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特開2022-62066環状構造要素、ウレタン/ウレイド結合及びフリーラジカル重合性官能基を含む化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062066
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】環状構造要素、ウレタン/ウレイド結合及びフリーラジカル重合性官能基を含む化合物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/67 20060101AFI20220412BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20220412BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20220412BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20220412BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20220412BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20220412BHJP
   B29C 64/129 20170101ALI20220412BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20220412BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220412BHJP
   C09D 4/02 20060101ALI20220412BHJP
   C09J 4/02 20060101ALI20220412BHJP
   C09D 11/101 20140101ALI20220412BHJP
【FI】
C08G18/67
C08G18/75
C08F290/06
B33Y80/00
B33Y70/00
B29C64/112
B29C64/129
B29C64/264
B33Y10/00
C09D4/02
C09J4/02
C09D11/101
【審査請求】有
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022004874
(22)【出願日】2022-01-17
(62)【分割の表示】P 2019507264の分割
【原出願日】2017-07-06
(31)【優先権主張番号】62/372,859
(32)【優先日】2016-08-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】505005522
【氏名又は名称】アルケマ フランス
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユイホン・ホー
(72)【発明者】
【氏名】サミート・ジャイン
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム・ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー・クラング
(72)【発明者】
【氏名】ブレンダン・マク・グレイル
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高度の収縮なしに高い硬度及び剛性を与える放射線硬化性配合物に使用できる代替化合物を提供する。
【解決手段】Q-(R)m-RZで示される構造を有する化合物であって、1分子当たり単一のフリーラジカル重合性官能基(Q)、1又は複数のウレタン及び/又はウレイド結合(R)並びに1又は複数の環状構造要素(Z)を含む、硬化時の収縮応力の低減並びに高い硬度及び剛性を示す、インク、3D印刷用樹脂、成形樹脂、コーティング、シーラント及び接着剤の配合に有用な化合物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)による構造を有する化合物であって、
Q-(R-RZ(I)
式中、Qは単一のフリーラジカル重合性官能基を含む部分であり、Rはウレタン/ウレイド含有構造単位であり、Zは少なくとも1つの環状構造要素を含む一価部分であり、各Rは、存在する場合は独立して、Rと同一であるか又は異なるウレタン/ウレイド含有構造単位であるように選択され、各Zは、存在する場合は独立して、少なくとも1つの環状構造要素を含む二価部分であるように選択され、mは0又は1以上の整数である、
化合物。
【請求項2】
Q中の前記単一のフリーラジカル重合性官能基が、モノエチレン性不飽和官能基であり、特にカルボニル基に対してアルファである炭素-炭素二重結合を有する、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Q中の前記単一のフリーラジカル重合性官能基が、アリル基及び(メタ)アクリレート基からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】
Qが、構造HC=C(R)C(=O)-O-R-(ただし、R=H、CH又はCHCH、R=C-Cの直鎖状若しくは分枝状アルキレン基、オリゴエーテル部分又はオリゴエステル部分)を有する基である、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
Qが構造HC=CH-C(=O)OCHCH-を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項6】
mが0又は1~10の整数である、請求項1に記載の化合物。
【請求項7】
Zが、芳香族基及び脂環式基からなる群から選択される少なくとも1つの環状構造要素を含む一価部分である、請求項1~6のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項8】
Zが、単環式、二環式、三環式、四環式、五環式及び六環式炭化水素基からなる群から選択される少なくとも1つの脂環式構造要素を含む一価部分である、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項9】
Zが、トリシクロデカン基を含む一価部分であり、特にTCDがトリシクロデカン基である構造-CH-TCDを有する、請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項10】
mが1又は1より大きい整数であり、各Zが独立して、芳香族基及び脂環式基からなる群から選択される少なくとも1つの環状構造要素を含む二価部分である、請求項1~9のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項11】
mが1以上の整数であり、各Zが独立して、単環式、二環式、三環式、四環式、五環式及び六環式炭化水素基からなる群から選択される少なくとも1つの脂環式構造要素を含む二価部分である、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項12】
mが1以上の整数であり、各Zが独立して、トリシクロデカン基を含む二価部分であり、特にTCDがトリシクロデカン基である構造-CH-TCD-CH-を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項13】
各R及びRが、存在する場合は独立して、構造-O-C(=O)NH-R-NH-C(=O)-O-を有し、Rが、二価炭化水素基であり、特にアルキレン基、脂肪族環含有基及び芳香族環含有基からなる群から選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物と、少なくとも1種の追加のエチレン性不飽和モノマー又はオリゴマーとで構成される硬化性組成物。
【請求項15】
前記少なくとも1種の追加のエチレン性不飽和モノマー又はオリゴマーが、(メタ)アクリレートからなる群から選択され、特に環状、直鎖状及び分枝状のモノ-、ジ-及びトリ-(メタ)アクリレート官能化モノマー及びオリゴマーからなる群から選択される、少なくとも1種の化合物を含む、請求項14に記載の硬化性組成物。
【請求項16】
開始剤、安定剤及び充填剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、請求項14又は15に記載の硬化性組成物。
【請求項17】
請求項14~16のいずれか一項に記載の硬化性組成物の(から生じる)反応生成物である硬化組成物。
【請求項18】
請求項17に記載の硬化組成物を含む物品。
【請求項19】
3次元物品、コーティング物品、積層物品又は印刷物品である、請求項18に記載の物品。
【請求項20】
請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物の製造方法であって、
a)単一のフリーラジカル重合性官能基を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物とジイソシアネートとを、前記単一のフリーラジカル重合性官能基を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物と前記ジイソシアネートとの1:1付加物であり、単一のフリーラジカル重合性官能基、単一のイソシアネート基及びウレタン又はウレイド結合を含む中間生成物を得るために有効な化学量論で反応させる工程と、
b)前記中間生成物と、少なくとも1つの環状構造要素を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物とを反応させる工程と
を含む、方法。
【請求項21】
請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物の製造方法であって、
a)i)単一のフリーラジカル重合性官能基を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物、ii)ジイソシアネート、及びiii)少なくとも1つの環状構造要素を含むジ-ヒドロキシル、ジ-アミノ又はモノ-ヒドロキシ及びモノ-アミノ官能性化合物を、前記単一のフリーラジカル重合性官能基を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物、前記ジイソシアネート及び前記少なくとも1つの環状構造要素を含むジ-ヒドロキシル、ジ-アミノ又はモノ-ヒドロキシ及びモノ-アミノ官能性化合物の1:X:Y付加物であり、単一のフリーラジカル重合性官能基、単一のイソシアネート基及び2以上のウレタン又はウレイド結合を含む中間生成物(ただし、Xは1以上の整数であり、単一のフリーラジカル重合性官能基を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物1モル当たりの、前記付加物中に組み込まれる少なくとも1つの環状構造要素を含むジ-ヒドロキシル、ジ-アミノ又はモノ-ヒドロキシ及びモノ-アミノ官能性化合物のモル数を表し、Y=X+1であり、単一のフリーラジカル重合性官能基を含むモノ-ヒドロキシル及びモノ-アミノ官能性化合物1モル当たりの、前記付加物中に組み込まれるジイソシアネートのモル数を表す)を得るために有効な化学量論で反応させる工程と、
b)前記中間生成物と、少なくとも1つの環状構造要素を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物とを反応させる工程と
を含む、方法。
【請求項22】
請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物の製造方法であって、
a)少なくとも1つの環状構造要素を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物と、ジイソシアネートとを、前記少なくとも1つの環状構造要素を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物と、前記ジイソシアネートとの1:1付加物であり、少なくとも1つの環状構造要素、単一のイソシアネート基及びウレタン又はウレイド結合を含む中間生成物を得るのに有効な化学量論で反応させる工程と、
b)前記中間生成物と、単一のフリーラジカル重合性官能基を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物とを反応させる工程と
を含む、方法。
【請求項23】
請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物の製造方法であって、
