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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006227
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】魚鎮静化装置
(51)【国際特許分類】
   A01K 79/00 20060101AFI20220105BHJP
【FI】
A01K79/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020108332
(22)【出願日】2020-06-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-06-16
(71)【出願人】
【識別番号】000003274
【氏名又は名称】マルハニチロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古橋 洋
(72)【発明者】
【氏名】内藤 信二
【テーマコード(参考)】
2B105
【Fターム(参考)】
2B105AG22
2B105AG30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】水揚げ直後の魚に、効率的かつ確実に、電流を流すことが可能な魚鎮静化装置を提供する。
【解決手段】長手方向と幅方向を有する細長形状であり、魚が載置される載置面12を有する載置部11と、載置面12の長手方向に沿って、載置面12を挟んで互いに対向するように設けられた突起部13と、載置部11及び突起部13により形成された溝部Sの長手方向の一方端を塞ぐ制止部15と、載置面12に、又は、載置面12及び制止部15の溝部S側の面に、載置面12に載置された魚にそれぞれ接触するように離間して設けられた、少なくとも一対の電極14A,14Bと、を備える魚鎮静化装置。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向と幅方向を有する細長形状であり、魚が載置される載置面を有する載置部と、
前記載置面の長手方向に沿って、前記載置面を挟んで互いに対向するように設けられた突起部と、
前記載置部及び前記突起部により形成された溝部の長手方向の一方端を塞ぐ制止部と、
前記載置面に、又は、前記載置面及び前記制止部の溝部側の面に、前記載置面に載置された魚にそれぞれ接触するように離間して設けられた、少なくとも一対の電極と、
を備える魚鎮静化装置。
【請求項2】
前記載置面が、その長手方向が水平面に対して角度を有する斜面であり、前記制止部が前記溝部の斜面下方端を塞ぐ、請求項1に記載の魚鎮静化装置。
【請求項3】
前記制止部が、開閉可能な板状の部材であり、閉止時は接触により魚の移動を所定位置で停止させ、開放時は魚を前記所定位置から移動させる、請求項1または2に記載の魚鎮静化装置。
【請求項4】
前記制止部が、閉止時に魚と接触する当接部分に、少なくとも1つの電極を備える、請求項3に記載の魚鎮静化装置。
【請求項5】
長手方向と幅方向を有する細長形状であり、魚が載置される載置面を、幅方向に並列に複数備えた載置部と、
各載置面の長手方向に沿って立設し、各載置面を仕切るように設けられた複数の突起部と、
前記載置部及び前記複数の突起部により形成された複数の溝部の長手方向の一方端を塞ぐ制止部と、
各載置面に、又は各載置面及び前記制止部の前記溝部側の面に、前記各載置面に載置された魚にそれぞれ接触するように離間して設けられた、少なくとも一対の電極と、
を備える魚鎮静化装置。
【請求項6】
前記載置面は、その長手方向が水平面に対して角度を有する斜面であり、前記制止部が前記複数の溝部の斜面下方端を塞ぐ、請求項5に記載の魚鎮静化装置。
【請求項7】
前記制止部が、開閉可能な板状の部材であり、閉止時は、前記複数の載置面に載置された魚の移動を接触により所定位置で停止させ、開放時は魚を前記所定位置から移動させる、請求項5または6に記載の魚鎮静化装置。
【請求項8】
