(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062169
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】病変部の検知された特性に基づいて治療法の推奨を行う医療装置
(51)【国際特許分類】
A61B 5/0538 20210101AFI20220412BHJP
【FI】
A61B5/0538
【審査請求】未請求
【請求項の数】82
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015319
(22)【出願日】2022-02-03
(62)【分割の表示】P 2019503801の分割
【原出願日】2017-04-11
(31)【優先権主張番号】62/321,001
(32)【優先日】2016-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】518140081
【氏名又は名称】センサム
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ボズサック,フランツ
(72)【発明者】
【氏名】キャリール,ブルノ
(72)【発明者】
【氏名】メッシーナ,ピアルカ
(72)【発明者】
【氏名】コッタンス,マイライン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】動物(例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳類を含むヒトまたは非ヒト動物)の体内に挿入した場合に、動物の病変部(例えば、脈管構造を完全または部分的に閉塞する脈管構造内での増殖または堆積)を診断および/または治療するのを支援することができる侵襲的プローブなどの医療装置を提供する。
【解決手段】侵襲的プローブ210は、病変部204Aの組織および/または生体物質の1つ以上の特性を検出することなどによって病変部の特性を検知するための1つ以上のセンサ212を有していてもよい。医療装置200は、病変部の特性を分析し、その分析に基づいて臨床医に治療法の推奨を提供するように構成されていてもよい。そのような治療法の推奨は、どの治療法を使用して病変部を治療するかなどの病変部を治療するための方法および/または治療装置を使用するための方法を含んでもよい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
動物の体内に挿入され、かつ診断および/または治療後に前記動物から除去される少なくとも1つのセンサを備えた侵襲的プローブと、
少なくとも1つのプロセッサと、
少なくとも1つのプロセッサによって実行されると前記少なくとも1つのプロセッサに、
病変部に存在する1種以上の生体物質を決定する工程を含む、前記少なくとも1つのセンサを用いて前記病変部の組成を特定する工程、および
少なくとも部分的に前記組成に基づいて前記病変部の少なくとも1つの特性を特定する工程
を含む方法を実行させる実行可能命令がその上に符号化されている少なくとも1つの記憶媒体と
を備える、動物の病変部の診断および/または治療のための医療装置。
【請求項2】
前記侵襲的プローブは、複数の周波数における電気信号の印加に応答して前記病変部の複数の位置で前記病変部のインピーダンスを測定するための少なくとも1つの回路をさらに備え、前記少なくとも1つの回路は、前記複数の位置および前記複数の周波数における前記病変部の前記インピーダンスを示すデジタル信号を出力するように構成されており、前記少なくとも1つの回路は前記少なくとも1つのセンサを備え、かつ前記少なくとも1つのセンサは少なくとも1つのインピーダンスセンサを含み、かつ
前記少なくとも1つのセンサを用いて前記病変部の組成を特定する工程は、前記複数の位置および前記複数の周波数における前記病変部の前記インピーダンスを示す前記デジタル信号の評価に基づいて前記病変部に存在する前記1種以上の生体物質を決定する工程を含む、
請求項1に記載の医療装置。
【請求項3】
前記病変部に存在する前記1種以上の生体物質を決定する工程は、前記病変部に存在する1種以上の組織および/または細胞を決定する工程を含む、請求項2に記載の医療装置。
【請求項4】
前記病変部に存在する1種以上の組織および/または細胞を決定する工程は、前記病変部に存在する前記組織および/または細胞を特定する工程を含む、請求項3に記載の医療装置。
【請求項5】
前記病変部に存在する1種以上の生体物質を決定する工程は、前記病変部に存在する1種以上のプラーク物質を特定する工程を含む、請求項3に記載の医療装置。
【請求項6】
前記病変部の組成を特定する工程は、前記病変部に存在する異なる物質の相対量を特定する工程をさらに含む、請求項2に記載の医療装置。
【請求項7】
前記病変部の組成を特定する工程は、前記病変部に存在する組織および/または細胞の状態を特定する工程を含む、請求項2に記載の医療装置。
【請求項8】
前記組織および/または細胞の状態を特定する工程は、前記組織および/または細胞が健康であるか不健康であるかを特定する工程を含む、請求項7に記載の医療装置。
【請求項9】
前記組織および/または細胞が健康であるか不健康であるかを特定する工程は、前記組織および/または細胞が「健康である」、「炎症している」、「罹患している」および「癌性である」からなる状態の群から選択される状態にあるかを決定する工程を含む、請求項8に記載の医療装置。
【請求項10】
前記病変部に存在する組織および/または細胞の状態を特定する工程は、前記病変部に存在する各組織および/または細胞について、前記組織および/または細胞の種類および前記組織および/または細胞が健康であるか不健康であるかを決定する工程を含む、請求項7に記載の医療装置。
【請求項11】
前記病変部の組成を特定する工程は、前記病変部に存在する1種以上のプラーク物質を特定する工程をさらに含む、請求項10に記載の医療装置。
【請求項12】
前記病変部の前記少なくとも1つの特性を特定する工程は、前記病変部を病変部のセットのうちの1つとして診断する工程を含む、請求項2に記載の医療装置。
【請求項13】
前記病変部のセットは、血餅、その管の内腔に向かって延在する管壁における増殖、プラークの蓄積、非癌性増殖および癌性増殖を含む、請求項12に記載の医療装置
【請求項14】
前記方法は、
少なくとも部分的に前記病変部の前記少なくとも1つの特性に基づいて、前記病変部を治療するための方法のために1つ以上の治療法の推奨を決定する工程と、
ユーザインタフェースを介して前記1つ以上の治療法の推奨をユーザに出力する工程と
をさらに含む、請求項1に記載の医療装置。
【請求項15】
前記1つ以上の治療法の推奨を決定する工程は、前記病変部を治療するための複数の異なる器具から選択される少なくとも1つの器具を特定する工程を含む、請求項14に記載の医療装置。
【請求項16】
複数の異なる器具から選択される前記少なくとも1つの器具を特定する工程は、前記病変部が血管の病変部であるという特定に応答して、前記ユーザへの推奨のためにステントインプランタ、吸引カテーテルおよびステントリトリーバからなる群から1つ以上の器具を選択する工程を含む、請求項15に記載の医療装置。
【請求項17】
前記侵襲的プローブは前記動物の脈管構造への挿入のために構成されている、請求項1~16のいずれか1項に記載の医療装置。
【請求項18】
前記ユーザインタフェースをさらに備える、請求項1~17のいずれか1項に記載の医療装置。
【請求項19】
前記ユーザに前記医療装置を動作させるためのハンドルをさらに備え、
前記ユーザインタフェースは少なくとも部分的に前記ハンドル内に配置されている、
請求項18に記載の医療装置。
【請求項20】
前記ユーザインタフェースは、視覚インタフェース、聴覚インタフェースおよび触覚インタフェースのうちの1つ以上を含む、請求項18~19のいずれか1項に記載の医療装置。
【請求項21】
前記少なくとも1つのプロセッサおよび前記少なくとも1つの記憶媒体は前記ハンドル内に配置されている、請求項19に記載の医療装置。
【請求項22】
前記侵襲的プローブを前記ハンドルに接続し、かつ第1のインタフェースを備えるガイドワイヤをさらに備え、
前記ハンドルは、前記ハンドルを前記ガイドワイヤに取り外し可能に取り付けるのを可能にするために前記第1のインタフェースに相補的な第2のインタフェースを備える、
請求項19~21のいずれか1項に記載の医療装置。
【請求項23】
前記ガイドワイヤは、データを前記侵襲的プローブから前記少なくとも1つのプロセッサに伝達するための通信チャネルを備える、請求項22に記載の医療装置。
【請求項24】
前記侵襲的プローブの前記少なくとも1つのセンサは、前記病変部の1つ以上の電気特性を測定するための複数の電気センサである、請求項1~23のいずれか1項に記載の医療装置。
【請求項25】
前記侵襲的プローブは、前記病変部に印加される1つ以上の電気信号を生成するための少なくとも1つの回路をさらに備え、かつ
前記複数の電気センサは、前記1つ以上の電気信号の印加に応答して前記病変部の前記1つ以上の電気特性を測定するように構成されている、
請求項24に記載の医療装置。
【請求項26】
前記少なくとも1つの回路は、前記1つ以上の電気信号の印加および前記1つ以上の電気特性を検出するための前記複数の電気センサの動作により前記病変部の電気インピーダンス分光法(EIS)を行うように構成されている、請求項25に記載の医療装置。
【請求項27】
前記少なくとも1つの回路は、前記複数の電気センサの少なくとも1つのセンサに接触している生体物質のインピーダンスを測定するために前記侵襲的プローブ内に少なくとも1つの測定回路を含む、請求項26に記載の医療装置。
【請求項28】
前記侵襲的プローブの前記少なくとも1つの測定回路は、前記病変部の複数の生体物質のインピーダンススペクトルを示すデジタル信号を出力するように構成されている、請求項27に記載の医療装置。
【請求項29】
前記少なくとも1つのプロセッサは、少なくとも部分的に前記1つ以上の電気特性の分析に基づいて前記病変部の組成を特定するように構成されている、請求項25~28のうちの1項に記載の医療装置。
【請求項30】
前記少なくとも1つの回路は、限られたセットの周波数からの周波数を有する電気信号を生成するように構成された1つ以上の回路構成要素を備える、請求項25~29のうちの1項に記載の医療装置。
【請求項31】
前記1つ以上の回路構成要素は1つ以上の発振器を含む、請求項30に記載の医療装置。
【請求項32】
前記少なくとも1つの記憶媒体には可能な治療法の推奨のセットがその上に符号化されており、前記可能な治療法の推奨のセットはそれぞれ、病変部の特性に関連づけられた1つ以上の条件に関連づけられており、かつ
前記1つ以上の治療法の推奨を決定する工程は、
前記病変部の前記少なくとも1つの特性を可能な治療法の推奨のための前記条件と比較する工程、および
前記可能な治療法の推奨に関連づけられた前記1つ以上の条件が満たされているという決定に応答して前記可能な治療法の推奨を選択する工程
を含む、
請求項1に記載の医療装置。
【請求項33】
前記医療装置から離れた計算装置から第1の時間に前記複数の治療選択肢のそれぞれに関連づけるための第1の条件のセットを受信する工程と、
前記比較する工程において前記第1の条件のセットを評価するように前記医療装置を構成する工程と、
前記計算装置に長い期間をかけて病変部の特性および病変部の治療に関する情報を伝送する工程と、
前記計算装置から前記第1の時間よりも遅い第2の時間に前記複数の治療選択肢のそれぞれに関連づけるための第2の条件のセットを受信する工程と、
前記比較する工程において前記第2の条件のセットを評価するように前記医療装置を構成する工程と
をさらに含む、請求項32に記載の医療装置。
【請求項34】
前記侵襲的プローブは前記病変部を治療するための1つ以上の構成要素をさらに備え、かつ
前記1つ以上の治療法の推奨を生成する工程は、前記病変部を治療するための前記1つ以上の構成要素を動作させるための方法に関する1つ以上の推奨を生成する工程を含む、請求項1に記載の医療装置。
【請求項35】
前記医療装置はステントリトリーバであり、かつ
前記1つ以上の治療法の推奨を生成する工程は、前記ステントリトリーバを前記動物の管から抜き出す時間および/または速度の推奨を決定する工程を含む、
請求項1に記載の医療装置。
【請求項36】
動物の体内に挿入し、かつ病変部の診断および/または治療後に前記動物から除去される侵襲的プローブを備えた前記動物の前記病変部の診断および/または治療のための医療装置の動作方法であって、
前記医療装置の前記侵襲的プローブを用いて、前記侵襲的プローブが前記動物の体内に配置されている間に、前記病変部の複数の位置において前記侵襲的プローブによって測定される前記病変部の複数の生体物質のインピーダンススペクトルを示すデジタル信号を生成する工程であって、前記侵襲的プローブを動作させて複数の周波数の電気信号を印加する工程および前記侵襲的プローブの複数のセンサを動作させて前記病変部の前記複数の生体物質のインピーダンスを測定する工程を含む工程と、
少なくとも部分的に前記デジタル信号の分析に基づいて前記病変部を特定する工程と、
前記医療装置の少なくとも1つのプロセッサを用い、かつ少なくとも部分的に前記デジタル信号の分析および/または前記病変部の同一性に基づいて、前記病変部を治療するための方法のために1つ以上の治療法の推奨を決定する工程と、
ユーザに提示するためにユーザインタフェースを介して前記1つ以上の治療法の推奨を出力する工程と
を含む方法。
【請求項37】
前記病変部は前記動物の管の病変部である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記動物の前記管は前記動物の脈管構造であり、かつ
前記侵襲的プローブが前記動物の体内に配置されている間に前記デジタル信号を生成する工程は、前記侵襲的プローブが前記動物の前記脈管構造内に配置されている間に前記デジタル信号を生成する工程を含む、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記病変部の前記インピーダンスを測定するための前記侵襲的プローブの前記複数のセンサを動作させる工程は、前記複数のセンサを動作させて各センサにより前記センサに接触している前記病変部の前記複数の生体物質のうちの1種の生体物質のインピーダンススペクトルを測定する工程を含む、請求項36~38のうちの1項に記載の方法。
【請求項40】
前記複数の位置において前記インピーダンススペクトルを示す前記デジタル信号に基づいて、前記病変部に存在する前記複数の生体物質を特定する工程をさらに含み、
前記病変部を特定する工程は、少なくとも部分的に前記病変部に存在する前記複数の生体物質に基づいて前記病変部を特定する工程を含む、
請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記病変部に存在する前記複数の生体物質を特定する工程は、前記複数のセンサの各センサについて前記センサに接触している前記病変部の前記生体物質を特定する工程を含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記医療装置は前記ユーザインタフェースを備え、かつ
前記ユーザに提示するために前記ユーザインタフェースを介して前記1つ以上の治療法の推奨を出力する工程は、前記医療装置の前記ユーザインタフェースを介して前記1つ以上の治療法の推奨を出力する工程を含む、
請求項36~42のうちの1項に記載の方法。
【請求項43】
前記医療装置は前記ユーザに前記医療装置を動作させるためのハンドルを備え、
前記ユーザインタフェースは前記ハンドルの上および/または中に配置されており、かつ
前記1つ以上の治療法の推奨を出力する工程は、前記ハンドルの前記ユーザインタフェースを介して前記1つ以上の治療法の推奨を出力する工程を含む、
請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記1つ以上の治療法の推奨を出力する工程は、視覚、聴覚および/または触覚インタフェースを介して出力する工程を含む、請求項36~43のうちの1項に記載の方法。
【請求項45】
前記少なくとも1つのプロセッサは前記ハンドル内に配置されている、請求項43および44のうちの1項に記載の方法。
【請求項46】
前記侵襲的プローブはガイドワイヤを介して前記ハンドルに接続されており、前記ハンドルは前記ガイドワイヤに取り外し可能に接続されている、請求項43~45のうちの1項に記載の方法。
【請求項47】
前記侵襲的プローブの前記少なくとも1つのセンサを動作させる工程はガイドワイヤに接続された侵襲的プローブの少なくとも1つのセンサを動作させる工程を含み、前記ガイドワイヤは少なくとも部分的に前記動物の解剖学的構造内に配置されている、請求項36~46のうちの1項に記載の方法。
【請求項48】
前記デジタル信号を生成する工程は、前記ガイドワイヤの通信チャネルを介して前記デジタル信号を伝送する工程を含む、請求項46および47のうちの1項に記載の方法。
【請求項49】
前記デジタル信号を生成する工程は、前記侵襲的プローブの少なくとも1つの回路を動作させて1つ以上の電気信号を前記病変部に印加する工程を含み、かつ
前記複数のセンサを動作させて前記インピーダンスを測定する工程は、前記侵襲的プローブの前記少なくとも1つの回路によって前記1つ以上の電気信号の印加に応答して前記複数のセンサを動作させて前記インピーダンスを測定する工程を含む、
請求項36~48のうちの1項に記載の方法。
【請求項50】
前記デジタルデータを生成する工程は、前記少なくとも1つの回路および前記複数のセンサを動作させて前記病変部の前記複数の位置において前記病変部の電気インピーダンス分光法(EIS)を行う工程を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記方法は前記病変部の組成を示すデータを生成する工程をさらに含む、請求項48~50のうちの1項に記載の方法。
【請求項52】
前記病変部の組成を示すデータを生成する工程は、前記病変部に存在する前記複数の生体物質を特定するデータを生成する工程を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記病変部を特定する工程は、少なくとも部分的に前記病変部に存在する前記複数の生体物質の同一性に基づいて前記病変部を特定する工程を含み、かつ
前記病変部を特定する工程は前記病変部を診断する工程を含む、
請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記少なくとも1つの回路は限られたセットの周波数からの周波数を有する電気信号を生成するように構成されており、かつ
前記少なくとも1つの回路を動作させて前記1つ以上の電気信号を印加する工程は、前記少なくとも1つの回路を動作させて、それぞれが前記限られたセットの周波数からの異なる周波数を有する複数の電気信号を印加する工程を含む、
請求項49~53の1項に記載の方法。
【請求項55】
前記デジタル信号の分析および/または前記病変部の同一性に基づいて前記1つ以上の治療法の推奨を決定する工程は、異なる治療選択肢のセットからの前記分析に基づいて、前記病変部の治療のために治療選択肢を特定して推奨する工程を含む、請求項36~54のうちの1項に記載の方法。
【請求項56】
前記病変部は前記動物の脈管構造における病変部であり、かつ
前記治療選択肢を特定して推奨する工程は、前記デジタル信号の分析および/または前記病変部の同一性に基づいて、ステントを埋め込む工程、吸引カテーテルを用いて血栓摘出を行う工程およびステントリトリーバを用いて血栓摘出を行う工程からなる治療選択肢の群から治療選択肢を選択する工程を含む、
請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記方法は、少なくとも部分的に前記デジタルデータに基づいて前記病変部の組成を示すデータを生成する工程をさらに含み、かつ
前記デジタル信号の分析に基づいて選択する工程は、前記病変部の組成の分析に基づいて選択する工程を含む、
請求項55および56のうちの1項に記載の方法。
【請求項58】
前記1つ以上の治療法の推奨を決定する工程は、前記医療装置を動作させて前記病変部を治療するための方法に関する推奨を生成する工程を含む、請求項36~57のうちの1項に記載の方法。
【請求項59】
前記医療装置はステントリトリーバであり、かつ
前記1つ以上の治療法の推奨を決定する工程は、前記1つ以上の特性の分析に基づいて前記ステントリトリーバを前記管から抜き出す時間および/または速度の推奨を決定する工程を含む、
請求項36~58のうちの1項に記載の方法。
【請求項60】
前記デジタル信号の分析および/または前記病変部の同一性に基づいて前記1つ以上の治療法の推奨を決定する工程は、
前記デジタル信号をそれぞれが異なる1つ以上の条件に関連づけられた複数の治療選択肢のそれぞれに関連づけられた1つ以上の条件と比較する工程と、
前記デジタル信号が治療選択肢に関連づけられた前記1つ以上の条件を満たすという決定に応答して、前記治療選択肢を前記治療法の推奨として選択する工程と
を含む、請求項36~59のうちの1項に記載の方法。
【請求項61】
前記少なくとも1つのプロセッサを動作させて、以下の動作:
前記医療装置から離れた計算装置から第1の時間に前記複数の治療選択肢のそれぞれに関連づけるための第1の条件のセットを受信する工程、
前記比較する工程において前記第1の条件のセットを評価するように前記医療装置を構成する工程、
前記計算装置に長い期間をかけて病変部の特性および病変部の治療に関する情報を伝送する工程、および
前記計算装置から前記第1の時間よりも遅い第2の時間に前記複数の治療選択肢のそれぞれに関連づけるための第2の条件のセットを受信する工程、および
前記比較する工程において前記第2の条件のセットを評価するように前記医療装置を構成する工程
を行わせることをさらに含む、請求項36~60のうちの1項に記載の方法。
【請求項62】
前記デジタル信号に基づいて前記侵襲的プローブと前記病変部との相互作用に関する情報をリアルタイムで出力する工程をさらに含む、請求項36~61のうちの1項に記載の方法。
【請求項63】
動物の体内に挿入され、かつ病変部の診断および/または治療後に前記動物から除去される侵襲的プローブを備えた前記動物の前記病変部の診断および/または治療のための医療装置の動作方法であって、
前記医療装置の前記侵襲的プローブを用いて前記侵襲的プローブが前記動物の体内に配置されている間に、前記動物の前記病変部に存在する生体物質の1つ以上の電気特性を示すデータを生成する工程であって、前記侵襲的プローブの少なくとも1つのセンサを動作させて前記病変部に存在する前記生体物質の前記1つ以上の電気特性を測定する工程を含む工程と、
ユーザに提示するためにユーザインタフェースを介して前記1つ以上の電気特性を示す情報を出力する工程と
を含む方法。
【請求項64】
前記1つ以上の電気特性を示すデータを生成する工程は前記病変部の組成を示すデータを生成する工程を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記1つ以上の電気特性を示す前記情報を出力する工程は、前記病変部の組成に関する情報を出力する工程を含む、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記少なくとも1つのセンサは複数のセンサであり、
前記侵襲的プローブの少なくとも1つのセンサを動作させて前記病変部に存在する前記生体物質の前記1つ以上の電気特性を測定する工程は、前記複数のセンサの各センサを動作させて前記センサに接触している生体物質のインピーダンススペクトルを測定する工程を含み、かつ
前記病変部の組成に関する情報を出力する工程は、前記病変部に存在する前記生体物質のそれぞれのインピーダンススペクトルを示す情報を出力する工程を含む、
請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記病変部に存在する前記生体物質のそれぞれの前記インピーダンススペクトルに基づいて前記病変部を診断する工程をさらに含み、
前記情報を出力する工程は前記診断の結果を出力する工程を含む、
請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記診断の結果を出力する工程は前記病変部の同一性を出力する工程を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