a)i)少なくとも1つの環状構造要素を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物、ii)ジイソシアネート及びiii)少なくとも1つの環状構造要素を含むジ-ヒドロキシル、ジ-アミノ又はモノ-ヒドロキシ及びモノ-アミノ官能性化合物を、前記少なくとも1つの環状構造要素を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物、前記ジイソシアネート及び前記少なくとも1つの環状構造要素を含むジ-ヒドロキシル、ジ-アミノ又はモノ-ヒドロキシ及びモノ-アミノ官能性化合物の1:X:Y付加物であり、少なくとも2つの環状構造要素、単一のイソシアネート基及び2以上のウレタン又はウレイド結合を含む中間生成物(ただし、Xは、1以上の整数であり、少なくとも1つの環状構造要素を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物1モル当たりの、前記付加物中に組み込まれる少なくとも1つの環状構造要素を含むジ-ヒドロキシル、ジ-アミノ又はモノ-ヒドロキシ及びモノ-アミノ官能性化合物のモル数を表し、Y=X+1であり、少なくとも1つの環状構造要素を含むモノ-ヒドロキシル及びモノ-アミノ官能性化合物1モル当たりの、前記付加物中に組み込まれるジイソシアネートのモル数を表す)を得るために有効な化学量論で反応させる工程と、
b)前記中間生成物と、単一のフリーラジカル重合性官能基を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物とを反応させる工程と
を含む、方法。
【請求項24】
請求項14~16のいずれか一項に記載の硬化性組成物を硬化させる工程を含む、請求項17に記載の硬化組成物の製造方法。
【請求項25】
請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物を使用して3次元物品を製造する方法であって、
a)請求項1~13のいずれか一項に記載の少なくとも1種の化合物を含む組成物の第1層を表面上にコーティングする工程と、
b)前記第1層を硬化させて硬化第1層を与える工程と、
c)組成物の第2層を前記硬化第1層の上にコーティングする工程と、
d)前記第2層を硬化させて、前記硬化第1層に付着した硬化第2層を与える工程と、
e)前記3次元物品を構築するために、工程c)及びd)を所望の回数繰り返す工程と
を含む、方法。
【請求項26】
前記硬化工程が、前記組成物の層を放射線、好ましくはUV又はEB放射線に露光することによって行われる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
コーティング、接着剤、シーラント、インク、3D印刷用樹脂又は成形用樹脂中の硬化性組成物における請求項1~13のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フリーラジカル重合によって硬化することができる化合物、そのような化合物を調製する方法、並びにそのような化合物を含むか、又はそれに基づく硬化性組成物及び硬化組成物、例えばコーティング、インク、接着剤、成形樹脂及び3D印刷用樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
今のところ、ウレタンアクリレートは伝統的なアクリルプレポリマーよりも改善された機械的性質を示すことが認識されてきた。それ故、そのような化合物は、放射線(例えば、UV)硬化性産業において使用される最高のオリゴマーであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
高度に官能化されたウレタンアクリレート(すなわち1分子当たり2つ以上のアクリレート基を含む化合物)をベースとする配合物は硬化時に速い硬化速度及び高い強度を示すが、それらは高い収縮応力を示すという重大な欠点を有する。硬化(重合)中の収縮の結果として引き起こされる応力は、そのような高度に官能化されたウレタンアクリレートを含有する硬化配合物における衝撃強度及び寸法安定性の程度を大幅に低下させる。これらの属性は、3次元(3D)印刷用樹脂配合物などの最終用途に特に望ましい。これらの理由のために、高度の収縮なしに高い硬度及び剛性を与える放射線硬化性配合物に使用できる代替化合物を開発することが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、フリーラジカル重合によって硬化されるべき組成物に組み込まれると、硬化組成物に高い硬度及び剛性を付与すると同時に、硬化中に組成物によって示される収縮の程度を、特に従来の高官能化ウレタンアクリレートをベースとする組成物と比較して低減又は最小化する化合物のクラスを発見した。これらの化合物(本明細書では便宜上「発明の単官能化合物」と呼ぶことがある。)は、1分子当たり単一のフリーラジカル重合性官能基(例えば、アクリレート、メタクリレート、ビニル又はアリル基などのエチレン性不飽和官能基)、1分子当たり少なくとも1つの環状構造要素(例えばトリシクロデカン部分)並びに1分子当たり少なくとも2つのウレタン(-O-C(=O)-NH-)結合及び/又はウレイド(-NH-C(=O)-NH-)結合を有することを特徴とする。理論に束縛されることを望むものではないが、単一の反応性部位を有することは、そのような化合物を含む組成物の硬化中に起こる収縮量を減らすのに役立ち、一方、(水素結合に関与できる)ウレタン/ウレイド結合及び(1又は複数の)環状構造要素の存在は、硬化組成物のTg(ガラス転移温度)及び/又は剛性(例えばモジュラス)を上昇させるのに役立つと考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0005】
本発明の様々な非限定的な態様は以下のように要約することができる。
【0006】
態様1:式(I)による構造を有する化合物:
Q-(R-RZ(I)
(式中、Qは単一のフリーラジカル重合性官能基を含む部分であり、Rはウレタン/ウレイド含有構造単位であり、Zは少なくとも1つの環状構造要素を含む一価部分であり、各Rは、存在する場合は独立して、Rと同一であるか又は異なるウレタン/ウレイド含有構造単位であるように選択され、各Zは存在する場合は独立して、少なくとも1つの環状構造要素を含む二価部分であるように選択され、mは0又は1以上の整数である。)。
【0007】
態様2:Q中の単一のフリーラジカル重合性官能基が、モノエチレン性不飽和官能基であり、特にカルボニル基に対してアルファである炭素-炭素二重結合を有する、態様1に記載の化合物。
【0008】
態様3:Q中の単一のフリーラジカル重合性官能基が、カルボニル基に対してアルファである炭素-炭素二重結合を有する官能基である、態様1又は2に記載の化合物。
【0009】
態様4:Q中の単一のフリーラジカル重合性官能基が、アリル基及び(メタ)アクリレート基からなる群から選択される、態様1~3に記載の化合物。
【0010】
態様5:Qが、構造HC=C(R)C(=O)-O-R-(ただし、R=H、CH又はCHCH、R=C-Cの直鎖状若しくは分枝状のアルキレン基、オリゴエーテル部分又はオリゴエステル部分)を有する基である、態様1~4に記載の化合物。
【0011】
態様6:Qが構造HC=CH-C(=O)OCHCH-を有する、態様1~4に記載の化合物。
【0012】
態様7:mが0又は1~10である、態様1~6のいずれか1つに記載の化合物。
【0013】
態様8:mが1~10の整数である、態様1~7のいずれか1つに記載の化合物。
【0014】
態様9:Zが、芳香族基及び脂環式基からなる群から選択される少なくとも1つの環状構造要素を含む一価部分である、態様1~8のいずれか1つに記載の化合物。
【0015】
態様10:Zが、単環式、二環式、三環式、四環式、五環式及び六環式炭化水素基からなる群から選択される少なくとも1つの脂環式構造要素を含む一価部分である、態様1~9のいずれか1つに記載の化合物。
【0016】
態様11:Zが、トリシクロデカン基を含む一価部分であり、特にTCDがトリシクロデカン基である構造-CH-TCDを有する、態様1~10のいずれか1つに記載の化合物。
【0017】
態様12:Zが、TCDがトリシクロデカン基である構造-CH-TCDを有する、態様1~11のいずれか1つに記載の化合物。
【0018】
態様13:mが1又はそれより(1より)大きい整数であり、各Zが独立して、芳香族基及び脂環式基からなる群から選択される少なくとも1つの環状構造要素を含む二価部分である、態様1~12に記載の化合物。
【0019】
態様14:mが1以上の整数であり、各Zが独立して、単環式、二環式、三環式、四環式、五環式及び六環式炭化水素基からなる群から選択される少なくとも1つの脂環式構造要素を含む二価部分である、態様1~13に記載の化合物。
【0020】
態様15:mが1以上の整数であり、各Zが独立して、トリシクロデカン基を含む二価部分であり、特にTCDがトリシクロデカン基である構造-CH-TCD-CH-を有する、態様1~14に記載の化合物。
【0021】
態様16:mが1又はそれ以上(1より大きい整数)の整数であり、各Zが独立して、TCDがトリシクロデカン基である構造-CH-TCD-CH-を有する、態様1~15に記載の化合物。
【0022】
態様17:各R及びRが、存在する場合は独立して、構造-O-C(=O)NH-R-NH-C(=O)-O-を有し、Rが、二価炭化水素基であり、特にアルキレン基、脂肪族環含有基及び芳香族環含有基からなる群から選択される、態様1~16のいずれか1つに記載の化合物。
【0023】
態様18:各R及びRが、存在する場合は独立して、構造-O-C(=O)NH-R-NH-C(=O)-O-を有し、Rが、アルキレン基、脂肪族環含有基及び芳香族環含有基からなる群から選択される二価炭化水素基である、態様1~17のいずれか1つに記載の化合物。
【0024】
態様19:態様1~18のいずれか1つに記載の少なくとも1種の化合物と、少なくとも1種の追加のエチレン性不飽和モノマー又はオリゴマーとで構成される硬化性組成物。
【0025】
態様20:少なくとも1種の追加のエチレン性不飽和モノマー又はオリゴマーが、(メタ)アクリレートからなる群から選択され、特に環状、直鎖状及び分枝状のモノ-、ジ-及びトリ-(メタ)アクリレート官能化モノマー及びオリゴマーからなる群から選択される、少なくとも1種の化合物を含む、態様19に記載の硬化性組成物。
【0026】
態様21:少なくとも1種の追加のエチレン性不飽和モノマー又はオリゴマーが、環状、直鎖状及び分枝状のモノ-、ジ-及びトリ-(メタ)アクリレート官能化モノマー及びオリゴマーからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を含む、態様19又は20に記載の硬化性組成物。
【0027】
態様22:開始剤、安定剤及び充填剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む、態様19~21のいずれか1つに記載の硬化性組成物。
【0028】
態様23:態様19~22のいずれか1つに記載の硬化性組成物(の硬化)(により生じる生成物)の反応生成物である硬化組成物。
【0029】
態様24:態様23に記載の硬化組成物を含む物品。
【0030】
態様25:3次元物品、コーティング物品、積層物品又は印刷物品である、態様24に記載の物品。
【0031】
態様26:以下の工程を含む、態様1~18に記載の化合物の製造方法:
a)単一のフリーラジカル重合性官能基を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物とジイソシアネートとを、前記単一のフリーラジカル重合性官能基を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物と前記ジイソシアネートとの1:1付加物であり、単一のフリーラジカル重合性官能基、単一のイソシアネート基及びウレタン又はウレイド結合を含む中間生成物を得るために有効な化学量論で反応させる工程と、
b)前記中間生成物と、少なくとも1つの環状構造要素を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物とを反応させる工程。
【0032】
態様27:以下の工程を含む、態様1~18に記載の化合物の製造方法:
a)i)単一のフリーラジカル重合性官能基を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物、ii)ジイソシアネート、及びiii)少なくとも1つの環状構造要素を含むジ-ヒドロキシル、ジ-アミノ又はモノ-ヒドロキシ及びモノ-アミノ官能性化合物を、前記単一のフリーラジカル重合性官能基を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物、前記ジイソシアネート及び前記少なくとも1つの環状構造要素を含むジ-ヒドロキシル、ジ-アミノ又はモノ-ヒドロキシ及びモノ-アミノ官能性化合物の1:X:Y付加物であり、単一のフリーラジカル重合性官能基、単一のイソシアネート基及び2以上のウレタン又はウレイド結合を含む中間生成物(ただし、Xは1以上の整数であり、単一のフリーラジカル重合性官能基を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物1モル当たりの、前記付加物中に組み込まれる少なくとも1つの環状構造要素を含むジ-ヒドロキシル、ジ-アミノ又はモノ-ヒドロキシ及びモノ-アミノ官能性化合物のモル数を表し、Y=X+1であり、単一のフリーラジカル重合性官能基を含むモノ-ヒドロキシル及びモノ-アミノ官能性化合物1モル当たりの、前記付加物中に組み込まれるジイソシアネートのモル数を表す。)を得るために有効な化学量論で反応させる工程と、
