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特開2022-62112循環セルフリーDNAから血液を浄化するための方法およびデバイス
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  • 特開-循環セルフリーDNAから血液を浄化するための方法およびデバイス 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062112
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】循環セルフリーDNAから血液を浄化するための方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20220412BHJP
【FI】
A61M1/36 165
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022009926
(22)【出願日】2022-01-26
(62)【分割の表示】P 2020537046の分割
【原出願日】2018-09-17
(31)【優先権主張番号】62/559,822
(32)【優先日】2017-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520093207
【氏名又は名称】サンテルシュ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
(72)【発明者】
【氏名】キリル スルコフ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】高レベルの循環血中cfDNAに関連する疾患を治療する新しい体外法、およびそのような方法を実現するための新しいより効果的なデバイスを提供する。
【解決手段】本発明は、循環cfDNAの悪影響を制限し、様々な病気を治療するために、ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNAおよび非結合cfDNA(二本鎖DNA(dsDNA)、一本鎖DNA(ssDNA)およびオリゴヌクレオチドを含む)を含む患者の血液中の実質的にすべてのタイプのセルフリーDNA(cfDNA)を除去するためのアフェレシスデバイスおよびその使用を提供する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のアフィニティーマトリックスを含むアフェレシスを実行するように構成されたデバイスであって、前記1つまたは複数のアフィニティーマトリックスは、対象の体液から、ヌクレオソーム結合セルフリーDNA(cfDNA)、エキソソーム結合cfDNA、および非結合cfDNAを捕捉することができ、前記1つまたは複数のアフィニティーマトリックスのうちの少なくとも1つは2つの異なるDNA結合ポリマーを含む、デバイス。
【請求項2】
前記体液が血液または血漿である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記非結合cfDNAが、dsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
2つ以上のアフィニティーマトリックスを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
(i)第1の1つまたは複数のアフィニティーマトリックスが、ヌクレオソーム結合セルフリーDNA(cfDNA)および/またはエキソソーム結合cfDNAを捕捉することができ、かつ(ii)第2の1つまたは複数のアフィニティーマトリックスが非結合cfDNAを捕捉することができ、前記第1および第2のアフィニティーマトリックスがデバイス内に任意の順序で配置されている、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記ポリマーが、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、ポリ-L-リジン、ポリビニルピロリドン(PVPP)、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、および多糖の任意の組み合わせから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
循環cfDNAのレベルを低下させることによる体液の体外処置のためのシステムであって、請求項1~6のいずれか一項に記載のデバイスを含む体外回路を含む、システム。
【請求項8】
前記体液が血液である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
対象の血液中のセルフリーDNA(cfDNA)のレベルを低下させる方法で使用するためのものであり、前記方法が、
(a)対象から血液または血漿を前記デバイスに迂回させてcfDNAのレベルが低下した血液または血漿を生成することを含むアフェレシス処置を実行すること;および
(b)cfDNAのレベルが低下した血液または血漿を対象に戻すこと;
を含み、前記アフェレシス処置により、対象の血液中のヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNA、および非結合cfDNAのレベルが低下する、請求項1~6のいずれか一項に記載のデバイス、あるいは請求項7または8に記載のシステム。
【請求項10】
必要とする対象において疾患を治療する方法で使用するためのものであり、前記治療方法が、
(a)対象から血液または血漿を前記デバイスに迂回させてcfDNAのレベルが低下した血液または血漿を生成することを含むアフェレシス処置を実行すること;および
(b)cfDNAのレベルが低下した血液または血漿を対象に戻すこと;
を含み、前記アフェレシス処置により、対象の血液中のヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNA、および非結合cfDNAのレベルが低下する、請求項1~6のいずれか一項に記載のデバイス、あるいは請求項7または8に記載のシステム。
【請求項11】
前記対象が、血液中のcfDNAレベルの上昇を特徴とする疾患を有する、請求項9または10に記載のデバイスまたはシステム。
【請求項12】
前記疾患が、神経変性疾患、がん、化学療法関連毒性、放射線誘発毒性、臓器不全、臓器損傷、臓器梗塞、虚血、急性血管イベント、脳卒中、移植片対宿主病(GVHD)、移植片拒絶、敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、多臓器不全症候群(MODS)、外傷、老化、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患、子癇、不妊症、妊娠関連合併症、凝固障害、および感染症からなる群より選択される、請求項11に記載のデバイスまたはシステム。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる2017年9月18日出願の米国仮特許出願第62/559,822号に基づく優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、循環cfDNAの悪影響を制限し、様々な病気を治療するために、ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNAおよび非結合cfDNA(二本鎖DNA(dsDNA)、一本鎖DNA(ssDNA)およびオリゴヌクレオチドを含む)を含む患者の血液中の実質的にすべてのタイプのセルフリーDNA(cfDNA)を除去するためのアフェレシスデバイスおよびその使用を提供する。
【背景技術】
【0003】
セルフリー(または無細胞)DNA(cfDNA)とも呼ばれる循環細胞外DNA(eDNA)は、健康な個体の血液中に少量存在する。
【0004】
循環cfDNAのレベルの上昇は、がん、転移がん、急性臓器不全、臓器梗塞(心筋梗塞および虚血性脳卒中を含む)、出血性脳卒中、自己免疫障害、移植片対宿主病(GVHD)、移植片拒絶、敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、多臓器不全症候群(または多臓器機能障害症候群)(MODS)、移植片対宿主病(GVHD)、外傷、高齢者の炎症性状態(proinflammatory status)、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、神経変性疾患、自己免疫疾患、子癇、不妊症、凝固障害、妊娠関連合併症および感染症を含むがこれらに限定されない多くの疾患および病的状態のマーカーとして現在広く受け入れられている。循環セルフリーDNAの様々なサブタイプは、特定の疾患および病的状態の進行に重要な役割を果たす可能性がある。
【0005】
不妊症(特許文献1);心血管障害(特許文献2);がん;敗血症、移植片対宿主病(GBHD);臓器不全;糖尿病;アテローム性動脈硬化症;遅延型過敏症反応(特許文献3~7)の治療のために、循環cfDNAを特異的に加水分解するデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)酵素の全身投与を使用することが提案された。
【0006】
しかしながら、初期の動物モデルとは異なり、実際の臨床設定でのデータは、デオキシリボヌクレアーゼ(DNase)酵素の全身投与による循環cfDNAの量を低減する効果が限定的であることを示す。
【0007】
Hazout,A(PCT/IB2013/056321)は、高レベルの循環cfDNA(>80ng/μL)を有する10人の女性を、筋肉内経路で0.1mg/kgのDNase Iで1日2回、7日間毎日治療して、循環cfDNAのレベルの平均26%の低下しか見られなかったことを記載している。彼らの結果は、血漿中40~100ng/mLの触媒的に有効なデオキシリボヌクレアーゼ濃度の達成にもかかわらず、19日間にわたる1回の静脈内注射と10回の皮下注射の合計として25μg/kg用量のヒト組換えデオキシリボヌクレアーゼを受けたループス腎炎患者において、αdsDNAの循環レベルの低下を実証できなかったDavisらの報告(非特許文献1)と一致した。
【0008】
最も豊富なタイプの循環cfDNAは、ヌクレオソーム結合DNAに代表される。ヌクレオソームは核クロマチンのサブユニットであり、2分子ずつのコアヒストンの八量体により形成された中心コアタンパク質と約147塩基対の二本鎖DNAとから構成されている(非特許文献2)。ヌクレオソーム結合cfDNAは、モノヌクレオソームとして、またはオリゴヌクレオソームなどの高次構造として、あるいは50~100x10塩基対以上のDNAを含むクロマチンのフラグメントとしても血液中を循環する。この特定のタイプの循環cfDNAは、壊死またはアポトーシスを起こしている細胞に由来する。cfDNAを循環させる別の供給源は好中球のネトーシス(NETosis)である。好中球細胞外トラップ(NETs)は、活性化好中球から放出された脱凝縮DNAの細胞外ストランドであり、10~30nmの3D網状構造に編成された15x10塩基対以上のDNA長を有している。NETosis起源のcfDNAは、粒子フリーまたは粒子結合のいずれかであり得る。NETsはまた、好中球内部空間に由来する高細胞毒性の酵素および細胞毒性タンパク質を含む(非特許文献3)。最近、好中球だけでなくマクロファージもNET様構造を生成する可能性があることが示された(非特許文献4)。
【0009】
循環粒子結合cfDNAのもう1つの重要なタイプは、エキソソーム結合DNAである。エキソソームは、エキソソームの内部または外部空間に、2.5~10x10塩基対の一本鎖DNA(ssDNA)、ミトコンドリアDNA(mtDNA)および二本鎖(dsDNA)を含み得るほとんどの細胞タイプによって分泌されるエキソサイトーシス起源の小さな膜小胞(30~100nm)である(非特許文献5)。
【0010】
粒子を含まない循環cfDNAのかなりの部分は、がん細胞、活性化免疫細胞、およびその他の特定の細胞タイプによって分泌される線状および環状のdsDNAおよびssDNAに代表される。このタイプのcfDNAは、通常250~1000塩基対以上の長さであり、独特なゲノム配列を豊富に含み得る(非特許文献6)。粒子を含まない循環cfDNAのもう1つの重要な成分は、様々な長さのミトコンドリアDNA(mtDNA)である。
【0011】
別の最近発見された粒子フリー循環cfDNAの別のタイプは、サブヌクレオソーム長(すなわち、通常~147塩基対未満)の超短鎖二本鎖DNA(dsDNA)オリゴヌクレオチドおよび一本鎖DNA(ssDNA)オリゴヌクレオチドに代表される。この特定のcfDNAは、ミトコンドリアDNA(mtDNA)、微生物起源のDNA、および突然変異ヒトゲノム配列を豊富に含むことが示された(非特許文献7)。重要なことに、このタイプの循環cfDNAは、患者の血液中のDNase I酵素による粒子結合DNAの分解後に現れるものと類似した低分子量DNAフラグメントも含む。
【0012】
体外除去技術を使用して、患者血液から循環cfDNAプールの特定成分を取り除いて浄化するいくつかの試みが行われている。例えば、特許文献8および9、ならびに非特許文献8を参照のこと。
【0013】
高循環レベルの血中cfDNAに関連する疾患を治療する新しい体外法、およびそのような方法を実現するための新しいより効果的なデバイスが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第8,916,151号明細書
【特許文献2】米国特許第9,642,822号明細書
【特許文献3】米国特許第9,248,166号明細書
【特許文献4】米国特許第8,535,663号明細書
【特許文献5】米国特許第7,612,032号明細書
【特許文献6】米国特許第8,388,951号明細書
【特許文献7】米国特許第8,431,123号明細書
【特許文献8】米国特許第9,364,601号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2007/0092509号明細書
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Davis J.C. et al., Recombinant human Dnase I (rhDNase) in patients with lupus nephritis Lupus (1999) Vol 8 (1), pp. 68-76
【非特許文献2】Oudet P, Gross-Bellard M, Chambon P. Electron microscopic and biochemical evidence that chromatin structure is a repeating unit. Cell. 1975; 4:281-300
【非特許文献3】Soerensen, O.E. and Borregaard, N., Neutrophil extracellular traps - the dark side of neutrophils. J. Clin. Invest. 2016 May 2; 126(5): 1612-20.
【非特許文献4】Nat Med., 2018, 24(2):232-238
【非特許文献5】Thakur, B.K. et al., Double-stranded DNA in exosomes: a novel biomarker in cancer detection, Cell Research (2014) 24:766-769
【非特許文献6】Kumar, P. et al., Normal and cancerous tissues release extrachromosomal circular DNA (eccDNA) into the circulation, Mol. Cancer. Res., June 20, 2017 DOI: 10.1158/1541-7786.MCR-17-0095
【非特許文献7】Burnham P., Single-stranded DNA library preparation uncovers the origin and diversity of ultrashort cell-free DNA in plasma, Scientific Reports 6, Article number: 27859 (2016), doi:10.1038/srep27859
【非特許文献8】Kusaoi et al., Ther. Apher. Dial, 2016, 20:348-353
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記の背景技術の欄に明記するように、高レベルの循環血中cfDNAに関連する疾患を治療する新しい体外法、およびそのような方法を実現するための新しいより効果的なデバイスが必要とされている。本発明は、アフェレシスデバイスおよび関連するプロセスを提供することにより、このニーズおよび他のニーズに対処する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
一態様では、本発明は、1つまたは複数のアフィニティーマトリックスを含むアフェレシスを実行するように構成されたデバイスを提供し、前記1つまたは複数のアフィニティーマトリックスは、対象の血液または血漿からヌクレオソーム結合セルフリーDNA(cfDNA)、エキソソーム結合cfDNA、および非結合cfDNAを捕捉することができる。
【0018】
一部の実施形態では、非結合cfDNAは、dsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む。
【0019】
一部の実施形態では、本発明のデバイスは、2つ以上のアフィニティーマトリックスを含む。一部の実施形態では、(i)第1の1つまたは複数のアフィニティーマトリックスは、ヌクレオソーム結合セルフリーDNA(cfDNA)および/またはエキソソーム結合cfDNAを捕捉でき、(ii)第2の1つまたは複数のアフィニティーマトリックスは非結合cfDNAを捕捉でき、第1および第2のアフィニティーマトリックスは、任意の順序でデバイス内に配置される。一部の実施形態では、(i)第1の1つまたは複数のアフィニティーマトリックスには、DNA結合タンパク質(例えば、ヒストン[例えば、H1ヒストン])、抗ヒストン抗体(例えば、抗ヒストンH2A抗体)、抗ヌクレオソーム抗体(例えば、AN-1、AN-44)、DNAインターカレート剤(例えば、ヘキスト(Hoechst)色素[例えば、Hoechst 33342など])、DNA結合ポリマー(例えば、カチオン性/塩基性ポリマー[例えば、ポリエチレンイミン、ポリ-L-リジン、ポリ-L-アルギニン、臭化ヘキサジメトリン、アミノ末端(-NH)ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、ポリプロピレンイミン(PPI)デンドリマー]、非イオン性/中性ポリマー[例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)、ポリ(4-ビニルピリジン-N-オキシド)]、アニオン性/酸性ポリマー;線状ポリマー[例えば、ポリエチレンイミン、ポリ-L-リジン、ポリ-L-アルギニン]、分岐ポリマー[例えば、ハイパーブランチ(hyper-branched)ポリ-L-リジン、ハイパーブランチポリエチレンイミン]、デンドリマーポリマー[例えば、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、ポリプロピレンイミン(PPI)デンドリマー])、抗DNA抗体(例えば、マウスモノクローナルIgM抗-ds+ssDNA抗体([49/4A1]、ab35576、Abeam)、レクチン(例えば、スノードロップレクチン(Galanthus nivalis Lectin)(GNA)、ラッパズイセンレクチン(Narcissus Pseudonarcissus Lectin)(NPA)、コンカナバリンA(Conconavalin A)、フィトヘマグルチニン(phytohemagluttanin)、またはシアノビリン(cyanovirin))、およびそれらの任意の組合せが含まれ、(ii)第2の1つまたは複数のアフィニティーマトリックスには、DNA結合タンパク質(例えば、ヒストン[例えば、H1ヒストン])、DNAインターカレート剤(例えば、ヘキスト(Hoechst)色素[例えば、Hoechst 33342など])、DNA結合ポリマー(例えば、カチオン性/塩基性ポリマー[例えば、ポリエチレンイミン、ポリ-L-リジン、ポリ-L-アルギニン、臭化ヘキサジメトリン、ポリアミドアミン(PAMAM)アミノ終端(-NH)デンドリマー、ポリプロピレンイミン(PPI)デンドリマー]、非イオン性/中性ポリマー[例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)、ポリ(4-ビニルピリジン-N-オキシド)]、アニオン性/酸性ポリマー;線状ポリマー[例えば、ポリエチレンイミン、ポリ-L-リジン、ポリ-L-アルギニン]、分岐ポリマー[例えば、ハイパーブランチポリ-L-リジン、ハイパーブランチポリエチレンイミン]、デンドリマーポリマー[例えば、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、ポリプロピレンイミン(PPI)デンドリマー])、抗DNA抗体(例えば、マウスモノクローナルIgM抗ds+ssDNA抗体([49/4A1]、ab35576、Abeam)、およびそれらの任意の組合せが含まれる。一部の実施形態では、前記2つ以上のアフィニティーマトリックスが、2つ以上のアフィニティーカラムとして連続的に配置される。一部の実施形態では、配列中の最初のアフィニティーマトリックスは、DNA結合ポリマー(例えば、アミノ末端(-NH)ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、ポリプロピレンイミン(PPI)デンドリマー、ハイパーブランチポリ-L-リジン、またはハイパーブランチポリエチレンイミン)、あるいはDNAインターカレート剤(例えば、Hoechst 33342)を含む。ある実施形態では、アフィニティーマトリックスはポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーではない。
【0020】
有用なカラムの組合せ(任意の順序で配置される)の非限定的な例は次のとおりである:
(a)(i)DNAインターカレート剤Hoechst 33342アフィニティーカラム、および(ii)抗DNA抗体アフィニティーカラム;または
(b)(i)抗ヌクレオソーム抗体アフィニティーマトリックス(ANAM)カラム、および(ii)抗DNA抗体アフィニティーカラム;または
(c)(i)抗ヌクレオソーム抗体アフィニティーマトリックス(ANAM)カラム、および(ii)ポリアミドアミンデンドリマーアフィニティーマトリックス(PDAM)カラム;または
(d)(i)抗ヌクレオソーム抗体アフィニティーマトリックス(ANAM)カラム、および(ii)ハイパーブランチポリ-L-リジンアフィニティーマトリックス(PLLAM)カラム;または