少なくとも1つのプロセッサによって実行されると前記少なくとも1つのプロセッサに請求項36~68のうちのいずれか1項に記載の方法またはそれらの任意の組み合わせを実行させる実行可能命令がその上に符号化されている少なくとも1つのコンピュータ可読記憶媒体。
【請求項70】
少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、前記少なくとも1つのプロセッサに請求項36~68のうちのいずれか1項に記載の方法またはそれらの任意の組み合わせを実行させる実行可能命令がその上に符号化されている少なくとも1つのコンピュータ可読記憶媒体と
を備える装置。
【請求項71】
少なくとも1つのプロセッサと、
前記少なくとも1つのプロセッサによって実行されると前記少なくとも1つのプロセッサに、
長い期間をかけて複数の医療装置から動物の複数の病変部に対して行われた医学的治療に関する複数のレポートを受信する工程であって、前記複数のレポートの各レポートは対応する医学的治療において治療される病変部の1つ以上の特性、前記病変部を治療するために行われる前記対応する医学的治療の1つ以上のパラメータおよび前記対応する医学的治療についての結果の表示を含む工程、
長い期間をかけて前記医学的治療に関する複数のレポートに基づいて、病変部の特性と病変部の成功した治療および/または成功しなかった治療のパラメータとの1つ以上の関係を学習する工程であって、前記1つ以上の関係を学習する工程は複数の治療選択肢の各治療選択肢に関連づけるための1つ以上の条件を決定する工程を含み、かつ病変部の特性が対応する治療選択肢の前記1つ以上の条件を満たす場合に、前記対応する治療選択肢が前記病変部の治療のために推奨されるように前記1つ以上の条件は病変部の特性に関連している工程、および
前記複数の治療選択肢のそれぞれに関連づけられた前記1つ以上の条件に対する病変部の特性の評価に基づいて前記複数の治療選択肢の中から臨床医に推奨を行うように前記複数の医療装置を構成する工程
を含む方法を実行させる実行可能命令がその上に符号化されている少なくとも1つの記憶媒体と
を備える装置。
【請求項72】
少なくとも1つのプロセッサによって実行されると前記少なくとも1つのプロセッサに
長い期間をかけて複数の医療装置から動物の複数の病変部に対して行われた医学的治療に関する複数のレポートを受信する工程であって、前記複数のレポートの各レポートは対応する医学的治療において治療される病変部の1つ以上の特性、前記病変部を治療するために行われる前記対応する医学的治療の1つ以上のパラメータおよび前記対応する医学的治療についての結果の表示を含む工程と、
長い期間をかけて前記医学的治療に関する複数のレポートに基づいて、病変部の特性と病変部の成功した治療および/または成功しなかった治療のパラメータとの1つ以上の関係を学習する工程であって、前記1つ以上の関係を学習する工程は複数の治療選択肢の各治療選択肢に関連づけるための1つ以上の条件を決定する工程を含み、かつ病変部の特性が対応する治療選択肢の前記1つ以上の条件を満たす場合に、前記対応する治療選択肢が前記病変部の治療のために推奨されるように前記1つ以上の条件は病変部の特性に関連している工程と、
前記複数の治療選択肢のそれぞれに関連づけられた前記1つ以上の条件に対する病変部の特性の評価に基づいて前記複数の治療選択肢の中から臨床医に推奨を行うように前記複数の医療装置を構成する工程と
を含む方法を実行させる実行可能命令がその上に符号化されている、少なくとも1つの記憶媒体。
【請求項73】
少なくとも1つのプロセッサを動作させて以下の動作:
長い期間をかけて複数の医療装置から動物の複数の病変部に対して行われた医学的治療に関する複数のレポートを受信する工程であって、前記複数のレポートの各レポートは対応する医学的治療において治療される病変部の1つ以上の特性、前記病変部を治療するために行われる前記対応する医学的治療の1つ以上のパラメータおよび前記対応する医学的治療についての結果の表示を含む工程、
長い期間をかけて機械学習プロセスの医学的治療に関する前記複数のレポートへの適用に基づいて病変部の特性と病変部の成功した治療および/または成功しなかった治療のパラメータとの1つ以上の関係を学習する工程であって、前記1つ以上の関係を学習する工程は複数の治療選択肢の各治療選択肢に関連づけるための1つ以上の条件を決定する工程を含み、病変部の特性が対応する治療選択肢の前記1つ以上の条件を満たす場合に、前記対応する治療選択肢が前記病変部の治療のために推奨されるように前記1つ以上の条件は病変部の特性に関連している工程、および
前記複数の治療選択肢のそれぞれに関連づけられた前記1つ以上の条件に対する病変部の特性の評価に基づいて前記複数の治療選択肢の中から臨床医に推奨を行うように前記複数の医療装置を構成する工程
を実施する方法。
【請求項74】
病変部の複数の生体物質のそれぞれの1つ以上の特性を測定するための少なくとも1つのセンサを備えた医療装置の侵襲的プローブを動物の体内に挿入する工程と、
少なくとも部分的に前記病変部の前記複数の生体物質のそれぞれの前記1つ以上の特性に基づいて前記病変部を特定する工程と、
前記医療装置を動作させて、少なくとも部分的に前記複数の生体物質のそれぞれの前記1つ以上の特性および/または前記病変部の同一性に基づいて前記病変部の治療に関する1つ以上の推奨を生成する工程と、
前記病変部の治療に関する前記医療装置の前記1つ以上の推奨に従って前記病変部を治療する工程と、
前記侵襲的プローブを前記動物の前記管から除去する工程と
を含む、動物の病変部の診断および/または治療方法。
【請求項75】
前記医療装置を動作させて治療に関する前記1つ以上の推奨を生成する工程は、前記医療装置を動作させて前記病変部を治療するために使用するための医療装置に関する1つ以上の推奨を生成する工程を含む、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記医療装置を動作させて、ステントの埋め込み、吸引カテーテルを用いる血栓摘出、およびステントリトリーバを用いる血栓摘出を含む治療選択肢のセットのうちのどの治療選択肢を使用して前記病変部を治療するかに関する1つ以上の推奨を生成する工程を含む、請求項77に記載の方法。
【請求項77】
前記病変部を治療する工程は、ステントインプランタ、吸引カテーテルまたはステントリトリーバのうちの1つである第2の医療装置を前記動物の体内に挿入する工程を含む、請求項74~76のうちの1項に記載の方法。
【請求項78】
前記医療装置はガイドワイヤであり、かつ
前記第2の医療装置を挿入する工程は、前記第2の医療装置を前記ガイドワイヤに沿って挿入する工程を含む、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記侵襲的プローブを除去する工程は、前記第2の医療装置を挿入する前に前記侵襲的プローブを除去する工程を含む、請求項77に記載の方法。
【請求項80】
前記医療装置は前記病変部を治療するための1つ以上の構成要素を備え、
前記医療装置を動作させて治療に関する前記1つ以上の推奨を生成する工程は、前記医療装置を動作させて、前記医療装置を動作させて前記病変部を治療する方法に関する1つ以上の推奨を生成する工程を含み、かつ
前記病変部を治療する工程は、前記医療装置を動作させて前記病変部を治療する工程を含む、
請求項74~79のうちの1項に記載の方法。
【請求項81】
前記医療装置はステントインプランタ、吸引カテーテルまたはステントリトリーバである、請求項74~80のうちの1項に記載の方法。
【請求項82】
前記医療装置はステントリトリーバであり、かつ
前記医療装置を動作させて、前記医療装置を動作させて前記病変部を治療する方法に関する1つ以上の推奨を生成する工程は、前記医療装置を動作させて、前記医療装置を用いた前記病変部の治療中に前記ステントリトリーバを前記管から抜き出す時間および/または速度の推奨を生成する工程を含む、
請求項74~81のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国特許法第119条(e)の下で、2016年4月11日に出願された「管の病変部の検知された特性に基づいて治療法の推奨を行う医療装置」という発明の名称の米国仮特許出願第62/321,001号の優先権を主張するものであり、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
血管(静脈または動脈を含む)の閉塞は、動物(例えば、ヒトまたは非ヒト動物)の様々な部分で生じることがあり、かつ重大な影響を与える場合がある。虚血性脳卒中では、例えば血餅が大脳動脈における血流を完全または部分的に遮断する。その血餅をすぐに治療しなければ、不十分な血流により脳に非回復性損傷が生じる場合がある。
【0003】
閉塞は、血管内での赤血球および/または白血球および/または血小板の凝固によって生じ得る血餅によって引き起こされる場合がある。この凝固は、外傷、閉塞部位における異常な血流、動物に凝固を生じさせやすくする疾患/状態および/または他の因子を含む様々な因子によって引き起こされ得る。
【0004】
血餅の一般的な治療は、血管の閉塞後の最初の4.5時間以内に実行可能である血餅の化学溶解である。別の一般的な選択肢は、血管から血餅を除去するために吸引カテーテルまたはステントリトリーバ(stent-retriever)が使用される機械的血栓摘出である。
【0005】
ステントリトリーバはワイヤの端部に取り付けられたステントを備える。このステントを脈管構造および血餅の中に展開させ、血餅の中に拡げ、典型的な0.5~10分の待ち時間後に抜き出して血管から血餅を引き出す。ステントリトリーバにより血餅を最適に把持しないことにより、血餅のいくつかの部分が残ったままになったりリトリーバから外れたりすることがあるため、閉塞を治療して血管における循環を回復させるのに何回かの連続的治療(平均3回)が必要になることがある。各繰り返しにより血管壁に対する外傷が増加し、かつ介入期間および閉塞により血流が妨害される期間の両方が引き延ばされ、動物の非回復性損傷が生じる可能性がある。血餅を把持する物理機械的プロセスは現在のところあまり理解されていないが、血餅の最適でない把持の2つの最も一般的な説明は、(1)ステントリトリーバが血餅の中に全く展開せず、血餅を壁に押し付けるステントリトリーバによって引き起こされる摩擦のみが血餅の回収に関与するというもの、および(2)ステントは血餅の中に展開するがステントが血餅と合体するのに十分な時間が得られないというものである。
【0006】
吸引カテーテルを使用して血餅を除去する場合、臨床医はカテーテルを脈管構造の中に挿入し、カテーテルを動作させて血餅をカテーテルの中に吸引する。カテーテルの直径に応じて、それを血餅と直接接触させて配置するか血管の近位領域に配置することができる。血餅の組成および粘度に応じて吸引方法は異なり得る。吸引カテーテルを用いる場合、いくつかの困難が生じる場合がある。例えば、血餅をカテーテルの中に吸引すると、それによりカテーテルの内部の流れが遮断されることがある。そのような状況では、臨床医はカテーテルを抜き出ないことには血餅がカテーテルの先端を遮断しているのか、あるいはそれがカテーテルの内部にあってチューブを遮断しているのかを知ることができない。血餅がカテーテルの先端を遮断している場合、血餅がカテーテルの除去中に不注意でそこから外れてしまうリスクがあるため、血餅が血流を通って移動して動物の別の部分において血管を閉塞する塞栓症になる恐れがある。
【発明の概要】
【0007】
本明細書に記載されている実施形態は、動物(例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳類を含むヒトまたは非ヒト動物)に挿入した場合に、病変部(例えば、管を完全または部分的に閉塞する脈管構造などの管内での増殖または堆積)を診断および/または治療するのを支援することができる侵襲的プローブなどの医療装置に関する。本侵襲的プローブは、病変部の組織および/または生体物質の1つ以上の特性を検出することなどによって病変部の特性を検知するための1つ以上のセンサを有していてもよい。本医療装置は、病変部の特性を分析して、その分析に基づいて臨床医に治療法の推奨を提供するように構成されていてもよい。そのような治療法の推奨としては、どの治療法を使用して病変部を治療するかなどの病変部を治療するための方法および/または治療装置を使用するための方法が挙げられる。本発明の主題は場合によっては、相互関係のある製品、特定の問題に対する他の解決法、および/または1つ以上のシステムおよび/または物品の複数の異なる使用を含む。
【0008】
一実施形態では、動物の病変部の診断および/または治療のための医療装置が提供される。本医療装置は、動物の体内に挿入され、かつ診断および/または治療後に動物から除去される侵襲的プローブを備え、本侵襲的プローブは、少なくとも1つのセンサと、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると少なくとも1つのプロセッサに方法を実行させる実行可能命令がその上に符号化されている少なくとも1つの記憶媒体とを備える。本方法は、少なくとも1つのセンサを用いて病変部の組成を特定する工程を含み、病変部の組成を特定する工程は、病変部に存在する1種以上の生体物質を決定する工程と、少なくとも部分的にその組成に基づいて病変部の少なくとも1つの特性を特定する工程とを含む。
【0009】
別の実施形態では、動物の病変部の診断および/または治療のための医療装置の動作方法が提供される。本医療装置は、動物の体内に挿入され、かつ病変部の診断および/または治療後に動物から除去される侵襲的プローブを備える。本方法は、本医療装置の侵襲的プローブを用いて、本侵襲的プローブが動物の体内に配置されている間に、病変部の複数の位置において本侵襲的プローブによって測定される病変部の複数の生体物質のインピーダンススペクトルを示すデジタル信号を生成する工程を含み、デジタル信号を生成する工程は、本侵襲的プローブを動作させて複数の周波数の電気信号を印加する工程と、本侵襲的プローブの複数のセンサを動作させて病変部の複数の生体物質のインピーダンスを測定する工程とを含む。本方法は、少なくとも部分的にデジタル信号の分析に基づいて病変部を特定する工程と、本医療装置の少なくとも1つのプロセッサを用い、かつ少なくとも部分的にデジタル信号の分析および/または病変部の同一性に基づいて、病変部を治療するための方法のために1つ以上の治療法の推奨を決定する工程と、ユーザに提示するためにユーザインタフェースを介して1つ以上の治療法の推奨を出力する工程とをさらに含む。
【0010】
さらなる実施形態では、動物の体内に挿入され、かつ病変部の診断および/または治療後に動物から除去される侵襲的プローブを備えた動物の病変部の診断および/または治療のための医療装置の動作方法が提供される。本方法は、本医療装置の侵襲的プローブを用いて本侵襲的プローブが動物の体内に配置されている間に、動物の病変部に存在する生体物質の1つ以上の電気特性を示すデータを生成する工程を含み、データを生成する工程は、本侵襲的プローブの少なくとも1つのセンサを動作させて病変部に存在する生体物質の1つ以上の電気特性を測定する工程と、ユーザに提示するためにユーザインタフェースを介して1つ以上の電気特性を示す情報を出力する工程とを含む。
【0011】
別の実施形態では、少なくとも1つのプロセッサを動作させて、長い期間をかけて複数の医療装置から動物の複数の病変部に対して行われた医学的治療に関する複数のレポートを受信する動作を行う工程であって、複数のレポートの各レポートは、対応する医学的治療において治療される病変部の1つ以上の特性、病変部を治療するために行われる対応する医学的治療の1つ以上のパラメータおよび対応する医学的治療についての結果の表示を含む工程と、長い期間をかけて機械学習プロセスの医学的治療に関する複数のレポートへの適用に基づいて病変部の特性と病変部の成功した治療および/または成功しなかった治療のパラメータとの1つ以上の関係を学習する工程であって、1つ以上の関係を学習する工程は複数の治療選択肢の各治療選択肢に関連づけるための1つ以上の条件を決定する工程を含み、病変部の特性が対応する治療選択肢の1つ以上の条件を満たす場合に、対応する治療選択肢が病変部の治療のために推奨されるように1つ以上の条件は病変部の特性に関連している工程と、複数の治療選択肢のそれぞれに関連づけられた1つ以上の条件に対する病変部の特性の評価に基づいて複数の治療選択肢の中から臨床医に推奨を行うように複数の医療装置を構成する工程とを含む方法が提供される。
【0012】
さらなる実施形態では、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると少なくとも1つのプロセッサに上記方法のいずれかを実行させる実行可能命令がその上に符号化されている少なくとも1つの記憶媒体が提供される。
【0013】
別の実施形態では、少なくとも1つのプロセッサと、少なくとも1つのプロセッサによって実行されると少なくとも1つのプロセッサに上記方法のいずれかを実行させる実行可能命令がその上に符号化されている少なくとも1つの記憶媒体とを備える装置が提供される。
【0014】
さらなる実施形態では、動物の病変部の診断および/または治療方法が提供され、本方法は、病変部の複数の生体物質のそれぞれの1つ以上の特性を測定するための少なくとも1つのセンサを備えた医療装置の侵襲的プローブを動物の体内に挿入する工程と、少なくとも部分的に病変部の複数の生体物質のそれぞれの1つ以上の特性に基づいて病変部を特定する工程と、本医療装置を動作させて、少なくとも部分的に複数の生体物質のそれぞれの1つ以上の特性および/または病変部の同一性に基づいて病変部の治療に関する1つ以上の推奨を生成する工程と、病変部の治療に関する本医療装置の1つ以上の推奨に従って病変部を治療する工程と、本侵襲的プローブを動物の管から除去する工程とを含む。
【0015】
本発明の他の利点および新規な特徴は、添付の図と共に考察すれば本発明の各種非限定的な実施形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。本明細書および参照によって組み込まれる文献が相反および/または矛盾する開示を含む場合、本明細書が優先される。従って、上記は本発明の非限定的な要約であり、添付の特許請求の範囲によって定められる。
【0016】
添付の図面は原寸どおりに描かれてはいない。図面において、各種図に示されている同一またはほぼ同一の構成要素はそれぞれ同様の参照符号によって表されている。明確性のために、全ての図面において全ての構成要素に符号が付されているわけではない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】臨床医が本明細書に記載されている実施形態に係る医療装置を動作させて病変部を診断および/または治療することができる方法のフローチャートである。
【
図2】いくつかの実施形態に係る医療装置の例の説明図である。
【
図3】いくつかの実施形態に係る侵襲的プローブの例の説明図である。
【
図4】病変部の組成を決定するためのいくつかの実施形態に実装することができるプロセスのフローチャートである。
【
図5】病変部の組成を決定するためのいくつかの実施形態に実装することができるプロセスのフローチャートである。
【
図6】病変部のインピーダンスの絶対値の例示的な周波数スペクトルを表す。
【
図7】定位相要素を含む、
図4の方法に実装することができる病変部のインピーダンスの例示的なモデルを示す。
【
図8】定位相要素を含む、
図4の方法に実装することができる病変部のインピーダンスの例示的なモデルを示す。
【
図9】定位相要素を含む、
図4の方法に実装することができる病変部のインピーダンスの例示的なモデルを示す。
【
図10】定位相要素を含む、
図4の方法に実装することができる病変部のインピーダンスの例示的なモデルを示す。
【
図11】
図4の方法を実装するための例示的なシステムを示す。
【
図12】本明細書に記載されているいくつかの実施形態に係る医療装置を動作させて治療法の推奨を生成するための例示的な方法のフローチャートである。
【
図13】部分的に病変部の組成に基づいて治療法の推奨を生成するために本明細書に記載されている実施形態に係る医療装置を動作させるためのいくつかの実施形態の別の例示的な方法のフローチャートである。
【
図14】いくつかの実施形態に実装することができる、条件を用いて治療法の推奨を生成する例示的な方法のフローチャートである。
【
図15A】いくつかの実施形態に実装することができる、サーバを動作させて治療に関するレポートを分析して医療装置を構成するための条件を決定するための例示的なプロセスのフローチャートである。
【
図15B】いくつかの実施形態に実装することができる、サーバを動作させて治療に関するレポートを分析して医療装置を構成するための条件を決定するための例示的なプロセスのフローチャートである。
【
図16】治療の履歴を生成するためにいくつかの実施形態に実装することができるプロセスの例である。
【
図17】いくつかの実施形態を動作させることができる計算装置のブロック図である。
【
図18】本明細書に記載されている実施形態に係る医療装置を動作させて部分的に癌性および/または非癌性組織の特性に基づいて治療法の推奨を生成するためのいくつかの実施形態の例示的な方法のフローチャートである。
【
図19】本明細書に記載されている実施形態に係る医療装置を動作させて部分的に癌性および/または非癌性組織の特性に基づいて治療法の推奨を生成するためのいくつかの実施形態の例示的な方法のフローチャートである。
【
図20】本明細書に記載されている実施形態に係る医療装置を動作させて部分的に癌性および/または非癌性組織の特性に基づいて治療法の推奨を生成するためのいくつかの実施形態の例示的な方法のフローチャートである。
【
図21】本明細書に記載されているいくつかの技術が組み込まれた前臨床動物治験のいくつかの結果を示すヒストグラムである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書に記載されているいくつかの実施形態は、動物(例えば、ヒトまたは非ヒト哺乳類を含むヒトまたは非ヒト動物)に挿入した場合に、動物の病変部を診断および/または治療するのを支援することができる侵襲的プローブなどの医療装置に関する。病変部は、外傷、病状または疾患に関連する異常などの、動物の一部の正常な構造および/または機能からの逸脱などの動物の生物学的構造における異常であってもよい。病変部は動物の管内に含まれる動物の様々な部分において現れる場合がある。管の病変部は、例えば管を完全または部分的に閉塞する閉塞部として機能することがある。管は、例えば動物の血管または他の管であってもよく、病変部は、全体または部分的に管内での増殖、管内での物質の蓄積および/または病変部のあらゆる他の原因によって形成されていてもよい。本侵襲的プローブは病変部の特性を検知するための1つ以上のセンサを有していてもよく、この検知は病変部の組成を検出することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、病変部の組成を検出することは、病変部に存在する1種以上の細胞および/または1種以上の組織および/または病変部に存在する1種以上のプラーク物質などの病変部の1種以上の生体物質を特定することを含んでもよい。いくつかのそのような実施形態では、本侵襲的プローブにより、いくつかの実施形態では病変部を特定および/または分類することなどによって、少なくとも部分的に病変部(例えば、病変部の1種以上の生体物質)の組成に基づいて全体としての病変部の1つ以上の他の特性を決定してもよい。病変部を特定または分類することは、いくつかの実施形態では病変部を診断することを含んでもよい。本医療装置は、病変部の特性を分析してその分析に基づいて臨床医に治療法の推奨を提供するように構成されていてもよい。そのような治療法の推奨は、どの治療法を使用して病変部を治療するか(例えば、病変部が除去される場合、吸引カテーテルを使用するかステントリトリーバを使用するか)などの病変部を治療するための方法および/または治療装置を使用するための方法(例えば、どのくらい速くステントリトリーバを抜き出すか)を含んでもよい。
【0019】
いくつかの実施形態では、本侵襲的プローブは、病変部のインピーダンスを測定するためのセンサを含んでもよい1つまたは多くのセンサを備えていてもよい。特定の周波数を有する電気信号が病変部に印加される場合、センサにより病変部のインピーダンスを測定してもよい。本医療装置は、インピーダンス値に基づいて病変部の組成および病変部の1つ以上の特性を決定するように構成されていてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、本侵襲的プローブの異なるセンサが病変部の異なる生体物質の異なるインピーダンススペクトルを同時に生成することができるように、各センサを動作させてセンサに接触している生体物質のインピーダンススペクトルを検出してもよい。次いで、本医療装置は部分的に決定された組成に基づいて治療法の推奨を生成してもよい。
