(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062171
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】免疫腫瘍溶解療法
(51)【国際特許分類】
C12N 7/01 20060101AFI20220412BHJP
A61K 35/768 20150101ALI20220412BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220412BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220412BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220412BHJP
C12N 15/863 20060101ALN20220412BHJP
【FI】
C12N7/01
A61K35/768
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 105
C12N15/863 Z
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022015459
(22)【出願日】2022-02-03
(62)【分割の表示】P 2019133264の分割
【原出願日】2014-08-22
(31)【優先権主張番号】61/868,978
(32)【優先日】2013-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500091313
【氏名又は名称】ユニヴァーシティ オヴ ピッツバーグ オヴ ザ コモンウェルス システム オヴ ハイアー エデュケーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ソーン,スティーブン,ハワード
(57)【要約】 (修正有)
【課題】抗腫瘍免疫を促進する、ならびに/またはウイルスに対する宿主免疫および/もしくは抗体応答を軽減するように改変された腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、および、該ワクシニアウイルスの使用方法を提供する。
【解決手段】少なくとも部分的には、(i)T細胞免疫(インターロイキン18結合タンパク質)を減少させる遺伝子のゲノム欠失を担持する;(ii)TLR2活性化、従って、抗体応答を減少させると考えられるシアリダーゼ酵素で処理された;(iii)細胞傷害性Tリンパ球誘導を増強する遺伝子(例えば、TRIF)を担持する、および/または(iv)プロスタグランジンE2を減少させることにより腫瘍骨髄由来抑制細胞を減少させる、腫瘍溶解性ワクシニアウイルス、および、癌の処置における該免疫腫瘍溶解性ワクシニアウイルスの使用方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の改変:
(i)ウイルス骨格の突然変異;
(ii)ウイルスグリコシル化の改変;
(iii)T細胞応答を促進する改変;
(iv)免疫抑制を阻害する改変;ならびに/または
(v)ウイルスの拡散および活性を増強する改変
のうちの2つ以上を含む腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
【請求項2】
ウイルスグリコシル化の改変と、以下の改変:
(i)ウイルス骨格の突然変異;
(ii)T細胞応答を促進する改変;
(iii)免疫抑制を阻害する改変;ならびに/または
(iv)ウイルスの拡散および活性を増強する改変
の1つ以上とを含む腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
【請求項3】
宿主への投与の前にグリコシル化の量を減少させる薬剤で処理されるか、またはさもなければ非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化を有する腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
【請求項4】
宿主への投与の前にグリコシル化の量を減少させる薬剤で処理されるか、またはさもなければ非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化を有し、以下の改変:
(i)ウイルス骨格の突然変異;
(ii)T細胞応答を促進する改変;
(iii)免疫抑制を阻害する改変;ならびに/または
(iv)ウイルスの拡散および活性を増強する改変
の1つ以上を含む腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
【請求項5】
ウイルス骨格突然変異が、インターロイキン18結合タンパク質の欠失または機能的欠失である、請求項1、2または4に記載の腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
【請求項6】
ウイルス骨格突然変異が、B8R欠失、B18R欠失、A35R欠失、またはその組合せである、請求項1、2または4に記載の腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
【請求項7】
T細胞応答を促進する改変が、Toll/IL-1Rドメイン含有アダプター誘導インターフェロンベータ(TRIF)タンパク質またはその機能的ドメインをコードする核酸の組込みである、請求項1、2、4、5または6に記載の腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
【請求項8】
T細胞応答を促進する改変が、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子をコードする核酸の組込みである、請求項1、2、4、5または6に記載の腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
【請求項9】
免疫抑制を阻害する改変が、プロスタグランジンE2アンタゴニストをコードする核酸の組込みである、請求項1、2、4、5、6、7または8に記載の腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
【請求項10】
プロスタグランジンE2アンタゴニストが15-PGDHである、請求項9に記載の腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
【請求項11】
ウイルスの拡散および活性を増強する改変が、産生される細胞外エンベロープ型のウイルスの量を増加させる改変である、請求項1、2、4、5、6、7、8、9または10に記載の腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
【請求項12】
改変が、以下の突然変異:A34R Lys151からGlu;B5Rの完全もしくは部分的な欠失;A36Rの突然変異/欠失および/またはA56Rの突然変異/欠失の1つ以上である、請求項11に記載の腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
【請求項13】
TRIFもしくはその機能的ドメインをコードする核酸および/またはPGE2アンタゴニストをコードする核酸を含む、宿主への投与の前にグリコシル化の量を減少させる薬剤で処理されるか、またはさもなければ非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化を有する腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
【請求項14】
(i)TK欠失;
(ii)非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化を有するエンベロープ;および/または
(iii)TRIF、もしくはその機能的ドメインをコードする核酸
を含む腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
【請求項15】
(i)TK欠失;
(ii)非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化を有するエンベロープ;および/または
(iii)15-PGDH、もしくはその機能的ドメインをコードする核酸
を含む腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
【請求項16】
(i)TK欠失;
(ii)非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化を有するエンベロープ;
(iii)TRIF、もしくはその機能的ドメインをコードする核酸;および/または
(iv)15-PGDH、もしくはその機能的ドメインをコードする核酸
を含む腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
【請求項17】
(i)TK欠失;
(ii)非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化を有するエンベロープ;
(iii)TRIF、もしくはその機能的ドメインをコードする核酸;
(iv)15-PGDH、もしくはその機能的ドメインをコードする核酸;および/または
(v)C12L欠失
を含む腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
【請求項18】
(i)TK欠失;
(ii)非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化を有するエンベロープ;
(iii)TRIF、もしくはその機能的ドメインをコードする核酸;
(iv)15-PGDH、もしくはその機能的ドメインをコードする核酸;
(v)C12L欠失;および/または
(vi)B5R欠失
を含む腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
【請求項19】
癌細胞に、有効量の請求項1~18のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを投与することを含む、癌細胞の増殖を減少させる方法。
【請求項20】
腫瘍に、有効量の請求項1~18のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを投与することを含む、腫瘍の増殖を減少させる方法。
【請求項21】
癌を有する対象に、有効量の請求項1~18のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを投与することを含む、前記対象を処置する方法。
【請求項22】
対象に、有効量の請求項1~18のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを投与することを含む、対象において抗癌効果をもたらす方法。
【請求項23】
抗癌剤、免疫調節剤、およびその組合せからなる群から選択される1つ以上の薬剤を投与することをさらに含む、請求項19、20、21または22に記載の方法。
【請求項24】
対象における癌の処置における使用のための、請求項1~18のいずれか一項に記載の腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、参照により全体が本明細書に組込まれる、2013年8月22日に出願された米国特許仮出願第61/868,978号の優先権を主張する。
【0002】
1. 序論
本発明は、抗腫瘍免疫を促進する、および/またはウイルスに対する宿主抗体応答を軽減するように改変された腫瘍溶解性ワクシニアウイルスに関する。
【背景技術】
【0003】
2. 発明の背景
腫瘍溶解性ウイルス(OV)は、天然であるか、または腫瘍細胞について選択的であるように操作された複製能力を有するウイルスである1~3。ワクシニアウイルス(VV)の株を含む、様々な異なるウイルス骨格がOVとして試験されてきた4~11。vvDD株を含む、少なくとも3つの別々の腫瘍溶解性ワクシニアベクターが、第I相試験を完了している6、7。VV OV、JX-5944、12(Jennerex)により、全身性腫瘍送達を含む、肝細胞癌(HCC)のための第II相試験における非常に有望な応答が最近示された13、14。さらに、有望な第III相の結果が、メラノーマの療法におけるヘルペスウイルスHSV OV(T-Vec、Amgen15、16)について報告されている(対照群における2%と比較して、16%の応答)。そのようなものとして、癌の処置におけるOVの真の潜在能力が示され始めた(依然として任意の市場19における唯一の認可されたOV療法である元のONYX-015(H-101)アデノウイルス株17、18のものを超える)。
【0004】
この有望さにも拘らず、OVに関する完全な応答は依然として稀である。有意には、第1および第2世代のOV株は、細胞溶解を直接もたらす選択的複製を介して腫瘍細胞を破壊するように主に設計されたものであった。さらに、JX-594とT-Vecは両方とも、宿主リンパ球を強化すると期待されるサイトカイントランスジーン(GM-CSF)を発現する12、14、20、21。前臨床試験により、腫瘍溶解性VVの治療活性における免疫応答の決定的な重要性と共に、(i)マウスが、VV療法後の完全な応答後の再チャレンジに対して均一に抵抗性であり、抗腫瘍適応免疫の誘導のための絶対的な要件を示すこと22;(ii)等価なDCワクチンよりも高い治療利益を示すVVのワクチン効果23;(iii)顕著なサイトカインプロファイル(「Immunologic Constant of Rejection」24)をもたらす腫瘍のVV感染;(iv)腫瘍における免疫抑制細胞数を減少させるVV療法(MDSC、T-regおよびM2マクロファージ)25;(v)VV療法により生じる免疫応答が、ウイルスが消失した後に残存する腫瘍および転移を良好に根絶させ、長期間の免疫監視を提供し、再発を防止することができること22、25、26;ならびに(vi)いくつかの試験においては、強固なウイルス複製が実際には治療効果にとって必要ではないと考えられること27、28が証明された。従って、OV、特に、VVの免疫治療効果は、直接腫瘍溶解効果と同程度に重要であり、これらのベクターはおそらく主に免疫治療剤と考えられるべきである。
【0005】
注目すべきことに、現在の臨床ベクターは、免疫治療剤(単一のサイトカインの発現を超える)として設計されたものではなく、この領域は依然として相対的に調査されていない。そのようなものとして、宿主免疫系との相互作用を最適化することを介して腫瘍溶解ベクターを増強し、関連する腫瘍抗原に対するin situでのワクチン接種を可能にするベクターを作出するための巨大な満たされない潜在能力がある。あるいは、多くの伝統的な治療的癌ワクチン手法は、免疫化の成功の証拠にも拘らず、特に、より大きい腫瘍に対してはクリニックにおいて成功は限定的であった29~31。従って、理想的には全ての腫瘍における関連抗原に対する応答の誘導を媒介し、大きい腫瘍内でも抑制を克服し、腫瘍標的へのT細胞ホーミングを増強する、新規ワクチン手法も必要である。
【発明の概要】
【0006】
3. 発明の概要
本発明は、抗腫瘍免疫を促進する、ならびに/またはウイルスに対する宿主免疫および抗体応答を軽減するように改変された「免疫腫瘍溶解性」ワクシニアウイルスに関する。それは、少なくとも部分的には、グリコシル化の量を減少させる薬剤で処理された、および/もしくはシアリダーゼ酵素(TLR2活性化を減少させ、ウイルスに対する宿主抗体応答を低下させると考えられる)で処理された;ならびに/またはT細胞免疫を減少させる生成物(ウイルスインターロイキン-18結合タンパク質)をコードするウイルスゲノム核酸の改変もしくは欠失を担持する;ならびに/または(i)細胞傷害性Tリンパ球誘導(TRIF)を増強する、および/もしくは(ii)プロスタグランジンE2を減少させることによって腫瘍骨髄球由来抑制細胞(MDSC)を減少させる生成物をコードする核酸を担持する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスによる腫瘍増殖(成長)の改善された阻害の発見に基づくものである。
