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特開2022-62186野せり抽出物および抗血栓剤を含む抗血栓用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062186
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】野せり抽出物および抗血栓剤を含む抗血栓用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/23 20060101AFI20220412BHJP
   A61K 31/4365 20060101ALI20220412BHJP
   A61K 31/4709 20060101ALI20220412BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20220412BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220412BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20220412BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20220412BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20220412BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220412BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
A61K36/23
A61K31/4365
A61K31/4709
A61P7/02
A61P9/00
A61P9/10 101
A61P9/10
A61P9/10 103
A61P9/12
A61P11/00
A61P13/12
A61P43/00 121
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016141
(22)【出願日】2022-02-04
(62)【分割の表示】P 2020542515の分割
【原出願日】2018-10-11
(31)【優先権主張番号】10-2017-0135472
(32)【優先日】2017-10-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】520135817
【氏名又は名称】高麗製薬株式会社
【氏名又は名称原語表記】KOREAN DRUG CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】69-10,Wonjeok-ro,Sindun-myeon,Icheon-si,Gyeonggi-do 17303,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジフン
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジョンホ
(72)【発明者】
【氏名】キム,リヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユ,ジュヒ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】野せり抽出物および抗血栓剤を含む組成物、これを投与することを特徴とする血栓抑制方法または血栓関連疾患の予防または治療方法、並びに前記薬学的組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】抗血栓用組成物は、野せり(Oenanthe javanica)抽出物;およびクロピドグレルまたはその薬学的に許容可能な塩およびシロスタゾールまたはその薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される1種以上の抗血栓剤を有効成分として含み、前記野せり抽出物は、野せりの水、エタノールまたはこれらの混合溶媒抽出物、または前記抽出物の分画物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
野せり(Oenanthe javanica)抽出物;およびクロピドグレルまたはその薬学的に許容可能な塩およびシロスタゾールまたはその薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される1種以上の抗血栓剤を有効成分として含み、前記野せり抽出物は、野せりの水、エタノールまたはこれらの混合溶媒抽出物、または前記抽出物の分画物である、抗血栓用組成物。
【請求項2】
前記野せり抽出物の分画物は、野せりのエタノール抽出物のエチルアセテート分画物である、請求項1に記載の抗血栓用組成物。
【請求項3】
前記クロピドグレルの薬学的に許容可能な塩は、硫酸水素塩である、請求項1に記載の抗血栓用組成物。
【請求項4】
前記クロピドグレルまたはその薬学的に許容可能な塩およびシロスタゾールまたはその薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される1種以上に対する前記野せり抽出物の重量比率(野せり抽出物:クロピドグレルまたはその薬学的に許容可能な塩およびシロスタゾールまたはその薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される1種以上)は、200:1~1:200である、請求項1に記載の抗血栓用組成物。
