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特開2022-62085安定化された薄く広がった金属導電性フィルム、および安定化化合物の供給のための溶液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062085
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】安定化された薄く広がった金属導電性フィルム、および安定化化合物の供給のための溶液
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20220412BHJP
   H01B 5/14 20060101ALI20220412BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20220412BHJP
   C09D 5/24 20060101ALI20220412BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220412BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20220412BHJP
   C23C 18/34 20060101ALI20220412BHJP
   C23C 18/44 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
C09D201/00
H01B5/14 A
B32B15/08 D
C09D5/24
C09D7/61
C09D7/63
C23C18/34
C23C18/44
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022007355
(22)【出願日】2022-01-20
(62)【分割の表示】P 2019520156の分割
【原出願日】2017-10-11
(31)【優先権主張番号】62/408,371
(32)【優先日】2016-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/427,348
(32)【優先日】2016-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514325310
【氏名又は名称】シー3ナノ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】C3Nano Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・シーチアン
(72)【発明者】
【氏名】ホゥ・ヨンシン
(72)【発明者】
【氏名】アジャイ・ビーカー
(72)【発明者】
【氏名】アーサー・ユン-チー・チェン
(72)【発明者】
【氏名】ファラズ・アザディ・マンズール
(72)【発明者】
【氏名】イン-シイ・リ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】金属ナノワイヤー、特に銀ナノワイヤーを用いて形成された薄く広がった金属導電性フィルムの安定性の向上に有効な金属塩系安定剤を提供する。
【解決手段】溶媒と、約0.01重量%~約1重量%の銀ナノワイヤーと、銀金属イオン源と、コバルト+2錯体と、還元剤とを含む分散体であって、前記コバルト+2錯体が、リガンドのコバルトイオンに対するモル当量比が約0.01~約2.6で、Co+2イオンおよびリガンドとを含む、分散体を提供する。また、基材と、前記基材によって支持され融着金属ナノ構造ネットワークを含む透明導電層と、ポリマーバインダーと、コバルト(+2)を含む安定化化合物とを含む透明導電性構造物であって、前記融着金属ナノ構造ネットワークが、前記分散体の湿式コーティングの乾燥により得られる、透明導電性構造物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材によって支持された薄く広がった金属電気導電層と、前記薄く広がった金属導電層に隣接するコーティング層とを含む透明導電性構造物であって、前記コーティング層が、ポリマーマトリックスおよびバナジウム(+5)安定化組成物を含む、透明導電性構造物。
【請求項2】
前記基材が透明ポリマーシートを含み、前記基材と前記薄く広がった金属導電層との間に存在するように前記コーティング層が基材表面上に存在する、請求項1に記載の透明導電性構造物。
【請求項3】
前記薄く広がった金属導電層が前記基材の表面上に存在し、前記薄く広がった金属導電層が前記基材と前記コーティング層との間に存在する、請求項1または請求項2に記載の透明導電性構造物。
【請求項4】
前記コーティング層が約0.1重量%~約9重量%の前記バナジウム(+5)安定化組成物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の透明導電性構造物。
【請求項5】
前記バナジウム(+5)安定化組成物がメタバナジン酸(VO3-)塩、オルトバナジン酸(VO4-3)塩、バナジウムオキシトリアルコキシド(VO(OR)3であり、式中、Rはアルキル基、バナジウムオキシハライド、またはそれらの組合せである、請求項1~4のいずれか一項に記載の透明導電性構造物。
【請求項6】
前記コーティング層が約40nm~約1.5ミクロンの平均厚さを有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の透明導電性構造物。
【請求項7】
前記薄く広がった金属導電層が、約100ohm/sq以下のシート抵抗を有する融着金属ナノ構造ネットワークである、請求項1~6のいずれか一項に記載の透明導電性構造物。
【請求項8】
前記薄く広がった金属導電層が融着金属ナノ構造ネットワークであり、前記コーティング層が約40nm~約1.5ミクロンの平均厚さを有し、前記バナジウム(+5)組成物が、メタバナジン酸アンモニウム(NH4VO3)、バナジン酸テトラブチルアンモニウム(NBu4VO3)、メタバナジン酸カリウム(KVO3)、メタバナジン酸ナトリウム(NaVO3)、オルトバナジン酸ナトリウム(Na3VO4)、バナジウムオキシトリプロポキシド、バナジウムオキシトリエトキシド、バナジウムオキシトリイソプロポキシド、バナジウムオキシトリブトキシド、またはそれらの混合物であり、前記コーティング層が約0.1重量%~約9重量%の前記バナジウム(+5)安定化組成物を含む、請求項1に記載の透明導電性構造物。
【請求項9】
架橋性ポリマー前駆体と、溶媒と、固形分重量に対して約0.1重量%~約9重量%安定化組成物とを含み、前記安定化組成物がバナジウム(+5)イオンを含む、安定化ハードコート前駆体溶液。
【請求項10】
少なくとも約7重量%の溶媒を含む、請求項9に記載の安定化ハードコート前駆体溶液。
【請求項11】
前記溶媒が有機非水性溶媒である、請求項10に記載の安定化ハードコート前駆体溶液。
【請求項12】
前記架橋性ポリマー前駆体が、ポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン、ポリウレタン、アクリル樹脂、アクリルコポリマー、セルロースエーテルおよびエステル、ニトロセルロース、他の水不溶性構造多糖、ポリエーテル、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、フルオロポリマー、スチレン-アクリレートコポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー、ポリスルフィド、エポキシ含有ポリマー、それらのコポリマー、ならびにそれらの混合物を含む、請求項9~11のいずれか一項に記載の安定化ハードコート前駆体溶液。
【請求項13】
架橋のためのラジアル(radial)重合系光開始剤をさらに含む、請求項12に記載の安定化ハードコート前駆体溶液。
【請求項14】
前記安定化ハードコート前駆体溶液が、透明の薄く広がった銀導電層に液体として塗布して、前記透明銀導電層を安定化させることができる、請求項9~13のいずれか一項に記載の安定化ハードコート前駆体溶液。
【請求項15】
溶媒と、約0.01重量%~約1重量%の銀ナノワイヤーと、銀金属イオン源と、コバルト+2錯体と、還元剤とを含む分散体であって、前記コバルト+2錯体が、リガンドのコバルトイオンに対するモル当量比が約0.01~約2.6で、Co+2イオンおよびリガンドとを含む、分散体。
【請求項16】
前記銀金属イオン源が約0.01mg/mL~約2.0mg/mLの銀イオンを含む、請求項15に記載の分散体。
【請求項17】
銀ナノワイヤーに対して約0.01~約0.5のモル比でコバルトイオンを含む、請求項16に記載の分散体。
【請求項18】
約0.02重量%~約5重量%の濃度で多糖系ポリマーをさらに含む、請求項15~17のいずれか一項に記載の分散体。
【請求項19】
前記溶媒が水および約2重量%~約60重量%のアルコールを含む、請求項15~17のいずれか一項に記載の分散体。
【請求項20】
基材と、前記基材によって支持され融着金属ナノ構造ネットワークを含む透明導電層と、ポリマーバインダーと、コバルト(+2)を含む安定化化合物とを含む透明導電性構造物であって、前記融着金属ナノ構造層が、請求項15~19のいずれか一項に記載の分散体の湿式コーティングの乾燥により得られる、透明導電性構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、“Stabilized Sparse Metal Conductive Films and Solutions for Delivery of Stabilizing Compounds”と題された、Yangらに対する2016年10月14日に出願された係属中の米国仮特許出願第62/408,371号明細書、および“Stabilized Sparse Metal Conductive Films and Solutions for Delivery of Stabilizing Compounds”と題された、Yangらに対する2016年11月29日に出願された米国仮特許出願第62/427,348号明細書(両方とも参照によって本願明細書に組み込まれる)の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、加速磨耗試験条件下での劣化に耐えることができる安定化透明電気導電性フィルムを対象とし、この導電性フィルムは、例えば、金属ナノワイヤーまたは融着金属ナノ構造ネットワークを有する金属ナノ構造層を含むことができる。本発明はさらに、安定化剤を有する薄く広がった金属導電層を形成するためのインク、および安定化剤を有するハードコート前駆体溶液に関する。
【背景技術】
【0003】
機能性フィルムは、様々な文脈で重要な役割を担うことができる。例えば、静電気が望ましくないかまたは危険であり得る時に電気導電性フィルムが静電気の散逸のために重要であり得る。光学フィルムを使用して、例えば偏光、反射防止、位相シフト、耀度向上または他の機能などの様々な機能を提供することができる。高品質ディスプレイは、1つまたは複数の光学コーティングを含むことができる。
【0004】
透明導体は、例えば、タッチスクリーン、液晶ディスプレイ(LCD)、フラットパネルディスプレイ、有機発光ダイオード(OLED)、太陽電池およびスマートウィンドウを含むいくつかの光電子用途のために使用され得る。伝統的に、酸化インジウムスズ(ITO)は、高い導電率においてその比較的高い透明性のために好ましい材料であった。しかしながらITOに関していくつかの欠点がある。例えば、ITOは、高温および真空を必要としこのため比較的時間がかかる製造方法であるスパッタリングを使用して堆積される必要がある脆いセラミックである。さらに、ITOは、可撓性の基材上で容易に亀裂を生じることが知られている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様において、本発明は、基材と、基材によって支持された薄く広がった金属電気導電層と、薄く広がった金属導電層に隣接するコーティング層とを含む透明導電性構造物に関する。このコーティング層は、ポリマーマトリックスおよびバナジウム(+5)安定化組成物を含むことができる。
【0006】
さらなる態様において、本発明は、架橋性ポリマー前駆体と、溶媒と、固形分重量に対して約0.1重量%~約9重量%の安定化組成物とを含む安定化ハードコート前駆体溶液であって、安定化組成物がバナジウム(+5)イオンを含む安定化ハードコート前駆体溶液に関する。
【0007】
別の態様において、本発明は、溶媒と、約0.01重量%~約1重量%の銀ナノワイヤーと、銀金属イオン源と、コバルト+2錯体と、還元剤とを含む分散体であって、コバルト+2錯体が、約0.01~約2.6のリガンドのコバルトイオンに対するモル当量比においてCo+2イオンおよびリガンドを含む分散体に関する。さらに別の態様において、本発明は、基材と、基材によって支持され融着金属ナノ構造ネットワークを含む透明導電層と、ポリマーバインダーと、コバルト(+2)を含む安定化化合物とを含む透明導電性構造物であって、融着金属ナノ構造層が、この分散体の湿式コーティングの乾燥によって形成される、透明導電性構造物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】薄く広がった金属導電層と薄く広がった金属導電層のどちらかの面上の様々な付加的な透明な層とを有するフィルムの部分側面図である。
図2】薄く広がった金属導電層によって形成される3つの電気導電経路を有する典型的なパターン化構造物の略図の上面図である。
図3】第1の試験構造物内に透明導電層が組み込まれた層状スタックの概略図である。
図4】第2の試験構造物内に透明導電層が組み込まれた層状スタックの概略図である。
図5】構成A(上部に半分の黒色テープを有する全部のスタック)におけるような、LS-1安定剤を有するオーバーコートと、光学透明接着剤と、ハードコートPETカバーとを有する試料の試験条件に曝される時間の関数としてのシート抵抗の変化のプロットである。
図6】構成B(上部に半分の黒色テープを有する半分のスタック)におけるような、3つの異なるレベルでLS-1を有するオーバーコートと、光学透明接着剤と、ハードコートPETカバーとを有する試料の試験条件に曝される時間の関数としてのシート抵抗の変化のプロットである。
図7】構成B(上部に半分の黒色テープを有する半分のスタック)におけるような、LS-2を有するオーバーコートと、光学透明接着剤と、ハードコートPETカバーとを有する試料の試験条件に曝される時間の関数としてのシート抵抗の変化のプロットである。