【0020】
本明細書に記載されている各種例は、本医療装置を脈管構造病変部および脈管構造病変部の治療方法の文脈において考察するものである。但し当然のことながら、当該実施形態はそのように限定されない。病変部の特性を検知して治療法の推奨を生成するための本明細書に記載されている技術は、動物の解剖学的管のあらゆる好適な病変部または動物の解剖学的構造内の他の位置に現れることがある病変部を含む、あらゆる好適な病変部に使用してもよい。病変部が管の病変部である場合、そのような管としては例えば脈管構造の管および胃腸管が挙げられる。当業者であれば、解剖学的構造の管は解剖学的空洞とは異なるということを理解しているであろう。例えば管は1つの寸法(例えば幅)が別の寸法(例えば長さ)よりも著しく小さいものである。
【0021】
従っていくつかの実施形態では、本侵襲的プローブは脈管構造の病変部の診断および/または治療のための医療装置の構成要素であってもよい。例えば、本医療装置は血栓摘出装置であってもよく、本侵襲的プローブは血栓摘出装置の構成要素であってもよい。従って本侵襲的プローブは、ガイドワイヤ、吸引カテーテル、マイクロカテーテル、ステントリトリーバおよび/または別の血栓摘出装置の構成要素であってもよい。いくつかの実施形態では、医療装置はガイドワイヤ、吸引カテーテルおよびステントリトリーバのうちの2つ以上を備えていてもよく、侵襲的装置はこれらのうちの全てなどのこれらのうちの1つ以上の構成要素であってもよい。
【0022】
本発明者らは、病変部の電気的測定に基づいて管内の病変部の種類を特定することを含む病変部を特定するための典型的な従来の技術は非常に不正確であり信頼性に欠けるため、医療機関で有効に使用することができないことを認識および理解している。これらの従来の技術のいくつかでは、様々な種類の病変部のそれぞれのために病変部全体の多数のインピーダンススペクトルを生成する工程を使用し、かつ各種病変部のために「平均的」なインピーダンススペクトルを生成する工程を使用する。しかし、病変部は人によって、あるいは同じ人であっても非常に異なり、全体としての病変部のために正確または代表的な「平均的」すなわち「標準的」なインピーダンススペクトルを生成する工程は非現実的なものとなる。いくつかのそのような従来の技術は、「標準的」なスペクトルの決定を行う間に各測定で病変部に接触しているセンサの正確な位置決め、およびその後に患者に使用する間に同じ測定位置を要件とする厳しい測定プロセスを課すことによって、信頼性を高めることを試みる。そのような正確な位置決めは実際に達成することはほぼ不可能であり、今なお、これらの技術を患者に使用するのに有用である程に十分な程度の正確性で使用することができるという時点まで信頼性を高めてはない。例えば、患者に使用している間に患者の病変部のインピーダンススペクトルの測定を行うことを必要とし、測定結果を各種病変部の複数の「標準的」なスペクトルと比較することを必要とし、かつコンピュータで徹底的に統計分析を行って病変部の種類を特定することを必要とする。しかし、典型的な従来の技術では、これらの複雑な分析でさえも僅かに50%超のみの信頼度を有する結果しか得られない。
【0023】
いくつかの実施形態は、全体としての病変部のための「標準的」なインピーダンススペクトルのデータベースの使用またはそのような全体的な病変部のインピーダンススペクトルを比較するための統計分析を必要としない病変部の種類を特定するための方法に関する。これらの実施形態のいくつかは、病変部に存在する生体物質の種類および数などの病変部の組成を特定することによって病変部を特性評価するように構成されている。これは、病変部の1種以上の組織および/または細胞および/または病変部に存在する1種以上のプラーク物質を特定することを含んでもよい。いくつかのそのような実施形態では、次いで病変部の組成を分析して高い信頼度で病変部の特性を特定してもよい。そのような病変部の特性は病変部の種類を含んでもよく、本実施形態は病変部を診断することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、病変部の組成を、特定の種類の病変部が特定の組成に関連していることを特定する条件(例えば、特定のセットの生体物質または特定の相対量の生体物質)などの病変部の種類に関連づけられている1つ以上の条件と比較してもよい。特定の組成がその種類に関連づけられた条件を満たすことによって病変部の種類に一致していることが決定されたら、その組成を有する病変部をその種類であるものとして特定してもよい。病変部の生体物質の特定に基づいて病変部を特定することは高い信頼性(例えば90%超)を有し得る。
【0024】
本発明者らは、従来の血栓摘出装置などの従来の医療装置は血管などの脈管構造の病変部の特性に関する情報は提供せず、従来の医療装置は病変部の治療の状況に関する情報も提供しないことをさらに認識および理解している。本発明者らは、この情報の欠如が病変部の治療の難しさに寄与していることをさらに認識および理解している。例えば、病変部の組成に関する情報がないと臨床医は利用可能な治療選択肢の中から選択することが難しくなることがあるが、その理由は、各治療選択肢は異なる組成の病変部に対して最も有効に働く可能性があるからである。さらに、病変部の治療の状況に関する情報がないと、臨床医は治療が成功しているのか成功していないのかを知ることができない場合がある。この情報の欠如により、病変部を正確に治療するのに複数回の治療が必要になる場合がある。そのような治療はそれぞれ患者への外傷のリスクを高め、さらに重要なことに、いくつかの病変部では病変期間を長引かせる。血管が病変部によって部分的または完全に閉塞されている場合、血流の減少により動物の組織に損傷が生じる場合がある。
【0025】
従って本明細書に記載されている実施形態によれば、医療装置は、病変部の特性を決定して治療の遂行を監視し、かつ治療の前および/または間に病変部を治療するための方法に関する推奨を生成することができる。このさらなる情報は、臨床医が最初に病変部の治療方法を決定し、かつ治療を行って、たった1回の治療で病変部が除去され、かつ同じ病変部に対してその後の治療が必要でなくなることを保証するか少なくともその確率を高めるのを支援することができる。本医療装置は、本医療装置と病変部との相互作用に関するリアルタイム情報を臨床医に提供することなどによって、医学的介入の間に臨床医にリアルタイムで情報を提供することができる。リアルタイムはいくつかの実施形態では、本医療装置によって検知されている対応するデータの時間期間内に臨床医に情報を提供することを含み、この時間期間は5秒未満、10秒未満、30秒未満、1分未満または5分未満であってもよく、これは推奨を生成するためにデータに対して行われる分析の要求によって決まってもよい。
【0026】
全ての病変部が管内に形成されるわけではない。例えば、いくつかの癌性細胞は動物(例えばヒト)の体の他の部分に形成されることがある。本明細書に記載されているいくつかの実施形態は、典型的には管内で認められない癌性細胞などの病変部の診断および/または治療に関する。但し当然のことながら、いくつかの癌性細胞は管内に認められることがあり、本明細書に記載されている他の実施形態はそのような癌性細胞の診断および/または治療に関する。
【0027】
技術の一般的な考察
本明細書に記載されているいくつかの実施形態に従って動作する医療装置の例示的な構成要素の考察のための文脈を提供するために、
図1はそのような医療装置を動作させるために臨床医が従うことができるプロセスのフローチャートである。
図2~
図3は医療装置の例を示し、以下のその他の図は、装置の他の構成要素およびそのような装置を動作させることができる方法の詳細を示す。
【0028】
プロセス100は、動物である対象において病変部を診断および/または治療するために使用することができる。当該動物は、例えばヒトまたは非ヒト哺乳類を含むヒトまたは非ヒト動物であってもよい。病変部は、動物の静脈または動脈のような血管内などの管内の病変部であってもよい。管病変部は管を完全または部分的に閉塞していてもよい。本明細書に記載されている実施形態は、
-脈管構造において、病変部の部位に形成されているか体内のそれ以外の場所に形成されて病変部の部位で詰まっている血餅(赤血球、白血球、フィブリン、血栓および/または血小板を含む)、
-病変部の部位における内皮細胞に対する外傷後の瘢痕組織の増殖または他の増殖などの管の中心に向かう管壁からの増殖、
-その部位においてその管にとって解剖学的に「正常」または「健康」でないそれ以外の管壁から管の中心に向かって延在する組織(例えば、平滑筋細胞、弾性線維、外弾性板、内弾性板、疎性結合組織および/または内皮細胞)、
-コレステロール、カルシウム、脂肪性物質、細胞老廃物、フィブリンおよび/または動物の管を通って流れる流体中に認めることができる他の物質(例えば、脈管構造病変部の場合、動物の血液中で認められる物質)の蓄積など、病変部の部位におけるプラーク物質の蓄積、
-転移および/またはリンパ腫などの管内で認められる癌性細胞、および/または
-動物の管の病変を引き起こし得るあらゆる他の組織および/または生体物質
などの、異なる特性の病変部で動作させてもよい。
【0029】
異なる特性の病変部は管外に形成されていてもよい。これらの病変部としては、癌腫、骨髄腫、黒色腫、新生物および/または肉腫などの癌性細胞が挙げられる。
【0030】
いくつかの実施形態では、病変部の複数のインピーダンススペクトルに基づいて、病変部に存在する生体物質を示すことができる病変部の組成を特定することによって、病変部の組織構造(例えば、病変部が上に列挙されている生体物質のうちのどれを有するか)を決定してもよい。生物組織のそのような特定は、病変部に存在する組織および/または細胞および/または病変部に存在するプラーク物質、および/または病変部におけるそのような組織、細胞またはプラーク物質の相対量を特定する工程を含んでもよい。いくつかの実施形態では、病変部に存在する生体物質を特定する工程は、組織/細胞、組織/細胞が健康であるか健康でないかについてなどの各生体物質の状態を特定する工程を含んでもよい。細胞が健康でない状態としては、例えばその細胞が炎症している、罹患している、癌性である、またはそれ以外の異常な状態にあるかということが挙げられる。
【0031】
当然のことながら、当該実施形態は任意の特定の形態もしくは組成の病変部または対象の解剖学的構造内の任意の特定の位置にある病変部で動作させることに限定されない。上述のように、説明を容易にするために管が動物の脈管構造である各種例を以下に示す。
【0032】
図1のプロセス100の開始前に、対象は脈管構造病変部の症状を呈していてもよい。血管造影法のような画像診断技術などを用いて、病変部および可能性のある病変部の位置が存在するかについての最初の決定を臨床医が行ってもよい。症状および病変部の位置の最初の決定に基づいて、臨床医は侵襲的装置を対象の脈管構造の中に挿入して、病変部をさらに診断および/または治療してもよい。臨床医は、例えば医師(例えば、内科医または外科医)であってもよく、あるいは本医療装置を動作させる看護師または医学的技術者などの別の医学の専門家(潜在的に医師の監督下にある)であってもよい。いくつかの実施形態では、臨床医は、対象の隣りを含む対象と同じ部屋に位置していてもよく、他の実施形態では、臨床医は対象から離れて位置し(例えば、患者と同じ建物の異なる部屋にいるか患者から地理的に離れており)、かつインターネットまたは他のワイドエリアネットワーク(WAN)などの1つ以上の有線および/または無線ネットワークを介して本医療装置を制御するユーザインタフェースを操作してもよい。
【0033】
プロセス100はブロック102で開始し、このブロックでは臨床医は侵襲的プローブを対象の脈管構造の中に挿入する。ブロック102で臨床医によって挿入される侵襲的プローブは本医療装置のためのガイドワイヤの遠位端に位置していてもよく、脈管構造への挿入のために成形、サイズ決めおよび構成されていてもよい。またブロック102では、臨床医は本侵襲的プローブが病変部に近接して位置するまで本侵襲的プローブを対象の脈管構造を通して送り込んでもよい。そのために、臨床医は血管造影法などの画像診断技術を用いて対象の体内での本侵襲的プローブの位置を監視してもよい。ブロック102での本侵襲的プローブの挿入および送り込みは公知の技術を用いるなど、装置の脈管構造への挿入に適した技術を用いて行ってもよいが、当該実施形態はこのように限定されない。
【0034】
ブロック104では、臨床医は本侵襲的プローブを動作させて病変部の1つ以上の特性を決定してもよい。この特性としては、病変部の位置、病変部のサイズ(例えば長さ)、病変部の組成または以下で詳細に考察される他の特性が挙げられる。特性を決定するために、本侵襲的プローブの1つ以上のセンサにより、病変部の組織および/または他の生体物質、および/または病変部の近くにある健康な組織などの病変部の部位におけるそれ以外の組織/物質の1回以上の測定を行ってもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、病変部の1つ以上の特性を決定することは、例えば病変部に存在する異なる種類の細胞または組織の量を特定することによって病変部の組成を特定することを含んでもよい。簡単な例として、プローブで測定された病変部が50%の赤血球、30%の白血球および20%の血小板によって構成されていることを特定してもよい。
【0036】
センサおよび測定の例について以下に詳細に説明する。ブロック104において本侵襲的プローブを動作させるために、臨床医は病変部を本侵襲的プローブの1つ以上のセンサに接触させてもよく、かつ/または本医療装置のユーザインタフェースを操作して本侵襲的プローブを始動させ、センサを使用して病変部の特性を決定してもよい。
【0037】
ブロック106では、臨床医は、本医療装置を動作させて病変部の決定された特性に基づいて病変部のために治療法の推奨を生成および出力する。以下で詳細に考察するように、病変部の特性に基づいて本医療装置によって生成される治療法の推奨は、どの治療装置を使用して病変部を治療するかなどの病変部を治療するための方法(例えば、病変部の物質を対象から除去する場合、吸引カテーテルを使用するかステントリトリーバを使用するか)、および/または治療装置を使用するための方法(例えば、どのくらい速くステントリトリーバを抜き出すか)に関する推奨を含んでもよい。また以下で詳細に考察するように、本医療装置は、病変部の特性を複数の異なる治療選択肢のそれぞれに関連づけられた条件と比較し、かつ病変部の特性が治療選択肢の対応する条件を満たす場合に治療選択肢の推奨を出力することなどによって、様々な分析に基づいて治療法の推奨を生成してもよい。本医療装置による出力は、ユーザインタフェースを介した臨床医への視覚、聴覚および/または触覚フィードバックなどの任意の好適な形態のユーザとの対話を介するものであってもよい。いくつかの実施形態では、本医療装置はブロック106ではさらにユーザが介入せずに自動的にブロック104で決定された病変部の特性を分析して治療法の推奨を生成/出力してもよい。他の実施形態では、臨床医は本医療装置のユーザインタフェースを操作して治療法の推奨の分析および生成/出力を要求してもよい。
【0038】
ブロック108では、臨床医は本医療装置の治療法の推奨を検討して治療選択肢を選択し、ブロック110では選択した治療選択肢を用いて病変部を治療する。
【0039】
いくつかの実施形態では、選択される治療選択肢は、さらなる侵襲的医療用構成要素の対象の脈管構造への挿入を含んでもよい。ブロック102で挿入される侵襲的プローブがガイドワイヤの構成要素である場合、例えばさらなる治療装置をガイドワイヤに沿って挿入してもよい。そのような場合の具体例として、本医療装置がステントリトリーバを用いた病変部の完全もしくは部分的除去を推奨する場合、ステントリトリーバを脈管構造の中に挿入してもよい。別の例として、本医療装置が代わりに吸引カテーテルを用いる除去を推奨する場合、臨床医は吸引カテーテルを脈管構造の中に挿入してもよい。さらなる例として、本医療装置がステントの埋め込みを推奨する場合、ステントインプランタ(stent implanter)を脈管構造の中に挿入してもよい。
【0040】
他の実施形態では、当該治療は別の装置の挿入を必要としなくてもよい。例えば、ブロック102で挿入される侵襲的プローブはガイドワイヤの構成要素でなくてもよいが、代わりにステントリトリーバなどの治療装置の構成要素であってもよい。そのような場合には、ブロック102で挿入される治療装置を用いてブロック110の治療を行ってもよい。例えば、ブロック102で挿入される侵襲的プローブがステントリトリーバの構成要素である場合、ブロック106の治療法の推奨は、ステントを拡げる量、血餅がステントと合体するまで待つ時間および/またはステントおよび血餅を回収する力もしくは速度などのステントリトリーバの動作方法に特有なものであってもよい。そのような実施形態では、ブロック110において臨床医は、ブロック106で本医療装置によって推奨されたステントリトリーバを動作させることによって病変部を治療してもよい。
【0041】
いくつかの実施形態では、病変部を治療しないが病変部を無処置のままにして対象を治療することを含む治療法の推奨を生成してもよい。例えば、病変部によって閉塞されている血管の再疎通を妨げるいくつかの種類の血管病変部は有効に治療するのが難しい場合がある。例えば、頭蓋内動脈硬化性疾患(intracranial artherosclerotic disease)を反映している病変部(ICAD病変部)は、現在利用可能な所与の治療で除去するのが難しい場合がある。またいくつかの実施形態では、ICAD病変部が検出された場合は有効なICAD治療が利用可能になるまで、本医療装置は病変部を治療するためのものではない治療法の推奨を生成してもよい。ICAD病変部はその組成および特に病変部内の生体物質の位置によって特定することができる。例えば、本医療装置が本明細書に記載されている技術により血管病変部が本侵襲的プローブの管腔側の血餅およびワイヤの反管腔側のアテローム性動脈硬化性プラーク物質(例えば、脂質もしくは石灰化成分、平滑筋細胞、内皮の不存在)を含むと決定した場合、本医療装置は病変部がICAD病変部であると決定してもよい。
【0042】
ブロック110において病変部を治療したらプロセス100は終了する。いくつかの実施形態において病変部の治療後に行われ得るさらなる動作について以下に記載する。
【0043】
医療装置の例
上で考察したように、
図1は、動物の脈管構造内の病変部を診断および/または治療するために本明細書に記載されているいくつかの実施形態に係る医療装置を動作させることができる方法の一般的な考察を提供するものであった。
図2~
図3は、そのような診断および/または治療の一部として脈管構造の中に挿入することができる侵襲的プローブを備える医療装置のいくつかの実施形態の例を提供する。
【0044】
図2は、対象204の病状を診断および/または治療するために臨床医202が動作させることができる医療装置200を示す。動物204(例えばヒト)の病状は、虚血性脳卒中を引き起こし得るヒトの頭蓋血管内の病変部として
図2の例に示されている脈管構造の病変部204Aであってもよい。上で考察したように、病変部204Aは血餅、プラーク物質の蓄積、平滑筋組織の過剰な増殖および/または血管の他の病変部であってもよい。
【0045】
図2に示されている医療装置200は、ガイドワイヤ206、ハンドル208および侵襲的プローブ210を備える。侵襲的プローブ210および少なくともいくつかのガイドワイヤ206を、侵襲的プローブ210が病変部204Aに近接して位置するまで対象204の脈管構造の中に挿入してもよい。従って侵襲的プローブ210は、脈管構造(または他の管)の中に挿入するために成形され、かつそれ以外に構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、侵襲的プローブ210は、約300マイクロメートルのガイドワイヤまたは直径が約3~10フレンチのマイクロカテーテルまたは動物の管に挿入するのに適した直径を有する別の装置に取り付けられている。そのような装置はいくつかのそのような実施形態では約1または2メートルの長さであってもよく、侵襲的プローブ210はガイドワイヤ/装置の一端に、例えばその装置の最後の5センチメートル以内に位置している。
【0046】
対象204に挿入される侵襲的プローブ210は、1つ以上のセンサ212および測定装置214を備えていてもよい。いくつかの実施形態では、センサ212は、病変部204Aの組織および/または生体物質の1つ以上の電気特性を測定することなどによって病変部204Aの1つ以上の電気特性を測定してもよい。測定装置214は、センサ212によって生成されたデータを受信してもよく、いくつかの実施形態では、1つ以上の電気特性の測定の一部として病変部204Aに印加される1つ以上の電気信号を生成してもよい。
【0047】
センサ212の例について以下に詳細に説明する。1つの具体例として、センサ212はインピーダンスセンサであってもよく、測定装置214はセンサ212を駆動させて病変部204Aの電気インピーダンス分光法(EIS)を行ってもよい。例えば、測定装置214は、1種以上の周波数の電気信号を生成するための1つ以上の発振器を備えていてもよく、その周波数は、以下で詳細に考察するように病変部204Aの組成を特定するのを支援するために、異なる組織および/または異なる生体物質を識別するために選択された特定の周波数(および測定装置214の発振器が生成するように構成されている周波数)であってもよい。複数の周波数を用いて組織/物質を試験するように構成されている実施形態では、測定装置214は複数の発振器を備えていてもよく、1つの発振器は試験される各周波数に特有であり、かつその周波数の信号を生成するように構成されている。
【0048】
測定装置214が病変部204Aに印加される電気信号を生成するいくつかの実施形態では、測定装置214が侵襲的プローブ210内に含められており、かつ対象204の脈管構造の中に挿入されると有利であり得る。これにより、測定装置214をセンサ212および病変部204Aに極めて近接して配置し、病変部204Aに印加される電気信号におけるノイズを制限してもよい。測定装置214がハンドル208内に位置している場合、例えば、測定装置214によって生成される電気信号はガイドワイヤ206の長さを移動した後、侵襲的プローブ210によって出力されて病変部204Aに印加される。これらの信号がガイドワイヤ206の長さを移動する場合、電気ノイズが信号品質に影響を与えることがある。測定装置214を侵襲的プローブ210内に位置決めすることによって、これらの信号におけるノイズを制限してもよい。測定装置214が侵襲的プローブ210内に位置決めされている場合、それは侵襲的プローブ210の内腔内または侵襲的プローブ210の表面(内面または外面)に位置決めされていてもよく、あるいは侵襲的プローブ210の表面(内面または外面)に貼り付けられたフィルム内に埋め込まれていてもよい。
【0049】
測定装置214は、いくつかの実施形態では特定用途向け集積回路(ASIC)として構成されていてもよい。いくつかのそのような実施形態では、ASICはシリコン基板層を減らすパッケージングプロセスを用いて製造されていてもよい。例えば製造中に、集積回路は能動部品を含まないシリコン基板層の上に機能部品を含む「活性」シリコン層と共に製造されてもよい。基板層は積層体の最下層であってもよく、場合によっては最も厚い層であってもよい。従来通りに、基板層は集積回路に構造的安定性を与えるために製造後にそのままである。いくつかの実施形態では、測定回路214は、活性層の製造後であってパッケージングの前にシリコン基板層を除去することを含むプロセスを用いて製造されていてもよい。この製造プロセスは、能動部品が製造されている側面とは反対の側であってもよいウェーハの底面から基板を除去することを含んでもよい。いくつかの実施形態では、シリコン基板の全てが除去されていてもよい。他の実施形態では、実質的に全てのシリコン基板が除去されてもよく、ここで「実質的に除去されている」とは、シリコン基板を構造的支持のためにのみ残さずに、活性層部品の適切な電気的機能を確保するのに十分なシリコン基板のみを残すことを含む。シリコン基板の除去後に、集積回路はパッケージング材料の中に封入されてもよい。
【0050】
