(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062050
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】ホルムアルデヒドを含まない硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 33/06 20060101AFI20220412BHJP
C08L 23/26 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
C08L33/06
C08L23/26
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022003689
(22)【出願日】2022-01-13
(62)【分割の表示】P 2019551345の分割
【原出願日】2017-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100128484
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 司
(72)【発明者】
【氏名】シュエ、イン
(72)【発明者】
【氏名】クー、チャオホイ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ホルムアルデヒドを含まない硬化性組成物を提供する。
【解決手段】硬化性組成物の総乾燥重量に基づいて70~99乾燥重量%のアクリルエマルジョン成分と、硬化性組成物の総乾燥重量に基づいて1~30乾燥重量%の、ポリカルボン酸化合物で官能化されたポリオレフィン出発材料を乳化することにより調製されたポリオレフィンエマルジョン成分とを含む、硬化性組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性組成物であって、前記硬化性組成物の総乾燥重量に基づいて70~99乾燥重量
%のアクリルエマルジョン成分と、前記硬化性組成物の前記総乾燥重量に基づいて1~3
0乾燥重量%の、ポリカルボン酸化合物で官能化されたポリオレフィン出発材料を乳化す
ることにより調製されたポリオレフィンエマルジョン成分と、を含む、硬化性組成物。
【請求項2】
前記アクリルエマルジョン成分が、アクリルモノマーの総重量に基づいて0.25~1
0重量%の共重合エチレン性不飽和カルボン酸モノマーを含む、請求項1に記載の硬化性
組成物。
【請求項3】
前記共重合エチレン性不飽和カルボン酸モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、クロ
トン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸モノメチル、フマル酸モノメチ
ル、フマル酸モノブチル、および無水マレイン酸からなる群から選択される、請求項2に
記載の硬化性組成物。
【請求項4】
前記ポリオレフィン出発材料が、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1
-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、3-メチル-
1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、5-エチル-1-ヘキセン、6-メチル-1
-ヘプテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、および1-デセ
ンの熱分解されたホモポリマーおよびコポリマーからなる群から選択される、請求項1に
記載の硬化性組成物。
【請求項5】
前記ポリオレフィン出発材料が、ポリプロピレンである、請求項4に記載の硬化性組成
物。
【請求項6】
前記ポリオレフィン出発材料が、プロピレンおよびエチレンのコポリマーであり、エチ
レンの重量濃度が、10%未満である、請求項4に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
前記ポリカルボン酸化合物が、不飽和ポリカルボン酸、その無水物、およびそのエステ
ルである、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
前記ポリカルボン酸化合物が、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水シトラコ
ン酸、無水アコニット酸、無水イタコン酸、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、マ
レイン酸メチルエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジプトピル、およびクエン酸か
らなる群から選択される、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
前記エチレン性不飽和ポリカルボン酸化合物が、無水マレイン酸である、請求項8に記
載の硬化性組成物。
【請求項10】
前記組成物が、ホルムアルデヒドを含まない、請求項1~9のいずれか一項に記載の硬
化性組成物。
【請求項11】
基材を形成するための方法であって、a)硬化性水性組成物を形成することであって、
前記硬化性水性組成物が、前記硬化性組成物の総乾燥重量に基づいて70~99乾燥重量
%のアクリルエマルジョン成分と、前記硬化性組成物の前記総乾燥重量に基づいて1~3
0乾燥重量%の、ポリカルボン酸化合物で官能化されたポリオレフィン出発材料を乳化す
ることにより調製されたポリオレフィンエマルジョン成分とを含む、形成することと、b
)可撓性基材を前記硬化性水性組成物と接触させることと、c)前記硬化性水性組成物を
120℃~220℃の温度で加熱することと、を含む、方法。
【請求項12】
請求項11に記載の方法に従って形成された、処理された基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、硬化性水性組成物、硬化性水性組成物で処理された基材を形成するための方
法に関し、そのように処理された基材が提供される。硬化性水性組成物、処理された基材
を形成するための方法、および処理された基材は、ホルムアルデヒドを含まない場合があ
る。
【背景技術】
【0002】
ホルムアルデヒド系樹脂、例えば、フェノール-ホルムアルデヒド(PF)、メラミン
-ホルムアルデヒド(MF)、尿素-ホルムアルデヒド(UF)樹脂は、グラスファイバ
ー断熱産業、紙含浸、ろ過媒体、および屋根材料などの様々な産業用途のための不織布バ
インダーとして広く使用されている。これらのホルムアルデヒド系樹脂は、安価であり、
低粘度を有し、硬化して剛性ポリマーを形成することができ、それにより優れた物理的特
性を備えた最終製品を提供する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