図8】構成B(上部に半分の黒色テープを有する半分のスタック)におけるような、LS-3を有するオーバーコートと、光学透明接着剤と、ハードコートPETカバーとを有する試料の試験条件に曝される時間の関数としてのシート抵抗の変化のプロットである。
図9】構成B(上部に半分の黒色テープを有する半分のスタック)におけるような、商用オーバーコートOC-1に加えられたLS-1と、それぞれ異なる供給業者による2つの光学透明接着剤と、ハードコートPETカバーとを有する試料の試験条件に曝される時間の関数としてのシート抵抗の変化のプロットである。
図10】構成B(上部に半分の黒色テープを有する半分のスタック)におけるような、インクに加えられた金属イオン錯体を有し、オーバーコート中に安定剤を有さず、光学透明接着剤を有し、ハードコートPETカバーを有する試料の試験条件に曝される時間の関数としてのシート抵抗の変化のプロットである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
望ましい安定剤は、透明導電性フィルム中に組み込まれた薄く広がった金属導電層に長期安定性能を与えることができる。薄く広がった金属導電層は、劣化経路に対して脆弱なナノスケール金属元素の開放構造を含み得る。光安定化剤は、強い光、熱、および環境化学物質などの環境攻撃下で薄く広がった金属導電層を安定化することができると記載され、その安定性は加速磨耗条件下で試験することができる。特に、特定の金属塩が安定化剤として有効であることが判明しており、これらの金属塩はV(+5)を含み得る。いくつかの実施形態において、薄く広がった金属導電層は、融着金属ナノ構造ネットワークを含むことができ、これらは一体となった導電性構造物である。適切なリガンドを有するCo(+2)系錯体は、融着プロセスを妨害せずに融着構造物を安定化させるために有効であることが判明している。いくつかの実施形態においては、薄く広がった金属導電層を有効に安定化させるために、ポリマーオーバーコート組成物中に安定化組成物を入れることができる。安定化された構造物を組み立てて、タッチセンサーなどの部品を形成可能な層状スタックにすることができる。
【0010】
本明細書の特定の目的の透明な電気導電性要素、例えば、フィルムは、薄く広がった金属導電層を含む。導電層は一般的に、所望の量の光学透明性をもたらすように薄く広がっているので、金属の被覆範囲は導電性要素の層の上に一般的に大きい間隙を有する。例えば、透明な電気導電性フィルムは、層に沿って堆積される金属ナノワイヤーを含むことができ、電子パーコレーションのために十分な接触をもたらして適した導電経路を提供することができる。他の実施形態において、透明な電気導電性フィルムが融着金属ナノ構造ネットワークを含むことができ、それは望ましい電気的および光学的性質を示すことが判明している。本明細書において言及される導電率は、特に別記しない限り、電気導電率を指す。
【0011】
薄く広がった金属導電層は、特定の構造に関係なく、環境攻撃に対して弱い。薄く広がった特徴は、構造がいくらか脆いことを示唆する。導電性要素が機械的損傷から適切に保護されていると仮定して、薄く広がった金属導電層は、大気中の酸素、水蒸気、局所環境における他の腐食性化学物質、光、熱、それらの組合せなどの様々な他の原因からの損傷に対して弱いことがある。商業的用途のために、透明な導電性構造物の性質の劣化は、所望の仕様の範囲内であるべきであり、これは、言い換えれば、透明導電層が、それを組み込んだデバイスに適した耐用年数を提供することを示す。これらの目的を実現するために、安定化方法が見出され、いくつかの望ましい安定化組成物が本明細書に記載される。透明導電性フィルムを試験するための加速磨耗の研究が記載される。
【0012】
全体の構造の適切な設計によって、薄く広がった金属導電層のさらに別の安定化を実現できることが判明した。特に、薄く広がった金属導電層中、またはオーバーコート層もしくはアンダーコート層であってよい、薄く広がった金属導電性要素に隣接する層中に、安定化組成物を効果的に入れることができる。説明を簡単にするため、コーティング層への言及は、明確に別記されない限り、オーバーコート層、アンダーコート層、またはその両方を意味する。いくつかの組成物は、異なる層内で特に有効となることが判明している。特に、バナジウム(+5)組成物は、コーティング層中で特に有効であることが判明しており、一方、コバルト(+2)錯体は、薄く広がった金属導電層中で特に有効であることが判明している。
【0013】
銀ナノワイヤー導電層の安定化は、例えば、“Methods to Incorporate Silver Nanowire-Based Transparent Conductors in Electronic Devices”と題されたAllemandらに対する米国特許出願公開第2014/0234661号明細書(‘661出願)、“Anticorrosion Agents for Transparent Conductive Film”と題されたZouらに対する米国特許出願公開第2014/0170407号明細書(‘407出願)、および“Stabilization Agents for Transparent Conductive Films”と題されたPhilip,Jr.らに対する米国特許出願公開第2014/0205845号明細書(‘845出願)(これら3つ全てが参照によって本願明細書に組み込まれる)にも記載されている。これらの出願は、主として有機安定化剤に焦点を合わせている。‘661出願には、ロジウム塩、亜鉛塩、またはカドミウム塩などの“Metallic Photo-Desensitizers”(金属光減感剤)を安定剤として使用できると記載されている。
【0014】
安定剤としての金属塩は、“Light Stability of Nanowire-Based Transparent Conductors”と題されたAllemandに対する米国特許出願公開第2015/0270024A1号明細書(以降‘024出願)(参照によって本願明細書に組み込まれる)にさらに記載されている。特に、‘024出願では、金属ナノワイヤー層中またはオーバーコート層中での鉄(+2)塩による特定の安定化が見出されている。いくつかの金属塩を金属ナノワイヤー層中に浸漬させた。例えば、コバルトアセチルアセトネートを導電性フィルム中に浸漬させることで、安定性が向上した。‘024出願の図13中の導電層中にコバルト+2を浸漬させた結果は、テープ端部における抵抗が500時間未満の試験後に急激に増加したという点で混在している。本明細書に示される結果は、融着金属導電性ネットワークを形成するためにインク中に導入されたCo+2イオン錯体では、適したリガンドが適した濃度で導入される場合に実質的に長期安定性が得られることを示している。‘024出願の結果とは逆に、錯化されてないCo+2イオンを融着金属ナノ構造ネットワーク中に導入すると、導電性構造物が不安定化する結果が得られる。
【0015】
本出願人は、“Stable Transparent Conductive Elements Based on Sparse Metal Conductive Layers”と題されたYangらに対する米国特許出願公開第2016/0122562A1号明細書(以降‘562出願)(参照によって本願明細書に組み込まれる)に記載されるような有用な有機安定化剤を以前に発見している。‘562出願では、薄く広がった金属導電層を大幅に安定化させることが可能な種々の有用な有機安定化剤が見出されている。特に、適切に選択された光学透明接着剤と任意選択的に組み合わされたコーティング層中の比較的低濃度の安定化化合物によって、薄く広がったナノ構造金属元素の安定性が大きく向上することが分かった。例えば、フィルムの成分としての光学透明接着剤は、透明導電性フィルムをデバイスに取り付けるために使用することができ、光学透明接着剤の選択によって、望ましい程度の安定化が大幅に得やすくなることが分かった。特に、光学透明接着剤は、キャリア層上の両面接着剤層を含むことができる。キャリア層は、PETなどのポリエステル、または薄く広がった金属導電層を保護するために望ましい水分およびガスのバリアを得ることができる商用バリア層材料であってよいが、本出願人は特定の光学透明接着剤の作用理論によって限定されることを望むものではない。本明細書において見出された金属塩安定化剤は、より広い範囲の光学透明接着剤で有効となることが分かった。
【0016】
一般的には、金属ナノワイヤーから種々の薄く広がった金属導電層を形成することができる。導電率を向上させるために接合部においてナノワイヤーを平坦化させる処理が行われる金属ナノワイヤーを用いて形成されるフィルムが、“Transparent Conductors Comprising Metal Nanowires”と題されたAldenらに対する米国特許第8,049,333号明細書(参照によって本願明細書に組み込まれる)に記載されている。金属の導電率を増加させるために金属ナノワイヤーが埋め込まれた表面を含む構造物が、“Patterned Transparent Conductors and Related Manufacturing Methods”と題されたSrinivasらに対する米国特許第8,748,749号明細書(参照によって本願明細書に組み込まれる)に記載されている。しかしながら、融着金属ナノ構造ネットワークの場合には、高い電気導電性に関して望ましい性質、および透明性および低ヘイズに関して望ましい光学的性質が見出された。商業的に適切な加工条件下での化学的プロセスに基づいて、隣接する金属ナノワイヤーの融着を行うことができる。
【0017】
金属ナノワイヤーは様々な金属から形成することができ、金属ナノワイヤーは市販されている。金属ナノワイヤーは本来電気導電性であるが、金属ナノワイヤーをベースとしたフィルム中の抵抗の大部分は、ナノワイヤー間の接合部において存在すると考えられる。処理条件およびナノワイヤーの性質に応じて、堆積されたときの比較的透明なナノワイヤーフィルムのシート抵抗は、非常に大きく、たとえばギガohm/sq範囲、またはさらに大きくなりうる。光学透明性を損なわずにナノワイヤーフィルムの電気抵抗を低下させるために種々の方法が提案されている。金属ナノ構造ネットワークを形成するための低温化学的融着が、光学透明性を維持しながら電気抵抗を低下させることにおいて非常に有効であることが分かっている。
【0018】
特に、金属ナノワイヤーをベースとした電気導電性フィルムの実現に関する著しい前進は、金属ナノワイヤーの隣接した部分が融着する融着金属ネットワークを形成するための十分に制御可能な方法の発見であった。種々の融着源を用いた金属ナノワイヤーの融着が、“Metal Nanowire Networks and Transparent Conductive Material”と題されたVirkarらに対する米国特許出願公開第2013/0341074号明細書、および“Metal Nanostructured Networks and Transparent Conductive Material”と題されたVirkarらに対する米国特許出願公開第2013/0342221号明細書(‘221出願)、“Fused Metal Nanostructured Networks,Fusing Solutions With Reducing Agents and Methods for Forming Metal Networks”と題されたVirkarらに対する米国特許出願公開第2014/0238833号明細書(‘833出願)、“Transparent Conductive Coatings Based on Metal Nanowires,Solution Processing Thereof,and Patterning Approaches”と題されたYangらに対する米国特許出願公開第2015/0144380号明細書(‘669出願)、および“Metal Nanowire Inks for the Formation of Transparent Conductive Films With Fused Networks”と題されたLiらに対する米国特許第9,183,968号明細書(全て参照によって本願明細書に組み込まれる)にさらに記載されている。
【0019】
製品中に組み込むために、透明導電性フィルムは、一般的に、光学的性質を好ましくないほど変えずに構造物の加工性および/または機械的性質に寄与するいくつかの成分または層を含む。いくつかの実施形態において、安定化化合物を少量で加えることができ、安定化化合物は構造物の光学的性質を、存在するとしても、ヘイズおよび/または吸収に関して10%を超えるだけ変化させること、すなわち透過を減少させることは観察されない。薄く広がった金属導電層は、透明導電性フィルム中に組み込まれたときに望ましい光学的性質を有するように設計することができる。薄く広がった金属導電層は、ポリマーバインダーをさらに含んでもよく含まなくてもよい。別記しない限り、厚さへの言及は、言及される層またはフィルムの平均厚さを指し、隣接した層は、特定の材料に応じてそれらの境界で絡み合わせてもよい。いくつかの実施形態において、フィルム構造物全体は、可視光線の全透過が少なくとも約85%、ヘイズが約2パーセント以下、および形成後のシート抵抗が約250ohm/sq以下となることができ、さらなる実施形態においては光の透過は著しく多くなることができ、ヘイズは著しく低下することができ、シート抵抗は著しく低下することができる。
【0020】
この研究の状況では、不安定性は、電気導電率を結果として低下させる導電性要素中の金属の再構成に関連すると思われ、これはシート抵抗の増加として測定することができる。したがって、安定性は、経時によるシート抵抗の増加量に関して評価することができる。試験装置によって、制御された環境中で強い光源、熱、および/または湿度を得ることができる。
【0021】
特定の不安定性が、覆われるフィルム部分で生じることが分かっており、これは、透明導電性フィルムへの電気接続が形成され見えないように隠される、実際のデバイスの透明導電性フィルムの端部に対応しうる。透明導電性フィルムの覆われた部分は、覆われたフィルムが光に当たる条件に曝されると加熱されることがあり、その熱は、本明細書において対処される不安定性に寄与すると考えられる。一般的に、より過酷な試験条件を適用するために、部分的に覆われた透明導電性フィルムを用いて試験を行うことができる。
【0022】
