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特開2022-62193不飽和脂肪族オレフィン性結合を含有するチエノピリジン誘導体、その調製方法および使用
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  • 特開-不飽和脂肪族オレフィン性結合を含有するチエノピリジン誘導体、その調製方法および使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062193
(43)【公開日】2022-04-19
(54)【発明の名称】不飽和脂肪族オレフィン性結合を含有するチエノピリジン誘導体、その調製方法および使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 495/04 20060101AFI20220412BHJP
   A61K 31/4365 20060101ALI20220412BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20220412BHJP
【FI】
C07D495/04 105A
C07D495/04 CSP
A61K31/4365
A61P9/00
【審査請求】有
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022016448
(22)【出願日】2022-02-04
(62)【分割の表示】P 2020531805の分割
【原出願日】2018-08-22
(31)【優先権主張番号】201710735303.1
(32)【優先日】2017-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】520061653
【氏名又は名称】ティエンジン インスティテュート オブ ファーマシューティカル リサーチ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TIANJIN INSTITUTE OF PHARMACEUTICAL RESEARCH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 308 An-shan West Road, Nankai District Tianjin 300193, China
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100182567
【弁理士】
【氏名又は名称】遠坂 啓太
(72)【発明者】
【氏名】ホアン,チャンジアン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,シージュン
(72)【発明者】
【氏名】リー,リンジュン
(72)【発明者】
【氏名】リウ,レイ
(72)【発明者】
【氏名】リー,ユーチュエン
(72)【発明者】
【氏名】ユエン,ジン
(72)【発明者】
【氏名】イエン,フイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ソンフイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン,シュエミン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,チュンチャオ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シューユエン
(72)【発明者】
【氏名】ウェイ,ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】シュー,ウェイレン
(72)【発明者】
【氏名】タン,リーダー
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ,メイシアン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】抗血小板凝集効果を有する化合物群、その調製方法および使用、ならびに該化合物を含有する医薬組成物を提供する。
【解決手段】式(I)の構造を有する化合物(式中、Rは、メチル、エチル、プロピル、ビニルまたはプロペニル)を提供する。本発明は、該化合物の結晶形、結晶形の調製方法および使用、ならびに結晶形を含む医薬組成物も提供する。本発明の式(I)の構造を有する化合物は、固体形態で存在し、これは、クロピドグレル耐性の問題を解決することができるだけでなく、一部の薬物の重度出血性副作用および不十分な安全性の問題、ならびに既存の化合物の不十分な安定性の問題も解決することができる。それを、明確な治療的効果を有し、耐性を示さず、より良好な安定性を有するADP受容体アンタゴニストの抗血小板剤に発展させることができる。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)の構造を有する化合物。
【化1】
[式中、Rは、メチル、エチル、プロピル、ビニルまたはプロペニルである。]
【請求項2】
以下の化合物:
I-1:メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート;
I-2:メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート;
I-3:メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2,4-ペンタジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート;
I-4:メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ペンテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート;および
I-5:メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ヘキセノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート
から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-1)の結晶形Aであって、前記結晶形Aが、Cu-Kα線を使用して2θ°で表して5.31、16.13、20.24および21.58に回折ピークを有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差が±0.2であることを特徴とする、結晶形A。
【請求項4】
前記結晶形Aが、Cu-Kα線を使用して2θ°で表して5.31、10.70、12.43、16.13、17.47、20.24、21.58、25.83および27.09に回折ピークを有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差が±0.2であることを特徴とする、請求項3に記載の結晶形A。
【請求項5】
メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E、4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Aであって、前記結晶形Aが、Cu-Kα線を使用して2θ°で表して5.52、16.73、19.43および22.38に回折ピークを有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差が±0.2であることを特徴とする、結晶形A。
【請求項6】
前記結晶形Aが、Cu-Kα線を使用して2θ°で表して5.52、11.10、12.30、16.73、18.86、19.43、22.38、23.40および23.80に回折ピークを有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差が±0.2であることを特徴とする、請求項5に記載の結晶形A。
【請求項7】
メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Bであって、前記結晶形Bが、Cu-Kα線を使用して2θ°で表して4.31、8.66、13.01、17.42および19.52に回折ピークを有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差が±0.2であることを特徴とする、結晶形B。
【請求項8】
前記結晶形Bが、Cu-Kα線を使用して2θ°で表して4.31、8.66、10.29、10.94、13.01、17.42、19.52、23.17、24.22および24.92に回折ピークを有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差が±0.2であることを特徴とする、請求項7に記載の結晶形B。
【請求項9】
メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2,4-ペンタジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-3)の結晶形Aであって、前記結晶形Aが、Cu-Kα線を使用して2θ°で表して5.71、11.49、17.28、19.57および23.14に回折ピークを有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差が±0.2であることを特徴とする、結晶形A。
【請求項10】
前記結晶形Aが、Cu-Kα線を使用して2θ°で表して5.71、11.49、12.43、15.95、16.56、17.28、19.57、23.14、23.66、24.98および26.09に回折ピークを有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差が±0.2であることを特徴とする、請求項9に記載の結晶形A。
【請求項11】
メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ペンテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-4)の結晶形Aであって、前記結晶形Aが、Cu-Kα線を使用して2θ°で表して5.32、16.09、18.28、20.68および21.51に回折ピークを有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差が±0.2であることを特徴とする、結晶形A。
【請求項12】
前記結晶形Aが、Cu-Kα線を使用して2θ°で表して5.32、10.68、12.98、14.57、16.09、17.64、18.28、19.83、20.68および21.51に回折ピークを有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差が±0.2であることを特徴とする、請求項11に記載の結晶形A。
【請求項13】
メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ヘキセノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-5)の結晶形Aであって、前記結晶形Aが、Cu-Kα線を使用して2θ°で表して5.58、16.84、19.46、22.50および23.47に回折ピークを有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差が±0.2であることを特徴とする、結晶形A。
【請求項14】
前記結晶形Aが、Cu-Kα線を使用して2θ°で表して5.58、11.19、12.21、15.64、16.84、19.00、19.46、20.09、22.50、23.47、23.99および25.81に回折ピークを有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差が±0.2であることを特徴とする、請求項13に記載の結晶形A。
【請求項15】
請求項1~2に記載の式(I)の構造を有する化合物、請求項3~6に記載の結晶形A、請求項7~8に記載の結晶形Bおよび請求項9~14に記載の結晶形Aからなる群から選択されるいずれかと、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、医薬組成物。
【請求項16】
前記医薬組成物が、固体経口剤、液体経口剤、または注射剤である、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記医薬組成物が、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、シロップ剤、経口液剤、液体注射剤、粉末注射剤および小容量輸液剤からなる群から選択される1以上である、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
血小板凝集によって引き起こされる心血管および脳血管疾患を予防および/または処置するための医薬の製造における、請求項1~2に記載の式(I)の構造を有する化合物、請求項3~6に記載の結晶形A、請求項7~8に記載の結晶形Bおよび請求項9~14に記載の結晶形Aからなる群から選択されるいずれかの使用。
【請求項19】
請求項1または2に記載の式(I)の構造を有する化合物を調製する方法であって、
式(II)の構造を有する化合物を塩基の存在下で対応する酸、塩化アシルまたは酸無水物と反応させて、式(I)の構造を有し、Rが請求項1または2に定義の通りである化合物を調製するステップ:
【化2】
を含む、方法。
【請求項20】
上記のステップにおいて、下記(条件1-1)および/または(条件1-2)で前記反応が行われる、請求項19に記載の方法。
(条件1-1)前記塩基が、トリエチルアミンもしくはN,N-ジイソプロピルエチルアミンである。
(条件1-2)前記反応が、溶媒の存在下で行われる。
【請求項21】
前記(条件1-2)の前記溶媒が、ジクロロメタンである請求項20に記載の方法。
【請求項22】
式(II)の構造を有する化合物が、式(III)の構造を有する化合物を塩基の存在下で式(IV)の構造を有する化合物と反応させることによって調製される、請求項19~21のいずれかに記載の方法。
【化3】
【請求項23】
前記式(III)の構造を有する化合物および前記式(IV)の構造を有する化合物から前記式(II)の構造を有する化合物を調製する反応において、下記(条件2-1)~(条件2-3)のうち1以上を満たす条件で行われる、請求項22に記載の方法。
