(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062062
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】心臓弁膜置換システムおよびその方法
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20220412BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022004461
(22)【出願日】2022-01-14
(62)【分割の表示】P 2018548054の分割
【原出願日】2017-03-08
(31)【優先権主張番号】62/305,204
(32)【優先日】2016-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/413,693
(32)【優先日】2016-10-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/427,551
(32)【優先日】2016-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】319000573
【氏名又は名称】スートラ メディカル,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ファム,トゥイ
(72)【発明者】
【氏名】サン,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン,ケイトリン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,キアン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】心臓の心周期中に心臓弁を通る血流を調整するために開放形態と閉鎖位置との間を動く生来の前尖および後尖を有する病的な心臓弁の処置のための人工心臓弁が提供される。
【解決手段】半月形のステント、ステントの内側表面上に据え付けられた少なくとも1つの人工弁尖、およびステントフレームの下部の心室部分に少なくとも1つの人工弁尖の一部を連結する少なくとも1つの突起構造を有する人工心臓弁が提供される。生来の弁膜の弁輪の後部にステントの上部のフレア状の部分を固定するためのシステムをさらに有する人工心臓弁が提供される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
心臓の心周期中に心臓弁を通る血流を調整するために開放形態と閉鎖位置との間を動く生来の前尖および後尖を有する病的な心臓弁の処置のための人工心臓弁であって、該人工心臓弁は:
圧縮位置から拡張された動作位置へと選択的に拡張可能な半月形のステントであって;該ステントは、上部のフレア状の部分および下部の心室部分を有し、ここで上部のフレア状の部分は、病的な心臓弁の生来の弁輪の後部に重なるように構成され、下部の心室部分の少なくとも一部は、上部のフレア状の部分から伸長して心臓の心室の部屋に入り、下部の心室部分の少なくとも一部は、少なくとも1つの生来の弁尖の部分に接して位置づけられ、動作位置への拡張で少なくとも1つの生来の弁尖を血流から変位させる、ステント;
ステントの内側表面に据え付けられた少なくとも1つの人工弁尖であって、各弁尖は遊離端、2つの交連付着領域、付着端、接合領域および腹部領域を含み、ここで弁膜が閉鎖位置にある時、少なくとも1つの人工弁尖が少なくとも1つの生来の弁尖に接合して、弁膜を通って血液が逆流するのを防ぐように、少なくとも1つの人工弁尖は心周期の全体にわたって可動性を有するように構成され、動作位置において少なくとも1つの人口弁尖とステントの接合部が、弁尖接合を促進しかつ心周期中の弁尖圧力を低減するように構成される3次元の弁尖-ステント付着曲線を形成するように、少なくとも1つの人工弁尖はステントに据え付けられる、人口弁尖;、
および、少なくとも1つの人口弁尖の一部を、ステントの下部の心室部分に連結するように構成される少なくとも1つの突起構造、
を含む、人工心臓弁。
【請求項2】
ステントは放射状に折り畳み可能および拡張可能であることを特徴とする、請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項3】
上部のフレア状の部分の少なくとも一部、および下部の心室部分の少なくとも一部は、所望の動作位置へと拡張可能であることを特徴とする、請求項2に記載の人工心臓弁。
【請求項4】
上部のフレア状の部分の少なくとも一部、および下部の心室部分の少なくとも一部は、生来の弁輪の形を選択的に変えるように構成されることを特徴とする、請求項2に記載の人工心臓弁。
【請求項5】
動作位置では、上部のフレア状の部分は、病的な心臓弁のAC前交連およびPC後交連に及ぶことを特徴とする、請求項3に記載の人工心臓弁。
【請求項6】
動作位置では、上部のフレア状の部分は、病的な心臓弁の生来の弁輪の円周をカバーすることを特徴とする、請求項3に記載の人工心臓弁。
【請求項7】
動作位置では、下部の心室部分は、病的な心臓弁のAC前交連およびPC後交連に及ぶことを特徴とする、請求項3に記載の人工心臓弁。
【請求項8】
動作位置では、下部の心室部分は部分的な円柱形状を有することを特徴とする、請求項3に記載の人工心臓弁。
【請求項9】
動作位置では、下部の心室部分は部分的な円錐形状を有することを特徴とする、請求項3に記載の人工心臓弁。
【請求項10】
動作位置では、下部の心室部分は円周の長さに沿って異なる高さを有することを特徴とする、請求項3に記載の人工心臓弁。
【請求項11】
下部の心室部分は、病的な心臓弁の変位した弁尖の放射長さの、約0.5~約1.5倍の範囲の高さを有することを特徴とする、請求項3に記載の人工心臓弁。
【請求項12】
動作位置では、上部のフレア状の部分の外径は、下部の心室部分の内径よりも約5~15mm大きいことを特徴とする、請求項3に記載の人工心臓弁。
【請求項13】
半月形のステントは、残存する生来の弁尖の動的な運動および人工弁尖との接合を可能にすることを特徴とする、請求項2に記載の人工心臓弁。
【請求項14】
少なくとも1つの人工弁尖は、ステントの下部の心室部分の内側表面に据え付けられることを特徴とする、請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項15】
少なくとも1つの人工弁尖は複数の人工弁尖を含むことを特徴とする、請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項16】
複数の人工弁尖の各人工弁尖は、同じ形状を有することを特徴とする、請求項15に記載の人工心臓弁。
【請求項17】
複数の人工弁尖の少なくとも1つの人工弁尖は、異なる形状を有することを特徴とする、請求項15に記載の人工心臓弁。
【請求項18】
各人工弁尖は可撓性であり、および心臓弁を通る血流を調整するために開放形態と閉鎖位置との間を動くように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項19】
少なくとも1つの突起構造は複数の突起構造を含むことを特徴とする、請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項20】
少なくとも1つの突起構造は弁尖の遊離端に連結されることを特徴とする、請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項21】
少なくとも1つの突起構造は腹部部分に連結されることを特徴とする、請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項22】
各人工弁尖は、少なくとも1つの人工弁尖と生来の弁尖との間の接合ゾーンを増大させるように構成される遊離端から伸長する伸張組織をさらに有することを特徴とする、請求項15に記載の人工心臓弁。
【請求項23】
複数の突起構造は、伸張組織に動作可能に連結されるように構成されることを特徴とする、請求項22に記載の人工心臓弁。
【請求項24】
上部のフレア状の部分は、上部のフレア状の部分を通って伸長する複数の開口部を画定し、生来の弁輪の後部に上部のフレア状の部分を固定するための手段をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項25】
固定するための手段は、生来の弁輪内に固着させられ、および複数の開口部を介して、上部のフレア状の部分を生来の弁輪に対して固着するように構成される、複数のアンカーを含むことを特徴とする、請求項24に記載の人工心臓弁。
【請求項26】
各アンカーは遠位部と近位部を含み、各アンカーの遠位部は、生来の弁輪組織に植え込まれ、および植え込み後の分離に抵抗するように構成されることを特徴とする、請求項25に記載の人工心臓弁。
【請求項27】
アンカーの近位部は、テザーの取り付けのために構成されたスロットを画定することを特徴とする、請求項26に記載の人工心臓弁。
【請求項28】
各アンカーは、アンカーに人工心臓弁を配置かつ固定するように構成された細長いテザー部をさらに含むことを特徴とする、請求項25に記載の人工心臓弁。
【請求項29】
ステントは内側表面と外側表面を有し、およびステントの内側表面および/または外側表面の少なくとも一部に連結されたスカートをさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項30】
少なくとも1つの人工弁尖の付着端は、スカートを介してステントに取り付けられ、および少なくとも1つの突起構造はスカートを介してステントに取り付けられることを特徴とする、請求項24に記載の人工心臓弁。
【請求項31】
心臓の心周期中に心臓弁を通る血流を調整するために開放形態と閉鎖位置との間を動く生来の前尖および後尖を有する病的な心臓弁の処置のための人工心臓弁であって、該人工心臓弁は:
圧縮位置から拡張された動作位置へと選択的に拡張可能な半月形のステントであって;該ステントは、上部のフレア状の部分および下部の心室部分を有し、ここで上部のフレア状の部分は、病的な心臓弁の生来の弁輪の後部に重なるように構成され、動作位置では、上部のフレア状の部分は病的な心臓弁のAC前交連およびPC後交連に及び、下部の心室部分の少なくとも一部は上部のフレア状の部分から伸長して心臓の心室の部屋に入り、下部の心室部分の少なくとも一部は少なくとも1つの生来の弁尖の部分に接して位置づけられ、動作位置への拡張で少なくとも1つの生来の弁尖を血流から変位させる、ステント;
生来の弁輪の後部にステントの上部のフレア状の部分を固定するための手段;
ステントの内側表面上に据え付けられた少なくとも1つの可撓性の人工弁尖であって、ここで弁膜が閉鎖位置にある時、少なくとも1つの可撓性の人工弁尖が少なくとも1つの生来の弁尖に接合して、弁膜を通って血液が逆流するのを防ぐように、少なくとも1つの可撓性の人工弁尖は心周期の全体にわたって可動性を有するように構成される、可撓性の人口弁尖;、
および、少なくとも1つの可撓性の人口弁尖の一部を、ステントの下部の心室部分に連結するように構成された少なくとも1つの突起構造、
を含む、人工心臓弁。
【請求項32】
上部のフレア状の部分は、上部のフレア状の部分を通って伸長する複数の開口部を画定することを特徴とする、請求項31に記載の人工心臓弁。
【請求項33】
固定するための手段は、生来の弁輪内に固着させられ、および上部のフレア状の部分の開口部を通って伸長するように構成される、複数のアンカーを含むことを特徴とする、請求項32に記載の人工心臓弁。
【請求項34】
各アンカーは遠位部と近位部を含み、各アンカーの遠位部は、生来の弁輪組織に植え込まれ、および植え込み後の分離に抵抗するように構成されることを特徴とする、請求項33に記載の人工心臓弁。
【請求項35】
アンカーの近位部は、テザーの取り付けのために構成されたスロットを画定することを特徴とする、請求項34に記載の人工心臓弁。
【請求項36】
各アンカーは、複数のアンカーに人工心臓弁を配置かつ固定するように構成された細長いテザー部をさらに含むことを特徴とする、請求項34に記載の人工心臓弁。
【請求項37】
動作位置では、下部の心室部分は部分的な円柱形状を有することを特徴とする、請求項31に記載の人工心臓弁。
【請求項38】
動作位置では、下部の心室部分は部分的な円錐形状を有することを特徴とする、請求項31に記載の人工心臓弁。
【請求項39】
半月形のステントは、残存する生来の弁尖の動的な運動および人工弁尖との接合を可能にすることを特徴とする、請求項31に記載の人工心臓弁。
【請求項40】
少なくとも1つの人工弁尖は、ステントの下部の心室部分の内側表面に据え付けられることを特徴とする、請求項31に記載の人工心臓弁。
【請求項41】
ステントは内側表面と外側表面を有し、およびステントの内側表面および/または外側表面の少なくとも一部に連結されたスカートをさらに含むことを特徴とする、請求項31に記載の人工心臓弁。
【請求項42】
少なくとも1つの人工弁尖は、スカートを介してステントに取り付けられ、および少なくとも1つの突起構造はスカートを介してステントに取り付けられていることを特徴とする、請求項36に記載の人工心臓弁。
【請求項43】
動作位置において、少なくとも1つの可撓性の人口弁尖とステントの接合部が、弁尖接合を促進し、かつ心周期中の弁尖圧力を低減するように構成される3次元の弁尖-ステント付着曲線を形成するように、少なくとも1つの可撓性の人工弁尖はステントに据え付けられることを特徴とする、請求項31に記載の人工心臓弁。
【請求項44】
各アンカーは、動作可能に位置づけられたアンカーにおいて動作位置に人工心臓弁を固着させるための複数のロック部材を位置づけ、および固定するように構成された細長いテザー部をさらに含むことを特徴とする、請求項33に記載の人工心臓弁。
【請求項45】
人工心臓弁の展開に続いて、複数のロック部材を同時に展開するように構成されたロックデリバリーシステムを含むデリバリーシステムをさらに含むことを特徴とする、請求項31に記載の人工心臓弁。
【請求項46】
ロックデリバリーシステムは:
複数のロック支持カテーテル;
複数のロックデリバリーカテーテル;
複数のロックハウジング構造;
および複数のロックデリバリーカテーテルハンドル、
を含むことを特徴とする、請求項45に記載の人工心臓弁。
【請求項47】
