(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062014
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】医薬製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220412BHJP
A61P 19/08 20060101ALI20220412BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20220412BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220412BHJP
A61K 47/40 20060101ALI20220412BHJP
A61K 47/18 20060101ALI20220412BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20220412BHJP
A61K 47/26 20060101ALI20220412BHJP
A61K 47/14 20060101ALI20220412BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20220412BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20220412BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P19/08 ZNA
A61P19/10
A61K9/08
A61K47/40
A61K47/18
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/14
C12N15/13
C12N15/62 Z
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022001395
(22)【出願日】2022-01-07
(62)【分割の表示】P 2018566642の分割
【原出願日】2017-03-09
(31)【優先権主張番号】1604124.6
(32)【優先日】2016-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】518320269
【氏名又は名称】ユーシービー バイオファーマ エスピーアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イェイツ,アンドリュー ジェフリー
(72)【発明者】
【氏名】クリップストーン,ジェームズ グレゴリー
(57)【要約】 (修正有)
【課題】皮下投与経路用製剤で、タンパク質凝集及び沈殿が低下した、さらに改善された抗体液体医薬製剤を提供する。
【解決手段】抗体若しくはその抗原結合フラグメント、シクロデキストリン、及びメチオニンを含む液体医薬製剤に関し、さらに、メチオニン及びシクロデキストリンの添加による、液体医薬製剤における抗体又はその抗原結合フラグメントの沈殿を減少させる方法に関する。特に液体医薬製剤は、抗スクレロスチン抗体、ヒドロキシプロピル-γシクロデキストリン、及びメチオニンを含み、低骨形成、低骨塩密度、低骨塩量、低骨量、低骨質、及び低骨強度のうち少なくとも1つに関連する骨障害の治療、特に骨粗鬆症の治療に使用されうる。さらに、抗体若しくはその抗原結合フラグメント、シクロデキストリン、及びメチオニンを含む液体医薬製剤の治療上有効量を投与することを含む、哺乳動物被験体における注射部位での炎症を減少させる方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a. 活性成分としての抗体又はその抗原結合フラグメント;
b. シクロデキストリン、及び
c. メチオニン
を含む、液体医薬製剤。
【請求項2】
7.5mM~200mMの濃度でメチオニンを含む、請求項1に記載の液体製剤。
【請求項3】
7.5mM~250mMの濃度でシクロデキストリンを含む、請求項1又は2に記載の液体製剤。
【請求項4】
1~200mg/ml、好ましくは90~180mg/mlの濃度で抗体又はその抗原結合フラグメントを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項5】
抗体又はその抗原結合フラグメントが、ヒトスクレロスチンに特異的に結合する、請求項1~4のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項6】
抗体が、ヒト若しくはヒト化抗体又はそれらの抗原結合フラグメントである、請求項1~5のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項7】
a. 抗体又はその抗原結合フラグメントが、
i. 配列番号1で規定される配列を有するCDR-H1; 配列番号2で規定される配列を有するCDR-H2; 配列番号3で規定される配列を有するCDR-H3; 配列番号4で規定される配列を有するCDR-L1; 配列番号5で規定される配列を有するCDR-L2、及び配列番号6で規定される配列を有するCDR-L3を含むか、若しくは
ii. 配列番号7で規定される配列を有する軽鎖可変領域、及び配列番号8で規定される配列を有する重鎖可変領域を有するか; 又は
b. 抗体が、
i. 配列番号9で規定される配列を有する軽鎖、及び配列番号10で規定される配列を有する重鎖; 若しくは
ii. 配列番号11で規定される配列を有する軽鎖、及び配列番号12で規定される配列を有する重鎖を有する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項8】
抗体が、ロモソズマブである、請求項1~7のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項9】
4.0~7.5のpHを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項10】
シクロデキストリンが、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、ジメチル-β-シクロデキストリン、トリメチル-β-シクロデキストリン、ランダムにメチル化されたβ-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(すなわち、2ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、又は2,3-ジヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)、ヒドロキシイソブチル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン、グルコシル-β-シクロデキストリン、マルトシル-β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン(すなわち、2ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、又は2,3-ジヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン)、シクロデキストリン含有ポリマー、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項11】
シクロデキストリンが、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリンから選択される、請求項10に記載の液体製剤。
【請求項12】
pH5.2で、1mg/ml~200mg/mlの抗体、10mM~55mMの酢酸ナトリウム、0~14mMの酢酸カルシウム、0~6%のスクロース、0~0.006%のポリソルベート20、55mM~80mMのヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、55mM~160mMのメチオニンを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項13】
90mg/ml~180mg/ml、好ましくは120mg/ml~180mg/mlのロモソズマブを含む、請求項12に記載の液体製剤。
【請求項14】
ヒドロゲルではない、請求項1~13のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項15】
少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、2%~90%、2%~75%、又は2%~50%の水を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項16】
低骨形成、低骨塩密度、低骨塩量、低骨量、低骨質、及び低骨強度のうち少なくとも1つに関連する骨障害の治療に使用するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の液体製剤。
【請求項17】
哺乳動物被験体における低骨形成、低骨塩密度、低骨塩量、低骨量、低骨質、及び低骨強度のうち少なくとも1つに関連する骨障害を治療する方法であって、請求項1~15のいずれか一項に記載の製剤の治療上有効量を投与することを含む、方法。
【請求項18】
低骨形成、低骨塩密度、低骨塩量、低骨量、低骨質、及び低骨強度のうち少なくとも1つに関連する骨障害の治療のための医薬の製造における、請求項1~15のいずれか一項に記載の液体製剤の使用。
【請求項19】
骨障害が、骨粗鬆症である、請求項16に記載の使用のための液体製剤、請求項18に記載の使用、又は請求項17に記載の治療方法。
【請求項20】
液体医薬製剤における抗体又はその抗原結合フラグメントの沈殿を減少させる方法であって、液体製剤を提供すること、及びその製剤にメチオニン及びシクロデキストリン、好ましくはヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリンを添加することを含む、方法。
【請求項21】
哺乳動物被験体における注射部位での炎症を減少させる方法であって、請求項1~15のいずれか一項に記載の製剤の治療上有効量を投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬製剤の分野に属する。より具体的には、本発明は、抗体、シクロデキストリン、及びメチオニンを含む医薬製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
抗体は、大きく複雑な分子であり、高濃度である期間にわたって保存する場合、本質的に化学的及び物理的に不安定である。典型的な化学的不安定性は、脱アミド、加水分解、酸化、β-脱離、又はジスルフィド交換をもたらし得る。物理的不安定性は、変性、凝集、又は沈殿をもたらし得る。
【0003】
抗体は、投与直前に溶媒中で再構成するために、フリーズドライ、すなわち凍結乾燥形態で製剤化することができる。水が反応体であるか、又は反応体の移転を促進し、したがって、化学的分解及びタンパク質不安定性にとって重要であるため、抗体のフリーズドライ製剤は、液体の水ベースの製剤よりも安定である傾向がある。安定性がより低いにもかかわらず、近年、抗体の液体製剤に関心が集まっている。これらの製剤は、フリーズドライ製剤と比較して、患者及び医療従事者が扱い、投与するのがより容易で、より便利である。液体製剤は、再構成する必要がなく、最小限の調製で投与することができる。しかし、凝集、沈殿、又は分解を回避又は最小化するための液体製剤中のタンパク質の安定化は、依然として特別な課題である。不溶性物質又は沈殿物の形成による凝集は、特に問題である。これは様々な問題を引き起こし得る。第1に、凝集体の形成は、活性がより少ない又はもはや活性がない抗体をもたらし得る; 凝集体は、投与時に望ましくない予期せぬ免疫学的反応を引き起こし、最終的に凝集体は、例えば注射器又はポンプを塞ぐことによって、医薬製剤の適切な投与を妨げる可能性がある。これらの問題は、抗体が静脈内注入よりもはるかに少ない体積で高濃度で存在する、皮下投与のための液体製剤においてより一層明白である。