(条件2-1)前記塩基が炭酸カリウムである。
(条件2-2)前記反応が、溶媒の存在下で行われる。
(条件2-3)前記反応が、20~40℃の温度で行われる。
【請求項24】
前記(条件2-2)の前記溶媒が、アセトニトリルである請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療技術の分野に属する。詳細には、本発明は、抗血小板凝集効果を有する化合物群、その調製方法および使用、ならびに該化合物を含有する医薬組成物に関する。さらに詳細には、本発明は、不飽和脂肪族オレフィン性結合を含有するチエノピリジン誘導体、その調製方法および使用、ならびに医薬組成物に関する。本発明はまた、化合物の結晶形、結晶形の調製方法および使用、ならびに結晶形を含む医薬組成物にも関する。
【背景技術】
【0002】
クロピドグレルは、2社の製薬会社、Sanofi社およびBristol-Myers Squibb社によって共同開発された経口用ADP受容体アンタゴニストであり、市販が認可されている。それは、早期に開発された抗血小板剤チクロピジンに対するある種の構造改変に基づいて開発され、現在、第一選択抗血栓剤として臨床的に使用されている。しかし、多年にわたる臨床使用において、クロピドグレルには、重大な欠点があることが確認された。クロピドグレルはプロドラッグであり、奏功するには、肝臓のP450酵素系による2ステップの生体内代謝によって、活性代謝物へと代謝される必要がある。異なる個体において関連酵素の発現に違いがあるので、特に第1ステップの代謝が依存するCYP2C19は遺伝子多型を有し、クロピドグレルの臨床処置効果間で大きな個体差を引き起こし、「クロピドグレル耐性」の現象を生じさせやすく、これは、いくらか有害な心血管系事象をさらに引き起こすことになる。
【0003】
プラスグレルは、Daiichi Sankyo社(日本)およびEli Lilly社(米国)によって共同開発されたもので、クロピドグレルに基づいて開発されたADP受容体アンタゴニストの抗血小板剤である。クロピドグレルと比べて、プラスグレルは急速に奏功し、高い活性を有し、患者間の薬物への応答の差は小さい。しかし、プラスグレルにも重大な欠点がある。プラスグレルは、より大きな、致死的でさえある出血リスクを有し、肝毒性、血小板減少、および好中球減少などの有害作用も有する。
【0004】
同時に、既存の文献で報告されたチエノピリジン化合物にも不安定性の問題がある。例として、クロピドグレル遊離塩基は油状物であり、これは、不安定であり、経口剤に作製することが困難であるなど多くの不利な点を有する。いくつかの文献に報告されている他のチエノピリジン化合物は、化合物が油状物として存在し、塩酸および硫酸などの強酸と塩を形成する必要があり、生成物が不安定であり、分解を起こしやすいという同様の不利な点を有する。これらの不利な点により、これらの化合物は、ドラッガビリティーが低く、または生産、販売、保存、および使用時における問題を有しやすい。
【0005】
今までのところ、クロピドグレル耐性の問題とプラスグレルの重度出血性副作用および潜在的肝毒性の問題の両方を解決することができ、不十分な安定性の問題も解決することができる化合物が存在することを示した研究はない。
【0006】
したがって、明確な治療的効果を有し、代謝耐性を示さず、より高い安全性およびより良好な安定性を有するADP受容体アンタゴニストの抗血小板剤を開発する差し迫った臨床的必要性がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術的課題は、上記の不利な点を克服し、明確な治療的効果を有し、耐性を示さず、かつより高い安全性および安定性を有するADP受容体アンタゴニストの抗血小板剤を開発することである。
【0008】
本発明の目的は、不飽和脂肪族オレフィン性結合を含有するチエノピリジンエステル誘導体、不飽和脂肪族オレフィン性結合を含有するチエノピリジンエステル誘導体を調製する方法、不飽和脂肪族オレフィン性結合を含有するチエノピリジンエステル誘導体の使用、および不飽和脂肪族オレフィン性結合を含有するチエノピリジンエステル誘導体を含む医薬組成物を提供することである。
【0009】
本発明の別の目的は、不飽和脂肪族オレフィン性結合を含有するチエノピリジンエステル誘導体の結晶形、結晶形を調製する方法、結晶形を含む医薬組成物、および結晶形の使用を提供することである。
【0010】
本発明のさらに別の目的は、血小板凝集によって引き起こされる心血管および脳血管疾患を予防および/または処置する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の目的は、以下の技術的解決方法によって達成される。
【0012】
一態様において、本発明は、式(I)の構造を有する化合物
【化1】
[式中、Rは、メチル、エチル、プロピル、ビニルまたはプロペニルである]
を提供する。
【0013】
本発明の式(I)の構造を有する化合物は、好ましくは以下の化合物から選択される。
【0014】
I-1:メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート
【0015】
【化2】
【0016】
I-2:メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート
【0017】
【化3】
【0018】
I-3:メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2,4-ペンタジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート
【0019】
【化4】
【0020】
I-4:メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ペンテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート
【0021】
【化5】
【0022】
I-5:メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ヘキセノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート
【0023】
【化6】
【0024】
本発明の式(I)の構造を有する化合物は、より好ましくは以下の化合物:
I-1:メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート;および
I-2:メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート
から選択される。
【0025】
別の態様において、本発明は、本発明の式(I)の構造を有する化合物を調製する方法であって、
式(II)の構造を有する化合物を塩基の存在下で対応する酸、塩化アシルまたは酸無水物と反応させて、式(I)の構造を有する化合物を調製するステップ:
【化7】
[式中、Rは、メチル、エチル、プロピル、ビニルまたはプロペニルである]
を含み、
好ましくは、本発明の式(I)の構造を有する化合物を調製する方法において、塩基が、トリエチルアミンもしくはN,N-ジイソプロピルエチルアミンであり、および/または反応が、ジクロロメタンなどの溶媒の存在下で行われる、方法を提供する。
【0026】
好ましくは、式(II)の構造を有する化合物は、式(III)の構造を有する化合物を塩基の存在下で式(IV)の構造を有する化合物と反応させることによって調製され、
【化8】
好ましくは、式(III)の構造を有する化合物および式(IV)の構造を有する化合物から式(II)の構造を有する化合物を調製する反応において、前記塩基は、炭酸カリウムであり、前記反応は、アセトニトリルなどの溶媒の存在下で行われ、および/または前記反応は、20~40℃の温度で行われる。
【0027】
一部の実施形態において、本発明の調製方法において使用される溶媒は、反応条件下で不活性な溶媒とすることができ、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル;1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素などのハロゲン化炭化水素;メタノール、エタノール、イソプロパノール、tert-ブタノールなどのアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの炭化水素;およびジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ピリジン、水、ヘキサメチルリン酸トリアミドなどの他の溶媒を含むがこれらに限定されない。溶媒は、上記の溶媒の混合物とすることもできる。
【0028】
本発明のある特定の実施形態において、本発明の式(I)の構造を有する化合物を調製する方法ならびに式(III)の構造を有する化合物および式(IV)の構造を有する化合物から式(II)の構造を有する化合物を調製する反応では、反応は、減圧、常圧または増圧などの異なる圧力下、好ましくは常圧下で実施することができる。
【0029】
本発明のある特定の実施形態において、本発明の式(I)の構造を有する化合物を調製する方法ならびに式(III)の構造を有する化合物および式(IV)の構造を有する化合物から式(II)の構造を有する化合物を調製する反応では、反応は、一般的に-78℃~還流温度、好ましくは0℃~還流温度の範囲の温度で行われる。
【0030】
さらに別の態様において、本発明は、血小板凝集によって引き起こされる心血管および脳血管疾患を予防および/または処置するための医薬の製造における、本発明の式(I)の構造を有する化合物の使用を提供し、心血管および脳血管疾患は、例えば冠動脈症候群、心筋梗塞、心筋虚血などである。
【0031】
別の態様において、本発明は、血小板凝集によって引き起こされる心血管および脳血管疾患を予防および/または処置する方法であって、それを必要とする対象に治療有効量の本発明の式(I)の構造を有する化合物を投与するステップを含み、心血管および脳血管疾患が、例えば冠動脈症候群、心筋梗塞、心筋虚血などである、方法を提供する。
【0032】
さらに別の態様において、本発明は、本発明の式(I)の構造を有する化合物と、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、医薬組成物を提供する。
【0033】
本発明のある特定の実施形態において、医薬組成物は、固体経口剤、液体経口剤、または注射剤である。好ましくは、固体経口剤は、錠剤、カプセル剤もしくは顆粒剤であり、液体経口剤は、シロップ剤もしくは経口液剤であり、および/または注射剤は、液体注射剤、粉末注射剤もしくは小容量輸液剤である。
【0034】
別の態様において、本発明は、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-1)の結晶形A、その調製方法および使用、ならびに結晶形Aを含む医薬組成物も提供する。
【0035】
メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-1)の結晶形Aは、Cu-Kα線を使用して2θ°で表して5.31、16.13、20.24および21.58に回折ピークを有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差は±0.2である。
【0036】
好ましくは、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-1)の結晶形Aは、Cu-Kα線を使用して2θ°で表して5.31、10.70、12.43、16.13、17.47、20.24、21.58、25.83および27.09に回折ピークを有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差は±0.2である。
【0037】
好ましくは、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-1)の結晶形Aは、表1に示される回折角(2θ)および格子面間隔(d値)を有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差は±0.2である。
【0038】
【表1】
【0039】
好ましくは、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-1)の結晶形Aは、実質的に図1に示す通りの粉末X線回折パターンを有する。
【0040】
好ましくは、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-1)の結晶形Aは、実質的に図2に示す通りのDSC-TGAパターンを有する。
【0041】
本発明のメチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-1)の結晶形Aは、良好な外観安定性およびバッチ間の再現性を有し、これは、白色またはオフホワイトの固体として存在し、複数のバッチの連続調製時に結晶形Aとして安定である。
【0042】
本発明のメチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-1)の結晶形Aは、良好な安定性を有し、結晶形は、高温、高湿度、および光条件下で安定なままである。
【0043】
本発明は、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-1)の結晶形Aを調製する方法であって、
化合物メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-1)を有機溶媒に溶解するステップと、加熱して、透明な溶液を得るステップと、撹拌および冷却によって結晶を沈殿させるステップと、濾過によって結晶を回収するステップと、乾燥して、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-1)の結晶形Aを得るステップとを含み、有機溶媒が、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、トルエン、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリルおよびメチルtert-ブチルエーテルからなる群から選択される1種または複数である、方法も提供する。
【0044】
好ましくは、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-1)の結晶形Aを調製する本発明の方法において、加熱するステップは、還流温度に加熱することを含み、および/または冷却によって結晶を沈殿させるステップは、10~30℃の温度に冷却することを含む。