いくつかの実施形態では、測定装置214をセンサ212および病変部204Aに極めて近接して配置することにより、電気信号が移動する距離を制限し、このようにして信号減衰を抑制してもよい。電線はローパス周波数応答を示す傾向があるため、信号減衰の抑制はより高い周波数において特に重要になり得る。信号が移動する距離を減らすことによって、信号源と病変部との間の電気路のカットオフ周波数を増加させ、それにより診断または治療で使用することができる周波数の範囲を増加させてもよい。結果として、組織または細胞の種類を識別する能力を著しく高めることができる。測定装置214をセンサ212および病変部204Aに極めて近接して配置することによりカットオフ周波数をいくつかの実施形態では最大1MHz、他の実施形態では最大10MHz、またはさらに他の実施形態では最大25MHzまで増加させてもよい。比較のために、測定装置214がハンドル208内に位置する場合、カットオフ周波数を500KHz未満まで制限してもよい。
【0051】
当然のことながら、当該実施形態はEISセンサであるかEIS動作を行うために駆動されるセンサ212に限定されない。いくつかの実施形態では、センサ212は1つ以上の電気センサ、機械センサ、光センサ、生物学的センサまたは化学センサであってもよい。そのようなセンサの具体例としては、インダクタンスセンサ、静電容量センサ、インピーダンスセンサ、EISセンサ、電気インピーダンス断層撮影(EIT)センサ、圧力センサ、流量センサ、剪断応力センサ、機械的応力センサ、変形センサ、温度センサ、pHセンサ、化学組成センサ(例えば、O2イオン、バイオマーカまたは他の組成物)、加速度センサおよび運動センサが挙げられる。これらのセンサは公知の市販のセンサを含んでもよい。
【0052】
いくつかの実施形態では、侵襲的装置210に含まれる測定装置214は、センサ212を駆動させ、かつ/またはセンサからの結果を処理してデータを生成し、ガイドワイヤ206に沿ってハンドル208に送り戻すように構成されていてもよい。これは、例えば治療法の推奨が医療装置200によって生成される実施形態の場合であってもよい。病変部204Aの特性を示すデータはガイドワイヤ206の長さに沿って伝送されてもよい。そのような伝送中のノイズの影響を制限するために、いくつかの実施形態では測定装置214は、ガイドワイヤ206を通り抜ける通信チャネル(例えば、1本以上のワイヤ)を介した伝送のためにデジタルデータを生成するためのアナログ/デジタル変換器(ADC)または他の構成要素を備えていてもよい。
【0053】
本明細書に記載されている実施形態によれば、臨床医202は、医療装置200によって生成される1つ以上の治療法の推奨に従って病変部204Aを治療することができる。
図2には図示されていないが、医療装置200は、病変部204Aの治療のためにそのような治療法の推奨を生成および出力するための制御装置を備えていてもよい。制御装置は、いくつかの実施形態では、医療装置200の少なくとも1つのプロセッサによって実行される実行可能コードとして実装された病変部分析機構として実装されていてもよい。病変部分析機構は、1つ以上の治療法の推奨に関して構成された情報に関連して医療装置200(例えば侵襲的プローブ210)によって決定された病変部204Aの特性を分析してもよい。以下で詳細に考察する1つの具体例として、病変部分析機構は、病変部204Aの特性を各種治療法の推奨に関連づけられた条件と比較し、その特性がその治療法の推奨のための条件を満たす場合に治療法の推奨を出力してもよい。
【0054】
いくつかの実施形態では、病変部分析機構を実行するためのプロセッサおよび病変部分析機構を格納する記憶媒体(例えばメモリ)および治療法の推奨のために構成された情報はハンドル208内に配置されていてもよい。従って、ハンドル208内のプロセッサ上で実行される病変部分析機構は、測定装置214からガイドワイヤ206の通信チャネルを介して病変部204Aの1つ以上の特性を示すデータを受信してもよい。
【0055】
但し他の実施形態では、病変部分析機構を実行するためのプロセッサおよび病変部分析機構を格納する記憶媒体(例えばメモリ)および治療法の推奨のために構成された情報は、別個の計算装置内に配置されることなどによって、ガイドワイヤ206およびハンドル208とは別個に配置されていてもよい。計算装置は、同じ部屋の中に位置することなどによって、ガイドワイヤ206およびハンドル208に近接して位置していてもよい。あるいは計算装置は、同じ建物の異なる部屋の中またはガイドワイヤ206およびハンドル208から地理的に離れて位置することなどによって、ガイドワイヤ206およびハンドル208から離れて位置していてもよい。プロセッサ/媒体がガイドワイヤ206およびハンドル208とは別個である実施形態では、計算装置は、ハンドル208から計算装置への直接線、ハンドル208と計算装置との間の無線パーソナルエリアネットワーク(WPAN)、ハンドル208と計算装置との間の無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)、ハンドル208と計算装置との間の無線ワイドエリアネットワーク(WWAN)および/またはインターネットなどの1つ以上の有線および/または無線通信ネットワークを介して病変部204Aの1つ以上の特性を示すデータを受信してもよい。従って、いくつかの実施形態では、ハンドル208は、1つ以上のネットワークを介して通信するための1つ以上のネットワークアダプタを備えていてもよい。
【0056】
治療法の推奨が医療装置200によって生成される場合、治療法の推奨は、臨床医202および/または任意の他のユーザに提示するために医療装置200によって出力されてもよい。この出力は1つ以上のネットワークを介して別の装置および/または表示装置216などの1つ以上の表示装置または他の形態のユーザインタフェースに対して行われてもよい。
図2の例では、病変部分析機構は、ハンドル208内に配置されたプロセッサ上で実行されて治療法の推奨を生成してもよく、その推奨は、臨床医202への提示のためにハンドル208の無線ネットワークアダプタを介して表示装置216に出力されてもよい。当該実施形態はこの点に関して限定されないため、他の形態のユーザインタフェースが使用されてもよい。任意の好適な視覚、聴覚もしくは触覚フィードバックが使用されてもよい。例えば、治療法の推奨が吸引カテーテルまたはステントリトリーバのいずれかを用いる病変部の除去を推奨する場合、ハンドル208は各選択肢のために発光ダイオード(LED)または他の視覚的要素を含んでもよく、適当なLEDを照射することによって治療法の推奨を提示してもよい。別の例として、治療法の推奨がステントリトリーバの動作方法に関し、かつ特に待ち時間後にいつ抜き出すかの推奨である場合、抜き出し始めるための信号は、ハンドル208内に組み込まれている振動装置を介して提供される触覚信号を用いて出力されてもよい。当業者であれば、上で考察した計算装置と同様に、ユーザインタフェースの要素はハンドル208内に配置されていてもハンドル208とは別個であってもよい(またはさらにそこから離れていてもよい)ということを理解しているであろう。
【0057】
電力はガイドワイヤ206の長さに沿って延在する電力ケーブルを介して侵襲的プローブ210に供給されてもよい。電力ケーブルはハンドル208内の電源に接続していてもよく、当該実施形態はこの点に関して限定されないため、電源は、電池、エナジーハーベスタ、グリッド電源への接続または他のエネルギー源であってもよい。
【0058】
いくつかの実施形態では、ハンドル208は、
図2には図示されていない1つ以上のセンサを備えていてもよい。ハンドル208に組み込まれているセンサは、医療装置200の動作を監視して、臨床医202によって行われた治療法を報告してもよい。例えば、ガイドワイヤ206および侵襲的プローブ210の移動を支配するハンドル208の移動を検出するために加速度計または他の移動検知センサがハンドル208内に配置されていてもよい。例えば加速度計を監視することによって、臨床医202が複数回の治療を行って病変部を除去したか(例えば、吸引カテーテルまたはステントリトリーバを複数回通したか)、あるいは1回通しただけで病変部を抜き出すことができたかについての決定を行ってもよい。
【0059】
いくつかの実施形態では、ハンドル208はガイドワイヤ206から取外し可能であってもよく、かつ動作間で再利用可能であってもよい。従って、侵襲的プローブ210および/またはガイドワイヤ206は再利用不可能に構成されていてよく、代わりに衛生上の理由で使い捨てであるように構成されていてもよく、ハンドル208は、取り外し可能にガイドワイヤ206に取り付けられ、かつ他のガイドワイヤ206および侵襲的プローブ210により再利用されるように構成されていてもよい。例えば、ガイドワイヤ206およびハンドル208は、ハンドル208がガイドワイヤ206に接続し、かつガイドワイヤ206(例えば、通信チャネル、電力ケーブル)および侵襲的プローブ210の構成要素とインタフェース接続するのを可能にする相補的なインタフェースを有していてもよい。
【0060】
臨床医202は、表示装置216を備え、かつ少なくとも部分的にハンドル208内に配置させることができる本医療装置のユーザインタフェースを介して医療装置200を動作させてもよい。例えば、ハンドル208により、臨床医202がガイドワイヤ206および侵襲的プローブ210を脈管構造内で前後に移動させ、かつ/または侵襲的プローブ210の動作を始動することを可能にしてもよい。
【0061】
侵襲的プローブ210の動作は侵襲的プローブ210の構成要素によって決まってもよい。例えば、侵襲的プローブ210は、病変部204Aの1つ以上の特性を検知するためのセンサ212を備えていてもよい。侵襲的プローブ210は、1つ以上のセンサを動作させて電気信号を病変部204Aに印加して電気信号の印加の間および/または後に病変部204Aの1つ以上の測定を行うことなどによって、センサを動作させて1つ以上の特性を検出するための測定装置214をさらに備えていてもよい。いくつかの実施形態では、侵襲的プローブ210は、ステントの埋め込みおよび/または病変部204Aの除去などによって病変部204Aを治療するための1つ以上の構成要素を備えていてもよい。病変部除去構成要素は、当該実施形態はこの点に関して限定されないため、病変部の除去のための任意の好適な技術に関する構成要素が挙げられる。いくつかの実施形態では、例えば、侵襲的プローブ210は、ステントおよび/または吸引カテーテル構成要素を用いて病変部の回収を行って病変部をカテーテルの中に吸引するためのステントリトリーバ構成要素(例えばバルーン)を備えていてもよい。侵襲的プローブ210は、例えば光干渉断層撮影(OCT)センサなどの
図2に図示されていない他のセンサをさらに備えていてもよい。
【0062】
従って、ハンドル208に全体または部分的に組み込まれていてもよい本医療装置のユーザインタフェースにより、臨床医202が侵襲的プローブ210を用いて多くの異なる動作を行うことを可能にしてもよい。例えば、ハンドル208のユーザインタフェースにより、臨床医202がセンサ212および測定装置214を始動させて電気信号を印加し、かつ/または病変部204Aの測定を行い、かつ/または1つ以上の治療動作を行って病変部204Aを治療することを可能にしてもよい。
【0063】
医療装置200が1つ以上の動作を行って病変部204Aを治療するための治療構成要素を備えることができる例について説明してきたが、当然のことながら当該実施形態はそのように限定されない。いくつかの実施形態では、医療装置200は、ガイドワイヤに沿って挿入して病変部204Aに近接して位置決めして病変部204Aを治療するさらなる治療装置のためのガイドワイヤであってもよい。例えば、侵襲的プローブ210およびガイドワイヤ206の挿入後に、臨床医202は、別の装置をガイドワイヤ206の長さに沿って挿入してもよく、あるいはガイドワイヤ206および侵襲的プローブ210を除去し、次いで新しい装置を挿入してもよい。新しく挿入される装置は、例えば、ステントインプランタ、吸引カテーテル、ステントリトリーバまたは病変部204Aを治療するための他の装置であってもよい。さらなる装置が挿入されるいくつかの実施形態では、さらなる装置およびハンドル208は互換性のあるインタフェースを有していてもよく、かつハンドル208のユーザインタフェースを使用してさらなる装置を動作させることができるようにハンドル208はさらなる装置と互換性を有していてもよい。
【0064】
また、臨床医202が治療法の推奨に従って医療装置200を手動で動作させる例を示してきたが、当該実施形態はそのように限定されない。他の実施形態では、医療装置200はセンサ212からの入力に基づいて病変部を自動的に治療してもよい。例えば、上記簡単な考察および以下の詳細な考察から理解されるはずであるように、医療装置200は、病変部204Aを治療するための方法に関する治療法の推奨を生成してもよい。いくつかの実施形態では、医療装置200は、治療法の推奨に従い、かつユーザが介入せずに(但し、いくつかの実施形態では臨床医202の監視下にある)、吸引カテーテル、ステントリトリーバ、ステントインプランタまたは他の装置を挿入および/または動作させて治療法の推奨に従って病変部204Aを治療する。
【0065】
図3は、いくつかの実施形態と共に動作することができる侵襲的プローブ210の例を示す。
図3の例の侵襲的プローブ210は、ステント同様に構成されたメッシュ300を含む。侵襲的プローブ210は、いくつかの実施形態ではステントリトリーバとして動作可能であってもよい。他の実施形態では、侵襲的プローブ210はステントリトリーバとして動作可能でなくてもよいが、単一のセンサのみを用いて可能になり得る場合よりも高い正確性で病変部の特性を検出するためにセンサと病変部との複数の接触点を提供するためのメッシュ300または別の構造体を含んでいてもよい。
【0066】
但し当然のことながら、いくつかの実施形態では(
図3の実施形態以外)、侵襲的プローブ210は、例えば侵襲的プローブ210の遠位端に位置していてもよい1つのみのセンサを備えていてもよい。そのようなセンサは、2つの電極として実装されていてもよく、そのうちの1つは病変部に電気信号を印加してもよく、かつそのうちの1つは印加された信号を受信してもよい。印加された信号と受信された信号との比較に基づいて、以下で詳細に考察するように1つ以上の決定を行ってもよい。
【0067】
但し本発明者らは、さらなるセンサを侵襲的プローブ210に含めることにより、より詳細な情報を決定することを可能にし得ることを認識および理解していた。例えば、さらなるセンサを侵襲的プローブ210に含めることにより、病変部の組成に関する情報を単一のセンサのみの場合と比較してより正確なものにすることを可能にしてもよい。そのようなさらなるセンサにより、例えば本侵襲的プローブに沿った複数の位置のそれぞれにおいてインピーダンススペクトルを決定することを可能にしてもよく、それにより場合によっては同じ病変部について異なる位置で異なるインピーダンススペクトルを決定することができる。これは、例えば各センサを用いてインピーダンススペクトルを決定することを含んでもよい。各インピーダンススペクトルはこの場合、センサ(その2つの電極を有する)が接触する病変部の生体物質のインピーダンススペクトルである。いくつかの病変部は、複数の異なる生体物質(例えば、異なる組織または細胞あるいは異なるプラーク物質)を含んでいる場合がある。本侵襲的プローブの各センサが異なる生体物質に接触する場合、各センサは異なる生体物質のそれぞれについて異なるインピーダンススペクトルを決定することができる。但し、いくつかの病変部では本侵襲的プローブの2つ以上のセンサが同じ生体物質に接触することがあり、そのような場合には同じまたは実質的に同じインピーダンススペクトルを生成する場合がある。従って、いくつかの実施形態では、本侵襲的プローブは各センサを動作させて病変部の生体物質のインピーダンススペクトルを生成することができる。病変部の複数の生体物質のそれぞれのインピーダンススペクトル(すなわち、各病変部の複数のインピーダンススペクトル)を生成することは、全体としての病変部のために単一のインピーダンススペクトルを決定することとは対照的である。EISを実施することなどによって複数のセンサを用いて病変部の組成を決定するための技術について以下で考察する。
【0068】
従って
図3は、プローブ210の外面および/または内面に沿って配置された複数のセンサを有する侵襲的プローブ210の例を示す。センサ302(センサ302A、302B、302C、302Dを含み、本明細書では総じて、すなわちまとめてセンサ302と呼ぶ)は構造体300に沿って配置されていてもよい。いくつかの実施形態では、各センサは電気信号を印加し、かつ/または印加された電気信号を検出するための1つ以上の電極であるか、あるいはそれらを備えていてもよい。
【0069】
いくつかの実施形態では、
図3には図示されていないが、侵襲的プローブ210は、膨らまされると構造体300を外向きに拡げて、病変部とより良好に接触するためのバルーンを備えていてもよい。使用中に、例えば構造体300の遠位端に位置するセンサがそれらが病変部の遠い側まで移動したことなどを検出するまで、構造体300を全体的または部分的に病変部に挿入してもよく、その後、センサ302が複数の点における接触を検出するまでバルーンを用いて構造体300を拡げてもよい。構造体300の膨張は侵襲的プローブ210の制御装置(例えば測定装置304)によって制御されてもよく、あるいは本医療装置の他の場所に配置された病変部分析機構によって、および/または医療装置のユーザインタフェースを介して臨床医によって制御されてもよい。
【0070】
いくつかの実施形態では、測定装置304はセンサ302を動作させて、1つ以上の電気信号を生成して病変部に印加し、かつセンサ302によって生成されたデータを分析することなどによって1回以上の測定を行ってもよい。センサ302によって生成されるデータの分析は、上で考察したように病変部分析機構またはユーザインタフェースなどにガイドワイヤに沿って患者の体外に伝送されるデータのアナログ/デジタル変換を行うことを含んでもよい。
【0071】
センサ302が電気センサである例を示してきたが、当然のことながら当該実施形態はそのように限定されない。例えば、センサ302は1つ以上の電気センサ、機械センサ、光センサ、生物学的センサまたは化学センサであってもそれらを含んでいてもよい。そのようなセンサの具体例としては、インダクタンスセンサ、静電容量センサ、インピーダンスセンサ、EISセンサ、電気インピーダンス断層撮影(EIT)センサ、圧力センサ、流量センサ、剪断応力センサ、機械的応力センサ、変形センサ、温度センサ、pHセンサ、化学組成センサ(例えば、O2イオン、バイオマーカまたは他の組成物)、加速度センサおよび運動センサが挙げられる。
【0072】
センサおよび検知技術の例
上で考察したように、いくつかの実施形態では、侵襲的プローブの測定装置は、本侵襲的プローブのセンサを動作させて電気インピーダンス分光法(EIS)を実施することができる。
図4~
図11はそのようなセンサおよび測定装置を構成することができる方法の例を記載するものであり、かつそのようなセンサおよび測定装置の動作のための技術の例を記載するものである。但し当然のことながら、当該実施形態はこの箇所に記載されているEISの例に従って動作させることに限定されない。
【0073】
図4~
図11に関してこの箇所に記載されている技術により、ヒトなどの哺乳類を含む動物の管の病変部の組織および/または生体物質の識別が可能になる。「識別」とは本明細書では、例えば病変部の1種以上の細胞(例えば、赤血球および/または白血球あるいは異なる種類もしくは状態の内皮細胞)および/または病変部の1種以上の他の生体物質(例えば、コレステロールなどのプラーク物質)を決定することによって、この方法によって得られる異なる組成の病変部間での識別の可能性を意味するように理解されるべきである。より一般的には、この箇所に記載されている技術によって可能になる識別は、試験された病変部に関する情報の少なくとも1つの項目を決定することを含む。これらの技術によって決定することができる情報の例は後で示す。
【0074】
細胞識別方法10は、
図4に概略的に図示されているように、試験される病変部のインピーダンスの周波数スペクトルを決定する第1の工程12を含む。
【0075】
スペクトルは本明細書では、複素数で表すことができる病変部のインピーダンスの値の対および対応する周波数のセットを意味するように理解されるべきである。従って、このスペクトルは離散的であってもよく、かつ有限数の対のみを含んでいてもよい。これらの対は特に数Hz、さらには数十Hz、さらには数百Hzだけ離れていてもよい。但し、他の実施形態では、この工程で決定されるスペクトルは、周波数帯にわたって連続的または疑似連続的であるか離散化されている。疑似連続的とは、スペクトルが100Hz以下、好ましくは10Hz以下、好ましくはさらに1Hz以下で離れた連続した周波数について決定されることを意味するように理解されるべきである。組織のインピーダンスが決定される周波数帯は、例えば10kHz、好ましくは100kHzから拡大する。実際には低い周波数では、病変部の組織/物質の膜は電気絶縁体として機能するため、インピーダンスは非常に高くなり、かつ何よりも変動は僅かである。さらに、病変部の組織/物質のインピーダンスが決定される周波数帯は、例えば最大100MHz、好ましくは1MHzまで拡大する。実際には高い周波数では、病変部を構成する組織/物質の壁は電気的観点から透過性になる。従って、測定されるインピーダンスはもはや生体物質を表すものではない。このスペクトルは、病変部の複素インピーダンスの実部および/または虚部および/または絶対値および/または位相の周波数スペクトルであってもよい。
【0076】
病変部のインピーダンスの周波数スペクトルを決定するこの第1の工程12は、特に
図5に関連して以下に記載されているように行われてもよい。
【0077】
まず工程14の間に、交流発電機に接続されている2つ、好ましくは3つ、さらにより好ましくは4つの電極を試験される病変部に接触させて置く。2つの電極を実装して電流を試験される病変部の中に通し、かつ他の2つの電極間の電位差を測定することを可能にするため、4つの電極による測定が好ましい。これにより測定の正確性を高めることが可能になる。次いで工程16の間に、病変部に接触している電極間に交流を印加する。次いで、工程18の間に印加される電流の周波数を変えることによって、異なる周波数について電極の端子において対応する電圧を測定する。最後に工程20の間に、測定が行われた周波数のそれぞれについて、測定された電圧と印加された電流との比を計算する。この比により、測定周波数の関数として試験された病変部のインピーダンスが得られる。計算された比により、病変部のインピーダンスの周波数スペクトルを定めることが可能になる。
【0078】
スペクトルが連続的または疑似連続的である場合、これは、
図6に示すようにこの特定の事例では対数目盛に従ってプロットされている周波数の関数として病変部のインピーダンスの絶対値を与える曲線の形態で表されてもよい。なお、本明細書では対数目盛はx軸に使用されている。
【0079】
次いで、
図4の識別方法10の工程22では、病変部のインピーダンスの異なるモデル、すなわち病変部をモデル化することができる異なる電気回路を選択する。ここでは、定位相要素を含むが静電容量を含まないモデルを選択する。実際には、定位相要素は静電容量よりも病変部の挙動をより現実的にモデル化することが分かっている。
【0080】
定位相要素(すなわちCPE)は、以下の方程式:
【数1】
または
【数2】
(式中、
jは、-1(j
2=-1)の平方根であり、
ωは、電流の特有のパルシング(ω=2πf、式中fは電流の周波数である)であり、
Q
0は、定位相要素の真のパラメータであり、かつ
αは、定位相要素の相φ
CPEが-απ/2に等しくなるような0と1の間にある定位相要素の別の真のパラメータである)
の形態のインピーダンスZ
CPEを有する。
【0081】
以後本説明では、そのインピーダンスが上記方程式[1]によって与えられる定位相要素を例として選択する。
【0082】
病変部のインピーダンスのモデルは、特に
図7~
図10に関して以下に記載されているものから選択してもよい。言うまでもなく、モデルが単純になるほど計算も単純になる。但し、複雑なモデルは測定によって得られるインピーダンスのスペクトルとより良好に相関するため、より正確な結果を得ることができる。
【0083】
図7に図示されている第1のモデル24に従って、病変部のインピーダンスは、定位相要素30および第2の抵抗32の並列接続28に直列に実装された第1の抵抗26によってモデル化されている。
【0084】
この場合、病変部の総抵抗Z
totは、以下の方程式:
【数3】
(式中、
