(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062115
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】sGC刺激剤のリンプロドラッグ
(51)【国際特許分類】
C07F 9/6558 20060101AFI20220412BHJP
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A61P 37/06 20060101ALI20220412BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
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A61P25/04
A61P25/14
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A61P25/24
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A61P27/02
A61P27/06
A61P27/16
A61P35/00
A61P37/06
A61P43/00 111
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022010212
(22)【出願日】2022-01-26
(62)【分割の表示】P 2019500509の分割
【原出願日】2017-07-06
(31)【優先権主張番号】62/359,419
(32)【優先日】2016-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】519163876
【氏名又は名称】サイクレリオン・セラピューティクス,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100122644
【弁理士】
【氏名又は名称】寺地 拓己
(72)【発明者】
【氏名】シェペック,ジェームズ・エドワード
(72)【発明者】
【氏名】レンハウ,ポール・アラン
(72)【発明者】
【氏名】マーメリアン,アラ
(72)【発明者】
【氏名】バーデン,ティモシー・クロード
(72)【発明者】
【氏名】レニー,グレン・ロバート
(72)【発明者】
【氏名】アイアンガー,ラジェシュ・アール
(72)【発明者】
【氏名】中井 崇
(57)【要約】 (修正有)
【課題】可溶性グラニル酸シクラーゼ(sGC)の刺激物質のリン含有プロドラッグを提供する。
【解決手段】式Iの化合物または医薬的に許容しうるその塩を提供する。
式中、Xは、下記の基から選択され、R
1、R
2は、同時にフルオロアルキルである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化1-1】
[式中:
Xは、
【化1-2】
から選択され;M
+は、医薬的に許容しうる一価カチオンで、D
2+は、医薬的に許容しうる二価カチオンであり;
各J
Bは、独立してハロゲンから選択され;
mは、1であり;
nは、0、1、2、3または4から選択され;
R
1およびR
2の両方は、同時にC
1-4フルオロアルキルであり;
R
3は、ハロゲン、水素、-CNまたは-NH
2から選択され;
R
4の両方の事例は同時に水素であるか、R
4の両方の事例は、それらが付着している炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成し;そして
R
5は、水素またはメチルから選択される]
または医薬的に許容しうるその塩。
【請求項2】
Xが
【化1-3】
である、請求項1に記載の化合物、または医薬的に許容しうるその塩。
【請求項3】
Xが
【化1-4】
であり;M
+が、Na
+、K
+、Cs
+、または有機アミンの一価カチオンから選択される、請求項1に記載の化合物、または医薬的に許容しうるその塩。
【請求項4】
Xが
【化1-5】
であり;D
2+が、Ca
2+、Zn
2+、Mg
2+、または有機アミンの二価カチオンから選択される、請求項1に記載の化合物、または医薬的に許容しうるその塩。
【請求項5】
R4の両方の事例が同時に水素である、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物、または医薬的に許容しうるその塩。
【請求項6】
R4の両方の事例が、それらが付着している炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成する、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物、または医薬的に許容しうるその塩。
【請求項7】
化合物が式III
【化2】
の1つである、請求項1または4に記載の化合物、または医薬的に許容しうるその塩。
【請求項8】
nが0、1、または2である、請求項1~7のいずれか一項に記載の化合物、または医薬的に許容しうるその塩。
【請求項9】
nが1である、請求項8に記載の化合物、または医薬的に許容しうるその塩。
【請求項10】
JBのすべての事例がフルオロであるか、JBのすべての事例がクロロであるか、またはJBのいくつかの事例がフルオロで、JBのいくつかの事例がクロロである、請求項8または9に記載の化合物、または医薬的に許容しうるその塩。
【請求項11】
R1およびR2が両方とも同時にC1-2フルオロアルキルである、請求項1~10のいずれか一項に記載の化合物、または医薬的に許容しうるその塩。
【請求項12】
R1およびR2が両方とも同時にトリフルオロメチルである、請求項11に記載の化合物、または医薬的に許容しうるその塩。
【請求項13】
R3が水素、クロロまたはフルオロから選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の化合物、または医薬的に許容しうるその塩。
【請求項14】
R3がフルオロである、請求項13に記載の化合物、または医薬的に許容しうるその塩。
【請求項15】
【化3】
である、請求項1に記載の化合物、または医薬的に許容しうるその塩。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物、または医薬的に許容しうるその塩と、1以上の賦形剤とを含む医薬組成物。
【請求項17】
処置を必要としている被験対象における疾患、健康状態または障害の処置方法において使用するための、請求項1~15のいずれか一項に記載の化合物、または医薬的に許容しうるその塩を含む医薬組成物であって、該疾患、健康状態または障害が以下から選択される、前記医薬組成物:
・高血圧および冠血流量減少に関連する障害;急性および慢性冠動脈血圧上昇;動脈高血圧;心臓および腎臓の合併症に起因する血管障害;心疾患、脳卒中、脳虚血または腎不全に起因する血管障害;抵抗性高血圧;糖尿病性高血圧;本態性高血圧;二次性高血圧;妊娠性高血圧;子癇前症;門脈圧亢進症;心筋梗塞;
・心不全、HFPEF、HFREF;急性および慢性HF;より具体的な形態のHF:急性非代償性HF、右心室不全、左心室不全、全HF、虚血性心筋症、拡張型心筋症、先天性心臓欠陥、弁膜欠損によるHF、僧帽弁狭窄、僧帽弁閉鎖不全、大動脈弁狭窄、大動脈弁閉鎖不全、三尖弁狭窄、三尖弁閉鎖不全、肺動脈弁狭窄、肺動脈弁閉鎖不全、連合弁膜欠損;糖尿病性心不全;アルコール性心筋症または蓄積性心筋症;拡張期HF、収縮期HF;既存の慢性HFの急性期(HFの悪化);拡張または収縮機能障害;冠動脈不全;不整脈;心室前負荷の減少;心肥大;心不全/心腎症候群;門脈圧亢進症;内皮機能不全または損傷;心房および心室調律の障害および伝導障害:I~III度の房室ブロック(AVB I~III)、上室性頻脈性不整脈、心房細動、心房粗動、心室細動、心室粗動、心室性頻脈性不整脈、トルサード・ド・ポアント頻拍、心房および心室性期外収縮、房室接合部期外収縮、洞機能不全症候群、失神、房室結節リエントリー性頻拍;ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群または急性冠症候群;ボクサー心筋症;心室性期外収縮;心筋症;がん誘発性心筋症;化学療法誘発性心臓毒性;
・血栓塞栓性障害および虚血;心筋虚血;梗塞;心筋梗塞;心臓発作;心筋不全;内皮機能不全;脳卒中;一過性脳虚血発作(TIA);閉塞性血栓性血管炎;安定または不安定狭心症;冠動脈痙攣または末梢動脈痙攣;異型狭心症;プリンツメタル狭心症;心肥大;子癇前症;血管形成障害;虚血-再潅流損傷;臓器移植に関連する虚血-再潅流;肺移植、肺の移植、心臓移植、静脈移植失敗に関連する虚血-再潅流;外傷患者における代用血液保存;
・末梢血管疾患;末梢動脈疾患;末梢閉塞性動脈疾患;筋緊張亢進;レイノー症候群または現象(一次性および二次性);レイノー病;重篤な下肢虚血;末梢塞栓症;間欠性跛行;血管閉塞性発症;筋ジストロフィー、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー;微小循環異常;血管漏出または透過性の制御;腰部脊柱管狭窄症;閉塞性血栓性血管炎;血栓性血管炎;末梢潅流障害;動脈および静脈血栓症;微量アルブミン尿;末梢および自律性神経障害;糖尿病性神経障害に伴う疼痛;糖尿病性微小血管障害;肝血管閉塞性障害;鎌状赤血球症における血管閉塞性発症;高血圧性発症;
・浮腫;心不全に起因する腎性浮腫;
・アルツハイマー病;パーキンソン病;血管性認知症;血管認知機能障害;脳血管痙攣;先天性筋無力症候群;くも膜下出血;外傷性脳損傷;認知障害、認知障害後の知覚、集中力、学習能力または記憶能力の改善;レビー小体型認知症;ピック症候群などの前頭葉変性による認知症;進行性核麻痺;大脳皮質基底核変性症による認知症;筋萎縮性側索硬化症(ALS);ハンチントン病;脱髄;多発性硬化症;視床変性;クロイツフェルト・ヤコブ認知症;HIV-認知症;認知症またはコルサコフ精神病による統合失調症;他系統萎縮症および他の形態のパーキンソンプラス症候群;運動障害;神経保護;不安、緊張および抑うつまたは心的外傷後ストレス障害(PTSD);双極性障害;統合失調症;中枢神経系が関連する性的機能不全および睡眠障害;病理学的摂食障害ならびに高級食料および耽溺薬の使用;脳潅流の制御;片頭痛;脳梗塞(脳卒中)の予後の予防および制御;脳卒中、脳虚血および頭部損傷の予後の予防および制御;中枢神経系疾患に関連する神経障害;神経障害痛、MSに関連する神経障害痛;化学療法誘発性神経障害痛;帯状疱疹に関連する神経障害痛;脊椎手術に関連する神経障害痛;
・ショック;心原性ショック;敗血症;敗血症性ショック;アナフィラキシー性ショック;動脈瘤;白血球活性化の制御;血小板凝集の阻害または調節;多臓器機能障害症候群(MODS);多臓器不全(MOF);
・肺/呼吸器状態:肺高血圧(PH);肺動脈高血圧(PAH)および関連する肺血管リモデリング;限局性血栓症および右心肥大の形態の血管リモデリング;肺筋緊張亢進;原発性肺高血圧;二次性肺高血圧;家族性肺高血圧;散発性肺高血圧;前毛細血管性肺高血圧;特発性肺高血圧;他の形態のPH;左心室疾患、HIV、SCD、血栓塞栓症(CTEPH)、サルコイドーシス、COPD、肺線維症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺損傷、アルファ-1-抗トリプシン欠乏(AATD)、肺気腫、喫煙誘発性気腫および嚢胞性線維症(CF)に関連するPH;血栓性肺動脈症;多因性肺動脈症;嚢胞性線維症;気管支収縮または肺気管支収縮;急性呼吸器症候群;肺線維症、肺移植;喘息疾患;
・以下に付随または関連する肺高血圧:左心室機能不全、低酸素血症、WHOグループI、II、III、IVおよびVの高血圧、僧帽弁疾患、収縮性心膜炎、大動脈弁狭窄、心筋症、縦隔線維症、肺線維症、肺静脈還流異常、肺静脈閉塞性疾患、肺血管炎、膠原血管病、先天性心疾患、肺静脈高血圧、間質性肺疾患、睡眠呼吸障害、睡眠時無呼吸、肺胞低換気障害、高高度への慢性的暴露、新生児肺疾患、肺胞-毛細血管異形成、鎌状赤血球症、他の凝固障害、慢性血栓塞栓症、肺塞栓症;腫瘍、寄生生物または異物に起因する肺塞栓症;結合組織病、狼瘡、狼瘡腎炎、住血吸虫症、サルコイドーシス、慢性閉塞性肺疾患、喘息、気腫、慢性気管支炎、肺毛細血管血管腫症、組織球症X、リンパ管腫症、圧縮肺血管;腺症、腫瘍または線維化性縦隔炎に起因する圧縮肺血管;
・動脈硬化性疾患または状態:アテローム性動脈硬化症;内皮損傷、血小板および単球の付着および凝集、平滑筋増殖または遊走に関連するアテローム性動脈硬化症;再狭窄;血栓溶解療法、経皮経腔的血管形成術(PTA)、経腔的冠動脈血管形成術(PTCA)、心臓移植、バイパス手術または炎症性過程の後に発現する再狭窄;
・微小および大型血管損傷(血管炎);フィブリノーゲンおよび低密度DLDレベルの上昇;プラスミノーゲン活性化因子阻害因子1(PA-1)濃度の上昇;
・メタボリックシンドローム;代謝疾患またはメタボリックシンドロームに関連する疾患:肥満;皮下脂肪過剰;脂肪蓄積過剰;糖尿病;高血圧;脂質関連障害、高脂血症、脂質異常症、高コレステロール血症、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL-コレステロール)の減少、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-コレステロール)レベルの中程度の上昇、高トリグリセリド血症、高グリセリド血症、低リポタンパク貧血、シトステロール血症、脂肪肝疾患、アルコール性脂肪肝疾患(AFLD)、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、肝炎;子癇前症;多嚢胞腎疾患進行;脂肪肝または肝臓での異常な脂質蓄積;非アルコール性脂肪肝炎(NASH);心臓、腎臓または筋肉の脂肪変性;アルファベータリポタンパク血症;シトステロール血症;黄色腫症;タンジール病;高アンモニア血症および関連疾患;肝性脳症;他の毒性脳症;ライ症候群;
・以下の状態の性的、婦人科的および泌尿器科的障害:勃起障害;インポテンス;早漏;女性性的機能不全;女性性的興奮機能障害;性的興奮低下障害;膣萎縮;性交疼痛;萎縮性膣炎;良性前立腺過形成(BPH)、前立腺肥大、前立腺拡大;膀胱出口閉塞;膀胱痛症候群(BPS);間質性膀胱炎(IC);過活動膀胱;神経因性膀胱および失禁;糖尿病性腎症;原発性および続発性月経困難;下部尿路症候群(LUTS);子宮内膜症;骨盤痛;男性および女性泌尿生殖器系の器官の良性および悪性疾患;
・慢性腎疾患;急性および慢性腎機能不全;急性および慢性腎不全;狼瘡腎炎;基礎または関連腎疾患:低潅流、透析低血圧、閉塞性尿路疾患、糸球体症、糸球体腎炎、急性糸球体腎炎、糸球体硬化、尿細管間質疾患、腎障害疾患、原発性および先天性腎疾患、腎炎;クレアチニンおよびまたは水分排泄の異常な減少によって特徴付けられる疾患;尿素、窒素、カリウムおよび/またはクレアチニンの血中濃度の異常な上昇によって特徴付けられる疾患;腎臓酵素の活性変化によって特徴付けられる疾患、グルタミルシンテターゼの活性変化によって特徴付けられる疾患;尿浸透圧または尿容量の変化によって特徴付けられる疾患;微量アルブミン尿の増加によって特徴付けられる疾患、顕性アルブミン尿によって特徴付けられる疾患;糸球体および細動脈の病変、尿細管拡張、高リン血症および/または透析の必要性によって特徴付けられる疾患;腎機能不全の続発症;肺水腫に関連する 腎機能不全;HFに関連する腎機能不全;尿毒症または貧血に関連する腎機能不全;電解質障害(ヘルカレミア、低ナトリム血症);骨および炭水化物代謝の障害;急性腎損傷;
・眼の疾患または障害。
【請求項18】
疾患、健康状態または障害が、緑内障、網膜症、糖尿病性網膜症、鎌状赤血球性貧血、および鎌状赤血球症の血管閉塞性発症から選択される、請求項17に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本開示は、可溶性グラニル酸シクラーゼ(sGC)の刺激物質のリン含有プロドラッグ、これを含む医薬製剤、および、単独または1以上の追加的薬剤と組み合わせてさまざまな疾患を処置するためのその使用に関する。これに関し、該疾患または障害は、sGCの刺激あるいは酸化窒素(NO)および/またはサイクリックグアノシン一リン酸(cGMP)の濃度上昇から利益を得ると思われるものである。
【背景技術】
【0002】
[0002]sGCは、in vivoにおけるNOの主要な受容体である。sGCは、NO依存性およびNO非依存性の両機序を介して活性化されることができる。この活性化に対する応答において、sGCはグアノシン-5’-三リン酸(GTP)を二次伝達物質cGMPに変換する。cGMPのレベル上昇は、プロテインキナーゼ、ホスホジエステラーゼ(PDE)およびイオンチャネルを含む下流エフェクターの活性を調整する。
【0003】
[0003]体内において、NOは、さまざまな酸化窒素シンターゼ(NOS)酵素により、および無機硝酸塩の逐次還元により、アルギニンおよび酸素から合成される。NOSの3つの異なるアイソフォームが同定されている:活性化マクロファージ細胞に見いだされる誘発性NOS(iNOSまたはNOS II);神経伝達および長期増強に関与する構成性ニューロンNOS(nNOSまたはNOS I);ならびに、平滑筋弛緩および血圧を調節する構成性内皮NOS(eNOSまたはNOS III)。実験的および臨床的証拠は、NOの低下した濃度もしくは生物学的利用能および/または内因的に産生されたNOに対する応答性が発病の一因となることを示している。
【0004】
[0004]NO非依存性、ヘム依存性のsGC刺激剤は、NO非依存性、ヘム非依存性のsGC活性化剤と比較した場合、いくつかの重要な識別特性を示している。これらとしては、それらの活性に関する還元された補欠分子ヘム部分の存在への極めて重大な依存性、NOと組み合わせた場合の強い相乗的酵素活性化、およびNOに依存しないsGCの直接刺激によるcGMP合成の刺激が挙げられる。ベンジルインダゾール化合物YC-1は、はじめて同定されたsGC刺激剤であった。それ以来、改善された効力およびsGCに対する特異性を有する追加的なsGC刺激剤が開発されてきた。
【0005】
[0005]NOに依存しないでsGCを刺激する化合物は、異常なNO経路を標的とする現行の他の代替療法と比べ大きな利点を提供する。sGCの新規刺激剤の開発が必要とされている。とりわけ、改善された溶解度および臨床施用に有用な医薬的性質を有するsGC刺激剤の開発が、必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
[0006]一態様において、本発明は、式Iの化合物に関する:
【0007】
【0008】
[式中:
Xは、-P(O)(OH)2、-P(O)(OH)O-M+、-P(O)(O-)2(M+)2または-P(O)(O-)2D2+から選択され;M+は、医薬的に許容しうる一価カチオンで、D2+は、医薬的に許容しうる二価カチオンであり;
各JBは、独立してハロゲンから選択され;
mは、0または1から選択され;
nは、0、1、2、3または4から選択され;
R1は、C1-4アルキル、C1-4フルオロアルキル、-C(O)NH2または水素から選択され;そして
R2は、C1-4アルキル、C1-4フルオロアルキルまたは水素から選択されるか;あるいは、
R1およびR2は、それらが付着している炭素原子と一緒になって、非置換C3-7脂環式環か、またはN、OもしくはSから独立して選択される最大2個のヘテロ原子を含有する非置換の3~7員複素環式環を形成し;
R3は、ハロゲン、水素、-CNまたは-NH2から選択され;
R4の両方の事例は同時に水素であるか、R4の両方の事例は、それらが付着している炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成し;そして
R5は、メチルまたは水素から選択される]。
【0009】
[0007]他の態様において、本発明は、式Iの化合物と、少なくとも1つの医薬的に許容しうる賦形剤またはキャリヤーとを含む医薬組成物に関する。他の態様において、本発明は、前記医薬組成物を含む医薬剤形に関する。
【0010】
[0008]他の態様において、本発明は、疾患、健康状態または障害の処置を必要とする被験対象におけるその処置方法であって、治療的有効量の式Iの化合物または医薬的に許容しうるその組成物を単独または併用療法で被験対象に投与することを含む方法に関する;これに関し、該疾患または障害は、sGCの刺激あるいはNOおよび/またはcGMPの濃度上昇から利益を得る可能性があるものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[0009]ここで、本発明の特定の態様について詳細に記載し、その例を添付する構造および化学式に例示する。本発明を列挙態様と併せて記載するが、これは本発明をその態様に限定することを意図したものではないことは理解されるであろう。むしろ、本発明は、請求項によって定義されるような本発明の範囲内に包含されることができるすべての選択肢、修正および等価物を対象とすることを意図している。本発明は、本明細書中に記載する方法および材料に限定されず、本発明を実施する際に用いることができる本明細書中に記載するものと同様または同等のあらゆる方法および材料を包含する。組み込んだ参照文献、特許または同様の材料の1以上が、本出願、例えば、限定されるものではないが、定義された用語、用語の使用法、記載される技術などと異なるか相反する場合、本出願を優先する。
【0012】
定義および一般的専門用語
[0010]本開示の目的に関し、化学元素は、元素の周期表、CASバージョン、およびHandbook of Chemistry and Physics,第75版、1994年に従って識別される。これに加えて、有機化学の一般的原理は、“Organic Chemistry”,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito:1999年、および“March’s Advanced Organic Chemistry”,第5版,Smith,M.B.およびMarch,J.,編集,John Wiley & Sons,New York:2001年に記載されており、これらを全体として本明細書中で参考として援用する。
【0013】
[0011]本開示によって想定される置換基および組み合わせの選択は、安定または化学的に実現可能な化合物の形成をもたらすもののみである。そのような選択および組み合わせは当業者には明らかであり、過度の実験を行うことなく決定することができる。本明細書中で用いられる“安定な”という用語は、生産、検出、およびいくつかの態様では、回収、精製、および本明細書中に開示する目的の1以上のための使用を可能にする条件に付したときに、実質的に変化しない化合物をさす。いくつかの態様において、安定な化合物は、水分または他の化学的反応性条件の非存在下で25℃以下の温度を少なくとも1週間にわたり維持したときに、実質的に変化しない化合物である。化学的に実現可能な化合物は、当業者なら、本明細書中の開示内容に基づき、必要に応じて当分野の関連する知識を補足して、調製することができる化合物である。
【0014】
[0012]本明細書中に開示する式Iの化合物または他の化合物のような化合物は、フリーな形態(例えば、非晶質形態、または結晶質形態、または多形体)で存在することができる。特定の条件下で、化合物は、コ-形態(co-form)を形成することもできる。本明細書
中で用いる場合、コ-形態は、多成分結晶質形態という用語と同意語である。コ-形態中の成分の1つが明らかにプロトンを移動させたか喪失した場合、生じたコ-形態を“塩”とよぶ。塩の形成は、混合物を形成するパートナー間のpKaの差の大きさによって決定される。本開示の目的に関し、化合物は、“医薬的に許容しうる塩”という用語が明確に言及されていなくても、医薬的に許容しうる塩を包含する。
【0015】
[0013]異性体の1つのみが具体的に記載または指名されている場合を除き、本明細書中で表現される構造は、構造のすべての立体異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、アトロプ異性体およびシス-トランス異性体)形態;例えば、各不斉中心に関するRおよびS配置、各非対称軸に関するRaおよびSa配置、(Z)および(E)二重結合配置、ならびにシスおよびトランス配座異性体を包含することも意図される。したがって、本化合物の単一の立体化学的異性体のほか、ラセミ化合物、ならびにエナンチオマー、ジアステレオマーおよびシス-トランス異性体(二重結合または配座異性体)の混合物は、本開示の範囲内にある。
【0016】
[0014]本開示はまた、本明細書中に挙げる化合物と同一であるが、実際は、原子の1以上が、自然に通常見いだされる原子質量または質量数とは異なる原子質量または質量数を有する原子によって置き換えられている、同位体標識化合物を包含する。明記する任意の特定の原子または元素のすべての同位体は、本発明の化合物およびそれらの使用の範囲内にあると意図される。本発明の化合物に組み込むことができる代表的同位体としては、水
素、炭素、窒素、酸素、リン、硫黄、フッ素、塩素およびヨウ素の同位体、例えば、それぞれ2H、3H、11C、13C、14C、13N、15N、15O、17O、18O、32P、33P、35S、18F、36Cl、123Iおよび125Iが挙げられる。本発明の特定の同位体標識化合物(例えば、3Hおよび14Cで標識されているもの)は、化合物および/または基質組織分布アッセイに有用である。トリチウム化(すなわち3H)および炭素-14(すなわち14C)同位体は、調製が容易で検出能が高いため有用である。さらに、ジュウテリウム(すなわち2H)など、より重い同位体での置換は、より高い代謝的安定性に起因する特定の治療上の利点(例えば、in vivo半減期の延長または必要投与量の減少)を提供することができ、したがって、状況によっては好ましい可能性がある。15O、13N、11Cおよび18Fなどの陽電子放出同位体は、基質受容体占有率を試験するための陽電子放射断層撮影(PET)試験に有用である。本発明の同位体標識化合物は、一般に、本明細書中の以下のスキームおよび/または実施例に開示するものに類似する手順に従って、同位体標識試薬で非同位体標識試薬を置き換えることにより、調製することができる。
【0017】
[0015]本明細書中で用いられる“適切な”および“適した”という用語は、互換的に用いることができる。
[0016]本明細書中で用いる場合、1より多くの事例の置換基が同時に許容される場合、置換基の各事例は、各事例で独立して選択される。例えば、フェニルが2つの事例のR100で置換されることができ、R100がハロゲンおよびメチルから選択される場合、R100の各事例はハロゲンまたはメチルから別個に選択される;例えば、一方のR100はフルオロであることができ、もう一方はメチルであることができ、または両方ともクロロなどであってもよい。
【0018】
[0017]基は、“最大”Zの事例の置換基で置換されることができ、これに関し“n”は整数である。例えば、“Z”が3である場合、基は0、1、2または3個の置換基で置換されることができる。特記しない限り、“Z”の事例のそれぞれは、通常独立して選択される。
【0019】
[0018]本明細書中で用いられる“アルキル”(“アルキル鎖”または“アルキル基”においてのような)という用語は、飽和した直鎖または分枝鎖状の一価炭化水素基をさす。Cxアルキルはx個の炭素原子を含有するアルキル鎖で、xは0ではない整数である。xおよびyが2つの異なる整数で、両方とも0ではない“Cx-yアルキル”は、数字を含めたxとyの間の数の炭素原子を含有するアルキル鎖である。例えば、C1-6アルキルは、1~6の間の任意の数の炭素原子を含有する、先に定義したようなアルキルである。アルキル基の例としては、限定されるものではないが、メチル(C1アルキル)、エチル(C2アルキル)、n-プロピル(C3アルキル)、イソプロピル(C3アルキル)、n-ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチルなどが挙げられる。
【0020】
[0019]“脂環式”という用語は、炭素および水素原子によってのみ形成され、完全に飽和しているか、1以上の不飽和単位を含有するが芳香族ではない環系をさす。一態様において、“脂環式”という用語は、3~7個の炭素を含有する単環式炭化水素環(すなわちC3-7脂環式)をさす。適した脂環式基としては、限定されるものではないが、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルキニルが挙げられる。脂環式基の例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロヘプテニルなどが挙げられる。
【0021】
[0020]本明細書中で用いられる“シクロアルキル”は、完全に飽和している脂環式環系をさす。一態様において、“シクロアルキル”という用語は、単環式3~7員飽和脂環式
環(すなわち、C3-C7シクロアルキル)をさす。適したシクロアルキル基としては、限定されるものではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが挙げられる。
【0022】
[0021]“ヘテロ原子”は、窒素、硫黄、リンまたはケイ素の任意の酸化形態、任意の塩基性窒素の四級化形態、あるいは複素環またはヘテロアリール環の置換可能な窒素、例えば、N(3,4-ジヒドロ-2H-ピロリル中のものなど)、NH(ピロリジニル中のものなど)またはNR+(N-置換ピロリジニル中のものなど)を含む、酸素、硫黄、窒素、リンまたはケイ素の1以上をさす。
【0023】
[0022]“環原子”という用語は、フェニル環またはヘテロアリール環の環の一部であるC、N、OまたはSなどの原子をさす。“置換可能な環原子”は、少なくとも1つの水素原子に結合している環炭素または窒素原子である。水素は、所望により適した置換基で置き換えられることができる。 “置換可能な環原子”は、構造が、環炭素または窒素原子
が水素以外の1以上の部分に既に付着していて、置換に利用可能な水素がないことを表している場合、環炭素または窒素原子を包含しない。特定の環、基または鎖が所望により置換される場合、それは、その置換可能な環原子のいずれか、いくつかまたはすべてで置換されることができることは、理解されるであろう。
【0024】
[0023]本明細書中で用いられる“複素環”(“複素環式環”または“複素環式基”に見られるような)は、1以上の環原子が、独立して選択されたヘテロ原子である、環系をさす。複素環は完全に飽和しているか、1以上の不飽和単位を含有するが芳香族ではない。いくつかの態様において、複素環は、3~7個の環原子(2~6個の炭素原子および1~4個のヘテロ原子)を有する単環式環であることができる。複素環式環の例としては、限定されるものではないが、以下の単環:2-テトラヒドロフラニル、3-テトラヒドロフラニル、2-テトラヒドロチオフェニル、3-テトラヒドロチオフェニル、2-モルホリノ、3-モルホリノ、4-モルホリノ、2-チオモルホリノ、3-チオモルホリノ、4-チオモルホリノ、1-ピロリジニル、2-ピロリジニル、3-ピロリジニル、1-テトラヒドロピペラジニル、2-テトラヒドロピペラジニル、3-テトラヒドロピペラジニル、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、1-ピラゾリニル、3-ピラゾリニル、4-ピラゾリニル、5-ピラゾリニル、1-ピペリジニル、2-ピペリジニル、3-ピペリジニル、4-ピペリジニル、2-チアゾリジニル、3-チアゾリジニル、4-チアゾリジニル、1-イミダゾリジニル、2-イミダゾリジニル、4-イミダゾリジニル、5-イミダゾリジニルが挙げられる。
【0025】
[0024]本明細書中で用いられる“ハロゲン”または“ハロ”という用語は、F、Cl、BrまたはIを意味する。
[0025]“ハロアルキル”という用語は、1以上のハロゲン原子で置換されているアルキルを意味する。例えば、C1-3ハロアルキルは、-CFHCH2CHF2であり得る。
【0026】
[0026]“フルオロアルキル”という用語は、1以上のフッ素原子置換されているアルキルを意味する。この用語は、-CF3および-CF2CF3のようなペルフルオロ化アルキル基も包含ンする。
【0027】
[0027]本明細書中で用いられる“アミノ”基は、-NH2をさす。
[0028]“ヒドロキシル”または“ヒドロキシ”という用語は、-OHをさす。
[0029]本明細書中で用いる場合、単独または他の基と関連して用いられる“カルボニル”は、-C(O)-(二重結合により酸素に結合している炭素原子)または-C(O)H(前記カルボニル基が鎖の末端位置にある場合)をさす。
【0028】
[0030]本発明の化合物は、本明細書中で、それらの化学構造および/または化学名によって定義される。化合物が化学構造と化学名の両方で記載されており、化学構造と化学名が矛盾する場合、化学構造が化合物の素性(identity)を決定する。
【0029】