(e)(i)抗ヒストンH2A抗体アフィニティーカラム、(ii)レクチンアフィニティーカラム、および(iii)ヒストンH1アフィニティーカラム、またはポリアミドアミンデンドリマーアフィニティーマトリックス(PDAM)カラム、またはハイパーブランチポリ-L-リジンアフィニティーマトリックス(PLLAM)カラム、またはDNAインターカレート剤Hoechst 33342アフィニティーカラム。
【0021】
一部の実施形態では、本発明のデバイスは単一のアフィニティーマトリックスを含む。単一のアフィニティーマトリックスとして使用できる有用なマトリックスの非限定的な例には、ヒストン(例えば、ヒストンH1.3などのヒストンH1)を含むアフィニティーマトリックス、DNA結合ポリマー(例えば、アミノ末端(-NH)ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーまたはハイパーブランチポリ-L-リジンなどのカチオン性ポリマー)を含むアフィニティーマトリックス、DNAインターカレート剤(例えば、Hoechst 33342)を含むアフィニティーマトリックス、抗DNA抗体(例えば、マウスモノクローナルIgM抗-ds+ssDNA抗体([49/4A1]、ab35576、Abeam))を含むアフィニティーマトリックスが含まれる。ある実施形態では、アフィニティーマトリックスはポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーではない。
【0022】
一部の実施形態では、本発明のデバイスは、単回のアフェレシス処置(apheresis procedure)あたり少なくとも30mgのcfDNAを捕捉する。
【0023】
一部の実施形態では、本発明のデバイスは、単回のアフェレシス処置あたりcfDNAの血中レベルを少なくとも25%低下させる。一部の実施形態では、本発明のデバイスは、単回のアフェレシス処置あたりcfDNAの血中レベルを少なくとも50%低下させる。一部の実施形態では、本発明のデバイスは、単回のアフェレシス処置あたりcfDNAの血中レベルを少なくとも75%低下させる。
【0024】
別の態様では、本発明は、対象の血液中のセルフリーDNA(cfDNA)のレベルを低下させる方法を提供し、この方法は、(a)対象から血液または血漿を本発明のアフェレシスデバイスに迂回させてcfDNAのレベルが低下した血液または血漿を生成することを含むアフェレシス処置を実行すること;および(b)cfDNAのレベルが低下した血液または血漿を対象に戻すこと;を含み、アフェレシス処置により、対象の血液中のヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNA、および非結合cfDNAのレベルが低下する。一部の実施形態では、対象は、血液中のcfDNAレベルの上昇を特徴とする疾患を有する。一部の実施形態では、対象は、神経変性疾患、がん、化学療法関連毒性、放射線誘発毒性(例えば、急性放射線症候群)、臓器不全、臓器損傷、臓器梗塞、虚血、急性血管イベント、脳卒中、移植片対宿主病(GVHD)、移植片拒絶、敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、多臓器不全症候群(MODS)、外傷、老化、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患、子癇、不妊症、妊娠関連合併症、凝固障害、および感染症からなる群より選択される疾患を有する。
【0025】
さらなる態様において、本発明は、それを必要とする対象において疾患を治療する方法を提供し、この方法は、(a)対象から血液または血漿を本発明のアフェレシスデバイスに迂回させてcfDNAのレベルが低下した血液または血漿を生成することを含むアフェレシス処置を実行すること;および(b)cfDNAのレベルが低下した血液または血漿を対象に戻すことを含み、アフェレシス処置により、対象の血液中のヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNA、および非結合cfDNAのレベルが低下する。一部の実施形態では、対象は、血液中のcfDNAレベルの上昇を特徴とする疾患を有する。本発明の方法により治療可能な疾患の非限定的な例には、例えば、神経変性疾患、がん、化学療法関連毒性、放射線誘発毒性(例えば、急性放射線症候群)、臓器不全、臓器損傷、臓器梗塞、虚血、急性血管イベント、脳卒中、移植片対宿主病(GVHD)、移植片拒絶、敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、多臓器不全症候群(MODS)、外傷、老化、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患、子癇、不妊症、妊娠関連合併症、凝固障害、および感染症が含まれる。
【0026】
本発明の上記方法のいずれかの一部の実施形態において、その方法は、対象の血液中のcfDNAのレベルを監視することをさらに含む。
【0027】
本発明の上記方法のいずれかの一部の実施形態において、その方法は、cfDNAのレベルが少なくとも25%低下するまでアフェレシス処置を継続または繰り返すことを含む。本発明の上記方法のいずれかの一部の実施形態において、その方法は、cfDNAのレベルが少なくとも50%低下するまでアフェレシス処置を継続または繰り返すことを含む。本発明の上記方法のいずれかの一部の実施形態において、その方法は、cfDNAのレベルが少なくとも75%低下するまでアフェレシス処置を継続または繰り返すことを含む。
【0028】
本発明の上記方法のいずれかの一部の実施形態において、その方法は、少なくとも30mgのcfDNAが対象の血液から除去されるまでアフェレシス処置を継続または繰り返すことを含む。
【0029】
本発明の上記方法のいずれかの一部の実施形態において、アフェレシス処置は2回以上繰り返される。
【0030】
本発明の上記方法のいずれかの一部の実施形態において、アフェレシス処置のための血液は門脈から供給される。
【0031】
本発明の上記方法のいずれかの一部の実施形態において、非結合cfDNAは、dsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む。
【0032】
本発明の上記方法のいずれかの一部の実施形態において、対象はヒトである。
【0033】
本発明のこれらおよび他の態様は、以下の説明、特許請求の範囲および図面において当業者に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】転移がん患者の血漿からの循環cfDNAの電気泳動プロファイルを示す。
図2A】実施例3に従ってDNAで処置したマウスから切除した腫瘍を示し、抗ヒストン抗体を含むアフィニティーマトリックス、およびガランサス・ニバリス(Galanthus nivalis)(スノードロップ)のレクチンを含むアフィニティーマトリックスで血液を浄化した。図2Aは、対照群のマウスから切除した腫瘍を示す。
図2B】実施例3に従ってDNAで処置したマウスから切除した腫瘍を示し、抗ヒストン抗体を含むアフィニティーマトリックス、およびガランサス・ニバリス(Galanthus nivalis)(スノードロップ)のレクチンを含むアフィニティーマトリックスで血液を浄化した。図2Bは、ヌクレオソームおよびエキソソーム結合循環cfDNAを除去されたNSCLC T3N2M+患者のDNAで処置したマウスから切除した腫瘍を示す。
図3】転移がん患者および脳卒中患者の血漿からの循環cfDNAの電気泳動プロファイルを示す。
図4】全身性炎症反応症候群(SIRS)および多臓器不全症候群(MODS)の患者の血漿からの循環cfDNAの電気泳動プロファイルを示す。
図5】細胞培養実験で使用された循環cfDNAの電気泳動プロファイルを示す。
図6】循環cfDNAの電気泳動プロファイル、DNase Iのウェスタンブロット、DNase I活性および循環cfDNAの定量を示す。
図7】敗血症患者の血漿からの循環cfDNAの電気泳動プロファイルを示す。
図8】体積吸着試験(volume adsorption test)の前後のcfDNA富化モデル血漿の1%アガロースゲル電気泳動の結果を示す。レーン1は、インキュベーション前のcfDNA富化モデル血漿である;レーン2は、エタノールアミンSepharose FF対照とのインキュベーション後のcfDNA富化モデル血漿である;レーン3は、PDAMとのインキュベーション後のcfDNA富化モデル血漿である;レーン4は、PLLAMとのインキュベーション後のcfDNA富化モデル血漿である;レーン5は、H1.3アフィニティーマトリックスとのインキュベーション後のcfDNA富化モデル血漿である。
図9】体積吸着試験の前後の歯原性敗血症と診断された患者の血漿の1%アガロースゲル電気泳動の結果を示す。レーン1は、エタノールアミンSepharose FF対照とのインキュベーション後の歯原性関連敗血症患者の血漿である;レーン2は蒸留水ブランクラインである;レーン3は、H1.3アフィニティーマトリックスとのインキュベーション後の歯原性敗血症患者の血漿である;レーン4は蒸留水ブランクラインである;レーン5は、PDAMとのインキュベーション後の歯原性関連敗血症患者の血漿である;レーン6は、PLLAMとのインキュベーション後の歯原性関連敗血症患者の血漿である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
定義
別途定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0036】
単数形「a」、「an」、および「the」には、文脈上特に明記されていない限り、複数形が含まれる。したがって、例えば、「方法」への言及には、1つまたは複数の本明細書に記載のおよび/または本開示を読むと当業者に明らかになるタイプの方法、および/またはステップが含まれる。
【0037】
「約」または「およそ」という用語には、ある値の統計的に意味のある範囲内にあることが含まれる。そのような範囲は、所与の値または範囲の1桁以内、好ましくは50%以内、より好ましくは20%以内、さらにより好ましくは10%以内、さらにより好ましくは5%以内であってよい。「約」または「およそ」という用語に含まれる許容可能な変動は、検討中の特定のシステムに依存し、当業者はそれを容易に理解することができる。
【0038】
本明細書で使用される「デバイス」という用語は、例えば、限定はされないが、任意の中空器具(hollow-ware)、カラム、カラムマトリックス、フィルター、膜、半透性材料、ビーズ(例えば、マイクロビーズもしくはナノビーズ)、またはチューブなどの、液体溶液の浄化を可能にする当技術分野で公知の任意のアセンブリを指す。用語「カラム」および「カートリッジ」は、本明細書では、アフェレシスデバイスの文脈で交換可能に使用される。
【0039】
本明細書で使用される「アフィニティーマトリックス」という用語は、(i)リガンド(例えば、cfDNA結合分子)が固定される固体支持体、または(ii)リガンド自体によって形成される固体支持体(例えば、水-不溶性DNA結合ポリマー)を指す。
【0040】
「DNA結合タンパク質」という用語は、一本鎖DNA(ssDNA)または二本鎖DNA(dsDNA)に結合するタンパク質を指す。DNA結合タンパク質は、配列特異的な様式で(例えば、転写因子およびヌクレアーゼ)または配列非特異的に(例えば、ポリメラーゼおよびヒストン)、DNAに結合できる。リンカーヒストンH1ファミリーのメンバーは、クロマチンの主要な構成要素であり、DNAの入口および出口部位周辺のヌクレオソームコア粒子に結合する。
【0041】
本明細書で使用する用語「循環DNA」、「セルフリーDNA(cfDNA)」、「循環セルフリーDNA(cfDNA)」、「細胞外DNA(eDNA)」、および「循環細胞外DNA(eDNA)」は、造血起源および非造血起源の循環細胞の外部にある、血液中または血漿中に存在するDNAを指すために交換可能に使用される。
【0042】
ヌクレオソーム結合cfDNAは、ヌクレオソームに結合しているDNAである。ヌクレオソームは核クロマチンのサブユニットである。ヌクレオソーム結合cfDNAは、モノヌクレオソーム、またはオリゴヌクレオソームなどの高次構造、または50~100x10塩基対以上のDNAを含むクロマチンのフラグメントとして、血液中を循環し得る。循環ヌクレオソーム結合cfDNAは、壊死またはアポトーシスを起こしている細胞および好中球NETosisに由来し得る。
【0043】
エキソソーム結合cfDNAは、エキソソームに結合するまたはエキソソーム中に存在するcfDNAである。エキソソームは、エキソソームの内部または外部空間に一本鎖DNA(ssDNA)、ミトコンドリアDNA(mtDNA)および二本鎖DNA(dsDNA)を含み得るほとんどの細胞タイプによって分泌されるエキソサイトーシス起源の小さな膜小胞(約30~100nm)である。
【0044】
「非結合cfDNA」または「粒子を含まないcfDNA」または「粒子フリーcfDNA」という用語は、エキソソームにもヌクレオソームにも結合せず、サブヌクレオソームサイズの超短DNA分子(通常147塩基対未満)を含む、二本鎖DNA(dsDNA)、一本鎖DNA(ssDNA)、線状または環状のもの、およびオリゴヌクレオチドを包含するcfDNAを指す。
【0045】
本明細書で使用する「対象」および「患者」という用語は互換的に使用され、ヒトなどの哺乳動物、獣医動物(例えば、猫、犬、牛、馬、羊、豚など)および実験動物モデルを含む、動物を指す。ある実施形態では、対象は、大人および子供集団における両方の性別を含む、ヒト患者を指す。
【0046】
本明細書において列挙される疾患状態のいずれかに関する限り、本発明の文脈において、用語「治療する(treat)」、「治療(treatment)」などは、そのような状態に関連する少なくとも1つの症状を軽減または緩和する、またはそのような状態の進行を遅らせるもしくは止めることを意味する。本発明の意味の範囲内で、「治療する」という用語は、発病(すなわち、疾患の臨床症状発現前の期間)を阻止し、遅らせ、および/または疾患を発症または悪化させるリスクを減らすことも意味する。状況、障害または状態に関して「治療する」、「治療」などの用語には、(1)その状況、障害または状態を煩っているまたはその素因を有している可能性があるが、その状況、障害または状態の臨床的または無症候性症状をまだ経験または表示していない対象において、その状況、障害または状態の少なくとも1つの臨床症状または無症候性症状の出現を予防または遅延させる;または(2)その状況、障害または状態を阻害する、すなわち、疾患またはその再発(維持治療の場合)あるいはそれらの少なくとも1つの臨床症状または無症候性症状を停止、軽減または遅延させる;または(3)疾患を軽減する、すなわち、状況、障害または状態あるいはそれらの臨床症状または無症候症状の少なくとも1つの退縮を引き起こすことが含まれる。
【0047】
本発明の実施は、特に明記しない限り、当業技術の範囲内である統計解析、分子生物学(組換え技術を含む)、微生物学、細胞生物学、コンジュゲーション化学および生化学の従来技術を使用する。そのようなツールおよび技術は、例えば、Sambrook et al. (2001) Molecular Cloning: A Laboratory Manual. 3rd ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press: Cold Spring Harbor, New York; Ausubel et al. eds. (2005) Current Protocols in Molecular Biology. John Wiley and Sons, Inc.: Hoboken, NJ; Bonifacino et al. eds. (2005) Current Protocols in Cell Biology. John Wiley and Sons, Inc.: Hoboken, NJ; Coligan et al. eds. (2005) Current Protocols in Immunology, John Wiley and Sons, Inc.: Hoboken, NJ; Coico et al. eds. (2005) Current Protocols in Microbiology, John Wiley and Sons, Inc.: Hoboken, NJ; Coligan et al. eds. (2005) Current Protocols in Protein Science, John Wiley and Sons, Inc. : Hoboken, NJ; and Enna et al. eds. (2005) Current Protocols in Pharmacology, John Wiley and Sons, Inc.: Hoboken, NJ. Hermanson (2013) Bioconjugate Techniques, 3rd ed., Academic Press; Niemeyer (2004) Bioconjugation Protocols: Strategies and Methods, Springer Science & Business Media and Hermanson et al. (1992) Immobilized Affinity Ligand Techniques, Academic Pressに詳細に記載されている。追加技術は、例えば、米国特許第7,912,698号、ならびに米国特許出願公開第2011/0202322号および同第2011/0307437号に説明されている。
【0048】
本発明のデバイスおよび方法
背景技術の欄に記載されているように、当技術分野において、血液中の実質的にすべてのタイプの循環cfDNAのレベルを低下させるための新しい方法およびデバイスを開発することに対する大きなニーズがある。本開示は、アフェレシスデバイスが、ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNAおよび非結合cfDNA(dsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む)を含む実質的にすべてのタイプのcfDNAのレベルを低下させるアフェレシスデバイスおよび方法を提供することにより、このニーズおよび他のニーズに対処する。
【0049】
体外除去技術の使用は、循環からcfDNAを取り除き、それに相応して循環cfDNAのレベルおよび悪影響を低下させるための、効果的な解決法を提供することができる。治療的アフェレシスは、患者から血液成分を除去する体外治療である;それは、血液中の病原性物質または成分が疾患の発症を引き起こしている状態の治療に使用される:例えば、Ward M.D., Conventional Apheresis Therapies: A Review Journal of Clinical Apheresis 26:230-238 (2011)を参照のこと。
【0050】
驚くべきことに、本明細書で実証されるように、実質的にすべてのタイプの循環cfDNAの体外除去は、血液中のcfDNAの循環レベルの上昇を特徴とする疾患の治療にプラスの影響を与える。
【0051】
本開示は、対象の血液から、ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNAおよび非結合cfDNA(dsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む)を含む実質的にすべてのタイプのcfDNAを除去して循環cfDNAの悪影響を減らすことにより、cfDNAの循環レベルの上昇を特徴とする疾患を治療する方法を提供する。
【0052】
理論に拘束されることを望まないが、循環cfDNAのレベルが上昇する特定の疾患では、異なるタイプの循環cfDNAが、それぞれが疾患の進行および患者の死亡につながる異なる分子経路をトリガーすることにより共同して作用し得る;異なるタイプの循環cfDNAが一緒に作用すると、相乗的な毒性を生じる可能性があり、すなわち、2つ以上のタイプの循環cfDNAの毒性(負の)効果は、別個に引き出される各タイプのcfDNAの効果の合計よりも大きい。
【0053】
本発明者らは、循環cfDNAのレベルが上昇した患者の血液からの、ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNAおよび非結合cfDNA(二本鎖DNA[dsDNA]、一本鎖DNA[ssDNA]およびオリゴヌクレオチドを含む)を含む実質的にすべてのタイプのcfDNAの除去が、それら循環cfDNAによって媒介される病原的作用(pathogenic effects)を効果的に低減させるか、あるいは完全に無効にすることさえできることを見出した。ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNAおよび非結合cfDNA(dsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチド)を含む実質的にすべてのタイプのcfDNAの除去は、cfDNAによって媒介される病原的作用を低減するのに重要と思われる。
【0054】
さらに驚くべきことに、本発明者らは、実質的にすべてのタイプの循環cfDNAの除去が、内因性デオキシリボヌクレアーゼの再活性化につながり得ることを見つけた。
【0055】
本明細書では、いくつかのアフィニティーマトリックスまたはその組合せが、必要とする患者の血液から、ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNAおよび非結合cfDNA(dsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む)を含む実質的にすべてのタイプのcfDNAを効果的に捕捉できることをさらに説明する。本発明のアフェレシスデバイスおよび方法に有用なアフィニティーマトリックスの例には、(i)DNA結合タンパク質(例えば、ヒストン[例えば、H1ヒストン])を含むマトリックス、(ii)抗ヒストン抗体(例えば、抗ヒストンH2A抗体)、抗ヌクレオソーム抗体(例えば、AN-1、A-44)を含むマトリックス、(iii)DNAインターカレート剤(例えば、Hoechst 33342などのヘキスト色素)を含むマトリックス、(iv)DNA結合ポリマー(例えば、カチオン性/塩基性ポリマー[例えば、ポリエチレンイミン、ポリ-L-リジン、ポリ-L-アルギニン、臭化ヘキサジメトリン、アミノ末端(-NH)ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、ポリプロピレンイミン(PPI)デンドリマー]、非イオン性/中性ポリマー[例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルポリピロリドン(PVPP)、ポリ(4-ビニルピリジン-N-オキシド)]、アニオン性/酸性ポリマー;線状ポリマー[例えば、ポリエチレンイミン、ポリ-L-リジン、ポリ-L-アルギニン]、分岐ポリマー[例えば、ハイパーブランチポリ-L-リジン、ハイパーブランチポリエチレンイミン]、デンドリマーポリマー[例えば、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、ポリプロピレンイミン(PPI)デンドリマー;例えば、Kaur et al., J Nanopart Res., 2016, 18:146を参照のこと];追加の例に関して、米国特許第7,713,701号、およびMorozov et al., General Reanimatology, 2016, 12:6を参照のこと)を含むマトリックス、(v)抗DNA抗体を含むマトリックス、(vi)レクチン(例えば、スノードロップレクチン(Galanthus nivalis Lectin)(GNA)、ラッパズイセンレクチン(Narcissus Pseudonarcissus Lectin)(NPA)、コンカナバリンA(Conconavalin A)、フィトヘマグルチニン(phytohemagluttanin)、またはシアノビリン(cyanovirin))を含むマトリックス、およびそれらの任意の組合せが含まれる。一部の実施形態では、2つ以上のアフィニティーマトリックスが、2つ以上のアフィニティーカラムとして連続的に配置される。一部の実施形態では、配列中の最初のアフィニティーマトリックスは、DNA結合ポリマー(例えば、アミノ末端(-NH)ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、ポリプロピレンイミン(PPI)デンドリマー、ハイパーブランチポリ-L-リジン、またはハイパーブランチポリエチレンイミン)、あるいはDNAインターカレート剤(例えば、Hoechst 33342)を含む。