4. 図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】(A)WR.ΔC12LウイルスはWR親ウイルスと比較してin vivoで腫瘍選択性を示した。CMT-93腫瘍を担持するC57BL/6マウスを、5e8 PFUのウイルスでIVで処置し、療法後の所定の時間でマウスを犠牲にした。ウイルスPFUを、均一化の後、死後に異なる組織中で定量した。(B)WR.ΔC12Lの増強された抗腫瘍効果。皮下CMT-93腫瘍を担持するマウスを、単回用量(1e8 PFU)のウイルスでIVで処置し、生存を追跡した(カリパス測定により決定された場合、腫瘍体積が1000mm
3に達するまでの時間と定義される)。(C)示されたウイルスで予め処置されたマウスから、およびWRへのex vivoでの曝露の後に回収された脾細胞からのIFN-γ(エフェクターT細胞産生のマーカーとして)の産生。
【
図2】ワクシニアウイルスエンベロープの脱グリコシル化を示す図である。(A)ワクシニアウイルスエンベロープタンパク質の脱グリコシル化を示すイムノブロット。精製されたWRおよびWR脱グリコシル化ウイルスを破壊し、抗B5R抗体を用いてブロットした。タンパク質重量の低下は、B5Rタンパク質の脱グリコシル化に対応する。(B)ウイルスエンベロープの脱グリコシル化は、ワクシニアウイルスの感染性に対する効果を有さない。様々なマウス腫瘍細胞株を、TK-またはその脱グリコシル化バージョンに、1のMOIで感染させ、生物発光画像化により、感染の3時間後にウイルスルシフェラーゼ発現を測定した。3つの独立した実験の平均値+SDをプロットする。(C)脱グリコシル化は、in vitroでTLR2活性化を減少させる。マウスTLR2を発現するHEK293細胞に、pNiFty(TLR-シグナリングリポータープラスミド)をトランスフェクトした。トランスフェクションの24時間後、細胞を1のMOIでWRまたは脱グリコシル化WRに感染させ、生物発光画像化により、感染の24時間後にTLR2活性化を定量した。3つの独立した実験(4回実施した)の平均+SDを記載する。(D)STAT3リン酸化は、脱グリコシル化されたワクシニアに感染させたマウスの脾臓リンパ球中で枯渇する。pSTAT1-pSTAT3+リンパ球のパーセンテージを、フローサイトメトリーにより決定した。PBSおよびPAM(3)CSK(4)を、対照として用いた。個々のマウスの値および異なる処置の平均±SEMをプロットする。(E)ワクシニアエンベロープの脱グリコシル化は、in vivoで腫瘍からのウイルス遺伝子発現を増加させる。Renca細胞(マウス腎腺癌)の皮下異種移植片を担持するBALB/cマウスを無作為化し、単回静脈内用量の1x10
8PFU/マウスのTK-または脱グリコシル化TK-に感染させた。腫瘍内からのウイルス遺伝子発現の動力学を、ウイルスルシフェラーゼ発現の生物発光画像化によりモニタリングした。12~13匹の動物の平均値+SDをプロットする。
*、PBSまたは対照と比較した有意なP<0.05。#、TK-またはWR群と比較した有意なP<0.05。φ、PAM(3)CSK(4)群と比較した有意なP<0.05。
【
図3A-C】脱グリコシル化を介するTLR2活性化の除去が治療効果の増大をもたらすことを示す図である。(A)シアリダーゼ酵素(DS)を用いるワクシニア株WRの処理は、in vitroモデルにおいてTLR2シグナリング経路活性化(TLR2を発現するようにトランスフェクトされたHEK293細胞中でのNF-κB活性化)の喪失をもたらす。(B)DS WRウイルスは、マウス腫瘍への有意に増強された全身送達を示した(BALB/cマウスにおける4T1皮下腫瘍にウイルスをIVで送達し、腫瘍中でのウイルスルシフェラーゼトランスジーン発現を生物発光画像化により24h後に決定した(N.B.非腫瘍組織はウイルス取込みの差異を示さなかった))。(C)同じモデルにおける抗腫瘍効果は、DSウイルスの治療的利点を示した。(D)ワクシニアによる感染後のTLR2活性化の喪失(TLR2ノックアウトトランスジェニックマウス)は、抗ウイルス中和抗体(WRを用いる処置の14d後に採取されたマウス血清の様々な希釈液が、WR.TK-Luc+との混合およびBSC-1細胞層の感染の後のウイルスルシフェラーゼトランスジーン発現を防止する能力として測定される中和抗体)の有意に減少した誘導をもたらす。
【
図4-1】(A)TK-TRIFウイルスの構築物を表す略図およびTK-DAIウイルスの構築物を表す略図。(B)ELISAアッセイを用いて、TK-およびTK-TRIFに感染した細胞中のTRIFの濃度を決定した。(C)TK-DAI参照からのDAIの発現を示すウェスタンブロット。
【
図5A-B】(A)ワクシニアからのTRIF発現は、B18R-株のものさえ超えて、in vitroでI型IFN産生を増強する。(B)TRIF発現は、in vivoでCTLの産生を増加させた。(C)皮下Renca腫瘍を担持するBALB/cマウスへの1e8 PFUのウイルスの単回IV送達後のin vivoでのさらに増強された治療効果。
【
図6】マウスTRIFタンパク質を発現する腫瘍溶解性ワクシニアウイルスがTLR応答経路の活性化ならびに前炎症性サイトカインおよびケモカインの放出を増加させたことを示す図である。(A~B)TK-TRIFおよびTK-DAIによる感染後のNF-κB(A)およびIRF3(B)の活性化。ELISAアッセイを用いて、それぞれ、1のMOIでTK-、TK-TRIF、またはTK-DAIに感染させた4T1またはMEF細胞の細胞質および核抽出物上でのpIKKβおよびIRF3の濃度を決定した。感染の24時間後に分析を実施した。データを、2つの独立した実験から4回取得し、倍数変化対TK-+SDとしてプロットした。破線は、TK-活性化レベルを示す。(C)TK-TRIFおよびTK-DAI感染後のin vitroでのサイトカインおよびケモカインの放出。Renca、4T1、MC38およびMEF細胞の上清中のIL-6、IP-10、TNF-α、およびIFN-β濃度を、TK-、TK-TRIFまたはTK-DAIによる感染(MOI=1)の24時間後にLuminexアッセイにより評価した。データを、倍数変化対TK-+SDとして記載する(2つの独立した実験)。破線は、TK-濃度を示す。(D)サイトカインおよびケモカインのin vivoでの腫瘍内濃度。確立されたRenca皮下異種移植片を有するBALB/cマウスを無作為化し、単回静脈内用量の1x10
8PFU/マウスのTK-またはTK-TRIFを注射した。4~5匹のマウスからの倍数変化対TK-+SDをプロットする。破線は、TK-濃度を示す。
*、TK-群と比較した有意なP<0.05。#、TK-DAI群と比較した有意なP<0.05。
【
図7】ELISAアッセイを用いて、1のMOIでTK-、TK-TRIFまたはTK-DAIに感染させた細胞中のNF-κB(A)、HMGB1(B)およびHsp-70(C)の濃度を決定した。感染の24時間後に分析を実施した。データを取得し、倍数変化対TK- +SDとしてプロットした。破線は、TK-活性化レベルを示す。TK-またはTK-TRIFウイルスによる感染に応答したヘルパーT細胞(D)および調節性T細胞(E)のレベルを分析した。
【
図8-1】TK-TRIFおよびTK-DAIの複製および抗腫瘍活性を示す図である。(A)マウス腫瘍細胞中でのTK-TRIFおよびTK-DAIのウイルス産生。様々な腫瘍細胞株を、1のMOIで感染させ、様々な時点でプラークアッセイによってウイルス産生を測定した。2つの独立した実験を実行することにより、各細胞株について4回、ウイルス収量を評価した。平均+SDをプロットする。(B)TK-TRIFおよびTK-DAIの比較細胞毒性。細胞を、75~0.00025PFU/細胞の範囲の用量で示されたウイルスに感染させた。感染後4日目のEC
50値(細胞培養生存能力の50%の低下を引き起こすのに必要とされるMOI)を示す。4つの異なる複製物を各細胞株について定量し、各MOIの平均を記載する。(C~D)in vivoでのウイルス遺伝子発現および抗腫瘍効能。RencaまたはMC38異種移植片を、それぞれ、BALB/cまたはC57BL/6マウスに埋込み、マウスに、尾静脈を介してPBSまたは1x10
8PFUのTK-、TK-TRIFまたはTK-DAIを注射した。腫瘍中でのウイルスルシフェラーゼ発現(C)および腫瘍体積(D)を、示された時点で測定した。n=12~15匹のマウス/群+SE。
*、PBSまたは対照と比較した有意なP<0.05。#、TK-群と比較した有意なP<0.05。φ、TK-DAI群と比較した有意なP<0.05。
【
図9】(A)マウス腫瘍細胞中でのTK-TRIFおよびTK-DAIのウイルス遺伝子発現。様々な腫瘍細胞株を、1のMOIで感染させ、様々な時点で生物発光画像化によりウイルスルシフェラーゼ発現を定量した。2つの独立した実験を実施することにより、各細胞株について4回、ルシフェラーゼ発現を評価した。平均+SDをプロットする。(B)TK-TRIFおよびTK-DAIによる感染後のアポトーシス細胞のパーセンテージ。マウス腫瘍細胞株のパネルを、1のMOIを用いて示されたウイルスに感染させた。感染後48時間で、PIおよびアネキシンV染色によるフローサイトメトリーによって、壊死細胞およびアポトーシス細胞のパーセンテージを決定した。2つの独立した実験を実施し、平均+SDをプロットする。(C~D)TK-TRIFは、乳腺半同所性モデルにおいてTK-GMCSFの抗腫瘍効能を改善する。4T1細胞を、BALB/cマウスの乳腺脂肪体中に埋込み、一度、腫瘍が確立されたら、マウスに、尾静脈を介してPBSまたは1x10
8PFUのTK-、TK-TRIFまたはTK-GMCSFを注射した。腫瘍内からのウイルスルシフェラーゼ発現(C)および腫瘍体積(D)を、示された時点で測定した。n=12~14匹のマウス/群+SE。(E~F)TK-TRIFは、腫瘍を担持するマウスの生存を改善する。それぞれ、Renca(E)またはMC38(F)異種移植片を担持するBALB/cまたはC57BL/6マウスを、
図3dに記載のように処置し、750mm
3以上の腫瘍体積に終点を確立した。Kaplan-Meyer生存曲線をプロットする。n=12~15匹のマウス/群。
*、PBSまたは対照と比較した有意なP<0.05。#、TK-群と比較した有意なP<0.05。φ、TK-GMCSF群と比較した有意なP<0.05。ω、TK-DAI群と比較した有意なP<0.05。
【
図10】(A)脱グリコシル化TK-TRIFの静脈内投与後の体重変化。BLAB/cマウスに、1x10
8PFU/マウスのTK-、TK-TRIF、または脱グリコシル化TK-TRIFを静脈内注射した。リン酸緩衝生理食塩水(PBS)投与を、対照群において用いた。TK-を注射したマウスは、ウイルス注射後6日目で体重の10%を超える減少を示したが、TK-TRIFおよび脱グリコシル化TK-TRIFを注射したマウスはPBSを注射したものと同様の体重プロファイルを示した。(B)脱グリコシル化TK-TRIFの投与後のin vivoでのウイルス遺伝子発現。Renca腫瘍をBALB/cマウスに埋込み、マウスに、尾静脈を介してPBSまたは1x10
8PFUのTK-、TK-TRIFまたは脱グリコシル化TK-TRIFを注射した。腫瘍内からのウイルスルシフェラーゼ発現を、示された時点で測定した。n=12~14匹のマウス/群+SE。(C~D)脱グリコシル化TK-TRIFで処置された腫瘍担持マウスの生存。(C~D)Renca(C)またはMC38(D)異種移植片を、それぞれ、BALB/cまたはC57BL/6マウス中で確立し、単回静脈内用量の1x10
8PFUの示されたウイルスまたはPBSで処置した。750mm
3以上の腫瘍体積に終点を確立し、Kaplan-Meyer生存曲線をプロットする。n=12~15匹のマウス/群。(E)脱グリコシル化TK-TRIFは、TK-GMCSF処置と比較して生存を改善した。マウス(皮下Renca腫瘍を担持するBALB/c)を、尾静脈を介する、PBSまたは単回用量の1x10
8PFUのTK-GMCSFもしくは脱グリコシル化TK-TRIFの注射により処置した。腫瘍体積について750mm
3以上の終点を確立した後、Kaplan-Meyer生存曲線を取得した。
*、PBS群と比較した有意なP<0.05。#、TK-群と比較した有意なP<0.05。φ、脱グリコシル化TK-群と比較した有意なP<0.05。ω、TK-TRIF群と比較した有意なP<0.05。Ψ、TK-GMCSF群と比較した有意なP<0.05。
【
図11】エンベロープ脱グリコシル化とマウスTRIF発現との組合せが、抗腫瘍細胞応答を強化し、強力な抗腫瘍効能を示したことを示す図である。(A~B)IFN-γELISpotアッセイにより評価されたワクシニアウイルスおよび腫瘍細胞に対する細胞免疫応答。ウイルス投与後7日目に、1x10
8PFUの示されたウイルスまたはPBSを静脈内注射したマウス(Renca異種移植片を担持するBALB/cマウス)から脾臓を収獲し、ワクシニアウイルス(A)またはRenca細胞(B)を認識するCTLの量について評価した。個々のマウスの値と平均±SEMを記載する。(C)血清中和抗体力価。中和アッセイを実施して、1x10
8PFUのTK-、TK-TRIFまたは脱グリコシル化TK-TRIFを注射したマウスについて循環抗ワクシニア抗体レベルを決定した。感染の少なくとも50%の阻害をもたらす最も高い希釈率の血清により、Nab力価を決定した。個々のマウスの値と平均±SEMとをプロットする。(D~E)異なるモデルにおけるin vivoでの抗腫瘍活性。Renca腫瘍異種移植片を担持するBALB/c(D)またはMC38腫瘍異種移植片を担持するC57BL/6(E)を、単回静脈内用量の示されたウイルス(1x10
8PFU/マウス)で処置した。腫瘍増殖を、カリパス測定により追跡した。12~15匹のマウス/群の平均+SEを記載する。(F)脱グリコシル化TK-TRIFは、TK-GMCSFよりも高い抗腫瘍活性を示した。Renca異種移植片を担持するBALB/cマウスに、1x10
8PFU/マウスの用量のTK-GMCSFまたは脱グリコシル化TK-TRIFを静脈内注射した。ウイルス投与後の相対腫瘍体積をプロットする(n=12~15匹のマウス/群+SE)。
*、PBS群と比較した有意なP<0.05。#、TK-群と比較した有意なP<0.05。φ、脱グリコシル化TK-群と比較した有意なP<0.05。ω、TK-TRIF群と比較した有意なP<0.05。
【
図12A-B】(A)DSで処理し、C12Lを枯渇させ、mTRIFを発現するワクシニア株WR(UPCI-1812と呼ばれる)は、現在の臨床株WR.TK-GM-CSF+(JX-594株のモデルとして)と比較して4T1腫瘍を担持するBALB/cマウスにおいて増強された抗腫瘍効果を示した。UPCI-1812ウイルスはまた、(B)インターフェロンガンマおよび(C)インターロイキン-12を含む、腫瘍微小環境中の免疫治療サイトカインの産生の増加を示した。
【
図13-1】(A)様々な腫瘍細胞株の生存を、TK-によるウイルス感染の際に分析した。(B)ある特定の腫瘍細胞株を埋込んだBALB/cおよびC57BL/6マウスから誘導される腫瘍中でのウイルス遺伝子発現、ならびにある特定の腫瘍細胞株を埋込まれ、TK-に感染したBALB/cおよびC57BL/6から得られた腫瘍の体積。(C)ある特定の腫瘍細胞株を埋込まれ、TK-で処置されたBALB/cおよびC57BL/6マウスから誘導される腫瘍中の骨髄性細胞中でのリン酸化Sp6の検出。
【
図14-1】(A)腫瘍を担持しないか、またはLLCもしくはB16細胞から誘導される皮下腫瘍(50~100mm
3)を担持するマウスを、1x10
7PFUのWR.TK-の単回静脈内注射により処置した。マウス(n=3/群および時間)を示された時間で犠牲にし、脾臓および血清を回収した。脾細胞を迅速に固定し、透過処理し(本発明者らの以前に公開されたプロトコールに従う)、次いで、phosflowについて染色して、シグナリング経路の活性化を検出した。これを、調節性T細胞(CD3+CD4+CD8-FoxP3+CD25+)について実施し、pSTAT5、pS6およびKi67を分析した;CD4 T細胞(CD3+CD4+CD8-FOXP3-)について実施し、pS6、Ki67、CD44およびCD62Lを分析した;CD8 T細胞(CD3+CD4-CD8+FoxP3-)について実施し、pS6、Ki67、CD44およびCD62Lを分析した。(B)抗ウイルス中和抗体レベルも血清中で検査した。
【
図15】(A)TK-に感染させた様々なマウス腫瘍モデルにおける調節性T細胞およびMDSC細胞の濃度。(B)TK-に感染させた4T1およびMC38マウス腫瘍モデルにおける調節性T細胞、MDSC細胞およびCD8+T細胞の濃度。
【