[0031]置換基Rnは、採用したときに概して定義され、その定義が明細書全体およびすべての独立クレームで維持される。
化合物の態様
[0032]一態様において、本発明は式Iの化合物を対象とする:
【0030】
【0031】
[式中:
Xは、-P(O)(OH)2、-P(O)(OH)O-M+、-P(O)(O-)2(M+)2または-P(O)(O-)2D2+から選択され;M+は、医薬的に許容しうる一価カチオンで、D2+は、医薬的に許容しうる二価カチオンであり;
各JBは、独立してハロゲンから選択され;
mは、0または1から選択され;
nは、0、1、2、3または4から選択され;
R1は、C1-4アルキル、C1-4フルオロアルキル、-C(O)NH2または水素から選択され;そして
R2は、C1-4アルキル、C1-4フルオロアルキルまたは水素から選択されるか;あるいは、
R1およびR2は、それらが付着している炭素原子と一緒になって、非置換C3-7脂環式環か、またはN、OもしくはSから独立して選択される最大2個のヘテロ原子を含有する非置換の3~7員複素環式環を形成し;
R3は、ハロゲン、水素、-CNまたは-NH2から選択され;そして
R4の両方の事例は同時に水素であるか、R4の両方の事例は、それらが付着している炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成し;そして
R5は、水素またはメチルから選択される]。
【0032】
[0033]式Iの化合物は、sGC刺激剤として有用な式IAの化合物のリン酸エステルプロドラッグ、およびその医薬的に許容しうる塩である。式IAに関し、JB、n、R1、R2、R3、R4およびR5の定義は、式Iに関し上記したものと同様である。
【0033】
【0034】
[0034]投与において式Iの化合物によって示されるin vivo生物学的活性は、おもに、プロドラッグの開裂に起因する式IAの親化合物の存在による。
[0035]“プロドラッグ”という用語は、投与および吸収後にいくつかの代謝過程、酵素過程、加水分解過程または急速化学変換過程を介してin vivoで薬物を放出する薬物前駆体である化合物をさす。一般に、プロドラッグは、親化合物への開裂前は、標的に対し単独で親化合物より低い生物学的活性を持つ。プロドラッグは親薬物の物理的特性を改善することができ、ならびに/または、例えば薬物の吸収、血中濃度、代謝的分布および細胞取り込みを制御することによって薬物の毒性および望ましくない副作用を低減することにより、全体的薬効を改善することができる。プロドラッグは、薬物動態学的な被験対象間のin vivoでのばらつきを減少させることもできる。プロドラッグはまた、より望ましい医薬的特性を示すことができ、したがって、プロドラッグはまた、薬物の製剤化能(formulability)を改善し、または特定の投与モードに関し薬物の製剤化能を促進
することができる。
【0035】
[0036]“親薬物”または“親化合物”という用語は、プロドラッグの投与後に代謝過程、酵素過程、加水分解過程または急速化学変換過程を介して放出される生物学的に活性な実体(entity)をさす。いくつかの態様において、親化合物は、プロドラッグの調製に用いられる出発材料であることもできる。
【0036】
[0037]M+によって示される一価カチオンは、Na+、K+、または有機アミンの一価カチオンを含む。
[0038]D2+によって示される二価カチオンは、Ca2+、Zn2+、Cs2+、Mg2+、または有機アミンの二価カチオンを含む。
【0037】
[0039]R1とR2が異なる式Iのいくつかの態様において、化合物は式IBまたはICのものである。
【0038】
【0039】
[0040]式I、式IBまたは式ICのいくつかの態様において、nは、1、2または3から選択される。他の態様において、nは1または2である。他の態様において、nは1である。さらに他の態様において、nは2である。他の態様において、nは0である。
【0040】
[0041]式I、式IBまたは式ICのいくつかの態様において、JBのすべての事例はフルオロである。他の態様において、JBのすべての事例はクロロである。さらに他の態様において、JBのいくつかの事例はフルオロで、JBのいくつかの事例はクロロである。いくつかの態様において、nは3であり、JBのいくつかの事例はクロロであり、JBの残りの事例はフルオロである。他の態様において、nは3であり、JBのすべての事例はフルオロである。いくつかの態様において、nは2であり、各JBはフルオロまたはクロロから独立して選択される。他の態様において、nは2であり、JBの事例の一方はクロロであり、JBの事例の他方はフルオロである。さらに他の態様において、nは2であり、各JBはクロロである。さらに他の態様において、nは2であり、各JBはフルオロである。さらに他の態様において、nは1であり、JBはクロロである。さらに他の態様において、nは1であり、JBはフルオロである。
【0041】
[0042]式Iのいくつかの態様において、R1およびR2は両方とも同時に水素である。
[0043]式I、式IBまたは式ICのいくつかの態様において、R1は水素であり、R2はC1-4アルキルまたはC1-4フルオロアルキルである。いくつかの態様において、R1は水素であり、R2はC1-2アルキルである。他の態様において、R1は水素であり、R2はメチルである。いくつかの態様において、R1は水素であり、R2はC1-2フルオロアルキルである。他の態様において、R1は水素であり、R2はトリフルオロメチルである。
【0042】
[0044]式Iのいくつかの態様において、R1およびR2は両方とも同時にC1-4アルキルである。いくつかの態様において、それらは同時にC1-2アルキルである。他の態様において、それらは同時にメチルである。
【0043】
[0045]式Iのいくつかの態様において、R1およびR2は両方とも同時にC1-4フルオロアルキルである。いくつかの態様において、それらは同時にC1-2フルオロアルキルである。他の態様において、それらは同時にトリフルオロメチルである。
【0044】
[0046]式I、式IBまたは式ICのいくつかの態様において、R1は-CONH2であり、R2はC1-2アルキルまたはC1-2フルオロアルキルである。他の態様において、R1は-CONH2であり、R2はメチルまたはトリフルオロメチルである。さらに他の態様において、R1は-CONH2であり、R2はトリフルオロメチルである。
【0045】
[0047]式Iのいくつかの態様において、R1およびR2は、それらが付着している炭素原子と一緒になって、OまたはSから独立して選択される最大2個のヘテロ原子を含有する非置換3~7員複素環式環を形成する。これらの態様のいくつかにおいて、R1およびR2は、それらが付着している炭素原子と一緒になって、OまたはSから選択される1個の環ヘテロ原子を含有する非置換3~7員複素環式環を形成する。他の態様において、前記環ヘテロ原子はOである。
【0046】
[0048]式I、式IBまたは式ICのいくつかの態様において、mは1である。他の態様において、mは0である。
[0049]式I、式IBまたは式ICのいくつかの態様において、R4の両方の事例は同時に水素である。他の態様において、R4の両方の事例は、それらが付着している炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成する。
【0047】
[0050]式I、式IBまたは式ICのいくつかの態様において、R3は、水素、ハロゲン、-CNまたは-NH2から選択される。いくつかの態様において、R3は、水素またはハロゲンのいずれかから選択される。さらに他の態様において、R3は、水素、クロロまたはフルオロから選択される。他の態様において、それは水素またはフルオロから選択される。さらに他の態様において、それはフルオロまたはクロロから選択される。他の態様において、R3はクロロである。他の態様において、R3はフルオロである。他の態様において、R3は水素である。
【0048】
[0051]式I、式IBまたは式ICの化合物のいくつかの態様において、mは0であり、化合物は、それぞれ式II、式IIBまたは式IICの1つであるか、医薬的に許容しうるその塩である。
【0049】
【0050】
[0052]式II、式IIBまたは式IICのいくつかの態様において、nは、1、2または3から選択される。他の態様において、nは1または2である。他の態様において、nは1である。さらに他の態様において、nは2である。他の態様において、nは0である。
【0051】
[0053]式II、式IIBまたは式IICのいくつかの態様において、JBのすべての事例はフルオロである。他の態様において、JBのすべての事例はクロロである。さらに他の態様において、JBのいくつかの事例はフルオロで、JBのいくつかの事例はクロロである。いくつかの態様において、nは3であり、JBのいくつかの事例はクロロであり、JBの残りの事例はフルオロである。他の態様において、nは3であり、JBのすべての事例はフルオロである。いくつかの態様において、nは2であり、各JBはフルオロまたはクロロから独立して選択される。他の態様において、nは2であり、JBの事例の一方はクロロであり、JBの事例の他方はフルオロである。さらに他の態様において、nは2であり、各JBはクロロである。さらに他の態様において、nは2であり、各JBはフルオロである。さらに他の態様において、nは1であり、JBはクロロである。さらに他の態様において、nは1であり、JBはフルオロである。
【0052】
[0054]式IIのいくつかの態様において、R1およびR2は両方とも同時に水素である。
[0055]式II、式IIBまたは式IICのいくつかの態様において、R1は水素であり、R2はC1-4アルキルまたはC1-4フルオロアルキルである。いくつかの態様において、R1は水素であり、R2はC1-2アルキルである。他の態様において、R1は水素であり、R2はメチルである。いくつかの態様において、R1は水素であり、R2はC1-2フルオロアルキルである。他の態様において、R1は水素であり、R2はトリフル
オロメチルである。
【0053】
[0056]式IIのいくつかの態様において、R1およびR2は両方とも同時にC1-4アルキルである。いくつかの態様において、それらは同時にC1-2アルキルである。他の態様において、それらは同時にメチルである。
【0054】
[0057]式IIのいくつかの態様において、R1およびR2は両方とも同時にC1-4フルオロアルキルである。いくつかの態様において、それらは同時にC1-2フルオロアルキルである。他の態様において、それらは同時にトリフルオロメチルである。
【0055】
[0058]式II、式IIBまたは式IICのいくつかの態様において、R1は-CONH2であり、R2はC1-2アルキルまたはC1-2フルオロアルキルである。他の態様において、R1は-CONH2であり、R2はメチルまたはトリフルオロメチルである。さらに他の態様において、R1は-CONH2であり、R2はトリフルオロメチルである。
【0056】
[0059]式IIのいくつかの態様において、R1およびR2は、それらが付着している炭素原子と一緒になって、OまたはSから独立して選択される最大2個のヘテロ原子を含有する非置換3~7員複素環式環を形成する。これらの態様のいくつかにおいて、R1およびR2は、それらが付着している炭素原子と一緒になって、OまたはSから選択される1個の環ヘテロ原子を含有する非置換3~7員複素環式環を形成する。他の態様において、前記環ヘテロ原子はOである。
【0057】
[0060]式II、式IIBまたは式IICのいくつかの態様において、R4の両方の事例は同時に水素である。他の態様において、R4の両方の事例は、それらが付着している炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成する。
【0058】
[0061]式II、式IIBまたは式IICのいくつかの態様において、R3は、水素、ハロゲン、-CNまたは-NH2から選択される。これらの態様のいくつかにおいて、R3は、水素またはハロゲンのいずれかから選択される。さらに他の態様において、R3は、水素、クロロまたはフルオロから選択される。他の態様において、それは水素またはフルオロから選択される。さらに他の態様において、それはフルオロまたはクロロから選択される。他の態様において、R3はクロロである。他の態様において、R3はフルオロである。他の態様において、R3は水素である。
【0059】
[0062]式I、式IBまたは式ICの化合物のいくつかの態様において、mは1であり、化合物は、それぞれ式III、式IIIBまたは式IIICの1つであるか、医薬的に許容しうるその塩である。
【0060】
【0061】
[0063]式III、式IIIBまたは式IIICのいくつかの態様において、nは、1、2または3から選択される。他の態様において、nは1または2である。他の態様において、nは1である。さらに他の態様において、nは2である。他の態様において、nは0である。
【0062】
[0064]式III、式IIIBまたは式IIICのいくつかの態様において、JBのすべての事例はフルオロである。他の態様において、JBのすべての事例はクロロである。さらに他の態様において、JBのいくつかの事例はフルオロで、JBのいくつかの事例はクロロである。いくつかの態様において、nは3であり、JBのいくつかの事例はクロロであり、JBの残りの事例はフルオロである。他の態様において、nは3であり、JBのすべての事例はフルオロである。いくつかの態様において、nは2であり、各JBはフルオロまたはクロロから独立して選択される。他の態様において、nは2であり、JBの事例の一方はクロロであり、JBの事例の他方はフルオロである。さらに他の態様において、nは2であり、各JBはクロロである。さらに他の態様において、nは2であり、各JBはフルオロである。さらに他の態様において、nは1であり、JBはクロロである。さらに他の態様において、nは1であり、JBはフルオロである。
【0063】
[0065]式IIIのいくつかの態様において、R1およびR2は両方とも同時に水素である。
[0066]式III、式IIIBまたは式IIICのいくつかの態様において、R1は水素であり、R2はC1-4アルキルまたはC1-4フルオロアルキルである。
【0064】
[0067]式IIIのいくつかの態様において、R1およびR2は両方とも同時にC1-4アルキルである。いくつかの態様において、それらは同時にC1-2アルキルである。他
の態様において、それらは同時にメチルである。いくつかの態様において、R1は水素であり、R2はC1-2アルキルである。他の態様において、R1は水素であり、R2はメチルである。いくつかの態様において、R1は水素であり、R2はC1-2フルオロアルキルである。他の態様において、R1は水素であり、R2はトリフルオロメチルである。
【0065】
[0068]式IIIのいくつかの態様において、R1およびR2は両方とも同時にC1-4フルオロアルキルである。いくつかの態様において、それらは同時にC1-2フルオロアルキルである。他の態様において、それらは同時にトリフルオロメチルである。
【0066】
[0069]式III、式IIIBまたは式IIICのいくつかの態様において、R1は-CONH2であり、R2はC1-2アルキルまたはC1-2フルオロアルキルである。他の態様において、R1は-CONH2であり、R2はメチルまたはトリフルオロメチルである。さらに他の態様において、R1は-CONH2であり、R2はトリフルオロメチルである。
【0067】
[0070]式IIIのいくつかの態様において、R1およびR2は、それらが付着している炭素原子と一緒になって、OまたはSから独立して選択される最大2個のヘテロ原子を含有する非置換3~7員複素環式環を形成する。これらの態様のいくつかにおいて、R1およびR2は、それらが付着している炭素原子と一緒になって、OまたはSから選択される1個の環ヘテロ原子を含有する非置換3~7員複素環式環を形成する。他の態様において、前記環ヘテロ原子はOである。
【0068】
[0071]式III、式IIIBまたは式IIICのいくつかの態様において、R4の両方の事例は同時に水素である。他の態様において、R4の両方の事例は、それらが付着している炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成する。
【0069】
[0072]式III、式IIIBまたは式IIICのいくつかの態様において、R3は、水素、ハロゲン、-CNまたは-NH2から選択される。これらの態様のいくつかにおいて、R3は、水素またはハロゲンのいずれかから選択される。さらに他の態様において、R3は、水素、クロロまたはフルオロから選択される。他の態様において、それは水素またはフルオロから選択される。さらに他の態様において、それはフルオロまたはクロロから選択される。他の態様において、R3はクロロである。他の態様において、R3はフルオロである。他の態様において、R3は水素である。
【0070】
[0073]式Iのいくつかの態様において、化合物は、式IVの1つまたは医薬的に許容しうるその塩である。
【0071】
【0072】
[0074]式IVのいくつかの態様において、nは、1、2または3から選択される。他の態様において、nは1または2である。さらに他の態様において、nは2である。他の態様において、nは1である。他の態様において、nは0である。
【0073】
[0075]式IVのいくつかの態様において、JBのすべての事例はフルオロである。他の態様において、JBのすべての事例はクロロである。さらに他の態様において、JBのいくつかの事例はフルオロで、JBのいくつかの事例はクロロである。いくつかの態様において、nは2であり、各JBはフルオロまたはクロロから独立して選択される。他の態様において、nは2であり、JBの事例の一方はクロロであり、JBの事例の他方はフルオロである。さらに他の態様において、nは2であり、各JBはクロロである。さらに他の態様において、nは2であり、各JBはフルオロである。さらに他の態様において、nは1であり、JBはクロロである。さらに他の態様において、nは1であり、JBはフルオロである。
【0074】
[0076]式IVのいくつかの態様において、mは1である。他の態様において、mは0である。
[0077]式IVのいくつかの態様において、R4の両方の事例は同時に水素である。他の態様において、R4の両方の事例は、それらが付着している炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成する。
【0075】
[0078]式IVのいくつかの態様において、R3は、水素、ハロゲン、-CNまたは-NH2から選択される。これらの態様のいくつかにおいて、R3は、水素またはハロゲンのいずれかである。さらに他の態様において、R3は、水素、クロロまたはフルオロから選択される。他の態様において、それは水素またはフルオロから選択される。さらに他の態様において、それはフルオロまたはクロロから選択される。他の態様において、R3はクロロである。他の態様において、R3はフルオロである。他の態様において、R3は水素である。
【0076】
[0079]式IVのいくつかの態様において、化合物は、式Vの1つまたは医薬的に許容しうるその塩である
【0077】
【0078】
[0080]式Vのいくつかの態様において、nは、0、1、2または3から選択される。他の態様において、nは1または2から選択される。他の態様において、nは1である。さらに他の態様において、nは2である。
【0079】
[0081]式Vのいくつかの態様において、JBのすべての事例はフルオロである。他の態
様において、JBのすべての事例はクロロである。さらに他の態様において、JBのいくつかの事例はフルオロで、JBのいくつかの事例はクロロである。いくつかの態様において、nは2であり、各JBはフルオロまたはクロロから独立して選択される。他の態様において、nは2であり、JBの事例の一方はクロロであり、JBの事例の他方はフルオロである。さらに他の態様において、nは2であり、各JBはクロロである。さらに他の態様において、nは2であり、各JBはフルオロである。さらに他の態様において、nは1であり、JBはクロロである。さらに他の態様において、nは1であり、JBはフルオロである。
【0080】
[0082]式Vのいくつかの態様において、mは1である。他の態様において、mは0である。
[0083]式Vのいくつかの態様において、R3は、水素、ハロゲン、-CNまたは-NH2から選択される。これらの態様のいくつかにおいて、R3は、水素またはハロゲンのいずれかである。さらに他の態様において、R3は、水素、クロロまたはフルオロから選択される。他の態様において、それは水素またはフルオロから選択される。さらに他の態様において、それはフルオロまたはクロロから選択される。他の態様において、R3はクロロである。他の態様において、R3はフルオロである。他の態様において、R3は水素である。
【0081】
[0084]式IIのいくつかの態様において、化合物は、式VIの1つであるか、医薬的に許容しうるその塩である。
【0082】
【0083】
[0085]式VIのいくつかの態様において、R1およびR2は両方とも同時に水素である。いくつかの態様において、R1は水素であり、R2はC1-4アルキルまたはC1-4フルオロアルキルである。
【0084】
[0086]式VIのいくつかの態様において、R1およびR2は両方とも同時にC1-4アルキルである。いくつかの態様において、それらは同時にC1-2アルキルである。他の態様において、それらは同時にメチルである。いくつかの態様において、R1は水素であり、R2はC1-2アルキルである。他の態様において、R1は水素であり、R2はメチルである。いくつかの態様において、R1は水素であり、R2はC1-2フルオロアルキルである。他の態様において、R1は水素であり、R2はトリフルオロメチルである。
【0085】
[0087]式VIのいくつかの態様において、R1およびR2は両方とも同時にC1-4フルオロアルキルである。いくつかの態様において、それらは同時にC1-2フルオロアルキルである。他の態様において、それらは同時にトリフルオロメチルである。
【0086】
[0088]式VIのいくつかの態様において、R1は-CONH2であり、R2はC1-2アルキルまたはC1-2フルオロアルキルである。他の態様において、R1は-CONH2であり、R2はメチルまたはトリフルオロメチルである。さらに他の態様において、R1は-CONH2であり、R2はトリフルオロメチルである。
【0087】
[0089]式VIのいくつかの態様において、R1およびR2は、それらが付着している炭素原子と一緒になって、OまたはSから独立して選択される最大2個のヘテロ原子を含有する非置換3~7員複素環式環を形成する。これらの態様のいくつかにおいて、R1およびR2は、それらが付着している炭素原子と一緒になって、OまたはSから選択される1個の環ヘテロ原子を含有する非置換3~7員複素環式環を形成する。他の態様において、前記環ヘテロ原子はOである。
【0088】
[0090]R1とR2が異なる式VIのいくつかの態様において、化合物は、式VIAまたは式VIBの1つである。
【0089】
【0090】
[0091]式VI、式VIAまたは式VIBのいくつかの態様において、nは、1、2または3から選択される。他の態様において、nは2である。さらに他の態様において、nは1である。さらに他の態様において、nは3である。さらに他の態様において、nは0である。
【0091】
[0092]式VI、式VIAまたは式VIBのいくつかの態様において、JBのすべての事例はフルオロである。他の態様において、JBのすべての事例はクロロである。さらに他の態様において、JBのいくつかの事例はフルオロで、JBのいくつかの事例はクロロである。いくつかの態様において、nは2であり、各JBはフルオロまたはクロロから独立して選択される。他の態様において、nは2であり、JBの事例の一方はクロロであり、JBの事例の他方はフルオロである。さらに他の態様において、nは2であり、各JBはクロロである。さらに他の態様において、nは2であり、各JBはフルオロである。さらに他の態様において、nは1であり、JBはクロロである。さらに他の態様において、nは1であり、JBはフルオロである。
【0092】
[0093]式VI、式VIAまたは式VIBの上記態様のいくつかにおいて、R3は、水素、ハロゲン、-CNまたは-NH2から選択される。これらの態様のいくつかにおいて、R3は、水素またはハロゲンのいずれかである。さらに他の態様において、R3は、水素、クロロまたはフルオロから選択される。他の態様において、それは水素またはフルオロから選択される。さらに他の態様において、それはフルオロまたはクロロから選択される
。他の態様において、R3はクロロである。他の態様において、R3はフルオロである。他の態様において、R3は水素である。
【0093】
[0094]任意の上記式のいくつかの態様において、化合物は以下の表Iから選択される1つである:
【0094】
【0095】
【0096】
[0095]本発明の一態様において、化合物はI-1である。本発明の他の態様において、化合物はI-2である。他の態様において、化合物はI-3である。さらに他の態様において、化合物はI-4である。他の態様において、化合物はI-5である。
【0097】
[0096]本発明のプロドラッグは、高い水溶解度によって特徴付けられる。プロドラッグの水溶解度は、対応する親化合物よりはるかに高い。例えば、化合物I-1の溶解度はpH7において66~1000μg/mLで、化合物I-4はpH7において71μg/mLである;それに対し、親化合物である中間体3の溶解度はpH7において2~3μg/mLである。向上した溶解度を考慮すると、親化合物と比較した場合、本発明のプロドラッグは、非経口的送達、例えば、静脈内送達、または皮下筋肉内注射、眼内、くも膜下、脳内、脳室内もしくは動脈内送達のための製剤の開発に適している可能性がある。
【0098】
[0097]本発明のプロドラッグは、投与後の親薬物への迅速な開裂によって特徴付けられる。例えば、それらはex-vivoでのラット腸液アッセイにおいて迅速に開裂する。それらはまた、ラットおよびイヌなどの前臨床動物においてin vivoで迅速に開裂する。より具体的には、本発明のプロドラッグは、ex-vivoモデルシステムで、または前臨床動物においてin vivoで投与したときの、予想外に迅速な開裂または放出時間によって特徴付けられる。
【0099】
本発明の医薬的に許容しうる塩。
[0098]本明細書中に記載するすべての事例において、“化合物”という用語は、“医薬的に許容しうる塩”というフレーズが実際に使われているか否かにかかわらず、該化合物の医薬的に許容しうる塩も包含する。本明細書中で用いられる“医薬的に許容しうる塩”というフレーズは、式Iまたは表Iの化合物の医薬的に許容しうる有機または無機塩をさす。式Iまたは表Iの化合物の医薬的に許容しうる塩は、医薬に用いられる。しかしながら、医薬的に許容することができない塩は、式Iもしくは表Iの化合物または他の医薬的
に許容しうる塩の調製に有用であることができる。医薬的に許容しうる塩は、対イオンとして働く他の原子または分子の包含を伴う。対イオンは、親化合物上の電荷を安定化する任意の有機または無機部分であることができる。さらに、医薬的に許容しうる塩は、その構造中に1より多くの帯電原子を有することができる。多数の帯電原子が医薬的に許容しうる塩の一部である事例は、多数の対イオンを有することができる。いくつかの事例において、対イオンは同じであることができる。他の事例において、それらは各帯電原子で異なっていることができる。したがって、医薬的に許容しうる塩は、1以上の帯電原子および/または1以上の対イオンを有することができる。
【0100】
[0099]本明細書中に記載する化合物の医薬的に許容しうる塩としては、式Iまたは表Iの化合物と無機または有機塩基との反応から誘導されるものが挙げられる。いくつかの態様において、塩は、化合物の最終的な単離および精製中にその場で調製することができる。他の態様において、塩は、別個の合成段階において式Iまたは表Iの化合物の遊離形態から調製することができる。
【0101】
[00100]リン酸部分を含有する式Iまたは表Iの化合物に関し、適した“医薬的に許容
しうる塩”という用語は、無機塩基および有機塩基を含む医薬的に許容しうる非毒性塩基から調製される塩をさす。無機塩基から誘導される塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、第二マンガン塩、第一マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などが挙げられる。特定の態様としては、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、セシウム、カリウムおよびナトリウム塩のほか、有機アミンの塩が挙げられる。医薬的に許容しうる有機非毒性アミンから誘導される塩としては、第一級、第二級および第三級アミン、天然由来の置換アミンを含む置換アミン、環状アミン、および塩基性イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチルモルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン(hydrabamine)、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、アラニン、メグルミンなどが挙げられる。具体的な態様はメグルミン塩である。
【0102】
[00101]上記医薬的に許容しうる塩および他の典型的な医薬的に許容しうる塩の調製法
は、Berg et al.“Pharmaceutical Salts,”J.Pharm.Sci.,1977:66:1-19に十分に記載されており、これを全体として本明細書中で参考として援用する。
【0103】
[00102]本明細書中に記載する化合物に加えて、それらの医薬的に許容しうる塩も、本
明細書中で特定する疾患を処置または予防するための組成物に採用することができる。
医薬組成物および投与方法。
【0104】
[00103]本明細書中に開示する化合物、およびその医薬的に許容しうる塩は、医薬組成
物または“製剤”として配合することができる。
[00104]典型的な製剤は、式Iまたは表Iの化合物または医薬的に許容しうるその塩と
、キャリヤー、希釈剤または賦形剤を混合することにより調製する。適したキャリヤー、希釈剤および賦形剤は当業者に周知であり、炭水化物、ワックス、水溶性および/もしくは水膨潤性ポリマー、親水性もしくは疎水性材料、ゼラチン、油、溶媒、水などのような材料を包含する。用いられる特定のキャリヤー、希釈剤または賦形剤は、式Iまたは表Iの化合物または医薬的に許容しうるその塩が配合される手段および目的に依存する。溶媒
は、一般に、哺乳類に投与するのに安全(GRAS-一般に安全とみなされる(Generally
Regarded as Safe))であると当業者に認められている溶媒に基づき選択される。一般に、安全な溶媒は、非毒性水性溶媒、例えば、水、および水中で溶解性または混和性を示す他の非毒性溶媒である。適した水性溶媒としては、水、エタノール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール(例えば、PEG400、PEG300)など、およびそれらの混合物が挙げられる。製剤はまた、見栄えの良い薬物(すなわち、式Iもしくは表Iの化合物、または医薬的に許容しうるその塩、またはその医薬組成物)を提供するために、または医薬製品(すなわち医薬品)の製造を補助するために、他のタイプの賦形剤、例えば、1以上の緩衝剤、安定剤、付着防止剤、界面活性剤、湿潤剤、潤滑剤、乳化剤、バインダー、懸濁化剤、崩壊剤、充填剤、収着剤、コーティング(例えば、腸溶性または徐放性)、防腐剤、酸化防止剤、不透明化剤(opaquing agent)、流動促進剤(glidant)、加工助剤、着色剤、甘味剤、芳香剤、香味剤および他の公知の添加剤を包含することができる。
【0105】
[00105]製剤は、従来の溶解および混合手順を用いて調製することができる。例えば、
バルクの薬物物質(すなわち、式Iまたは表Iの化合物、医薬的に許容その塩、または該化合物の安定化形態、例えば、シクロデキストリン誘導体もしくは他の公知の複合体形成作用物質との複合体)を、1以上の上記賦形剤の存在下で、適した溶媒に溶解する。望ましい純度を有する化合物を、凍結乾燥製剤、ミル粉砕粉末または水溶液の形態にある医薬的に許容しうる希釈剤、キャリヤー、賦形剤または安定剤と、混合してもよい。配合は、周囲温度、適したpH、および望ましい純度で、生理学的に許容するキャリヤーと一緒に混合することにより行うことができる。製剤のpHはおもに化合物の特定用途および濃度に依存するが、約3~約8の範囲であることができる。本明細書中に記載する作用物質(薬剤)が溶媒プロセスによって形成される固体非晶質分散物である場合、後に噴霧乾燥することができるスラリーとして添加剤を溶液中に溶解または懸濁させるように、混合物を形成するときに添加剤を噴霧乾燥溶液に直接加えてもよい。あるいは、添加剤は、最終的な配合製品の形成を補助するために、噴霧乾燥プロセス後に加えてもよい。