【0045】
本発明は、血小板凝集によって引き起こされる心血管および脳血管疾患を予防および/または処置するための医薬の製造における、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-1)の結晶形Aの使用であって、心血管および脳血管疾患が、例えば冠動脈症候群、心筋梗塞、心筋虚血などである、使用も提供する。
【0046】
本発明は、血小板凝集によって引き起こされる心血管および脳血管疾患を予防および/または処置する方法であって、それを必要とする対象に治療有効量のメチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-1)の結晶形Aを投与するステップを含み、心血管および脳血管疾患が、例えば冠動脈症候群、心筋梗塞、心筋虚血などである、方法も提供する。
【0047】
本発明は、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-1)の結晶形Aと、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、医薬組成物も提供する。
【0048】
本発明のある特定の実施形態において、医薬組成物は、固体経口剤、液体経口剤、または注射剤であり、好ましくは、固体経口剤は、錠剤、カプセル剤もしくは顆粒剤であり、液体経口剤は、シロップ剤もしくは経口液剤であり、および/または注射剤は、液体注射剤、粉末注射剤もしくは小容量輸液剤である。
【0049】
別の態様において、本発明は、メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形A、その調製方法および使用、ならびに結晶形Aを含む医薬組成物も提供する。
【0050】
メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Aは、Cu-Kα線を使用して2θ°で表して5.52、16.73、19.43および22.38に回折ピークを有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差は±0.2である。
【0051】
好ましくは、メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Aは、Cu-Kα線を使用して2θ°で表して5.52、11.10、12.30、16.73、18.86、19.43、22.38、23.40および23.80に回折ピークを有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差は±0.2である。
【0052】
好ましくは、メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Aは、表2に示す通りの回折角(2θ)および格子面間隔(d値)を有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差は±0.2である。
【0053】
【表2】
【0054】
好ましくは、メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Aは、実質的に図3に示す通りの粉末X線回折パターンを有する。
【0055】
好ましくは、メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Aは、実質的に図4に示す通りのDSC-TGAパターンを有する。
【0056】
本発明は、メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Aを調製する方法であって、
化合物メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)を有機溶媒に溶解するステップと、加熱して、透明な溶液を得るステップと、撹拌および冷却によって結晶を沈殿させるステップと、濾過によって結晶を回収するステップと、乾燥して、メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Aを得るステップとを含み、有機溶媒が、メタノール、エタノール、酢酸エチル、アセトニトリルおよびメチルtert-ブチルエーテルからなる群から選択される1種または複数である、方法も提供する。
【0057】
好ましくは、メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Aを調製する本発明の方法において、加熱するステップは、還流温度に加熱することを含み、および/または冷却によって結晶を沈殿させるステップは、10~30℃の温度に冷却することを含む。
【0058】
本発明は、血小板凝集によって引き起こされる心血管および脳血管疾患を予防および/または処置するための医薬の製造における、メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Aの使用であって、心血管および脳血管疾患が、例えば冠動脈症候群、心筋梗塞、心筋虚血などである、使用も提供する。
【0059】
本発明は、血小板凝集によって引き起こされる心血管および脳血管疾患を予防および/または処置する方法であって、それを必要とする対象に治療有効量のメチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Aを投与するステップを含み、心血管および脳血管疾患が、例えば冠動脈症候群、心筋梗塞、心筋虚血などである、方法も提供する。
【0060】
本発明は、メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Aと、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、医薬組成物も提供する。
【0061】
本発明のある特定の実施形態において、医薬組成物は、固体経口剤、液体経口剤、または注射剤であり、好ましくは、固体経口剤は、錠剤、カプセル剤もしくは顆粒剤であり、液体経口剤は、シロップ剤もしくは経口液剤であり、および/または注射剤は、液体注射剤、粉末注射剤もしくは小容量輸液剤である。
【0062】
さらに別の態様において、本発明は、メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形B、その調製方法および使用、ならびに結晶形Bを含む医薬組成物も提供する。
【0063】
メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Bは、Cu-Kα線を使用して2θ°で表して4.31、8.66、13.01、17.42および19.52に回折ピークを有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差は±0.2である。
【0064】
好ましくは、メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Bは、Cu-Kα線を使用して2θ°で表して4.31、8.66、10.29、10.94、13.01、17.42、19.52、23.17、24.22および24.92に回折ピークを有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差は±0.2である。
【0065】
好ましくは、メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Bは、表3に示す通りの回折角(2θ)および格子面間隔(d値)を有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差は±0.2である。
【0066】
【表3】
【0067】
好ましくは、メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Bは、実質的に図5に示す通りの粉末X線回折パターンを有する。
【0068】
好ましくは、メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Bは、実質的に図6に示す通りのDSC-TGAパターンを有する。
【0069】
本発明は、メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Bを調製する方法であって、
化合物メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)を酢酸に溶解するステップと、加熱して、透明な溶液を得るステップと、冷却によって結晶を沈殿させるステップと、濾過によって結晶を回収するステップと、乾燥して、メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Bを得るステップとを含む、方法も提供する。
【0070】
好ましくは、メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Bを調製する本発明の方法において、加熱するステップは、60℃の温度~還流温度に加熱することを含み、および/または冷却によって結晶を沈殿させるステップは、20~30℃の温度に冷却することを含む。
【0071】
本発明は、血小板凝集によって引き起こされる心血管および脳血管疾患を予防および/または処置するための医薬の製造における、メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Bの使用であって、心血管および脳血管疾患が、例えば冠動脈症候群、心筋梗塞、心筋虚血などである、使用も提供する。
【0072】
本発明は、血小板凝集によって引き起こされる心血管および脳血管疾患を予防および/または処置する方法であって、それを必要とする対象に治療有効量のメチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Bを投与するステップを含み、心血管および脳血管疾患が、例えば冠動脈症候群、心筋梗塞、心筋虚血などである、方法も提供する。
【0073】
本発明は、メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Bと、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、医薬組成物も提供する。
【0074】
本発明のある特定の実施形態において、医薬組成物は、固体経口剤、液体経口剤、または注射剤であり、好ましくは、固体経口剤は、錠剤、カプセル剤もしくは顆粒剤であり、液体経口剤は、シロップ剤もしくは経口液剤であり、および/または注射剤は、液体注射剤、粉末注射剤もしくは小容量輸液剤である。
【0075】
別の態様において、本発明は、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2,4-ペンタジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-3)の結晶形A、その調製方法および使用、ならびに結晶形Aを含む医薬組成物も提供する。
【0076】
メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2,4-ペンタジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-3)の結晶形Aは、Cu-Kα線を使用して2θ°で表して5.71、11.49、17.28、19.57および23.14に回折ピークを有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差は±0.2である。
【0077】
好ましくは、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2,4-ペンタジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-3)の結晶形Aは、Cu-Kα線を使用して2θ°で表して5.71、11.49、12.43、15.95、16.56、17.28、19.57、23.14、23.66、24.98および26.09に回折ピークを有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差は±0.2である。
【0078】
好ましくは、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2,4-ペンタジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-3)の結晶形Aは、表4に示す通りの回折角(2θ)および格子面間隔(d値)を有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差は±0.2である。
【0079】
【表4】
【0080】
好ましくは、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2,4-ペンタジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-3)の結晶形Aは、実質的に図7に示す通りの粉末X線回折パターンを有する。
【0081】
好ましくは、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2,4-ペンタジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-3)の結晶形Aは、実質的に図8に示す通りのDSC-TGAパターンを有する。
【0082】
本発明は、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2,4-ペンタジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-3)の結晶形Aを調製する方法であって、
化合物メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2,4-ペンタジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-3)をメタノールに溶解するステップと、加熱して、透明な溶液を得るステップと、撹拌および冷却によって結晶を沈殿させるステップと、濾過によって結晶を回収するステップと、乾燥して、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2,4-ペンタジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-3)の結晶形Aを得るステップとを含む、方法も提供する。