b)前記中間生成物と、少なくとも1つの環状構造要素を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物とを反応させる工程。
【0033】
態様28:以下の工程を含む、態様1~18に記載の化合物の製造方法:
a)少なくとも1つの環状構造要素を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物と、ジイソシアネートとを、前記少なくとも1つの環状構造要素を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物と、前記ジイソシアネートとの1:1付加物であり、少なくとも1つの環状構造要素、単一のイソシアネート基及びウレタン又はウレイド結合を含む中間生成物を得るのに有効な化学量論で反応させる工程と、
b)前記中間生成物と、単一のフリーラジカル重合性官能基を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物とを反応させる工程。
【0034】
態様29:以下の工程を含む、態様1~18に記載の化合物の製造方法:
a)i)少なくとも1つの環状構造要素を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物、ii)ジイソシアネート及びiii)少なくとも1つの環状構造要素を含むジ-ヒドロキシル、ジ-アミノ又はモノ-ヒドロキシ及びモノ-アミノ官能性化合物を、前記少なくとも1つの環状構造要素を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物、前記ジイソシアネート及び前記少なくとも1つの環状構造要素を含むジ-ヒドロキシル、ジ-アミノ又はモノ-ヒドロキシ及びモノ-アミノ官能性化合物の1:X:Y付加物であり、少なくとも2つの環状構造要素、単一のイソシアネート基及び2以上のウレタン又はウレイド結合を含む中間生成物(ただし、Xは、1以上の整数であり、少なくとも1つの環状構造要素を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物1モル当たりの、前記付加物中に組み込まれる少なくとも1つの環状構造要素を含むジ-ヒドロキシル、ジ-アミノ又はモノ-ヒドロキシ及びモノ-アミノ官能性化合物のモル数を表し、Y=X+1であり、少なくとも1つの環状構造要素を含むモノ-ヒドロキシル及びモノ-アミノ官能性化合物1モル当たりの、前記付加物中に組み込まれるジイソシアネートのモル数を表す。)を得るために有効な化学量論で反応させる工程と、
b)前記中間生成物と、単一のフリーラジカル重合性官能基を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物とを反応させる工程。
【0035】
態様30:態様1~18のいずれか1つに記載の少なくとも1種の化合物で構成される硬化性組成物を硬化させる工程を含む、態様23による硬化組成物の製造方法。
【0036】
態様31:以下の工程を含む、態様1~18のいずれか1つに記載の化合物を使用して3次元物品を製造する方法と、
a)態様1~18のいずれか1つに記載の少なくとも1種の化合物を含む組成物の第1層を表面上にコーティングする工程と、
b)前記第1層を硬化させて硬化第1層を与える工程と、
c)組成物の第2層を前記硬化第1層の上にコーティングする工程と、
d)前記第2層を硬化させて、前記硬化第1層に付着した硬化第2層を与える工程と、
e)前記3次元物品を構築するために、工程c)及びd)を所望の回数繰り返す工程。
【0037】
態様32:硬化工程が、組成物の層を放射線、好ましくはUV又はEB放射線に露光することによって行われる、態様31に記載の方法。
【0038】
態様33:コーティング、接着剤、シーラント、インク、3D印刷用樹脂又は成形用樹脂中の硬化性組成物における態様1~18のいずれかに記載の化合物の使用。
【0039】
本発明の単官能化合物
本発明の単官能化合物は、以下の一般式(I)に対応するように特徴付けることができる:
Q-(R-RZ(I)
Qは単一のフリーラジカル重合性官能基、すなわちフリーラジカル機構を介して進行する硬化又は重合反応に関与することができる官能基を含む部分である。部分Q中に存在するフリーラジカル重合性官能基は、化合物中に存在する唯一のそのような官能基である。一実施形態では、フリーラジカル重合性官能基はエチレン性不飽和官能基である。本発明での使用に適したエチレン性不飽和官能基としては、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合、特にフリーラジカル反応に関与することができる炭素-炭素二重結合を含み、前記炭素-炭素二重結合の少なくとも1つの炭素が、第2の分子中の原子、特に炭素原子に共有結合するようになる基が挙げられる。そのような反応は重合又は硬化をもたらし、それによってエチレン性不飽和官能基を含む化合物は重合マトリックス又はポリマー鎖の一部となる。炭素-炭素二重結合は、例えば、α,β-不飽和カルボニル部分、例えば、アクリレート官能基(HC=CH-C(=O)O-)又はメタクリレート官能基(HC=C(CH)-C(=O)O-)などのα,β-不飽和エステル部分の一部として存在してもよい。炭素-炭素二重結合は、エチレン性不飽和官能基中にビニル基-CH=CH(例えば、アリル基、-CH-CH=CH)の形態でも存在してもよい。
【0040】
フリーラジカル重合性官能基以外のQ部分の残りがある場合、それは、前記フリーラジカル重合性官能基を本発明の単官能化合物中のR(この場合m=1以上)又はR(この場合m=0)に連結させるように機能する任意の適切な基又は構造要素であり得る。Q部分のそのような残りは、フリーラジカル重合性官能基が依然としてフリーラジカル硬化又は重合反応に関与することができ、Q部分の残りがそのような硬化又は重合を不利に干渉しないという条件の任意の構造であり得る。例えば、フリーラジカル重合性官能基は、R若しくはRに直接結合するか、又はアルキレン、アリーレン、アラルキレン、オキシアルキレン若しくは他のそのような連結基を介してR若しくはRに結合することができる。そのような結合又は連結は、R又はR中のウレタン又はウレイド結合の一部を形成する酸素又は窒素原子に対するものであり得る。
【0041】
本発明の単官能化合物中のQとしての使用に適した部分の実例としては、限定するものではないが、例えば、構造HC=C(R)C(=O)-O-R-(式中、RはH又はCHであり、Rは例えば2~12の炭素原子を含む直鎖、環状又は分枝状のアルキレン基である。)を有するアルキレン(メタ)アクリレート部分が挙げられる。Rは、例えば、-CHCH-、-CHCH(CH)-、-CHCHCH-、CHCHCHCH-、シクロヘキシル、-CH-CyHx-(式中、CyHx=シクロヘキサン)などであり得る。他の実施形態では、Rは-CHCH-[OC(=O)C10-(式中、n=1~4の整数(例えばC10は-(CH-であり得る。))であり得る。Rはまた、オリゴエーテル部分(すなわち、オキシエチレン及び/又はオキシプロピレンなどのオキシアルキレン単位を1又は複数、例えば1~6含む部分)又はオリゴエステル部分(例えば、-OC(=O)(CH-(式中、pは2以上の整数、例えば2~8である。)などのエステル単位を1又は複数含む部分)であり得る。
【0042】
適切なQ部分の特定の非限定的な例としては、HC=CHC(=O)OCHCH-、HC=CHC(=O)OCHCHCH-、HC=CHC(=O)OCHCH(CH)-及びそのメタクリレート類似体などが挙げられる。
【0043】
式(I)において、mは0であっても、又は1以上の整数であってもよい。例えば、mは1、2、3、4、5又はそれ以上であり得、mの値が異なる本発明の単官能化合物の混合物が本発明において企図される。
【0044】
m=0である実施形態では、部分Qは、ウレタン/ウレイド含有構造単位(すなわち、少なくとも1つのウレタン及び/又はウレイド基で構成される構造単位)であるRに直接結合している。本発明の一実施態様では、Rは2つのウレタン基若しくは2つのウレイド基又は1つのウレタン基と1つのウレイド基とを含む。ウレタン基は構造-O-C(=O)-NH-に対応し、一方、ウレイド基は構造-NH-C(=O)-NH-又は-NR-C(=O)-NH-(式中、Rは、例えばC-Cアルキル基であり得る。)に対応する。後でより詳細に説明するように、ウレタン構造単位は、ヒドロキシル基(-OH)とイソシアネート基(OCN-)との反応によって形成され得るが、ウレイド構造単位は、第一級又は第二級アミノ基(-NH又は-NHR)とイソシアネート基との反応によって形成され得る。本発明の特定の実施形態(m=0の場合)では、R中のウレタン又はウレイド基は、Rを部分Qに連結するように機能する。すなわち、R中のウレタン又はウレイド基は、Q中の原子(例えば、炭素原子)に結合する。他の実施形態によれば、R中のウレタン又はウレイド基は、Z中の原子(例えば、炭素原子)に結合する。本発明の特定の実施形態では、R中の1つのウレタン又はウレイド基は、RとQとを連結し、第2のウレタン又はウレイド基はRとZとを連結する。したがってこのような実施形態では、Rは一般構造-T-C(=O)NH-R-NH-C(=O)-T-(式中、T及びTは独立して、-O-、-NH-又は-NR-であり、Rは、二価炭化水素基(例えば、脂肪族、芳香族、脂環式、アラルキルなどであり得る。)などの連結部分であり、Rは、H以外の置換基、例えばアルキル基である。)に対応し得る。本発明の単官能化合物を合成する目的でジイソシアネートが使用されている実施形態では、Rは、イソシアネート基以外のジイソシアネートの残基(例えば、イソホロンがジイソシアネートとして使用されている場合はイソホロン残基)を表す。
【0045】
Zは、少なくとも1つの環状構造要素を含む、Rに結合した一価部分である。環状構造要素を部分Zに含めることは、硬化(重合)時に、いずれの環状構造要素も含まないウレタン(メタ)アクリレートをベースとする硬化組成物と比較して、より高い硬度及び剛性などの改善された機械的性質を有する硬化組成物をもたらす単官能化合物を提供することが分かった。本発明の特定の実施形態(mが1以上の整数である場合)では、本発明の単官能化合物はまた、それぞれが少なくとも1つの環状構造要素を含む1又は複数のZ部分を含む。
【0046】
部分Z及び部分Zに含まれる(1又は複数の)環状構造要素(存在する場合)は、炭素、酸素、窒素及び硫黄原子からなる群から選択される原子を含む(それによって形成される)任意の環式構造であり得る。本発明の単官能化合物がZ部分に加えてZ部分を含む実施形態では、Z及びZのそれぞれの環状構造要素は互いに同じであっても、異なっていてもよい。本発明の単官能化合物が2以上のZ部分を含む実施形態では、そのようなZ部分中の(1又は複数の)環状構造要素は、互いに同じであっても異なっていてもよく、Z中に存在する(1又は複数の)環状構造要素と同じであっても異なっていてもよい。部分Z及びZはいかなるフリーラジカル重合性官能基も含まない。本発明の特定の態様において、(1又は複数の)環状構造要素は脂肪族炭化水素環(特に飽和脂肪族炭化水素環)、芳香族炭化水素環、複素環及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0047】
適切な脂肪族炭化水素環としては、単環式脂肪族炭化水素環及び多環式脂肪族炭化水素環、特に飽和単環式脂肪族炭化水素環及び飽和多環式脂肪族炭化水素環が挙げられる。単環式脂肪族炭化水素環としては、限定するものではないが、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環若しくはシクロオクタン環などのシクロアルカン環、又は一般にC-C10シクロアルカン環が挙げられる。
【0048】
適切な多環式脂肪族炭化水素環としては、限定するものではないが、ノルボルナン環、ビシクロ[3.2.1]オクタン環、ビシクロ[4.3.2]ウンデカン環、アダマンタン環、トリシクロデカン環又はテトラシクロドデカン環などの架橋環、並びにスピロ環が挙げられる。適切な芳香族炭化水素環としては、限定するものではないが、ベンゼン環などの単環式芳香族炭化水素環及びナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、フルオレン環、インデン環又はピレン環などの縮合ベンゼン環に代表される多環式芳香族炭化水素環が挙げられる。
【0049】
適切な複素環としては、限定するものではないが、(1又は複数の)炭素原子と(1又は複数の)酸素原子とを含む複素環;(1又は複数の)炭素原子と(1又は複数の)窒素原子とを含む複素環;及び(1又は複数の)炭素原子と(1又は複数の)硫黄原子とを含む複素環が挙げられる。より具体的には、適切な複素環としては、オキシラン環、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、モルホリン環、クロマン環、イソクロマン環、テトラヒドロチオフェン環、テトラヒドロチオピラン環、アジリジン環、ピロリジン環、ピペリジン環、ピペラジン環、インドリン環、2,6-ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン環又は1,3,5-トリアザシクロヘキサン環などの非芳香族複素環;並びにチオフェン環、ピロール環、フラン環又はピリジン環などの芳香族複素環が挙げられる。