【0056】
本明細書に記載されるのは、アフィニティーマトリックスおよびそのようなマトリックスを含むアフェレシスデバイスである。本発明のアフェレシスデバイスは、例えば米国特許出願公開第2017/0035955号(Eliaz Issac.2017年2月9日公開)に記載されているように、当業者の知識に従って構成され得る。アフェレシスデバイスの1つの可能な実施形態では、アフィニティーマトリックスは様々なアフィニティーカラムまたはカートリッジに入れられる。アフェレシスデバイスは、ろ過カートリッジ、および入口と出口とを有する1つまたは複数のアフィニティーカラムを備えていてよく、このデバイスは、患者の血液または血漿から、ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNAおよび非結合cfDNA(dsDNA、ssDNA、オリゴヌクレオチドを含む)を捕捉することができる。一部の実施形態では、デバイスは、順次に2つ以上のアフィニティーカラムを含む。入口および出口は、入口から入ってくる血液が出口を通って出る前に必ずアフィニティーマトリックスに接触するように、アフィニティーマトリックスに対して配置することができる。好ましくは、デバイスの幾何学的形状は、デバイスを通過する間の血液(または血漿)のアフィニティーマトリックスとの接触を最大化するように設計される。様々なそのような設計が当技術分野で知られている。例えば、デバイスは、一方の端部に入口を有しかつ反対の端部に出口を有する、ビーズに固定化されたアフィニティーリガンドを詰めた中空シリンダであってよい。微小管アレイなどの他のデバイスも構築できる。容器の幾何学的形状および容積、ならびにその中に含まれるアフィニティーマトリックスのそのようなすべてのバリエーションは、既知の原理に従って設計することができる。アフィニティーマトリックスカラムを調製する際に、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、または90%のカラム体積までアフィニティーマトリックスを装填することができる。適切なバッファー(PBS、特に冷PBS)を使用して、カラムを平衡化させてよい。
【0057】
一態様において、セルロースビーズおよび組換えヒトヒストンH1.3を含み、組換えヒトヒストンH1.3がセルロースビーズ上に固定化され、ビーズのサイズは50~350マイクロメートルである、ヒストンアフィニティーマトリックスを提供する。一部の実施形態では、ビーズのサイズは100~250マイクロメートルである。
【0058】
一部の実施形態では、ヒストンアフィニティーマトリックスは、以下のステップを含むプロセスによって調製される:
a)100~250マイクロメートルの間のサイズを有するセルロースビーズを酸化させて活性化セルロースビーズを得る;
b)活性化セルロースビーズを洗浄する;
c)組換えヒトヒストンH1.3の濃縮溶液を調製する;
d)活性化セルロースビーズを組換えヒトヒストンH1.3の濃縮溶液とインキュベートする;および
e)活性化セルロースビーズ上の遊離CHO基をブロックする。
【0059】
一部の実施形態では、そのプロセスは、f)活性化セルロースビーズをバッファーで洗浄するステップをさらに含む。
【0060】
一部の実施形態では、ステップa)において、セルロースビーズは水性懸濁液中にあり、NaIOで酸化させる。一部の実施形態では、ステップb)において、重炭酸ナトリウム、塩酸および水で活性化セルロースビーズを洗浄する。一部の実施形態では、ステップc)は、組換えヒトヒストンH1.3の溶液を透析し、透析された溶液をpH7~9の0.1M NaHCO中に濃縮することを含む。一部の実施形態では、透析された溶液はpH8の0.1M NaHCO中に濃縮される。一部の実施形態では、ステップd)において、インキュベーションは15~30℃で3~5時間行われる。一部の実施形態では、ステップd)において、インキュベーションは室温で4時間行われる。一部の実施形態では、ステップe)において、ブロックステップは、1Mのエタノールアミンを活性化セルロースビーズに添加し、15~30℃で30分~2時間反応させることを含む。一部の実施形態では、ステップf)において、活性化セルロースビーズをTBSバッファーで洗浄する。
【0061】
上記の態様および実施形態のいずれかのヒストンアフィニティーマトリックスを含むカラムも提供する。
【0062】
別の態様では、以下のステップを含むプロセスに従って調製されるレクチンアフィニティーマトリックスを提供する:
a)レクチンを活性化アガロースビーズと反応させて、レクチン結合アガロースを得る;および
b)レクチン結合アガロースをバッファーで洗浄する。
【0063】
一部の実施形態では、レクチンは、ガランサス・ニバリス(Galanthus nivalis)(スノードロップ)に由来する。一部の実施形態では、活性化アガロースビーズは、CNBr活性化アガロースビーズである。一部の実施形態では、バッファーは、pH7.2~7.4の滅菌冷PBSなどのPBSである。
【0064】
上記の態様および実施形態のいずれかのレクチンアフィニティーマトリックスを含むカラムも提供する。
【0065】
さらに別の態様では、以下のステップを含むプロセスによって調製されるポリアミドアミンデンドリマーアフィニティーマトリックス(PDAM)を提供する:
a)エタノールおよび水でセルロースビーズを洗浄する;
b)洗浄済みセルロースビーズを(±)-エピクロロヒドリンおよびNaOHとインキュベートして、活性化セルロースビーズを得る;
c)活性化セルロースビーズをポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーと反応させてPDAMビーズを得て、さらに活性化セルロースビーズと反応しなかったPAMAMデンドリマーを除去する;および
d)PDAMビーズ上の未変換エポキシ基をブロックする。
【0066】
一部の実施形態では、そのプロセスは、e)PDAMビーズを0.1Mリン酸バッファーおよび水で洗浄するステップをさらに含む。
【0067】
一部の実施形態では、ステップa)において、98%エタノールおよび蒸留水でセルロースビーズを洗浄する。一部の実施形態では、ステップb)において、洗浄済みセルロースビーズを、(±)-エピクロロヒドリンと2.5M NaOHの混合物とともにインキュベートする。一部の実施形態では、ステップc)において、活性化セルロースビーズを、エチレンジアミンコアを有するPAMAMデンドリマーの20%溶液を用いて懸濁させる。一部の実施形態では、ステップc)において、懸濁は0~30℃で3~6時間行われる。一部の実施形態では、ステップc)において、懸濁は24℃で5時間行われる。
【0068】
上記のPAMAMデンドリマーアフィニティーマトリックス(PDAM)を含むカラムも提供する。一部の実施形態では、カラムはPTFEカラムであり、ポリアミドアミンデンドリマーアフィニティーマトリックスは滅菌されている。
【0069】
別の態様では、以下のステップを含むプロセスにより調製される抗DNA抗体アフィニティーマトリックスを提供する:
a)N-ヒドロキシスクシンイミドをアガロースビーズと架橋することにより、活性化アガロースビーズを調製する;
b)活性化アガロースビーズを、NaHCOおよびNaClを含むカップリングバッファーで洗浄する;
c)二本鎖および一本鎖DNAに対する抗体をカップリングバッファーに添加する;
d)抗体を含むカップリングバッファーを活性化アガロースビーズとインキュベートして、抗DNA抗体アフィニティーマトリックスを得る;および
e)抗DNA抗体アフィニティーマトリックスを、カプリングバッファーおよび酢酸バッファーで洗浄する。
【0070】
一部の実施形態では、アガロースビーズは90マイクロメートルの平均サイズを有する。一部の実施形態では、カップリングバッファーは、0.2M NaHCOおよび0.5M NaClを含み、pH8.3である。一部の実施形態では、抗体はモノクローナル抗体である。一部の実施形態では、抗体はマウス抗体である。一部の実施形態では、洗浄ステップは少なくとも3回行われる。一部の実施形態において、酢酸バッファーは、pH4.0の0.1M酢酸バッファーである。
【0071】
上記の抗DNA抗体アフィニティーマトリックスを含むカラムも提供する。
【0072】
一部の実施形態では、カラムは、抗DNA抗体アフィニティーマトリックスを滅菌Tris-HClバッファーとインキュベートすることにより調製される。一部の実施形態では、滅菌Tris-HClバッファーはpH7.4である。
【0073】
別の態様では、以下のステップを含むプロセスにより調製される抗ヌクレオソーム抗体アフィニティーマトリックス(ANAM)を提供する:
a)N-ヒドロキシスクシンイミドをアガロースビーズと架橋することにより、活性化アガロースビーズを調製する;
b)活性化アガロースビーズを、NaHCOおよびNaClを含むカップリングバッファーで洗浄する;
c)ヌクレオソームに結合する抗体をカップリングバッファーに添加し、その抗体はMRL/Mp(-)+/+マウスで調製されたものである;
d)抗体を含むカップリングバッファーを活性化アガロースビーズとインキュベートして、抗ヌクレオソーム抗体アフィニティーマトリックスを得る;および
e)抗ヌクレオソーム抗体アフィニティーマトリックスを、カップリングバッファーおよび酢酸バッファーで洗浄する。
【0074】
一部の実施形態では、そのマトリックスはヌクレオソーム結合循環cfDNAに結合し、かつそのマトリックスは、dsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む非結合cfDNAに結合しない。
【0075】
上記の抗ヌクレオソーム抗体アフィニティーマトリックス(ANAM)を含むカラムも提供する。
【0076】
さらに別の態様では、以下のステップを含むプロセスにより調製されるDNAインターカレート剤Hoechst 3342アフィニティーマトリックスを提供する:
a)セルロースビーズを酸化させる;
b)酸化セルロースビーズを洗浄する;
c)洗浄済み酸化セルロースビーズを、Hoechst 33342およびN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド(EDC)を含む溶液と反応させて、Hoechst 33342固定化セルロースビーズを得る;および
d)Hoechst 33342固定化セルロースビーズを洗浄する。
【0077】
一部の実施形態では、ステップa)において、セルロースビーズを3~5時間、NaIOで酸化させる。一部の実施形態では、ステップb)において、1Mの重炭酸ナトリウム、0.1Mの塩酸および水で酸化セルロースビーズを洗浄する。一部の実施形態では、ステップc)において、溶液はpH緩衝溶液である。一部の実施形態では、ステップd)において、洗浄は少なくとも3回行われる。
【0078】
別の態様では、以下のステップを含むプロセスにより調製されるハイパーブランチポリ-L-リジンアフィニティーマトリックス(PLLAM)を提供する:
a)L-リジン一塩酸塩を水に溶解し、KOHで中和してL-リジン溶液を得る;
b)L-リジン溶液を加熱して、ハイパーブランチポリ-L-リジンを含む溶液を得る;
c)ハイパーブランチポリ-L-リジンを含む溶液からL-リジンと塩を除去する;
d)ハイパーブランチポリ-L-リジンを含む溶液を分画して、平均分子量21,000~32,000のハイパーブランチポリ-L-リジンを含む画分を得る;
e)平均分子量21,000~32,000のハイパーブランチポリ-L-リジンを含む画分を透析および凍結乾燥して、凍結乾燥物を得る;
f)凍結乾燥物を蒸留水に溶解し、NaHCOに対して透析して、HBPLを含む溶液を得る;および
g)ハイパーブランチポリ-L-リジンを含む溶液を、NaHCOに懸濁した臭化シアン活性化Sepharose 4Bとインキュベートして、ハイパーブランチポリ-L-リジンアフィニティーマトリックスを調製する。
【0079】
一部の実施形態では、ステップb)において、L-リジン溶液を窒素流下で48時間150℃に加熱する。一部の実施形態では、ステップc)において、ハイパーブランチポリ-L-リジンを含む溶液を水に対して透析する。一部の実施形態では、ステップd)において、サイズ排除カラムを用いて分画を行う。一部の実施形態では、ステップd)において、ゲルろ過カラムを用いて分画を行う。
【0080】
上記のハイパーブランチポリ-L-リジンアフィニティーマトリックス(PLLAM)を含むカラムも提供する。
【0081】
さらに別の態様では、アフィニティーマトリックスを含む1つまたは複数のアフィニティーカラムを含むアフェレシスを実行するように構成され、患者の血液または血漿から実質的にすべてのタイプのcfDNAを除去するように構成されたデバイスを提供する。一部の実施形態では、そのデバイスは、連続的に2つ以上のアフィニティーカラムを含む。一部の実施形態では、デバイスは濾過カートリッジをさらに含む。一部の実施形態では、濾過カートリッジは入口および出口を有する。一部の実施形態では、アフィニティーカラムのうちの1つ以上は、入口および出口を有する。
【0082】
一部の実施形態では、デバイスは、任意の順序で配置された以下のアフィニティーカラムのうちの2つ以上を備える:
a)DNA結合タンパク質(例えば、ヒストン)アフィニティーマトリックスを含むカラム;
b)レクチン(例えば、スノードロップレクチン(Galanthus nivalis Lectin)(GNA)、ラッパズイセンレクチン(Narcissus Pseudonarcissus Lectin)(NPA)、コンカナバリンA(Conconavalin A)、フィトヘマグルチニン(phytohemagluttanin)、またはシアノビリン(cyanovirin))アフィニティーマトリックスを含むカラム;
c)DNA結合ポリマー(例えば、アミノ末端(-NH)PAMAMデンドリマー、ハイパーブランチポリ-L-リジンまたはハイパーブランチポリエチレンイミンなどのカチオン性ポリマー)アフィニティーマトリックスを含むカラム;
d)抗DNA抗体アフィニティーマトリックスを含むカラム;
e)DNAインターカレート剤(例えば、Hoechst 3342)アフィニティーマトリックスを含むカラム;
f)抗ヌクレオソーム抗体アフィニティーマトリックス(ANAM)を含むカラム;および
g)抗ヒストン抗体アフィニティーマトリックスを含むカラム。
【0083】
一部の実施形態では、デバイスは、任意の順序で配置された以下のカラムの組合せのうちの1つを含む:
(a)(i)DNAインターカレート剤Hoechst 33342アフィニティーカラム、および(ii)抗DNA抗体アフィニティーカラム;または
(b)(i)抗ヌクレオソーム抗体アフィニティーマトリックス(ANAM)カラム、および(ii)抗DNA抗体アフィニティーカラム;または
(c)(i)抗ヌクレオソーム抗体アフィニティーマトリックス(ANAM)カラム、および(ii)ポリアミドアミンデンドリマーアフィニティーマトリックス(PDAM)カラム;または
(d)(i)抗ヌクレオソーム抗体アフィニティーマトリックス(ANAM)カラム、および(ii)ハイパーブランチポリ-L-リジンアフィニティーマトリックス(PLLAM)カラム;または
(e)(i)抗ヒストンH2A抗体アフィニティーカラム、(ii)レクチンアフィニティーカラム、および(iii)ヒストンH1アフィニティーカラム、またはポリアミドアミンデンドリマーアフィニティーマトリックス(PDAM)カラム、またはハイパーブランチポリ-L-リジンアフィニティーマトリックス(PLLAM)カラム、またはDNAインターカレート剤Hoechst 33342アフィニティーカラム。
【0084】
別の態様では、濾過カートリッジと、入口および出口を有する1つまたは複数のアフィニティーカラムとを備えたアフェレシスデバイスを提供し、このデバイスは、患者の血液または血漿から、ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNAおよび非結合cfDNA(dsDNA、ssDNA、オリゴヌクレオチドを含む)を含む実質的にすべてのタイプのcfDNAを捕捉することができる。
【0085】
一部の実施形態では、デバイスは、連続的に2つ以上のアフィニティーカラムを含む。一部の実施形態では、配列中の最初のアフィニティーカラムは、DNA結合ポリマーまたはDNAインターカレート剤を含む。
【0086】
一部の実施形態では、デバイスは、レクチンアフィニティーマトリックスを含むカラムの上流または前に、ヒストンアフィニティーマトリックスを含むカラムを備える。一部の実施形態では、デバイスは、PAMAMアフィニティーマトリックスを含むカラムの上流または前にあるレクチンアフィニティーマトリックスを含むカラムの上流または前に、ヒストンアフィニティーマトリックスを含むカラムを備える。一部の実施形態では、デバイスは、Hoechst 3342アフィニティーマトリックスを含むカラムの上流または前に、抗DNA抗体アフィニティーマトリックスを含むカラムを備える。一部の実施形態では、デバイスは、PAMAMアフィニティーマトリックスを含むカラムの上流または前に、抗ヌクレオソーム抗体アフィニティーマトリックスを含むカラムを備える。
【0087】
一部の実施形態では、アフェレシスデバイスは、単回のアフェレシス処置ごとに少なくとも30mgのcfDNAを捕捉する。一部の実施形態では、アフィニティーカラムは、ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNAおよび非結合cfDNA(dsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む)の1つまたは複数を捕捉するのに有効な固定化部分を含む。一部の実施形態において、固定化部分は、DNA結合抗体、DNAインターカレート剤、DNA結合タンパク質、DNA結合ポリマー、レクチン、抗ヌクレオソーム抗体、および抗ヒストン抗体からなる群より選択される。
【0088】
一部の実施形態では、DNA結合タンパク質はヒストンH1(例えば、H1.3)である。
【0089】
一部の実施形態では、DNA結合ポリマーはカチオン性ポリマーである。一部の実施形態では、カチオン性ポリマーはポリ-L-リジンである。一部の実施形態では、ポリ-L-リジンはハイパーブランチポリ-L-リジンである。一部の実施形態では、カチオン性ポリマーはポリエチレンイミンである。一部の実施形態では、ポリエチレンイミンはハイパーブランチポリエチレンイミンである。一部の実施形態では、カチオン性ポリマーはアミノ末端(-NH)ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーである。
【0090】
上記の一部の実施形態では、アフェレシスデバイスは、2つの連続アフィニティーカラムを含み、一方のカラムはヌクレオソーム結合DNAおよびエキソソーム結合DNAを捕捉し、他方のカラムはdsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む非結合cfDNAを捕捉する。一部の実施形態では、固定化部分は、以下の部分の2つ以上の組合せからなる群より選択される:DNA結合抗体、DNAインターカレート剤、DNA結合タンパク質、DNA結合ポリマー、レクチン、抗ヌクレオソーム抗体、または抗-ヒストン抗体。
【0091】
別の態様では、患者の血液中のcfDNAのレベルを低下させる方法を提供する。この方法は、(a)患者から血液または血漿をアフェレシスデバイスに迂回させてcfDNAのレベルが低下した浄化された血液または血漿を生成することを含むアフェレシス処置を実行すること;および(b)浄化された血液または血漿を患者に戻すことを含む。アフェレシス処置は、ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNAおよび非結合cfDNA(dsDNA、ssDNA、オリゴヌクレオチドを含む)を含む、患者の血液中の実質的にすべてのタイプのcfDNAのレベルを低下させる。
【0092】
一部の実施形態では、この方法は、多臓器不全、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病)、がん、敗血症、敗血症性腎損傷、放射線誘発毒性(例えば、急性放射線症候群)、および化学療法関連毒性の1つまたは複数を治療するのに有効である。
【0093】
一部の実施形態では、患者は、がん、転移がん、急性臓器不全、臓器梗塞、出血性脳卒中、移植片対宿主病(GVHD)、移植片拒絶、敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、多臓器不全症候群(MODS)、放射線誘発毒性(例えば、急性放射線症候群)、化学療法関連毒性、外傷、高齢者の炎症性状態、糖尿病、アテローム性動脈硬化、神経変性疾患、自己免疫疾患、子癇、不妊症、凝固障害、および感染症からなる群より選択される疾患を有する。
【0094】
一部の実施形態では、この方法は、患者における疾患を治療するのに有効であり、疾患は、がん、転移性がん、急性臓器不全、臓器梗塞(心筋梗塞および虚血性脳卒中を含む)、出血性脳卒中、自己免疫疾患、移植片対宿主病(GVHD)、移植片拒絶、敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS);多臓器不全症候群(MODS);移植片対宿主病(GVHD)、外傷、高齢者の炎症性状態、糖尿病、アテローム性動脈硬化、神経変性疾患、自己免疫疾患、子癇、不妊症、凝固障害、妊娠関連合併症および感染症から選択される。一部の実施形態では、患者は疾患の治療を必要としている。
【0095】
さらに別の態様では、患者における多臓器不全症候群(MODS)を治療する方法を提供する。この方法は、(a)患者から血液または血漿をアフェレシスデバイスに迂回させて浄化された血液または血漿を生成することを含むアフェレシス処置を実行すること;および(b)cfDNAのレベルが低下した浄化された血液または血漿を患者に戻すことを含む。アフェレシス処置は、ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNAおよび非結合cfDNA(dsDNA、ssDNA、オリゴヌクレオチドを含む)を含む、患者の血液中の実質的にすべてのタイプのcfDNAのレベルを低下させる。一部の実施形態では、患者はMODSの治療を必要としている。