透明電気導電性フィルムは、例えば太陽電池およびタッチスクリーンにおいて重要な用途が判明している。金属ナノワイヤー成分から形成された透明導電性フィルムでは、従来の材料よりも低コストの加工および適合した物理的性質が約束される。種々の構造ポリマー層を有する多層フィルムでは、結果として得られるフィルム構造物は、望ましい電気導電率を維持しながら処理に関して堅牢となることが判明しており、本明細書に記載される望ましい成分を組み込むことで、フィルムの機能特性を低下させずにさらに安定化させることができ、それによってそれらのフィルムが組み込まれたデバイスは、通常の使用に適した寿命を有することができる。
【0023】
本明細書に記載される安定化組成物は、加速磨耗試験における比較的過酷な条件下で望ましい程度の安定化が得られることが判明した。これらの安定化組成物は、構造物中の異なる光学透明接着剤に対する安定化の依存性がより低くなることが判明した。安定化は、コーティング層中でのバナジウム(+5)組成物の使用、または融着金属ナノ構造ネットワークを有する層中でのコバルト(+2)錯体の使用のいずれかによって実現できる。後述の加速磨耗試験の比較的過酷な条件下で、透明導電性要素は、600時間で約30%以下のシート抵抗の増加、および2000時間で約75%以下の増加を示しうる。安定化組成物は、商用デバイス中での使用に適している。
【0024】
安定化組成物
オーバーコート層中に組み込むために、+5のバランス(valance)を有するバナジウム化合物は、長時間の磨耗試験下で望ましい安定化が得られることが判明した。適した化合物としては、カチオンとしてバナジウムを有する化合物、および多原子アニオンの一部としてバナジウムを有する化合物、たとえばメタバナジン酸塩(VO )またはオルトバナジン酸塩(VO -3)が挙げられる。オキソメタレート中に五価のバナジウムアニオンを有する対応する塩化合物としては、例えば、メタバナジン酸アンモニウム(NHVO)、メタバナジン酸カリウム(KVO)、バナジン酸テトラブチルアンモニウム(NBuVO)、メタバナジン酸ナトリウム(NaVO)、オルトバナジン酸ナトリウム(NaVO)、別の金属塩など、またはそれらの混合物が挙げられる。適した五価のバナジウムカチオン化合物としては、例えば、バナジウムオキシトリアルコキシド(VO(OR)、Rはアルキル基、例えば、n-プロピル、イソプロピル、エチル、n-ブチルなど、またはそれらの組合せである)、バナジウムオキシハライド(VOX、式中、XはCl、F、Br、またはそれらの組合せである)、バナジウム錯体、たとえばVO(式中、ZおよびZは独立に、Co+2錯体に関してさらに後述されるようなリガンドである)、またはそれらの組合せが挙げられる。バナジウムオキシトリプロポキシドおよびメタバナジン酸ナトリウムをベースとする例が以下に示されている。コーティング中、五価のバナジウムは、例えば約0.01重量%~約9重量%、さらなる実施形態において約0.02重量%~約8重量%、さらに別の実施形態において約0.05重量%~約7.5重量%で存在することができる。コーティング溶液中、その溶液は一般的に、硬化性ポリマーを主として含む固形分とともにある溶媒を含む。コーティング溶液は、以下により詳細に記載される。一般的に、対応するコーティング溶液は、五価のバナジウム化合物を約0.0001重量%~約1重量%の濃度で有することができる。上記の明示範囲内の濃度のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。
【0025】
特に融着金属ナノ構造ネットワークを有する透明導電性フィルム中に直接使用する場合、+2の価数のコバルトは、融着プロセスを妨害せずに安定化に有効であることが判明した。適したコバルト化合物としては、例えば、亜硝酸塩(NO )、ジエチルアミン、エチレンジアミン(en)、ニトリロ三酢酸、イミノビス(メチレンホスホン酸)、アミノトリス(メチレンホスホン酸)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、1,3-プロピレンジアミン四酢酸(1,3-PDTA)、トリエチレンテトラミン、トリ(2-アミノエチル)アミン、1,10-フェナントロリン、1,10-フェナントロリン-5,6-ジオン、2,2’-ビピリジン、2,2’-ビピリジン-4,4’-ジカルボン酸、ジメチルグリオキシム、サリチルアルドオキシム、ジエチレントリアミン五酢酸、1,2-シクロヘキサンジアミノ四酢酸、イミノ二酢酸、メチルイミノ二酢酸、N-(2-アセトアミド)イミノ酢酸、N-(2-カルボキシエチル)イミノ二酢酸、N-(2-カルボキシメチル)イミノジプロピオン酸、ピコリン酸、ジピコリン酸、ヒスチジン、それらの組合せなどの種々の錯化リガンドを有するCo(NOが挙げられる。コバルトイオンは、前述の‘833出願において、ナノワイヤーの接合部で金属を融着させるのに適したイオン源として以前に示唆されている。以下の実施例に示されるように、Co+2は実際には、リガンドと錯形成しなければ、透明導電性フィルムを不安定化させる。融着金属ナノ構造ネットワークを有する層中でのコバルト+2安定化化合物の使用に関して、安定化化合物は、銀塩とともに、または融着プロセス後にコバルト+2カチオンが材料中に残存するようにはるかに容易に還元されるカチオンの別のイオンの塩とともに加えられる。他方、Co+2の化学量論量のリガンドは、融着ナノ構造ネットワークを形成するための融着プロセスを妨害しないことが判明した。融着金属ナノ構造ネットワークを有する層中、コバルト+2安定化化合物の濃度は、約0.1重量%~約10重量%、さらなる実施形態において、約0.02重量%~約8重量%、さらに別の実施形態において約0.025重量%~約7.5重量%となり得る。コバルト組成物が融着プロセスを妨害せずに有効となるために、錯化リガンドは、コバルト1モル当たり約0.1~約2.6のリガンド結合当量、さらなる実施形態においてコバルト1モル当たり約0.5~約2.5のリガンド結合当量、他の実施形態では約0.75~約2.4のリガンド結合当量の量で存在することができる。当量に関して、この用語は、多座のリガンドが、それらの配位数で割った上記範囲の対応するモル比を有することを示すことを意図する。金属ナノワイヤーの堆積に使用されるインクに関して、溶液は、約0.0001重量%~約1重量%の濃度のコバルト+2化合物を含むことができるが、ナノワイヤーインクのさらなる詳細は以下に示される。上記の明示範囲内の濃度のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。
【0026】
コーティングを形成するために一連の溶液が使用されるが、いくつかの実施形態において、溶液は、架橋性ハードコーティング前駆体とともに有機溶媒をベースとする。一般的に、コーティング溶液は、少なくとも約7重量%の溶媒、さらなる実施形態において約10重量%~約70重量%の溶媒を含み、残りは不揮発性固形分である。一般的には、溶媒は、水、有機溶媒、または適したそれらの混合物を含むことができる。適した溶媒としては、一般的に、例えば、水、アルコール、ケトン、エステル、グリコールエーテルなどのエーテル、芳香族化合物、アルカンなど、およびそれらの混合物が挙げられる。具体的な溶媒としては、例えば、水、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、第三ブチルアルコール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノンおよびシクロヘキサノンなどの環状ケトン、ジアセトンアルコール、グリコールエーテル、トルエン、ヘキサン、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネート、PGMEA(2-メトキシ-1-メチルエチルアセテート)、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、アセトニトリル、ギ酸、またはそれらの混合物が挙げられる。いくつかの実施形態において、非水性溶媒が望ましい場合がある。溶媒の選択は、一般的に、ハードコートポリマーコーティング組成物にある程度は基づいている。
【0027】
一般的には、コーティング用のポリマー、一般的に架橋性ポリマーは、商用コーティング組成物として供給される場合もあるし、または選択されたポリマー組成物を用いて配合することもできる。放射線硬化性ポリマーおよび/または熱硬化性ポリマーの適した種類としては、例えば、ポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン、ポリウレタン、アクリル樹脂、アクリルコポリマー、セルロースエーテルおよびエステル、ニトロセルロース、別の水不溶性構造多糖、ポリエーテル、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、フルオロポリマー、スチレン-アクリレートコポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー、ポリスルフィド、エポキシ含有ポリマー、それらのコポリマー、ならびにそれらの混合物が挙げられる。適した商用コーティング組成物としては、例えば、デクセリアルズ株式会社(日本)のコーティング溶液、Hybrid Plastics,Inc.(Mississippi,USA)のPOSS(登録商標)コーティング、California Hardcoating Company(California,USA)のシリカ充填シロキサンコーティング、SDC Technologies,Inc.(California,USA)のCrystalCoat UV硬化性コーティングが挙げられる。ポリマー濃度および対応する別の不揮発性物質の濃度は、選択されたコーティング方法に適切な粘度などのコーティング溶液の所望のレオロジーが実現されるように選択することができる。全固形分濃度を調節するために、溶媒を加えたり除去したりすることができる。最終コーティング組成物の組成を調節するために、固形分の相対量を選択することができ、乾燥したコーティングの所望の厚さが実現されるように、固形分の総量を調節することができる。一般的に、コーティング溶液は、約0.025重量%~約70重量%、さらなる実施形態において約0.05重量%~約50重量%、さらに別の実施形態において約0.075重量%~約40重量%のポリマー濃度を有することができる。上記の特定の範囲内のポリマー濃度のさらに別の濃度が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。対象のハードコーティング組成物の別の種類が、“Transparent Polymer Hardcoats and Corresponding Transparent Films”と題されたGuらに対する米国特許出願公開第2016/0369104号明細書(参照によって本願明細書に組み込まれる)に記載されている。適切な混合装置を用いて、安定化塩をポリマーコーティング組成物中にブレンドすることができる。
【0028】
透明導電性フィルム
透明な電気導電性構造物またはフィルムは一般的に、光学的性質を著しく好ましくない方向に変えずに電気導電率を提供する薄く広がった金属導電層と、導電性要素の機械的支持ならびに保護を提供する様々な付加的な層とを含む。薄く広がった金属導電層は非常に薄く、相応して機械的誤用およびその他の誤用によって損傷を受けやすい。環境被害に対する感度に関して、アンダーコートおよび/またはオーバーコートが、望ましい保護を提供することができる安定化組成物を含むことができることが判明した。本明細書における焦点は環境化学物質、湿り空気、熱、および光からの環境攻撃にあるが、これらの環境攻撃からの導電層の保護に使用されるポリマーシートは、接触などからの保護も提供することができる。
【0029】
したがって、基材の構造内に1つまたは複数の層を有することができる基材上に薄く広がった金属導電層を形成することができる。基材は一般的に、自立フィルムまたはシート構造として扱うことができる。アンダーコートと称される、薄い溶液加工層を任意選択により基材フィルムの上面に沿っておよび薄く広がった金属導電層のすぐ下に置くことができる。また、基材の反対側の薄く広がった金属導電の面に特定の保護をもたらす付加的な層で薄く広がった金属導電性層をコートすることができる。一般的には、電気導電性構造物を最終製造物においてどちらかの向きに置くことができ、すなわち、基材が外側に向いているか、または基材が電気導電性構造物を支持する製造物の表面に接している。
【0030】
図1を参照すると、典型的な透明導電性フィルム100が基材102、アンダーコート層104、薄く広がった金属導電層106、オーバーコート層108、光学透明接着剤層110および保護表面層112を含むが、全ての実施形態が全ての層を備えるわけではない。透明導電性フィルムは一般的に、薄く広がった金属導電層と、薄く広がった金属導電層の各面上の少なくとも1つの層とを含む。透明導電性フィルムの全厚さは、一般的には、平均厚さ10ミクロン~約3ミリメートル(mm)、さらなる実施形態において約15ミクロン~約2.5mmおよび他の実施形態において約25ミクロン~約1.5mmの厚さを有することができる。上記の明示範囲内の厚さのさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。いくつかの実施形態において、製造しただけのフィルムの長さおよび幅は、製造物としてさらに加工するためフィルムを直接に導入するために特定の用途に適しているように選択され得る。さらに別のまたは代替実施形態において、フィルムの幅は、特定の用途のために選択され得るが、他方、フィルムの長さは、使用するためにフィルムを所望の長さに切断することを考慮して長くなっていることがあり得る。例えば、フィルムは長いシートまたはロール状であり得る。同様に、いくつかの実施形態において、フィルムはロールで支持するかまたは別の大きな標準形式であり得て、使用するためにフィルムの要素を所望の長さおよび幅に切断することができる。
【0031】
