(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062111
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】整形外科的介入用の手術ロボット
(51)【国際特許分類】
A61B 34/30 20160101AFI20220412BHJP
B25J 13/08 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
A61B34/30
B25J13/08 Z
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009635
(22)【出願日】2022-01-25
(62)【分割の表示】P 2020512922の分割
【原出願日】2017-05-12
(71)【出願人】
【識別番号】519402638
【氏名又は名称】サイバー、サージェリー、ソシエダッド、リミターダ
【氏名又は名称原語表記】CYBER SURGERY, S.L.
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118843
【弁理士】
【氏名又は名称】赤岡 明
(74)【代理人】
【識別番号】100152205
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 昌司
(72)【発明者】
【氏名】ホルヘ、プレサ、アロンソ
(72)【発明者】
【氏名】ホン、オニャティビア、ブラーボ
(72)【発明者】
【氏名】アルバロ、エスクデーロ、マルティネス、デ、イバレタ
(72)【発明者】
【氏名】アルフォンソ、ウルサインキ、グラリア
(72)【発明者】
【氏名】エミリオ、サンチェス、タピア
(57)【要約】 (修正有)
【課題】骨運動を追跡および補償するための手術ロボットを提供する。
【解決手段】ロボットアーム(3)と、アームのエンドエフェクタのツールガイド(5)と、ツールガイドと同じ平面でロボットアームに取り付けられたトラッカーであって、トラッカーは、関節セグメント(1a~1d)と、トラッカーの運動が許容されて少なくとも6つの自由度が監視されるようにセグメントに関連付けられたエンコーダ(2)とのアセンブリを備える、トラッカーと、を備える手術ロボット。トラッカーベースおよびツールガイドは、中間装置を使用せずに追跡対象の骨に対するツールガイドの正確な位置を直接判断できるように、同じフレームを共有し、つまり同じ平面上にある。このようにして、光学トラッカーおよび関連するカメラをなくすことができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨運動を追跡および補償するための手術ロボットであって、前記ロボットは、
エンドエフェクタを有するロボットアームであって、前記エンドエフェクタにツールガイド(5)をさらに有する、ロボットアームと、
クランプ(6)と、
トラッカー(1)と、を備え、
前記トラッカー(1)は、
・前記ロボットアームの前記エンドエフェクタに固定されたベース(3)と、
・前記クランプ(6)に連結されるようになっている先端と、
・前記ベース(3)を前記先端に接続する運動連鎖を構成する関節セグメント(1a~1d)のアセンブリと、
・前記関節セグメント(1a~1d)の運動を追跡するための、前記関節セグメント(1a~1d)に関連付けられたエンコーダ(2)と、を有し、
前記トラッカー(1)の運動が許容されて少なくとも6つの自由度が監視され、
前記クランプ(6)は、運動連結機構(7)によって前記トラッカー(1)の前記先端の関節セグメント(1a~1d)に取り外し可能に取り付けられ、前記トラッカー(1)の前記先端は患者に近付けられることを意図しており、
前記関節セグメント(1a~1d)は、軽い常磁性材料で作られており、
前記運動連結機構(7)は、磁気連結機構であり、
前記クランプ(6)に位置し、かつ第1の磁石が設けられたベース部分と、
前記トラッカー(1)に位置し、かつ前記先端で前記トラッカー(1)の最後の関節セグメントに固定された頂部であって、前記第1の磁石とは逆の極性の第2の磁石が設けられた、頂部と、を備え、