図16A】(A)脾細胞または脱凝集化された腫瘍から回収された細胞に関するMDSC(左)およびT細胞およびT-reg(右)の検出のためのゲーティング戦略を示す。(B)脾臓中のMDSCおよびT-regのレベルを、異なる腫瘍を担持するマウスについて示す。
【
図17A-B】(A)TK-ワクシニア株は、ベースラインで高レベルのMDSCを示すマウス腫瘍モデルにおいて中央生存を増加させる(PBS対照と比較)非常に弱い能力を示す。また、TK-ウイルス療法は、(B)処理された腫瘍中のT-regのレベルを低下させることができるが、(C)MDSCレベルに対する影響を有さない。
【
図18】TK-感染により惹起された免疫応答と比較した、免疫原性ワクシニア株、GM-CSF、WR.TK-GM-CSF、WR.B18R-IFNα+、WR.B18R-IFNβ+およびWR.B18R-IFNγ+による処置の際にMC38腫瘍細胞を埋込まれたマウスにおける免疫応答の分析を示す図である。
【
図19】TK-感染により惹起された免疫応答と比較した、免疫原性ワクシニア株、GM-CSF、WR.TK-GMCSF、およびWR.B18R-IFNβ+による処置の際に4T1腫瘍細胞を埋込まれたマウスにおける免疫応答の分析を示す図である。
【
図20】WR-TK-HPGDの発現またはCox2阻害剤セレコキシブの処置の際のCOX2およびHPGDの発現を示す図である。ベータ-アクチンを、ローティング対照として検出した。PGE2の発現を、WR-TK-HPGDもしくはWR TK-による感染またはセレコキシブの処置の際にRenca細胞中で決定した。
【
図21】腫瘍溶解性ワクシニアからのHPGD発現が腫瘍中のMDSCを減少させ、ウイルス療法に対する耐性腫瘍を感作することを示す図である。(A)腫瘍中のT-regおよびMDSCレベルに対するHPGD発現の効果。Renca腫瘍を担持するマウスを、示されたウイルスの腫瘍内低用量(1x10
7PFU)注射を用いて処置し、示された時点でマウスを犠牲にし、腫瘍を回収し、脱凝集化させ、以前に記載のようにフローサイトメトリーにより分析した。HPGD発現は、MDSCおよびT-regレベルを低下させる(
*対照と比較したp<0.05)。(B)WR.TK-.HPGD+の増強された治療活性。皮下RencaまたはMC38腫瘍を担持するマウスを、PBSまたは1x10
7PFUのWR.TK-もしくはWR.TK-HPGD+の単回腫瘍内注射により処置した後、腫瘍増殖をカリパス測定により追跡した(n=15匹/群;WR.TK-HPGD+は、WR.TK-と比較して3日目(RENCA)または7日目(MC38)から腫瘍増殖を有意に(p<0.05)遅延させ、RENCAについては3つの完全な応答を、MC38については2つの完全な応答をもたらした。他の群からのマウスはCRを示さなかった)。(C)WR.TK-.HPGD+処置に関する腫瘍増殖およびウイルス遺伝子発現の比較。Renca腫瘍を有し、WR.TK-HPGD+で処置された個々のマウスの腫瘍増殖をプロットし、PBS対照(灰色のバー)と比較し、良好な(実線)および最良の(破線)応答者に分割した。1日目および5日目での腫瘍からの生物発光シグナル(ウイルス遺伝子発現)を腫瘍体積に対して正規化し、良好な応答者と最良の応答者の両方について示した。(D)HPGD発現は、ウイルス遺伝子発現を低下させない。WR.TK-またはWR.TK-HPGD+を用いる処置後24hでの腫瘍内からのウイルスルシフェラーゼ遺伝子発現を示す。
【
図22】PBS対照(CTL;丸)、チミジンキナーゼ陰性Western Reserve VV(WR TK-; 四角)またはHPGDを担持するチミジンキナーゼ(TK)陰性Western Reserve VV(WR TK-HPGD、三角)を用いる処置後の日数の関数としての腫瘍体積を示す図である(HPGDは、ヒト15-PGDHタンパク質のマウス等価物である)。
【
図23A-B】(A)WR TK-に感染したマウスの脾臓;(B)WR TK-HPGDに感染したマウスの脾臓;(C)WR TK-に感染したマウスの腫瘍;および(D)WR TK-HPGDに感染したマウスの腫瘍におけるMDSCのパーセントを示す図である。
【
図24】HPGD発現が、免疫応答を増強し、腫瘍への免疫細胞輸送を変化させることを示す図である。(A)異なる処置後の腫瘍におけるサイトカインおよびケモカインプロファイル。RENCA腫瘍を担持するマウスを、1x10
7PFUの異なるウイルス株ITで示されるように処置し、3日後に犠牲にした。腫瘍ホモジェネートをLuminexアッセイ上で実行して、様々なサイトカインおよびケモカインを定量した(
*p<0.05)。(B)抗腫瘍CTL応答はHPGD発現と共に増加する。示された処置の7日後にRENCA腫瘍担持マウスから採取された脾細胞を、ELISPOTにより決定されるように抗腫瘍CTL応答について定量した(
*p<0.06)。(C)異なる処置後のケモカインレベルの全身変化。示された処置の3日後にRENCA腫瘍担持マウスから採取された血清を、ELISAによりケモカインレベルについて定量した(p<0.05)。(D)活性化された免疫細胞は、HPGDを発現するウイルスに感染した腫瘍を選択的に標的化する。マウスに、両側RENCA腫瘍を埋込み、これらが50~100mm
3に達した時、これらの一方の脇腹に1x10
7PFUのWR.TK-を注射し、反対の脇腹にWR.TK-HPGD+を注射し、24h後、1x10
7の活性化され、Cy5.5標識されたNK T(CIK)細胞を尾静脈注射により送達した。24h後、マウスを、生物発光(ウイルス遺伝子発現)および蛍光(腫瘍へのNK T細胞輸送)について画像化した(
*p<0.05)。蛍光画像化の代表例を示す。
【
図25】未処置の腫瘍と比較したWR.TK-に感染した腫瘍におけるCOX2発現を示す図である。
【
図26A】(A)TK-による感染の際の様々な細胞株の生存。(B)様々な腫瘍細胞株におけるウイルス産生およびTK-の遺伝子発現。
【
図27】感染の4日目または5日目の後のTK-に感染したMC-38、LLCおよびAB12マウス腫瘍モデルのウイルス遺伝子発現を示す図である。
【
図28】PBSによる処置または脱グリコシル化WR.TK-TRIF+-(UPCI-1812)、HPGDを担持するWestern Reserve TK-(VV-HPGD)またはHPGD発現と組み合わせたUPCI-1812による感染の後の日数の関数としての腫瘍増殖を示す図である。
【
図29】増強されたEEV産生(A34R突然変異K151E)が、抗ウイルス中和抗体の減少(WRまたはEEVのIP送達の14日後)をもたらすことを示す図である。
【
図30】TRIFドメインを示す図である。ヒトTRIFアミノ酸配列中、3つのTRAF結合ドメインおよびRIP1に結合するRHIMドメインが存在する。
【発明を実施するための形態】
【0008】
5. 発明の詳細な説明
限定としてではなく、明確に説明するために、本発明の詳細な説明を以下のサブセクションに分割する:
(i)ウイルス骨格の突然変異;
(ii)ウイルスグリコシル化の改変;
(iii)T細胞応答を促進する改変;
(iv)免疫抑制を阻害する改変;
(v)ウイルス拡散および活性を増強する改変;
(vi)改変されたウイルス;
(vii)処置方法;ならびに
(viii)キット。
【0009】
本明細書で用いられる用語「相同性」とは、当業界で公知の方法、例えば、限定されるものではないが、BLASTまたはFASTAなどのソフトウェアを用いて決定される、核酸またはアミノ酸配列の間の相同性の程度を指す。
【0010】
5.1 ウイルス骨格の突然変異
本発明のある特定の非限定的実施形態においては、VVは、癌細胞中でのウイルスの複製および/または細胞傷害性Tリンパ球(CTL)免疫応答の誘導の増加を好むそのゲノムの1つ以上の突然変異を含有する。突然変異は、天然ウイルスの1つ以上の核酸の挿入、欠失、または置換であってもよい。
【0011】
特定の非限定的実施形態においては、突然変異は、機能的インターロイキン-18結合タンパク質(「IL-18BP」)発現の低下をもたらす。非限定例として、(i)突然変異は、天然VVタンパク質より弱いIL-18への結合を示すタンパク質をもたらしてもよい;(ii)突然変異は、機能的活性が低下したか、もしくは存在しないトランケート型タンパク質の発現をもたらしてもよい;または(iii)突然変異は、IL-18BP遺伝子を欠失してもよい。特定の非限定例においては、突然変異は、C12L欠失であってもよい(例えば、Symonsら、2002, J. Gen.Virol. 83:2833-2844を参照されたい)。ある特定の実施形態においては、C12L欠失は、C12Lの完全な欠失または部分的な欠失であってもよい。例えば、限定されるものではないが、C12Lの部分的欠失は、C12Lタンパク質のアミノ酸配列の少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%または少なくとも40%以上の欠失をもたらす突然変異を含んでもよい。
【0012】
さらなる非限定的実施形態においては、ウイルス骨格は、別々に、または上記のIL-18BPをコードする核酸中の1つ以上の突然変異(欠失を含む)に加えて、B8R(IFNガンマ結合タンパク質;例えば、Symonsら、1995, Cell. 81(4):551-60を参照されたい)、B18R (I型IFN結合タンパク質; 例えば、Colamoniciら、1995、J. Biol. Chem. 270(27):15974-8を参照されたい)、A35R (MHC II提示の阻害剤; 例えば、Rehmら、2010、Virology. 397(1):176-86およびRoperら、2006、J. Virol. 80(1):306-13を参照されたい)、B15R (IL-1β結合タンパク質;例えば、Alcamiら、1992、Cell. 71(1):153-67を参照されたい)、ケモカイン結合タンパク質(B29R、G3R、H5R)、STAT1阻害剤(H1L); dsRNAまたはPKR阻害剤、例えば、E3L (例えば、Changら、1992、Proc. Natl. Acad. Sci. 89(11):4825-9を参照されたい)もしくはK3L (例えば、Daviesら、1993、J. Virol. 67(3):1688-92およびLanglandら、2002、Virology. 299(1):133-41を参照されたい); Bcl-2様タンパク質(N1、N2、B14、F1、C6、A46およびK7など)、またはその組合せをコードする核酸中に突然変異を含有してもよい。
【0013】
5.2 ウイルスグリコシル化の改変
本発明のある特定の非限定的実施形態においては、VVを、グリコシル化を改変する薬剤で処理する。例えば、VVを産生する細胞にグリコシル化阻害剤を投与する、および/もしくはそれをグリコシル化阻害剤の存在下で培養するか、またはVVを、グリコシル化を減少させるか、もしくは除去するか、もしくは改変する薬剤で処理することができる。ある特定の実施形態においては、VVを酸処理にかけて、ウイルスのグリコシル化を減少させることができる。ある特定の実施形態においては、本発明のVVを、例えば、1つ以上のグリコシル化酵素中の突然変異のためにグリコシル化活性を有さない細胞株中で産生することができる。
【0014】
ある特定の実施形態においては、グリコシル化を減少させるか、または除去するか、または改変する薬剤で処理されたVV、例えば、脱グリコシル化されたウイルスは、グリコシル化を改変する薬剤で処理されなかったVVのグリコシル化の約90%未満、約80%未満、約70%未満、約60%未満、約50%未満、約40%未満、約40%未満、約20%未満または約10%未満を有してもよい。
【0015】
特定の非限定的実施形態においては、本発明のVVを、ウイルス表面(例えば、エンベロープ)からシアル酸を減少させるか、または除去するシアリダーゼ酵素で処理することができる。非限定的実施形態においては、VVをシアリダーゼ酵素で処理した後、対象に投与する。特定の非限定的実施形態においては、シアリダーゼ酵素は、例えば、Glycopro Enzymatic Deglycosylationキット(製品コード:GK80110、Prozyme)の一部としてのシアリダーゼA酵素(Glyko Sialidase A、コードWS0042)。ある特定の実施形態においては、VVを、N-およびO-グリカナーゼと組み合わせたシアリダーゼAで処理することができる。限定されるものではないが、ノイラミニダーゼ、PNGase(例えば、PNGase AまたはPNGase F)、β1-4ガラクトシダーゼ、β-N-アセチルグルコサミニダーゼ、またはb-除去もしくはアルカリもしくはヒドラジノイルなどの化学的処理の使用を含む、ウイルスからシアル酸を除去するか、またはグリコシル残基を切断する他の酵素を本発明に従って用いることもできる。
【0016】
いかなる特定の理論にも束縛されるものではないが、例えば、ワクシニアウイルスのシアリダーゼ処理によるグリコシル化の減少は、TLR2活性化を減少させ、それによって、ウイルス送達の期間中の全身免疫活性化を遅延させる、および/または抗ウイルス中和抗体の産生を減少させると考えられる。
【0017】
5.3 T細胞応答を促進する改変
本発明のある特定の非限定的実施形態においては、VVを、T細胞応答を促進するペプチドまたはタンパク質をコードする1つ以上の核酸を含むように改変する。ある特定の実施形態においては、T細胞応答を促進するペプチドまたはタンパク質は、1つまたは複数の前炎症性サイトカインの発現を促進することができる。例えば、限定されるものではないが、前炎症性サイトカインとして、IL-4、IL-5、IL-6、IL-12、IL-15、IL-18、IL-21、IFN-α、IFN-β、IFN-γ、CCL5およびIP-10を含んでもよい。
【0018】
T細胞応答を促進するペプチドまたはタンパク質の非限定的発現は、IFN-βを誘導するToll/IL-1Rドメイン含有アダプター(「TRIF」)またはその機能的ドメインを含む。ある特定の非限定的実施形態においては、核酸は、UniProtKB番号Q8IUC6に記載のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも約90パーセント、少なくとも約95パーセントもしくは少なくとも約98パーセント相同なアミノ酸配列を有するヒトTRIF、またはUniProtKB番号Q80UF7に記載のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも約90パーセント、少なくとも約95パーセントもしくは少なくとも約98パーセント相同なアミノ酸配列を有するマウスTRIFをコードしてもよい。
【0019】
ある特定の非限定的実施形態においては、核酸は、
図30に記載の1つ以上のTRIFドメインをコードしてもよい。ある特定の実施形態においては、T細胞応答を促進するペプチドまたはタンパク質、例えば、TRIFをコードする核酸を、
図4Aに記載のようにウイルスのチミジンキナーゼ(TK)遺伝子の遺伝子座にクローニングすることができる。T細胞応答を促進するペプチドまたはタンパク質をコードする核酸を、該核酸の発現をもたらすことができる任意のプロモーターに機能し得る形で連結することができる。本明細書で用いられる場合、「機能し得る形で連結された」とは、プロモーターが、その配列の転写開始および/または発現を制御する核酸配列に関して正しい機能的位置および/または方向にあることを意味する。ある特定の実施形態においては、プロモーターは、ワクシニアプロモーターおよび/または合成ワクシニアプロモーターである。ある特定の実施形態においては、プロモーターは、合成ワクシニアプロモーターpSE/Lである。ある特定の実施形態においては、T細胞応答を促進するペプチドまたはタンパク質をコードする核酸を、ウイルスp7.5プロモーターに機能し得る形で連結する。
【0020】
他の非限定的実施形態においては、核酸は、顆粒球-マクロファージコロニー刺激因子(「GM-CSF」)、IL-12、IFN-γまたはIL-18をコードしてもよい。ある特定の実施形態においては、1つを超えるそのような核酸をVV中に組込むことができる。
【0021】
5.4 免疫抑制を阻害する改変