基材102は一般的に、適切なポリマーまたはポリマーから形成される耐久性支持体層を含む。いくつかの実施形態において、基材は、約20ミクロン~約1.5mm、さらなる実施形態において約35ミクロン~約1.25mmおよびさらに別の実施形態において約50ミクロン~約1mmの平均厚さを有することができる。上記の明示範囲内の基材の厚さのさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。非常に良い透明性、低いヘイズおよび良い保護能力を有する適切な光学透明ポリマーを基材のために使用することができる。適したポリマーには、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアクリレート、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、フルオロポリマー、ポリアミド、ポリイミド、ポリスルホン、ポリシロキサン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリノルボルネン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー、ポリカーボネート、それらのコポリマーまたはそれらのブレンド等が含まれる。適した商用ポリカーボネート基材には、例えば、Bayer Material Scienceから市販されているMAKROFOL SR243 1-1 CG、TAP Plasticsから市販されているTAP(登録商標)Plastic、およびSABIC Innovative Plasticsから市販されているLEXAN(商標)8010CDEが含まれる。保護表面層112は独立に、この段落で上述した基材と同じ厚さの範囲および組成範囲に及ぶ厚さおよび組成を有することができる。
【0032】
含有させるために独立に選択可能である、任意選択のアンダーコート104および/または任意選択のオーバーコート108をそれぞれ、薄く広がった金属導電層106の下にまたは上に置くことができる。任意選択のコーティング104、108は、硬化性ポリマー、例えば、熱硬化性または放射線硬化性ポリマーを含むことができる。任意選択のコーティング104、108のために適したポリマーは、金属ナノワイヤーインク中に含有させるためのバインダーとして以下に記載され、架橋剤に相当するポリマーおよび添加剤の候補が任意選択のコーティング104、108に同様に適用されるが、ここで説明を明確に繰り返すことはしない。任意選択のコーティング104、108は、約25nm~約2ミクロン、さらなる実施形態において約40nm~約1.5ミクロン、さらに別の実施形態において約50nm~約1ミクロンの平均厚さを有することができる。上記の明示範囲内のオーバーコートの厚さのさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。
【0033】
任意選択の光学透明接着剤層110は、約10ミクロン~約300ミクロン、さらなる実施形態において約15ミクロン~約250ミクロンおよび他の実施形態において約20ミクロン~約200ミクロンの平均厚さを有することができる。上記の明示範囲内の光学透明接着剤層の厚さのさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。適した光学透明接着剤は触圧接着剤であり得る。光学透明接着剤には、例えば、コート可能な組成物および接着テープが含まれる。紫外線硬化性液体光学透明接着剤は、アクリルまたはポリシロキサン化学に基づいて利用可能である。適した接着テープは、例えば、Lintec Corporation(MOシリーズ);Saint Gobain Performance Plastics(DF713シリーズ);Nitto Americas(Nitto Denko)(LUCIACS CS9621TおよびLUCIAS CS9622T);LG Hausys OCA(OC9102D、OC9052D);DIC株式会社(DAITAC LTシリーズOCA、DAITAC WSシリーズOCA、およびDAITAC ZBシリーズ);PANAC Plastic Film Company(PANACLEANシリーズ);Minnesota Mining and Manufacturing(3M、Minnesota U.S.A.-製品番号8146、8171、8172、8173、9894、および同様の製品)およびAdhesive Research(例えば製品8932)から市販されている。
【0034】
いくつかの光学透明接着テープは、2つの接着面の間でテープ中に埋め込むことができる、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのキャリアフィルムを含む。有機安定化剤の早期の研究に基づくと、キャリアフィルムを有さない光学透明接着テープを有する対応するフィルムに対して、光学透明接着剤レイ(lay)中のキャリアフィルムの存在は、光学透明接着テープの安定化特性を向上させるための安定化剤との組合せにおいて有効であることを発見した。理論によって限定しようと望むものではないが、安定性の向上は、場合によると、キャリアフィルムを通過する水および酸素の透過性が低下するためであると推測された。本明細書に記載される金属系安定化剤を使用すると、安定化特性は、使用される特定の光学透明接着剤にあまり依存しないことが判明し、このことはこれらの金属系安定化剤の利点である。
【0035】
光学透明接着テープは、2つの接着剤層の間にキャリアフィルムを有する両面粘着テープであってよく、例えば3M 8173KCLが参照される。当然ながら、このような両面粘着構造物は、2つの接着テープ層と、それらの間に挟まれた保護表面層112などのポリマーフィルムとを使用して形成することができ、おそらくはその有効性は、製造中に再現される場合には同等となる。本発明による接着剤のキャリアフィルムは、3M 8173KCLにおけるような通常のPETの薄いフィルムであってよい。より広くは、許容できる光学的性質および機械的性質を有する別のポリマーフィルム、例えばポリプロピレン(PP)、ポリカーボネート(PC)、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)などを使用することもできる。全ての場合で、キャリアフィルムは、接着剤組成物との良好な接着性を有することができ、より容易な取り扱いのための機械的剛性を提供することができる。
【0036】
薄く広がった金属導電層106のために基材上に供給されるナノワイヤーの量は、所望の量の透明性および電気導電率を達成するための要因のバランスに影響を与え得る。ナノワイヤーネットワークの厚さは基本的には走査電子顕微鏡検査を使用して評価することができるが、ネットワークは比較的薄く広がって光学透明性を提供することができ、測定を複雑にすることがあり得る。一般的には、薄く広がった金属導電性構造、例えば、融着金属ナノワイヤーネットワークは、約5ミクロン以下、さらなる実施形態において約2ミクロン以下および他の実施形態において約10nm~約500nmの平均厚さを有する。しかしながら、薄く広がった金属導電性構造は一般的に、サブミクロンスケールの著しい表面構造を有する比較的開放構造物である。ナノワイヤーの添加量レベルは、容易に評価され得るネットワークの有用なパラメーターを提供することができ、添加量値は、厚さに関する代替パラメーターを提供する。したがって、本明細書中で用いられるとき、基材上へのナノワイヤーの添加量レベルは一般的に、基材1平方メートルについてのナノワイヤーのミリグラムとして示される。一般的には、ナノワイヤーネットワークは、約0.1ミリグラム(mg)/m~約300mg/m、さらなる実施形態において約0.5mg/m~約200mg/m、および他の実施形態において約1mg/m~約150mg/mの添加量を有することができる。上記の明示範囲内の厚さおよび添加量のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。薄く広がった金属導電層がパターン化される場合、厚さおよび添加量の考察は、金属が取り除かれないかまたはパターン化プロセスによってかなり減少される領域にだけ適用される。
【0037】
一般的に、フィルム100の特定の成分について上記の全厚さの範囲内で、層102(基材)、104(任意選択のアンダーコート)、106(薄く広がった金属導電層)、108(任意選択のオーバーコート)、110(光学透明接着剤層)を例えば、他の副層と異なった組成を有する副層に分割することができる。例えば、複数層の光学透明接着剤が上に考察されている。同様に、基材は、片面または両面ハードコートされた透明フィルムなどの複数の層を含むことができる。したがって、より複雑な層積層体を形成することができる。副層は、特定の層内の他の副層と同様に加工されてもされなくてもよい、例えば、1つの副層を形成することができるが、別の副層をコートして硬化させることができる。
【0038】
安定化組成物を適切な層内に入れて、薄く広がった金属導電層を安定化することができる。薄く広がった金属導電層が融着ナノ構造金属ネットワークを含む実施形態については、安定化化合物の存在が化学的融着プロセスを妨げる場合があるので形成されただけの薄く広がった金属導電層自体はこのような化合物を含まなくてもよい。代替実施形態において、薄く広がった金属導電層を形成するためのコーティング溶液中に安定剤を含有することは許容範囲である場合がある。薄く広がった金属導電層は、約0.1重量パーセント(重量%)~約20重量%、さらなる実施形態において約0.25重量%~約15重量%、さらに別の実施形態において約0.5重量%~約12重量%の濃度の安定化化合物を含むことができる。上記の明示範囲内の安定化化合物濃度のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。
【0039】
本明細書に記載される場合、適切なリガンドを有するコバルト(+2)系安定化化合物は、融着金属ナノ構造層に適していると記載される。同様に、安定化化合物を光学透明接着剤組成物中に含有させることができる。いくつかの実施形態において、安定化化合物をコーティング層中に有効に含有させることができ、それは、有効な安定化をさらに提供しながら相応して比較的薄くされ得ることが見出された。
【0040】
いくつかの用途のために、タッチセンサーの異なった領域など、フィルムの電気導電性部分をパターン化して所望の機能性を導入することが望ましい。パターン化を基材表面上の金属添加量を変えることによって実施するには、金属ナノワイヤーを選択された位置に印刷し、他の位置は金属を効果的に有さないようにするか、またはナノワイヤーを融着する前およびまたは後のどちらかに選択された位置から金属をエッチするかあるいは他の方法でアブレートするかどちらでも可能である。また、金属ナノワイヤーを選択的に融着することによってパターン化を行なうことができるように、本質的に等しい金属添加量を有する層の融着と非融着部分との間に電気導電率の高いコントラストを達成することができる。金属ナノワイヤーの選択的融着に基づくパターン化が、前述の‘833出願および‘669出願に記載されている。
【0041】
概略的な例として、図2に示されるように、電気的抵抗領域128、130、132、134によって囲まれる複数の電気導電経路122、124、および126を有する基材表面120に沿う導電性パターンを融着金属ナノ構造ネットワークが形成することができる。図2に示されるように、融着範囲は、電気導電経路122、124、および126に相応する3つの異なった電気導電性領域に相応する。3つの独立に接続される導電性領域が図2に示されているが、2つ、4つまたは4つを超える導電性単独導電経路または領域を有するパターンを要望通りに形成することができるということは理解されたい。多くの商業用途のために、多数の要素を有するかなり複雑なパターンを形成することができる。特に、本明細書に記載されるフィルムのパターン化に適合される利用可能なパターン化技術を使用して、高解像度の特徴を有する非常に微細なパターンを形成することができる。同様に、特定の導電性領域の形状を要望通りに選択することができる。
【0042】
一般的に透明導電性フィルムが、フィルムの機能特徴を形成するために堆積される薄く広がった金属導電性要素の周りに形成される。適切なフィルム加工方法を使用して様々な層を構造物にコートするか、積層あるいは他の方法で付加する。本明細書に記載されるように、層の性質は、透明導電性フィルムの長期性能を著しく変えることがあり得る。薄く広がった金属導電層の堆積は融着金属ナノ構造層の文脈で以下にさらに説明されるが、非融着金属ナノワイヤーコーティングは、融着成分が存在していないこと以外は同様に堆積され得る。
【0043】
薄く広がった金属導電層が一般的に基材上に溶液コートされ、基材はその上にコーティング層を有しても有さなくてもよいが、存在する場合にはそれは薄く広がった金属導電層に隣接してアンダーコートを形成する。いくつかの実施形態においてオーバーコートを薄く広がった金属導電層上に溶液コートすることができる。紫外線、熱または他の放射線を適用して架橋を実施し、コーティング層および/または薄く広がった金属導電層中のポリマーバインダーを架橋することができ、これを一工程または複数工程で実施することができる。安定化化合物が、コーティング層を形成するためにコーティング溶液に組み込まれ得る。コーティング前駆体溶液は、0.0001重量パーセント(重量%)~約1重量%の安定化化合物、さらなる実施形態において約0.0005重量%~約0.75重量%、さらに別の実施形態において約0.001重量%~約0.5重量%および他の実施形態において約0.002重量%~約0.25重量%の安定化化合物を含み得る。別の観点から、インク組成物中のコバルトイオンは、銀ナノワイヤー中の銀に対するモル比として考えることができる。コバルトイオンは、一般的に、銀ナノワイヤーに対して、約0.01~約0.5、さらなる実施形態において約0.02~約0.4のモル比、さらに別の実施形態において銀ナノワイヤーに対して約0.03~約0.3のモル比を有することができる。上記の明示範囲内のコーティング溶液中の安定化化合物またはコバルトイオンのモル比のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。
【0044】
光学透明接着剤層が、光学透明接着剤に隣接した位置になるオーバーコート層と共にまたはオーバーコート層なしで、薄く広がった金属導電層に積層あるいは他の方法で適用され得る。安定化組成物が、光学透明接着剤と共に安定化化合物の溶液を噴霧または浸漬することなどによる、安定化化合物を含む溶液と光学透明接着剤との接触によって、光学透明接着剤と結合され得る。その代わりにまたはそれに加えて、安定化化合物は、接着剤の製造中に接着剤組成物に組み込まれ得る。いくつかの実施形態において、付加的な保護フィルムが、光学透明接着剤層上に適用され得、または保護ポリマーフィルムが、オーバーコートに、または介在する光伝導(optically conductive)接着剤なしで薄く広がった金属導電層に直接、積層あるいは他の方法で適用され得る。
【0045】