【0083】
好ましくは、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2,4-ペンタジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-3)の結晶形Aを調製する本発明の方法において、加熱するステップは、還流温度に加熱することを含み、および/または冷却によって結晶を沈殿させるステップは、10~30℃の温度に冷却することを含む。
【0084】
本発明は、血小板凝集によって引き起こされる心血管および脳血管疾患を予防および/または処置するための医薬の製造における、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2,4-ペンタジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-3)の結晶形Aの使用であって、心血管および脳血管疾患が、例えば冠動脈症候群、心筋梗塞、心筋虚血などである、使用も提供する。
【0085】
本発明は、血小板凝集によって引き起こされる心血管および脳血管疾患を予防および/または処置する方法であって、それを必要とする対象に治療有効量のメチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2,4-ペンタジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-3)の結晶形Aを投与するステップを含み、心血管および脳血管疾患が、例えば冠動脈症候群、心筋梗塞、心筋虚血などである、方法も提供する。
【0086】
本発明は、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2,4-ペンタジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-3)の結晶形Aと、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、医薬組成物も提供する。
【0087】
本発明のある特定の実施形態において、医薬組成物は、固体経口剤、液体経口剤、または注射剤であり、好ましくは、固体経口剤は、錠剤、カプセル剤もしくは顆粒剤であり、液体経口剤は、シロップ剤もしくは経口液剤であり、および/または注射剤は、液体注射剤、粉末注射剤もしくは小容量輸液剤である。
【0088】
さらに別の態様において、本発明は、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ペンテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-4)の結晶形A、その調製方法および使用、ならびに結晶形Aを含む医薬組成物も提供する。
【0089】
メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ペンテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-4)の結晶形Aは、Cu-Kα線を使用して2θ°で表して5.32、16.09、18.28、20.68および21.51に回折ピークを有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差は±0.2である。
【0090】
好ましくは、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ペンテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-4)の結晶形Aは、Cu-Kα線を使用して2θ°で表して5.32、10.68、12.98、14.57、16.09、17.64、18.28、19.83、20.68および21.51に回折ピークを有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差は±0.2である。
【0091】
好ましくは、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ペンテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-4)の結晶形Aは、表5に示す通りの回折角(2θ)および格子面間隔(d値)を有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差は±0.2である。
【0092】
【表5】
【0093】
好ましくは、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ペンテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-4)の結晶形Aは、実質的に図9に示す通りの粉末X線回折パターンを有する。
【0094】
好ましくは、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ペンテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-4)の結晶形Aは、実質的に図10に示す通りのDSC-TGAパターンを有する。
【0095】
本発明は、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ペンテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-4)の結晶形Aを調製する方法であって、
化合物メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ペンテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-4)を有機溶媒に溶解するステップと、加熱して、透明な溶液を得るステップと、撹拌および冷却によって結晶を沈殿させるステップと、濾過によって結晶を回収するステップと、乾燥して、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ペンテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-4)の結晶形Aを得るステップとを含み、有機溶媒が、メタノール、エタノール、トルエン、酢酸エチル、アセトン、アセトニトリルおよびメチルtert-ブチルエーテルからなる群から選択される1種または複数である、方法も提供する。
【0096】
好ましくは、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ペンテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-4)の結晶形Aを調製する本発明の方法において、加熱するステップは、還流温度に加熱することを含み、および/または冷却によって結晶を沈殿させるステップは、10~30℃の温度に冷却することを含む。
【0097】
本発明は、血小板凝集によって引き起こされる心血管および脳血管疾患を予防および/または処置するための医薬の製造における、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ペンテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-4)の結晶形Aの使用であって、心血管および脳血管疾患が、例えば冠動脈症候群、心筋梗塞、心筋虚血などである、使用も提供する。
【0098】
本発明は、血小板凝集によって引き起こされる心血管および脳血管疾患を予防および/または処置する方法であって、それを必要とする対象に治療有効量のメチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ペンテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-4)の結晶形Aを投与するステップを含み、心血管および脳血管疾患が、例えば冠動脈症候群、心筋梗塞、心筋虚血などである、方法も提供する。
【0099】
本発明は、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ペンテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-4)の結晶形Aと、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、医薬組成物も提供する。
【0100】
本発明のある特定の実施形態において、医薬組成物は、固体経口剤、液体経口剤、または注射剤であり、好ましくは、固体経口剤は、錠剤、カプセル剤もしくは顆粒剤であり、液体経口剤は、シロップ剤もしくは経口液剤であり、および/または注射剤は、液体注射剤、粉末注射剤もしくは小容量輸液剤である。
【0101】
別の態様において、本発明は、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ヘキセノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-5)の結晶形A、その調製方法および使用、ならびに結晶形Aを含む医薬組成物も提供する。
【0102】
メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ヘキセノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-5)の結晶形Aは、Cu-Kα線を使用して2θ°で表して5.58、16.84、19.46、22.50および23.47に回折ピークを有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差は±0.2である。
【0103】
好ましくは、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ヘキセノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-5)の結晶形Aは、Cu-Kα線を使用して2θ°で表して5.58、11.19、12.21、15.64、16.84、19.00、19.46、20.09、22.50、23.47、23.99および25.81に回折ピークを有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差は±0.2である。
【0104】
好ましくは、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ヘキセノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-5)の結晶形Aは、表6に示す通りの回折角(2θ)および格子面間隔(d値)を有する粉末X線回折パターンを有し、2θの角度測定誤差は±0.2である。
【0105】
【表6】
【0106】
好ましくは、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ヘキセノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-5)の結晶形Aは、実質的に図11に示す通りの粉末X線回折パターンを有する。
【0107】
好ましくは、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ヘキセノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-5)の結晶形Aは、実質的に図12に示す通りのDSC-TGAパターンを有する。
【0108】
本発明は、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ヘキセノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-5)の結晶形Aを調製する方法であって、
化合物メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ヘキセノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-5)を有機溶媒に溶解するステップと、加熱して、透明な溶液を得るステップと、撹拌および冷却によって結晶を沈殿させるステップと、濾過によって結晶を回収するステップと、乾燥して、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ヘキセノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-5)の結晶形Aを得るステップとを含み、有機溶媒が、メタノール、エタノール、アセトン、アセトニトリルおよびメチルtert-ブチルエーテルからなる群から選択される1種または複数である、方法も提供する。
【0109】
好ましくは、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ヘキセノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-5)の結晶形Aを調製する本発明の方法において、加熱するステップ還流温度に加熱することを含み、および/または冷却によって結晶を沈殿させるステップは、10~30℃の温度に冷却することを含む。
【0110】
本発明は、血小板凝集によって引き起こされる心血管および脳血管疾患を予防および/または処置するための医薬の製造における、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ヘキセノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-5)の結晶形Aの使用であって、心血管および脳血管疾患が、例えば冠動脈症候群、心筋梗塞、心筋虚血などである、使用も提供する。
【0111】
本発明は、血小板凝集によって引き起こされる心血管および脳血管疾患を予防および/または処置する方法であって、それを必要とする対象に治療有効量のメチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ヘキセノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-5)の結晶形Aを投与するステップを含み、心血管および脳血管疾患が、例えば冠動脈症候群、心筋梗塞、心筋虚血などである、方法も提供する。