Z
totは、病変部を表す第1のモデル24の総インピーダンスであり、
R
1およびR
2は、第1のモデル24および第2の抵抗30の抵抗値である)
の形態である。
【0085】
そのようなモデルは、各個々の実装体が個々の抵抗および個々の静電容量の並列実装体と直列である個々の抵抗で構成されている個々の並列実装体のセットのように、病変部を覆っている測定電極を特に十分に記述するものである。そのような実装体により、そのパラメータが異なっていてもよく、かつそれらの並列回路がそれぞれ病変部の異なる組織/物質を表す並列の異なる回路に従って、測定電極の全ての表面にわたる時定数の分布をモデル化することが可能になる。このようにして、病変部の組織/物質が異なる電気特性、特に異なる抵抗および/または静電容量を示すことがあるという事実がモデル化される。
【0086】
図8に図示されている第2のモデル34は、第2の定位相要素36の直列実装体によって
図7のモデル24を補完している。また、この第2の定位相要素36のインピーダンスZ
CPE,2は、以下の方程式:
【数4】
(式中、
βは、この第2の定位相要素の定位相が-βπ/2に等しくなるような0~1の間にある真のパラメータであり、かつ
Q
1は定位相要素の真のパラメータである)
の形態であるように選択されてもよい。
【0087】
従って、この第2のモデル34に係る病変部の総インピーダンスZ
totは、以下の方程式:
【数5】
によって与えられる。
【0088】
図9に図示されている第3のモデル38は、抵抗R
3の第3の抵抗40と並列に実装されている
図7のモデルに対応する。この場合、病変部の総インピーダンスZ
totは、以下の方程式:
【数6】
によって与えられる。
【0089】
最後に、第4の例示的なモデル42が
図10に図示されている。このモデル42は、図示されているように、定位相要素30および第2の抵抗32の直列実装体に並列に実装された第1の抵抗26を含む。
【0090】
病変部の総インピーダンスZ
totはこのモデル42の場合、以下の方程式:
【数7】
によって与えられる。
【0091】
次いで、識別方法は工程44を続け、その工程の間に、工程22で選択された各モデルについて、病変部のインピーダンスのモデルと工程12で決定されたスペクトルとの相関を最適化する定位相要素30のインピーダンスを決定する。
【0092】
病変部のインピーダンスのモデルと工程12で決定されたスペクトルとの相関の最適化を行うこの工程は、当業者によって公知の任意の最適化方法によって実装されていてもよい。例として、この工程44の実用的かつ比較的単純な実装を可能にする最小二乗法が実装されていてもよい。
【0093】
言うまでもなく、実際には定位相要素のインピーダンスのパラメータ以外の異なるモデルの他のパラメータもこの工程44の間に決定してもよい。これらの要素も試験される病変部および/またはそれを構成する組織/物質に関する情報を得るのに有用であり得る。
【0094】
次いで、識別方法10の中間工程46を行ってもよい。この工程46は、病変部のインピーダンスの測定されたスペクトルと最も良好に相関すると思われるモデルを決定することからなる。この最良のモデルは、例えば測定されたスペクトルに関する標準偏差を最小限に抑えるものであってもよい。以後本説明では、病変部のインピーダンスの測定されたスペクトルに最も良好に相関するという理由から、モデル24が保持される事例を仮定する。
【0095】
工程48の間に、病変部の実効静電容量(または見掛け静電容量)を定位相要素のインピーダンスのパラメータおよび対応するモデルから推定する。
【0096】
理論的にこの実効静電容量は、病変部の組織/物質の要素の個々の静電容量のセットを表す。組織/物質のこれらの要素は、特に病変部の組織/物質の全てまたは一部であってもよい。実効静電容量は、病変部の一部または全ての電気的膜挙動の表示を可能にするモデルである。このモデルにより、病変部の組織/物質を適切に識別することが可能になる。
【0097】
より実用的には、この実効静電容量は、各個々の実装体が少なくとも1つの個々の抵抗および1つの個々の静電容量を含む個々の並列実装体を含むモデルにより病変部のインピーダンスを特定することによって決定する。各実装体は、特に第2の個々の抵抗との個々の静電容量の並列実装体に直列である第1の個々の抵抗を含み、好ましくはそれらからなっていてもよい。これらの個々の実装体は病変部の各組織/物質の挙動をモデル化することを目的とする。従って実効静電容量は、全ての個々の静電容量の存在から病変部において生じる静電容量である。
【0098】
モデル24(または34)の場合、実効静電容量の決定は、特に以下のように行ってもよい。定位相要素を含むモデル24のインピーダンスを、定位相要素が実効静電容量で置き換えられている同等もしくは同一のモデルのインピーダンスと比較する。次いで厳密に言えば、定位相要素を含む病変部のために選択されたモデルのインピーダンスの実部および/または虚部および/または位相および/または絶対値を定位相要素が実効静電容量で置き換えられている同一のモデルと比較することによって、実効静電容量の計算を行ってもよい。
【0099】
モデル24(または34)の場合、例えば時定数:
【数8】
を方程式[3]から直接推定されるモデル24のアドミタンスの方程式の中に入れて、以下の方程式[8]:
【数9】
を得て、ここから以下の方程式:
【数10】
の形態の実効静電容量のための式を推定することができる。
【0100】
定位相要素を含む病変部のインピーダンスの別のモデルが選択される場合、実効静電容量の対応する方程式を決定することができる。これを行うためには、モデル24または34が病変部のインピーダンスのモデルと電気的に同等であるように選択されたモデルのパラメータの関数として、適当であればモデル24または34のインピーダンスR1、R2、ZCPEおよびZCPE,2を計算するだけで十分である。次いで、選択されたモデルのパラメータの関数として表されるR1、R2、Z0およびαを対応する値で置き換えて実効静電容量を計算してもよい。
【0101】
次いで、細胞識別方法10は、先に決定された実効静電容量から病変部の組織/物質に関する情報の項目の推定を行う工程66を続ける。
【0102】
この推定は特に、工程48で決定された実効静電容量の値を予め決められた値と決定することによって行ってもよい。予め決められた値は特に、公知の媒体において公知の試験条件を用いて公知の組成の組織に対して行われる試験中に得られるものであってもよい。予め決められた値は実効静電容量の値のデータベースにおいて一緒にグループ化されていてもよく、測定された実効静電容量を異なる種類の組織/物質および/または異なる組織/物質の異なる状態および/または異なる試験条件ごとに一緒にグループ化されている。
【0103】
このようにして、病変部の組織/物質を決定することができ、すなわち以下の項目:
病変部における組織および/または他の生体物質の種類、
特に病変部が異なる種類の生体物質または異なる状態の組織/細胞/他の生体物質からなる場合に病変部の組成、
病変部が組織からなる場合には組織に含まれる細胞の種類および/または組織中に存在する細胞の層の数、
病変部がプラーク物質などの他の生体物質からなる場合には病変部に含まれる物質の種類、および/または
特に細胞が健康な状態、炎症状態、変性状態にある場合、特に感染状態の1つ以上の癌性細胞が存在する場合には病変部の組織に含まれる細胞の状態
の情報のうちの少なくとも1つを決定することができる。
【0104】
従って、本明細書に記載されている識別方法の1つの利点は、試験される病変部のインピーダンスの周波数スペクトルの単純な測定から、電極に接触している病変部における組織/物質の識別が可能になることである。得られる結果は正確である。測定されたインピーダンスの正規化を続けることも試験されるあらゆる試料の非存在下で参照測定を続けることも必要ではない。従って本方法は、生体内であって病変部が原位置にある状態、すなわち試験される病変部の事前試料採取を必要とせずに実行することができる。
【0105】
なお、実効静電容量が決定される場合には、この単一の値は病変部の組織/物質を識別するのに十分であることが多い。また試験される病変部のインピーダンスの選択されたモデルのパラメータを予め決められた値と比較して、実効静電容量の比較の結果を明示してもよい。例えば、組織の細胞が炎症している場合、細胞間の接合はより緩くなる。次いで、低い周波数における抵抗、すなわち例えばモデル24の抵抗32は健康な細胞と比較してより低くなる。次いで、この抵抗値と健康な非炎症細胞のために予め決められた値との比較により、これらの細胞の炎症状態を決定することを可能にしてもよい。
【0106】
なお、当該モデルの他のパラメータを病変部の組織/物質を識別するものとみなしてもよい。但し、これらの他のパラメータにより、試験された病変部に関する情報のさらなる項目を決定することを可能にしてもよい。従って、例えばモデル24の抵抗26、32のR2または合計R1+R2は、病変部が組織を含む場合には細胞構造の厚さを決定するものとみなしてもよい。これを行うためには、値R2および場合によりR1を特に定位相要素のインピーダンスの決定と同時に決定して、モデル24の相関を測定されたインピーダンススペクトルによって最適化する。次いで公知の条件下、例えば生体外で値R2または合計R1+R2を対応する値と比較してもよい。これらの所定の値は特にデータストアに格納されていてもよい。
【0107】
先に述べたように、本方法はヒト対象の脈管構造の中に挿入するなど、動物対象の体内に挿入することができる装置の文脈に容易に実装することができる。
【0108】
例として、
図11は先に記載した方法を実装するためのシステムの例100を示す。
【0109】
システム100は本質的に、媒体105(例えば血液)に浸漬された病変部104(ここでは集密細胞の単層組織)のインピーダンスを測定するための手段102と、本方法を実行して測定されたインピーダンスの関数として病変部104の組織を識別するための測定手段102に接続された電子制御装置106とを備える。
【0110】
測定手段102はここでは、病変部104に接触する2つの電極110、112に接続された交流の発電機108を備える。測定手段102は、病変部104に接触している2つの電極116、118によって前記病変部104に接続された、病変部104を通る強度を決定するための装置114も備える。例えば電極110、112、116、118の端子における電圧および強度の測定から病変部104のインピーダンスを決定することができるようにするために、電子制御装置106は発電機108および強度測定装置114に接続されている。
【0111】
電極110、112、116、118は例えば金などの導電材料からなる。
【0112】
ここでは有利なことには、測定手段102は動物対象の体内に挿入することができる医療装置120、ここでは侵襲的プローブ120をさらに備える。この場合、電極110、112、116、118、交流電圧発電機および強度測定装置はこの医療装置に固定されていてもよい。
【0113】
従って、例えば工程22において病変部のインピーダンスの単一のモデルを選択することができる。この場合、多くのモデルのために最適化を行う必要はない。従って本方法は、この場合に実施がより単純であり、かつより速い。モデルがより適切であるとみなされる場合に、このように進行することが特に可能になる。
【0114】
さらに、本明細書に記載されているいくつかの例では、組織/物質の識別は本質的に実効静電容量の計算およびその予め決められた値との比較に基づいている。但し、変形として、病変部のインピーダンスの選択されたモデルのパラメータから組織/物質の識別を進めることができる。但し、単なる実効静電容量の値の比較は単純であり、かつ組織/物質の信頼性のある識別が可能にもなると思われる。
【0115】
いくつかの実施形態では、細胞識別方法10は、スペクトル全体の連続的もしくは疑似連続的な測定を行うのではなくEIS測定を行うための特定の周波数と共に構成されていてもよい。特定の周波数は、分析される場合に、異なる生体物質間の最も明確な区別を与えるインピーダンス値を生成するものであってもよい。いくつかの実施形態では、最も明確な区別は、スペクトル間での重複が僅かであるインピーダンススペクトルであってもよいが、他の実施形態では、最も明確な区別は生体物質を特定するために使用することができる値または値の範囲における最も少ない重複すなわち類似性であってもよい。例えば、実効静電容量が決定され、かつそれが生体物質を特定するかそれ以外の方法で生体物質の1つ以上の特性を決定するために使用されるいくつかの実施形態では、最も明確な区別は、異なる種類の生体物質に関連づけられている実効静電容量の値または値の範囲における最も少ない重複すなわち類似性であってもよい。
【0116】
医療装置の動作方法
医療装置、センサおよび病変部の組織/物質の検知方法の例が
図2~
図11に関して上に詳細に記載されている。そのような医療装置によって実行することができる技術および/または医療装置を動作させて実施することができる技術の例が
図12~
図16に関連して以下に記載されている。
【0117】
図12は例えば、本明細書に記載されているいくつかの技術に従って動作する医療装置によって実施することができるプロセス1200を示す。
図12の例の医療装置は、その侵襲的プローブが単一のセンサのみを備えていてもよく、そのセンサが1つまたは2つの電極を含んでいてもよい医療装置であってもよい。上記考察から理解されるはずであるように、病変部に関する限られた量の情報は、侵襲的プローブに沿って配列された複数のセンサ(例えば
図3の例のセンサ)と比較して、単一のセンサから決定されるものであってもよい。
図12の例では、本侵襲的プローブのセンサは、吸引カテーテルおよびステントリトリーバなどの治療装置および/または吸引カテーテルまたはステントリトリーバの挿入前に挿入されるガイドワイヤの中に配置されていてもよい。本医療装置は、センサを用いて決定される病変部の特性に基づいて治療法の推奨を生成してもよい。
【0118】
プロセス1200はブロック1202で開始し、このブロックではガイドワイヤに取り付けられたセンサを動作させてセンサに近接している病変部の1つ以上の特性を検出する。プロセス1200の開始前に、センサがその一部であるガイドワイヤの侵襲的プローブを動物の脈管構造の中に挿入して病変部の予測される位置に近接して移動させてもよい。次いで、センサを動作させてセンサが病変部に接触しているときを検出する。病変部の接触は、センサによって出力される値における経時的変化を評価することによって決定してもよい。例えば、センサは血液に接触している場合は1つの値を出力してもよく、これはセンサが病変部によって閉塞されていない領域において血管の中央に配置されている場合であってもよい。本侵襲的プローブを病変部に接触するまで前進させると、センサによって出力される値は接触がなされると変更するようにしてもよい。このように、単一のセンサを用いて病変部の位置を決定してもよい。さらに場合によっては、センサを動作させて、センサがもはや病変部に接触しなくなるまで本侵襲的プローブを前進させ続けることなどによって病変部の長さを決定してもよく、出力値は接触している血液に関連づけられた値に戻る。
【0119】
図12の例では、単一のセンサのみを用いる場合、本医療装置は病変部の組成を知ることができず、特定の病変部を治療するためにどの治療選択肢が最良であり得るかに関して治療法の推奨を行うことができない場合がある。しかし、本医療装置は治療の進行または成功に関する情報を生成することができる場合があり、これを使用して選択された治療選択肢が成功しているかを決定してもよい。この情報に基づいて、本医療装置は、行われている治療を別の治療に変更するかに関する治療法の推奨を生成してもよい。
【0120】
図12などの実施形態に実装することができる1つの治療プロトコルでは、吸引カテーテルを病変部の治療のための第1の選択肢として使用することができる。従って、ブロック1204では、吸引カテーテルをガイドワイヤの本侵襲的プローブに近接して位置するまで脈管構造の中に挿入し、このようにして病変部に近接して位置させる。いくつかの実施形態では、ブロック1202においてガイドワイヤを最初に挿入することができないが、吸引カテーテルを病変部に近接して位置するまで挿入することができる。そのような場合には、センサは吸引カテーテルの構成要素であってもよい。当該実施形態はこの点に関して限定されない。
【0121】
ブロック1204では、吸引カテーテルを病変部に近接して配置した後、吸引カテーテルを動作させて病変部をカテーテルの中に吸引することを試みる。暫くした後、ガイドワイヤおよび/または吸引カテーテルのセンサを動作させて、吸引カテーテルが病変部に対して効果を生じているかを決定する。硬い病変部などのいくつかの病変部は吸引カテーテルを用いて吸引することができない場合がある。これらの病変部の場合、他の介入(ステントリトリーバなど)を使用してもよい。従って、ブロック1204では、吸引カテーテルを動作させて吸引することを試みることに加えて、センサを動作させて病変部において変化が認められたかを決定してもよい。これは、例えば吸引の開始前にセンサを吸引カテーテルに最も近い病変部の一部などの病変部の中に位置決めし、かつ暫くした後にセンサによって出力された値がセンサがもはや病変部に接触していないこと(および、それどころか例えば血液に接触していること)を示しているかを決定することによって行ってもよい。
【0122】
吸引カテーテルの動作の間に(および潜在的にその結果として)センサがもはや病変部に接触していない場合、ブロック1206では病変部が吸引されているという決定を行ってもよい。この場合、吸引カテーテルが病変部を上手く治療しているようであること、および吸引カテーテルの動作の継続が推奨されるということを示す治療法の推奨を生成および出力してもよい。
図12の例では、次いでプロセス1200は終了する。但し当然のことながら、いくつかの実施形態では長い期間をかけて吸引カテーテルが病変部を上手く治療しているについて連続した決定を行ってもよく、その結果、適当であれば変更を推奨したり、あるいは病変部が完全に吸引されたときの決定を行ったりしてもよい。
【0123】
但しセンサによって出力された値が吸引中に変化せず、かつ吸引が病変部に対して効果を生じていないことを示す場合、治療法の推奨を生成し、かつ吸引カテーテルがもはや推奨されず、かつ代わりに別の治療選択肢が推奨されるという出力を行ってもよい。
図12の例では、病変部の治療のための第2の選択肢はステントリトリーバであってもよい。従って、ブロック1208では、ステントリトリーバを使用するための推奨が出力されてもよい。ブロック1210では、ステントリトリーバを動作させて、病変部をステントリトリーバで除去することによってそれを治療する。例えば、ステントリトリーバを病変部に近接して位置するまで挿入してもよい。いくつかの実施形態では、上で考察したように、検出を行うセンサは治療装置とは別個のガイドワイヤの構成要素であってもよい。そのような場合には、吸引カテーテルの除去後にステントリトリーバが病変部に近接して位置するまでステントリトリーバをガイドワイヤに沿って挿入してもよい(またはガイドワイヤの除去後にガイドワイヤに沿って挿入されたマイクロカテーテルに沿って挿入してもよい)。別の例として、センサはステントリトリーバと一体化されていてもよく、かつステントリトリーバが病変部に近接して位置しているときを検出してもよい。本医療装置は、センサを用いて生成された値を介して、病変部の除去のためにステントリトリーバの位置決めに関する治療法の推奨を生成してもよい。例えば、センサを上で考察したように使用して、侵襲的プローブが病変部を横切り、かつ本侵襲的プローブの遠位端が病変部の遠い側に位置しているときを検出してもよい。ステントの一端が病変部を超えて突出して、病変部がステントによって完全に捕捉されることを確実にするのを支援するように、ステントリトリーバのステントを病変部を横切るように配置することが最良であり得る。従って、センサを動作させて病変部の遠い側を検出し、かつステントまたはセンサが病変部を通って延在するまでステントリトリーバを挿入することを推奨することによって、ステントの適切な位置決めに関して治療法の推奨を行ってもよい。
【0124】
ブロック1210でステントリトリーバを動作させて病変部を除去したら、プロセス1200は終了する。
【0125】
図13は、別の実施形態に従って医療装置を動作させて病変部のための治療法の推奨を生成する方法の例を示す。
図13の実施形態では、侵襲的プローブは、上で考察した
図3の例と同様にプローブの外面に沿って配列された複数のセンサを備えていてもよい。上記から理解されるはずであるように、そのようなセンサの配列により、病変部の組成などの病変部のいくつかの異なる特性を決定してもよい。病変部の組成は、異なる組織または細胞あるいはプラーク物質などの他の生体物質などの病変部に存在する異なる生体物質を示すことができる。いくつかのそのような実施形態では、例えば、各センサ(例えば、各センサの2つの電極)は、他のセンサが接触するよりもいくつかのセンサが病変部の異なる生体物質に接触している状態で病変部の生体物質に接触していてもよい。次いで、各センサを本明細書に記載されている技術に従って動作させて、センサによって接触されている生体物質のインピーダンススペクトルを決定してもよい。次いで、このインピーダンススペクトルのセットを使用して、病変部に存在する異なる生体物質を特定することなどによって病変部の組成を決定してもよい。この組成情報は、病変部に対して組織診断を行うことにより決定することができる情報と同様であってもよい。病変部の異なるインピーダンススペクトルおよび/または病変部に存在する異なる生体物質(例えば、異なる組織またはプラーク物質)の識別から、病変部の種類を特定(例えば診断)することなどによって全体としての病変部の特性を決定してもよい。
【0126】
例えば、病変部の異なる生体物質に対してEISプロセスを行うことによって、以下の細胞または組織:血小板、フィブリン、血栓、赤血球、白血球、平滑筋細胞、弾性線維、外弾性板、内弾性板、疎性結合組織、内皮細胞、あるいは内膜、中膜または外膜のあらゆる他の組織のいずれかが病変部に存在することを決定してもよい。また、病変部に対してEISプロセスを行うことによって、存在する細胞または組織のそれぞれの相対量を決定してもよい。簡単な例として、病変部が50%の赤血球、30%の白血球および20%の血小板で構成されていることを決定してもよい。この情報から、病変部を他の種類の病変部ではなく1つの種類の病変部であると診断することなどによって、当該病変部を病変部のセットから1つの特定の種類の病変部として分類してもよい。
【0127】
図13のプロセス1300はブロック1302で開始し、このブロックでは医療装置の侵襲的プローブを動物対象の脈管構造の中に挿入し、かつ病変部の組成などの1つまたは複数の病変部の特性を検出する。組成などの特性に基づいて、本医療装置はブロック1304で治療選択肢を選択して推奨してもよい。本医療装置は、
図14~
図15Bに関連して以下に説明されている技術に従うなどの任意の好適な方法で治療選択肢を選択してもよい。
【0128】
選択される治療選択肢は病変部の組成に基づいて選択してもよい。例えば、病変部の組成が血栓ではなく平滑筋組織からなることを示す場合、本医療装置はステントの埋め込みが推奨されるべき治療であることを決定してもよい。これは、病変部が抜き出すことができる細胞/物質で構成されておらず、代わりに血管内での増殖であるという理由であってもよい。別の例として、病変部の組成が新しく形成された血栓で作られた柔軟な病変部などの柔軟な病変部であることを示す場合、本医療装置は吸引カテーテルを推奨してもよい。これは、柔軟な病変部は吸引することができるという理由であってもよい。さらなる例として、病変部の組成が硬い血餅などの硬い病変部であることを示す場合、硬い病変部は上手く吸引される可能性が低いため、本医療装置はステントリトリーバを推奨してもよい。
【0129】
ブロック1304で治療が推奨されると、ブロック1306において本医療装置は選択された治療選択肢の遂行を監視してもよい。本医療装置は、ブロック1302においてそれにより特性が決定された1つ以上のセンサまたは治療を行うために動作される治療装置の1つ以上のセンサなどの1つ以上のセンサを用いて治療を監視してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、ブロック1304の推奨後に、臨床医は、対象の脈管構造の中に別の装置(例えば、必要に応じて吸引カテーテル、ステントリトリーバなど)を挿入してもよく、他の装置は本明細書に記載されているセンサの構成を有する侵襲的プローブを備えていてもよい。そのような実施形態では、本医療装置は他の装置の侵襲的プローブのセンサを用いて治療の遂行を監視してもよい。