前記制止部が、閉止時に、前記複数の載置面にそれぞれ載置された魚に当接するように、1つまたは複数の電極を備える、請求項7に記載の魚鎮静化装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の魚鎮静化装置を用いる、魚の鎮静化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水揚げ直後の魚を鎮静化させるための、魚鎮静化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
養殖魚等を水揚げしてから、鮮度を保持したまま加工処理を容易に進めるため、魚に電流を流して、生きたまま鎮静化させる方法が知られる。特に、水揚げ時に魚が激動することによって、内出血や傷等が生じる、といった食品としての魚の品質劣化の問題があり、これを防止することが従来からの課題であり、マグロ等の大型の魚については、釣り針、付き棒、馬蹄型リング等で魚の一体一体に直接電極を接触させることで、魚を鎮静化する方法が適用されてきた。しかし、この方法は、一度に多数の魚を鎮静化する方法としては、効率的な方法ではなかった。
【0003】
特許文献1には、水揚げ用網に2極の電極を設けて、当該網で海中から魚を水揚げした直後に該電極に通電することで、網内部の魚を鎮静化させる、鎮静化方法が開示されている。この方法によれば、複数の魚に対して一度に電流を流すことができるため、当該網に入った多数の小型の魚に対して適用可能である。しかし、この方法では、直接網の2極の電極に接触する魚においては鎮静化効果が期待されるが、1極のみに接触する魚、電極にまったく接触しない魚(他の魚を通じて間接的に電流を受ける魚)も存在するため、すべての魚を確実に鎮静化できないか、またはすべての魚を鎮静化させるために比較的長時間電流を流す必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-018028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、水揚げ直後の魚に、効率的かつ確実に、電流を流すことが可能な魚鎮静化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するために、以下を提供するものである。
(1)長手方向と幅方向を有する細長形状であり、魚が載置される載置面を有する載置部と、前記載置面の長手方向に沿って、前記載置面を挟んで互いに対向するように設けられた突起部と、前記載置部及び前記突起部により形成された溝部の長手方向の一方端を塞ぐ制止部と、前記載置面に、又は、前記載置面及び前記制止部の溝部側の面に、前記載置面に載置された魚にそれぞれ接触するように離間して設けられた、少なくとも一対の電極と、を備える魚鎮静化装置。
(2)前記載置面が、その長手方向が水平面に対して角度を有する斜面であり、前記制止部が前記溝部の斜面下方端を塞ぐ、(1)の魚鎮静化装置。
(3)前記制止部が、開閉可能な板状の部材であり、閉止時は接触により魚の移動を所定位置で停止させ、開放時は魚を前記所定位置から移動させる、(1)または(2)の魚鎮静化装置。
(4)前記制止部が、閉止時に魚と接触する当接部分に、少なくとも1つの電極を備える、(3)の魚鎮静化装置。
(5)長手方向と幅方向を有する細長形状であり、魚が載置される載置面を、幅方向に並列に複数備えた載置部と、各載置面の長手方向に沿って立設し、各載置面を仕切るように設けられた複数の突起部と、前記載置部及び前記複数の突起部により形成された複数の溝部の長手方向の一方端を塞ぐ制止部と、各載置面に、又は各載置面及び前記制止部の前記溝部側の面に、前記各載置面に載置された魚にそれぞれ接触するように離間して設けられた、少なくとも一対の電極と、を備える魚鎮静化装置。
(6)前記載置面は、その長手方向が水平面に対して角度を有する斜面であり、前記制止部が前記複数の溝部の斜面下方端を塞ぐ、(5)の魚鎮静化装置。
(7)前記制止部が、開閉可能な板状の部材であり、閉止時は、前記複数の載置面に載置された魚の移動を接触により所定位置で停止させ、開放時は魚を前記所定位置から移動させる、(5)または(6)の魚鎮静化装置。
(8)前記制止部が、閉止時に、前記複数の載置面にそれぞれ載置された魚に当接するように、1つまたは複数の電極を備える、(7)の魚鎮静化装置。
(9)(1)~(8)のいずれかの魚鎮静化装置を用いる、魚の鎮静化方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、水揚げ直後の魚に、効率的かつ確実に、電流を流すことが可能な魚鎮静化装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の魚鎮静化装置の第1実施形態の例1の閉止状態の斜視図である。