複数のロック部材は、それぞれのロック支持カテーテルおよびロックデリバリーカテーテルを一緒に束ねるように構成された連係構造を使用して同時に展開され;連係構造は、主要なデリバリーカテーテル内に位置づけられ、およびロックデリバリーカテーテルハンドルを使用して操作されるように構成されることを特徴とする、請求項46に記載の人工心臓弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して置換心臓弁に関し、好ましくは病的な僧帽弁および/または三尖弁膜の置換に関する。より具体的には、本主題の実施形態は、組織ベースの置換心臓弁、および置換心臓弁を動作可能に運ぶためのシステムと方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1を参照すると、僧帽弁(MV)はヒトの心臓の左心房(LA)と左心室(LV)の間に位置し、通常は僧帽弁輪(MA)、2つの弁尖、腱索(「腱」)、2つの乳頭筋、および左心室の心筋層から成る。僧帽弁輪は前部と後部に細分される。通常、僧帽弁前尖(AML)は、大動脈僧帽弁のカーテンを介して大動脈弁に連結され、および僧帽弁後尖(PML)は後部の僧帽弁輪に定められている。腱は、2つの大乳頭筋(PPM)または心室壁に付いている多数の小さな筋束から始まり、僧帽弁膜の遊離端につながる。腱は主としてコラーゲン束で構成されており、それは腱に高い剛性を付与し、かつ最小限の伸長を維持して弁尖が心収縮中に左心房の中にうねるのを防ぐ。さらに、正常な僧帽弁は右と左の三角部から成り、それは線維組織から成る厚みのある2つの領域である。右線維三角は大動脈輪と右房室輪の間にあり、および左線維三角は大動脈輪と左房室輪の間にある。
【0003】
僧帽弁が閉じている時、前尖と後尖のそれぞれは緊密に接触した状態にあり、単一の“zone of apposition”を形成する。当業者によって理解されるであろうように、正常な僧帽弁機能は適切な力平衡に関わり、その各構成要素が心周期中に合同的に機能する。腱索断裂、弁輪膨張、乳頭筋変位、弁尖石灰化および粘液腫の疾患などの、僧帽弁の構成要素のいずれかに影響を与える病的な変質は、僧帽弁機能に変化をもたらし、および僧帽弁逆流(MR)を引き起こし得る。
【0004】
僧帽弁逆流は、心収縮中(すなわち、血液が左心室から大動脈に移動する心臓サイクルの排出段階)に、左心室から左心房へと逆流する血液の異常な漏出を引き起こす僧帽弁の機能不全である。些細な僧帽弁逆流は健康な患者にも起こり得るが、中度から重度の僧帽弁逆流は心臓弁膜症の最もよく見られる形態の1つである。僧帽弁逆流の最も一般的な原因には、虚血性心疾患、非虚血性心疾患、および弁膜変性が含まれる。虚血性(主に冠動脈疾患に起因)および非虚血性(例えば特発性拡張型心筋症)の心臓疾患は、左心室壁運動不全、左心室膨張、および乳頭筋の変位と機能不全を含む様々なメカニズムを通じて機能性または二次性の僧帽弁逆流をもたらし得る。機能性僧帽弁逆流では、僧帽弁器官は正常なままである。弁尖の不完全な接合は、左心室拡張および場合によっては左心房拡大に付随して起こる僧帽弁輪の拡大に起因する。加えて、機能性僧帽弁逆流を有する患者は、左心室拡大による乳頭筋変位を示し得、それは結果として弁尖の過度の係留をもたらす。対照的に、変性による(または一次性)僧帽弁逆流は、僧帽弁膜および/または弁下の器官の構造的異常によって引き起こされ、腱索の伸長または断裂を含み得る。
【0005】
僧帽弁疾患に対する現在の治療法には、僧帽弁の外科的修復および置換が含まれる。僧帽弁の力学と機能の理解が深まったことで、現在、完全な僧帽弁置換よりも僧帽弁修復が好まれる場合もある。しかしながら、僧帽弁とその周囲の構造の複雑な生理機能および3次元的な解剖学的構造は、これらの修復手術を行なう際に相当な難題を提示する。
【0006】
経カテーテル僧帽弁置換デバイスの初期の例の1つでは、Endovalve-Herrmann(Micro Interventional Devices,Inc.)が、ニチノールを主成分とし、シーリングスカート(sealing skirt)を伴う折りたたみ式の弁を有する僧帽弁人工器官を開発した。同様に、Tendyne Holdings,Inc.は、ウシの心膜を含み、自己拡張可能なニチノールステントを伴う人工僧帽弁置換デバイスを製造している。デバイスは経心尖デリバリー用に設計されており、および心室固定アンカーを有する。CardiAQは、僧帽弁置換デバイスに、自己拡張可能なニチノールステントと共にウシの心膜を使用している。最後に、Tiara(Neovasc,Inc.)は、アンカー構造を有する30Frカテーテルによって経心尖デリバリーが可能な僧帽弁置換システム、およびD形の心房部分と外側被膜を有する心室部分とを伴う自己拡張可能ステント上にウシの心膜を使用している。僧帽弁人工器官を動作位置へと送達するためのこれらのデバイスと技術は、依然として開発段階にあり、有望ではあるが、これらのデバイスの有効性に対する難題が存在し続けている。
【0007】
効果的な僧帽弁置換デバイスに対する有名な難題は、一般的に以下を含む:手術的な搬送に関する難題;位置づけと固着に関する難題;封着と弁傍の漏出に関する難題;および左心室流出路(LVOT)閉塞などの血行動態機能に関する難題。手術的な搬送の有名な難題に関しては、従来の僧帽弁人工器官は従来の大動脈人工器官より大きいため、より大きな僧帽弁人工器官を展開用のカテーテルに折りたたんで圧縮するのはより困難であり、また従来の経心尖デリバリーまたは経大腿動脈デリバリーのいずれの技術を用いても回収がより困難である。
【0008】
位置づけと固着に関する難題に目を向けると、僧帽弁は心周期中に高度の反復的な負荷にさらされ、それは心拡張時は0に近く、および心収縮中に120mmHg以上に上昇し、および大動脈弁狭窄症と全身性高血圧を有する患者では150mmHgを超える収縮期圧に上昇し得る、高い弁内外圧力勾配を伴うことを考慮すると、不安定性と移動は最も顕著な障壁である。僧帽弁輪におけるカルシウム分布の不足はさらに、デバイスの安定性と固定に影響を与える。さらに、経カテーテル僧帽弁置換は、各鼓動サイクル中に心臓が動くのに伴って容易に移動し得る。
【0009】
封着および弁傍の漏出に関しては、僧帽弁の弁輪が大きいため、弁傍の漏れを最小化する、生来の弁輪と人工器官との間の良好な適合が望ましい。典型的には、人工僧帽弁は、不確実ではあるが漏出を防ぎ得る大きくて張り出している心房部分またはフレアを有してもよく、さらに人工器官が生来の僧帽弁においてしっかりと嵌合し得るように心室レベルにおいて大きな弁膜サイズを必要とする。従来、人工僧帽弁は病的な生来の弁膜より小さく、および大きな生来の僧帽弁輪を補うために、追加の物質が人工弁の周囲に加えられる。不必要にも、人工弁により多くの物質を加えることでデリバリーシステムのサイズが増大する。
【0010】
最後に、血行動態機能の保全に関して、上記のように慣例的に大きな人工僧帽弁の効果的位置づけは、僧帽弁輪の前方部分においてLVOTを妨害すべきでなく、および生来の僧帽弁の関連付けられた構造に干渉すべきではない。
【0011】
従って、従来の人工弁の欠点および欠陥に悩まされない心臓弁膜置換システムがあれば有用であろう。生来の僧帽弁輪に人工の僧帽弁置換システムを固定することが望ましい。さらに、僧帽弁人工器官の配置を改善し、および僧帽弁人工器官と生来の僧帽弁との間の血液の漏出を防ぐことが望ましい。同様に、生来の僧帽弁輪のさらなる拡張を防ぐことが望ましい。さらに、他の望ましい特徴および特性は、添付の図面および先行技術分野と背景と合わせて、続く詳細な説明および添付の請求項から明白になるだろう。
【発明の概要】
【0012】
本明細書に記載されるのは、心臓弁膜置換システム、および生来の弁輪の1つに心臓弁膜置換システムを固定する方法である。生来の弁輪の1つに心臓弁膜置換システムを固定する方法は、弁輪から弁膜置換システムが移動するのを防ぎ、かつ植え込まれた人工弁尖と残存する生来の弁尖との間を確実に適切に接合をするように構成されることが熟慮される。弁膜置換デバイスは開放外科手術によって植え込み可能、またはカテーテルによって経管的に植え込み可能であることが熟慮される。一態様では、心臓弁膜置換システムは、生来の僧帽弁輪に人工の僧帽弁を固定するように構成され得る。さらなる態様では、関連方法は、人工置換弁を植え込み、かつ生来の僧帽弁輪のさらなる拡張を防ぐ一助となるように構成され得る。明確にするために、本開示は機能性僧帽弁逆流の処置に焦点を置くが、心臓弁膜置換システムおよび関連方法は、他の弁膜疾患の症状を処置し、かつヒト心臓の他の弁膜を置換するために使用され得ること、またはそうでなければ使用されるように構成される得ること、または弁膜の欠陥に苦しむ他の哺乳動物にも同様に使用されてもよいこと、またはそうでなければ使用されるように構成されてもよいことが熟慮されると理解されよう。
【0013】
一態様では、心臓弁膜置換システムは、デリバリーシース内にぴったり合うように巻縮(crimp)され、およびその後、いったん心臓内でデリバリーシースから取り除かれると動作可能な大きさと位置まで選択的に拡大するように構成可能な、または大きさにすることができる置換人工僧帽弁を含み得る。さらなる態様では、人工僧帽弁の少なくとも一部はステント形状を有し得、それは上部のフレア状の心房部分および下部の垂直な心室部分を含み得る。一態様では、上部のフレア状の部分は、ステントの固定を容易にするように構成され得、弁傍の漏出およびステントの移動を防止する一助となり得る。さらに、下部の心室部分は、血流路から病的な生来の弁尖を変位させ、および少なくとも1つの人工弁尖を収容することができる。別の態様では、人工僧帽弁は、ステントの内側および/または外側表面の少なくとも一部に連結可能な内側スカートを含み得る。1つの典型的な態様では、少なくとも1つの人工弁尖は、ステントの内側ルーメンに、および/またはステントの外側の少なくとも一部に据え付けることができ、それは正常な弁膜機能を修復するために、例えば僧帽弁逆流の防止機能を修復するために、少なくとも1つの生来の弁尖の代わりとして機能し得る。
【0014】
一態様では、人工僧帽弁の少なくとも1つの弁尖は、弁膜が心房内へとうねり、かつ逸脱するのを防ぐ少なくとも1つの突起形の構造を有し得る。少なくとも1つの突起形の構造はさらに、心収縮中の弁尖接合の十分な長さと高さ、および適切な弁尖角度を伴った、生来の僧帽弁の十分な解剖学的閉鎖構造を再現するために、人工弁尖の圧力を減らし、かつ生来の僧帽弁膜の少なくとも1つとの接合を容易にするように作用する。
【0015】
一態様では、人工僧帽弁の搬送は、例えば、限定されないが、外科的アプローチ、経中隔アプローチ、経心房アプローチ、または経心尖アプローチなどのいくつかの望ましいデリバリーアクセスアプローチを使用して行なうことができる。1つの典型的な態様では、経中隔アプローチは、心臓の右心房に流れ込む、上大静脈を通じた心臓弁膜置換システム部分の続く最小限の侵襲による搬送のために、内頚静脈または大腿静脈に開口部を形成することを含み得る。この典型的な態様では、経中隔アプローチのアクセス経路は心臓の心房中隔を横断し、およびいったん達すると、心臓弁膜置換システムのコンポーネントは左心房、生来の僧帽弁および左心室に動作可能に位置づけられ得る。一態様では、合併症なく、心臓弁膜置換システムの所望のコンポーネントが左心房内に動作可能に位置づけられることを可能にするアクセス経路内に、主要なデリバリーカテーテルが配置され得ることが熟慮される。
【0016】
一態様では、複数の固定部材を、置換人工弁の搬送に先立って、生来の弁輪の所望の位置に動作可能に位置づけ、かつ植え込むことができる。この態様では、固定部材は、置換人工弁のその後の位置づけと固定を向上させることができる。さらなる態様では、複数の固定部材は、動作可能に位置づけられた人工僧帽弁と生来の僧帽弁との間の血液の漏出を防ぐ一助となり得る。
【0017】
典型的な態様では、固定部材はアンカーでよく、近位部と遠位部を有する。さらなる態様では、各アンカーは環状組織に動作可能に挿入および植え込まれ得る。一態様では、アンカーの遠位部は、環状組織に完全にまたは部分的に植え込まれ得る。一態様では、遠位部はアンカーの近位部に連結可能である。この態様では、アンカーの遠位部は、アンカーに人工弁を連結する橋として作用する可撓性のコンポーネントを収容するように構成することができる。この態様では、可撓性のコンポーネントは、人工僧帽弁を生来の僧帽弁へと正確に誘導し、かつ安全に巧みに移動させるための手段として使用することができる。
【0018】
さらなる態様では、可撓性コンポーネントはテザーでもよく、テザーの一端がアンカーの近位部に取り付けられ、およびテザーの別の端部が体内から出ることができるように構成される。その後、人工僧帽弁は、ステントの上部のフレア状の部分がアンカーに近接するように、テザーをわたって運ばれ、およびアンカーの上に位置づけられ得る。
【0019】
一態様では、複数のロック装置は複数のテザーを通じて運ばれ、および人工弁の搬送直後にステントの上部のフレア状の部分上に位置づけられることが熟慮される。この態様では、アンカーの近位部に連結されたテザーの一部は、人工弁の上部のフレア状の部分を通過し、そしてロック装置に入り、それはテザーに係合し、および複数のアンカーに対して動作位置のステントを固定する。ロック装置を出るテザーの部分はその後、従来の縫合に似た切断装置を使用して取り除くことができる。
【0020】
したがって、この態様では、人工弁用のデリバリーシステムは、弁膜カテーテル用のデリバリー経路として収容および作動可能な主要な偏向可能デリバリーカテーテル、複数のアンカーのデリバリー用アセンブリ、および人工僧帽弁と複数のロック装置のデリバリー用アセンブリを含み得る。
【0021】
一態様では、ロック装置は、ステントおよび固定部材とは別個の構造であり得る。1つの典型的な態様では、ロック装置は管状構造として構成することができ、それは、管状構造の1つの側から放射状に内側へ伸長し、および管状構造の反対側に対してきつく接触する1つ以上のタブを使用して、少なくとも1つのテザー上にきつく締めることができる。テザーは、テザーのずれを防ぐために摩擦と軸抵抗を増大させるように構成される一列になった雄突部を有し得る。この態様では、管状のロック装置は、ロックデリバリーシステムを使用して運ばれ、および解放され得る。
【0022】
ロックデリバリーシステムは、ロック支持カテーテルおよびロックデリバリーカテーテルを含み得る。ロック支持カテーテルは堅い部分と可撓性の部分を含み得る。この態様では、堅い部分は1つ以上のタブを開くように、つまりテザーが通り抜けられるようにロック装置の壁の方にタブを押し、それによってテザーに沿ったロック装置の摺動を促進するように、構成され得る。ロック支持カテーテルの可撓性部分は、カテーテルが容易に屈曲し曲がることを可能にし、それは弁輪のまわりの異なる位置でのロック装置の搬送を促し得ることが理解されよう。この態様では、ロックデリバリーカテーテルは可撓性カテーテルであり得、それはロック支持カテーテルの堅い部分からロック装置を押し出すように従来の方式で操作され得、そうするとタブが解放され、およびロック装置の管状構造内のテザーにつかまることができ、テザーに沿った場所に効果的にロックする。
【0023】
弁内外の流れを最小化し、それによって手術中の弁膜塞栓血症のリスクを減らすために、高頻度心室ペーシング(180-220拍/分)がしばしば経カテーテル心臓弁の植え込み中に行われることに留意されたい。高頻度ペーシングに使用される時間は最小であり、患者へのリスクを最小化するために通常14~29秒である。人工僧帽弁は、本発明のデリバリーシステムを使用して、25秒の高頻度ペーシング内で生来の僧帽弁に展開および固定され得ることが熟慮される。テザーに取り付けられた複数のアンカーの経カテーテル展開に続いて、デリバリーシステムは置換人工僧帽弁の正確な展開、複数のロック装置の同時搬送、および置換人工僧帽弁へのロック装置の確実な取り付けを25秒内に提供し、続いて後続テザーの容易な除去を提供する。