【請求項5】
野せり(Oenanthe javanica)抽出物;およびクロピドグレルまたはその薬学的に許容可能な塩およびシロスタゾールまたはその薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される1種以上の抗血栓剤を有効成分として含み、前記野せり抽出物は、野せりの水、エタノールまたはこれらの混合溶媒抽出物、または前記抽出物の分画物である、血栓関連疾患の予防または治療用組成物。
【請求項6】
前記血栓関連疾患は、心筋梗塞、狭心症、血栓性静脈炎、動脈塞栓症、冠状動脈血栓症、脳動脈血栓症、末梢血管血栓症、心不整脈血栓症、動脈血栓症、静脈血栓症、虚血性脳梗塞、動脈硬化、高血圧、肺高血圧、脳梗塞、脳卒中、慢性動脈閉塞症、肺梗塞、脳塞栓症、腎臓塞栓症、血栓塞栓症、くも膜下出血後の病的症状、経皮的冠状動脈形成術(PTCA)またはステント(stent)挿入時の血栓生成、ステント設置後の再狭窄、カテーテル血栓性閉塞または再閉塞、急性冠状動脈症候群、TIA(一過性脳虚血発作または急性脳血管症候群)および心不全症からなる群より選択された1種以上である、請求項5に記載の血栓関連疾患の予防または治療用組成物。
【請求項7】
a)水、エタノールまたはこれらの混合溶媒を用いて野せり抽出物を製造する段階;
b)前記段階a)で製造された野せり抽出物;およびクロピドグレルまたはその薬学的に許容可能な塩およびシロスタゾールまたはその薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される1種以上の抗血栓剤と薬学的に許容可能な担体および/または添加剤を混合する段階;および
c)前記段階b)で製造された混合物を剤形化して製剤を製造する段階を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2017年10月18日付の韓国特許出願第10-2017-0135472号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、野せり抽出物および抗血栓剤を含む組成物、これを投与することを特徴とする血栓抑制方法または血栓関連疾患の予防または治療方法、並びに前記薬学的組成物の製造方法に関し、より詳しくは、野せり抽出物、および抗血栓剤としてクロピドグレルまたはその薬学的に許容可能な塩およびシロスタゾールまたはその薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される1種以上を有効成分として含む抗血栓用、または血栓関連疾患の予防または治療用薬学的組成物、血栓抑制方法、または血栓関連疾患の予防または治療方法と前記薬学的組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
心血管系疾患は、心臓関連疾患(心筋梗塞、高血圧、心不全、不整脈、動脈硬化)と血管疾患(脳卒中、末梢血管疾患)を含む疾患であり、世界保健機関(WHO)の統計によれば、現代科学と医学の目覚ましい発展にもかかわらず、ここ30年間着実に発病率と有病率が増加した疾患であると報告され、韓国だけでなく、全世界的に心臓循環器系統の疾患による死亡率が全死亡率の30%前後と非常に高い比率を占める致命的な疾患の一種である。このような心血管系疾患の発病率と死亡率の増加は、経済成長と生活様式の西欧化に伴い、高脂肪食などの食生活の変化、ストレス増加、寿命延長による人口の高齢化、運動不足などに主に起因している。このような疾病自体およびその疾病発生後の深刻な身体的、社会的後遺症によって、国民医療費の過剰支出と生活の質の低下がもたらされることが、心血管系疾患の深刻な問題点として指摘されている。したがって、このような心血管系疾患に関する問題点が次第に重要と認識されるにつれ、全世界的にこれら疾患の発病機序の研究とともに予防および治療に関する研究に多くの投資が行われていることから、血液循環改善効果を有する新たな抗血栓製剤の開発のための研究の一環として、抗凝固活性あるいはフィブリン溶解活性を示す新たな素材の発掘のための研究が活発に進められている。しかし、これまでのかかる循環器疾患関連薬剤の研究と開発にもかかわらず、心血管系疾患の有病率と発病率は全世界的に着実に増加する傾向にあることから、いまや関連疾患に対する治療剤の開発とともに心血管系発病を抑制、予防できる活性物質および食品素材の開発の必要性が切実に求められているのが現状である。
【0004】
