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特開2022-62285電池交換システム、電源装置および電池交換プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062285
(43)【公開日】2022-04-20
(54)【発明の名称】電池交換システム、電源装置および電池交換プログラム
(51)【国際特許分類】
   B60L 50/40 20190101AFI20220413BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
B60L11/18 C
H02J7/00 302C
H02J7/00 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2018228635
(22)【出願日】2018-12-06
(71)【出願人】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社エンビジョンAESCジャパン
(72)【発明者】
【氏名】鯨井 貴靖
(72)【発明者】
【氏名】東出 和教
(72)【発明者】
【氏名】小暮 正幸
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA02
5G503BB01
5G503CA01
5G503CA08
5G503CA11
5G503CB11
5G503EA05
5G503FA06
5G503GB06
5G503GD06
5G503HA00
5H125AA03
5H125AC12
5H125AC22
5H125BC08
5H125BC21
5H125BC26
5H125CC04
5H125CD02
5H125EE27
(57)【要約】
【課題】電池交換作業の短縮化を図る。
【解決手段】複数の電池パックを交換するための電池交換システムは、電池ユニット12
のSOCを取得する統合BMS13と、電動バスの運行計画に基づき必要な電池容量を算
出する必要電池容量算出部と、電池パック121A~121Dと電池ユニット12のSO
Cに基づく電池残量と必要な電池容量とに基づいて、不足する電池容量を補うための代替
電池パックおよび交換対象の電池パックを示す電池パック交換指示情報を生成する指示情
報生成部とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池パックを有する電池ユニットと、
前記電池ユニットからの電力で駆動される走行用電動駆動装置と、
複数の前記電池パックの少なくとも一つを前記走行用電動駆動装置に接続する切替器と

使用中の電池パックの電池残量が所定閾値以下になると、電池容量が前記所定閾値を超
えている少なくとも他の一つの電池パックを前記走行用電動駆動装置に接続するように前
記切替器を制御する制御部とを備える電動車両。
【請求項2】
電動車両に搭載される走行駆動用電池ユニットの複数の電池パックを部分的に交換する
ため、前記電動車両と情報処理とをネットワークで接続して成る電池交換システムであっ
て、
前記電池ユニットの電池容量に関する状態情報を取得する取得部と、
前記電動車両の運行計画に基づき必要な電池容量を算出する必要電池容量算出部と、
前記状態情報に基づく電池残量と前記必要な電池容量とに基づいて、不足する電池容量
を補うための代替電池パックおよび交換対象の電池パックを示す電池パック交換指示情報
を生成する指示情報生成部とを備える電池交換システム。
【請求項3】
請求項2に記載の電池交換システムにおいて、
さらに、前記状態情報に基づく電池残量と前記必要な電池容量とに基づいて、不足する
電池容量を補うための前記代替電池パックの仕様を演算する仕様演算部をさらに有し、
前記電池パック交換指示情報は、前記代替電池パックが必要とする最小電池残量を含む
電池交換システム。
【請求項4】
複数の電池パックが着脱可能に設けられ、走行用電動駆動装置に電力を供給する電池ユ
ニットと、
前記複数の電池パックと前記走行用電動駆動装置との間に設けられ、複数の前記電池パ
ックの少なくとも一つを走行用電動駆動装置に接続する切替器と、
前記走行用電動駆動装置に接続されている前記電池パックの電池残量が所定閾値以下に
なると、少なくとも他の一つの電池パックを前記走行用電動駆動装置に接続するように前
記切替器を制御する制御部とを備える電源装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電源装置において、
前記複数の電池パックを筐体の内部で拘束部材により拘束する使用状態と、前記拘束部
材による拘束を解いた交換状態との2つの状態とする着脱機構を有する、電源装置。
【請求項6】
請求項5に記載の電源装置において、
複数の前記電池パックの状態情報を取得し、それら複数の前記電池パックの状態情報に
基づいて前記電池ユニット全体としての状態情報を演算する電池ユニット状態情報演算部
を有し、複数の前記電池パックの状態情報と前記電池ユニット全体としての状態情報を外
部に出力する、電源装置。
【請求項7】
請求項6に記載の電源装置において、
前記電池ユニットと、前記電池ユニット状態情報演算部と、前記切替器とを一体に組み
立てた、電源装置。
【請求項8】
複数の電池パックを個別に着脱するように構成した電動車両用の電池ユニットの電池交
換プログラムであって、
運行計画に基づいて運行している前記電動車両から前記電池ユニットの電池容量に関す
る状態情報を取得することと、
前記電動車両の運行計画に基づき必要な電池容量を算出することと、
前記電池パックの状態情報に基づく電池残量と前記必要な電池容量とに基づいて、不足
する電池容量を補うための代替電池パックと交換対象の電池パックを示す電池パック交換
指示情報を生成することとを含む処理をコンピュータに実行させる電池交換プログラム。
【請求項9】
請求項8に記載の電池交換プログラムにおいて、
前記コンピュータが実行する処理としてさらに、前記状態情報に基づく電池残量と前記
必要な電池容量とに基づいて、不足する電池容量を補うための代替電池パックの仕様を演
算することを含み、
前記電池パック交換指示情報は、前記代替電池パックが必要とする最小電池残量が示さ
れている電池交換プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池交換システム、電源装置および電池交換プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