【0130】
ブロック1306における治療の監視により、治療の状況および/または進行に関する情報を生成してもよい。例えば、治療が吸引カテーテルで行われている場合、監視により病変部が吸引された程度および/または吸引された病変部の残りの量に関する情報を生成してもよい。例えば構造体(例えば、
図3のステント様メッシュ)を定期的または時々膨張させてセンサにより病変部の残りの部分に接触して残っている病変部の程度を決定する本医療装置によって、その進行を監視してもよい。決定を行った後にその構造体を除去して、病変部の吸引を継続してもよい。他方で、治療がステントリトリーバで行われている場合、その監視によりステントの膨張中にステントが病変部と合体した程度に関する情報を生成してもよい。例えば、ステントの外面に沿ったセンサ(例えば、
図3の例のようなステント上のセンサの構成を有する)を監視することによって、各センサに対応するステントの各部が病変部の中に完全に拡げられているかについての決定を行ってもよい。この決定は、各センサによって生成された値の経時的な変化を監視し、かつ各センサの値が変化しなくなるときを決定することなどによる任意の好適な方法で行ってもよい。各センサの値が変化しなくなった場合、これは病変部とステントとの相互作用におけるさらなる変化が存在せず、従ってステントは病変部の中に完全に拡げられており、かつ病変部はステントの周りに合体されていることを示してもよい。
【0131】
そのような決定を行うことにより病変部の治療の遂行を支援してもよい。従って、ブロック1308では、治療の状況に関する情報は臨床医への提示のためにユーザインタフェースを介して本医療装置によって出力される。またブロック1310では、本医療装置は、治療を実施するための方法に関する1つ以上の治療法の推奨を生成してもよい。例えば、本医療装置が上で考察したようにステントリトリーバの動作中に病変部がステントに完全に合体されていることを決定した場合、本医療装置はステントの抜き出しを開始するという治療法の推奨を出力してもよい。
【0132】
治療が上手く行われたらプロセス1300は終了する。
【0133】
治療を監視するという例は治療法の推奨を生成するという文脈において示されているが、当然のことながら同様の技術を使用して治療の状況に関して臨床医にエラーメッセージまたは他のメッセージを送ってもよい。例えば、治療装置上のセンサが暫くの間は病変部の存在を示したが、その後にセンサがもはや病変部を検出しない場合、本医療装置は治療装置が不適切に位置決めされていること、または病変部が喪失されたことを決定してもよい。これにより本装置を再位置決めする必要があること、または潜在的にさらに問題なことに病変部が塞栓症になったことを示してもよい。ユーザインタフェースを介した臨床医へのメッセージはそのような潜在的な問題を示してもよい。
【0134】
さらに、
図13の例は医療装置を動作させて、治療の最初の選択に関する推奨およびその後のその治療の実施方法に関する推奨の両方の治療法の推奨を提供する方法について記載するものであったが、当然のことながら上記から当該実施形態はそのように限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、医療装置は、本明細書に記載されている1つ以上のセンサを備えていてもよく、かつその装置を使用するための最初の推奨を生成することなく、その装置の動作方法に関する治療法の推奨を生成するために動作させてもよい。例えば、ステントリトリーバまたは吸引カテーテルは、上で考察したように治療の状況または遂行に関するデータを生成するための1つ以上のセンサを備えていてもよく、かつ治療法の推奨を生成するものであってもよい。別の例として、慢性完全閉塞(CTO)の治療のためのガイドワイヤは、センサによって接触される組織/物質に関する情報を生成し、かつ治療法の推奨を生成するものであってもよい。CTO処置では、固まった血栓に貫通させることができない場合にガイドワイヤを平滑筋組織または血管のプラークに挿通させてもよい。センサによって接触された組織/物質の検知された特性に基づいて、ガイドワイヤが平滑筋組織に接触して位置していて前進させることができるとき、およびガイドワイヤが内皮組織を通って前進させられて病変部の遠い側において再び血管の中にあるときに関して治療法の推奨を行ってもよい。また、いくつかの実施形態では、平滑筋組織の厚さまたは血管壁の他の特性について1つ以上の測定を行ってもよく、これはガイドワイヤが組織を通してナビケートするのではなく組織を穿刺するというリスクに関する情報を与えるものであってもよい。例えば、ある測定がガイドワイヤの侵襲的プローブの片側における平滑筋組織の薄さを示す場合、これは本侵襲的プローブが血管壁を穿刺するリスクがあるということを示してもよい。ガイドワイヤをよりゆっくりと前進させ、かつ/または回収するための治療法の推奨を行ってもよく、あるいは別の推奨を生成してもよい。
【0135】
当業者であれば本明細中の考察から、医療装置を病変部の特性および/または治療の状況に基づいて治療法の推奨を生成するように構成することができる様々な方法があることを理解するであろう。
図14~
図15Bは、治療法の推奨を生成するために使用することができる技術の一例を示す。
【0136】
図14は、治療法の推奨を生成するためのいくつかの実施形態における医療装置によって実行することができるプロセス1400を示す。
【0137】
プロセス1400はブロック1402で開始し、このブロックでは本医療装置は病変部の1つ以上の特性を受信する。本医療装置は、本医療装置の侵襲的プローブに含まれる1つ以上のセンサを用い、かつ/またはセンサによって生成されたデータに基づいて特性を生成する別の構成要素(例えば、病変部分析機構)によって当該特性を決定する場合などでは、本医療装置の構成要素から当該特性を受信してもよい。当該特性は、いくつかの実施形態では病変部の組成を含んでもよい。当該特性は、追加または代わりとして、体内での病変部の位置、病変部の1つ以上の寸法(例えば、長さ、厚さなど)、病変部の温度または上記センサの種類に基づいて決定することができる他の情報を含んでもよい。
【0138】
ブロック1404では、本医療装置は、ブロック1402で受信した特性を1つ以上の治療選択肢の1つ以上の条件と比較する。本医療装置は複数の異なる利用可能な治療選択肢に関する情報と共に構成されていてもよく、その治療選択肢はそれぞれ、病変部の1つ以上の特性に関する1つ以上の条件に関連づけられていてもよい。例えば本医療装置は、ステントの埋め込みによる病変部の治療のための1つ以上の条件、吸引カテーテルを使用するための1つ以上の異なる条件およびステントリトリーバを使用するための1つ以上のさらなる異なる条件と共に構成されていてもよい。病変部の組成に関するそのような条件の例は
図13に関連して上に記載されている。
【0139】
本医療装置は、病変部の特性をどの条件が満たされているかを決定するための条件と比較してもよい。いくつかの実施形態では、治療選択肢の条件のセットは、病変部がたった1つの条件のセットを満たすことができ、故にたった1つの治療選択肢を選択することができるような相互に排他的なものであってもよい。他の実施形態では、条件のセットは相互に排他的なものでなくてもよく、本医療装置は、最も対応する条件が満たされるもの、または対応する条件が最も近く満たされるもの(例えば、条件が様々な値に関連づけられている場合、値が例えば範囲の中央に含まれることによってその範囲に最も近く一致する条件)を特定することによって、どの治療選択肢を推奨するかを決定してもよい。
【0140】
ブロック1406では、本医療装置はその比較に基づいて、本医療装置のユーザインタフェースを介して治療選択肢の推奨を出力してもよく、そしてプロセス1400は終了する。
【0141】
プロセス1400は病変部の特性に基づいて病変部の治療のための最初の治療法の推奨を生成することに関連して記載されているが、当業者であればブロック1310に関連して上に説明したように、当該技術を治療の遂行中に治療法の推奨の生成まで拡張させる方法を理解しているであろう。例えば、いくつかの実施形態では、病変部の特性(例えば病変部の組成)とステントリトリーバのステントを抜き出す速度などの治療の特定のパラメータのための1つ以上の条件との比較に基づいて、本医療装置はそのようなパラメータに関する推奨を出力してもよい。
【0142】
当業者であれば、
図14のプロセス1400のようなプロセスに関連して使用することができる治療選択肢の条件を設定するための多くの方法が存在するということを理解しているであろう。例えば、条件として使用するための病変部の特性の値は、その値間の一致、病変部の種類および各種治療選択肢による治療の成功を決定するための少なくともいくつかの実験法の後に医療装置の中にハードコードされていてもよい。但し、本発明者らは、病変部の特性および他の情報のうち病変部の治療の成功に関する情報に基づいてそのような関係および条件を学習するためのシステムの利点を認識および理解している。例えば、特徴抽出および/または分類を含むことができるような機械学習プロセスがいくつかの実施形態に実装されていてもよい。
【0143】
図15A~
図15Bは、いくつかの実施形態で実施することができる機械学習プロセスの例を示す。
図15Aは、医療装置によって実行することができるプロセスを示し、
図15Bは、複数の異なる医療装置と通信している計算装置(例えばサーバ)によって実行することができるプロセスを示す。
【0144】
図15Aのプロセス1500はブロック1502で開始し、このブロックでは医療装置は病変部の特性に関する情報を生成する。ブロック1504および1506では、本医療装置は病変部の特性と治療選択肢の条件との比較に基づいて治療選択肢に関する推奨を行い、治療の進行を監視し、かつ治療全体を通した状況情報を生成してもよい。ブロック1502~1506のこれらの動作は、
図13~
図14に関連して上に説明した方法(故に簡潔のためにさらに説明しない)と同様に実行してもよい。またブロック1506では、本医療装置は治療の結果に関する情報を生成してもよい。治療の結果は、病変部が上手く治療されたか、病変部が外れて対象の体内に放出されたか、複数回の治療が必要であったか、または結果を示す他の情報を示してもよい。上記から理解されるはずであるように、結果を示す情報は本医療装置のセンサを用いて生成されてもよい。例えば、本医療装置のハンドル内の加速度計によって生成されるデータを用いて、本医療装置は病変部を除去するために複数回動作されたかを決定してもよい。別の例として、上で考察したようにセンサが病変部を検出し、次いで病変部を検出することを止めた場合、これは病変部が外れて塞栓症になったことなどの病変部が対象の体内で移動したという表示であってもよい。
【0145】
ブロック1508では、ブロック1502~1506で生成された情報が本医療装置から1つ以上の有線および/または無線通信接続および/またはインターネットなどのネットワークを介して計算装置に伝送される。計算装置は、いくつかの実施形態では本医療装置から地理的に離れていてもよい。ブロック1508では、ブロック1506での伝送後に本医療装置は計算装置から(ブロック1508において情報が伝送されるネットワークなどを介して)治療選択肢の1つ以上の更新された条件を受信する。更新された条件により、病変部の特性に関する条件の評価のための新しい値を特定してもよい。本医療装置はそれ自体を、
図14に関連して上で考察したようなプロセスの文脈において1つ以上の更新された条件を検討することなどによって、治療法の推奨の生成のための1つ以上の更新された条件を適用するように構成してもよい。本医療装置が更新された条件と共に構成されたらプロセス1500は終了する。
【0146】
図15Bは、病変部の治療に関するレポートに基づいて学習プロセスを実施して、
図14に関連して上で考察したようなプロセスなどにより治療法の推奨の選択に使用するための条件を生成するために計算装置によって実行することができるプロセスを示す。具体的には
図15Bの例では、計算装置は、それらの病変部の特性に関する情報に関連する病変部の治療に関するレポートを分析して、成功した(および/または成功しなかった)治療と病変部の特性との関係を特定する。そのような関係の特定により、特定の種類の病変部に対してどの治療選択肢が最良であるかについての結論を引き出してもよく、それらの結論に基づいて、
図14の例と同様に特定の病変部の治療のためにその病変部の特性に基づいて治療法の推奨を生成してもよい。同様に上で考察したように、治療の状況または遂行に関する情報に基づいて、治療を実施する方法に関する推奨(例えば、ステントの回収中にステントを引き抜く時間または速度)を決定してもよい。
図15Bの例は、病変部の特性に基づいて病変部のために使用するための治療選択肢の最初の選択のための条件を生成するという文脈において記載されているが、当業者であれば以下の説明から、治療を実施するための方法に関する推奨を生成する際に使用するための技術を拡張する方法を理解するであろう。
【0147】
本発明者らは、そのような条件の生成ならびに成功した治療/成功しなかった治療と病変部の特性との関係の識別は、機械学習プロセスを用いて決定することができると有利であることを認識および理解している。各種機械学習アルゴリズムが当該技術分野で知られており、この文脈で使用するのに適し得る。いくつかの機械学習アルゴリズムは特徴抽出および分類技術に基づいて動作してもよく、このアルゴリズムでは、ユニットのためのグループ(分類)が特定され、かつどの特性および/またはそれらの特性の値が最も近く一致するかを決定するため、あるいはグループの正しい成員を予測するためにユニットの特性分析が行われる。これらの特定された特性に基づいて、そのような特性を有するその後に受信された未分類のユニットを未分類のユニットの特性および/または当該特性の値と各群の特性/値との比較に基づいてグループ/分類の1つに「分類」することができる。いくつかの機械学習アプリケーションでは、機械学習プロセスの構成中にグループ/分類を手動で特定してもよい。追加で、あるいは他のグループにおいて、機械学習プロセスがその分析を通して新しいグループ化によりいくつかのユニットをより良好に特性評価することができることを認知した際に新しいグループ/分類を作成することなどにより、機械学習プロセスによって長い期間をかけてグループ/分類を決定または調節してもよい。機械学習の十分な考察は本明細書の範囲外であり、本明細書に記載されている技術の理解のために必要ではない。当業者であれば、本明細書に記載されている情報および目標と共に使用するための機械学習技術の実装方法を理解しているであろう。
【0148】
ここでは、グループは治療選択肢または治療結果として定められてもよく、
図15Bの例はこの文脈において記載されている。この場合、グループは病変部の特性および/または治療の状態によって定められてもよい。この場合、病変部の特性および/または治療の状況がグループの特性に一致する場合、対応する治療選択肢が出力のために選択されてもよい。追加または代わりとして、いくつかの実施形態では、グループが異なる種類の病変部(各種類が他の種類とは異なる1つ以上の特性または特性の範囲を有する)および/または治療の状況に関連づけられていてもよく、次いで、これらの異なるグループは特定の治療選択肢または治療装置を動作させるための方法と関連づけられていてもよい。この後者の事例では、特定の病変部の特性または治療の状況がグループに一致する場合、グループのための対応する治療法の推奨が出力のために選択されてもよい。
【0149】
図15Bのプロセス1520はブロック1522で開始し、このブロックでは1つ以上の計算装置上で実行されている学習機構は、長い期間をかけて医療装置による病変部の治療に関する複数のレポートを受信する。本医療装置は上記実施形態に従って動作する医療装置であってもよい。これらのレポートは、病変部の1つ以上の特性などの治療される病変部に関する情報を含んでいてもよい。これらのレポートは、1つ以上の治療装置を動作させて病変部を治療したことやそれらの病変部を治療した方法などの病変部を治療した方法に関する情報も含んでもいてもよい。また治療が成功したか、複数回の治療が必要であったか、病変部が外れて塞栓症になったか、または他の結果などの治療の結果に関する情報がレポートに含まれていてもよい。
【0150】
これらのレポートは、センサの例および上に記載されている情報の種類などの医療装置の1つ以上のセンサによって決定される情報を含んでいてもよい。上で考察したように、1つ以上の電気センサ、機械センサ、光センサ、生物学的センサまたは化学センサなどの各種センサが当該実施形態に含まれてもよい。そのようなセンサの具体例としては、インダクタンスセンサ、静電容量センサ、インピーダンスセンサ、EISセンサ、電気インピーダンス断層撮影(EIT)センサ、圧力センサ、流量センサ、剪断応力センサ、機械的応力センサ、変形センサ、温度センサ、pHセンサ、化学組成センサ(例えば、O2イオン、バイオマーカまたは他の組成物)、加速度センサおよび運動センサが挙げられる。当然のことながら、これらのセンサから各種特性または他の情報が生成されてもよい。これらの情報のいずれかがレポートに含まれ、かつ治療法の推奨に関連づけられた条件を生成するためにプロセス1520において使用されてもよい。例えば、上で考察したように、医療装置のハンドル内に配置された加速度計は、本医療装置の移動を追跡し、かつ複数回の治療を行って血餅を治療したかを決定するために使用されてもよい。別の例として、力センサはステントリトリーバを抜き出す力を示してもよく、あるいはインピーダンスセンサのセットは、ステントリトリーバのステントの1つ以上のセンサにおいて検出されたインピーダンスが抜き出しの間に経時的に変化するかに基づいて、回収中に病変部が部分的または完全にステントから分離しているかを決定してもよい。当業者であれば上記考察から、そのようなレポートに含めるために異なる種類のデータが医療装置のセンサによって生成され得ることを理解するであろう。
【0151】
レポートは、臨床医によって入力することができる情報または本医療装置と同時に使用することができる別のシステムから取り出すことができる情報も含んでいてもよい。例えば、これらのレポートは、病変部が頭蓋動脈、大腿動脈、肺静脈、総胆管または他の管内にあるかなどの対象の解剖学的構造内の病変部の位置に関する情報を含んでいてもよい。この情報はユーザインタフェースを介して臨床医によって入力されるか、例えば血管造影装置などの別のシステムから取り出されてもよい。
【0152】
ブロック1522で受信されたレポートは、長い期間をかけて複数の医療装置から受信されてもよく、これらの医療装置は地理的に分散されていてもよい。これらのレポートおよびこれらのレポートの内容を受信することによって、長い期間をかけて条件のセットおよび推奨される治療法、すなわち最良の実践を定める治療法の推奨が生成されてもよい。
【0153】
従ってブロック1524では、学習機構はこれらのレポート内の情報を分析して、病変部の特性(および/または治療装置の動作方法)とそれらの特性を有する病変部を治療するための選択肢と成功した治療との関係を特定する。この分析に基づいて、学習機構はこれらの情報間の関係を学習してもよい。そのような関係は、特定の治療選択肢が成功または不成功であるとき、または異なる治療選択肢がどの種類の病変部に対して成功または不成功であるかを示してもよい。
【0154】
ブロック1524におけるこの分析に基づいて、学習機構(機械学習プロセスの特徴抽出および分類プロセスによる)はブロック1526において治療選択肢のそれぞれの条件を生成してもよい。各治療選択肢により上手く治療することができる病変部の異なる特性または特性の範囲を示すように、これらの条件は病変部の特性に関連づけられていてもよい。例えば、条件は病変部の粘弾性特性の値の範囲に関するものであってもよく、従って、1つの範囲にある粘弾性は吸引カテーテルを用いる治療に関連づけられていてもよく、かつ別の範囲にある粘弾性はステントリトリーバを用いる治療に関連づけられていてもよい。このように、特有の粘弾性を有する病変部が検出された場合、これらの条件との比較を使用して(
図14のプロセスと同様)、その特定の病変部のためにどの治療選択肢を推奨するかを決定してもよい。
【0155】
ブロック1528では、ブロック1526で条件が生成されたら、
図15Aに関連して上で考察したように、本装置をそれらの条件を使用して治療法の推奨を生成するように構成することができるように、これらの条件を医療装置に配信してもよい。これらの条件を配信したらプロセス1520は終了する。
【0156】
プロセス1520は離散プロセスとして
図15Bで考察されているが、当然のことながら、いくつかの実施形態ではレポートの受信および条件の決定は連続的または離散間隔を含む長い期間をかけて繰り返されるプロセスであってもよい。従って、いくつかの実施形態ではプロセス1520を複数回行ってもよく、あるいはブロック1528での条件の配信後に学習機構をブロック1522に戻して、さらなるレポートを受信して学習プロセスを継続してもよい。
【0157】
診断および/または治療中に治療法の推奨を提供することを含む、病変部の診断および/または治療中に臨床医にフィードバックを与えるための装置およびプロセスの例が上に示されている。いくつかの実施形態では、診断および/または治療中にそのようなフィードバックを提供することに追加するかその代わりとして、医療装置は、診断/治療における本医療装置の動作の後に臨床医に診断および/または治療に関する情報を提供するように構成されていてもよい。
図16はそのようなプロセスの例を示す。
【0158】
プロセス1600はブロック1602、1604で開始し、このブロックでは、医療装置を動作させて病変部の特性および治療の遂行に関する情報ならびに治療を実施するための方法に関する推奨を生成する。ブロック1602、1604の動作は上で考察したデータの生成の例と同様であってもよい。
【0159】
ブロック1606では、治療後にブロック1602、1604で生成された情報は、治療の履歴を生成するための履歴生成機構によって使用される。治療の履歴は、装置が長い期間をかけてどのように動作されたか、病変部のどんな特性が検出されたか、本医療装置によってどんな推奨が作成されたか、およびそれらの推奨が臨床医によって従われたかに関する情報を含んでもよい。治療において、例えば塞栓症の形成を引き起こした病変部の一部または全体の喪失またはその後の治療の必要性などのエラーが検出された場合、履歴生成機構はそのエラーを分析してエラーの原因を決定してもよい。例えば、センサが暫くの間病変部の一部がステントリトリーバから分離したことを検出し、かつその時間の直前に別のセンサがステントリトリーバへの突然の力の印加に気づいた場合、履歴生成機構は履歴にこれを記録してもよい。ステントリトリーバに印加される力が本医療装置からの最大の力推奨を超えた場合、または本医療装置が治療法の推奨に一致しない任意の他の方法で動作された場合、これが履歴に記録されてもよい。そのような情報が履歴に含まれる場合、将来の処置においてエラーを回避する方法に関する推奨が臨床医に行われてもよい。
【0160】
また、いくつかの実施形態では、履歴生成機構は、臨床医が病変部を診断するのを支援するために、病変部に関する詳細情報および病変部の潜在的な原因を履歴に含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態では、治療中に病変部の簡単な特性評価(例えば、病変部が粘性である)が出力されてもよく、履歴内の組成に関するより詳細な情報(例えば、病変部が主としてコレステロールからなる)が出力されてもよい。また履歴生成機構は、対象の体内における病変部の位置の文脈において組成を分析して、病変部が例えば外傷、病変部の部位において発生した血栓または病変部の部位で詰まっている塞栓症の結果であるかを決定してもよい。例えば、病変部が主として平滑筋細胞またはアテロームのような組織からなる場合、病変部は外傷後の部位における増殖であってもよい。別の例として、病変部の組成がそれが高剪断応力を有する解剖学的構造の領域に形成されたがその病変部が低い剪断応力を有する解剖学的構造の領域に位置していることを示した場合、これは当該病変部がその部位で詰まっている塞栓症であったことを示してもよい。
【0161】
ブロック1606において履歴が生成されたら、ユーザへの提示のために履歴が出力され(例えば表示装置を介して、あるいはメモリに格納されるか、ネットワークを介して伝送され)、プロセス1600は終了する。
【実施例0162】
以下に医療装置および技術を使用することができる状況の各種例が記載されている。但し当然のことながら、当該実施形態はこれらの例のいずれか1つに従って動作させることに限定されない。