本発明のある特定の非限定的実施形態においては、VVを、免疫抑制を阻害するか、または軽減するペプチドまたはタンパク質またはリボ核酸またはマイクロRNAをコードする1つ以上の核酸を含むように改変する。免疫抑制の尺度の非限定例としては、骨髄由来抑制細胞(「MDSC」)のレベル;M2マクロファージのレベル;およびヘルパーT細胞とサプレッサー調節性T細胞のレベルが挙げられる。特定の非限定的実施形態においては、核酸は、プロスタグランジンE2活性を低下させるペプチドまたはタンパク質またはリボ核酸またはマイクロRNAをコードする(「PGE2アンタゴニスト」)。特定の非限定的実施形態においては、核酸は、PGE2を分解するPGE2アンタゴニスト(この用語は本明細書で用いられる通りである)であるペプチドおよび/またはタンパク質をコードする。特定の非限定例においては、PGE2を分解するタンパク質は、15-PGDH(ヒト)またはHPGD(マウス)である。例えば、限定されるものではないが、15-PGDHは、UniProtKB番号P15428に記載のアミノ酸配列、またはそれと少なくとも約90パーセント、少なくとも約95パーセントもしくは少なくとも約98パーセント相同なアミノ酸配列を有してもよく、15-PGDHをコードする核酸は、GenBank受託番号U63296.1に記載の核酸配列、またはそれと少なくとも約90パーセント、少なくとも約95パーセントもしくは少なくとも約98パーセント相同な核酸配列を有してもよい。さらなる非限定的実施形態においては、PGE2のための分泌型および可溶化型の細胞外受容体をコードする核酸、例えば、EP3およびEP4がより高い親和性を有する、EP1、EP2、EP3および/またはEP4をコードする核酸を、VV中に含有させることができる。ある特定の実施形態においては、免疫抑制を阻害するか、または軽減する1つ以上のペプチドまたはタンパク質は、限定されるものではないが、CXCL12などの1つ以上の抑制的ケモカインの発現の低下をもたらすことができる。ある特定の実施形態においては、免疫抑制を阻害するか、または軽減する1つ以上のペプチドまたはタンパク質は、限定されるものではないが、CXCL9、CXCL10およびCCL5などの1つ以上の免疫活性化ケモカインの発現の増加をもたらすことができる。
【0022】
ある特定の実施形態においては、PGE2アンタゴニストをコードする核酸を、ウイルスのチミジンキナーゼ(TK)遺伝子の遺伝子座にクローニングすることができる。PGE2アンタゴニストペプチドまたはタンパク質をコードする核酸を、該核酸の発現をもたらすことができる任意のプロモーターに機能し得る形で連結することができる。ある特定の実施形態においては、PGE2アンタゴニストペプチドまたはタンパク質をコードする核酸を、ウイルスp7.5プロモーターに機能し得る形で連結する。ある特定の実施形態においては、プロモーターは、ワクシニアプロモーターおよび/または合成ワクシニアプロモーターである。ある特定の実施形態においては、プロモーターは、合成ワクシニアプロモーターpSE/Lである。ある特定の実施形態においては、ウイルスは、PGE2アンタゴニストをコードする核酸と、両方ともプロモーター、例えば、ウイルスp7.5プロモーターに機能し得る形で連結され、ウイルスのチミジンキナーゼ(TK)遺伝子の遺伝子座にクローニングされるT細胞応答を促進するペプチドまたはタンパク質をコードする核酸とを含んでもよい。
【0023】
さらなる非限定的実施形態においては、本発明の免疫腫瘍溶解性ウイルスを、例えば、限定されるものではないが、抗CD33抗体もしくはその可変領域などのMDSCの表面マーカーを標的とする抗体;抗CD11b抗体もしくはその可変領域;COX2阻害剤、例えば、セレコキシブ;スニチニブおよび/またはオールトランスレチノイン酸などの、MDSCを阻害するか、または減少させる薬剤と一緒に投与することができる(例えば、NajjarおよびFinke, 2013, Frontiers in Oncology, 3(49) 1-9を参照されたい)。
【0024】
5.5 ウイルス拡散および活性を増強する改変
本発明のある特定の非限定的実施形態においては、VVを、ウイルスの拡散および/または活性を増強するように改変する。特定の非限定的実施形態においては、VVを、例えば、以下の突然変異:A34R Lys151からGlu;B5Rの完全もしくは部分的欠失;A36Rの突然変異/欠失および/またはA56Rの突然変異/欠失のうちの1つ以上を導入することにより、産生される細胞外エンベロープ型のウイルスの量を増加させるように改変する。ある特定の実施形態においては、VVを、B5Rの完全または部分的欠失を含むように改変する。
【0025】
5.6 改変されたウイルス
非限定的実施形態においては、本発明は、上記のセクションに記載されたような、以下の改変:
(i)ウイルス骨格突然変異;
(ii)ウイルスグリコシル化の改変;
(iii)T細胞応答を促進する改変;
(iv)免疫抑制を阻害する改変;ならびに/または
(v)ウイルス拡散および活性を増強する改変
の1つ以上、または2つ以上、または3つ以上、または4つ以上を含む免疫腫瘍溶解性VVを提供する。
【0026】
非限定的実施形態においては、本発明は、ウイルスグリコシル化の改変と、上記のセクションに記載されたような、以下の改変:
(i)ウイルス骨格突然変異;
(ii)T細胞応答を促進する改変;
(iii)免疫抑制を阻害する改変;ならびに/または
(iv)ウイルス拡散および活性を増強する改変
の1つ以上とを含むVVを提供する。
【0027】
非限定的実施形態においては、本発明は、宿主への投与の前にグリコシル化(例えば、シアル化)の量を減少させる薬剤で処理され、上記のセクションに記載されたような、以下の改変:
(i)ウイルス骨格突然変異;
(ii)T細胞応答を促進する改変;
(iii)免疫抑制を阻害する改変;ならびに/または
(iv)ウイルス拡散および活性を増強する改変
の1つ以上を含むか、または担持するか、または含有するVVを提供する。
【0028】
非限定的実施形態においては、本発明は、非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化(例えば、シアル化)を有し、上記のセクションに記載されたような、以下の改変:
(i)ウイルス骨格突然変異;
(ii)T細胞応答を促進する改変;
(iii)免疫抑制を阻害する改変;ならびに/または
(iv)ウイルス拡散および活性を増強する改変
の1つ以上を含むか、または担持するか、または含有するVVを提供する。
【0029】
非限定的実施形態においては、本発明は、宿主への投与の前にグリコシル化の量を減少させる薬剤で処理されるか、またはさもなければ非改変ウイルスと比較して、減少したグリコシル化を有するVV、すなわち、脱グリコシル化されたウイルスを提供する。
【0030】
非限定的実施形態においては、本発明は、宿主への投与の前にシアリダーゼで処理されるか、またはさもなければ非改変ウイルスと比較して減少したシアル酸残基を有するVVを提供する。
【0031】
非限定的実施形態においては、本発明は、TIRFをコードする核酸を含むか、または担持するか、または含有するVVを提供する。
【0032】
非限定的実施形態においては、本発明は、PGE2アンタゴニスト(例えば、15-PGDHまたはHPGD)をコードする核酸を含むか、または担持するか、または含有するVVを提供する。
【0033】
非限定的実施形態においては、本発明は、A34R Lys151からGluへの突然変異;B5Rの完全もしくは部分的な欠失;A36Rの突然変異/欠失および/またはA56Rの突然変異/欠失の群から選択されるウイルス拡散および活性を増強する1つ以上の改変を含むVVを提供する。
【0034】
非限定的実施形態においては、本発明は、機能的IL-18BP(例えば、C12L欠失)、B8R欠失、B18R欠失、A35R欠失、またはその組合せの発現を減少させる突然変異の群から選択される1つ以上のウイルス骨格改変を含むVVを提供する。
【0035】
非限定的実施形態においては、本発明は、宿主への投与の前にグリコシル化の量を減少させる薬剤で処理されるか、またはさもなければ非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化を有し、TRIFまたはその機能的ドメインをコードする核酸をさらに含む、または担持する、または含有するVVを提供する。
【0036】
非限定的実施形態においては、本発明は、宿主への投与の前にグリコシル化(例えば、シアル化)の量を減少させる薬剤で処理されるか、またはさもなければ非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化(例えば、減少したシアル化)を有し、PGE2アンタゴニスト(例えば、15-PGDHまたはHPGD)をコードする核酸をさらに含む、または担持する、または含有するVVを提供する。
【0037】
非限定的実施形態においては、本発明は、宿主への投与の前にグリコシル化(例えば、シアル化)の量を減少させる薬剤で処理されるか、またはさもなければ非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化(例えば、減少したシアル化)を有し、TRIFもしくはその機能的ドメインをコードする核酸および/またはPGE2アンタゴニスト(例えば、15-PGDHもしくはHPGD)をコードする核酸をさらに含む、または担持する、または含有するVVを提供する。
【0038】
非限定的実施形態においては、本発明は、宿主への投与の前にグリコシル化(例えば、シアル化)の量を減少させる薬剤で処理されるか、またはさもなければ非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化(例えば、減少したシアル化)を有し、A34R Lys151からGluへの突然変異;B5Rの完全もしくは部分的な欠失;A36Rの突然変異/欠失および/またはA56Rの突然変異/欠失の群から選択されるウイルス拡散および活性を増強する1つ以上の改変をさらに含むVVを提供する。ある特定の実施形態においては、本発明は、B5Rの完全または部分的な欠失を含む脱グリコシル化されたVVを提供する。
【0039】
非限定的実施形態においては、本発明は、宿主への投与の前にグリコシル化(例えば、シアル化)の量を減少させる薬剤で処理されるか、またはさもなければ非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化(例えば、減少したシアル化)を有し、機能的IL-18BP(例えば、C12L欠失)、B8R欠失、B18R欠失、A35R欠失、またはその組合せの発現を減少させる突然変異の群から選択される1つ以上のウイルス骨格改変をさらに含むVVを提供する。
【0040】
非限定的実施形態においては、本発明は、宿主への投与の前にグリコシル化(例えば、シアル化)の量を減少させる薬剤で処理されるか、またはさもなければ非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化(例えば、減少したシアル化)を有し、機能的IL-18BP(例えば、C12L欠失)、B8R欠失、B18R欠失、A35R欠失、またはその組合せの発現を減少させる突然変異の群から選択される1つ以上のウイルス骨格改変をさらに含み、A34R Lys151からGluへの突然変異;B5Rの完全もしくは部分的な欠失;A36Rの突然変異/欠失および/またはA56Rの突然変異/欠失の群から選択されるウイルス拡散および活性を増強する1つ以上の改変をさらに含むVVを提供する。ある特定の実施形態においては、本発明は、C12L欠失およびB5R欠失を含む脱グリコシル化されたVVを提供する。
【0041】
非限定的実施形態においては、本発明は、宿主への投与の前にグリコシル化(例えば、シアル化)の量を減少させる薬剤で処理されるか、またはさもなければ非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化(例えば、減少したシアル化)を有し、TRIFまたはその機能的ドメインをコードする核酸をさらに含む、または担持する、または含有し、機能的IL-18BP(例えば、C12L欠失)、B8R欠失、B18R欠失、A35R欠失、またはその組合せの発現を減少させる突然変異の群から選択される1つ以上のウイルス骨格改変をさらに含むVVを提供する。ある特定の実施形態においては、ウイルスは、C12L欠失を含む。
【0042】
非限定的実施形態においては、本発明は、宿主への投与の前にグリコシル化(例えば、シアル化)の量を減少させる薬剤で処理されるか、またはさもなければ非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化(例えば、減少したシアル化)を有し、PGE2アンタゴニスト(例えば、15-PGDHまたはHPGD)をコードする核酸をさらに含む、または担持する、または含有し、機能的IL-18BP(例えば、C12L欠失)、B8R欠失、B18R欠失、A35R欠失、またはその組合せの発現を減少させる突然変異の群から選択される1つ以上のウイルス骨格改変をさらに含むVVを提供する。
【0043】
非限定的実施形態においては、本発明は、宿主への投与の前にグリコシル化(例えば、シアル化)の量を減少させる薬剤で処理されるか、またはさもなければ非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化(例えば、減少したシアル化)を有し、TRIFもしくはその機能的ドメインをコードする核酸およびPGE2アンタゴニスト(例えば、15-PGDHもしくはHPGD)をコードする核酸をさらに含む、または担持する、または含有し、機能的IL-18BP(例えば、C12L欠失)、B8R欠失、B18R欠失、A35R欠失、またはその組合せの発現を減少させる突然変異の群から選択される1つ以上のウイルス骨格改変をさらに含むVVを提供する。
【0044】
非限定的実施形態においては、本発明は、宿主への投与の前にグリコシル化(例えば、シアル化)の量を減少させる薬剤で処理されるか、またはさもなければ非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化(例えば、減少したシアル化)を有し、TRIFまたはその機能的ドメインをコードする核酸をさらに含む、または担持する、または含有し、A34R Lys151からGluへの突然変異;B5Rの完全もしくは部分的な欠失;A36Rの突然変異/欠失および/またはA56Rの突然変異/欠失の群から選択されるウイルス拡散および活性を増強する1つ以上の改変をさらに含むVVを提供する。
【0045】
非限定的実施形態においては、本発明は、宿主への投与の前にグリコシル化(例えば、シアル化)の量を減少させる薬剤で処理されるか、またはさもなければ非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化(例えば、減少したシアル化)を有し、PGE2アンタゴニスト(例えば、15-PGDHまたはHPGD)をコードする核酸をさらに含む、または担持する、または含有し、A34R Lys151からGluへの突然変異;B5Rの完全もしくは部分的な欠失;A36Rの突然変異/欠失および/またはA56Rの突然変異/欠失の群から選択されるウイルス拡散および活性を増強する1つ以上の改変をさらに含むVVを提供する。
【0046】
非限定的実施形態においては、本発明は、宿主への投与の前にグリコシル化(例えば、シアル化)の量を減少させる薬剤で処理されるか、またはさもなければ非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化(例えば、減少したシアル化)を有し、TRIFもしくはその機能的ドメインをコードする核酸およびPGE2アンタゴニスト(例えば、15-PGDHもしくはHPGD)をコードする核酸をさらに含む、または担持する、または含有し、A34R Lys151からGluへの突然変異;B5Rの完全もしくは部分的な欠失;A36Rの突然変異/欠失および/またはA56Rの突然変異/欠失の群から選択されるウイルス拡散および活性を増強する1つ以上の改変をさらに含むVVを提供する。
【0047】
非限定的実施形態においては、本発明は、宿主への投与の前にグリコシル化(例えば、シアル化)の量を減少させる薬剤で処理されるか、またはさもなければ非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化(例えば、減少したシアル化)を有し、TRIFもしくはその機能的ドメインをコードする核酸およびPGE2アンタゴニスト(例えば、15-PGDHもしくはHPGD)をコードする核酸をさらに含む、または担持する、または含有し、A34R Lys151からGluへの突然変異;B5Rの完全もしくは部分的な欠失;A36Rの突然変異/欠失および/またはA56Rの突然変異/欠失の群から選択されるウイルス拡散および活性を増強する1つ以上の改変をさらに含み、機能的IL-18BP(例えば、C12L欠失)、B8R欠失、B18R欠失、A35R欠失、またはその組合せの発現を減少させる突然変異の群から選択される1つ以上のウイルス骨格改変を含むVVを提供する。ある特定の実施形態においては、ウイルスは、C12L欠失を含む。ある特定の実施形態においては、VVは、C12L欠失およびB5R欠失を含んでもよい。
