイトカイン、CEA-IL2vは、PD1に標的化されないIL2vベースのイムノサイトカイン単独の効果と比較するための非標的化コントロールとして役立った。
【0257】
実施例2B
PD1-IL2vによるT細胞およびNK細胞の活性化および増殖
健康ヒトドナーから新鮮単離されたPBMCを一晩インキュベートし、次いでCFSE(5(6)-カルボキシフルオレセイン二酢酸N-スクシンイミジルエステル、#21888、Sigma-Aldrich)で標識した。簡潔には、3000万個のPBMCをPBSで1回洗浄した。平行して、CSFE原液(DMSO中に2mM)をPBS中に1:20希釈した。PBMCを、予め加温したPBS 30ml中に再懸濁し、CFSE溶液30μlを添加し、直ちに細胞を混合した。最適な標識のために、細胞を37℃で15分間インキュベートした。次いで、予め加温した培地(RPMI1640、10% FCS、1% グルタミン)10mlを添加して、標識反応を停止した。細胞を400×gで10分間遠沈し、新鮮培地20ml中に再懸濁し、37℃で追加的に30分間インキュベートした。最終的に、細胞を培地で1回洗浄し、新鮮培地中に100万細胞/mlで再懸濁した。標識されたPBMCを96ウェル丸底プレート中に播種し(200’000細胞/ウェル)、表示の分子(PD1-IL2v、CEA-IL2v、PD1 IgG、およびPD1 IgGとCEA-IL2vとの組み合わせ)で5日間処理した。インキュベーション後、細胞をFACSバッファーで1回洗浄し、FACSバッファー中のCD3 APC/Cy7(クローンUCHT1、#300426、BioLegend)、CD56 APC(クローンHCH56、3#18310、BioLegend)、CD4 PE(クローンRPA-T4、#300508、BioLegend)およびCD25 BV421(クローンM-A251、BioLegend)の混合物20μlにより4℃で30分間染色した。その後、PBMCをFACSバッファーで2回洗浄した後、それらをFACSバッファー中の1% PFAで固定し、BD Fortessaを用いて蛍光を測定した。CD8 T細胞(CD3+CD4-)、CD4 T細胞(CD3+CD4+)およびNK細胞(CD3-CD56+)のCFSE希釈を測定することにより、増殖を決定した。
【0258】
図3に示すように、PD1-IL2vの活性は、CEA-IL2v、およびPD1 IgGと組み合わせたCEA-IL2vの活性と同程度である。PD1 IgG単独は、この設定で活性を有さない。
【0259】
図4は、PD1-IL2vがNK細胞、CD8 T細胞およびCD4 T細胞の(CD25の上方制御により測定される)活性化を誘導することを示すものである。CEA-IL2vにより誘発される活性化は、CEA-IL2vとPD1 IgGとの組み合わせにより誘導される活性化と類似である。PD1 IgG単独は、この設定で活性化を誘導しない。
【0260】
実施例2C
PD1-IL2vによる予備活性化CD8 T細胞およびCD4 T細胞の活性化および増殖
健康ヒトドナーからの新鮮単離されたPBMCをCFSE(5(6)-カルボキシフルオレセイン二酢酸N-スクシンイミジルエステル、#21888、Sigma-Aldrich)で標識した。簡潔には、3000万個のPBMCをPBSで1回洗浄した。平行して、CSFE原液(DMSO中に2mM)をPBS中に1:20希釈した。PBMCを予め加温したPBS 30ml中に再懸濁し、CFSE溶液30μlを添加し、細胞を直ちに混合した。最適な標識のために細胞を37℃で15分間インキュベートした。次いで、予め加温した培地(RPMI1640、10% FCS、1% グルタミン)10mlを添加して、標識反応を停止した。細胞を400×gで10分間遠沈し、新鮮培地20ml中に再懸濁し、37℃で追加的に30分間インキュベートした。最終的に、細胞を培地で1回洗浄し、新鮮培地中に100万細胞/mlで再懸濁した。CFSE標識されたPBMCを1μg/ml PHA(#L8902、Sigma-Aldrich)で一晩予備活性化して、T細胞上のPD-1の上方制御を誘導した。翌日、予備活性化PBMCを収集し、計数した。次いで、PBMCを96ウェル丸底プレートに播種し(200’000細胞/ウェル)、表示の分子(PD1-IL2v、CEA-IL2v、PD1 IgG、およびPD1 IgGとCEA-IL2vとの組み合わせ)で4日間処理した。インキュベーション後、細胞をFACSバッファーで1回洗浄し、FACSバッファー中のCD3 APC/Cy7(クローンUCHT1、#300426、BioLegend)、CD8 APC(クローンSK1、BioLegend)およびCD25 BV421(クローンM-A251、BioLegend)の混合物20μlにより4℃で30分間染色した。その後、PBMCをFACSバッファーで2回洗浄し、その後、FACSバッファー中の1% PFAで固定し、BD Fortessaを用いて蛍光を測定した。CD8 T細胞(CD3+CD8+)およびCD4 T細胞(CD3+CD8-)のCFSE希釈を測定することにより、増殖を決定した。
【0261】
図5は、PD1-IL2vが、PD-1を発現するPHA活性化CD8 T細胞およびCD4 T細胞の増殖を誘導することを示すものである。活性は、CEA-IL2vおよびCEA-IL2vとPD1 IgGとの組み合わせと同程度である。PD1 IgG単独は、この設定で活性を有さない。この設定でPD-1ブロッキングの追加的な効果が観察できないのは、おそらく、PD-L1陽性腫瘍細胞が不在であるせいである。
【0262】
図6に示すように、PD1-IL2vは、PD-1を発現するPHA活性化CD8 T細胞およびCD4 T細胞の活性化を誘導する(活性化のマーカーとしてCD25発現を使用)。CEA-IL2vおよびCEA-IL2vとPD1 IgGとの組み合わせは、T細胞の同程度の活性化を誘導する。PD1 IgG単独は、この設定で活性を有さない。この設定でPD-1ブロッキングの追加的な効果が観察できないのは、おそらく、PD-L1陽性腫瘍細胞が不在であるせいである。
【0263】
実施例2D
PD1-IL2vおよびPD-L1-IL2vによるNK92の増殖
NK92細胞を回収し、計数し、生存率について評定した。細胞をPBSで3回洗浄して、残留IL-2を除去し、IL-2を有さない培地(RPMI1640、10% FCS、1%グルタミン)中に再懸濁した。洗浄したNK92細胞を細胞インキュベーター中で2時間インキュベートした(IL-2飢餓)。飢餓後、IL2-を有さない新鮮培地中に細胞を200’000細胞/mlで再懸濁し、細胞培養物処理した96ウェル平底プレートに細胞懸濁液50μlを移し、希釈抗体(IL-2を有さない培地中)、Proleukin(最終濃度1.5μg/ml)または培地(コントロールウェル)50μlを補充して、最終体積100μl/ウェルに到達させた。プレートをインキュベーター中で2日間インキュベートした。2日後にCellTiter-Glo(Promega)試薬および細胞培養プレートを室温に平衡化した。製造業者の説明書に記載されたようにCellTiter-Glo溶液を調製し、溶液100μlを各ウェルに添加した。10分間インキュベーション後、ピペッティングにより残りの凝集物を再懸濁し、混合物150μlを白色平底プレートに移した。Tecan Spark 10Mマルチモードリーダーを用いて発光を測定した。
【0264】
図7Aは、PD-L1-IL2vがNK92細胞の増殖をCEA-IL2vと同じくらい効率的に誘導することを示すものである。
図7Bは、PD-L1-IL2vおよびPD1-IL2vが、NK92細胞の増殖を誘導するのに同じ活性を有することを示すものである。NK92細胞は、PD1陰性である。
【0265】
実施例2E
CTLL2細胞へのPD-L1-IL2vの結合性
マウスT細胞株CTLL2は、PD-L1を発現する。これらの細胞を使用して、PD-L1へのPD-L1-IL2v(マウス代用)の結合性を試験した。細胞を回収し、生存率をチェックし、細胞を96ウェル丸底プレート(200’000細胞/ウェル)中に移した。細胞をFACSバッファー(PBS、2% FBS、5mM EDTA、0.025% NaN3)で洗浄し、FACSバッファー中の表示の分子40μlにより4℃で30分間染色した。細胞をFACSバッファーで2回洗浄して、未結合の分子を除去した。次いで、希釈されたAPC抗マウスFc特異的二次抗体(#115-136-071、Jackson ImmunoResearch)40μlを細胞に添加した。4℃で30分間インキュベーション後、細胞をFACSバッファーで2回洗浄した。細胞をBD LSR Fortessaで分析した。
【0266】
図8は、PD-L1-IL2vが対応するPD-L1 muIgG1と同じくらい十分にCTLL2細胞に結合することを示すものである。これらの細胞は、PD1陰性である。
【0267】
実施例2F
PD1-IL2vおよびPD-L1-IL2vによるCTLL2細胞の増殖
CTLL2細胞を回収し、計数し、生存率について評定した。細胞をPBSで3回洗浄し(残留IL-2を除去するため)、IL-2を有さない培地(RPMI1640、10% FCS、1% グルタミン)中に再懸濁し、細胞インキュベーター中で2時間インキュベートした(IL-2飢餓)。飢餓後、200’000個/mlのCTLL2細胞を、IL2を有さない新鮮培地中に再懸濁し、細胞懸濁液50μlを、細胞培養物で処理した96ウェル平底プレートに移した。希釈したマウス代用PD1-IL2v、マウス代用PD-L1-IL2v、マウス代用CEA-IL2v、希釈したProleukin(最終濃度1.5μg/ml)または培地単独(全てIL-2不含培地を使用)50μlをウェルに添加して最終体積100μl/ウェルとした。試料を細胞インキュベーター中で3日間インキュベートし、製造業者の説明書に従ってCellTiter-Gloを使用して増殖を評定した。簡潔には、試薬100μlを各ウェルに添加し、10分間インキュベートした。ピペッティングにより残りの凝集物を再懸濁し、混合物150μlを白色平底プレートに移した。Tecan Spark 10Mマルチモードリーダーを用いて発光を測定した。