前記運動連結機構(7)は、その頂部に3つの球体と、そのベース部分に3つのV字溝とが設けられ、前記溝は3つの角度を形成し、前記角度のうちの少なくとも1つは他の2つとは異なっており、前記球体および前記溝が互いに協力して連結器を形成し、
前記手術ロボットは、
処理ユニットと、
いつ接続が確立されたかを特定するように構成された前記処理ユニットに接続された電気回路と、をさらに備え、
前記運動連結機構(7)の前記球体は、導電性材料で作られており、前記V字溝は導電部を呈し、
前記処理ユニットは、前記電気回路が前記球体と前記V字溝の間に電気接続があることを特定した場合に、前記トラッカーが前記クランプに取り付けられたことを検出する、ことを特徴とする、手術ロボット。
【請求項2】
前記トラッカー(1)は、4つの関節セグメント(1a~1d)および6つの関連する回転エンコーダ(q1~q6)を有する、請求項1に記載の手術ロボット。
【請求項3】
前記トラッカー(1)は、4つの関節セグメント(1a~1d)と、5つの関連する回転エンコーダ(q1~q5)とを有し、前記関節セグメントのうちの1つは、その長さを変更することが可能であり、運動が許容されて6つの自由度が監視されるように関連するリニアエンコーダ(l4)を有する、請求項1に記載の手術ロボット。
【請求項4】
前記トラッカー(1)は、4つの関節セグメント(1a~1d)と、6つの関連する回転エンコーダ(q1~q6)とを有し、前記関節セグメントのうちの1つは、その長さを変更することが可能であり、運動が許容されて7つの自由度が監視されるように関連するリニアエンコーダ(l4)を有する、請求項1に記載の手術ロボット。
【請求項5】
前記トラッカー(1)の前記関節セグメント(1a~1d)は、アルミニウム合金またはチタン合金を含む、請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の手術ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、整形外科的介入用のロボットに関し、より詳細には、骨運動を追跡および補償する手段を組み込んだスクリューの挿入を支援するためのロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
脊椎の安定化のための椎弓根スクリューシステムの使用は、脊椎手術においてますます一般的になってきた。この技術は、これらの構築によって得られる癒合速度および剛性の改善が主張されるため、脊椎の癒合手術を行うときに現在使用されている。様々な椎弓根スクリューシステムが説明されており、新しい技術が開発されている。従来の技術は、外科医の器用さに大きく依存している。ナビゲーションを利用する技術は、外部装置を必要とする。ナビゲーションを利用する技術は、外部装置を必要とする。ロボット支援手術は、外科医に堅牢なガイドを提供する追跡装置と組み合わせたロボットシステムを使用する。
【0003】
米国特許第6322567号明細書には、骨運動を追跡および補償するシステムが記載されている。システムは、手術ロボットアームと骨との間の空間的関係を判断すること、および骨運動検出器で骨の並進および回転運動を追跡することに基づいている。このアプローチの精度は、骨運動を補償する責任がある手術ロボットアームの絶対精度によって本質的に制限されている。加えて、システムは、手術ロボットアームの座標系と追跡部分の座標系との間の変換関係を決定する較正手順に依存する。ロボットアームの精度と較正手順の精度は、装置の全体的な性能に影響を及ぼす可能性のある無視できないエラーをシステムに導入する、この設計の2つの本質的な制限である。また、位置合わせ手順は、追跡システムを操作する人間のオペレータによって骨の一連の点を測定することにも依存する。この最後の段階は、予測できないエラーを引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、ロボットアームのエンドエフェクタに機械的トラッカーおよびツールガイドを備える、骨運動を追跡および補償する手術ロボットを提供する。トラッカーベースおよびツールガイドは、中間装置を使用せずに追跡対象の骨に対するツールガイドの正確な位置を直接判断できるように、同じ基準システムを共有し、つまり同じ平面上にある。このように、光学トラッカーおよび関連するカメラをなくすことができ、これによって手順を妨げるカメラおよびその他の装置から手術エリアを解放する。