搭載した電池を電源として走行する電動車両においては、電池残量をモニタリングして
電池状態を管理している。たとえば先行特許文献1」には、次の走行のために、電池残量
が所定値以下になると電池を満充電まで充電することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6-48184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電池の残容量が少ないと、満充電するまでの充電時間が長時間を要する
。そのため、電池が満充電するまで発進できない。とくに、公共交通機関で使用する路線
バスなどにおいては、バス運営会社が複数台のバスの運行を管理しており、充電のために
発進できない場合、代替車両を手配する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)電動車両は、複数の電池パックを有する電池ユニットと、前記電池ユニットからの
電力で駆動される走行用電動駆動装置と、複数の前記電池パックの少なくとも一つを前記
走行用電動駆動装置に接続する切替器と、使用中の電池パックの電池残量が所定閾値以下
になると、電池容量が前記所定閾値を超えている少なくとも他の一つの電池パックを前記
走行用電動駆動装置に接続するように前記切替器を制御する制御部とを備える。
【0006】
(2)電池交換システムは、電動車両に搭載される走行駆動用電池ユニットの複数の電池
パックを部分的に交換するため、前記電動車両と情報処理とをネットワークで接続して成
る電池交換システムであって、前記電池ユニットの前記状態情報を取得する取得部と、前
記電動車両の運行計画に基づき必要な電池容量を算出する必要電池容量算出部と、前記状
態情報に基づく電池残量と前記必要な電池容量とに基づいて、不足する電池容量を補うた
めの代替電池パックおよび交換対象の電池パックを示す電池パック交換指示情報を生成す
る指示情報生成部とを備える。
(3)上記(2)の電池交換システムは、さらに、前記状態情報に基づく電池残量と前記
必要な電池容量とに基づいて、不足する電池容量を補うための前記代替電池パックの仕様
を演算する仕様演算部をさらに有し、前記電池パック交換指示情報には、前記代替電池パ
ックが必要とする最小電池残量を含む。
【0007】
(4)電源装置は、複数の電池パックが着脱可能に設けられ、走行用電動駆動装置に電力
を供給する電池ユニットと、前記複数の電池パックと前記走行用電動駆動装置との間に設
けられ、複数の前記電池パックの少なくとも一つを走行用電動駆動装置に接続する切替器
と、前記走行用電動駆動装置に接続されている前記電池パックの電池残量が所定閾値以下
になると、少なくとも他の一つの電池パックを前記走行用電動駆動装置に接続するように
前記切替器を制御する制御部とを備える。
(5)上記(4)の電源装置は、前記複数の電池パックを筐体の内部で拘束部材により拘
束する使用状態と、前記拘束部材による拘束を解いた交換状態との2つの状態とする着脱
機構を有する。
(6)上記(5)の電源装置は、複数の前記電池パックの状態情報を取得し、それら複数
の前記電池パックの状態情報に基づいて前記電池ユニット全体としての状態情報を演算す
る電池ユニット状態情報演算部を有し、複数の前記電池パックの状態情報と前記電池ユニ
ット全体としての状態情報を外部に出力する。
(7)上記(6)の電源装置は、前記電池ユニットと、前記電池ユニット状態情報演算部
と、前記切替器とを一体に組み立ててモジュール化されている。
【0008】
(8)電池交換プログラムは、複数の電池パックを個別に着脱するように構成した電動車
両用の電池ユニットの電池交換プログラムであって、運行計画に基づいて運行している前
記電動車両から前記電池ユニットの電池容量に関する状態情報を取得することと、前記電
動車両の運行計画に基づき必要な電池容量を算出することと、前記電池パックの状態情報
に基づく電池残量と前記必要な電池容量とに基づいて、不足する電池容量を補うための代
替電池パックと交換対象の電池パックを示す電池パック交換指示情報を生成することとを
含む処理をコンピュータに実行させる。
(9)上記(8)の電池交換プログラムにおいて、前記コンピュータが実行する処理とし
てさらに、前記電池状態情報に基づく電池残量と前記必要な電池容量とに基づいて、不足
する電池容量を補うための代替電池パックの仕様を演算することを含み、前記電池パック
交換指示情報には、前記前記代替電池パックが必要とする最小電池残量が示されている。
【発明の効果】
【0009】
第1の発明の電動車両によれば、電池ユニットの複数の電池パックを交換可能とし、複
数の電池パックの一部の電力を使用して走行を行い、一部の電池パックの残量が所定閾値
以下になると他の電池パックに切り替えて走行するようにしたので、電池残量が不足した
場合に一部の電池パックだけを交換することができる。その結果、電池を充電したり、す
べての電池ユニットを交換する場合に比べて、交換作業時間を短縮できる。
第2の発明の電源装置によれば、第1の発明の電動車両の電源として好適に組み込むこ
とができる。
第3の発明の電池交換システムおよび第4の発明の電池交換プログラムによれば、第1
の発明の電動車両に搭載する第2の発明の電源装置における電池パックの交換作業を迅速
に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施の形態の電池交換システムを説明する図
図2図2は、一実施の形態に係るバスに搭載される車載システムを説明する図
図3図3は、一実施の形態の電池ユニットの構成を説明する図
図4図4は、一実施の形態の管理センターを説明する図
図5図5は、図4に示す管理センターのデータベースに格納されている運行計画情報テーブルを説明する図
図6図6は、図4に示す管理センターのデータベースに格納されている電池交換管理テーブルを説明する図
図7図7は、一実施の形態の車両基地に設置された基地センターを説明する図
図8図8は、一実施の形態の電池交換システムにおいて運行計画にしたがって減少する電池パックのSOCの遷移を説明する図
図9図9は、一実施の形態の車両制御装置で走行駆動時の電池制御処理を説明するフローチャート
図10図10は、一実施の形態の車両制御装置において電池交換処理を説明するフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図を参照して本発明を実施するための形態について説明する。