【0268】
図9Aは、PD-L1-IL2vがCTLL2細胞の増殖を誘導することを示すものである。おそらくCTLL2細胞上のPD-L1の発現のせいで、活性はCEA-IL2vと比較して高いと思われる。
図9Bは、再度、PD1-IL2vがCTLL2細胞の増殖を誘導することを示すものである。おそらくこれらの細胞がPD1ではなくPD-L1だけを発現することが原因で、活性は、PD-L1-IL2vと比較して低いように思われる。
【0269】
実施例3
同系マウス腫瘍モデルにおけるPD1-IL2vおよびPD-L1-IL2vのインビボ有効性
PD1-IL2vおよびPD-L1-IL2vイムノコンジュゲート(マウス代用)を、単独で、ならびに対応するPD1抗体およびPD-L1抗体と比較して、Panc02-Fluc同系モデルにおけるそれらの抗腫瘍有効性について試験した。
【0270】
Panc02-H7細胞(マウス膵臓癌)は、本来、MDアンダーソンがんセンター(Texas、USA)から得られたものであり、増殖後にRoche-Glycart施設内細胞バンクに寄託された。Panc02-H7-Fluc細胞株を、カルシウムトランスフェクションおよびサブクローニング技術により社内で産生した。Panc02-H7-Flucを、10% FCS(Sigma)、500μg/mlハイグロマイシン(hygromicin)および1% Glutamaxを含有するRPMI培地中で培養した。5% CO2の水飽和雰囲気中、37℃で細胞を培養した。23回継代物を移植のために使用した。細胞生存率は、90.4%であった。0.3mlツベルクリンシリンジ(BD Biosciences、Germany)を使用して動物1匹当たり細胞1×105個をBlack 6マウスの膵臓に注射した。このために、麻酔マウスの左腹部に小切開を行った。腹膜壁を開放し、膵臓をピンセットで慎重に単離した。細胞懸濁液10マイクロリットル(RPMI培地中1×105個のPanc02-H7-Fluc細胞)を膵尾に注射した。5/0分解可能縫合糸を使用して腹膜壁および皮膚創傷を閉鎖した。
【0271】
実験開始時に10~12週齢の雌Black 6マウス(Charles Rivers、Lyon、France)を、関係するガイドライン(GV-Solas;Felasa;TierschG)に従って、12時間明/12時間暗の1日サイクルの特定の病原体がない条件で維持した。地方自治体により実験研究プロトコールが審査され、承認された(ZH193/2014)。到着後、動物を1週間維持して、新しい環境に慣らし、観察した。定期ベースで連続的な健康モニタリングを実施した。
【0272】
試験0日目に1×105個のPanc02-Fluc細胞をマウスに膵臓内注射し、無作為化し、秤量した。腫瘍細胞注射の1週間後に、PD1-IL2v、PD-L1-IL2vまたはPD1抗体およびPD-L1抗体を1週間に1回、4週間、マウスにi.v.注射した。
【0273】
適切な溶液200μlを全てのマウスにi.v.注射した。ビヒクル群のマウスにヒスチジンバッファーを、治療群に、必要に応じてヒスチジンバッファーで希釈したマウス代用PD1-IL2vコンジュゲートおよびPD-L1-IL2vコンジュゲートまたは対応するPD1抗体およびPD-L1抗体を注射した。マウス1匹当たり注射された抗体の量(mg/kg)は以下の通りであった:PD1-IL2vおよびPD-L1-IL2vは1.5mg/kg、PD1抗体およびPD-L1抗体は10mg/kg。
【0274】
図10および表1は、PD1-IL2vが、特にPD-L1-IL2vを含む、試験された全ての他の単一薬剤と比較して、高い生存率中央値および全生存の点で有意に優れた有効性を媒介したことを示すものである。
【0275】
IVIS(登録商標)SPECTRUMによるバイオルミネッセンスイメージングのために、バイオルミネッセンスイメージング取得(BLI)の10分前にマウスに150mg/kg D-ルシフェリンを腹腔内注射し、その後4%イソフルランで麻酔した。続いて、IVIS(登録商標)spectrum中に位置付けた隔離チャンバーにマウスを移した。発光シグナルを10~50秒間取得することによりインビボBLI取得を行った。データは、放射輝度(光子)/sec/cm2/srとして記憶させた。Living Image(登録商標)4.4ソフトウェアを用いてインビボBLIデータ解析を行い、腫瘍抑制曲線により表した。
【0276】
図11は、特にPD-L1-IL2vを含む全ての他の群と比較してバイオルミネッセンスシグナル(光子/秒)を減少させる点から見た、PD1-IL2vの優れた有効性を示すものである。最初の治療的投与後7日目という早期に、いくつかの治療群でIVIS(登録商標)SpectrumによりPanc02-Flucのバイオルミネッセンスシグナルの低減が検出されたが、PD1-IL2vだけが、大部分のマウスにおいて実験の全期間にわたり継続したBLIシグナルの完全消失を示し、これは、マウス8匹中7匹において完全寛解を示した。
【0277】
実施例4
PD-1またはPD-L1のいずれかのブロックによるウイルス特異的消耗T細胞へのIL-2vの送達効果
PD-1の発現は、ウイルス抗原への慢性曝露の結果としてウイルス特異的消耗T細胞上に初めて記載されており、これは、T細胞が有効な抗ウイルス応答を開始できないことに関連している。IL-2およびIFN-γを同時分泌できるウイルス特異的CD4 T細胞は、慢性感染におけるウイルス再活性化からの防御を付与する。実際、CD4 T細胞の多機能性シグネチャーは、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン-バーウイルスウイルス(EBV)および単純ヘルペスウイルス(HSV)に感染した健康個体、ならびに数年間無症候のままであるヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した個体におけるウイルスコントロールと関連している。
【0278】
したがって、本発明者らは、慢性ウイルス感染に関連して、PD-1およびPD-L1標的化が機能障害性抗原特異的T細胞に突然変異バージョンのIL-2(IL-2v)を送達する効果を評価するためのインビトロアッセイを開発した。本発明者らのアッセイに適したドナーの量に関する制限を回避するために、本発明者らは、集団のおよそ80%がCMV血清陽性であることを考えて、T細胞についてのリコール抗原としてCMV免疫原性ウイルスタンパク質(pp65)を選んだ。したがって、本発明者らは、健康ヒトドナー末梢血単核細胞(PBMC)をCMV-pp65で2時間刺激し、その後、本発明者らのコンストラクトを濃度10μg/mlで添加した。43時間後に、本発明者らは、Golgi Plug(ブレフェルジンA)およびGolgi Stop(モネンシン)を添加することによりゴルジ体からのタンパク質輸送をブロックし、細胞を37℃で追加的に5時間インキュベートした。次いで細胞を洗浄し、抗ヒトCD3、CD4、CD8、CD62LおよびCD45RO抗体で表面を染色し、その後Fix/Permバッファー(BD Bioscience)で固定/透過処理した。最後に、本発明者らは、IL-2、IFN-γおよびKi67(両方ともeBioscience製)について細胞内染色を行った。
【0279】
本発明者らは、PD1-IL2vおよびPD-L1-IL2vの両方、ならびに対応するIgG抗体とIL-2vとの組み合わせが、多機能性(
図12B)ならびにIL-2およびIFN-γ単一機能性(それぞれ
図12Aおよび12C)CD4 T細胞の頻度を同程度のレベルで増加させ、それぞれ抗PD-1および抗PD-L1のブロックと比較して高い効果を提供したことを観察した。多機能性(
図13B)およびIFN-γ単機能性CD4 T細胞において増殖した集団(
図13Cおよび13D)は、エフェクター-メモリープロファイル(CD45RO
+CD62L
-)および最終分化したエフェクタープロファイル(CD45RO
-CD62L
-)を示す。逆に、PD-L1拮抗により誘導され、IL-2vの共送達によりさらに増殖したIL-2単機能性CD4 T細胞は、ナイーブシグネチャー(CD62L
+CD45RO
-)を表す(
図13A)。
【0280】
本発明者らは、PD1-IL-2v融合タンパク質を通じてCMV特異的消耗CD4 T細胞にIL-2vを送達する結果として、IL-2およびIFN-γを共分泌する能力によって特徴付けられる長寿命防御性ウイルス特異的集団の増殖が生じたと結論することができる。
【0281】
実施例5
実施例5A
活性化制御性T細胞よりも活性化通常型T細胞への優先的なPD1-IL2vの結合
活性化通常型T細胞および制御性T細胞へのPD1-IL2vの結合特性を競合結合アッセイで評定した。2ステップ制御性T細胞単離キット(Miltenyi、#130-094-775)を用いてCD4+CD25+CD127dim制御性T細胞(Treg)を単離した。平行して、CD25陽性選択(Miltenyi、#130-092-983)の陰性画分を収集し、続いてCD4+の富化を行うことにより(Miltenyi、#130-045-101)、CD4+CD25-通常型T細胞(Tconv)を単離した。TconvをCFSE(eBioscience、#65-0850-84)で標識し、TregをCell Trace Violet(ThermoFisher scientific、C34557)で標識して、両方の集団の増殖を追跡した。TconvおよびTregを、1μg/ml CD3(クローンOKT3、#317315、BioLegend)により4℃で一晩被覆した培養プレート中に一緒に播種した。CD28を濃度1μg/ml CD8(クローンCD28.2、#302923、BioLegend)の溶液として添加した。5日間刺激後、両方とも施設内でAF647標識したPD1(0376)およびPD1-IL2v(0590)を用いて結合アッセイを行った。