【0096】
別の態様では、患者における神経変性疾患を治療する方法を提供する。この方法は、(a)患者から血液または血漿をアフェレシスデバイスに迂回させてcfDNAのレベルが低下した浄化された血液または血漿を生成することを含むアフェレシス処置を実行すること;および(b)浄化された血液または血漿を患者に戻すことを含む。アフェレシス処置は、ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNAおよび非結合cfDNA(dsDNA、ssDNA、オリゴヌクレオチドを含む)を含む、患者の血液中の実質的にすべてのタイプのcfDNAのレベルを低下させる。一部の実施形態では、患者は神経変性疾患の治療を必要としている。
【0097】
別の態様では、患者におけるアルツハイマー病を治療する方法を提供する。この方法は、(a)患者から血液または血漿をアフェレシスデバイスに迂回させてcfDNAのレベルが低下した浄化された血液または血漿を生成することを含むアフェレシス処置を実行すること;および(b)浄化された血液または血漿を患者に戻すことを含む。アフェレシス処置は、ヌクレオソーム-結合cfDNA、エキソソーム-結合cfDNAおよび非結合cfDNA(dsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む)を含む、患者の血液中の実質的にすべてのタイプのcfDNAのレベルを低下させる。一部の実施形態では、患者はアルツハイマー病の治療を必要としている。
【0098】
別の態様では、患者におけるがんを治療する方法を提供する。この方法は、(a)患者から血液または血漿をアフェレシスデバイスに迂回させてcfDNAのレベルが低下した浄化された血液または血漿を生成することを含むアフェレシス処置を実行すること;および(b)浄化された血液を患者に戻すことを含む。アフェレシス処置は、ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNAおよび非結合cfDNA(dsDNA、ssDNA、オリゴヌクレオチドを含む)を含む、患者の血液中の実質的にすべてのタイプのcfDNAのレベルを低下させる。一部の実施形態では、患者はがんの治療を必要としている。
【0099】
別の態様では、患者における敗血症を治療する方法を提供する。この方法は、(a)患者から血液または血漿をアフェレシスデバイスに迂回させてcfDNAのレベルが低下した浄化された血液または血漿を生成することを含むアフェレシス処置を実行すること;および(b)浄化された血液または血漿を患者に戻すことを含む。アフェレシス処置は、ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNAおよび非結合cfDNA(dsDNA、ssDNA、オリゴヌクレオチドを含む)を含む、患者の血液中の実質的にすべてのタイプのcfDNAのレベルを低下させる。一部の実施形態では、患者は敗血症の治療を必要としている。
【0100】
別の態様では、患者における腎臓損傷を治療する方法を提供する。この方法は、(a)患者から血液または血漿をアフェレシスデバイスに迂回させてcfDNAのレベルが低下した浄化された血液または血漿を生成することを含むアフェレシス処置を実行すること;および(b)浄化された血液または血漿を患者に戻すことを含む。アフェレシス処置は、ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNAおよび非結合cfDNA(dsDNA、ssDNA、オリゴヌクレオチドを含む)を含む、患者の血液中の実質的にすべてのタイプのcfDNAのレベルを低下させる。一部の実施形態では、患者は腎臓損傷の治療を必要としている。
【0101】
別の態様では、患者における化学療法関連毒性を治療する方法を提供する。この方法は、(a)患者から血液または血漿をアフェレシスデバイスに迂回させてcfDNAのレベルが低下した浄化された血液または血漿を生成することを含むアフェレシス処置を実行すること;および(b)浄化された血液または血漿を患者に戻すことを含む。アフェレシス処置は、ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNAおよび非結合cfDNA(dsDNA、ssDNA、オリゴヌクレオチドを含む)を含む、患者の血液中の実質的にすべてのタイプのcfDNAのレベルを低下させる。一部の実施形態では、患者は化学療法関連毒性の治療を必要としている。
【0102】
別の態様では、患者における放射線誘発毒性(例えば、急性放射線症候群)を治療する方法を提供する。この方法は、(a)患者から血液または血漿をアフェレシスデバイスに迂回させてcfDNAのレベルが低下した浄化された血液または血漿を生成することを含むアフェレシス処置を実行すること;および(b)浄化された血液または血漿を患者に戻すことを含む。アフェレシス処置は、ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNAおよび非結合cfDNA(dsDNA、ssDNA、オリゴヌクレオチドを含む)を含む、患者の血液中の実質的にすべてのタイプのcfDNAのレベルを低下させる。一部の実施形態において、患者は、放射線誘発毒性の治療を必要としている。
【0103】
上記方法のいずれかの一部の実施形態において、患者の門脈から血液を迂回させる。
【0104】
上記の一部の実施形態において、浄化された血液は、アフェレシス処置前の患者からの血液中のcfDNAのレベルと比較して、cfDNAのレベルが低下している。
【0105】
一部の実施形態では、浄化された血液は、ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNA、ならびにdsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む非結合cfDNAのすべてのレベルが低下している。一部の実施形態において、この方法は、患者の血液中の循環cfDNAのレベルを定期的に監視(モニタリング)し、アフェレシス処置を完了する前にcfDNAの循環レベルを少なくとも25%低下させるためにアフェレシス処置を継続することをさらに含む。一部の実施形態では、この方法は、患者の血液中の循環cfDNAのレベルを定期的に監視し、アフェレシス処置を完了する前にcfDNAの循環レベルを少なくとも50%低下させるために患者においてアフェレシス処置を継続することをさらに含む。一部の実施形態では、この方法は、患者の血液中の循環cfDNAのレベルを定期的に監視し、アフェレシス処置を完了する前に循環cfDNAのレベルを少なくとも75%低下させるために患者においてアフェレシス処置を継続することをさらに含む。
【0106】
上記のいずれかの一部の実施形態において、少なくとも30mgのcfDNAが、1回または数回の連続的なアフェレシス処置中に患者の血液から除去される。
【0107】
上記の一部の実施形態において、方法のステップは繰り返されるか、またはスケジュールに従って実施される。方法のステップは、1日に2回、毎日、2日ごと、3日ごと、4日ごと、5日ごと、6日ごと、毎週、8日ごと、9日ごと、10日ごと、11日ごと、12日ごとなどで実施してよい。患者から血液サンプルを採取し、cfDNAのレベルを検査して、治療方法を実施する頻度を評価することができる。
【0108】
アフィニティーカラムを連続的に配置することで、患者の血液または血漿から、ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNA、および非結合cfDNA(dsDNA、ssDNA、オリゴヌクレオチドを含む)を含む、実質的にすべてのタイプのcfDNAを捕捉することができる。
【0109】
本明細書では様々な順序が説明されており、任意の順序を使用できる。一部の実施形態では、デバイスは、レクチンアフィニティーマトリックスを含むカラムの上流または前に、ヒストンアフィニティーマトリックスを含むカラムを備える。一部の実施形態では、デバイスは、ポリアミドアミンデンドリマーアフィニティーマトリックス(PDAM)を含むカラムの上流または前にあるレクチンアフィニティーマトリックスを含むカラムの上流または前に、ヒストンアフィニティーマトリックスを含むカラムを備える。一部の実施形態では、デバイスは、Hoechst 3342アフィニティーマトリックスを含むカラムの上流または前に、抗DNA抗体アフィニティーマトリックスを含むカラムを備える。一部の実施形態では、デバイスは、ポリアミドアミンデンドリマーアフィニティーマトリックス(PDAM)を含むカラムの上流または前に、抗ヌクレオソーム抗体アフィニティーマトリックス(ANAM)を含むカラムを備える。
【0110】
本出願全体に記載されている様々な側面の一部として、(a)患者から血液または血漿をアフェレシスデバイスに迂回させて浄化された血液または血漿を生成することを含むアフェレシス処置を実行し;さらに(b)cfDNAのレベルが低減された浄化された血液または血漿を患者に戻す。
【0111】
アフェレシスデバイスは、ヒストンアフィニティーマトリックスを含んでいてよい。ヒストンアフィニティーマトリックスは、組換えヒトヒストンH1.3を含んでいてよい。ヒストンアフィニティーマトリックスは、アフィニティーカラムの一部であってよい。ヒストンアフィニティーマトリックスカラムにおいて支持体として使用されるビーズは、ヒストンとのカップリング前に酸化剤で酸化させたセルロースビーズであってよい。ビーズは、例えばセファロースビーズであってよい。あるいは、ビーズ以外の形態の支持体を使用することもできる(中空糸、膜、チューブなど)。アフィニティーマトリックスの支持体は、当業者に知られている他の有機および無機化合物、例えば、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリスルホン(PS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアリールエーテルスルホン(PAES)、ポリアクリレート、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリグリシジルメタクリレート(PGMA)、ポリヒドロキシメタクリレート、ポリスチレン(PS)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリルアミド、ポリアクロレイン、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリウレタン(PU)、eupergit(登録商標)、ポリエチレングリコール(PEG)、ハイパーフルオロカーボン、アガロース(架橋アガロース)、アルギン酸塩、カラギーナン、キチン、デンプン、セルロース、ニトロセルロース、セファロース(sepharose)(登録商標)、ガラス、シリカ、珪藻土、ジルコニア、アルミナ、酸化鉄、多孔性炭素、前記固体支持体の混合物および/または誘導体;ならびに、この分離材料のプロトン化および脱プロトン化形態から作られていてよい。
【0112】
ビーズをDNA結合タンパク質でコーティングしてもよい。ヒストンや抗DNA抗体などのDNA結合タンパク質は、多糖類ビーズなどの固体不溶性支持体マトリックスに化学的にカップリングさせることで固定化できる。例えば、臭化シアンを使用してアガロースビーズを活性化し、cfDNA捕捉タンパク質を活性化アガロースとインキュベートして、カップリングを生じさせる。バッファーで洗浄することにより非結合材料を除去し、タンパク質結合アガロースを対象のアフェレシスデバイス/アフィニティカートリッジに充填する。タンパク質を様々な不溶性支持体マトリックスに化学的にカップリングさせる多くの異なる方法がある。当業者に公知のこれらおよび他のマトリックス材料およびタンパク質カップリング方法は、本明細書に記載の方法およびデバイスのいずれでも使用することができる。
【0113】
例えば、cfDNA捕捉分子の固体支持体への付着は、アミン、チオール、イミド(すなわち、水溶性カルボジイミド)を介する、あるいはポリペプチドまたはオリゴヌクレオチドを固体支持体に付着させるための当業者に知られている他の化学的付着方法によるものであってよい。
【0114】
ビーズのサイズは、例えば、30~200μm、40~180μm、45~165μm、60~150μmの範囲であってよい。メタ過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)などの、任意の数の酸化剤を使用してよい。あるいは、セルロースの第一級ヒドロキシル基を、ピペリジンオキソアンモニウム塩(TEMPO)によって媒介される酸化を介して選択的に変換して6-デオキシ-6-カルボキシセルロースを生成する、または亜塩素酸塩で酸化することができる。例えば、Eyle, S. and Thielemans, W., Surface modifucation of cellulose nanocrystals, Nanoscale, 2014, 6, 7764, DOI: 10.1039/c4nr01756kを参照のこと。また、セルロース(またはアガロース)支持体を、例えば、クロム酸、三酸化クロム-ピリジン、ジメチルスルホキシドなどの、当業者に既知の他の化合物によって酸化することもできる(例えば、Peng, L. et al. Evaluation of activation methods with cellulose beads for immunosorbent purification of immunoglobulins, J.Biotechnology, 5 (1987) 255-265を参照のこと)。次に、酸化されたビーズを、組換えヒトヒストンH1.3などのヒストンタンパク質の十分に精製および濃縮された溶液とインキュベートする。反応を停止させ、次いでバッファーで洗浄して、可溶性タンパク質混入物を除去することができる。あるいは、セルロースの第一級ヒドロキシル基を、ピペリジンオキソアンモニウム塩(TEMPO)によって媒介される酸化を介して選択的に変換して6-デオキシ-6-カルボキシセルロースを生成する、または亜塩素酸塩で酸化することができる。例えば、Eyle, S. and Thielemans, W., Surface modifucation of cellulose nanocrystals, Nanoscale, 2014, 6, 7764, DOI: 10.1039/c4nr01756kを参照のこと。また、セルロース(またはアガロース)支持体を、例えば、クロム酸、三酸化クロム-ピリジン、ジメチルスルホキシドなどの当業者に知られている他の化合物によって酸化することもできる。例えば、Peng, L. et al. Evaluation of activation methods with cellulose beads for immunosorbent purification of immunoglobulins, J.Biotechnology, 5 (1987) 255-265を参照のこと。
【0115】
アフェレシスデバイスは、ヒストンアフィニティーマトリックスを含んでいてよい。ヒストンアフィニティーマトリックスは、組換えヒトヒストンH1.3を含んでいてもよい。ヒストンアフィニティーマトリックスは、アフィニティーカラムの一部であってよい。ヒストンアフィニティーマトリックスカラムで使用されるビーズは、酸化剤で酸化されたセルロースビーズであってよい。ビーズは、例えばセファロースビーズであってよい。ビーズはストレプトアビジンでコーティングされていてもよい。ビーズのサイズは、例えば、30~200μm、40~180μm、45~165μm、60~150μmの範囲であってよい。メタ過ヨウ素酸ナトリウム(NaIO)などの、任意の数の酸化剤を使用してよい。あるいは、ピペリジンオキソアンモニウム塩(TEMPO)により媒介される酸化により、セルロースの第一級ヒドロキシル基を選択的に変換して、6-デオキシ-6-カルボキシセルロースを生成することができる。例えば、Eyle, S. and Thielemans, W., Surface modifucation of cellulose nanocrystals, Nanoscale, 2014, 6, 7764, DOI: 10.1039/c4nr01756kを参照のこと。また、セルロース(またはアガロース)支持体を、例えば、クロム酸、三酸化クロム-ピリジン、ジメチルスルホキシドなどの、当業者に知られている他の化合物によって酸化することもできる(例えば、Peng, L. et al. Evaluation of activation methods with cellulose beads for immunosorbent purification of immunoglobulins, J.Biotechnology, 1987, 5:255-265を参照のこと)。次に、酸化されたビーズを、組換えヒトヒストンH1.3などのヒストンタンパク質の十分に精製および濃縮された溶液とともにインキュベートする。反応を停止させ、次いでバッファーで洗浄して、可溶性タンパク質混入物を除去することができる。
【0116】
ヒストンアフィニティーマトリックスは、以下のステップを含むプロセスにより調製される:
a)100~250マイクロメートルのサイズを有するセルロースビーズを酸化させて、活性化セルロースビーズを生成する;
b)活性化セルロースビーズを洗浄する
c)組換えヒトヒストンH1.3の濃縮溶液を調製する;
d)活性化セルロースビーズを組換えヒトヒストンH1.3の濃縮溶液とインキュベートする;および
e)活性化セルロースビーズ上の遊離CHO基をブロックする。
【0117】
上記のプロセスは、f)活性化セルロースビーズをバッファーで洗浄するステップをさらに含んでもよい。
【0118】
任意の酸化剤をステップa)で使用できる。1つの例示的な酸化剤はNaIOである。ステップb)では、あらゆる方法で洗浄を行うことができる。例えば、活性化セルロースビーズを、重炭酸ナトリウム、塩酸および水で洗浄する。透析または他の方法をステップc)で使用してもよい。例えば、組換えヒトヒストンH1.3の溶液を透析し、透析溶液をpH7~9またはpH8の0.1M NaHCO中に濃縮する。ステップd)では、インキュベーションは15~30℃で3~5時間、または室温で4時間行ってもよい。ステップe)において、ブロックステップは、1Mのエタノールアミンを活性化セルロースビーズに添加し、15~30℃で30分~2時間反応させることを含む。ステップf)では、活性化セルロースビーズをTBSバッファーで洗浄してもよい。
【0119】
ビーズを、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)カラムなどのカラムに装填してよい。他の例示的なカラムは、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、あるいは血液または血液成分の体外処置用デバイスの製造のためにFDAまたはEMEAにより承認されている他のポリマー材料で作られた壁を有していてもよい。
【0120】
カラムまたはカートリッジデバイスは、非毒性の材料で作られていてよく、内部にアフィニティーマトリックスを固定支持する。典型的には、その材料は、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、ポリスチレンなどのプラスチック組成物、あるいは血液または血液成分の体外処置用デバイスの製造用にFDAまたはEMEAなどの規制当局によって承認されている他の同様の材料である。一部の実施形態では、アフィニティーマトリックスがデバイスから出るのを防ぐために、カラム(カートリッジ)の底部に内部フィルターがある。一部の実施形態では、デバイス内にアフィニティーマトリックスを含むために、デバイスの上部にも内部フィルターがある。一部の実施形態では、これらフィルターは、プラスチックおよび/またはセルロース材料で構成され、血漿などの流体の通過を可能にするが、アフィニティーマトリックスなどの微粒子材料は通過させない細孔を有する。
【0121】
ヒストンアフィニティーマトリックスカラムの調製において、ヒストンアフィニティーマトリックスを少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%または90%カラム体積まで装填してもよい。PBS、特に冷PBSを使用してカラムを平衡化させてよい。他の適切なバッファーを使用してカラムを平衡化させてもよい。
【0122】
アフェレシスデバイスは、レクチンアフィニティーマトリックスを含んでいてもよい。有用なレクチンの非限定的な例には、例えば、ガランサス・ニバリス(スノードロップ)レクチン(GNA)、ラッパズイセンレクチン(Narcissus Pseudonarcissus Lectin)(NPA)、コンカナバリンA(Conconavalin A)、フィトヘマグルチニン(phytohemagluttanin)、およびシアノビリン(cyanovirin)が含まれる。一実施形態では、中性からわずかにアルカリ性のpHで一晩インキュベートすることにより、レクチンをアガロースアフィニティーマトリックスに結合させることができる。このようなインキュベーションの後、pH7.0~7.5付近のバッファーで十分に洗浄して、非結合レクチンを除去することができる。
【0123】
レクチンアフィニティーマトリックスは、以下のステップを含むプロセスに従って調製することができる:
a)レクチンを活性化アガロースビーズと反応させて、レクチン結合アガロースを得る;および
b)レクチン結合アガロースをバッファーで洗浄する。
【0124】
アフェレシスデバイスは、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーアフィニティーマトリックス(PDAM)またはポリプロピレンイミン(PPI)デンドリマーアフィニティーマトリックスを含んでいてもよい。例えば、Kaur et al., J Nanopart Res., 2016, 18:146を参照のこと。デンドリマーは、高度に分岐した構造および球状の形状を有するナノメートル寸法の独特な合成ポリマーである。デンドリマーの中でも、ポリアミドアミン(PAMAM)は、これらマクロ分子が生理学的pHでDNAに結合するため、遺伝子送達のための潜在的トランスフェクション剤として最も注目されている。PAMAMデンドリマーは、アルキルジアミンコアと第三級アミン分岐から構成されている。5種類の異なるコアタイプと10種類の表面官能基を有する10世代(G0-10)で利用できる。DNAおよびポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーは、核酸の負電荷を有するリン酸基と、ポリマーのプロトン化(正電荷を有する)アミノ基との間の静電相互作用に基づいて複合体を形成する。高分子量および高密度複合体の形成は、主にDNA濃度に依存し、デンドリマーとDNAの電荷比を増加させることにより強化される(Shcharbin, D. et al., Practical Guide to Studying Dendrimers. Book, iSmithers Rapra Publishing: Shawbury, Shrewsbury, Shropshire, UK, 2010. 120 p. ISBN: 978-1-84735-444-0)。