【0048】
上記の改変を、当業界で公知であるVV(ワクシニアウイルス)中で作製することができる。非限定例としては、Western Reserve株、Copenhagen株;Wyeth(NYCBOH)株;Tian Tian株;またはUSSR株(以下の参考文献1及び2を参照されたい)が挙げられる。本明細書に記載のように改変されたベースとなるVV株は、それ自体、その親株と比較して1つ以上の突然変異、例えば、限定されるものではないが、TK中の欠失(すなわち、本明細書では「TK-」と記載される);VGF中の欠失;SPI-1欠失;および/またはSPI-2欠失のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0049】
ある特定の非限定的実施形態においては、本発明は、以下の改変:
(i)非改変ウイルスと比較してグリコシル化が減少した(例えば、シアル化が減少した)エンベロープ;
(ii)TRIF、もしくはその機能的ドメインをコードする核酸;および/または
(iii)15-PGDH、もしくはその機能的ドメインをコードする核酸
を有するVVを提供する。
【0050】
ある特定の非限定的実施形態においては、本発明は、以下の改変:
(i)非改変ウイルスと比較してグリコシル化が減少した(例えば、シアル化が減少した)エンベロープ;
(ii)TRIF、もしくはその機能的ドメインをコードする核酸;
(iii)15-PGDH、もしくはその機能的ドメインをコードする核酸;および/または
(iv)C12L欠失
を有するVVを提供する。
【0051】
ある特定の非限定的実施形態においては、本発明は、以下の改変:
(i)非改変ウイルスと比較してグリコシル化が減少した(例えば、シアル化が減少した)エンベロープ;
(ii)TRIF、もしくはその機能的ドメインをコードする核酸;
(iii)15-PGDH、もしくはその機能的ドメインをコードする核酸;
(iv)C12L欠失;および/または
(v)B5R欠失
を有するVVを提供する。
【0052】
ある特定の非限定的実施形態においては、本発明は、以下の改変:
(i)TK欠失;
(ii)非改変ウイルスと比較してグリコシル化が減少した(例えば、シアル化が減少した)エンベロープ;
(iii)TRIF、もしくはその機能的ドメインをコードする核酸;および/または
(iv)15-PGDH、もしくはその機能的ドメインをコードする核酸
を有するVVを提供する。
【0053】
ある特定の非限定的実施形態においては、本発明は、以下の改変:
(i)TK欠失;
(ii)非改変ウイルスと比較してグリコシル化が減少した(例えば、シアル化が減少した)エンベロープ;
(iii)TRIF、もしくはその機能的ドメインをコードする核酸;
(iv)15-PGDH、もしくはその機能的ドメインをコードする核酸;および/または
(v)C12L欠失
を有するVVを提供する。
【0054】
ある特定の非限定的実施形態においては、本発明は、以下の改変:
(i)TK欠失;
(ii)非改変ウイルスと比較してグリコシル化が減少した(例えば、シアル化が減少した)エンベロープ;
(iii)TRIF、もしくはその機能的ドメインをコードする核酸;
(iv)15-PGDH、もしくはその機能的ドメインをコードする核酸;
(v)C12L欠失;および/または
(vi)B5R欠失
を有するVVを提供する。
【0055】
5.7 処置(治療)方法
本発明は、対象の癌細胞に、有効量の上記の免疫腫瘍溶解性VVを投与することを含む、癌細胞の増殖を低下させる方法を提供する。癌細胞の増殖の低下を、例えば、細胞死またはより遅い複製速度または細胞を含む腫瘍の増殖速度の低下または癌細胞を含有する対象の生存の延長により明示することができる。
【0056】
本明細書で互換的に用いられる「対象」または「患者」とは、ヒトまたは非ヒト対象を指す。非ヒト対象の非限定例としては、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ブタ、家禽、ウマ、ウシ、ヤギ、ヒツジなどが挙げられる。
【0057】
本発明は、腫瘍に、有効量の上記の免疫腫瘍溶解性VVを投与することを含む、腫瘍の増殖を低下させる方法を提供する。腫瘍の増殖の低下を、例えば、増殖速度の低下または腫瘍を含有する対象の生存の延長により明示することができる。
【0058】
本発明は、対象に、有効量の上記の免疫腫瘍溶解性VVを投与することを含む、癌を有する対象を処置する方法を提供する。
【0059】
そのような方法における「有効量」は、癌の増殖速度もしくは拡散を低下させるか、または対象における生存を延長する量を含む。ある特定の実施形態においては、有効量は、対象における抗癌効果をもたらすのに十分である量を含んでもよい。
【0060】
本明細書で用いられる「抗癌効果」とは、癌細胞凝集塊の減少、癌細胞増殖速度の低下、癌細胞増殖の低下、腫瘍塊の減少、腫瘍体積の減少、腫瘍細胞増殖の低下、腫瘍増殖速度の低下および/または腫瘍転移の減少の1つ以上を指す。
【0061】
ある特定の実施形態においては、本発明は、癌を有する対象に、有効量の上記の免疫腫瘍溶解性VVを投与することを含む、前記対象における抗癌効果をもたらす方法を提供する。
【0062】
特定の非限定的実施形態においては、投与されるVVの量(例えば、用量)は、約103~1011プラーク形成単位(PFU)、または約105~1010PFU、または約105~108PFU、または約105~1011PFUまたは約108~1011PFUであってもよい。また、ThorneおよびKirn, 2009, Nat Rev Cancer 9: 64-71も参照されたい。本明細書では、10Xは、代わりに1exとも表されることに留意されたい。ある特定の実施形態においては、腫瘍溶解性ウイルスを、単回用量で投与するか、または複数回用量で投与することができる。ウイルスが複数回用量で投与されるある特定の実施形態においては、用量を連続的に、例えば、毎日、毎週もしくは毎月の間隔で、または対象の特定の必要性に応じて投与することができる。
【0063】
ある特定の実施形態においては、免疫腫瘍溶解性ウイルスを、ウイルスが有効量で存在し、製薬上許容し得る担体と共に存在する医薬組成物中で投与することができる。本明細書で用いられる「製薬上許容し得る」は、活性成分の生物活性の有効性と干渉しない、および/またはそれが投与される患者にとって毒性的ではない任意の担体を含む。好適な医薬担体の非限定例としては、リン酸緩衝生理食塩溶液、水、油/水乳濁液などの乳濁液、様々な型の湿潤剤および滅菌溶液が挙げられる。製薬上適合する担体のさらなる非限定例としては、腫瘍溶解性VVを含有するゲル、生体吸着性マトリックス材料、埋込みエレメントまたは任意の他の好適なビヒクル、送達もしくは投薬手段または材料を含んでもよい。そのような担体を、従来の方法により製剤化し、有効量で対象に投与することができる。
【0064】
本発明のVVを、当業者には公知の方法により作製することができる。ある特定の実施形態においては、VVを好適な宿主細胞中で増殖させ、宿主細胞から単離し、ウイルスの安定性および完全性を促進する条件で保存して、経時的な感染性の喪失を最小化することができる。例えば、VVを、凍結乾燥などの、凍結または乾燥により保存することができる。ある特定の実施形態においては、投与の前に、保存されたVVを再構成させ(保存のために乾燥した場合)、投与のために製薬上許容し得る担体中に希釈することができる。
【0065】
腫瘍溶解性ウイルスを、標準的な投与方法を用いて対象に投与することができる。ある特定の非限定的実施形態においては、腫瘍溶解性ウイルスを、全身的に投与することができる。あるいは、またはさらに、腫瘍溶解性ウイルスを、癌の部位、例えば、腫瘍部位での注入により投与することができる。例えば、限定されるものではないが、投与経路は、吸入、鼻内、静脈内、動脈内、くも膜下、腫瘍内、腹腔内、筋肉内、皮下、局所、皮内、局部領域、経口投与、またはその組合せであってもよい。ある特定の実施形態においては、腫瘍溶解性ウイルスを、患者に埋込まれた供給源から患者に投与することができる。ある特定の実施形態においては、腫瘍溶解性ウイルスの投与は、選択された期間にわたって連続輸注により行ってもよい。ある特定の実施形態においては、医薬組成物を、例えば、直接的な腫瘍内注入により、腫瘍部位に直接投与することができる。
【0066】
免疫腫瘍溶解性VV療法により処置することができる癌としては、限定されるものではないが、腺癌、骨肉腫、頸部癌、メラノーマ、肝細胞癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、卵巣癌、白血病、リンパ腫、腎臓癌、膵臓癌、胃癌、結腸癌、十二指腸癌、多形成グリア芽細胞腫、星状細胞腫および肉腫が挙げられる。
【0067】
ある特定の実施形態においては、上記の免疫腫瘍溶解性VVを用いる処置を、単独で、または1つ以上の抗癌剤と組み合わせて用いることができる。本明細書で用いられる「抗癌剤」は、抗癌効果を有する任意の分子、化合物、化学物質または組成物であってもよい。抗癌剤としては、限定されるものではないが、化学療法剤、放射線療法剤、サイトカイン、免疫チェックポイント阻害剤、抗血管新生剤、アポトーシス誘導剤、抗癌抗体および/または抗サイクリン依存的キナーゼ剤が挙げられる。
【0068】
ある特定の実施形態においては、免疫腫瘍溶解性VVを用いる処置を、単独で、または1つ以上の免疫調節剤と組み合わせて用いることができる。免疫調節剤としては、腫瘍または癌と関連する抗ウイルス免疫を抑制することができる任意の化合物、分子または物質が挙げられる。ある特定の実施形態においては、免疫調節剤は、腫瘍溶解性ウイルスに対する先天性免疫および/または適応免疫を抑制することができる。免疫調節剤の非限定例としては、抗CD33抗体またはその可変領域、抗CD11b抗体またはその可変領域、COX2阻害剤、例えば、セレコキシブ、サイトカイン、例えば、IL-12、GM-CSF、IL-2、IFNβおよびIFNγ、ならびにケモカイン、例えば、MIP-1、MCP-1およびIL-8が挙げられる。ある特定の実施形態においては、免疫調節剤としては、限定されるものではないが、抗CTLA4、抗PD-1、抗PDL1およびTLRアゴニスト(例えば、ポリI:C)などの免疫チェックポイント阻害剤が挙げられる。
【0069】
本明細書で用いられる場合、「と組み合わせた」とは、免疫腫瘍溶解性VVと、1つ以上の薬剤とを、処置レジメンまたは計画の一部として対象に投与することを意味する。ある特定の実施形態においては、組み合わせて用いられることは、免疫腫瘍溶解性VVと1つ以上の薬剤とを、投与の前に物理的に組み合わせるか、またはそれらを同じ時間枠にわたって投与することを必要としない。例えば、限定されるものではないが、免疫腫瘍溶解性VVと1つ以上の薬剤とを、処置される対象に同時に投与するか、または同じ時間に、もしくは任意の順序で連続的に、もしくは異なる時点で投与することができる。
【0070】
ある特定の実施形態においては、癌を有する対象を処置する方法は、対象に、(i)非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化(例えば、減少したシアル化)を有するエンベロープ;(ii)TRIF、またはその機能的ドメインをコードする核酸;および(iii)15-PGDH、またはその機能的ドメインをコードする核酸を含む有効量の免疫腫瘍溶解性VVを投与することを含む。
【0071】
ある特定の実施形態においては、癌を有する対象を処置する方法は、対象に、(i)非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化(例えば、減少したシアル化)を有するエンベロープ;(ii)TRIF、またはその機能的ドメインをコードする核酸;(iii)15-PGDH、またはその機能的ドメインをコードする核酸;および(iv)C12L欠失を含む有効量の免疫腫瘍溶解性VVを投与することを含む。
【0072】
ある特定の実施形態においては、癌を有する対象を処置する方法は、対象に、(i)非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化(例えば、減少したシアル化)を有するエンベロープ;(ii)TRIF、またはその機能的ドメインをコードする核酸;(iii)15-PGDH、またはその機能的ドメインをコードする核酸;(iv)C12L欠失;および(v)B5R欠失を含む有効量の免疫腫瘍溶解性VVを投与することを含む。
【0073】
ある特定の実施形態においては、癌を有する対象を処置する方法は、対象に、(i)TK欠失;(ii)非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化(例えば、減少したシアル化)を有するエンベロープ;(iii)TRIF、またはその機能的ドメインをコードする核酸;および(iv)15-PGDH、またはその機能的ドメインをコードする核酸を含む有効量の免疫腫瘍溶解性VVを投与することを含む。
【0074】
ある特定の実施形態においては、癌を有する対象を処置する方法は、対象に、(i)TK欠失;(ii)非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化(例えば、減少したシアル化)を有するエンベロープ;(iii)TRIF、またはその機能的ドメインをコードする核酸;(iv)15-PGDH、またはその機能的ドメインをコードする核酸;および(v)C12L欠失を含む有効量の免疫腫瘍溶解性VVを投与することを含む。
【0075】
ある特定の実施形態においては、癌を有する対象を処置する方法は、対象に、(i)TK欠失;(ii)非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化(例えば、減少したシアル化)を有するエンベロープ;(iii)TRIF、またはその機能的ドメインをコードする核酸;(iv)15-PGDH、またはその機能的ドメインをコードする核酸;(v)C12L欠失;および(vi)B5R欠失を含む有効量の免疫腫瘍溶解性VVを投与することを含む。
【0076】
ある特定の実施形態においては、本発明の方法は、対象に、有効量の1つ以上の薬剤を投与することをさらに含んでもよい。例えば、限定されるものではないが、薬剤は、上記のような、抗癌剤および/または免疫調節剤であってもよい。
5.8 キット
本発明は、上記の免疫腫瘍溶解性VVを提供するキットをさらに提供する。ある特定の実施形態においては、本発明のキットは、上記の免疫腫瘍溶解性VVまたは免疫腫瘍溶解性VVを含む医薬組成物を含んでもよい。ある特定の実施形態においては、本発明のキットは、使用のための説明書、デバイスおよびさらなる試薬などの1つ以上の構成要素、ならびに上記に開示された方法を実施するためのチューブ、容器および注射筒などの構成要素をさらに含んでもよい。ある特定の実施形態においては、本発明のキットは、免疫腫瘍溶解性VVと共に投与することができる、1つ以上の薬剤、例えば、抗癌剤および/または免疫調節剤をさらに含んでもよい。
【0077】
ある特定の実施形態においては、本発明のキットは、使用のための説明書、免疫腫瘍溶解性VVを対象に投与するためのデバイス、またはさらなる薬剤もしくは化合物を対象に投与するためのデバイスを含んでもよい。例えば、限定されるものではないが、説明書は、免疫腫瘍溶解性VV、および場合により、キットに含まれる他の構成要素、対象の適切な状態、適切な投与量および免疫腫瘍溶解性VVを投与するための適切な投与方法を決定するための方法などの、投与のための方法の説明を含んでもよい。説明書はまた、処置の持続期間にわたって対象をモニタリングするための指針も含んでもよい。
【0078】
ある特定の実施形態においては、本発明のキットは、免疫腫瘍溶解性VVを対象に投与するためのデバイスを含んでもよい。医薬品および医薬組成物を投与するための当業界で公知の任意の様々なデバイスを、本明細書に提供されるキットに含有させることができる。例えば、限定されるものではないが、そのようなデバイスとしては、皮下注射針、静脈内注射針、カテーテル、無針注射デバイス、吸入器および点眼器などの液体ディスペンサーが挙げられる。ある特定の実施形態においては、例えば、静脈内注射により全身的に送達される免疫腫瘍溶解性VVを、皮下注射針および注射筒と共にキットに含有させることができる。
【0079】