薄く広がった金属導電層の導電能力の経時的な低下の機構は、完全に理解されていないが、酸素分子(O)および/または水蒸気が役割を果たし得るものと考えられる。この観点から、酸素および/または水蒸気に対するバリアフィルムが望ましく、物理的バリアが、環境汚染物質全般の移動を阻止する傾向がある。‘661出願には、PET基材上に無機コーティングを有する商用酸素バリアフィルムが記載されており、これらのバリアフィルムに基づく安定性の改善が主張されている。望ましいバリアフィルムは、良好な光学的性質を提供することができる。バリアフィルムは、一般的に、約10ミクロン~約300ミクロン、さらなる実施形態において約15ミクロン~約250ミクロン、他の実施形態において約20ミクロン~約200ミクロンの範囲の厚さを有することができる。いくつかの実施形態において、バリアフィルムは、約0.15g/(m・日)以下、さらなる実施形態において約0.1g/(m・日)以下およびさらに別の実施形態において約0.06g/(m・日)以下の水蒸気透過率を有することができる。さらに、バリアフィルムは、少なくとも約86%、さらなる実施形態において少なくとも約88%、他の実施形態において少なくとも約90.5%の可視光の全光透過率を有することができる。上記の明示範囲内の厚さ、全透過率、および水蒸気透過率のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。一般的に、バリアフィルムは、PET等の同様のポリマーの支持コアと、セラミック、金属、またはバリア機能に寄与する他の材料との組合せを有することができる。
【0046】
さらなる保護層を形成するために、光学透明接着剤の上に保護フィルムを置くことができる。適した保護フィルムは、基材材料に関して記載したものと類似の材料から形成することができ、または特定の商用透明フィルムを使用することができる。例えば、保護フィルムは、コーティングを有するポリエステルシートから形成することができる。保護フィルムは、環境汚染物質の導電層への到達の阻止を促進するためのバリアフィルムとして機能することもできる。いくつかの実施形態において、正式にはバリアフィルムとしては販売されていない基本的な保護ポリマーフィルムを用いて良好な安定性結果が得られている。例えば、透明保護ポリマーフィルムは、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、片側もしくは両側にハードコートを有することができるハードコートPET(HC-PET)、ポリカーボネート、環状オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー、またはそれらの組合せを含むことができる。ハードコートポリエステルシートは市販されており、そのハードコートは架橋アクリルポリマーまたは他の架橋ポリマーである。ハードコートポリエステルシートは、比較的低いコストならびに高い透明性および低いヘイズなどの望ましい光学的性質のために望ましい。約10ミクロン~約300ミクロン、いくつかの実施形態において約15ミクロン~約200ミクロン、さらなる実施形態において約20ミクロン~約150ミクロンの厚さを有するシートなどの、より厚いハードコートポリエステルフィルムが、それらのバリア機能を向上させるのに使用され得る。ハードコートポリエステルフィルムのさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。基本的な保護ポリマーフィルムは、商用バリアフィルムと同等の水蒸気または分子酸素の移動の軽減は提供できないが、これらのフィルムは、特にキャリアフィルムを有する光学透明接着剤と併用される場合に、適度なコストにおける適した安定性および望ましい光学的性質を提供することができる。
【0047】
薄く広がった金属導電層を覆う光学透明接着剤層および保護フィルムを孔等が適切な位置にあるように形成して、導電層に対する電気接続を提供することができる。一般的には、様々なポリマーフィルム加工技術および装置をこれらのポリマーシートの加工のために使用することができ、このような装置および技術は本技術分野においてよく開発されており、将来開発される加工技術および装置を相応して当該材料に適合させることができる。
【0048】
薄く広がった金属導電層
薄く広がった金属導電層は一般的に、金属ナノワイヤーから形成される。十分な添加量および選択されるナノワイヤーの性質によって、相応する適切な光学的性質を有するナノワイヤーを使用して適度の導電率を達成することができる。本明細書に記載された安定化されたフィルム構造物が様々な薄く広がった金属導電性構造物を有するフィルムの望ましい性能をもたらすことができることが予想される。しかしながら、特に望ましい性質は融着金属ナノ構造ネットワークによって達成された。
【0049】
上に要約したように、金属ナノワイヤー融着を実施するためにいくつかの実用的な方法が開発されている。良い光学的性質を有する望ましいレベルの電気導電率を達成するために金属添加量のバランスをとることができる。一般的には、金属ナノワイヤー加工は、金属ナノワイヤーを含む第1のインクと融着組成物を含む第2のインクとを有する二インクの堆積によって、または融着要素を金属ナノワイヤー分散体中に混ぜるインクの堆積によって達成され得る。融着金属ナノ構造ネットワークを形成するための一インク系が実施例に記載される。インクは、付加的な加工助剤、バインダー等を含んでもよくさらに含まなくてもよい。特定のインク系のために適しているように好適なパターン化方法を選択することができる。
【0050】
一般的には、金属ナノ構造ネットワークの形成のための1つまたは複数の溶液またはインクは、よく分散された金属ナノワイヤー、融剤、および任意選択のさらに別の成分、例えば、ポリマーバインダー、架橋剤、湿潤剤、例えば、界面活性剤、増粘剤、分散剤、他の任意選択の添加剤またはそれらの組合せを一括して含むことができる。金属ナノワイヤーインクおよび/またはナノワイヤーインクと異なっている場合融着溶液のための溶媒は、水性溶媒、有機溶媒またはそれらの混合物を含むことができる。特に、適した溶媒には、例えば、水、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、例えばグリコールエーテル、芳香族化合物、アルカン等およびそれらの混合物が含まれる。具体的な溶媒には、例えば、水、エタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、n-ブタノール、第三ブチルアルコール、メチルエチルケトン、グリコールエーテル、メチルイソブチルケトン、トルエン、ヘキサン、エチルアセテート、ブチルアセテート、エチルラクテート、PGMEA(2-メトキシ-1-メチルエチルアセテート)、またはそれらの混合物が含まれる。いくつかのインクは、約2重量パーセント~約60重量%、さらなる実施形態において約4重量%~約50重量%、さらに別の実施形態において約6重量%~約40重量%の濃度の液体アルコールを有する水溶液または液体アルコールのブレンドを含むことができる。上記の特定の範囲内のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。溶媒は金属ナノワイヤーの良い分散体を形成する能力に基づいて選択されるのがよいが、溶媒はまた、他の選択される添加剤が溶媒に可溶性であるように添加剤と相溶性であるのがよい。融剤が金属ナノワイヤーを有する単一溶液に含有される実施形態については、溶媒またはその成分は、アルコールなどの融着溶液の重要な成分であってもなくてもよく、必要ならばそれに応じて選択され得る。
【0051】
金属ナノワイヤーインクは、一インクまたは二インク構成のどちらかで、約0.01~約1重量パーセントの金属ナノワイヤー、さらなる実施形態において約0.02~約0.75重量パーセントの金属ナノワイヤーおよびさらに別の実施形態において約0.04~約0.6重量パーセントの金属ナノワイヤーを含有することができる。上記の明示範囲内の金属ナノワイヤー濃度のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。金属ナノワイヤーの濃度は、基材表面上の金属の添加量ならびにインクの物理的性質に影響を与える。融着プロセスを進めるための金属イオン源は、金属ナノワイヤーから金属を除去する酸化性酸などの酸化剤、またはインク中に溶解した金属塩であってよい。特定の目的の実施形態の場合、ナノワイヤーは銀ナノワイヤーであり、金属イオン源は溶解した銀塩である。インクは、約0.01mg/mLおよび約2.0mg/mLからの銀イオン、さらなる実施形態において約0.02mg/mLおよび約1.75mg/mLから、他の実施形態においては約0.025mg/mLおよび約1.5mg/mLからの濃度で銀イオンを含むことができる。コバルト+2安定化錯体に加えて、銀イオンが存在し、これらは一般的に、コバルト2+が還元されずに残り銀イオンが優先的に還元される濃度で存在する。インクは、約0.0001重量%~約0.1重量パーセント、さらなる実施形態において約0.0005重量%~約0.08重量%、さらに別の実施形態において約0.001重量%~約0.05重量%の濃度のコバルト安定化組成物を含むことができる。上記の明示範囲内の銀イオン濃度およびコバルト安定化組成物のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。
【0052】
一般的には、ナノワイヤーは、高い電気導電率のために望ましくなり得る一連の金属、銀、金、インジウム、スズ、鉄、コバルト、白金、パラジウム、ニッケル、コバルト、チタン、銅、およびそれらの合金から形成することができる。商用金属ナノワイヤーは、Sigma-Aldrich(Missouri,USA)、Cangzhou Nano-Channel Material Co.,Ltd.(China)、Blue Nano(North Carolina,U.S.A.)、EMFUTUR(Spain)、Seashell Technologies(California,U.S.A.)、Aiden/C3Nano(Korea/U.S.A.)、Nanocomposix(U.S.A.)、Nanopyxis(Korea)、K&B(Korea)、ACS Materials(China)、KeChuang Advanced Materials(China)、およびNanotrons(USA)から入手可能である。あるいは、銀ナノワイヤーはまた、様々な公知の合成経路またはそれらの別形態を使用して合成され得る。特に、銀は、優れた電気導電率を提供し、商用銀ナノワイヤーが入手可能である。良好な透明性および低いヘイズを有するために、ナノワイヤーは、ある範囲の小さな直径を有することが望ましい。特に、金属ナノワイヤーは、約250nm以下、さらなる実施形態において約150nm以下、他の実施形態において約10nm~約120nmの平均直径を有することが望ましい。平均長さに関して、より長い長さのナノワイヤーは、ネットワーク内でより良好な電気導電性を提供すると予想される。一般的には、金属ナノワイヤーは、少なくとも1ミクロン、さらなる実施形態において少なくとも2.5ミクロン、他の実施形態において約5ミクロン~約100ミクロンの平均長さを有することができるが、将来開発される改良された合成技術は、より長いナノワイヤーを可能にするかもしれない。アスペクト比は、平均長さを平均直径で割った比として規定することができ、いくつかの実施形態において、ナノワイヤーは、少なくとも約25、さらなる実施形態において約50~約10,000、さらに別の実施形態において約100~約2000のアスペクト比を有することができる。上記の明示範囲内のナノワイヤーの寸法のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。
【0053】
ポリマーバインダーおよび溶媒は一般的に、ポリマーバインダーが溶媒に可溶性または分散性であるように一貫して選択される。適切な実施形態において、金属ナノワイヤーインクは一般的に約0.02~約5重量パーセントのバインダー、さらなる実施形態において約0.05~約4重量パーセントのバインダーおよびさらに別の実施形態において約0.075~約2.5重量パーセントのポリマーバインダーを含む。いくつかの実施形態において、ポリマーバインダーは、放射線架橋性有機ポリマーおよび/または熱硬化性有機バインダーなどの架橋性有機ポリマーを含む。バインダーの架橋を促進するために、金属ナノワイヤーインクは、いくつかの実施形態において約0.0005重量%~約1重量%の架橋剤、さらなる実施形態において約0.002重量%~約0.5重量%およびさらに別の実施形態において約0.005重量%~約0.25重量%を含むことができる。ナノワイヤーインクは任意選択により、レオロジー改質剤またはその組合せを含むことができる。いくつかの実施形態において、インクは、表面張力を低下させるための湿潤剤または界面活性剤を含むことができ、湿潤剤は、コーティング性を改良するために有用であり得る。湿潤剤は一般的に溶媒に可溶性である。いくつかの実施形態において、ナノワイヤーインクは、約0.01重量パーセント~約1重量パーセントの湿潤剤、さらなる実施形態において約0.02~約0.75重量パーセントおよび他の実施形態において約0.03~約0.6重量パーセントの湿潤剤を含むことができる。増粘剤を任意選択によりレオロジー改質剤として使用して分散体を安定化すると共に沈降を低減するかまたは除くことができる。いくつかの実施形態において、ナノワイヤーインクが任意選択により約0.05~約5重量パーセントの増粘剤、さらなる実施形態において約0.075~約4重量パーセントおよび他の実施形態において約0.1~約3重量パーセントの増粘剤を含むことができる。上記の明示範囲内のバインダー、湿潤剤および増粘剤濃度のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。
【0054】