【0163】
実施例1
本明細書に記載されている技術を使用することができる方法の一例は、侵襲的スマートガイドワイヤを用いるものである。侵襲的ガイドワイヤは血管系をナビゲートする際に使用することができる。本明細書に記載されているセンサおよび分析技術を用いて、侵襲的ガイドワイヤはそれが接触している組織/物質を特性評価し、この組織/物質の特性を臨床医に伝えてもよい。また侵襲的ガイドワイヤはさらなる装置が患者の体内の介入部位に到達するのを支援してもよい。
【0164】
この例では、ガイドワイヤはセンサ(好ましくはEISセンサ)、インピーダンス分光計およびハンドルを備える。ガイドワイヤは使用中にその長さに沿って挿入することができるさらなる構成要素も備えていてもよい。センサを使用してそれが接触している組織/物質の特性を検知および特性評価してもよい。例えば高周波インピーダンス測定を行うためにインピーダンス分光計と共に使用される場合、センサを使用して組織/物質の組成を決定してもよい。センサをインピーダンス分光計に接続する長い電線を必要とすることなく先端に隣接する組織を特性評価することができるように、センサおよびインピーダンス分光計はどちらも優先的にガイドワイヤの侵襲的先端に位置している。この設計により、インピーダンス分光計が対象の体外に位置している場合にそうしなければ電気信号の中に挿入されることがある電子ノイズを減らしてもよい。
【0165】
ハンドルは、ユーザと通信し、外科手術の間および後の両方にデータを記録および伝送し、データを処理し、かつ本装置に電力を供給するための構成要素などのさらなる構成要素を備えていてもよい。そのような構成要素の例としては、表示装置またはユーザによって読取り可能な表示灯などのフィードバック装置、無線またはケーブルのいずれかを介してデータを伝送するための装置、データベース、プロセッサおよび電池が挙げられる。ハンドルは他の装置構成要素から取外し可能であってもよく、またガイドワイヤ自体の上にある回路に取り外し可能に接続されていてもよい。
【0166】
実施例2
実施例1に記載されているガイドワイヤを臨床医が使用して動脈閉塞に罹患している患者のために最適な治療戦略を決定してもよい。臨床医はガイドワイヤを使用して動脈を閉塞している組織/物質を特性評価し、次いでこの情報に基づいて異なる可能な治療のいずれかを選択することができる。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤはそれが行った1つ以上の特性評価に基づき、かつ任意にガイドワイヤの助けを借りて行われた以前の治療からのデータに基づいて臨床医に治療法の推奨を提供してもよい。
【0167】
この例では、臨床医はガイドワイヤを使用して動脈の病変部を評価および治療することができる。臨床医は、任意にハンドルを用いてガイドワイヤを血栓部位まで導き、次いで血栓に貫入させることによって開始することができる。次に、臨床医はガイドワイヤを使用して、動脈を閉塞している血栓および/または組織/物質の組成の測定を行ってもよい。次いで、臨床医はこの測定の結果に基づいて、動脈閉塞のために最適な治療を決定することができる。例えば臨床医は、閉塞している組織が患者の動脈壁からの細胞からなる場合に、ステント留置装置を使用することを決定してもよい。閉塞している組織が血栓である場合、臨床医は代わりにその粘弾性特性を測定することを決定し、次いでこの情報に基づいて血栓を除去するために吸引カテーテルを使用するかステントを使用するかを決定することができる。
【0168】
いくつかの実施形態では、臨床医はガイドワイヤから治療法の推奨を受信してもよい。治療法の推奨は、動脈の病変部に対してガイドワイヤによって行われる特性評価に基づいていてもよく、かつ/またはガイドワイヤの以前の使用中に収集されたデータに基づいていてもよい。
【0169】
治療の終了時に、臨床医はハンドルをガイドワイヤから除去して、ガイドワイヤの助けを借りて適当な介入装置を挿入してもよい。
【0170】
実施例3
本明細書に記載されている技術に従って使用することができる装置のさらなる例はスマートステントリトリーバである。ステントリトリーバを使用して患者から血餅を回収してもよい。本明細書に記載されているセンサおよび分析技術を用いて、侵襲的ステントリトリーバによりそれが接触している血餅を特性評価し、この組織/物質の特性を臨床医に伝えてもよい。
【0171】
この例では、ステントリトリーバは、少なくとも1つのセンサ(好ましくは少なくとも1つのEISセンサおよび/またはEITセンサ)、測定装置およびハンドルを備える。血餅内の複数の位置からそれが接触している血餅に関する情報を得ることができるように、ステントリトリーバは複数の戦略的位置に複数のセンサを備えていてよい。ステントリトリーバが2つ以上のセンサを備える場合、センサは、それが接触している血餅の異なる特性を検知可能であってもよい。例えばステントリトリーバは、血餅とステントリトリーバとの統合を検知することができる1つ以上のセンサ、時間の関数としてステントリトリーバの位置を検知することができる1つ以上のセンサ、および/または血餅に印加される力を検知することができる1つ以上のセンサを備えていてもよい。時間の関数としてステントのインダクタンスおよび/またはEIT信号を検知することによってステントリトリーバと血餅との統合を決定してもよい。ステントのインダクタンスおよびEIT値はステントの拡張および周囲環境によって異なるため、これらの特性の一定値はステントが最大の拡張および血餅への統合に達したことを示す。運動センサを使用して、時間の関数としてステントリトリーバの位置を検知してもよい。この特徴により臨床医は患者の体内でのステントリトリーバの動きを理解し、かつ血餅の回収中にステントリトリーバが行った通過の数を決定することができる。また、血餅または組織/物質に対してステントリトリーバによって印加された力を測定するために応力センサも含められていてもよい。
【0172】
ステントリトリーバの測定装置はインピーダンス分光計および/または断層撮影装置であってもよい。センサを測定装置に接続する長い電線を必要とすることなくステントリトリーバに隣接する血餅を特性評価することができるように、この装置を優先的にステントリトリーバの先端の近く位置づける。この設計により、インピーダンス分光計が対象の体外に位置している場合にそうしなければ電気信号に挿入されることがある電子ノイズを減らしてもよい。
【0173】
ハンドルは、実施例1に記載されているようにさらなる構成要素を備えていてもよい。ハンドルは、血餅の正確かつ自動化された回収を可能にするようなロボット化された引き抜き機構を備えることもできる。
【0174】
実施例4
臨床医は、実施例1に記載されているガイドワイヤおよび実施例3に記載されているステントリトリーバを一緒に使用して動脈閉塞に罹患している患者のために最適な治療戦略を決定および実行してもよい。臨床医はガイドワイヤを使用して動脈を閉塞している組織/物質を特性評価し、次いでステントリトリーバを使用して血餅および/または血栓を回収することができる。任意に血餅回収中にデータを収集し、後での分析のためにデータベースにアップロードすることができる。
【0175】
この例では、臨床医は、スマート装置の組み合わせを使用して動脈閉塞に罹患している患者を治療することができる。臨床医はシースを有するガイドワイヤを挿入し、かつガイドワイヤ(上で考察したように侵襲的プローブを備える)を用いて実施例2に記載されているように病変部を評価することによって開始してもよい。臨床医が次にガイドワイヤによって提供された情報および/または推奨に基づいてステントリトリーバを使用することを決定した場合、臨床医はガイドワイヤを除去してシースを適所に残し、ステントリトリーバをシースに沿って挿入し、それを血餅および/または血栓の中に導く。ステントが血餅および/または血栓に貫入すると、ステントリトリーバの中に組み込まれたセンサは血餅および/または血栓の側面を検知し、この情報を時間の関数として臨床医に(例えば、外部表示装置上に)提供することができる。例えば、EISおよび/またはEITセンサは、ステントと血餅および/または血栓との統合ならびに血餅および/または血栓の形状および組成を特性評価することができる。ステントリトリーバは、治療法の推奨を臨床医に提供するために以前の血餅および/または血栓回収からのデータも使用してもよい。治療法の推奨は、例えばステントリトリーバと血餅および/または血栓との統合が最適であるという信号および/または血餅および/または血栓を引き出す適当な速度および力に関する推奨を含むことができる。
【0176】
この時点で、臨床医は血餅および/または血栓を回収するためのステントの回収によって提供される情報および/または推奨に基づいて行動してもよい。臨床医は、ステントリトリーバに組み込まれた自動引き抜き機構を使用して血餅を回収することを決定してもよい。次いで、自動引き抜き機構により、以前の血餅および/または血栓回収のデータベースから受信されたデータに基づいてステントリトリーバによって決定された速度および力で血餅および/または血栓を引き出してもよい。血餅および/または血栓がステントリトリーバから外れた場合、ステントリトリーバは臨床医にアラームを用いて信号で知らせる。次いで、臨床医は再度血餅および/または血栓に貫入させ、回収プロセスを再開してもよい。
【0177】
血餅および/または血栓回収の終了時に、介入中に収集された全てのデータを後での分析のためにデータベースに転送することができる。
【0178】
実施例5
本明細書に記載されている技術に従って使用することができる装置の別の例はスマート吸引カテーテルである。吸引カテーテルを使用して患者から血餅を回収してもよい。本明細書に記載されているセンサおよび分析技術を用いて、侵襲的吸引カテーテルはそれが接触している血餅を特性評価し、この組織/物質の特性を臨床医に伝えてもよい。
【0179】
この例では、吸引カテーテルは、少なくとも1つのセンサ(好ましくは少なくとも1つのEISセンサおよび/またはEITセンサ)、測定装置およびハンドルを備える。実施例3と同様に、血餅内の複数の位置からセンサが接触している血餅に関する情報を得ることができるように、吸引カテーテルは複数の戦略的位置に複数のセンサを備えていてもよい。吸引カテーテルが2つ以上のセンサを備えている場合、センサはそれが接触している血餅の異なる特性を検知可能であってもよい。例えば、吸引カテーテルは、実施例3に記載されている1つ以上のセンサ(すなわち、血餅と吸引カテーテルとの統合を検知することができる1つ以上のセンサ、時間の関数として吸引カテーテルの位置を検知することができる1つ以上のセンサ、および/または血餅に印加される力を検知することができる1つ以上のセンサ)を備えていてもよい。吸引カテーテルは、吸引カテーテル内の血流を監視することができるさらなるセンサも備えていてもよい。
【0180】
吸引カテーテルの測定装置およびハンドルは、実施例3記載されているステントリトリーバの測定装置およびハンドルと同一である。
【0181】
実施例6
動脈閉塞に罹患している患者のために最適な治療戦略を決定および実行するために、臨床医は実施例1に記載されているガイドワイヤおよび実施例5記載されている吸引カテーテルを一緒に使用してもよい。臨床医はガイドワイヤを使用して動脈を閉塞している組織/物質を特性評価し、次いで吸引カテーテルを使用して血餅および/または血栓を回収することができる。任意に血餅回収中にデータを収集し、後での分析のためにデータベースにアップロードすることができる。
【0182】
この例では、臨床医はスマート装置の組み合わせを使用して動脈閉塞に罹患している患者を治療することができる。臨床医はガイドワイヤを挿入し、かつそれを使用して実施例2に記載されているように病変部を評価することによって開始してもよい。臨床医が次にガイドワイヤによって提供された情報および/または推奨に基づいて吸引カテーテルを使用することを決定した場合、臨床医は吸引カテーテルをガイドワイヤに沿って挿入し、それを血餅および/または血栓の中に導き、吸引プロセスを開始する。血餅および/または血栓の吸引中に、外部表示装置は臨床医に除去の進行、EISおよび/またはEITセンサによって検知される血餅および/または血栓の形状および組成、ならびに吸引カテーテルを通る血餅および/または血栓の通過に関する情報を提供する。またスマート吸引カテーテルは、吸引カテーテルと血餅との統合に基づいて血餅および/または血栓の除去を開始するのに最適な時間を決定し、この条件を臨床医に信号で知らせてもよい。次いで、臨床医は血餅および/または血栓の除去を開始してもよい。血餅および/または血栓が吸引カテーテルから外れた場合、吸引カテーテルはアラームを用いて臨床医に信号で知らせてもよい。次いで、臨床医は再度血餅および/または血栓に貫入させ、回収プロセスを再開してもよい。センサが、血栓が完全に吸引されて吸引器のチューブに沿って移動したことを検出した場合、除去の成功を示す別のメッセージが生成および出力されてもよい。
【0183】
血餅および/または血栓の回収の終了時に、介入中に収集された全てのデータを後での分析のためにデータベースに転送することができる。
【0184】
実施例7
実施例1に記載されているガイドワイヤを使用して慢性完全閉塞(CTO)に罹患している患者を治療してもよい。この場合、患者の動脈は血流を再建するために臨床医が貫入させることが難しい場合がある古くて硬い血栓によって閉塞されている。臨床医はスマートガイドワイヤを使用して病変部の位置を検知し、病変部を貫通させてもよい。動作中、ガイドワイヤは病変部の貫入が開始されたとき、および動脈の内腔までの病変部の貫通が生じたときに関する情報を臨床医に提供することができる。血栓があまりに硬くて貫入させることができない場合、臨床医は代わりにガイドワイヤを病変部に隣接する動脈壁の中に通すことができる。この場合、ガイドワイヤはアテローム/プラーク内のその位置に関する連続的な情報を臨床医に提供することができる。これにより臨床医が血管を穿刺するのを回避するのを助けてもよい。
【0185】
実施例8
図21は、病変部内に認められることがある異なる生体物質の値のヒストグラムを含む。x軸に沿ってグラフ化されている値は、それらの図の説明で考察されているような実効静電容量値を含む上記
図4~
図11の手法を用いて生成された値である。y軸は各x軸値のために回収された試料の数を示す。それらのデータは本明細書に記載されている技術および装置の前臨床動物試験中に収集したものである。
【0186】
図21に示すように、異なる生体物質の実効静電容量値は明らかに区別可能であり、各種病変部は明らかに実効静電容量値の範囲に関連している。これらの値を複数の実験から決定してもよく、その後に医療装置は、病変部を診断するかそれ以外の方法で特定する際にこれらの範囲を使用するように構成されていてもよい。その後に、生体物質の実効静電容量を決定する際に、本医療装置はその実効静電容量をそれらの範囲と比較して生体物質の実効静電容量値がどの範囲と一致するかを決定してもよい。次いで本医療装置は、その一致に基づいて生体物質を診断するかそれ以外の方法で特定してもよい。
【0187】
病変部内で検出された複数の生体物質についてこのプロセスを行う場合、複数の生体物質のそれぞれを同じように特定してもよい。次いで、特定の種類の病変部が生体物質の特定の回収物の組成によって特性評価されるように、病変部の複数の生体物質を異なる種類の病変部に関する条件の文脈において分析してもよい。生体物質のセットが特定の種類の病変部に一致したら、その病変部がその一部である生体物質のセットをその特定の種類であるものと特定してもよい。
【0188】
腫瘍学で使用するための医療装置の動作方法
本発明者らは、潜在的に癌性である細胞を調べるための従来の技術は多くの場合に満足の行くものでないことを認識および理解している。例えば潜在的に癌性である細胞を調べるための1つの従来の技術は、針を使用して組織試料を採取する。針の挿入を案内する際に臨床医を支援するために、X線、超音波または磁気共鳴画像法(MRI)などの従来の画像診断システムが使用される。但し、これらの技術を用いて生成された画像は不正確であったり不鮮明であったりすることが多く、そのため針が標的とされている細胞または組織に接触しているかを臨床医が決定するのが難しくなる。その結果、そのような技術を用いた癌性細胞の診断および/または治療は不正確であることが多い。その結果、特定の病変部が癌性であるかを決定しようとする場合の重大なリスクは、潜在的に癌性である病変部を調べることを目的とした針が実際に病変部に接触せず、代わりに近くの健康な組織に接触して正しくない試料が得られ、かつ正しくない医学的結論に至るという点である。同様に、癌性細胞を除去することを試みる際に2つの望ましくない状況、すなわち健康な組織が癌性細胞と一緒に除去されることがあったり、いくつかの癌性細胞が除去されないままであったりするという状況が生じることがある。
【0189】
従って、本明細書に記載されているいくつかの実施形態によれば、医療装置を使用して癌性細胞/組織の存在、癌性細胞/組織の特性および/または癌性細胞/組織の種類(例えば、癌腫、リンパ腫、骨髄腫、新生物、黒色腫、転移または肉腫)を決定してもよい。本明細書に記載されている種類の技術は、少なくとも部分的に癌性細胞/組織の特性に基づいて癌性細胞/組織の治療方法に関する推奨を提供してもよい。例えば、いくつかの状況では癌性細胞/組織の焼灼または除去、ならびに焼灼または除去するための方法が推奨されてもよい。
【0190】
医療装置、センサおよび癌性細胞の組織/物質の検知方法の例が
図2~
図11に関して上に詳細に記載されている。そのような医療装置によって実行することができる技術および/または医療装置を動作させて実行することができる技術の例が
図18~
図20に関連して以下に記載されている。
【0191】
図18は、例えば本明細書に記載されているいくつかの技術に従って動作する医療装置によって実行することができるプロセス1800を示す。
図18の例では、センサは、針、焼灼カテーテル、高周波プローブ、ロボットプローブ、腹腔鏡または切断装置などの診断および/または治療装置内に配置されていてもよい。いくつかの実施形態では、センサは本医療装置の遠位端の近くに配置されている。本医療装置はセンサを用いて決定された癌性細胞の特性に基づいて治療法の推奨を生成してもよい。
【0192】
プロセス1800はブロック1802で開始し、このブロックでは医療装置の侵襲的プローブを動作させてセンサに近接している病変部(癌性組織または細胞であってもよい)の1つ以上の特性(例えば、サイズおよび/または組成)を検出する。プロセス1800の開始前に、本侵襲的プローブを動物の体内に挿入し、病変部の予測される位置に近接するように移動させてもよい。次いで、本医療装置を動作させてセンサが病変部に接触しているときを検出する。センサによって出力された値における経時的な変化(例えば、インピーダンスの変化)を評価することによって、潜在的に癌性であることが知られているか実際にそうである病変部または組織との接触を決定してもよい。例えば、本医療装置は、侵襲的プローブのセンサが癌性組織/細胞に接触していない場合または病変部がその一部であることが知られている種類の組織に接触していない場合に、1つの結果を(例えば、ユーザインタフェースを介してユーザに)出力してもよい。
【0193】
例えば病変部を調べる場合、本侵襲的プローブを病変部に向かって動物の体内を移動させる際に、本医療装置はそれが接触している組織を示す値を出力してもよい。その値は、いくつかの実施形態では本侵襲的プローブが病変部に接触しているかを示す「はい/いいえ」または「真/偽」の値などの2進値などの定性的値であってもよい。
【0194】
本医療装置は、本侵襲的プローブが「異常」である任意の生体物質に接触しているか、従って病変部の一部である得るかを決定するために本侵襲的プローブによって接触されている組織などの本侵襲的プローブによって接触されている生体物質を分析することにより本侵襲的プローブが病変部に接触しているかを決定することによって、本侵襲的プローブが病変部に接触しているかを決定してもよい。本医療装置はいくつかの実施形態では、本侵襲的プローブが接触することが予想され得る生体物質を示し得る動物の体内の本侵襲的プローブの位置を評価することによって、プローブによって接触されている生体物質が「異常」であるかを決定してもよい。
【0195】
本医療装置は、追加または代わりとして、予備的診断の結果として臨床医によって入力され得る病変部に関する予測に基づいて、本侵襲的プローブが病変部に接触しているかを決定してもよい。例えば臨床医は、病変部が脈管構造内にあるか器官の病変部であるか、器官の病変部の場合どの器官であるか、病変部の組成の予測、あるいは病変部の組織または細胞の状態の予測(例えば、不健康である、炎症している、癌性である、罹患しているなど)などの病変部を予備的に特性評価する情報を入力してもよい。そのような情報が入力される実施形態では、臨床医は、病変部を個々に予備的に特性評価する情報を入力してもよく、あるいは、病変部を予備的に特性評価するそのような情報に関連づけられていてもよい病変部の予備的診断の選択を行ってもよい(例えば、アテロームの特定のカテゴリを選択することによって、アテロームの予測される組成およびそれが脈管構造内に位置しているということなどの他の情報も選択してもよい)。本侵襲的プローブが動物の体内を移動する際に、本医療装置は、本侵襲的プローブによって接触されている生体物質を病変部の予備の特性評価と比較して本侵襲的プローブが病変部に接触しているかを決定してもよい。例えば、病変部が予備的に脳病変(脳腫瘍であってもよい)として診断された場合、本医療装置は、本侵襲的プローブが異常な脳組織に接触しているか、および/または本侵襲的プローブが癌性脳組織に接触しているかを決定し、この結果を出力してもよい。
【0196】
他の実施形態では、本侵襲的プローブが病変部に接触しているかを示す2進値を単に提供するのではなく、本医療装置は、プローブが体内を通って移動する際に変化し得る本侵襲的プローブのセンサによって接触されている1種の生体物質または複数種の生体物質を示す値を出力してもよい。物質を示す値は、本明細書に記載されている技術を用いて決定されるようなインピーダンススペクトルから特定された物質のリストなどの物質の特定であってもよい。これらの値は他の実施形態では、センサによって検出された値(例えば、インピーダンス値またはインピーダンススペクトル)または他の値などの数値であってもよい。
【0197】
プローブおよびそのセンサは病変部に接触するまで移動させてもよく、その時点で本医療装置によって出力される結果は接触がなされると変化し得る。このように、本侵襲的プローブを用いて病変部の位置を決定してもよく、かつ本侵襲的プローブが病変部に接触しているという決定を行ってもよい。
【0198】
本侵襲的プローブはさらに、場合によっては病変部の幾何学的形状を決定するために動作させてもよい。例えば潜在的に癌性である組織を含む病変部(例えば腫瘍)の幾何学的形状は、いくつかの実施形態では本侵襲的プローブを病変部の近くまで移動させ、かつ本侵襲的プローブのセンサが病変部に接触しているときまたは接触していないときを特定することによって決定してもよい。例えば、本侵襲的プローブによって出力される値の分析が病変部が癌性組織を含むことを決定した場合、本侵襲的プローブを移動させ、長い期間をかけて異なるセンサについて個々のセンサが癌性組織に接触しているかについての決定を行ってもよい。次いで、本侵襲的プローブの移動量(例えば、上で考察したように加速度計を用いて測定される)および本侵襲的プローブ上のセンサの位置を本医療装置によって分析して、癌性組織の1つ以上の寸法を含む動物の体内の癌性組織の幾何学的形状を決定してもよい。
【0199】
いくつかのそのような実施形態では、本医療装置は、病変部の幾何学的形状に基づいて病変部のための1つ以上の治療法の推奨を決定してもよい。
【0200】
図18に図示されているような実施形態に実装することができる1つの治療プロトコルでは、焼灼を癌性組織の治療のための第1の選択肢として使用してもよい。従ってブロック1804では、針または高周波プローブなどの焼灼装置を動物の体内に挿入する。いくつかの実施形態では、焼灼装置は、本明細書に記載されている種類のセンサを備えた侵襲的プローブを備えていてもよい。焼灼装置が癌性細胞もしくは組織との接触が形成されたことを決定するまで焼灼装置を移動させてもよい(但し当然のことながら、当該実施形態は侵襲的プローブを備える焼灼装置を用いて動作させることに限定されない。他の実施形態では、本侵襲的プローブは別個の医療装置の一部であり、本侵襲的プローブの位置決め後に焼灼装置を本侵襲的プローブに近接して位置し、従って癌性細胞/組織に近接して位置するまで移動させる)。
【0201】