一方、血栓は、血液因子の凝集物として、主に血小板およびフィブリンの凝集物からなり、通常、血管の過度の出血を防ぐために形成される。血小板が内皮下層の表面と接触する場合、血栓を生成させて血管系を遮断する反応が開始されるが、このような過程を止血といい、前記過程は、傷部位での過度の出血を防ぐうえで極めて重要である。動脈血栓は、局所閉塞による深刻な疾患をもたらすのに対し、静脈血栓は、主に遠距離閉塞、または塞栓を起こす。したがって、血小板凝集抑制または血栓溶解作用をする医薬は、血栓、塞栓と関連のある疾病つまり、心筋梗塞、狭心症、血栓性静脈炎、動脈塞栓症、冠状および脳動脈血栓症、末梢血管または心不整脈血栓症、任意血管の動脈血栓症、静脈血栓症、虚血性脳梗塞、動脈硬化、高血圧、肺高血圧、脳梗塞、脳卒中、慢性動脈閉塞症、肺梗塞、脳塞栓症、腎臓塞栓症、血栓塞栓症およびくも膜下出血後の病的症状、経皮的冠状動脈形成術(PTCA)およびステント(stent)挿入時の血栓生成、ステント設置後の再狭窄、カテーテル血栓性閉塞または再閉塞、急性冠状動脈症候群、TIA(一過性脳虚血発作または急性脳血管症候群)、心不全症、虚血性病因による胸の痛み、X症候群、真性糖尿病の予防および治療に使用できる。このような血管を防ぐ機序には、血液凝固機序と血栓形成機序が存在する。血液凝固機序は、溶解性フィブリノゲンが難溶性フィブリンに変化して血液が凝固するもので、主開始子としては、外因性因子の組織因子(TF;tissue factor)と外因性因子のVIIa因子(factor VIIa)がある。各段階で様々な凝固因子を活性化して線維素凝固(fibrin colt;cross-linked fibrin molecule)が形成され、この時、トロンビンが生成されるが、この物質が強い血小板活性物質で活性化因子の放出を刺激する。血栓形成機序は、損傷した血管内皮の露出時に血小板がコラーゲンに付着し、互いに活性化によって粘性のゼラチン塊を形成するものであるので、正常な血管内皮細胞に生じるのではなく、損傷した血管からの出血を防ぐための自発的な過程である。
【0005】
このような血栓を除去する薬物としては、血栓溶解剤と抗血小板剤がある。血栓溶解剤は、プラスミノーゲン(plasminogen)からセリンタンパク分解酵素プラスミン(serin protease plasmin)の形成を触媒して血栓を迅速に分解する薬物で、ストレプトキナーゼ(streptokinase)、ウロキナーゼ(urokinase)、APSAC、t-PAなどがあり、3群の物質によって調節される抗血小板剤は、血小板の外部で生成されて血小板膜受容体と作用する薬物のカテコールアミン(catecholamine)、コラーゲン、トロンビン、プロスタサイクリン(prostacyclin);血小板の内部で生成されて膜受容体と作用する薬物のADP、PGD2、PGE2、セロトニン(serotonin);および血小板の内部で生成されて血小板の内部で作用する物質にはプロスタグランジンエンドペルオキシド(prostaglandin endoperoxide)、トロンボキサンA2(TXA2)、cAMP、cGMP、Ca2+がある。抗血小板剤にはさらに、カルシウムイオン運搬体(ionophore)として細胞膜に結合して細胞外のカルシウムを細胞内にカルシウム通路を設けて凝集を誘発させる薬物のA23187と、トロンボキサンA2類似物質(thromboxane A2 analog)としてトロンボキサン受容体(thromboxane receptor;TP)に作用してトロンボキサンと同じ効果を奏するようにするU46619がある。しかし、現在まで開発された血栓溶解剤または抗血小板剤は、止血過剰抑制、不妊、消化器障害などの様々な副作用をもたらす問題点を抱えていることから、作用の他のメカニズム、増加した効能および低い毒性を有する新たな抗血栓用生理活性化合物および薬物に関する研究は非常に必要である。
【0006】
そこで、本発明者らは、野せり抽出物と抗血栓剤としてクロピドグレルまたはその薬学的に許容可能な塩およびシロスタゾールまたはその薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される1種以上を複合的に投与する場合、それぞれの成分を単独投与した場合よりも優れた抗血栓活性を示すことを確認することによって、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の目的は、野せり(Oenanthe javanica)抽出物、および抗血栓剤としてクロピドグレルまたはその薬学的に許容可能な塩およびシロスタゾールまたはその薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される1種以上を有効成分として含む抗血栓用薬学的組成物およびこれを用いることを特徴とする血栓抑制方法を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、野せり抽出物、および抗血栓剤としてクロピドグレルまたはその薬学的に許容可能な塩およびシロスタゾールまたはその薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される1種以上を有効成分として含む血栓関連疾患の予防、改善または治療用薬学的組成物およびこれを用いることを特徴とする血栓関連疾患の予防、改善または治療方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するための一つの態様として、本発明は、野せり(Oenanthe javanica)抽出物、および抗血栓剤としてクロピドグレルまたはその薬学的に許容可能な塩およびシロスタゾールまたはその薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される1種以上を有効成分として含む抗血栓用薬学的組成物、これを投与する段階を含む血栓抑制方法、並びにその製造方法に関する。
【0010】