【0282】
PD1-IL2v二重特異性抗体は、PD1と同程度の結合プロファイルを示す(
図14Aおよび14B)。
図14Aは、同じ試料内でT
regと比べてT
conv上に結合した所与の抗体の頻度のデルタを示すものである。各記号は、別々のドナーを表し、水平の線は、N=4の中央値を示す。両方の分子は、T
regよりもT
conv上で高いPD-1の発現レベルのせいで、T
regと比べてT
convへの高い結合能を示す(
図14B;T
conv(黒い線)およびT
reg(灰色)に結合性を示す1つの代表的なドナーからのデータ)。したがって、PD1-IL2v二重特異性抗体は、IL2vが抗体に結合しているにもかかわらず、PD1の結合特性を維持している。
【0283】
実施例5B
Treg抑制アッセイにおけるPD1-IL2v処理時のTconvエフェクター機能の救出
次のステップで、PD1-IL2vがTconvのTreg抑制を後退できるかどうかを試験した。したがって、TconvおよびTregを一緒に、ブロッキング抗体と共にまたはブロッキング抗体なしで、アロ特異的刺激のための無関係のドナーからのCD4-CD25-の存在下で5日間培養する抑制機能アッセイを確立した。この目的のために、TconvおよびTregを単離し、上記のように標識した。FACS染色の前にタンパク質輸送阻害剤(GolgiPlug#555029、BDおよびGolgiStop#554724、BD)を5時間適用することによって、ゴルジ複合体中のサイトカイン蓄積は高まった。
【0284】
増殖したT
convがT
regの存在下および不在下でグランザイムB(GrzB;
図15A)およびインターフェロンガンマ(IFNγ;
図15B)を分泌する能力を測定した。T
regの抑制を次式により計算した:
サイトカイン抑制(%)=100-(%サイトカイン
Tconv+Treg±ブロッキング抗体)/(%サイトカイン
Tconv未処理)*100)
式中、%サイトカイン
Tconv+Treg±ブロッキング抗体は、T
reg±ブロッキング抗体の存在下でT
convにより分泌されるサイトカインのレベルであり、%サイトカイン
Tconv未処理は、Tregの不在下でT
convにより分泌されるサイトカインのレベルである。
図15Aおよび15Bにおいて、各記号は、別々のドナーを表し、水平の線は、N=5での中央値を示し、0%での点線は、T
regによる無抑制を表す。Pは、一方向ANOVAを使用して計算した(*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、****p<0.0001)。
【0285】
図15Aは、PD1抗体(0376)を用いた処理が、未処理群における68.6%抑制という中央値と比較してT
conv機能の47.7%抑制という中央値を結果として生じることを示す(統計的に有意でない)。同様に、アテゾリズマブ、ニボルマブおよびペムブロリズマブとのPD-1/PD-L1相互作用のブロッキングは、PD1抗体と同じ傾向を示した。興味深いことに、DP47-IL2v(中央値=-11.3%、p=0.0011)およびPD1-IL2v(中央値=-43.6%、p<0.0001)は、T
convのGrzBエフェクター機能をT
regの抑制から救出した。さらに、PD1-IL2vは、PD1抗体単独よりもいっそう有意に強力(p=0.0026)であった。
【0286】
平行して、T
regによるT
convのINFy抑制について同じ分析を行った(
図15B)。DP47-IL2v(中央値=51.77%、p=0.0251)およびPD1-IL2v(中央値=31.23%、p≦0.0001)は、T
convのIFNyエフェクター機能をT
regの抑制から救出した。
【0287】
実施例6
単一薬剤および組み合わせとしてのPD1抗体およびFAP-IL2v抗体と比較した、マウス腫瘍細胞株の同系モデルにおけるPD1-IL2vイムノコンジュゲートのインビボ有効性
同系モデルにおいてマウス代用PD1-IL2vイムノコンジュゲート(muPD1-IL2v)をマウス代用PD1とマウス代用FAP-IL2v(muFAP-IL2v)との組み合わせと比較して、その抗腫瘍有効性について試験した。使用した同系モデルは、Panc02-Fluc膵臓同系モデルであった。
【0288】
Black 6マウスに膵臓内注射されたマウス膵臓Panc02-Flucトランスフェクタント細胞株においてマウス代用PD1-IL2vイムノコンジュゲートを試験した。Panc02-H7細胞(マウス膵臓癌)は、本来、MDアンダーソンがんセンター(Texas、USA)から得られたものであり、増殖後にRoche-Glycart施設内細胞バンクに寄託された。Panc02-H7-Fluc細胞株を、カルシウムトランスフェクションおよびサブクローニング技術により社内で産生した。Panc02-H7-Flucを、10% FCS(Sigma)、500μg/mlヒグロマイシンおよび1% Glutamaxを含有するRPMI培地中で培養した。5% CO2の水飽和雰囲気中、37℃で細胞を培養した。移植のために23回継代したものを使用した。細胞生存率は、87.5%であった。0.3mlツベルクリンシリンジ(BD Biosciences、Germany)を使用して動物1匹当たり細胞1×105個をマウスの膵臓に注射した。このために、麻酔Black 6マウスの左腹部に小切開を行った。腹膜壁を開放し、ピンセットで膵臓を慎重に単離した。細胞懸濁液10マイクロリットル(RPMI培地中1×105個のPanc02-H7-Fluc細胞)を膵尾に注射した。5/0分解可能縫合糸を使用して腹膜壁および皮膚創傷を閉鎖した。
【0289】
実験開始時に10~12週齢の雌Black 6マウス(Charles Rivers、Lyon、France)を、関係するガイドライン(GV-Solas;Felasa;TierschG)に従って、12時間明/12時間暗の1日サイクルで、特定の病原体がない条件で維持した。地方自治体により実験研究プロトコールが審査され、承認された(ZH193/2014)。到着後、動物を1週間維持して、新しい環境に慣らし、観察した。定期ベースで健康モニタリングを実施した。
【0290】
試験0日目に1×105個のPanc02-Fluc細胞をマウスに膵臓内注射し、無作為化し、秤量した。腫瘍細胞注射の1週間後に、PD1抗体とFAP-IL2v抗体との組み合わせと比較して2つの異なる用量のPD1-IL2vをマウスに1週間に1回、4週間静脈内注射した。
【0291】
全てのマウスに適切な溶液200μlを静脈内注射した。ビヒクル群のマウスにヒスチジンバッファーを、治療群にPD1-IL2v(0.5mg/kgもしくは1mg/kg)、PD1(10mg/kg)抗体およびFAP-IL2v(2.5mg/kg)抗体またはPD1抗体とFAP-IL2v抗体(10mg/kg PD1および2.5mg/kg FAP-IL2v)との組み合わせを注射した。200μl当たり適切な量のイムノコンジュゲートを得るために、必要な場合は表2に従って原液をヒスチジンバッファーで希釈した。
【0292】
IVIS(登録商標)SPECTRUMによるバイオルミネッセンスイメージングのために、バイオルミネッセンスイメージング取得(BLI)の10分前にマウスに150mg/kg D-ルシフェリンを腹腔内注射し、その後4%イソフルランで麻酔した。続いて、IVIS(登録商標)spectrum中に位置付けた隔離チャンバーにマウスを移した。発光シグナルを10~50秒間取得することによりインビボBLI取得を行った。データは、放射輝度(光子)/sec/cm2/srとして記憶される。Living Image(登録商標)4.4ソフトウェアを用いてインビボBLIデータ解析を行い、腫瘍抑制曲線により表した。
【0293】
組織学により免疫薬力学を評価するために、最初の療法の4日後に1群3匹のマウスを頸椎脱臼により屠殺した。膵臓腫瘍を回収し、10%ホルマリン中で直ちに固定した。組織をホルマリン溶液中に一晩放置し、その後、FFPET(Leica 1020、Germany)用に処理した。続いて4μmパラフィン切片をミクロトーム(Leica RM2235、Germany)で切り出した。マウスCD3、PD1およびICOSの免疫組織化学をLeica自動染色機(Leica ST5010、Germany)で製造業者のプロトコールに従って行った。画像をOlympusスキャナーでスキャンした。
【0294】
図16は、マウス代用PD1-IL2vを、単一薬剤としてまたは組み合わせのマウス代用FAP-IL2vおよびマウス代用PD-1抗体と比較する有効性実験の結果を示すものである。Panc02-H7-Flucトランスフェクタント膵臓癌細胞株をBlack 6マウスの膵臓に注射して、膵臓同所性同系モデルにおける生存を試験した。マウス1匹当たり注射した抗体の量(mg/kg)は、以下の通りである:0.5および1mg/kgマウス代用PD1-IL2v抗体、10mg/kgマウス代用PD1抗体および2.5mg/kgマウス代用FAP-IL2v抗体。抗体を1週間に1回4週間、静脈内注射した。全ての他の単一薬剤およびマウス代用PD-1とマウス代用FAP-IL2vとの組み合わせと比較して、0.5および1mg/kgマウス代用PD1-IL2vにおいて有意に優れた生存期間中央値および全生存が観察された。
図16および表3は、両方の用量のPD1-IL2vが、全ての他の単一薬剤だけでなく、PD1とFAP-IL2vとの組み合わせと比較して、高い生存期間中央値および全生存の点で優れた有効性を媒介したことを示すものである。
【0295】