ブロック1804では、焼灼装置を癌性細胞/組織に近接して配置した後に、焼灼装置を動作させて癌性細胞/組織を焼灼する。暫くした後、焼灼装置を動作させて焼灼装置が癌性細胞/組織に対して効果を生じているかを決定する。例えば、いくつかの実施形態では、焼灼が有効であるか、および焼灼を継続するかということを含む臨床医が焼灼を行うのを案内する治療法の推奨を生成してもよい。従ってブロック1806では、センサは焼灼装置がまだ癌性細胞または癌性組織に接触しているかを示す情報を提供してもよい。本明細書に記載されている技術を用いてこの決定を行ってもよい。この情報を処理してもよく、かつこれを使用して焼灼を停止するか、焼灼を継続するか、または焼灼を停止するかを決定する前に侵襲的プローブの位置決めを確認するかなどの治療法の推奨を提供してもよい。
【0202】
いくつかの実施形態では、焼灼装置は異なる位置に位置する異なる電極などの焼灼するための複数の異なる電極を備えていてもよく、異なる電極は個々に動作可能であってもよく、従って、いくつかの電極が焼灼のために動作していない時間にそれ以外の電極を焼灼のために動作させることができる。いくつかの実施形態では、各焼灼電極は検知電極の近くに配置されていてもよく、その検知電極は、検知電極によって接触されている生体物質を検出するために本明細書に記載されている技術に従って動作される状態にある。焼灼装置は、検知電極を用いて焼灼装置の特定の部分が癌性組織/細胞または非癌性組織/細胞に接触しているかを決定してもよい。いくつかのそのような実施形態では、焼灼装置の一部が非癌性組織に接触しているという決定に応答して、焼灼装置は、焼灼を癌性組織のみに限定して非癌性組織に対してなされ得る損傷を最小限に抑えるために、焼灼装置のその部分の焼灼電極を動作させなくてもよい。
【0203】
このように、臨床医はこの治療が無効である場合に焼灼を停止してもよく、臨床医は焼灼装置が癌性細胞/組織に接触している間のみ焼灼を継続して癌性組織のみを焼灼してもよい。従って、臨床医は治療の終了時に治療が成功したかについてより確信を得ることができ、治療が成功した場合、癌性細胞/組織の全てが焼灼されたことをさらに確信することができる。このように、健康な組織を焼灼するリスクまたは癌性細胞が焼灼されないままであるというリスクが軽減される。
【0204】
従って
図18に示すように、焼灼装置がまだ癌性細胞/組織に接触しているということが決定された場合、プロセス1800はブロック1808に進み、このブロックでは焼灼を続けるための推奨が提供され、ブロック1804を繰り返す。そうではなく、焼灼プローブがもはや癌性細胞/組織に接触していないことが決定された場合、ブロック1810では焼灼を停止するための推奨が提供される。このプロセスは焼灼装置を再配置することによって繰り返してもよい。焼灼装置を再配置するための何回かの試みの後であっても病変部との接触がもはや形成されることがなければ、プロセス1800は終了する。
【0205】
図19は、別の実施形態に従って癌性細胞/組織のために治療法の推奨を生成するための医療装置の動作方法の例を示す。
図19の実施形態では、医療装置は、上で考察した
図3の例の場合のようにプローブの外面に沿って配列された複数のセンサを備えていてもよい。上記から理解されるはずであるように、そのようなセンサの配列を用いて、癌性病変部の組成などの癌性病変部のいくつかの異なる特性を決定してもよい。例えば上で考察したように、癌性病変部に対してEISプロセスを行うことによって癌性病変部の組成を決定してもよい。
【0206】
図19のプロセス1900はブロック1902で開始し、このブロックでは医療装置を動物対象の体内に挿入し、動作させて癌性病変部の組成などの癌性病変部の1つまたは複数の特性を検出する。組成などの特性に基づいて、本医療装置はブロック1904では、治療選択肢を選択して推奨してもよい。組成に基づいて、プロセス1900はプローブで測定されている癌性病変部の種類を決定してもよく、かつ適当な治療法の推奨が提供されてもよい。本医療装置は、上記他の実施形態のように、インピーダンススペクトルを用いて生体物質を特定することができ、かつ生体物質に基づいて病変部を特定することができるように、異なる生体物質のインピーダンススペクトルおよび他の電気特性(例えば実効静電容量)ならびに異なる病変部の組成に関する情報と共に構成されていてもよい。本医療装置は、異なる種類の癌性病変部などの異なる種類の病変部のための異なる治療法の推奨と共にさらに構成されていてもよい。一例では、病変部の異なる生体物質のインピーダンススペクトルを用いて癌性病変部が癌腫またはその一部であることが決定された場合、癌性病変部を除去するための推奨が提供されてもよい。別の例では、癌性病変部が黒色腫の一部であると決定された場合、高周波焼灼が推奨されてもよい。本医療装置は任意の好適な方法で治療選択肢を選択してもよい。
【0207】
ブロック1904において治療が推奨されたら、ブロック1906において本医療装置は選択された治療選択肢の遂行を監視してもよい。本医療装置は、ブロック1902において特性を決定した1つ以上のセンサまたは治療を行うために動作される治療装置の1つ以上のセンサなどの1つ以上のセンサを用いて治療を監視してもよい。例えば、ブロック1904において焼灼が推奨された場合、臨床医は焼灼装置を挿入してもよい。焼灼装置は、焼灼が行われている際に癌性病変部の状態を検知するための温度センサなどのセンサを有していてもよい。このセンサは、癌性病変部が焼かれているかまたは凍結させているかを決定することによって焼灼が成功したかを検出してもよい。
【0208】
ブロック1908では、治療の状況に関する情報が臨床医への提示のためにユーザインタフェースを介して本医療装置によって出力される。次いでプロセス1900は終了する。
【0209】
治療法の推奨を生成するという文脈において治療を監視する例が示されているが、当然のことながら、治療の状況に関するエラーメッセージまたは他のメッセージを臨床医に送るために同様の技術が使用されてもよい。例えば、治療装置上のセンサが暫くの間は癌性病変部の存在を示し、その後にセンサがもはや癌性病変部を検出しない場合、本医療装置は治療装置が不適切に位置していること、または癌性病変部が喪失されたことを決定してもよい。これは、本装置を再位置決めする必要があること、または癌性病変部が移動したことのいずれかを示してもよい。ユーザインタフェースを介した臨床医へのメッセージはそのような潜在的な問題を示してもよい。
【0210】
さらに、
図19の例は、治療の最初の選択およびその後の治療を実施する方法の両方に関する治療法の推奨を提供するための医療装置の動作方法について記載するものであったが、当然のことながら上記から当該実施形態はそのように限定されない。例えば、いくつかの実施形態では、医療装置は、本明細書に記載されている1つ以上のセンサを備えていてもよく、その装置を使用するための最初の推奨を生成することなく動作させてその装置の動作方法に関する治療法の推奨を生成してもよい。例えば、針または高周波プローブは、上で考察したように治療の状況または遂行に関するデータを生成するために1つ以上のセンサを備えていてもよく、かつ治療法の推奨を生成してもよい。
【0211】
図20は、いくつかの実施形態において治療法の推奨を生成するために医療装置によって実行することができるプロセス2000を示す。
【0212】
プロセス2000はブロック2002で開始し、このブロックでは本医療装置を動作させて、本明細書に記載されている技術を用いて癌性病変部の1つ以上の特性(例えば、サイズおよび/または組成)を決定する。本医療装置は、本医療装置に含まれる1つ以上のセンサを用い、かつ/またはこのセンサによって生成されたデータに基づいて特性を生成する別の構成要素によって特性が決定される場合のように、本医療装置の構成要素から当該特性を受信してもよい。当該特性はいくつかの実施形態では癌性病変部の組成を含んでもよい。当該特性は、追加または代わりとして、体内での癌性病変部の位置、癌性病変部の凝集体の1つ以上の寸法(例えば、長さ、厚さなど)、癌性病変部の温度または上記種類のセンサに基づいて決定することができる他の情報を含んでもよい。
【0213】
ブロック2004では、本医療装置はブロック2002で受信した特性を1つ以上の治療選択肢の1つ以上の条件と比較する。本医療装置は、複数の異なる利用可能な治療選択肢に関する情報と共に構成されていてもよく、それらはそれぞれ、癌性病変部の1つ以上の特性に関する1つ以上の条件に関連づけられていてもよい。治療選択肢は、焼灼、除去および生検を含んでもよい。癌性病変部の組成に関するそのような条件の例は
図19に関連して上に記載されている。
【0214】
本医療装置は、癌性病変部の特性をこれらの条件と比較してどの条件が満たされているかを決定してもよい。いくつかの実施形態では、癌性病変部が1つのセットの条件のみを満たすことができ、従って1つの治療選択肢のみを選択することができるように、治療選択肢の条件のセットは相互に排他的であってもよい。他の実施形態では、条件のセットは相互に排他的でなくてもよく、本医療装置は、最も対応する条件が満たされるもの、または対応する条件が最も近く満たされるものを特定することによってどちらの治療選択肢を推奨するかを決定してもよい。例えば、異なる条件がインピーダンススペクトルの範囲などの異なる値の範囲に関連づけられている場合、病変部のための値が最も近く一致する範囲を特定することによって条件を決定してもよい。最も近い一致は例えば、病変部のインピーダンススペクトルまたは他の値がその範囲の境界値の範囲内にあるかそこから最も離れている範囲またはその範囲と最も重複を有する範囲であってもよい。
【0215】
ブロック2006では、本医療装置はその比較に基づいて本医療装置のユーザインタフェースを介して治療選択肢の推奨を出力してもよく、そしてプロセス2000は終了する。
【0216】
当業者であれば、
図20のプロセス2000のようなプロセスに関連して使用することができる治療選択肢の条件を設定するための多くの方法が存在するということを理解しているであろう。例えば、条件として使用するための癌性病変部の特性の値は、その値間の一致、癌性細胞/組織の種類および各種治療選択肢による治療の成功を決定するための少なくともいくつかの実験法の後に医療装置内にハードコードされていてもよい。但し本発明者らは、癌性細胞/組織の特性および他の情報のうち癌性細胞/組織の治療の成功に関する情報に基づいてそのような関係および条件を学習するためのシステムの利点を認識および理解している。例えば、特徴抽出および/または分類を含むことができるような機械学習プロセスがいくつかの実施形態に実装されていてもよい。
【0217】
コンピュータによる実装
本明細書に記載されている原理に従って動作する技術は任意の好適な方法に実装することができる。病変部の治療のために管の病変部を特性評価し、かつ/または1つ以上の治療法の推奨を生成する各種プロセスの工程および動作を示す一連のフローチャートが上記考察に含まれている。上記フローチャートの処理および決定ブロックは、これらの各種プロセスを実施するアルゴリズムに含めることができる工程および動作を表す。これらのプロセスに由来にするアルゴリズムは、1つ以上の単一目的もしくは多目的プロセッサに組み込まれ、かつそれらの動作を指示するソフトウェアとして実装されていてもよく、デジタル信号処理(DSP)回路または特定用途向け集積回路(ASIC)などの機能的に同等の回路として実装されていてもよく、あるいは任意の他の好適な方法で実装されていてもよい。当然のことながら、本明細書に含まれているフローチャートは、任意の特定の回路または任意の特定のプログラミング言語の構文または動作あるいはプログラミング言語の種類を記述していない。それどころか、これらのフローチャートは、当業者が回路を作成するかコンピュータソフトウェアアルゴリズムを実装して本明細書に記載されている種類の技術を実施する特定の装置の処理を実行するために使用することができる機能情報を示す。また当然のことながら、本明細書において特に明記しない限り、各フローチャートに記載されている工程および/または動作の特定の順序は実装することができるアルゴリズムの単なる例示であり、本明細書に記載されている原理の実装および実施形態において変更することができる。
【0218】
従っていくつかの実施形態では、本明細書に記載されている技術は、アプリケーションソフトウェア、システムソフトウェア、ファームウェア、ミドルウェア、埋込みコードまたは任意の他の好適な種類のコンピュータコードなどのソフトウェアとして実装されるコンピュータ実行可能命令において具体化させることができる。そのようなコンピュータ実行可能命令は、多くの好適なプログラミング言語および/またはプログラミングもしくはスプリクティングツールのいずれかを用いて記述されていてもよく、かつまたフレームワークまたは仮想機械上で実行される実行可能機械語コードまたは中間コードとしてコンパイルされていてもよい。
【0219】
本明細書に記載されている技術がコンピュータ実行可能命令として具体化されている場合、これらのコンピュータ実行可能命令は、多くの機能的機構としてなどの任意の好適な方法で実装することができ、それぞれがこれらの技術に従って動作するアルゴリズムの完全な実行に対して1つ以上の動作を提供する。「機能的機構」とは、単なる例であるが、1つ以上のコンピュータに組み込まれてそれによって実行されると、1つ以上のコンピュータに特定の動作役割を実行させるコンピュータシステムの構造コンポーネントである。機能的機構はソフトウェア要素の一部または全体であってもよい。例えば、機能的機構は、プロセスの関数として、あるいは離散プロセスとして、あるいは任意の他の好適な処理装置として実装されていてもよい。本明細書に記載されている技術が複数の機能的機構として実装されている場合、各機能的機構はそれ自体の方法で実装されていてもよく、全てが同じように実装されている必要はない。さらに、これらの機能的機構は必要に応じて並行して、および/または連続的に実行されてもよく、メッセージパッシングプロトコルを用いるか任意の他の好適な方法で、それらが実行されているコンピュータ上の共有されるメモリを用いて互いに情報を移動し合ってもよい。
【0220】
一般に機能的機構としては、特定のタスクを実施するか特定の抽象的なデータ型を実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などが挙げられる。典型的には機能的機構の機能は、それらが動作するシステムにおいて所望どおりに組み合わせられているか分散されていてもよい。いくつかの実装では、本明細書において技術を実施する1つ以上の機能的機構は一緒に完全なソフトウェアパッケージを形成していてもよい。これらの機能的機構は、他の実施形態では、互いに対話するか無関係の機能的機構および/またはプロセスと対話してソフトウェアプログラムアプリケーションを実行するように構成されていてもよい。
【0221】
1つ以上のタスクを実施するためのいくつかの例示的な機能的機構が本明細書に記載されている。但し当然のことながら、本明細書に記載されている機能的機構およびタスク部は、本明細書に記載されている例示的な技術を実装することができる機能的機構の種類の単なる例示であり、当該実施形態は機能的機構の任意の特定の数、部または種類で実装されることに限定されない。いくつかの実装では、全ての機能は単一の機能的機構に実装されていてもよい。また当然のことながら、いくつかの実装では、本明細書に記載されている機能的機構のいくつかは、一緒にまたはその他とは別々に(すなわち、単一のユニットまたは別個のユニットとして)、実装されていてもよく、あるいはこれらの機能的機構のいくつかは実装されていなくてもよい。
【0222】
本明細書に記載されている技術を実行するコンピュータ実行可能命令(1つ以上の機能的機構または任意の他の方法で実装されている場合)は、いくつかの実施形態では、1つ以上のコンピュータ可読媒体に機能を与えるためにその媒体上に符号化されていてもよい。コンピュータ可読媒体としては、ハードディスクドライブなどの磁気媒体、コンパクトディスク(CD)またはデジタル多用途ディスク(DVD)などの光媒体、ブルーレイディスク、持続的もしくは非持続的ソリッドステートメモリ(例えば、フラッシュメモリ、磁気RAMなど)、あるいは任意の他の好適な記憶媒体が挙げられる。そのようなコンピュータ可読媒体は、以下に記載されている
図17のコンピュータ可読記憶媒体1706(すなわち計算装置1700の一部として)または独立型の別個の記憶媒体など、任意の好適な方法で実装されていてもよい。本明細書で使用される「コンピュータ可読媒体」(「コンピュータ可読記憶媒体」とも呼ぶ)は有形の記憶媒体を指す。有形の記憶媒体は非一時的であり、少なくとも1つの物理的構造コンポーネントを有する。本明細書で使用される「コンピュータ可読媒体」では、少なくとも1つの物理的構造コンポーネントは、埋込み情報を有する媒体の作製プロセス、その上への情報の記録プロセス、または情報により媒体を符号化する任意の他のプロセス中にいくつかの方法で変更することができる少なくとも1つの物理的特性を有する。例えば、コンピュータ可読媒体の物理的構造の一部の磁化状態を記録プロセス中に変更してもよい。
【0223】
当該技術をコンピュータ実行可能命令として具体化することができる全てではないがいくつかの実装において、これらの命令は任意の好適なコンピュータシステムにおいて動作している1つ以上の好適な計算装置上で実行されてもよく、あるいは1つ以上の計算装置(または1つ以上の計算装置の1つ以上のプロセッサ)はコンピュータ実行可能命令を実行するようにプログラムされていてもよい。計算装置またはプロセッサは、データストア(例えば、オンチップキャッシュまたは命令レジスタ、バスを介してアクセス可能なコンピュータ可読記憶媒体など)などに、計算装置またはプロセッサにアクセス可能な方法で命令が格納されている場合に命令を実行するようにプログラムされていてもよい。これらのコンピュータ実行可能命令を含む機能的機構は、単一の多目的プログラム可能デジタル計算装置、処理パワーを共有し、かつ本明細書に記載されている技術を一緒に実施する2つ以上の多目的計算装置の協調システム、本明細書に記載されている技術を実行する専用の単一の計算装置または計算装置の協調システム(同一場所に配置されているか地理的に分散されている)、本明細書に記載されている技術を実施するための1つ以上のフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)または任意の他の好適なシステムと一体化されており、かつそれらの動作を指示してもよい。
【0224】
図17は、本明細書に記載されている技術を実装するシステムに使用することができる計算装置1700の形態の計算装置の1つの例示的な実装を示すものであるが、他の実装も可能である。当然のことながら、
図17は、計算装置が本明細書に記載されている原理に従って動作するために必要な構成要素を示すためのものでもなければ包括的に示すものでもない。
【0225】
計算装置1700は、少なくとも1つのプロセッサ1702、ネットワークアダプタ1704およびコンピュータ可読記憶媒体1710を備えていてもよい。計算装置1700は例えば、上記医療装置、デスクトップまたはラップトップパーソナルコンピュータ、携帯情報端末(PDA)、スマート携帯電話、サーバまたは任意の他の好適な計算装置であってもよい。ネットワークアダプタ1704は、計算装置1700を任意の好適な計算機ネットワークを介して任意の他の好適な計算装置と有線および/または無線で通信させることができる任意の好適なハードウェアおよび/またはソフトウェアであってもよい。計算機ネットワークは、無線アクセス点、スイッチ、ルータ、ゲートウェイおよび/または他のネットワーク機器ならびに任意の好適な有線および/または無線通信媒体またはインターネットなどの2つ以上のコンピュータ間でのデータ交換のための媒体を備えていてもよい。コンピュータ可読媒体1710は処理されるデータおよび/またはプロセッサ1702によって実行される命令を格納するように構成されていてもよい。プロセッサ1702によりデータの処理および命令の実行が可能になる。データおよび命令はコンピュータ可読記憶媒体1710に格納されていてもよい。
【0226】
装置1700が本明細書に記載されている医療装置である実施形態では、装置1700は対象を診断および/または治療するためにその対象の解剖学的構造の中に挿入される侵襲的医療装置1706を備えていてもよい。装置1706は上で考察したように侵襲的プローブ1708を備える。
【0227】
コンピュータ可読記憶媒体1710に格納されているデータおよび命令は、本明細書に記載されている原理に従って動作するコンピュータ実行可能命令の実装技術を含んでもよい。
図17の例では、コンピュータ可読記憶媒体1710は各種機構を実装するコンピュータ実行可能命令を格納し、かつ上記各種情報を格納している。コンピュータ可読記憶媒体1710は、病変部の組成などの病変部の1つ以上の特性を分析し、かつ/またはその分析に基づいて治療法の推奨を決定するための病変部分析機構1712を格納していてもよい。コンピュータ可読記憶媒体1710は、機構1712によって使用することができる治療選択肢の条件1714をさらに格納していてもよい。コンピュータ可読記憶媒体1710は、学習機構1716および履歴生成機構1718も格納していてもよい。
【0228】
図17には図示されていないが、計算装置は入出力装置などの1つ以上の構成要素および周辺装置をさらに有していてもよい。特に、これらの装置はユーザインタフェースを提供するために使用することができる。ユーザインタフェースを提供するために使用することができる出力装置の例としては、出力の視覚的提示のためのプリンタまたは表示画面および出力の聴覚提示のためのスピーカまたは他の音生成装置が挙げられる。ユーザインタフェースのために使用することができる入力装置の例としては、キーボードならびにマウス、タッチパッドおよび離散化タブレットなどのポインティングデバイスが挙げられる。別の例として、計算装置は音声認識または他の聴覚形式を介して入力情報を受信してもよい。
【0229】
当該技術が回路および/またはコンピュータ実行可能命令に実装されている実施形態について説明してきた。当然のことながら、いくつかの実施形態は方法の形態であってもよく、その少なくとも1つの例が示されている。本方法の一部として行われる動作は任意の好適な方法で順序付けされてもよい。従って、図示されているものとは異なる順序で動作が行われる実施形態が構築されてもよく、これは例示的な実施形態では連続的な動作として示されているが、いくつかの動作を同時に行うことを含んでもよい。
【0230】
上記実施形態の各種態様は単独、組み合わせまたは上に記載されている実施形態において具体的に考察されていない様々な構成で使用されてもよく、従ってその適用において上に記載されているか図面に図示されている構成要素の詳細および構成に限定されない。例えば、一実施形態に記載されている態様は他の実施形態に記載されている態様と任意の方法で組み合わせられてもよい。
【0231】
請求項要素を修正するための特許請求の範囲における「第1の」「第2の」「第3の」などの順序を示す用語の使用はそれ自体、別のものに対する1つの請求項要素のどんな優先度、順位または順序あるいは方法の動作が行われる時間順序を暗示しておらず、単に請求項要素を識別するために特定の名前を有する1つの請求項要素を同じ名前を有する(順序を示す用語を使用する場合を除く)別の要素から区別するためのラベルとして使用されている。
【0232】
また、本明細書で使用される表現および用語は説明のためのものであり、限定するものとしてみなされるべきではない。本明細書における「備える(含む)(including)」「備える(含む)(comprising)」「有する(having)」「含有する(含む)(containing)」「含む(必要とする)(involving)」およびそれら変形の使用は、その後に列挙されている項目およびそれらの均等物ならびにさらなる項目を包含することが意図されている。
【0233】
「例示的な」という用語は、例、事例または例示としての役割を果たすことを意味するように本明細書で使用されている。従って、例示として本明細書に記載されている任意の実施形態、実装、プロセス、特徴などは説明に役立つ実例であると理解されるべきであり、特に明記しない限り好ましい例または有利な例であると理解されるべきではない。
【0234】
以上、少なくとも1つの実施形態のいくつかの態様について記載してきたが、各種変更、修正および改良は当業者に容易に思い付くことが理解される。そのような変更、修正および改良は本開示の一部であることが意図されており、本明細書に記載されている原理の趣旨および範囲内であることが意図されている。従って、上の説明および図面は単なる例として提供されている。