【0050】
上記の環状構造要素のいずれかを含む環状構造要素は、非置換であっても(環状構造を形成し、R及び/又はRとの結合又は環状構造要素をR及び/又はRに連結する1又は複数の基との結合に関与しない原子が、水素以外の任意の置換基で置換されていない。)、又は置換であってもよい(環状構造を形成し、R及び/又はRとの結合又は環状構造要素をR及び/又はRに連結する1又は複数の基との結合に関与しない原子の1又は複数が、水素以外の置換基、例えば、アルキル基、アリール基、アルカリール基、アルコキシ基、ハライドなどによって、そのような(1又は複数の)置換基が、フリーラジカル硬化性組成物中にその意図された目的のために使用される本発明の単官能化合物の能力に干渉しないことを条件として、置換されている)。本発明の実施形態では、(1又は複数の)環状構造要素は、飽和、非置換の二環式及び三環式炭化水素基からなる群から選択される。(1又は複数の)環状構造要素は、例えば、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン基、トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン基及びビシクロ[2.2.1]ヘプタン基からなる群から選択することができる。
【0051】
本発明の単官能化合物を製造する方法
本発明の単官能化合物は、ジイソシアネート、1分子当たり単一のフリーラジカル重合性官能基を含むモノ-ヒドロキシル若しくはモノ-アミノ官能性化合物及び1分子当たり少なくとも1つの環状構造要素を含むモノ-ヒドロキシル若しくはモノ-アミノ官能性化合物を反応させることにより都合よく調製できる。式(I)中のmが1以上の整数である実施形態では、1分子当たり少なくとも1つの環状構造要素を含むジ-ヒドロキシル、ジアミノ又はモノ-ヒドロキシ及びモノ-アミノ官能性化合物もまた反応体として利用される。
【0052】
ジイソシアネートは、1分子当たり2つのイソシアネート基を含む化合物である。本明細書で使用される場合、用語「イソシアネート基」は、遊離イソシアネート基(-NCO)及びブロックされたイソシアネート基の両方を含む。単一のジイソシアネート又は異なるジイソシアネートの組み合わせを使用することができる。本明細書での使用に適したジイソシアネートは、限定するものではないが、1分子当たり2つのイソシアネート基を含む公知の又は一般的な化合物から選択することができる。そのような化合物には、分子中に環状構造要素を含まないジイソシアネート(部分Q、R、R、Z及びZに関連して上述した任意の環状構造要素を含む。)、並びに分子中に1又は複数の環状構造要素を含むジイソシアネートが含まれる。分子中に環状構造要素を含まないジイソシアネートは、1,6-ヘキサンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,5-ジイソシアナト-2-メチルペンタン、1,6-ジイソシアナト-2,4,4-トリメチルヘキサン及び2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどのジイソシアネートにより例示される。分子内に環状構造要素を含むジイソシアネートは、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート及びジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート、並びにシクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、エチルシクロヘキサンジイソシアネート、プロピルシクロヘキサンジイソシアネート、メチルジエチルシクロヘキサンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン及び芳香族ジイソシアネートの水素化により調製されるジイソシアネート、及びイソホロンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート並びにそのようなジイソシアネートの組み合わせにより例示される。
【0053】
本発明の単官能化合物の調製での使用に適した1分子当たり単一のフリーラジカル重合性官能基を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物は、最終の本発明の単官能性化合物に望まれるフリーラジカル重合性官能基のタイプに基づいて選択される。そのような化合物は、イソシアネート基と反応してウレタン(ヒドロキシルの場合)結合又はウレイド(アミノの場合)結合を形成することができる、単一のヒドロキシル基(-OH)又は単一のアミノ基(第一級又は第二級)を含む。一実施形態では、フリーラジカル重合性官能基はエチレン性不飽和官能基である。前述のように、本発明での使用に適したエチレン性不飽和官能基としては、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合、特にフリーラジカル反応に関与することができる炭素-炭素二重結合を含み、前記炭素-炭素二重結合の少なくとも1つの炭素が、第2の分子中の原子、特に炭素原子に共有結合するようになる基が挙げられる。そのような反応は重合又は硬化をもたらすことができ、それによってエチレン性不飽和官能基を含む化合物は重合マトリックス又はポリマー鎖の一部となる。炭素-炭素二重結合は、例えば、α,β-不飽和カルボニル部分、例えば、アクリレート官能基(HC=CH-C(=O)O-)又はメタクリレート官能基(HC=C(CH)-C(=O)O-)などのα,β-不飽和エステル部分の一部として存在してもよい。炭素-炭素二重結合は、エチレン性不飽和官能基中にビニル基-CH=CH(例えば、アリル基、-CH-CH=CH)の形態でも存在してもよい。
【0054】
本発明の単官能化合物中に部分Qを導入する目的で使用するのに適した化合物の実例としては、限定するものではないが、例えば、構造HC=C(R)C(=O)-O-R-T-H(式中、RはH又はCHであり、Rは、例えば、2~12の炭素原子を含む直鎖、環状又は分枝状のアルキレン基であり、Tは-O-(酸素)又は-NR-(式中、RはH又はアルキル基などの置換基である。)である。)を有するヒドロキシル-及びアミノアルキル(メタ)アクリレートが挙げられる。Rは、例えば、-CHCH-、-CHCH(CH)-、-CHCHCH-、CHCHCHCH-、シクロヘキシル、-CH-CyHx-CH-(式中、CyHxはシクロヘキサン環)などであり得る。他の実施形態では、Rは、オリゴオキシアルキレン部分(例えば、-(CHCHO)CHCH(式中、nは1以上の整数、例えば、1~6である。)などのオリゴエーテル部分であり得る。Rはまた、-CHCH-[OC(=O)C10-(式中、n=1~4の整数であり、C10は、-CHCHCHCHCH-である。)などのオリゴエステル部分であり得る。
【0055】
1分子当たり単一のフリーラジカル重合性官能基を含む好適なモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物の特定の非限定的な例としては、HC=CHC(=O)OCHCH-OH、HC=C(CH)C(=O)OCHCH-OH、HC=CHC(=O)OCHCHCH-OH、HC=C(CH)C(=O)OCHCHCH-OH、HC=CHC(=O)OCHCH(CH)-OH、HC=C(CH)C(=O)OCHCH(CH)-OH、HC=CHC(=O)O(CHCHO)CHCH-OH(式中、n=1以上の整数、例えば1~6)、HC=C(CH)C(=O)O(CHCHO)CHCH-OH(式中、nは1以上の整数、例えば1~6)、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジオールモノ(メタ)アクリレート、ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシペンチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロピル(メタ)アクリレート、ヒドロキシヘプチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシノニル(メタ)アクリレート、カプロラクトンでキャップされたヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートなど(-OHが-NH又は-NHR(Rはt-ブチル基などのアルキル基)で置き換えられたアミノ類似体、例えばt-ブチルアミノエチルメタクリレートを含む。)、一般に構造HC(=O)N(CHR=CH)CHCHC(=O)OR’OH(R=H又はCH、R’=アルキレン、例えばエチレン、プロピレン、ブチレン)を有する、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのN-ビニルホルムアミド付加物、並びに不飽和アルコール及びアミン並びにアリルアルコール、ヒドロキシスチレンなどのヒドロキシル-及びアミノ置換ビニル芳香族化合物が挙げられる。
【0056】
1分子当たり少なくとも1つの環状構造要素を含むモノ-ヒドロキシル又はモノーアミノ官能性化合物は、本発明の単官能化合物において部分Z(Zは少なくとも1つの環状構造要素を含むRに結合した一価部分である。)の供給源として利用される。適切な環状構造要素は既に詳細に論じられており、そのような環状構造要素と、イソシアネート基と反応してウレタン(ヒドロキシルの場合)結合又はウレイド(アミノの場合)結合を形成することができる単一のヒドロキシル基(-OH)又は単一のアミノ基(第一級又は第二級)とを含む任意の化合物を、本発明の単官能化合物の合成に利用することができる。
【0057】
ヒドロキシル基又はアミノ基は、環状構造要素上で直接置換されていてもよく(すなわち、酸素又は窒素原子は、環状構造の一部である原子、例えば炭素原子に直接結合している。)、又はアルキレン基などの非環状部分を介して環状構造要素に連結していてもよい。1分子当たり少なくとも1つの環状構造要素を含む適切なモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物としては、限定するものではないが、トリシクロデカンメタノール、シクロヘキサノール、シクロヘキサンメタノール、フェノール及び他のフェノール化合物、モノヒドロキシ-ナフタレン、モノヒドロキシ-アントラセン、モノヒドロキシ-ビフェニル並びにそれらのアミノ置換類似体が挙げられる。
【0058】
本発明の単官能化合物に1又は複数のZ部分を導入することが望ましい場合、1分子当たり少なくとも1つの環状構造要素を含む少なくとも1種のジ-ヒドロキシル、ジ-アミノ又はモノ-ヒドロキシ及びモノ-アミノ官能性化合物もまた、上記の他のタイプの反応体と組み合わせて反応体として利用される。そのような化合物は、1又は複数の環状構造要素に加えて、1分子当たり2つのヒドロキシル基、2つのアミノ(第一級又は第二級)基又は1つのヒドロキシル基及び1つのアミノ基を含むことを特徴とする。環状構造要素は、先に詳細に記載されたタイプのうちのいずれであってもよい。
【0059】
そのような化合物としては、ビスフェノール、それらのアルキレンオキシド(例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド)付加物及びそれらの水素化誘導体、例えばビスフェノールA及びそのアルキレンオキシド付加物、ビスフェノールF及びそのアルキレンオキシド付加物、水素化ビスフェノールA及びそのアルキレンオキシド付加物、水素化ビスフェノールF及びそのアルキレンオキシド付加物、シクロヘキサンジオール及びそのアルキレンオキシド付加物、シクロヘキサンジメタノール及びそのアルキレンオキシド付加物、トリシクロデカンジメタノール(そのすべての異性体、例えば、3,8-ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、4,8-ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、3,9-ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン及び4,9-ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン、及びそれらの混合物を含む。)及びそれらのアルキレンオキシド付加物、トリシクロデカンジエタノール及びそのアルキレンオキシド付加物、キシリレングリコール及びそのアルキレンオキシド付加物、ジヒドロキシベンゼン及びそのアルキレンオキシド付加物、ジヒドロキシナフタレン及びそのアルキレンオキシド付加物、ジヒドロキシアントラセン及びそのアルキレンオキシド付加物、ジヒドロキシビフェニル及びそのアルキレンオキシド付加物など、並びにそれらのアミノ官能化類似体が挙げられる。