ある特定の実施形態においては、本発明のキットは、(i)非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化(例えば、減少したシアル化)を有するエンベロープ;(ii)TRIF、またはその機能的ドメインをコードする核酸;および(iii)15-PGDH、またはその機能的ドメインをコードする核酸を含む有効量の免疫腫瘍溶解性VVを含む。
【0080】
ある特定の実施形態においては、本発明のキットは、(i)非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化(例えば、減少したシアル化)を有するエンベロープ;(ii)TRIF、またはその機能的ドメインをコードする核酸;(iii)15-PGDH、またはその機能的ドメインをコードする核酸;および(iv)C12L欠失を含む有効量の免疫腫瘍溶解性VVを含む。
【0081】
ある特定の実施形態においては、本発明のキットは、(i)非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化(例えば、減少したシアル化)を有するエンベロープ;(ii)TRIF、またはその機能的ドメインをコードする核酸;(iii)15-PGDH、またはその機能的ドメインをコードする核酸;(iv)C12L欠失;および(v)B5R欠失を含む有効量の免疫腫瘍溶解性VVを含む。
【0082】
ある特定の実施形態においては、本発明のキットは、(i)TK欠失;(ii)非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化(例えば、減少したシアル化)を有するエンベロープ;(iii)TRIF、またはその機能的ドメインをコードする核酸;および(iv)15-PGDH、またはその機能的ドメインをコードする核酸を含む有効量の免疫腫瘍溶解性VVを含む。
【0083】
ある特定の実施形態においては、本発明のキットは、(i)TK欠失;(ii)非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化(例えば、減少したシアル化)を有するエンベロープ;(iii)TRIF、またはその機能的ドメインをコードする核酸;(iv)15-PGDH、またはその機能的ドメインをコードする核酸;および(v)C12L欠失を含む有効量の免疫腫瘍溶解性VVを含む。
【0084】
ある特定の実施形態においては、本発明のキットは、(i)TK欠失;(ii)非改変ウイルスと比較して減少したグリコシル化(例えば、減少したシアル化)を有するエンベロープ;(iii)TRIF、またはその機能的ドメインをコードする核酸;(iv)15-PGDH、またはその機能的ドメインをコードする核酸;(v)C12L欠失;および(vi)B5R欠失を含む有効量の免疫腫瘍溶解性VVを含む。
【0085】
以下の実施例は、本開示をより完全に例示するために提供されるものであり、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例0086】
6. 実施例1:骨格突然変異C12Lの効果
Western Reserveチミジンキナーゼ陰性(「TK-])ワクシニアウイルス(VV)を改変して、C12Lを欠失させた。Western Reserveワクシニア株は、BEI Resources(Manassas、VA)から得られたものであり、使用または構築された全ての組換えワクシニアウイルスは、この株に基づくものであった。
【0087】
C12L ORFの40%を欠くウイルス欠失変異体を、一時的優性選択(Falkner & Moss, 1990, J Virol. 64(6): 3108-3111)を用いて構築した。細胞に、野生型ワクシニアWRを感染させ、同時に、C12L遺伝子の3'および5'領域を含有するプラスミドをトランスフェクトした。組換えを起こさせて、選択マーカーを用いて組換え事象を決定した。ウイルスを、BSC-1細胞上でのプラークアッセイにより滴定し、in vivoでの使用について以前に記載されたように(Sampath, Pら(2013) Mol. Ther., 21: 620-628)、製造および精製した。
【0088】
CMT-93腫瘍を担持するC57BL/6マウスに、5x10
8プラーク形成単位(「PFU」)の非改変WRウイルスまたはC12L欠失を担持するウイルス(WRΔC12L)を投与した。ウイルスの腫瘍特異性を試験するために、脳、肝臓、肺および腫瘍中のウイルス量を、感染の1、3および10日後に評価した。
図1A中の結果は、感染の1日後には肝臓、肺および腫瘍中にほぼ等量のWRおよびWRΔC12Lウイルスが見出されたが、10日目までに、非腫瘍組織中に見出されたWRΔC12Lウイルスは、腫瘍中に見出された量と比較して非常に少なく、腫瘍/非腫瘍発現における差異は非改変WRウイルスについてはるかに小さかった。
【0089】
生存に対するC12L突然変異の効果を評価するために、皮下CMT-93腫瘍を担持するC57BL/6マウス(The Jackson Laboratory(Bar Harbor、ME)から購入)を、1x10
8PFUの単回用量のWRまたはWRΔC12Lウイルスで静脈内処置した後、モニタリングした。WRウイルスを受けている全てのマウスは感染後60日より前に死亡したが、70日後、WRΔC12L動物の50パーセントが依然として生きていた(
図1B)。
【0090】
動物を、WRまたはWEΔC12Lで最初に免疫し、これらのマウス(または対照マウス)からのT細胞をWRと混合し、得られたIFN-γ産生レベルをELISAにより決定した。その結果を
図1Cに示し、これはC12L欠失がCTLまたはIFN-γ産生脾細胞のより多い産生をもたらしたことを示している。
【0091】
7. 実施例2:脱グリコシル化処理の効果
ウイルス表面タンパク質のグリコシル化の改変の効果を試験するために、WR TK-VV、N結合および単純O結合グリカン、例えば、シアル酸を、シアリダーゼA(Glyko Sialidase A、コードWS0042)またはN-およびO-グリカナーゼとシアリダーゼAとのカクテル(Glycopro Enzymatic Deglycosylationキット、製品コード:GK80110、Prozyme)を用いてウイルスエンベロープから除去した。ウイルスの脱グリコシル化のための非変性プロトコールは、(i)20μlのウイルスストックを取ること;(ii)17μlの脱イオン水を添加すること;(iii)10μlの5X反応バッファーを添加すること;(iv)1μlのN-グリカナーゼ、シアリダーゼAおよびO-グリカナーゼのそれぞれ(または19μlの脱イオン水と共に用いられたいずれかの酵素のみ)を添加すること;ならびに(v)使用前に37℃で16時間インキュベートすることであった。ウイルスの脱グリコシル化を、ウェスタンブロット分析により確認した(
図2A)。
【0092】
ウイルスの感染性に対する脱グリコシル化の効果を、1のMOIでTK-(「WR」もしくは「WR.TK-」)またはその脱グリコシル化型(「TK-deglyc」、「WRdeglyc」および「DS WR.TK-」)に感染させた様々なマウス腫瘍細胞株中で評価した。HeLa(ヒト頸部腺癌)、Bsc-1(ミドリザル正常腎臓細胞)、143B(ヒト骨肉腫)、CV-1(ミドリザル腎臓線維芽細胞)、Renca(マウス腎腺癌)および4T1(マウス乳癌)細胞株を、American Type Culture Collection (Manassas、VA)から取得した。HEK293-mTLR2細胞を、InvivoGen(San Diego、CA)から購入した。MC38(マウス結腸腺癌)およびMEF(マウス胚性線維芽細胞)細胞株は、それぞれ、Dr.David BartlettおよびDr.Robert Sobol(University of Pittsburgh Cancer Center)からの親切な贈り物であった。全ての細胞株を、5~10%のウシ胎仔血清および抗生物質を含有する推奨された培養培地中、37℃、5%CO
2で維持した。ウイルスの感染性を、ウイルス遺伝子発現を分析することにより決定した。ウイルス遺伝子発現を、in vitroでのルシフェラーゼ発現の生物発光画像化により感染後3時間測定した。培養細胞について、10μlの30mg/mlのD-ルシフェリン(GoldBio、St.Louis、MO)を、1mlの培養培地に添加した。
図2B中で観察されるように、ウイルスエンベロープの脱グリコシル化は、ウイルスの感染性に対する効果を有さなかった。
【0093】
TLR2活性化に対する脱グリコシル化の効果を、TLR2を発現するように操作され、TLR-シグナリングリポータープラスミドであるpNiFtyをトランスフェクトされたHEK293細胞(HEK293/mTLR2)中でのNF-κB活性化を測定するモデル系において評価した。pNiFty(TLR-シグナリングリポータープラスミド-ルシフェラーゼ)は、InvivoGenから取得したものであり、FuGENE HDトランスフェクション試薬(Promega、Madison、WI)を用いてHEK293/mTLR2細胞中にトランスフェクトした。HEK293/mTLR2細胞を、1のMOIでWRまたはWR脱グリコシル化ウイルスに感染させ、生物発光画像化により、感染後24時間、TLR2活性化を定量した。
図2Cに示されるように、ウイルスの脱グリコシル化は、脱グリコシル化されていないウイルスと比較して、in vitroでTLR2の低い活性化をもたらした。さらに、また、
図3Aに見られるように、脱グリコシル化ウイルスは、WRウイルスよりも実質的に低いTLR2活性化と関連していた。
【0094】
脱グリコシル化ウイルスはまた、腫瘍によるより多い取込みを示した。これらの実験については、合成ワクシニアプロモーターpE/Lの制御下にあるルシフェラーゼ遺伝子(Chakrabartiら(1997)Biotechniques 23: 1094-1097)を、WR.TK-またはDS WR.TK-ワクシニアウイルス中に組込み(それぞれ、「WR.TK-Luc+」および「DS WR.TK-Luc+」)、4T1皮下腫瘍を担持するBALB/cマウス(The Jackson Laboratory(Bar Harbor、ME)から購入)中に静脈内的に導入した。次いで、腫瘍中でのウイルス遺伝子発現を、in vivoでのルシフェラーゼ発現の生物発光画像化により測定することができた。動物モデルについては、マウスあたり4.5mgの用量のD-ルシフェリンを、画像化の前に腹腔内注射した。IVIS 2000モデル(Perkin Elmer、Waltham、MA)を画像化のために使用し、LivingImageソフトウェア(PerkinElmer)を用いて画像を分析した。
【0095】
図3Bは、感染の24時間後、そのグリコシル化された対応物と比較して、腫瘍中でのDS WR.TK-Luc+ウイルスの有意により高い発現があったことを示す。取込みにおけるこの差異は、非腫瘍組織においては観察されなかった。
図3Cは、脱グリコシル化ウイルス感染がより小さい腫瘍体積をもたらすことを示す。さらに、Renca細胞(マウス腎腺癌)の皮下異種移植片を担持するBALB/cマウスを無作為化し、1x10
8PFU/マウスの単回静脈内用量のTK-またはTK-脱グリコシル化ウイルスを注射した。腫瘍内からのウイルス遺伝子発現の動力学を、ウイルスルシフェラーゼ発現の生物発光画像化によりモニタリングした。
図2Eに示されるように、ウイルスエンベロープの脱グリコシル化は、in vivoで腫瘍中の遺伝子発現を増加させた。
【0096】
pSTAT1-pSTAT3+リンパ球の存在に対するウイルスの脱グリコシル化の効果を、1x10
7PFUのWRまたはWR脱グリコシル化ウイルスを静脈内注射したC57BL/6マウスにおいて分析した。示されたウイルスの注射の1時間後にC57BL/6マウスから脾臓を収獲し、脾細胞を単離し、1.6%PFA中で固定し、メタノールで透過処理した。LSRFortessa Flow Cytometer(BD Biosciences、San Jose、California)を用いて、2色細胞内免疫染色分析を実施した。脾細胞を、PacificBlue抗マウスpSTAT1およびAlexaFluor647抗マウスpSTAT3抗体(BD Biosciences)を用いて染色した。pSTAT1-pSTAT3+リンパ球のパーセンテージをフローサイトメトリーにより決定し、PBSおよびPAM(3)CSK(4)を対照として用いた。
図2Dは、STAT3リン酸化が、脱グリコシル化ワクシニアウイルスを注射されたマウスの脾臓リンパ球中で枯渇したことを示す。
【0097】
in vivoでのウイルスに対する免疫応答を決定するために、中和抗体アッセイを実施した。簡単に述べると、抗体含有血清を、ウイルス注射後14日目に示されたように処置されたマウスから取得し、血清の連続希釈液(1/20で出発)を用いて、1000PFUのTK-ワクシニアウイルスを中和した。ウェルあたり2x10
4個のHeLa細胞を96穴プレート中に播種し、血清-ウイルス混合物を感染させた。感染後4日目に、プレートをPBSで洗浄し、非放射性細胞増殖アッセイキット(Promega、Madison、WI)を用いて培養物を染色した後、吸光度を定量した。IC
50値(50%の細胞阻害を誘導することができるワクシニアウイルスを中和するのに必要とされる血清の希釈率)を、適合Hill式を用いる標準的な非線形回帰により用量応答曲線から見積もった。
図3Dに示されるように、ウイルスに対する中和抗体の量は、TLR2ノックアウト変異を担持するマウスにおけるよりも野生型C57BL/6マウスにおいて多い。従って、脱グリコシル化ウイルスと関連するより低いTLR2活性化は、より少ない抗ウイルス抗体産生および改善された抗腫瘍応答と関連し得る。
【0098】
8. 実施例3:TRIF発現の効果
マウスTRIFをコードする核酸を、WR.TK-ウイルス中に導入し、T細胞に対するその効果を評価した。TRIFは、チミジンキナーゼ遺伝子座内から発現され、ウイルス初期/後期ワクシニアp7.5プロモーター(「TK-TRIF」または「WR.TK-.TRIF」;
図4A)から発現された。p7.5から発現され、ウイルスチミジンキナーゼ遺伝子の遺伝子座中にクローニングされたマウスDAI(DLM-1/ZBP1)をコードする核酸を有するWR.TK-ウイルスを作成した(「TK-DAI」;
図4A)。
【0099】
ELISAを実施して、TK-TRIFウイルスからのTRIFの発現を確認した(
図4B)。ELISAのために、マウスTRIF ELISAキットを用いて、1のMOI(PFU/細胞)でTK-TRIFに感染した細胞の上清または細胞抽出物中のTRIFの濃度を決定した。
図4Bに示されるように、TK-TRIFウイルスは、TK-と比較してTRIFを特異的に発現した。ウェスタンブロットを用いて、TK-DAIウイルスからのDAIの発現を確認した(
図4C)。ウェスタンブロット分析のために、細胞培養物を6穴プレートに播種し、5のMOI(PFU/細胞)で感染させ、感染の24時間後、全細胞タンパク質抽出物を4℃で1時間、細胞溶解バッファー(Cell Signaling Technology Inc, Danvers, MA)中でインキュベートした。明澄化された試料(15μg/レーン)を、10%SDS-PAGEゲルにより分離し、ニトロセルロース膜に移した。ポリクローナル抗DAI一次抗体(ウサギ、Abcam、Cambridge、MA)およびHRPとコンジュゲートしたポリクローナル抗ウサギ抗体(ヤギ、Thermo Scientific、Waltham、MA)を用いて膜をイムノブロットすることにより、マウスDAIタンパク質を検出した。マウスモノクローナル抗βアクチン抗体(SantaCruz Biotechnologies、Santa Cruz、CA)およびペルオキシダーゼコンジュゲート化抗マウス抗体(ヤギ、Thermo Scientific)を、ローディング対照としてβアクチンのイムノブロットのために用いた。
図4Cに示されるように、TK-DAIウイルスは、TK-と比較してDAIを特異的に発現した。
【0100】
図5Aに示されるように、TRIFの発現は、in vitroでのリンパ球によるI型インターフェロン産生の増加をもたらした。TRIFの発現はまた、ELISpotアッセイにより示されるように、in vivoでCTL産生を増加させた(