PF、MF、およびUF樹脂の重大な欠点は、遊離ホルムアルデヒドの濃度が高いこと
であり、これは、生態学的な理由から望ましくない。硬化反応中、ホルムアルデヒドはバ
インダーから周囲環境に揮発する。PF樹脂に尿素を添加するとホルムアルデヒドの放出
が減少するが、同時にアンモニアの放出および「青い煙」が劇的に増加する。
【0004】
したがって、ホルムアルデヒドを含まない硬化性組成物に対する継続的なニーズがある
。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、硬化性組成物の総乾燥重量に基づいて70~99乾燥重量%のアクリルエマ
ルジョン成分と、硬化性組成物の総乾燥重量に基づいて1~30乾燥重量%の、ポリカル
ボン酸化合物で官能化されたポリオレフィン出発材料を乳化することにより調製されたポ
リオレフィンエマルジョン成分とを含む、硬化性組成物を提供する。
【0006】
本発明は、a)硬化性水性組成物を形成することであって、硬化性水性組成物が、硬化
性組成物の総乾燥重量に基づいて70~99乾燥重量%のアクリルエマルジョン成分と、
硬化性組成物の総乾燥重量に基づいて1~30乾燥重量%の、ポリカルボン酸化合物で官
能化されたポリオレフィン出発材料を乳化することにより調製されたポリオレフィンエマ
ルジョン成分とを含む、形成することと、b)可撓性基材を該硬化性水性組成物と接触さ
せることと、c)該硬化性水性組成物を120℃~220℃の温度で加熱することと、を
含む、基材を形成するための方法をさらに提供した。
【0007】
本発明の第3の態様では、本発明の第2の態様の方法により形成された、処理された基
材が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の組成物中の成分を説明する目的で、括弧を含むすべての句は、その括弧に含ま
れる物質およびそれが不在の物質のいずれかまたは両方を示す。例えば、句「(コ)ポリ
マー」には、ポリマー、コポリマー、およびそれらの混合物が含まれ、句「(メタ)アク
リレート」は、アクリレート、メタクリレート、およびそれらの混合物を意味する。
【0009】
硬化性組成物は、硬化性組成物の総乾燥重量に基づいて、70~99%、例えば、75
%~95%、または代替的に80%~92乾燥重量%のアクリルエマルジョン成分と、硬
化性組成物の総乾燥重量に基づいて、1~30%、例えば、5%~25%、または代替的
に8%~25乾燥重量%の、ポリカルボン酸化合物で官能化されたポリオレフィン出発材
料を乳化することにより調製されたポリオレフィンエマルジョン成分と、を含む。
【0010】
アクリルエマルジョン成分
アクリルエマルジョン成分は、アクリルエマルジョンの総重量に基づいて、20~70
重量%、例えば、40~60重量%、または代替的に45~60重量%のアクリル固体を
含む。アクリルエマルジョン中に存在するアクリル固体は、75~450nm、例えば、
115~375nm、または代替的に150~300nmの範囲の平均重量粒径を有する
。アクリルエマルジョン成分中に存在するアクリルポリマーは、アクリルモノマーの総重
量に基づいて、0.25~10、例えば、0.25~5、または代替的に0.5~5重量
パーセントの酸モノマーの範囲の酸レベルを有する。アクリルエマルジョン成分中に存在
するアクリルポリマーは、100,000~5,000,000g/モル、例えば、20
0,000~1,000,000g/モル、または代替的に200,000~750,0
00g/モルの範囲の重量平均分子量を有する。アクリルエマルジョン成分中に存在する
アクリルポリマーは、-40~100℃、例えば、0~100℃、または代替的に10~
80℃、または代替的に20~65℃の範囲のガラス転移温度(Tg)を有する。本開示
のアクリルエマルジョン成分は、6~10、例えば、7~9の範囲のpHを有する。
【0011】
本開示の異なる実施形態では、アクリルエマルジョン成分は、アクリルモノマーの総重
量に基づいて、0.25~10重量%、例えば、0.25~5重量%、または代替的に0
.5~5重量%の共重合エチレン性不飽和カルボン酸モノマー、例えば、アクリル酸、メ
タクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸モノメチル、
フマル酸モノメチル、フマル酸モノブチル、および無水マレイン酸などを含有し得る。
【0012】
好適なモノエチレン性不飽和酸または二酸モノマーには、例えば、(メタ)アクリル酸
、イタコン酸、イタコン酸モノメチル、(メタ)アクリルオキシプロピオン酸、アコニッ
ト酸、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸、それらの無水物、例えば、無水マレイン酸;
マレイン酸モノメチル;イタコン酸モノアルキル;フマル酸モノアルキル、例えば、フマ
ル酸モノメチル;2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸;ビニルスルホン
酸;スチレンスルホン酸;1-アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸;アル
キルアリルスルホコハク酸;スルホエチル(メタ)アクリレート;ホスホアルキル(メタ
)アクリレート、例えば、ホスホエチル(メタ)アクリレート;ホスホジアルキル(メタ
)アクリレート;およびリン酸アリルが含まれ得る。いくつかの実施形態では、酸モノマ
ーは、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、およびマレイン酸である。
【0013】
本開示の別の実施形態では、アクリルエマルジョン成分は、エチレン性不飽和カルボン
酸モノマーに加えて、少なくとも1つの他の共重合エチレン性不飽和モノマー、例えば、
(メタ)アクリルエステルモノマー、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メ
タ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレ
ート、デシル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキ
シプロピル(メタ)アクリレート、ウレイド官能性(メタ)アクリレートおよびアセトア
セテート、(メタ)アクリル酸のアセトアミドまたはシアノアセテート;スチレンまたは
置換スチレン;ビニルトルエン;ブタジエン;酢酸ビニルまたは他のビニルエステル;ビ
ニルモノマー、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、N-ビニルピロリドン;ならびに
(メタ)アクリロニトリルなどを含む。本開示全体で使用されるように、「(メタ)」と
いう用語の後に(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリルアミドなどの別の用語を続
いて使用することは、それぞれアクリレートおよびメタクリレートまたはアクリルアミド