【0004】
凝集を防止するための典型的な戦略は、抗体製剤に安定剤を添加することである。一般に使用される安定剤は、糖、塩、遊離アミノ酸、ポリオール、ポリエチレングリコール(PEG)、及びタンパク質-タンパク質相互作用を低下させ得る他のポリマー、例えば、ポリソルベート又はポロキサマーを含む。
【0005】
シクロデキストリン(時にはシクロアミロースとも呼ばれる)は、円形に結合した糖分子で構成される化合物のファミリーである(環状オリゴ糖)。シクロデキストリンは、酵素変換によってデンプンから生成される。それらは安全であると考えられ、食品、医薬品送達、及び化学産業、並びに農業及び環境工学に広く使用される。シクロデキストリンは、アミロースにおけるように、1->4結合した5個以上のα-D-グルコピラノシド単位で構成される。典型的なシクロデキストリンは、環内に6個(α-シクロデキストリン)、7個(β-シクロデキストリン)又は8個(γ-シクロデキストリン)のグルコースモノマー単位を含有し、内部が疎水性で、外部が親水性である円錐形を作る。疎水性キャビティは、非極性化合物、例えば非極性アミノ酸が含まれ、複合体を形成することができる環境を提供する。
【0006】
WO2010057107は、生理学的条件下で凝集を減少させるためのシクロデキストリン(CD)の使用を記載している。さらに、シクロデキストリン及びその誘導体は、難水溶性薬物のための可溶化剤として使用されている。液体製剤中にシクロデキストリンを含有する現在利用可能な薬物製品としては、Sporanox(商標)(Janssen, Belgium)、Prostavasin(Ono, Japan; Schwarz, Germany)、Prostandin 500(Ono, Japan)、Geodon(商標)(Pfizer, USA)、VFEND(商標)(Pfizer, USA)、MitoExtra Mitozytrex(商標)(Novartis, Switzerland)、及びVoltaren Optha(商標)(Novartis, Switzerland)がある(Szejtli J., Pure Appl. Chem. 76:1825-1845 (2004); Loftsson T. et al, Expert Opin. Drug Deliv. 2, 335-351 (2005))。これらの製剤のほとんどは、小分子化合物のためのものである。最大の恩恵は通常、低シクロデキストリン濃度で得られ、その恩恵はしばしば部分的にのみ濃度依存的である。例えば、IL-2の凝集は、0.5%HP-β-シクロデキストリンによって最適に阻害された(Loftsson T. and Brewster M.E., J Pharm Sci 85: 1017-1025 (1996))。ヒト成長ホルモンの溶解度は、約2~6%で存在するCDによって改善され、α及びγシクロデキストリンは、βシクロデキストリンより数倍有効性が低いことが判明した(Otzen, D. E. et al., Protein Sci. 11:1779-1787 (2002))。
【0007】
抗体の一次配列はそのpIを規定し、投与の際の沈殿傾向(例えばpHシフト)の本質的な原因となるが、製剤組成は、この挙動に追加的に影響し、他の特性、例えば、粘度及びオスモル濃度にも影響を及ぼす。製剤中の賦形剤と活性成分との相互作用の変化は、その長期安定性に影響を及ぼし得る。これは皮下投与用に開発された抗体製剤に特に関連し、皮下投与用に開発された抗体製剤では、高タンパク質濃度が、より低い投与体積と合わさり、タンパク質凝集及び沈殿がさらに一層明らかになり、潜在的に注射副作用の原因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Szejtli J., Pure Appl. Chem. 76:1825-1845 (2004)
【非特許文献2】Loftsson T. et al, Expert Opin. Drug Deliv. 2, 335-351 (2005)
【非特許文献3】Loftsson T. and Brewster M.E., J Pharm Sci 85: 1017-1025 (1996)
【非特許文献4】Otzen, D. E. et al., Protein Sci. 11:1779-1787 (2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記を考慮すると、特に皮下投与経路用製剤の場合、タンパク質凝集及び沈殿が低下した、さらに改善された抗体液体医薬製剤を提供する必要性が当技術分野に依然として存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、活性成分として抗体又は抗原結合フラグメントを含む新規な液体製剤を提供することによって、上で特定された必要性に対処する。驚いたことに、この度、安定剤間の相乗的安定化効果が、液体医薬製剤中の凝集体(沈殿物)の出現に関して観察された。
【0012】
したがって、第一の態様では、本発明は、活性成分としての抗体若しくはその抗原結合フラグメント、シクロデキストリン、及びメチオニンを含む、液体医薬製剤を提供する。
【0013】
この態様の第1の実施形態では、液体医薬製剤は、7.5mM~200mMの濃度でメチオニンを含む。
【0014】
第2の実施形態では、第1の態様及び実施形態による液体医薬製剤は、7.5mM~250mMの濃度でシクロデキストリンを含む。
【0015】
第3の実施形態では、第1の態様及びその実施形態による液体医薬製剤は、1~200mg/ml、好ましくは90~180mg/mlの濃度で抗体又はその抗原結合フラグメントを含む。第4の実施形態では、第1の態様及びその実施形態による液体医薬製剤は、ヒトスクレロスチンに特異的に結合し、及び/又はヒト若しくはヒト化抗体である、抗体又はその抗原結合フラグメントを含む。
【0016】
第5の実施形態では、第1の態様及びその実施形態による液体医薬製剤は、以下を含む: 1. 抗体又はその抗原結合フラグメントであって、
a. 配列番号1で規定される配列を有するCDR-H1; 配列番号2で規定される配列を有するCDR-H2; 配列番号3で規定される配列を有するCDR-H3; 配列番号4で規定される配列を有するCDR-L1; 配列番号5で規定される配列を有するCDR-L2、及び配列番号6で規定される配列を有するCDR-L3を含むか、若しくは
b. 配列番号7で規定される配列を有する軽鎖可変領域、及び配列番号8で規定される配列を有する重鎖可変領域を有する、抗体又はその抗原結合フラグメント; 又は
2. 抗体であって、
a. 配列番号9で規定される配列を有する軽鎖、及び配列番号10で規定される配列を有する重鎖; 若しくは
b. 配列番号11で規定される配列を有する軽鎖、及び配列番号12で規定される配列を有する重鎖を有する、抗体。
【0017】
第6の実施形態では、第1の態様及びその実施形態による液体医薬製剤は、ロモソズマブである抗体を含む。
【0018】
第7の実施形態では、第1の態様及びその実施形態による液体製剤は、4.0~7.5のpHを有する。
【0019】
第8の実施形態では、第1の態様及びその実施形態による液体製剤は、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、ジメチル-β-シクロデキストリン、トリメチル-β-シクロデキストリン、ランダムにメチル化されたβ-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(すなわち、2ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、又は2,3-ジヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)、ヒドロキシイソブチル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン、グルコシル-β-シクロデキストリン、マルトシル-β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン(すなわち、2ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、又は2,3-ジヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン)、シクロデキストリン含有ポリマー、又はそれらの組み合わせから選択されるシクロデキストリンを含む。好ましくは、シクロデキストリンは、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリンから選択される。
【0020】
第9の実施形態では、第1の態様及びその実施形態による液体製剤は、pH5.2で、1mg/ml~200mg/mlの抗体、10mM~55mMの酢酸ナトリウム、0~14mMの酢酸カルシウム、0~6%のスクロース、0~0.006%のポリソルベート20、55mM~80mMのヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、55mM~160mMのメチオニン、好ましくは、90mg/ml~180mg/ml、より好ましくは120mg/ml~180mg/mlのロモソズマブを含む。
【0021】
第2の態様では、本発明は、低骨形成、低骨塩密度、低骨塩量、低骨量、低骨質、及び低骨強度のうち少なくとも1つに関連する骨障害の治療に使用するための、第1の態様及びその実施形態による液体製剤を提供する。あるいは、本発明は、低骨形成、低骨塩密度、低骨塩量、低骨量、低骨質、及び低骨強度のうち少なくとも1つに関連する骨障害の治療のための医薬の製造における、第1の態様及びその実施形態による液体製剤の使用を提供する。
【0022】
さらに第3の態様では、本発明は、哺乳動物被験体における低骨形成、低骨塩密度、低骨塩量、低骨量、低骨質、及び低骨強度のうち少なくとも1つに関連する骨障害を治療する方法であって、第1の態様及びその実施形態による製剤の治療上有効量を投与することを含む、方法を提供する。
【0023】
好ましくは、本発明の第2及び第3の態様の実施形態では、骨障害は、骨粗鬆症である。
【0024】
第4の態様では、本発明は、液体医薬製剤における抗体又はその抗原結合フラグメントの沈殿を減少させる方法であって、液体製剤を提供すること、及びその製剤にメチオニン及びシクロデキストリン、好ましくはヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリンを添加することを含む、方法を提供する。
【0025】
最後に、第5の態様では、本発明は、哺乳動物被験体における注射部位での炎症を減少させる方法であって、第1の態様及びその実施形態による製剤の治療上有効量を投与することを含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】ロモソズマブの軽鎖の配列(配列番号11)を示す。アミノ酸配列は3文字記号を用いて示され、各アミノ酸の下に対応する1文字記号が示されている。鎖内ジスルフィド結合は、連結されたシステイン間の線によって示される。鎖間結合を形成するシステインはボックス内に示される。
【
図2-1】ロモソズマブの重鎖の配列(配列番号12)を示す。アミノ酸配列は3文字記号を用いて示され、各アミノ酸の下に対応する1文字記号が示されている。鎖内ジスルフィド結合は、連結されたシステイン間の線によって示される。鎖間結合を形成するシステインはボックス内に示される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明による液体医薬製剤は、活性成分としての抗体若しくはその抗原結合フラグメント、並びに2つの安定剤であるメチオニン及びシクロデキストリンの組み合わせを含む。
【0028】
メチオニン及びシクロデキストリンの相乗的な組み合わせは、凝集体の形での抗体又はその抗原結合フラグメントの沈殿の速度を経時的に減少させ、こうして潜在的に注射副反応の発生を減少させるというさらなる利点を提供する。したがって、本発明はまた、液体医薬製剤における抗体又はその抗原結合フラグメントの沈殿を減少させる方法であって、液体製剤を提供すること、及びその製剤にメチオニン及びシクロデキストリンを添加することを含む、方法を提供する。