他の一つの態様として、本発明は、野せり(Oenanthe javanica)抽出物、および抗血栓剤としてクロピドグレルまたはその薬学的に許容可能な塩およびシロスタゾールまたはその薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される1種以上を有効成分として含む血栓関連疾患の予防または治療用薬学的組成物およびこれを投与する段階を含む血栓関連疾患の予防または治療方法に関する。
【0011】
以下、本発明をより詳しく説明する。
本発明による抗血栓用または血栓関連疾患の予防または治療用薬学的組成物は、有効成分として野せり抽出物、および抗血栓剤としてクロピドグレルまたはその薬学的に許容可能な塩およびシロスタゾールまたはその薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される1種以上を含む。
【0012】
せり(Oenanthe javanica)は、せり科に属する多年草植物で、水生または好湿性でかつ、茎は長く泥中に伸びて、7、8月に白い花が咲き、楕円形の実を結ぶ。花序は葉と対生し、5~15個の小さい花柄に分かれ、それぞれ10~25個の花がつく。茎下部分で枝が分かれて横に広がり、秋に細い茎の節から根を下ろして繁殖する。茎は毛がなく、香りがあり、高さが20~50cmであり、葉は互生し、長さが7~15cmであり、1~2回の羽状複葉であり、葉柄は上へ上がるほど短くなる。小さい葉は卵状であり、先が尖っていて縁に刻みがある特徴を有する。前記せりのうち、畑に自生する野生のせりを野せりと呼び、一般のせりと栄養学的に差はないが、香りがやや強い。
【0013】
前記野せりは、その形態に特別な制限がなく、抽出物分野で抽出物を得るために通常利用される形態をすべて含む。また、前記抽出物は、抽出溶媒で抽出した溶媒抽出物、抽出溶媒で抽出して製造した抽出物に分画溶媒を加えて分画した分画物、または前記分画物にクロマトグラフィーを行って得た精製物であってもよい。前記抽出溶媒は、天然物の抽出に使用可能な水、塩化ナトリウム水溶液、有機溶媒またはこれらの混合溶媒、好ましくは、水、塩化ナトリウム水溶液、エチルアセテート、炭素数1~5のアルコールおよびこれらの混合物からなる群の中から選択されたいずれか1つであってもよい。前記有機溶媒は、メタノール、エタノールなどの炭素数1~5の直鎖または分枝状アルコール、エチルアセテートまたはアセトンなどの極性溶媒と、ヘキサンまたはジクロロメタンの非極性溶媒、炭素数3~5のケトンなどの中性溶媒またはこれらの混合溶媒であってもよいし、好ましくは、30~90(v/v)%のエタノールなどの炭素数1~5の直鎖または分枝状アルコール水溶液、さらに好ましくは、50~80(v/v)%のエタノール水溶液であってもよい。前記分画溶媒は、水、炭素数1~炭素数5の直鎖または分枝状アルコール、エチルアセテートまたはこれらの混合物であってもよい。好ましい一つの態様において、本発明の野せり抽出物は、野せりをエタノールで抽出した粗抽出物のエチルアセテート分画であってもよい。前記野せり抽出物は、通常の植物抽出物の製造方法により製造されたものであってもよい。より具体的には、不純物を除去した野せりに抽出溶媒を加えて抽出過程を行う方法で行うことができる。前記抽出過程は、冷浸抽出法、温浸抽出法、加圧抽出法、還流抽出法、または超音波粉砕抽出法であってもよい。前記野せり抽出物の分画物の製造は、前記抽出法で製造した抽出物つまり、粗抽出物または粗抽出液に分画溶媒を加えた後に、分画溶媒の極性に応じて分画物を得る方法で行うことができる。前記分画物を得る方法は、層分離による分離法または分画法で行うことができる。前記分画物の精製のためのクロマトグラフィーは、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(silica gel column chromatography)、薄層クロマトグラフィー(thin layer chromatography、TLC)または高性能液体クロマトグラフィー(high performance liquid chromatography、HPLC)などの多様なクロマトグラフィーを用いて行うことができる。また、前記抽出物は、抽出、分画過程または精製過程を行った後、減圧ろ過過程を行ったり、追加的に濃縮および/または凍結乾燥を行って濃縮したり、溶媒を除去することができる。したがって、本発明における野せり抽出物は、通常の方法で乾燥した抽出物の乾燥物と通常の方法で濃縮された抽出物の濃縮物、前記抽出物、乾燥物または濃縮物の希釈液を含む意味で使用される。
【0014】
具体的には、本発明の一実施例では、野せり乾草5kgを洗浄および細切りして、35Lの酒精(95(v/v)%)エタノール水溶液を加えて、70℃で5時間1次抽出し、1次抽出後、前記1次抽出と同一の条件により、5時間15Lの酒精を用いて2次および3次抽出を行った。抽出が完了した後、これを回収し、4℃冷蔵保管した。前記抽出物を100meshでろ過した後に、10μmフィルタ紙でろ過し、これを再び4℃冷蔵保管し、これを濃縮させて(5l/1hr)、本発明による野せり抽出物を製造した。このような具体的な野せり抽出物の一製造例のフローチャートを図4に示した。
【0015】
また、本発明による組成物は、他の一つの有効成分として、抗血栓剤のクロピドグレルまたはその薬学的に許容可能な塩およびシロスタゾールまたはその薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される1種以上を含む。
【0016】