【0125】
PAMAMデンドリマーアフィニティーマトリックスは、以下のステップを含むプロセスによって調製される:
a)エタノールおよび水でセルロースビーズを洗浄する;
b)洗浄済みセルロースビーズを(±)-エピクロロヒドリンおよびNaOHとインキュベートして、活性化セルロースビーズを得る;
c)活性化セルロースビーズをPAMAMデンドリマーと反応させてPAMAMビーズを得て、さらに活性化セルロースビーズと反応しなかったPAMAMデンドリマーを除去する;および
d)PAMAMビーズ上の未転化エポキシ基をブロックする。
【0126】
そのビーズを、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)カラムなどのカラムに装填してもよい。他の例示的なカラムは、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエーテルスルホン、ポリエステル、あるいは血液または血液成分の体外処置用デバイスの製造のためにFDAまたはEMEAによって承認されている他のポリマー材料で作られた壁を有していてもよい。
【0127】
PAMAMデンドリマーアフィニティーマトリックスを含むアフェレシスデバイスは、ヒストンアフィニティーマトリックスとレクチンアフィニティーマトリックスとを含むアフェレシスデバイスを使用するよりも、cfDNAの除去でより有効である、あるいはcfDNAをより完全に除去することができる、あるいは特定の血液サンプル中のより多くの全体量のcfDNAを除去することができる。
【0128】
ある実施形態では、アフェレシスデバイスは、PAMAMデンドリマーアフィニティーマトリックス、ヒストンアフィニティーマトリックス、およびレクチンアフィニティーマトリックスのすべてを含んでいてもよい。
【0129】
アフェレシスデバイスは、抗DNA抗体アフィニティーマトリックスを含んでいてもよい。DNAに対する抗体は、一本鎖DNA、二本鎖DNA、またはその両方に結合する抗核抗体(抗ds+ssDNA抗体)のサブグループを構成する。それらは、例えば、IgM抗体またはIgG抗体のサブクラスのいずれかであってよい。一本鎖DNAのみに結合する抗体は、その成分の塩基、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、およびリボース-リン酸骨格に結合でき、これらはすべてDNAの一本鎖に露出している。二本鎖DNAに結合する抗体は、リボース-リン酸骨格、塩基対(デオキシグアノシン-デオキシシチジンおよびデオキシアデノシン-デオキシチミジン)、または二重らせんの特定の立体構造に結合できる(Bevra Hannahs Hahn, Antibodies to DNA. N Engl J Med 1998; 338:1359-1368)。DNAに対する抗体は、ヌクレオソームやクロマチンなどの超分子構造を含むDNAにも結合する場合がある。
【0130】
抗DNA抗体アフィニティーマトリックスは、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)などでアガロースビーズを活性化することで調製できる。その後、活性化ビーズを、抗体またはDNAに親和性を有する他の試薬とインキュベートしてよい。次いで、過剰な抗体/試薬を洗浄により除去する。
【0131】
抗ヌクレオソーム抗体アフィニティーマトリックス(ANAM)は、以下のステップを含むプロセスにより調製される:
a)N-ヒドロキシスクシンイミドをアガロースビーズと架橋させることにより活性化アガロースビーズを調製する;
b)活性化アガロースビーズを、NaHCOおよびNaClを含むカップリングバッファーで洗浄する;
c)ヌクレオソームに結合する抗体をカップリングバッファーに添加し、その抗体はMRL/Mp(-)+/+マウスで調製されたものである;
d)抗体を含むカップリングバッファーを活性化アガロースビーズとインキュベートして、抗ヌクレオソーム抗体アフィニティーマトリックスを得る;および
e)抗ヌクレオソーム抗体アフィニティーマトリックスをカップリングバッファーおよび酢酸バッファーで洗浄する。
【0132】
アフェレシスデバイスは、DNAインターカレーター(またはインターカレート剤)アフィニティーマトリックスを含んでいてもよい。分子がDNAと相互作用できる方法はいくつかある。リガンドは、共有結合、静電結合、またはインターカレーション(挿入)によりDNAと相互作用し得る。適切なサイズおよび化学的性質のリガンドがDNAの塩基対の間にうまく収まると、インターカレーションが生じる。DNA結合剤は、2つの一般様式:(i)疎水性結合、静電結合および水素結合相互作用の混合により安定化された溝結合様式の縫い込み型(threading)のインターカレーション;および(ii)平面的ヘテロ芳香族部分がDNA塩基対間に入り込む挿入的な会合による古典的なインターカレーション;を介して宿主DNA分子と非共有結合的に相互作用する傾向がある。最も一般的に研究されている挿入結合は、DNA二重らせんの塩基対間に平面複素環式芳香環を挿入することにより生じる非共有スタッキング相互作用である。http://nptel.ac.in/courses/104103018/35を参照のこと。Hoechst 33342は、二本鎖DNAの副溝のATリッチ配列に結合するビスベンズイミド誘導体である。この色素の複素環部分が、DNA二重らせんと効率的に相互作用してHoechst-DNA複合体をより安定化させるのに重要である。
【0133】
DNAインターカレーターアフィニティーマトリックスは、セルロースビーズ(支持体)などのビーズを酸化(活性化)させ、DNAインターカレーター(DNA結合部分、すなわちHoechst 33342)を支持表面と連結させるN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド(EDC)などの化合物(リンカー)と反応させることにより調製できる。その後、ビーズを洗浄する。
【0134】
Hoechst 3342アフィニティーマトリックスは、以下のステップを含むプロセスによって調製される:
a)セルロースビーズを酸化する;
b)酸化セルロースビーズを洗浄する;
c)洗浄済み酸化セルロースビーズを、Hoechst 33342およびN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド(EDC)を含む溶液と反応させて、Hoechst 33342固定化セルロースビーズを得る;および
d)Hoechst 33342固定化セルロースビーズを洗浄する。
【0135】
アフェレシスデバイスは、ハイパーブランチポリ-L-リジンアフィニティーマトリックスを含んでいてもよい。ハイパーブランチポリ-L-リジンアフィニティーマトリックスは、以下のステップを含むプロセスによって調製できる:
a)L-リジン一塩酸塩を水に溶解し、KOHで中和してL-リジン溶液を得る;
b)L-リジン溶液を加熱して、ポリ-L-リジンを含む溶液を得る;
c)ポリ-L-リジンを含む溶液からL-リジンおよび塩を除去する;
d)ポリ-L-リジンを含む溶液を分画して、平均分子量21,000~32,000のポリ-L-リジンを含む画分を得る;
e)平均分子量21,000~32,000のポリ-L-リジンを含む画分を透析および凍結乾燥して、凍結乾燥物を得る;
f)凍結乾燥物を蒸留水に溶解し、NaHCOに対して透析して、HBPLを含む溶液を得る;および
g)HBPLを含む溶液を、NaHCOに懸濁した臭化シアン活性化Sepharose 4Bとインキュベートする。
【0136】
ある実施形態では、アフェレシスデバイスは、以下のすべてまたは任意の数を含むことができる:DNAインターカレーターアフィニティーマトリックス、Hoechst 33342アフィニティーマトリックス、抗DNAアフィニティーマトリックス、PAMAMアフィニティーマトリックス、ヒストンアフィニティーマトリックス、レクチンアフィニティーマトリックス、およびポリ-L-リジンアフィニティーマトリックス。
【0137】
様々なアフェレシス手順および処置方法を本出願の全体を通して説明している。様々な方法および手順は、(a)患者から血液または血漿をアフェレシスデバイスに迂回させて浄化された血液または血漿を生成することを含むアフェレシス処置を実行すること;および(b)cfDNAのレベルが低下した浄化された血液または血漿を患者に戻すことを含む。血液の最適な迂回のために任意の静脈を選択できる。例えば、患者の門脈から血液を迂回させてよい。あるいは、患者の大腿静脈または頸静脈から血液を迂回させてもよい。
【0138】
治療の様々な実施形態では、アフェレシス処置を、2回以上、または2回、例えば1日目および3日目に、実行してもよい。腎障害を治療する場合、各アフェレシス処置の前に、レフロトロンプラス(Roche Reflotron Plus)(Roche Diagnostics)を用いて血清クレアチニンおよび血中尿素窒素(BUN)レベルを測定することにより腎障害のレベルを評価してもよい。
【0139】
循環cfDNAは、従来のTHP(Triton-Heat-Phenol)法で血漿サンプルから抽出できる(Breitbach et al., PLoS ONE, 2014, 9(3):e87838)。抽出されたcfDNAを、製造元の指示に従って、例えばPicoGreenアッセイ(Molecular Probes、オランダ)などの様々なアッセイで定量化できる。以下の実施例で説明するように、アガロースゲルにおけるcfDNAを視覚化するために、エチジウムブロミド(Sigma-Aldrich)、Diamond(商標)Nucleic Acid Dye(Promega)、SYBR(登録商標)Gold Nucleic Acid Gel Stain(Molecular Probes)などのよく知られたDNA染色色素を使用できる。色素は、ゲル染色剤またはプレキャスト剤として使用してもよく、あるいは直接サンプル装填バッファー中に予め添加してもよい。
【0140】
様々な実施形態において、アフェレシス処置の実施は、血液を血漿に分離することをさらに含む。その後、血漿部分を、cfDNAを除去するように1つまたは複数のアフィニティーマトリックスに迂回させる。
【実施例0141】
本発明を、以下の実施例によって説明および実証する。しかしながら、本明細書のいずれにおいてもこれらおよび他の例の使用は単なる例示にすぎず、本発明または例示された用語の範囲および意味を決して限定するものではない。同様に、本発明は、本明細書で説明した特定の好ましい実施形態のいずれにも限定されない。実際に、本明細書を読めば、本発明の多くの修正および変形が当業者には明らかであり、そのようなバリエーションは本発明の精神または範囲から逸脱することなく行うことができる。したがって、本発明は、添付の特許請求の範囲の用語、ならびにそれら特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲によってのみ限定されるべきである。
【0142】
実施例1:ヒストンH1アフィニティーマトリックスおよびアフィニティーカラムの調製
ヒストンH1アフィニティーマトリックスおよびアフィニティーカラムは次のように調製した:セルロースビーズ(ビーズサイズ100~250マイクロメートル、Sigma-Aldrich)をメタ過ヨウ素酸ナトリウムで酸化させた。これを達成するために、10mLの水中のビーズ(3g、5mL)およびNaIO(0.1g、0.5mmol)の水性懸濁液を室温で4時間振盪した。活性化されたビーズを収集し、1M重炭酸ナトリウム、0.1M塩酸および200mLの水で洗浄した。組換えヒトヒストンH1.3(≧98%純度、Institute of Bioorganic Chemistry,Moscow)の溶液を透析し、0.1M NaHCO(pH8)中に濃縮した(10mL;5mg/mL)。次に、その溶液を撹拌しながら酸化ビーズ(5mL)とともに室温で4時間インキュベートした。インキュベーション後、1Mのエタノールアミン(1.5mL)を活性化ビーズ懸濁液(15mL)に添加して、遊離CHO基をブロックした;反応を室温で1時間継続した。得られた固定化ヒストンH1を有するセルロースビーズをTBSバッファーで3回洗浄して、可溶性タンパク質混入物を除去し、ヒストンH1アフィニティーマトリックスを提供した。固定化ヒストンH1を有するセルロースマトリックスを4mL~30mLのポリカーボネートカラムに(その体積の70~90%まで)装填した。
【0143】
実施例2:異なるタイプの循環cfDNAからのがん患者の血液の浄化
非結合循環cfDNAからの粒子結合タイプのcfDNA(すなわち、ヌクレオソーム結合cfDNAおよびエキソソーム結合cfDNA)の分離は次のように実施した:血液をクエン酸塩処理チューブに収集し、冷却遠心分離機を使用して2,000gで10分間遠心分離し、上清を収集することにより、進行胃腺がんならびに肺および肝臓への多発転移を有するがん患者(T4N2M1)の血漿を調製した。
【0144】
ヌクレオソーム結合cfDNAおよびエキソソーム結合cfDNAは、それぞれ国際公開第2007/049286号および米国特許第9364601号に記載されているように、抗ヒストン抗体ベースのアフィニティーマトリックスおよびレクチンベースのアフィニティーマトリックスを含む2つの連続アフィニティーカラムを使用して除去した。
【0145】
簡単に説明すると、抗ヒストン抗体アフィニティーマトリックスおよびカラムは次のように調製した:0.5mL(1体積)のストレプトアビジン被覆セファロースビーズ(平均ビーズサイズ:45~165μm、Pierce Biotechnology、米国)をグラスウール上に1.3体積(1.3mL)のポリスチレンカラムに詰めた。カラムを2mL(4体積)のPBSで平衡化した。ビオチン化抗ヒストン抗体(H2A.X;Santa Cruz Biotechnologies)の100μg/mL溶液1mL(体積)をカラムに添加してゲルベッドに入れた。ボトムキャップとトップキャップを連続して交換し、室温で2時間インキュベートした。インキュベーション後、2mL(4体積)の冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)でカラムを洗浄した。
【0146】
レクチンアフィニティーマトリックスは次のように調製した:ガランサス・ニバリス(スノードロップ)のレクチン2mL(1体積)、すなわち、pH9.5の0.1M NaHCO中の10mg/mLの濃度のGNA(Sigma-Aldrich)溶液を、2mL(1体積)のCNBr活性化アガロースビーズ(臭化シアン活性化Sepharose 6MB、6%アガロース、直径200~300μmのマクロビーズ、Sigma-Aldrich)に添加し、pH7.4~8.0で低温において一晩反応させた。反応が完了すると、レクチン結合アガロースを、pH7.2~7.4の滅菌冷リン酸緩衝生理食塩水(PBS)で十分に洗浄した。調製したレクチンアフィニティーマトリックスを0.6x6cmのポリスチレンカラムに移した。
【0147】
ヌクレオソーム結合cfDNAから浄化するために、血漿1.0mLを第1のアフィニティーカラム(抗ヒストンH2A抗体アフィニティーマトリックスを含む)に添加し、通過させた。次に、血漿を第2のアフィニティー(エキソソーム結合)カラム(レクチン[GNA]アフィニティーマトリックスを含む)に添加し、通過させた。
【0148】
あるいは、同じ量の患者血漿を、実施例1に記載のように調製した単一のヒストンH1アフィニティーカラム(固定化ヒストンH1.3と結合したセルロースビーズ)を通過させた。
【0149】
すべての血漿サンプルを、アフェレシスの前およびアフェレシスの完了後に、蛍光DNA色素染色を用いるゲル電気泳動により分析した。
【0150】
ヌクレオソーム結合DNAおよびエキソソームの除去前(レーンA)、抗ヒストンH2A抗体アフィニティーカラムおよびレクチンアフィニティーカラムを用いた連続アフィニティー浄化後(レーンB)、ならびにヒストンH1.3アフィニティーカラムを用いたアフィニティー浄化後(レーンC)の、がん患者の血漿からの循環cfDNAの電気泳動プロファイルを図1に示す。
【0151】
ヌクレオソーム結合循環cfDNAおよびエキソソームは血漿から除去されたが、真ん中のレーンに示されているサンプルには、100~1000塩基対の分子範囲内で視覚化されるかなりの量の循環cfDNAがまだ含まれていた。右のレーンに示すように、ヒストンH1.3アフィニティーカラムを通過後のサンプルでは、DNAは全く可視化されなかった。したがって、DNA結合タンパク質(ヒストンH1.3)を含むアフィニティーマトリックスを通した患者血漿のアフェレシス/浄化により、大部分の、ほぼすべての、またはすべてのヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNA、ならびにdsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む非結合cfDNAを患者血液から除去することができる。
【0152】
実施例3:ヌクレオソーム結合DNAおよびエキソソームから浄化された循環cfDNAは腫瘍成長を促進する
転移性非小細胞肺がん患者(NSCLC T3N2M+)から数日間連続して60mLの血漿を収集し、抗ヒストンH2A抗体アフィニティーカラムおよびレクチンアフィニティーカラムを使用して、したがって実施例2(抗ヒストン抗体を含むアフィニティーマトリックスおよびガランサス・ニバリス(スノードロップ)のレクチンを含むアフィニティーマトリックス)に記載のように、循環ヌクレオソーム結合cfDNAおよびエキソソームから浄化した。アフィニティーカラムの調製には、ポリカーボネート2.0x7.0cmのカラムを使用した。それぞれを、対応するマトリックスを使用してカラム体積の70~80%に装填した。古典的なフェノールクロロホルム抽出およびエタノール沈殿を使用して、浄化された血漿から残りの循環cfDNAを抽出した(Stirling, D. et al, DNA extraction from plasma and serum, In: Methods in Molecular Biology, vol. 226: PCR Protocols, Second Edition, Ed. by J.M.C. Bartlett and D. Stirling, Humana Press Inc., Totowa, NJ, 2003, 556 pages)。乾燥抽出cfDNAを-70℃で保存した。ヌクレオソーム結合循環cfDNAおよびエキソソーム結合循環cfDNAから浄化後の患者血漿から回収された残留DNAの総量は9.7μgであった。cfDNAをPBSに再溶解し、下記の動物実験に使用した。
【0153】
ヌクレオソームおよびエキソソームに結合していないcfDNAの腫瘍成長に対する効果を、Panc02/C57/BL6同所性モデル(Jiang Y-J, Lee C-L, Wang Q, et al. Establishment of an orthotopic pancreatic cancer mouse model. World Journal of Gastroenterology: WJG. 2014; 20(28):9476-9485)を用いて試験した。氷冷したMartigelに懸濁した1x10のPanc02細胞を各動物の膵尾部に注射した(0日目)。24匹の担腫瘍マウスを、各8匹ずつのマウスの3群に分けた。対照群のマウスには、10日目から20日目まで10日間、PBS(100μL;眼窩後静脈洞)を毎日1回注射した。群1のマウスには、100ngの上記のように浄化されたがん患者のcfDNAを毎日注射し、群2のマウスには、100ngの平均サイズ2,000塩基対以下のUltraPure(商標)Salmon Sperm DNA(Life Technologies)(非特異的対照として)を同じスケジュールおよび方法を用いて投与した。
【0154】
以下の表1は、治療動物および対照群における腫瘍重量に対するDNA注射の効果を要約する。23日目の研究終了時に腫瘍重量を測定した。
【表1】
【0155】
図2Aは、対照群マウスから切除した腫瘍を示す。図2Bは、ヌクレオソーム結合循環cfDNAおよびエキソソーム結合循環cfDNAから浄化されたNSCLC T3N2M+患者由来のcfDNAで処置したマウスから切除した腫瘍を示す。対照群の腫瘍は、はるかに小さく、密集しており、隣接臓器から十分に分離されており、壊死や出血はなかった。
【0156】
ヌクレオソーム結合循環cfDNAおよびエキソソーム結合循環cfDNAから浄化されたがん患者の血漿由来の循環cfDNAは、顕著な腫瘍形成特性(tumorigenic properties)を保持した。したがって、ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合CFDA、ならびにdsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む非結合cfDNAのすべてのレベルを下げることが有益となり得る。
【0157】
実施例4:ポリアミドアミンデンドリマーアフィニティーマトリックスおよびアフィニティーカラムの調製
PAMAMデンドリマーアフィニティーマトリックス(PDAM)およびPDAMを含むカラムは、Wang(Wang, Y., et al., New method for the preparation of adsorbent with high adsorption capacity, Chinese Science Bulletin 2005, Vol. 50, No. 21, pp 2432-2435)に従い、次のように調製した。セルロースビーズ(Macroporous Bead Cellulose MT 500、粒子サイズ100~250μm、Iontosorb、チェコ共和国)を98%エタノールと蒸留水で2回洗浄した。ビーズ1グラムを、1.0mLの(±)-エピクロロヒドリン(Sigma-Aldrich)と3.0mLの2.5M NaOHとの混合物とともにインキュベートした。活性化反応は、シェーカー内で40℃で2.5時間行った。活性化ビーズを蒸留水で十分に洗浄した。樹脂のエポキシ含有量は、チオ硫酸ナトリウムを塩化水素で滴定することにより、約0.31mmol/g乾燥ビーズと決定された。4.0mLの調製した湿潤活性化セルロースビーズを、アミノ末端(-NH)PAMAMデンドリマー(エチレンジアミンコア、第3.0世代、Sigma-Alrich)の20%溶液9.0mLで懸濁させ、24℃で5時間振盪した。修飾後、蒸留水で洗浄することにより未反応のPAMAMを除去し、ビーズ上の残りの未変換エポキシ基をエチルアミンと反応させることによりブロックした。次に、機能化アフィニティーマトリックスを0.1Mリン酸バッファーとMilliQ水で洗浄した。2.0~20.0mLの調製したアフィニティーマトリックスを、パイロジェンフリーのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)(0.5~3.0)cm x(1.0~10.0)cmのカラムに入れた(カラム体積の70~90%まで装填)。調製したアフィニティーカラムを121℃で30分間オートクレーブにより滅菌した。
【0158】