【0029】
液体医薬製剤中のシクロデキストリンの濃度は、7.5mM~250mM、又は16mM~250mM、又は32mM~200mM、又は63mM~160mM、又は好ましくは55mM~80mMであってよい。
【0030】
液体医薬製剤中のメチオニンの濃度は、7.5mM~200mM、又は15mM~200mM、又は30mM~200mM、又は55mM~160mM、又は好ましくは55mM~125mMであってよい。
【0031】
一実施形態では、本発明による液体医薬製剤は、活性成分としての抗体若しくはその抗原結合フラグメント、並びに1:1~1:3の比、好ましくは1:2の比でシクロデキストリン対メチオニンを含む。
【0032】
1つの好ましい実施形態では、本発明による液体医薬製剤は、活性成分としての抗体若しくはその抗原結合フラグメント、55mM~160mMのメチオニン、並びに55mM~100mMのシクロデキストリンを含む。
【0033】
特に、シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、ジメチル-β-シクロデキストリン、トリメチル-β-シクロデキストリン、ランダムにメチル化されたβ-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(すなわち、2ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、又は2,3-ジヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)、ヒドロキシイソブチル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン、グルコシル-β-シクロデキストリン、マルトシル-β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン(すなわち、2ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、又は2,3-ジヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン)、シクロデキストリン含有ポリマー、又はそれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0034】
最も一般的な天然シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、及びγ-シクロデキストリンであり、これらは全て親水性である。ヒドロキシル基の置換は、シクロデキストリンの溶解性をさらに高める(Loftsson T. et al, Expert Opin. Drug Deliv. 2, 335-351 (2005); Davis M.E. & Brewster M.E., Nature Reviews - Drug discovery 3, 1023-1035 (2004))。
【0035】
意図する化学修飾(すなわち、ヒドロキシル基で置換された)シクロデキストリンは、モノ、ジ、若しくはトリメチル-β-シクロデキストリン、ランダムにメチル化されたβ-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(すなわち、2ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、又は2,3-ジヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)、ヒドロキシイソブチル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン、グルコシル-β-シクロデキストリン、マルトシル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン(すなわち、2ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、又は2,3-ジヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン)、又はそれらの組み合わせである。
【0036】
したがって、本発明による液体医薬製剤は、活性成分としての抗体若しくはその抗原結合フラグメント、並びにメチオニン及び化学修飾シクロデキストリンの組み合わせを含み、化学修飾シクロデキストリンは、好ましくは、モノ、ジ、若しくはトリメチル-β-シクロデキストリン、ランダムにメチル化されたβ-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(すなわち、2ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、又は2,3-ジヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)、ヒドロキシイソブチル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン、グルコシル-β-シクロデキストリン、マルトシル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン(すなわち、2ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、又は2,3-ジヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン)、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0037】
液体医薬製剤中の化学修飾シクロデキストリンの濃度は、7.5mM~250mM、又は16mM~250mM、又は32mM~200mM、又は63mM~160mM、又は好ましくは55mM~80mMであってよい。
【0038】
一実施形態では、本発明による液体医薬製剤は、活性成分としての抗体若しくはその抗原結合フラグメント、並びに1:1~1:3の比、好ましくは1:2の比で化学修飾シクロデキストリン対メチオニンを含む。
【0039】
1つの好ましい実施形態では、本発明による液体医薬製剤は、活性成分としての抗体若しくはその抗原結合フラグメント、55mM~160mMのメチオニン、並びに55mM~100mMの化学修飾シクロデキストリンを含む。
【0040】
本発明による好ましいシクロデキストリンは、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、例えば2ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、2,3-ジヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、又はそれらの組み合わせである。
【0041】
したがって、1つの好ましい実施形態では、本発明による液体医薬製剤は、活性成分としての抗体若しくはその抗原結合フラグメント、並びにメチオニン及びヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(すなわち、2ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、2,3-ジヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、又はそれらの組み合わせ)の組み合わせを含む。
【0042】
液体医薬製剤中のヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリンの濃度は、7.5mM~250mM、又は16mM~250mM、又は32mM~200mM、又は63mM~160mM、又は好ましくは55mM~80mMであってよい。
【0043】
別の実施形態では、本発明による液体医薬製剤は、活性成分としての抗体若しくはその抗原結合フラグメント、並びに1:1~1:3の比、好ましくは1:2の比でヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン対メチオニンを含む。
【0044】
別の実施形態では、本発明による液体医薬製剤は、活性成分としての抗体若しくはその抗原結合フラグメント、55mM~160mMのメチオニン、並びに55mM~100mMのヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリンを含む。
【0045】
本発明による液体製剤中の抗体又はその抗原結合フラグメントの濃度は、1~200mg/ml、又は~200mg/ml、又は~200mg/ml、又は好ましくは90~180mg/mlであってもよい。別の実施形態では、本発明による液体医薬製剤は、90mg/ml~180mg/mlの活性成分としての抗体、55mM~160mMのメチオニン、及び55mM~100mMのシクロデキストリンを含む。
【0046】
特に、シクロデキストリンは、β-シクロデキストリン、ジメチル-β-シクロデキストリン、トリメチル-β-シクロデキストリン、ランダムにメチル化されたβ-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(すなわち、2ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、又は2,3-ジヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)、ヒドロキシイソブチル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン、グルコシル-β-シクロデキストリン、マルトシル-β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン(すなわち、2ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、又は2,3-ジヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン)、シクロデキストリン含有ポリマー、又はそれらの組み合わせから選択されてもよい。
【0047】
別の実施形態では、本発明による液体医薬製剤は、90mg/ml~180mg/mlの活性成分としての抗体、55mM~160mMのメチオニン、及び55mM~100mMの化学修飾シクロデキストリンを含み、化学修飾シクロデキストリンは、好ましくは、モノ、ジ、若しくはトリメチル-β-シクロデキストリン、ランダムにメチル化されたβ-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(すなわち、2ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、又は2,3-ジヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)、ヒドロキシイソブチル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン、グルコシル-β-シクロデキストリン、マルトシル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン(すなわち、2ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、又は2,3-ジヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン)、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0048】
1つの好ましい実施形態では、本発明による液体医薬製剤は、90mg/ml~180mg/mlの活性成分としての抗体、55mM~160mMのメチオニン、及び55mM~100mMのヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、例えば2ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、2,3-ジヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、又はそれらの組み合わせを含む。