【0006】
トラッカーは、3つの垂直軸(x、y、z)における骨の位置、および3つの垂直軸に対する配向(α、β、γ)、つまり6つのパラメータを追跡することによって、ロボットアームと骨との間の空間的関係を判断する。したがって、トラッカーは、これら6つのパラメータを追跡するために、少なくとも6つの自由度を呈する必要がある機械システムである。これは、関節セグメントと、セグメントに関連付けられたエンコーダとのアセンブリによって実現される。第1の実施形態では、トラッカーは、6つの自由度を有する4つの関節セグメントのアセンブリである。別の実施形態では、トラッカーには6つまたは7つの自由度が与えられ、自由度のうちの1つは可変長セグメントであり、他の自由度は回転自由度である。
【0007】
説明を完成させ、本発明のより良い理解を提供するために、1組の図面が提供される。前記図面は、本発明の好適な実施形態を示すが、これらは本発明の範囲を限定するものではなく、本発明がどのように実行されるかの単なる一例として解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明追跡装置を有する手術ロボットを示す図である。
【
図2】本発明によるシステムのクランプの詳細を示す図である。
【
図3a】6つの自由度を有する、本発明の可能な実施を示す図である。
【
図3b】7つの自由度を有する、本発明の可能な実施を示す図である。
【
図3c】6つの自由度を有する、本発明の可能な実施を示す図である。
【
図4】本発明の動作原理を説明するフローチャートである。
【
図5】本発明の動作原理を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1を参照すると、本発明の手術ロボットには追跡装置が設けられている。第1の実施形態では、トラッカーは、装置が関節接続されるように連結された4つの剛体またはセグメント(1a~1d)でできている。トラッカーは、座標系の3つの垂直軸における位置(x、y、z)および配向(α、β、γ)を追跡するために、少なくとも6つの自由度を呈する。各自由度は、常に高分解能エンコーダ(2)で監視されており、したがってそのベース(3)に対するトラッカーの先端の位置および配向はいつでもわかる。トラッカー(3)のベースは、ロボット手術アームのエンドエフェクタに固定されている。同じエンドエフェクタは、ツールガイド(5)も呈する。このツールガイドは、外科医が手術を行えるようにするために、計画された場所にしたがって空間内に配置される。追跡装置の先端が骨に取り付けられたときにツールガイドと骨との間の幾何学的関係を監視するために、追跡装置およびツールガイドは両方とも同じベースを共有する。ツールガイドとトラッカーベースとの間の正確な幾何学的関係は、製造プロセス中に確立され、いずれの素子も同じ剛体に属するため、システムの寿命の間に較正される必要はない。手術中、トラッカーの先端はクランプ(6)に、好ましくは機械的磁気連結機構で取り付けられ、クランプは骨に固定される。この連結機構は、トラッカーがクランプに取り付けられたときにシステムに通知する検出器を有する。連結機構が思いがけず切り離された場合、警告がトリガされ、ロボットシステムは、害が生じないことを保証するために安全モードに入る。
【0010】
トラッカーは、無視できる力を骨にかける軽量な機械装置であることに留意することが重要である。また、磁気連結機構(7)は、ロボットアームとクランプとの間に確立されたリンクがいつでも容易に解放できることを保証する。磁石の力は、2つの部品が結合すると、トラッカーの先端と骨とが剛体を形成するようになっている。これらの理由により、トラッカーのセグメントは、構造全体の重量を著しく増加させることなく硬度を提供する材料で作られる必要がある。また、トラッカーの先端の磁石によって発せ下磁界が構造の残部に伝播するのを回避するために、材料は常磁性でなければならない。この磁界がトラッカーのセグメントに沿って伝播する場合、セグメント間の相対運動が影響を受ける可能性がある。