およびメタクリルアミドの両方を指す。好ましくは、例えば、N-アルキロール(メタ)
アクリルアミドなどの、重合時またはその後の処理中にホルムアルデヒドを生成し得るモ
ノマーは除外される。
【0014】
本開示のさらに別の実施形態では、アクリルエマルジョン成分は、アクリルモノマーの
総重量に基づいて、0~5重量%の共重合多エチレン性不飽和モノマー、例えば、アリル
メタクリレート、ジアリルフタレート、1,4-ブチレングリコールジメタクリレート、
1,2-エチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレー
ト、およびジビニルベンゼンなどを含有し得る。一実施形態では、アクリルエマルジョン
ポリマー、例えば、ホモポリマーまたはコポリマーは、例えば、一度または徐々に、モノ
マー成分、水、および界面活性剤(使用する場合)を反応容器に充填し、例えば、窒素な
どの不活性ガスで容器をパージし、50~100℃の範囲の反応温度まで容器を加熱する
ことにより調製され得る。反応容器が所望の反応温度に達すると、1つ以上の開始剤が反
応容器に添加される。反応は、重合プロセスを完了するのに十分な期間、例えば、1~4
時間の範囲の期間継続される。反応がほぼ完了するか、または完了すると、反応容器およ
びその中に含まれる反応内容物が冷却される。この合成により、水中にポリマー、例えば
、ホモポリマーまたはコポリマーを含む水性ポリマー組成物が得られる。ある場合には、
本組成物は、乳白色のエマルジョンの外観を有し、他の場合には、それは、透明または濁
った溶液のように見える。
【0015】
コポリマーを生成するための方法は、(メタ)アクリレート、ポリスチレン、またはエ
マルジョンの粒径を制御するのに有用な他のシードであり得るシードの使用を含み得る。
当技術分野で周知のように、初期シードの調節を使用して、生成されるコポリマーの粒径
の最終的な範囲を制御することができる。
【0016】
本明細書で使用される場合、「(メタ)アクリレート」という用語は、アクリレート、
メタクリレート、およびそれらの混合物を意味し、本明細書で使用される「(メタ)アク
リル」という用語は、アクリル系、メタクリル系、およびそれらの混合物を意味する。
【0017】
好適なモノエチレン性不飽和モノマーには、非イオン性モノマー、例えば、(メタ)ア
クリルエステルモノマー、例えば、C1~C30(シクロ)アルキル(メタ)アクリレー
ト、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチルメタクリレート、ブチル(メタ)アク
リレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、デシルアクリレート、ラウリル(
メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレートなど;(メタ)アクリルアミド、
置換(メタ)アクリルアミド、例えば、N-アルキル(メタ)アクリルアミドおよびN,
N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド;エチレン;プロピレン;スチレンおよび置換ス
チレン;ブタジエン;ビニルエステル、例えば、酢酸ビニルおよび酪酸ビニル;塩化ビニ
ル、ビニルトルエン、およびビニルベンゾフェノン;(メタ)アクリロニトリル;ならび
に塩化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデンなどが含まれ得る。好適なイオン性および
親水性モノエチレン性不飽和モノマーには、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリ
レート;グリシジル(メタ)アクリレート;モノエチレン性不飽和酸モノマー;アセトア
セトキシエチル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート
;アミン基含有モノマー、例えば、ビニルイミダゾール、2-(3-オキサゾリジニル)
エチル(メタ)アクリレートおよびアミン官能性(メタ)アクリレート、例えば、ter
t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)
アクリレート、およびN,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート;N-ビニ
ルピロリドン;ナトリウムビニルスルホネート;ホスホエチル(メタ)アクリレート;ア
クリルアミドプロパンスルホネート;ジアセトンアクリルアミド;エチレンウレイド官能
性モノマー;イソシアナトアルキル(メタ)アクリレート、ならびにアリルアセトアセテ
ートが含まれ得る。
【0018】
アニオン性、非イオン性、および両性界面活性剤、すなわち界面活性剤は、コポリマー
合成プロセスで用いられ得る。
【0019】
アクリルエマルジョンは、例えば、熱、レドックス(レドックス触媒を使用)、光化学
、および電気化学的開始を含むフリーラジカル重合により重合され得る。好適なフリーラ
ジカル開始剤または酸化剤には、例えば、過硫酸塩、例えば、過硫酸アンモニウムおよび
/もしくは過硫酸アルカリ金属など;過酸化物、例えば、過酸化水素ナトリウムもしくは
過酸化水素カリウム、過酸化t-アルキル、過酸化水素t-アルキル、過酸化水素ジクミ
ルなど;またはt-アルキル基が少なくとも5個の炭素原子を含むt-アルキルペルエス
テル;過ホウ酸およびその塩、例えば、過ホウ酸ナトリウムなど;過リン酸およびその塩
;過マンガン酸カリウム;ならびにペルオキシ二硫酸のアンモニウムもしくはアルカリ金
属塩が含まれ得る。そのような開始剤は、モノマーの総重量に基づいて0.01~3.0
重量パーセントの範囲の量で使用され得る。
【0020】
好適なレドックス触媒は、好適な還元剤とともに1つ以上の酸化剤を含む。好適な還元
剤には、例えば、スルホキシル酸ナトリウムホルムアルデヒド;(イソ)アスコルビン酸
;硫黄含有酸のアルカリ金属およびアンモニウム塩、例えば、(重)亜硫酸ナトリウム、
チオサルフェート、ハイドロサルファイト、(ハイドロ)サルファイド、またはジチオナ
イト;ホルマジンスルフィン酸;ヒドロキシメタンスルホン酸;ナトリウム2-ヒドロキ
シ-2-スルファイナト酢酸;重硫酸アセトン;アミン、例えば、エタノールアミン、グ
リコール酸;グリオキシル酸水和物;乳酸;グリセリン酸、リンゴ酸;酒石酸が含まれ得
、それらの塩は、モノマーの総重量に基づいて0.01~5.0重量パーセントの量で使
用され得る。
【0021】
鉄、銅、マンガン、銀、白金、バナジウム、ニッケル、クロム、パラジウム、またはコ
バルトの金属塩を触媒するレドックス反応は、そのようなポリマーの形成のために添加さ
れ得る。使用される触媒金属塩の典型的なレベルは、0.01ppm~25ppmの範囲
であり、モノマーの総重量に基づいて1.0重量%までの範囲であり得る。2つ以上の触
媒金属塩の混合物も有用に用いられ得る。触媒金属塩とともに使用され得るキレート配位