【0049】
本発明による液体医薬製剤に含まれる活性成分は、好ましくは抗体である。好ましくは、抗体は、生理学的pH(約7.0)よりも低いが、製剤のpHよりも高い等電点(pI)を有する。一実施形態では、本発明及びその実施形態による液体製剤は、1~200mg/mlの抗体を含み、抗体は5.0~6.9、好ましくは5.3~6.9のpIを有する。
【0050】
好ましくは、本発明による液体医薬製剤に含まれる抗体は、ヒトスクレロスチンに特異的に結合する。
【0051】
用語「ヒトスクレロスチンに特異的に結合する(specifically binds to human sclerostin又はspecifically binding to human sclerostin)」、及び同義語は、抗体に言及するときに本明細書で使用される場合、抗体が、生物学的に有意義な効果を達成するのに十分な親和性及び特異性でヒトスクレロスチンに結合することを意味する。選択された抗体は、通常、ヒトスクレロスチンに対する結合親和性を有し、例えば、抗体は100nM~1pMのKd値でヒトスクレロスチンに結合し得る。抗体親和性は、表面プラズモン共鳴ベースのアッセイ、例えばBIAcoreアッセイ; 酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA); 及び競合アッセイ(例えば、RIA)によって決定することができる。本発明の意味において、ヒトスクレロスチンに特異的に結合する抗体はまた、別の分子、例えばマウススクレロスチンに、又は非限定的な例として、二重特異性抗体の場合などに結合し得る。
【0052】
SOST遺伝子によってコードされるタンパク質であるスクレロスチンは、骨細胞によって分泌される糖タンパク質であり、骨芽細胞形成の強力な阻害剤である。SOSTの機能喪失変異は、常染色体劣性障害である硬結性骨化症に関連しており、これは進行性の骨過成長を引き起こす。SOST遺伝子の下流の欠失は、スクレロスチン発現の低下をもたらし、ファンブッヘム(van Buchem)病と呼ばれる疾患の軽度の形態に関連している。さらに、SOSTヌルマウスは、骨量の多い表現型を有する。
【0053】
ヒトスクレロスチンに特異的に結合する抗体又はその抗原結合フラグメントはまた、好ましくはヒトスクレロスチンを中和する。
【0054】
用語「中和する」は、本明細書で使用される場合、特異的に結合する分子の生物学的効果を阻害するか、又は実質的に低下させる抗体を指す。したがって、「抗体がヒトスクレロスチンを中和する」という表現は、ヒトスクレロスチンに特異的に結合し、その生物学的効果を阻害するか又は実質的に低下させる抗体を指す。
【0055】
用語「抗体(antibody)」又は「抗体(antibodies)」は、本明細書で使用される場合、モノクローナル又はポリクローナル抗体を指す。用語「抗体(antibody)」又は「抗体(antibodies)」は、本明細書で使用される場合、当技術分野で公知の組換え技術によって生成される組換え抗体を含むが、これに限定されない。
【0056】
好ましくは、本発明による液体製剤に含まれる抗体は、ヒトスクレロスチンに特異的に結合するモノクローナル抗体である。
【0057】
「抗体(antibody)」又は「抗体(antibodies)」は、2つの本質的に完全な重鎖及び2つの本質的に完全な軽鎖を有する任意の種の、特に哺乳動物種の抗体、任意のアイソタイプのヒト抗体、例えば、IgA1、IgA2、IgD、IgG1、IgG2a、IgG2b、IgG3、IgG4、IgE、及びIgM、並びにそれらの修飾されたバリアント、非ヒト霊長類抗体、例えば、チンパンジー、ヒヒ、アカゲザル、又はカニクイザル由来、げっ歯類抗体、例えば、マウス、ラット、又はウサギ由来; ヤギ若しくはウマ抗体、及びラクダ科抗体(例えば、ラクダ又はラマ由来、例えばNanobodies(商標))、及びそれらの誘導体、又は鳥類種のもの、例えばニワトリ抗体、又は魚類種のもの、例えばサメ抗体を含む。用語「抗体(antibody)」又は「抗体(antibodies)」は、少なくとも1つの重鎖及び/又は軽鎖抗体配列の第1の部分が第1の種に由来し、重鎖及び/又は軽鎖抗体配列の第2の部分が第2の種に由来する、「キメラ」抗体も指す。本明細書で意図するキメラ抗体は、非ヒト霊長類(例えば、旧世界ザル、例えばヒヒ、アカゲザル、又はカニクイザル)に由来する可変ドメイン抗原結合配列と、ヒト定常領域配列とを含む「霊長類化」抗体を含む。「ヒト化」抗体は、非ヒト抗体由来の配列を含有するキメラ抗体である。ほとんどの場合について、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域由来の残基が、非ヒト種(ドナー抗体)、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ、又は非ヒト霊長類の超可変領域(又は相補性決定領域(CDR))由来の残基によって置換されたヒト抗体(レシピエント抗体)であって、所望の特異性、親和性、及び活性を有する抗体である。ほとんどの場合、CDRの外側の; すなわちフレームワーク領域(FR)における、ヒト(レシピエント)抗体の残基は、対応する非ヒト残基によってさらに置換される。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体又はドナー抗体に見られない残基を含み得る。これらの改変は、抗体性能をさらに改良するためになされる。ヒト化は、ヒトにおける非ヒト抗体の免疫原性を低下させ、こうして、ヒト疾患の治療に対する抗体の適用を容易にする。ヒト化抗体及びそれらを生成するためのいくつかの異なる技術は、当技術分野において周知である。用語「抗体(antibody)」又は「抗体(antibodies)」は、ヒト抗体をも指し、これは、ヒト化の代わりとして生成され得る。例えば、免疫化すると、内因性ネズミ科抗体の生産の不在下で、ヒト抗体の完全なレパートリーを生産することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を生産することが可能である。例えば、キメラ及び生殖細胞系列変異体マウスにおける抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ接合型欠失は、内因性抗体生産の完全な阻害をもたらすことが記載されている。そのような生殖細胞系列変異体マウスにおけるヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子アレイの移入は、ヒト生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニック動物の、特定の抗原による免疫化の際に、前記抗原に対する特異性を有するヒト抗体の生産をもたらす。そのようなトランスジェニック動物を生産する技術、及びそのようなトランスジェニック動物からヒト抗体を単離及び生産する技術は、当技術分野において公知である。あるいは、トランスジェニック動物、例えばマウスにおいて、マウス抗体の可変領域をコードする免疫グロブリン遺伝子のみが、対応するヒト可変免疫グロブリン遺伝子配列で置換される。抗体定常領域をコードするマウス生殖細胞系列免疫グロブリン遺伝子は、変化しないままである。このようにして、抗体エフェクターは、トランスジェニックマウスの免疫系において機能し、その結果、B細胞の発達は本質的に変わらず、これは、in vivoでの抗原チャレンジの際に改善された抗体応答をもたらし得る。目的の特定の抗体をコードする遺伝子がそのようなトランスジェニック動物から単離されると、定常領域をコードする遺伝子は、完全ヒト抗体を得るために、ヒト定常領域遺伝子と置き換えることができる。用語「抗体(antibody)」又は「抗体(antibodies)」は、本明細書で使用される場合、非グリコシル化抗体も指す。
【0058】
用語「その抗原結合フラグメント」又はその文法上のバリエーションは、本明細書で使用される場合、抗体フラグメントを指す。抗体のフラグメントは、当技術分野で公知の少なくとも1つの重鎖又は軽鎖免疫グロブリンドメインを含み、1つ以上の抗原に結合する。本発明による抗体フラグメントの例としては、Fab、Fab'、F(ab')2、及びFv及びscFvフラグメント; 並びにダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ドメイン抗体(dAb)、例えば、sdAb、VHH及びVNARフラグメント、一本鎖抗体、抗体フラグメント若しくは抗体から形成された二重特異性、三重特異性、四重特異性、又は多重特異性抗体、例えば、以下に限定されないが、Fab-Fv又はFab-Fv-Fv構築物が挙げられる。上で定義した抗体フラグメントは、当技術分野で公知である。
【0059】
本発明による液体医薬製剤中に活性成分として含まれる抗体又はその抗原結合フラグメントは、ヒト又はヒト化抗体、好ましくはヒトスクレロスチンに特異的に結合するヒト化モノクローナル抗体であり得る。
【0060】
1) より好ましくは、本発明による液体医薬製剤は、以下を含む:
抗体又はその抗原結合フラグメントであって、
a. 配列番号1で規定される配列を有するCDR-H1; 配列番号2で規定される配列を有するCDR-H2; 配列番号3で規定される配列を有するCDR-H3; 配列番号4で規定される配列を有するCDR-L1; 配列番号5で規定される配列を有するCDR-L2、及び配列番号6で規定される配列を有するCDR-L3を含むか、又は
b. 配列番号7で規定される配列を有する軽鎖可変領域、及び配列番号8で規定される配列を有する重鎖可変領域を有する、抗体又はその抗原結合フラグメント; 又は
2) 抗体であって、
a. 配列番号9で規定される配列を有する軽鎖、及び配列番号10で規定される配列を有する重鎖; 又は
b. 配列番号11で規定される配列を有する軽鎖、及び配列番号12で規定される配列を有する重鎖を有する、抗体。
【0061】
本明細書全体にわたり、相補性決定領域(「CDR」)はKabatの定義に従って定義される。Kabatの定義は、抗体中の残基を番号付けるための標準であり、典型的には、CDR領域を特定するために使用される(Kabat et al., (1991), 5th edition, NIH publication No. 91-3242)。
【0062】
【0063】
【0064】
さらにより好ましくは、本発明による液体医薬製剤中に活性成分として含まれる抗体は、WO2006119107及びWO2011143307(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるような抗ヒトスクレロスチン抗体であるロモソズマブである。
【0065】
特に、本発明はまた、ロモソズマブ及びシクロデキストリンを含む液体医薬製剤を提供し、シクロデキストリンは、好ましくは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、ジメチル-β-シクロデキストリン、トリメチル-β-シクロデキストリン、ランダムにメチル化されたβ-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(すなわち、2ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、又は2,3-ジヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)、ヒドロキシイソブチル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン、グルコシル-β-シクロデキストリン、マルトシル-β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン(すなわち、2ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、又は2,3-ジヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン)、シクロデキストリン含有ポリマー、又はそれらの組み合わせから選択され、より好ましくは、本発明は、ロモソズマブ及びヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリンを含む液体医薬製剤を提供する。