アルミニウム合金は、高い強度重量比を呈するので、このような要件を満たす。たとえば、船舶、自動車、および航空などの様々な用途で使用される、アルミニウム合金7075は、本発明で使用され得る材料の良い例である。アルミニウム合金7075は、多くの鋼に匹敵する強度を有する非常に強い材料であり、航空機の製造およびその他の航空宇宙用途で一般的に使用されている。チタンもまた、先に記載された特性を満たすので、適切な材料である。たとえば、チタン合金Ti6Al4Vは、このような用途で一般的に使用されている。各セグメント間の相対運動は、所望の固定軸の回りの回転運動を可能にするラジアル荷重方向の玉軸受または針状ころ軸受の使用によって制限される。これらの固定軸は、各関節の縦軸または横軸、もしくは両方の組み合わせであり得る。このような運動は、角度位置をデジタル信号に変換する回転エンコーダによって監視される。
【0011】
第1の実施形態では、トラッカーは、少なくとも6つの自由度を有する運動連鎖(関節セグメントのアセンブリ)である(
図1および
図3a)。好ましくは、トラッカーは、4つの関節セグメントおよび6つの回転エンコーダ(q1~q6)を有する。第1のエンコーダは、その縦軸に沿った第1のセグメントの回転を追跡する。第2のエンコーダは、第1および第2のセグメントによって形成される角度、つまり、第1および第2のセグメントを含む平面に垂直な横軸に沿った回転を、追跡する。第3のエンコーダは、第2および第3のセグメント間の横軸を追跡する。第4のエンコーダは、第3のセグメントの縦軸に沿った回転を追跡する。第5のエンコーダは、第3および第4のセグメント間の横角を追跡する。そして、第6のエンコーダは、第4のセグメントの縦軸に沿った回転を追跡する。これらの軸に沿った並進および回転は、トラッカーのベースの座標系とトラッカーの先端の座標系とを関連付ける運動方程式を決定する。
【0012】
図3bに示される代替実施形態では、トラッカーは7つの自由度を備えてもよく、たとえばそのうちの6つは角度で1つは縦方向であり、つまり可変長のセグメントである。このようなアプローチでは、回転自由度は回転エンコーダ(q1~q3およびq5~q7)で監視され、縦方向自由度はリニアエンコーダ(l4)で監視される。
図3bを参照すると、第1のエンコーダは第1および第2のセグメントによって形成された角度を追跡する。第2のエンコーダは、第2のセグメントの縦軸に沿った回転を追跡する。第3のエンコーダは、第2および第3のセグメントによって形成された角度を追跡する。第4のエンコーダは、第3のセグメントの長さの変化を監視するリニアエンコーダである。第5のエンコーダは、第3のセグメントの縦軸に沿った回転を追跡する。第6のエンコーダは、第3および第4のセグメントによって形成された角度を追跡する。そして第7のエンコーダは、第4のセグメントの縦軸に沿った回転を追跡する。
【0013】
図3cに示される代替実施形態では、トラッカーは6つの自由度を備えてもよく、たとえばそのうちの5つは角度で1つは縦方向である。このようなアプローチでは、回転自由度は回転エンコーダ(q1~q3およびq5~q6)で監視され、縦方向自由度はリニアエンコーダ(l4)で監視される。
図3cを参照すると、第1のエンコーダは、その縦軸に沿った第1のセグメントの回転を追跡する。第2のエンコーダは、第2のセグメントの縦軸に沿った回転を追跡する。第3のエンコーダは、第2および第3のセグメントによって形成された角度を追跡する。第4のエンコーダは、第3のセグメントの長さの変化を監視するリニアエンコーダである。第5のエンコーダは、第3および第4のセグメントによって形成された角度を追跡する。そして、第6のエンコーダは、第4のセグメントの縦軸に沿った回転を追跡する。
【0014】
あるいは、トラッカーは、リニアおよび回転エンコーダの異なる組み合わせで設計され得る。最小要件は、機械システムの運動が少なくとも6つの自由度で許容され、これらの運動がエンコーダで監視されることである。
【0015】