子には、例えば、ニトリロ三酢酸(NTA、四座配位子)、エチレンジアミン二酢酸(E
DDA、四座配位子)、N-(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸(HEDTA
、五座配位子)、およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA、六座配位子)などの多座ア
ミノカルボキシレート配位子が含まれる。
【0022】
任意の重合における任意のモノマーは、そのまま、すなわち水中エマルジョンとしてで
はないか、または水中エマルジョンとして添加され得る。モノマーは、1回以上の添加で
、または連続的、直線的、もしくはそうではなく、反応期間にわたって、またはそれらの
組み合わせで添加され得る。好適な界面活性剤には、カチオン性、アニオン性、および非
イオン性界面活性剤が含まれる。アニオン的に安定化されたエマルジョンポリマーは、ア
ニオン性界面活性剤またはそれらと1つ以上の非イオン性界面活性剤との混合物により安
定化され得る。従来の界面活性剤を使用して、モノマーの重合前、重合中、および重合後
にエマルジョン重合系を安定化させることができる。これらの従来の界面活性剤は、通常
、重合中のモノマーの総重量に基づいて0.1重量パーセント~6重量パーセントのレベ
ルで存在する。少なくとも1つのアニオン性、非イオン性、もしくは両性界面活性剤、ま
たはそれらの混合物が使用され得る。陰イオン性乳化剤の例には、ラウリル硫酸ナトリウ
ム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジオクチルスルホスクシネート、ポリオキ
シエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ドデシルジフェニルオキシドジスルホン酸
ナトリウム、および他のジフェニルスルホン酸誘導体、ならびにtert-オクチルフェ
ノキシエトキシポリ(39)エトキシエチルサルフェートのナトリウム塩が含まれる。遊
離酸型および他の対イオンとの塩型の界面活性剤、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸
およびドデシルベンゼンスルホン酸アンモニウム塩も使用され得る。
【0023】
一実施形態では、アクリルエマルジョンは、単一の段階または多段階のポリマーであり
得る。一方の成分が、より高いTg(ハード)を有する他方の成分と比較してより低いT
g(ソフト)を有するハードソフトポリマー粒子とも称され、ここで、一方の成分が他の
成分の存在下で重合される、アクリルエマルジョン中に存在する多段階アクリルポリマー
を調製するために使用される重合技法が当技術分野で周知されている。ハードソフトポリ
マー粒子は、典型的には、組成が異なる少なくとも2つの段階が連続的な様式で重合され
る多段階水性エマルジョン重合プロセスにより調製される。ハードソフトポリマー粒子を
調製するために好適な多段階重合技法は、例えば、米国特許第4,325,856号、同
第4,654,397号、および同第4,814,373号に開示されている。ハードソ
フトポリマーを調製するための多段階重合プロセスでは、ソフトポリマーまたはハードポ
リマーのいずれかが、最初のポリマー粒子の水中分散液として調製され、その後、第1の
ポリマー粒子の存在下で他のポリマー(それぞれ、ハードポリマーまたはソフトポリマー
)の重合が行われて、ハードソフト粒子を提供する。
【0024】
アクリルエマルジョンは、同じかまたは異なるTgを有する2つ以上のアクリルエマル
ジョンのブレンドでもあり得る。
【0025】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、アクリルエマルジョンおよびその
成分に関する「平均粒径」(アクリルエマルジョンの場合)という用語は、BI-90粒
径アナライザー、Brookhaven Instruments Corp.(Hol
tsville,N.Y.)を使用した光散乱(LS)により決定される粒径を意味する
。
【0026】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、句「分子量」(アクリルエマルジ
ョンの場合)は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)またはポリスチレン(PS)標
準に対してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される場合の重量平均分子
量を指す。
【0027】
本明細書で使用される場合、特に明記されない限り、ポリマーの「Tg」または「ガラ
ス転移温度」という用語は、アクリルエマルジョンおよびその成分に関して、フォックス
方程式(T.G.Fox,Bull.Am.Physics Soc.,Volume1
,Issue No.3,page123(1956)、すなわち「数1」を使用するこ
とにより計算されるポリマーのTgを指す。
【数1】
【0028】
コポリマーに関して、W1およびW2は、2つのコモノマーの重量分率を指し、Tg(
1)およびTg(2)は、2つの対応するホモポリマーのガラス転移温度を指す。様々な
ホモポリマーのTgは、例えば、J.Brandrup and E.H.Immerg
ut,Interscience Publishersにより編集された「Polym
er Handbook」で見ることができる。ポリマーの「実験的Tg」は、アクリル
エマルジョンおよびその成分に関して、熱流対温度遷移の中点をTg値として使用して示
差走査熱量測定(DSC)により測定される。DSC測定の典型的な加熱速度は、20℃
/分である。
【0029】
ポリオレフィンエマルジョン成分
本開示のポリオレフィンエマルジョン成分は、ポリカルボン酸化合物で官能化されたポ
リオレフィン出発材料を乳化することにより調製される。
【0030】
好適なポリオレフィン出発材料には、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4
-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、
3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、5-エチル-1-ヘキセン、6
-メチル-1-ヘプテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1
-デセンなどの熱分解ホモポリマーおよびコポリマーが含まれる。これらのホモポリマー
またはコポリマーの結晶性ポリ-アルファ-オレフィンは、ポリマー材料を調製するため
の従来の重合プロセスにより調製される。いくつかの実施形態では、ポリオレフィン出発
材料は、ポリプロピレン、またはプロピレンとエチレンとのコポリマーであり、ここで、
エチレンの重量濃度は、約10%未満、例えば、約2%未満である。本開示のポリオレフ
ィン出発材料は、例えば、AlliedSignal(Morristown,N.J.