【0066】
本発明の実施形態のいずれかによる液体医薬製剤は、保存及び投与時に一定のpHを維持するために、緩衝剤を含有してもよい。液体医薬製剤の分野で使用される多くの緩衝剤があり、例えば、以下に限定されないが、クエン酸塩、リン酸塩、乳酸塩、ヒスチジン、グルタミン酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、又はコハク酸塩がある。好ましい緩衝種は、典型的には、高い緩衝能を維持するために、最適なタンパク質安定性のための好ましいpHに近い(+/-1pH単位の)pKaを有するものの中から選択され、一連の様々な緩衝種中に置かれた場合に特定のタンパク質について観察される最大の実証された安定性に関連する。製剤の適切なpH範囲は、一般に、一連の様々なpH製剤中に置かれた場合に特定のタンパク質について観察される最大の実証された安定性に関連するものから選択される。
【0067】
本発明の特定の実施形態では、本発明の実施形態のいずれかによる液体医薬製剤は、好ましくは10mM~100mM、10mM~80mM、10mM~60mM、25mM~60mM、好ましくは40mM~60mM、又は50mMの濃度で、酢酸ナトリウムを含む。本発明による液体医薬製剤はまた、好ましくは0.5mM~50mM、5mM~40mM、10mM~30mM、又は14mMの濃度で、酢酸カルシウムを含んでもよい。より好ましくは、本発明による液体医薬製剤は、50mMの酢酸ナトリウム及び14mMの酢酸カルシウムを含む。
【0068】
さらなる実施形態では、本発明の実施形態のいずれかによる液体医薬製剤は、4~7.5、好ましくは4~6、好ましくは4.5~5.5、又は5.2のpHを有してもよい。
【0069】
さらなる実施形態では、本発明の実施形態のいずれかによる液体医薬製剤は、界面活性剤をさらに含む。当業者は、本発明の実施形態のいずれかによる液体製剤における使用に利用可能な界面活性剤の選択を承知しており、例えば、以下に限定されないが、ポリソルベート80、ポリソルベート20、レシチン、ポロキサマー(例えば、ポロキサマー188)、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸ナトリウム、オクチルグリコシドナトリウム、ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、又はステアリル-スルホベタイン、ラウリル-、ミリスチル-、リノレイル-、又はステアリル-サルコシン、リノレイル-、ミリスチル-、又はセチル-ベタイン、ラウロアミドプロピル-、コカミドプロピル-、リノールアミドプロピル-、ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、又はイソステアラミドプロピル-ベタイン、ミリスタミドプロピル-、パルミドプロピル-、又はイソステアラミドプロピル-ジメチルアミン、ココイルメチルタウリンナトリウム、又はオレイルメチルタウリンジナトリウム、ポリエチルグリコール、ポリプロピルグリコール、及びエチレンとプロピレングリコールのコポリマーが挙げられる。本発明のさらなる実施形態では、液体医薬製剤は、ポリソルベート20を含んでもよい。
【0070】
本発明の液体製剤は、0.001%~10%のポリソルベート20、0.001%~5%のポリソルベート20、0.001%~1%のポリソルベート20、0.001%~0.006%のポリソルベート20、又は0.006%のポリソルベート20を含んでもよい。
【0071】
本発明の実施形態による液体製剤は、液体医薬製剤の調製に一般的に使用される追加の賦形剤をさらに含んでもよく、例えば、以下に限定されないが、糖(例えば、スクロース又はトレハロース)、ポリエチレングリコール(例えば、PEG100、PEG300、PEG600、PEG1500、PEG2000、PEG3000、PEG3350、PEG4000、PEG6000、PEG8000、又はPEG20000)、ポリオール(例えば、マンニトール、ソルビトール、又はラクチトール)、メチオニン以外の他のアミノ酸、ポリビニルピロリドン、トリメチルアミンN-オキシド、トリメチルグリシン又はそれらの組み合わせが挙げられる。
【0072】
特に、本発明の実施形態による液体製剤は、スクロース、0~6%のスクロース、より好ましくは6%のスクロースをさらに含んでもよい。
【0073】
別の実施形態では、本発明の実施形態のいずれかによる液体医薬製剤は、pH5.2で、1mg/ml~200mg/mlの抗体、10mM~55mMの酢酸ナトリウム、0~14mMの酢酸カルシウム、0~6%のスクロース、0~0.006%のポリソルベート20、55mM~80mMの化学修飾シクロデキストリン、55mM~160mMのメチオニンを含み; より好ましくは90mg/ml~180mg/ml、さらにより好ましくは120mg/ml~180mg/mlの抗体を含み、化学修飾シクロデキストリンは、好ましくは、モノ、ジ、若しくはトリメチル-β-シクロデキストリン、ランダムにメチル化されたβ-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(すなわち、2ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、又は2,3-ジヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)、ヒドロキシイソブチル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン、グルコシル-β-シクロデキストリン、マルトシル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン(すなわち、2ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、又は2,3-ジヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン)、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0074】
さらなる実施形態では、本発明の実施形態のいずれかによる液体医薬製剤は、pH5.2で、1mg/ml~200mg/mlの抗体、10mM~55mMの酢酸ナトリウム、0~14mMの酢酸カルシウム、0~6%のスクロース、0~0.006%のポリソルベート20、55mM~80mMのヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、55mM~160mMのメチオニンを含み; より好ましくは90mg/ml~180mg/ml、さらにより好ましくは120mg/ml~180mg/mlの抗体を含む。
【0075】
好ましい実施形態では、本発明による液体医薬製剤は、少なくとも90mg/mlの抗体、55mMのヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、125mMのメチオニン、55mMの酢酸ナトリウム緩衝液 pH5、14mMの酢酸カルシウム、6%のスクロース、及び0.006%のポリソルベート20を含み、抗体は抗ヒトスクレロスチン抗体である。さらにより好ましくは、本発明による液体医薬製剤は、少なくとも90mg/mlの抗体、55mMのヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、125mMのメチオニン、55mMの酢酸ナトリウム緩衝液 pH5、14mMの酢酸カルシウム、6%のスクロース、及び0.006%のポリソルベート20を含み、抗体は抗ヒトスクレロスチン抗体であり、製剤は皮下投与用である。
【0076】
別の実施形態では、本発明の実施形態のいずれかによる液体医薬製剤は、800mOsm/l以下のオスモル濃度、及び/又は80cP以下の粘度を示す。
【0077】
一実施形態では、液体製剤はヒドロゲルではない。一実施形態では、液体製剤は、少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、2%~90%、2%~75%、又は2%~50%の水を含む。
【0078】
本発明の実施形態のいずれかによる液体医薬製剤は、低骨形成、低骨塩密度、低骨塩量、低骨量、低骨質、及び低骨強度のうち少なくとも1つに関連する骨障害の治療に使用され得る。さらに、本発明は、哺乳動物被験体における低骨形成、低骨塩密度、低骨塩量、低骨量、低骨質、及び低骨強度のうち少なくとも1つに関連する骨障害を治療する方法であって、本発明の実施形態のいずれかによる液体医薬製剤の治療上有効量を投与することを含む、方法を提供する。さらに、本発明は、低骨形成、低骨塩密度、低骨塩量、低骨量、低骨質、及び低骨強度のうち少なくとも1つに関連する骨障害の治療のための医薬の製造のための、本発明の実施形態のいずれか1つによる液体製剤の使用を提供する。
【0079】
哺乳動物被験体は、げっ歯類、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ヒツジ、非ヒト霊長類、及びヒト被験体の群から選択されてもよい。好ましくは、哺乳動物被験体は、ヒト被験体である。
【0080】
本発明は、典型的には、低骨形成、低骨塩密度、低骨塩量、低骨量、低骨質、及び低骨強度のうち少なくとも1つに関連する骨障害を治療するか、又はその予防を助けるために使用される。骨障害は、スクレロスチンの機能変化によって、又は関連組織(例えば、骨、軟骨)におけるスクレロスチンタンパク質の発現の増加/減少によって特徴付けられる。本発明は、例えば、骨形成、骨塩密度、骨塩量、骨量、骨質、及び骨強度のうち少なくとも1つを増加させるために使用してもよい。
【0081】
骨障害は、骨密度の低下、骨再吸収の増加、及び/又は骨関連障害、すなわち骨粗鬆症を伴う異常な骨芽細胞又は破骨細胞活性に関連し得る。特に、骨障害は、軟骨無形成症、鎖骨頭蓋異骨症、内軟骨腫症、線維性骨異形成症、ゴーシェ病、低リン血症性くる病、マルファン症候群、多発性遺伝性外骨腫、神経線維腫症、骨形成不全症、大理石骨病、骨斑症、硬化性病変、偽関節症、化膿性骨髄炎、歯周病、抗てんかん薬誘導性骨損失、原発性及び二次性副甲状腺機能亢進症、家族性副甲状腺機能亢進症候群、無重力誘導性骨損失、男性骨粗鬆症、閉経後骨損失、変形性関節症、腎性骨ジストロフィー、骨の浸潤性障害、口の骨損失、顎骨壊死、若年性パジェット病、メロレオストーシス、代謝性骨疾患、肥満細胞症、鎌状赤血球貧血/病、臓器移植関連骨損失、腎臓移植関連骨損失、全身性エリテマトーデス、強直性脊椎炎、てんかん、若年性関節炎、サラセミア、ムコ多糖症、ファブリー病、ターナー症候群、ダウン症候群、クラインフェルター症候群、ハンセン病、ペルテス病、思春期特発性側弯症、幼児期発症性多系統炎症疾患、ウィンチェスター症候群、メンケス病、ウィルソン病、虚血性骨疾患(例えば、レッグ-カルベ-ペルテス病、局所性移動性骨粗鬆症)、貧血状態、ステロイドによって引き起こされる状態、グルココルチコイド誘導性骨損失、ヘパリン誘導性骨損失、骨髄障害、壊血病、栄養不良、カルシウム欠乏、骨粗鬆症、骨減少症、アルコール依存症、慢性肝疾患、閉経後の状態、慢性炎症状態、関節リウマチ、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、炎症性大腸炎、クローン病、希発月経、無月経、妊娠、糖尿病、甲状腺機能亢進症、甲状腺障害、副甲状腺障害、クッシング病、先端巨大症、性腺機能低下症、不動又は廃用性、反射性交感神経性ジストロフィー症候群、局所性骨粗鬆症、骨軟化症、骨間隙欠損、歯槽骨損失、関節置換に関連する骨損失、HIV関連骨損失、成長ホルモンの損失に関連する骨損失、嚢胞性線維症に関連する骨損失、化学療法関連骨損失、腫瘍誘導性骨損失、がん関連骨損失、ホルモン除去骨損失、多発性骨髄腫、薬物誘導性骨損失、神経性食欲不振症、疾患関連顔面骨損失、疾患関連頭蓋骨損失、疾患関連顎骨損失、疾患関連頭骨損失、加齢に関連する骨損失、加齢に関連する顔面骨損失、加齢に関連する頭蓋骨損失、加齢に関連する顎骨損失、加齢に関連する頭骨損失、及び宇宙旅行に関連する骨損失、並びにそれらの組み合わせの群から選択されてもよい。