【0024】
一態様では、複数のロック装置の同時搬送は、ロックハウジング構造を使用して達成することができる。この態様では、ロックハウジング構造は、複数のロックとロックカテーテルを収容するために、多数のルーメンを伴って構成され得る。この態様では、ロックハウジング構造はさらに、弁膜カテーテルに人工僧帽弁を装填するように構成され得ることが理解されよう。人工僧帽弁デバイスがより小さなサイズへと巻縮され、および弁膜デリバリーカテーテルに装填される場合、ロックハウジング構造は置換人工僧帽弁の上部のフレア状の部分の先端の最も近くに装填される。複数のロック装置およびロックカテーテルは、ロックハウジング構造に装填され得、置換人工弁の上部のフレア状の部分の先端に隣接して位置し、置換人工弁のすぐ後にロック装置が展開されることを可能にする。
【0025】
人工僧帽弁デリバリーの一態様では、テザーの一端に取り付けられた生来の弁輪へのアンカーの展開に続いて、依然として体外にあるテザーのもう1つの端部は、ステントの上部のフレア状の部分を通過し、およびロックカテーテル内に収容され得、それはその後、ロックハウジング構造に装填される。一態様では、ステントの上部のフレア状の部分内のテザーおよびロックカテーテルの収容は、テザー支持カテーテルを使用して容易に達成することができ、それは最終的には置換人工弁の解放に先立って体内から取り除かれる。
【0026】
ある随意の態様では、ロックハウジング構造は弁膜カテーテルに連結され、人工弁置換と弁膜カテーテルとの間の回転を防ぐ。付加的に、弁膜カテーテルは、搬送中に生来の僧帽弁内の標的とされた植え込み位置へと進むと共に回転することがないように構成され得る。この非回転機構の1つの利点は、主要な偏向可能デリバリーカテーテル内でテザーがもつれるのを防ぐことである。
【0027】
弁膜カテーテルを引き戻すことで、置換人工弁が解放される。この態様では、人工弁置換の遠位端の解放は経環的に(trans-annularly)達成され得る。人工弁置換の遠位端が部分的に解放された時、弁膜カテーテル全体が弁膜の弁輪にわたって位置づけられ得る。完全な弁膜解放は高頻度ペーシング中に行なうことができる。ロックカテーテルは置換人工弁の解放直後に解放される。
【0028】
ロックおよびロックカテーテルの解放は、ロックハウジング構造および主要なデリバリーシステムハンドルに連結された2つの連係構造の操作によって達成し得る。さらなる態様では、1つの連係構造は、ロックカテーテルからの同時の押し出しを可能にし、および第1の連係構造に隣接する第2連係構造は、置換人工僧帽弁の上部のフレア状の部分上にロック装置を解放することを可能にする。
【0029】
任意の縫合に似た切断装置を、ロック装置の近位部から出ている残存するテザーを切断するために使用可能であることが熟慮される。デリバリーシステム全体を取り除くことができ、および中隔閉鎖装置を用いて心房中隔の穴を閉じることができる。
【0030】
本開示に記載される様々な実装は、追加のシステム、方法、特徴および利点を含むことができ、必ずしもそれらを本明細書に明確に開示することはできないが、以下の詳細な説明および添付の図面を吟味すると当業者には明白になるだろう。全てのそのようなシステム、方法、特徴、および利点が本開示に含まれ、および添付の請求項によって保護されることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
以下の図の特徴およびコンポーネントは、本開示の一般的な原則を強調するために例示される。図を通して対応する特徴およびコンポーネントは、一貫性と明確さのために、参照符号を一致させて示され得る。
【
図1】生来の僧帽弁の解剖学的構造の斜視図であり、心臓内での僧帽弁(MV)の位置を示す。
【
図2】心臓弁膜置換システムの典型的な態様の斜視図であり、上部のフレア状の部分と下部の心室部分を有するステント、突起のある人工弁尖を示し、突起は人工弁尖をステント下部の心室部分に連結する。
【
図3】デバイスの外周寸法を明示する。僧帽弁前尖は3つのスカラップ(scallop)、すなわち(A1)、(A2)および(A3)に分けられる。僧帽弁後尖は3つのスカラップ、すなわち(P1)、(P2)および(P3)に分けられる。デバイスのフレア状の部分は、2つの交連、すなわちAC前交連およびPC後交連に及び、または動作可能に位置づけられた時に僧帽弁の全円周をカバーし得る。デバイスの心室部分は2つの交連に及び得、僧帽弁の後部全体をカバーする。
【
図4】コンピューターで生成した人工器官のモデルの斜視図であり、
図2のステントの上部のフレア状の部分と下部の心室部分を示し、明確さのためにスカートは取り付けられておらず、コンピューターで生成した心臓モデルに接している生来の僧帽弁輪の典型的な動作位置で示される。
【
図5】複数の細胞構造および隣接した細胞間の接合部から成るステントの1つの典型的な態様の斜視図であり、上部のフレア状の部分、下部の心室部分、および各人工弁尖を収容する部分を示す。一態様では、上部のフレア状の部分では、接合部またはアンカー開口部は、テザーコンポーネントを介して僧帽弁の位置にステントを搬送するのを容易にするように構成された穴を形成し得ることが、熟慮される。1つの典型的な態様では、穴は実質的に円形の形状であり得る。
【
図6】A-Eは、典型的なステントの設計の斜視図である。典型的に示されるように、ステントの下部の心室部分の高さは、特に2つの外側端部において変化し得る。随意に、ステントの下部の心室部分の細胞構造は、異なる形状および寸法であり得る。
【
図7】A-Cは、生来の弁尖を捕らえるための追加の機構を有する典型的なステントの設計の斜視図である。典型的に示されるように、ステントの遠位の心室部分は、周囲にある生来の弁尖を捕らえるために放射状に伸びるフック、逆刺、ケーブルなどを有し得る。捕獲コンポーネントは、ステントの下部の心室部分の円周に沿って均一に、またはステントの下部の心室部分の中間区域のみに沿って、またはステントの下部の心室部分の両端にのみ、分布し得る。
【
図8】ステントの円周に沿って、調整可能な高さと設計を有する典型的なステントの設計の斜視図を示す。
図8A-8Bに典型的に示されるように、ステント下部の心室部分は網状の構造を有し、随意に
図8C-8Eに示されるように、ステント下部の心室部分は非網状の構造を有し得る。さらに、
図8C-8Eに典型的に示されるように、下部の心室部分は、少なくとも1つの人工弁尖を取り付けおよび支持するように選択的に構成され得る。
【
図9】上部のフレア状の部分が生来の僧帽弁輪全体をカバーしている、ステントの典型的な態様の斜視図であり、および動作位置にあるステントの斜視図である。
【
図10】A-Cは、人工弁尖の典型的な態様の上面の立面図である。
図10Aは、各人工弁尖(側面の弁尖および中央の弁尖)の遠位の遊離端から伸長するように構成される、少なくとも1つの追加の組織または弁尖の接合伸長部を有する人工弁尖を示し、および突起構造の典型的な態様は、弁尖接合伸長部に動作可能に連結されるように構成される。
図10Bは、人工弁尖の別の典型的な態様であり、これには側面の弁尖用の突起構造がなく、少なくとも1つの突起構造を有する中央の弁尖のみがある。
図10Cは、人工弁尖の別の典型的な態様であり、中央の弁尖に隣接している側面の弁尖の部分と比較した場合、中央の弁尖から間隔を置いて離れていく側面の弁尖の部分がより短い弁尖高さを有するように、側面の弁尖は構成されるか、または傾斜している。一態様では、本例の人工弁尖は随意に突起構造を有し得ない。
【
図11】A-Hは、腹部領域、遊離端および交連領域を含む人工弁尖構造の、様々な典型的態様の上面の立面図である。
図11Aと11Bは、人工心臓弁置換が2つの弁尖から成る典型的な態様を示す。
図11Cから11Hは、人工心臓弁置換が3つの弁尖から成る典型的な態様を示す。
図11Cと11Dに例示されるように、人工弁尖の各々は同じ設計を有し得る。
図11Eから11Hに例示されるように、随意に、人工弁尖は異なる設計を有し得る。さらに、人工弁尖は均一の高さを有し得る、または
図11Hに例示されるように接合を増強するために伸長した遊離端を有し得る、または
図11Gと11Hに示されるように調整可能な高さを有し得る。
【
図12】A-Fは、人工弁尖の一部に連結された、接合と強度を高める突起構造の典型的な態様の上面の立面図であり、それぞれの人工弁尖の遠位の遊離端、接合領域の一部、および/または腹部領域に動作可能に連結された複数の突起構造を示す。
【
図13】A-Bは、コンピューターで生成された人工心臓弁膜置換システムのモデルの斜視図であり、典型的なステントに連結された人工弁尖を示しており、弁尖とステントの高さはデバイス円周に沿って均一である。
【
図14】A-Cは、コンピューターで生成された人工心臓弁膜置換システムのモデルの斜視図であり、典型的なステントに連結された人工弁尖を示しており、弁尖とステントの高さは側面でより短くなっている。
【
図15】心臓弁膜置換システムの1つの典型的な態様に関して、3次元空間でステントの付着点への人工弁尖を例示し、塗りつぶされたドットは人工弁尖の端部に対する付着点を示し、塗りつぶされていない三角形はステントへの突起構造の付着点を示す。
【
図16】心臓弁膜置換システムの1つの典型的な態様に関して、2次元空間でステントの付着点への人工弁尖を例示し、塗りつぶされたドットは人工弁尖の端部に対する付着点を示し、塗りつぶされていない三角形はステントへの突起構造の付着点を示す。
【
図17】植え込まれるように構成された心臓弁膜置換システム用アンカーの典型的な態様の、側面の立面図であり、テザーを受け入れるように構成された貫通スロットを有するアンカーの心房側、および搬送用に係合するためにアンカーデリバリー部材用に構成された2つの対向面の2つのL字形スロット、植え込み用に構成されたアンカーの心室側、およびアンカーの仕様書を示す。
【
図18】A-Cは、典型的なアンカーデリバリーシステムの斜視図である。この態様では、
図18Aのアンカーデリバリーカテーテル先端は、
図18Cに示されるアンカーデリバリーカテーテルの端部に連結し得る。アンカーデリバリーカテーテル先端の内部壁は、
図18Bに示されるように適所でアンカーを係合しかつ保持するための2つのピンを有するように構成され得る。この態様では、テザーは、アンカーの心房側の貫通スロットを通ってループになり得る。
【
図19】アンカー搬送用の典型的なアンカーデリバリーカテーテルの側面の立面図である。
図19Aは、アンカー上で捕らえるためのピンを有するように構成されたアンカーデリバリーの先端を示す;
図19Bは、アンカーの近くに位置づけられているアンカーデリバリーの先端の空間的な視点を示し、およびテザーはアンカーを通過してアンカーデリバリーカテーテルの先端から外へと伸長する;および
図19Cは、アンカーとアンカーデリバリーカテーテル先端とテザーを有するアンカーデリバリーカテーテルシステムを示す。
【
図20】植え込まれるように構成された心臓弁膜置換システム用の典型的なアンカーの側面の立面図であり、アンカーの心房側から伸長するテザー部の一部に連結されたアンカーにステントをロックするための手段を示し、および植え込み用に構成されたアンカーの心室側を示す。
【
図21】植え込まれるように構成された心臓弁膜置換システム用の典型的なアンカーの側面の立面図であり、アンカーの心房側から伸長するテザー部の一部に連結されたアンカーにステントをロックするための手段を示し、および植え込み用に構成されたアンカーの心室側を示す。
【
図22】心臓弁膜置換システム用の典型的なアンカーの斜視図である。
【
図23】心臓弁膜置換システム用の典型的なアンカーの斜視図である。
【
図24】心臓弁膜置換システム用の典型的なアンカーの斜視図である。
【
図25】心臓弁膜置換システム用の典型的なアンカーデリバリー部材の断面図であり、アンカーの心房側の一部に選択的に連結されたアンカーデリバリーカテーテルの一部を示す。
【
図26】心臓弁膜置換システム用の典型的なアンカーデリバリー部材の断面図であり、アンカーの心房側の一部に選択的に連結されたアンカーデリバリーカテーテルの一部を示す。
【
図27】A-Cは、生来の僧帽弁輪上の所望位置に据え付けられているアンカーの部分的な断面の側面図である。
図27Aは、僧帽弁輪上の所望の設置点に位置づけられているアンカーを示す。
図27Bは、僧帽弁輪内にアンカーを固着させるために第1の方向に回されているアンカーデリバリー部材を示す。
図27Cは、植え込まれたアンカーをアンカーデリバリー部材から分離するために、反対方向に回されているアンカーデリバリー部材を示す。
【
図28】A-Dは、典型的なロック装置の概略図である。
図28Aは、2つのタブを有するロック装置の1つの構成を示し、2つのタブは連続して構成され、および内側に曲がってテザーをロック装置の内部壁に押しつけ、それによって適所にロック装置を固定し、およびテザーに沿ってロック装置が摺動するのを防ぐ。
図28Bは、ロック装置へのテザーのロックを促すための一列になった雄突部を有するテザーを示す。
図28Cは、ロック装置の別の構成を示し、ここでは2つの側壁はまっすぐであり、および少なくとも1つのタブが1つの側壁に対して内側へ曲がる。
図28Dは、2つのタブを有するロック装置の別の構成を示し、2つのタブの各々は各側壁上にあり、および2つのタブはロック装置の中心で出会い、そこでロック装置はテザーに向かって押され適所にロックされる。
【
図29】典型的なロック装置デリバリーシステムの概略図であり、ロック装置用のハンドル、カテーテル、および支持カテーテルを示す。
【
図30】操作可能なシースおよびハンドル制御装置を示す側面の立面図である。
【
図31】巻縮された人工器官の側面図であり、人工器官の鳩目がロックハウジング構造にあるスロットに捕らえられていることを示す。
【
図32】A-Bは、ロックハウジング構造の斜視図、および弁膜カテーテル内での斜視画法によるその配置である。
図32Aは、4つのテザーを収容するための4つの穴を持った典型的なロックハウジング構造の斜視図である。
図32Bは、デリバリーカテーテル内に配置された巻縮された人工デバイスの概略図であり、4つのテザーは人工デバイスの上部のフレア状の部分にある穴を通ってループになり、およびロック構造は人工デバイスの上部のフレア状の部分の先端に隣接している。
【
図33】A-Bはロックハウジング構造の概略図である。
図33Aは、ロックハウジング構造の概略図であり、5つのルーメン、主要なデリバリーシステムに取り付けるための中央スロット、弁膜カテーテル内に人工デバイスの鳩目を係合しおよび引き抜くための遠位先端にある4つの側面スロットを示す。
図33Bは、ロックハウジング構造の先端の断面図である。
【