)を通じてACX1089という名前で市販されている。
【0031】
いくつかの実施形態では、ポリオレフィン出発材料は、以下の物理的特性を有する;約
7,500のMw;約11,200のMz;約3,000のMn;および1未満のガード
ナー色。
【0032】
ポリオレフィン出発材料は、ポリオレフィン出発材料の乳化を可能にする部分で官能化
されている。いくつかの実施形態では、この目的のための官能基(「部分」)は、不飽和
ポリカルボン酸、その無水物、およびそのエステルなどのエチレン性不飽和ポリカルボン
酸化合物から誘導される。好適なエチレン性不飽和ポリカルボン酸化合物には、例えば、
マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、無水イ
タコン酸、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、マレイン酸メチルエチル、マレイン
酸ジブチル、マレイン酸ジプトピルなど、ならびに化合物、例えば、反応温度でこれらの
化合物を形成する、クエン酸などが含まれる。さらに別の実施形態では、官能基は、無水
マレイン酸から誘導される。無水マレイン酸は、例えば、Maleic Anhydri
deとしてMonsanto Company(St.Louis,Mo.)、およびM
anbri Maleic AnhydrideとしてHuntsman Petroc
hemical Corporation(Chesterfield,Mo.)から市
販されている。
【0033】
ポリオレフィン出発材料を官能化するのに使用されるエチレン性不飽和ポリカルボン酸
化合物の量は、ポリオレフィン出発材料の約0.1~約45重量%、例えば、約5~30
重量%、8~20重量%、および代替的に約10重量%で変動し得る。ポリカルボン酸化
合物の量が、10重量%をはるかに超えると、得られる官能化ポリオレフィンの色が暗く
なる傾向があり、一方、より少ない量ではポリプロピレンと十分に反応せずに、透明なエ
マルジョンを提供する傾向があるか、非常にゆっくりと反応する傾向がある。
【0034】
反応に添加されたポリカルボン酸化合物の量を監視することに加えて、反応中の未反応
ポリカルボン酸化合物の濃度を監視することが重要である。すなわち、濃度において、ポ
リカルボン酸化合物、例えば、無水マレイン酸は、望ましくない単独重合重合を受ける傾
向がある。重合生成物は、暗い色を有し、官能化ポリオレフィン中で分散する傾向がある
ため、非常に好ましくない。
【0035】
したがって、本開示の方法は、いくつかの手法によりポリカルボン酸化合物の濃度を最
小限に抑える。第一に、ポリカルボン酸化合物が、はるかに大きな質量のポリオレフィン
出発材料にゆっくりと添加されるべきであることが見出された。大きな質量の出発材料は
、未反応ポリカルボン酸化合物に対して希釈剤として働き、その濃度を最小限に抑え、そ
れによりその重合を最小限に抑えると考えられている。さらに、ポリカルボン酸化合物を
ゆっくりと反応に供給すると、優れた結果が達成されることが見出された。一般に、ポリ
カルボン酸化合物を経済的に実用的な限りゆっくりと供給することが好ましい。例えば、
バッチ反応において、供給速度は、1時間あたり約1~約5重量%の出発材料、例えば、
1時間あたり約2~約4重量%の出発材料、および代替的に1時間あたり約3重量%の出
発材料である。未反応ポリカルボン酸化合物の濃度を最小限に抑えるためのさらに別の手
法は、確実に、反応質量に未反応ポリカルボン酸化合物の濃縮「ポケット」が存在しない
ようにすることである。本明細書で使用される場合、「反応質量」は、未反応出発材料、
未反応ポリカルボン酸化合物、開始剤、触媒、試薬、希釈剤、生成物、および副生成物を
含む反応器内の材料の全体を指す。均一な反応質量を確保するためには、撹拌反応器内で
反応質量を均一に混合することが重要である。いくつかの実施形態では、インペラータイ
プの撹拌機が使用される。
【0036】
反応の時間は、供給速度および官能化の所望の程度に依存する。一般に、上記で考察さ
れるようにポリカルボン酸化合物の供給濃度を最小限に抑えるには、より長い反応時間が
好ましい。しかしながら、反応時間は、経済性/生産性を考慮すると、その長さが制限さ
れる。約0.5~約10時間、例えば、約1~約5時間、および代替的に約2~約4時間
の反応時間で十分な生成物/生産性が達成されることが見出された。
【0037】
本開示による官能化は、出発材料の融点を超えるが約200℃以下の温度で実施される
。温度は、ポリオレフィンのタイプおよびフリーラジカル開始剤のクラスに依存する。約
150℃をはるかに下回る温度では、出発材料が溶融形態にならないため、ポリカルボン
酸化合物と十分に反応しない。しかしながら、約200℃を上回る温度では、得られる乳
化性ポリオレフィンの乳化の容易さおよび溶融粘度は、好ましいほど高くない。したがっ
て、反応温度は、一般に、約150~約200℃、例えば、約180~約190℃である