トラッカーの先端の正確な位置および配向は、エンコーダの信号がトラッカーの運動方程式と組み合わせられて、トラッカーの末端に対してトラッカーのベースを関連付ける変換を出力する、処理ユニット内で計算される。トラッカーの精度は、セグメントの長さ、エンコーダの分解能、ならびにトラッカー自体の製造および実装プロセスに依存する。10cm程度の長さの4つのセグメントと、16ビットの分解能の6つの回転エンコーダとの組み合わせで、50μm程度の全体的な理論的精度を達成することができる。
【0016】
回転エンコーダは、以下の2つの種類、すなわちアブソリュートとインクリメンタルのうちの少なくとも1つであってもよい。アブソリュートエンコーダは、角度の変化がエンコーダの分解能を越えている限り、それぞれ異なる角度に固有のデジタルコードを提供する。アブソリュートエンコーダの実際の読み取り値と測定した物理的角度との間の関係は、システムが組み立てられるときに確立される。このため、アブソリュートエンコーダで作られたトラッカーは、システムの電源がオンになり、較正位置を必要としないときに、先端の位置および配向を直接計算することができる。インクリメンタルエンコーダは、エンコーダの電源がオンになった(またはリセットされた)ときの角度位置とその現在位置との間の角度差を測定する。この種類のエンコーダの利点は、より小さなサイズでより高い精度を実現できることである。しかしながら、各エンコーダの既知の較正位置が必要とされる。本発明では、トラッカーは、既知の位置でインクリメンタルエンコーダをリセットするために、その先端がベースに固定された固有の較正位置を提供する。この較正位置は、
図6に示されている。インクリメンタルエンコーダで作られたトラッカーの通常使用は、較正位置でトラッカーをリセットすることによって開始する。インクリメンタルエンコーダは、リセットされた位置に戻るときにゼロの値を読み取る必要があるので、トラッカーが適切に動作していることを検証するために、較正位置は、通常使用中のいつでもサニティチェックとして使用されることが可能である。
【0017】
外科医はこの要素を通じて手術を行うので、ツールガイドは高い硬度を呈する必要がある。加えて、ツールガイドはロボットのエンドエフェクタに直接固定され、したがってその重量はロボットによって支持される。この事実は、トラッカーのセグメントなどのシステムの別の要素を示す計量の制約を緩和させる。その結果、ツールガイド用に選択される材料は、アルミニウム合金よりも重くて硬いステンレス鋼とすることができる。ツールガイドは、外科医が手術を行えるようにするために、計画された場所にしたがってロボットによって空間内に配置される。ツールガイドを通じて椎弓根スクリュー挿入を実行するために使用され得る手術器具の例は、Kワイヤ、突き錐またはリーマーなどの椎弓根アクセスシステム、拡張器、椎弓根プローブなどである。
【0018】
対象となる手術は、椎骨への椎弓根スクリューの挿入であるが、他の種類の手術にも及ぶことができる。スクリューの正確な位置は、患者が手術室に入る前に患者の手術前画像上で計画されてもよく、または術中三次元撮像装置、通常はコンピューター断層撮影システム(CT)が利用可能な場合には、手術中に計画されることが可能である。手術の計画は、標的椎骨内の椎弓根スクリューのサイズ、位置、および配向の画定を含む。
【0019】
手術室では、ロボット支援システムは、最初に患者の正確な位置を確立しなければならない。位置合わせと呼ばれるこのステップは、手術が計画された椎骨の手術前画像に対して実際の椎骨の位置および配向を関連付ける。位置合わせプロセスは、クランプを標的領域に固定することと、手術中画像を撮影することを含む。この時点で、骨に対するクランプの正確な位置および配向が判断される。手術前の計画が利用可能である場合、計画は骨の手術中画像に転送される。それ以外の場合には、外科医は患者の手術中画像内でスクリューの正確な位置を直接計画する。
【0020】
なお、クランプは骨に取り付けられ、したがってクランプと標的は同じ座標系を共有することに、留意されたい。トラッカーの先端がクランプに連結すると、椎骨座標系で定義された標的箇所がトラッカー座標系に転送され得る。したがって、ツールガイドと標的箇所との間の幾何学的関係を監視することが可能である。