図34】弁膜カテーテルの斜視図であり、ロックハウジングカテーテルおよび複数のロックとロックカテーテルを示す。
【
図35】デリバリーカテーテル内に位置づけられたロックハウジング構造、圧縮デリバリー位置に位置づけられたステント、およびステントに連結されたテザー部を示す断面図である。
【
図36】第1の連係構造および第2の連係構造の斜視図であり、第1の連係構造はロックデリバリーカテーテルを束ね、および第2の連係構造はロック支持カテーテルを束ねる。
【
図37】弁膜カテーテルの斜視図であり、巻縮された人工弁、複数のテザー、ロックハウジング構造、複数のロックおよびロックカテーテルを示す。
【
図38】デリバリーカテーテルの断面図であり、ステントに連結されたテザー部を誘導するように構成される複数のルーメンを示し、および圧縮デリバリー位置に位置づけられたステントを示す。
【
図39】生来の僧帽弁輪上に一定間隔で配置された設置点に設置された複数のアンカーの典型的な概略図である。
【
図40】僧帽弁輪に植え込まれた複数のアンカーを示す概略的な部分的断面図であり、およびデリバリーカテーテルを通って伸長する各アンカーに連結されたテザー部を示す。
【
図41】生来の僧帽弁内に位置づけられたデリバリーカテーテル、およびデリバリーカテーテルから伸長するそれぞれのアンカーに連結された複数のテザーを示す概略的な部分的断面図である。
【
図42】ロックハウジング構造を前進させることによって、カテーテルハウジングから外れて展開されたステントを示す概略的な部分的断面図である。
【
図43】僧帽弁輪において動作位置に拡張したステントを示す概略的な部分的断面図である(例示のために人工弁はない)。
【
図44】ステントが複数のアンカーに連結されるのに先立って、アンカーに対して展開されたステントの典型的な位置を示す概略的な部分的断面図である。
【
図45】A-Bは、ロック装置デリバリーカテーテルを使用して、複数のアンカーにステントが同時に動作可能に連結されている概略的図である。
図45Bは、4つのテザーを介して、ステントのフレア部分の頂点にある4つの位置に搬送された4つのロック装置の1つの典型的な態様を例示する。
【
図46】僧帽弁輪を選択的にしっかりつかむために縫合が使用され得るように、生来の僧帽弁輪のレベルにおいてステント構造を通って円周方向に走る縫合の概略図である。
【
図47】心房中隔の典型的な閉塞を示す概略的な斜視図である。この態様では、中隔オクルーダーは、心房中隔穴を通って伸長するデリバリーカテーテルを介して導入される。その後、デリバリーカテーテルは心房中隔穴を通って引き出され、および中隔オクルーダーによって穴が確実に閉じられるまで、中隔オクルーダーは心房中隔の方へ引っ張られる。
【
図48】A-Bは、弁膜プロトタイプのインビトロ試験で撮られた写真である。
図48Aは、圧力なしで弁膜開口中に撮られ、ここでデバイスのフレア状の部分は僧帽弁輪の頂上に位置づけられ、かつ縫合によって固着され、および心室部分(図示せず)は左心室内部にあった。
図48Bは、約120mmHgの圧力を伴う弁膜閉鎖中に撮られた。人工弁尖(P1、P2およびP3)は、生来の弁尖との適切な接合のための表面(つまり、視覚的な接合ライン)を提供し得る。
【
図49】A-Bは、人工僧帽弁プロトタイプのインビトロ試験で撮られた写真である。
図49は、弁膜カテーテルからの弁膜の解放中に撮られ、他方で5つのアンカーは僧帽弁輪に予め取り付けられていた。
図49Bは、弁膜プロトタイプの解放後に撮られた。
【
図50】A-Bは、人工僧帽弁プロトタイプのインビトロ試験で撮られた写真である。
図50Aは、ロックカテーテルの同時解放中に撮られた。
図50Bは、ロック装置の解放後に撮られ、および90mmHgの圧力が適用され、弁膜が僧帽弁輪に確実に固定されていることを示している。
【
図51】A-Dは、ブタモデルの生来の僧帽弁の位置に外科的に植え込まれた後の、心臓弁膜置換システムのコンピューター断層撮影画像である。画像は心周期の収縮中に撮られた。
図51Aは、左心房からの弁膜の平面図であり、3つの人工弁尖(P1、P2およびP3)すべてが生来の前尖に接合しているのを示し、暗い線は接合ラインであり、および明るい線はステントのフレームを表す。
図51Bは、デバイスの別の画像であり、人工弁尖(P2)が生来の前尖と十分に接合していたことを示す(矢は接合を示す)。
図51Cは、人工弁尖(P1)が生来の前尖と十分に接合していたことを示す(矢は接合を示す)。
図51Dは、人工弁尖(P3)が生来の前尖と十分に接合していたことを示す(矢は接合を示す)。
【
図52】心収縮中の、生来の僧帽弁の内部に植え込まれた人工器官の心エコー図である。生来の弁尖の動的な運動は、心臓弁膜置換システムの植え込み後も平静なままである。弁尖は、心収縮中に人工弁尖と十分に接合し得る。
【
図53】A-Fは、心周期中の一連の血管造影であり、ブタモデルの生来の僧帽弁位置に外科的に植え込まれた後の心臓弁膜置換システムを示す。これらの画像から、デバイスの人工弁尖が生来の僧帽弁の前尖と十分に接合することが示され、ここには左心室の収縮中の逆流の痕跡はない。データは植え込み後の30日間の追跡で得られた。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明は、以下の詳細な説明、実施例、図面および請求項、およびそれらの前後の説明を参照することによってより容易に理解され得る。しかしながら、本発明のデバイス、システム、および/または方法が開示され記載される前に、本発明は別段の定めがない限り、開示される特定のデバイス、システム、および/または方法に制限されず、およびそれゆえに当然のこととして変化し得ることが理解される。さらに、本明細書において使用される用語は、特定の態様を記載する目的のみで使用され、限定を意図していないことが理解される。
【0033】
本発明の以下の詳細な説明は、最良であり、現在知られている実施形態における本発明の可能な教示として提供される。この目的のために、当業者は、本明細書に記載の本発明の様々な態様に多くの変更を行うことができ、それでもなお本発明の有用な結果が得られることを認識しかつ理解するだろう。本発明の望ましい利点のいくつかは、他の特徴を利用することなく、本発明の特徴のいくつかを選択することによって得ることができることも明白であろう。
【0034】
従って、当業者は、本発明に対する多くの修正および改造が可能であり、特定の状況では望ましくさえ有り得、およびそれが本発明の一部であることを認識するだろう。したがって、以下の詳細な説明は、本発明の原則の例示として提供され、それを制限することはない。
【0035】
明確にするために、本開示は機能性僧帽弁逆流の処置に焦点を置くが、心臓弁膜置換システムおよび関連方法は、他の種類の僧帽弁逆流を処置し、または三尖弁などのヒト心臓の他の不健全な弁膜を置換するために使用され得ること、またはそうでなければ使用されるように構成され得ること、または弁膜の欠陥に苦しむ他の哺乳動物にも同様に使用されてもよいこと、またはそうでなければ使用されるように構成されてもよいことが熟慮されると理解されよう。
【0036】
本明細書を通じて使用されるように、単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に指示しない限り、複数の指示物を含む。したがって、例えば「弁尖」への言及は、文脈がそうでないことを示さない限り、2つ以上の弁尖を含み得る。
【0037】
本明細書において範囲は、「約」1つの特定の数値から、および/または「約」別の特定の数値までとして表現され得る。そのような範囲が表現される場合、別の態様は、1つの特定の数値から、および/または別の特定の数値までを含む。同様に、先行詞「約」を用いて数値を近似値として表現する場合、特定の数値は別の態様を形成することが理解されるだろう。各範囲のエンドポイントは、別のエンドポイントの関係において、および別のエンドポイントとは無関係に、有意であることがさらに理解されるだろう。
【0038】
本明細書で使用されるように、用語「随意の」または「随意に」は、その後に記載される事象または状況が生じても生じなくてもよいこと、および記載が、前記事象または状況が生じる実例と生じない実例を含むことを意味している。
【0039】
本明細書において使用される単語「または(or)」は、特定のリストのいずれか1つの構成員を指し、およびそのリストの構成員の任意の組み合わせも含む。さらに、とりわけ「できる」、「してもよい」、「だろう」、「し得る」などの条件付きの言葉は、特に別記しない限り、またはそうでなければ使用される文脈内で理解されるのであれば、特定の態様が特定の特徴、要素、および/または工程を含む一方で、他の態様はそれらを含まないことを伝えるように通常は意図されることに留意すべきである。したがって、そのような条件付きの言葉は通常は、特徴、要素および/または工程が1つ以上の特定の態様に何かしらの形で必要とされることを、またはこれらの特徴、要素および/または工程が特定の実施形態に包含または実施されるか否かを、ユーザーによる入力または誘発の有無に関わらず、決定するための論理を1つ以上の特定の態様が必然的に含むことを示唆するようには意図されない。
【0040】
開示された方法およびシステムを実施するために使用可能なコンポーネントが開示される。これらのコンポートと他のコンポーネントは本明細書に開示され、およびこれらのコンポーネントの組み合わせ、サブセット、相互作用、グループ等が開示される時に、これらの個々の様々な個別および集合的な組み合わせと入替が明確に開示され得ない一方で、全ての方法とシステムに関して、各々が具体的に熟慮され、および本明細書に記載されることが理解される。これは、開示された方法における工程を制限なく含む本発明の全ての態様に当てはまる。したがって、実施可能な様々な追加の工程がある場合、これらの追加の工程の各々は、特定の実施形態のいずれか、または開示された方法の実施形態の組み合わせによって実施し得ることが理解される。
【0041】
本方法およびシステムは、好ましい実施形態についての以下の詳細な説明と、本明細書に含まれる実施例を参照することによって、および図とそれらの前後の説明を参照することによって、より容易に理解され得る。
【0042】
本明細書に記載されるのは、心臓弁膜置換システム、および生来の弁輪の1つに置換人工心臓弁(12)を固定する方法である。一態様では、心臓弁膜置換システムは、生来の僧帽弁輪に人工僧帽弁を固定するように構成され得ることが熟慮される。さらなる態様では、心臓弁膜置換システムおよび関連方法は、患者の心周期中に僧帽弁逆流を緩和するために、および/または生来の僧帽弁輪のさらなる拡張を防ぐ一助となるように、構成され得る。本明細書に記載される心臓弁膜置換システム(11)は、心臓内のいかなる病的な弁膜をも置換するために使用され得ることが熟慮されることに留意すべきである。例示を意図しているため、本発明における記載は、僧帽弁および僧帽弁の幾何学的形状による命名に焦点を置く。しかしながら、本明細書に記載される設計は、全ての他の心臓弁で適宜使用することができる。
【0043】
図1を参照すると、僧帽弁(1)は心臓の左側、左心房(9)と左心室(10)の間に配置され、および僧帽弁輪によって含まれる前尖(1)と後尖(2)を有する。この態様では、僧帽弁輪はさらに線維部分(3)すなわち線維性を有し、それは右三角(6a)から左三角(6b)まで走り、かつ大動脈弁の一部および後部の筋肉部分(4)と一続きになっている。さらに、腱索(7a,b)は、左心室壁のそれぞれの大乳頭筋(8a,b)から始まり、それぞれの僧帽弁膜につながる。
【0044】
一態様では、心臓弁膜置換システム(11)は、置換人工僧帽弁(12)および経カテーテルデリバリーシステムを含み得る。この態様では、および
図2を参照すると、心臓弁膜置換システム(11)の典型的な態様が本明細書に開示され、コンポーネントおよび組み立てられた人工僧帽弁(12)が示される。この態様では、人工僧帽弁(12)は、選択的に圧縮され、またはそうでなければ圧縮位置に押さえつけられ、そしてデリバリーカテーテルに搭載されるように構成され得る。
【0045】
人工僧帽弁(12)は、半月形のステント(31)、少なくとも1つの可動性人工弁尖(16)、およびステント(14)の下部の心室部分に人工弁尖部分を動作可能に連結する少なくとも1つの突起構造(18)を含み得る。
【0046】
一態様では、置換人工僧帽弁(12)の半月形のステント(31)は、
図2A-2Bを参照すると、上部のフレア状の部分(13)および下部の心室部分(14)を含み得る。少なくとも、上部のフレア状の部分(13)の一部、および/または下部の心室部分(14)の一部は、望ましい動作位置へと自己拡張可能またはバルーン拡張可能なように形成され得る。この態様では、ステント(31)は従来、放射状に折り畳み可能および拡張可能な望ましいステント設計へと、レーザーカットされ、または織り込まれ得ることが熟慮される。したがって、ステントは、限定されないがコバルトクロム、ステンレス鋼を含む金属、または限定されないがニチノールを含み固有の形状記憶特性を有する金属で作ることができる拡張可能な網状または非網状の本体を形成するために、複数の動作可能に連結されたコンポーネントを含み得ることがさらに熟慮される。随意に、ステントは、生体組織、ポリマーなどの合成素材などの柔らかい物質によって連結される複数の垂直な堅い構造を含み得ることが熟慮される。ステントは、残存する生来の弁尖の生来の動的運動が人工弁尖にきつく適合できるように構成され得る。
【0047】
一態様では、拡張した構成において、ステント(31)の内側表面は実質的に円形の断面プロフィールを画定し得ることが熟慮される。ステント(31)は変形するように構成され得、それによってステントの内側表面は、限定されないが楕円の断面プロフィールまたは非対称の断面プロフィールを含む非円形の断面プロフィールを画定することが、さらに熟慮される。明細書において使用されるように、用語「非対称の断面プロフィール」はいかなる非円形の断面形状をも含む。
【0048】
一態様では、
図3を参照すると、植え込まれた時、ステント(31)の上部のフレア状の部分(13)は生来の弁輪の上および/またはそれを超えて位置づけられるように構成され得ることが熟慮される。この態様では、ステント(31)の上部のフレア状の部分(13)は、ステントの固定、固着および封着を容易にするように構成され得、それは弁傍の漏出および植え込み後のステントの移動を防ぐ一助となり得る。僧帽弁輪は非対称であり、それは
図3に例示される。人工僧帽弁(12)の上部のフレア状の部分(13)は、僧帽弁輪の後部部分をカバーする、または覆いかぶさり、それは3つのスカラップ、すなわち(P1)、(P2)および(P3)に分けられる。一態様では、上部のフレア状の部分(13)は2つの交連、すなわちAC前交連およびPC後交連に及び得る。別の態様では、動作可能に位置づけた時、上部のフレア状の部分(13)は僧帽弁の全円周をカバーし得る。
【0049】
一態様では、下部の心室部分(14)の少なくとも一部は、心臓の心室の空洞内に位置づけられ得、および/または少なくとも1つの生来の僧帽弁の弁尖の一部に接し得る。