【0012】
(実施の形態の概略)
はじめに実施の形態の概略を説明する。
電動バスは、複数個の電池パックを個別に交換可能にした電池ユニットを搭載している
。すべての電池パックの電力で走行用モータを駆動せず、いずれかの電池パックの電力で
走行用モータを駆動する。使用中の電池パックの電池残容量が所定閾値以下になると、所
定閾値を超えた電池容量を有する別の電池パックに切り替えて走行を続ける。電動バスは
、複数の路線を運行する。最初の路線の運行終了時に次の路線で必要な電池容量が不足す
る場合、次の路線の運行開始前に電池ユニットとして必要な電池容量となるように、電池
ユニットの所定閾値以下の電池パックを取り外し、所定閾値を超えた代替電池パックに交
換する。
この明細書では、電池パックの状態情報および電池ユニットの状態情報としてSOC(
State of Charge)を用いて説明する。
【0013】
-第1実施の形態-
(電池交換システム)
図1は、本実施の形態の電池交換システムを説明する図である。
実施の形態の電池交換システムは、複数の電動車両を路線バスとして使用するバス運営
会社(以下、バス会社と呼ぶ)が電動バスの電池を管理するためのシステムである。電池
交換システムは、路線バス(以下、バスと呼ぶ)10と、バス会社が管理する管理センタ
ー20と、バス会社の車両基地に設置した基地センター30とを有し、これらはネットワ
ーク96で接続されている。そして、バス10は無線基地局95、ネットワーク96を経
由して管理センター20と通信を行う。
【0014】
図2は、バス10に搭載される車載システムを示す。車載システムは、バス10を走行
駆動する走行駆動装置11と、走行駆動装置11に電力を供給する電池ユニット12と、
統合バッテリマネジメントシステム(以下、統合BMSという)13と、切替器14と、
走行駆動装置11および電池ユニット12を管理するとともに、車両全体を制御する車両
制御装置15と、車両位置を検出するGPSセンサなどの位置検出装置16と、ネットワ
ークと接続して各種情報を授受するための通信装置17とを有する。
図2を参照して車載システムを説明する。
【0015】
(電池ユニット12)
電池ユニット12は、複数の電池パック121A~121D(以下、代表符号を121
とする)と、電池パック121A~121Dに電池状態を監視して管理するバッテリマネ
ジメントシステム122A~122D(以下、電池パックBMSと呼び符号122で示す
)とを含んで構成されている。
【0016】
(電池パックBMS122)
電池パック121のそれぞれには電池パックBMS122が実装され、電池パック12
1の電池状態を監視し、管理する。電池パックBMS122は、電池パック内の複数の単
位電池の電圧、電流、温度などを検出し、複数の単位電池の合計電圧と入出力電流、温度
などに基づいて電池パック121のSOCを演算する。このSOCは電池パック121の
IDとともに統合BMS13に出力される。電池パックBMS122は、各単位電池が平
均的なSOCとなるようなアベ―レージング制御も行う。
【0017】
図3を参照して電池ユニット12をさらに説明する。複数の電池パック121A~12
1Dは、筐体125内に並置されている。各電池パック121は、複数の単位電池(以下
、セルとも云う)121cellを内蔵し、複数の単位電池121cellにより、たとえば、定
格容量40kWhを実現している。実施の形態では、バス10が1つの路線を走行するに
必要な容量を160kWhとし、4つの電池パック121A~121Dを搭載している。
4つの電池パック121には識別子(以下、電池パックIDと呼ぶ)が割り当てられて
いる。バス会社が保有するすべての電池パック121には電池パックIDが一意に割り当
てられている。したがって、電池パックIDにより各電池パックの121の電池状態を把
握することができる。
【0018】
筐体125内部の上部には電磁式拘束部材126が設けられ、下部には端子部127が
設けられている。図3(c)に示すように、電池パック121は、その底面に、正極端子
123Pおよび負極端子123Nと、電池パックBMS122で監視するセル電圧、セル
電流、温度などの各種情報を出力するための通信端子123Iとを備えている。
【0019】
電磁式拘束部材126は、常時は筐体125の上方に付勢され、収容部128内に位置
している。電磁式拘束部材126は、図示しないソレノイドで付勢力に抗して下方に移動
し、電池パック121を筐体125の下方に押圧する。拘束部材126の駆動制御、すな
わちソレノイドの駆動制御は、統合BMS13を経由して行われる。たとえば、電池パッ
クを交換する交換ツールを電池ユニット12に接続して、このツールの操作により、ソレ
ノイドに印加する電圧を制御して拘束部材126を押し下げたり、押し上げる指令を出力
する。拘束部材126が電磁力で下方に押圧されると、電池パック121の下面の正負極
端子123P,123Nおよび情報通信端子123Iが、バッテリ筐体125の底部に設
けた入出力用正負極端子127P、127N、通信端子127Iと電気的に接続される。
端子部127は筐体125内部の下部に設けられている。端子123と端子部127は、
いずれか一方が凸形状、他方が凹形状である。このような端子嵌合構造を採用することに
より、拘束部材126で電池パック121が筐体125の底部に押圧されているときは、
電池パック121の高さ方向と直交する面内での電池パック121の移動やずれを防止で
きる。端子部127は、筐体外部でインバータなどに接続されるハーネスが接続されるよ
うに構成されている。
【0020】
図3(a)は、バス10の背面側から見た電池ユニット12を示している。図3(b)
の取っ手129は、バス背面から棒状の電池パック着脱治具が通過する大きさに形成され
ている。フォークリフトのフォークの先端に電池パック着脱治具を装着して電池パック1
21の交換作業を行うことで、重量がある電池パックを取り扱う際に、作業者の負担を軽
減できる。
【0021】
(切換器14)
切替器14は、いずれか一つの電池パック121を選択的に走行駆動装置11に接続す
るものであり、統合BMS13からの指示により切り替え動作する。切替器14は、たと
えばリレースイッチ群であり、電池筐体125の入出力端子127P,127Nと走行駆
動装置11との間に設けたリレー接点14A~14Dを有する。リレー接点14A~14