【0106】
[00106]式Iもしくは表Iの化合物または医薬的に許容しうるその塩は、典型的には、
容易に制御可能な薬物投与量を提供し、処方されたレジメンでの患者の服薬順守を可能にするような、医薬剤形に配合される。式Iもしくは表Iの化合物または医薬的に許容しうるその塩の医薬製剤は、さまざまな投与経路および投与タイプに合わせて調製することができる。異なる医学的状態では異なる投与経路が当然必要であるので、さまざまな剤形が同一化合物に関し存在していてもよい。
【0107】
[00107]キャリヤー材料と組み合わせて単一剤形をもたらすことができる活性成分の量
は、処置する被験対象および特定の投与方法に応じて変動する。例えば、ヒトへの経口投与を意図した持効性製剤は、約1~1000mgの活性材料を、全組成物の約5~約95%(重量:重量)であることができる適切で好都合な量のキャリヤー材料と配合して、含有することができる。医薬組成物は、容易に測定可能な投与量を提供するように調製することができる。例えば、静脈内注入を意図した水溶液は、約30mL/時間の割合での適した注入体積をもたらすことができるように、溶液1ミリリットルにつき約3~500μgの活性成分を含有することができる。一般的企図として、投与される阻害薬の初期医薬的有効量は1用量あたり約0.01~100mg/kg、すなわち1日あたり患者の体重1kgにつき約0.1~20mg/kgの範囲であり、用いられる化合物の典型的な初期範囲は0.3~15mg/kg/日である。
【0108】
[00108]本明細書中で用いられる“治療的有効量”という用語は、研究者、獣医、医師
または他の臨床家により探求されている組織、系、動物またはヒトにおける生物学的または医薬的応答を生じさせる、活性化合物または医薬品の量を意味する。投与される化合物
の治療的または医薬的有効量は、そのような考慮対象の影響を受け、疾患または障害またはその1以上の症状の改善、治癒または処置に必要な最小量である。
【0109】
[00109]式Iまたは表I、または医薬的に許容しうるその塩の医薬組成物は、優良医療
規範(good medical practice)と一致する方法、すなわち、量、濃度、スケジュール、コ
ース、ビヒクルおよび投与経路で、配合し、投与量に分け(dosed)、投与される(adminstered)。この文脈における考慮対象の要因としては、処置される特定の障害、処置される特定の哺乳類、個々の患者の臨床状態、障害の原因、作用因子の送達部位、投与方法、投与のスケジューリング、および医療従事者に知られている他の要因、例えば、個々の患者の年齢、体重および応答が挙げられる。
【0110】
[00110]“予防的有効量”という用語は、疾患もしくは障害を防ぐまたは疾患もしくは
障害を獲得する可能性を実質的に低下させるか、獲得前に疾患または障害の重症度を低下させるか、症状が発現する前に1以上の症状の重症度を低下させるのに有効な量をさす。おおまかに、予防的方策は、一次予防(疾患の発現を予防する)と二次予防(疾患が既に発現している場合に、その経過の悪化から患者を保護する)に分けられる。
【0111】
[00111]許容しうる希釈剤、キャリヤー、賦形剤および安定剤は、採用される投与量お
よび濃度において受容者に毒性を示さないものであり、緩衝剤、例えば、ホスフェート、シトレート、および他の有機酸;酸化防止剤、例えば、アスコルビン酸およびメチオニン;防腐剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチルまたはベンジルアルコール;メチルもしくはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;およびm-クレゾール);タンパク質、例えば、血清アルブミン、ゼラチンまたは免疫グロブリン;親水性ポリマー、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えば、グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニンまたはリシン;単糖類、二糖類、および他の炭水化物、例えば、グルコース、マンノースまたはデキストリン;キレート化剤、例えばEDTA;糖類、例えば、スクロース、マンニトール、トレハロースまたはソルビトール;塩形成対イオン、例えばナトリウム;金属複合体(例えばZn-タンパク質複合体);および/または非イオン性界面活性剤、例えば、TWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)またはポリエチレングリコール(PEG)を包含する。活性医薬成分は、例えば、コロイド薬物送達システム(例えば、リポソーム、アルブミン小球体、マイクロエマルション、ナノ粒子およびナノカプセル)またはマクロエマルションにおいてコアセルベーション技術または界面重合により調製されるマイクロカプセル、例えば、それぞれヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルおよびポリ-(メタクリル酸メチル)マイクロカプセルに、封入することもできる。そのような技術は、Remington’s:The Science and Practice of Pharmacy,第21版,University of the Sciences in Philadelphia編集,2005年(以下、“Remington’s”)に開示されている。
【0112】
[00112]本発明の化合物、組成物または製剤に関する“投与する”、“投与すること”
または“投与”という用語は、該化合物を、処置を必要としている動物の器官系に導入することを意味する。本発明の化合物を1以上の他の活性作用物質と組み合わせて提供する場合、“投与”およびその変形はそれぞれ、化合物および他の活性作用物質を同時および/または逐次的に導入することを包含すると理解する。
【0113】
[00113]本明細書中に記載する組成物は、処置される疾患の重症度およびタイプに応じ
て、全身的に、または局部的に、例えば、経口的に(例えば、カプセル、粉末、溶液、懸濁液、錠剤、舌下錠剤などを用いて)、吸入により(例えば、エアロゾル、ガス、吸入器
、ネブライザーなどで)、耳に(例えば点耳液を用いて)、局所に(例えば、クリーム、ゲル、リニメント剤、ローション、軟膏、ペースト、経皮パッチなどを用いて)、眼に(例えば、点眼液、眼科用ゲル、眼軟膏で)、経直腸的に(例えば、浣腸剤または坐剤を用いて)、経鼻的に、口腔内に、経膣的に(例えば、潅注液、子宮内器具、膣坐剤、膣リングまたは膣錠などを用いて)、埋め込まれたレザバーなどを介して、または非経口的に、投与することができる。
【0114】
[00114]本明細書中で用いられる“非経口”という用語は、限定されるものではないが
、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液内、胸骨内、髄腔内、肝内、病巣内および頭蓋内への注射または注入技術を包含する。組成物は、経口、皮下または静脈内に投与されることが好ましい。
【0115】
[00115]本明細書中に記載される医薬組成物は、任意の経口的に許容しうる剤形、例え
ば、限定されるものではないが、カプセル、錠剤、水性懸濁液または水溶液で、経口投与することができる。経口投与のための液体剤形としては、限定されるものではないが、医薬的に許容しうるエマルション、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤が挙げられる。活性化合物に加えて、液体剤形は、当分野で一般に用いられている不活性希釈剤、例えば、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油(とりわけ、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタン脂肪酸エステル、ならびにそれらの混合物を含有することができる。不活性希釈剤のほかに、経口組成物は、湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、香味剤および芳香剤などのアジュバントも包含することができる。
【0116】
[00116]経口投与のための固体剤形としては、カプセル、錠剤、丸剤、粉末、および顆
粒が挙げられる。そのような固体剤形では、活性化合物を、少なくとも1つの不活性な医薬的に許容しうる賦形剤またはキャリヤー、例えば、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウム、および/またはa)充填剤または増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、およびケイ酸、b)バインダー、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、およびアカシアなど、c)保湿剤、例えばグリセロール、d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のシリケート、および炭酸ナトリウム、e)溶液抑制剤、例えばパラフィン、f)吸収促進剤、例えば、第四級アンモニウム化合物、g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなど、h)吸収剤、例えば、カオリンおよびベントナイト粘土、ならびにi)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物と混合する。錠剤は、コーティングされていなくてもよく、あるいは、公知の技術、例えば、不快な味を隠すため、または胃腸管での崩壊および吸収を遅らせて、これにより長期間にわたる持続作用をもたらすためのマイクロカプセル化により、コーティングされていてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの遅延材料を、単独またはワックスと一緒に採用することができる。水溶性味質マスキング剤、例えば、ヒドロキシプロピル-メチルセルロースまたはヒドロキシプロピル-セルロースを採用してもよい。
【0117】
[00117]経口投与に適した式Iもしくは表Iの化合物またはその医薬的に許容しうる塩
の製剤は、錠剤、丸剤、トローチ、ロゼンジ、水性もしくは油性懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒、エマルション、硬もしくは軟カプセル、例えばゼラチンカプセル、シロップ、
またはエリキシルなどの別個の単位として、調製することができる。経口使用を意図した化合物の製剤は、医薬組成物の製造に関する当分野で公知の任意の方法に従って調製することができる。
【0118】
[00118]経口使用のための製剤は、活性成分が不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシ
ウム、リン酸カルシウムもしくはカオリンと混合されている硬ゼラチンカプセルとして、または、活性成分が水溶性キャリヤー、例えば、ポリエチレングリコールもしくは油性媒体、例えば、落花生油、液体パラフィンもしくはオリーブ油と混合されている軟ゼラチンカプセルとして、提供することができる。
【0119】
[00119]活性化合物は、1以上の上記賦形剤と一緒にマイクロ封入された形態にあるこ
ともできる。
[00120]水性懸濁液が経口使用で求められている場合、活性成分を乳化剤および懸濁化
剤と組み合わせる。望ましい場合、特定の甘味剤および/または香味剤を加えてもよい。シロップおよびエリキシルは、甘味剤、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはスクロースと一緒に配合することができる。そのような製剤は、緩和剤、防腐剤、香味剤および着色剤および酸化防止剤を含有することもできる。
【0120】
[00121]本明細書中に記載する組成物の注射可能な滅菌形態(例えば、非経口投与用)
は、水性または油性懸濁液であることができる。これらの懸濁液は、適した分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を用いて、当分野で公知の技術に従って配合することができる。注射可能な滅菌調製物は、非毒性で非経口的に許容しうる希釈剤または溶媒中の注射可能な滅菌溶液または懸濁液、例えば1,3-ブタンジオールまたはPEG400中の溶液であることもできる。採用することができる許容しうるビヒクルおよび溶媒には、水、リンガー溶液および生理食塩水がある。これに加えて、従来、滅菌固定油が溶媒または懸濁化媒体として採用されている。この目的では、任意の滅菌固定油、例えば、合成モノ-またはジ-グリセリドを採用することができる。オレイン酸およびそのグリセリド誘導体のような脂肪酸は、天然の医薬的に許容しうる油、例えば、特にポリオキシエチル化バージョンのオリーブ油またはヒマシ油のように、注射剤の調製に有用である。これらの油性溶液または懸濁液は、長鎖アルコール希釈剤または分散剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、またはエマルションおよび懸濁液など医薬的に許容しうる剤形の製剤に一般に用いられている同様の分散剤も、含有することができる。他の一般に用いられている界面活性剤、例えば、Tween、Span、および医薬的に許容しうる固体、液体または他の剤形の製造に一般に用いられている他の乳化剤または生物学的利用能増強剤も、注射可能な製剤の目的に用いることができる。
【0121】
[00122]油状懸濁液は、式Iもしくは表Iの化合物または医薬的に許容しうるその塩を
、落花生油、オリーブ油、ゴマ油もしくはヤシ油のような植物油か、または液体パラフィンのような鉱油中に懸濁させることにより、配合することができる。油状懸濁液は、増粘剤、例えば、蜜ろう、固形パラフィンまたはセチルアルコールを含有することができる。口当たりがいい経口調製物を提供するために、上記のような甘味剤、および香味剤を加えてもよい。これらの組成物は、酸化防止剤、例えば、ブチル化ヒドロキシアニソールまたはアルファ-トコフェロールを添加することにより保存することができる。
【0122】
[00123]式Iもしくは表Iの化合物または医薬的に許容しうるその塩の水性懸濁液は、
水性懸濁液の製造に適した賦形剤との混加物(admixture)中に活性材料を含有する。その
ような賦形剤としては、懸濁化剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クロスカルメロース、ポビドン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴムおよびアラビアゴム、ならびに分散剤または湿潤剤、例えば、天然由来のホスファチド(例えばレクチン)、アルキレンオキシドと脂肪酸の縮合物(例えばポリオキシエチレンステアレート)、エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合物(例えばヘプタデカエチレンオキシセタノール)、エチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導される部分エステルとの縮合物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)が挙げられる。水性懸濁液は、1以上の防腐剤、例えばエチルまたはn-プロピルp-ヒドロキシ-ベンゾエート、1以上の着色剤、1以上の香味剤、および1以上の甘味剤、例えばスクロースまたはサッカリンを含有することもできる。
【0123】
[00124]注射可能な製剤は、例えば、細菌保持フィルターに通して濾過することによる
か、あるいは、使用前に滅菌水または他の注射可能な滅菌媒体中に溶解または分散させることができる滅菌固体組成物の形態にある滅菌剤を組み込むことにより、滅菌することができる。
【0124】
[00125]注射可能な溶液またはマイクロエマルションは、局所ボーラス注射により患者
の血流中に導入することができる。あるいは、本化合物の血中濃度が一定に維持されるように溶液またはマイクロエマルションを投与することが、有利である可能性がある。そのような一定濃度を維持するために、連続式静脈内送達機器を用いることができる。そのような機器の例は、Deltec CADD-PLUSTM モデル5400静脈ポンプである。
【0125】
[00126]直腸内または膣内投与のための組成物は、本明細書中に記載する化合物を、適
した非刺激性賦形剤またはキャリヤー、例えば、ココアバター、蜜ろう、ポリエチレングリコールまたは坐剤ワックスと混合することにより調製することができる坐剤であって、周囲温度では固体であるが体温では液体であり、したがって、直腸または膣腔で溶融して活性化合物を放出するものであることが好ましい。膣内投与に適した他の製剤は、ペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォームまたはスプレーとして提供されることができる。
【0126】
[00127]本明細書中に記載する医薬組成物は、特に、処置の標的が、眼、耳、皮膚また
は下部消化管の疾患など、局所施用により容易に到達することができる領域または臓器を包含する場合、局所投与することもできる。適した局所製剤は、これらの領域または臓器のそれぞれについて容易に調製される。
【0127】
[00128]本明細書中に記載する化合物の局所または経皮投与のための剤形としては、軟
膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、粉末、溶液、スプレー、吸入剤またはパッチが挙げられる。活性成分を、滅菌条件下で、医薬的に許容しうるキャリヤー、および要求に応じて、任意の必要な防腐剤または緩衝剤と一緒に混加する。眼科用製剤、点耳剤、および点眼剤も、本発明の範囲内にあると企図する。これに加えて、本発明は、経皮パッチの使用を企図しており、これは、体への化合物の制御送達を提供するという追加的利点を有する。そのような剤形は、化合物を適した媒体に溶解または分配することにより作製することができる。皮膚全体にわたる化合物の流れを増大させるために、吸収増強剤を用いることもできる。速度は、速度制御膜を提供するか、化合物をポリマーマトリックスまたはゲルに分散させることにより、制御することができる。下部消化管に関する局所施用は、肛門坐剤製剤(上記参照)または適した浣腸製剤で達成することができる。局所的な経皮パッチを用いることもできる。
【0128】
[00129]局所施用の場合、医薬組成物を、1以上のキャリヤーに懸濁または溶解した活
性成分を含有する適した軟膏に配合することができる。本発明の化合物の局所施用のためのキャリヤーとしては、限定されるものではないが、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水が挙げられる。あるいは、医薬組成物を、1以上の医薬的に許容しうるキャリヤーに懸濁または溶解させた活性成分を含有する適したローションまたはクリームに配合することができる。適したキャリヤーとしては、限定されるものではないが、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリールアルコール、2オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水が挙げられる。
【0129】
[00130]眼科的使用の場合、医薬組成物を、塩化ベンジルアルコニウムなどの防腐剤の
有無にかかわらず、pH調整された等張性滅菌生理食塩水中の微粉化懸濁液として、または、好ましくは、pH調整された等張性滅菌生理食塩水中の溶液として、配合することができる。あるいは、眼科的使用の場合、医薬組成物を、ワセリンなどの軟膏に配合してもよい。眼または他の外部組織、例えば口および皮膚の処置の場合、配合物を、活性成分(1以上)を例えば0.075~20%重量/重量の量で含有する局所軟膏またはクリームとして施用することができる。軟膏に配合する場合、活性成分を、油性、パラフィン系または水混和性軟膏ベースのいずれかと一緒に用いることができる。
【0130】
[00131]あるいは、活性成分を、水中油型クリームベースを用いてクリーム状に配合し
てもよい。望ましい場合、クリームベースの水相は、多価アルコール、すなわち、2以上のヒドロキシル基を有するアルコール、例えば、プロピレングリコール、ブタン1,3-ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロールおよびポリエチレングリコール(PEG400を含む)およびそれらの混合物を包含することができる。局所製剤は、望ましくは、皮膚または他の患部を経る活性成分の吸収または浸透を増進する化合物を包含することができる。そのような皮膚浸透増進剤の例としては、ジメチルスルホキシドおよび関連類似体が挙げられる。
【0131】
[00132]式Iもしくは表Iの化合物または医薬的に許容しうるその塩を用いて調製され
るエマルションの油相は、公知の方法で公知の成分から構成されることができる。該相は乳化剤(ほかにエマルゲンとして知られる)のみを含むことができるが、少なくとも1つの乳化剤と、脂肪もしくは油、または脂肪および油の両方との混合物を含むことが望ましい。親水性乳化剤を、安定剤として働く親油性乳化剤と一緒に包含させることもできる。いくつかの態様において、乳化剤は、油および脂肪の両方を包含する。総合して、安定剤(1以上)の有無にかかわらず乳化剤(1以上)はいわゆる乳化ワックスをもたらし、該ワックスは、油および脂肪と一緒になって、クリーム製剤の油状分散相を形成するいわゆる乳化軟膏ベースをもたらす。式Iもしくは表Iの化合物または医薬的に許容しうるその塩の配合における使用に適したエマルゲンおよびエマルション安定剤としては、TweenTM-60、SpanTM-80、セトステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリルおよびラウリル硫酸ナトリウムが挙げられる。
【0132】
[00133]医薬組成物は、経鼻エアロゾルまたは吸入により投与することもできる。その
ような組成物は、医薬製剤の分野で周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコールまたは他の適した防腐剤、生物学的利用能を増強するための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または他の従来の可溶化剤もしくは分散剤を用いて、生理食塩水中の溶液として調製することができる。肺内投与または経鼻投与に適した製剤は、例えば0.1~500ミクロンの範囲にある粒子サイズ(例えば0.5、1、30、35ミクロンなどのミクロンのきざみで0.1~500ミクロンの範囲にある粒子を含む)を有し、肺胞嚢に達するように鼻道を経る急速吸入または口を経る吸入により投与される。
【0133】
[00134]使用するための医薬組成物(または製剤)は、薬物の投与に用いられる方法に
応じて多様な方法で包装されることができる。一般に、分配品は、適した形態の医薬製剤を入れてある容器を包含する。適した容器は当業者に周知であり、ボトル(プラスチック
およびガラス)、小袋、アンプル、プラスチック袋、金属シリンダーなどの材料を包含する。容器は、包装の内容物への無分別な接近を防ぐために、不正開封防止機能が付いたセット(assemblage)を包含することもできる。これに加えて、容器の上部には、容器内容物を記載したラベルを付着させておく。ラベルは、適した注意書きも包含することができる。
【0134】
[00135]製剤は、単位用量または複数回用量のための容器、例えば、密封アンプルおよ
びバイアルに包装することができ、使用直前に注射用滅菌液体キャリヤー、例えば水の添加のみを必要とする凍結乾燥(freeze-dried)(凍結乾燥(lyophilized))状態で保管する
ことができる。即席の注射溶液または懸濁液は、上記種類の滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製する。好ましい単位投与量製剤は、本明細書中で先に挙げた1日用量または単位1日サブ用量、またはその適した割合(fraction)の活性成分を含有するものである。
【0135】
[00136]他の観点において、式Iもしくは表Iの化合物または医薬的に許容しうるその
塩は、獣医学的キャリヤーを含む獣医学的組成物の状態に配合することができる。獣医学的キャリヤーは、組成物の投与の目的に有用な材料であり、通常なら不活性または獣医学分野において許容され、活性成分に適合する、固体、液体またはガス状材料であることができる。これらの獣医学的組成物は、非経口、経口または他の任意の望ましい経路により、投与することができる。
【0136】
治療法
[00137]組織におけるNOの産生増加またはcGMP濃度の増大は、血管拡張、血小板
凝集および血小板粘着の阻害、降圧作用、抗リモデリング作用、抗線維化、抗アポトーシス作用、抗炎症作用、およびとりわけ神経シグナル伝達作用をもたらす。
【0137】
[00138]一観点において、本発明は、特定のsGC刺激剤のプロドラッグ、またはそれ
らの医薬的に許容しうる塩、またはそれらを含む医薬組成物を、単独または組み合わせて用いることによる、特定の障害の処置を必要としている患者における前記処置に関する。
【0138】
[00139]本開示は、可溶性グラニル酸シクラーゼ(sGC)の刺激剤の特定のプロドラ
ッグ、その医薬的に許容しうる塩および医薬製剤、ならびに、NO濃度の増大またはcGMP濃度の増大が望ましい可能性があるさまざまな疾患を処置および/または予防するための、単独または1以上の追加的作用物質との組み合わせでのそれらの使用に関する。
【0139】
[00140]他の態様において、本明細書中に開示する化合物は、生体系(例えば人体)に
おけるNOに対する望ましくない低下した生物学的利用能および/または感受性によって特徴付けられる疾患および障害、例えば、酸化ストレスまたはニトロソ化ストレスの状態と関連する疾患および障害の予防および/または処置に有用であることができるsGC刺激剤のプロドラッグである。
【0140】
[00141]本明細書中で用いられる“心臓血管疾患”(または“心臓血管障害”)という
用語は、心臓、血管(動脈、毛細血管、および静脈)、または両方のような循環器の異常な症状に基づく疾患をさす。該用語は、心血管系全般に悪影響を及ぼすあらゆる疾患、例えば、心臓病、脳の血管疾患、腎臓、肝臓および関連器官または肺の血管疾患、ならびに特に末梢動脈疾患も包含する。
【0141】
[00142]“sGCが関連する心臓血管疾患”は、NO/sGC/cGMPシステムが関
与することが知られているか疑われる疾患であり、sGC活性化/刺激によるか、NOシンターゼの活性化によるか、NOまたはNO供与体またはL-アルギンもしくはL-シトルリンのようなNO前駆体の添加によるか、cGMPの分解をもたらすPDE(ホスホジ
エステラーゼ)酵素の阻害によるか、あるいは上記方法のいずれかの組み合わせによって、処置または予防することができる心臓血管疾患である。
【0142】
[00143]本明細書中で用いられる“血管拡張”という用語は、血管の拡大をさす。それ
は、とりわけ大静脈、大動脈、およびより細い細動脈における、血管壁内の平滑筋細胞の弛緩によって生じる。実質的に、過程は、血管の狭小化である“血管収縮”の逆である。血管が拡張すると、血管抵抗が低減するため血流は増大する。したがって、動脈血管(おもに細動脈)の拡張により血圧は低下する。応答は内因性(周囲組織における局所的過程による)または外因性(ホルモンまたは神経系による)である可能性がある。これに加えて、応答は、特定器官に限局されることができ(激しい運動中のように特定組織の代謝要求に依存する)、または全身性であることができる(体循環全体にわたって見られる)。
【0143】
[00144]本明細書中で用いられる“血管収縮”という用語は、筋収縮による血管の狭小
化をさす。血管収縮は、体が平均動脈圧(MAP)を調節および維持するための機序の1つである。全身性血管収縮は通常体血圧の上昇をもたらすが、特定組織に生じて、血流の局所的減少を引き起こすこともある。
【0144】
[00145]本明細書中で用いられる場合、“気管支収縮”という用語は、周囲の平滑筋の
緊張に起因し、結果として咳、喘鳴および息切れを伴う肺気道の収縮を定義するために用いられる。該状態にはいくつかの原因があるが、もっとも一般的なのは喘息である。運動およびアレルギーが、通常なら無症状の個人に症状を生じさせることがある。慢性閉塞性肺疾患(COPD)のような他の状態も、気管支収縮を呈することがある。
【0145】
[00146]本開示の全体にわたり、“高血圧”、“動脈性高血圧”または“高い血圧(H
BP)”という用語は互換的に用いられ、動脈の血圧(BP)が正常または望ましい値より高い、極めて一般的で高度に予防可能な慢性状態をさす。それは、適切に制御されない場合、いくつかの重篤な心臓血管状態および腎臓状態の顕著なリスク因子を示す。高血圧は“本態性高血圧”または“特発性高血圧”とよばれる原発性疾患であることができ、あるいは他の疾患に起因または関連することがあり、この場合は“続発性高血圧”と分類される。本態性高血圧が全症例の90~95%を占める。
【0146】
[00147]本明細書中で用いられる場合、“抵抗性高血圧”という用語は、異なる抗高血
圧剤クラスに属する3つの抗高血圧薬の同時使用にもかかわらず、目標血圧(通常140/90mmHg未満であるが、合併症を伴う糖尿病または腎疾患を有する患者では、130/80mmHg未満というより低い目標が推奨される)を超える血圧を維持する高血圧をさす。血圧の制御に4種以上の薬剤を必要とする人も、抵抗性高血圧を有するとみなされる。高血圧は糖尿病において極めて一般的な併発状態で、肥満、民族性および年齢に応じて糖尿病患者の約20~60%が悪影響を受けている。このタイプの高血圧を本明細書中では“糖尿病性高血圧”とよぶ。二型糖尿病では、高血圧は、中心性肥満および脂質異常症も含むインスリン耐性のメタボリックシンドロームの一部として現れることが多い。一型糖尿病では、高血圧は糖尿病性腎症の発症を反映する可能性がある。
【0147】
[00148]本明細書中で用いられる“肺高血圧(PH)”は、肺血管系(肺動脈、肺静脈
および肺毛細血管)における血圧の持続的上昇によって特徴付けられる疾患であり、右心肥大を生じさせて、最終的に右心室不全をもたらす。PHの一般的症状としては、息切れ、めまいおよび失神が挙げられ、これらはすべて激しい運動により悪化する。処置を行わないと、診断後の平均余命は2.8年である。PHは多種多様な形態で存在し、病因に従って分類される。カテゴリーとしては、肺動脈高血圧(PAH)、左心疾患を伴うPH、肺疾患および/もしくは低酸素血症に関連するPH、慢性血栓性および/もしくは塞栓性疾患に起因するPH、ならびに混合型PHが挙げられる。PAHは一般集団では稀であるが、HIV感染、強皮症および鎌状赤血球症など特定の一般的状態に関連して有病率は上昇する。PHの他の形態は一般にPAHより一般的であり、例えば、PHと慢性閉塞性肺疾患(COPD)との関連はとりわけ懸念されている。肺高血圧の現行の処置は、疾患の病期および機序に依存している。
【0148】
[00149]“冠動脈疾患”という用語は、心筋への血液供給が部分的または完全に遮断さ
れている状態(心筋または心筋層の虚血)をさす。この心筋への血液供給減少は、いくつかの“急性心筋症状”:胸痛(安定または不安定“アンギナ”、“狭心症”ともよばれる)および異なるタイプの心臓発作(“心筋梗塞”またはMI)を引き起こす可能性がある。冠動脈疾患の一般的原因の1つは“アテローム性動脈硬化症”であり、これは、後にアテローム斑の形成を経て、狭小化、最終的には動脈への血流遮断に進行する可能性がある動脈壁の脂肪沈着物に起因する動脈硬化をさす。このアテローム性動脈硬化症の進行は、心臓だけでなく他の動脈にも悪影響を及ぼす可能性がある。通常、動脈は既にアテローム斑(アテローム)により部分的に遮断されているので、血餅は動脈遮断のもっとも一般的な原因である:アテロームが裂け、または破れて、血餅の形成に至る可能性がある。冠動脈疾患は冠動脈の痙攣に起因することがあり、これは、自発的または特定の薬物(例えばコカイン、ニコチン)の使用の結果として生じる可能性がある。冠動脈疾患の原因が先天性欠損、ウィルス性感染症(例えば川崎病)、全身性エリテマトーデス(狼瘡)、動脈の炎症(動脈炎)、心腔から冠動脈の1つに移動した血餅、または物理的損傷(例えば、外傷または放射線療法)であることはまれである。
【0149】
[00150]本明細書中で用いられる“不安定アンギナ”は、アンギナの持続または悪化お
よび重篤な症状の新規発現を含む、アンギナの症状パターンの変化をさす。
[00151]MI(心筋梗塞)は2つのタイプに分類することができる:“非ST部分上昇