【0112】
本発明は、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ヘキセノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-5)の結晶形Aと、薬学的に許容される担体または賦形剤とを含む、医薬組成物も提供する。
【0113】
本発明のある特定の実施形態において、医薬組成物は、固体経口剤、液体経口剤、または注射剤であり、好ましくは、固体経口剤は、錠剤、カプセル剤もしくは顆粒剤であり、液体経口剤は、シロップ剤もしくは経口液剤であり、および/または注射剤は、液体注射剤、粉末注射剤もしくは小容量輸液剤である。
【0114】
本発明の式(I)の構造を有する化合物および各化合物の結晶形は、比較的広い投与量範囲で有効である。例えば、1日の投与量は、1~1000mg/人の範囲であり、それは1回または数回で投与することができる。実際の投与量は、処置中の対象の健康状態、投与経路、患者の年齢および体重、薬物に対する個別応答、ならびに症状の重症度などを含む重要な状態に基づいて医師が決定するべきである。
【0115】
本出願の発明者らは驚くべきことに、薬力学的研究により、本発明によって提供される式(I)の構造を有する化合物は血小板凝集に対して顕著な阻害効果を有し、治療的効果はクロピドグレルより良好であることが示され;薬物動態学的研究により、本発明の式(I)の構造を有する化合物を薬理学的に活性な代謝物に急速かつ効果的に変換して、血小板凝集に対するそれらの阻害効果を発揮することができ、個体群の関連酵素の遺伝子多型に起因する耐性を引き起こさないことが示され;安全性の評価により、本発明の式(I)の化合物は高い安全性を有することが示され;医薬研究により、本発明の式(I)の構造を有する化合物は調製が容易であり、固体形態で存在することが示され;安定性の研究により、本発明の式(I)の構造を有する化合物は良好な安定性を有し、それにより薬剤の製剤化、保存および使用が促進されることが示されることを見出した。
【0116】
同時に、本出願の発明者らは驚くべきことに、本発明の式(I)の構造を有する化合物は固体形態で存在するが、一方で実施例化合物D-1、D-2、D-3、D-4、D-5、D-6およびD-7など、本発明の式(I)の構造を有する化合物と同様の構造を有し、不飽和脂肪族オレフィン性結合の変化がわずかであるにすぎない化合物は油状物であり、塩を形成するのが困難であり、ドラッガビリティー(drugability)に極めて不利であることも見出した。
【0117】
様々な研究の結果は、本発明の式(I)の構造を有する化合物が明らかに、先行技術で開示された化合物と比較して予想外の効果を有することを示している。本発明の式(I)の構造を有する化合物は、固体形態で存在し、クロピドグレル耐性の問題を解決することができるだけでなく、一部の薬物の重度出血性副作用および不十分な安全性の問題、ならびに既存の化合物の不十分な安定性の問題も解決することができる。それを、明確な治療的効果を有し、耐性を示さず、より良好な安定性を有するADP受容体アンタゴニストの抗血小板剤に発展させることができる。
【0118】
本発明の式(I)の構造を有する化合物の各結晶形も、薬力、薬物動態、安全性および安定性において上記の効果を有する。
【0119】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0120】
図1】本発明の化合物メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-1)の結晶形Aの粉末X線回折パターンを示す図である。
図2】本発明の化合物メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-1)の結晶形AのDSC-TGA(示差走査熱量測定-熱重量分析)パターンを示す図である。
図3】本発明の化合物メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E、4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Aの粉末X線回折パターンを示す図である。
図4】本発明の化合物メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形AのDSC-TGAパターンを示す図である。
図5】本発明の化合物メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E、4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Bの粉末X線回折パターンを示す図である。
図6】本発明の化合物メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形BのDSC-TGAパターンを示す図である。
図7】本発明の化合物メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2,4-ペンタジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-3)の結晶形Aの粉末X線回折パターンを示す図である。
図8】本発明の化合物メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2,4-ペンタジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-3)の結晶形AのDSC-TGAパターンを示す図である。
図9】本発明の化合物メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ペンテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-4)の結晶形Aの粉末X線回折パターンを示す図である。
図10】本発明の化合物メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ペンテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-4)の結晶形AのDSC-TGAパターンを示す図である。
図11】本発明の化合物メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ヘキセノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-5)の結晶形Aの粉末X線回折パターンを示す図である。
図12】本発明の化合物メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ヘキセノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-5)の結晶形AのDSC-TGAパターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0121】
実施例を参照しながら、本発明をさらに説明する。実施例は、説明および例示のためにすぎず、本発明の範囲を限定するものでは全くない。
【実施例0122】
[実施例1]
メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-1)
【0123】
【化9】
【0124】
反応フラスコに、メチル(R)-2-(2-クロロフェニル)-2-(4-ニトロベンゼンスルホニルオキシ)アセテート(化合物III)(40.00g)、5,6,7,7a-テトラヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-2(4H)-オン塩酸塩(化合物IV)(24.00g)、炭酸カリウム(60.00g)、およびアセトニトリル(500mL)を添加した。反応混合物を25~35℃で12時間撹拌し、濾過し、濾液を減圧下で濃縮して、溶媒を除去し、次いでエタノール(150mL)を添加した。混合物を30分間撹拌および分散し、濾過し、乾燥して、メチル(2S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-オキソ-7,7a-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(2H、4H,6H)-イル)アセテート(化合物II)(25.40g)を得た。
【0125】
反応フラスコに、trans-2-ブテン酸(7.80g)、化合物II(20.00g)、DMAP(2.00g)、およびジクロロメタン(200mL)を添加し、撹拌下でトリエチルアミン(12.5mL)およびEDCI(18.00g)を添加した。反応混合物を20~25℃で2~3時間撹拌した。反応溶液を水(100mL×1回)、5%塩酸水溶液(100mL×1回)、および水(100mL×2回)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過した。溶媒を減圧下で蒸発させ、メタノール(100mL)を添加した。混合物を撹拌および分散し、濾過して、オフホワイト固体(11.00g)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6), δ(ppm): 1.92-1.94 (m, 3H), 2.68-2.87 (m, 4H), 3.53 (s, 2H), 3.65 (s, 3H), 4.84 (s, 1H), 6.08-6.12 (m, 1H), 6.46 (s, 1H), 7.09-7.18 (m, 1H), 7.34-7.41 (m, 2H), 7.46-7.50 (m, 1H), 7.56-7.59 (m, 1H); [M + H]+: 406.0863.
【0126】
[実施例2]
メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)
【0127】
【化10】
【0128】
反応フラスコに、ソルビン酸(12.80g)、化合物II(20.00g)、DMAP(1.00g)、およびジクロロメタン(300mL)を添加し、撹拌下でトリエチルアミン(15.0mL)およびEDCI(24.00g)を添加した。反応混合物を室温で2~3時間撹拌し、それに5%塩酸水溶液(600mL)を添加した。5分撹拌した後、相を分離することができた。有機相を飽和炭酸水素ナトリウム溶液(400mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過した。濾液を蒸発乾固し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(V酢酸エチル:V石油エーテル=1:7)で分離して、淡黄色固体(12.00g)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6), δ(ppm): 1.84(d, 3H), 2.68-2.87 (m, 4H), 3.53 (s, 2H), 3.65 (s, 3H), 4.84 (s, 1H), 6.02-6.06 (d, 1H), 6.35-6.42 (m, 2H), 6.46 (s, 1H), 7.34-7.50 (m, 4H), 7.56-7.59 (m, 1H); [M + H]+: 432.1024.
【0129】
[実施例3]
メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2,4-ペンタジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-3)
【0130】
【化11】
【0131】
ソルビン酸の代わりに(E)-2,4-ペンタジエン酸を使用し、トリエチルアミンの代わりにN,N-ジイソプロピルエチルアミンを使用した点以外は、実施例2と同じようにして、化合物I-3を得た。化合物I-3は淡黄色固体であった。
1H-NMR(DMSO-d6), δ(ppm): 2.66-2.85 (m, 4H), 3.56 (s, 2H), 3.63 (s, 3H), 4.82 (s, 1H), 5.63 (d, 1H), 5.83 (d, 1H), 6.20 (d, 1H), 6.46 (s, 1H), 6.55-6.65 (m, 1H), 7.31-7.47 (m, 4H), 7.55-7.57 (m, 1H); [M + H]+: 418.0865.
【0132】
[実施例4]
メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ペンテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-4)
【0133】
【化12】
【0134】
ソルビン酸の代わりにtrans-2-ペンテン酸を使用した点以外は、実施例2と同じようにして、化合物I-4を得た。化合物I-4はオフホワイト固体であった。
1H-NMR(DMSO-d6), δ(ppm): 1.03 (t, 3H), 2.24-2.29 (m, 2H), 2.68-2.87 (m, 4H), 3.54 (s, 2H), 3.65 (s, 3H), 4.84 (s, 1H), 6.03 (d, 1H), 6.46 (s, 1H), 7.15-7.22 (m, 1H), 7.34-7.40 (m, 2H), 7.47-7.49 (m, 1H), 7.58-7.59 (m, 1H); [M + H]+: 420.1027.
【0135】
[実施例5]
メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ヘキセノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-5)
【0136】
【化13】
【0137】
ソルビン酸の代わりにtrans-2-ヘキセン酸を使用した点以外は、実施例2と同じようにして、化合物I-5を得た。化合物I-5はオフホワイト固体であった。
1H-NMR(DMSO-d6), δ(ppm): 0.89 (t, 3H), 1.43-1.50 (m, 2H), 2.22-2.27 (m, 2H), 2.68-2.86 (m, 4H), 3.53 (s, 2H), 3.65 (s, 3H), 4.84 (s, 1H), 6.07 (d, 1H), 6.47 (s, 1H), 7.09-7.16 (m, 1H), 7.34-7.41 (m, 2H), 7.48-7.50 (m,1H), 7.56-7.59 (m, 1H); [M + H]+: 434.1182.