。前述の温度では、ポリカルボン酸化合物は、出発材料ではほとんど溶解しない気体また
は液体である。
【0038】
反応圧力は、とりわけ、反応温度および反応の所望の速度に依存する。一般に、反応は
、約5~約100psi、例えば、約2~約25psi、および代替的に大気圧付近の圧
力下で実施される。大気圧またはその付近の圧で実施される反応により、高価な高圧機器
が回避される。
【0039】
官能化中に、フリーラジカル形成を促進することが好ましい場合がある。フリーラジカ
ル形成の促進は、当技術分野で知られており、例えば、反応を加熱すること、または、好
ましくは、フリーラジカル源を用いることを含む。好適なフリーラジカル源には、例えば
、過酸化ジアルキル、過酸化水素第三ブチル、過酸化水素クメン、過酸化p-メンタン、
過酸化水素p-メンタン、もしくはアゾビス(イソブチロニトリル)などのオキソ化合物
、または照射源が含まれる。好適な照射源には、例えば、コバルト、ウラン、トリウム源
などからのもの、および紫外線が含まれる。いくつかの実施形態では、フリーラジカル源
は、過酸化物であり、過酸化ブチルがより好ましい。いくつかの実施形態では、過酸化物
は、入手可能性およびそれにより得られる好適な良好な結果に起因して、過酸化ジ第三ブ
チル(過酸化ジ-t-ブチル)である。これらの化合物は、例えば、LUPERSOL(
商標)101またはDi-t-Butyl PeroxideとしてElf Atoch
emから、TRIGONOX(商標)BとしてAkzo Nobel Chemical
s Inc.から市販されている。
【0040】
使用される過酸化物またはフリーラジカル剤の量は、一般に、非常に少なく、ポリオレ
フィン出発材料の重量に基づいて、約0.01~約5重量%、例えば、約0.1~約3重
量%、および代替的に約0.75~約1.25重量%の順番である。良好な特性のために
は、5重量%をはるかに上回る量は必要ないが、一方で、約0.01重量%未満の量では
反応が遅すぎて不完全になる。
【0041】
いくつかの実施形態では、ポリカルボン酸化合物供給物のようなフリーラジカル開始剤
は、反応質量にゆっくりと添加される。いくつかの実施形態では、フリーラジカル開始剤
は、1時間あたり約0.01~約3重量%の出発材料、例えば、1時間あたり約0.1~
約1重量%の出発材料、および代替的に1時間あたり約0.3重量%の出発材料の速度で
反応に添加される。
【0042】
官能化プロセスは、バッチ式または連続式のいずれでも実施され得るが、再現性と生成
物の品質に起因して、バッチ式反応が一般に好ましい。
【0043】
所望のレベルの官能化が達成されると、反応混合物が反応温度にある間に、反応混合物
を窒素などの不活性ガスでパージすることにより、未反応ポリカルボン酸化合物は反応混
合物から分離され得る。未反応のポリカルボン酸化合物を除去した後、官能化ポリプロピ
レンは、真空ストリッピングまたは溶媒抽出によりさらに精製され得る。
【0044】
市販のポリカルボン酸化合物で官能化されたポリオレフィン出発材料の好適な例には、
例えば、HoneywellのA-C(商標)597P(無水マレイン酸変性ポリプロピ
レン分散液)およびA-C(商標)950P(無水マレイン酸変性ポリプロピレン分散液
)が含まれる。
【0045】
本開示に従って生成された乳化性ポリオレフィンは、従来のものよりも容易にエマルジ
ョンに形成される。より具体的には、乳化性ポリオレフィンが、従来使用されているより
も低い温度で乳化され得ることが見出された。エマルジョンの温度は、約140~約19
0℃、例えば、150~約175℃、および代替的に約160~約170℃である。
【0046】
ポリオレフィンエマルジョンは、酸性、中性、または塩基性pHで調製され得るが、p
Hは、約7~約12、例えば、約8~約11、および代替的に約9~約10であることが
好ましい。
【0047】
本開示に従って調製されたポリオレフィンエマルジョンは、一般に、約10~約50重
量%、例えば、約20~約40重量%、および代替的に約30~約35重量%の乳化性ポ
リオレフィンを含有する。
【0048】
本開示のポリオレフィンエマルジョンに使用される界面活性剤の量は、約20重量%、
例えば、約5~約15重量%、および代替的に約8~約12重量%の高さであり得る。約
15重量%をはるかに超える量は、一般に必要とされないが、約3重量%未満の少量は、
不十分である傾向がある。好適な界面活性剤の例には、Ingepal CO-630お
よびIngepal CO-710などのIngepalのCOシリーズ;ノニルフェニ
ルおよびエトキシル化アルコール、例えば、Tergitol 15-S-9およびTe
rgitol 15-S-12が含まれる。
【0049】
ポリオレフィンエマルジョン中の水の量は、一般に、エマルジョンの所望の濃度に応じ
て変動するが、一般に、ポリオレフィンエマルジョンの総重量に基づいて、約40~約8
0重量%、例えば、約50~約70重量%、および代替的に約60~約65重量%である