図17は、マウス代用PD1-IL2vをFAP-IL2v、マウス代用PD1およびそれらの組み合わせと比較する有効性実験の結果を示すものである。Panc02-H7-Flucトランスフェクタント膵臓癌細胞株をBlack 6マウスの膵臓に注射して、膵臓同所性同系モデルにおける生存をバイオルミネッセンスにより試験した。最初の療法投与後7日目という早期に、いくつかの治療群でIVIS(登録商標)SpectrumによりPanc02-Flucバイオルミネッセンスシグナルの低減が検出されたが、PD1-IL2vだけが、大部分のマウスで実験の全持続期間にわたり継続したBLIシグナルの完全消失を示し、0.5mg/kg用量についてマウス7匹中4匹および1mg/kg用量についてはマウス7匹中7匹で完全寛解を示した。
図17は、両方の用量のPD1-IL2vが、全ての他の単一薬剤および組み合わせの群と比較して、バイオルミネッセンスシグナル(光子/秒)を減少させる点で優れた有効性を媒介したことを示すものである。
【0296】
図18Aおよび18Bは、抗マウスCD3について染色された膵臓腫瘍の免疫組織化学画像(
図18A)およびT細胞定量分析(
図18B)の結果を示すものである。表示の治療群に由来するBlack 6マウス膵臓腫瘍に対してCD3 T細胞の免疫組織化学染色を行った。免疫組織化学染色のために組織試料を調製した:治療的投与後に動物から腫瘍を回収し、10%ホルマリン(Sigma、Germany)中で固定し、その後、FFPET(Leica 1020、Germany)のために処理した。続いて、ミクロトーム(Leica RM2235、Germany)で4μmパラフィン切片を切り出した。マウスCD3の免疫組織化学を抗マウスCD3(Diagnostic Biosystem、Germany)を用いてLeica自動染色機(Leica ST5010、Germany)で製造業者のプロトコールに従って行った。画像をOlympusスキャナーでスキャンした。Definiensソフトウェア(Definiens、Germany)を用いてmuCD3陽性T細胞の定量を行った。多重比較検定を伴う一方向ANOVAにより統計解析した。最初の療法投与後4日目という早期に、ビヒクル群と比較してPD1-IL2v治療群においてCD3陽性T細胞数の有意な増加が検出された。CD3陽性細胞の増加傾向は、また、ビヒクルに対してマウス代用PD1とマウス代用FAP-IL2vとの組み合わせで見られたが、有意ではなかった。
図18Aおよび18Bは、PD1-IL2vが最初の療法の4日後に全ての群と比較して膵臓腫瘍におけるCD3浸潤の増加を誘発したことを示すものである。
【0297】
図19は、抗マウスPD1について染色された膵臓腫瘍の免疫組織化学画像の結果を示すものである。表示の治療群に由来するBlack 6マウス膵臓腫瘍にPD1陽性T細胞の免疫組織化学染色を行った。組織試料を免疫組織化学染色のために調製した:腫瘍を治療投与後の動物から回収し、10%ホルマリン(Sigma、Germany)中で固定し、その後FFPET(Leica 1020、Germany)のために処理した。続いて、ミクロトーム(Leica RM2235、Germany)で4μmパラフィン切片を切り出した。マウスPD1免疫組織化学を抗マウスPD1(R&D System、Germany)を用いてLeica自動染色機(Leica ST5010、Germany)で製造業者のプロトコールに従って行った。画像をOlympusスキャナーでスキャンした。最初の療法投与後4日目という早期に、ビヒクル群と比較してPD1-IL2v治療群においてPD1陽性T細胞数の非常に高い増加が検出された。ビヒクルと比較してマウス代用PD1とマウス代用FAP-IL2vとの組み合わせにおいても、PD1陽性細胞の中等度の増加が見られた。
図19は、最初の療法の4日後にPD1-IL2vが全ての群と比較して膵臓腫瘍にPD1陽性T細胞の浸潤増加を誘起したことを示すものである。
【0298】
図20は、抗マウスICOSについて染色された膵臓腫瘍の免疫組織化学画像の結果を示すものである。表示の治療群に由来するBlack 6マウス膵臓腫瘍にICOS陽性T細胞の免疫組織化学染色を行った。免疫組織化学染色のために組織試料を調製した:治療投与後に動物から腫瘍を回収し、10%ホルマリン(Sigma、Germany)中で固定し、その後FFPET(Leica 1020、Germany)のために処理した。続いて4μmパラフィン切片をミクロトーム(Leica RM2235、Germany)で切り出した。マウスICOS免疫組織化学を、抗マウスICOS(My Biosource、Germany)を用いてLeica自動染色機(Leica ST5010、Germany)で製造業者のプロトコールに従って行った。画像をOlympusスキャナーでスキャンした。最初の療法投与後4日目という早期に、ICOS陽性T細胞数の減少が、ビヒクル群と比較してPD1-IL2v治療群で検出された。
図20は、PD1-IL2vが、全ての群と比較して最初の療法の4日後に膵臓腫瘍におけるICOS陽性T細胞浸潤の減少を誘起したことを示すものである。
【0299】
実施例7
単一薬剤として、および組み合わせのPD1抗体およびFAP-IL2v抗体(異なる2つの用量)と比較したマウス腫瘍細胞株の同系モデルにおけるPD1-IL2vイムノコンジュゲートのインビボ有効性
PD1-IL2vイムノコンジュゲートを、1つの同系モデルにおいてマウス代用PD1と、2つの異なる用量のマウス代用FAP-IL2vとの組み合わせと比較して、その抗腫瘍有効性について試験した。使用した同系モデルは、Panc02-Fluc膵臓同系モデルであった。マウス代用PD1-IL2vイムノコンジュゲートを、Black 6マウスに膵臓内注射したマウス膵臓Panc02-Flucトランスフェクタント細胞株において試験した。Panc02-H7細胞(マウス膵臓癌)は、本来、MDアンダーソンがんセンター(Texas、USA)から得られたものであり、増殖後にRoche-Glycart施設内細胞バンクに寄託された。Panc02-H7-Fluc細胞株を、カルシウムトランスフェクションおよびサブクローニング技術により社内で産生した。Panc02-H7-Flucを、10% FCS(Sigma)、500μg/mlヒグロマイシンおよび1% Glutamaxを含有するRPMI培地中で培養した。5% CO2の水飽和雰囲気中、37℃で細胞を培養した。移植のために16回継代したものを使用した。細胞生存率は、83.3%であった。0.3mlツベルクリンシリンジ(BD Biosciences、Germany)を使用して動物1匹当たり細胞1×105個をマウスの膵臓に注射した。このために、麻酔Black 6マウスの左腹部に小切開を行った。腹膜壁を開放し、ピンセットで膵臓を慎重に単離した。細胞懸濁液10マイクロリットル(RPMI培地中1×105個のPanc02-H7-Fluc細胞)を膵尾に注射した。5/0分解可能縫合糸を使用して腹膜壁および皮膚創傷を閉鎖した。
【0300】
実験開始時に10~12週齢の雌Black 6マウス(Charles Rivers、Lyon、France)を、関係するガイドライン(GV-Solas;Felasa;TierschG)に従って、12時間明/12時間暗の1日サイクルの特定の病原体がない条件で維持した。地方自治体により実験研究プロトコールが審査され、承認された(ZH193/2014)。到着後、動物を1週間維持して、新しい環境に慣らし、観察に供した。定期ベースで連続的な健康モニタリングを実施した。
【0301】
試験0日目に1×105個のPanc02-Fluc細胞をマウスに膵臓内注射し、無作為化し、秤量した。腫瘍細胞注射の1週間後に、PD1+2つの異なる用量のFAP-IL2v Mabの組み合わせと比較して、PD1-IL2vをマウスに1週間に1回、3週間静脈内注射した。
【0302】
全てのマウスに適切な溶液200μlを静脈内注射した。ビヒクル群のマウスにヒスチジンバッファーを、治療群にPD1-IL2v(1mg/kg)、PD1(10mg/kg)およびFAP-IL2v(0.625mg/kgもしくは1.25mg/kg)抗体またはPD1+FAP-IL2v抗体の組み合わせ(10mg/kg+1.25mg/kgもしくは10mg/kg+0.625mg/kg)を注射した。200μl当たり適切な量のイムノコンジュゲートを得るために、必要な場合は表4に従って原液をヒスチジンバッファーで希釈した。
【0303】
IVIS(登録商標)SPECTRUMによるバイオルミネッセンスイメージングのために、バイオルミネッセンスイメージング取得(BLI)の10分前にマウスに150mg/kg D-ルシフェリンを腹腔内注射し、その後4%イソフルランで麻酔する。続いて、IVIS(登録商標)spectrum中に位置付けた隔離チャンバーにマウスを移した。発光シグナルを10~50秒間取得することによりインビボBLI取得を行う。データは、放射輝度(光子)/sec/cm2/srとして記憶される。Living Image(登録商標)4.4ソフトウェアを用いてインビボBLIデータ解析を行い、腫瘍抑制曲線により表した。
【0304】
組織学により免疫薬力学を評価するために、最初の療法の4日後に、選ばれた群からの3匹のマウスを頸椎脱臼により屠殺した。膵臓腫瘍を回収し、10%ホルマリン中で直ちに固定した。組織をホルマリン溶液中に一晩放置し、その後、FFPET(Leica 1020、Germany)のために処理した。続いて4μmパラフィン切片をミクロトーム(Leica RM2235、Germany)で切り出した。マウスCD3、CD8、PD1およびグランザイムBの免疫組織化学をLeica自動染色機(Leica ST5010、Germany)で製造業者のプロトコールに従って行った。画像をOlympusスキャナーでスキャンした。
【0305】