【0138】
[実施例6]
メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-アクリロイルオキシ-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(D-1)
【0139】
【化14】
【0140】
ソルビン酸の代わりにアクリル酸を使用した点以外は、実施例2と同じようにして、化合物D-1を得た。化合物D-1は油状物であった。
1H-NMR(DMSO-d6), δ(ppm): 2.69-2.85 (m, 4H), 3.54 (s, 2H), 3.65 (s, 3H), 4.85 (s, 1H), 6.17 (d, 1H), 6.34-6.40 (m, 1H), 6.51-6.56 (m, 2H), 7.36-7.41 (m, 2H), 7.48-7.50 (m, 1H), 7.57-7.59 (m, 1H); [M + H]+: 392.0711.
【0141】
[実施例7]
メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(3-メチル-2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(D-2)
【0142】
【化15】
【0143】
ソルビン酸の代わりに3-メチル-2-ブテン酸を使用した点以外は、実施例2と同じようにして、化合物D-2を得た。化合物D-2は油状物であった。
1H-NMR(DMSO-d6), δ(ppm): 1.95 (s, 3H), 2.16 (s, 3H), 2.68-2.84 (m, 4H), 3.53 (s, 2H), 3.65 (s, 3H), 4.84 (s, 1H), 5.88 (s, 1H), 6.40 (s, 1H), 7.35-7.40 (m, 2H), 7.46- 7.49 (m, 1H), 7.57-7.60 (m, 1H); [M + H]+: 420.1024.
【0144】
[実施例8]
メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ヘプテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(D-3)
【0145】
【化16】
【0146】
ソルビン酸の代わりにtrans-2-ヘプテン酸を使用した点以外は、実施例2と同じようにして、化合物D-3を得た。化合物D-3は油状物であった。
1H-NMR(DMSO-d6), δ(ppm): 0.80-0.89 (m, 3H), 1.22-1.35 (m, 2H), 1.38-1.46 (m, 2H), 2.23-2.28 (m, 2H), 2.68-2.85 (m, 4H), 3.53 (s, 2H), 3.65 (s, 3H), 4.84 (s, 1H), 6.05 (d, 1H), 6.46 (s, 1H), 7.09-7.16 (m, 1H), 7.34-7.40 (m, 2H), 7.48 (d,1H), 7.57 (d, 1H); [M + H]+:448.1348.
【0147】
[実施例9]
メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-メチルアクリロイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(D-4)
【0148】
【化17】
【0149】
ソルビン酸の代わりに2-メタクリル酸を使用した点以外は、実施例2と同じようにして、化合物D-4を得た。化合物D-4は油状物であった。
1H-NMR(DMSO-d6), δ(ppm): 1.96 (s, 3H), 2.69-2.86 (m, 4H), 3.54 (s, 2H), 3.65 (s, 3H), 4.85 (s, 1H), 5.91 (s, 1H), 6.25 (s, 1H), 6.50 (s, 1H), 7.34-7.41 (m, 2H), 7.48-7.50 (m, 1H), 7.57-7.59 (m, 1H); [M + H]+: 406.0866.
【0150】
[実施例10]
メチル(S,Z)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-メチル-2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(D-5)
【0151】
【化18】
【0152】
ソルビン酸の代わりに(Z)-2-メチル-2-ブテン酸を使用した点以外は、実施例2と同じようにして、化合物D-5を得た。化合物D-5は油状物であった。
1H-NMR(DMSO-d6), δ(ppm): 1.94 (t, 3H), 1.99 (t, 3H), 2.69-2.86 (m, 4H), 3.54 (s, 2H), 3.65 (s, 3H), 4.84 (s, 1H), 6.36-6.38 (m, 1H), 6.49 (s, 1H), 7.35-7.41 (m, 2H), 7.48-7.50 (m, 1H), 7.57-7.59 (m, 1H); [M + H]+: 420.1007.
【0153】
[実施例11]
メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-メチル-2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(D-6)
【0154】
【化19】
【0155】
ソルビン酸の代わりに(E)-2-メチル-2-ブテン酸を使用した点以外は、実施例2と同じようにして、化合物D-6を得た。化合物D-6は油状物であった。
1H-NMR(DMSO-d6), δ(ppm): 1.81-1.85 (m, 6H), 2.68-2.85 (m, 4H), 3.54 (s, 2H), 3.65 (s, 3H), 4.84 (s, 1H), 6.46 (s, 1H), 7.00-7.05 (m, 1H), 7.34-7.41 (m, 2H), 7.48-7.50 (m, 1H), 7.56-7.59 (m, 1H); [M + H]+: 420.1008.
【0156】
[実施例12]
メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-フェニルアクリロイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(D-7)
【0157】
【化20】
【0158】
ソルビン酸の代わりに2-フェニル-2-ブテン酸を使用した点以外は、実施例2と同じようにして、化合物D-7を得た。化合物D-7は油状物であった。
1H-NMR(DMSO-d6), δ(ppm): 2.70-2.84 (m, 4H), 3.55 (s, 2H), 3.65 (s, 3H), 4.85 (s, 1H), 6.25 (s, 1H), 6.52 (s, 1H), 6.54 (s, 1H), 7.36-7.42 (m, 5H), 7.46-7.50 (m, 3H), 7.57-7.59 (m, 1H); [M + H]+: 468.1008.
【0159】
[実施例13]
メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(3-(4-メトキシフェニル)アクリロイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(D-8)
【0160】
【化21】
【0161】
ソルビン酸の代わりにp-メトキシケイ皮酸を使用した点以外は、実施例2と同じようにして、化合物D-8を得た。化合物D-8は淡橙色固体であった。
1H-NMR(DMSO-d6), δ(ppm): 2.69-2.86 (m, 4H), 3.51 (s, 2H), 3.66 (s, 3H), 3.80 (s, 3H), 4.85 (s, 1H), 6.49 (s, 1H), 6.67 (d, 1H), 6.99 (d, 2H), 7.34-7.41 (m, 2H), 7.49 (d, 1H), 7.59 (d, 1H), 7.75 (d, 2H), 7.82 (d, 1H); [M + H]+: 498.1132.
【0162】
[実施例14]
メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-アセトキシ-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート塩酸塩(D-9、Bはメチルである)
【0163】
【化22】
【0164】
500mLの三つ口フラスコに、化合物II(20g)、ジクロロメタン(200mL)、トリエチルアミン(16.4mL)および無水酢酸(7.8mL)を続けて添加した。反応混合物を室温で5時間撹拌した。反応溶液を蒸留水(100mL)、5%HCl水溶液(120mL)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(60mL)および飽和ブライン(60mL)で続けて洗浄し、無水硫酸ナトリウムで脱水し、濾過し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(V酢酸エチル:V石油エーテル=1:5)によって分離して、黄色油状物(15.00g、収率66.42%)、すなわち、油状物である化合物メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-アセトキシ-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(Bはメチルである)を得た。
1H-NMR(DMSO-d6), δ(ppm): 2.25 (s, 3H), 2.67-2.85 (m, 4H), 3.52 (s, 3H), 3.65 (s, 3H), 4.84 (s, 1H), 6.42 (s, 1H), 7.33-7.41 (m, 2H), 7.47-7.50 (m, 1H), 7.56-7.59 (m, 1H); [M + H]+:380.0710.