広範囲のポリマーバインダーが金属ナノワイヤーのための溶媒中に溶解/分散させるのに適し得るが、適したバインダーには、コーティング用途のために開発されたポリマーが含まれる。ハードコートポリマー、例えば、放射線硬化性コーティングは、水性または非水性溶媒中に溶解するために選択され得る、例えば広範囲の用途のためのハードコート材料として市販されている。放射線硬化性ポリマーおよび/または熱硬化性ポリマーの適した種類には、例えば、ポリウレタン、アクリル樹脂、アクリルコポリマー、セルロースエーテルおよびエステル、他の水不溶性構造多糖類、ポリエーテル、ポリエステル、エポキシ含有ポリマー、およびそれらの混合物が含まれる。商用ポリマーバインダーの例には、例えば、NEOCRYL(登録商標)銘柄アクリル樹脂(DMS NeoResins)、JONCRYL(登録商標)銘柄アクリルコポリマー(BASF Resins)、ELVACITE(登録商標)銘柄アクリル樹脂(Lucite International)、SANCURE(登録商標)銘柄ウレタン(Lubrizol Advanced Materials)、セルロースアセトブチレートポリマー(Eastman(商標)Chemical製のCAB銘柄)、BAYHYDROL(商標)銘柄ポリウレタン分散体(Bayer Material Science)、UCECOAT(登録商標)銘柄ポリウレタン分散体(Cytec Industries,Inc.)、MOWITOL(登録商標)銘柄ポリビニルブチラール(Kuraray America,Inc.)、セルロースエーテル、例えば、エチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース、他の多糖系ポリマー、例えばキトサンおよびペクチン、ポリ酢酸ビニルのような合成ポリマー等が含まれる。ポリマーバインダーは放射線に露光時に自己架橋性であり得る、および/またはそれらは光開始剤または他の架橋剤によって架橋され得る。いくつかの実施形態において、光架橋剤は放射線に露光時にラジカルを形成する場合があり、次に、ラジカルはラジカル重合機構に基づいた架橋反応を引き起こす。適した光開始剤には、例えば、IRGACURE(登録商標)銘柄(BASF)、GENOCURE(商標)銘柄(Rahn USA Corp.)、およびDOUBLECURE(登録商標)銘柄(Double Bond Chemical Ind.,Co,Ltd.)などの市販の製品、それらの組合せ等が含まれる。
【0055】
湿潤剤を使用して金属ナノワイヤーインクの被覆性ならびに金属ナノワイヤー分散体の特質を改良することができる。特に、湿潤剤は、コーティングの後にインクが表面上に十分に広がるようにインクの表面エネルギーを低下させることができる。湿潤剤は界面活性剤および/または分散剤であり得る。界面活性剤は、表面エネルギーを低下させるように機能する材料のクラスであり、界面活性剤は、材料の溶解性を改良することができる。界面活性剤は一般的に、その性質に寄与する分子の親水性部分と分子の疎水性部分とを有する。広範囲の界面活性剤、例えば非イオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、双性イオン界面活性剤が市販されている。いくつかの実施形態において、界面活性剤に伴った性質が問題ではない場合、非界面活性剤湿潤剤、例えば、分散剤もまた本技術分野に公知であり、インクの湿潤能力を改良するために有効であり得る。適した商用湿潤剤としては、例えば、COATOSIL(商標)ブランドのエポキシ官能化シランオリゴマー(Momentum Performance Materials)、Triton(商標)X-100、SILWET(商標)ブランドのオルガノシリコーン界面活性剤(Momentum Performance Materials)、THETAWET(商標)ブランドの短鎖非イオン性フッ素系界面活性剤(ICT Industries、Inc.)、ZETASPERSE(登録商標)ブランドのポリマー分散剤(Air Products Inc.)、SOLSPERSE(登録商標)ブランドのポリマー分散剤(Lubrizol)、XOANONS WE-D545界面活性剤(Anhui Xoanons Chemical Co.,Ltd)、EFKA(商標)PU 4009ポリマー分散剤(BASF)、CAPSTONE(登録商標)FS-30、FS-31、FS-3100、FS-34、およびFS-35フッ素系界面活性剤(DuPont)、MASURF FP-815 CP、MASURF FS-910(Mason Chemicals)、NOVEC(商標)FC-4430フッ素化界面活性剤(3M)、それらの混合物などが挙げられる。
【0056】
増粘剤を使用して、金属ナノワイヤーインクからの固形分の沈降を低減または取り除くことによって分散体の安定性を改良することができる。増粘剤は、インクの粘度または他の流体性質をかなり変化させる場合もない場合もある。適した増粘剤は市販されており、例えば、変性尿素のCRAYVALLAC(商標)商標、例えばLA-100(Cray Valley Acrylics,USA)、ポリアクリルアミド、THIXOL(商標)53L商標アクリル増粘剤、COAPUR(商標)2025、COAPUR(商標)830W、COAPUR(商標)6050、COAPUR(商標)XS71(Coatex,Inc.)、変性尿素のBYK(登録商標)商標(BYK Additives)、アクリゾール DR73、アクリゾール RM-995、アクリゾール RM-8W(Dow Coating Materials)、Aquaflow NHS-300、Aquaflow XLS-530疎水性変性ポリエーテル増粘剤(Ashland Inc.),Borchi Gel L 75N、Borchi Gel PW25(OMG Borchers)等が含まれる。
【0057】
付加的な添加剤を一般的にそれぞれ約5重量パーセント以下、さらなる実施形態において約2重量パーセント以下およびさらなる実施形態において約1重量パーセント以下の量で金属ナノワイヤーインクに添加することができる。他の添加剤には、例えば、酸化防止剤、紫外線安定剤、脱泡剤または消泡剤、沈降防止剤、粘度改質剤等が含まれ得る。
【0058】
上記のとおり、金属ナノワイヤーの融着は様々な試剤によって達成され得る。理論によって限定されることを望まないが、融剤が金属イオンを可動化させると考えられ、自由エネルギーが融着プロセスにおいて低下されると思われる。過度の金属移動または成長はいくつかの実施形態において光学的性質の低下につながる場合があり、したがって、所望の光学的性質を維持しながら所望の電気導電率を得るために十分な融着を生成するため、一般的に短時間の間適度に制御された方法で平衡のシフトによって望ましい結果を達成することができる。いくつかの実施形態において、融着プロセスの開始は、溶液を部分乾燥させて成分の濃度を増加させることによって制御することができ、融着プロセスの急冷は、例えば、金属層を洗浄するかあるいはさらに乾燥を終えることによって達成することができる。融剤を金属ナノワイヤーと共に単一インクに混合することができる。一インク溶液は融着プロセスの適切な制御を提供することができる。
【0059】
金属ナノワイヤーインクの堆積のために、任意の適当な堆積方法、例えば浸漬コーティング、噴霧コーティング、ナイフエッジコーティング、バーコーティング、マイヤーロッドコーティング、スロットダイコーティング、グラビア印刷、スピンコーティング等を使用することができる。インクは、所望の堆積方法のために添加剤で適切に調節された、粘度などの性質を有することができる。同様に、堆積方法が堆積される液体の量を管理し、インクの濃度を調節して所望の添加量の金属ナノワイヤーを表面上に提供することができる。分散体でコーティングを形成した後、薄く広がった金属導電層を乾燥させて液体を除去することができる。
【0060】
フィルムは、例えば、ヒートガン、炉、サーマルランプ等で乾燥され得るが、いくつかの実施形態において望ましい場合、空気乾燥されるフィルムであってもよい。いくつかの実施形態において、フィルムは、乾燥中に約50℃~約150℃の温度に加熱することができる。乾燥させた後、フィルムを1回もしくは複数回、例えば、エタノールもしくはイソプロピルアルコールなどのアルコールまたは他の溶媒もしくは溶媒ブレンドで洗浄して、過剰な固形分を除去してヘイズを低下させることができる。パターン化はいくつかの適当な方法で達成することができる。例えば、金属ナノワイヤーの印刷は、パターン化を直接にもたらすことができる。さらにまたは代わりに、リソグラフィ技術を使用して、融着の前または後に金属ナノワイヤーの部分を除去し、パターンを形成することができる。
【0061】
透明フィルムの電気的および光学的性質
融着金属ナノ構造ネットワークは、良い光学的性質を提供しながら低い電気抵抗を提供することができる。したがって、フィルムは透明導電性電極等として有用であり得る。透明導電性電極は、太陽電池の受光表面に沿う電極などの様々な用途に適し得る。ディスプレイのためにおよび特にタッチスクリーンのために、フィルムをパターン化して、フィルムによって形成される電気導電性パターンを提供することができる。パターン化フィルムを有する基材は一般的に、パターンの各部分において良い光学的性質を有する。
【0062】
薄いフィルムの電気抵抗はシート抵抗として表わすことができ、それをオーム/スクエア(Ω/□またはohms/sq)の単位で記録し、測定法に関連したパラメーターに従ってバルク電気抵抗値から値を識別する。フィルムのシート抵抗は一般的に、4点プローブ測定または別の適した方法を使用して測定される。いくつかの実施形態において、融着金属ナノワイヤネットワークは、約300ohms/sq以下、さらなる実施形態において約200ohms/sq以下、さらに別の実施形態において約100ohms/sq以下および他の実施形態において約60ohms/sq以下のシート抵抗を有することができる。上記の明示範囲内のシート抵抗のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。特定の用途に応じて、デバイスにおいて使用するためのシート抵抗の商用規格は、さらなるコストが必要とされる場合がある時など、シート抵抗のより低い値を必ずしも目的としていない場合があり、現在商業的に重要な値は、異なった品質および/またはサイズのタッチスクリーンの目標値として例えば、270ohm/sqか、150ohms/sqか、100ohms/sqか、50ohms/sqか、40ohms/sqか、30ohms/sq以下であってもよく、これらの値のそれぞれが範囲の端点として特定の値の間の範囲を画定し、例えば270ohms/sq~150ohms/sq、270ohms/sq~100ohms/sq、150ohms/sq~100ohms/sq等となり、15の特定の範囲が画定される。このように、より低コストのフィルムが、適度に高めのシート抵抗値と引き換えに特定の用途のために適している場合がある。一般的には、ナノワイヤーの添加量を増加させることによってシート抵抗を低下させることができるが、増加した添加量は、他の観点から望ましくない場合があり、金属添加量はシート抵抗の低い値を達成するための、多くのなかの唯一の要因である。
【0063】
透明導電性フィルムとしての用途のために、融着金属ナノワイヤネットワークが良い光学透明性を維持することが望ましい。基本的には、光学透明性は添加量と反比例しており、より高い添加量は透明性の低下をもたらすが、ネットワークの加工もまた、透明性にかなり影響を与え得る。また、ポリマーバインダーおよびその他の添加剤は、良い光学透明性を維持するように選択され得る。光学透明性は、基材を通る透過光に対して評価することができる。例えば、本明細書に説明された導電性フィルムの透明性は、紫外可視分光光度計を使用しておよび導電性フィルムおよび支持体基材を通る全透過を測定することによって測定することができる。透過率は、透過光の強度(I)の、入射光の強度(I)に対する比である。フィルムを通る透過率(Tフィルム)は、測定された全透過率(T)を、支持体基材を通る透過率(T基材)によって割ることによって推定され得る。(T=I/IおよびT/T基材=(I/I)/(I基材/I)=I/I基材=Tフィルム)したがって、記録された全透過を補正して基材を通る透過を除去し、フィルムだけの透過を得ることができる。可視スペクトルにわたって良い光学透明性を有することが一般的に望ましいが、便宜上、550nmの波長の光で光の透過を記録することができる。代わりにまたはさらに、400nm~700nmの波長の光の全透過率として透過を記録することができ、このような結果は以下の実施例において報告される。一般的には、融着金属ナノワイヤーフィルムについて、550nmの透過率および400nm~700nmの全透過率(または便宜上、単に「全透過率」)の測定は、定性的に異なっていない。いくつかの実施形態において、融着ネットワークによって形成されるフィルムは、少なくとも80%、さらなる実施形態において少なくとも約85%、さらに別の実施形態において、少なくとも約90%、他の実施形態において少なくとも約94%およびいくつかの実施形態において約95%~約99%の全透過率(全透過率%)を有する。透明なポリマー基材上のフィルムの透明性は、標準ASTM D1003(“Standard Test Method for Haze and Luminous Transmittance of Transparent Plastics”)(本願明細書に参照によって組み込まれる)を使用して評価することができる。上記の明示範囲内の透過率のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。基材のために以下の実施例においてフィルムの測定された光学的性質を調節するとき、フィルムは非常に良い透過およびヘイズ値を有し、それらは観察される低いシート抵抗と共に達成される。
【0064】
また、融着金属ネットワークは、望ましくは低いシート抵抗を有しながら可視光線の高い透過と共に低いヘイズを有することができる。ヘイズは、上に参照されたASTM D1003に基づいてヘイズメーターを使用して測定することができ、基材のヘイズ寄与を除去して透明導電性フィルムのヘイズ値を提供することができる。いくつかの実施形態において、焼結ネットワークフィルムは、約1.2%以下、さらなる実施形態において約1.1%以下、さらに別の実施形態において約1.0%以下および他の実施形態において約0.9%~約0.2%のヘイズ値を有することができる。実施例において説明されるように、適切に選択された銀ナノワイヤーによってヘイズおよびシート抵抗の非常に低い値が同時に達成された。添加量を調節して、可能な限り非常に低いヘイズ値とまだ良いシート抵抗値を有するようにシート抵抗とヘイズ値とのバランスをとることができる。具体的には、0.8%以下、そしてさらなる実施形態において約0.4%~約0.7%のヘイズ値を少なくとも約45ohms/sqのシート抵抗の値と共に達成することができる。また、0.7%~約1.2%、およびいくつかの実施形態において約0.75%~約1.05%のヘイズ値を約30ohms/sq~約45ohms/sqのシート抵抗の値と共に達成することができる。これらのフィルムの全てが良い光学透明性を維持した。上記の明示範囲内のヘイズのさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。
【0065】