【0050】
図4は、部分的な心臓のコンピューターモデルで覆われている、コンピューターで生成された人工僧帽弁(12)のステント(31)を示し、大動脈弁輪(80)、左心室の一部(10)、乳頭筋(8)、左心房(9)、および腱索(7)が含まれる。本発明における部分的な円周フレーム(31)は、
図4に示されるように、左室流出路(81)閉塞(LVOTO)を防ぐ一助となり得ることを、当業者は理解するだろう。ステントの下部の心室部分(14)の部分的な円周構造の1つの潜在的利点は、動作可能に位置づけられた時、ステントのフレームが僧帽弁前尖(1)に干渉しないことである。生来の弁尖はステントによって押さえつけられず、および自由に動くことができ、それによってLVOTOのリスクを減らす。ステントの下部の心室部分(14)は、生来の前尖の平静な運動を可能にするように構成される。
【0051】
1つの典型的な態様では、ステントの下部の心室部分(14)は部分的な円柱状または円錐形の形状を有し得、および随意に、変位した病的な生来の弁尖の放射長さの約0.5から約1.5倍の高さ範囲を有し得る。ステント(31)の下部の心室部分(14)は、生来の後部弁輪の円周の選択された部分のみをカバーする、または覆いかぶさるように構成され得、およびステントの拡張可能な性質の結果として、動作位置への拡張に際して病的な生来の弁尖を血流路の外に変位させ得る。下部の心室部分(14)が、生来の弁輪の円周の全体ではなくその選択した部分に重なるように構成され得るため、この「開く」構成は、残存する生来の弁尖、例えば僧帽弁前尖の動的運動を可能にし、および人工弁尖との接合を可能にする。一態様では、ステントが動作位置へ拡張する時、上部のフレア状の部分の外径は、下部の心室部分の内径より約5~15mm大きくなり得る。
【0052】
さらなる態様では、ステントの下部の心室部分(14)は、
図3に例示されるように、前交連(5a)から後交連(5b)まで放射状に伸長し得る。さらなる態様では、
図3に例示されるように、ステントの下部の心室部分(14)は「C」の形をした断面を有し得、ここで外側端部の1つ(26b)は前尖と前外側交連弁尖の間の裂け目に着地し、および他の外側端部(26a)は前尖と後内側交連弁尖の間の裂け目に着地する。
【0053】
一態様では、
図5Aに示されるように、ステント(31)の上部のフレア状の部分(13)に画定された開口部(24)は、円形、正方形、菱形、三角形または非対称の形状を有し得る。上部のフレア状の部分(13)の開口部(24)の区域は、約0.2mm
2から2mm
2の区域範囲を有し得る。
【0054】
一態様では、
図5Bに示されるように、ステントの上部のフレア状の部分(13)と下部の心室部分(14)の間の角度は、90度から150度の間で変化可能であり、その結果ステントフレームを左心房の生来の湾曲に一致させることができる。
【0055】
一態様では、
図6A-6Eに示されるように、ステントの下部の心室部分(14)の高さは、カバーされた弁輪の円周に沿って変化し得ることが熟慮される。随意に、僧帽弁後尖の中央部分(14b)をカバーするステントの下部の心室部分(14)の高さは、
図5Aに示されるように僧帽弁後尖(14a,c)の2つの外側部分をカバーするステントの下部の心室部分(14)よりも、実質的に長い、またはそれと同じ高さであり得る。僧帽弁後尖(14a,c)の2つの外側部分をカバーするステントの下部の心室部分(14)は、動作可能に位置づけられた時、それが生来の前尖、腱および左心室に干渉しないように、軸方向においてより短くなり得ることが熟慮される。
【0056】
一態様では、
図8Cに示されるように、ステントの下部の心室部分(14)は、ステント(31)の上部のフレア状の部分(13)の少なくとも1つの位置から伸長する、少なくとも1つの垂直材または細長い支柱(85)を伴って形成され得る。随意に、
図8Dに例示されるように、細長い支柱(85)は、軸方向に伸長するまっすぐまたはカーブした区域であり得る。さらなる態様では、細長い支柱(85)は分岐して第2の支柱を形成し、連係スカートまたは弁尖物質の縫合を容易にする。
図8Eに例示されるように、細長い支柱は、弁尖付着端のそれとして形成され得ることが熟慮される。
【0057】
図7A-7Cに示されるように、ステントの心室部分の底部(27)は、動作可能に位置づけられた時、生来の弁尖を捕らえるフランジ、フック、コイル、クリップなどの機構(32)を伴って構成され得る。この態様では、デバイスはさらに、生来の弁膜に固着および固定され得る。この捕獲メカニズムはさらに、シール剤として作用し、および弁傍の漏出を防ぐパンヌス構成も可能にし得る。一態様では、
図7Aに例示されるように、展開に際して少なくとも3つのフックに似たコンポーネント(32)が、ステントの支柱から放射状に伸長し、および生来の弁尖と腱を捕らえ得る。一態様では、
図7Bに例示されるように、展開に際して、フックに似たコンポーネント(32)はステント(14b)の中央部分からのみ伸長し得る。別の態様では、
図7Cに例示されるように、展開に際してフックに似たコンポーネント(32)はステント(31)の下部の心室部分(14)の外側部分(14a,c)からのみ伸長し得る。
【0058】
拡張した位置では、
図5-9に典型的に示されるように、ステント(31)の下部の心室部分(14)は約20mmから約60mm、およびより好ましくは約30mmから約50mmの範囲の外径を有し得る。特定の典型的な態様では、および制限なく、ステント(31)の下部の心室部分(14)は約36mmの外径を有し得る。しかしながら、ステント(31)の下部の心室部分(14)は、被験体の心臓の選択されたチャネル内でのステントの適切な位置づけを可能にする効果的な外径を有し得ることが熟慮される。
【0059】
ステント(31)の直径、ステントの網目パターン内の平行した支柱間および/または隣接する開口部の間の間隔、およびステントの機械的特性は、被験体の心臓の選択された部屋内の所望の位置および/または所望の性能特性を達成するために、必要に応じて選択的に変化し得ることが熟慮される。典型的な態様では、ステント(31)の網目パターン内の、平行した支柱間の間隔および/または隣接する開口部の寸法は、ステント(31)全体にわたって非均一であり得る。ステント(31)は、楕円形状に変形するように構成され得ることがさらに熟慮される。ステント(31)のメッシュ構成は、限定されないが僧帽弁閉鎖を含む弁膜閉鎖中に、圧縮的な負荷にさらされる際にステントが崩壊するのを防ぐのに十分な構造的一体性を提供し得ることが、さらに熟慮される。加えて、ステント(31)は、被験体の心臓内で僧帽弁輪にステントを確実に位置づけることを可能にするために、放射状の拡張力を収容し、およびそれに耐えられるように構成され得る。
【0060】
一態様では、
図9に例示されるように、ステント(31)の下部の心室部分(14)は360度未満で円周方向に伸長し得る一方で、連結された上部のフレア状の部分(13)は円周方向に約360度伸長するように構成され得ることが熟慮される。
【0061】
一態様では、置換人工僧帽弁(12)は、
図2に示されるように、ステントの内側および外側表面の少なくとも一部に結合し得るスカート(28)を含み得る。1つの典型的な態様では、スカート(28)は、ステントの内側および外側表面の少なくとも一部に、非吸収性縫合糸を用いて縫合し得ることが熟慮される。典型的な態様では、スカート(28)は、生体適合性の物質、例えば限定されないが、生体適合性の布、ウシまたは豚の心膜などで形成され得る。
【0062】
一態様では、少なくとも1つの人工弁尖(16)をステントの内側表面に据え付けることができる。一態様では、少なくとも1つの人工弁尖(16)をステント(31)の下部の心室部分(14)の内側表面に据え付けることができる。人工僧帽弁(12)は複数の人工弁尖(16)を含み得、すべての弁尖は同じ形状であり得る、または複数の弁尖の1つ以上は異なる形状であり得ることが熟慮される。様々な態様では、各弁尖は遊離端(17)、2つの交連付着領域(19)、付着端(18)、およびそれぞれの接合領域(21)と腹部領域(20)を含み得る。
【0063】
一態様では、少なくとも1つの人工弁尖(16)は、人工弁尖(16)が弁膜閉鎖中に少なくとも1つの生来の弁尖と接合して、弁膜を通って血液が逆流するのを防ぐことができるように、心周期全体にわたって可動性を有するように構成され得る。一態様では、人工弁尖(16)は、生来の弁尖を傷つけずに生来の弁尖(1)と接触するのに十分な可撓性と可動性を有し得、および弁膜を通る正常な血流を乱すことがないように、または狭窄を誘発することがないように、弁膜の開放中に完全に開くことができる。
【0064】
一態様では、
図10Aに例示されるように、各人工弁尖(16)は、人工弁尖と生来の前尖との間の接合ゾーンを増大させるように構成される、遊離端(17)上の追加の伸張組織(22)を有し得る。この態様では、複数の突起構造(23)は、接合を増強する伸張組織(22)に連結するように構成され得ることが熟慮される。各人工弁尖(16)の遊離端(17)にある追加の組織(22)は約1~約10mmであり得る。この態様では、突起構造は、最適な接合を確かなものにし、かつ弁膜を通じた血液の脱出と漏出を防ぐために圧縮された時、人工弁尖を生来の僧帽弁前尖に対する最適な接合表面の形にするように構成され得る。
【0065】
一態様では、
図10Bと10Cに例示されるように、人工弁置換は3つの人工弁尖(16)を含み得る:中央の弁尖(16b)および2つの側面の弁尖(16a,c)。中央の人工弁尖(16b)は複数の突起構造(23)を有し得、および2つの側面の人工弁尖(16a,c)には突起構造(23)がなくてもよい。別の態様では、人工弁尖(16)の交連付着領域(19)の高さは同じであり得る、または異なり得る。さらなる随意の態様では、
図10Cに示されるように、2つの側面の人工弁尖(16a,c)の交連付着領域(19)は、ステント(31)の下部の心室部分(14)の2つの外側の端部(26a,b)において短くなり得る。
【0066】
図2に示される置換人工心臓弁の一実施形態では、2つの交連弁尖(16a,c)はステントの円周の約30°~60°に及び得る。1つの典型的な態様では、
図10Aに示される交連弁尖(16a,c)は、最大で15.0~30.0mmの幅と10.0~20.0mmの高さを有し得、伸長した遊離端部分は、
図15および16に例示される弁尖-ステント付着点の先端よりも約1.0~6.0mm高い。この態様では、動作可能に位置づけられた時、周囲の生来の構造、すなわち乳頭筋と心筋層にデバイスが干渉するのを防ぐためにステントの高さ全体を低く保ちながら、伸長した遊離端は、
図3の(A1)と(A3)の領域において人工交連弁尖(16a,c)と生来の僧帽弁前尖との間の、および中央の人工弁尖(16b)との間の十分な接合を確実にし得る。さらにこの態様では、突起構造はその長さが5.0~15.0mmであり、および伸長した遊離端を安定させるように作用し、かつ約2.0~7.0mmの接合高さで生来の僧帽弁前尖の側面と人工交連弁尖が適切に接合するのを助け得る。突起構造(23)の先端は、同様の角度のあるステントの支柱と、
図15と16に示される突起ステント付着点への付着を容易にするために、約20°の角度であるように構成され得る。
図10Aを参照すると、中央の人工弁尖(16b)はステントの円周の約60°~120°に及び得る。優先的に、中央の弁尖(16b)は2つの側面交連弁尖(16a,c)よりも広い範囲のステント円周に及び得、その結果、弁膜閉鎖中に(A2)の領域において人工弁尖が生来の僧帽弁前尖とより完全に接合することができる。1つの典型的な態様では、中央の交連弁尖(16b)は、最大で20.0~35.0mmの幅と10.0~20.0mmの高さを有し得、伸長した遊離端部分は、
図15および16に例示される弁尖-ステント付着点の先端よりも約1.0~7.0mm高い。この態様では、伸長した遊離端は、全体的なステントの高さを低く保ちながら約4.0~7.0mmの接合高さで、中央の人工弁尖(16b)と隣接する人工交連弁尖(16a,c)との間、および(A2)における生来の僧帽弁前尖との間の十分な接合を確実にし得る。さらにこの態様では、中央の人工弁尖(16b)は、伸長した遊離端を安定させ、および中央の人工弁尖(16b)と生来の僧帽弁前尖の適切な接合を助けるように作用し得る、長さ5.0~15.0mmの、伸長した遊離端(22)から伸長する2つの突起構造を有するように構成し得る。
【0067】
一態様では、少なくとも1つの人工弁尖(16)を、ステント(31)の上部のフレア状の部分(13)の内側表面に据え付けることができる。随意に、人工弁尖(16)の選択的な部分はステント(31)の外側表面に据え付けることができ、例えば、人工弁尖は動作可能に位置づけられた時に、ステント(31)の側面に巻き付けられて、ステント(31)と生来の組織との間のクッションとして作用し得る。
【0068】
図11を参照すると、複数の人工弁尖(16)は、弁尖遊離端(17)から伸長する突起構造(23)なしで構成され得る。一態様では、
図11Aおよび11Bに示されるように、人工弁置換は2つの同一の弁尖を伴って構成され得る。
図11Cおよび11Dに示される別の態様では、人工弁は3つの同一の弁尖(16)を伴って構成され得る。随意に、交連側面弁尖(16a,c)は、
図11Eおよび11Fに示されるように中央の弁尖(16b)とは異なる形状であり得る。さらにこの態様では、複数の人工弁尖は、適切な接合と開放を可能にするために、
図11Gおよび11Hに示されるように、多様な弁尖の数、サイズ、高さ、および長さで構成され得る。
【0069】
図12を参照すると、一態様では、突起構造(23)は弁尖遊離端(17)に接続され得る。別の典型的な態様では、突起構造(23)は、弁尖腹部(20)に、または随意に伸長した遊離端ゾーン(22)に結合され得る。突起構造(23)は、人工弁尖(16)とは異なる物質、例えば限定されないが、生体適合性の布、縫合糸または組織で構成され得、および人工弁尖(16)に様々な方法で、例えば接着剤または縫合によって、人工弁尖(16)の様々な領域に取り付けられ得ることが熟慮される。
【0070】
図13を参照すると、人工弁置換の1つの態様では、複数の人工弁尖(16)は、弁尖付着端(18)に沿ってステント(14)の心室部分の内側表面に、および突起構造にある付着タブに、取り付けられ得る。
【0071】
別の態様では、
図14を参照すると、複数の人工弁尖(16)は突起構造(23)なしで構成され、および弁尖付着端(18)に沿ってステント(14)の心室部分の内側表面のみに取り付けられ得る。随意に、交連弁尖(16a,c)は、側面でより短くなっているステント(14)の心室部分の1つの態様に対応して、中央の弁尖(16b)から離れる側面においてより短くなり得る。
【0072】
随意に、少なくとも1つの人工弁尖(16)は、人工弁(12)で置換することを意図されている生来の病的な弁膜に似た形状、または
図10から12に例示されるものとは異なった形状を有し得、限定されないが、正方形、長方形、三角形、楕円形、円、または他の非対称の形状が含まれる。