図2】本発明の魚鎮静化装置の第1実施形態の例1の開放状態の斜視図である。
図3図1のA-A’線断面図である。
図4図1のB-B’線断面図である。
図5】本発明の魚鎮静化装置の第1実施形態の例1の魚を載置した閉止状態の上面図である。
図6】本発明の魚鎮静化装置の電極と電源装置との接続状態を示す図である。
図7】本発明の魚鎮静化装置の第1実施形態の例2の構造を示す上面図である。
図8】本発明の魚鎮静化装置の第1実施形態の例3の閉止状態の斜視図である。
図9】本発明の魚鎮静化装置の第1実施形態の例4の構造を示す斜視図である。
図10図9のC-C’線断面図である。
図11】本発明の魚鎮静化装置の第1実施形態の頂部に丸みを持たせた切妻屋根型のスライド台への設置例を示す概略図である。
図12】本発明の魚鎮静化装置の第1実施形態の頂部を略球面とした円錐型のスライド台への設置例を示す概略図である。
図13】本発明の魚鎮静化装置の第2実施形態の例5の構造を示す斜視図である。
図14】本発明の魚鎮静化方法の一例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、装置の構造及び図面の説明の便宜のために、X、Y、Z方向を規定しているが、本発明は、装置を斜面に配置する使用形態を含むため、X、Y方向は必ずしも水平面上にはなく、Z方向は必ずしも鉛直方向を示すものではない。各図面間における、X、Y、Z方向は、他に説明がない限り、本発明の装置に対して同方向を示すものとする。
【0010】
本発明の魚鎮静化装置は、使用する対象の魚の種類を限定するものではないが、主に、ブリ、カンパチ、ヒラマサ、マダイ、スマガツオ、スズキ、ギンザケ、トラウトサーモン、サクラマス等の鎮静化に適した装置である。これらの魚は、大型の魚と比較して一度に処理する魚の数が多く、一体ずつの鎮静化は効率的ではない一方、鎮静化を行わず手作業で〆機に入れるには、魚が大きく手作業による制止が困難であり、作業者の負担が大きかった。本発明は、これらの魚についても、効率がよく、かつ確実に鎮静化できる装置を提供するものである。
【0011】
<魚鎮静化装置:第1実施形態>
本発明の魚鎮静化装置の第1実施形態は、長手方向と幅方向を有する細長形状であり、魚が載置される載置面を有する載置部と、前記載置面の長手方向に沿って、前記載置面を挟んで互いに対向するように設けられた突起部と、前記載置部及び前記突起部により形成された溝部の長手方向の一方端を塞ぐ制止部と、前記載置面に、又は、前記載置面及び前記制止部の溝部側の面に、前記載置面に載置された魚にそれぞれ接触するように離間して設けられた、少なくとも一対の電極と、を備えることを特徴とする。
【0012】
本発明における「溝部」とは、「載置部」及び「突起部」で囲繞されて形成される空間を指すものとする。ここでいう「載置部」及び「突起部」は、必ずしも隙間なく前記空間を囲繞する必要はなく、例えば、長手方向に沿って断続的な構造であってもよく、貫通孔を有する構造であってもよい。
【0013】
本発明の魚鎮静化装置の第1実施形態の一例(例1)の構造を図1~5に示す。図1は本発明の魚鎮静化装置の第1実施形態の例1の閉止状態の斜視図、2は本発明の魚鎮静化装置の第1実施形態の例1の開放状態の斜視図、図3図1のA-A’線断面図、図4図1のB-B’線断面図、図5は本発明の魚鎮静化装置の第1実施形態の例1の魚を載置した、閉止状態の上面図を示す。例1の魚鎮静化装置10は、魚を載置するための載置面12を上側(+Z側)に有する載置部11を有する。載置面12は、長手方向、幅方向を有する細長形状を有する。載置面12の長手方向(+X方向、-X方向)に沿って、載置面12を挟んで対向するように、上方(+Z方向)に延出する2つの突起部13を有する。好適には、突起部13は、図1~5に示すような板状であり、載置面12に対して壁の役割を果たす形状である。図1~5の例では、載置部11と2つの突起部13とで溝部Sが形成され、前記溝部Sの一方端(図1~5の例では-X側)を塞ぐように制止部15が設置される。好適には、制止部15は、開閉可能であり、閉止時は接触により魚17の載置面12からの-X方向への移動を停止させ、開放時は魚17を載置面12から-X方向へ移動させる。図1は、制止部15が魚鎮静化装置10の溝部Sの一方端閉止した状態、図2は、制止部15が魚鎮静化装置10の溝部Sの一方端を開放した状態を示す。