”MIおよび“ST部分上昇”MI。急性冠症候群の合併症は、冠動脈遮断の量、期間および位置に依存する。遮断が大量の心筋に悪影響を及ぼす場合、心臓の効率的なポンプ作用が起こらない。遮断が心臓の電気系への血流を止める場合、心調律が悪影響を受ける可能性がある。心臓発作が起こると、心筋の一部は死に至る。壊死組織およびこれに置き換わる瘢痕組織は収縮しない。心臓の残りの部分が収縮しようとすると、瘢痕組織は膨張または隆起することさえある。したがって、血液を送るための筋肉は少なくなる。十分な筋肉が死に至った場合、心臓のポンプ能は、酸素および血液に対する体の要求を心臓が満たすことができないほど低下する可能性がある。その結果、心不全、低血圧またはその両方が発現する。半分を超える心筋が損傷を受けるか死に至った場合、心臓は一般に機能することができず、重篤な能力障害または死亡が起こりうる。
【0150】
[00152]本明細書中で用いられる“心不全”(HF)は、左心室(LV)心筋リモデリ
ングの進行性障害であり、最終的に心機能障害および循環うっ血が決定的な特徴である複雑な臨床的症候群になり、体組織への血液および栄養素の送達が不十分になる。該状態は、心臓が損傷を受けるか過度に働き、体循環から戻ってきた血液のすべてを送り出すことができないときに生じる。送り出される血液が少なくなるので、心臓に戻ってくる血液が逆流し、体液が体の他の部分に集まっていく。心不全はまた、ナトリウムおよび水を取り除く腎臓の能力を害して、体液うっ滞をさらに悪化させる。心不全は、自律神経機能障害、神経ホルモン活性化およびサイトカインの過剰産生によって特徴付けられ、これらは進行性循環障害の一因となる。心不全の症状としては、以下が挙げられる:運動もしくは休憩中の呼吸困難(息切れ(shortness of breath))および突然の息切れ(breathlessness)による夜間の目覚め、両方とも肺水腫を示唆している;全身疲労または衰弱;足、くるぶしおよび脚の浮腫;急激な体重増加;または、粘液もしくは血液をもたらすものを含む慢性咳。臨床所見に応じて、心不全は、デノボ(de novo)、一過性、急性、急性後(post-acute)または慢性に分類される。急性心不全、すなわち、緊急治療を必要とする症状の急速または段階的発症は、デノボで、または非代償性になっている慢性心不全の結果として、発現する可能性がある。“心不全”という用語は、しばしば“慢性心不全”をさすために用いられる。“うっ血性心不全(CHF)”または“うっ血性心臓麻痺(CCF)”は、しばしば慢性心不全と互換的に用いられる。心不全の一般的原因としては、既往の心筋梗塞(心臓発作)を含む冠動脈疾患、高血圧、心房細動、心臓弁膜症、および心筋症が挙げられる。これらは、心臓の構造または機能のいずれかを変化させることにより心不全を引き起こす。
【0151】
[00153]心不全には2つの主要タイプがある:“左心室収縮障害に起因する心不全”ま
たは“収縮期心不全“としても知られる“低下した駆出率に起因する心不全(HFREF)”、および“拡張期心不全”または“正常な駆出率を伴う心不全(HFNEF)”としても知られる“駆出率が保持されている心不全(HFPEF)” 。駆出率は、1回の収縮中に心臓から送り出される心臓内の血液の割合である。それは、50~75%が正常である百分率である。
【0152】
[00154]“急性”(“急性HF”など)という用語は、急激な発症を意味するために用
いられ、“慢性”は長い持続期間をさす。慢性心不全は長期にわたる状況で、通常は安定して処置される総体的症状を伴う。“急性非代償性”心不全は、悪化性または非代償性の心不全であり、心不全の徴候と症状が変化して、結果的に緊急治療または入院が必要になると特徴付けることができる症状発現をさす。心不全は高拍出量の状況でも起こり(その場合は“高拍出性心不全”とよばれる)、この場合、心室収縮機能は正常であるが、心臓は血液量の重要な増加を処理することができない。
【0153】
[00155]心臓血管生理学において、“駆出率(EF)”という用語は、各心拍または心
周期で送り出される左右心室中の血液の分画として定義される。医学画像に許容される有限数学において、EFは、血液を肺動脈弁を介して肺循環に駆出する右心室、または血液を大動脈弁を介して脳循環および体循環に駆出する左心室の両方に適用される。
【0154】
[00156]“駆出率が保持されている心不全(HFPEF)”という用語は、一般に、駆
出率が55%を超える心不全の徴候と症状の発現をさすと理解される。それは左心室コンプライアンスの低下によって特徴付けられ、左心室における圧力上昇をもたらす。左心室機能が低い結果、HFPEFではしばしば左心房のサイズの増大が見られる。うっ血性心不全、心房細動、および肺高血圧のリスクが上昇する。リスク因子は、高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙、および閉塞性睡眠時無呼吸である。このタイプの心不全では、心筋は十分に収縮するが、心室は弛緩期に十分に膨らまない。
【0155】
[00157]“駆出率が低下した心不全(HFREF)”という用語は、駆出率が40%未
満である心不全をさす。
[00158]糖尿病は心不全患者における一般的な共存症で、不良転帰に関連するほか、処
置の効力を損なう可能性がある。他の重要な共存症としては、慢性気流閉塞、睡眠時無呼吸、認知機能障害、貧血、慢性腎疾患および関節炎が挙げられる。慢性右心室不全は、肺高血圧の発現に関連することが多い。特定の共存症の頻度は性によって異なる:女性では、高血圧および甲状腺疾患がより一般的であるが、男性はより一般的に慢性閉塞性肺疾患(COPD)、末梢血管疾患、冠動脈疾患および腎不全を患う。抑うつは心不全で頻発する共存症であり、2つの状態が互いを悪化させる可能性があり、しばしば実際に悪化させる。悪液質は、長い間、心不全の重篤で頻発する合併症と認識されおり、すべての心不全患者の最大15%が罹患し、不良な予後に関連づけられている。心臓悪液質は、6カ月の期間で体重の少なくとも6%の非水腫性で不随意の損失と定義される。
【0156】
[00159]本明細書中で用いられる“不整脈”という用語は、心臓発作を起こしたことの
ある人の90%超で生じる異常な心調律をさす。場合によっては、心拍を発生させる心臓
部分に問題があって、心拍数が遅すぎることがあり、その他の場合には、問題は、心臓の過度に急速または不規則な鼓動を引き起こす可能性がある。場合によっては、拍動シグナルが心臓の一部から他の部分へ伝わらず、心拍が遅くなるか停止する可能性がある。これに加えて、死に至っていないが血流が少ない心筋領域は過敏になりやすい可能性がある。これは、心室性脈拍または心室細動など心調律の問題を引き起こす。心臓のポンプ作用が完全に止まってしまうと、これは心停止をもたらす可能性がある。
【0157】
[00160]“心膜”は、心臓を包囲する袋または膜である。“心膜炎”すなわちこの膜の
炎症は、心臓発作の結果として発現することがあり、発熱、心膜液、肺を覆う膜(胸膜)の炎症、胸水、および関節痛を引き起こす可能性がある。心臓発作後の他の合併症としては、僧帽弁の機能不全、心筋の断裂、心室壁の隆起(心室瘤)、血餅および低血圧を挙げることができる。
【0158】
[00161]“心筋症”という用語は、心腔の筋肉壁の構造および機能の進行性障害をさす
。心筋症の主要タイプは、拡張型、肥大性および収縮性である。心筋症はしばしば心不全の症状をもたらし、胸痛、失神および突然死を引き起こすこともある。
【0159】
[00162]“僧帽弁逆流症(mitral valve regurgitation)”、“僧帽弁逆流(mitral regurgitation)”、“僧帽弁閉鎖不全症(mitral insufficiency)”または“僧帽弁閉鎖不全(mitral incompetence)”という用語は、心臓の僧帽弁がしっかり閉まらず、血液が心臓に逆流するのを可能にする状況をさす。結果として、血液は心臓を経由して、または体の他の部分に効率的に移動することができず、疲労または息切れをきたす。
【0160】
[00163]“睡眠時無呼吸”という用語は、睡眠呼吸障害のもっとも一般的なものをさす
。気流の間欠的、周期的減少または完全停止によって特徴付けられる状態で、上気道の閉塞が関与していても関与していなくてもよい。3つのタイプの睡眠時無呼吸がある:もっとも一般的な形態の閉塞性睡眠時無呼吸、中枢性睡眠時無呼吸および混合型睡眠時無呼吸。
【0161】
[00164]“中枢性睡眠時無呼吸(CSA)”は、気道の物理的遮断ではなく、むしろ脳
の正常な呼吸シグナルの機能不全によって引き起こされる。呼吸努力の欠如が、血中二酸化炭素の増大をもたらし、これにより患者は目を覚ますことがある。CSAは一般集団においてはまれであるが、収縮期心不全の患者では比較的一般的に発生する。
【0162】
[00165]本明細書中で用いられる“メタボリックシンドローム”、“インスリン抵抗性
症候群”または“X症候群”という用語は、代謝状態(腹部肥満、空腹時血糖上昇、“脂質異常”(すなわち脂質レベル上昇)および血圧上昇(HBP))の群または集団をさし、これらの状態は、たまたま単独でより一緒に生じることが多く、一緒になって2型糖尿病および心臓血管疾患の発現を促す。メタボリックシンドロームは、トリグリセリド上昇、高密度リポタンパクコレステロール(HDL-コレステロール)低下および場合によっては低密度リポタンパクコレステロール(LDL-コレステロール)レベルの適度な上昇という特異的脂質プロフィールのほか、構成リスク因子の圧力による“アテローム性動脈硬化疾患”の進行加速によって特徴付けられる。脂質異常にはいくつかのタイプがある:“高コレステロール血症”は、コレステロールのレベル上昇をさす。家族性高コレステロール血症は、第19染色体の欠損(19p13.1~13.3)に起因する高コレステロール血症の特異的形態である。“高グリセリド血症”は、グリセリドのレベル上昇(例えば、“高トリグリセリド血症”はトリグリセリドのレベル上昇を包含する)をさす。“高リポタンパク血症”は、リポタンパクのレベル上昇をさす(特記しない限り通常はLDL)。
【0163】
[00166]“脂肪変性”という用語は、細胞内での脂質の異常な貯留をさす。それは、通
常、トリグリセリドの正常な合成および除去過程の機能障害を反映している。過剰な脂肪は、細胞の細胞質に取って代わる小疱中に蓄積する。場合によっては、細胞は破裂する可能性がある。肝臓が脂肪代謝にもっとも関連する器官であるため、通常、脂肪変性は肝臓で観察される。心臓、腎臓および筋組織で観察されることもある。
【0164】
[00167]本明細書中で用いられる“末梢血管疾患(PVD)”という用語は、一般に“
末梢動脈疾患(PAD)”または“末梢動脈閉塞性疾患(PAOD)”ともよばれ、冠状動脈、大動脈弓血管系または脳の内部ではない大動脈の閉塞をさす。PVDは、アテローム性動脈硬化症、狭窄をもたらす炎症過程、塞栓症、血栓形成または他のタイプの閉塞症に起因することができる。それは、急性または慢性“虚血(血液供給の不足)”のいずれかを引き起こす。PVDは、下肢で見いだされるアテローム硬化性遮断をさすために用いられることが多い用語である。PVDはまた、偶発性の動脈の狭小化(例えば“レイノー現象”)または拡張(先端紅痛症)、すなわち血管痙攣に起因する微小血管疾患として分類される疾患のサブセットを包含する。末梢動脈疾患としては、閉塞性血栓性血管炎、末梢動脈閉塞性疾患、レイノー病、およびレイノー症候群が挙げられる。一般的症状は、脚もしくは足の冷え、間欠性跛行、下肢痛および重篤な四肢虚血(下肢虚血、下肢の潰瘍および壊死)が挙げられる。末梢動脈疾患の診断および処置のガイドラインは、Eur.J.Vasco Endovasc.Surg,2007,33(1),Slに見いだすことができる。
【0165】
[00168]本明細書中で用いられる“狭窄(stenosis)”という用語は、血管または他の管
状器官もしくは構造における異常な狭小化をさす。“狭窄症(stricture)”(尿道狭窄症
のように)とよばれることもある。“縮窄”という用語は同義語であるが、一般に大動脈縮窄の文脈でのみ用いられる。“再狭窄”という用語は、処置後の狭窄の再発をさす。
【0166】
[00169]“血栓症”という用語は、循環系を通る血流を遮る血管内部での血餅(“血栓
”)形成をさす。血管が傷つくと、体は血小板(栓球)およびフィブリンを用いて血餅を形成して失血を妨げる。あるいは、血管が傷ついていなくても、適した状態が現れた場合、体内で血餅が形成する可能性がある。凝固が非常に重症で血餅が抜け出した場合、移動する血餅はここで“塞栓”として知られる。“血栓塞栓症”という用語は、血栓症とその主要な合併症である“塞栓症”の組み合わせをさす。血栓が動脈内腔の表面積の75%超を占めると、組織へ供給される血流は、酸素の減少(低酸素症)および乳酸などの代謝産物の蓄積(“痛風”)に起因して、症状を引き起こすのに十分な程度に減少する。90%を超える閉塞は、酸素の完全な欠乏である無酸素症、および細胞死のモードである“梗塞症”をもたらす可能性がある。
【0167】
[00170]“塞栓症”(複数形の塞栓症)は、塞栓(発生源から遠い部位で動脈性毛細管
床を塞ぐことができる剥離した血管内腫瘤)が動脈床の細い毛細血管内に留まる事象であり、体の離れた部分で詰まり(血管閉塞)を引き起こす。これは、発生源の部位で詰まらせる血栓と混同すべきでない。塞栓症を形成する物質は、いくつかの異なる発生源を有することができる:物質が血液である場合、“塞栓”は“血栓”とよばれる;固体物質は、脂肪、細菌の残骸、感染組織などを含むこともできる。
【0168】
[00171]“虚血”は、組織への血液供給における制限であり、(組織の生存を維持する
ための)細胞代謝に必要な酸素およびグルコースの不足を引き起こす。虚血は、一般に血管に関連する問題によって引き起こされ、結果として組織の損傷および機能不全が生じる。うっ血(血管収縮、血栓症または塞栓症など)に起因することがある体の所定部位における局所貧血も意味する。“虚血”が心筋(または“心筋層”)で起こる場合、虚血は心筋虚血とよばれる。他のタイプの虚血は、例えば、脳虚血、重篤な下肢虚血などである。
【0169】
[00172]“再潅流”は、一定期間の虚血後に血液供給が組織に戻るときに起こる。組織
への循環の回復により、炎症および酸化的ストレス過程が発現する可能性がある。この事象の連鎖の一例は、臓器移植に関連する虚血-再潅流である。
【0170】
[00173]“再潅流傷害”は、一定期間の虚血後に血液供給が組織に戻り、続いて正常機
能の回復ではなく炎症および酸化的損傷が起こるときに生じる組織損傷である。虚血性組織(ischemic issue)の再潅流は、微小血管損傷に関連することが多い。これは、とりわけ、毛細血管および細動脈の透過性が上昇して、組織の全体にわたり拡散および流体濾過の増大をもたらすためである。活性化した内皮細胞は、再潅流後に、より多くの反応性酸素種およびより少ないNOを生じさせ、この不均衡が炎症性応答をもたらす。新たに戻ってきた血流によってこの領域に運ばれてきた白血球は、組織損傷に応答して多数の炎症性因子およびフリーラジカルを放出する。回復した血流は、細胞タンパク質、DNAおよび形質膜を傷つける酸素を一緒に運んでくる。この虚血-再潅流の過程はまた、慢性創傷(例えば圧痛または糖尿病性潰瘍)の形成および治癒失敗に関与すると考えられる。
【0171】
[00174]本明細書中で用いられる“血管障害”という用語は、血管(動脈、静脈および
毛細血管)の疾患の総称である。もっとも一般的でもっとも高頻度に見られる血管障害は、慢性糖尿病の一般的合併症である“糖尿病性血管障害”である。他の一般的タイプの血管障害は、コンゴーレッド親和性血管障害(congophilic angiopathy)としても知られる“脳アミロイド血管症”(CAA)であり、アミロイド沈着物が中枢神経系の血管壁に形成する。コンゴーレッドとよばれる特別な染料の施用後の脳組織の顕微鏡検査によりアミロイドの異常な凝集の存在を実証することができるので、コンゴーレッド親和性(congophilic)という用語が用いられる。アミロイド物質は脳にだけ見いだされ、したがって、該疾患は、他の形態のアミロイド症には関連しない。
【0172】
[00175]“脳卒中”すなわち脳血管発作(CVA)は、脳への血液供給の妨害に起因す
る脳機能(1以上)の急激な喪失である。これは、遮断(血栓症、動脈塞栓症、脂肪蓄積または痙攣)または出血(血液の漏出)によって引き起こされる“虚血”(血流の欠如と
、その結果として生じる不十分な組織への酸素およびグルコース供給)に起因することができる。結果として、脳の病変部は機能することができず、体の片側の四肢の1以上を動かすことができなくなり、発言の理解または明確な説明ができなくなり、または視野の片側を見ることができなくなる可能性がある。脳卒中のリスク因子としては、高齢、高血圧、脳卒中または一過性脳虚血発作(TIA)の既往歴、糖尿病、高コレステロール、喫煙、および心房細動が挙げられる。高血圧は、脳卒中のもっとも重要で修正可能なリスク因子である。“虚血性脳卒中”は、場合によっては血栓溶解(“クロットバスター(clot buster)”としても知られる)により病院で処置され、一部の出血性脳卒中は脳神経外科が有効である。再発防止は、アスピリンおよびジピリダモールなどの抗血小板薬の投与、高血圧の制御および軽減、およびスタチンの使用を包含することができる。選ばれた患者において、頸動脈内膜切除および抗凝固薬の使用が有効であることがある。
【0173】
[00176]“血管性認知症”は、高齢者の認知症の2番目にもっとも一般的な原因である
。これは、男性でより一般的であり、通常は70才以上で発症する。血管リスク因子(例えば、高血圧、真性 糖尿病、高脂血症、喫煙)を有する人、および脳卒中を何回か起こ
したことがある人で起こることが多い。多くの人は血管性認知症とアルツハイマー病の両方を有する。血管性認知症は、典型的には、多くの小さな脳梗塞(または場合によっては出血)が、脳機能を損なうのに十分なニューロンまたは軸索欠損を引き起こすと生じる。血管性認知症としては、以下のタイプが挙げられる:多発ラクナ梗塞 (小血管が悪影響を受け、半球状の白質および灰白質内の深部で梗塞が起こる);多発梗塞性認知症(中型血管が悪影響を受ける);戦略的単一梗塞性認知症(単一梗塞は、角回または視床など脳の
非常に重要な部分で起こる);ビンスワンガー認知症または皮質下動脈硬化性脳症(小血管認知症は、重篤で制御が不十分な高血圧および全身性血管疾患に関連し、広範なグリオーシス、梗塞による組織死、または脳の白質への血液供給の喪失により、軸索およびミエリンの散在性で不規則な喪失を引き起こす)。
【0174】
[00177]“グリオーム”という用語は、脳または脊椎で開始するタイプの腫瘍をさす。
グリア細胞から生じるのでグリオームとよばれる。もっとも一般的なグリオームの部位は脳である。グリオームは、脳および中枢神経系の腫瘍全体の約30%を占め、悪性脳腫瘍全体の80%を占める。
【0175】
[00178]American Psychiatric Association’s
Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders,第4版(DSM-IV)によると、“性的機能不全”という用語は、“性的欲求および性反応周期に関連する心理生理学的変化における障害によって特徴付けられる”一連の状態を包含する;一方、このタイプの問題は一般的であり、性的機能不全は、患者が問題を苦痛に感じたときにのみ存在するとみなされる。性的機能不全は、起源が身体的または心理的のいずれかであることができる。これは、一般に実質上ホルモン性の一次状態として存在することができるが、他の医学的状態または前記状態のための薬物療法に続発することがもっとも多い。すべてのタイプの性的機能不全は、さらに、終生型、後天性、状況性または汎発性(またはそれらの組み合わせ)として分類することができる。
【0176】
[00179]DSM-IV-TRは“女性性的機能不全”の5つの主要カテゴリーを明確化
している:性的欲求/関心の障害;“性的興奮障害(生殖器、主観的、および組み合わせを含む)”;オルガスム障害;性交疼痛および膣痛;ならびに持続性性的興奮障害。
【0177】
[00180]“女性性的興奮障害(FSAD)”は、十分なレベルの性的興奮を達成または
維持することが持続的または反復してできないこととして定義される。FSADは、主観的な興奮感覚の欠如(すなわち、主観的性的興奮障害)ならびに潤滑および膨潤などの身体反応の欠如(すなわち、生殖器/身体的性的興奮障害)の両方を包含する。FSADは、起源が厳密に心理学的であることができるが、一般に医学的または生理学的因子によって発生または悪化する。低エストロゲン症はFSADに関連するもっとも一般的な生理学的状態であり、泌尿生殖器萎縮および膣潤滑の低下をもたらす。
【0178】
[00181]本明細書中で用いられる“勃起障害(ED)”は、性行為中にペニスの勃起を
発現または維持することができないことにより特徴付けられる男性性的機能不全である。ペニス勃起は、ペニス内に入ってきて海綿様体に保持される血液の水力学的作用である。この過程は、性的興奮の結果として、シグナルが脳からペニスの神経に伝えられると開始することが多い。勃起が生じにくいときに、勃起障害が示される。もっとも重要な器質的原因は、心臓血管疾患および糖尿病、神経学的問題(例えば、前立腺切除術からのトラウマ)、ホルモン不足(性腺機能低下症)および薬物の副作用である。
【0179】
[00182]したがって、一態様において、sGCの刺激剤または医薬的に許容しうるその
塩である式Iもしくは表Iの化合物または医薬的に許容しうるその塩は、循環に関する以下のタイプの心臓、肺、末梢部位、肝臓、腎臓、または脳血管/内皮の障害、状態および疾患の予防および/または処置に有用である:
・高血圧および冠血流量減少に関連する障害;急性および慢性冠動脈血圧上昇;動脈高血圧;心臓および腎臓の合併症に起因する血管障害;心疾患、脳卒中、脳虚血または腎不全に起因する血管障害;抵抗性高血圧;糖尿病性高血圧;本態性高血圧;二次性高血圧;妊娠性高血圧;子癇前症;門脈圧亢進症;心筋梗塞;
・心不全、HFPEF、HFREF;急性および慢性HF;HFのより具体的な形態:急性非代償性HF、右心室不全、右心室不全、全HF、虚血性心筋症、拡張型心筋症、先天性心臓欠陥、弁膜欠損によるHF、僧帽弁狭窄、僧帽弁閉鎖不全、大動脈弁狭窄、大動脈弁閉鎖不全、三尖弁狭窄、三尖弁閉鎖不全、肺動脈弁狭窄、肺動脈弁閉鎖不全、連合弁膜欠損(combined valvular defect);糖尿病性心不全;アルコール性心筋症または蓄積
性心筋症;拡張期HF、収縮期HF;既存の慢性HFの急性期(HFの悪化);拡張または収縮機能障害;冠動脈不全;不整脈;心室前負荷の減少;心肥大;心不全/心腎症候群;門脈圧亢進症;内皮機能不全または損傷;心房および心室調律の障害および伝導障害:I~III度の房室ブロック(AVB I~III)、上室性頻脈性不整脈、心房細動、心房粗動、心室細動、心室粗動、心室性頻脈性不整脈、トルサード・ド・ポアント頻拍、心房および心室性期外収縮、房室接合部期外収縮、洞機能不全症候群、失神、房室結節リエントリー性頻拍;ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群または急性冠症候群;ボクサー心筋症;心室性期外収縮;心筋症;がん誘発性心筋症;化学療法誘発性心臓毒性;
・血栓塞栓性障害および虚血;心筋虚血;梗塞;心筋梗塞;心臓発作;心筋不全;内皮機能不全;脳卒中;一過性脳虚血発作(TIA);閉塞性血栓性血管炎;安定または不安定狭心症;冠動脈痙攣または末梢動脈痙攣;異型狭心症;プリンツメタル狭心症;心肥大;子癇前症;血管形成障害;虚血-再潅流損傷;臓器移植に関連する虚血-再潅流;肺移植(lung transplant)、肺の移植(pulmonary transplant)、心臓移植、静脈移植失敗に関
連する虚血-再潅流;外傷患者における代用血液保存;
・末梢血管疾患;末梢動脈疾患;末梢閉塞性動脈疾患;筋緊張亢進;レイノー症候群または現象(一次性および二次性);レイノー病;重篤な下肢虚血;末梢塞栓症;間欠性跛行;血管閉塞性発症;筋ジストロフィー、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型筋ジストロフィー;微小循環異常;血管漏出または透過性の制御;腰部脊柱管狭窄症;閉塞性血栓性血管炎;血栓性血管炎;末梢潅流障害;動脈および静脈血栓症;微量アルブミン尿;末梢および自律性神経障害;糖尿病性神経障害に伴う疼痛;糖尿病性微小血管障害;肝血管閉塞性障害;鎌状赤血球症における血管閉塞性発症;高血圧性発症;
・浮腫;心不全に起因する腎性浮腫;
・アルツハイマー病;パーキンソン病;血管性認知症;血管認知機能障害;脳血管痙攣;先天性筋無力症候群;くも膜下出血;外傷性脳損傷;認知障害、例えば、軽度認知機能障害、加齢に伴う学習および記憶障害、加齢に伴う記憶喪失、血管性認知症、頭部損傷、脳卒中、脳卒中後認知症、外傷後頭部損傷、一般的な集中障害ならびに学習および記憶に問題がある小児における集中障害で生じる認知障害後の知覚、集中力、学習能力または記憶能力の改善;レビー小体型認知症;ピック症候群などの前頭葉変性による認知症;進行性核麻痺;大脳皮質基底核変性症による認知症;筋萎縮性側索硬化症(ALS);ハンチントン病;脱髄;多発性硬化症;視床変性;クロイツフェルト・ヤコブ認知症;HIV-認知症;認知症またはコルサコフ精神病による統合失調症;他系統萎縮症および他の形態のパーキンソンプラス症候群;運動障害;神経保護;不安、緊張および抑うつまたは心的外傷後ストレス障害(PTSD);双極性障害;統合失調症;中枢神経系が関連する性的機能不全および睡眠障害;病理学的摂食障害ならびに高級食料および耽溺薬の使用;脳潅流の制御;片頭痛;脳梗塞(脳卒中)の予後の予防および制御;脳卒中、脳虚血および頭部損傷の予後の予防および制御;中枢神経系疾患に関連する神経障害;神経障害痛、MSに関連する神経障害痛;化学療法誘発性神経障害痛;帯状疱疹に関連する神経障害痛;脊椎手術に関連する神経障害痛;
・ショック;心原性ショック;敗血症;敗血症性ショック;アナフィラキシー性ショック;動脈瘤;白血球活性化の制御;血小板凝集の阻害または調節;多臓器機能障害症候群(MODS);多臓器不全(MOF);
・肺/呼吸器状態:肺高血圧(PH);肺動脈高血圧(PAH)および関連する肺血管リモデリング;限局性血栓症および右心肥大の形態の血管リモデリング;肺筋緊張亢進;原発性肺高血圧;二次性肺高血圧;家族性肺高血圧;散発性肺高血圧;前毛細血管性肺高血圧;特発性肺高血圧;他の形態のPH;左心室疾患、HIV、SCD、血栓塞栓症(C
TEPH)、サルコイドーシス、COPD、肺線維症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、急性肺損傷、アルファ-1-抗トリプシン欠乏(AATD)、肺気腫、喫煙誘発性気腫および嚢胞性線維症(CF)に関連するPH;血栓性肺動脈症;多因性肺動脈症;嚢胞性線維症;気管支収縮または肺気管支収縮;急性呼吸器症候群;肺線維症、肺移植;喘息疾患;
・以下に付随または関連する肺高血圧:左心室機能不全、低酸素血症、WHOグループI、II、III、IVおよびVの高血圧、僧帽弁疾患、収縮性心膜炎、大動脈弁狭窄、心筋症、縦隔線維症、肺線維症、肺静脈還流異常、肺静脈閉塞性疾患、肺血管炎、膠原血管病、先天性心疾患、肺静脈高血圧、間質性肺疾患、睡眠呼吸障害、睡眠時無呼吸、肺胞低換気障害、高高度への慢性的暴露、新生児肺疾患、肺胞-毛細血管異形成、鎌状赤血球症、他の凝固障害、慢性血栓塞栓症、肺塞栓症;腫瘍、寄生生物または異物に起因する肺塞栓症;結合組織病、狼瘡、狼瘡腎炎、住血吸虫症、サルコイドーシス、慢性閉塞性肺疾患、喘息、気腫、慢性気管支炎、肺毛細血管血管腫症、組織球症X、リンパ管腫症、圧縮肺血管;腺症、腫瘍または線維化性縦隔炎に起因する圧縮肺血管;
・動脈硬化性疾患または状態:アテローム性動脈硬化症;内皮損傷、血小板および単球の付着および凝集、平滑筋増殖または遊走に関連するアテローム性動脈硬化症;再狭窄;血栓溶解療法、経皮経腔的血管形成術(PTA)、経腔的冠動脈血管形成術(PTCA)、心臓移植、バイパス手術または炎症性過程の後に発現する再狭窄;
・微小および大型血管損傷(血管炎);フィブリノーゲンおよび低密度DLDレベルの上昇;プラスミノーゲン活性化因子阻害因子1(PA-1)濃度の上昇;
・メタボリックシンドローム;代謝疾患またはメタボリックシンドロームに関連する疾患:肥満;皮下脂肪過剰;脂肪蓄積過剰;糖尿病;高血圧;脂質関連障害、高脂血症、脂質異常症、高コレステロール血症、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL-コレステロール)の減少、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-コレステロール)レベルの中程度の上昇、高トリグリセリド血症、高グリセリド血症、低リポタンパク貧血(hypolipoproteinanemia)、シトステロール血症(sitosterolemia)、脂肪肝疾患、アルコ
ール性脂肪肝疾患(AFLD)、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、肝炎;子癇前症;多嚢胞腎疾患進行;脂肪肝または肝臓での異常な脂質蓄積、非アルコール性脂肪肝炎(NASH);心臓、腎臓または筋肉の脂肪変性;アルファベータリポタンパク血症;シトステロール血症;黄色腫症;タンジール病;高アンモニア血症および関連疾患;肝性脳症;他の毒性脳症;ライ症候群;
・以下の状態の性的、婦人科的および泌尿器科的障害:勃起障害;インポテンス;早漏;女性性的機能不全;女性性的興奮機能障害;性的興奮低下障害;膣萎縮;性交疼痛;萎縮性膣炎;良性前立腺過形成(BPH)、前立腺肥大、前立腺拡大;膀胱出口閉塞;膀胱痛症候群(BPS);間質性膀胱炎(IC);過活動膀胱;神経因性膀胱および失禁;糖尿病性腎症;原発性および続発性月経困難;下部尿路症候群(LUTS);子宮内膜症;骨盤痛;男性および女性泌尿生殖器系の器官の良性および悪性疾患;
・慢性腎疾患;急性および慢性腎機能不全;急性および慢性腎不全;狼瘡腎炎;基礎または関連腎疾患:低潅流、透析低血圧(intradialytic hypotension)、閉塞性尿路疾患、
糸球体症、糸球体腎炎、急性糸球体腎炎、糸球体硬化、尿細管間質疾患、腎障害疾患、原発性および先天性腎疾患、腎炎;クレアチニンおよびまたは水分排泄の異常な減少によって特徴付けられる疾患;尿素、窒素、カリウムおよび/またはクレアチニンの血中濃度の異常な上昇によって特徴付けられる疾患;腎臓酵素の活性変化によって特徴付けられる疾患、グルタミルシンテターゼの活性変化によって特徴付けられる疾患;尿浸透圧(urine osmolarity)または尿容量の変化によって特徴付けられる疾患;微量アルブミン尿の増加によって特徴付けられる疾患、顕性アルブミン尿(macroalbuminuria)によって特徴付けられる疾患;糸球体および細動脈の病変、尿細管拡張、高リン血症および/または透析の必要性によって特徴付けられる疾患;腎機能不全の続発症; 肺水腫に関連する腎機能不全;HFに関連する腎機能不全;尿毒症または貧血に関連する腎機能不全;電解質障害(ヘルカレミア(herkalemia)、低ナトリム血症);骨および炭水化物代謝の障害;急性腎損傷;
・眼の疾患または障害、例えば、緑内障、網膜症および糖尿病性網膜症。
【0180】
[00183]“炎症”という用語は、病原体、損傷細胞または刺激物質などの有害な刺激に
対する血管組織の複雑な生物学的応答をさす。急性炎症の古典的な徴候は、疼痛、熱、発赤、腫脹および機能喪失である。炎症は、有害刺激を除去し、治癒過程を開始するための、生体による保護的試みである。炎症は感染と同義語ではないが、両者は相関することが多い(前者は後者の結果であることが多い)。炎症は感染がなくても生じることがあるが、そのようなタイプの炎症は通常は非適応性である(アテローム性動脈硬化症のように)。各病原体に対し特異的である適応免疫と比較して、炎症は定型化した反応であり、したがって、先天性免疫の機序とみなされる。炎症のない組織における進行性の破壊は、生体の生存を危険にさらす可能性がある。他方、慢性炎症は多くの疾患、例えば、花粉症、歯周炎、アテローム性動脈硬化症、リウマチ様関節炎、およびがん(例えば、胆嚢がん)をもたらしうる。炎症が通常は体によって綿密に調節されるのは、この理由による。炎症は急性または慢性に分類することができる。“急性炎症”は有害刺激に対する体の初期反応で、血液から損傷組織への血漿および白血球(特に顆粒球)の移動の増大により達成される。生化学的事象のカスケードが伝播し、局所血管系、免疫系、および損傷組織内のさまざまな細胞が関与する炎症性反応を成熟させる。“慢性炎症”として知られる持続性炎症は、炎症部位に存在するタイプの細胞に進行性の変化をもたらし、炎症過程からの組織を同時に破壊および治癒することを特徴とする。
【0181】
[00184]したがって、他の態様において、sGC刺激剤または医薬的に許容しうるその
塩である式Iもしくは表Iの化合物または医薬的に許容しうるその塩は、炎症または炎症過程が関与する可能性がある以下のタイプの心臓、肺、末梢、肝臓、腎臓、消化器系または中枢神経系の障害、状態および疾患の予防および/または処置に有用である:
・心筋炎症(心筋炎);慢性心筋炎;急性心筋炎;ウィルス性心筋炎;
・血管炎;膵炎;腹膜炎;リウマチ様疾患;
・腎臓の炎症性疾患;免疫学的腎疾患:腎移植拒絶、免疫複合体誘発性腎疾患、毒素によって誘発される腎症、造形剤誘発性腎症;糖尿病性および非糖尿病性腎症、腎盂腎症、腎嚢胞、腎硬化症、高血圧性腎硬化症およびネフローゼ症候群;
・慢性間質性炎症。炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎(UC);
・炎症性皮膚疾患;
・眼の炎症性疾患、眼瞼炎、ドライアイ症候群、およびシェーグレン症候群;眼線維症。
【0182】
[00185]“創傷治癒”という用語は、皮膚(または他の器官または組織)が損傷後に自
己修復する複雑な過程をさす。例えば、正常な皮膚では、表皮(最外皮)および真皮(内部または深部層)は定常状態平衡で存在して、外部環境に対して保護バリヤーを形成している。いったん保護バリヤーが破壊されると、創傷治癒の正常な(生理学的)過程がすぐに発動する。創傷治癒の古典的モデルは、3または4つの連続し、さらに重複する相に分けられる:(1)止血(相とみなさない著者もいる)、(2)炎症、(3)増殖および(4)リモデリング。皮膚が損傷すると、損傷を修復するために綿密に練り上げられたカスケードで一連の複雑な生化学的事象が起こる。損傷後数分以内に、血小板が損傷部位に付着し、活性化し、凝集した(結び付いた)後 、架橋フィブリンタンパク質のメッシュに凝集血小板の血餅が形成する凝固カスケードが活性化する。この血餅が活発な出血を止める(“止血”)。炎症段階中に、細菌および細胞の残骸は貪食され、白血球により創傷から除去される。血小板由来成長因子(血小板のアルファ顆粒に蓄えられている)が創傷中に放出され、これにより、増殖段階中の細胞の移動および分裂が起こる。増殖段階は、血管形成、コラーゲン沈着、肉芽組織形成、上皮形成、および創傷収縮によって特徴付けられる。“血管形成”では、血管内皮細胞が新たな血管を形成する。“線維増殖”および肉芽組織形成では、線維芽細胞が成長し、コラーゲンおよびフィブロネクチンを分泌することにより新たな一過性の細胞外基質(ECM)を形成する。同時に、表皮の“再上皮形成”が起こり、上皮細胞が増殖し、創傷床の頂上に‘這うように進み’、新たな組織に覆いを提供する。創傷収縮中に、筋繊維芽細胞が、平滑筋細胞の場合と似た機序を用いて、創端をしっかりつかんで収縮することにより、創傷の大きさを小さくする。細胞の役割が終わりに近づくと、不要な細胞はアポトーシスを受ける。成熟およびリモデリング中、コラーゲンは裂線(tension line)に沿ってリモデリングおよび再配列され、もはや必要とされない細胞はアポトーシスにより除去される。しかしながら、この過程は複雑なだけでなく脆弱であり、中断または失敗して非治癒性慢性創傷(一例としては、糖尿病性創傷または潰瘍、とりわけ糖尿病性足潰瘍が挙げられる)の形成をもたらしやすい。非治癒性慢性創傷に寄与する因子は、糖尿病、静脈または動脈疾患、感染症、および高齢者の代謝欠損である。
【0183】
[00186]“骨治癒”または“骨折治癒”という用語は、体が骨折の修復を促進する増殖
性の生理学的過程をさす。骨折治癒の過程では、いくつかの回復段階で骨折および脱臼を包囲する領域の増殖および保護が促進される。過程の長さは損傷程度に依存し、ほとんどの上半身骨折の修復には2~3週間の慣例的許容範囲(usual margin)が与えられ;下半身損傷には4週間を超えるいずれかの期間が与えられる。治癒過程はおもに“骨膜”(骨を覆う結合組織膜)によって決定される、骨膜は、骨の修復に必須の“軟骨芽細胞”および骨芽細胞になる前駆細胞の供給源の1つである。骨髄(存在する場合)、骨内膜、小型血管、および線維芽細胞は、前駆細胞の他の供給源である。
【0184】
[00187]他の態様において、sGC刺激剤またはその塩である式Iもしくは表Iの化合
物またはまたはその塩は、創傷または骨治癒の過程の刺激が望ましい以下のタイプの疾患、障害または状態の処置に有用である:
・糖尿病における創傷または潰瘍の治癒;微小血管潅流改善;損傷後、または周術期管理において炎症性反応を妨げるための、微小血管潅流改善;裂肛;糖尿病性潰瘍;糖尿病性足潰瘍);骨治癒;破骨細胞骨吸収およびリモデリング;ならびに新骨形成。
【0185】
[00188]“結合組織”(CT)という用語は、体の異なるタイプの組織および器官を支
持、接続、または分離する、一種の動物組織をさす。これは動物組織の4つの一般的クラスの1つであり、他のものは上皮、筋肉、および神経組織である。結合組織は、中枢神経系を含む至る所に見いだされる。他の組織の間に位置する。すべてのCTは3つの主要成分--基質、線維および細胞--を有し、これらの成分はすべて体液に浸かっている。
【0186】
[00189]“結合組織の障害または状態”という用語は、体の1以上の部分における結合
組織の異常が関与するあらゆる状態をさす。特定の障害は免疫系の過活性によって特徴付けられ、結果として炎症および組織の全身性損傷が生じ、通常は正常組織(例えば特定器官の正常組織)が結合組織で置き換えられる。他の障害には、結合組織自体の生化学的異常または構造的欠陥が関与する。これらの障害のいくつかは遺伝性であり、いくつかは原因が分かっていない。
【0187】
[00190]結合組織疾患が自己免疫由来である場合、それらは“リウマチ障害”、“自己
免疫性リウマチ障害”または“自己免疫性膠原血管障害”として分類される。
[00191]“自己免疫障害”では、体によって産生される抗体または他の細胞が体自体の
組織を攻撃する。多くの自己免疫障害は、さまざまな器官の結合組織に悪影響を及ぼす。自己免疫障害では、炎症および免疫反応が、関節周囲のほか、腎臓または消化管の器官などの重要器官を含む他の組織に、結合組織損傷をもたらす可能性がある。心臓を包囲する袋(心膜)、肺を覆う膜(胸膜)、縦隔(正確に説明されていない胸郭中の構造物の群であり、疎性結合組織に包囲されており、心臓、心臓の大血管、食道、気管、横隔神経、心臓神経、胸管、胸腺 および中心胸(central chest)のリンパ節を含有する)、そしてさら
に脳が、悪影響を受ける可能性がある。
【0188】
[00192]本明細書中で用いられる“線維症”という用語は、体の特定器官または部分に
おける結合組織または線維組織(瘢痕組織、コラーゲン)の蓄積をさす。線維症が単一細胞系から生じている場合、それは“線維腫”とよばれる。線維症は、体が損傷細胞の修復または置換を試みるときに生じるので、反応性、良性または病理学的状態であることができる。生理学的線維症は、瘢痕形成過程に似ている。病理学的状態は、当該組織が反復的および継続的に損傷を受けると発現する。単回の損傷の発現は、重症であっても、通常は線維症を引き起こさない。損傷が反復的または継続的である場合(例えば慢性肝炎で生じるように)、体は損傷を修復しようとするが、その試みはむしろ瘢痕組織の過剰蓄積をもたらす。瘢痕組織は、瘢痕組織が行うことができない特定機能を行う器官の正常組織に置き換わり始める;それはまた、血流を妨げ、他の細胞への血液供給を制限する可能性がある。結果として、これら他の機能性細胞は死滅し始め、より多くの瘢痕組織が形成する。これが肝臓で起こると、腸から肝臓へ血液を運ぶ静脈(門脈)の血圧が上昇して、“門脈圧亢進症”として知られる状態が生じる。
【0189】
[00193]“硬化症”という用語は、通常は正常器官特異性組織が結合組織で置換される
ことによる、正常なら柔軟であるはずの組織または構造物または器官の硬化または硬直化をさす。
【0190】
[00194]多くのタイプの線維症または線維性疾患、例えば、限定されるものではないが
、肺線維症(特発性肺線維症、嚢胞性線維症)、肝臓の線維症(または“硬変”)、心内膜心筋線維症、陳旧性心筋梗塞症、心房線維症、縦隔線維症、骨髄線維症(骨髄に悪影響を及ぼす)、後腹膜線維症、進行性塊状線維症(肺に悪影響を及ぼす)、腎性線維症(皮膚に悪影響を及ぼす)、クローン病、関節線維症、ペイロニー病(ペニスに悪影響を及ぼす)、デュピュイトラン拘縮(手および指に悪影響を及ぼす)、いくつかの形態の癒着性関節包炎(肩に悪影響を及ぼす)がある。
【0191】
[00195]多くのタイプの硬化症または“硬化性疾患”、例えば、限定されるものではな
いが、筋萎縮性側索症(ALS);アテローム性動脈硬化症;巣状分節性糸球体硬化症およびネフローゼ症候群;海馬硬化症(脳に悪影響を及ぼす);硬化性苔癬(膣およびペニスの結合組織を硬化する疾患);肝硬化症(硬変);多発性硬化症または巣状硬化症(共調に悪影響を及ぼす疾患);骨硬化症(骨密度が著しく低下する疾患);耳硬化症(耳に悪影響を及ぼす疾患);結節硬化症(多系統に悪影響を及ぼすまれな遺伝病);原発性硬化性胆管炎(cholanginitis)(胆管の硬化);原発性側索硬化症(随意筋における進行性
の筋衰弱);およびケロイドがある。
【0192】
[00196]“強皮症”または“全身性硬化症”または“進行性全身性強皮症”という用語
は、関節、皮膚および内臓器官の瘢痕形成ならびに血管異常が関与する状態をさす。全身性硬化症は、場合によっては限定された形態で生じる可能性があり、例えば、皮膚にのみ、もしくは主として皮膚の特定部分のみが悪影響を受けるか、またはCREST症候群(体幹ではなく皮膚の末梢領域が関与する)として生じることがある。全身性硬化症の通常の初期症状は、指の末端の皮膚の腫脹、続いて肥厚および圧迫である。指が突然、一時的に非常に青ざめて刺痛を感じるようになるか、あるいは、感覚を失うか、痛みを感じるか、またはその両方になる、“レイノー現象”が一般的である。
【0193】
[00197]“多発性筋炎”という用語は、筋炎症をさす。“皮膚筋炎”という用語は、皮
膚炎症を伴う筋炎症をさす。“多発性軟骨炎”という用語は、軟骨炎症をさす。
[00198]“好酸球性(oesinophilic)筋膜炎”という用語は、好酸球性免疫細胞が放出さ
れ、皮膚下、筋肉上部および筋肉間にある強い線維組織の層である“筋膜”の炎症および
硬化が生じる、まれな障害をさす。筋膜は、腕および脚において痛みを伴う炎症を起こし、腫脹し、徐々に硬化する。腕および脚の皮膚が徐々に硬化するにつれ、それらは動かしにくくなる。最終的に、それらは異常な位置で動かなくなる。場合によっては、腕が関与する場合、その人は手根管症候群を発現する可能性がある。
【0194】
[00199]他の態様において、sGCの刺激剤または医薬的に許容しうるその塩である式
Iもしくは表IのsGC刺激剤または医薬的に許容しうるその塩を投与することにより処置および/または防止することができる障害の具体的な疾患としては、限定されるものではないが、炎症、自己免疫または線維症(すなわち線維性疾患)が関与する以下のタイプの疾患が挙げられる:
・泌尿生殖器系および腎臓の障害:糖尿病性腎症;慢性の腎疾患または腎機能不全に起因する腎線維症および腎不全;蓄積/沈着および組織損傷に起因する腎線維症および腎不全;腎硬化症;進行性硬化症;糸球体腎炎;巣状分節性糸球体硬化症;ネフローゼ症候群;前立腺肥大;腎線維症;間質性腎線維症;
・肺系統障害:肺線維症;特発性肺線維症;嚢胞性線維症;進行性塊状線維症;肺が悪影響を受ける進行性塊状線維症;
・心臓が悪影響を受ける障害:心内膜心筋線維症;陳旧心筋梗塞症;心房性線維症;心臓間質性(cardiac interstitial)線維症;心臓リモデリングおよび線維症;心肥大;
・肝臓および関連器官の障害:肝臓硬化症または硬変;慢性肝疾患に関連する肝硬変;肝線維症;肝星細胞活性化;NASH;肝線維コラーゲンおよび全コラーゲン蓄積;壊死炎症性および/または免疫由来の肝疾患;原発性胆汁性肝硬変;原発性硬化性胆管炎(primary sclerosing cholanginitis);他の胆汁うっ滞性肝疾患:肉芽種性肝疾患、肝悪性腫瘍、妊娠性肝内胆汁うっ滞、肝炎、敗血症、薬物または毒素、移植片対宿主疾患、肝移植後、総胆管結石症、胆管腫瘍、膵臓がん、ミリッチー症候群、AIDS胆管症、または寄生虫に関連するもの;住血吸虫症;肝細胞がん;
・消化器系の疾患または障害:クローン病;潰瘍性大腸炎;胃腸管の硬化症;アカラシア;
・皮膚または眼の疾患:腎線維症;ケロイド;線維性局所または皮膚障害または状態;真皮線維症;強皮症、皮膚線維症;限局性強皮症;肥大性瘢痕;母斑(naevi);増殖性硝
子体網膜症;サルコイド;肉芽腫;眼線維症;
・神経系に悪影響を及ぼす疾患:筋委縮側索硬化症(ALS);海馬硬化症、多発性硬化症(MS);巣状硬化症;原発性側索硬化症;
・骨の疾患;骨硬化症;
・耳硬化症;他の聴力疾患または障害;難聴、部分的または全体的聴力損失;部分的または全体的聴覚消失症;耳鳴り;雑音性聴力損失;
・自己免疫、炎症または線維症が関与する他の疾患:強皮症;局所性強皮症または限局性強皮症;縦隔線維症;線維症縦隔炎;骨髄線維症;後腹膜線維症;関節線維症;ペイロニー病;デュピュイトラン拘縮;硬化性苔癬;いくつかの形態の癒着性関節包炎;アテローム性動脈硬化症;結節硬化症;全身性硬化症;多発性筋炎;皮膚筋炎;多発性軟骨炎;好酸球性筋膜炎;全身性エリテマトーデスまたは狼瘡;骨髄線維症、骨髄線維化または骨骨髄線維症;サルコイドーシス;子宮筋腫;子宮内膜症。
【0195】
[00200]他の態様において、sGCの刺激剤または医薬的に許容しうるその塩である式
Iもしくは表IのsGC刺激剤または医薬的に許容しうるその塩を投与することにより処置および/または防止することができる障害の具体的な疾患としては、限定されるものではないが、特定タイプのがん;鎌状赤血球症;鎌状赤血球性貧血;がん転移;骨粗鬆症;胃不全麻痺;機能性消化不良;糖尿病性合併症;脱毛症または脱毛;内皮機能不全に関連する疾患;酸化窒素産生の低減に関連する神経障害;アルギノコハク酸尿症;神経筋疾患:デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD)、肢帯型筋ジストロフィー、末梢性ミオパシー、I型およびII型筋強直性ジストロフィー、顔面-肩甲-腓骨筋ジストロフィー、常染色体性およびX連鎖性のエメリ・ドレフュス型筋ジストロフィー、眼球咽頭型筋ジストロフィー、筋萎縮性側索硬化症および棘筋萎縮症(SMA)が挙げられる。いくつかの態様において、本発明は、治療的有効量の式Iもしくは表Iの化合物、または医薬的に許容しうるその塩(複数)、または医薬的に許容しうるその塩(1種)を、処置を必要としている被験対象に投与することを含む、被験対象の疾患、健康状態または障害を処置する方法であって、該疾患、健康状態または障害が上記疾患の1つから選択される、前記方法に関する。
【0196】
[00201]他の態様において、本発明の化合物は、ステントなどの埋め込み型デバイスの
形態で送達することができる。ステントは、疾患に誘発される局所的な流れの阻害を予防または防止するために、体の天然の通路/導管に挿入されるメッシュ状の“管”である。この用語はまた、外科手術のためのアクセスを可能にするために、そのような天然の導管を一時的に開いたままにするために用いられる管をさすことができる。
【0197】
[00202]薬剤溶出性ステント(DES)は、狭窄し、病変している末梢または冠動脈に
留置される末梢または冠動脈用ステント(スキャフォールド)であって、細胞増殖、通常は平滑筋細胞増殖を遮断するための薬物をゆっくり放出するものである。これは、通常なら血餅(血栓)と一緒になってステント動脈を遮断する可能性がある線維症を予防し、この過程は再狭窄とよばれる。ステントは、通常、インターベンション心臓病専門医またはインターベンション放射線医によって、血管形成の手順の間に末梢または冠動脈内に留置される。細胞増殖を遮断するためにDESに一般に用いられる薬剤としては、パクリタキセルまたはラパマイシン類似体が挙げられる。
【0198】
[00203]本発明のいくつかの態様において、本発明のsGC刺激剤は、前記sGC刺激
剤でコーティングされた薬剤溶出性ステントにより送達させることができる。本発明のsGC刺激剤でコーティングされた薬剤溶出性ステントは、経皮的冠動脈インターベンション中のステント再狭窄および血栓形成の予防に有用であることができる。本発明のsGC刺激剤でコーティングされた薬剤溶出性ステントは、平滑筋細胞増殖を予防することができるほか、ステントが挿入された動脈の内皮組織の再血管化および再生を補助することができる。
【0199】
[00204]冠動脈閉塞性疾患による難治性狭心症を処置するための経皮的冠動脈インター
ベンションの代替手段は、冠動脈バイパス移植術(CABG)とよばれる手順である。CABGは、グラフトアテローム硬化症の急速な発現によってさらに悪化する進行中の過程の唯一の緩和法である。伏在静脈グラフトは、CABG外科手術においてもっとも一般的に用いられる導管である。静脈CABGの長期にわたる臨床上の成功は、以下の3つの主な理由で阻まれる:グラフトアテローム性硬化症の急速な発現、不完全な内皮化、および血栓形成。
【0200】
[00205]いくつかの態様において、本発明のsGC刺激剤は、CABG中の伏在グラフ
トの故障を予防するために用いることができる。本発明の化合物は、内皮化の過程を補助し、血栓形成の予防を促進することができる。この適応において、sGC刺激剤は、ゲルの形態で局所に送達される。
【0201】
[00206]本明細書中、“疾患”、“障害”および“状態”という用語は、sGC、cG
MPおよび/またはNOが媒介する医学的または病理学的状態をさすために、互換的に用いることができる。
【0202】
[00207]本明細書中で用いられる“被験対象”および“患者”という用語は、互換的に
用いられる。“被験対象”および“患者”という用語は、動物(例えば、ニワトリ、ウズ
ラもしくはシチメンチョウなどの鳥類、または哺乳類)、具体的には、非霊長類(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ウサギ、モルモット、ラット、ネコ、イヌおよびマウス)および霊長類(例えば、サル、チンパンジーおよびヒト)を含む“哺乳類”、より具体的にはヒトをさす。いくつかの態様において、被験対象は、家畜(例えば、ウマ、ウシ、ブタまたはヒツジ)またはペット(例えば、イヌ、ネコ、モルモットまたはウサギ)のような非ヒト動物である。いくつかの態様において、被験対象はヒトである。
【0203】
[00208]本発明はまた、被験対象において上記疾患、状態および障害の1つを処置する
ための方法であって、処置を必要としている被験対象に、治療的有効量の式Iもしくは表Iの化合物または医薬的に許容しうるその塩を投与することを含む、前記方法を提供する。あるいは、本発明は、これらの疾患、状態および障害の1つの処置での、処置を必要としている被験対象における、式Iもしくは表Iの化合物または医薬的に許容しうるその塩の使用を提供する。本発明はさらに、式Iもしくは表Iの化合物または医薬的に許容しうるその塩を用いることを含む、これらの疾患、状態および障害の1つの処置に有用な医薬品の製造方法を提供する。
【0204】
[00209]本明細書中で用いられる“生体試料”という用語は、in vivoおよびe
x vivo試料をさし、制限なしで、細胞培養物またはその抽出物;哺乳類から得られる生検材料またはその抽出物;血液、唾液、尿、糞便、精液、涙、リンパ液、眼液、硝子体液、もしくは他の体液、またはそれらの抽出物が包含される。
【0205】
[00210]障害または疾患に関する“処置する”、“処置している”または“処置”とい
う用語は、該障害または疾患の原因および/もしくは作用を軽減または妨げることをさす。本明細書中で用いられる“処置する”、“処置”および“処置している”という用語は、1以上の治療(例えば、本発明の化合物または組成物のような1以上の治療薬)の投与に起因する、sGC、cGMPおよび/またはNOが媒介する状態の進行、重症度および/または持続期間の低減または改善、あるいは前記状態の症状の1以上(好ましくは、1以上の識別可能な症状)の改善(すなわち、状態を“治癒”させることなく“制御”すること)をさす。具体的態様において、“処置する”、“処置”および“処置している”という用語は、sGC、cGMPおよび/またはNOが媒介する状態の測定可能な身体的パラメーターの少なくとも1つの改善をさす。他の態様において、“処置する”、“処置”および“処置している”という用語は、sGC、cGMPおよび/またはNOが媒介する状態の進行を、例えば識別可能な症状の安定化により身体的に、または例えば身体的パラメーターの安定化により生理学的に、またはその両方により、阻害することをさす。
【0206】
[00211]本明細書中で用いられる“予防すること”という用語は、疾患または障害の1
以上の症状の出現を回避または未然に防ぐために、事前に医薬品を投与することをさす。医学分野の当業者なら、“予防する”という用語が絶対的な用語ではないことを認めるであろう。医学分野では、それは、状態、または状態の症状の可能性または重篤性を実質的に低減するための薬物の予防的投与をさすと理解され、これが、本開示で意図されている意味である。当分野の標準的テキストであるPhysician’s Desk Referenceでは、“予防する”という用語が数百回用いられている。このテキストで用いられている場合、障害または疾患に関する“予防する”、“予防すること”および“予防”という用語は、疾患または障害が完全に発現する前に、疾患または障害の原因、作用、症状または進行を回避することをさす。
【0207】
[00212]一態様において、本発明の方法は、sGC、cGMPおよび/またはNOが関
連する疾患、障害または症状を発現する素因(例えば遺伝学的素因)を有する患者、具体的にはヒトに対する予防的または“先制的”手段である。
【0208】
[00213]他の態様において、本発明の方法は、sGC、cGMPおよび/またはNOが
関連する疾患、障害または症状を発現するリスクをもたらす疾患、障害または状態を患っている患者、具体的にはヒトに対する予防的または“先制的”手段である。
【0209】
[00214]本明細書中に記載する化合物および医薬組成物は、sGC、cGMPおよび/
またはNOによって媒介、調節、または影響される疾患または障害を処置または予防するために、単独または併用療法で用いることができる。
【0210】
[00215]本明細書中に開示する化合物および組成物はまた、コンパニオンアニマル、外
来動物および家畜、例えば、制限なしで、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ハムスター、アレチネズミ、モルモット、ウサギ、ウマ、ブタおよびウシの獣医学的処置にも有用である。
【0211】
[00216]他の態様において、本発明は、生体試料においてsGC活性を刺激する方法で
あって、前記生体試料を本発明の化合物または組成物と接触させることを含む方法を提供する。生体試料におけるsGC刺激剤の使用は、当業者に公知のさまざまな目的に関し有用である。そのような目的の例としては、制限なしで、生物学的アッセイおよび生物資料の保存が挙げられる。
【0212】
併用療法
[00217]本明細書中に記載する化合物および医薬組成物は、1以上の追加的治療薬との
併用療法に用いることができる。活性作用物質が別個の剤形にある1より多くの活性作用物質との併用処置の場合、活性作用物質は、別個に、または併せて投与することができる。これに加えて、1つの要素の投与は、他の作用物質の投与前、投与と同時、または投与後であることができる。
【0213】
[00218]他の作用物質と同時投与する場合、例えば、他の疼痛薬と同時投与する場合、
第2の作用物質の“有効量”は、用いる薬剤のタイプに依存する。適した投与量は、承認薬の場合は公知であり、当業者なら、被験対象の状態、処置される状態(1以上)のタイプ、用いられる本明細書中に記載する化合物の量に従って調整することができる。量が明示されていない場合、有効量は推測すべきである。例えば、本明細書中に記載する化合物は、約0.01~約10000mg/kg体重/日、約0.01~約5000mg/kg体重/日、約0.01~約3000mg/kg体重/日、約0.01~約1000mg/kg体重/日、約0.01~約500mg/kg体重/日、約0.01~約300mg/kg体重/日、約0.01~約100mg/kg体重/日、の投与量範囲で、被験対象に投与することができる。
【0214】
[00219]“併用療法”を採用する場合、有効量は、第1の量の式Iもしくは表Iの化合
物または医薬的に許容しうるその塩と、第2の量の追加的な適した治療薬を用いて達成することができる。
【0215】
[00220]本発明の一態様において、式Iもしくは表Iの化合物または医薬的に許容しう
るその塩、および追加的治療薬はそれぞれ、有効量で(すなわち、それぞれ、単独で投与した場合に治療的に有効であろう量で)投与される。他の態様において、式Iもしくは表Iの化合物または医薬的に許容しうるその塩、および追加的治療薬はそれぞれ、単独では治療効果をもたらさない量(治療量未満の用量)で投与される。さらに他の態様において、式Iもしくは表Iの化合物または医薬的に許容しうるその塩は有効量で投与することができるが、追加的治療薬は治療量以下の用量で投与される。さらに他の態様において、式Iもしくは表Iの化合物または医薬的に許容しうるその塩は治療量以下の用量で投与することができるが、追加的治療薬、例えば、適したがん治療薬は、有効量で投与される。
【0216】
[00221]本明細書中で用いられる“組み合わせで”または“同時投与”という用語は、
1より多くの治療(例えば、1以上の予防薬および/または治療薬)の使用をさすために互換的に用いることができる。該用語の使用は、治療(例えば、予防薬および/または治療薬)を被験対象に投与する順序を限定するわけではない。
【0217】
[00222]同時投与は、第1および第2の量の化合物を、例えば、固定比率の第1および
第2の量を有するカプセルもしくは錠剤のように単一の医薬組成物で、または、それぞれ多数の別個のカプセルもしくは錠剤で、実質的に同時に投与することを包含する。これに加えて、そのような同時投与は、各化合物をいずれかの順序で逐次的に使用することも包含する。同時投与が、第1の量の式Iもしくは表Iの化合物または医薬的に許容しうるその塩と、第2の量の追加的治療薬の別個投与を包含する場合、化合物は、望ましい治療効果を有するのに十分近い時間内に投与される。例えば、望ましい治療効果をもたらすことができる各投与間の時間は、数分~数時間であることができ、各化合物の特性、例えば、効力、溶解度、生物学的利用能、血漿内半減期、および動態学的プロフィールを考慮して決定することができる。例えば、式Iもしくは表Iの化合物または医薬的に許容しうるその塩および第2の治療薬は、任意の順序で、互いに約24時間以内に、互いに約16時間以内に、互いに約8時間以内に、互いに約4時間以内に、互いに約1時間以内に、または互いに約30分以内に、投与することができる。
【0218】
[00223]より詳細には、第1の治療(例えば、本明細書中に記載する化合物などの予防
薬または治療的薬)は、第2の治療(例えば、抗がん剤などの予防薬または治療薬)の投与前(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間前)、投与と同時に、または投与後(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、または12週間後)に、被験対象に投与することができる。
【0219】
[00224]別個に、または同一の医薬組成物で投与される、式Iもしくは表Iの化合物ま
たは医薬的に許容しうるその塩と組み合わせることができる他の治療薬の例としては、限定されるものではないが、以下が挙げられる:
(1)内皮由来の放出因子(EDRF);
(2)NO供与体、例えば、ニトロソチオール、ニトリット、シドノンイミン、NONOエート、N-ニトロソアミン、N-ヒドロキシルニトロソアミン、ニトロソイミン(nitrosimine)、ニトロチロシン、ジアゼチンジオキシド(diazetine dioxide)、オキサトリアゾール5-イミン、オキシム、ヒドロキシルアミン、N-ヒドロキシグアニジン、ヒドロキシ尿素またはフロキサン。これらのタイプの化合物のいくつかの例としては、以下が挙げられる:三硝酸グリセリン(GTN、ニトログリセリン(nitroglycerin)、ニトログリセリン( nitroglycerine)およびトリニトログリセリンとしても知られる)、グリセロールの硝酸エステル;酸化窒素分子が金属鉄に配位して正方形両錐錯体(square bipyramidal complex)を形成している、ニトロプルシドナトリウム(SNP);モルホリンとシドノンイミンの組み合わせによって形成される両性イオン性化合物である、3-モルホリノシドノンイミン(SIN-1);ニトロソチオール官能基を有するN-アセチル化アミノ酸誘導体である、S-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン(SNAP);ジエチレントリアミンに共有結合している酸化窒素化合物である、ジエチレントリアミン/NO(DETA/NO);アセチルサリチル酸のm-ニトロキシメチルフェニルエステルであるNCX4016。これらのクラスのNO供与体のいくつかのより詳細な例としては、以下が挙げられる:標準的なニトロ血管拡張薬、例えば、有機硝酸エステルおよび亜硝酸エステル、例えば、ニトログリセリン、亜硝酸アミル、二硝酸イソソルビド、5-一硝酸イソソルビド、およびニコランジル;イソソルビド(Dilatrate(登録商標)-SR、Imdur(登録商標)、Ismo(登録商標)、Isordil(登録商標)、Isordil(登録商標)、Titradose(登録商標)、Monoket(登録商標))、FK409(NOR-3);FR144420(NOR-4);3-モルホリノシドノンイミン;リンシドミンクロロ水和物(“SIN-1”);S-ニトロソ-N-アセチルペニシラミン(“SNAP”);AZD3582(CINOD鉛化合物)、NCX4016、NCX701、NCX1022、HCT1026、NCX1015、NCX950、NCX1000、NCX1020、AZD4717、NCX1510/NCX1512、NCX2216、およびNCX4040(すべてNicOx S.A.から入手可能)、S-ニトロソグルタチオン(GSNO)、ニトロプルシドナトリウム、V-ピロロ-NO、S-ニトロソグルタチオン モノエチルエステル(GSNO-エステル)、6-(2-ヒドロキシ-1-メチル-ニトロソヒドラジノ)-N-メチル-1-ヘキサンアミン(NOC-9)またはジエチルアミンNONOエート。酸化窒素供与体はまた、米国特許公報第5155137号、第5366997号、第5405919号、第5650442号、第5700830号、第5632981号、第6290981号、第5691423号、第5721365号、第5714511号、第6511911号および第5814666号、Chrysselis et al.(2002)J Med Chem.45:5406-9(NO供与体14および17など)、ならびにNitric Oxide Donors for Pharmaceutical and Biological Research,Eds:Peng George Wang,Tingwei Bill Cai,Naoyuki Taniguchi,Wiley,2005に開示されているとおりである;
(3)cGMP濃度を上昇させる他の物質、例えば、プロトポルフィリンIX、アラキドン酸およびフェニルヒドラジン誘導体;
(4)酸化窒素シンターゼ基質:例えば、n-ヒドロキシグアニジンに基づく類似体、例えば、N[G]-ヒドロキシ-L-アルギニン(NOHA)、1-(3,4-ジメトキシ-2-クロロベンジリデンアミノ)-3-ヒドロキシグアニジン、およびPR5(1-(3,4-ジメトキシ-2-クロロベンジリデンアミノ)-3-ヒドロキシグアニジン);L-アルギニン誘導体(例えば、ホモ-Arg、ホモ-NOHA、N-tert-ブチルオキシ-およびN-(3-メチル-2-ブテニル)オキシ-L-アルギニン、カナバニン、イプシロングアニジン-カプロン酸(carpoic acid)、アグマチン、ヒドロキシル-アグマチン、およびL-チロシル-L-アルギニン);N-アルキル-N’-ヒドロキシグアニジン(N-シクロプロピル-N’-ヒドロキシグアニジンおよびN-ブチル-N’-ヒドロキシグアニジンなど)、N-アリール-N’-ヒドロキシグアニジン(N-フェニル-N’-ヒドロキシグアニジン、およびそれぞれ-F、-Cl、-メチル、-OH置換基を持つそのパラ置換誘導体など);3-(トリフルオロメチル)プロピルグアニジンなどのグアニジン誘導体;ならびにCali et al.(2005,Current Topics in Medicinal Chemistry 5:721-736)に概説されている他のもの、およびその引用文献に開示されている他のもの;