【0073】
1つの典型的な態様では、人工弁尖は、
図15-16に示される2次元および3次元の弁尖-ステント付着曲線によって画定された接続点において、ステントに付着するように構成され得、塗りつぶされたドットは弁尖端(18)付着点を示し、および塗りつぶされていない三角形はステントへの突起構造(23)の付着点を示す。この弁尖と突起ステントとの特定の付着設計とその変形(例示された設計の曲線から+/-25%の派生)は、最適な弁尖接合のために、および弁膜の開放中にステントにぶつかることなく大きく有効な開口区域を有しながら心周期中に弁尖圧力を低減すために、最適化される。もしこれらの弁尖と突起の構造が、適切な接合を維持し、弁尖圧力を低減し、および弁膜の耐久性を増大させる目的で使用されるのであれば、この設計は、弁膜の異なるサイズに応じてサイズ調整され、または比例的な適合または不比例的な適合をされ得る。
【0074】
一態様では、生来の弁輪に人工弁(12)を誘導および固定するための手段は、可撓性の細長いコンポーネントに連結された複数の固着部材を含み得る。一態様では、固着部材は環状組織内に固着するアンカー、フックまたは逆刺であり得る。固着部材、例えばアンカー(30)は、操作可能なカテーテルによって所望の位置に連続して搬送および植え込まれ得る。さらなる態様では、アンカー(30)の植え込み方法は、人工僧帽弁(12)の搬送に先立って実行され得ることが熟慮される。別の態様では、複数のアンカー(30)は、動作可能に位置づけられた人工弁(12)と生来の僧帽弁輪との間の血液の漏出を防ぐ一助として構成され得る。別の態様では、複数のアンカー(30)は、環状寸法を縮小するために、円周方向に病的な弁輪をしっかりつかむことを促すように構成され得る。
【0075】
別の態様では、複数のアンカー(30)はステントに直接取り付けられ得る。この態様では、人工弁(12)はアンカー(30)と同時に展開され得、および一旦人工弁(12)が動作位置にあって生来の弁輪にデバイスを固着すると、アンカー(30)は生来の弁輪を係合するように選択的に構成され得ることが熟慮される。
【0076】
一態様では、
図17-21に例示されるように、各アンカー(30)は遠位部(39)、近位部(40)、およびテザー部(44)を含み得る。各アンカー(30)の遠位部(39)は、生来の弁輪組織に植え込まれ、および植え込み後の分離に抵抗するように構成され得ることがさらに熟慮される。典型的な態様では、各アンカー(39)の遠位部は、制限されないが、渦巻き形状、コイル形状、突起形状、ねじ形状、および逆刺のついたフック形状を有し得る。アンカー(30)は、限定されないが、ニチノール、ステンレス鋼、コバルトクロム、ポリマーなどで形成され得る。
【0077】
当業者が理解するであろうように、本発明におけるアンカーは、僧帽弁の筋肉の環状部分に人工僧帽弁(12)を安全に固定するように特別に構成される。アンカー(30)は、
図17に例示されるように、弁輪の筋肉部分から引き抜かれることなく、人工弁尖にかけられた全ての力に耐えるように構成される。
図17の表1は、人工弁尖表面の合計面積と心室内圧を算出することによって、人工弁尖にかけられた全ての力を推定可能であることを示す。表1は、2つの典型的な人工弁のサイズ、および人工弁尖にかけられた算出された力を示す。一態様では、平均サイズ29mm直径の弁膜の場合、心室内圧を140mmHgと推定し、生来の弁膜に人工僧帽弁(12)を固定するには合計12.33Nの力が必要である。したがって、使用されるアンカーの数は、少なくとも合計12.33Nの力を支えることができるべきであることが熟慮される。
【0078】
本発明における各アンカー構成は、
図17-24に例示されるように、少なくとも3N、少なくとも4N、または少なくとも5Nに耐え得ることが熟慮される。一態様では、1つのアンカーは右の交連(僧帽弁の右の三角領域)に配置され、および別のアンカーは左の交連(僧帽弁の左の三角領域)に配置され得る。アンカー(30)の近位部(40)の高さは、約1から約3mmであり得、およびアンカーの遠位部(39)の長さは約3から約6mmであり得ることが熟慮される。典型的な態様では、
図17-21に示されるように、遠位部(39)は約3~6個のコイルを有するコイル形状であり得る。この態様では、コイル状の遠位部(39)は、0.3~1mmのワイヤー直径を有し、およびコイル状の遠位部(39)の形成された外側直径は約2から約5mmであり得ることが熟慮される。
【0079】
一態様では、アンカー(30)の遠位部(39)の先端(43)は、
図18に例示されるように、環状組織への容易な貫入を促すために形作られおよび構成される先端を含み得る。1つの典型的な態様では、アンカー(30)の遠位部(39)の先端(43)は、アンカー(30)の遠位部(39)と同じ傾斜度に曲げられる。別の典型的な態様では、アンカー(30)の遠位部(39)の先端(43)は真っすぐであり得る。随意に、アンカー(30)の遠位部(39)の先端(43)は約1mmから3mmのアーク長を有し得る。
【0080】
別の態様では、
図18に示されるように、アンカー(30)の近位部(40)は、テザーの取り付け用に構成されたスロット(47)を画定し得る。テザー(44)は、アンカー(30)の近位部(40)にあるスロット(47)を通ってループになり得ることが熟慮される。随意に、アンカー(30)の近位部(40)はさらに、
図19A-19Cに示されるように、アンカーデリバリーカテーテル先端(49)の内部に、2つのピン(50)を受け入れるように構成される2つのL字形のスロット(72)を規定し得る。この態様では、アンカー(30)は、第1の回転方向にアンカーデリバリーカテーテル(48)を回転させることによって動作可能に植え込まれてもよいことが熟慮される。さらにこの典型的な態様では、および当業者が理解するであろうように、アンカー(30)はその後、第1の回転方向とは逆の第2の回転方向にアンカーデリバリーカテーテル(48)を回転させて、アンカー(30)の近位部においてスロットからピン(50)を取り除くことによって、アンカーデリバリーカテーテル先端(49)から分離され得る。
【0081】
図20-21に示されるように、アンカー(30)にステント(31)をロックするための手段は、少なくとも1つのロック構造(45)を含み得、これには限定されないが、隆起に係合する歯、逆刺、ジップタイ、従順な逆刺またはキー要素、コーン状、正方形、矢の形状、円形の形状、三角形、またはドーム状などが含まれることが熟慮される。ロック構造(45)は、テザー部(44)を下って左心室(10)に向かう、ステント(31)の上部のフレア状の部分(13)の通過を可能にし、かつその後の反対方向への、ステント(31)の上部のフレア状の部分(13)の移動に抵抗するように構成され得ることが熟慮される。別の態様では、ロック構造(45)は、ステント(31)とアンカー(30)の間の距離の調整を可能にし、およびステント(31)とアンカー(30)との間に整合不良がある場合でもステント(31)が動作可能にロックされることを可能にするために、テザー部(44)に沿って連続して構成され得ることが熟慮される。典型的な態様では、1つ以上のロック構造(45)は、限定されないが、ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、金属材料、またはこれらの物質の組み合わせにより形成され得ることが熟慮される。
【0082】
別の態様では、
図22-24に示されるように、アンカーの遠位部(39)は、アンカーの長手方向軸に対して鋭角でカーブする、複数の逆刺のついた区域を含み得る。典型的な態様では、鋭角は約45~約90度であり得る。さらなる態様では、逆刺のついた区域はカーブした断面形状であり得る。一態様では、逆刺のついた区画は約3~5mmの長さを有し得る。
【0083】
図22に示されるように、アンカーの近位部(40)は堅固なロッド構造を含み得ることが熟慮される。
【0084】
図23および24に示されるように、アンカーの近位部(40)は1つ以上の開口部を規定して、植え込み後の組織の内部成長と新生血管形成を可能にし、植え込まれたアンカーが生来の組織に恒久的に結合するのを助け、およびそれによってアンカーの遊離と移動を防ぎ得る。この態様では、アンカー(30)は、ステント(31)の上部のフレア状の部分(13)が使用される間常にロック位置にとどまるのを助けるように構成され得る。アンカー(30)は1つ以上の工程において、ガイドワイヤとアンカーデリバリーカテーテルに連結された拡張器を使用して、生来の僧帽弁輪へと搬送され得ることが熟慮される。この態様では、アンカー(30)は、僧帽弁輪に形成された穴に進み、アンカーデリバリーカテーテルからアンカーを取り出すことによって展開され、そして最後にテザー部(44)で引き戻すことによって位置にロックされ得ることが熟慮される。
【0085】
随意に、ここで
図25-26を参照すると、アンカーの近位部(40)は、アンカーデリバリーカテーテル(48)のネジ部分の内部で相補的に受け入れられるように構成されたねじ状の表面(46)を含み得る。この態様では、
図27に例示されるように、アンカー(30)のコイル状の遠位部(39)は、第1の回転方向にアンカーデリバリーカテーテル(48)を回転させることによって植え込まれてもよいことが熟慮される。当業者が理解するであろうように、アンカー(30)はその後、第1の回転方向とは反対の第2の回転方向にアンカーデリバリーカテーテルを回転させ、アンカーデリバリーカテーテル(48)のネジ部分からアンカーの近位部(40)のねじ状の表面を抜くことによって、アンカーデリバリーカテーテル(48)のネジ部分(46)から分離され得る。
【0086】
細長いテザー部(44)は、植え込まれたアンカー(30)に人工僧帽弁(12)を位置づけ、および固定するのを助けるように構成され得ることがさらに熟慮される。随意に、テザー部(44)は、アンカー(30)の近位部(40)に結合し、およびロックデリバリーシステムに連結された時に、患者の体外へと伸長するのに十分なだけ長いものであり得ることが熟慮される。別の態様では、
図28Bに例示されるように、アンカーの近位部(40)に隣接するテザー部は、ロック装置内でのテザーのロックを促し、およびそれによって動作位置でステント(31)をロックするのを促すように構成される、少なくとも1つの雄突部を有し得る。一態様では、各雄突部は、テザー物質内のこぶによって、または随意に雄突部を形成するために追加の物質を加えることによって、形成され得る。テザー部(44)は、限定されないが、ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、金属材料、またはこれらの物質の組み合わせによって形成され得る。
【0087】
随意に、テザー(44)は縫合糸に似た部分と金属性の部分を含み得る。この態様では、縫合糸に似た部分は、アンカーの近位部(40)に予め取り付けられ、および金属性の部分は縫合糸に似た部分に予め取り付けられ得ることが熟慮される。金属性の部分は人工僧帽弁(12)の植え込み後に体内から取り除かれ、他方で縫合糸に似た部分は体内にとどまって僧帽弁輪に人工僧帽弁(12)を固定し得る。
【0088】
さらなる態様では、人工僧帽弁(12)を搬送する方法は、随意のデリバリーアクセスアプローチに基づき得る。1つの典型的な態様では、および以下でより詳細に記載されるように、該方法は経中隔アクセスアプローチを必要とし得る。この態様では、心臓の右心房に流れ込む上大静脈を通じた心臓弁膜置換システム部分の続く最小限の侵襲によるデリバリーのために、内頚静脈に開口部が形成され得る。この典型的な態様では、搬送経路は心臓の心房中隔を横断し、およびいったん達すると、心臓弁膜置換システムの人工僧帽弁(12)は左心房(9)、生来の僧帽弁、および左心室(10)に動作可能にアクセスし得る。この態様では、生来の僧帽弁への搬送経路には、大腿静脈に形成された開口部を通じて経中隔的にアクセスし得る、または生来の僧帽弁への搬送経路は経心尖的に行い得ることが熟慮される。一態様では、主要なデリバリーカテーテル(62)は搬送経路に沿って配置され、合併症なく、植え込み手術に必要とされる心臓弁膜置換システム(11)のデリバリーコンポーネントの全てを左心房(9)に入れることが可能であり得ることが熟慮される。
【0089】
一態様では、デリバリーカテーテル(62)は、予め植え込まれたアンカー(30)に人工僧帽弁(12)を搬送するために構成され得る。人工僧帽弁(12)の展開に先立って、アンカー(30)の各々から伸長するテザー部(44)は、人工僧帽弁(12)の上部のフレア状の部分(13)の開口部(24)を通過し得る。
【0090】
一態様では、
図30に例示されるように、デリバリーカテーテル(62)は、選択的に配向されるように構成された選択的に偏向可能な先端(65)に取り付けられたシースを含み得る。デリバリーカテーテル(62)はさらに、ガイドワイヤ(63)および偏向可能な先端(65)の方向付けを行うための従来の手法を収容するハンドル(64)を含み得る。
【0091】
図44を参照すると、複数のアンカー(30)は、生来の僧帽弁輪に連続的に植え込まれ得る。その後、ステント(31)の上部のフレア状の部分(13)がアンカー(30)に近接し得るように、人工弁(12)は搬送されおよび位置づけられ得る。随意に、デリバリーカテーテル(62)内に人工弁(12)を回収する方法は、生来の僧帽弁輪の内部での人工弁置換(12)の最適な搬送と位置づけを確実にするために実行され得ることが熟慮される。
【0092】
一態様では、半月形のステント(31)を弁膜カテーテル内の圧縮された構成へと調製するために、2工程の巻縮手順を実行し得ることが熟慮される。第1の工程では、半月形のステントの両端(26a,b)は、ステント構造に組み込まれたロック機構を使用して、一緒に接合されて完全な円柱形状を形成し得る。ステント構造の両端(26a,b)は、限定されないがフック、歯およびスロットを含むロックコンポーネントを有し得る。第2の工程では、人工弁の一端は、所望の巻縮プロフィールに達するまで、一連の円錐および/またはチューブに圧搾されて挿入され、次に人工弁がデリバリーカテーテル(62)に装填され得る。人工僧帽弁(12)は経カテーテル弁クリンパを使用して圧縮され得る。
【0093】
アンカー(30)の近位部(40)から伸長し、および体内を出るテザー部(44)は、人工僧帽弁(12)の巻縮に先立って、上部のフレア状の部分(13)の開口部(24)を通過し得る。その後、テザー(44)は人工僧帽弁(12)と共に圧搾および巻縮され得る。この典型的な態様では、および当業者が理解するであろうように、テザー部(44)はステントとデリバリーカテーテル(75)の内部壁の間にあり、ねじられ、およびからまり、したがって生来の位置に人工弁を導入するのを困難にし得る。デリバリーカテーテル(62)に沿って人工弁(12)を滑らかに摺動させるために、各テザー部(44)は、人工僧帽弁(12)と共に巻縮されながら管状のカテーテル内に収容され得ることが熟慮される。管状のカテーテルは、ステンレス鋼、ニチノール、ナイロン、ポリエステル、PTFE、EBAX(ナイロンコポリマー)、PET、PUR、EVA、または外注ブレンド材料などで作ることができる。管状のカテーテルは、人工僧帽弁(12)の上部のフレア状の部分(13)の開口部(24)内に嵌合するように寸法決めされ得ることがさらに熟慮される。管状のカテーテルは、生来の弁内でアンカー(30)に連結されたテザー(44)の遠位端へと伸長して、主要なデリバリーシース(62)内でテザーがからまるのを防ぎ得る。手術では、一旦人工僧帽弁(12)が生来の左心房(9)内で偏向可能なデリバリーシースの先端(65)に位置づけられると、管状のカテーテルは人工僧帽弁(12)の解放に先立って取り外され得る。