【0082】
これらの障害に関連する骨損失、骨塩密度の減少、骨体積の減少、及び/又は骨塩量の減少は、本発明の関連で治療することができる。1つの例では、治療されるべき被験体は、妊娠していてもよい。例えば、本発明は、妊娠関連の骨損失を助けるために使用されてもよい。本発明は、一般的に骨損失を遅らせるか、又は回復させるために使用されてもよい。
【0083】
1つの好ましい実施形態では、治療されるべき骨障害は、骨粗鬆症又は骨減少症である。1つの例では、治療されるべき哺乳動物被験体は、閉経後の女性、例えば骨粗鬆症を有する閉経後の女性、特に骨折のリスクが増加したか若しくは骨折について高リスクのそのような被験体、又は他の利用可能な骨粗鬆症療法に失敗したか若しくは不忍容であるそのような被験体である。さらなる例では、本発明は、整形外科処置、歯科処置、インプラント手術、関節置換、骨移植、骨の美容整形手術、及び骨修復、例えば、骨折治癒、癒合不全治癒、遅延癒合治癒、及び顔面再建のうちの1つ以上を受けている哺乳動物における結果の改善に使用されてもよい。
【0084】
別の好ましい実施形態では、被験体は、骨折を有するか、又は骨折のリスクがあると考えられる。例えば、被験体は、骨折のリスクを有すると特定する骨塩密度を有していてもよい。被験体は、骨折の結果として骨障害と最近診断されていてもよい。いくつかの例では、被験体は、手首、腕、脚、臀部、又は椎骨の骨折を有していてもよく、いくつかの場合には、骨折が、骨障害の診断をもたらしたものであってもよい。
【0085】
好ましくは、骨障害は、骨粗鬆症、骨間隙欠損、歯槽骨損失、骨再吸収の阻害、又はそれらの組み合わせから選択される。
【0086】
本発明はまた、哺乳動物被験体における注射部位での炎症を減少させる方法であって、本発明の実施形態のいずれかによる液体医薬製剤の治療上有効量を投与することを含む、方法を提供する。
【0087】
本発明による液体医薬製剤は、治療上有効量で投与される。用語「治療上有効量」は、本明細書で使用される場合、標的とする疾患、障害、若しくは状態を治療、改善、若しくは予防するため、又は検出可能な治療効果、薬理学的効果、若しくは予防効果を示すために必要とされる治療剤(すなわち、活性成分)の量を指す。任意の抗体又はその抗原結合フラグメントについて、治療上有効量は、細胞培養アッセイにおいて、又は動物モデル、通常はげっ歯類、ウサギ、イヌ、ブタ、又は霊長類において、最初に推定することができる。動物モデルはまた、適切な濃度範囲及び投与経路を決定するために使用されてもよい。そのような情報は、その後、ヒトにおける投与のための有用な用量及び経路を決定するために使用することができる。
【0088】
ヒト被験体についての正確な治療上有効量は、疾患状態の重篤度、被験体の全体的な健康状態、被験体の年齢、体重、及び性別、食事、投与の時間及び頻度、薬物の組み合わせ、反応感受性、及び療法に対する忍容性/応答に依存する。この量は、日常的な実験によって決定することができ、臨床医の判断の範囲内である。一般に、抗体の治療上有効量は、0.01mg/kg~500mg/kg、例えば0.1mg/kg~200mg/kg、例えば100mg/kgである。
【0089】
液体医薬製剤は、1用量当たり所定量の本発明の活性薬剤を含有する単位用量形態で好都合に提供することができる。
【0090】
上記疾患及び/又は障害の治療のために、適切な投薬量は、例えば、使用されるべき特定の抗体、治療される被験体、投与様式、及び治療される状態の性質及び重篤度に応じて変わる。特定の実施形態では、本発明の液体医薬製剤は、静脈内又は皮下経路によって投与される。静脈内注射によって投与される場合、ボーラス注射として、又は連続注入として投与されてもよい。本発明の実施形態のいずれかによる液体医薬製剤はまた、筋肉内注射により投与してもよい。液体医薬製剤は、注射器、注射装置、例えば、自己注射器、無針装置、インプラント、及びパッチを用いて注射してもよい。本発明の液体医薬製剤はまた、そのような送達のための前記製剤を含有する吸入装置を用いた、例えば、ネブライザー又は液体吸入器を用いた吸入を介して投与してもよい。
【0091】
本発明の液体医薬製剤は、一度に、又は一連の処置にわたって患者に適切に投与され、また診断後の任意の時点で患者に投与されてもよい。単独の治療として、又は以前に本明細書に記載されている状態を治療するのに有用な他の薬物又は療法と組み合わせて投与してもよい。
【0092】
抗体又はその抗原結合フラグメントは、液体医薬製剤中の唯一の活性成分であってもよい。あるいは、抗体又はその抗原結合フラグメントは、1つ以上の他の治療活性成分と組み合わせて、例えば同時に、連続的に、又は別々に投与してもよい。本明細書で使用される活性成分は、関連する用量で、薬理学的効果、例えば、治療効果を有する成分を指す。いくつかの実施形態では、液体医薬製剤中の抗体又はその抗原結合フラグメントは、他の活性成分、例えば、他の抗体又は非抗体成分を伴ってもよい。本発明による液体医薬製剤中の抗体が抗スクレロスチン抗体である場合、被験体は、その骨障害を治療するために追加の活性成分を投与されてもよい。被験体は、例えば、骨障害を治療するための任意の他の療法で治療されてもよい。一実施形態では、被験体は抗再吸収剤(anti-resorptive)を投与され、特に好ましい例では、被験体が本発明及びその実施形態による液体医薬製剤で治療されていない時点で追加の薬剤が投与される。代替の実施形態では、このような追加の活性成分は、本発明による液体医薬製剤の投与と同時に、又は重複して投与してもよい。本明細書で論じられる任意の実施形態では、追加の薬剤は、例えば、ビタミンDであってもよい。いくつかの実施形態では、他の治療活性成分は、骨再吸収阻害剤であってもよい。例えば、任意の適切な抗再吸収剤を使用することができる。1つの好ましい実施形態では、骨再吸収阻害剤は、ビスホスホネート、特に窒素含有ビスホスホネートである。ビスホスホネートの例としては、以下に限定されないが、アレンドロネート、ボネフォスクロドロネート、エチドロネート、イバンドロン酸、オルパドロネート、ネリドロネート、リセドロネートナトリウム、スケリド(skelid)、及びゾレドロン酸が挙げられる。別の好ましい実施形態では、ビスホスホネートは、ゾレドロン酸である。使用することができるビスホスホネートとしては、例えば、Actonel(商標)、Aclasta(商標)/Reclast(商標)、Boniva(商標)/Bonviva(商標)、Fosamax(商標)、及びZometa(商標)が挙げられる。抗スクレロスチン抗体を含む液体医薬製剤とビスホスホネートとを交互に用いることの利点は、ビスホスホネートで長期間処置されている被験体から生じる可能性のある副作用を回避するのに役立ち得ることである。したがって、交互に用いることは、そのような副作用を回避するのに役立ち、一方で、抗体に生じる耐性の問題にも対処する。好ましい実施形態では、追加の活性成分は抗再吸収剤であり、さらにより好ましくはアレンドロネートである。
【0093】
選択されたエストロゲン受容体モジュレーターはまた、骨再吸収阻害剤として使用されてもよく、例えば、アルゾキシフェン、バゼドキシフェン、FC1271、ラソフォキシフェン、ラロキシフェン、及びチボロンが、適切なSERMの例である。使用することができる他の骨再吸収阻害剤としては、エストロゲン及びカルシトニンが挙げられ、カルシトニンの例としては、サケカルシトニン、例えば、Miacalcin(商標)が挙げられる。
【0094】
ストロンチウム化合物、特にストロンチウムラネレート又はPTH、特に組換え副甲状腺ホルモン放出ペプチド、副甲状腺ホルモン、又はそれらの類似体(例えば、テリパラチド(FORTEO(登録商標))も骨再吸収阻害剤として使用することができる。
【0095】
他の実施形態では、骨再吸収阻害剤は、RANKL阻害剤、例えば抗RANKL抗体である。1つの好ましい実施形態では、使用される骨再吸収阻害剤は、デノスマブであってもよい。
【0096】
他の実施形態では、使用される抗再吸収剤は、ビスホスホネートではない。使用することができるそのような薬剤の例としては、PROLIA(登録商標)、カルシトニン、及びカテプシンK阻害剤(例えば、オダナカチブ)が挙げられる。
【0097】
ある場合には、骨再吸収阻害剤は、抗体と同時に、若しくはほぼ同時に投与されてもよく、又は2つの療法が重複するように投与されてもよい。骨再吸収阻害剤が、抗体が刺激した骨の崩壊を減少させることにより、特に化合物がビスホスホネートである場合に、抗スクレロスチン抗体の効果をさらに延長するのを助けるために与えられるものであってもよい。1つの好ましい例では、抗スクレロスチン抗体による被験体の治療と、骨障害のさらなる治療との重複はなく、例えば、2つの治療は交互であるが、重複しない。
【0098】
抗体分子は、典型的には、本発明の抗体分子をコードするDNAからタンパク質の発現をもたらすのに適した条件下で、抗体配列をコードするベクターを含有する宿主細胞を培養し、抗体分子を単離することによって生産してもよい。
【0099】
抗体分子は、重鎖又は軽鎖ポリペプチドのみを含んでもよく、その場合、重鎖又は軽鎖ポリペプチドコード配列のみを、宿主細胞をトランスフェクトするために用いる必要がある。重鎖及び軽鎖の両方を含む生成物の生産のために、細胞株に、軽鎖ポリペプチドをコードする第1のベクター、及び重鎖ポリペプチドをコードする第2のベクターの2つのベクターをトランスフェクトしてもよい。あるいは、単一のベクター、例えば、軽鎖及び重鎖ポリペプチドをそれぞれコードする配列を含むベクターを使用してもよい。
【0100】
工業規模で製造することができる抗体又はその抗原結合フラグメントは、組換え抗体フラグメントをコードする1つ以上の発現ベクターでトランスフェクトされた真核宿主細胞を培養することによって生産することができる。真核宿主細胞は、好ましくは哺乳動物細胞、より好ましくはチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である。
【0101】
哺乳動物細胞は、それらの増殖及び組換えタンパク質の発現を支持する任意の培地中で培養してよく、好ましくは、培地は、動物由来産物、例えば、動物血清及びペプトンを含まない化学的に規定された培地である。細胞増殖及びタンパク質生産を可能にする適切な濃度で存在する、ビタミン、アミノ酸、ホルモン、増殖因子、イオン、緩衝剤、ヌクレオシド、グルコース、又は同等のエネルギー源の様々な組み合わせを含む、当業者に利用可能な様々な細胞培養培地が存在する。追加の細胞培養培地成分は、当業者に公知の細胞培養サイクル中の異なる時点で適切な濃度で細胞培養培地に含まれてもよい。
【0102】
哺乳動物細胞培養は、任意の適切な容器、例えば、振とうフラスコ又はバイオリアクター中で行うことができ、これは、必要とされる生産規模に応じて、フェドバッチモードで操作しても、しなくてもよい。これらのバイオリアクターは、撹拌槽又はエアーリフトリアクターのいずれかであってよい。1,000L超えから50,000Lまで、好ましくは5,000L~20,000L、又は10,000Lまでの容量を有する様々な大規模バイオリアクターが利用可能である。あるいは、2L~100Lのようなより小規模のバイオリアクターも、抗体又は抗体フラグメントを製造するために使用することができる。
【0103】
抗体又はその抗原結合フラグメントは、典型的には、哺乳動物宿主細胞培養物、典型的にはCHO細胞培養物の上清中に見出される。目的のタンパク質、例えば抗体又はその抗原結合フラグメントが上清中に分泌されるCHO培養プロセスについて、前記上清は、当技術分野で公知の方法によって、典型的には遠心分離によって収集される。
【0104】
したがって、抗体又はその抗原結合フラグメントの生産方法は、細胞培養後及びタンパク質精製前の遠心分離及び上清回収のステップを含む。さらなる特定の実施形態では、前記遠心分離は、連続遠心分離である。疑義を避けるために、上清は、細胞培養物の遠心分離から生じる沈降した細胞の上にある液体を表す。
【0105】