図21および表5は、muPD1-IL2vを単一薬剤としておよび組み合わせのmuFAP-IL2v抗体およびmuPD-1抗体と比較する有効性実験の結果を示す。Panc02-H7-Flucトランスフェクタント膵臓癌細胞株をBlack 6マウスの膵臓に注射して、膵臓同所性同系モデルにおける生存を試験した。マウス1匹当たり注射した抗体の量(mg/kg)は、以下の通りである:muPD1-IL2vは1mg/kg、muPD1は10mg/kgおよびmuFAP-IL2v抗体は0.625または1.25mg/kg。抗体を1週間に1回4週間、静脈内注射した。試験した両方の用量で、全ての他の単一薬剤およびmuPD-1+muFAP-IL2vの組み合わせと比較して1mg/kg muPD1-IL2vで有意に優れた生存期間中央値および全生存が観察された。したがって、PD1-IL2vは、試験した両方の用量で、全ての他の単一薬剤およびPD1+FAP-IL2vの組み合わせと比較して、高い生存期間中央値および全生存の点で優れた有効性を媒介したと結論することができる。
【0306】
図22は、muPD1-IL2vを2つの異なる用量のFAP-IL2v、muPD1およびそれらの組み合わせと比較する有効性実験の結果を示すものである。Panc02-H7-Flucトランスフェクタント膵臓癌細胞株をBlack 6マウスの膵臓に注射して、膵臓同所性同系モデルにおける生存をバイオルミネッセンスにより試験した。試験の経過中にいくつかの治療群でIVIS(登録商標)spectrumによりPanc02-Flucバイオルミネッセンスシグナルの低減が検出されたが、muPD1-IL2v療法だけが、全てのマウスでBLIシグナルの完全消失を示し、それは、実験の全持続期間にわたり継続し、6匹のマウス全てで完全寛解を示した。
図22は、PD1-IL2vが、全ての他の単一薬剤および組み合わせの群と比較して、バイオルミネッセンスシグナル(光子/秒)を減少させる点で優れた有効性を媒介したことを示すものである。
【0307】
図23は、抗マウスCD3について染色された膵臓腫瘍の免疫組織化学画像の結果を示すものである。表示の治療群に由来するBlack 6マウス膵臓腫瘍にCD3 T細胞の免疫組織化学染色を行った。免疫組織化学染色のために組織試料を調製した:治療投与後に動物から腫瘍を回収し、10%ホルマリン(Sigma、Germany)中で固定し、その後FFPET(Leica 1020、Germany)のために処理した。続いて4μmパラフィン切片をミクロトーム(Leica RM2235、Germany)で切り出した。マウスCD3免疫組織化学を、抗マウスCD3(Diagnostic Biosystem、Germany)を用いてLeica自動染色機(Leica ST5010、Germany)で製造業者のプロトコールに従って行った。画像をOlympusスキャナーでスキャンした。最初の療法投与後4日目という早期に、CD3陽性T細胞数の非常に大きな増加が、ビヒクル群と比較してmuPD1-IL2v治療群で検出された。また、ビヒクルと比較した場合、全てのその他の治療群においてCD3陽性細胞の中等度の増加も見られた。
図23は、PD1-IL2vが最初の療法の4日後に全ての群と比較して膵臓腫瘍におけるCD3陽性T細胞浸潤の増加を誘起したことを示すものである。
【0308】
図24Aおよび24Bおよび表6は、抗マウスCD8について染色された膵臓腫瘍の免疫組織化学画像(
図24A)およびT細胞定量分析(
図24B)の結果を示すものである。表示の治療群に由来するBlack 6マウス膵臓腫瘍にCD8 T細胞の免疫組織化学染色を行った。免疫組織化学染色のために組織試料を調製した:治療投与後に動物から腫瘍を回収し、10%ホルマリン(Sigma、Germany)中で固定し、その後FFPET(Leica 1020、Germany)のために処理した。続いて4μmパラフィン切片をミクロトーム(Leica RM2235、Germany)で切り出した。マウスCD8免疫組織化学を、抗マウスCD8(Serotec、Germany)を用いてLeica自動染色機(Leica ST5010、Germany)で製造業者のプロトコールに従って行った。画像をOlympusスキャナーでスキャンした。muCD8陽性T細胞の定量を、Defniensソフトウェア(Definiens、Germany)を用いて行った。多重比較検定を伴う一方向ANOVAにより統計解析した。最初の療法投与後4日目という早期に、CD8陽性T細胞数の有意な増加が、全ての他の群と比較してmuPD1-IL2v治療群で検出された。また、試験した全てのその他の治療群においてCD8陽性細胞の増加傾向も見られたが、有意ではなかった。したがって、
図24Aおよび24Bは、PD1-IL2vが最初の療法の4日後に全ての群と比較して膵臓腫瘍におけるCD8浸潤の増加を誘発したことを示すものである。
【0309】
図25Aおよび25Bおよび表7は、抗グランザイムB(5A)およびグランザイムBマーカー面積定量分析(5B)について染色された膵臓腫瘍の免疫組織化学画像の結果を示すものである。表示の治療群に由来するBlack 6マウス膵臓腫瘍にグランザイムBの免疫組織化学染色を行った。免疫組織化学染色のために組織試料を調製した:治療投与後に動物から腫瘍を回収し、10%ホルマリン(Sigma、Germany)中で固定し、その後FFPET(Leica 1020、Germany)のために処理した。続いて4μmパラフィン切片をミクロトーム(Leica RM2235、Germany)で切り出した。マウスグランザイムB免疫組織化学を、抗マウスグランザイムB(Abcam、Germany)を用いてLeica自動染色機(Leica ST5010、Germany)で製造業者のプロトコールに従って行った。画像をOlympusスキャナーでスキャンした。Definiensソフトウェア(Definiens、Germany)を用いてグランザイムBマーカー面積の定量を行った。多重比較検定を伴う一方向ANOVAにより統計解析した。最初の療法投与後4日目という早期に、グランザイムBの有意な増加が、全ての他の群と比較してmuPD1-IL2v治療群で検出された。また、全てのその他の治療群においてグランザイムBマーカー面積の増加傾向も見られたが、有意ではなかった。したがって、
図25Aおよび25Bは、PD1-IL2vが最初の療法の4日後に全ての群と比較して膵臓腫瘍におけるグランザイムB陽性面積の増加を誘起したことを示すものである。
【0310】
図26Aおよび26Bおよび表8は、抗マウスPD1について染色された膵臓腫瘍の免疫組織化学画像(
図26A)およびPD1陽性細胞定量分析(
図26B)の結果を表すものである。表示の治療群に由来するBlack 6マウス膵臓腫瘍にPD1細胞の免疫組織化学染色を行った。免疫組織化学染色のために組織試料を調製した:治療投与後に動物から腫瘍を回収し、10%ホルマリン(Sigma、Germany)中で固定し、その後FFPET(Leica 1020、Germany)のために処理した。続いて4μmパラフィン切片をミクロトーム(Leica RM2235、Germany)で切り出した。マウスPD1免疫組織化学を、抗マウスPD1(Serotec、Germany)を用いてLeica自動染色機(Leica ST5010、Germany)で製造業者のプロトコールに従って行った。画像をOlympusスキャナーでスキャンした。Definiensソフトウェア(Definiens、Germany)を用いてmuPD1陽性細胞の定量を行った。多重比較検定を伴う一方向ANOVAにより統計解析した。最初の療法投与後4日目という早期に、PD1陽性細胞数の有意な増加が、全ての他の群と比較してmuPD1-IL2v治療群で検出された。また、試験した全てのその他の治療群においてPD1陽性細胞の増加傾向も見られたが、有意ではなかった。したがって、
図26Aおよび26Bは、PD1-IL2vが最初の療法の4日後に全ての群と比較して膵臓腫瘍におけるPD1陽性細胞の増加を誘発したことを示すものである。
【0311】
実施例7
PD-1ブロックによるウイルス特異的消耗T細胞へのIL-2v送達効果
PD-1の発現は、ウイルス抗原への慢性曝露の結果としてウイルス特異的消耗T細胞上に初めて記載されており、これは、T細胞が有効な抗ウイルス応答を開始できないことに関連している。IL-2およびIFN-γを同時分泌できるウイルス特異的CD4 T細胞は、慢性感染におけるウイルス再活性化からの防御を付与する。実際、CD4 T細胞の多機能性シグネチャーは、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタイン-バーウイルスウイルス(EBV)および単純ヘルペスウイルス(HSV)に感染した健康個体、ならびに数年間無症候のままであるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染個体におけるウイルスコントロールと関連している。
【0312】
したがって、本発明者らは、慢性ウイルス感染に関連して、PD-1標的化が機能障害性抗原特異的T細胞に突然変異バージョンのIL-2(IL-2v)を送達する効果を評価するためのインビトロアッセイを開発した。本発明者らのアッセイに適したドナーの量に関する制限を回避するために、本発明者らは、集団のおよそ80%はCMV血清陽性であることを考えて、T細胞についてのリコール抗原としてCMV免疫原性ウイルスタンパク質(pp65)を選んだ。したがって、本発明者らは、濃度10μg/mlの本発明者らのコンストラクトの存在下で健康ヒトドナー末梢血単核細胞(PBMC)をCMV-pp65(Miltenyi)で刺激した。43時間後に、本発明者らは、Golgi Plug(BD Bioscience、ブレフェルジンA)およびGolgi Stop(BD Bioscience、モネンシン)を添加することによりゴルジ体からのタンパク質輸送をブロックし、細胞を37℃で追加的に5時間インキュベートした。次いで細胞を洗浄し、抗ヒトCD3、CD4、CD8、CD62LおよびCD45RO抗体で表面を染色し、その後FoxP3転写因子染色バッファーセット(eBioscience)で固定/透過処理した。最後に、本発明者らは、IL-2、IFN-γおよびKi67(全てeBioscience製)について細胞内染色を行って細胞増殖を測定した。