図5B)。ELISpotアッセイのために、脾細胞をマウスから調製した。脾細胞を、5:1の比率でUV照射されたワクシニアウイルスに予め感染させた腫瘍細胞または脾細胞と混合した。各マウスからのナイーブな脾細胞を、対照として用いた。15μg/mlのモノクローナル抗マウスIFN-γ抗体AN18(Mabtech, Inc., Cincinnati, OH)で被覆された96穴膜フィルタープレート(EMD Millipore、Billerica、MA)を、アッセイのために用いた。細胞を37℃で48時間維持し、1μg/mlのビオチン化抗マウスIFN-γ抗体R4-6A2-ビオチン(Mabtech)を用いてスポットを検出した。プレートを、ABCキットおよびペルオキシダーゼのためのAEC基質キット(Vector Laboratories, Inc., Burlingame, CA)を用いて現像した。特異的スポットを計数し、ImmunoSpot Analyzerおよびソフトウェア(CTL, Shaker Heights, OH)を用いて分析した。
【0101】
TK-、TK-TRIFまたはTK-DAIの感染(1のMOI)の24時間後のin vitroおよびin vivoでのサイトカインおよびケモカインの放出の分析を、Luminexアッセイにより実施した。細胞培養上清について、Millipore(Billerica, MA)からのMiliplex Mouse Cytokine Panel(5-plex)KitおよびPanomics(Redwood City, CA)からのMouse 2-plex assay Kitを用いた。腫瘍溶解物については、Invitrogen(Carlsbad, CA)からのCytokine Mouse 20-plex Panel Kitを、ワクシニアウイルス投与後4日目に収獲された腫瘍中で濃度を決定するために用いた。腫瘍を、Lysing Matrix DチューブおよびFastPrep-24装置を用いてホモジェナイズした。
図6AおよびCに示されるように、pIKKβ、IL-6、IP-10、TNF-αおよびIFN-βの濃度は、TK-と比較して異なる腫瘍細胞株において、TK-と比較してTK-TRIFによる感染の際に有意に増加した。さらに、単回静脈内用量の1x10
8PFU/マウスのTK-またはTK-TRIFを注射した確立されたRenca皮下異種移植片を有するBALB/cマウスを分析して、サイトカインおよびケモカインのin vivoでの腫瘍内濃度を決定した。注射の4日後、腫瘍を収獲し、様々なサイトカインおよびケモカインの濃度を、luminexまたはELISAアッセイにより腫瘍溶解物中で決定した。
図6Dは、IFN-γ、IL-12、IP-10、TNF-α、IL-1β、GM-CSFおよびKCの腫瘍内濃度が、TK-と比較してTK-TRIFに応答して有意に増加したことを示す。
【0102】
NF-κBおよびIRF3経路の活性化を、TK-TRIFおよびTK-DAIによる感染後に分析した。ELISAアッセイを用いて、それぞれ、1のMOIでTK-、TK-TRIFまたはTK-DAIに感染した4T1またはMEFの細胞質および核抽出物中のpIKKβおよびIRF3の濃度を決定した。
図6AおよびBに示されるように、TK-TRIFは、感染の24時間後のpIKKβおよびIRF3発現の濃度の増加により観察されるように、NF-κBおよびIRF3シグナリング経路の活性化を増加させた。
図7Aは、NF-κBのリン酸化がTK-TRIFおよびTK-DAIの感染後に増加したことを示す。NF-κBの調節因子として機能する、HMGB1およびHsp-70もまた、TK-TRIFによる感染後に発現の変化を示した(
図7Bおよび7C)。CD4+ヘルパーT細胞およびCD8+細胞傷害性T細胞の存在を、TK-、TK-TRIFによる感染後に分析した。
図7DおよびEに示されるように、細胞傷害性T細胞およびヘルパーT細胞の数は、TK-TRIFに感染したマウスにおいてより高かった。
【0103】
TK-TRIFの複製および抗腫瘍活性の分析を、様々なマウス腫瘍細胞中で実施した。様々な腫瘍細胞株を、1のMOIで感染させ、様々な時点で、上記のようなELISpotプラークアッセイにより、ウイルス産生を測定した。
図8Aに示されるように、TK-TRIFとTK-DAIの両方のウイルス産生は、TK-と比較して耐性Renca細胞において有意に少なかったが、MC38および4T1細胞中でのTK-TRIFおよびTK-DAIのウイルス産生はTK-と同様のレベルであった(
図9Aも参照されたい)。
【0104】
腫瘍中でのウイルス発現および腫瘍体積のさらなる分析を、それぞれ、RencaまたはMC38異種移植片を埋込まれたBALB/cまたはC57BL/6マウス、および4T1異種移植片を埋込んだBALB/cマウスにおいて実施した。BALB/cまたはC57BL/6マウスに、尾静脈を介して、PBSまたは1x10
8PFUのTK-、TK-TRIFもしくはTK-DAIを注射した。4T1半同所性モデルについては、2x10
5個の4T1細胞を、BALB/Cメスマウスの乳腺の脂肪体中に埋込んだ。
図8Cは、TK-TRIFおよびTK-DAIのウイルス遺伝子発現が、TK-のウイルス遺伝子発現と比較して、それぞれ、BALB/cまたはC57BL/6マウス中に埋込まれたRencaまたはMC38異種移植片の腫瘍中でより低レベルであったことを示す。
図9Cは、TK-DAIおよびTK-TRIFのウイルス産生およびウイルス発現が、TK-またはGM-CSFを発現するTK-ウイルス(「TK-GMCSF」)のウイルス発現と比較して、腫瘍中で減少したことを示す。一度、腫瘍が50~100mm
3に達したら、Renca腫瘍を皮下的に埋込まれたBALB/cマウスを、1x10
8PFUのIV用量で処置した。用いたウイルスは、WR.TK-およびWR.TK-TRIF+(またはPBS対照)であった。その後の腫瘍応答をカリパス測定により追跡し、腫瘍増殖の減少を、TK-TRIFに感染したマウスにおいて観察した(
図5Cおよび
図8D)。TK-GMCSFに感染した腫瘍と比較して、MC38腫瘍(
図8D)および4T1腫瘍を埋込んだマウスにおいて同様の応答が観察された(
図9D)。
【0105】
TK-と比較した改変ウイルスの細胞傷害性を、細胞傷害性アッセイを実施することにより決定した。細胞傷害性アッセイを、5%FBSを含むDMEM中、96穴プレート中に2x10
4細胞/ウェルを播種することにより実施した。細胞を75のMOIで出発する連続希釈液に感染させ、感染後4日目に、プレートをPBSで洗浄し、非放射性細胞増殖アッセイキット(Promega, Madison, WI)を用いて培養物を染色した後、吸光度を定量した。IC
50値(50%の阻害をもたらすのに必要とされるPFU/細胞)を、適合Hill式を用いて、標準的な非線形回帰により用量応答曲線から見積もった。
図8Bは、75~0.00025PFU/細胞の範囲の用量で示されたウイルスに感染した細胞中でのTK-TRIFおよびTK-DAIの比較細胞傷害性を示す。TRIFまたはDAIを発現するためのTK-ウイルスの改変は、TK-と比較して細胞傷害性の変化をもたらした。
図9Bに示されるように、Annexin V染色によるアポトーシス細胞の数の決定は、Rencaおよび4T1細胞の感染がアポトーシス細胞の増加をもたらしたことを示す。細胞株のアポトーシス/壊死の評価のために、細胞を1のMOIで示されたウイルスに感染させ、感染の48時間後にAnnexin V-FITC Apoptosis Detection Kit(Abcam, Cambridge, MA)を用いて染色した。分析を、Accuri C6 Flow Cytometer(BD Biosciences)を用いて実施した。
【0106】
TK-TRIFがTK-またはPBSで処置されたマウスと比較してRencaまたはMC38異種移植片を有するマウスの生存に影響するかどうかを決定するために、実験を行った。RencaまたはMC38異種移植片を、それぞれ、BALB/CまたはC57BL/6マウス中で確立し、単回静脈内用量の1x10
8PFUの示されたウイルスまたはPBSで処置した。
図9EおよびFに示されるように、TK-TRIFは、TK-を用いる処置と比較して生存を有意に改善した。
【0107】
9. 実施例4:TRIF発現と脱グリコシル化の組合せの効果
上記の6.3で考察されたような、TRIFを発現するように改変されたTK-ウイルスを脱グリコシル化して(「TK-TRIFdeglyc」)、そのような組合せが抗腫瘍細胞応答上に有する効果およびウイルスの抗腫瘍効能を分析した。
【0108】
TK-TRIFを発現するウイルスの毒性を決定するために、対照または1x10
8PFU/マウスのTK-、TK-TRIF、もしくは脱グリコシル化TK-TRIFを静脈内注射したBALB/Cマウスの体重を分析した。
図10Aは、TK-を注射されたマウスは、ウイルス注射後6日目に10%を超える体重の減少を示したが、TK-TRIFおよびTK-TRIFdeglycを注射されたマウスはPBSを注射されたものと同様の体重プロファイルを示したことを示し、これは、TK-TRIFおよびTK-TRIFdeglycはTK-よりも毒性が低いことを示している。
【0109】
TK-およびTK-TRIFと比較した、in vivoでのTK-TRIF-deglycのウイルス遺伝子発現を分析した。Renca腫瘍をBALB/cマウスに埋込み、マウスに尾静脈を介してPBSまたは1x10
8pfuのTK-、TK-TRIF、もしくはTK-TRIFdeglycを注射した。ウイルス遺伝子発現を、腫瘍内からのウイルスルシフェラーゼ発現を検出することにより決定し、示された時点で測定した。
図10Bは、感染の24時間後、TK-と比較して腫瘍中でのTK-TRIFおよびTK-TRIF deglycの発現が低かったことを示す。
【0110】
TK-TRIFまたはTK-TRIF deglycが、TK-またはPBSで処置されたマウスと比較してRencaまたはMC38異種移植片を有するマウスの生存に影響したかどうかを決定するために実験を行った。RencaまたはMC38異種移植片を、それぞれ、BALB/CまたはC57BL/6マウス中で確立し、単回静脈内用量の1x10
8PFUの示されたウイルスまたはPBSで処置した。
図10CおよびDに示されるように、TK-TRIFおよびTK-TRIF deglycは、TK-を用いる処置と比較してマウスの生存を有意に改善した。また、TK-TRIF deglycは、TK-GMCSF処置と比較してRenca腫瘍を有するマウスの生存を改善した(
図10E)。
【0111】
ワクシニアウイルスおよび腫瘍細胞に対する細胞性免疫応答を、上記のセクション6.3に記載されたようなIFN-γELISpotアッセイにより評価した。ウイルス投与後7日目に、1x10
8PFUの示されたウイルスまたはPBSを静脈内注射されたマウス(Renca異種移植片を担持するBALB/cマウス)から脾臓を収獲し、ワクシニアウイルスまたはRenca細胞を認識するCTLの量について評価した。
図11Aは、TRIFの脱グリコシル化および発現が、改変のみ、例えば、TK-TRIFまたはTK-deglycと比較して、in vivoでワクシニアウイルスを認識するCTL産生の有意な増加をもたらしたことを示す。特に、TRIFを発現する脱グリコシル化ウイルスは、CTL産生の増加をもたらし、これは個々の改変により観察されたCTL産生の増加よりも大きかった。さらに、
図11Bは、TRIFの脱グリコシル化および発現が、改変のみ、例えば、TK-TRIFまたはTK-deglycと比較して、in vivoでRENCA細胞を認識するCTL産生の量の増加をもたらしたことを示す。
【0112】
中和アッセイを実施して、1x10
8PFUのTK-、TK-TRIFまたは脱グリコシル化TK-TRIFを注射されたマウスについて循環抗ワクシニア抗体レベルを決定した。Nab力価を、感染の少なくとも50%の阻害をもたらす血清の最も高い希釈率により決定した。
図11Cは、中和抗体の量が、TK-TRIF、TK-deglycまたはTK-TRIF-deglycに感染させたマウスと比較してTK-に感染させた野生型C57BL/6マウスにおいてより多いことを示す。TK-TRIF-deglycに感染したマウスは、血清中の中和抗体の量の最大の減少を示した。
【0113】
腫瘍増殖に対するTRIFを発現する脱グリコシル化ウイルスの効果を、Rencaを担持するBALB/cマウスまたはMC38腫瘍異種移植片を担持するC57BL/6マウスにおいて分析した。RencaまたはMC38腫瘍異種移植片のために、腫瘍細胞株を5x10
5個の細胞/マウスで、それぞれ、BALB/cまたはC57BL/6マウスに皮下的に埋込んだ。腫瘍が約50~100mm
3に達した時、マウスを、尾静脈を介して単回静脈内用量の示されたウイルス(1x10
8PFU/マウス)で処置した。腫瘍増殖を、カリパス測定によりモニタリングし、式V(mm
3)=π/6XW
2XL(式中、WおよびLはそれぞれ、腫瘍の幅および長さである)により定義した。データを、100%として設定された療法の開始に対する相対腫瘍サイズとして表した。驚くべきことに、TK-TRIF脱グリコシル化ウイルスは、組み合わせた個々の改変またはTK-ウイルスの付加効果と比較して、RENCAおよびMC38異種移植片担持マウスの腫瘍サイズのより大きい減少をもたらした(
図11DおよびE)。さらに、脱グリコシル化TK-TRIFは、Renca異種移植片を担持するBALB/cマウスにおける腫瘍サイズ(
図11F)またはBALB/cマウス中の4T1皮下腫瘍(
図9D)の有意な減少により観察されるように、TK-GMCSFと比較して改善された抗腫瘍活性を示した。従って、TRIFを発現する脱グリコシル化TK-ワクシニアウイルスは、有意に改善された抗腫瘍応答を示し、抗ウイルス抗体産生の減少をもたらす。
【0114】
10. 実施例5:UPCI-1812におけるTRIF発現、脱シアル化およびC12L欠失の組合せの効果
上記の改変、すなわち、C12L欠失、脱シアル化、およびTRIFの導入を、一緒に組込んで、新しいVV株UPCI-1812を作出し、この三重に改変されたウイルスの効果を、その治療効果および免疫学的効果について評価した。
図12Aに示されるように、UPCI-1812感染は、GM-CSFをコードするWR.TK-よりも有意により良好な生存をもたらした。C12L欠失を有する脱シアル化ウイルス(「vvDD」)と比較して、UPCI-1812は有意により高いレベルのインターフェロンガンマ(IFN-γ)(
図12B)およびインターロイキン-12(IL-12)(
図12C)を産生した。
【0115】
11. 実施例6:PGE2標的化の効果
腫瘍溶解性ウイルス療法は、最終的に、プラットフォームの現実の可能性を強調する無作為化試験において臨床効能を証明し始めた。しかしながら、現行世代の臨床ベクターのうち、最も成功していることがわかったものは、免疫活性化サイトカイン(GM-CSF)を発現し、免疫応答がウイルス有効性の重要なメディエータであることを示す大量の前臨床データを強化する。しかしながら、この観察にも拘らず、いくらかの患者が良好に応答し、他の患者が腫瘍溶解性ウイルス療法に対して耐性であると考えられる方法または理由は依然として不明である。
【0116】
初期実験を行って、ウイルスの感染および複製に対する腫瘍細胞株のin vitroでの感受性を、免疫応答性マウスにおいて同系腫瘍を形成させるために用いられた場合の同じ細胞株のin vivoでの応答と相関させた。異なる腫瘍型およびマウス株の14の異なる腫瘍マウス細胞株を、細胞株をTK-に感染させることにより、in vitroで分析した(
図26A)。ウイルス産生およびウイルス遺伝子発現を、14の異なる腫瘍マウス細胞株において観察した。24穴プレート中に2x10
5個の細胞を播種した後、1のMOI(PFU/細胞)で示されたワクシニアウイルスを感染させることにより、ウイルス産生を分析した。感染の4時間後、培養物をPBSで2回洗浄し、新鮮な無ウイルス培地中でインキュベートした。感染後の示された時点で、培養物を収獲し、3回凍結-乾燥して、細胞抽出物(CE)を取得した。BSC-1細胞上でのプラークアッセイにより、ウイルス力価を決定した。
【0117】
14の株のうちの7つを、TK-の直接的腫瘍内注射を用いてin vivoでさらに試験した(
図13AおよびBならびに
図26AおよびB)。直接的腫瘍内注射を用いて、ウイルス送達の差異のために起こり得る変動性を低下させた。
図13AおよびBに示されるように、ウイルス複製またはウイルス媒介性細胞殺傷と、in vivoでの抗腫瘍効果との間に直接的な相関は観察されず、直接的腫瘍溶解活性以外の因子が抗腫瘍効果を媒介することを示している。
【0118】