【0014】
2つの突起部13に挟まれた載置面12は、鎮静化させる対象となる魚を載置する面となる。2つの突起部13は、載置面12に載置した魚17が幅方向(+Y方向、-Y方向)に移動して載置面12から外れることを防止するために設置される。2つの突起部13間の距離は、対象となる魚17の平均体長(顎先端から尾の先端までの長さ)よりも短く(例えば、体長の半分以下)とし、対象となる魚17の平均体幅(左右の胸びれの付け根の間の距離)及び対象となる魚17の平均体高(体の背縁から腹縁までの垂直方向の距離)よりも長くすることが好ましい。1つの載置面12には、1匹の魚のみが載置されても、複数匹の魚が載置されてもよい。複数匹とは、例えば2~3匹程度が想定される。載置部11及び突起部13は、強化プラスチック(例えば、繊維強化プラスチック)等、電気伝導度が低く、かつ強度の高い部材で構成されることが好ましい。制止部15は、載置面12に配置した魚17が長手方向(-X方向)に移動して、載置面12から外れることを防止するために設置される。制止部15は、魚17の長手方向(-X方向)への移動が規制できれば、溝部Sの一方端を完全に塞ぐ必要はない。制止部15の形状は特に限定されず、板状、網状、棒状等のいずれの形状としてもよいが、後述のように制止部15に電極を配置する場合は板状とすることが好ましい。図1~5の例では、制止部15は、上方端のみが2つの突起部13の上方端に、蝶番等を用いてフラップ状に固定され、開放時には、制止部15の上方端をフラップ回転軸として、下方端が上方(+Z方向)に回転移動する態様である。これに限らず、例えば、制止部15下方端が載置面12の一方端部にフラップ状に固定され、開放時には、制止部15の下方端をフラップ回転軸として、上方端が下方(-Z方向)に回転移動する態様としてもよい。制止部15の開閉は直接手動で行ってもよいが、作業者の感電リスクを低減のため、魚鎮静化装置10から数メートル以上離れた位置から遠隔操作で行ってもよい。なお、制止部15の制止機構は、魚鎮静化装置10に収容された魚の長手方向(-X方向)への移動を制止できる態様であればよく、これらに限定されるものではない。
【0015】
図1~5の例では、載置面12上に電極14Aが設置される。電極14Aは、載置面12上に載置された魚17に確実に接触する態様であれば、どのような形状であってもよいが、載置面12の一部を覆うような形状とすることが好ましい。具体的には、金属等の導電性材料で形成された薄板状、膜状又は網状の部材を、載置面12に配置することが好ましい。また、図1~5の例のように、電極14Aは、載置面12のみでなく、突起部13の溝部S側の面から載置面12にかけて一体的に配置されていてもよい。図1~5の例では、制止部15の溝部S側の面の少なくとも一部に電極14Bが配置される。電極14Bは、制止部15の溝部S側の面の少なくとも一部を覆う形状とすることが好ましい。具体的には、金属等の導電性材料で形成された薄板状、膜状又は網状の部材を、制止部15の溝部S側の面に配置することが好ましい。図5に示すように、制止部15を閉止した状態で、載置面12に載置された魚17は、電極14A、14Bの両方に接触する。電極14A、14Bは、一方が電源装置16の正極、一方が電源装置16の負極に接続される一対の電極14A、14Bである。電源装置16から供給される電流が、接触する一対の電極14A、14Bを通して魚17に流れることで、魚17が感電し、鎮静化される。なお、図5以外における電源装置16の図示を省略するが、当業者に当然に理解される通り、本発明の魚鎮静化装置10は、いずれも一対の電極14A、14Bが1つの電源装置16に接続されることを要する。
【0016】