実施例5:異なるタイプの循環cfDNAからのがん患者および脳卒中患者の血漿の浄化
次に、虚血性脳卒中患者(脳卒中発症から24時間)と肺および肝臓に多発性転移を伴う進行胃腺がん(T4N2M1)のがん患者の両方の血漿サンプルの1.0mLアリコートを、実施例2に記載のように抗ヒストンH2A抗体アフィニティーカラムとレクチンアフィニティーカラム(抗ヒストンH2A抗体を含むアフィニティーマトリックスとガランサス・ニバリス(スノードロップ)のレクチンを含むアフィニティーマトリックス)の両方により、あるいは実施例4に記載のように調製したポリアミドアミンデンドリマーアフィニティー0.6x10.0cmカラム(PAMAMデンドリマーを結合させたセルロースビーズのアフィニティーマトリックス)単独により、浄化した。
【0159】
すべての血漿サンプルを、浄化前および浄化完了後、蛍光DNA色素染色を用いてゲル電気泳動で分析した。
【0160】
ヌクレオソーム結合cfDNAおよびエキソソームの除去前、抗ヒストン抗体アフィニティーカラムおよびレクチンアフィニティーカラムによるアフィニティアフェレシス後、ならびにポリアミドアミンデンドリマーアフィニティーカラムによるアフィニティー浄化後の、これら患者の血漿由来の循環cfDNAの電気泳動プロファイルを図3に示す。
【0161】
抗ヒストン抗体アフィニティーカラムおよびレクチンアフィニティーカラムを用いたがん患者の血漿の結果として生じる浄化により、粒子結合循環cfDNAの大部分が除去された;しかしながら、目に見える量のヌクレオソーム結合循環cfDNA、ならびにモノヌクレオソームサイズおよびサブヌクレオソームサイズ(~147塩基対長未満)の循環cfDNAが血漿中に残っていた。ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマーアフィニティーカラムを使用した血漿浄化は、がん患者の血漿からの循環cfDNAの完全な除去をもたらした。脳卒中患者では、ポリアミドアミンデンドリマーアフィニティーカラム(単一ステップとして使用)でのアフィニティー浄化により、血漿から実質的にすべてのタイプの循環cfDNAが、検出不能となる程度に十分に除去された。
【0162】
したがって、DNA結合ポリマーを含むアフィニティーマトリックスを用いて、ヌクレオソーム結合循環cfDNA、エキソソーム結合cfDNAおよび非結合cfDNA(dsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む)を含む実質的にすべてのタイプのcfDNAから患者の血漿を浄化できる。
【0163】
実施例6:ヌクレオソーム結合DNAおよびエキソソームから浄化された血漿のcfDNAは凝固促進活性を有する
米国特許第9,642,822号は、好中球NETsの形態の高分子量循環ヌクレオソーム結合cfDNAが、進行がんおよび急性血管イベントを有する患者において凝固促進活性を有することを開示する。脳卒中患者(発症から24時間後)、ならびに肺および肝臓に多発性転移を伴う進行胃腺がん(T4N2M1)のがん患者の血漿をサンプリングし、レクチンアフィニティーカラムおよび抗ヒストン抗体アフィニティーカラム(実施例2に記載のように調製(抗ヒストンH2A抗体を含むアフィニティーマトリックスとガランサス・ニバリス(スノードロップ)のレクチンを含むアフィニティーマトリックス))の両方により、あるいはポリアミドアミンデンドリマーアフィニティー1.0x5.0cmカラム(実施例4に記載のように調製)により浄化した。浄化したおよび未処理の血漿サンプルを、3,000gで20分間回転させ、0.22μmフィルターでろ過することにより、さらに線維素を除去した。サンプルを1.0mLプラスチックチューブに分注し、50℃の水浴で25分間振盪し、10,000g(10分間)で遠心分離した。上清を-80℃で保存し、その後で次のようにトロンビン生成アッセイで試験した:25μLの希釈(1:9)トロンボプラスチン(Sigma)と、25μLの0.9%NaClと、50μLの線維素除去された血漿の1:1希釈物(すべての試薬を0.9%NaClで希釈した)との混合物。
【0164】
トロンビン生成アッセイの試薬はすべて0.9%NaClで希釈した。25μLのトロンボプラスチンと、25μLの0.9%NaClと、50μLの試験すべき線維素除去された血漿の1:1希釈物との混合物をマイクロタイタープレートのウェルに添加し、10分間37℃に予熱した。次に、トロンビンの発色基質である1μMスペクトロザイム50μL、および30μM塩化カルシウム50μLを連続して添加した。自動化酵素結合免疫吸着アッセイプレートリーダー(Victor,Perkin Elmer)により、室温で1000秒および405nmでプレートを読み取った。すべての測定を3重で行った。この試験では、OD値が血漿の凝固促進活性(トロンビン生成)に比例する。
【表2】
【0165】
結果を表2に示す。ヌクレオソームおよびエキソソームに結合した循環cfDNAのみならず、非結合cfDNAもがんおよび急性血管イベントで凝固促進活性を有する。したがって、ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNAおよび非結合cfDNA(dsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む)を含むすべてのタイプのcfDNAのレベルを下げることは有益である。
【0166】
実施例7:抗DNA抗体アフィニティーマトリックスおよびカラムの調製
抗DNA抗体アフィニティーマトリックスおよびアフィニティーカラムは次のように調製した:5mLのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)活性化4%高度架橋アガロースの球状ビーズ、平均ビーズサイズ90マイクロメートル(NHS活性化Sepharose4 Fast Flow,GE Healthcare Life Sciences)を使用した。活性化マトリックスを冷(2~4℃)カップリングバッファー(0.2M NaHCO、0.5M NaCl、pH8.3)で2回洗浄した。1000μgの高親和性マウスモノクローナルIgM抗-ds+ssDNA抗体([49/4A1]、ab35576、Abeam)をカップリングバッファーに対して透析し、製造元の手順に従ってNHS活性化Sepharoseにカップリングさせた。カップリングバッファーおよびその後の0.1M酢酸バッファー(pH4.0)での3サイクルの洗浄により、過剰の未結合抗DNA抗体を除去した。洗浄したアフィニティーマトリックス4mLを5mLカラムに注ぎ、アフィニティーカラムを滅菌Tris-HClバッファー(pH7.4)で平衡化した。
【0167】
実施例8:DNAインターカレーターアフィニティーマトリックスおよびカラムの調製
Hoechst 33342アフィニティーマトリックスおよびアフィニティーカラムは次のように調製した:セルロースビーズ(ビーズサイズ100~250マイクロメートル、Sigma-Aldrich)をメタ過ヨウ素酸ナトリウムで酸化させた。10mLの水中のビーズ(3g、5mL)およびNaIO(0.1g、0.5mmol)の水懸濁液を室温で4時間振盪した。活性化されたビーズを収集し、1M重炭酸ナトリウム、0.1M塩酸および200mLの水で洗浄した。450mgの活性化セルロースビーズを、0.047mg/mLのHoechst 33342(Sigma-Aldrich)および0.4mg/mLのN-(3-ジメチルアミノプロピル)-N’-エチルカルボジイミド(EDC)を含有する1000mLのpH緩衝溶液と混合し、32℃で1時間一定の渦速度で反応させた。Hoechst 33342を固定化させたビーズを脱イオン水で3回洗浄して、未反応の色素を除去した。調製したDNAインターカレーターアフィニティーマトリックスを4mL体積のプラスチック(ポリカーボネート)カラムに入れた。カラムを4℃で保管した。
【0168】
実施例9:全身性炎症反応症候群(SIRS)および多臓器不全症候群(MODS)の患者の血液からの異なるタイプの循環cfDNAの分離
急性膵炎に続発する多臓器不全(多臓器不全症候群、MODS)を伴う全身性炎症反応症候群(SIRS)と診断された集中治療室(ICU)に入院した患者から血漿を採取した。治療的血漿交換をレスキュー療法として行った。取り出された患者血漿1mLのアリコートを、実施例2に記載のレクチンアフィニティーカラムと抗ヒストン抗体アフィニティーカラム(抗ヒストン抗体を含むアフィニティーマトリックスとガランサス・ニバリス(スノードロップ)のレクチンを含むアフィニティーマトリックス)の両方により、あるいは実施例8に記載のDNAインターカレーターアフィニティーカラム(DNAインターカレーターアフィニティーマトリックスであるHoechst 33342結合セルロースビーズ)により浄化した。すべての血漿サンプルを、浄化前および浄化後に、蛍光DA色素染色を用いてゲル電気泳動で分析した。
【0169】
図4に示すように、SIRS患者の血漿は、かなりの量の循環cfDNAを含んでおり、蛍光DNA色素で染色すると強い蛍光シグナルが生じた。抗ヒストン抗体アフィニティーカラムおよびレクチンアフィニティーカラムを用いたアフィニティー浄化により、ヌクレオソーム結合循環cfDNAが除去された;しかしながら、一定量のヌクレオソーム結合循環cfDNAおよび循環サブヌクレオソームcfDNA(147塩基対未満の長さ)が血漿中に残存した。Hoechst 33342アフィニティーカラムによるアフィニティー浄化により、循環サブヌクレオソームcfDNAは除去されたが、一定量のヌクレオソーム結合循環cfDNAがまだ存在していた。したがって、発明者らは、異なるカラムを用いる連続浄化を試験した:抗ヒストン抗体アフィニティーカラムとレクチンアフィニティーカラムの連続使用に関して実施例2に記載されているやり方で、患者血漿のアリコート1mLを、Hoechst 33342アフィニティーカラム、続いて抗dsDNA抗体アフィニティーカラムにより連続的に浄化した。蛍光DNA色素染色を用いるゲル電気泳動により血漿をさらにチェックしたが、循環cfDNAは検出されなかった。
【0170】
したがって、本発明の2つのアフィニティーマトリックスを含むアフィニティーマトリックスによる浄化は、患者の体の血液または血漿から、ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNAおよび非結合cfDNA(dsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む)を含む、患者の血液中の実質的にすべてのタイプのcfDNAを除去することができる。
【0171】
実施例10:ヌクレオソーム結合DNAおよびエキソソームから浄化された血漿の循環cfDNAは炎症誘発性活性を有し、敗血症における臓器機能不全に寄与する
急性膵炎に続発する多臓器不全症候群(MODS)を伴う全身性炎症反応症候群と診断された集中治療室(ICU)に入院した患者から血漿を採取した。治療的血漿交換をレスキュー療法として行った。取り出された患者血漿100mLをレクチンアフィニティーカラムおよび抗ヒストン抗体アフィニティーカラム(実施例2に記載のもの、すなわち、抗ヒストン抗体を含むアフィニティーマトリックスおよびガランサス・ニバリス(スノードロップ)のレクチンを含むアフィニティーマトリックス)の両方により2回浄化して、ヌクレオソーム結合循環cfDNAおよびエキソソーム結合循環cfDNAからの完全な浄化を行った。実施例3に記載されているように、ヌクレオソームおよびエキソソームから浄化された血漿から残りの循環cfDNAを抽出した。(ヌクレオソーム結合循環cfDNAおよびエキソソーム結合循環cfDNAから前に浄化された患者の血漿から回収された)残留DNAの総量は約50μgであった。次に、DNAをpH7.2のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に再懸濁し、以下に説明するように動物実験に使用した。
【0172】
10週齢のC57/BL6雄マウス8匹に、抽出されたcfDNAを1時間間隔で3回静脈内注射した。動物は、採血のために最後のDNA注入の4時間後に安楽死させた。
【0173】
血漿クレアチニンレベルは酵素アッセイにより測定した。血漿TNF-α、IFN-γ、およびIL-12レベルは蛍光磁気ビーズベースイムノアッセイ(Bio-Rad Laboratories,米国)により測定した。結果を以下の表3に要約する。
【表3】
【0174】
したがって、ヌクレオソーム結合DNAおよびエキソソームから浄化された血漿のcfDNAは強い炎症誘発性活性を有し、臓器機能を損なわせる。
【0175】
実施例11:ヌクレオソーム結合DNAおよびエキソソーム結合DNAから浄化されたが粒子フリーDNAから浄化されていない患者血漿の循環cfDNAはTLR9活性化を引き起こす
TLR9受容体の活性化は、全身性宿主炎症反応、臓器不全、がん浸潤および転移、脳卒中における神経損傷、自己免疫、子癇、および老化(加齢)に伴う炎症性状態につながる免疫の年齢依存性調節解除の重要な要素として最近認識されている。
【0176】
患者は、33歳の男性で、急性骨髄性白血病に罹患し、HLA適合骨髄移植(BMT)を受け、その後に標準的な免疫抑制および抗生物質予防が行われた。BMTの約1ヶ月後、患者はGVHDグレードIIIと一致する紅斑性発疹および重度の下痢を発症した。患者の入院時に血漿サンプルを採取し、続いて実施例2に記載のように抗ヒストンH2A抗体アフィニティーカラムおよびレクチンアフィニティーカラム(抗ヒストン抗体を含むアフィニティーマトリックスおよびガランサス・ニバリス(スノードロップ)のレクチンを含むアフィニティーマトリックス)で浄化するか、あるいは実施例1に記載のように調製されたヒストンH1.3アフィニティーカラム(ヒストンH1.3を結合させたセルロースビーズのアフィニティーマトリックス)で浄化した。
【0177】
HEK-Blue(商標)hTLR9レポーター細胞(Invivogen)を培地ですすいで培養フラスコから剥がし、細胞を製造元のプロトコルで指定された細胞密度に再懸濁した。ウェルあたり180μLの細胞懸濁液を、60μLの未処理患者血漿、あるいはレクチンアフィニティーカラムと抗ヒストン抗体アフィニティーカラムの両方で浄化したまたはH1.3アフィニティーカラムで(単一ステップとして)浄化した患者血漿で、24時間(37℃、5%CO)刺激した。インキュベーション後、製造元の説明書に記載されていようにQuanti-Blue検出媒体を使用して分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)の分析を行った。マイクロプレートリーダーを使用して、650nmでの吸光度の検出を測定した。
【表4】
【0178】
TLR9活性化の定量化は、620nmでの光学密度(OD)を読み取ることで行った(N=3)。結果を表4に示す。驚くべきことに、エキソソーム結合循環cfDNAおよびヌクレオソーム結合循環cfDNAの除去は、患者の血漿によるTLR9活性化をかなり限定的に防いだのに対して、dsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む実質的にすべてのタイプの粒子結合および非結合cfDNAの除去は、患者の血漿によるTLR9活性化をほぼ完全に防いだ。
【0179】
実施例12:ハイパーブランチポリ-L-リジンアフィニティーマトリックス(PLLAM)およびアフィニティーカラムの調製
ポリ-L-リジン(PLL)などのカチオン性ポリアミノ酸は、プラスミドDNAをコンパクトなナノ構造に凝縮するのに優れていることが知られており、in vitroおよびin vivoのDNA結合に使用されている。
【0180】
カチオン性DNA結合ポリマー、すなわちハイパーブランチポリ-L-リジン(HBPL)は、Kadlecova, Z. et al, A comparative study on the in vitro cytotoxicity of linear, dendritic and hyperbranched polylysine analogs, Biomacromolecules, v. 13 (2012) pp 3127-3137)に記載のように調製した:27.45gのL-リジン一塩酸塩(試薬グレード、≧98%、Sigma-Aldrich、米国)を55mLのMilli-Q水に溶解し、8.4gのKOHで中和した。次いで、その溶液を窒素気流下で48時間、150℃に加熱した。次に、過剰な塩および残存L-リジンを除去するために、重合生成物を透析膜チューブでMilli-Q水に対して透析した(Snakeskin Dialysis Tubing,Thermo Fisher Scientific,スイス、分子量カットオフ:3000g/mol)。透析産物を凍結乾燥し、その後、Sephadex G75ゲルろ過カラム(GE Healthcare Life Science、スイス)で分画した:カラムに0.01M HCl中の2mg/mLのHBPL溶液50mLをロードし、続いて0.01M HClで溶出した。20mLの画分を収集し、凍結乾燥した。重量平均分子量が21000~32000の画分(サイズ排除クロマトグラフィーで測定)を収集し、凍結乾燥した。凍結乾燥画分を再蒸留水に溶解し、0.1M NaHCOに対して透析し、アフィニティーマトリックスの調製に使用した。固定化HBPLを含むアガロースマトリックスは、次のように従来の方法で調製した:臭化シアン活性化Sepharose 4B(湿重量10g、Sigma)を10mLの0.1M NaHCOに懸濁し、10mLの21000~32000 HBPL画分(0.1M NaHCO中5mg/mL)と混合し、4℃で24時間攪拌した。調製されたHBPL Sepharose(ビーズ懸濁液1mLあたり4mgのHBPL)をポリカーボネートカラム(1.0x12cm)に注ぎ、750mLの0.1M NaHCO、750mLの0.5M NaClで洗浄し、pH9.2に調整した。カラムをpH7.5の0.05M Tris-HClバッファーで平衡化した。調製されたハイパーブランチポリ-L-リジンアフィニティーマトリックス(PLLAM)を含むアフィニティーカラムを4℃で保存した。
【0181】
実施例13:神経変性疾患の患者の血液からの異なるサブタイプの循環cfDNAの分離
神経変性障害の患者からの循環cfDNAは、血液脳関門(BBB)を通過し、神経細胞死を誘発する可能性がある。デオキシリボヌクレアーゼ酵素を使用すると、この作用を取り除くことができる。国際公開第2016/190780号を参照のこと。神経細胞死に対する異なるサブタイプの循環cfDNAの影響を調べて、ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNA、ならびにdsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む非結合cfDNAのすべてからの血液の浄化が神経細胞死を防ぐことができるか否かを確認するために、以下の実験を行った。
【0182】
神経細胞培養のために、胎生(e)15~17日のSprague Dawleyラットの胚から大脳皮質を取り出した。細針を使用して皮質外植体を約200~400μmの切片に切り、製造元の指示に従ってPapain Dissociation System(Worthington Biochemicals)を用いて分散させ、氷冷最小必須培地(Gibco)においてさらに維持した。最初にポリ-D-リジン(PBS中10μg/mL)、続いてラミニン(PBS中10μg/mL)(Gibco)でコーティングした13mm径のガラス製カバースリップ上にニューロンを播き、1%(v/v)抗生物質-抗真菌薬(Gibco)を含むNeurobasal培地中において、加湿8%CO(v/v)雰囲気下において37℃で24~48時間培養した。
【0183】
最初の培養期間の後、細胞培養培地を以下の血漿サンプルのうちの1つで2倍(v/v)に希釈し、さらに24時間培養した:(a)20歳の健康なドナーの血漿、(b)急速に進行したアルツハイマー病(AD)の患者の血漿、(c)5μg/mLのDNase I(PUlmozyme,Genentech)で6時間処理した同じAD患者の血漿、(d)レクチンアフィニティーカラムおよび抗ヒストンH2A抗体アフィニティーカラム(実施例2に記載のように調製、すなわち抗ヒストンH2A抗体を含むアフィニティーマトリックスおよびガランサス・ニバリス(スノードロップ)のレクチンを含むアフィニティーマトリックス)の両方を通過させた後の同じAD患者の血漿、および(e)ヒストンH1.3アフィニティーカラム(実施例1に記載のようにマトリックスを調製、すなわち、ヒストンH1.3を結合させたセルロースビーズのアフィニティーマトリックス)を通過させた後の同じAD患者の血漿;0.8x9cmポリカーボネートカラムに装填(カラム体積の80%まで)し、対応するカラムを通過する血漿サンプルの体積は約2.0mLであった。
【0184】
細胞培養実験で使用された血漿サンプルからの循環cfDNAの電気泳動プロファイルを図5に示す。
【0185】
健康なドナーの血漿では、モノヌクレオソームの形態の限られた量のヌクレオソーム結合循環cfDNAのみが検出された。AD患者の血漿では、モノヌクレオソームおよびオリゴヌクレオソームの形態の高レベルのヌクレオソーム結合循環cfDNAが検出された。AD患者の血漿をDNase I酵素で処理すると、オリゴヌクレオソームおよびモノヌクレオソーム画分中のDNA含有量が減少したが、サブヌクレオソーム画分(~147塩基対未満の長さ)におけるDNAは顕著に増加した。レクチンアフィニティーカラムおよび抗ヒストンH2A抗体アフィニティーカラムで浄化したAD患者の血漿は、ヌクレオソーム結合循環cfDNAを含まず、サブヌクレオソーム(すなわち、非結合)cfDNAのみを含んでいた。ヒストンH1.3アフィニティーカラム(単一ステップとして)で処理されたAD患者の血漿は、循環cfDNAを含んでいなかった。
【0186】
アポトーシス細胞死マーカーのカスパーゼ3の誘導を、血漿サンプルへの24時間の暴露後に培養分散皮質ニューロンで測定した。細胞を4%(w/v)パラホルムアルデヒド(PFA)中に固定し、PBSで1:500に希釈した抗切断カスパーゼ3抗体(アブカム(Abcam))と共に1時間インキュベートした。細胞を洗浄し、PBS中のヤギ抗ウサギポリクローナルAlexa Fluor488抗体(Invitrogen)と共に1時間インキュベートし、その後に洗浄および計数した。
【表5】
【0187】
結果を表5に示す。したがって、ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNAおよび非結合cfDNA(dsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む)を含む実質的にすべてのタイプのcfDNAからの血液の浄化は、ヌクレオソーム結合cfDNAおよびエキソソーム結合cfDNAからの単純な浄化よりも実質的に高い程度で神経細胞死を防ぎ、さらにはおそらくDNA酵素分解の副産物の放出またはDNase Iに対する循環cfDNAの感度の低さのため、DNase I酵素による血漿中の循環cfDNAの切断よりもさえ良好に神経細胞死を防ぐ。
【0188】
実施例14:内因性デオキシリボヌクレアーゼの再活性化