【0313】
図27は、CD4 T細胞が、単独、IL-2vとの組み合わせ、または融合タンパク質としてのいずれかの抗PD-1の存在下でCMV免疫原性タンパク質pp65による48時間のリコールを受けたときに、IL-2(A)、IL-2およびIFN-γ(B)またはIFN-γ(C)を分泌する能力および増殖する能力(D)を示すものである。本発明者らは、pp65および抗PD1で処理された試料と比較した場合、PD1-IL2vが、IL-2およびIFN-γを共分泌できる多機能性CD4 T細胞の頻度を増加できる傾向(
図21B)、ならびにIFN-γ単独分泌集団における有意な増加(
図21C)を観察した。逆に、pp65と非標的IL-2v(DP47-IL2v)との組み合わせは、IL-2単機能性CD4 T細胞の頻度を増加させた(
図21A)。予想通り、Ki67染色陽性により示されるように、標的または非標的IL-2vで処理された全ての細胞は、増殖した。
【0314】
図28は、IFN-γを分泌しているウイルス特異的CD4 T細胞が、単独、IL-2vとの組み合わせ、または融合タンパク質としてのいずれかの抗PD-1の存在下でCMV免疫原性タンパク質pp65による48時間のリコールを受けたときのCD45ROおよびCD62Lの発現により分化状態を示すものである。増殖したIFN-γ分泌ウイルス特異的CD4 T細胞の表現型特徴づけ(
図22)により、エフェクター-メモリー(CD45RO+CD62L-)プロファイルが明らかとなった。本発明者らは、PD1-IL2v融合タンパク質によりCMV特異的消耗CD4 T細胞にIL-2vを送達する結果として、分化したメモリープロファイルならびにIL-2およびIFN-γの両方を分泌する能力によって特徴付けられる長寿命防御ウイルス特異的集団の増殖が生じると結論することができる。
【0315】
実施例8
実施例8A
ドナー1および2(pSTAT5アッセイ)の細胞活性化
健康ドナーからの新鮮単離されたPBMCを、96ウェル丸底プレート内の温培地(RPMI1640、10% FCS、2mMグルタミン)に播種した(200’000細胞/ウェル)。プレートを300gで10分間遠心分離し、上清を除去した。IL2分子を含有する培地50μl中に細胞を再懸濁し、37℃で20分間刺激した。リン酸化状態を保つために、細胞を等量の予備加温Cytofixバッファー(554655、BD Bioscience)により37℃で10分間刺激後、直ちに固定した。その後、プレートを300gで10分間遠心分離し、上清を除去した。細胞内染色させるために、細胞をPhosflow Perm buffer III(558050、BD Bioscience)200μl中に入れて4℃で30分間透過処理した。次いで、細胞を冷FACSバッファー150μlで2回洗浄し、2枚の96ウェル丸底プレートに分割し、それぞれ20μlの抗体ミックスIまたはIIを用いて冷蔵庫内で60分間染色した。抗体ミックスIを使用して、CD4 T細胞および制御性T細胞におけるpSTAT5を染色し、抗体ミックスIIを使用して、CD8 T細胞およびNK細胞におけるpSTAT5を染色した。その後、細胞をFACSバッファーで2回洗浄し、2% PFA含有FACSバッファー200μl/ウェル中に再懸濁した。BD Fortessaフローサイトメーターを使用して分析を行った。
【0316】
表9および表10によるFACS抗体ミックスを使用した。
【0317】
図29は、PD1-IL2v、FAP-IL2vおよびFAP-IL2wtを用いてドナー1の静止PBMCの治療を行ったときのCD8 T細胞(A)、NK細胞(B)、CD4 T細胞(C)および制御性T細胞(D)におけるSTAT5リン酸化を示すものである。3つの被験分子は、全て、CD8 T細胞、NK細胞およびCD4 T細胞(Tregを除く)に対して等しく効力がある。FAP-IL2wtは、TregにおけるSTAT5リン酸化を誘導する効力がより高く、PD1-IL2vがそれに続く。FAP-IL2vは、Tregに対する活性が最低である。
【0318】
図30は、FAP-IL2v、PD1-IL2c、FAP-IL2wtおよびPD1-TIM3-IL2vを用いてドナー2の静止PBMCの処理を行ったときのCD4 T細胞(A)、CD8 T細胞(B)、制御性T細胞(C)およびNK細胞(D)におけるSTAT5リン酸化を示すものである。4つの被験分子は、全て、CD8 T細胞、NK細胞およびCD4 T細胞(Tregを除く)に対して同程度の活性である。FAP-IL2wtは、TregにおけるSTAT5リン酸化を誘導する効力がより高く、PD1-IL2vがそれに続く。FAP-IL2vは、Tregに対する活性が最低である。
【0319】
実施例8B
ドナー3および4の細胞活性化(pSTAT5アッセイ)
健康なドナーから単離された凍結PBMCを解凍し、37℃で一晩培養した。翌日、細胞を96ウェル丸底プレート中の温培地(RPMI1640、10% FCS、2mMグルタミン)に播種した(200’000細胞/ウェル)。プレートを300gで10分間遠心分離し、上清を除去した。IL2分子を含有する培地50μl中に細胞を再懸濁し、37℃で20分間刺激した。リン酸化状態を保つために、細胞を等量の予備加温Cytofixバッファー(554655、BD Bioscience)により37℃で10分間刺激後、直ちに固定した。その後、プレートを300gで10分間遠心分離し、上清を除去した。細胞内染色させるために、細胞をPhosflow Perm buffer III(558050、BD Bioscience)200μl中に入れて4℃で30分間透過処理した。次いで、細胞を冷FACSバッファー150μlで2回洗浄し、2枚の96ウェル丸底プレートに分割し、それぞれ20μlの抗体ミックスIまたはIIを用いて冷蔵庫内で60分間染色した。抗体ミックスIを使用して、CD4 T細胞および制御性T細胞におけるpSTAT5を染色し、抗体ミックスIIを使用して、CD8 T細胞およびNK細胞におけるpSTAT5を染色した。その後、細胞をFACSバッファーで2回洗浄し、2% PFA含有FACSバッファー200μl/ウェル中に再懸濁した。BD Fortessaフローサイトメーターを使用して分析を行った。表11および表12によるFACS抗体ミックスを使用した。
【0320】
図31は、FAP-IL2v、PD1-IL2v、FAP-IL2wt、PD1-TIM3-IL2vを用いてドナー3の静止PBMCの処理を行ったときのCD8 T細胞(A)、NK細胞(B)、CD4 T細胞(C)および制御性T細胞(D)におけるSTAT5リン酸化を示すものである。4つの被験分子は、全て、CD8 T細胞、NK細胞およびCD4 T細胞(Tregを除く)に対して同程度の活性である。FAP-IL2wtは、TregにおけるSTAT5リン酸化を誘導する効力がより高く、PD1-IL2vがそれに続く。FAP-IL2vは、Tregに対する活性が最低である。
【0321】
図32は、FAP-IL2v、PD1-IL2v、FAP-IL2wt、PD1-TIM3-IL2vを用いてドナー4の静止PBMCの処理を行ったときのCD8 T細胞(A)、NK細胞(B)、CD4 T細胞(C)および制御性T細胞(D)におけるSTAT5リン酸化を示すものである。4つの被験分子は、全て、CD8 T細胞、NK細胞およびCD4 T細胞(Tregを除く)に対して同程度の活性である。FAP-IL2wtは、TregにおけるSTAT5リン酸化を誘導する効力がより高く、PD1-IL2vがそれに続く。FAP-IL2vは、Tregに対する活性が最低である。
【0322】
本発明のさらなる態様
1. 突然変異IL-2ポリペプチドと、PD-1に結合する抗体とを含むイムノコンジュゲートであって、
突然変異IL-2ポリペプチドが、アミノ酸置換F42A、Y45AおよびL72G(ヒトIL-2配列、配列番号19に対する番号付け)を含むヒトIL-2分子であるイムノコンジュゲート。
2. 突然変異IL-2ポリペプチドと、PD-1に結合する抗体とを含むイムノコンジュゲートであって、
突然変異IL-2ポリペプチドが、アミノ酸置換F42A、Y45AおよびL72G(ヒトIL-2配列、配列番号19に対する番号付け)を含むヒトIL-2分子であり、
抗体が、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、およびKabat番号付けによる71~73位に配列番号7のアミノ酸配列を含むFR-H3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、イムノコンジュゲート。
3. 突然変異IL-2ポリペプチドと、PD-1に結合する抗体とを含むイムノコンジュゲートであって、
突然変異IL-2ポリペプチドが、アミノ酸置換F42A、Y45AおよびL72G(ヒトIL-2配列、配列番号19に対する番号付け)を含むヒトIL-2分子であり、
抗体が、(a)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに(b)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、イムノコンジュゲート。
4. 突然変異IL-2ポリペプチドと、PD-1に結合する抗体とを含むイムノコンジュゲートであって、
突然変異IL-2ポリペプチドが、アミノ酸置換F42A、Y45AおよびL72G(ヒトIL-2配列、配列番号19に対する番号付け)を含むヒトIL-2分子であり、
抗体が、(a)配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに(b)配列番号15、配列番号16、配列番号17、および配列番号18からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、イムノコンジュゲート。