図6に電極14A、14Bと電源装置16との接続の例を示す。電極14A、14Bは、電源装置16とそれぞれケーブル18A、18Bで接続される。電源装置16の種類は、魚鎮静化のために十分な電流を供給できるものであれば特に限定されないが、直流電源を用いることが好ましい。電源装置16には、図示しないが、変圧器、バッテリー等が接続されていてもよい。供給される電圧は、特に限定されないが、20~180Vで調整されることが好ましい。また、電圧は、作動中に一定であっても、増減させてもよい。供給される電圧は、鎮静化の対象となる魚の種類等に応じて適宜選択可能である。電源スイッチは、電源装置16に設置されていてもよく、図示しないが、電源装置16から離れたケーブル上に設置されていてもよい。また、電源スイッチは、手動でON/OFFを切り替える構成としてもよく、また、例えば、電流供給開始後、一定時間経過した後(例えば、3秒後)に自動的に切断される構成や、載置した魚の動きの有無を感知するセンサーと連動して自動的に切断される構成としてもよい。さらに、電源スイッチは作業者の感電リスクを低減するために、電極14A、14Bから数メートル以上離れた位置に設置してもよい。
【0017】
魚鎮静化装置10の長手方向(+X方向、-X方向)の長さは、鎮静化させる魚17を収容可能な長さとすることが好ましい。例えば、カンパチの場合、体重3.5~4.5kg、肥満度20の個体の平均体長が60~65cm程度であることから、70~75cm程度とすることができる。また、ブリの場合、体重5.5~6.5kg、肥満度22の個体の平均体長が67~73cm程度であることから、75~85cm程度とすることができる。一方、魚鎮静化装置10の幅方向(+Y方向、-Y方向)の長さは、魚17の体長より短くすることが好ましく、カンパチ、ブリの場合、例えば、20~30cm程度とすることができる。また、魚鎮静化装置10の高さ方向(+Z方向、-Z方向)の長さは、魚の体幅及び体高よりも十分に長くする必要があり、カンパチ、ブリの場合、例えば、30~50cm程度とすることができる。なお、図1~5の例では、魚鎮静化装置10内部の魚の目視を容易にするため装置上面が開放された溝部Sを有する態様をとっているが、例えば、2つの突起部13の上端(+Y方向端)にわたる板状部材を配して、溝部Sの上方を塞ぎ、突起部13、載置面12及び前記板状部材で略筒を形成してもよい(図示せず)。
【0018】
図7は、魚鎮静化装置の第1実施形態の他の例(例2)の上面図を示す。魚鎮静化装置20の、載置部21、載置面22、突起部23、制止部25の形状、素材、構成等は例1と同様であるが、電極24A及び24Bは、載置面22上に、互いに長手方向(+X方向、-X方向)に離間するように配置される。この場合、載置する魚17のサイズを想定して、必ず魚17が電極24A及び24Bの両方に接触するように所定の間隔を空けて離間させることを要する。
【0019】
図8は、魚鎮静化装置の第1実施形態の他の例(例3)の斜視図を示す。魚鎮静化装置30の突起部33は、魚の幅方向への移動が規制されるように載置部31の+Y、―Y方向の両端部に立設されていればよく、必ずしも一体的な板状である必要はない。突起部33は、図8の例のように、載置面32の長手方向に沿って断続的に設置される複数の部材で突起群として形成してもよい。なお、魚鎮静化装置30の、載置部31、載置面32、電極34A及び34B、及び制止部35の形状、構成等は例1と同様である。
【0020】
図9は、魚鎮静化装置の第1実施形態の他の例(例4)の斜視図、図10図9のC-C’線断面図を示す。例4の魚鎮静化装置40では、載置部41及び突起部43が、境界なく一体的に形成される。例えば、載置部41及び突起部43が一体的に上面(+Z側)に長手方向(+X方向、-X方向)に沿った切欠を有する円筒形状としてもよい。円筒に切欠を設けることで、載置部41と突起部43とが溝部Sを形成する。溝部Sの長手方向の一方端(図9の例では-X側)を塞ぐように制止部45が設置される。好適には、制止部45は開閉可能な板状の構造である。
【0021】
また、図9に示すように、載置部41及び突起部43の内側面の少なくとも一部は、鎮静化させる対象となる魚を載置する載置面42を構成する。載置部41及び突起部43より形成される溝部Sは、略円筒状に形成され、当該溝部Sの直径は、対象となる魚の平均体長よりも短くし(例えば、体長の半分以下)、対象となる魚の平均体幅(左右の胸びれの付け根の間の距離)及び対象となる魚の平均体高(体の背縁から腹縁までの垂直方向の距離)よりも長くすることが好ましい。
【0022】
図9及び図10の例では、載置面42上に電極44Aが設置される。電極44Aは、載置面42上に載置された魚に確実に接触する態様であれば、どのような形状であってもよいが、載置面42の一部、より具体的には、載置部41及び突起部43の内周面の一部を覆うように配置されてもよい。電極44Bは、図9及び図10の例では、制止部45の溝部S側の面の少なくとも一部に配置される。電極44Bは、制止部45の溝部S側の面の少なくとも一部を覆う形状とすることが好ましい。なお、例4において、上記で説明した部分以外の構成は、例1と同様である。