デオキシリボヌクレアーゼ酵素(DNase)は、循環中の高分子量DNAの分解を担う主要な酵素である。多数の研究により、デオキシリボヌクレアーゼ活性が、がん、転移がん、自己免疫疾患、敗血症、不妊などの、血液中の循環cfDNAの上昇を伴う特定の状態で抑制されることが示されている(Tamkovich SN, Circulating DNA and DNase activity in human blood. Ann N Y Acad Sci. 2006 Sep; 1075:191-6; Martinez-Valle, DNase 1 activity in patients with systemic lupus erythematosus: relationship with epidemiological, clinical, immunological and therapeutical features. Lupus. 2009 Apr; 18(5): 418-23; EP20070827224; Travis J Gould, Cellular and Biochemical Properties of Cell-Free DNA: A Prognostic Marker In Severe Sepsis Patients, Blood 2011,118:2169)。
【0189】
ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNA、ならびにdsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む非結合cfDNAの減少が血漿中のDNase I活性にどのように影響するかを評価するために、以下の実験を実施した。Goldstein(Goldshtein, H. et al., A rapid direct fluorescent assay for cell-free DNA quantification in biological fluids, Annals of Clinical Biochemistry, Vol 46, Issue 6, pp. 488-494)に記載の方法を用いて、血漿中のcfDNAを測定した。SYBR(登録商標)Gold Nucleic Acid Gel Stain(Invitrogen)を最初にジメチルスルホキシドで1:1000に希釈し、次にリン酸緩衝生理食塩水で1:8に希釈した。10μLの血漿サンプルを96ウェルプレートに添加した。40μLの希釈Sybr Goldを各ウェルに加え(最終希釈1:10,000)、96ウェル蛍光計で535nmの発光波長と485nmの励起波長で蛍光を測定した。
【0190】
DNase Iウェスタンブロットは、血漿サンプルを10%SDS-PAGEゲルを使用して分離し、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)ブロッティング膜に転写し、ヤギ抗ヒトDNase I抗体(Santa Cruz Biotechnology)とインキュベートして行った。HRP標識抗ヤギIgGとのインキュベーション後、SuperSignal Chemiluminescent Substrate(Pierce)を使用して結合を可視化した。
【0191】
血清デオキシリボヌクレアーゼ活性は、製造元のプロトコルに従ってORG590(Orgentec)を使用して測定した。検出は、620nmの補正波長を用いて450nmでマイクロプレート光度計(Multiscan FC)を使用して行った。
【0192】
乳がんで、肺、肝臓および縦隔に多発性転移を有する(T4N3M1)56歳の女性患者から血液を採取した。5mLの血漿アリコートを、0.5mLのヒストンH1.3アフィニティーマトリックスを含む1mLのポリカーボネートカラム(0.5x5cm)を通す複数回のランにかけた:各カラムランの後に、循環cfDNAの電気泳動プロファイルの評価、DNaseウェスタンブロット、ならびにデオキシリボヌクレアーゼ活性および循環細胞外DNA含有量の定量を行った。結果を図6に要約する。
【0193】
循環cfDNAプロファイルの電気泳動評価では、カラムランの回数の増加とともに、すべての画分の含有量の連続的な減少が示された。その観察は、血漿中の循環cfDNAの直接定量によって追認された。ウェスタンブロットにより検出される同程度の量のDNase I酵素が患者血漿中に最初に存在していた。しかしながら、DNase Iの酵素活性は大きく抑制されており、循環cfDNAの量が約1/2に減少した4カラムランの後でのみ有意になった。
【0194】
したがって、前記哺乳動物におけるcfDNAの全体的な循環レベルが少なくとも50%低下する本発明によるアフェレシスは、内在性DNase I酵素の活性を再活性化させる可能性があり、これは循環cfDNAレベルの低下を必要とする患者に有益である。
【0195】
約5000ng/mLの循環cfDNAの最高報告レベル(一部の進行がん、敗血症患者、および外傷患者で報告されている)に基づき、30mgの結合能力を有するアフィニティーカラムまたはアフィニティーカラムの組合せは、ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNA、ならびにdsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む非結合cfDNAのすべてからの患者血漿のほぼ完全な浄化をもたらすことができる。
【0196】
実施例15:抗ヌクレオソーム抗体アフィニティーマトリックス(AAM)を含むアフィニティーカラムの調製
M. J. Losman, Monoclonal autoantibodies to subnucleosomes from a MRL/Mp (-)+/+ mouse. Oligoclonality of the antibody response and recognition of a determinant composed of histones H2A, H2B, and DNA. J Immunol March 1, 1992, 148 (5) 1561-1569)に記載の方法に従い、MRL/Mp(-)+/+マウスを使用して、マウスモノクローナルヌクレオソーム特異的抗体を調製した。ここでAN-1およびAN-44と称される調製されたモノクローナル(IgG)抗体(Mabs)は、ヌクレオソームに選択的に結合するがコアヒストンやDNAなどのヌクレオソームの成分には結合しないそれらの能力に基づき選択された(Kees Kramers, Specificity of monoclonal anti-nucleosome auto-antibodies derived from lupus mice, Journal of Autoimmunity, V. 9, Issue 6, 1996, P. 723-729)。ヌクレオソーム、ならびにヌクレオソームのヒストンおよび非ヒストン成分に対するAN-1およびAN-44の相対的親和性を以下の表6に要約する。
【表6】
【0197】
NHS活性化Sepharose High Performance(GE Healthcare)をあらかじめパックした1mLのHiTrap NHS活性化HPカラムをアフィニティーマトリックス/カートリッジの調製に使用した。製造元の手順に従って200μgのAN-1をNHS活性化Sepharoseに結合させた。
【0198】
上記の表に示された親和性データに基づき、ANAMがヌクレオソーム結合循環cfDNAのみに結合し、dsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む非結合cfDNAには結合しないことは明らかである。
【0199】
したがって、dsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む非結合cfDNAの結合を確保するために、動物実験では2つの連続したカラムを用いた。抗ヌクレオソーム抗体アフィニティーマトリックス(ANAM)を含む1つのカラムは、この実施例で上述したように調製した。ポリアミドアミンデンドリマーアフィニティーマトリックスを含む第2のカラムは、実施例4に記載のように調製した。
【0200】
実施例16:アフェレシス処置
全身麻酔下(キシラジン0.8mgおよびケタミン4mgの腹腔内注射)で実験ラットの大腿静脈および頸静脈に慢性静脈カテーテルを挿入した。試験中、カテーテルをヘパリン添加生理食塩水で週3回フラッシュした。各アフェレシス処置の前に、ヘパリンのボーラス投与(90IU/100g体重(b.w.))を行った。体外システムをヘパリン添加生理食塩水で完全に満たし、その後、カテーテルの末端を体外システムに接続した。
【0201】
動物アフェレシス実験のために、本明細書に記載のアフィニティーカラムに、これら調製されたアフィニティーカラムを体外/アフェレシスシステムの第2(血漿)の回路にさらに組み込むための入口と出口が取り付けられた。
【0202】
システムの第1の回路では、血漿分離器(Saxonia medical,Radeberg,ドイツ)を介して動物(大腿静脈)からポンプ(ロータリーペリスターミニポンプ,Fisher Scientific)で血液が送り出され、そして頸静脈に挿入された静脈カテーテルによって動物に戻された。分離された血漿は、(第2のロータリーペリスターミニポンプに支援されて)第2の回路に入り、(本明細書に記載のアフェレシス処置の具体例に従い)アフィニティカートリッジを通過し、頸静脈に挿入されたカテーテルに接続されたポリマーラインを介して動物の体に戻された。
【0203】
実施例17:敗血症および敗血症性腎損傷のアフェレシス治療
盲腸結紮穿刺(CLP)の方法による古典的な敗血症誘発モデルを確立した。体重350~400gの雌のSprague-Dawley(SD)ラットを使用した。動物をペントバルビタールナトリウムで麻酔した(50mg/kg腹腔内投与)。
【0204】
約1.5cmの腹部正中切開を行った。盲腸腸間膜を切開して盲腸を露出させた。次に、腸の連続性が維持されるように、盲腸を末端と回盲弁の間で結紮した。次に、結紮の中央部分での21ゲージの針を用いた単一の貫通穿刺により盲腸に穴を開けた。結んだ部分を軽く押して、少量の糞便が腸の表面に押し出されるようにした。盲腸を腹腔に戻した。筋肉層には吸収性縫合糸を用い、皮膚には外科用ステープルを用いて、外科創傷を層ごとに縫合した。手術後、ラットに10mL/kgの温かい注射用0.9%塩化ナトリウムを注射し、回復後、処置によって動物をランダムに3つの群(群1~3;各群6匹)に分けた。
【0205】
実施例16に記載のようにアフェレシス治療を実行した。アフェレシス処置を2回実行した:1日目(CLP後24時間)および3日目(CLP後72時間)。6匹のラットは、実施例15で指定されたように調製された抗ヌクレオソーム抗体アフィニティーマトリックス(ANAM)を含むカラム/カートリッジを使用したアフェレシス処置を受け、6匹のラットは、実施例4で指定されたように調製されたPAMAMデンドリマーアフィニティーマトリックス(PDAM)を含むカラム/カートリッジを使用したアフェレシス処置を受けた。6匹のラット(陰性対照群)は、対応する量の未修飾支持体を装填したカートリッジを用いたアフェレシス処置を受けた。各アフェレシス処置の前に、血清クレアチニンおよび血中尿素窒素(BUN)レベルをRoche Reflotron Plus(Roche Diagnostics)で測定することにより、急性腎障害(腎機能)のレベルを評価した。従来のTHP(Triton-Heat-Phenol)法(Breitbach et al., PLoS ONE, 2014, 9(3):e87838)を用いて、100μLの血漿サンプルから循環cfDNAを抽出した。製造元の指示に従って、PicoGreenアッセイ(Molecular Probes、オランダ)でDNAを定量し、cfDNAの変化を、ベースラインすなわち最初のアフェレシス処置前のレベルに対する、DNAレベルの割合(%)として表した。陰性対照群のために、対応する量の非修飾支持体(Macroporous Bead Cellulose MT 500、粒径100~250μm、Iontosorb、チェコ共和国、98%エタノールおよび再蒸留水で2回洗浄)を含むカラム/カートリッジを調製した。生存率(CLPの120時間後)を、敗血症の治療効果の主要パラメータとして想定した。動物の割り当ておよび結果を以下の表7に示す。
【表7】
【0206】
結果は、PDAMアフェレシスデバイスが、ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNA、ならびに非結合cfDNA(dsDNA、ssDNA、オリゴヌクレオチドを含む)を含む実質的にすべてのタイプのcfDNAを捕捉でき、より優れた治療効果をもたらし、敗血症および敗血症性腎臓損傷における循環cfDNAのレベルをより効果的に低下させたことを示す。
【0207】
実施例18:化学療法関連毒性徴候のアフェレシス治療
18匹の体重300~350gの雌Sprague-Dawley(Sd)ラットを、実施例16に記載のようにアフェレシス処置のために準備し、パクリタキセル(タキソール(Taxol)、Bristol-Myers Squibb S.r.L..)を10mg/kg用量で単回静脈内ボーラス注射を行った。アフェレシス処置は、パクリタキセル注射の4時間後に開始し、12時間継続した;6匹のラットは、抗ヌクレオソーム抗体アフィニティーマトリックス(ANAM)を含むカラム/カートリッジを使用したアフェレシス処置を受け、6匹のラットは、ハイパーブランチポリ-L-リジンアフィニティーマトリックス(PLLAM)を含むカラム/カートリッジを使用したアフェレシス処置を受けた。6匹のラット(陰性対照)は、対応する量の未修飾支持体(Sepharose 4B)を装填したカートリッジを使用したアフェレシス処置を受けた。
【0208】
実施例17に記載のように循環cfDNAレベルを定量し、示した(cfDNAは、ベースラインに対するDNAレベルの割合(%)として表した)。生存率(ボーラス投与の24時間後)を、治療効果の主要パラメータとして想定した。動物の割り当ておよび結果を以下の表8に示す。
【表8】
【0209】
結果は、PLLAMアフェレシスデバイスが、ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNA、ならびに非結合cfDNA(dsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む)を含む実質的にすべてのタイプのcfDNAを捕捉でき、より優れた保護/治療効果をもたらし、化学療法薬で毒された動物における循環cfDNAのレベルをより効果的に低下させたことを示す。
【0210】
実施例19:ヌクレオソーム結合DNAおよびエキソソーム結合DNAを捕捉する1つのカートリッジと、dsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む非結合cfDNAを捕捉する別のカートリッジとを用いた血漿cfDNAの浄化/アフェレシス
血漿cfDNAレベルの測定のために、修正HTP法(Xue, X., et al. Optimizing the yield and utility of circulating cell-free DNA from plasma and serum, Clinica Chimica Acta, V.404 (2009), pp. 100-104)を用いて500μLの血漿サンプルからcfDNAを抽出し、製造元の指示に従ってPicoGreenアッセイ(Molecular Probes、オランダ)を使用してそれを定量した。
【0211】
cfDNAがPicoGreenアッセイによりサンプル中に検出されなかった場合は、本明細書において上述した方法で、アガロースゲルでのDNA電気泳動によってサンプル中のcfDNAの不在をさらに確認した。
【0212】
アフェレシス/浄化処置のために、血漿サンプルを対応するアフィニティーカラムに徐々に添加して通過させた。
【0213】
67歳の敗血症性ショック患者から得た2.0mLの血漿サンプルを、ANAMアフィニティーカラムおよびレクチンアフィニティーカラムを通して浄化した。ANAMアフィニティーカラム(ヌクレオソーム結合cfDNAを捕捉する)は、1mLのHiTrap NHS活性化HPカラム(実施例15に記載)に基づき調製し、レクチンアフィニティーカラム(エキソソーム結合cfDNAを捕捉する)は、実施例2(ガランサス・ニバリス[スノードロップ]のレクチンを含むアフィニティーマトリックス)に記載のように調製した。
【0214】
患者の血漿中の最初のcfDNAレベルは1150ng/mLであり、アガロースゲルでのDNA電気泳動により実質的にすべてのタイプのcfDNAの顕著な存在が可視化された(図7、レーンAを参照)。ANAMアフィニティーカラムとレクチンアフィニティーカラムの組合せを通す1回目のランの後の血漿中のcfDNAのレベルは、350ng/mLに低下した。部分的に浄化された患者血漿を、新鮮なANAMアフィニティーカラムとレクチンアフィニティーカラムの同じ組合せを通す2回目のランにさらにかけた。2回目のランの後の血漿中のcfDNAのレベルは変化しないままであり、蛍光DNA色素染色を用いたアガロースゲルでのDNA電気泳動により可視化される目に見える量の750kDaまでの分子量を有する非ヌクレオソーム起源のcfDNAを有していた(図7、レーンCを参照)。
【0215】
この実験により、ANAMアフィニティーカラムおよびレクチンアフィニティーカラムがcfDNAから患者血漿を完全に浄化できないのは、AMAMアフィニティーカラムとレクチンアフィニティーカラムの組合せの全体的な結合能力ではなく、患者血漿から非ヌクレオソームまたは非エキソソーム起源のcfDNAを捕捉できないことに関連していることが明らかとなった。これを確認するために、実施例7に記載のように調製した抗DNA抗体アフィニティーカラム(高親和性マウスモノクローナルIgM抗-ds+ssDNAを結合させたアガロースのマトリックス)を通してサンプルをさらに浄化した。1回の浄化の実行後、患者血漿中のcfDNAのレベルは、PicoGreenアッセイで測定して検出不能となった。この結果は、アガロースゲルでのDNA電気泳動後に目に見えるDNA物質が不在であることによってさらに確認された。
【0216】
したがって、1つのカラム/カートリッジがヌクレオソーム結合DNAおよびエキソソーム結合DNAを捕捉し、別のカラム/カートリッジがdsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む非結合cfDNAを捕捉する2つの連続アフィニティーカラム/カートリッジの使用は、すべてのタイプの循環cfDNAからの患者血液の浄化/アフェレシスに非常に有効である。
【0217】
同じ患者からの別の2mLの血漿サンプルを、DNAインターカレーターアフィニティーカラム(実施例8に記載のように調製、すなわち、Hoechst 33342と結合させたセルロースビーズ)および抗DNA抗体アフィニティーカラム(実施例7に記載のように調製、すなわち、高親和性マウスモノクローナルIgM抗DNA抗体と結合させたアガロースのマトリックス)により浄化した。DNAインターカレーターアフィニティーカラムと抗DNA抗体アフィニティーカラムの組合せを通す1回目のランの後の血漿中のcfDNAレベルは475ng/mLに低下し、様々な起源のcfDNAがアガロースゲルでのDNA電気泳動によって視覚化された(図7、レーンB)。この部分的に浄化された患者の血漿を、新鮮なDNAインターカレーターアフィニティーカラムと抗DNA抗体アフィニティーカラムの同じ組合せを通す2回目のランにさらにかけた。患者血漿での2回目のランの後の血漿中のcfDNAレベルは、PicoGreenアッセイで測定して検出不能となった。この結果は、蛍光DNA色素染色を用いたアガロースゲルでのDNA電気泳動後に目に見えるDNA物質が不在であることによってさらに確認された。
【0218】
したがって、本発明に従い、実質的にすべてのタイプのcfDNA(ヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNA、ならびに非結合cfDNA[dsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む]を含む)に結合するマトリックスを含むカラム/カートリッジの組合せを使用することにより、著しく大量のcfDNAの捕捉が可能となる。
【0219】
実施例20:急性膵炎のラットの血液からcfDNAを除去するための門脈からの血漿の浄化/アフェレシス
実験では、250~350gの雄のSprague-Dawleyラット6匹を使用した。すべての外科的処置は、0.8mgのキシラジンと4mgのケタミンの腹腔内注射による全身麻酔下において加熱手術台で行われた。
【0220】
急性膵炎は次のように誘発した。開腹術中に、ファーター乳頭部に24G Abbocath(登録商標)-T静脈内注入カニューレを使用して経十二指腸カニューレを挿入した。グリシルグリシン-NaOHバッファー溶液(10mmol/L、pH8.0、37℃)中の滅菌グリコデオキシコール酸0.5mLの圧力モニター注入の前に、総胆管をクランプし、胆汁と膵液をカニューレから排出させた。注入直後に、クランプを外すことにより、肝十二指腸間の胆汁の流れを回復させた。8.0ポリプロン漿膜縫合糸を使用して、十二指腸の穿刺穴を注意深く閉じた。
【0221】
ラット1、2および3において腹部を閉じた後、実施例16に記載のように、慢性静脈カテーテルを大腿静脈および頸静脈に挿入した。
【0222】
ラット4、5、および6には、Strubbe(Strubbe J.H. et al, Hepatic-portal and cardiac infusion of CCK-8 and glucagon induce different effects on feeding. Physiol Behav 46: 643-646, 1989)に記載されているように、肝臓の8mm尾側の肝門脈に門脈カテーテルを埋め込んだ。
【0223】
実施例4に記載のように調製されかつポリプロピレン入口および出口を備えたPDAMアフィニティーカートリッジを使用して、実施例16に記載のようにアフェレシス処置を実行した。1日目~3日目の間、毎日アフェレシス処置を実行し、各アフェレシス処置の時間は12時間であった。
【0224】
生存率(膵炎の誘発から96時間後)を治療効果の主要パラメータとして想定した。ラットのcfDNAおよび細菌起源のcfDNA(すなわち、細菌負荷)の定量化のために、製造元の指示に従ってQIAamp DNA Mini Kitを使用して、200μLのラット血漿サンプルから総cfDNAを単離した。ABI PRISM 7700 Sequence Detector(Applied Biosystems)およびTaqMan Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems)を製造元のプロトコルに従って使用して、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により血漿サンプルのcfDNA濃度を測定した。細菌由来のcfDNAの定量化のために、細菌16SrDNAの保存領域用に特異的プライマーおよびプローブを設計した:フォワードプライマー:5’-TCCTACGGGAGGCAGCAGT-3’、リバースプライマー:5’-GGACTACCAGGGTATCTAATCCTGTT-3’、およびプローブ:(6-FAM)-5’-CGTATTACCGCGGCTGCTGGCAC-3’-(TAMRA)(参照: Mangala, A.; Nadkarni, A. Determination of bacterial load by real-time PCR using a broad-range (universal) probe and primers set. Microbiology, 2002, vol. 148, pp.257-266)。TaqMan Gene Expression Assayラットβ-アクチンRn00667869_m1 (Applied Biosystems)をラットゲノムcfDNAの増幅に使用した。