図1を参照すると、トラッカーはロボットのエンドエフェクタに固定され、トラッカーの先端または遠位端は、やはり骨に取り付けられるクランプ(6)と連結している。この状況では、システムは、骨中の標的箇所をリアルタイムで特定および追跡することができる。したがって、ロボットは、ツールガイドを標的箇所に揃えてこの幾何学的関係を維持するように、命令され得る。骨の運動が発生した場合、トラッカーによって変位が検出され、ロボットは、ツールガイドのアライメントを維持するためにその位置を更新する。
【0021】
トラッカーの先端とクランプとの間の連結機構は、2つの部分を備える磁気運動連結システム(
図2)に基づいており、各部分は磁石を備え、磁石は互いに協力して連結器を形成するように、互いに逆極性である。連結機構のベースに対応する部分はクランプに設けられ、連結機構の頂部に対応する他方の部分は、遠位端でセグメントの最後に取り付けられた、トラッカーに設けられる。好ましくは、クランプ部分の3つのV字溝およびトラッカー部分の3つの球体は、磁石との機械的連結を提供する。この連結は、2つの剛体の間に正確で再現性のあるインターフェースを作成する。このシステムは、クランプとトラッカーの先端との間の相対運動の6つの自由度(位置のために3つの自由度および回転のために残りの3つの自由度)を連結機構が制限することを保証するために、6つの接点(球体1つあたり2つの接点)を提供する。各部分の中心の磁石は、クランプとトラッカーの先端との間のいかなる相対運動も回避するために必要とされる強度を提供する。磁石が及ぼす力は、ロボットが動いている間にクランプとトラッカーとの間の接続を保証するようになっている。しかしながら、この力は、いつでも容易にシステムを取り外せるようにするために、人間のオペレータによって接続が解放され得るようになっている。最も安定した運動連結は、3つのV字溝が120°の角度を形成するときに得られる。しかしながら、本発明では、3つのV字溝は、連結機構が固有の位置でのみ嵌合できるような3つの角度を形成することが好ましい。たとえば、110°、110°、および140°の角度は、連結機構が固有の位置に嵌合することを保証する。この目的のために、角度のうちの少なくとも1つは、残りの2つとは異なる必要がある。
【0022】
追跡装置がクランプに連結されると、ロボットは様々なモードで動作することができる。これは計画された位置に行くように命令されることが可能であり、計画された位置はクランプ追跡の座標系で表される。この動作は、
図4のフローチャートに示されている。骨が動いていない静止状態では、ツールガイドが所望の位置に到達するとロボットは停止する。別のモードでは、ツールガイドは標的箇所に容易に揃えられ、ロボットは、骨運動を補償することによってこのアライメントを維持するために、その位置を更新する。この第2の機能モードは、
図5のフローチャートに示されている。なお、このモードでは、ツールガイドおよび標的箇所のアライメントを維持するためにその位置を常に更新しているので、ロボットは決して停止しないことに留意されたい。
【0023】
クランプおよびトラッカーは、トラッカーがクランプに取り付けられたときにシステムに通知する検出機構を呈することができる。この検出機構は、いつ接続が確立されたかを特定することが可能な処理ユニットに接続された電気回路である。連結機構のベース部分には受動電気回路が設けられ、頂部はベース部分を処理ユニットに接続する。処理ユニットは小さな電圧を印加するので、接続が確立すると、電気回路は閉じられて電流が検出される。この目的のため、運動連結機構の球体は、導電性材料で作られており、処理ユニットに電気的に接続されている。V字溝は、頂部とベース部分との間に電気的接続を確立するために、球体が接触する導電部を呈する。
【0024】
本明細書で使用される際に、用語「備える(comprises)」およびその派生語(「comprising」など)は排他的な意味で理解されるべきではなく、つまりこれらの用語は、説明および定義されたものがさらなる要素、ステップなどを含み得る可能性を除外するように解釈されるべきではない。
【0025】
一方、本発明は、本明細書に記載される特定の(1つまたは複数の)実施形態には明らかに限定されず、請求項で定義されるような本発明の一般的な範囲に含まれると(たとえば、材料、寸法、構成要素、構成などの選択に関して)当業者によって見なされ得るあらゆる変形例も包含する。