【0023】
図11及び12に、魚鎮静化装置10の設置例の概略図を示す。魚鎮静化装置10は、載置面12の長手方向(+X方向、-X方向)が水平面(+Y方向、-Y方向)に対して角度を有する斜面となるように設置されることが好ましい。斜面の態様は、特に限定されるものではないが、例えば、切妻屋根型、円錐型等のスライド台とすることができる。ここでいう「切妻屋根型」とは、直線状の頂部とこれを界とした2方向の斜面を有する、いわゆる開いた本を伏せたような形状を指す。スライド台は、図11及び12の例のように、頂部Tが丸みを帯びた形状とすることが好ましい。図11は、頂部Tに丸みをもたせた略切妻屋根型のスライド台1Aの斜面に、幅方向(+Y方向、-Y方向)に複数の魚鎮静化装置10が設置された例を示す。なお、図示は省略するが、頂部Tを介した反対側の斜面にも同様に、幅方向に複数の魚鎮静化装置10が設置される。図12は頂部Tを略球面とした円錐型スライド台1Bの斜面に複数の魚鎮静化装置10が設置された例を示す。なお、斜面を有する構造であれば、土台の形状は図示例に限定されるものではない。
【0024】
以下、図11に示すスライド台1A及び魚鎮静化装置10について、例示的に説明する。魚鎮静化装置10は、制止部15が斜面の下端近傍に配置されるように、スライド台1Aの斜面に設置される。また、幅方向(+Y方向、-Y方向)に並列に複数配置される。スライド台1Aの斜面上端は、図示例のように、設置した魚鎮静化装置10の上端より高い位置にあることが好ましい。スライド台1Aは2つの斜面を有するが、両方の斜面に魚鎮静化装置10を配置することが好ましい。
【0025】
魚鎮静化工程において、図11の例に示す装置は、以下のように使用される。水揚げされた魚17をスライド台1Aの頂部Tの近傍に配置する。魚17は重力に従ってスライド台1A上の斜面を下方(-X方向)に移動するが、その際に、魚鎮静化装置10の突起部13に接触することにより、頭部か尾部が下方となるように魚鎮静化装置10内に進入し、閉止状態の制止部15に接触して制止される。魚17が魚鎮静化装置10内で制止された状態で、電極14A、14Bに通電することで、魚17に電流が流され、魚17の鎮静化が完了する。制止部15を開放して、鎮静化した魚17を魚鎮静化装置10の下方端から魚鎮静化装置10の外に排出する。図11の例では、排出位置に緩やかな傾斜があり、魚17は、次工程である〆機近傍の一時保管台(図示せず)へと移動する。なお、図11の例では、魚鎮静化装置10のそれぞれに1つずつ制止部15が設けられているが、複数の魚鎮静化装置10の下方末端を1つの制止部で閉止可能な態様としてもよい。また、スライド台1Aの頂部Tに配置した魚が斜面の下方向(-X方向)にスライドせず、左右(+Y方向、-Y方向)の端から落下することを防止するため、例えば、スライド台1Aの左右端の一方または両方に、スライド台1A上の斜面より上方に立設する、板状のストッパー部材1A1を設けてもよい。図11に示すように、魚鎮静化装置10は、スライド台1A上に幅方向(+Y方向、-Y方向)に並列に複数設置することができる。複数の魚鎮静化装置10のそれぞれに魚17を載置し、電極14A、14Bに通電を行うことで、一度に複数の魚17を鎮静化することができる。
【0026】
本発明の魚鎮静化装置の第1実施形態は、必ずしも斜面に設置する必要はなく、例えば、載置面の長手方向(+X方向、-X方向)が水平方向に一致するように水平面に設置されてもよい。この場合、斜面または水平面をスライド移動してきたか、コンベアー等で運搬されてきた魚を収容して通電、鎮静化させることができる。
【0027】
<魚鎮静化装置:第2実施形態>
本発明の魚鎮静化装置の第2実施形態は、以下に示した特徴以外は、第1実施形態と共通の特徴を有するものとする。本発明の魚鎮静化装置の第2実施形態は、長手方向と幅方向を有する細長形状であり、魚が載置される載置面を、幅方向に並列に複数備えた載置部と、各載置面の長手方向に沿って立設し、各載置面を仕切るように設けられた複数の突起部と、前記載置部及び前記複数の突起部により形成された複数の溝部の長手方向の一方端を塞ぐ制止部と、各載置面に、又は各載置面及び前記制止部の前記溝部側の面に、前記各載置面に載置された魚にそれぞれ接触するように離間して設けられた、少なくとも一対の電極と、を備えることを特徴とする。