このうち、クロピドグレルは、化学名がメチル(+)-(S)-α-(o-クロロフェニル)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-アセテート(右旋性光学異性体)であって、血小板抑制活性を有することによって、アテローム性硬化症および心臓麻痺のような血管疾患による虚血性発作(ischemic events)を防止する。クロピドグレルは、血小板の凝集を抑制することによって抗血栓効果があり、動脈硬化、脳卒中、心筋梗塞、末梢動脈閉塞症のような各種血管性疾患の予防と治療に有用である。クロピドグレルは、塩として、塩酸塩、硫酸水素塩、臭素酸塩、タウロコール酸塩などが知られており、現在、臨床ではクロピドグレル硫酸水素塩(または硫酸塩と称したりする、C1616ClNOS・HSO)の形態で使用されている。したがって、好ましくは、本発明による組成物に含まれるクロピドグレルの薬学的に許容可能な塩は、硫酸水素塩であってもよい。
【0017】
また、シロスタゾールは、6-[4-(1-シクロヘキシル-1H-テトラゾール-5-イル)-ブトキシ]-3,4-ジヒドロカルボスチリルであり、ホスホジエステラーゼ阻害作用、抗腫瘍作用、抗高血圧作用、消炎作用だけでなく、高い血小板凝集抑制作用を示すので、ホスホジエステラーゼ阻害剤だけでなく、抗血栓剤、脳循環改善剤、消炎剤、抗腫瘍剤、抗高血圧剤、抗喘息剤として幅広く用いられている薬物である。シロスタゾールの薬理学的に許容可能な塩は、シロスタゾールを薬理学的に許容可能な酸と反応させて容易に製造することができる。薬理学的に許容可能な酸には、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、臭化水素酸のような無機酸、およびシュウ酸、マレイン酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸のような有機酸が含まれる。
【0018】
本発明による組成物内の有効成分としての野せり抽出物、および抗血栓剤のクロピドグレルまたはその薬学的に許容可能な塩およびシロスタゾールまたはその薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される1種以上は、使用形態および目的、患者の状態、症状の種類および軽重などによって適切に調節可能であり、投薬者の必要に応じて増減してもよく、食生活、栄養状態、血栓の進行程度などのような多様な因子に応じて適切に増減可能である。また、本発明による組成物内において、野せり抽出物と、抗血栓剤のクロピドグレルまたはその薬学的に許容可能な塩およびシロスタゾールまたはその薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される1種以上の重量比は、200:1~1:200、好ましくは100:1~1:100、さらに好ましくは1:1~1:100の重量比で含まれる。
【0019】
本発明による組成物は、ヒトを含む哺乳動物に多様な経路で投与される。投与方式は、通常使用されるすべての方式でもよいし、例えば、経口または非経口(例えば、皮膚、静脈、筋肉内、皮下)などの経路で投与され、好ましくは、経口投与される。本発明の組成物は、それぞれ通常の方法により、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤、エアゾールなどの経口型剤形、または経皮剤、坐剤、軟膏剤および滅菌注射溶液形態の非経口剤形などに剤形化して使用できる。
【0020】
本発明の組成物は、前記混合抽出物のほか、薬剤学的に好適で生理学的に許容される担体、賦形剤および希釈剤などの補助剤を追加的に含有するものであってもよい。例えば、経口投与用製剤の場合には、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、可溶化剤、懸濁化剤、保存剤または増量剤などを用いて製剤化することができる。
【0021】
本発明の薬学的組成物の投与用量は、患者の状態、年齢、体重、喘息による気管支または肺の損傷程度、疾患の進行程度などの多様な要因により専門家によって決定される。また、単位剤形あたり、前記薬学的組成物の1日の用量またはその1/2、1/3または1/4の用量が含有されるようにし、1日1~6回投与される。
【0022】
したがって、他の態様として、本発明は、前記薬学的組成物を投与する段階を含む血栓抑制方法に関する。投与方法および投与用量などに関する事項は、前記薬学的組成物に関する事項を適用することができる。
【0023】
本発明の組成物は、血小板の凝集を効果的に阻害して優れた抗血栓効果を示し、抗血栓用組成物および血栓疾患の予防または治療用薬学的組成物として有用に利用可能である。さらに他の態様として、本発明は、前記薬学的組成物を投与する段階を含む血栓疾患の予防または治療方法に関する。投与方法および投与用量などに関する事項は、前記薬学的組成物に関する事項を適用することができる。
【0024】
前記血栓疾患は、心筋梗塞、狭心症、血栓性静脈炎、動脈塞栓症、冠状動脈血栓症、脳動脈血栓症、末梢血管血栓症、心不整脈血栓症、動脈血栓症、静脈血栓症、虚血性脳梗塞、動脈硬化、高血圧、肺高血圧、脳梗塞、脳卒中、慢性動脈閉塞症、肺梗塞、脳塞栓症、腎臓塞栓症、血栓塞栓症、くも膜下出血後の病的症状、経皮的冠状動脈形成術(PTCA)またはステント(stent)挿入時の血栓生成、ステント設置後の再狭窄、カテーテル血栓性閉塞または再閉塞、急性冠状動脈症候群、TIA(一過性脳虚血発作または急性脳血管症候群)および心不全症からなる群より選択された1種以上を含み、これに制限されない。