【0225】
生存/転帰、ならびに頸静脈から採取した血漿中のラットβ-アクチン遺伝子および細菌16SrDNAの各PCRの結果(Ct、すなわち閾値サイクル値)を表9に示す。
【表9】
【0226】
結果は、アフェレシスのために血液を門脈から本発明によるアフェレシスデバイスに迂回/取り出すことにより、(大腿静脈、すなわち非局所静脈からの血液の迂回と比較して)急性膵炎のラットにおいて、より高い生存およびより効果的なcfDNA(細菌起源のcfDNAを含む)からの血液の浄化がもたらされることを示す。
【0227】
したがって、cfDNAの放出の原因となる病理学的プロセス(腫瘍成長、敗血症性または無菌性炎症、細菌DNA放出)が、主に門脈によって排出される区域/領域(食道、胃、腸、脾臓、膵臓、胆嚢、腹腔)を起源とする臨床環境では、アフェレシス処置のために門脈から血液を迂回させることが有益となり得る。
【0228】
実施例21:ヒストンH1アフィニティーマトリックス、PAMAMデンドリマーアフィニティーマトリックス、およびポリ-L-リジンアフィニティーマトリックス(PLLAM)による患者血漿からのcfDNA除去の比較
ポリ-L-リジンアフィニティーマトリックス(PLLAM)は、実施例12で指定されたように作成した。PAMAMデンドリマーアフィニティーマトリックス(PDAM)は、実施例4で指定されたように作成した。ヒストンH1アフィニティーマトリックスは、実施例1で指定されたように作成した。
【0229】
cfDNA富化モデル血漿は、健康なボランティアの血漿とマーカーDNA(1kbp plus DNA Ladder,Invitrogen)を混合して10μg/mLの最終cfDNA濃度にすることにより作成した。人工的な1kbプラスDNAラダーで富化されたモデル血漿に関するポリ-L-リジンアフィニティーマトリックス(PLLAM)、PAMAMデンドリマーアフィニティーマトリックス(PDAM)、およびヒストンH1アフィニティーマトリックスの吸着能力を、アフィニティーマトリックス:血漿比1:5(100μLのアフィニティーマトリックスを500μLのモデル血漿と混合した)でゆっくりと回転させながら37℃で1時間、体積吸着法(volume adsorption method)により試験した。エタノールアミンSepharose FFを対照として使用した。インキュベーション前およびアフィニティーマトリックスの沈降時に、E-Gel Invitrogenシステムを使用して1%アガロースゲル電気泳動により血漿サンプルを分析した。QIAamp DNA Blood Mini Kit,Quagenを使用してcfDNAを患者血漿から抽出し、Qubit 3.0蛍光光度計で定量した。同じアフィニティーマトリックスを、歯原性関連敗血症と診断された患者の血漿と、1:10のアフィニティーマトリックス:血漿比(アフィニティーマトリックス100μLを患者血漿1mLと混合した)で、同じインキュベーション条件を用いてインキュベートした。1時間で、遠心分離によりアフィニティーマトリックスを除去した。インキュベーション前およびアフィニティーマトリックスの沈降時に、E-Gel Invitrogenシステムを使用して1%アガロースゲル電気泳動により血漿サンプルを分析した。エタノールアミンSepharose FFを対照として使用した。QIAamp DNA Blood Mini Kit,Quagenを使用してcfDNAを患者血漿から抽出し、Qubit 3.0蛍光光度計で定量した。cfDNAの定量化データを以下の表10に示す。
【表10】
【0230】
ポリ-L-リジンアフィニティーマトリックス(PLLAM)、PAMAMデンドリマーアフィニティーマトリックス(PDAM)、およびヒストンH1アフィニティーマトリックスは、cfDNA富化モデル血漿からモデルcfDNAを除去する同等の能力を有するが、ヒストンH1アフィニティーマトリックスは患者血漿からcfDNAを除去するのに有意に優れているように見える。この発見は、サンプルの電気泳動分析によって確認された(図8および9を参照)。
【0231】
ポリ-L-リジンアフィニティーマトリックス(PLLAM)、PAMAMデンドリマーアフィニティーマトリックス(PDAM)、およびヒストンH1アフィニティーマトリックスを使用した、cfDNA富化モデル血漿での体積吸着試験は、最低限のcfDNA含有量を有するほぼ同じ電気泳動写真をもたらした。
【0232】
ポリ-L-リジンアフィニティーマトリックス(PLLAM)、PAMAMデンドリマーアフィニティーマトリックス(PDAM)、およびヒストンH1アフィニティーマトリックスを使用した、患者血漿での体積吸着試験は、ヒストンH1アフィニティーマトリックスとのインキュベーション後は最低限のcfDNA含有量を有するが、ポリ-L-リジンアフィニティーマトリックスおよびPAMAMデンドリマーアフィニティーマトリックスとのインキュベーション後は有意なcfDNA含有量を有する、異なる電気泳動写真をもたらした。
【0233】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲が限定されるものではない。実際、本明細書に記載されているものに加えて、本発明の様々な修正が、前述の説明および添付の図面から当業者に明らかになるであろう。そのような修正は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。さらに、すべての値は近似値であり、説明のために提供されていることを理解されたい。
【0234】
特許、特許出願、刊行物、製品説明、およびプロトコルが本出願全体を通して引用されており、それらの開示は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれている。
最後に、本発明の好ましい実施態様を項分け記載する。
【0235】
[実施態様1]
1つまたは複数のアフィニティーマトリックスを含むアフェレシスを実行するように構成されたデバイスであって、前記1つまたは複数のアフィニティーマトリックスは、対象の血液または血漿から、ヌクレオソーム結合セルフリーDNA(cfDNA)、エキソソーム結合cfDNA、および非結合cfDNAを捕捉することができる、デバイス。
【0236】
[実施態様2]
前記非結合cfDNAが、dsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む、実施態様1に記載のデバイス。
【0237】
[実施態様3]
前記デバイスが2つ以上のアフィニティーマトリックスを含む、実施態様1または2に記載のデバイス。
【0238】
[実施態様4]
(i)第1の1つまたは複数のアフィニティーマトリックスが、ヌクレオソーム結合セルフリーDNA(cfDNA)および/またはエキソソーム結合cfDNAを捕捉することができ、かつ(ii)第2の1つまたは複数のアフィニティーマトリックスが非結合cfDNAを捕捉することができ、前記第1および第2のアフィニティーマトリックスがデバイス内に任意の順序で配置されている、実施態様3に記載のデバイス。
【0239】
[実施態様5]
(i)前記第1の1つまたは複数のアフィニティーマトリックスが、DNA結合タンパク質、抗ヒストン抗体、抗ヌクレオソーム抗体、DNAインターカレート剤、DNA結合ポリマー、抗DNA抗体、レクチン、またはその任意の組合せを含み、かつ(ii)前記第2の1つまたは複数のアフィニティーマトリックスが、DNA結合タンパク質、DNAインターカレート剤、DNA結合ポリマー、抗DNA抗体、またはその任意の組合せを含む、実施態様4に記載のデバイス。
【0240】
[実施態様6]
前記DNA結合タンパク質がヒストンである、実施態様4または5に記載のデバイス。
【0241】
[実施態様7]
前記ヒストンがH1ヒストンである、実施態様6に記載のデバイス。
【0242】
[実施態様8]
前記DNA結合ポリマーがポリアミドアミンデンドリマーである、実施態様5~7のいずれかに記載のデバイス。
【0243】
[実施態様9]
前記DNA結合ポリマーがカチオン性ポリマーである、実施態様5~7のいずれかに記載のデバイス。
【0244】
[実施態様10]
前記カチオン性ポリマーがポリーLーリジンまたはポリエチレンイミンである、実施態様9に記載のデバイス。
【0245】
[実施態様11]
前記ポリーLーリジンがハイパーブランチポリーLーリジンである、実施態様10に記載のデバイス。
【0246】
[実施態様12]
前記ポリエチレンイミンがハイパーブランチポリエチレンイミンである、実施態様10に記載のデバイス。
【0247】
[実施態様13]
前記DNAインターカレート剤がHoechst 33342である、実施態様5~12のいずれかに記載のデバイス。
【0248】
[実施態様14]
前記抗ヒストン抗体が抗ヒストンH2A抗体である、実施態様5~13のいずれかに記載のデバイス。
【0249】
[実施態様15]
前記レクチンが、スノードロップレクチン(Galanthus nivalis Lectin)(GNA)、ラッパズイセンレクチン(Narcissus Pseudonarcissus Lectin)(NPA)、コンカナバリンA(Conconavalin A)、フィトヘマグルチニン(phytohemagluttanin)、またはシアノビリン(cyanovirin)である、実施態様5~14のいずれかに記載のデバイス。
【0250】
[実施態様16]
前記レクチンがスノードロップレクチン(GNA)である、実施態様15に記載のデバイス。
【0251】
[実施態様17]
前記2つ以上のアフィニティーマトリックスが、2つ以上のアフィニティーカラムとして連続的に配置されている、実施態様3~16のいずれかに記載のデバイス。
【0252】
[実施態様18]
配列の最初のアフィニティーマトリックスがDNA結合ポリマーまたはDNAインターカレート剤を含む、実施態様3~17のいずれかに記載のデバイス。
【0253】
[実施態様19]
前記DNA結合ポリマーがカチオン性ポリマーである、実施態様18に記載のデバイス。
【0254】
[実施態様20]
前記カチオン性ポリマーがポリーLーリジンまたはポリエチレンイミンである、実施態様19に記載のデバイス。
【0255】
[実施態様21]
前記ポリーLーリジンがハイパーブランチポリーLーリジンである、実施態様20に記載のデバイス。
【0256】
[実施態様22]
前記ポリエチレンイミンがハイパーブランチポリエチレンイミンである、実施態様20に記載のデバイス。
【0257】
[実施態様23]
前記カチオン性ポリマーがポリアミドアミンデンドリマーである、実施態様19に記載のデバイス。
【0258】
[実施態様24]
前記DNAインターカレート剤がHoechst 33342である、実施態様18に記載のデバイス。
【0259】
[実施態様25]
任意の順序で配置された以下のカラムの組合せの1つを含む、実施態様17に記載のデバイス:
(a)(i)DNAインターカレート剤Hoechst 33342アフィニティーカラム、および(ii)抗DNA抗体アフィニティーカラム;または
(b)(i)抗ヌクレオソーム抗体アフィニティーマトリックス(ANAM)カラム、および(ii)抗DNA抗体アフィニティーカラム;または
(c)(i)抗ヌクレオソーム抗体アフィニティーマトリックス(ANAM)カラム、および(ii)ポリアミドアミンデンドリマーアフィニティーマトリックス(PDAM)カラム;または
(d)(i)抗ヌクレオソーム抗体アフィニティーマトリックス(ANAM)カラム、および(ii)ハイパーブランチポリ-L-リジンアフィニティーマトリックス(PLLAM)カラム;または
(e)(i)抗ヒストンH2A抗体アフィニティーカラム、(ii)レクチンアフィニティーカラム、および(iii)ヒストンH1アフィニティーカラム、もしくはポリアミドアミンデンドリマーアフィニティーマトリックス(PDAM)カラム、もしくはハイパーブランチポリ-L-リジンアフィニティーマトリックス(PLLAM)カラム、もしくはDNAインターカレート剤Hoechst 33342アフィニティーカラム。
【0260】
[実施態様26]
単一のアフィニティーマトリックスを含む、実施態様1に記載のデバイス。
【0261】
[実施態様27]
前記アフィニティーマトリックスがヒストンを含む、実施態様26に記載のデバイス。
【0262】
[実施態様28]
前記ヒストンがH1ヒストンである、実施態様27に記載のデバイス。
【0263】
[実施態様29]
前記ヒストンがH1.3ヒストンである、実施態様28に記載のデバイス。
【0264】
[実施態様30]
前記アフィニティーマトリックスがDNA結合ポリマーを含む、実施態様26に記載のデバイス。
【0265】
[実施態様31]
前記DNA結合ポリマーがポリアミドアミンデンドリマーである、実施態様30に記載のデバイス。
【0266】
[実施態様32]
前記DNA結合ポリマーがハイパーブランチポリーLーリジンである、実施態様30に記載のデバイス。
【0267】
[実施態様33]
前記アフィニティーマトリックスがDNAインターカレート剤を含む、実施態様26に記載のデバイス。
【0268】
[実施態様34]
前記DNAインターカレート剤がHoechst 33342である、実施態様33に記載のデバイス。
【0269】
[実施態様35]
前記アフィニティーマトリックスが抗DNA抗体を含む、実施態様26に記載のデバイス。
【0270】
[実施態様36]
前記デバイスが、単回のアフェレシス処置ごとに少なくとも30mgのcfDNAを捕捉する、実施態様1~35のいずれかに記載のデバイス。
【0271】
[実施態様37]
前記デバイスが、単回のアフェレシス処置ごとに、cfDNAの血中レベルを少なくとも25%低下させる、実施態様1~35のいずれかに記載のデバイス。
【0272】
[実施態様38]
前記デバイスが、単回のアフェレシス処置ごとにcfDNAの血中レベルを少なくとも50%低下させる、実施態様37に記載のデバイス。
【0273】
[実施態様39]
前記デバイスは、単回のアフェレシス処置ごとにcfDNAの血中レベルを少なくとも75%低下させる、実施態様38に記載のデバイス。
【0274】
[実施態様40]
対象の血液中のセルフリーDNA(cfDNA)のレベルを低下させる方法であって、
(a)対象から血液または血漿を実施態様1~39のいずれかに記載のアフェレシスデバイスに迂回させてcfDNAのレベルが低下した血液または血漿を生成することを含むアフェレシス処置を実行すること;および
(b)cfDNAのレベルが低下した血液または血漿を対象に戻すこと;
を含み、前記アフェレシス処置により、対象の血液中のヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNA、および非結合cfDNAのレベルが低下する、方法。
【0275】
[実施態様41]
前記対象が、血液中のcfDNAレベルの上昇を特徴とする疾患を有する、実施態様40に記載の方法。
【0276】
[実施態様42]
前記対象が、神経変性疾患、がん、化学療法関連毒性、放射線誘発毒性、臓器不全、臓器損傷、臓器梗塞、虚血、急性血管イベント、脳卒中、移植片対宿主病(GVHD)、移植片拒絶、敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、多臓器不全症候群(MODS)、外傷、老化、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患、子癇、不妊症、妊娠関連合併症、凝固障害、および感染症からなる群より選択される疾患を有する、実施態様40に記載の方法。
【0277】
[実施態様43]
必要とする対象において疾患を治療する方法であって、
(a)対象から血液または血漿を実施態様1~39のいずれかに記載のアフェレシスデバイスに迂回させてcfDNAのレベルが低下した血液または血漿を生成することを含むアフェレシス処置を実行すること;および
(b)cfDNAのレベルが低下した血液または血漿を対象に戻すこと;
を含み、前記アフェレシス処置により、対象の血液中のヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNA、および非結合cfDNAのレベルが低下する、方法。
【0278】
[実施態様44]
前記疾患が、血液中のcfDNAレベルの上昇を特徴とする、実施態様43に記載の方法。
【0279】
[実施態様45]
前記疾患が、神経変性疾患、がん、化学療法関連毒性、放射線誘発毒性、臓器不全、臓器損傷、臓器梗塞、虚血、急性血管イベント、脳卒中、移植片対宿主病(GVHD)、移植片拒絶、敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、多臓器不全症候群(MODS)、外傷、老化、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患、子癇、不妊症、妊娠関連合併症、凝固障害、および感染症からなる群より選択される、実施態様43に記載の方法。
【0280】
[実施態様46]
対象の血液中のcfDNAのレベルを監視することをさらに含む、実施態様40~45のいずれかに記載の方法。
【0281】
[実施態様47]
対象の血液中のcfDNAのレベルが少なくとも25%低下するまで前記アフェレシス処置を継続または繰り返すことを含む、実施態様40~46のいずれかに記載の方法。
【0282】
[実施態様48]
cfDNAのレベルが少なくとも50%低下するまで、前記アフェレシス処置を継続または繰り返すことを含む、実施態様47に記載の方法。
【0283】
[実施態様49]
cfDNAのレベルが少なくとも75%低下するまで、前記アフェレシス処置を継続または繰り返すことを含む、実施態様48に記載の方法。
【0284】
[実施態様50]
少なくとも30mgのcfDNAが対象の血液から除去されるまで、前記アフェレシス処置を継続または繰り返すことを含む、実施態様40~46のいずれかに記載の方法。
【0285】
[実施態様51]
前記アフェレシス処置が2回以上繰り返される、実施態様40~50のいずれかに記載の方法。
【0286】
[実施態様52]
前記アフェレシス処置のための血液が門脈から供給される、実施態様40~51のいずれかに記載の方法。
【0287】
[実施態様53]
前記非結合cfDNAが、dsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む、実施態様40~52のいずれかに記載の方法。
【0288】
[実施態様54]
前記対象がヒトである、実施態様40~53のいずれか一項に記載の方法。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2022-02-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つまたは複数のアフィニティーマトリックスを含むアフェレシスを実行するように構成されたデバイスであって、前記1つまたは複数のアフィニティーマトリックスは、対象の流体から、ヌクレオソーム結合セルフリーDNA(cfDNA)、エキソソーム結合cfDNA、および非結合cfDNAを捕捉することができ、前記1つまたは複数のアフィニティーマトリックスのうちの少なくとも1つは2つの異なるDNA結合ポリマーを含む、デバイス。
【請求項2】
前記流体が血液または血漿である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記非結合cfDNAが、dsDNA、ssDNAおよびオリゴヌクレオチドを含む、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
2つ以上のアフィニティーマトリックスを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
(i)第1の1つまたは複数のアフィニティーマトリックスが、ヌクレオソーム結合セルフリーDNA(cfDNA)および/またはエキソソーム結合cfDNAを捕捉することができ、かつ(ii)第2の1つまたは複数のアフィニティーマトリックスが非結合cfDNAを捕捉することができ、前記第1および第2のアフィニティーマトリックスがデバイス内に任意の順序で配置されている、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記ポリマーが、ポリアミドアミン(PAMAM)デンドリマー、ポリ-L-リジン、ポリビニルピロリドン(PVPP)、ポリエチレンイミン、ポリスチレン、および多糖うちの任意の組み合わせから選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のデバイスを含む体外回路を含む、循環cfDNAのレベルを低下させることによる流体の体外処置のためのシステム。
【請求項8】
前記流体が血液である、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
対象の血液中のセルフリーDNA(cfDNA)のレベルを低下させる方法で使用するためのものであり、前記方法が、
(a)対象から血液または血漿を前記デバイスに迂回させてcfDNAのレベルが低下した血液または血漿を生成することを含むアフェレシス処置を実行すること;および
(b)cfDNAのレベルが低下した血液または血漿を対象に戻すこと;
を含み、前記アフェレシス処置により、対象の血液中のヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNA、および非結合cfDNAのレベルが低下する、請求項1~6のいずれか一項に記載のデバイス、あるいは請求項7または8に記載のシステム。
【請求項10】
必要とする対象において疾患を治療する方法で使用するためのものであり、前記治療方法が、
(a)対象から血液または血漿を前記デバイスに迂回させてcfDNAのレベルが低下した血液または血漿を生成することを含むアフェレシス処置を実行すること;および
(b)cfDNAのレベルが低下した血液または血漿を対象に戻すこと;
を含み、前記アフェレシス処置により、対象の血液中のヌクレオソーム結合cfDNA、エキソソーム結合cfDNA、および非結合cfDNAのレベルが低下する、請求項1~6のいずれか一項に記載のデバイス、あるいは請求項7または8に記載のシステム。
【請求項11】
前記対象が、血液中のcfDNAレベルの上昇を特徴とする疾患を有する、請求項9または10に記載のデバイスまたはシステム。
【請求項12】
前記疾患が、神経変性疾患、がん、化学療法関連毒性、放射線誘発毒性、臓器不全、臓器損傷、臓器梗塞、虚血、急性血管イベント、脳卒中、移植片対宿主病(GVHD)、移植片拒絶、敗血症、全身性炎症反応症候群(SIRS)、多臓器不全症候群(MODS)、外傷、老化、糖尿病、アテローム性動脈硬化症、自己免疫疾患、子癇、不妊症、妊娠関連合併症、凝固障害、および感染症からなる群より選択される、請求項11に記載のデバイスまたはシステム。