【0060】
本発明の様々な実施形態では、上述の反応体を、高収率/純度で目的とする本発明の単官能化合物を得るために、制御された化学量論を用いて順次段階的様式で互いに組み合わせ、反応させる。例えば、本発明の単官能化合物の合成は、以下の一般的方法のうちのいずれか1つを用いて実施することができる。
【0061】
方法1:工程1:A+B→A-B
工程2:A-B+C→A-B-C
方法2:工程1:B+C→B-C
工程2:A+B-C→A-B-C
方法3:工程1:A+B+D→A(B-D)
工程2:A(B-D)B+C→A(B-D)B-C
方法4:工程1:D+B+C→(B-D)B-C
工程2:A+(B-D)B-C→A(B-D)B-C
A=1分子当たり単一のフリーラジカル重合性官能基を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物
B=ジイソシアネート
C=1分子当たり少なくとも1つの環状構造要素を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物
D=1分子当たり少なくとも1つの環状構造要素を含むジ-ヒドロキシル、ジ-アミノ又はモノ-ヒドロキシ及びモノ-アミノ官能性化合物
【0062】
方法1及び2は、式(I)中のmが0である実施形態に使用することができ、一方、方法3及び4は、mの値が1以上である場合に使用することができる。各アプローチの各工程が、イソシアネート基とヒドロキシル基又はアミノ基との間のウレタン又はウレイド形成反応に依存する限りにおいて、そのような反応は触媒(例えばスズ触媒)及び/又は加熱の使用により促進させることができる。反応媒体として機能するために不活性溶媒が存在してもよいが、他の実施形態では、反応はそのまま(溶媒なしで)行われる。使用され得る例示的な合成手順のさらなる説明を、以下に提供する。
【0063】
方法1は、以下の工程を含み得る:
a)単一のフリーラジカル重合性官能基を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物とジイソシアネートとを、前記単一のフリーラジカル重合性官能基を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物と前記ジイソシアネートとの1:1付加物であり、単一のフリーラジカル重合性官能基、単一のイソシアネート基及びウレタン又はウレイド結合を含む中間生成物を得るために有効な化学量論で反応させる工程と、
b)前記中間生成物と、少なくとも1つの環状構造要素を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物とを反応させる工程。
【0064】
方法2は、以下の工程を含み得る:
a)i)単一のフリーラジカル重合性官能基を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物、ii)ジイソシアネート及びiii)少なくとも1つの環状構造要素を含むジ-ヒドロキシル、ジ-アミノ又はモノ-ヒドロキシ及びモノ-アミノ官能性化合物を、前記単一のフリーラジカル重合性官能基を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物、前記ジイソシアネート及び前記少なくとも1つの環状構造要素を含むジ-ヒドロキシル、ジ-アミノ又はモノ-ヒドロキシ及びモノ-アミノ官能性化合物の1:X:Y付加物であり、単一のフリーラジカル重合性官能基、単一のイソシアネート基及び2以上のウレタン又はウレイド結合を含む中間生成物(ただし、Xは、1以上の整数であり、単一のフリーラジカル重合性官能基を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物1モル当たりの、前記付加物中に組み込まれる少なくとも1つの環状構造要素を含むジ-ヒドロキシル、ジ-アミノ又はモノ-ヒドロキシ及びモノ-アミノ官能性化合物のモル数を表し、Y=X+1であり、単一のフリーラジカル重合性官能基を含むモノ-ヒドロキシル及びモノ-アミノ官能性化合物1モル当たりの、前記付加物中に組み込まれるジイソシアネートのモル数を表す。)を得るために有効な化学量論で反応させる工程と、
b)前記中間生成物と、少なくとも1つの環状構造要素を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物とを反応させる工程。
【0065】
方法3は、以下の工程を含み得る:
a)少なくとも1つの環状構造要素を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物と、ジイソシアネートとを、前記少なくとも1つの環状構造要素を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物と、前記ジイソシアネートとの1:1付加物であり、少なくとも1つの環状構造要素、単一のイソシアネート基及びウレタン又はウレイド結合を含む中間生成物を得るのに有効な化学量論で反応させる工程と、
b)前記中間生成物と、単一のフリーラジカル重合性官能基を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物とを反応させる工程。
【0066】
方法4は、以下の工程を含み得る:
a)i)少なくとも1つの環状構造要素を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物、ii)ジイソシアネート及びiii)少なくとも1つの環状構造要素を含むジ-ヒドロキシル、ジ-アミノ又はモノ-ヒドロキシ及びモノ-アミノ官能性化合物を、前記少なくとも1つの環状構造要素を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物、前記ジイソシアネート及び前記少なくとも1つの環状構造要素を含むジ-ヒドロキシル、ジ-アミノ又はモノ-ヒドロキシ及びモノ-アミノ官能性化合物の1:X:Y付加物であり、少なくとも2つの環状構造要素、単一のイソシアネート基及び2以上のウレタン又はウレイド結合を含む中間生成物(ただし、Xは、1以上の整数であり、少なくとも1つの環状構造要素を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物1モル当たりの、前記付加物中に組み込まれる少なくとも1つの環状構造要素を含むジ-ヒドロキシル、ジ-アミノ又はモノ-ヒドロキシ及びモノ-アミノ官能性化合物のモル数を表し、Y=X+1であり、少なくとも1つの環状構造要素を含むモノ-ヒドロキシル及びモノ-アミノ官能性化合物1モル当たりの、前記付加物中に組み込まれるジイソシアネートのモル数を表す。)を得るために有効な化学量論で反応させる工程と、
b)前記中間生成物と、単一のフリーラジカル重合性官能基を含むモノ-ヒドロキシル又はモノ-アミノ官能性化合物とを反応させる工程。
【0067】
所望であれば、方法1~4の手順に従って得られた反応生成物を、例えば溶媒除去、脱色、未反応反応体及び/又は副生成物の除去/分離などの1又は複数のさらなる処理又は精製工程に(例えば、蒸留、抽出、濾過などの技術により)付すことができる。
【0068】
本発明の単官能化合物の使用
本明細書に記載の本発明の単官能化合物は、フリーラジカル重合又は他のタイプの重合(例えばカチオン重合)による硬化に付されるべき組成物の成分として適切に使用することができる。様々な実施形態では、1又は複数種の本発明の単官能化合物が、フリーラジカル重合又は他のそのような手段によって硬化させることもできる1又は複数種の他のタイプの化合物(例えば、従来の又は他の公知の(メタ)アクリレート)と組み合わせて用いられる。
【0069】
そのような組成物の最終用途としては、限定するものではないが、インク、コーティング、接着剤、3D印刷用樹脂、成形用樹脂、シーラントなどが挙げられる。例えば、本発明による1又は複数種の本発明の単官能化合物は、硬化時のコーティング又はインクの収縮を減らすのを助けるだけでなく、そのような配合物の接着特性を改善するためにも、コーティング又はインク配合物において1~20重量%のレベルで利用できる。本発明の単官能化合物はまた、収縮/熱成形可能なインク配合物中に1~50重量%の量で使用して、そのような配合物の接着性及びなじみ性の特徴の改善を助けることができる。さらに別の用途では、本発明の単官能化合物は、硬化時にその配合物に熱可塑性様特性を付与するために3D印刷用樹脂配合物の主成分(例えば50~90重量%)として使用することができる。本発明の単官能化合物は、例えばUV硬化性積層接着剤として又はUV硬化性ホットメルト接着剤として有用な接着剤配合物中の主成分として(例えば50~100重量%で)使用することもできる。
【0070】
本明細書に記載の1又は複数種の本発明の単官能化合物で構成される硬化性組成物から調製された硬化組成物は、例えば3次元物品(3次元物品は本質的に硬化組成物からなるか又は硬化組成物からなる。)、コーティング物品(基材が、硬化組成物の1又は複数の層でコーティングされている。)、積層又は接着された物品(硬化組成物によって物品の第1成分が第2成分に積層又は接着されている。)、又は印刷物品(硬化組成物を用いて、紙、プラスチック又は金属基材などの基材に画像などが刻印されている。)に使用することができる。
【0071】
本発明による1又は複数種の本発明の単官能化合物を含有する組成物の硬化は、フリーラジカル及び/又はカチオン重合などの任意の適切な方法によって実施することができる。フリーラジカル開始剤(例えば、光開始剤、過酸化物開始剤)などの1又は複数種の開始剤が硬化性組成物中に存在してもよい。硬化前に、組成物を任意の公知の従来の方法で、例えばスプレー、ナイフコーティング、ローラーコーティング、キャスティング、ドラムコーティング、浸漬など、並びにそれらの組み合わせによって基材表面に塗布することができる。転写過程を使用する間接適用も使用することができる。基材は、高表面エネルギー基材又は低表面エネルギー基材、例えばそれぞれ金属基材又はプラスチック基材などの任意の市販の基材であってよい。基材は、金属、紙、厚紙、ガラス、熱可塑性樹脂、例えばポリオレフィン、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)及びそれらのブレンド、複合材料、木材、皮革及びそれらの組み合わせを含み得る。接着剤として使用される場合、組成物は2つの基材の間に配置され、次いで硬化されてもよく、それによって硬化組成物が基材を互いに結合する。
【0072】
硬化は、組成物にエネルギーを供給することによって、例えば、組成物を加熱することによって、及び/又は組成物を可視光線若しくは紫外線、赤外線放射及び/又は電子ビーム放射などの放射源に露光することなどによって加速又は促進することができる。したがって、硬化組成物は、硬化によって形成された硬化性組成物の反応生成物と見なすことができる。
【0073】
本発明による組成物の複数の層を基材表面に塗布することができ、この複数の層は同時に(例えば単一線量の放射線に露光することによって)硬化させることができ、あるいは各層を連続的に硬化させ、次いで組成物の追加の層を塗布することができる。
【0074】
本明細書に記載の本発明の単官能化合物は、3D印刷用樹脂配合物、すなわち3D印刷技術を用いて3次元物品を製造する際に使用することを意図した組成物に特に有用である。そのような3次元物品は自立型/自己支持型であり得、1又は複数種の本発明の単官能化合物及び場合により1又は複数種のさらなるフリーラジカル硬化性モノマー及び/又はオリゴマー並びに開始剤、充填剤などの他の成分で構成される、硬化した組成物から本質的になり得る、又はそれからなる。3次元物品はまた、前述の硬化組成物から本質的になるか又はそれからなる少なくとも1つの成分、並びにそのような硬化組成物以外の1又は複数の材料で構成される少なくとも1つの追加の成分(例えば、金属成分又は熱可塑性成分)を含む複合物であり得る。本発明の(1又は複数種の)単官能化合物の存在は、前記本発明の(1又は複数種の)単官能化合物が従来の多官能性ウレタン(メタ)アクリレート(1分子当たり2つ以上のフリーラジカル重合性官能基を含む。)に置き換えられた類似体組成物と比較して、硬化時の組成物の収縮量の低減に役立つ。
【0075】
本発明による1又は複数種の本発明の単官能化合物を使用して3次元物品を製造する方法は、以下の工程を含み得る:
a)本発明による少なくとも1種の本発明の単官能化合物を含む組成物の第1層を表面上にコーティングする工程と、
b)前記第1層を硬化させて硬化第1層を与える工程と、
c)組成物の第2層を前記硬化第1層の上にコーティングする工程と、
d)前記第2層を硬化させて、前記硬化第1層に付着した硬化第2層を与える工程と、
e)前記3次元物品を構築するために、工程c)及びd)を所望の回数繰り返す工程。
【0076】
硬化工程は、組成物中に存在する成分に依存する場合がある任意の適切な手段によって実施することができるが、本発明の特定の実施形態では、硬化は、硬化させるべき層を有効量の放射線(例えば、電子ビーム放射線、紫外線、可視光など)に露光することによって達成される。
【0077】
したがって、様々な実施形態では、本発明は以下の工程を含む方法を提供する:
a)本発明による少なくとも1種の本発明の単官能化合物を含む組成物の第1層を、液体形態で表面上にコーティングする工程と、
b)前記第1層を、露出領域の層の少なくとも部分硬化(例えば、少なくとも80%又は少なくとも90%の硬化)を引き起こすのに十分な強度及び持続時間で化学線に像様露光して、第1露光画像形成断面を形成する工程と、
c)既に露光された画像形成断面上に組成物の追加の層をコーティングする工程と、
d)前記追加の層を、露光領域の追加の層の少なくとも部分硬化(例えば、少なくとも80%又は少なくとも90%の硬化)を引き起こすのに十分な強度及び持続時間で化学線に像様露光して、追加の画像形成断面を形成し、追加の層を先に露光された画像形成断面に接着させる工程と、
e)3次元物品を構築するために、工程c)及びd)を所望の回数繰り返す工程。
【0078】
本発明の単官能化合物に基づく組成物
前述のように、本発明の本発明の単官能化合物を、1又は複数種の他の成分、特に開始剤及び/又は他のタイプのフリーラジカル硬化性化合物と共に配合して、インク、成形樹脂、3D印刷用樹脂、コーティング、シーラント及び接着剤として有用な硬化性組成物を提供することができる。
【0079】
本発明の(1又は複数種の)本発明の単官能化合物との組み合わせでの使用に適したエチレン性不飽和化合物としては、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合、特にフリーラジカル反応に関与することができる炭素-炭素二重結合を含み、前記炭素-炭素二重結合の少なくとも1つの炭素が、第2の分子中の原子、特に炭素原子に共有結合するようになる化合物が挙げられる。そのような反応は重合又は硬化をもたらすことができ、それによってエチレン性不飽和化合物は重合マトリックス又はポリマー鎖の一部となる。本発明の様々な実施形態では、(1又は複数の)追加のエチレン性不飽和化合物は、1分子当たり1、2、3、4、5又はそれ以上の炭素-炭素二重結合を含み得る。異なる数の炭素-炭素二重結合を含む複数のエチレン性不飽和化合物の組み合わせを、本発明の組成物に利用することができる。炭素-炭素二重結合は、α,β-不飽和カルボニル部分、例えば、アクリレート官能基又はメタクリレート官能基などのα,β-不飽和エステル部分の一部として存在してもよい。炭素-炭素二重結合は、追加のエチレン性不飽和化合物中にビニル基-CH=CH(例えば、アリル基、-CH-CH=CH)の形態でも存在してもよい。炭素-炭素二重結合を含む2種以上の異なるタイプの官能基が、追加のエチレン性不飽和化合物中に存在していてもよい。例えば、エチレン性不飽和化合物は、ビニル基(アリル基を含む。)、アクリレート基、メタクリレート基及びそれらの組み合わせからなる群から選択される2以上の官能基を含み得る。
【0080】
本発明の組成物は、様々な実施形態では、本明細書に記載の1又は複数種の本発明の単官能化合物に加えて、フリーラジカル重合(硬化)を受けることができる1又は複数種の(メタ)アクリレート官能性化合物を含み得る。本明細書で使用される時、用語「(メタ)アクリレート」は、メタクリレート(-O-C(=O)-C(CH)=CH)並びにアクリレート(-O-C(=O)-CH=CH)官能基を指す。適切なフリーラジカル硬化性(メタ)アクリレートとしては、1分子当たり1、2、3、4又はそれ以上の(メタ)アクリレート官能基を含む化合物が挙げられ、フリーラジカル硬化性(メタ)アクリレートはオリゴマー又はモノマーであり得る。少なくとも1種の追加のエチレン性不飽和モノマー又はオリゴマーとしては、環状、直鎖状及び分枝状のモノ-、ジ-及びトリ-(メタ)アクリレート官能化モノマー及びオリゴマーからなる群から選択される少なくとも1種の化合物を挙げることができる。
【0081】
本発明の単官能化合物の量に対する追加のフリーラジカル硬化性化合物の量は重要であるとは考えられず、それから得られる組成物又は硬化樹脂において特定の性質を達成するために適切又は望ましいように選択又は制御することができる。
【0082】
適切なフリーラジカル硬化性(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ポリエステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリウレタン(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ官能性(メタ)アクリレートオリゴマー及びそれらの組み合わせが挙げられる。そのようなオリゴマーは、とりわけ本発明の単官能化合物を含む硬化組成物の可撓性、強度及び/又はモジュラスを高めるために、本発明の単官能化合物と組み合わせて選択及び使用することができる。
【0083】
例示的なポリエステル(メタ)アクリレートとしては、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はそれらの混合物とヒドロキシル基末端ポリエステルポリオールとの反応生成物が挙げられる。反応過程は、有意な濃度の残留ヒドロキシル基がポリエステル(メタ)アクリレート中に残るように行われてもよく、又はポリエステルポリオールのすべての、又は本質的にすべてのヒドロキシル基が(メタ)アクリル化されるように行われてもよい。ポリエステルポリオールは、ポリヒドロキシル官能性成分(特にジオール)とポリカルボン酸官能性化合物(特にジカルボン酸及び無水物)との重縮合反応によって製造することができる。ポリヒドロキシル官能性及びポリカルボン酸官能性成分はそれぞれ直鎖、分枝鎖、脂環式又は芳香族構造を有することができ、個別に又は混合物として使用することができる。
【0084】
適切なエポキシ(メタ)アクリレートの例としては、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はそれらの混合物とグリシジルエーテル若しくはエステルとの反応生成物が挙げられる。
【0085】
適切なポリエーテル(メタ)アクリレートとしては、限定するものではないが、アクリル酸又はメタクリル酸又はそれらの混合物とポリエーテルポリオールであるポリエーテロールとの縮合反応生成物が挙げられる。適切なポリエーテロールは、エーテル結合及び末端ヒドロキシル基を含む直鎖状又は分枝状物質であり得る。ポリエーテロールは、テトラヒドロフラン又はアルキレンオキシドなどの環状エーテルを出発分子と開環重合することによって調製することができる。適切な出発分子としては、水、ヒドロキシル官能性物質、ポリエステルポリオール及びアミンが挙げられる。
【0086】
本発明の組成物に使用することができるポリウレタン(メタ)アクリレート(時には「ウレタン(メタ)アクリレート」とも呼ばれる。)には、脂肪族及び/又は芳香族のポリエステルポリオール及びポリエーテルポリオールに基づくウレタン、並びに(メタ)アクリレート末端基でキャップされた脂肪族及び/又は芳香族のポリエステルジイソシアネート及びポリエーテルジイソシアネートが含まれる。適切なポリウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、脂肪族ポリエステル系ウレタンジアクリレートオリゴマー、脂肪族ポリエーテル系ウレタンジアクリレートオリゴマー、並びに脂肪族ポリエステル/ポリエーテル系ウレタンジアクリレートオリゴマーが挙げられる。
【0087】
様々な実施形態では、ポリウレタン(メタ)アクリレートは、脂肪族及び/又は芳香族ジイソシアネートを、OH基末端ポリエステルポリオール(芳香族、脂肪族及び脂肪族/芳香族混合ポリエステルポリオールを含む。)、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリジメチルシロキサンポリオール若しくはポリブタジエンポリオール又はそれらの組み合わせと反応させてイソシアネート官能化オリゴマーを形成し、次いでそれを、ヒドロキシル官能化(メタ)アクリレート、例えばヒドロキシエチルアクリレート又はヒドロキシエチルメタクリレートと反応させて、末端(メタ)アクリレート基を提供することによって調製することができる。例えば、ポリウレタン(メタ)アクリレートは、1分子当たり2、3、4又はそれ以上の(メタ)アクリレート官能基を含むことができる。
【0088】
1又は複数種のウレタンジアクリレートが本発明の特定の実施態様において使用される。例えば、組成物は、(本発明の単官能化合物に加えて)二官能芳香族ウレタンアクリレートオリゴマー、二官能脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー及びそれらの組み合わせを含む少なくとも1種のウレタンジアクリレートを含み得る。特定の実施形態では、商品名CN9782でSartomer USA、LLC(Exton、Pennsylvania)から入手可能なものなどの二官能性芳香族ウレタンアクリレートオリゴマーを、少なくとも1種のウレタンジアクリレートとして使用することができる。他の実施形態では、商品名CN9023でSartomer USA、LLCから入手可能なものなどの二官能性脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマーを少なくとも1種のウレタンジアクリレートとして使用することができる。すべてSartomer USA、LLCから入手可能なCN9782、CN9023、CN978、CN965、CN9031、CN8881及びCN8886は、すべて本発明の組成物中のウレタンジアクリレートとして有利に使用することができる。
【0089】
適切なアクリル(メタ)アクリレートオリゴマー(当技術分野において時として「アクリルオリゴマー」とも呼ばれる。)には、1又は(メタ)アクリレート基で官能化されているオリゴマーアクリル主鎖を有する物質として記載され得るオリゴマーが(オリゴマーの末端に、又はアクリル主鎖に対するペンダントで)含まれる。アクリル主鎖は、アクリルモノマーの繰り返し単位で構成されるホモポリマー、ランダムコポリマー又はブロックコポリマーであり得る。アクリルモノマーは、C-Cアルキル(メタ)アクリレートなどの任意のモノマー(メタ)アクリレート、並びにヒドロキシル、カルボン酸及び/又はエポキシ基を有する(メタ)アクリレートなどの官能化(メタ)アクリレートであり得る。アクリル(メタ)アクリレートオリゴマーは、当技術分野で公知の任意の手順、例えば、その少なくとも一部がヒドロキシル、カルボン酸及び/又はエポキシ基で官能化されているモノマー(例えばヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸、グリシジル(メタ)アクリレート)をオリゴマー化して、官能化オリゴマー中間体を得、次いでそれを1又は複数の(メタ)アクリレート含有反応体と反応させて、所望の(メタ)アクリレート官能基を導入することによって調製することができる。適切なアクリル(メタ)アクリレートオリゴマーは、例えば、Sartomer USA、LLCから、CN820、CN821、CN822及びCN823の製品名で市販されている。
【0090】
本発明での使用に適したフリーラジカル硬化性モノマーとしては、以下のタイプのモノマーが挙げられる(ここで、「官能性」とは、1分子当たりの(メタ)アクリレート官能基の数を指し、例えば、単官能=1分子当たり1つの(メタ)アクリレート基、二官能=1分子当たり2つの(メタ)アクリレート基である。):
i)環状単官能(メタ)アクリレートモノマー、例えば、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート及びそれらのアルコキシル化類似体;
ii)直鎖状及び分枝状の単官能(メタ)アクリレートモノマー、例えば、イソデシル(メタ)アクリレート、エトキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール(メタ)アクリレート及びそれらのアルコキシル化類似体;
iii)環状二官能(メタ)アクリレートモノマー、例えば、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート及びそれらのアルコキシル化類似体;
iv)線状二官能(メタ)アクリレートモノマー、例えば、ポリエチレンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート及びそれらのアルコキシル化類似体;並びに
v)三官能(メタ)アクリレートモノマー、例えば、トリアリルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールトリ(メタ)アクリレート及びそれらのアルコキシル化類似体。
【0091】
そのようなモノマーは、本発明の組成物の粘度を低下させ、組成物を硬化することによって得られる完成品の他の特性の中でも、可撓性、強度及び/又はモジュラスを調整するために使用することができる。
【0092】