【0165】
100mLの三つ口フラスコに、得られた油状物(3.00g)および酢酸エチル(30mL)を添加し、反応混合物を撹拌して、溶解した。2.2mol/LのHCl-酢酸エチル溶液(8.60mL)を、0~5℃で撹拌下で滴下して加え、固体を析出させた。添加が完了した後、混合物を室温に上げて、2時間反応させ、濾過し、濾過ケークを酢酸エチル(20mL×3回)で洗浄して、白色固体を得た。
【0166】
反応フラスコに、得られた白色固体、続いて酢酸エチル(40mL)および無水エタノール(10mL)を添加した。混合物を撹拌下で加熱還流して、透明な溶液を得、次いで室温に冷却し、結晶化した。温度を維持し、撹拌を2時間続けた。得られた混合物を濾過し、35~40℃で3~4時間真空下で乾燥して、化合物メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-アセトキシ-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート塩酸塩(D-9、Bはメチルである)を白色固体(1.00g)として得た。
【0167】
本発明の実施例において、結晶形の測定条件は以下の通りである。
粉末X線回折条件:
装置:Rigaku SmartLab 3kW粉末X線回折装置
光線:Cu-Kα線、λ=1.5419Å、2θ=3°~40°
電圧:40kV
電流:40mA
走査速度:10°/分
DS/SS=1/2°
RS:20mm
DSC-TGA条件:
装置:METTLER TOLEDO TGA/DSC1 同時熱分析機
加熱速度:10℃/分
温度範囲:30℃~170℃
参照化合物:Al
【0168】
[実施例15]
メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-1)の結晶形A
反応フラスコに、化合物I-1(5.00g)を添加し、無水エタノール(100mL)を添加した。反応混合物を加熱還流して、透明な溶液を得、次いで撹拌下で15~25℃に冷却し、撹拌しながら2時間維持した。得られた混合物を濾過し、40~45℃で5時間真空下で乾燥して、白色固体(4.30g、収率:86.00%)を得た。
【0169】
この生成物の粉末X線回折パターンおよびDSC-TGAパターンを、それぞれ図1および図2に示す。生成物は、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-1)の結晶形Aである。
【0170】
[実施例16]
メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-1)の結晶形A
反応フラスコに、化合物I-1(2.00g)を添加し、メタノール(60mL)を添加した。反応混合物を加熱還流して、透明な溶液を得、次いで撹拌下で20~25℃に冷却し、撹拌しながら2時間維持した。得られた混合物を濾過し、40~45℃で5時間真空下で乾燥して、白色固体(1.60g、収率:80.00%)を得た。
【0171】
得られた白色固体を、粉末X線回折およびDSC-TGAによってメチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-1)の結晶形Aとして決定した。
【0172】
[実施例17]
メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形A
反応フラスコに、化合物I-2(3.00g)を添加し、無水エタノール(10mL)を添加した。反応混合物を加熱還流して、透明な溶液を得た。得られた溶液を20~25℃に放冷し、この温度を2時間維持し、結晶化した。得られた混合物を濾過し、40~45℃で10時間真空下で乾燥して、淡黄色固体(2.20g、収率:73.33%)を得た。
【0173】
この生成物の粉末X線回折パターンおよびDSC-TGAパターンを、それぞれ図3および図4に示す。生成物は、メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Aである。
【0174】
[実施例18]
メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形A
反応フラスコに、化合物I-2(3.00g)を添加し、無水エタノール(10mL)を添加した。反応混合物を加熱還流して、透明な溶液を得た。得られた溶液を20~25℃まで放冷し、この温度を2時間維持し、結晶化した。得られた混合物を濾過し、40~45℃で10時間真空下で乾燥して、淡黄色固体(2.18g、収率:72.67%)を得た。
【0175】
得られた淡黄色固体を、粉末X線回折およびDSC-TGAによってメチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E、4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Aとして決定した。
【0176】
[実施例19]
メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形B
反応フラスコに、化合物I-2(4.00g)を添加し、酢酸(6mL)を添加した。反応混合物を80~100℃に加熱して、透明な溶液を得た。得られた溶液を20~25℃に放冷し、この温度を2時間維持し、結晶化した。得られた混合物を濾過し、得られた固体を無水エタノールで洗浄し、次いでn-ヘキサンで洗浄し、40~45℃で10時間真空下で乾燥して、淡黄色固体(2.85g、収率:71.25%)を得た。
【0177】
この生成物の粉末X線回折パターンおよびDSC-TGAパターンを、それぞれ図5および図6に示す。生成物は、メチル(S)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-((2E,4E)-2,4-ヘキサジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-2)の結晶形Bである。
【0178】
[実施例20]
メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2,4-ペンタジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-3)の結晶形A
反応フラスコに、化合物I-3(3.00g)を添加し、メタノール(40mL)を添加した。反応混合物を加熱還流して、透明な溶液を得た。得られた溶液を20~25℃に放冷し、この温度を3時間維持し、結晶化した。得られた混合物を濾過し、35~40℃で8時間風乾して、淡黄色固体(1.50g、収率:50.00%)を得た。
【0179】
この生成物の粉末X線回折パターンおよびDSC-TGAパターンを、それぞれ図7および図8に示す。生成物は、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2,4-ペンタジエノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-3)の結晶形Aである。
【0180】
[実施例21]
メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ペンテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-4)の結晶形A
反応フラスコに、化合物I-4(3.00g)を添加し、メタノール(10mL)を添加した。反応混合物を加熱還流して、透明な溶液を得た。得られた溶液を20~25℃に放冷し、この温度を4時間維持し、結晶化した。得られた混合物を濾過し、40~45℃で6時間真空下で乾燥して、オフホワイト固体(2.50g、収率:83.33%)を得た。
【0181】
この生成物の粉末X線回折パターンおよびDSC-TGAパターンを、それぞれ図9および図10に示す。生成物は、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ペンテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-4)の結晶形Aである。
【0182】
[実施例22]
メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ヘキセノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-5)の結晶形A
反応フラスコに、化合物I-5(4.00g)を添加し、無水エタノール(20mL)を添加した。反応混合物を加熱還流して、透明な溶液を得た。得られた溶液を20~25℃に放冷し、この温度を4時間維持し、結晶化した。得られた混合物を濾過し、40~45℃で6時間真空下で乾燥して、オフホワイト固体(3.20g、収率:80.00%)を得た。
【0183】
この生成物の粉末X線回折パターンおよびDSC-TGAパターンを、それぞれ図11および図12に示す。生成物は、メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ヘキセノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-5)の結晶形Aである。
【0184】
[実施例23]
ラットにおける血小板凝集に対する化合物の阻害効果の試験
健常雄性SDラットを選択し、溶媒対照群、陽性薬物対照群および被験化合物群に無作為に分けた。胃内投与を投与体積10ml/kg・bwで実施した。溶媒対照群には、等体積の0.5%CMC-Naを投与した。投与2時間後に、ラットに腹腔内注射により4.0%抱水クロラール(8.5ml/kg)で麻酔をかけ、腹部大動脈から血液を回収し、抗凝固のために3.8%クエン酸ナトリウムを使用した。多血小板血漿(PRP、1100rpm、15分間遠心分離)および乏血小板血漿(PPP、3500rpm、10分間遠心分離)を通常通り調製した。血小板数をPPPで細胞5×10個/mlに調整した。磁気回転子を備えた血小板キュベットの壁面に沿って、十分に混合したPRP(300μL)を添加し、これを37℃で5分間インキュベートし、次いでADP(20μM)によって誘導される血小板凝集の最大百分率を測定した。被験化合物および薬物の血小板凝集の阻害百分率は、対照群のラットの凝集率を100%として算出した。血液回収後2時間以内にすべての試験を完了し、結果を表7に示す。
【0185】
【表7】
【0186】
試験結果から、正常対照群と比較して、本発明の式(I)の構造を有する化合物は、ADP誘導血小板凝集に対して顕著な効果を有することが分かる。したがって、それらを使用して、血小板凝集によって引き起こされる冠動脈症候群、心筋梗塞、および心筋虚血などの心血管および脳血管疾患を予防または処置することができる。
【0187】
[実施例24]
ラットにおける動静脈バイパス血栓症に対する化合物の効果の試験