Dをすべて開放すると、電池ユニット12がインバータ112から遮断される。4つのリ
レー接点14A~14Dのうちいずれか一つのリレー接点が閉成されることで一つの電池
パック12が利用される。電池ユニット12をインバータ111から切り離す場合は、す
べてのリレー接点14A~14Dを開成する。
【0022】
(統合BMS13)
統合BMS13は、4つの電池パック121のそれぞれのSOCをパックSOCとして
受信し、これら4つのパックSOCを用いて、電池ユニット12のユニットSOCを演算
する。統合BMS13にも一意に識別子(以下、統合IDと呼ぶ)が割り当てられている
。統合BMS13は、統合BMS13で演算した電池ユニット12のSOCを、電池ユニ
ット12のIDとともに通信装置17を介して管理センター20に送信する。また、統合
BMS13は、各電池パック121から受信したパックSOCをそれら電池パック121
のIDとともに通信装置17を介して管理センター20に送信する。さらに、統合BMS
13は、切替器14により選択されている電池パックのIDを通信装置17を介して管理
センター20に送信する。
これらの情報は、後述する電池交換管理テーブル222(図6参照)に書き込まれる。
通信装置17が各種情報を管理センター20に送信するタイミングは、一例として停留
所を通過する時点である。バスが所定距離(単位距離)走行するごとに送信するように設
定しても良い。
【0023】
統合BMS13は、4つの電池パック121A~121DのSOCを監視し、使用中の
電池パック121のSOCが所定閾値以下に到達したら、あらかじめ定められている電池
パック切替え順番にしたがって、切替器14に切替信号を送信して電池パック121を切
替える。たとえば、電池パック121A、121B、121C、121Dの順番に切替え
られる。
このように、複数の電池パックを一つずつ走行駆動電力に利用し、利用中の電池パック
のSOCが所定閾値以下になるとあらかじめ定めた順番で他の電池パックに切換えられる
ので、一つの路線を走行中は、すべての電池パックにどの程度残容量があるかを把握する
必要がない。
なお、一つの路線の運行終了時にどの電池パックを使用しているがを予測し、次の路線
の運行開始時に、予測した電池パックを継続して使用し、あらかじめ定めた順番で電池パ
ックを切り替える。
BMS122を含む電池ユニット12と、切替器14と、統合BMS13とは、モジュ
ール化した電源装置50として一つの筐体内に実装するのが好ましい。モジュール化した
電源装置50は、バス10に搭載する際の組み立て性がよい。
【0024】
(走行駆動装置11)
図2を参照すると、走行駆動装置11は、走行用電動モータ111と、電動モータ11
1に必要な電力を供給するインバータ112と、車両制御装置15から受信するインバー
タ駆動信号によりインバータ112を駆動するモータコントローラ113とを有する。図
示しない電流センサはモータ電流を検出し、図示しない電圧センサはモータ印加電圧を検
出する。モータコントローラ113は、これらの電流検出信号と電圧検出信号を車両制御
装置15および統合BMS13に送信する。これらの検出信号により車両制御装置15は
モータ111を駆動制御する。
なお、電流検出信号と電圧検出信号の積分値などに基づいて電池残量(SOC)を演算
することができる。
【0025】
(車両制御装置15)
車両制御装置15は、アクセルペダル踏み込み量を検出するセンサ、ブレーキペダル踏
み込み量を検出するセンサなど図示しない各種センサから走行に関する各種の情報を受信
して、必要な走行駆動トルクをトルク指令として算出する。車両制御装置15は、演算さ
れたトルク指令をモータコントローラ113に供給する。モータコントローラ113は、
入力されたトルク指令に応じたインバータ駆動信号を生成してインバータ112を駆動す
る。これにより、モータ111は必要な走行駆動トルクを出力するように駆動される。車
両制御装置15は、モータコントローラ113からモータ電流やモータ印加電圧を入力し
て実トルクを算出し、トルク指令と実トルクとに差分に基づきインバータ112を駆動制
御する。
【0026】
車両制御装置15にはまた、位置検出装置16からバスの時々刻々の位置情報が入力さ
れる。位置検出装置16は、たとえば複数のGPS衛星から受信した複数の信号に基づい
て自車位置を演算し、車両制御装置15に供給する。車両制御装置15は、通信装置17
によりバスIDとともに自車位置を管理センター20に送信する。また、これら情報は図
6の電池交換情報テーブル222に書き込まれる。
【0027】
(管理センター20)
図4を参照して、管理センター20の構成を説明する。
管理センター20は、路線バス10の運行管理や路線バス10の電池管理のための各種
演算処理を行うサーバ21と、路線バス10の運行計画情報、電池交換管理のデータベー
ス22と、通信インターフェース23とを備えている。
サーバ21は、後で詳述する、電池ユニット12のSOCを統合BMS3から受信する
SOC取得部21Aと、次の路線で必要な電池容量を算出する電池容量算出部21Bと、
代替電池パックの仕様と交換対象の電池パックを指示する電池パック交換指示情報情報を
生成する指示情報生成部21Cとを有する。
データベース22は、管理センター20が運行管理する路線バスの運行計画情報テーブ
ル221(図5参照)と、バスIDごとの電池交換管理テーブル222(図6参照)とを
有する。通信インターフェース23は、バス10と車両基地センター30のサーバ31(
図7参照)と通信ネットワークを介して通信を行う。運行計画情報テーブルを図5に、電
池交換管理テーブルを図6に示す。
【0028】
(運行計画情報テーブル)
図5に示す運行計画情報テーブル221には、管理センター20が管理する複数の路線
の種々の情報が入力されている。たとえば、路線名「大01」として、バスが出車する車
両基地名、出車地点から終点までの間の複数の停留所名、バスが帰車する車両基地名、運
行するバスのIDが入力されている。路線名「大01」の、始発駅名、終点駅名、各地点
の到着予定時刻、地点間の走行負荷も運行計画情報テーブル221に格納されている。走
行負荷は、区間内を走行する際に必要な出力WHである。出力WHを予想消費量とも云う
【0029】
図5では、「大01」、「横02」、「小03」、「浜04」の4つの路線名が示され
、路線「大01」と「小03」はバスID0001のバスが運行し、路線「横02」と「