あるいは、宿主細胞は、原核細胞、好ましくはグラム陰性細菌である。より好ましくは、宿主細胞は、大腸菌(E. coli)細胞である。タンパク質発現のための原核宿主細胞は、当技術分野において周知である(Terpe, K. Appl Microbiol Biotechnol 72, 211-222 (2006))。宿主細胞は、抗体の抗原結合フラグメントなどの目的のタンパク質を生産するように遺伝子操作された組換え細胞である。組換え大腸菌宿主細胞は、任意の適切な大腸菌株、例えば、MC4100、TG1、TG2、DHB4、DH5α、DH1、BL21、K12、XL1Blue、及びJM109に由来してもよい。1つの例は、組換えタンパク質発酵のために一般的に使用される宿主株である大腸菌株W3110(ATCC 27,325)である。抗体フラグメントはまた、改変された大腸菌株、例えば、代謝変異体又はプロテアーゼ欠損大腸菌株を培養することによって生産することができる。
【0106】
抗体フラグメントは、典型的には、タンパク質の性質、生産規模、及び使用される大腸菌株に応じて、大腸菌宿主細胞のペリプラズム中に、又は宿主細胞培養上清中に見出される。タンパク質をこれらの区画に標的化する方法は、当技術分野において周知である(Makrides, S.C.; Microbiol Rev 60, 512-538 (1996))。タンパク質を大腸菌のペリプラズムに向かわせるための適切なシグナル配列の例として、大腸菌PhoA、OmpA、OmpT、LamB、及びOmpFシグナル配列が挙げられる。タンパク質は、天然の分泌経路に依存することによって、又はタンパク質分泌を引き起こす外膜の限定された漏出の誘導によって、上清に標的化することができ、その例は、pelBリーダー、プロテインAリーダーの使用、バクテリオシン放出タンパク質、マイトマイシン誘導バクテリオシン放出タンパク質の共発現、それと併せた培養培地へのグリシンの添加、及び膜透過化のためのkil遺伝子の共発現である。最も好ましくは、組換えタンパク質は、宿主大腸菌のペリプラズムにおいて発現される。
【0107】
大腸菌宿主細胞における組換えタンパク質の発現はまた、誘導性システムの制御下にあってもよく、それにより、大腸菌における組換え抗体の発現は、誘導性プロモーターの制御下にある。大腸菌での使用に適した多くの誘導性プロモーターは、当技術分野で周知であり、プロモーターに応じて、組換えタンパク質の発現は、温度又は増殖培地中の特定の物質の濃度などのファクターを変化させることによって、誘導することができる。誘導性プロモーターの例としては、ラクトース又は非加水分解性ラクトース類似体であるイソプロピル-b-D-1-チオガラクトピラノシド(IPTG)で誘導可能である大腸菌lac、tac、及びtrcプロモーター、並びにそれぞれホスフェート、トリプトファン、及びL-アラビノースによって誘導されるphoA、trp、及びaraBADプロモーターが挙げられる。発現は、例えば、誘導物質の添加、又は誘導が温度依存性である場合には温度の変化によって誘導してもよい。組換えタンパク質発現の誘導が、誘導物質の培養物への添加によって達成される場合、誘導物質は、発酵系及び誘導物質に応じた任意の適切な方法によって、例えば、一回又は複数回のショット添加によって、又はフィードにより誘導物質を徐々に添加することによって、添加されてもよい。誘導物質の添加と、タンパク質発現の実際の誘導との間に遅延が存在し得ること、例えば、誘導物質がラクトースの場合、任意の既存炭素源がラクトースの前に利用されている間、タンパク質発現の誘導が起こる前に遅延が存在し得ることが理解される。
【0108】
大腸菌宿主細胞培養物(発酵)は、大腸菌の増殖及び組換えタンパク質の発現を支持する任意の培地中で培養されてよい。培地は、例えば、Durany O, et al. (2004). Studies on the expression of recombinant fuculose-1-phosphate aldolase in Escherichia coli. Process Biochem 39, 1677-1684に記載されるような、任意の化学的に規定された培地であってよい。
【0109】
大腸菌宿主細胞の培養は、必要とされる生産規模に応じて、任意の適切な容器、例えば、振とうフラスコ又は発酵槽中で行うことができる。1,000リットル超えから約100,000リットルまでの容量を有する様々な大規模発酵槽が利用可能である。好ましくは1,000~50,000リットル、より好ましくは1,000リットルから25,000、20,000、15,000、12,000、又は10,000リットルまでの発酵槽が使用される。0.5~1,000リットルの容量を有するより小規模の発酵槽も使用することができる。
【0110】
大腸菌の発酵は、任意の適切な系、例えば、タンパク質及び必要とされる収率に応じて、連続、バッチ、又はフェドバッチモードで実施してもよい。バッチモードは、必要な場合、栄養素又は誘導物質のショット添加と共に使用してもよい。あるいは、フェドバッチ培養を使用することができ、その培養物は、発酵が完了するまで、発酵槽中に最初に存在する栄養素、及び増殖速度を制御するために使用される1つ以上の栄養供給方式を使用して維持することができる最大比増殖速度で、バッチモード前誘導で、増殖させることができる。フェドバッチモードはまた、大腸菌宿主細胞の代謝を制御し、より高い細胞密度に到達することを可能にするために、前誘導に使用してもよい。
【0111】
所望の場合、宿主細胞は、発酵培地からの収集に供してもよく、例えば宿主細胞は、遠心分離、ろ過によって、又は濃縮によって、サンプルから収集されてもよい。この場合、そのプロセスは、典型的には、タンパク質を抽出する前に、遠心分離及び細胞回収のステップを含む。
【0112】
目的タンパク質、例えば、抗体又は抗体の抗原結合フラグメントが、宿主細胞のペリプラズム空間に見出される、大腸菌発酵プロセスについて、宿主細胞からそのタンパク質を放出することが必要である。放出は、任意の適切な方法、例えば、機械的処理又は圧力処理による細胞溶解、凍結融解処理、浸透圧ショック、抽出剤、又は熱処理によって達成されてもよい。タンパク質放出のためのそのような抽出方法は、当技術分野において周知である。したがって、特定の実施形態では、生産プロセスは、タンパク質精製前の追加のタンパク質抽出ステップを含む。
【0113】
in vitroでヒト抗体の抗原結合フラグメントを得る他の方法は、少なくとも部分的に人工的に生成されるか、又はドナーの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから生成される組換えDNAライブラリーを用いる、ディスプレイ技術、例えば、ファージディスプレイ又はリボソームディスプレイ技術に基づく。ヒト抗体を生成するためのファージ及びリボソームディスプレイ技術は、当技術分野において周知である。ヒト抗体はまた、単離されたヒトB細胞から生成することができ、そのヒトB細胞は、ex vivoにおいて目的抗原で免疫化され、続いて融合してハイブリドーマを生成し、次いでこれを最適ヒト抗体についてスクリーニングすることができる。
【実施例0114】
実施例1: ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン(HPGCD)スクリーニング
製剤内での安定性及び沈殿傾向は、濃度(立体的な混み合い(steric crowding))、及び立体的な混み合いに起因して観察される相互作用を制御するために製剤内で使用される賦形剤によって大きく影響される。
【0115】
HPGCDが生理学的pHでの沈殿プロファイルに影響を与えるかどうかを決定するために、HPGCD有り及び無しの、120mg/mLの濃度のロモソズマブ(pI 6.9)の基本製剤を、pHシフトモデルにかけた。
【0116】
pHシフトモデルは、薬物を含む製剤が皮下注射によって投与されるときに生じるpHシフトを再現するように設計されている(Elena Garcia-Fruitos, Insoluble Proteins: Methods and Protocols, Methods in Molecular Biology, vol. 1258, Chapter 18:321-330, Springer Science+Business Media New York (2015))。生物学的治療用タンパク質、特に抗体は、しばしば生理学的pH(約pH7.0)未満に製剤化される。タンパク質のpIがpH7.0未満であるが、製剤のpHよりも高い場合、タンパク質はそのpIを通過してシフトする。これは、そのタンパク質の溶解性を低下させ、そのタンパク質の沈殿を引き起こす。このモデルは、このpHシフトを再現するように設計され、皮下注射に対する製剤の適合性を評価する助けとなる。
【0117】
このモデルは24時間を超えて実行される。前日に組織緩衝液(10mM重炭酸ナトリウム及び150mM塩化ナトリウム)を調製し、37℃/7%CO2のCO2インキュベーター中に置いて一晩穏やかに攪拌して平衡化させる。製造業者の説明書(Thermo Scientific, Slide-A-Lyzer Dialysis Cassettes G2, Prod#87727, 7000 MWCO, 0.5mL)に従って、約0.5mLの各試験サンプルをSlide-a-lyserカセットにロードする。Slide-a-lyserカセットをCO2インキュベーター内の平衡化した組織緩衝液中に静かに置き、一晩放置する。Slide-a-lyserカセットを、最初の4~6時間は毎時、その後は24時間後(又はそれ以降)、沈殿の兆候について白黒のバックグラウンドに対して視覚的に評価する。
【0118】
50mM酢酸ナトリウム、14mM酢酸カルシウム、6%スクロース、0.006%ポリソルベート20、pH5.2(薬物溶液、DS)中の120mg/mLのロモソズマブを、1:1の連続希釈を行うことによって調製した。最初の溶液は、250mMの最終HPGCD濃度を与えるために、881mgのHPGCDを、DS中の120mg/mLのロモソズマブ2mlに添加することによって調製した。この溶液の半量(1mL)を、同体積の、DS中120mg/mLのロモソズマブと1:1で混合して、125mM HPGCDを有するDS中120mg/mLのロモソズマブのサンプルを得た。このプロセスを繰り返して、62.5mM、31.25mM、15.63mM、及び7.8mMのHPGCDを含有するDS中120mg/mLのロモソズマブのサンプルを得た。対照として、DS中120mg/mLのロモソズマブを使用した。
【0119】
0~250mMの濃度のHPGCDを含む製剤を緩衝液交換し、様々な容量(2~20mL)の30kDa Sartorius Viva Spin遠心分離スピンフィルターを用いて濃縮した。スピンチューブを3000rpm、5℃で≦60分間遠心分離した。ポジティブディスプレイスメントピペット≧5×容量交換を使用して、スピンサイクル間でサンプルを混合した。
【0120】
Cary 50分光光度計に連結されたC Technologies Solo VPE高濃度UV分光光度計を使用して、各サンプルの濃度を透析前後に二重に測定した(表2)。濃度を、Å280での吸光度によって決定した。結果を、二重のサンプル読み取り値の平均として報告した。pHを、Hach H260G pHメーター及びISFET固体プローブを用いて決定した。全てのサンプルは、調製後5℃で保存した。
【0121】
【0122】
サンプルの視覚的評価は、最初の5時間の各時間及び72時間後に実施した。結果を表3に報告する。HPGCDの添加は沈殿速度を低下させる。
【0123】
【0124】
実施例2: メチオニンスクリーニング
実施例1のロモソズマブ基本製剤の沈殿プロファイルに対するHPGCDの影響を評価したら、メチオニンの効果を調べた。
【0125】
メチオニンが生理学的pHでの沈殿プロファイルに影響を与えるかどうかを決定するために、メチオニン有り(55mM及び200mM)及び無しの、90mg/ml(対照のみ)、120mg/mL、又は180mg/mlの濃度のロモソズマブ(pI 6.9)の基本製剤を、実施例1に記載されるpHシフトモデルにかけた。
【0126】
50mM酢酸ナトリウム、14mM酢酸カルシウム、6%スクロース、0.006%ポリソルベート20、pH5.2(薬物溶液、DS)中のロモソズマブを、30kDa Sartorius Viva Spin遠心分離スピンフィルターを用いて125mg/mL又は190mg/mLに濃縮した。スピンチューブを3000rpm、5℃で≦60分間遠心分離した。ポジティブディスプレイスメントピペットを用いてスピンサイクル間でサンプルを混合した。
【0127】