複数層フィルムの相当する性質に関して、付加的な成分は一般的に、光学的性質に及ぼす効果が小さいように選択され、透明要素において使用するために様々なコーティングおよび基材が市販されている。適した光学コーティング、基材および関連材料が上に要約される。構造材料のいくつかは電気絶縁性であり得るが、厚めの絶縁層が使用される場合、フィルムをパターン化して、他の場合なら埋設される電気導電性要素への接触および電気的接触を、絶縁層を貫通する間隙またはボイドが提供することができる位置を設けることができる。最終的なデバイスのいくつかの部品は、電気導電性透明要素を通して接続などの構造物の一部を見えないようにするため、不透明または半透明のカバーで視界から覆うことができる。カバーは導電層を光から遮蔽することができるが、光の吸収のために加熱され、透明領域と覆われた領域との間の変わり目のカバーテープおよび端部は、実施例で対処される安定性の問題を有しうる。
【0066】
透明電気導電性フィルムの安定性および安定性試験
使用の際、透明導電性フィルムが、対応するデバイスの耐用年数などの商業的に受け入れられる時間、持続することが望ましい。本明細書に記載される安定化組成物および構造物は、この目的が考慮され、薄く広がった金属導電層の性質は十分に維持される。性能を試験するために、加速エージング手順は、妥当な期間にわたって客観的な評価を提供するのに使用され得る。これらの試験は、市販の環境試験装置を用いて行われ得る。
【0067】
実施例に使用される選択された試験は、60℃のブラック標準温度(装置の設定)、38℃の気温、50%の相対湿度および昼光フィルターを用いたキセノンランプからの60W/mの放射照度(300nm~400nm)を含む。Atlas Suntest(商標)XXL装置(Atlas Material Testing Solutions,Chicago,IL,USA)およびスガ環境試験機器、スーパーキセノンウェザーメーター(Super Xenon Weather Meter)、SX75(スガ試験機株式会社、日本)などの種々の適した試験装置が市販されている。実施例は、融着金属ナノ構造ネットワークが組み込まれた2つの異なるスタック構造物を用いた試験を提供し、具体的なスタック構造は以下に記載される。
【0068】
前の段落に規定される試験条件下で、試料が、時間の関数としてのシート抵抗の変化によって評価され得る。値は、時間発展に焦点を合わせるために初期シート抵抗に対して正規化され得る。そのため、一般的に、時間発展は、R/Rに対してプロットされ、ここで、Rは、時間発展するシート抵抗測定値であり、Rは、シート抵抗の初期値である。いくつかの実施形態において、R/Rの値は、1000時間後に1.8以下の値、さらなる実施形態において1.6以下の値、さらに別の実施形態において1000時間の環境試験の後に1.4以下の値となり得る。別の観点から、R/Rの値は、約1000時間後に1.5以下の値、さらなる実施形態において約1500時間後に1.5以下の値、さらに別の実施形態において約2000時間の環境試験後に1.5以下の値となりうる。さらに別の実施形態において、R/Rの値は約750時間後に1.2以下の値となりうる。上記の明示範囲内のR/Rおよび安定性時間のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。
【0069】
安定化された導電性フィルムの有用な特徴の1つは、R/Rの変化が段階的となることであり、そのため、試験下の短い時間内でフィルムの突発的な破壊が生じない。いくつかの実施形態において、R/Rの変化は、合計約2000時間における任意の100時間の増分につき0.5未満に維持され、合計約2000時間における任意の100時間の増分につき、さらなる実施形態において約0.3以下、他の実施形態において約0.2以下、さらに別の実施形態において約0.15以下に維持される。上記の明示範囲内の時間増分にわたる安定性のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。
【実施例0070】
以下の実施例では、溶媒と、銀ナノワイヤー、ポリマーバインダー、および融着溶液の安定な分散体とを含む単一インクが使用される。この銀ナノワイヤーインクは実質的に、“Metal Nanowire Inks for the Formation of Transparent Conductive Films With Fused Networks”と題されたLiらに対する米国特許第9,150,746B1号明細書(参照によって本願明細書に組み込まれる)の実施例5に記載されるものであった。AgNWは典型的には、0.06~1.0重量%のレベルのインクおよび約0.01~1重量%のバインダー中に存在する。このインクをPETポリエステルフィルム上にスロットコートした。ナノワイヤーインクのコーティング後、次にフィルムを120℃のオーブン中で2分間加熱してフィルムを乾燥させた。安定化化合物のコーティング組成物を融着金属ナノ構造層上に同様にスロットコートした。別記しない限り、安定化化合物の濃度は、溶液中で約0.01~0.03重量%、コーティング中で1.0~3.5重量%であった。次にフィルムをUV光で硬化させた。個別のコーティング溶液は、約100ohm/sq以下のシート抵抗および少なくとも約90%の透明性を有する融着金属ナノ構造ネットワークが形成されるように設計した。しかし、観察される安定性は、金属ナノワイヤー系導電性フィルムの場合に対応して観察されることが予想される。全ての実施例において、安定化されたフィルムの光学的性質は、一般的に、化学安定化剤を有さない対応するフィルムから大きく変化することはない。
【0071】
メタバナジン酸化合物は、http://vanadium.atomistry.com/metavanadates.html(本出願の出願日の時点で参照によって本願明細書に組み込まれる)に記載される。
【0072】
類似しているが幾分異なる試験構成を用いて2組の実験を行った。これらの2組の実験について順次議論される。
【0073】
第1の組の実験-試験構成A
これらの試験は、PET基材(50ミクロン)と、融着金属ナノ構造層と、ポリマーオーバーコート(200nm)と、光学透明接着剤(50または125ミクロン)と、商用ハードコートPETポリエステルであった積層ポリマーカバー(50ミクロン)とを有するフィルムを用いて行った。この試験フィルム構成を図3中に示す。特定の実施例に示される場合を除いて、PET基材の裏側には、別の光学透明接着剤(50または125ミクロン)および別の積層ハードコートポリエステルカバー(125ミクロン)を取り付けた。フィルムの全厚さは約325ミクロンまたは約475ミクロンであった。すべての試料は2回形成し、平均の結果が報告される。
【0074】
Atlas Suntest(商標)XXL装置(Atlas Material Testing Solutions,Chicago,IL,USA)中で加速耐候試験を行った。試験装置中の条件は、60℃のブラック標準温度(装置の設定)、38℃の気温、50%の相対湿度、および昼光フィルターを用いたキセノンランプからの60W/mの放射照度(300nm~400nm)を有した。別記しない限り、ハードコートPETの裏側カバーシートを装置中の光に向けて上向きに置き、その領域の約半分を黒色テープで覆った。
【0075】
第2の組の実験-試験構成B
これらの試験は、PET基材(50ミクロン)と、融着金属ナノ構造層と、ポリマーオーバーコート(200nm)と、光学透明接着剤(50または125ミクロン)と、商用ハードコートPETポリエステルであった積層ポリマーカバー(125ミクロン)とを有するフィルムを用いて行った。試験フィルム構成を図4中に示す。フィルムの全厚さは約200ミクロン~約350ミクロンであった。すべての試料は2回形成し、平均の結果が報告される。
【0076】
Atlas Suntest(商標)XXL装置(Atlas Material Testing Solutions,Chicago,IL,USA)中で加速耐候試験を行った。試験装置中の条件は、60℃のブラック標準温度(装置の設定)、38℃の気温、50%の相対湿度、および昼光フィルターを用いたキセノンランプからの60W/mの放射照度(300nm~400nm)を有した。別記しない限り、積層ハードコートPETカバーシートを装置中の光に向けて上向きに置き、その領域の約半分を黒色テープで覆った。
【0077】
実施例1-バナジウムオキシトリプロポキシド(LS-1)安定化組成物を有するオーバーコートを有する透明導電性フィルム
この実施例は、オーバーコート層中に加えられた安定化化合物LS-1の有効性を実証する。
【0078】
商用オーバーコート溶液OC-1中にLS-1安定剤を用いて試験構成Aにより1組の試料を作製した。安定化化合物は、層中の固形分に対して3重量%の濃度でオーバーコート層中に存在した。Xe光照射安定性に関するLS-1の試験結果を図5中に示す。結果は、試験条件下で2000時間を超えるまで優れた安定化を実証している。
【0079】
実施例2-構成B中に種々のレベルのバナジウムオキシトリプロポキシド(LS-1)安定化組成物を有するオーバーコートを有する透明導電性フィルム
この実施例は、オーバーコート層中およびスタック構成B中に加えた安定化化合物LS-1の有効性を実証する。
【0080】
試験構成Bにより、3つの異なるレベルで商用オーバーコート溶液OC-1中にLS-1安定剤を有する1組の試料を作製した。安定化化合物は、層中の固形分に対して2、3、および5重量%の濃度でオーバーコート層中に存在した。Xe光照射安定性に関する試験結果を図6中に示す。結果は、試験条件下で1700時間を超えるまでXe光照射安定性に関して優れた安定化を実証している。
【0081】
実施例3.メタバナジン酸ナトリウム(LS-2)安定化組成物を有するオーバーコートを有する透明導電性フィルム
この実施例は、オーバーコート層中に加えられた安定化化合物LS-2の有効性を実証する。
【0082】
商用オーバーコート溶液OC-1中にLS-2安定剤を用いて試験構成Bにより1組の試料を作製した。安定化化合物は、層中の固形分に対して3重量%の濃度でオーバーコート層中に存在した。Xe光照射安定性に関するLS-2の結果を図7中に示す。結果は、試験条件下でほぼ2000時間まで優れた安定化を実証している。
【0083】
試験を終了すると、試料は抵抗増加の傾向を示さなかった。
【0084】
実施例4-テトラ-n-ブチルメタバナジン酸アンモニウム(LS-3)安定化組成物を有するオーバーコートを有する透明導電性フィルム
この実施例は、オーバーコート層中に加えられた安定化化合物LS-3の有効性を実証する。
【0085】
商用オーバーコート溶液OC-1中にLS-3安定剤を用いて試験構成Bにより1組の試料を作製した。安定化化合物は、層中の固形分に対してそれぞれ2および3重量%の濃度でオーバーコート層中に存在した。LS-3を有さない1組の試料も比較のため作製した。Xe光照射安定性に関する結果を図8中に示す。結果は、試験条件下でほぼ800時間まで優れた安定性を実証しており、固形分に対して2重量%の低濃度でさえも、LS-3は、安定化の非常に顕著な効果を示した。
【0086】
バナジウム(+5)安定化組成物によって、光学的性質の変化がわずかなフィルムが得られる。比較において、当分野における別の安定剤では、同じ方法で組み込まれた場合に、パラメーターbで評価するとフィルムのより大きな黄変が生じうる。表1中は、LS-3またはFe(acac)(LSF)のいずれかを有するオーバーコートを有するフィルムの性質を比較している。
【0087】
人間による色の知覚に対するスペクトル波長を関連づけるために色空間を定義することができる。CIELABは、International Commission on Illumination(CIE)によって決定された色空間である。CIELAB色空間は、三次元の座標の組L、a、およびbを使用し、ここでLは色の明度に関連し、aは赤と緑との間の色の位置に関し、bは黄と青との間の色の位置に関連する。「」の値は、標準白色点に対して規格化された値を表す。CIELABパラメーターは、分光光度計中で得られた測定値から商用ソフトウェアを使用して求めることができる。
【0088】
【表1】
【0089】
実施例5-異なる光学導電性接着剤を有する安定剤の安定化効果
この実施例は、本発明の安定化組成物によって、デバイススタック作製に使用される種々の光学透明接着剤を用いて優れた安定化が得られることを実証する。
【0090】
2つの異なる光学透明接着テープのOCA-1=3M 8146-2およびOCA-2=LG Hausys 9052D(これらはキャリアフィルムを有さない)を用いて試験構成Bにより2組の試料を作製した。結果を図9中にプロットしている。結果は2つの異なる光学透明接着テープで同様であり、両方の試料で良好な結果が得られた。
【0091】
実施例6-導電性インク配合物によって組み込まれた安定剤の安定化効果
この実施例は、導電性インク配合物によって組み込まれた場合に安定化組成物によって優れた安定化が得られることを実証する。
【0092】
それぞれ安定化組成物を含まない、Co(NO塩を含む、Co(NO+EN(エチレンジアミン)を含む、およびCo(NO+NaNOを含む4つの異なるインクを用い、商用OC-1がオーバーコートされ、光学透明接着テープの3M8146-5を用い、ハードコートPETカバーを用いて、試験構成Bにより4組の試料を作製した。Co(NO+ENおよびCo(NO+NaNOの組成物は、Co:ENおよびCo:NO の両方のモル比がそれぞれ1:2で別々に調製した溶液からあらかじめ混合し、その後にインクに加えた。ENおよびNO の強い錯形成能力のため、安定なCo(EN)およびCo(NOが混合溶液中およびインク中で形成されたと考えた。インク中のコバルトイオンの銀ナノワイヤーに対するモル比は0.05~0.15であった。加速磨耗試験結果を図10中に示す。Co(NO+ENおよびCo(NO+NaNOをインク中に混合した場合に、安定化効果が観察された。1000時間を超える試験条件下の安定性がこれらの組成物で実現されたが、Co(NO単独では非常に低い光安定性が得られた。結果は、Co2+錯体が有効な光安定剤であるが、単純なCo(NO塩はフィルムに安定化効果を提供しないことを示している。
【0093】
上記の実施形態は例示のためのものであり限定的でないことを意図している。さらなる実施形態が請求の範囲内である。さらに、本発明は特定の実施形態を参照して説明されたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに形態および詳細に変更を加えることができることを当業者は認識するであろう。本明細書の明示的な開示に反する主題が組み込まれないように上記の文献の参照による任意の組み込みは制限される。特定の構造物、組成物、および/または方法が、構成要素、要素、成分、または他の区画を用いて本明細書に記載される限りにおいて、特に別記しない限り、本明細書の開示は、特定の実施形態と、特定の構成要素、要素、成分、他の区画、またはそれらの組合せを含む実施形態と、ここの議論において示唆されるような主題の基本的性質を変化させないさらに別の特徴を含み得るこのような特定の構成要素、成分、もしくは別の区画、またはそれらの組合せから本質的になる実施形態とを対象とする。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【手続補正書】