浜04」はID0002のバスが運行する。以下の説明では、ID0001のバスが路線
「大01」を運行し、その後、「小03」を運行する場合の電池パックの交換処理につい
て説明する。
【0030】
(電池交換管理テーブル)
図6に示す電池交換管理テーブル222は、特定のバスIDが運行する路線名ごとにつ
ぎのような情報を有する。
(1)路線を運行するに必要な電池容量
(2)路線運行中のバスの位置情報(到着駅の情報)
(3)到着駅ごとでの各電池パックの残容量を示すSOCと、各電池パックの残容量Whを
含むSOC情報
(4)運行開始時に使用する電池パックID
(5)運行終了時に使用していた電池パックID
【0031】
電池交換管理テーブル222のSOC情報は、路線をバス10が所定の地点を通過する
ごとに、たとえば、停留所を通過するごとに更新する例で示している。しかし、バス10
の時々刻々の位置情報とその時点でのSOCを対として、路線の任意の地点を通過するご
とに更新しても良い。
【0032】
(車両基地センター30)
図7を参照して、車両基地センター30の構成を説明する。
車両基地センター30は、管理センター20から送信された電池交換指示情報などを受
信し、代替電池パック交換に関する処理を実行するサーバ31と、サーバ31から送信さ
れた電池交換指示情報を可視化する表示装置32と、バス10と管理センター20と通信
ネットワークを介して通信を行う通信インターフェー33とを有している。表示装置32
は、電池交換作業所に設置され、作業者は、表示装置32に表示された電池交換指示にし
たがい、路線バスが帰車するまでに、次の路線を運行するのに必要な電池容量を有する一
つ以上の電池パック121を準備する。
【0033】
(電池パック交換処理)
管理センター20のサーバ21は、運行計画情報テーブル221と電池交換管理テーブ
ル222を参照して、路線バスが一つの路線の運行を終了して車両基地センター30に到
着する時点での電池ユニット12のSOCを推定する。管理センター20のサーバ21は
、バス10が終点駅を通過した際に受信する電池ユニット12のSOCと各電池パック1
21のSOCとに基づき、終点駅でのバス10の電池残量を演算する。終点駅から車両基
地センター30までに消費する電池容量は、運行計画情報テーブル221を参照すると、
終点駅から車両基地センター30まで走行する際に消費する予想消費量としてあらかじめ
設定されている。終点駅通過時の電池残量から上記運行計画情報テーブル221の予想消
費量を差し引いたSOCを、車両基地センター30に到着した時点での電池パック121
CのSOCと推定する。
【0034】
図4の管理センター20のサーバ21は、バス10の次の運行計画の路線で必要な電池
容量を運行計画情報テーブル221に基づき読み込む。この必要電池容量と、推定した電
池パック121および電池ユニット12のSOCに基づく電池残量とを比較し、不足する
場合、不足分を補う電池容量が充電された代替電池パック121を準備するように作業者
に指示する電池交換指示情報を作成する。
電池交換指示情報は、たとえば、
「現在、路線「大01」を運行しているID0001のバス10は、11時15分頃に車
両基地センター30に帰車し、11時45分頃に次の路線「小030」の運行を開始する
ため車両基地センター30を発進する。このバス10の電池パック121Cを、満充電さ
れた代替電池パック121に交換する」
といった内容である。
【0035】
電池交換指示情報を受信した基地サーバ31は、電池交換作業者に対して電池交換指示
情報を通知する。車両基地センター30の作業者は、電池交換指示情報に基づいて、路線
バス10が帰車するまでの時間内に、交換する電池パック(代替電池パックという)の準
備を行う。電池交換指示情報は、交換対象の電池パック121の特定と、その電池パック
の代替電池パックの電池容量とを含む。したがって、路線バス10が車両基地センター3
0に戻るまでの間に、作業者は代替電池パックを準備する。
路線バスが車両基地センター30に戻ったとき、次の路線の運行開始までの時間内に、
作業者は、表示装置32の電池交換指示情報を参照して電池ユニット12の筐体内から、
交換対象である電池パック121を取り外し、あらかじめ準備していた代替電池パック1
21を取り付ける。
【0036】
(電池パック交換処理手順の具体例)
車両基地センター30で電池パックを交換する処理手順について、具体例を挙げて説明
する。
たとえば、次の条件で説明する。
(i)電池パックの使用順番は、電池パック121A→121B→121C→121D→
121Aであり、それ以降の切替え順番も同様である。
(ii)終点の停留所を通過した時刻において、電池パック121Aと121Bは、現在運
行中の路線ですでに所定閾値以下となっており、電池パック121Cを使用している。ま
た、電池パック121Dは満充電されている。説明を簡単にするため、所定閾値以下の電
池パック121のSOCをゼロ%、満充電の電池パック121のSOCを100%とする

(iii)バス10が車両基地センター30に戻った際に最後に使用していた電池パック1
21Cの推定SOC(ES)と所定閾値までの差分のSOCをSOC(DEF)とし、次
の使用順番である電池パック121DのSOCをSOC(D)とする。
(iv)SOC(ES)+SOC(D)の合計SOC(ES+D)が次の路線で必要な電池容
量に相当するSOC(NEXT)よりも小さいとする。すなわち、SOC(NEXT)と
SOC(ES+D)の差分が不足する電池容量SOC(NEEDED)である。
(v)不足する電池容量SOC(NEEDED)は、電池パック121の満充電の容量SO
C(MAX)より小さいとする。
【0037】
図8は、上記条件の一例をより具体的に説明する図である。
図8は、バスID0001のバス10が路線「大01」の運行を開始し、路線「大01
」の運行終了後に車両基地センター30に帰車し、さらに電池パック交換作業を行った後
、路線「小03」の運行を開始し、路線「小03」の運行終了後に車両基地センター30
に帰車する間の電池パックの電池容量の遷移を示す。
【0038】
(I)図8(a)に示すように、路線「大01」は停留所BS1~BS4があり、必要な
電池容量は電池パック換算で2.5個である。路線「小03」は停留所BS11~BS1
3があり、必要な電池容量は電池パック換算で3.0個である。
【0039】
図8(b)も参照して説明を続ける。電池ユニット12の上部の数字は電池残量を電池
パック個数で換算した値である。