雄性SDラットを、溶媒対照群、陽性薬物対照群および被験化合物群に無作為に分けた。溶媒対照群には、対応する体積の溶媒を投与した。被験化合物群には、被験化合物をそれぞれ1.0、3.0、10.0および30.0mg/kgの用量で胃内投与した。陽性薬物対照群には、プラスグレル(0.1、0.3、1.0および3.0mg/kg)またはクロピドグレル(3、10および30mg/kg)を胃内投与した。ラットに4%抱水クロラール(0.32g/kg)で麻酔をかけ、手術台に仰臥位で固定した。右総頚動脈および左外頚静脈を分離し、それぞれに、ヘパリン含有生理食塩液(50U/mL)で満たされているTeflonチューブを挿入し、これを別のTeflonチューブによって連結した。長さ6cmの綿糸を2本のチューブの継ぎ目に配置した。投与2.5時間後に、各群において動静脈ループを開放し、15分間循環した。血流を中断し、血栓で覆われた綿糸を迅速に取り外し、秤量した。綿糸の重量を差し引いて、血栓の湿重量を得、次いでそれをオーブン中で恒量になるまで焼き、秤量した。綿糸の重量を差し引いて、血栓の乾燥重量を得た。
【0188】
試験結果は、被験化合物のすべてが、ラット動静脈バイパスモデルの血栓症を用量依存的に阻害することができることを示している。
【0189】
【表8】
【0190】
[実施例25]
化合物の薬物動態に関する研究:クロピドグレルは、活性代謝物に変換されるのに2ステップの生体内代謝を必要とするプロドラッグである。ステップは以下の通りである。
【0191】
【化23】
【0192】
研究により、主にクロピドグレルの第1ステップの代謝に影響するヒトCYP2C19に遺伝子多型があり、人口の相当な割合は、クロピドグレルの代謝が比較的低いことが示された。文献により、日本人、アジア人、オーストラリア人、コーカサス人、およびアフリカ系アメリカ人の遺伝子変異率はそれぞれ28%、30%、35%、13%、および18%であったこと、ならびに人口のこの部分が「クロピドグレル耐性」を発現しやすく、したがって重度心血管および脳血管イベントを起こしやすいことが報告されている。したがって、重要な薬物が血漿においてうまく2-オキソ(2-Oxo)生成物に代謝され得るかどうかによって、薬物が「薬物耐性」の問題を解決することができるかどうかが示唆される。
【0193】
1μMの本発明の化合物、クロピドグレル硫酸水素塩(LBGL)、2-オキソ生成物(2-Oxo)を含有する血漿試料(二重試料)をヒトブランク血漿から調製し、37℃でインキュベートした。50μLの上記のインキュベートした血漿試料を異なる時点で採取し、100μLの沈澱剤(アセトニトリル:メタノール=7:3)および50μLの内部標準を添加した。混合物を1分間ボルテックスし、10分間遠心分離した。100μLの上清を内部挿入管に取り込み、5分間遠心分離し、LC-MS/MS分析のために注入した。
【0194】
ブランク対照試料(PPT-0)の調製:100μLの凍結ヒトブランク血漿を採取し、これに、195μLのアセトニトリルおよび100μLの内部標準、続いて5μLの本発明の化合物、クロピドグレルまたは2-オキソ生成物(20μM)を添加した。混合物を1分間ボルテックスし、10分間遠心分離した。100μLの上清を内部挿入管に取り込み、5分間遠心分離し、LC-MS/MS分析のために注入した。結果を表9~11に示す。
【0195】
【表9】
【0196】
【表10】
【0197】
【表11】
【0198】
試験結果から、クロピドグレルは、ヒト血漿において120分にわたって実質的に安定であることが分かる。本発明の代表的化合物I-1およびI-2は、ヒト血漿において2-オキソ生成物を急速に生成する。
【0199】
試験結果は、本発明の式(I)の化合物は、CYP2C19の遺伝子多型によって影響されず、血漿において2-オキソ(2-Oxo)生成物に急速に代謝されることが可能であり、これは、「クロピドグレル耐性」の問題を解決することができることを示している。
【0200】
[実施例26]
安全性試験:
単回投与における化合物I-1およびI-2の安全性評価:
試験は、生理対照群、溶媒対照群、および2つの投与群からなり、各群動物4匹であり、その半分は雄性であり、残りの半分は雌性であった。動物に、被験化合物を2g/kgの単回用量で胃内投与した。溶媒対照群には、等体積のブランク溶媒を投与した。試験中、動物の様々な状態について毎日観察した。投与前、投与1時間後、ならびに投与7日後および14日後に、ECG検査を行った。投与前、ならびに投与1日後、7日後および12日後に、血液および血液生化学検査を行った。
【0201】
動物は、投与時および投与後の観察期間に正常な活動を行い、良好な精神状態にあり、正常な食餌をした。ECG検査、血液検査および血清生化学検査において、明白な異常はなかった。
【0202】
文献により、イヌにおけるプラスグレルの急性毒性試験では、嘔吐、ALPの上昇および血小板凝集の減少などの毒性作用が≧300mg/kgの用量で生じ、嘔吐などの毒性作用が1000mg/kgの用量で生じ、肝細胞萎縮などの毒性作用が2000mg/kgの用量で生じたことが報告された。
【0203】
本発明の化合物はビーグル犬に対して毒性がより低く、ビーグル犬は高用量投与に対して毒性反応を示さず、化合物は安全性が向上していることを知ることができる。
【0204】
化合物I-1およびI-2の多回投与における安全性評価:
試験は、生理対照群、溶媒対照群、および2つの投与群からなり、各群動物4匹であり、その半分は雄性であり、残りの半分は雌性であった。被験化合物について、100mg/kg群および300mg/kg群の2つの用量群を設定し、それらの群に、被験化合物をそれぞれ100mg/kgおよび300mg/kgの用量で14日間にわたって胃内投与した。溶媒対照群には、等体積のブランク溶媒を投与した。試験中、動物の様々な状態について毎日観察した。投与前、ならびに投与7日後および14日後に、ECG検査を行った。投与前、ならびに投与7日後および15日後に、血液および血液生化学検査を行った。
【0205】
100mg/kgの用量群:動物は、投与後に正常な活動を行い、良好な精神状態にあり、正常な食餌をした。投与後7日目および14日目のECG検査、血液検査および血清生化学検査において、明白な異常はなかった。
【0206】
300mg/kgの用量群:動物は、投与後に正常な活動を行い、良好な精神状態にあり、正常な食餌をした。投与後7日目および14日目のECG検査、血液検査および血清生化学検査において、明白な異常はなかった。
【0207】
試験結果により、本発明の代表的化合物I-1およびI-2の14日間連続胃内投与は、ビーグル犬において外観、精神活動、食欲、ならびに血液、血液生化学、およびECG検査などのいくつかの検査で顕著な薬物関連毒性を示さなかったことが示された。散瞳や嘔吐などの異常現象は観察されず、ALPおよびALTの上昇などの肝毒性の徴候も観察されず、他の異常な毒性も観察されなかった。
【0208】
文献により、イヌにおけるプラスグレルの2週間にわたる多回投与試験では、散瞳、嘔吐、便中の白色物質(非吸収被験物質)、血小板凝集の減少、ALPの上昇、全肝体積の増加、肝細胞腫大、ヒアリン表面および精巣精上皮萎縮などの毒性反応が≧100mg/kg/日の用量で生じ、体重減少などの毒性反応も≧300mg/kg/日の用量で生じたことが報告された。
【0209】
本発明の式(I)の構造を有する化合物は、胃内投与するとビーグル犬に対して毒性がより低く、安全性が向上していることを知ることができる。
【0210】
[実施例27]
出血性副作用の試験:
健常雄性SDラットを選択し、モデル対照群、プラスグレル群、および被験化合物群に無作為に分け、胃内投与を実施した。投与1時間後に、ラットに20%ウレタン(1g/kg)の腹腔内注射により麻酔をかけ、尾部を尾部の先端から5mm切除し、次いでこれを37℃の生理食塩水5mlを含有する試験管に入れた。尾部切断から出血が終わるまでの時間を出血時間として記録した。対照群におけるラットの出血時間を100%として、各用量群における出血時間の増加率を算出した。一次方程式をフィッティングさせて、出血時間を2倍にする、プラスグレルおよび本発明の化合物の用量(ED200)を算出した。
【0211】
【表12】
【0212】
試験結果から、本発明の式(I)の構造を有する化合物は、出血リスクがプラスグレルより大幅に低いことを知ることができる。
【0213】
[実施例28]
化合物の安定性に関する研究:
化合物の安定性を、高温、高湿度および光条件下で調査する。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)の試験条件は以下の通りである。
【0214】
方法1:
装置:高速液体クロマトグラフィー;
カラム:Inertsil C8-3、150mm×4.6mm、5μm;
移動相A:アセトニトリル;移動相B:5mM リン酸二水素アンモニウム;
流速:1.0mL/分;
検出波長:220nm;
実行時間:60分;
注入量:20μL;
カラム温度:35℃;
試料チャンバ温度:25℃;
勾配溶離表:
【0215】
【表13】
【0216】
方法2:
カラム:Agilent Poroshell 120 EC-C18、100mm×4.6mm、2.7μm;
カラム温度:30℃;
他の条件は、方法1における条件と同じである。
【0217】
化合物I-2に関連する試料は、方法2を使用して試験し、他の試料は、方法1を使用して試験した。影響要因の試験結果を表14に示し、光回避安定性試験の試験結果を表15に示す。
【0218】
【表14】
【0219】
【表15】
【0220】
結果により、0時点と比較して、本発明の代表的化合物の個別の最大不純物およびクロマトグラフによる純度は、高温および高湿度条件下で著しい変化をしておらず、化合物が良好な安定性を有することを示唆していることが示される。ほんのわずかな分解が光条件下で起こったが、これは、光に近づけないことによって回避することができる。しかし、文献によって報告されている代表的化合物は、高温、高湿度および光条件下でクロマトグラフによる純度が著しく低下し、不十分な安定性を有するものである。
【0221】
[実施例29]
メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-1)の結晶形Aの安定性に関する研究
メチル(S,E)-2-(2-クロロフェニル)-2-(2-(2-ブテノイルオキシ)-6,7-ジヒドロチエノ[3,2-c]ピリジン-5(4H)-イル)-アセテート(I-1)の結晶形Aの安定性を、高温、高湿度および光条件下で5日間、10日間および30日間調査した。結果は、0時点と比較して、化合物が良好な安定性を有することを示している。同時に、調査後の試料の粉末X線回折分析は、結晶形が変化せず、結晶形Aのままであることを示し、結果は、結晶形が安定であることを示している。
【0222】
【表16】
図1
図2
図3
図4
図5
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図10
図11
図12