。
【0050】
好ましくは、塩基は、一般に、エマルジョンに添加されて、水溶液を塩基性にし、典型
的には、第三級アミンおよび水酸化カリウムなどの標準的な塩基から選択される。塩基の
量は、最大約10重量%、例えば、約1~8重量%、約2~約6重量%、および代替的に
約3~約4重量%の範囲であり得る。
【0051】
ポリオレフィンエマルジョンは、漂白剤または美白剤、例えば、メタ重亜硫酸ナトリウ
ムなどの他の成分も含有し得る。漂白剤や美白剤は、一般に必要とされないが、少量で色
が落ちることがよくある。漂白剤の濃度は、約1重量%、例えば、約0.1~約0.5重
量%、および代替的に約0.2~約0.4重量%と高くてもよい。
【0052】
アクリルエマルジョン成分とポリオレフィンエマルジョンとのブレンド組成物の形成
アクリルエマルジョン成分およびポリカルボン酸化合物で官能化されたポリオレフィン
出発材料を乳化することにより調製されたポリオレフィンエマルジョン成分は、様々な手
段、例えば、インライン混合機としても既知の静的混合機、または撹拌タンクなどの混合
機により一緒にブレンドされて、水性系ブレンド組成物、硬化性組成物を形成する。
【0053】
本発明の硬化性水性組成物は、好ましくは、ホルムアルデヒドを含まない硬化性組成物
である。本明細書における「ホルムアルデヒドを含まない組成物」とは、組成物が実質的
にホルムアルデヒドを含まず、乾燥および/または硬化の結果として実質的なホルムアル
デヒドを遊離しないことを意味する。硬化性組成物のホルムアルデヒド含有量を最小限に
抑えるために、本発明のエマルジョンポリマーを調製する場合、例えば、それ自体はホル
ムアルデヒドを含まず、重合プロセス中にホルムアルデヒドを生成せず、基材の処理中に
ホルムアルデヒドを生成または放出しない開始剤、還元剤、連鎖移動剤、殺生物剤、界面
活性剤などの重合補助剤を使用することが好ましい。低レベルのホルムアルデヒドが水性
組成物に許容される場合か、またはホルムアルデヒドを生成もしくは放出する補助剤を使
用するための説得力のある理由が存在する場合、そのような組成物が使用され得る。
【0054】
硬化性水性組成物は、さらに、従来の処理成分、例えば、乳化剤、顔料、充填剤または
増量剤、移動防止助剤、硬化剤、凝集剤、界面活性剤、殺生物剤、可塑剤、オルガノシラ
ン、消泡剤、腐食防止剤、着色剤、ワックス、本発明のものではない他のポリマー、およ
び酸化防止剤などを含有し得る。
【0055】
本発明の一態様では、a)本発明の硬化性水性組成物を形成することと、b)可撓性基
材を硬化性水性組成物と接触させることと、c)硬化性水性組成物を120~220℃の
温度で加熱することと、を含む、処理された基材を形成するための方法が提供される。可
撓性基材には、紙、皮、織布または不織布;フェルトおよびマットまたは繊維の他の集合
体、ならびに繊維が含まれる。繊維を含む基材には、綿、合成繊維、例えば、ポリエステ
ルおよびレーヨン、ガラス、それらの混合物などが含まれ得る。可撓性基材は、例えば、
エアスプレーまたはエアレススプレー、パディング、飽和、ロールコーティング、カーテ
ンコーティング、印刷などの従来の塗布技法を使用して硬化性水性組成物と接触させられ
る。硬化性水性組成物を120~220℃、好ましくは150~180℃の温度で、許容
レベルの硬化を達成するのに十分な時間、例えば、1分~20分間、好ましくは2分~1
0分間加熱することが実行される。乾燥および硬化機能は、所望される場合、2つ以上の
異なるステップで実行され得る。例えば、組成物を最初に、実質的に乾燥するが組成物を
実質的に硬化しないのに十分な温度で十分な時間の間加熱し、次いで、2回目として、よ
り高い温度および/またはより長い時間の間加熱して硬化を実行することができる。「B
ステージング」と称されるそのような手順を使用して、バインダー処理された不織布を、
例えば、特定の形状に形成または成形するかどうかに関係なく後の段階で硬化プロセスと
同時に硬化できるロール形態で提供し得る。
【実施例0056】
I.原材料
使用される略語:DI水=脱イオン水、CD=横方向、SC=固形含有量、BA=ブチ
ルアクリレート、Sty=スチレン、IA=イタコン酸、AA=アクリル酸;597Pは
、Honeywellの無水マレイン酸変性ポリプロピレンであるAC(商標)597P
から作製された、39%のSCおよび63mg KOH/gの酸価を有するポリオレフィ
ンエマルジョンである。
950Pは、Honeywellの無水マレイン酸変性ポリプロピレンであるAC(商
標)950Pから作製された、39%のSCおよび33mg KOH/gの酸価を有する
ポリオレフィンエマルジョンである。
COHESA(商標)3050エマルジョンは、Honeywellのエチレン-アク
リル酸コポリマー(EAA)分散液であり、40%のSCおよび50mg KOH/gの
酸価を有する。
アクリルエマルジョンの実施例1は、重合単位として、67.5%のStyと、27.