(5)eNOS転写を増強する化合物:例えば、国際公開WO02/064146、WO02/064545、WO02/064546およびWO02/064565、ならびに対応する特許文献、例えば、米国特許出願公開第2003/0008915号、米国特許出願公開第2003/0022935号、米国特許出願公開第2003/0022939号および米国特許出願公開第2003/0055093号に記載されているもの。米国特許出願公開第20050101599号に記載されているもの(例えば、2,2-ジフルオロベンゾ[1,3]ジオキソl-5-カルボン酸インダン-2-イルアミド、および4-フルオロ-N-(インダン-2-イル)-ベンズアミド)ならびにSanofi-Aventis化合物AVE3085およびAVE9488(CA登録番号916514-70-0;Schaefer et al.,Journal of Thrombosis and Homeostasis 2005; 第3巻、補遺1:要約番号P1487)
を含む、他のeNOS転写エンハンサー;
(6)NO非依存性ヘム非依存性sGC活性化因子、例えば、限定されるものではないが:BAY58-2667(特許公報のドイツ特許第19943635号参照)
【0220】
【0221】
HMR-1766(アタシグアトナトリウム、特許公報WO2000002851参照)
【0222】
【0223】
S3448(2-(4-クロロ-フェニルスルホニルアミノ)-4,5-ジメトキシ-N-(4-(チオモルホリン-4-スルホニル)-フェニル)-ベンズアミド(特許公報のドイツ特許第19830430号およびWO2000002851参照)
【0224】
【0225】
および
HMR-1069(Sanofi-Aventis)。
(7)ヘム依存性sGC刺激剤、例えば、限定されるものではないが:
YC-1(特許公報の欧州特許EP667345号およびドイツ特許第19744026号参照)
【0226】
【0227】
リオシグアト(BAY63-2521、Adempas、市販用製品、ドイツ特許第19834044号に記載)
【0228】
【0229】
ネリシグアト(BAY60-4552、国際公開WO2003095451に記載)
【0230】
【0231】
ベリシグアト(BAY1021189、リオシグアトの臨床的代替物)、
BAY41-2272(ドイツ特許第19834047号およびドイツ特許第19942809号に記載)
【0232】
【0233】
BAY41-8543(ドイツ特許第19834044号に記載)
【0234】
【0235】
エトリシグアト(国際公開WO2003086407に記載)
【0236】
【0237】
CFM-1571(特許公報の国際公開WO2000027394に記載)
【0238】
【0239】
A-344905、そのアクリルアミド類似体A-350619およびアミノピリミジン類似体A-778935。
【0240】
【0241】
公報:米国特許出願公開第20090209556号、米国特許公報第8455638号、米国特許出願公開第20110118282号(WO2009032249)、米国特許出願公開第20100292192号、米国特許出願公開第20110201621号、米国特許公報第7947664号、米国特許公報第8053455号(WO2009094242)、米国特許出願公開第20100216764号、米国特許公報第8507512号、(WO2010099054)米国特許出願公開第20110218202号(WO2010065275)、米国特許出願公開第20130012511号(WO2011119518)、米国特許出願公開第20130072492号(WO2011149921)、米国特許出願公開第20130210798号(WO2012058132)の1つに記載されている化合物、およびTetrahedron Letters(2003),44(48):8661-8663に開示されている他の化合物。
【0242】
(8)cGMPの分解を阻害する化合物、例えば:
PDE5阻害剤、例えば、シルデナフィル(Viagra(登録商標))、および他の関連作用物質、例えば、アバナフィル、ロデナフィル、ミロデナフィル、クエン酸シルデナフィル(Revatio(登録商標))、タダラフィル(Cialis(登録商標)またはAdcirca(登録商標))、バルデナフィル(Levitra(登録商標))およびウデナフィル;アルプロスタジル;およびジピリダモール;PF-00489791PDE9阻害剤、例えばPF-04447943など;
(9)カルシウムチャネル遮断薬、例えば:
ジヒドロピリジンカルシウムチャネル遮断薬:アムロジピン(Norvasc)、アラニジピン(Sapresta)、アゼルニジピン(Calblock)、バルニジピン(HypoCa)、ベニジピン(Coniel)、シルニジピン(Atelec、Cinalong、Siscard)、クレビジピン(Cleviprex)、ジルチアゼム、エホニジピン(Landel)、フェロジピン(Plendil)、ラシジピン(Motens、Lacipil)、レルカニジピン(Zanidip)、マニジピン(Calslot、Madipine)、ニカルジピン(Cardene、Carden SR)、ニフェジピン(Procardia、Adalat)、ニルバジピン(Nivadil)、ニモジピン(Nimotop)、ニソルジピン(Baymycard、Sular、Syscor)、ニトレンジピン(Cardif、Nitrepin、Baylotensin)、プラニジピン(Acalas)、イスラジピン(Lomir);
フェニルアルキルアミンカルシウムチャネル遮断薬:ベラパミル(Calan、Isoptin)
【0243】
【0244】
ガロパミル(Procorum、D600);
ベンゾチアゼピン:ジルチアゼム(Cardizem);
【0245】
【0246】
非選択性カルシウムチャネル遮断薬、例えば:ミベフラジル、ベプリジル、およびフルスピリレン、フェンジリン;
(10)エンドセリン受容体類似体(ERA):例えば、二重(ETAおよびETB)エンドセリン受容体アンタゴニストのボセンタン(Tracleer(登録商標)として市販);シタキセンタン、Thelin(登録商標)の名称で市販;アンブリセンタンは、米国でLetairis(登録商標)として市販されている;2008年に治験入りした二重/非選択性エンドセリンアンタゴニストのアクテリオン-1;
(11)プロスタサイクリン誘導体または類似体:例えば、プロスタサイクリン(プロスタグランジンI2)、エポプロステノール(合成プロスタサイクリン、Flolan(
登録商標)として市販);トレプロスチニル(Remodulin(登録商標))、イロプ
ロスト(Ilomedin(登録商標))、イロプロスト(Ventavis(登録商標)として市販);開発中のRemodulin(登録商標)の経口および吸入形態;日本および韓国で入手可能な経口プロスタノイドであるベラプロスト;
(12)抗脂質異常薬、例えば:胆汁酸金属イオン封鎖剤(例えば、コレスチラミン、コレスチポール、コレスチランおよびコレセベラム);スタチン、例えば、アトルバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、フルバスタチン、ピタバスタチン、ロスバスタチンおよびプラバスタチン;エゼチミブなどのコレステロール吸収阻害剤;他の脂質低下薬、例えば、イコサペントエチルエステル、オメガ-3-酸エチルエステル、レデュコール(Reducol);フィブリン酸誘導体、例えば、クロフィブラート、ベザフィブラート、クリノフィブラート、ゲムフィブロジル、ロニフィブラート、ビニフィブラート、フェノフィブラート(Fenofirate)、シプロフィブラート、コリンフェノフィブラート;ニコチン酸誘導体、例えば、アシピモックスおよびナイアシン;また、スタチン、ナイアシン、腸コレステロール吸収阻害サプリメント(エゼチミブなど)およびフィブラートの組み合わせ;重硫酸クロピドグレルなどの抗血小板療法;
(13)以下のタイプのような抗凝固薬:
・クマリン(ビタミンKアンタゴニスト):米国および英国でもっとも用いられているWarfarin(登録商標)(クマジン);他の国でおもに用いられているAcenocoumarol(登録商標)およびPhenprocoumon(登録商標);Phenindione(登録商標);
・ヘパリンおよび誘導体物質、例えば:ヘパリン;低分子量ヘパリン、フォンダパリヌクスおよびイドラパリヌクス;
・直接トロンビン阻害剤、例えば:アルガトロバン、レピルジン、ビバリルジンおよびダビガトラン;米国では承認されていないキシメラガトラン(Exanta(登録商標));
・血餅を溶解し、動脈の遮断を取り除くために用いられる組織プラスミノーゲン活性化因子、例えば、アルテプラーゼ;
(14)抗血小板薬:例えば、ロピドグレル(Lopidogrel)およびチクロピリジンなどのチエノピリジン;ジピリダモール;アスピリン;
(15)ACE阻害薬、例えば以下のタイプ:
・スルフヒドリル含有作用物質、例えば、最初のACE阻害薬であるカプトプリル(商品名Capoten(登録商標))およびゾフェノプリル;
・ジカルボキシレート含有作用物質、例えば、エナラプリル(Vasotec/Renitec(登録商標))、ラミプリル(Altace/Tritace/Ramace/Ramiwin(登録商標));キナプリル(Accupril(登録商標))、ペリンドプリル(Coversyl/Aceon(登録商標));リシノプリル(Lisodur/Lopril/Novatec/Prinivil/Zestril(登録商標))およびベナゼプリル(Lotensin(登録商標));
・ホスホネート含有作用物質、例えばフォシノプリル;
・天然由来のACE阻害薬、例えば:乳製品、特に発酵乳の摂取後に自然に生じるカゼインおよび乳清の分解産物である、カソキニンおよびラクトキニン;プロバイオティックLactobacillus helveticusによって産生されるか、カゼインから誘導される、ラクトトリペプチドVal-Pro-ProおよびIle-Pro-Proも、ACE阻害作用および抗高血圧作用を有する;
・他のACE阻害薬、例えば、アラセプリル、デラプリル、シラザプリル、イミダプリル、トランドラプリル、テモカプリル、モエキシプリル、スピラプリル、
(16)酸素補給療法;
(17)以下のタイプのようなベータ遮断薬:
・非選択性作用物質:Alprenolol(登録商標)、Bucindolol(登録商標)、Carteolol(登録商標)、Carvedilol(登録商標)(追加的にα遮断活性を有する)、Labetalol(登録商標)(追加的にα遮断活性を有する)、Nadolol(登録商標)、Penbutolol(登録商標)(内因性交感神経様作用を有する)、Pindolol(登録商標)(内因性交感神経様作用を有する)、オキシプレノロール(Oxprenonol)、アセブトロール、ソタロール、メピンドロール、セリプロロール、アロチノロール、テルタトロール、アモスラロール、ニプラジロール、
Propranolol(登録商標)およびTimolol(登録商標);
・β1選択性作用物質:Acebutolol(登録商標)(内因性交感神経様作用を有する)、Atenolol(登録商標)、Betaxolol(登録商標)、Bisoprolol(登録商標)、Celiprolol(登録商標)、塩酸ドブタミン、マレイン酸イルソグラジン、カルベジロール、タリノロール、Esmolol(登録商標)、
Metoprolol(登録商標)およびNebivolol(登録商標);
・β2選択性作用物質:Butaxamine(登録商標)(弱いα-アドレナリンアゴニスト活性);
(18)以下のタイプのような抗不整脈薬:
・タイプI(ナトリウムチャネル遮断薬):キニジン、リドカイン、フェニトイン、プロパフェノン
・タイプIII(カリウムチャネル遮断薬):アミオダロン、ドフェチリド、ソタロール
・タイプV:アデノシン、ジゴキシン
(19)利尿薬、例えば:チアジド利尿薬、例えば、クロロチアジド、クロルタリドンおよびヒドロクロロチアジド、ベンドロフルメチアジド、シクロペンチアジド、メチクロチアジド、ポリチアジド、キネタゾン、キシパミド、メトラゾン、インダパミド、シクレタニン;ループ利尿薬、例えば、フロセミドおよびトレサミド(toresamide);カリウム保持性利尿薬、例えば、アミロリド、スピロノラクトン、カンレノ酸カリウム、エプレレノンおよびトリアムテレン;これらの作用物質の組み合わせ;他の利尿薬、例えば、アセタゾラミドおよびカルペリチド
(20a)直接作用性血管拡張薬、例えば、塩酸ヒドララジン、ジアゾキシド、ニトロプルシドナトリウム、カドララジン;他の血管拡張薬、例えば、二硝酸イソソルビドおよび5-一硝酸イソソルビド;
(20b)外因性血管拡張薬、例えば:
・おもに抗不整脈薬として用いられるAdenocard(登録商標)
・アルファ遮断薬(アドレナリンの血管収縮作用を遮断する):アルファ-1-アドレナリン受容体アンタゴニスト、例えば、プラゾシン、インドラミン、ウラピジル、ブナゾシン、テラゾシン、ドキサゾシン
・心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP);
・エタノール:
・肥満細胞および好塩基性顆粒球からのヒスタミン放出を誘発することによってタンパク質C3a、C4aおよびC5aの働きを捕捉する、ヒスタミン誘発因子;
・マリファナ中の主要な活性化学物質であり、わずかに血管拡張作用を有する、テトラヒドロカンナビノール(THC);
・ケシ(opium poppy papaver somniferum)に見いだされるアルカロイドである、パパベリン;
(21)気管支拡張薬:気管支拡張薬には、以下に例示するβ2アゴニストおよび抗コリン作用薬の2つの主要タイプがある:
・β2アゴニスト:Salbutamol(登録商標)またはアルブテロール(商標名:Ventolin)およびTerbutaline(登録商標)は、COPD症状の迅速な軽減のための短時間作用型β2アゴニストである。長時間作用型β2アゴニスト(LABA)、例えば、Salmeterol(登録商標)およびFormoterol(登録商標);
・抗コリン作用薬:Ipratropium(登録商標)は、もっとも広く処方されている短時間作用型抗コリン作用薬である。Tiotropium(登録商標)は、COPDにおいてもっとも一般的に処方されている長時間作用型抗コリン作用薬である;
・気管支拡張薬およびホスホジエステラーゼ阻害薬であるTheophylline(登録商標);
(22)コルチコステロイド:例えば、ベクロメタゾン、メチルプレドニゾロン、ベタメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、トリアムシノロン、デキサメタゾン、フルチカゾン、フルニソリド、およびヒドロコルチゾン、およびコルチコステロイド類似体、例えばブデソニド
(23)栄養補助食品、例えば以下のようなもの:オメガ-3油;葉酸、ナイアシン、亜鉛、銅、高麗紅参根、イチョウ、松樹皮、Tribulus terrestris、アルギニン、Avena sativa、ホーニーゴートウィード(horny goat weed)、
マカ根、ムイラプアマ、ノコギリヤシ、およびスウェーデンフラワーポーレン(Swedish flower pollen);ビタミンC、ビタミンE、ビタミンK2;テストステロンサプリメント
、テストステロン経皮パッチ;ゾラキセル(Zoraxel)、ナルトレキソン、ブレメラノチド
(以前のPT-141)、メラノタンII、hMaxi-K;プレロックス:天然由来成分の特許権下の混合物/組合せ、L-アルギニンアスパルテートおよびピクノジェノール;
(24)PGD2受容体アンタゴニスト、例えば、限定されるものではないが、米国特許出願公開第20020022218号、米国特許出願公開第20010051624号、および米国特許出願公開第20030055077号、PCT公開出願W09700853、W09825919、WO03066046、WO03066047、WO03101961、WO03101981、WO04007451、WO0178697、WO04032848、WO03097042、WO03097598、WO03022814、WO03022813、およびWO04058164、欧州特許出願第945450および欧州特許出願第944614号にPGD2拮抗活性を有すると記載されている化合物、ならびにTorisu et al.2004 Bioorg Med Chem Lett 14:4557、Torisu et al.2004 Bioorg Med Chem Lett 2004 14:4891、およびTorisu et al.2004 Bioorg & Med Chem 2004 12:4685に挙げられているもの;
(25)免疫抑制薬、例えば、シクロスポリン(シクロスポリンA、Sandimmune(登録商標)、Neoral(登録商標))、タクロリムス(FK-506、Prograf(登録商標))、ラパマイシン(シロリムス、Rapamune(登録商標))および他のFK-506タイプの免疫抑制薬、およびミコフェノレート、例えば、ミコフェノール酸モフェチル(CellCept(登録商標));
(26)非ステロイド性抗喘息薬、例えば、β2-アゴニスト(例えば、テルブタリン、メタプロテレノール、フェノテロール、イソエタリン、アルブテロール、サルメテロール、ビトルテロールおよびピルブテロール)およびβ2-アゴニスト-コルチコステロイドの組み合わせ(例えば、サルメテロール-フルチカゾン(Advair(登録商標))、ホルモテロール-ブデソニド(Symbicort(登録商標))、テオフィリン、クロモリン、クロモリンナトリウム、ネドクロミル、アトロピン、イプラトロピウム、臭化イプラトロピウム、ロイコトリエン生合成阻害薬(ジロートン、BAY1005);
(27)非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、例えば、プロピオン酸誘導体(例えば、アルミノプロフェン、ベノキサプロフェン、ブクロキシ酸、カルプロフェン、フェンブフェン、フェノプロフェン、フルプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ミロプロフェン、ナプロキセン、オキサプロジン、ピルプロフェン、プラノプロフェン、スプロフェン、チアプロフェン酸およびチオキサプロフェン)、酢酸誘導体(例えば、インドメタシン、アセメタシン、アルクロフェナク、
クリダナク、ジクロフェナク、フェンクロフェナク、フェンクロジン酸、フェンチアザク、フロフェナク、イブフェナク、イソキセパク、オキシピナク、スリンダク、チオピナク、トルメチン、ジドメタシンおよびゾメピラク)、フェナム酸誘導体(例えば、フルフェナム酸、メクロフェナム酸、メフェナム酸、ニフルム酸およびトルフェナム酸)、ビフェニルカルボン酸誘導体(例えば、ジフルニサルおよびフルフェニサル)、オキシカム(例えば、イソキシカム、ピロキシカム、スドキシカムおよびテノキシカム(tenoxican))、
サリチラート(例えば、アセチルサリチル酸およびスルファサラジン)およびピラゾロン(例えば、アパゾン、ベズピペリロン(bezpiperylon)、フェプラゾン、モフェブタゾン、オキシフェンブタゾンおよびフェニルブタゾン);
(28)シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)阻害剤、例えば、セレコキシブ(Celebrex(登録商標))、ロフェコキシブ(Vioxx(登録商標))、バルデコキシブ、エトリコキシブ、パレコキシブおよびルミラコキシブ;
(オピオイド鎮痛薬、例えば、コデイン、フェンタニル、ヒドロモルホン、レボルファノール、メペリジン、メタドン、モルヒネ、オキシコドン、オキシモルホン、プロポキシフェン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、デゾシン、ナルブフィンおよびペンタゾシン;および
(29)抗糖尿病薬、例えば、インスリンおよびインスリン模倣薬;スルホニル尿素(例えば、グリブリド、グリベンクラミド、グリピジド、グリクラジド、グリキドン、グリメピリド、メグリナチド(Meglinatide)、トルブタミド、クロルプロパミド、アセトヘキ
サミド、トラザミド)、ビグアニド、例えば、メトホルミン(Glucophage(登録商標))、α-グルコシダーゼ阻害薬(例えば、アカルボース、エパルレスタット、ボグリボース、ミグリトール)、チアゾリジノン化合物、例えば、ロシグリタゾン(Avandia(登録商標))、トログリタゾン(Rezulin(登録商標))、シグリタゾン、ピオグリタゾン(Actos(登録商標))およびエングリタゾン;インスリン増感薬、例えば、ピオグリタゾンおよびロシグリタゾン;インスリン分泌促進物質、例えば、レパグリニド、ナテグリニドおよびミチグリニド;インクレチン模倣薬、例えば、エキセナチド(Exanatide)およびリラグルチド;アミリン類似体、例えば、プラムリンチド;グ
ルコース降下薬、例えば、ピコリン酸クロム(ビオチンと組み合わされていてもよい);ジペプチジルペプチダーゼIV阻害剤、例えば、シタグリプチン、ビルダグリプチン、サクサグリプチン、アログリプチンおよびリナグリプチン;糖尿病を処置するために現在開発中のワクチン;AVE-0277、Alum-GAD、BHT-3021、IBC-VS01;糖尿病を処置するための開発中のサイトカイン標的療法、例えば、アナキンラ、カナキヌマブ、ジアセレイン、ゲボキズマブ、LY-2189102、MABP-1、GIT-027;
(30)HDLコレステロール上昇剤、例えば、アナセトラピブ、MK-524A、CER-001、DRL-17822、ダルセトラピブ、JTT-302、RVX-000222、TA-8995;
(31)抗肥満薬、例えば、塩酸メタンフェタミン、塩酸アンフェプラモン(Tenuate(登録商標))、フェンテルミン(Ionamin(登録商標))、塩酸ベンズフェタミン(Didrex(登録商標))、酒石酸フェンジメトラジン(Bontril(登録商標)、Prelu-2(登録商標)、Plegine(登録商標))、マジンドール(Sanorex(登録商標))、オルリスタット(Xenical(登録商標))、塩酸シブトラミン一水和物(Meridia(登録商標)、Reductil(登録商標))、リモナバン(Acomplia(登録商標))、アンフェプラモン、ピコリン酸クロム;RM-493、TZP-301;フェンテルミン/トピラマート、ブプロピオン/ナルトレキソン、シブトラミン/メトホルミン、ブプロピオンSR/ゾニサミドSR、サルメテロール、キシナホエート/プロピオン酸フルチカゾンなどの組み合わせ;塩酸ロルカセリン、フェンテルミン/トピラマート、ブプロピオン/ナルトレキソン、セチリスタット、エキセナチド、KI-0803、リラグルチド、塩酸メトホルミン、シブトラミン/メトホルミン、876167、ALS-L-1023、ブプロピオンSR/ゾニサミドSR、CORT-108297、カナグリフロジン、ピコリン酸クロム、GSK-1521498、LY-377604、メトレレプチン、オビネピチド(obinepitide)、P-57AS3、PSN-821、キシナホ酸サルメテロール/プロピオン酸フルチカゾン、タングステン酸ナトリウム、ソマトロピン(組み換え型)、TM-30339、TTP-435、テサモレリン、テソフェンシン、ベルネペリト、ゾニサミド、BMS-830216、ALB-127158、AP-1030、ATHX-105、AZD-2820、AZD-8329、ヘミシュウ酸ベロラニブ(Beloranib hemioxalate)、CP-404、HPP-404、ISIS-FGFR4Rx、インスリノトロピン、KD-3010PF、05212389、PP-1420、PSN-842、ペプチドYY3-36、レスベラトロール、S-234462;S-234462、ソベチロム、TM-38837、テトラヒドロカンナビバリン、ZYO-1、ベータ-ラパコン;
(32)アンギオテンシン受容体遮断薬、例えば、ロサルタン、バルサルタン、カンデサルタンシレキセチル、エプロサルタン(Eprosaran)、イルベサルタン、テルミサルタン
、オルメサルタン(Olmesartran)メドキソミル、アジルサルタンメドキソミル;
(33)レニン阻害剤、例えば、アリスキレンヘミフマル酸塩(aliskiren hemifumirate);
(34)中枢作用性アルファ-2-アドレナリン受容体アゴニスト、例えば、メチルドパ、クロニジン、グアンファシン;
(35)アドレナリン作動性ニューロン遮断薬、例えば、グアネチジン、グアナドレル;
(36)イミダゾリンI-1受容体アゴニスト、例えば、リン酸二水素リルメニジン(Rimenidine)および塩酸モキソニジン水和物;
(37)アルドステロンアンタゴニスト、例えば、スピロノラクトンおよびエプレレノン
(38)カリウムチャネル活性化因子、例えば、ピナシジル
(39)ドーパミンD1アゴニスト、例えばメシル酸フェノルドパム;他のドーパミンアゴニスト、例えば、イボパミン、ドペキサミンおよびドカルパミン;
(40)5-HT2アンタゴニスト、例えばケタンセリン;
(42)バソプレシンアンタゴニスト、例えばトルバプタン;
(43)カルシウムチャネル増感薬、例えばレボシメンダン、または活性化因子、例えばニコランジル;
(44)PDE-3阻害剤、例えば、アムリノン、ミルリノン、エノキシモン、ベスナリノン、ピモベンダン、オルプリノン;
(45)アデニル酸シクラーゼ活性化因子、例えば、コルホルシンダロパート(dapropate)塩酸塩;
(46)陽性変力薬、例えば、ジゴキシンおよびメチルジゴキシン;代謝性強心剤、例えばユビデカレノン;脳性ナトリウム利尿ペプチド、例えばネシリチド;
(49)勃起障害の処置に用いられる薬剤、例えば、アルプロスタジル、アビプタジル、メシル酸フェントラミン、ウェイゲ(Weige)、アルプロスタジル;
(53)抗肥満薬:
【0247】
【0248】
(54)アルツハイマー病の治療に用いられる薬剤:例えば、軽度から中度のアルツハイマー病のために処方されるコリンエステラーゼ阻害薬、例えば、Razadyne(登録商標)(ガランタミン)、Exelon(登録商標)(リバスチグミン)、およびAricept(登録商標)(ドネペジル)、Cognex(登録商標)(タクリン);中度から重度のアルツハイマー病を治療するために処方されるNamenda(登録商標)(メマンチン)、N-メチルD-アスパラギン酸塩(NMDA)アンタゴニスト、およびAricept(登録商標);ビタミンE(抗酸化剤)。
【0249】
(55)抗うつ薬:三環系抗うつ薬、例えば、アミトリプチリン(Elavil(登録商標))、デシプラミン(Norpramin(登録商標))、イミプラミン(Tofranil(登録商標))、アモキサピン(Asendin(登録商標))、ノルトリプチリン;選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、例えば、パロキセチン(Paxil(登録商標))、フルオキセチン(Prozac(登録商標))、セルトラリン(Zoloft(登録商標))、およびシトラロプラム(Celexa(登録商標));ならびに、他のもの、例えば、ドキセピン(Sinequan(登録商標))およびトラゾドン(Desyrel(登録商標));SNRI(例えば、ベンラファキシンおよびレボキセチン);ドーパミン作動性抗うつ薬(例えば、ブプロピオンおよびアミネプチン)。
【0250】
(56)神経保護薬:例えば、メマンチン、L-ドーパ、ブロモクリプチン、ペルゴリド、タリペキソール、プラミペキソール、カベルゴリン、現在研究中の神経保護薬、例えば、抗アポトーシス薬(CEP1347およびCTCT346)、ラザロイド、生体エネルギー薬、抗グルタミン酸作用薬およびドーパミン受容体。他の臨床的に評価されている神経保護薬は、例えば、モノアミンオキシダーゼB阻害薬であるセレギリンおよびラサギリン、ドーパミンアゴニスト、および複合体Iミトコンドリア強化剤(complex I mitochondrial fortifier)補酵素Q10である。
【0251】
(57)抗精神病薬:例えば、ジプラシドン(GeodonTM)、リスペリドン(RisperdalTM)、およびオランザピン(ZyprexaTM)。
(58)NEP阻害薬、例えば、サクビトリル、オマパトリラート。
【0252】
(59)メチレンブルー(MB)。
キット
[00225]本明細書中に記載する化合物および医薬製剤は、キットに含有させることがで
きる。キットは、それぞれ個々に包装もしくは配合されている2以上の作用物質の単回もしくは複数回用量、または組み合わせて包装もしくは配合されている2以上の作用物質の単回もしくは複数回用量を包含することができる。したがって、1以上の作用物質が第1の容器に存在することができ、キットは、所望により1以上の作用物質を第2の容器に包含することができる。容器または容器(複数)は包装内に置かれ、包装は、所望により投与または用量の使用説明書を包含することができる。キットは、追加的な構成要素、例えば、シリンジ、または作用物質および希釈剤を投与するための他の手段、または他の配合手段を包含することができる。したがって、キットは、a)本明細書中に記載する化合物と、医薬的に許容しうるキャリヤー、ビヒクルまたは希釈剤とを含む医薬組成物;ならびにb)容器または包装を含むことができる。キットは、所望により、本明細書中に記載する1以上の方法(例えば、本明細書中に記載する疾患および障害の1以上の予防または処置)での医薬組成物の使用方法を記載した使用説明書を含んでいてもよい。キットは、所望により、同時療法で使用するための本明細書中に記載する1以上の追加的作用物質を含む第2の医薬組成物、医薬的に許容しうるキャリヤー、ビヒクルまたは希釈剤を含んでいてもよい。本明細書中に記載する化合物を含む医薬組成物と、キットに含有される第2の医薬組成物を、所望により、同一の医薬組成物に組み合わせてもよい。
【0253】
[00226]キットは、医薬組成物を含有するための容器または包装を包含し、分割ボトル
または分割ホイルパケットなどの分割容器も包含することができる。容器は、例えば、紙もしくは段ボール製の箱、ガラスもしくはブラスチック製のボトルもしくはジャー、ジッパー付きの袋(例えば、別の容器に入れるための錠剤の“レフィル”を保持するためのもの)、または治療スケジュールに従ってパックから押し出すための個別用量を有するブリスターパックであることができる。単一剤形を市販するために、1より多くの容器を単一包装で一緒に用いることができるようにすることは、実現可能である。例えば、錠剤をボトルに入れ、これを箱に入れることができる。
【0254】
[00227]キットの例は、いわゆるブリスターパックである。ブリスターパックは包装業
界で周知であり、医薬単位剤形(錠剤、カプセルなど)の包装に広く用いられている。ブリスターパックは一般に、透明プラスチック材料であることが好ましいホイルで覆われた比較的硬い材料のシートからなる。包装工程中に、凹部をプラスチックホイルに形成する。凹部は、包装される個々の錠剤またはカプセルのサイズおよび形状を有し、あるいは、包装される複数の錠剤および/またはカプセルを収容できるサイズおよび形状を有していてもよい。つぎに、錠剤またはカプセルを適宜に凹部に置き、比較的硬い材料のシートを、プラスチックホイルに対して、凹部が形成された方向とは逆のホイル面において密封する。結果として、錠剤またはカプセルは、要望に応じて、プラスチックホイルとシートの間の凹部に個々に密封されるか、集合的に密封される。シートの強度は、凹部に手で圧力を加え、これによりシートの凹部の場所に開口部を形成することによって、錠剤またはカプセルをブリスターパックから取り出すことができるような強度であることが好ましい。その後、錠剤またはカプセルを前記開口部から取り出すことができる。
【0255】
[00228]投薬を行う時期に関する情報および/または指示を含有する、医師、薬剤師ま
たは被験対象に向けた書面による記憶補助手段が提供されることは、望ましい可能性がある。“1日用量”は、所定の日に摂取すべき単一の錠剤もしくはカプセルまたはいくつかの錠剤もしくはカプセルであることができる。キットが別個の組成物を含有する場合、キットの1以上の組成物の1日用量は1つの錠剤またはカプセルからなることができる一方、キットの他の1以上の組成物の1日用量は、いくつかの錠剤またはカプセルからなることができる。キットは、意図した使用順に1日用量を1つずつ分配するように設計されたディスペンサーの形態をとることができる。ディスペンサーは、さらにレジメンの服薬順守を促進するために、記憶補助手段を備えていることができる。そのような記憶補助手段の例は、分配し終えた1日用量の数を示す機械的計数器である。そのような記憶補助手段の他の例は、液晶の読み出しと連結された電池式のマイクロチップメモリー、あるいは、例えば最後の1日用量を摂取した日付を読み出し、および/または次の用量を摂取すべき時期を思い出させる、可聴式リマインダー信号機である。
【実施例0256】
実施例1:化合物の合成
化合物I-1
[00229]表題化合物を2段階で合成した:
段階1:中間体4および中間体5の合成
【0257】
【0258】
[00230]ジクロロメタン(6mL)中の中間体3(0.3g、1当量;この化合物は、