【提出日】2022-01-20
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒と、約0.01重量%~約1重量%の銀ナノワイヤーと、銀金属イオン源と、コバルト+2錯体と、還元剤とを含む分散体であって、前記コバルト+2錯体が、リガンドのコバルトイオンに対するモル当量比が約0.01~約2.6で、Co+2イオンおよびリガンドとを含む、分散体。
【請求項2】
前記銀金属イオン源が約0.01mg/mL~約2.0mg/mLの銀イオンを含む、請求項に記載の分散体。
【請求項3】
銀ナノワイヤーに対して約0.01~約0.5のモル比でコバルトイオンを含む、請求項に記載の分散体。
【請求項4】
約0.02重量%~約5重量%の濃度で多糖系ポリマーをさらに含む、請求項のいずれか一項に記載の分散体。
【請求項5】
前記溶媒が水および約2重量%~約60重量%のアルコールを含む、請求項のいずれか一項に記載の分散体。
【請求項6】
基材と、前記基材によって支持され融着金属ナノ構造ネットワークを含む透明導電層と、ポリマーバインダーと、コバルト(+2)を含む安定化化合物とを含む透明導電性構造物であって、前記融着金属ナノ構造ネットワークが、請求項のいずれか一項に記載の分散体の湿式コーティングの乾燥により得られる、透明導電性構造物。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
別の態様において、本発明は、溶媒と、約0.01重量%~約1重量%の銀ナノワイヤーと、銀金属イオン源と、コバルト+2錯体と、還元剤とを含む分散体であって、コバルト+2錯体が、約0.01~約2.6のリガンドのコバルトイオンに対するモル当量比においてCo+2イオンおよびリガンドを含む分散体に関する。さらに別の態様において、本発明は、基材と、基材によって支持され融着金属ナノ構造ネットワークを含む透明導電層と、ポリマーバインダーと、コバルト(+2)を含む安定化化合物とを含む透明導電性構造物であって、融着金属ナノ構造ネットワークが、この分散体の湿式コーティングの乾燥によって形成される、透明導電性構造物に関する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
特に、金属ナノワイヤーをベースとした電気導電性フィルムの実現に関する著しい前進は、金属ナノワイヤーの隣接した部分が融着する融着金属ネットワークを形成するための十分に制御可能な方法の発見であった。種々の融着源を用いた金属ナノワイヤーの融着が、“Metal Nanowire Networks and Transparent Conductive Material”と題されたVirkarらに対する米国特許出願公開第2013/0341074号明細書、および“Metal Nanostructured Networks and Transparent Conductive Material”と題されたVirkarらに対する米国特許出願公開第2013/0342221号明細書(‘221出願)、“Fused Metal Nanostructured Networks,Fusing Solutions With Reducing Agents and Methods for Forming Metal Networks”と題されたVirkarらに対する米国特許出願公開第2014/0238833号明細書(‘833出願)、“Transparent Conductive Coatings Based on Metal Nanowires and Polymer Binders,Solution Processing Thereof,and Patterning Approaches”と題されたYangらに対する米国特許出願公開第2015/0144380号明細書(‘380出願)、および“Metal Nanowire Inks for the Formation of Transparent Conductive Films With Fused Networks”と題されたLiらに対する米国特許第9,183,968号明細書(全て参照によって本願明細書に組み込まれる)にさらに記載されている。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0029
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0029】
したがって、基材の構造内に1つまたは複数の層を有することができる基材上に薄く広がった金属導電層を形成することができる。基材は一般的に、自立フィルムまたはシート構造として扱うことができる。アンダーコートと称される、薄い溶液加工層を任意選択により基材フィルムの上面に沿っておよび薄く広がった金属導電層のすぐ下に置くことができる。また、基材の反対側の薄く広がった金属導電の面に特定の保護をもたらす付加的な層で薄く広がった金属導電性層をコートすることができる。一般的には、電気導電性構造物を最終製造物においてどちらかの向きに置くことができ、すなわち、基材が外側に向いているか、または基材が電気導電性構造物を支持する製造物の表面に接している。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0040
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0040】
いくつかの用途のために、タッチセンサーの異なった領域など、フィルムの電気導電性部分をパターン化して所望の機能性を導入することが望ましい。パターン化を基材表面上の金属添加量を変えることによって実施するには、金属ナノワイヤーを選択された位置に印刷し、他の位置は金属を効果的に有さないようにするか、またはナノワイヤーを融着する前およびまたは後のどちらかに選択された位置から金属をエッチするかあるいは他の方法でアブレートするかどちらでも可能である。また、金属ナノワイヤーを選択的に融着することによってパターン化を行なうことができるように、本質的に等しい金属添加量を有する層の融着と非融着部分との間に電気導電率の高いコントラストを達成することができる。金属ナノワイヤーの選択的融着に基づくパターン化が、前述の‘833出願および‘380出願に記載されている。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
金属ナノワイヤーインクは、一インクまたは二インク構成のどちらかで、約0.01~約1重量パーセントの金属ナノワイヤー、さらなる実施形態において約0.02~約0.75重量パーセントの金属ナノワイヤーおよびさらに別の実施形態において約0.04~約0.6重量パーセントの金属ナノワイヤーを含有することができる。上記の明示範囲内の金属ナノワイヤー濃度のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は理解するであろう。金属ナノワイヤーの濃度は、基材表面上の金属の添加量ならびにインクの物理的性質に影響を与える。融着プロセスを進めるための金属イオン源は、金属ナノワイヤーから金属を除去する酸化性酸などの酸化剤、またはインク中に溶解した金属塩であってよい。特定の目的の実施形態の場合、ナノワイヤーは銀ナノワイヤーであり、金属イオン源は溶解した銀塩である。インクは、約0.01mg/mLおよび約2.0mg/mLからの銀イオン、さらなる実施形態において約0.02mg/mLおよび約1.75mg/mLから、他の実施形態においては約0.025mg/mLおよび約1.5mg/mLからの濃度で銀イオンを含むことができる。コバルト+2安定化錯体に加えて、銀イオンが存在し、これらは一般的に、コバルト2+が還元されずに残り銀イオンが優先的に還元される濃度で存在する。インクは、約0.0001重量%~約0.1重量パーセント、さらなる実施形態において約0.0005重量%~約0.08重量%、さらに別の実施形態において約0.001重量%~約0.05重量%の濃度のコバルト安定化組成物を含むことができる。上記の明示範囲内の銀イオン濃度およびコバルト安定化組成物濃度のさらに別の範囲が考えられ、本開示の範囲内であることを当業者は認識するであろう。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0093
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0093】
上記の実施形態は例示のためのものであり限定的でないことを意図している。さらなる実施形態が請求の範囲内である。さらに、本発明は特定の実施形態を参照して説明されたが、本発明の趣旨および範囲から逸脱せずに形態および詳細に変更を加えることができることを当業者は認識するであろう。本明細書の明示的な開示に反する主題が組み込まれないように上記の文献の参照による任意の組み込みは制限される。特定の構造物、組成物、および/または方法が、構成要素、要素、成分、または他の区画を用いて本明細書に記載される限りにおいて、特に別記しない限り、本明細書の開示は、特定の実施形態と、特定の構成要素、要素、成分、他の区画、またはそれらの組合せを含む実施形態と、ここの議論において示唆されるような主題の基本的性質を変化させないさらに別の特徴を含み得るこのような特定の構成要素、成分、もしくは別の区画、またはそれらの組合せから本質的になる実施形態とを対象とする。
本明細書の開示内容は、以下の態様を含み得る。
(態様1)
基材と、前記基材によって支持された薄く広がった金属電気導電層と、前記薄く広がった金属導電層に隣接するコーティング層とを含む透明導電性構造物であって、前記コーティング層が、ポリマーマトリックスおよびバナジウム(+5)安定化組成物を含む、透明導電性構造物。
(態様2)
前記基材が透明ポリマーシートを含み、前記基材と前記薄く広がった金属導電層との間に存在するように前記コーティング層が基材表面上に存在する、態様1に記載の透明導電性構造物。
(態様3)
前記薄く広がった金属導電層が前記基材の表面上に存在し、前記薄く広がった金属導電層が前記基材と前記コーティング層との間に存在する、態様1または態様2に記載の透明導電性構造物。
(態様4)
前記コーティング層が約0.1重量%~約9重量%の前記バナジウム(+5)安定化組成物を含む、態様1~3のいずれか一項に記載の透明導電性構造物。
(態様5)
前記バナジウム(+5)安定化組成物がメタバナジン酸(VO3-)塩、オルトバナジン酸(VO4-3)塩、バナジウムオキシトリアルコキシド(VO(OR)3であり、式中、Rはアルキル基、バナジウムオキシハライド、またはそれらの組合せである、態様1~4のいずれか一項に記載の透明導電性構造物。
(態様6)
前記コーティング層が約40nm~約1.5ミクロンの平均厚さを有する、態様1~5のいずれか一項に記載の透明導電性構造物。
(態様7)
前記薄く広がった金属導電層が、約100ohm/sq以下のシート抵抗を有する融着金属ナノ構造ネットワークである、態様1~6のいずれか一項に記載の透明導電性構造物。
(態様8)
前記薄く広がった金属導電層が融着金属ナノ構造ネットワークであり、前記コーティング層が約40nm~約1.5ミクロンの平均厚さを有し、前記バナジウム(+5)組成物が、メタバナジン酸アンモニウム(NH4VO3)、バナジン酸テトラブチルアンモニウム(NBu4VO3)、メタバナジン酸カリウム(KVO3)、メタバナジン酸ナトリウム(NaVO3)、オルトバナジン酸ナトリウム(Na3VO4)、バナジウムオキシトリプロポキシド、バナジウムオキシトリエトキシド、バナジウムオキシトリイソプロポキシド、バナジウムオキシトリブトキシド、またはそれらの混合物であり、前記コーティング層が約0.1重量%~約9重量%の前記バナジウム(+5)安定化組成物を含む、態様1に記載の透明導電性構造物。
(態様9)
架橋性ポリマー前駆体と、溶媒と、固形分重量に対して約0.1重量%~約9重量%安定化組成物とを含み、前記安定化組成物がバナジウム(+5)イオンを含む、安定化ハードコート前駆体溶液。
(態様10)
少なくとも約7重量%の溶媒を含む、態様9に記載の安定化ハードコート前駆体溶液。
(態様11)
前記溶媒が有機非水性溶媒である、態様10に記載の安定化ハードコート前駆体溶液。
(態様12)
前記架橋性ポリマー前駆体が、ポリシロキサン、ポリシルセスキオキサン、ポリウレタン、アクリル樹脂、アクリルコポリマー、セルロースエーテルおよびエステル、ニトロセルロース、他の水不溶性構造多糖、ポリエーテル、ポリエステル、ポリスチレン、ポリイミド、フルオロポリマー、スチレン-アクリレートコポリマー、スチレン-ブタジエンコポリマー、アクリロニトリルブタジエンスチレンコポリマー、ポリスルフィド、エポキシ含有ポリマー、それらのコポリマー、ならびにそれらの混合物を含む、態様9~11のいずれか一項に記載の安定化ハードコート前駆体溶液。
(態様13)
架橋のためのラジアル(radial)重合系光開始剤をさらに含む、態様12に記載の安定化ハードコート前駆体溶液。
(態様14)
前記安定化ハードコート前駆体溶液が、透明の薄く広がった銀導電層に液体として塗布して、前記透明銀導電層を安定化させることができる、態様9~13のいずれか一項に記載の安定化ハードコート前駆体溶液。
(態様15)
溶媒と、約0.01重量%~約1重量%の銀ナノワイヤーと、銀金属イオン源と、コバルト+2錯体と、還元剤とを含む分散体であって、前記コバルト+2錯体が、リガンドのコバルトイオンに対するモル当量比が約0.01~約2.6で、Co+2イオンおよびリガンドとを含む、分散体。
(態様16)
前記銀金属イオン源が約0.01mg/mL~約2.0mg/mLの銀イオンを含む、態様15に記載の分散体。
(態様17)
銀ナノワイヤーに対して約0.01~約0.5のモル比でコバルトイオンを含む、態様16に記載の分散体。
(態様18)
約0.02重量%~約5重量%の濃度で多糖系ポリマーをさらに含む、態様15~17のいずれか一項に記載の分散体。
(態様19)
前記溶媒が水および約2重量%~約60重量%のアルコールを含む、態様15~17のいずれか一項に記載の分散体。
(態様20)
基材と、前記基材によって支持され融着金属ナノ構造ネットワークを含む透明導電層と、ポリマーバインダーと、コバルト(+2)を含む安定化化合物とを含む透明導電性構造物であって、前記融着金属ナノ構造層が、態様15~19のいずれか一項に記載の分散体の湿式コーティングの乾燥により得られる、透明導電性構造物。


【外国語明細書】