5. 突然変異IL-2ポリペプチドが、アミノ酸置換T3Aおよび/またはアミノ酸置換C125Aをさらに含む、態様1~4のいずれか1つに記載のイムノコンジュゲート。
6. 突然変異IL-2ポリペプチドが、配列番号20の配列を含む、態様1~5のいずれか1つに記載のイムノコンジュゲート。
7. 1つ以下の突然変異IL-2ポリペプチドを含む、態様1~6のいずれか1つに記載のイムノコンジュゲート。
8. 抗体が、第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFcドメインを含む、態様1~7のいずれか1つに記載のイムノコンジュゲート。
9. Fcドメインが、IgGクラス、特にIgG1サブクラスのFcドメインである、態様8に記載のイムノコンジュゲート。
10. Fcドメインが、ヒトFcドメインである、態様8または9に記載のイムノコンジュゲート。
11. 抗体が、IgGクラス、特にIgG1サブクラスの免疫グロブリンである、態様1~10のいずれか1つに記載のイムノコンジュゲート。
12. Fcドメインが、Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットとの会合を促進する修飾を含む、態様8~11のいずれか1つに記載のイムノコンジュゲート。
13. Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基が、より大きい側鎖体積を有するアミノ酸残基により置き換えられ、それにより、第2のサブユニットのCH3ドメイン内の空洞に配置可能な、第1のサブユニットのCH3ドメイン内の隆起を生成し、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基が、より小さい側鎖体積を有するアミノ酸残基により置き換えられ、それにより、内部に第1のサブユニットのCH3ドメイン内の隆起が配置可能な、第2のサブユニットのCH3ドメイン内の空洞を生成する、態様8~12のいずれか1つに記載のイムノコンジュゲート。
14. Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、366位のスレオニン残基が、トリプトファン残基により置き換えられ(T366W)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、407位のチロシン残基が、バリン残基により置き換えられ(Y407V)、場合により、366位のスレオニン残基が、セリン残基により置き換えられ(T366S)、368位のロイシン残基が、アラニン残基により置き換えられる(L368A)(Kabat EUインデックスによる番号付け)、態様8~13のいずれか1つに記載のイムノコンジュゲート。
15. Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、追加的に、354位のセリン残基が、システイン残基により置き換えられる(S354C)か、または356位のグルタミン酸残基が、システイン残基により置き換えられ(E356C)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、追加的に、349位のチロシン残基が、システイン残基により置き換えられる(Y349C)(Kabat EUインデックスによる番号付け)、態様14に記載のイムノコンジュゲート。
16. 突然変異IL-2ポリペプチドが、そのアミノ末端アミノ酸でFcドメインのサブユニットのうちの1つ、特にFcドメインの第1のサブユニットのカルボキシ末端アミノ酸と、場合によりリンカーペプチドを通じて融合されている、態様8~15のいずれか1つに記載のイムノコンジュゲート。
17. リンカーペプチドが、配列番号21のアミノ酸配列を有する、態様16に記載のイムノコンジュゲート。
18. Fcドメインが、Fc受容体、特にFcγ受容体への結合性、および/またはエフェクター機能、特に抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を低減する1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、態様8~16のいずれか1つに記載のイムノコンジュゲート。
19. 前記1つまたは複数のアミノ酸置換が、L234、L235、およびP329(Kabat EUインデックス番号付け)の群から選択される1つまたは複数の位置にある、態様18に記載のイムノコンジュゲート。
20. Fcドメインの各サブユニットが、アミノ酸置換L234A、L235AおよびP329G(Kabat EUインデックス番号付け)を含む、態様8~19のいずれか1つに記載のイムノコンジュゲート。
21. 配列番号22の配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号23または配列番号24の配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、および配列番号25の配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む、請求項1~20のいずれか一項に記載のイムノコンジュゲート。
22. リンカー配列により繋がった突然変異IL-2ポリペプチドおよびIgG1免疫グロブリン分子から本質的になる、態様1~21のいずれか1つに記載のイムノコンジュゲート。
23. 態様1~22のいずれか1つに記載のイムノコンジュゲートをコードする、1つまたは複数の単離ポリヌクレオチド。
24. 態様23に記載のポリヌクレオチドを含む、1つまたは複数ベクター、特に発現ベクター。
25. 態様23に記載のポリヌクレオチドまたは態様24に記載のベクターを含む宿主細胞。
26. 突然変異IL-2ポリペプチドと、PD-1に結合する抗体とを含むイムノコンジュゲートを産生する方法であって、(a)態様25に記載の宿主細胞をイムノコンジュゲートの発現に適した条件で培養すること、および場合により(b)イムノコンジュゲートを回収することを含む、方法。
27. 態様26に記載の方法により産生される、突然変異IL-2ポリペプチドと、PD-1に結合する抗体とを含むイムノコンジュゲート。
28. 態様1~22または27のいずれか1つに記載のイムノコンジュゲートと、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物。
29. 医薬としての使用のための、態様1~22または27のいずれか1つに記載のイムノコンジュゲート。
30. 疾患の治療における使用のための、態様1~22または27のいずれか1つに記載のイムノコンジュゲート。
31. 前記疾患が、がんである、態様30に記載の疾患の治療における使用のためのイムノコンジュゲート。
32. 疾患の治療のための医薬の製造における、態様1~22または27のいずれか1つに記載のイムノコンジュゲートの使用。
33. 前記疾患が、がんである、態様32に記載の使用。
34. 個体における疾患を治療する方法であって、薬学的に許容される形態で治療的有効量の態様1~22または27のいずれか1つに記載のイムノコンジュゲートを含む組成物を前記個体に投与することを含む方法。
35. 前記疾患が、がんである、態様34に記載の方法。
36. 個体の免疫系を刺激する方法であって、薬学的に許容される形態で有効量の態様1~22または27のいずれか1つに記載のイムノコンジュゲートを含む組成物を前記個体に投与することを含む方法。
37. 本明細書の前記に記載された発明。
【0323】
理解を明瞭にすることを目指して、例証および例により前述の発明を幾分詳細に説明してきたが、説明および例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。本明細書において引用される全ての特許文献および科学文献の開示は、全体として参照により本明細書に明確に援用される。
理解を明瞭にすることを目指して、例証および例により前述の発明を幾分詳細に説明してきたが、説明および例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきでない。本明細書において引用される全ての特許文献および科学文献の開示は、全体として参照により本明細書に明確に援用される。
<本発明の更なる実施態様>
[実施態様1]
(i)PD-1に結合する抗体と、(ii)IL-2Rβγを通じてシグナル伝達するポリペプチド、特にIL-2ポリペプチドまたはIL-15ポリペプチドとを含むイムノコンジュゲート。
[実施態様2]
IL-2ポリペプチドが、突然変異IL-2ポリペプチドであり、
突然変異IL-2ポリペプチドが、アミノ酸置換F42A、Y45AおよびL72G(ヒトIL-2配列、配列番号19に対する番号付け)を含むヒトIL-2分子である、実施態様1に記載のイムノコンジュゲート。
[実施態様3]
IL-2ポリペプチドが、突然変異IL-2ポリペプチドであり、
突然変異IL-2ポリペプチドが、アミノ酸置換F42A、Y45AおよびL72G(ヒトIL-2配列、配列番号19に対する番号付け)を含むヒトIL-2分子であり、
抗体が、(a)配列番号1のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H2、配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H3、およびKabat番号付けによる71~73位に配列番号7のアミノ酸配列を含むFR-H3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに(b)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号5のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および配列番号6のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、実施態様1に記載のイムノコンジュゲート。