【0025】
もう一つの態様として、本発明は、前記野せり抽出物、およびクロピドグレルまたはその薬学的に許容可能な塩を含む抗血栓用、または血栓関連疾患の予防または治療用薬学的組成物の製造方法に関する。具体的には、本発明は、
a)野せり抽出物を製造する段階;
b)前記段階a)で製造された野せり抽出物、および抗血栓剤のクロピドグレルまたはその薬学的に許容可能な塩およびシロスタゾールまたはその薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される1種以上と薬学的に許容可能な担体および/または添加剤を混合する段階;および
c)前記段階b)で製造された混合物を剤形化して製剤を製造する段階を含む、抗血栓用、または血栓関連疾患の予防または治療用薬学的組成物の製造方法に関する。
【0026】
好ましくは、本発明の製造方法において、段階a)では、前記組成物に関して言及された多様な抽出溶媒および抽出方法を用いて野せり抽出物を製造することができる。また、段階b)のように、製剤の構成成分を混合した後、流動性の増加、製剤の含有量均一性の確保などのために、追加的に篩にかける工程などにより適切な大きさにペレットや顆粒化可能である。この時、このように製造された混合物のペレットまたは顆粒は、追加的に、剤形化前に薬学的に許容可能な担体および/または添加剤とさらに混合されてもよい。
【0027】
前記段階c)において、段階b)で製造された混合物を剤形化させる方法は、公知の製剤製造時に使用されるものであればいかなる方法でも使用可能であるが、一般に、錠剤の場合、打錠機に均一な量の混合物を投入して打錠する方式によって製造できるが、一般に、錠剤の製造時に使用される直接圧縮成形(直接打錠法、direct compression)、湿式顆粒法(wet granulation)または乾式顆粒法(dry granulation)を制限なく使用可能である。さらに、カプセル剤の場合、適切な大きさのゼラチンカプセルのような空カプセル内に所望の含有量の段階b)の混合物を均一に投入して製造することができる。
【発明の効果】
【0028】
上述のように、本発明の薬学的組成物は、野せり抽出物、および抗血栓剤のクロピドグレルまたはその薬学的に許容可能な塩およびシロスタゾールまたはその薬学的に許容可能な塩からなる群より選択される1種以上を有効成分として共に含むことによって、他の抗血栓剤間の組み合わせに比べて優れた相乗的な血栓生成抑制効果を示し、抗血栓剤および血栓疾患の予防または治療剤として製薬産業で有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明による野せり抽出物とクロピドグレルの併用投与時の血栓形成によって頸動脈を通した血流中断時までの時間(Time to occlusion、TTO)を示すグラフである。前記図1にて、Clo1はクロピドグレル1mg/kgを意味し、Clo2はクロピドグレル2mg/kgを意味する。
図2】本発明による野せり抽出物とクロピドグレルの併用投与時の血栓重量を測定したグラフである。前記図2にて、Clo1はクロピドグレル1mg/kgを意味し、Clo2はクロピドグレル2mg/kgを意味する。
図3】多様な抽出溶媒で抽出した本発明による野せり抽出物と多様な抗血栓剤の組み合わせによる血小板凝集阻害能を確認したグラフである。
図4】本発明による野せり抽出物の一つの製造例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、実施例および実験例を通じて本発明を具体的に説明するが、下記の実施例および実験例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範囲が下記の実施例および実験例に制限されると解釈されない。
【0031】
1.製造例1:野せりの水抽出物、NaCl抽出物およびエタノール抽出物の製造
本発明による野せり抽出物を製造するために、下記の方法により、野せりの水抽出物、野せりのNaCl抽出物およびエタノール抽出物を製造した。
【0032】
まず、水および0.15M NaCl抽出物の場合、野せり乾草5kgをそれぞれ水および0.15M NaCl溶液を35L用いて、90℃で17時間1次抽出した。さらに、1次抽出後、同一の条件で同一の抽出溶媒15Lを用いて、3時間2次抽出した。抽出された抽出物を回収し、4℃冷蔵保管した後、これを100meshの篩にかけた後、10μmのfilterでろ過した。この後、ろ過したろ過液を遠心分離(4,500rpm、30分)した後、ろ過紙で濾過し、これを4℃冷蔵保管し、凍結乾燥させた(50l/5day)。
【0033】
エタノール抽出物は、野せり乾草5kgを洗浄および細切りして、35Lの酒精(95(v/v)%)エタノール水溶液を加えて、70℃で5時間1次抽出し、1次抽出後、前記1次抽出と同一の条件により、5時間15Lの酒精を用いて2次および3次抽出を行った。抽出が完了した後、これを回収し、4℃冷蔵保管した。前記抽出物を100meshでろ過した後に、10μmのフィルタ紙でろ過し、これを再び4℃冷蔵保管し、これを濃縮させて(5l/1hr)、本発明による野せり抽出物を製造した。このような具体的な野せり抽出物の一つの製造例のフローチャートを図4に示した。
【0034】
2.製造例2:野せり抽出物の分画物の製造