(II)路線「大01」の運行開始時の電池ユニット12の4つの電池パック121A~1
21Dの電池容量はすべて100%の満充電である。
(III)停留所BS1に到達した時の4つの電池パック121A~121Dの電池容量は
電池パック121Aが80%、その他の3つの電池パック121B~121Dは100%
の満充電である。
(IV)停留所BS2に到達した時の4つの電池パック121A~121Dの電池容量は電
池パック121Aが50%、その他の3つの電池パック121B~121Dは100%の
満充電である。
(V)停留所BS3に到達した時の4つの電池パック121A~121Dの電池容量は電
池パック121Aが0%、電池パック121Bが70%、その他の2つの電池パック12
1Cと121Dは100%の満充電である。
(VI)停留所BS4に到達した時の4つの電池パック121A~121Dの電池容量は2
つの電池パック121Aと121Bが0%、電池パック121Cが80%、電池パック1
21Dは100%の満充電である。
【0040】
(VII)車両基地センター30に到達した時の4つの電池パック121A~121Dの電
池容量は2つの電池パック121A,121Bが0%、電池パック121Cが50%、電
池パック121Dは100%の満充電である。すなわち、1.5個分の電池パックが残容
量である。なお、この残容量は、バス10が車両基地センター30に帰車する前に推定し
た値である。
【0041】
路線「小03」で必要な電池容量は電池パック換算で3.0個であるが、路線「大01
」の運行終了時の電池ユニット12の推定電池残量は電池パック換算で1.5個であり、
1.5個分の電池パックが不足している。そこでこの実施の形態では、余裕を見て、電池
パック121Aと121Bを、電池容量100%の2つの代替電池パック121ACと1
21BCに交換することとする。路線「小03」の運行開始時の電池パック換算残容量は
3.5個である。
【0042】
実施の形態では、バスID0001のバス10が車両基地センター30に帰車する前に
、路線「大01」の運行終了時点での電池ユニット12の電池残量を上記のように、電池
パック121Cの電池残量が50%、電池パック121Dの電池残量が100%と推定し
、次の路線「小03」に必要な電池容量との差分を迅速に演算可能とする。
【0043】
(VIII)路線「小03」の運行開始時の電池ユニット12の4つの電池パック121A~
121Dの電池容量は、電池パック121A,121Bが満充電の100%、路線「大0
1」の運行終了時に使用していた電池パック121Cは50%、電池パック121Dは1
00%である。これは電池パック換算で3.5個である。
(IX)停留所BS11に到達した時の4つの電池パック121A~121Dの電池容量は
電池パック121Cが0%、その他の3つの電池パック121A,121B,121Dは
100%の満充電である。
(X)停留所BS12に到達した時の4つの電池パック121A~121Dの電池容量は
電池パック121A,121Bが100%、電池パック121Cが0%、電池パック12
1Dが20%である。
(XI)停留所BS13に到達した時の4つの電池パック121A~121Dの電池容量は
電池パック121Aが50%、電池パック121Bが100%、その他の2つの電池パッ
ク121Cと121Dは0%である。
(XII)車両基地センター30に到達した時の4つの電池パック121A~121Dの電
池容量は3つの電池パック121A,121B,121dが0%、電池パック121Bが
50%である。すなわち、路線「小03」の運行終了時の残容量は電池パック換算で0.
5個である。
【0044】
以上(I)~(XII)の条件下では、路線「小03」の運行開始時には電池パック121
Cを使用し、その後、電池パック121CのSOCが所定閾値以下になると(0%になる
と)電池パック121Dに切替える。電池パック121DのSOC(D)が所定閾値以下
となった(0%になった)とき、電池パック121Aに切り替え、電池パック121Aの
SOC(D)が所定閾値以下となった(0%になった)とき、電池パック121Bに切り
替える。したがって、路線「小03」の運行開始時の電池パック121A,121Bに必
要な電池容量SOCは、不足する電池容量SOC(NEEDED)、上記の例では、電池
パック換算で1.5個分であるが、電池パック0.5個分の余裕代を設定している。
以上が、管理センター20で生成した電池交換指示情報に基づく車両基地センター30
で実施される電池交換処理である。
また、路線「大01」の運行を終了し、次の路線「小03」の運行を開始する前の電池
交換は、
(a)SOCゼロ%の電池パック121Aと121Bを取り外すことと、
(b)満充電されたSOC100%の代替電池パックを2つ準備することと、
(c)交換対象電池パック121Aと121Bを代替電池パックに交換すること
を含む。
したがって、管理センター20のサーバ21は、少なくとも(a)~(c)を文字情報
として生成する。すなわち、サーバ21Bの電池交換指示情報生成部21Cは電池交換指
示情報を生成する。そして、この電池交換指示情報を受信した基地センター30のサーバ
31は、基地センター30の表示装置33に電池交換指示情報を可視化して表示する。
【0045】
以上説明したような演算アルゴリズムは管理センター20のサーバ21に実装されてい
る。すなわち、管理センター20のサーバ21には電池交換アルゴリズムを実施するプロ
グラムが実装されている。このプログラムは、複数の電池パック121A~121Dを個
別に着脱するように構成した電池ユニット121の電池交換プログラムであり、次の処理
をコンピュータを有する管理センター20のサーバ21で実行するためのものである。
電池交換プログラムは、運行計画情報テーブル221に基づいて運行しているバス10
から電池パック121A~121DのパックSOCおよび電池ユニット12のユニットS
OCを取得する処理と、運行計画情報テーブル221に基づき次の路線に必要な電池容量
を算出する処理と、電池パック121A~121DのパックSOCおよび電池ユニット1
2のユニットSOCと次の路線で必要な電池容量とに基づいて、不足する電池容量を補う
ための代替電池パックと交換対象の電池パックを示す電池パック交換指示情報を生成する
処理を含む。
サーバ21は、このプログラムを実行して実現される機能として、上述したように、電
池ユニット12のSOCを統合BMS3から受信するSOC取得部21Aと、次の路線で