あらかじめ国際公開WO2014144100に記載されているように合成した)およびジベンジルジイソプロピルホスホロアミダイト(0.38g、2当量)の溶液に、1H-テトラゾールをアセトニトリル(4.37mL、3.5当量)中の0.45M溶液として加え、反応混合物を室温で30分間撹拌した。その後、反応混合物を0℃に冷却し、メタ-クロロペルオキシ安息香酸(m-CPBA、0.29g、3当量)を加え、反応物を、一晩撹拌しつつ、そのまま室温まで温めた。反応物を減圧濃縮し、メタノール(1mL)で希釈し、粗製材料を、0.1%ギ酸を用いた5~75%アセトニトリル:水のグラジエントを用いて逆相HPLCにより精製すると、ジベンジル中間体4[LCMS:保持時間=2.02分、m/z 795.2(M+H)](3mg、収率0.6%)およびベンジル中間体5[LCMS:保持時間=1.31分、m/z 705.2(M+H)](5mg、収率1.2%)が白色固体として生じた。
【0259】
段階2:化合物I-1の合成
【0260】
【0261】
[00231]メタノール(3mL)中の中間体4および中間体5の混合物に、炭素上の5%パラジウム(10当量)を加えた。バイアルを窒素でフラッシュし、反応物を室温において水素バルーン下で3時間撹拌した。その後、反応物を濾過し、溶媒を減圧除去して、化合物I-1(6.1mg、収率79%)を白色固体として得た。
1H NMR (500 MHz, CD3OD) δppm 8.81 (s, 1 H), 8.34 (d, 1 H), 7.56 (s, 1 H), 7.29 (d, 1H), 7.08 (m, 2 H), 6.97 (m, 1 H), 6.94 (t, 1 H), 6.02 (s, 2 H), 4.87 (s, 2 H). LCMS:保持時間 = 1.11 min, MS (ESI pos): m/z = 614.8 (M+H), MS (ESI neg): m/z
= 612.8 (M-H)。
【0262】
LC-MS法:
[00232]Waters BEH C18カラム(1.7μm、2.1×50mm)、W
aters TUV検出器(220nm)およびエレクトロスプレーイオン化を備えるWaters SQ質量分析計を取り付けたWaters Acuity UPLCシステムを用いて、UPLC ESMSを得た。スペクトルは、0.1秒間にわたり200~1000amuの正および負イオンモードで走査した。0.1%ギ酸を含む水を緩衝液A、0.1%ギ酸を含むアセトニトリルを緩衝液Bとし、0.6mL/分でのグラジエント溶離を用いた。試料を10%~100%Bで2分間溶離し、100%Bで1分間保持した後、カラムを初期状態に戻した。全体的実験時間は3.0分であった。
【0263】
化合物I-1、別の合成方法
[00233]化合物を2段階で合成した。
【0264】
【0265】
段階1:中間体4の合成
[00234]テトラヒドロフラン(10mL)中の中間体3(0.50g、0.94mmo
l、あらかじめ国際公開WO2014144100に記載されているように合成したもの
)の溶液を氷中で冷却した。リチウムビス(トリメチルシリル)アミド(THF中に1M、1.2mL、1.2mmol)を5分間にわたり滴下し、得られた鮮黄色溶液を0℃で20分間撹拌した。二リン酸テトラベンジル(0.70g、1.31mmol)をTHF(8mL)に溶解し、氷中で冷却した。あらかじめ作製しておいた中間体3リチウムアルコキシド溶液を15分間にわたり二リン酸塩溶液中に滴下し、混合物を3時間にわたり放置して室温まで温めると、その間に氷は溶けた。反応混合物を酢酸エチル(100mL)で希釈し、4×10mLのpH8の水性NaH2PO4/Na3PO4緩衝液、ブラインで洗浄し、Na2SO4で乾燥した。乾燥剤を濾過により除去して、粗製中間体4の溶液を得た(LCMS: m/e 795 (M+H))。
【0266】
段階2:化合物I-1の合成
[00235]上記で調製した中間体4の溶液を250mL丸底フラスコに移し、10%Pd
/C(公称50% H2O、0.20g)を加え、溶液および容器にN2、続いてH2をパージした。フラスコをゴム隔膜で密封し、水素充填バルーンによって供給される水素雰囲気下の室温で混合物を5時間撹拌した。混合物をセライトに通して濾過し、濾過ケークを4:1の酢酸エチル/メタノール(40mL)で洗浄し、組み合わせた濾液を回転蒸発により濃縮した。残渣を酢酸エチル(40mL)および水(30mL)と混合し、濃NH4OH(水性)を、混合後のpHが9を維持するようになるまで加えた。層を分離し、水相を2×30mLの酢酸エチルで洗浄した。水相を濾過し、アセトニトリル(50mL)で希釈し、一晩凍結乾燥して、化合物I-1をオフホワイトの粉末として得た(0.35g、収率61%)。LCMS: m/e 615 (M+H). 1H-NMR (500 MHz, D2O) δ 8.70 (s, 1H), 8.10 (d, 1H), 7.30-7.35 (m, 1H), 7.31 (s, 1H), 7.13 (t, 1H), 7.08 (t, 1H), 6.95 (t, 1H), 6.83 (s, 1H), 5.78 (s, 2H), 4.67 (s, 2H) ppm。
【0267】
化合物I-3
[00236]この化合物は3段階で合成した。
段階1.中間体2の合成
【0268】
【0269】
[00237]ジオキサン(3mL)および水(1.5mL)中の中間体1(328mg、0
.877mmol、あらかじめ国際公開WO2014144100に記載されているように合成したもの)、4-(アミノメチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-オール ヒドロクロリド(162mg、0.965mmol)、およびトリエチルアミン(0.611mL、4.38mmol)の懸濁液を90℃で3時間加熱すると、淡黄色の均質溶液が生じた。反応混合物を放置して室温まで冷却し、水(10mL)、続いて1N塩酸溶液(2mL)で希釈し、酢酸エチル(3×30mL)で抽出し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、濃縮して、所望の中間体2(373mg、収率91%)を白色固体として得た。
【0270】
1H NMR (500 MHz, CD3OD): δ (ppm): 8.76 (d, 1H), 8.09 (d, 1H), 7.42 (s, 1H),
7.25 - 7.29 (m, 1H), 7.07 - 7.11 (m, 1H), 7.02 - 7.06 (m, 1H), 6.89 (d, 1H), 6.83 - 6.87 (m, 1H), 5.96 (s, 2H), 3.74 - 3.80 (m, 4H), 3.71 (s, 2H), 1.74 - 1.80 (m, 2H), 1.57 - 1.61 (m, 2H). LCMS [ES]- : C23H22F2N6O3に関する計算値 468.17. 実測値: 1.07 分、467.3。
【0271】
段階2:中間体9の合成
【0272】
【0273】
[00238]ジクロロメンタン(8mL)中の中間体2(275mg、0.587mmol
)の溶液に、1,2,3,4-テトラゾール(3.91mL、1.76mmol)の0.45Mアセトニトリル溶液、続いてジベンジルジイソプロピルホスホロアミダイト(0.429mL、1.17mmol)を加えた。反応混合物を室温で2.5時間撹拌した後、0℃に冷却した。ジクロロメタン(4mL)中の3-クロロペルオキシ安息香酸(203mg、0.704mmol)の溶液を加え、得られた混合物を1.5時間にわたり放置して室温まで温めた。その後、反応混合物を残渣になるまで濃縮し、60分間にわたりジクロロメタン中1~8%のメタノールのグラジエントを用いてシリカゲルクロマトグラフィーにより精製して、2つの化合物の混合物を得た(粗製質量288mg)。このうち、ジベンジル(4-(((5-フルオロ-2-(1-(2-フルオロベンジル)-5-(イソオキサゾール-3-イル)-1H-ピラゾール-3-イル)ピリミジン-4-イル)アミノ)メチル)テトラヒドロ-2H-ピラン-4-イル)ホスフェート(中間体9)が主成分であった。この材料を、さらに精製することなく次の段階に用いた。
【0274】
段階3:化合物I-3の合成
【0275】
【0276】
[00239]酢酸エチル(10mL)および無水エタノール(10mL)中のジベンジル中
間体9(280mg)の懸濁液に、炭素上の10%パラジウム(61.3mg、0.0580mmol)を加えた。懸濁液を排気し、窒素を3回戻して満たした後、水素充填バルーンを反応バイアルに取り付けた。反応混合物を室温で12時間撹拌した後、反応物を濾過し、残渣になるまで濃縮した。20分間にわたり水中の5~95%アセトニトリル(0.1%トリフルオロ酢酸を加えた)のグラジエントを用いて逆相HPLCにより精製を行って、化合物I-3(103mg、収率49%)を粘性白色固体として得た。
【0277】
1H NMR (500 MHz, CD3OD) δ (ppm): 8.81 (d, 1H), 8.23 (m, 1H), 7.65 (m, 1H), 7.28 - 7.33 (m, 1H), 7.09 - 7.13 (m, 1H), 7.05 - 7.08 (m, 1H), 6.99 (d, 1H), 6.94 - 6.97 (m, 1H), 6.02 (s, 2H), 4.22 (s, 2H), 3.84 - 3.89 (m, 2H), 3.74 - 3.82 (m, 2H), 2.04 - 2.08 (m, 2H), 1.84 - 1.89 (m, 2H). LCMS [ES]+: C23H23F2N6O6Pに関する計算値 548.14. 実測値: 0.97 分, 549.2。
【0278】
化合物I-4
[00240]表題化合物を2段階で合成した。
段階1:中間体7の合成
【0279】
【0280】
[00241]DMF(4.2mL)中に炭酸カリウム(2.0当量)、ヨウ化テトラブチル
アンモニウム(1.5当量)、中間体3(340mg、0.636mmol)およびジ-tert-ブチル(クロロメチル)ホスフェート(2.0当量)を含有する混合物を、室
温で24時間撹拌した。混合物を酢酸エチル(50mL)で希釈した。有機層を水(50mL×3)、ブライン(50mL)で洗浄し、乾燥し、濾過し、蒸発させて、オイルを得た。該オイルを、0~100%酢酸エチル/ヘキサンのグラジエントを用いてカラムクロマトグラフィーにより精製して、表題中間体7(201mg、収率42%)を淡黄色オイルとして得た。このオイルを、さらに精製することなく次の段階に用いた。
【0281】
1H NMR (500 MHz, CDCl3) δ ppm 8.46 (d, 1 H) 8.21 (d, 1 H) 7.32 (s, 1 H) 7.17 - 7.23 (m, 1 H) 7.02 (ddd, 1 H) 6.94 - 7.00 (m, 1 H) 6.88 - 6.93 (m, 1 H) 6.62 (d, 1 H) 5.97 (s, 2 H) 5.49 (d, 2 H) 4.56 (d, 2 H) 1.51 (s, 18 H)。
【0282】
段階2:化合物I-4の合成
【0283】
【0284】
[00242]DCM(2.1mL)中に中間体7(319mg、1.0当量)およびTFA
(3.0当量)を含有する混合物を室温で1時間撹拌した。混合物を減圧濃縮して、化合物I-4(284mg、定量的収率)を淡黄色固体として得た。
【0285】
1H NMR (500 MHz, CD3OD) δ ppm 8.79 - 8.83 (m, 1 H) 8.39 (d, 1 H) 7.59 (s, 1 H) 7.26 - 7.35 (m, 1 H) 7.05 - 7.16 (m, 2 H) 6.95 - 7.01 (m, 2 H) 5.98 - 6.04 (m, 2 H) 5.56 (d, 2 H) 4.75 (s, 2 H)。
【0286】
化合物I-4の二ナトリウム塩
【0287】
【0288】
[00243]水(980μL)中の化合物I-4(50.5mg、1.0当量)の懸濁液に
、水酸化ナトリウム溶液を1.0M水溶液(157μL、2.0当量)として加えた。添加終了時に、混合物のpHはpH=7.4であった。混合物を凍結乾燥機で凍結乾燥して
、表題の化合物I-4の二ナトリウム塩(40.9mg、収率76%)を白色固体として得た。
【0289】
1H NMR (500 MHz, D2O) δ ppm 8.72 (s, 1 H) 8.12 (d, 1 H) 7.30 - 7.38 (m, 2 H) 7.06 - 7.19 (m, 2 H) 6.98 (t, 1 H) 6.85 (s, 1 H) 5.79 (s, 2 H) 5.40 (d, 2 H) 4.61 (s, 2 H)。
【0290】
化合物I-5
【0291】
【0292】
[00244]中間体8(392mg、1.0当量、この化合物は、あらかじめ国際公開WO
2014144100に記載されているように合成した)およびポリリン酸(2.8mL、30当量)を含有する混合物を、90℃で24時間加熱した。混合物を水で希釈し、スラリーが形成するまで3時間にわたり激しく撹拌した。水酸化ナトリウム(3.7g、120当量)を慎重に加えることにより、混合物のpHをpH=4に上昇させた。形成した淡褐色沈殿物を濾過により収集した。得られた沈殿物をHPLCにより精製した。固体を1,4-ジオキサンと水の混合物中に溶解し、凍結乾燥機で凍結乾燥して、表題化合物I-5(4.7mg、収率1.0%)をクリーム色の固体として得た。
【0293】
1H NMR (D2O) δ: 8.76 (br. s., 1H), 8.30 (br. s., 1H), 7.67 (s, 1H), 7.37 (br.
s., 1H), 7.10-7.22 (m, 2H), 7.06 (d, 1H), 6.90 (br. s., 1H), 5.89 (br. s., 2H),
4.60-4.70 (m, 2H)。
【0294】
化合物I-2
【0295】
【0296】
[00245]ジオキサン(1mL)および水(0.5mL)中の中間体1(26.9mg、
0.191mmol)、リン酸エタノールアミン(26.9mg、0.191mmol)およびトリエチルアミン(0.0970mL、0.695mmol)の溶液を100℃で16時間加熱した後、反応物を室温まで冷却し、続いて1N塩酸溶液(0.400mL)で希釈すると、白色固体が形成した。これは、おもに未反応出発材料であった。この固体を濾過した。静置しておくと別の白色固体が濾液から沈殿し始め、これも濾過すると、所望の生成物を含有する混合物であることが示された。この混合物を、25分間にわたり水中の5~95%アセトニトリル(0.1%トリフルオロ酢酸を加えた)のグラジエントを用いて逆相HPLCにより精製して、化合物I-2(21.3mg、収率26%)を白色固体として得た。
【0297】
1H NMR (500 MHz, CD3OD) δ (ppm): 8.81 (s, 1H), 8.22 (d, 1H), 7.66 (s, 1H), 7.28 - 7.32 (m, 1H), 7.09 - 7.12 (m, 1H), 7.04 - 7.07 (m, 1H), 6.99 (s, 1H), 6.92 - 6.95 (m, 1H), 6.02 (s, 2H), 4.21 (app. q, 2H), 3.99 (t, 2H). [ES]+: C19H17F2N6O5Pに関する計算値、 478.10. 実測値: 0.97 分, 479。
【0298】
実施例2A:LC/MS検出を用いるsGC-HEK-cGMPアッセイによる生物学的活性の測定
[00246]可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)を内因的に発現するヒト胚腎臓細胞(
HEK293)を用いて、試験化合物の活性を評価した。sGC酵素を刺激する化合物は、cGMPの細胞内濃度の上昇をもたらすはずである。HEK293細胞を、ポリ-D-リシンでコーティングした384ウェルの平底プレートにおいて、ウシ胎仔血清(最終的に10%)およびペニシリン(100U/mL)/ストレプトマイシン(100μg/mL)を50μL体積で補足したダルベッコ変法イーグル培地に、1.5×104細胞/ウェルの密度で播種した。細胞を、5%のCO2を含む加湿チャンバーにおいて37℃で一晩インキュベートした。培地を吸引し、細胞を1×ハンクス緩衝生理食塩溶液(50μL)で洗浄した。その後、細胞を50μLの0.5mM 3-イソブチル-1-メチルキサンチン(IBMX)溶液と一緒に37℃で15分間インキュベートした。その後、被験物質およびジエチレントリアミンNONOエート(DETA-NONOエート)溶液(被験物質溶液に関してはxμM濃度で、DETA-NONOエート溶液に関しては10μM濃度;xは以下の濃度の1つである)
【0299】
【0300】
をアッセイ混合物に加え、得られた混合物を37℃で20分間インキュベートした。20分のインキュベーションの後、アッセイ混合物を吸引し、150ng/mL+3-cGMP(LCMSの内部標準)を含有する10%酢酸(50μL)を細胞に加えた。プレートを酢酸溶液中、4℃で30分間インキュベートして反応を停止させ、細胞を溶解した。その後、プレートを4℃において1000gで3分間遠心分離し、上澄みを清浄なLCMS分析用反応プレートに移した。
【0301】
[00247]cGMP濃度を、以下のLCMS条件(表2)および計算した標準曲線を用い
て、各試料から決定した。標準曲線は、150ng/mL+3cGMP(重量が野生型より3ユニット多い同位体標識cGMP)を含む10%酢酸において、ng/mLで以下のcGMP最終濃度を用いて作成した:1、5、10、50、100、250、500、1000、2000。
【0302】
【0303】
[00248]以下の式を用いて、データを高対照に対し正規化した:100×(試料-低対
照)/(高対照-低対照)、式中、低対照は1%DMSOで処理した16個の試料の平均であり、高対照は30μMの以下に示す化合物Yで処理した16個の試料の平均である。すべての化合物について、GraphPad Prismソフトウェアv.5.n=2を
用い、4パラメーターフィット(log(アゴニスト)対反応-変数勾配)を用いてデータをフィットさせた。絶対EC50を曲線フィットから内挿し、所定の化合物が高対照反応の50%を引き起こす濃度として定義する。50%の最小反応を引き起こすことができない化合物を>30μMとして報告する。2回または2回より多いn回繰り返して実施した化合物の場合、本明細書中に示した結果は、得られたいくつかの結果の幾何平均である。
【0304】
[00249]表2Aに、このアッセイで本発明の選択された化合物について得られた結果を
まとめる。予想どおり、プロドラッグ(例えば、化合物I-1および化合物I-4)は、親薬物と比較して、高度のsGC作動活性(agonism)を示さなかった。
【0305】
【0306】
【0307】
正規化後のHEK細胞におけるsGC酵素活性の値を絶対EC50で表す。これは、所定の化合物が、化合物Yで得られた高対照反応の50%をもたらす濃度として定義される。
【0308】
実施例2B:384ウェル形式のcGMP GloSensor細胞ベースのアッセイによる生物学的活性測定
[00250]GloSensorTM 40F cGMP(品番:CS182801、Pr
omega)を発現するヒト胚腎臓細胞(HEK293)細胞を用いて、試験化合物の活性を評価した。これらの細胞に組み込まれた発光性バイオセンサー(人工的ルシフェラーゼ)は、sGC酵素を刺激する化合物によって形成されるcGMPを検出し、ルミネセンスを放出する。
【0309】
[00251]cGMP GloSensor細胞を、ウシ胎仔血清(FBS、最終的に10
%)およびハイグロマイシン(200μg/mL)を補足したダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)中で保持した。アッセイ前日に、細胞を、ポリ-D-リシンでコーティングした384ウェルの白色平底プレート(Corningカタログ番号35661)において、10%FBSを50μL体積で含むDMEMに1.5×104細胞/ウェルの密度でプレーティングした。細胞を、5%のCO2を含む加湿チャンバーにおいて37℃で一晩インキュベートした。翌日、培地を除去し、細胞を、40μL/ウェルのGloSensorTM 、2mM(Promegaカタログ番号E1291)で置き換えた。細胞を25℃で90分間処理して、基質が細胞中で平衡化するのを可能にした。試験化合物およびジエチレントリアミンNONOエート(DETA-NONOエート)を、血清を含まないCO2非依存性培地で3mM(20×)に希釈し、4倍希釈で連続的に希釈して5倍用量曲線を作成し、ここから10μLをウェルに加えた(試験化合物溶液に関してはxμM濃度で、DETA-NONOエート溶液に関しては10μM濃度;xは以下の最終濃度の1つである)。
【0310】
【0311】
[00252]動態研究のために、すぐにEnvision(Perkin Elmer)を
用いて1ウェルあたり0.2秒にわたりルミネセンスを測定した。エンドポイントSARスクリーニングについては、室温で55分間インキュベートした後にデータを収集した。
【0312】
[00253]データ分析は、実施例2Aで上記したように実施した。
[00254]予想どおり、プロドラッグ(例えば、化合物I-1)は、その親薬物と比較し
て、高度のsGC作動活性を示さなかった。
【0313】
【0314】
正規化後の、GloSensorアッセイによって決定されるHEK細胞におけるsGC酵素活性の値を、絶対EC50で表す。これは、所定の化合物が、化合物Yで得られた高対照反応の50%をもたらす濃度として定義される。
【0315】
実施例3:熱力学的溶解度測定
[00255]約1mgの試験化合物を秤量して1.5mLエッペンドルフ管に入れ、所定の
pHの水性緩衝液1.5mLを加えた。試料をボルテックスにかけ、150RPMの振と
う機に2~5日間置いた。試料を採取した後、12K RPMで20分間遠心分離した。上澄みをアセトニトリル(ACN)で2倍に希釈し、UPLCにより分析した。試料を希釈するために、200μLの上澄みを取って廃棄した。その後、400μLの上澄み(200μL間隔で)を取って、400μLのアセトニトリル(200μL間隔で)に加えた。
【0316】
[00256]UPLC条件:移動相A:水中の0.1%TFA;移動相B:アセトニトリル
中の0.1%TFA;カラム:Acquity BEH C18、1.7μm、2.1×50mm;注入量:2~3μL;オートサンプラー温度:周囲温度;カラム温度:25℃;試験時間:10分;流速:0.45mL/分;収集波長:220nm、245nm、254nm、280nm、PDAスペクトル(190~400nm);分析に用いた波長:254nm
グラジエント(表3):
【0317】
【0318】
化合物I-1の溶解度=pH7で66~1000μg/mL
化合物I-4の溶解度=pH7で71μg/mL
親中間体3の溶解度=pH7で2~3μg/mL
実施例4:ex-vivoラット腸液安定性アッセイ
[00257]本明細書中に開示するホスフェートプロドラッグを、腸の刷子縁膜先端上に存
在するアルカリ性ホスファターゼ(1以上)によって開裂するように設計した。この後、より疎水性の高い親化合物は容易に吸収される。ホスファターゼは肝臓および体循環系にも存在する。プロドラッグから親薬物への開裂速度を試験するために、各試験化合物の5μM溶液をラット腸(空腸)液中でインキュベートした。試料を時間=0、5、15、30および60分目に採取し、内部標準を含有するアセトニトリルの添加により混合物をクエンチした。試料をフルスキャンLC/MSによって分析した。以下のプロトコルを用いた:
溶液および材料の調製
[00258]陽性対照(Enalapril)および各被験物質について、10mM DM
SOストック溶液を解凍または調製した。以下に示す20ng/mLの化合物Zを含むアセトニトリル(ACN)中の内部標準(IS)クラッシュ溶液(crash solution)を調製した。ストック(250μM)は、50/50 アセトニトリル/H2O中10mMから調製した。ラット腸液バイアルを、室温の水浴中で解凍した。
【0319】
【0320】
腸液試料の調製
[00259]96ウェルの1mLプレートにおいて、ラット腸液を各時点で三重に分取した
。t0(“0分”)時点は、450μLのISクラッシュ溶液を48μLの腸液に加えた後、2μLの試験化合物を加えることにより、別個に調製した。5分、15分、30分および60分目に2μLの250μMサブストックを加えて、反応を開始させた。上記段階で調製したプレートをプラスチックまたはホイルシールで覆い、軽く振とうしつつ37℃のインキュベーター中に置いた。各時点で450μLのISクラッシュ溶液を加えて、反応をクエンチした。プレートを、4℃において4000RPMで10分間遠心分離した。50μLの上澄みを50μLのH2O中に移し、LC/MSを用いて分析した。
【0321】
[00260]プロドラッグの消失および親化合物への転化を、経時的にモニタリングした。
以下のLC/MSプロトコルを用いた(表4):
【0322】
【0323】
[00261]比較のために、このアッセイではいくつかの市販のホスフェートプロドラッグ
をベンチマークとして用いた:ホスフェニトインおよびホスタマチニブ(in vivoで迅速に親薬物に開裂することが知られている)およびホスフルコナゾール(第三級アルコールのリン酸エステルプロドラッグ、in vivoでゆっくり親薬物に開裂することが知られている)。
【0324】
[00262]実験条件下で、ホスフェニトインは親薬物に迅速に開裂した。30分のインキ
ュベーション後、プロドラッグの80%超が親薬物に転化していた。60分のインキュベーション後、プロドラッグを検出することはできなかった。このラット腸液アッセイにおいて、消失半減期(T1/2)は5分であると決定された。ヒト半減期(公開データから)は8~15分であると報告されている(Fosphenytoin:a novel phenytoin prodrug.Boucher BA,Pharmacology,1996 Sept-Oct;16(5):777-91)。
【0325】
[00263]実験条件下で、ホスタマチニブは親薬物に中程度に迅速に開裂した。30分の
インキュベーション後、プロドラッグの約50%が親薬物に転化していた。60分のインキュベーション後、プロドラッグの約80%が親薬物に転化していた。このラット腸液アッセイにおいて、消失半減期(T1/2)は34分であると決定された。ヒトミクロソームを用いた場合、プロドラッグは15分後に完全に加水分解することが報告されている(“Metabolism of Fosfamatinib,the Oral Methylene Phosphat Prodrug of the Spleen Tyrosine Kinase Inhibitor R406 in Humans:Contribution of Hepatic and Gut Bacterial Processes to the Overal Transformacion”. DJ Sweeny et al.Drug Metabolism and Disposition,38,1166-1176(2010))。ヒト臨床試験において、定量化できるホスタマチニブは、2時間の時点の後、いずれの被験対象においても観察されなかった(“Pharmacokinetics of fostamatinib,a spleen tyrosine kinase(SYK) inhibitor,in healthy human subjects following single and multiple oral dosing in three phase I studies”.Muhammad Baluom,Elliott B Grossbard,Tim MantおよびDavid T W Lau. Br J Clin Pharmacol.2013 Jul;76(1):78-88)。
【0326】
[00264]実験条件下で、立体障害のある第三級アルコールであるため予想されるように
、ホスフルコナゾールはより緩慢に親薬物に開裂した。60分のインキュベーション後、プロドラッグの約80%は開裂しないままであった。このラット腸液アッセイにおいて、消失半減期(T1/2)は211分であると決定された。ヒト半減期(公開データから)は1.5~2.5時間であると報告されている(“Pharmacokinetics of fosfluconazole and fluconazole following multiple intravenous administration of fosfluconazole in healthy male volunteers”.Sobue S,Tan K,Layton G,Eve M,およびSanderson JB. Br J Clin Pharmacol 58:20~25,(2004))。
【0327】
[00265] いくつかのin vitroモデルにおいてホスフェニトイン対ホスフルコナゾールの開裂時間を比較するためには、“Evaluation of in Vitro Models for Screening Alkaline Phosphatase-Mediated Bioconversion of Phosphate Ester Prodrugs”Haodan Yuan,Na Li,およびYurong Lai;Drug Metabolism and Disposition 37:1443-1447, 2009参照。
【0328】
[00266]意外にも、第三級アルコール中間体3のリン酸エステルプロドラッグである化
合物I-1は、極めて迅速に開裂した。30分のインキュベーション後、プロドラッグの約80%が親薬物に転化しており、60分のインキュベーション後には、プロドラッグの約95%が開裂していた。このラット腸液アッセイにおいて、消失半減期(T1/2)は16分であると決定された。
【0329】
[00267]第三級アルコール中間体3の他のリン酸エステルプロドラッグである化合物I
-4も、きわめて予想外に迅速に開裂した。60分のインキュベーション後、プロドラッグの99%超が開裂していた。このラット腸液アッセイにおいて、消失半減期(T1/2)は9分であると決定された。
【0330】
[00268]やはり意外にも、中間体2(第三級アルコール)のホスフェートプロドラッグ
化合物I-3は迅速に開裂した。30分のインキュベーション後、約25%のプロドラッグが消費されていた。60分のインキュベーション後、10%未満のプロドラッグが溶液中に残存していた。
【0331】
実施例5:ラットPK化合物I-1(親中間体3との比較)
プロトコル
[00269]静脈内または経口投与後にラットのPKを決定した。
【0332】
[00270]静脈内(IV)および経口(PO)実験を行うために、それぞれ4匹の雄Sp
rague-Dawleyラットの2群を用いた。PO群には、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の溶液として配合した3.0mg/kgの化合物I-1を投与した。IV群には、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)中の溶液として配合した1.0mg/kgの化合物I-1を投与した。IVの用量は、留置カテーテルに通して頸静脈に投与した。用量投与後、カテーテルを約0.25mLの生理食塩水でフラッシュした。PO用量は、シリンジおよび栄養補給チューブ(gavage tube)を用いて胃に送達した。経口投薬量の投与後、栄養補給チューブを約0.5mLの水でフラッシュして、全用量の完全な送達を確実にした。
【0333】
[00271]血漿試料を以下のように収集した:IVおよびPO実験では、投与の5分後、
15分後、30分後、1時間後、2時間後、4時間後、6時間後、8時間後、12時間後、16時間後、20時間後および24時間後に試料を収集した。血液試料(0.25mL)を頸静脈から収集した。これらの試料を、血漿について処理するまで氷上で保持した。血液試料は、収集後1時間以内に、約5℃において3200rpmで5分間遠心分離した。血漿を96ウェルプレート管(0.125mL)に直接移した。栓蓋を管に付け、管を約-70℃で凍結させ、分析まで保管した。
【0334】
[00272]血漿を収集し、化合物I-1および化合物I-1から誘導した中間体3の存在
について分析した。
LC-MS/MSによる化合物I-1および中間体3の定量
[00273]中間体3、化合物I-1および内部標準(IS、化合物Z)を、沈殿により血
漿から抽出した。試料は、エレクトロスプレーイオン化を用いるタンデム質量分析検出(MS/MS)を備える液体クロマトグラフィー(LC)を用いて分析した。標準曲線範囲は0.1~400ng/mLであった。
ストック溶液の調製(4℃での保管溶液)
[00274]中間体3DMSOストック溶液(1mg/mL):DMSOで溶解して1mg
/mLの最終濃度にしたもの。
【0335】
[00275]化合物I-1DMSOストック溶液(1mg/mL):DMSOで溶解して1
mg/mLの最終濃度にしたもの。
使用液の調製(新たに調製される)
[00276]中間体3(50μg/mL)使用液:1mg/mLのストック標準溶液から、
50μLを950μLのACNに加えることにより、50μg/mLの使用液を1mL調製した。
【0336】