【0028】
本発明の魚鎮静化装置の第2実施形態の一例(例5)の斜視図を図13に示す。例5の魚鎮静化装置50は、魚を載置するための載置面52を幅方向(+Y方向、-Y方向)に並列に複数有する載置部51を有する。各載置面52は、長手方向、幅方向を有する細長形状を有する。各載置面52の長手方向(+X方向、-X方向)に沿って、載置面52を仕切るように、複数の上方(+Z方向)に延出する突起部53を有する。突起部53は、載置面に載置した魚が幅方向(+Y方向、-Y方向)に移動して載置面52から外れることを防止するために設置される。図13の例において、突起部53は魚鎮静化装置50の幅方向(+Y方向、-Y方向)の端部にも設置される。幅方向(+Y方向、-Y方向)の端部に設置する突起部53は、図13の例のように、魚鎮静化装置50の長手方向(+X方向、-X方向)の全長にわたって設置されることが好ましい。魚の幅方向(+Y方向、-Y方向)への移動が規制できれば形状は特に限定されず、例えば複数の突起群、すなわち、各載置面52の長手方向(+X方向、-X方向)に断続的な突起群であってもよい。対向する突起部53間の距離は、対象となる魚の体長よりも短く(例えば、体長の半分以下)とし、魚の体幅及び体高よりも長くすることを要する。好適には、突起部53は、板状であり、載置面52に対して壁の役割を果たす形状である。載置部51及び突起部53によって、複数の溝部Sが形成される。載置部51及び突起部53は、強化プラスチック(例えば、繊維強化プラスチック)等、電気伝導度が低く、かつ強度の高い部材で構成されることが好ましい。載置部51は、図13の例のように、載置面52より+X方向に延在する部材であってもよい。図13の例では、複数の溝部Sの一方端(図示例では-X側)を塞ぐ制止部55が設置される。制止部55は、載置面52に設置した魚が長手方向(-X方向)に移動して、載置面52から外れることを防止するために設置される。好適には、制止部55は、開閉可能であり、閉止時は接触により魚の載置面52からの-X方向への移動を停止させ、開放時は魚を載置面52から-X方向へ移動させる。制止部55は、魚の長手方向(-X方向)への移動が規制できれば、溝部Sの一方端を完全に塞ぐ必要はない。また、制止部55は、1つで複数の溝部Sの一方端を塞ぐ態様であっても、1つの溝部Sの一方端を1つずつ塞ぐ態様であってもよい。制止部55の形状は特に限定されず、板状、網状、棒状等のいずれの形状としてもよいが、電極の配置を行う場合は、板状とすることが好ましい。
【0029】
図13の例では、各載置面52上に電極54Aが設置される。電極54Aは、載置面52上に載置された魚に確実に接触する態様であれば、どのような形状であってもよいが、載置面52の一部を覆うような形状とすることが好ましい。具体的には、金属等の導電性材料で形成された薄板状、膜状又は網状の部材を、載置面52に配置することが好ましい。また、電極54Aは、載置面52のみでなく、突起部53の溝部S側であって載置面52から連続して一体的に配置されていてもよい。あるいは、複数の載置面52にわたるように、載置部51に一体で設置されてもよい(図示せず)。図示例では、制止部55の溝部S側の面に電極54Bが配置される。電極54Bは、制止部55の溝部S側の面に、複数の溝部Sの全てに当接するように配置されることを要する。具体的には、電極54Bは、金属等の導電性材料で形成された薄板状、膜状又は網状の部材を、制止部55の溝部S側の面に配置することが好ましい。制止部55を閉止した状態で、載置面52に載置された魚は、電極54A、54Bの両方に接触する。この状態で、電極54A、54Bに通電することで、魚に電流を流し、鎮静化することが可能である。なお、電極54A、54Bは、載置面52上に載置された魚に両方が接触する位置・形状であればよく、例えば、載置面52上に54A、54Bの両方が所定の間隔を空けてして設置されていてもよい。
【0030】
魚鎮静化装置50は、載置面52の長手方向(+X方向、-X方向)が水平面に対して角度を有するように斜面に設置されることが好ましい。あるいは、斜面を形成する部材自体を載置部として使用し、これに突起部、電極、制止部を設置して、一体的に魚鎮静化装置を形成してもよい。