必要な電池容量を算出する電池容量算出部21Bと、代替電池パックの仕様と交換対象の
電池パックを指示する電池パック交換指示情報情報を生成する指示情報生成部21Cとを
有する。
【0046】
図9(a)~(c)を参照して、走行駆動に関する車両制御装置15の処理手順、統合BM
S13の処理手順、電池パックBMS122の処理手順を説明する。
【0047】
(車両制御装置15の手順)
図9(a)は、たとえば100ms間隔で実行される車両制御装置15のプログラム手順
を説明する図である。
車両制御装置15は、ステップS11において、イグニッションスイッチ情報、各種セ
ンサ情報などを読み込む。ステップS12において、各種センサ情報などに基づき必要ト
ルクを算出する。ステップS13において、必要トルクに基づくインバータ駆動信号をイ
ンバータ112に出力する。これにより走行モータ111が必要な駆動トルクでバス10
を走行駆動する。
【0048】
(統合BMS13の手順)
図9(b)は、たとえば100ms間隔で実行される統合BMS13のプログラム手順を
説明する図である。
ステップS21において、あらかじめ設定した電池パック切替え順番に基づいて切替器
14に切替え信号を出力してリレー接点の開閉制御を行い、使用する電池パック121を
選択する。使用中の電池パック121のSOCが所定閾値以下になると、統合BMS13
は、電池パック切替え順番で次に使用が設定されている電池パック121を選択する切替
え信号を切替器14に出力する。これにより、次の電池パック121に切替わる。
なお、SOCに代えて、使用中の電池パックの電圧が所定閾値以下になると次の電池パ
ックに切り替えてもよい。
【0049】
(電池パックBMS122の手順)
図9(c)は、たとえば10ms間隔で実行される各電池パック121に実装された電池
パックBMS122の手順を説明する図である。
ステップS31において、電池パック121の状態を自己診断する。ステップS32に
おいて、電池パック121の複数のセルの電圧や温度などの各種センサの検出値を読み込
む。ステップS33において、読み込んだセンサ検出値に基づいてSOCを算出する。ス
テップS34において、算出したSOCにその電池パック121のIDを付してパックS
OCデータを生成し、SOCデータを統合BMS13に送信する。
【0050】
図10(a)~(c)を参照して電池交換に関する車両制御装置15の処理手順、管理セン
ター20のサーバ21の処理手順、車両基地センター30のサーバ31の処理手順を説明
する。
【0051】
図10(a)は、たとえば100ms間隔で実行される車両制御装置15の手順を説明す
る図である。
ステップS51において、バスIDを含むメモリ情報と電池状態情報を読み込む。電池
状態情報は、パックSOCとユニットSOCを含む。ステップS52において、位置検出
装置16で算出しているバス10の位置情報を読み込む。ステップS53において、バス
ID、位置情報、電池状態情報を管理センター20に通信装置17を介して送信する。
【0052】
図10(b)は、所定のタイミングで実行される管理センター20のサーバ21の手順を
説明する図である。
ステップS61において、バス10から送信されるバスID、位置情報、電池状態情報
を受信して所定の記憶領域に記憶する。ステップS62において、記憶領域に記憶した電
池状態情報に基づいて、通信しているバス10が車両基地センター30に戻ったときに交
換する代替電池パック121を準備すべく、電池交換指示情報を生成(演算)する。
【0053】
図10(c)車両基地センター30のサーバ31の手順を説明する図である。
ステップS71において、サーバ31は管理センター20のサーバ21と通信して、バ
スIDと電池交換指示情報を受信する。ステップS72において、電池交換指示情報を車
両基地センター30の電池充電交換所に設置されている表示装置33に表示する。音声に
より作業者に作業を合わせて指示してもよい。
【0054】
以上説明した第1の実施の形態の作用効果をまとめると以下のとおりである。
(1)実施の形態のバス10は、複数の電池パック121A~121Dを有する電池ユニ
ット12と、電池ユニット12からの電力で駆動される走行用電動駆動装置11と、複数
の電池パック121A~121Dの少なくとも一つを走行用電動駆動装置11に接続する
切替器14と、使用中の電池パック121の電池残量が所定閾値以下になると、電池容量
が所定閾値を超えている少なくとも他の一つの電池パック121を走行用電動駆動装置1
1に接続するように切替器14を制御する統合BMS(制御部)13とを備える。
【0055】
(2)バス10に搭載される走行駆動用電池ユニット11の複数の電池パック121A~
121Dを部分的に交換するため、バス10と管理センター20のサーバ21とをネット
ワークで接続して成る電池交換システムは、電池ユニット12のSOC(電池容量に関す
る状態情報であり、パックSOCとユニットSOCを含む)を取得するSOC取得部21
Aと、バス10の運行計画テーブル221に基づき必要な電池容量を算出する必要電池容
量算出部21Bと、電池ユニット12のSOCに基づく電池残量と必要な電池容量とに基
づいて、不足する電池容量を補うための代替電池パックおよび交換対象の電池パックを示
す電池パック交換指示情報を生成する指示情報生成部21Cとを備える。 次の路線で必
要な電池容量を管理するにあたり、電池ユニット全体を交換する作業は煩雑で時間がかる
。交換せずに電池ユニットを満充電する作業も時間を要する。しかし、電池ユニットを構
成する電池パックの少なくとも一つを交換することにより、次の路線でバスを運行するま
での時間を短縮することができる。
(3)上記(2)の電池交換システムは、さらに、パックSOCおよびユニットSOCに
基づく電池残量と必要な電池容量とに基づいて、不足する電池容量を補うための代替電池
パックの仕様を演算する仕様演算部をさらに有する。電池パック交換指示情報には、代替
電池パックが必要とする最小電池残量を含む。この最小電池残量が電池パックの仕様であ
る。
【0056】
(4)実施の形態の電源装置50は、複数の電池パック121A~121Dが着脱可能に
設けられ、走行用電動駆動装置11に電力を供給する電池ユニット12と、複数の電池パ
ック121A~121Dと走行用電動駆動装置11との間に設けられ、複数の電池パック
121A~121Dの少なくとも一つを走行用電動駆動装置11に接続する切替器14と