ルシフェラーゼを発現する腫瘍溶解性ワクシニアを、これらの実験の間に使用して、個々のマウスにおける経時的なウイルス遺伝子発現の分析を可能にし(ウイルス複製および持続性のための代理物として)、その後の応答との比較を可能にした。2つの異なるパターンがデータから出現すると考えられた。Renca、B16、PAN02および4T1について見られるような、全生存を2週間未満増加させるウイルス療法として定義される、より耐性の腫瘍モデルについては、24hでのウイルス遺伝子発現のレベルが、その後の応答と一致するように、それぞれ個々の腫瘍モデル内で直接的相関を引き出すことができる(
図13B)。従って、in vitroでの複製が、腫瘍モデルと比較した場合にin vivoでの活性と相関しない場合であっても(おそらく、ECMおよび腫瘍中の非腫瘍細胞などの因子の影響に起因する)、いずれか1つの個々の腫瘍モデル内では、初期ウイルス遺伝子発現とその後の応答との間に相関がある。特定の理論に束縛されるものではないが、ウイルス複製と直接腫瘍溶解活性は、より耐性の腫瘍モデルにおける限られた応答の重要なメディエータであると考えられる。しかしながら、腫瘍モデルAB12、LLC、MC38を含む、ウイルス療法に良好に応答した腫瘍において、異なるパターンが観察された。これらのモデルにおいては、各モデル内に最良の応答者は、初期の感染および初期の複製の後にウイルスの迅速で強固なクリアランスを示した(
図13Bおよび
図27)。この強固なクリアランスは、より良好に応答する腫瘍モデルにおいてウイルスの直接腫瘍溶解効果を増強するための強力な免疫応答の誘導を示唆している。
【0119】
この観察をより詳細に試験するために、in vivoでのウイルス処置後に同等の応答を示した同じ遺伝的背景にある2つの腫瘍モデルを最初に選択したが、その1つ(LLC)は、強固な免疫誘導(初期ウイルスクリアランス)およびin vitroでの限られたウイルス媒介性細胞殺傷の指示を示した(
図13Bならびに
図26およびB)。他のもの(B16)はin vitroでのウイルス殺傷に対してより感受性が高く、in vivoでの応答は初期ウイルス遺伝子発現と相関すると考えられる(
図13Bならびに
図26AおよびB)。ウイルス感染後の全身免疫マーカーの活性化の包括的試験を、腫瘍を有さないマウス、B16腫瘍を有するマウスおよびLLC腫瘍を有するマウスの間で比較した。これらのものは、異なる細胞集団中でのpS6、pSTAT1、pSTAT3、pSTAT5などの初期の固有のシグナリング活性化マーカー(
図13Cおよび
図14A)、pS6およびKi67などのT細胞増殖マーカー(
図14A)ならびにCD44およびCD62Lなどの活性化マーカー、ならびに中和抗体応答(
図14D)を含んでいた。腫瘍担持動物と非腫瘍担持動物の間ではウイルス療法に対する全身免疫応答の小さな差異が認められ、1つの例外は、感染直後のいくつかの骨髄細胞におけるS6のリン酸化であった(
図13C)。pS6レベルは腫瘍担持動物において減少することが観察されたが、免疫活性化の減少はB16腫瘍を担持するマウスにおいて最も顕著であった(
図13Cおよび
図14A)。これを他の腫瘍モデルにおいて検証し、再度、pS6レベルがより耐性の腫瘍モデル(4T1およびRENCAを含む)において減少したことを確認し、これらのマウスにおいて耐性を媒介し得る樹状細胞(DC)応答の欠陥を示唆している(
図13C)。
【0120】
全身免疫応答において観察された差異はほとんどなかったため、腫瘍内のより局在化された免疫抑制の効果を試験した。骨髄由来抑制細胞(MDSC)および調節性T細胞(T-reg)(およびM2 macs)などの異なる免疫細胞が、抑制表現型と関連する。未処置の動物と比較した脾臓と全ての腫瘍モデルの両方におけるこれらの異なる細胞型のレベルを分析した。腫瘍中の免疫集団の評価のために、腫瘍を、示されたように処置されたマウスから収獲し、機械的に脱凝集化し、三重酵素混合物(IV型コラゲナーゼ、IV型DNase、およびV型ヒアルロニダーゼ(Sigma-Aldrich, St Louis, MO))で消化した。4色細胞表面免疫染色分析を、Gallios Flow Cytometer(Beckman Coulter,Inc., Brea, CA)を用いて実施した。腫瘍を脱凝集化した細胞を、PE-Cy7抗マウスCD3抗体(BD Biosciences, San Jose, CA)、FITC抗マウスCD4抗体、PerCP-Cy5.5抗マウスCD8抗体、およびPE抗マウスCD25(eBioscience, San Diego, CA)を用いて染色した。
【0121】
異なる腫瘍モデルについて腫瘍中に見出されるMDSCのレベルは、ウイルス療法に対するそのモデルの耐性または感受性と密接に相関していた(
図15AおよびBならびに
図16)。例えば、ウイルス療法に対して耐性を示すRencaは、高いMDSCレベルを示す腫瘍をもたらした。
図17Aは、いくつかの様々な腫瘍モデル系について1e8PFUのWR.TK-を用いる静脈内処置後の生存の増加の関数としての未処置の腫瘍中のMDSCの数を示す。ワクシニア株は、ベースラインで高レベルのMDSCを示すマウス腫瘍モデルにおいて生存を増加させるより低い能力を示す。列挙される腫瘍モデル細胞株のそれぞれの細胞(
図17A)を、同系免疫応答性マウスに埋込んだ。次いで、マウスを犠牲にして、それぞれのモデルについて得られる腫瘍中のMDSCの平均ベースラインレベルを決定するか、またはマウスをWR.TK-(もしくはPBS対照)(腫瘍内に投与される1e8PFU)で処置し、平均余命の増加(50%生存について)を処置後に決定した(日数で)。グラフは、「ベースラインでの腫瘍中の相対MDSC数」対「WR.TK-処置後の生存の中央増加(未処置対照と比較)」をプロットする。ベースラインでのより多いMDSCは、療法の有効性の低下と相関していた。
【0122】
ウイルス療法後に腫瘍中で起こったさらなる変化を試験し、4T1、RENCAおよびMC38などの複数の腫瘍モデルについて、ワクシニア療法の追加がT-regの喪失をもたらしたが、MDSCレベルは影響されず、時間と共に増加し続け、それらは対照群においてと同様であったことが観察された(
図15AおよびBならびに
図16AおよびB)。ウイルス療法は処置された腫瘍中のT-regのレベルを低下させたが、MDSCレベルには影響しなかった。Renca腫瘍モデル(BALB/cマウス中に皮下的に埋込まれた)においては、腫瘍1mgあたりの腫瘍中のT-regまたはMDSCの相対数を、WR.TK-処置(腫瘍内で投与された1e8PFU)の前または後の異なる時間で決定した(
図17BおよびC)。従って、MDSCを標的化する腫瘍溶解性ワクシニアの無能力は、MDSCのレベルが高い場合、いくつかの腫瘍においてはその治療活性を低下させたと考えられる。低いバックグラウンドレベルのMDSC(MC38)を有する腫瘍中では、ウイルス療法はまた、腫瘍中でのCD8+T細胞のレベルを増強することがわかったが、より耐性の腫瘍モデル(4T1)はいかなる増加も示さなかった(
図15B)。
【0123】
サイトカインコロニー刺激因子(CSF)を発現する免疫原性ワクシニア株GM-CSFの分析を実施した。GM-CSFは、より劇的な臨床応答をもたらすことが以前に示されており、また、MDSC増殖と関連していた。
図18および19は、より高い免疫原性のワクシニア株(WR.TK-GMCSFおよびWR.B18R-IFNβ+)は、T-regのさらなる減少およびCD8+T細胞レベルの増加などの、感受性腫瘍モデルにおいて免疫応答のいくつかの態様をさらに増強したが、そうでなければ耐性の腫瘍モデルにおいてはそのような利点は認められなかったことを示す。特定の理論に束縛されるものではないが、感受性腫瘍と耐性腫瘍との間の主な差異は、ウイルスが、腫瘍微小環境内で高レベルのMDSC媒介性免疫抑制を示す腫瘍において強固な免疫治療効果を誘導することができないことに関係すると考えられる。
【0124】
最近の報告により、MDSC浸潤およびMDSC表現型の維持の重要な決定因子としてのプロスタグランジンPGE2のCOX2媒介性産生が同定された。2つの手法を用いて、この経路を標的化した。1つの手法は、COX2阻害剤の適用によるものであった。第2の手法は、ウイルスベクターからの直接的なプロスタグランジン分解酵素HPGDの発現であった。PGE2を分解するマウス酵素であるヒドロキシプロスタグランジンデヒドロゲナーゼ15(HPGD)をコードする核酸を、相同組換えによる、およびウイルスp7.5プロモーターの制御下でのチミジンキナーゼ遺伝子座への挿入により、WR.TK-中に導入した(「TK-HPGD」または「WR.TK-.HPGD」)。
図20に示されるように、HPGDは、TK-HPGDから特異的に発現され、TK-HPGDに感染させたRenca細胞中のPGE2レベルを有意に低下させた。
図25に示されるように、WR.TK-による感染は、腫瘍中で全体として有意なレベルのCOX2発現をもたらすことなく、感染部位で局部的に腫瘍中のCOX2発現を変化させるか、またはウイルスは低いCOX2レベルを示す領域中で選択的に複製し得ると考えられる。初期のin vitroおよびin vivoでの実験により、毒性レベルでも、COX2阻害剤はHPGD発現について達成されたレベルの近くのどこでもPGE2レベルを低下させることができないことが決定された(
図20)。
【0125】
次いで、HPGDを発現する腫瘍溶解性ワクシニアを、いくつかのマウス腫瘍モデルにおいて試験した。腫瘍中のMDSC細胞の数は、WR-TK-HPGDのみによる処置の後に脾臓および腫瘍中で急速かつ有意に減少することがわかった(
図21および
図23A~D)。HPGDの含有は、非改変WR.TK-ウイルスと比較して、腫瘍および脾臓中のMDSCを減少させることもわかった。これは腫瘍にとって特異的であり、全身毒性は見られなかった(
図21A)。興味深いことに、TK-HPGDはまた、腫瘍中のT-reg数のより急速かつ強固な減少も誘導した。
図21BおよびC、ならびに
図22に示されるように、WR-TK-HPGDによる感染は、in vivoでいくつかのマウス腫瘍モデルにおける増強された治療効果と相関し、より低い腫瘍体積をもたらした。勿論、「腫瘍溶解のみ」の表現型および高いベースラインレベルのMDSCを示した、ウイルス療法に対して以前に最も耐性であった腫瘍モデル、RENCAは、驚くべきことに、HPGD発現後に治療利益の最も大きい増加を示した(
図21B)。
【0126】
また、ウイルス遺伝子発現のパターンを、RENCA腫瘍においてWR.TK-およびWR.TK-HPGDについて比較した。WR.TK-については、「腫瘍溶解のみ」の表現型が見られたが(1日目でのより高い遺伝子発現は最も高い治療利益を相関していた)、WR.TK-HPGD+は「腫瘍溶解および免疫治療的」表現型を示し、最良の応答者は5日目までにウイルスの強固かつ急速なクリアランスを示すことがわかった(
図21D)。特定の理論に束縛されるものではないが、HPGD発現は、これらのより耐性のモデルにおいてベクターの免疫治療活性を戻すことができ、従って、そうでなければ腫瘍溶解性ウイルス療法に対して耐性の腫瘍を感作することができると考えられる。これは、HPGD発現の腫瘍溶解能力の全体的な喪失とは無関係であった。
【0127】
WR.TK-HPGD+について見られた治療利益を媒介する機構の分析を行った。MDSCおよびT-regのレベルが腫瘍環境内で既に劇的に低下していた時点である処置後3日目で、腫瘍中のサイトカインおよびケモカインのレベルにおいてごくわずかな変化が生じたことがわかった(
図24A)。しかしながら、血清中のケモカインのレベルは顕著に変化した(
図24B)。特に、CCL5を含む、活性化されたT細胞の誘引と関連するケモカインは上方調節されたが、CXCL12(免疫抑制表現型および予後不良と関連する、sdf-1)は劇的に低下した(
図24AおよびB)。全身性ケモカイン効果のこの変化は、腫瘍中の免疫細胞レパートリーの変化の媒介の原因となり得る。これを、一方の腫瘍にWR.TK-を注射し、反対側の側面にある腫瘍にWR.TK-HPGDを注射する両側腫瘍アッセイを用いてさらに試験した。活性化されたT細胞は、HPGDを発現する腫瘍に有意により多く移動することが見られた(
図24D)。さらに、より後の時点で、WR.TK-HPGD発現は、脾臓において腫瘍標的化CTLのレベルの劇的な増加をもたらすことが見られた。これらのデータは、HPGDの発現が腫瘍内の抑制的環境を制限するように作用するだけでなく、より強固な抗腫瘍適応免疫応答をもたらすT細胞の誘引を増強していることを示す。さらに、UPCI-1812へのHPGDの含有は、UPCI-1812より有意に多く腫瘍増殖を阻害するウイルスをもたらした(「組合せ」;
図28)。
図28に示されるように、組合せウイルスは、UPCI-1812ウイルスとVV-HPGDウイルスの付加効果よりも腫瘍増殖の多い減少をもたらした。PGE2のウイルス媒介性標的化は、腫瘍微小環境の大規模な変化をもたらし、ウイルス療法に対して以前から耐性である腫瘍の感作をもたらす局所的免疫抑制を克服することができた。
【0128】
13. 実施例7:活性および拡散を増加させる改変
図29は、(1e4 PFU)のWRまたはA34Rウイルス遺伝子中にEEVを増強する点突然変異(Lys151からGlu)を有するWRをワクチン接種されたマウスの血清中に存在する抗ワクシニア中和抗体のレベルを示す。A34R突然変異株は、WR-と比較して少ない抗ワクシニア中和抗体を産生する。
【0129】
【0130】
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
【0140】
【0141】
【0142】
様々な刊行物が本明細書で引用されるが、その内容はその全体が参照により本明細書に組込まれる。
前記酵素が、N-グリカナーゼ、O-グリカナーゼ、PNGase、β1-4ガラクトシダーゼ、β-N-アセチルグルコサミニダーゼ及びこれらの組合せから成る群より選択される、請求項4記載の腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
(i)Toll/IL-1Rドメイン含有アダプター誘導インターフェロンベータ(TRIF)タンパク質若しくはその機能的ドメインをコードする核酸;及び/又は(ii)15-ヒドロキシプロスタグランジンデヒドロゲナーゼ(15-PGDH)若しくはその機能的ドメインをコードする核酸をさらに含む、請求項1~6のいずれか1項記載の腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
以下:C12Lの完全な又は部分的な欠失、B8R突然変異、B18R突然変異、A35R突然変異、B15R突然変異及びこれらの組合せのうち少なくとも1つをさらに含む、請求項1~8のいずれか1項記載の腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)又はその機能的ドメインをコードする核酸をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項記載の腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
以下:A34RにおけるLys151のGluによるアミノ酸置換、完全な又は部分的なB5R欠失、A36R突然変異、A56R突然変異及びこれらの組合せのうち少なくとも1つをさらに含む、請求項1~11のいずれか1項記載の腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
(a)TRIF又はその機能的ドメインをコードする核酸及び(b)PGE2アンタゴニストをコードする核酸のうち少なくとも1つが、チミジンキナーゼ遺伝子の遺伝子座にクローニングされる、請求項7~13のいずれか1項記載の腫瘍溶解性ワクシニアウイルス。
請求項1~15のいずれか1項記載の腫瘍溶解性ワクシニアウイルスを含む、癌細胞の増殖を減少させるための、腫瘍の増殖を減少させるための、癌を有する対象を処置するための、及び/又は対象において抗癌効果をもたらすための、医薬組成物。
抗癌剤、免疫調節剤、骨髄由来抑制細胞のレベルを阻害又は減少させる薬剤及びこれらの組合せから成る群より選択される少なくとも1つの薬剤をさらに含む、請求項17記載の医薬組成物。
前記免疫調節剤及び骨髄由来抑制細胞のレベルを阻害又は減少させる前記薬剤が、抗CD33抗体又はその可変領域、抗CD11b抗体又はその可変領域、サイトカイン、ケモカイン、COX2阻害剤及びこれらの組合せから成る群より独立して選択され、場合により、前記COX2阻害剤がセレコキシブを含む、請求項20記載の医薬組成物。
前記抗癌剤が、化学療法剤、放射線療法剤、抗血管新生剤、アポトーシス誘導剤、抗癌抗体、抗サイクリン依存的キナーゼ剤又はこれらの組合せを含む、請求項18~21のいずれか1項記載の医薬組成物。