5%のBAと、3%のAAと、2%のIAとを含み、45%のSCを有するポリマーであ
る。
TRITON(商標)X-100は、Dow Chemical Companyの界
面活性剤である。
WHATMAN(商標)定性フィルター紙No.4は、GE Healthcareブ
ランドの製品である。
【0057】
II.試験方法
湿潤引張強度試験
表1の配合に従って、硬化性水性組成物を得るために、原料を15分間適切に撹拌して
配合した。
【0058】
WHATMAN(商標)(商標)定性フィルター紙No.4(28cm×46cm)の
一片を、硬化性組成物である300mLの配合エマルジョンに浸漬した。処理された紙を
Mathisパダーでパディングした後、次いで、乾燥させ、150℃で3分間硬化した
。紙上への硬化性組成物の添加を14~16%の間で制御した。硬化した紙を1インチ×
4インチの断片に切断し、4インチの方向は、紙の横(CD)方向である。試験片の引張
強度は、Instron5943テスターで0.1%TRITON(商標)X-100/
水溶液に30分間浸漬する処理で試験された。湿潤強度は、バインダーの水に対する耐性
を反映する。データを記録した。
【表1】
【0059】
III.結果
各硬化性組成物の湿潤強度データを表2に記録した。
【表2】
【0060】
ポリオレフィンを含まない比較硬化性組成物1と比較して、4.36%~25%の特別
に選択されたポリオレフィンである無水マレイン酸変性ポリプロピレンを個別に含む例示
的な硬化性組成物の実施例1~7は、湿潤強度の改善を示し、そのようなポリオレフィン
の使用量が多いほど、より良好な湿潤強度である傾向があった。
【0061】
比較硬化性組成物の実施例2は、過剰投与ポリオレフィンを使用し、その湿潤強度は許
容できない。
【0062】
比較硬化性組成物の実施例3~4は、異なるポリオレフィンであるエチレン-アクリル
酸コポリマーを使用し、それらの湿潤強度は両方とも許容できない。
【0063】
例示的な硬化性組成物の実施例2を、50℃のオーブンで15日間さらに熟成させた。
その湿潤強度データは、その元の(熟成させる前の)データに非常に近い。結果は、本開
示の硬化性組成物が良好な貯蔵安定性を有することを示した。
例示的な硬化性組成物の実施例2を、50℃のオーブンで15日間さらに熟成させた。その湿潤強度データは、その元の(熟成させる前の)データに非常に近い。結果は、本開示の硬化性組成物が良好な貯蔵安定性を有することを示した。
本願発明には以下の態様が含まれる。
項1.
硬化性組成物であって、前記硬化性組成物の総乾燥重量に基づいて70~99乾燥重量%のアクリルエマルジョン成分と、前記硬化性組成物の前記総乾燥重量に基づいて1~30乾燥重量%の、ポリカルボン酸化合物で官能化されたポリオレフィン出発材料を乳化することにより調製されたポリオレフィンエマルジョン成分と、を含む、硬化性組成物。
項2.
前記アクリルエマルジョン成分が、アクリルモノマーの総重量に基づいて0.25~10重量%の共重合エチレン性不飽和カルボン酸モノマーを含む、項1に記載の硬化性組成物。
項3.
前記共重合エチレン性不飽和カルボン酸モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸モノメチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノブチル、および無水マレイン酸からなる群から選択される、項2に記載の硬化性組成物。
項4.
前記ポリオレフィン出発材料が、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、5-エチル-1-ヘキセン、6-メチル-1-ヘプテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、および1-デセンの熱分解されたホモポリマーおよびコポリマーからなる群から選択される、項1に記載の硬化性組成物。
項5.
前記ポリオレフィン出発材料が、ポリプロピレンである、項4に記載の硬化性組成物。
項6.
前記ポリオレフィン出発材料が、プロピレンおよびエチレンのコポリマーであり、エチレンの重量濃度が、10%未満である、項4に記載の硬化性組成物。
項7.
前記ポリカルボン酸化合物が、不飽和ポリカルボン酸、その無水物、およびそのエステルである、項1に記載の硬化性組成物。
項8.
前記ポリカルボン酸化合物が、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水シトラコン酸、無水アコニット酸、無水イタコン酸、マレイン酸ジメチル、フマル酸ジメチル、マレイン酸メチルエチル、マレイン酸ジブチル、マレイン酸ジプトピル、およびクエン酸からなる群から選択される、項1に記載の硬化性組成物。
項9.
前記エチレン性不飽和ポリカルボン酸化合物が、無水マレイン酸である、項8に記載の硬化性組成物。
項10.
前記組成物が、ホルムアルデヒドを含まない、項1~9のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
項11.
基材を形成するための方法であって、a)硬化性水性組成物を形成することであって、前記硬化性水性組成物が、前記硬化性組成物の総乾燥重量に基づいて70~99乾燥重量%のアクリルエマルジョン成分と、前記硬化性組成物の前記総乾燥重量に基づいて1~30乾燥重量%の、ポリカルボン酸化合物で官能化されたポリオレフィン出発材料を乳化することにより調製されたポリオレフィンエマルジョン成分とを含む、形成することと、b)可撓性基材を前記硬化性水性組成物と接触させることと、c)前記硬化性水性組成物を120℃~220℃の温度で加熱することと、を含む、方法。
項12.
項11に記載の方法に従って形成された、処理された基材。