【0094】
図28に例示されるように、生来の弁輪にステント(31)をロックする方法はロック装置(70)を使用して達成可能であり、それはテザー部(44)に取り付けられ得る。ロック装置(70)は、人工僧帽弁(12)を展開させた後に、連続して個別に、または同時に搬送され得る。ロック装置(70)を使用して人工弁(12)を固定することにより、病的な弁の弁輪は、すでに生来の組織に植え込まれているアンカー(30)に連結された複数のテザーを引っ張ることによって人工器官(12)の形状に作り変えられ得ることが理解されるべきである。拡張輪に関する一実施例では、弁輪(4)上のアンカー(30)の間の距離は、ステント(31)の上部のフレア状の部分(13)上の中空構造(24)の間の距離よりも大きいだろう。したがって、ロック装置を運ぶ間にテザー(44)を引っ張ると、拡張した病的な弁輪の直径を引き締め得る、または減少させ得る。この態様では、テザーに沿った任意の好ましい位置にロック装置を配置するこのシステムは、弁輪上へのアンカー(30)の配置に関してわずかな誤差を許容する。
【0095】
ロックハウジング構造(51)はその後、
図32に例示されるように、デリバリーシース(62)内に装填され得る。一態様では、ロックハウジング構造(51)は、テザー(44)とロックデリバリーカテーテル(57)を動作可能に収容するように構成され得る。一態様では、ロックハウジング構造(51)は、近位部(53)と遠位部(52)を規定し得、遠位部(52)は、
図32Aに示されるように、テザーが通過するための複数のルーメン(54)を含む。遠位部(52)は、ステント(31)の上部のフレア状の部分(13)に隣接して位置づけられる。随意に、ロックハウジング構造(51)の遠位先端の一部のみが、テザー(44)が通過するための複数のルーメン(54)を規定するように構成され得る。
【0096】
別の態様では、ロックハウジング構造カテーテル(51)は、
図33A-33Bに例示される形状と構成をもった複数のルーメン(54)を有し得る。この態様では、これらのルーメンの寸法は、ロック装置デリバリーカテーテル(57)の全体を収容するように構成される。2つ以上のロック装置(70)は、高頻度ペーシングが適所にある間、人工弁の解放で同時に搬送されてもよいことが熟慮される。従って、ロックハウジング構造(51)の多数のルーメン(54)は、2つ以上のロック装置の迅速な搬送を可能にする。
【0097】
図33を参照すると、ロックハウジング構造(51)の遠位部(52)の外部壁は、ステントの2つ以上の鳩目(77)を挿入するための2つ以上のくぼみ(76)を有することが熟慮される。この態様では、ステントの2つ以上の鳩目(77)は、
図34に示されるように、ステントシース(75)にステントを装填するために使用され得る。巻縮されたデバイス(74)はその後、
図31に例示されるように、ステントシース(75)内に装填され得る。ロックハウジング構造(51)、巻縮されたステント(74)、およびテザー(44)の断面図は、
図35に例示される。
【0098】
ロック装置(70)は、少なくとも1つのテザー(44)が通過するのを可能にする通路を伴った構造を含み得ることが熟慮される。さらなる態様では、ロック装置(70)は、テザー(44)の指定の部分内にロックされるように操作され得る。一態様では、
図28に例示されるように、ロック装置(70)は限定されないが管状構造として構成することができ、それは、管状構造の1つの側壁から放射状に内側へ伸長し、および管状構造の反対側に対してきつく接触する1つ以上のタブ(59)を使用して、少なくとも1つのテザー(44)上にきつく締めることができる。テザー(44)は、テザーのずれを防ぐために摩擦と軸抵抗を増大させるように構成される一列になった雄突部を有し得る。この態様では、管状のロック装置(70)は、ロックデリバリーシステムを使用して運ばれ、および解放され得る。
【0099】
一態様では、ロック装置(70)は、少なくとも1つのテザーが通過するための通路を伴った非円形の構造として構成され得る。典型的なロック装置では、
図28Cに例示されるように、少なくとも1つのタブが、ロック装置の少なくとも1つの平らな側面から切られ、および内側へ曲げられる。この態様では、テザー(44)は、ロック装置の側壁に対してきつく接触し得る。この典型的なロック装置のさらなる態様では、タブ(59)の端部は、テザー内に食い込むことがないように鋭利であり得る、または電気研磨され得る。
【0100】
追加の態様では、ロック装置(70)は、
図28Dに例示されるように、各側壁に1つずつある2つのタブ(59)を伴って構成され得る。2つのタブ(59)は、内側へ曲がり、かつロック装置(70)の中心で出会うように構成される。この態様では、両方のタブがテザーを押し付け、テザーとロック装置とのよりきつい接触を可能にし得る。
【0101】
一態様では、
図34に示されるように、ロックデリバリーコンポーネントは、複数のロック(70)、ロックデリバリーカテーテル(57)、ロック支持チューブ(56)、およびロックデリバリーカテーテルハンドル(58)を含む。一態様では、ロック装置(70)の内径は、支持カテーテル(56)の外径よりわずかに大きくてもよく、2つのコンポーネント間の摺動はほとんどまたは全くない。ロック支持カテーテル(56)は堅い部分(82)と可撓性の部分(83)を含み得る。この態様では、堅い部分は、
図29に例示されるように、1つ以上のタブ(59)を開くように、つまりロック装置の壁の方にタブ(59)を押し、それによってテザー(44)が通過できるようにし、それによってテザー(44)に沿ったロック装置(70)の摺動を促すように構成され得る。この態様では、ロック支持カテーテル(56)の可撓性の部分(83)は、カテーテルが用意に屈曲し曲がることを可能にするように構成され、それは弁輪のまわりの異なる位置でのロック装置(70)の搬送を容易にするであろうことが理解されよう。この態様では、ロックデリバリーカテーテル(58)は可撓性カテーテルであり、それはロック支持カテーテル(56)の堅い部分(82)からロック装置を押し出すように従来の方式で操作され、そうするとタブ(59)が解放され、およびロック装置(70)の管状構造内のテザー(44)に連結して、テザー(44)に沿った場所にロック装置を効果的にロックする。さらなる態様では、ロックデリバリーカテーテル(58)は、ロック装置(70)を押し、および搬送するのを促すために、ロック装置(70)に隣接する遠位部において、より小さい直径へと先細りし得る。
【0102】
別の態様では、ロック支持カテーテル(56)は、単一の物質で作られた単一の部分として構成され得る。この態様では、ロック支持カテーテル(56)は可撓性であるように構成され得、そのような構成は限定されないが、ジグザグパターンのレーザー切断、または壁を螺旋状に切り開くことを含む。
【0103】
随意の態様では、デリバリーシステムは、ステントの解放直後に全てのロック(70)が同時に解放されるように構成され得る。この態様では、
図36に例示されるように、ロック(70)は連係機構によって一緒に連結され得、連係機構は、適所に複数のロック支持カテーテル(56)を固定およびロックするように構成された穴が画定されている、堅固な連係構造(78)であり得ることが熟慮される。この態様では、ロック(70)が同時に解放される必要もあるため、第2の連係構造(79)はさらに、複数のロックデリバリーカテーテル(57)を固定するように構成され得る。第1の連係構造(78)と第2の連係構造(79)の両方が、カテーテルシステムに連結して、ステントと同時の解放を可能にするように構成され得ることが熟慮される。
【0104】
動作可能に、人工の僧帽弁(12)のステント(31)とテザー(44)が絡まるのを防ぐ助けとなるように、デリバリーシース(62)の遠位部は、テザー部(44)を受け入れられる大きさに各々作られた、デリバリーカテーテルシース(62)内に形成された少なくとも4つのスロット(55)を有するように構成され得る。
図38は、デリバリーカテーテル(62)の断面図であり、人工弁(12)のステントはデリバリーシース(62)の中央ルーメン内の圧縮位置に収容され、およびスロット(55)はデリバリーシース(62)の壁の厚み内に形成されている。形成されたスロット(55)は、収容されたステント(12)に沿うように、シース内部で均一に間隔を置き得る、または非対称的に間隔を置き得ることがさらに熟慮される。
【0105】
図47を参照すると、人工僧帽弁(12)は、内頚静脈から、上大静脈(66)を通って、そして心房中隔(68)をわたって生来の僧帽弁へと搬送され得る。この典型的な方法では、ガイドワイヤ(63)は内頚静脈の切り口を通じて体内に挿入され得る。ガイドワイヤ(63)は下大静脈(67)を通り、内頚静脈に沿って心臓の右心房へと進む。
【0106】
その後、ガイドワイヤ(63)は、中隔壁(68)を通過することによって左心房(9)内に向かい、次に生来の僧帽弁を通じて取り込まれ、そして左心室(10)に位置づけられる。この方法では、随意の態様において、1つ以上の拡張器は次にガイドワイヤ(63)に沿って進み、経中隔穿孔を開け、デリバリーカテーテル(62)が中隔(63)を通過するのを可能にし得る。
【0107】
図39に例示されたように、いったん心房中隔(68)を超えると、アンカー(30)を展開するために操作可能カテーテルの先端(65)を僧帽弁輪内の第1の所望位置へと曲げることができ、および第1のアンカー(30)は第1の所望位置に植え込まれる。この態様では、第1の所望位置は、左(6b)または右(6a)の三角領域のいずれかにあるのが好ましい。一態様では、好ましい第1の所望位置の実施形態は、左の三角(6b)にある。所望のアンカー(30)がすべて、僧帽弁輪内の所望位置に植え込まれるまで、アンカー(30)は操作可能カテーテル(69)によって連続的に搬送され、および植え込まれる。各アンカー(30)が植え込まれた時、
図40に例示されるように、アンカーデリバリーカテーテル(48)は取り除かれ、およびテザー部(44)は操作可能デリバリーカテーテル(69)内に保持される。
【0108】
続く人工弁置換の展開手順中に、それぞれのアンカー押出カテーテル(51)が人工弁(12)に向かって進み人工弁(12)をアンカー(30)の方へ押すにつれて、アンカー押出カテーテル(51)を誘導するようにテザー部(44)はわずかに張力(tensioned)をかけられ得る。
図41は、生来の僧帽弁における人工弁(12)の位置づけを概略的に例示する。高頻度ペーシングが適所にある間、人工弁(12)の展開手順が行われ得ることがさらに熟慮される。
図42に示される1つの典型的な図では、デリバリーカテーテルの操作可能な先端が後尖の先端の隣りにある、または左心室深くにある場合、ステントデリバリーシース(75)を操作可能な先端(65)の外へと選択的に押すことができる。
【0109】
人工僧帽弁(12)は、ロックハウジング構造カテーテル(51)を押すことによって搬送され得ることが熟慮される。
図43および44で異なる視点から例示されるように、一旦置換人工僧帽弁(12)のステントがデリバリーシースから完全に放出されると、人工僧帽弁(12)の上部のフレア状の部分(13)は、生来の弁輪の上に動作可能に位置し得る。
【0110】
一態様では、2工程の展開手順は、半月形の人工僧帽弁(12)を正常な機能構成内に解放するために実行され得ることが熟慮される。第1の工程では、人工僧帽弁(12)は、生来の僧帽弁輪のレベルにおいて左心室(10)内へと展開され得、その間、人工僧帽弁(12)は、依然として適所にある両端(26a,b)のロック機構を用いて完全な円柱形状を維持し得る。ステント構造上のマーカーが生来の僧帽弁輪の2つの三角(6a,b)に対応し得る方法で、人工僧帽弁(12)は配向され得る。第2の工程では、ステントの両端(26a,b)のロック機構が解放され、および人工僧帽弁(12)は、設計された半円柱形状へと展開されて生来の僧帽弁後尖(2)と置換され得る。
【0111】
その後、人工弁(12)のステントは、アンカー(30)をロックすることによって生来の弁輪に関連する位置にロックされ、ステントの上部のフレア状の部分(13)の開口部が固定され得る。アンカーテザー(44)に張力をかけ、およびアンカーによってステント(31)を適所にロックすることによって、生来の弁輪をステント形状に作り変えることができる。アンカーが非最適な構成で展開された時、すなわちアンカー(30)が不均一な間隔にある、または互いに面外にある時でさえ、ステントをアンカー(30)にロックするための手段は、人工弁(12)のステント(31)が弁輪の適所にロックされ得るように可撓性を提供し得ることが熟慮される。
【0112】
さらなる態様では、人工弁(12)のステント(31)は、アンカーデリバリー部材を使用して、同時にアンカーにロックされ得る。わずかにアンカーデリバリー部材を押しながらテザーを引くことで、弁輪をさらに縮小させ、およびステント(31)を適所にロックした後に弁輪をしっかりつかむことを可能にし得る。
【0113】
一態様では、心臓弁膜置換システムを固着させる方法は、予め植え込まれたドッキングステーション内に人工弁(12)を展開させることにより達成され得、当該人工弁(12)はステントまたは適所に心臓弁膜置換システムを保持することを目的とする構造、輪状形成バンドまたはリング、または室帯またはリングから構成される。予め植え込まれたデバイスよりも大きい直径に拡張し得る心臓弁膜置換システムは、予め植え込まれたデバイス内で展開され得、および追加のアンカーまたは縫合を必要とすることなく動作位置に心臓弁膜置換システム(12)を固着させるのに十分な摩擦力を提供し得ることが、熟慮される。
【0114】
1つの態様では、僧帽弁輪を円周方向にしっかりつかむための随意の手段は
図46に示される。しっかりとつかむためのこの手段は、僧帽弁輪に沿って円周方向に伸長するシンチングテザー(61)を必要とし得る。この態様では、追加のシンチングテザー(61)は、ステント(31)の上部のフレア状の部分(13)に予め取り付けられ得る。随意に、追加のシンチングテザー(61)はアンカー(30)に予め取り付けられ得る。操作上は、いったん人工僧帽弁(12)のステント(31)がアンカー(30)にロックされると、シンチング手順を実行することができる。一実施形態では、このシンチングテザー(61)のロック手段は、アンカー(30)にステントをロックするための手段に類似する設計であり得る。