必要な濃度(55及び200mM)を有する2.2mLのサンプルを生成するのに必要な量のメチオニンを、分析天秤を用いて秤量した(それぞれ0.018g及び0.0066g)。メチオニンを、2.2mLの適切なタンパク質溶液(125mg/mL又は190mg/mL)に溶解した。
【0128】
Cary 50分光光度計に連結されたC Technologies Solo VPE高濃度UV分光光度計を使用して、各サンプルの濃度を透析前後に二重に測定した(表4)。濃度を、Å280での吸光度によって決定した。結果を、二重のサンプル読み取り値の平均として報告する。
【0129】
【0130】
Hach H260G pHメーター及びISFET固体プローブを使用して測定した透析前及び24時間後の製剤のpHは、pHシフトを確認した(表5)。
【0131】
【0132】
サンプルの視覚的評価は、最初の4時間の各時間に実施した。結果を表6に報告する。
【0133】
【0134】
表6に報告された結果によって観察され得るように、メチオニン単独の添加は沈殿速度を変化させなかった。
【0135】
実施例3: HPGCD及びメチオニンの組み合わせのスクリーニング
実施例1のロモソズマブ基本製剤の沈殿プロファイルに対するHPGCD単独及びメチオニン単独の影響を評価したら、HPGCD及びメチオニンの併用効果を調べた。
【0136】
50mM酢酸ナトリウム、14mM酢酸カルシウム、6%スクロース、0.006%ポリソルベート20、pH5.2(薬物溶液、DS)中のロモソズマブを、30kDa Sartorius Viva Spin遠心分離スピンフィルターを用いて125mg/mL又は190mg/mLに濃縮した。スピンチューブを3000rpm、5℃で≦60分間遠心分離した。ポジティブディスプレイスメントピペットを用いてスピンサイクル間でサンプルを混合した。
【0137】
必要な濃度(55及び200mM)を有する2.2mLのサンプルを生成するのに必要な量のメチオニンを、分析天秤を用いて秤量した(それぞれ0.018g及び0.066g)。メチオニンを、2.2mLの適切なタンパク質溶液(125mg/mL又は190mg/mL)に溶解した。必要な濃度の、1mLの30mM HPGCDを生成するのに必要な量のHPGCDを、分析天秤を用いて秤量した(0.053g)。1mlの適切なタンパク質/メチオニン溶液を使用して、HPGCDを溶解した。
【0138】
製剤を、実施例1及び2に先に記載したように緩衝液交換し、濃縮した。各サンプルの濃度を、実施例1及び2に先に記載したように、透析前後で二重に測定した(表7)。結果を、二重のサンプル読み取り値の平均として報告する。
【0139】
【0140】
透析前及び24時間後の製剤のpHは、pHシフトを確認した(表8)。
【0141】
【0142】
サンプルの視覚的評価は、最初の4時間の各時間に実施した。結果を表9に報告する。
【0143】
【0144】
HPGCD及びメチオニンの添加は、特に高濃度のロモソズマブ(180mg/mL)で、基本製剤よりも沈殿速度を改善した。
【0145】
実施例4: 拡張したメチオニン及びHPGCDスクリーニング並びにオスモル濃度及び粘度に対する効果
メチオニン及びHPGCDのさらなる濃度、並びにpH、粘度、及びオスモル濃度に対するそれらの効果を調べるために、酢酸カルシウム有り及び無しで、HPGCD及びメチオニンの組み合わせを含む20個の異なる製剤を作製した。
【0146】
50mM酢酸ナトリウム、14mM酢酸カルシウム、6%スクロース、0.006%ポリソルベート20、pH5.2(薬物溶液、DS)中の120mg/mLのロモソズマブを、ベンチスケールのタンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)カートリッジである30kDa Sartorius Viva Flow 50を用いて、約190mg/mLに濃縮した。システムは、約2.5Barの圧力、≧6×容量交換で、Masterflexぜん動ポンプを用いて実行した。
【0147】
DS中120mg/mLのロモソズマブを、55mM酢酸ナトリウム、6%スクロース、0.006%ポリソルベート20、pH5.2(酢酸カルシウム無し)に緩衝液交換し、ベンチスケールのタンジェンシャルフローフィルトレーション(TFF)カートリッジである30kDa Sartorius Viva Flow 50を用いて、約190mg/mLに濃縮した。システムは、約2.5Barの圧力、≧6×容量交換で、Masterflexぜん動ポンプを用いて実行した。
【0148】
メチオニン及びHPGCDを、実験設計に従ってスパイクした(表10)。
【0149】
【0150】
必要な濃度を有する1.2mLのサンプルを生成するのに必要な量のメチオニンを、分析天秤を用いて秤量した。メチオニンを、2.2mLの適切なタンパク質溶液(酢酸カルシウム有り/無し)に溶解した。必要な濃度の1mLのサンプルを生成するのに必要な量のHPGCDを、分析天秤を用いて秤量した。1mlの適切なタンパク質/メチオニン溶液(酢酸カルシウム有り/無し)を使用して、HPGCDを溶解した。
【0151】
サンプルをpHシフトモデルにかけた。pH及び濃度を、上記のように透析前後に測定した。皮下投与のための生理学的要件を満たす具体的な製剤を同定するために、透析前のオスモル濃度及び粘度も測定した。表11は、この実験で実行された20個の新たに設計された製剤及び6個の対照を示す。
【0152】
【0153】
透析前の製剤の濃度を測定し、表11の第5列に示す。透析後の濃度も測定し、それらの傾向は、以前に試験された製剤のものと同様であった(データ示さず)。透析前後のpH、粘度、及びオスモル濃度を測定し、また、表11に示す。
【0154】
サンプルの視覚的評価は、最初の5時間の各時間に実施した。結果を表12に報告する。
【0155】
【0156】
全ての結果を、統計解析パッケージ(ソフトウェアSAS JMP 11、バージョン11.0.0; 64ビット)に入力した。所望の医薬製剤に適した、予測オスモル濃度(約800mOsmlから最大約1000mOsmolまで)及び粘度(<80cP)を有することについてさらに試験するために、4つの製剤(表13の第2列の詳細)を選択した。
【0157】
HPGCD及びメチオニンを含む製剤を調製するために、約119mg/mLから約150mg/mLに及び約180mg/mLにロモソズマブを緩衝液交換し、濃縮することが必要であった。6×容量の緩衝液交換を、濃縮前に行った。濃度を、Solo VPE高濃度UV分光光度計を用いて測定した。使用したロモソズマブ吸光係数は1.50ml/(mg*cm)であった。濃度を、二重の読み取り値から決定した。緩衝液交換及び濃縮を、VivaSpin Spin 20、30KD遠心分離スピンフィルター中、3200rpm、5℃で1時間ブロックで遠心分離機を用いて行った。ポジティブディスプレイスメントピペットを用いて各スピン間で材料を混合した。サンプルを二重に調製した。20回スピンした後、6容量の緩衝液全てを加えて、緩衝液交換を行った。製剤B、C、及びDについて、約150mg/mL及び約180mg/mLの濃度を達成した。
【0158】
製剤Aを濃縮する問題のために、この製剤を濃縮し、150mg/mLの濃度、次いで180mg/mlの濃度を達成するために、毛細管を使用することを決定した。全ての材料を0.22mmシリンジフィルターを用いて滅菌ろ過し、調製後5℃で保存した。各サンプルを、対応する1%ポリソルベート20で、0.006%の濃度までスパイクした。全ての製剤は、標的濃度の±5%以内であった(表13)。
【0159】
【0160】
これらの製剤の濃度を透析後に測定し、濃度は、以前に試験した製剤と同じ傾向に従って予測されたとおりであった(データ示さず)。製剤のそれぞれの透析前後のpHを、透析前の粘度及びオスモル濃度と共に測定し、これらの結果を表14に報告する。表14において、A150は、150mg/mLのロモソズマブを有する表12の製剤Aを意味し、A180は、180mg/mLのロモソズマブを有する表13の製剤Aを意味するなどである。対照製剤は、90mg/mL、120mg/mL、150mg/mL、及び180mg/mLのロモソズマブの濃度の、55mM酢酸ナトリウム、14mM酢酸カルシウム、6%スクロース、0.006%ポリソルベート20、96mM HPGCD、pH5.2の基本製剤を含む。
【0161】
【0162】
要約すると、HPGCD及びメチオニンの組み合わせは、液体製剤中で、特に高濃度で、抗体を安定化するために驚くほど有益であることが見出された。
a. 活性成分としての抗体又はその抗原結合フラグメント;
b. シクロデキストリン、及び
c. メチオニン
を含む、液体医薬製剤。
a. 抗体又はその抗原結合フラグメントが、
i. 配列番号1で規定される配列を有するCDR-H1; 配列番号2で規定される配列を有するCDR-H2; 配列番号3で規定される配列を有するCDR-H3; 配列番号4で規定される配列を有するCDR-L1; 配列番号5で規定される配列を有するCDR-L2、及び配列番号6で規定される配列を有するCDR-L3を含むか、若しくは
ii. 配列番号7で規定される配列を有する軽鎖可変領域、及び配列番号8で規定される配列を有する重鎖可変領域を有するか; 又は
b. 抗体が、
i. 配列番号9で規定される配列を有する軽鎖、及び配列番号10で規定される配列を有する重鎖; 若しくは
ii. 配列番号11で規定される配列を有する軽鎖、及び配列番号12で規定される配列を有する重鎖を有する、
請求項1~6のいずれか一項に記載の液体製剤。
シクロデキストリンが、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、ジメチル-β-シクロデキストリン、トリメチル-β-シクロデキストリン、ランダムにメチル化されたβ-シクロデキストリン、ヒドロキシエチル-β-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(すなわち、2ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン、又は2,3-ジヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)、ヒドロキシイソブチル-β-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリン、グルコシル-β-シクロデキストリン、マルトシル-β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン(すなわち、2ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、3-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、又は2,3-ジヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン)、シクロデキストリン含有ポリマー、又はそれらの組み合わせから選択される、請求項1~9のいずれか一項に記載の液体製剤。
pH5.2で、1mg/ml~200mg/mlの抗体、10mM~55mMの酢酸ナトリウム、0~14mMの酢酸カルシウム、0~6%のスクロース、0~0.006%のポリソルベート20、55mM~80mMのヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、55mM~160mMのメチオニンを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の液体製剤。
少なくとも2%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも25%、2%~90%、2%~75%、又は2%~50%の水を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の液体製剤。
液体医薬製剤における抗体又はその抗原結合フラグメントの沈殿を減少させる方法であって、液体製剤を提供すること、及びその製剤にメチオニン及びシクロデキストリン、好ましくはヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリンを添加することを含む、方法。