[実施態様4]
IL-2ポリペプチドが、突然変異IL-2ポリペプチドであり、
突然変異IL-2ポリペプチドが、アミノ酸置換F42A、Y45AおよびL72G(ヒトIL-2配列、配列番号19に対する番号付け)を含むヒトIL-2分子であり、
抗体が、(a)配列番号8のアミノ酸配列を含むHVR-H1、配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-H2、および配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに(b)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L1、配列番号12のアミノ酸配列を含むHVR-L2、および配列番号13のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、実施態様1に記載のイムノコンジュゲート。
[実施態様5]
IL-2ポリペプチドが、突然変異IL-2ポリペプチドであり、
突然変異IL-2ポリペプチドが、アミノ酸置換F42A、Y45AおよびL72G(ヒトIL-2配列、配列番号19に対する番号付け)を含むヒトIL-2分子であり、
抗体が、(a)配列番号14のアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)、ならびに(b)配列番号15、配列番号16、配列番号17、および配列番号18からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも約95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む、実施態様1に記載のイムノコンジュゲート。
[実施態様6]
突然変異IL-2ポリペプチドが、アミノ酸置換T3Aおよび/またはアミノ酸置換C125Aをさらに含む、実施態様2から5のいずれかに記載のイムノコンジュゲート。
[実施態様7]
突然変異IL-2ポリペプチドが、配列番号20の配列を含む、実施態様2から6のいずれかに記載のイムノコンジュゲート。
[実施態様8]
1つ以下の突然変異IL-2ポリペプチドを含む、実施態様2から7のいずれかに記載のイムノコンジュゲート。
[実施態様9]
抗体が、第1のサブユニットおよび第2のサブユニットで構成されるFcドメインを含む、実施態様2から8のいずれかに記載のイムノコンジュゲート。
[実施態様10]
Fcドメインが、IgGクラス、特にIgG
1
サブクラスのFcドメインである、実施態様9に記載のイムノコンジュゲート。
[実施態様11]
Fcドメインが、ヒトFcドメインである、実施態様9または10に記載のイムノコンジュゲート。
[実施態様12]
抗体が、IgGクラス、特にIgG
1
サブクラスの免疫グロブリンである、実施態様2から11のいずれかに記載のイムノコンジュゲート。
[実施態様13]
Fcドメインが、Fcドメインの第1のサブユニットと第2のサブユニットとの会合を促進する修飾を含む、実施態様9から12のいずれかに記載のイムノコンジュゲート。
[実施態様14]
Fcドメインの第1のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基が、より大きい側鎖体積を有するアミノ酸残基により置き換えられ、それにより、第2のサブユニットのCH3ドメイン内の空洞に配置可能な、第1のサブユニットのCH3ドメイン内の隆起を生成し、Fcドメインの第2のサブユニットのCH3ドメインにおいて、アミノ酸残基が、より小さい側鎖体積を有するアミノ酸残基により置き換えられ、それにより、内部に第1のサブユニットのCH3ドメイン内の隆起が配置可能な、第2のサブユニットのCH3ドメイン内の空洞を生成する、実施態様9から13のいずれかに記載のイムノコンジュゲート。
[実施態様15]
Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、366位のスレオニン残基が、トリプトファン残基により置き換えられ(T366W)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、407位のチロシン残基が、バリン残基により置き換えられ(Y407V)、366位のスレオニン残基が、セリン残基により置き換えられていてもよく(T366S)、368位のロイシン残基が、アラニン残基により置き換えられる(L368A)(Kabat EUインデックスによる番号付け)、実施態様9から14のいずれかに記載のイムノコンジュゲート。
[実施態様16]
Fcドメインの第1のサブユニットにおいて、追加的に、354位のセリン残基が、システイン残基により置き換えられる(S354C)か、または356位のグルタミン酸残基が、システイン残基により置き換えられ(E356C)、Fcドメインの第2のサブユニットにおいて、追加的に、349位のチロシン残基が、システイン残基により置き換えられる(Y349C)(Kabat EUインデックスによる番号付け)、実施態様15に記載のイムノコンジュゲート。
[実施態様17]
突然変異IL-2ポリペプチドが、そのアミノ末端アミノ酸でFcドメインのサブユニットのうちの1つ、特にFcドメインの第1のサブユニットのカルボキシ末端アミノ酸と、任意選択的にリンカーペプチドを通じて融合されている、実施態様9から16のいずれかに記載のイムノコンジュゲート。
[実施態様18]
リンカーペプチドが、配列番号21のアミノ酸配列を有する、実施態様17に記載のイムノコンジュゲート。
[実施態様19]
Fcドメインが、Fc受容体、特にFcγ受容体への結合性、および/またはエフェクター機能、特に抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC)を低減する1つまたは複数のアミノ酸置換を含む、実施態様9から17のいずれかに記載のイムノコンジュゲート。
[実施態様20]
前記1つまたは複数のアミノ酸置換が、L234、L235、およびP329(Kabat EUインデックス番号付け)の群から選択される1つまたは複数の位置にある、実施態様19に記載のイムノコンジュゲート。
[実施態様21]
Fcドメインの各サブユニットが、アミノ酸置換L234A、L235AおよびP329G(Kabat EUインデックス番号付け)を含む、実施態様9から20のいずれかに記載のイムノコンジュゲート。
[実施態様22]
配列番号22の配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号23または配列番号24の配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチド、および配列番号25の配列と少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を含むポリペプチドを含む、実施態様2から21のいずれかに記載のイムノコンジュゲート。
[実施態様23]
リンカー配列により繋がった突然変異IL-2ポリペプチドおよびIgG
1
免疫グロブリン分子から本質的になる、実施態様2から22のいずれかに記載のイムノコンジュゲート。
[実施態様24]
実施態様2から23のいずれかに記載のイムノコンジュゲートをコードする、1つまたは複数の単離ポリヌクレオチド。
[実施態様25]
実施態様24に記載のポリヌクレオチドを含む、1つまたは複数のベクター、特に発現ベクター。
[実施態様26]
実施態様24に記載のポリヌクレオチドまたは実施態様25に記載のベクターを含む宿主細胞。
[実施態様27]
突然変異IL-2ポリペプチドと、PD-1に結合する抗体とを含むイムノコンジュゲートを産生する方法であって、(a)実施態様25に記載の宿主細胞をイムノコンジュゲートの発現に適した条件で培養すること、および任意選択的に(b)イムノコンジュゲートを回収することを含む方法。
[実施態様28]
実施態様27に記載の方法により産生される、突然変異IL-2ポリペプチドと、PD-1に結合する抗体とを含むイムノコンジュゲート。
[実施態様29]
実施態様2から23または28のいずれかに記載のイムノコンジュゲートと、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物。
[実施態様30]
医薬としての使用のための、実施態様2から23または28のいずれかに記載のイムノコンジュゲート。
[実施態様31]
疾患の治療における使用のための、実施態様2から23または28のいずれかに記載のイムノコンジュゲート。
[実施態様32]
前記疾患が、がんである、実施態様31に記載の疾患の治療における使用のためのイムノコンジュゲート。
[実施態様33]
疾患の治療のための医薬の製造における、実施態様2から23または28のいずれかに記載のイムノコンジュゲートの使用。
[実施態様34]
前記疾患が、がんである、実施態様33に記載の使用。
[実施態様35]
個体における疾患を治療する方法であって、薬学的に許容される形態で治療的有効量の実施態様2から23または28のいずれかに記載のイムノコンジュゲートを含む組成物を前記個体に投与することを含む方法。
[実施態様36]
前記疾患が、がんである、実施態様35に記載の方法。
[実施態様37]
個体の免疫系を刺激する方法であって、薬学的に許容される形態で有効量の実施態様2から23または28のいずれかに記載のイムノコンジュゲートを含む組成物を前記個体に投与することを含む方法。
[実施態様38]
本明細書の前記に記載された発明。