前記製造例1で製造された野せりの水抽出物、NaCl抽出物、エタノール抽出物を用いて野せり抽出物の多様な溶媒分画を製造した。具体的には、製造例1で製造された野せり抽出物の濃縮液を水に懸濁させて、懸濁液と同量のクロロホルムを添加して混合させた後、4時間程度層を分離させ、この過程を2回さらに繰り返した。分離された水分画物に同量のエチルアセテートを添加して混合させた後、4時間程度層を分離させ、この過程を2回さらに繰り返した。また、分離された水分画物に同量のブタノールを添加して混合させた後、4時間程度層を分離させ、この過程を2回さらに繰り返した。分離された各分画物を後に濃縮させて(5l/h)、それぞれの溶媒分画物を製造し、そのフローチャートを図4に示した。
【0035】
3.実験例1:ラット動脈血栓モデル(rat arterial thrombosis model)を用いた野せり抽出物の抗血栓効能評価
本発明による組成物の有効成分の一つである野せり抽出物と、公知の抗血栓剤4種の単独および併用投与時の抗血栓効能を確認するために、FeCl-誘導頸動脈血栓症疾患ラットモデルを用いて動物実験を進行させた。
【0036】
3-1.実験用試薬および試料
本発明による野せり抽出物は、製造例2で製造された野せりのエタノール抽出物のエチルアセテート分画を用い、クロピドグレル、シロスタゾール、イチョウの葉エキス (Ginko biloba extract)などは自主的に製造して用いた。FeCl、アラビアガム(Arabic gum)とアスピリン(Aspirin)はSigma-Aldrich(龍仁、韓国)から購入した。すべての試料は5%アラビアガムに懸濁させて動物実験を進行させた。
【0037】
3-2.実験動物および実験群
SD rat(雄性、6週齢)はOrientbio社(ソウル、韓国)から購入し、建国大学RICセンター実験動物室で1週間以上適応させた後、最低18時間絶食させた後、実験に使用した。
【0038】
実験群は計8群に下記のように分け、各群ごとに、ラットは疾患モデルの特性上正確な効能評価のために7匹で組んだ。
【0039】
1)単独投与試験(5つの実験群):
Control(1群):5%アラビアガム(Arabic gum、溶媒投与群)
薬物群(2群):Clopidogrel1、2mg/kg(陽性対照物質)
本発明による野せり抽出物(2群):野せり抽出物50および100mg/kg
2)複合剤投与試験(3つの実験群):
野せり抽出物50mg/kg+Clopidogrel1mg/kg(2set)
野せり抽出物100mg/kg+Clopidogrel1mg/kg
【0040】
3-3.実験方法
JH Choら(Thrombosis Research100:97-107、2000)、JH Choら(Thromb Haemost86:1512-1520、2001)、KD Kurzら(Thrombosis Research 60:269-280、1990)による方法を参照して作製し、これを用いて頸動脈血栓動物(ラット)モデルを作製して、下記の具体的な方法により、前記血栓動物モデルにおいてFeCl-誘導された血栓による頸動脈血流中断時までの時間(TTO、time to occlusion)および頸動脈内に生成された血栓の重量を測定した。
1)試験物質、溶媒、陽性対照物質などを体重対比一定用量ratに経口投与する。
2)経口投与約40分後、Ratの体重に合わせて麻酔剤を投与する(pentobarbital Na 60mg/kgを腹腔注射)。
3)ラットを紙テープでheating pad上の実験台に固定し、肩線のつながる首近傍を切開する(実験中に熱発生lampを用いてRatの体温が37±0.5℃維持されるようにする)。
4)Tracheotomy(器官切開)を実施する(気道確保)。
5)ハサミで小さく切開した後、その後からは2つのforcepを用いて筋肉を破っていきながら左頸動脈を注意深く露出させる。
6)血管についた脂肪組織を除去し、血管両端を囲む筋肉をさらに切開して小さいピンセットを血管の下に入れて固定させる(ピンセットを挟んだ状態でも血管が押されないようにする)。
7)左頸動脈の血管の下にparafilm(1×3cm)を位置させる(flow probeを固定する役割)。
8)0.9%salineで左頸動脈を洗浄した後、Transonic flow probeを血管に挟む。
9)Transonic flow probeを頸動脈に挟んだ後、Transonic flow測定器と連結し、血流がうまくモニタリングされるかを確認する。
10)FeClを置く箇所とprobeとの間にfilter paperをぐるぐる巻いて血管上に置く。
11)Filter paper(Whatman No.1)disc(1×2mm)を20%FeCl(in 0.9%NaCl)溶液にたっぷり浸す。
12)試料を経口投与してから1時間経過後、filter paper discをprobeの下り方向で血管の上部分に付着させ、この時から10分後にfilterを除去する。
13)FeClを血管に付着させた後、60分間流量計により頸動脈の血流量を測定しながら頸動脈のcarotid patency(開放状態)を持続的にモニタリングする。
14)実験後、血管clampを用いてfilter pater disc付着近傍の十分な長さの血管片を手術糸で縛って分離し、血管内に生成された血栓の重量を測定する。
【0041】
3-4.統計学的分析
すべての結果はMean±SEMで示し、One-way ANOVAとDunnett’s Multiple Comparison TestおよびStudent’s unpaired t test(one-tailed)によって有意な差をp<0.05水準で分析した。