適切なフリーラジカル硬化性モノマーの実例としては、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化脂肪族ジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ドデシルジ(メタ)アクリレートシクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、n-アルカンジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジ(メタ)アクリレート、エトキシル化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロポキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレートエステル、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アルコキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、高プロポキシル化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、3,3,5-トリメチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アルコキシル化ラウリル(メタ)アクリレート、アルコキシル化フェノール(メタ)アクリレート、アルコキシル化テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン(メタ)アクリレート、環状トリメチロールプロパンホルマール(メタ)アクリレート、脂環式アクリレートモノマー、ジシクロペンタジエニル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、エトキシル化(4)ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシル化ノニルフェノール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、オクチルデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、及び/又はトリエチレングリコールエチルエーテル(メタ)アクリレート、t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタジエンジ(メタ)アクリレート、アルコキシル化ノニルフェノール(メタ)アクリレート、フェノキシエタノール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールエチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールブチルエーテル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールメチルエーテル(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ/ヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシル化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジ-トリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシル化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化グリセリルトリ(メタ)アクリレート、プロポキシル化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート及びトリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0093】
本発明の単官能ウレタンと組み合わせて使用され得るフリーラジカル硬化性化合物の特に有利なタイプとしては、限定するものではないが、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、アクリル(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ官能性オリゴマー、環状単官能モノマー、直鎖状及び分枝状単官能モノマー、環状二官能モノマー、三官能モノマー及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0094】
本発明の特定の実施形態では、硬化性組成物は、1又は複数種の溶媒、特に1又は複数種の有機溶媒を含有してもよく、これらは非反応性有機溶媒であってもよい。様々な実施形態では、(1又は複数種の)溶媒は比較的揮発性であり得、例えば、大気圧において150℃以下の沸点を有する溶媒であり得る。他の実施形態では、(1又は複数種の)溶媒は大気圧において少なくとも40℃の沸点を有し得る。
【0095】
(1又は複数種の)溶媒は、組成物の1又は複数種の成分の可溶化、及び/又は組成物の粘度若しくは他のレオロジー特性の調整を可能にするように選択することができる。
【0096】
しかし、本発明の硬化性組成物は、代替的に、組成物の総重量に基づいて、非反応性溶媒をほとんど又は全く含まない、例えば、10%未満又は5%未満又はさらに0%の非反応性溶媒を含むように配合することができる。そのような無溶媒又は低溶媒組成物は、例えば低粘度反応性希釈剤及び/又は水を含む様々な成分を用いて配合することができ、それらは、たとえ溶媒が存在しなくても、組成物が比較的薄く均一な層を形成するように適切な塗布温度で基材表面に容易に塗布することができる、十分に低い粘度を組成物にもたらすように選択される。
【0097】
適切な溶媒としては、例えば、有機溶媒:アセトン、メチルエチルケトン、イソブチルエチルケトン及びシクロペンタノンなどのケトン(非環式ケトンと環式ケトンの両方);エステル、例えば、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテート;カーボネート類、例えば、ジメチルカーボネート、プロピレングリコールカーボネート及びエチレングリコールカーボネート;アルコール、例えば、エトキシエタノール、メトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノール、メチルアルコール、エチルアルコール、n-プロピルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール及びジアセトンアルコール;芳香族溶媒、例えば、キシレン、ベンゼン、トルエン及びエチルベンゼン;アルカン、例えば、ヘキサン及びヘプタン;グリコールエステル、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、エチレングリコールモノメチルエーテル(2-メトキシエタノール)、エチレングリコールモノエチルエーテル(2-エトキシエタノール)、エチレングリコールモノプロピルエーテル(2-プロポキシエタノール)、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル(2-イソプロポキシエタノール)、エチレングリコールモノフェニルエーテル(2-フェノキシエタノール)、エチレングリコールモノベンジルエーテル(2-ベンジルオキシエタノール)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メチルカルビトール)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(カルビトールセロソルブ)、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル(2-(2-ブトキシエトキシ)エタノール)、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル及びエチレングリコールジブチルエーテル;エーテル、例えば、テトラヒドロフラン、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル;並びにアミド、例えばNMP及びDMF;並びにそれらの組み合わせを挙げることができる。
【0098】
様々な実施形態では、組成物は、ケトン、エステル、カーボネート、アルコール、アルカン、芳香族化合物、エーテル、アミド及びグリコールエーテル並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒を含む。本発明の特定の態様によれば、少なくとも1種の溶媒は、本明細書に記載の硬化性組成物に、基材に塗布するのに十分な流動性をもたらすために十分な量で含まれる。例えば、本発明の様々な実施形態では、本明細書に記載の組成物は、ブルックフィールド粘度計、モデルDV-IIを用い、27スピンドルを使用する(スピンドル速度は典型的には粘度に応じて50~200rpmの間で変動する。)25℃における測定で、4000cPs未満又は3500cPs未満又は3000cPs未満又は2500cPs未満の粘度を有する。
【0099】
特定の実施形態では、少なくとも1種の溶媒は本明細書に記載の硬化性組成物から除去され、その後エネルギー源への露光(放射線、加熱)による硬化が開始される。例えば、溶媒はエネルギー誘起硬化の前に蒸発によって除去することができる。必要に応じて、表面に硬化性組成物の1又は複数の層が塗布された基材は、溶媒の蒸発を促進するために加熱及び/又はガス流に暴露及び/又は真空下に配置することができる。
【0100】
本発明の特定の実施形態では、硬化性組成物は、非反応性溶媒ではなく水を含有するように配合される。そのような組成物は水性系と呼ばれることがあり、組成物の成分の1若しくは複数又はすべてが水中分散液として存在する。乳化剤及び/又は分散剤を使用して、組成物成分の安定な水性分散液を作り、維持することができる。1又は複数種の組成物成分は、特定の実施形態では自己分散性であり得る。そのような水性組成物は、基材の表面に塗布することができ、水は組成物の粘度を低下させるのに役立つ。次いで、組成物の塗布層を(例えば蒸発により)水を除去するように処理し、その後コーティングを(例えば加熱及び/又は放射エネルギーへの露光により)硬化させ得る。本発明の単官能化合物を含む組成物のフリーラジカル重合性成分の(例えば、適切なエネルギー源によるコーティングの照射による)硬化は、水の蒸発後に行うことができる。
【0101】
本発明の特定の実施形態では、本明細書に記載の1又は複数種の本発明の単官能化合物を含有する組成物は少なくとも1種の光開始剤を含み、放射エネルギーにより硬化可能である。例えば、(1又は複数種の)光開始剤は、α-ヒドロキシケトン、フェニルグリオキシレート、ベンジルジメチルケタール、α-アミノケトン、モノ-アシルホスフィン、ビス-アシルホスフィン、ホスフィンオキシド、メタロセン及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。特定の実施形態では、少なくとも1種の光開始剤は、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン及び/又は2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノンであり得る。他の実施形態では、少なくとも1種の光開始剤は、ホスフィンオキシド、特にビス(2,4-6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドであるか、又はそれを含む。
【0102】