[00277]化合物I-1(50μg/mL)使用液:1mg/mLのストック標準溶液か
ら、50μLを950μLのACNに加えることにより、50μg/mLの使用液を1mL調製した。
【0337】
標準の調製
[00278]中間体3(ACN中)および化合物I-1(ACN中)の100×標準曲線を
作成した。該溶液を-80℃で保管した。
【0338】
標準、試料およびブランクの調製
[00279]血漿試料、そして標準、ブランクおよび希釈物に必要な量の血漿を解凍する。
クラッシュ溶液を調製する:1ng/mLの化合物Zを内部標準として含有する室温のA
CN。100×ストックを希釈する(495μLの血漿中に5μLの各100×標準)ことにより、1×混合(中間体3および化合物I-1)標準曲線を作成する。50μLの各血漿試料/希釈物、標準またはブランクを移す。ISを含有するクラッシュ溶液を200μL加える。5分間ボルテックスにかける。室温において10分間にわたり16000gで遠心分離する。200μLの各上澄みをプレートに移す。55℃のTurboVap中、窒素下で乾燥する。各試料を50μLの0.1%ギ酸中に再懸濁させ、蓋をし、ボルテックスにかける。LC-MS/MSにより分析する。以下の条件を用いた(表5A):
【0339】
【0340】
結果
IVラットPK実験の結果を以下の表5Bにまとめる
【0341】
【0342】
[00280]化合物I-1プロドラッグは、IV投与したときに、約9分の半減期で親中間
体3に正確に転化した。PBS(リン酸緩衝生理食塩水)中でIV投与した化合物I-1は、PEG中で投与した中間体3(親薬物)に匹敵するPKパラメーターを与えた。
【0343】
[00281]経口(PO)ラットPK実験の結果を以下の表5Cにまとめる:
【0344】
【0345】
プロドラッグ化合物I-1は、PO投与後のいずれの血漿試料でも観察されなかった。化合物I-1から生じた中間体3のTmaxは約7時間と観察され、同様の投与後の親薬物中間体3と同様のTmaxであった。
【0346】
実施例6:イヌPK化合物I-1(親中間体3との比較)
プロトコル
[00282]IVまたは経口投与後のイヌのPKを決定した。
【0347】
[00283]経口(PO)実験を行うために、それぞれ5匹の雄ビーグル犬の2群を用いた
。1群には、カプセル中のPEG400溶液として配合した2.5mg/kgの化合物I-1を投与した。他の群には、PBS溶液として配合した2.5mg/kgの化合物I-1を投与した。IV実験では、5匹の雄ビーグル犬に、PBS溶液として配合した0.5
mg/kgの化合物I-1を投与した。IVの用量は、留置カテーテルに通して橈側皮静脈に投与した。用量投与後、カテーテルを約3mLの生理食塩水でフラッシュした。経口懸濁液の用量は、シリンジおよび栄養補給チューブを用いて胃に送達した。経口投薬量の投与後、栄養補給チューブを約10mLの水をフラッシュして、全用量の完全な送達を確実にした。
【0348】
[00284]血漿および尿試料を以下のように収集した:PO実験では、投与の15分後、
30分後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、6時間後、8時間後、24時間後、32時間後および48時間後に試料を収集し;IV実験では、投与の2分後、5分後、15分後、30分後、1時間後、2時間後、3時間後、4時間後、6時間後、8時間後、24時間後、32時間後および48時間後に試料を収集した。血液試料(2mL)を頸静脈、橈側皮静脈または伏在静脈から収集した。これらの試料を、血漿について処理するまで氷上で保持した。血液試料は、収集後1時間以内に、約5℃において3200rpmで10分間遠心分離した。血漿を2つのほぼ同等のアリコートに分割し、96ウェルプレート管(1.1mL)に直接移した。栓蓋を管に付け、管を約-70℃で凍結させ、分析まで保管した。
【0349】
[00285]尿は、各動物のケージ下に置いた尿収集パンから、収集の最初から終わりまで
湿った氷または氷嚢によって包囲された適切な収集容器に分流することにより、各動物から収集した。各間隔で収集した尿の全容量を測定して記録し、単一の10mLアリコートを収集して、分析まで約-70℃で凍結保存した。
【0350】
[00286]血漿および尿を収集し、化合物I-1および化合物I-1から誘導した中間体
3の存在について分析した。
LC-MS/MSによる化合物I-1および中間体3の定量
[00287]中間体3、化合物I-1および内部標準(IS、化合物Z)を、沈殿により血
漿から抽出した。試料は、エレクトロスプレーイオン化を用いるタンデム質量分析検出(MS/MS)を備える液体クロマトグラフィー(LC)を用いて分析した。標準曲線範囲は0.1~400ng/mLであった。
ストック溶液の調製(4℃での保管溶液)
[00288]中間体3DMSOストック溶液(1mg/mL):DMSOで溶解して1mg
/mLの最終濃度にしたもの。
【0351】
[00289]化合物I-1DMSOストック溶液(1mg/mL):DMSOで溶解して1
mg/mLの最終濃度にしたもの。
使用液の調製(新たに調製される)
[00290]中間体3(50μg/mL)使用液:1mg/mLのストック標準溶液から、
50μLを950μLのACNに加えることにより、50μg/mLの使用液を1mL調製した。
【0352】
[00291]化合物I-1(50μg/mL)使用液:1mg/mLのストック標準溶液か
ら、50μLを950μLのACNに加えることにより、50μg/mLの使用液を1mL調製した。
【0353】
標準の調製
[00292]中間体3(ACN中)および化合物I-1(ACN中)の100×標準曲線を
作成した。これを-80℃で保管した。
【0354】
標準、試料およびブランクの調製
[00293]血漿試料、そして標準、ブランクおよび希釈物に必要な量の血漿を解凍する。
クラッシュ溶液を調製する:1ng/mLの化合物Zを内部標準として含有する室温のACN。100×ストックを希釈する(495μLの血漿中に5μLの各100×標準)ことにより、1×混合(中間体3および化合物I-1)標準曲線を作成する。50μLの各血漿試料/希釈物、標準またはブランクを移す。ISを含有するクラッシュ溶液を200μL加える。5分間ボルテックスにかける。室温において10分間にわたり16000gで遠心分離する。200μLの各上澄みをプレートに移す。55℃のTurboVap中、窒素下で乾燥する。各試料を50μLの0.1%ギ酸中に再懸濁させ、蓋をし、ボルテックスにかける。LC-MS/MSにより分析する。以下の条件を用いた:
【0355】
【0356】
結果
IVイヌPK実験の結果を以下の表6Bにまとめる:
【0357】
【0358】
[00294]化合物I-1プロドラッグは、IV投与したときに、約15分の半減期で親中
間体3に正確に転化した。親薬物への転化は迅速で、平均転化率は95%であった。PBS中でIV投与した化合物I-1は、PEG中で投与した中間体3(親薬物)に匹敵するAUCを与えた。
【0359】
[00295]経口(PO)イヌPK実験の結果を以下の表6Cにまとめる:
【0360】
【0361】
[00296]PEGを満たしたカプセル中の化合物I-1からの中間体3の生物学的利用能
は、同じ配合での親中間体3と同様であった。低レベルの血漿が、PO投与後の血漿で観察された。ごく少量のプロドラッグも、この実験で用いた動物の尿中に見いだされた。
【0362】
[00297]本明細書中で用いられる専門用語は、特定の態様について記載する目的のため
のものに過ぎず、本発明を限定することを意図していない。本明細書で用いられる場合、単数形の“1つの(a)”、“1つの(an)”および“その”は、文脈上別段の意味を有する
ことが明らかな場合を除き、複数形も包含することを意図している。“含む”(および含む(原形)の任意の形態、例えば、“含む(単数形)”および“含んでいる”)、“有する”(および有する(原形)の任意の形態、例えば、“有する(単数形)”および“有している”、“包含する”(および包含する(原形)の任意の形態、例えば、“包含する(単数形)”および“包含している”)、“含有する”(および含有する(原形)の任意の形態、例えば、“含有する(単数形)”および“含有している”)という用語、およびその他の文法的変形は、無制限の連結動詞である。結果として、1以上の段階または要素を“含む”、“有する”、“包含する”または“含有する”方法または機器は、これら1以上の段階または要素を持つが、これら1以上の段階または要素のみを持つことに限定されない。同様に、1
以上の特徴を“含む”、“有する”、“包含する”または“含有する”方法の段階または機器の要素は、これら1以上の特徴を持つが、これら1以上の特徴のみを持つことに限定されない。さらに、一定の方法で構成される機器または構造は、少なくともその方法で構成されるが、挙げられていない方法で構成されてもよい。
【0363】
[00298]本明細書で用いられる場合、“含んでいる”、“有する(単数形)”、“包含し
ている”、“含有している”という用語およびその他の文法的変形は、“からなる”および“実質的にからなる”という用語を包含する。
【0364】
[00299]“実質的にからなる”というフレーズまたはその文法的変形は、本明細書中で
用いられる場合、規定の特徴、整数、段階または成分を明記するものとみなされるべきであるが、追加的な特徴、整数、段階、成分またはその群が、特許請求される組成物、機器または方法の基本的および新規な特徴を具体的には変化させない限り、1以上の追加的な特徴、整数、段階、成分またはその群の付加を排除しない。
【0365】
[00300]本明細書で引用するすべての公表物は、各公表物が本明細書中で参考として援
用されることが、あたかも完全に説明されているかのように具体的および個別的に示されているかのように、本明細書中で参考として援用される。
【0366】
[00301]参考として援用される主題は、特に明記しない限り、いかなる請求項の限定の
代替としてもみなすべきでない。
[00302]1以上の範囲が本明細書の全体にわたって言及されている場合、各範囲は提示
情報についての簡便なフォーマットであることを意図しており、この範囲は、あたかも同じことが本明細書中で完全に説明されているかのように、範囲内の各別個の点を包含するものと理解する。
【0367】
[00303]本発明のいくつかの観点および態様について本明細書中で記載し、示してきた
が、同じ目的を達成するために当業者が他の観点および態様に影響を及ぼすこともできる
。したがって、本開示および添付の特許請求の範囲は、本発明の真の精神および範囲に含
まれるこのようなさらなる他の観点および態様を網羅することを意図している。
本明細書は以下の発明の開示を包含する。
[1]式Iの化合物または医薬的に許容しうるその塩:
【化37-1】
[式中:
Xは、-P(O)(OH)
2、-P(O)(OH)O
-M
+、-P(O)(O
-)
2(
M
+)
2または-P(O)(O
-)
2D
2+から選択され;M
+は、医薬的に許容しうる
一価カチオンで、D
2+は、医薬的に許容しうる二価カチオンであり;
各J
Bは、独立してハロゲンから選択され;
mは、0または1から選択され;
nは、0、1、2、3または4から選択され;
R
1は、C
1-4アルキル、C
1-4フルオロアルキル、-C(O)NH
2または水素
から選択され;そして
R
2は、C
1-4アルキル、C
1-4フルオロアルキルまたは水素から選択されるか;
あるいは、
R
1およびR
2は、それらが付着している炭素原子と一緒になって、C
3-7脂環式環
か、またはN、OもしくはSから独立して選択される最大2個のヘテロ原子を含有する3
~7員複素環式環を形成し;前記C
3-7脂環式環または3~7員複素環式環は置換され
ておらず;
R
3は、ハロゲン、水素、-CNまたは-NH
2から選択され;
R
4の両方の事例は同時に水素であるか、R
4の両方の事例は、それらが付着している
炭素原子と一緒になって、カルボニル基を形成し;そして
R
5は、水素またはメチルから選択される]。
[2]化合物が式IB
【化37-2】
のものである、[1]に記載の化合物。
[3]化合物が式IC
【化37-3】
のものである、[1]に記載の化合物。
[4] Xが-P(O)(OH)
2である、[1]、[2]または[3]に記載の化合
物。
[5]Xが-P(O)(OH)O
-M
+または-P(O)(O
-)
2(M
+)であり;
M
+が、Na
+、K
+、または有機アミンの一価カチオンから選択される、[1]、[2
]または[3]のいずれかに記載の化合物。
[6]Xが-P(O)(O
-)
2D
2+であり;D
2+が、Ca
2+、Cs
2+、Zn
2+、Mg
2+、または有機アミンの二価カチオンから選択される、[1]、[2]また
は[3]のいずれかに記載の化合物。
[7]化合物が、式II、式IIBもしくは式IIC
【化37-4】
の1つ、または医薬的に許容しうるその塩である、[1]または[4]のいずれかに記載
の化合物。
[8]化合物が、式III、式IIIBもしくは式IIIC
【化37-5】
の1つ、または医薬的に許容しうるその塩である、[1]または[4]のいずれかに記載
の化合物。
[9]化合物が、式IV
【化37-6】
の1つまたは医薬的に許容しうるその塩である、[1]または[4]に記載の化合物。
[10]化合物が、式V
【化37-7】
の1つまたは医薬的に許容しうるその塩である、[1]、[4]または[9]のいずれか
に記載の化合物。
[11]化合物が式VI
【化37-8】
の1つである、[1]または[4]に記載の化合物。
[12]R
1とR
2が異なり、化合物が式VIA
【化37-9】
の1つである、[11]に記載の化合物。
[13]R
1とR
2が異なり、化合物が式VIB
【化37-10】
の1つである、[11]に記載の化合物。
[14]nが0である、[1]~[13]のいずれかに記載の化合物。
[15]nが1である、[1]~[13]のいずれかに記載の化合物。
[16]nが2である、[1]~[13]のいずれかに記載の化合物。
[17]nが3である、[1]~[13]のいずれかに記載の化合物。
[18]J
Bのすべての事例がフルオロである、[15]~[17]のいずれかに記載
の化合物。
[19]J
Bのすべての事例がクロロである、[15]~[17]のいずれかに記載の
化合物。
[20]J
Bのいくつかの事例がフルオロで、J
Bのいくつかの事例がクロロである、
[16]または[17]のいずれかに記載の化合物。
[21]R
1およびR
2が両方とも同時に水素である、[1]、[7]、[8]または
[11]のいずれかに記載の化合物。
[22]R
1が水素であり、R
2がC
1-4アルキルまたはC
1-4フルオロアルキル
である、[1]~[8]または[11]~[13]のいずれかに記載の化合物。
[23]R
1が水素であり、R
2がC
1-2アルキルである、[22]に記載の化合物
。
[24]R
1が水素であり、R
2がメチルである、[23]に記載の化合物。
[25]R
1が水素であり、R
2がC
1-2フルオロアルキルである、[22]に記載
の化合物。
[26]R
1が水素であり、R
2がトリフルオロメチルである、[25]に記載の化合
物。
[27]R
1およびR
2が両方とも同時にC
1-4アルキルである、[1]、[7]、
[8]または[11]のいずれかに記載の化合物。
[28]R
1およびR
2が同時にC
1-2アルキルである、[27]に記載の化合物。
[29]R
1およびR
2が同時にメチルである、[28]に記載の化合物。
[30]R
1およびR
2が両方とも同時にC
1-4フルオロアルキルである、[1]、
[7]、[8]または[11]のいずれかに記載の化合物。
[31]R
1およびR
2が同時にC
1-2フルオロアルキルである、[30]に記載の
化合物。
[32]R
1およびR
2が同時にトリフルオロメチルである、[31]に記載の化合物
。
[33]R
1が-CONH
2であり、R
2がC
1-2アルキルまたはC
1-2フルオロ
アルキルである、[1]~[8]または[11]~[13]のいずれかに記載の化合物。
[34]R
1が-CONH
2であり、R
2がメチルまたはトリフルオロメチルである、
[33]に記載の化合物。
[35]R
1が-CONH
2であり、R
2がトリフルオロメチルである、[34]に記
載の化合物。
[36]R
1およびR
2が、それらが付着している炭素原子と一緒になって、Oまたは
Sから独立して選択される最大2個のヘテロ原子を含有する非置換3~7員複素環式環を
形成する、[1]~[13]のいずれかに記載の化合物。
[37]R
1およびR
2が、それらが付着している炭素原子と一緒になって、Oまたは
Sから選択される1個の環ヘテロ原子を含有する非置換3~7員複素環式環を形成する、
[36]に記載の化合物。
[38]前記環ヘテロ原子がOである、[37]に記載の化合物。
[39]mが1である、[1]~[6]、[9]または[10]のいずれかに記載の化
合物。
[40]mが0である、[1]~[6]、[9]または[10]のいずれかに記載の化
合物。
[41]R
4の両方の事例が同時に水素である、[1]~[9]のいずれかに記載の化
合物。
[42]R
4の両方の事例が、それらが付着している炭素原子と一緒になって、カルボ
ニル基を形成する、[1]~[9]のいずれかに記載の化合物。
[43]R
3が水素、ハロゲン、-CNまたは-NH
2から選択される、[1]~[1
3]のいずれかに記載の化合物。
[44]R
3が水素またはハロゲンのいずれかから選択される、[43]に記載の化合
物。
[45]R
3が水素、クロロまたはフルオロから選択される、[44]に記載の化合物
。
[46]R
3が水素またはフルオロから選択される、[45]に記載の化合物。
[47]R
3がフルオロまたはクロロから選択される、[45]に記載の化合物。
[48]R
3がクロロである、[47]に記載の化合物。
[49]R
3がフルオロである、[47]に記載の化合物。
[50]R
3が水素である、[45]に記載の化合物。
[51][1]~[50]のいずれかに記載の化合物、または医薬的に許容しうるその
塩と、1以上の賦形剤とを含む医薬組成物。
[52]治療的有効量の[1]~[50]のいずれかに記載の化合物、または医薬的に
許容しうるその塩、または[51]に記載の医薬組成物を、処置を必要としている被験対
象に投与することを含む、処置を必要としている被験対象における疾患、健康状態または
障害の処置方法であって、該疾患、健康状態または障害が以下から選択される、前記方法
:
・高血圧および冠血流量減少に関連する障害;急性および慢性冠動脈血圧上昇;動脈高
血圧;心臓および腎臓の合併症に起因する血管障害;心疾患、脳卒中、脳虚血または腎不
全に起因する血管障害;抵抗性高血圧;糖尿病性高血圧;本態性高血圧;二次性高血圧;妊
娠性高血圧;子癇前症;門脈圧亢進症;心筋梗塞;
・心不全、HFPEF、HFREF;急性および慢性HF;より具体的な形態のHF:
急性非代償性HF、右心室不全、左心室不全、全HF、虚血性心筋症、拡張型心筋症、先
天性心臓欠陥、弁膜欠損によるHF、僧帽弁狭窄、僧帽弁閉鎖不全、大動脈弁狭窄、大動
脈弁閉鎖不全、三尖弁狭窄、三尖弁閉鎖不全、肺動脈弁狭窄、肺動脈弁閉鎖不全、連合弁
膜欠損;糖尿病性心不全;アルコール性心筋症または蓄積性心筋症;拡張期HF、収縮期
HF;既存の慢性HFの急性期(HFの悪化);拡張または収縮機能障害;冠動脈不全;
不整脈;心室前負荷の減少;心肥大;心不全/心腎症候群;門脈圧亢進症;内皮機能不全
または損傷;心房および心室調律の障害および伝導障害:I~III度の房室ブロック(
AVB I~III)、上室性頻脈性不整脈、心房細動、心房粗動、心室細動、心室粗動
、心室性頻脈性不整脈、トルサード・ド・ポアント頻拍、心房および心室性期外収縮、房
室接合部期外収縮、洞機能不全症候群、失神、房室結節リエントリー性頻拍;ウォルフ・
パーキンソン・ホワイト症候群または急性冠症候群;ボクサー心筋症;心室性期外収縮;
心筋症;がん誘発性心筋症;化学療法誘発性心臓毒性;
・血栓塞栓性障害および虚血;心筋虚血;梗塞;心筋梗塞;心臓発作;心筋不全;内皮
機能不全;脳卒中;一過性脳虚血発作(TIA);閉塞性血栓性血管炎;安定または不安
定狭心症;冠動脈痙攣または末梢動脈痙攣;異型狭心症;プリンツメタル狭心症;心肥大
;子癇前症;血管形成障害;虚血-再潅流損傷;臓器移植に関連する虚血-再潅流;肺移
植、肺の移植、心臓移植、静脈移植失敗に関連する虚血-再潅流;外傷患者における代用
血液保存;
・末梢血管疾患;末梢動脈疾患;末梢閉塞性動脈疾患;筋緊張亢進;レイノー症候群ま
たは現象(一次性および二次性);レイノー病;重篤な下肢虚血;末梢塞栓症;間欠性跛
行;血管閉塞性発症;筋ジストロフィー、デュシェンヌ型筋ジストロフィー、ベッカー型
筋ジストロフィー;微小循環異常;血管漏出または透過性の制御;腰部脊柱管狭窄症;閉
塞性血栓性血管炎;血栓性血管炎;末梢潅流障害;動脈および静脈血栓症;微量アルブミ
ン尿;末梢および自律性神経障害;糖尿病性神経障害に伴う疼痛;糖尿病性微小血管障害
;肝血管閉塞性障害;鎌状赤血球症における血管閉塞性発症;高血圧性発症;
・浮腫;心不全に起因する腎性浮腫;
・アルツハイマー病;パーキンソン病;血管性認知症;血管認知機能障害;脳血管痙攣
;先天性筋無力症候群;くも膜下出血;外傷性脳損傷;認知障害、例えば、軽度認知機能
障害、加齢に伴う学習および記憶障害、加齢に伴う記憶喪失、血管性認知症、頭部損傷、
脳卒中、脳卒中後認知症、外傷後頭部損傷、一般的な集中障害ならびに学習および記憶に
問題がある小児における集中障害で生じるような認知障害後の知覚、集中力、学習能力ま
たは記憶能力の改善;レビー小体型認知症;ピック症候群などの前頭葉変性による認知症
;進行性核麻痺;大脳皮質基底核変性症による認知症;筋萎縮性側索硬化症(ALS);
ハンチントン病;脱髄;多発性硬化症;視床変性;クロイツフェルト・ヤコブ認知症;H
IV-認知症;認知症またはコルサコフ精神病による統合失調症;他系統萎縮症および他
の形態のパーキンソンプラス症候群;運動障害;神経保護;不安、緊張および抑うつまた
は心的外傷後ストレス障害(PTSD);双極性障害;統合失調症;中枢神経系が関連す
る性的機能不全および睡眠障害;病理学的摂食障害ならびに高級食料および耽溺薬の使用
;脳潅流の制御;片頭痛;脳梗塞(脳卒中)の予後の予防および制御;脳卒中、脳虚血お
よび頭部損傷の予後の予防および制御;中枢神経系疾患に関連する神経障害;神経障害痛
、MSに関連する神経障害痛;化学療法誘発性神経障害痛;帯状疱疹に関連する神経障害
痛;脊椎手術に関連する神経障害痛;
・ショック;心原性ショック;敗血症;敗血症性ショック;アナフィラキシー性ショッ
ク;動脈瘤;白血球活性化の制御;血小板凝集の阻害または調節;多臓器機能障害症候群
(MODS);多臓器不全(MOF);
・肺/呼吸器状態:肺高血圧(PH);肺動脈高血圧(PAH)および関連する肺血管
リモデリング;限局性血栓症および右心肥大の形態の血管リモデリング;肺筋緊張亢進;
原発性肺高血圧;二次性肺高血圧;家族性肺高血圧;散発性肺高血圧;前毛細血管性肺高
血圧;特発性肺高血圧;他の形態のPH;左心室疾患、HIV、SCD、血栓塞栓症(C
TEPH)、サルコイドーシス、COPD、肺線維症、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)
、急性肺損傷、アルファ-1-抗トリプシン欠乏(AATD)、肺気腫、喫煙誘発性気腫
および嚢胞性線維症(CF)に関連するPH;血栓性肺動脈症;多因性肺動脈症;嚢胞性
線維症;気管支収縮または肺気管支収縮;急性呼吸器症候群;肺線維症、肺移植;喘息疾
患;
・以下に付随または関連する肺高血圧:左心室機能不全、低酸素血症、WHOグループ
I、II、III、IVおよびVの高血圧、僧帽弁疾患、収縮性心膜炎、大動脈弁狭窄、
心筋症、縦隔線維症、肺線維症、肺静脈還流異常、肺静脈閉塞性疾患、肺血管炎、膠原血
管病、先天性心疾患、肺静脈高血圧、間質性肺疾患、睡眠呼吸障害、睡眠時無呼吸、肺胞
低換気障害、高高度への慢性的暴露、新生児肺疾患、肺胞-毛細血管異形成、鎌状赤血球
症、他の凝固障害、慢性血栓塞栓症、肺塞栓症;腫瘍、寄生生物または異物に起因する肺
塞栓症;結合組織病、狼瘡、狼瘡腎炎、住血吸虫症、サルコイドーシス、慢性閉塞性肺疾
患、喘息、気腫、慢性気管支炎、肺毛細血管血管腫症、組織球症X、リンパ管腫症、圧縮
肺血管;腺症、腫瘍または線維化性縦隔炎に起因する圧縮肺血管;
・動脈硬化性疾患または状態:アテローム性動脈硬化症;内皮損傷、血小板および単球
の付着および凝集、平滑筋増殖または遊走に関連するアテローム性動脈硬化症;再狭窄;
血栓溶解療法、経皮経腔的血管形成術(PTA)、経腔的冠動脈血管形成術(PTCA)
、心臓移植、バイパス手術または炎症性過程の後に発現する再狭窄;
・微小および大型血管損傷(血管炎);フィブリノーゲンおよび低密度DLDレベルの
上昇;プラスミノーゲン活性化因子阻害因子1(PA-1)濃度の上昇;
・メタボリックシンドローム;代謝疾患またはメタボリックシンドロームに関連する疾
患:肥満;皮下脂肪過剰;脂肪蓄積過剰;糖尿病;高血圧;脂質関連障害、高脂血症、脂
質異常症、高コレステロール血症、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL-コレ
ステロール)の減少、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-コレステロール)
レベルの中程度の上昇、高トリグリセリド血症、高グリセリド血症、低リポタンパク貧血
、シトステロール血症、脂肪肝疾患、アルコール性脂肪肝疾患(AFLD)、非アルコー
ル性脂肪肝疾患(NAFLD)、肝炎;子癇前症;多嚢胞腎疾患進行;脂肪肝または肝臓
での異常な脂質蓄積;非アルコール性脂肪肝炎(NASH);心臓、腎臓または筋肉の脂
肪変性;アルファベータリポタンパク血症;シトステロール血症;黄色腫症;タンジール
病;高アンモニア血症および関連疾患;肝性脳症;他の毒性脳症;ライ症候群;
・以下の状態の性的、婦人科的および泌尿器科的障害:勃起障害;インポテンス;早漏
;女性性的機能不全;女性性的興奮機能障害;性的興奮低下障害;膣萎縮;性交疼痛;萎
縮性膣炎;良性前立腺過形成(BPH)、前立腺肥大、前立腺拡大;膀胱出口閉塞;膀胱
痛症候群(BPS);間質性膀胱炎(IC);過活動膀胱;神経因性膀胱および失禁;糖
尿病性腎症;原発性および続発性月経困難;下部尿路症候群(LUTS);子宮内膜症;
骨盤痛;男性および女性泌尿生殖器系の器官の良性および悪性疾患;
・慢性腎疾患;急性および慢性腎機能不全;急性および慢性腎不全;狼瘡腎炎;基礎ま
たは関連腎疾患:低潅流、透析低血圧、閉塞性尿路疾患、糸球体症、糸球体腎炎、急性糸
球体腎炎、糸球体硬化、尿細管間質疾患、腎障害疾患、原発性および先天性腎疾患、腎炎
;クレアチニンおよびまたは水分排泄の異常な減少によって特徴付けられる疾患;尿素、
窒素、カリウムおよび/またはクレアチニンの血中濃度の異常な上昇によって特徴付けら
れる疾患;腎臓酵素の活性変化によって特徴付けられる疾患、グルタミルシンテターゼの
活性変化によって特徴付けられる疾患;尿浸透圧または尿容量の変化によって特徴付けら
れる疾患;微量アルブミン尿の増加によって特徴付けられる疾患、顕性アルブミン尿によ
って特徴付けられる疾患;糸球体および細動脈の病変、尿細管拡張、高リン血症および/
または透析の必要性によって特徴付けられる疾患;腎機能不全の続発症;肺水腫に関連す
る 腎機能不全;HFに関連する腎機能不全;尿毒症または貧血に関連する腎機能不全;電
解質障害(ヘルカレミア、低ナトリム血症);骨および炭水化物代謝の障害;急性腎損傷
;
・眼の疾患または障害、例えば、緑内障、網膜症および糖尿病性網膜症。
[53]治療的有効量の[1]~[50]のいずれかに記載の化合物、または医薬的に
許容しうるその塩、または[51]に記載の医薬組成物を、処置を必要としている被験対
象に投与することを含む、処置を必要としている被験対象における疾患、健康状態または
障害の処置方法であって、該疾患、健康状態または障害が以下から選択される、前記方法
:
・心筋炎症(心筋炎);慢性心筋炎;急性心筋炎;ウィルス性心筋炎;
・血管炎;膵炎;腹膜炎;リウマチ様疾患;
・腎臓の炎症性疾患;免疫学的腎疾患:腎移植拒絶、免疫複合体誘発性腎疾患、毒素に
よって誘発される腎症、造形剤誘発性腎症;糖尿病性および非糖尿病性腎症、腎盂腎症、
腎嚢胞、腎硬化症、高血圧性腎硬化症およびネフローゼ症候群;
・慢性間質性炎症。炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎(UC);
・炎症性皮膚疾患;
・眼の炎症性疾患、眼瞼炎、ドライアイ症候群、およびシェーグレン症候群;眼線維症
。
[54]治療的有効量の[1]~[50]のいずれかに記載の化合物、または医薬的に
許容しうるその塩、または[51]に記載の医薬組成物を、処置を必要としている被験対
象に投与することを含む、処置を必要としている被験対象における疾患、健康状態または
障害の処置方法であって、該疾患、健康状態または障害が、糖尿病における創傷または潰
瘍の治癒;微小血管潅流改善;損傷後、または周術期管理において炎症性反応を妨げるた
めの、微小血管潅流改善;裂肛;糖尿病性潰瘍;糖尿病性足潰瘍;骨治癒;破骨細胞骨吸
収およびリモデリング;ならびに新骨形成;から選択される、前記方法。
[55]治療的有効量の[1]~[50]のいずれかに記載の化合物、または医薬的に
許容しうるその塩、または[51]に記載の医薬組成物を、処置を必要としている被験対
象に投与することを含む、処置を必要としている被験対象における疾患、健康状態または
障害の処置方法であって、該疾患、健康状態または障害が以下から選択される、前記方法
:
・泌尿生殖器系および腎臓の障害:糖尿病性腎症;慢性の腎疾患または腎機能不全に起
因する腎線維症および腎不全;蓄積/沈着および組織損傷に起因する腎線維症および腎不
全;腎硬化症;進行性硬化症;糸球体腎炎;巣状分節性糸球体硬化症;ネフローゼ症候群
;前立腺肥大;腎線維症;間質性腎線維症;
・肺系統障害:肺線維症;特発性肺線維症;嚢胞性線維症;進行性塊状線維症;肺が悪
影響を受ける進行性塊状線維症;
・心臓が悪影響を受ける障害:心内膜心筋線維症;陳旧心筋梗塞症;心房性線維症;心
臓間質性線維症;心臓リモデリングおよび線維症;心肥大;
・肝臓および関連器官の障害:肝臓硬化症または硬変;慢性肝疾患に関連する肝硬変;
肝線維症;肝星細胞活性化;NASH;肝線維コラーゲンおよび全コラーゲン蓄積;壊死
炎症性および/または免疫由来の肝疾患;原発性胆汁性肝硬変;原発性硬化性胆管炎;他
の胆汁うっ滞性肝疾患:肉芽種性肝疾患、肝悪性腫瘍、妊娠性肝内胆汁うっ滞、肝炎、敗
血症、薬物または毒素、移植片対宿主疾患、肝移植後、総胆管結石症、胆管腫瘍、膵臓が
ん、ミリッチー症候群、AIDS胆管症、または寄生虫に関連するもの;住血吸虫症;肝
細胞がん;
・消化器系の疾患または障害:クローン病;潰瘍性大腸炎;胃腸管の硬化症;アカラシ
ア;
・皮膚または眼の疾患:腎線維症;増殖性硝子体網膜症;糖尿病性網膜症;眼線維症;
・線維性局所または皮膚障害または状態;真皮線維症;強皮症、皮膚線維症;限局性強
皮症;肥大性瘢痕;母斑;ケロイド;サルコイド;肉芽腫;
・神経系に悪影響を及ぼす疾患:筋委縮側索硬化症(ALS);海馬硬化症、多発性硬
化症(MS);巣状硬化症;原発性側索硬化症;
・骨の疾患;骨硬化症;
・耳硬化症;他の聴力疾患または障害;難聴、部分的または全体的聴力損失;部分的ま
たは全体的聴覚消失症;耳鳴り;雑音性聴力損失;
・自己免疫、炎症または線維症が関与する他の疾患:強皮症;局所性強皮症または限局
性強皮症;縦隔線維症;線維症縦隔炎;骨髄線維症;後腹膜線維症;関節線維症;ペイロ
ニー病;デュピュイトラン拘縮;硬化性苔癬;いくつかの形態の癒着性関節包炎;アテロ
ーム性動脈硬化症;結節硬化症;全身性硬化症;多発性筋炎;皮膚筋炎;多発性軟骨炎;
好酸球性筋膜炎;全身性エリテマトーデスまたは狼瘡;骨髄線維症、骨髄線維化または骨
骨髄線維症;サルコイドーシス;子宮筋腫;子宮内膜症。
[56]治療的有効量の[1]~[50]のいずれかに記載の化合物、または医薬的に
許容しうるその塩、または[51]に記載の医薬組成物を、処置を必要としている被験対
象に投与することを含む、処置を必要としている被験対象における疾患、健康状態または
障害の処置方法であって、該疾患、健康状態または障害が以下から選択される、前記方法
:特定タイプのがん、鎌状赤血球症;鎌状赤血球性貧血;がん転移;骨粗鬆症;胃不全麻
痺;機能性消化不良;糖尿病性合併症;脱毛症または脱毛;内皮機能不全に関連する疾患
;酸化窒素産生の低減に関連する神経障害;アルギノコハク酸尿症;神経筋疾患;デュシ
ェンヌ型筋ジストロフィー(DMD);ベッカー型筋ジストロフィー(BMD);肢帯型
筋ジストロフィー、末梢性ミオパシー;I型およびII型筋強直性ジストロフィー;顔面
-肩甲-腓骨筋ジストロフィー;常染色体性およびX連鎖性のエメリ・ドレフュス型筋ジ
ストロフィー;眼球咽頭型筋ジストロフィー;筋萎縮性側索硬化症;および棘筋萎縮症(
SMA)。