【0042】
3-5.結果
ラット頸動脈血栓モデルを用いて試料および陽性対照物質の単独または併用投与時、血栓関連の2つのparameter(time to occlusion、TTO、min;thrombus weight、mg)に対する効果を下記表1および図1、2に示した。
【0043】
1)塩化鉄溶液による血栓症の誘発
ペントバルビタール(Pentobarbital)で麻酔したラットにおいて頸動脈を塩化鉄(20%)で飽和したfilter paper片(1x2mm)に10分間露出させた時、血栓の形成によって頸動脈による血流中断時までの時間(time to occulsion、TTO、min)が15.1分、塩化鉄刺激の加えられた部位の頸動脈内に形成された血栓の重量が2.1mgと観察され、塩化鉄による血管内皮の損傷によって頸動脈内に血栓がよく誘発されたことが分かる。
【0044】
2)本発明による野せり抽出物および陽性対照物質の単独投与効果
陽性対照物質として使用されたクロピドグレルは1または2mg/kg用量で経口投与した時、溶媒投与群に比べて用量依存的にTTOを増加させ、血栓の重量を減少させる傾向を示した(高用量投与群:p<0.05versus溶媒投与群;図1および2、および下記表1参照)。
【0045】
本発明による野せり抽出物は50および100mg/kg用量で経口投与した時、溶媒投与群に比べてTTOを増加させ(低および高用量投与群:p<0.05versus溶媒投与群)、血栓の重量を減少させる傾向を示した(高用量投与群:p<0.05versus溶媒投与群、図1および2、表1参照)。
【0046】
【表1】
【0047】
3)本発明による野せり抽出物とクロピドグレルの併用投与による効果
TTOに対する作用
本発明による野せり抽出物(50、100mg/kg)の各用量をクロピドグレル(Clopidogrel)1mg/kg用量と同時に併用投与した時、野せり抽出物50mg/kgと併用投与時は、野せり抽出物の単独投与時と類似する程度のTTOを示し、Clopidogrelの単独投与時よりはTTOが長くなる傾向を示した。これに対し、野せり抽出物100mg/kgと併用投与時は、野せり抽出物の単独投与時またはClopidogrelの単独投与時よりTTOが長くなる傾向を示した(図1および2、表1参照)。
【0048】
頸動脈血栓の重量に対する作用
野せり抽出物(50、100mg/kg)の各用量をClopidogrel1mg/kg用量と同時に併用投与した時、野せり抽出物50mg/kgと併用投与時は、野せり抽出物の単独投与時およびclopidogrelの単独投与時と比較して血栓重量の減少効果を示した(図1および2、表1参照)。野せり抽出物100mg/kgと併用投与時は、野せり抽出物の単独投与時またはClopidogrelの単独投与時より血栓重量が減少する傾向を示した。
【0049】
4.実験例2:抽出物別の血小板凝集阻害能評価
PRPおよびWPのlight transmissionを0%、platelet poor plasma(PPP)、suspension bufferのlight transmissionを100%にして血小板の凝集程度に応じたlight transmissionを測定した。測定方法はWatson et al(『Inhibition of mitogen-activated protein kinase kinase does not impair primary activation of human platelets』Biochem J.1996 Aug15;318(Pt1):207212)に記載の方法を使用した。
【0050】
具体的には、下記の評価方法により行い、この時使用される濃縮血小板は1/7に希釈して37℃で2時間以内に使用し、野せりのエタノール抽出物のエチルアセテート分画物、野せりの水抽出物のエチルアセテート分画物、野せり0.15NaCl抽出物のエチルアセテート分画物、クロピドグレル、シロスタゾール、アスピリンをそれぞれサンプルとして用いた。
【0051】
評価方法
1.Chrono-Log社のfour-channel aggregometerをセット(予熱30分、37℃)
2.PRP4つのchannelにPlastic cuvettesにstir barsを入れて、血小板希釈液(483μl)を入れて加温(37℃)させる。PPPセクターにPlastic cuvetteとsuspension buffer 500μlを投入
3.aggregometer作動およびBaseline設定
-StandardのAscorbic acid 1mgをDMSO1mlで用意する。
4.試料および凝集剤添加
-1番目channelにControl、2、3、4番目channelに試料添加後、約1分反応
-凝集剤処理および5分間測定
5.結果保存
-『Set Start and Stop Time』を選択して凝集開始および終結地点指定
-『Compute slop and amplitude』を選択してslopとamplitude確認
【0052】
前記血小板凝集阻害能確認試験に関する結果を下記の図3に示した。図3から確認できるように、野せり抽出物の分画物の中では、エタノール抽出物のエチルアセテート抽出物が、単独投与時だけでなく、クロピドグレル、シロスタゾールまたはアスピリンと併用投与時にも最も優れた血小板凝集阻害能を示したことが分かる。
図1
図2
図3
図4