【0115】
一態様では、
図47に示されるように、人工弁置換を搬送する方法はさらに、必要であれば心房中隔(68)に形成された開口部を閉じる工程を含み得る。いったん中隔が成功裡に閉じられると、デリバリーカテーテル(62)は体内から取り除かれ、そして手順が完了する。
【0116】
一態様では、人工弁(12)は、生来の弁膜の一部を外科的に置換するために構成され得る。人工弁(12)の上部のフレア状の部分(13)はさらに、生来の弁輪の上に置かれ、および生来の僧帽弁輪にそれを縫合することによって強化され得る。この態様では、弁輪(4)内での配置のために複数針の縫合、例えば限定されないが、少なくとも4針の縫合、少なくとも6針の縫合、少なくとも8針の縫合、および/または少なくとも4から10針の縫合が、必要であることが熟慮される。全ての縫合は、後部の弁輪(4)に沿って対照的に間隔を置き得る。全ての縫合は、弁尖-弁輪接合部または弁尖ヒンジから約1~3mm伸長し得る。第1の縫合は、前尖(1)と後内側交連(5b)の間の裂溝に配置され得る。最後の縫合は、前尖(1)と前外側交連(5a)の間の裂溝に配置され得る。縫合の各末端はその後、弁膜の上部のフレア状の部分(13)を通過し得る。一旦全ての縫合が配置されると、人工弁(12)は適所に展開され得る。一旦人工弁(12)が十分に位置づけられると、全ての縫合が結び付けられ得る。
【0117】
さらに、人工弁置換デバイスおよびシステムの機能性を実証するために、ブタの心臓を使用して生体外でのベンチトップテストを行った。人工弁(12)のプロトタイプを、生来の僧帽弁(1,2)内に植え込んだ。ステント(31)の上部のフレア状の部分(13)を、輪状形成術の方法で弁輪上に縫いつけた。
図48Aは、左心室内に圧力のない、受動的な心臓に位置づけた人工弁を示す。人工弁尖(16)および生来の前尖(1)は自由にぶら下がっていた。人工弁の2つの外側端(26a,b)を、前部交連(5a)および後部交連(5b)に配置した。人工弁は、僧帽弁前尖(1)の近接部をカバーしなかった。
図48Bは、囲まれた左心室(10)内に100~120mmHgの範囲の圧力を有する、加圧された心臓に位置づけた人工弁(12)を示す。左心室のレベルで100~120mmHgの圧力を達成することができるように、高架式水タンクを使用した静圧試験を使用して最大圧力を起こした。左心室への水の流入を可能にするために、大動脈をカニューレ処置した。3つの人工弁尖(16)すべてと生来の僧帽弁前尖(1)が、加圧に際して目視可能であった。示されるように、人工弁(12)は成功裡に弁尖の適切な接合をもたらし、それによって逆流性の流れを防いだ。人工弁尖(16)は生来の前尖と接合した。連続的な接合ライン(71)、(A1/16a、A2/16b、A3/16c)は、平面図で目視可能である。弁傍の漏出は加圧中には観察されなかった。
【0118】
ロック装置の機能性を実証するために、ブタの心臓を使用して生体外でのベンチ試験を行った。人工弁の展開に先立ち、アンカーデリバリーカテーテル(48)を使用して5つのアンカー(30)を僧帽弁輪内に位置づけた。その後、人工弁(12)をロックアセンブリと共にカテーテル(62)上に巻縮した。
図49Aに示されるように、弁膜カテーテルを引き戻すことによってまず人工弁を解放した。
図49Bで弁膜を解放した直後に、
図50Aに示されるように、ロックカテーテル(57)を瞬間的に押し出した。
図50Bはロック装置(70)の解放後に撮られ、および90mmHgの圧力が適用され、人工弁(12)が僧帽弁輪に確実に固定されたことを示している。
【0119】
図51A-51Dに示される、デバイスの外科的な概念実証を、生きている動物(すなわちブタ)の試験によって実証した。第1の安全性エンドポイントは動物の健康状態と死からの自由であった。第2の安全性エンドポイントは、デバイスの塞栓または移動がないこと、および植え込み後7日と30日において僧帽弁逆流(MR)グレードの痕跡がないことであった。試験されたすべての動物(n=3)で、第1の安全性エンドポイントが満たされた。3分の2の動物で、第2の安全性エンドポイントが満たされた。特大のデバイスを使用した1匹の動物に人工弁欠陥が1つ起こり、結果として30日目の2+MR(前外側交連における逆流性の噴出)をもたらし、残りの2匹の動物はMRの痕跡がなく臨床的に健康であった。血行動態の評価を、個々の動物に対して、展開後の7日と30日に、コンピューター断層撮影(CT)、心臓透視、心臓内心エコー(ICE)、および経食道心エコー(TEE)を使用して行なった。
【0120】
CT画像は、人工弁(12)の人工弁尖(16)が生来の僧帽弁前尖(1)との適切な接合(71)を生み出したことを一貫して示した。生来の僧帽弁前尖(1)は3つのスカラップ、すなわち(A1)、(A2)および(A3)に分けられる。(A1)は前外側交連にあり、および(A3)は後内側交連にある。僧帽弁輪のレベルにおける僧帽弁の短軸像は、
図51Aでは、生来の前尖(1)および後尖(2)が明確な接合ラインを見せたことを示す。人工弁(12)のすべての人工弁尖(16)と生来の心臓弁膜(1)との間の良好な接合(71)が、
図51B-51Dにさらに示された。
図51Bは、人工後尖(16b)と接合している(A2)における生来の前尖(1)を示し、
図51Cは、人工前外側交連弁尖(16a)と接合している(A1)における生来の前尖(1)を示し、および
図51Dは、人工後内側交連弁尖(16c)と接合している(A3)における生来の前尖(1)を示す。人工弁(12)のステントフレーム(31)は、これらの画像において明確に見ることができ、上部のフレア状の部分(13)と下部の心室部分(14)はそれぞれ弁輪(4)と左心室(10)内に位置づけられていた。30日目において、人工弁のステントフレームからの左心室への障害の形跡はなかった。
【0121】
人工弁尖(16)と生来の弁尖(1)の接合(71)は、さらに心エコー図で例示することができる。
図52の、心収縮中の僧帽弁の心エコー図は、(A2)における生来の前尖(1)が人工弁尖(16b)と接合することができること、および人工弁(12)によるLVOTの閉塞はなかったことを示す。心臓透視は、左心室の収縮中に取り込まれた
図53の一連の画像に示されるように、僧帽弁を通る逆流性の流れを検知するために行なわれた。逆流性の液量は、僧帽弁閉鎖中にほとんどもしくは全く観察されなかった。
【0122】
人工弁(12)の初期の可能性試験は、人工弁(12)が生来の後尖(2)の機能を複製し得ることを示した。データが示すところによれば、人工弁の植え込みで、30日間の試験では、1匹を除いてすべての動物でほとんどもしくは全くMRがなかった。この人工弁(12)は、MRを伴う弁膜の後尖を置換するために使用されてもよく、MRは限定されないが以下のMR機能による区分を含む:輪状拡張または弁尖穿孔/断裂(正常な弁尖運動)を伴うタイプIのMR、乳頭筋と腱索の断裂および/または引き延ばされた腱索(過度の弁尖運動)を伴うタイプIIのMR、僧帽弁組織の厚化と融合に起因する心拡張と心収縮の両方における弁尖の運動制限を伴うタイプIIIaのMR、および頂端側(apico-lateral)の乳頭筋変位および腱の係留をもたらす左心室拡張に起因する、心収縮中の弁尖の運動制限を伴うタイプIIIbのMR。この人工弁(12)を使用することができるMRの病因は、制限されないが一次性または変性のMRを含む。
【0123】
上記の態様は、実装の単なる可能性のある例であり、本開示の原則の明確な理解を単に明らかにしているだけであることが強調されるべきである。本開示の趣旨および原則から実質的に逸脱することなく、多くの変形および修正を上記の実施形態に行うことができる。そのような修正と変形はすべて、本明細書において本開示の範囲内に含まれるように意図され、および個々の態様、または要素または工程の組み合わせに対する全ての可能な請求は、本開示により支持されるように意図される。さらに、特定の用語が本明細書と続く請求項で使用されるが、それらは一般的および記述的な意味においてのみ使用され、記載される発明と続く請求項を制限する意図はない。
【手続補正書】
【提出日】2022-02-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
病的な心臓弁の生来の弁尖を置き換えるための人工心臓弁であって、前記人工心臓弁は、
動作位置で病的な心臓弁の生来の弁輪の少なくとも一部に及ぶように構成される上部のフレア状の部分と、生来の弁輪のほんの一部に及び、動作位置で少なくとも1つの生来の弁尖の動的な運動を可能にするように構成される下部の心室部分を含むフレームを含む、ステント、
フレームの内側表面から放射状に内側へ伸長する少なくとも1つの人工弁尖であって、少なくとも1つの人工弁尖は動作位置で心周期中に開口位置から閉鎖位置まで可動であるように構成される、少なくとも1つの人工弁尖、
フレームの少なくとも一部に取り付けられるシーリングスカート、および、
生来の組織に植え込むように構成される少なくとも一部、およびフレームを選択的に係合してフレームを生来の弁輪に誘導し、フレームを動作位置で生来の弁輪に対して固定するように構成される少なくとも一部を含む、少なくとも1つの誘導と固定の二重式の部材、
を含む、人工心臓弁。
【請求項2】
病的な心臓弁の生来の弁尖を置き換えるための人工心臓弁であって、前記人工心臓弁は、
病的な心臓弁の生来の弁尖内に展開される時、送達中に圧縮位置に圧縮可能であり動作位置に拡張可能なステントであって、ステントは動作位置で生来の弁尖の円周の周辺に完全に伸長するように構成される上部のフレア状の部分、および生来の弁尖の円周の周辺に部分的にのみ伸長し、動作位置で少なくとも1つの生来の弁尖の動的な運動を可能にするように構成される下部の心室部分を含むフレームを含むステント、
フレームの内側表面から放射状に内側へ伸長する少なくとも1つの人工弁尖であって、少なくとも1つの人工弁尖は動作位置で心周期中に開口位置から閉鎖位置まで可動であるように構成される、少なくとも1つの人工弁尖、
フレームの少なくとも一部に取り付けられるシーリングスカート、および、
複数の細長い誘導と固定の二重式の部材であって、各部材は生来の弁輪上または生来の弁輪周辺の生来の組織に植え込むように構成される第1の部分、送達中に生来の弁輪へとフレームを誘導するように構成される第2の部分、および生来の弁輪に対してフレームを固定する第3の部分を含む、複数の細長い誘導と固定の二重式の部材、
を含む、人工心臓弁。
【請求項3】
病的な心臓弁の生来の弁尖を置き換えるための人工心臓弁であって、前記人工心臓弁は、
病的な心臓弁の生来の弁尖内に展開される時、送達中に圧縮位置に圧縮可能であり動作位置に拡張可能なステントであって、ステントは動作位置で生来の弁尖の円周の周辺に完全に伸長するように構成される上部のフレア状の部分、および少なくとも1つの生来の弁尖をカバーするために生来の弁尖の円周の周辺に部分的にのみ伸長し、動作位置で少なくとも1つの他の生来の弁尖の動的な運動を可能にするように構成される下部の心室部分を含むフレームを含むステント、
フレームの内側表面から放射状に内側へ伸長する少なくとも1つの人工弁尖であって、少なくとも1つの人工弁尖は動作位置で心周期中に開口位置から閉鎖位置まで可動であるように構成される、少なくとも1つの人工弁尖、
フレームの少なくとも一部に取り付けられるシーリングスカート、および、
複数の細長い誘導と固定の二重式の部材であって、各部材は生来の弁輪上または生来の弁輪周辺の生来の組織に植え込むように構成される第1の部分、送達中に生来の弁輪へとフレームを誘導するように構成される第2の部分、および生来の弁輪に対してフレームを固定する第3の部分を含む、複数の細長い誘導と固定の二重式の部材、
を含む、人工心臓弁。
【請求項4】
ステントは圧縮位置から伸長された動作位置まで選択的に伸長可能である、請求項1または2に記載の人工心臓弁。
【請求項5】
動作位置で、上部のフレア状の部分は病的な心臓弁の生来の弁輪の全円周をカバーする、請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項6】
上部のフレア状の部分は、展開中に人工心臓弁を誘導し、および/または上部のフレア状の部分を生来の弁輪に固定するために少なくとも1つのアンカーテザーの少なくとも一部が通過できるように構成される上部のフレア状の部分を通って伸長する少なくとも1つの開口部を含む、請求項1から3のいずれか1つに記載の人工心臓弁。
【請求項7】
少なくとも1つの誘導と固定の二重式の部材は、複数の誘導と固定の二重式の部材を含み、上部のフレア状の部分は、展開中に人工心臓弁を誘導し、および/または上部のフレア状の部分を生来の弁輪に固定するために、誘導と固定の二重式の部材のそれぞれのアンカーテザーの少なくとも一部が通過できるように構成される上部のフレア状の部分を通って伸長する少なくとも複数の開口部を含む、請求項1に記載の人工心臓弁。
【請求項8】
上部のフレア状の部分は、展開中に人工心臓弁を誘導し、および/または上部のフレア状の部分を生来の弁輪に固定するために、誘導と固定の二重式の部材のそれぞれのアンカーテザーの少なくとも一部が通過できるように構成される上部のフレア状の部分を通って伸長する少なくとも複数の開口部を含む、請求項2または3に記載の人工心臓弁。
【請求項9】
開口部の各々は円形、正方形、菱形、三角形または非対称の形状のうちの1つを含む、請求項7または8に記載の人工心臓弁。
【請求項10】
開口部の各々は約0.2mm
2
~2mm
2
の間の開口区域を有する、請求項7または8に記載の人工心臓弁。
【請求項11】
フレームの上部のフレア状の部分はフレームの環状寸法を縮小するための機構を含む、請求項1から3のいずれか1つに記載の人工心臓弁。
【請求項12】
フレームはフレームの対向端の間を伸長する長手方向軸を画定し、上部のフレア状の部分は長手方向軸に沿ってステントの下部の心室部分に対する角度を90度と150度(90~150度)の間で画定する、請求項1から3のいずれか1つに記載の人工心臓弁。
【請求項13】
フレームの下部の心室部分の円周領域はその円周に沿って異なる長さを有する、請求項1から3のいずれか1つに記載の人工心臓弁。
【請求項14】
フレームの下部の心室部分は、ステントが生来の弁輪に対して動作可能に位置づけられた時、病的な心臓弁の生来の弁尖を捕らえるように構成される1つ以上の特徴を含む、請求項1から3のいずれか1つに記載の人工心臓弁。
【請求項15】
1つ以上の特徴は病的な心臓弁の生来の弁尖を捕らえるように構成される1つ以上のフランジ、フック、コイル、またはクリップを含む、請求項14に記載の人工心臓弁。
【請求項16】
少なくとも1つの人工弁尖は少なくとも1つの突起構造で構成される、請求項1から3のいずれか1つに記載の人工心臓弁。
【請求項17】
少なくとも1つの突起構造は複数の突起構造を含む、請求項16に記載の人工心臓弁。
【請求項18】
フレームの下部の心室部分は部分的な円柱形状または部分的な円錐形状を含む、請求項1から3のいずれか1つに記載の人工心臓弁。
【外国語明細書】