【0031】
魚の鎮静化工程における本発明の魚鎮静化装置の第2実施形態の使用態様は、第1実施形態と同様である。また、必ずしも斜面に設置することを要しない点も、第1実施形態と同様である。
【0032】
<魚の鎮静化方法>
本発明の魚の鎮静化方法は、上記第1及び第2実施形態のいずれかの魚鎮静化装置を用いる、魚の鎮静化方法である。鎮静化対象は限定されないが、特に、ブリ、カンパチ、ヒラマサ、マダイ、スマガツオ、スズキ、ギンザケ、トラウトサーモン、サクラマス等の魚について、水揚げ直後に、効率的かつ確実に鎮静化できることが利点となる。
【0033】
図14に、本発明の魚の鎮静化方法の一例のフロー図を示す。以下、図11に示すスライド台1Aに魚鎮静化装置10を設置した例を用いた、魚の鎮静化方法について例示的に説明するが、本発明の魚の鎮静化方法はこの態様に限定されるものではない。本発明の魚の鎮静化方法は、例えば、魚17を水揚げし、魚鎮静化装置10を設置したスライド台1A上方に魚17を移動させる工程A、魚17をスライド台1Aの頂部T近傍に落下させる工程B、魚鎮静化装置10中で魚17が載置面12に載置されていることを確認する工程C、電極14A及び14Bに電流を流す工程D、魚17の鎮静化を確認して電流を止める工程E、制止部15を開放して魚を魚鎮静化装置10の下方にスライド移動させる工程F、及び魚17を次の処理のために移動させる工程Gから構成される。
【0034】
工程Aにおいて、通常は、底部を開閉可能なタモ網等を用いて魚17を水揚げし、そのままスライド台1A上方へと運搬する。工程Bでは、タモ網の底部を開放して、内部の魚17をスライド台1Aの頂部Tへと落下させる。これにより、魚をスライド台1Aの斜面上で下方にスライド移動させ、斜面下端近傍の魚鎮静化装置10に収容する。工程Cでは、魚鎮静化装置10の内部の載置面12上に、魚17が載置されていることを確認する。特に、収容された魚17が、一対の電極14A及び14Bの両方に接触しているかどうかを目視で判定することが望ましい。工程Dでは、電源装置のスイッチを入れ、電極14A及び14Bに所定の電圧を供給する。ここで、電圧が低すぎれば魚鎮静化効果が得られにくいが、高すぎても魚17の脊髄が損傷して肉に血液が混入するなど、魚17の品質低下が生じ得るため、適用する魚種等の条件に応じて予め最適な電圧を設定しておくことが好ましい。工程Eでは、魚17の動きの鎮静化を目視等で確認して、電流を止める。通常、通電時間は1~数秒で足りる。通電時間が長くなると、魚17の電極接触部分に焼け等が生じ、魚17の品質低下が生じ得るため、鎮静化を確認後、直ちに電流を止めることが好ましい。鎮静化の確認は目視で行ってもよいが、電流スイッチと連動させたセンサー等を用いて行ってもよい。ここで使用可能なセンサーは、例えば魚の動き有無を感知するセンサーであり、魚の動きが静まった時に、連動する電流スイッチが自動的にオフとなるよう構成される。工程Fでは、制止部15を開放することで、魚を傾斜面に沿って-X方向に移動させ、魚鎮静化装置10の外に出す。制止部15の開閉は、例えば、別途設けられた開閉部材(図示せず)を介して、遠隔操作で実施されてもよい。工程Gでは、魚鎮静化装置10から外に出した魚17を、次の工程に移動させる。次の工程は、特に限定されないが、例えば、〆機での〆工程、計量機での計量工程等が想定される。以上の工程を経て、魚の水揚げから鎮静化までが可能となる。なお、図11に示す設置例に限らず、本発明における魚鎮静化装置10を用いることで、上記工程A~Gを備えた、同様の魚鎮静化方法を実現可能であることは明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、漁業、養殖業において、水揚げ時の魚の処理に利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
10、20、30、40、50…魚鎮静化装置
11、21、31、41,51…載置部
12、22、32、42、52…載置面
13、23、33、43、53…突起部
14、24、34、44、54…電極
15、25、35、45、55…制止部
16…電源装置
17…魚
S…溝部
T…頂部
1A、1B…スライド台
1A1…ストッパー部材
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