適切な光開始剤としては、限定するものではないが、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-クロロアントラキノン、2-ベンジルアントラキノン、2-t-ブチルアントラキノン、1,2-ベンゾ-9,10-アントラキノン、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、α-メチルベンゾイン、α-フェニルベンゾイン、ミヒラーケトン、ベンゾフェノン、4,4’-ビス-(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、アセトフェノン、2,2-ジエチルオキシアセトフェノン、ジエチルオキシアセトフェノン、2-イソプロピルチオキサントン、チオキサントン、ジエチルチオキサントン、1,5-アセトナフチレン、エチルp-ジメチルアミノベンゾエート、ベンジルケトン、α-ヒドロキシケト,2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンジルジメチルケタール、ベンジルケタール(2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタノン)、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパノン-1,2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパノン、オリゴマーα-ヒドロキシケトン、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、エチル-4-ジメチルアミノベンゾエート、エチル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィネート、アニソイン、アントラキノン、アントラキノン-2-スルホン酸、ナトリウム塩一水和物、(ベンゼン)トリカルボニルクロム、ベンジル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾフェノン/1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、50/50ブレンド、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4-ベンゾイルビフェニル、2-ベンジル-2-(ジメチルアミノ)-4’-モルホリノブチロフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、カンファキノン、2-クロロチオキサンテン-9-オン、ジベンゾスベレノン、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、4-(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ジメチルベンジル、2,5-ジメチルベンゾフェノン、3,4-ジメチルベンゾフェノン、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド/2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、50/50ブレンド、4’-エトキシアセトフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、フェニルビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、フェロセン、3’-ヒドロキシアセトフェノン、4’-ヒドロキシアセトフェノン、3-ヒドロキシベンゾフェノン、4-ヒドロキシベンゾフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、2-メチルベンゾフェノン、3-メチルベンゾフェノン、メチルベンゾイルホルメート、2-メチル-4’-(メチルチオ)-2-モルホリノプロピオフェノン、フェナントレンキノン、4’-フェノキシアセトフェノン、(クメン)シクロペンタジエニル鉄(ii)ヘキサフルオロホスフェート、9,10-ジエトキシ及び9,10-ジブトキシアントラセン、2-エチル-9,10-ジメトキシアントラセン、チオキサンテン-9-オン及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0103】
光開始剤の量は重要であるとは考えられないが、中でも、選択された(1又は複数種の)光開始剤、組成物中に存在する(1又は複数種の)フリーラジカル重合可能なエチレン性不飽和化合物の量、使用する放射線源及び放射条件などの要因に応じて適切であり得るように変動してよい。しかし、典型的には、光開始剤の量は、組成物の総重量(存在し得るいかなる水又は非反応性溶媒も含まない。)に基づいて、0.05重量%~5重量%であり得る。
【0104】
本発明の特定の実施形態では、本明細書に記載の硬化性組成物はいかなる開始剤も含まず、電子ビームエネルギーで硬化性である。他の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、加熱時又は促進剤の存在下で分解し、化学的に(すなわち、組成物を放射線に露光する必要なしに)硬化する少なくとも1種のフリーラジカル開始剤を含む。加熱時又は促進剤の存在下で分解する少なくとも1種のフリーラジカル開始剤は、例えば、過酸化物又はアゾ化合物を含んでもよい。この目的に適した過酸化物としては、少なくとも1つのペルオキシ(-O-O-)部分を含む任意の化合物、特に任意の有機化合物、例えばジアルキル、ジアリール及びアリール/アルキルペルオキシド、ヒドロペルオキシド、ペルカーボネート、ペルエステル、過酸、アシルペルオキシドなどを挙げることができる。少なくとも1種の促進剤は、例えば、少なくとも1種の第三級アミン及び/又は金属塩をベースとする1又は複数種の他の還元剤(例えば、鉄、コバルト、マンガン、バナジウムなどの遷移金属のカルボン酸塩及びそれらの組み合わせなど)を含み得る。(1又は複数種の)促進剤は、組成物を加熱又は焼く必要なく組成物の硬化が達成されるように、室温又は周囲温度でフリーラジカル開始剤の分解を促進して活性フリーラジカル種を生成するように選択することができる。他の実施形態では、促進剤は存在せず、組成物はフリーラジカル開始剤の分解を引き起こし、組成物中に存在する(1又は複数種の)フリーラジカル重合性化合物の硬化を開始するフリーラジカル種を生成するのに有効な温度に加熱される。
【0105】
したがって、本発明の様々な実施形態では、本明細書に記載の組成物は、放射線硬化(UV放射線又は電子ビーム硬化)、電子ビーム硬化、化学硬化(加熱時又は促進剤の存在下で分解するフリーラジカル開始剤を用いる、例えば過酸化物硬化)、熱硬化又はそれらの組み合わせからなる群から選択される技術によって硬化可能である。
【0106】
本発明の組成物は、上記の成分の代わりに、又はそれに加えて、1又は複数種の添加剤を任意選択で含有してもよい。そのような添加剤としては、限定するものではないが、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、流動化剤又はレベリング剤、着色剤、顔料、分散剤(湿潤剤)、スリップ剤、充填剤、チキソトロープ剤、艶消剤、いずれのフリーラジカル重合性官能基も含まないアクリル樹脂などの熱可塑性樹脂、ワックス、又はコーティング、シーラント、接着剤、成形若しくはインクの分野で従来から利用されている他の様々な添加剤のいずれかを含む添加剤が挙げられる。
【実施例0107】
[実施例1]
単官能ウレタンの調製
この実施例は、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)及びトリシクロデカンメタノール(TCDM)に基づく、本発明による単官能ウレタンアクリレートの製造を説明する。第一工程において、220gのIPDI(Desmodur(R)I、Covestro製)、0.86gのIrganox(R)1035安定剤(BASF製)及び0.35gのジブチルスズジラウレート触媒(Sigma-Aldrich製)を反応容器に入れた。116gのHEA(日本触媒製)を、撹拌しながらゆっくりと反応容器に添加した。反応容器の内容物を、HEAを添加する速度を制御することによって及び/又は反応容器を水浴で冷却することによって60℃未満に保った。HEAの添加が完了した後、この混合物をさらに1時間60℃に保った。この時点での反応混合物は次の中間生成物(II)を含み、式中、IPはイソホロン部分である:
C=CHC(=O)OCHCHOC(=O)NH-IP-NCO(II)
【0108】
エアスパージを適用し、次いで166gのTCDM(TCDアルコールM、Oxea社製)を、反応混合物の温度を80℃未満に維持するのに有効な速度で、撹拌しながらゆっくりと反応混合物に添加した。次いで、TCDMの添加が完了した後、残留イソシアネート含有量が0.06重量%を下回るまで、反応混合物を撹拌しながら80℃に保持した。得られた生成物は、75℃で9300mPa.s(cP)の粘度を有する透明な液体であった。反応生成物は、以下の構造(III)を有する単官能ウレタンアクリレートを含み、式中、IPはイソホロン部分であり、TCDはトリシクロデカン部分である:
C=CHC(=O)OCHCHOC(=O)NH-IP-NHC(=O)OCH-TCD(III)
【0109】
[実施例2]
この実施例は、本発明による単官能化合物を含有する配合物の調製及び硬化を記載する。
【0110】
以下の成分を使用した:
CN991脂肪族ポリエステル系ウレタンジアクリレートオリゴマー(Sartomer USA、LLC)。
【0111】
SR833Sトリシクロデカンジメタノールジアクリレート(Sartomer USA、LLC)。
【0112】
SR531環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(Sartomer USA、LLC)。
【0113】
単官能ウレタンアクリレートA:実施例1に従って製造した。
【0114】
単官能ウレタンアクリレートB及びC:トリシクロデカンジメタノールモノアクリレート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、トリシクロデカンジメタノール及びトリシクロデカンメタノールの反応生成物。
【0115】
Irgacure(R)819光開始剤(BASF)。
【0116】
配合物2-A及び2-Bはそれぞれ、40重量部のCN991、30重量部のSR833S、10重量部のSR531及び0.5重量部のIrgacure(R)819光開始剤を含有していた。配合物2-Aはさらに20重量部の単官能ウレタンアクリレートAを含有し、配合物2-Bはさらに20重量部の単官能ウレタンアクリレートBを含有し、配合物2-Cはさらに20重量部の単官能ウレタンアクリレートCを含有していた。
【0117】
配合物試験プロトコル
各組み合わせは、標準的な加熱及び混合方法によって調製した。配合物が完全に均質になり完全に混合されたら、典型的には、最初に行うべきは粘度測定の実施である。粘度測定は、ブルックフィールド・カップアンドボブ式粘度計を使用して行い、安定した温度及び粘度読み取りに達するために十分な時間が与えられる。
【0118】
型をシリコーンゴムで成型して、各機械的試験用の試料を調製した。引張試験についてはASTM D638、アイゾット衝撃抵抗についてはASTM D256、ショア硬度についてはASTM D2240、又は曲げ試験についてはISO 78に準拠して、ブレンドを型に流し込んで形状を作製した。型内でブレンドを成型したら、次いで紫外線への暴露を通して硬化させる。600W/in(930kW/m)のV-Bulbスペクトルを有する100fpm(0.508m/s)の線速度を用いて実施例の配合物を硬化させた。硬化したサンプルを型から取り出し、特定のテストのために追加の研磨と切り欠きを行ってもよい。
【0119】
ひずみ速度、予荷重、先端補正(toe compensation)に関する引張試験管理はASTM D638に準拠している。ゲージ長内での破断が想定され、ゲージ長を超える材料破断はサンプル母集団から除外する。典型的なサンプル母集団は、配合物1種当たり(3)3つ超のサンプルである。モジュラス、強度、伸び及び破断点エネルギーの値はすべてASTM D638に概説されており、これに準拠している。
【0120】
ハンマー選択及びサンプル調製に関する衝撃試験管理は、ASTM D256に準拠している。破断は完全破断であることが想定され、部分的破断又は裂けはサンプル母集団から除外する。サンプル母集団は、配合物1種当たり(5)5つ超のサンプルである。衝撃強度値(ジュール/メートル)は、ASTM D256に準拠して記録及び計算する。
【0121】
ASTM D2240に準拠したショア硬度測定を、(3)試験片のサンプル母集団に対して行った。不適切なレベルの硬化を有するサンプルを除外し、値は硬度についてショアDスケールで記録した。
【0122】
モジュラス及び曲げ強度値についての曲げ試験は、ISO-78に準拠した。破断又は最大曲げ強度は5%以内のたわみで想定され、これから逸脱したサンプルを母集団から除外した。モジュラス及び強度の値は、ISO規格に準拠して計算し、比較のために記録した。
【0123】
得られた結果を表1に示す。
【0124】
【表1】
【0125】
[実施例3]
本発明による単官能ウレタンアクリレートが他のタイプの(メタ)アクリルモノマーと組み合わせてどのように機能するかを調べるために追加の試験を行った。配合物を表2に示すように調製し、概して実施例2のプロトコルに従い、配合成分の記載量は重量部である。
【0126】
以下の成分を使用した:
単官能ウレタンアクリレート:実施例1に従って調製した。
【0127】
SR256:2(2-エトキシエトキシ)エチルアクリレート(Sartomer USA、LLC)。
【0128】
SR730:エチルトリグリコールメタクリレート(Sartomer USA、LLC)。
【0129】
SR423:イソボルニルメタクリレート(Sartomer USA、LLC)。
【0130】
CN131:芳香族モノアクリレートオリゴマー(Sartomer USA、LLC)。
【0131】
SR454:エトキシル化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート(Sartomer USA、LLC)。
【0132】
SR531:環状トリメチロールプロパンホルマールアクリレート(Sartomer USA、LLC)。
【0133】
SR833:トリシクロドデカンジメタノールジアクリレート。
【0134】
Irgacure(R)819光開始剤(BASF)。
【0135】
多くのタイプの伝統的なアクリルモノマーと本発明の単官能ウレタンアクリレートとの間の良好な相溶性が見出された。硬化後の配合物の物理的性質を表2に示す。
【0136】
【表2】