、走行用電動駆動装置11に接続されている電池パック121の電池残量が所定閾値以下
になると、少なくとも他の一つの電池パック121を走行用電動駆動装置11に接続する
ように切替器14を制御する統合BMS(制御部)13とを備える。
このような電源装置50は、複数の電池パック121A~121Dを順番にインバータ
112に接続して電動走行駆動を行うバスなどの電動車両に組み込むことができる。
【0057】
(5)上記(4)の電源装置50は、複数の電池パック121A~121Dを筐体125
の内部で拘束部材126により拘束する使用状態と、拘束部材による拘束を解いた交換状
態との2つの状態とする着脱機構を有する。
複数の電池パック121A~121Dは、着脱機構により着脱する作業が容易である。
(6)上記(5)の電源装置50は、複数の電池パック121A~121Dの電池パック
SOCを取得し、それら複数の電池パック121A~121DのパックSOCに基づいて
電池ユニット全体としてのユニットSOCを演算する統合BMS13を有する。複数の電
池パックのパックSOCと電池ユニット全体としてのユニットSOCとは外部に出力され
る。
(7)上記(6)の電源装置は、電池ユニット12と、統合BMS13と、切替器14と
を一体に組み立て、モジュール化することが好ましい。
このような電源装置50は、複数の電池パック121A~121Dを順番にインバータ
112に接続して電動走行駆動を行うバスなどの電動車両に組み込む際に、モジュールと
して組み込むことができる。
【0058】
(8)実施の形態の電池交換プログラムは、複数の電池パック121A~121Dを個別
に着脱するように構成したバス10の電池ユニット12の電池交換プログラムであり、運
行計画情報テーブル221に基づいて運行しているバス10から電池ユニット12のSO
C(電池容量に関する状態情報でありパックSOCとユニットSOCを含む)を取得する
ことと、バス10の運行計画情報テーブル221に基づき必要な電池容量を算出すること
と、パックSOCとユニットSOCに基づく電池残量と必要な電池容量とに基づいて、不
足する電池容量を補うための代替電池パックと交換対象の電池パックを示す電池パック交
換指示情報を生成することを含む処理を管理センター20のサーバ(コンピュータ)21
に実行させる。
複数の電池パック121A~121Dを順番にインバータ112に接続して電動走行駆
動を行うバスなどの電動車両に組み込んだ電池交換システムを構築する際、この電池交換
プログラムを、バスなどを運行する会社の管理下にあるサーバ21に実装すればよく、バ
スなどの電動車両に実装する場合に比べて、初期の投資コストが低減できる。また、バス
は、電池パック121A~121Dの電池ユニット12のSOCとしての状態情報を送信
する通信機器を実装するだけよく、コストを抑制できる。
【0059】
(9)上記(8)の電池電池交換プログラムは、サーバ21が実行する処理としてさらに
、SOC(電池容量に関する状態情報でありパックSOCとユニットSOCとを含む)と
必要な電池容量とに基づいて、不足する電池容量を補うための代替電池パックの仕様を演
算することを含み、電池パック交換指示情報には、代替電池パックが必要とする最小電池
残量が示されている
【0060】
本発明の電池交換システムは次のように変形して実施することもできる。
(変形例1)
電池容量、電池残量などの電池状態情報をSOCとして説明したが、電池パックの電池
容量を示す物理量であれば、SOCに限定されない。
(変形例2)
電圧データ、電流データ、および温度データに基づいて電池パックの電池状態情報を算
出する方法は、既に公知の如何なる方法をも採ることができる。例えば、電池パックの内
部抵抗は温度データおよび電圧データから算出してもよく、電池パックのSOC推定値は
電流データと内部抵抗を掛け算した値を電圧データへ加減算するなどして算出してもよい
。また、いわゆる電流を積算するクローンカウント手法で算出してもよい。
さらに、バス10の電池パックSOCを管理センター20のサーバに直接送信し、サー
バ21で電池ユニット12のユニットSOCを演算してもよい。
【0061】
(変形例3)
電池交換指示情報は、管理センター20の管理サーバ21で演算処理して生成したが、
電池交換指示情報を生成する電池交換プログラムを電動バス10の車両制御装置15など
に実装して演算してもよい。この場合、電池交換指示情報は管理センター20に送信せず
、直接、車両基地センター30のサーバ31に送信してもよい。
電池交換プログラムは、電動バス10と通信を行うサーバであれば、管理センター20
のサーバ21ではなく、車両基地センター30のサーバ31に実装しても良い。上記電池
交換プログラムを実行する処理装置は、図5および図6に示すような、運行計画情報テー
ブル221と電池交換管理テーブル222を自身に格納するか、管理センター20のデー
タベース22から取得してプログラムを実行する。
(変形例4)
4つの電池パック121A~121Dにより電池ユニット12を構成したが、5以上の
電池パックで構成してもよい。
【0062】
(変形例5)
一つの電池パック121をインバータ112に接続してモータ111を駆動し、その電
池パック121の電池残量が所定閾値以下になるとその電池パック121を切り離し、次
の一つの電池パック121をインバータ112に接続してモータ111を駆動するように
した。しかし、直列または並列に接続した2以上の電池パック121を一つの組電池パッ
クとみなし、2以上の組電池パックで電池ユニット12を構成してもよい。この場合、組
電池パックの電池残量が所定閾値以下になると、次の組電池パックに切り替えるように構
成する。
また、SOCが所定閾値以下になった電池パックの接続は維持したまま、新しい次の電
池パックを接続するようにしてもよい。この場合、所定閾値以下になった電池パックへの
電流流入を抑制する高抵抗を介在させることが好ましい。
【0063】
(変形例6)
図8(b)の説明では、路線「大01」の次の路線「小03」を運行するに必要な電池
容量以上となるように満充電の代替電池パックを準備するようにした。しかし、満充電で
はなく不足する電池容量に応じて必要最小限に充電された代替電池パックを準備するよう
にしてもよい。
(変形例7)
路線バス10が二つの路線を連続して運行することを一例として説明したが、3以上の
路線を運行する路線バスの電池交換システムとして本発明を実施しても良い。この場合、
車両基地センター30が2以上であってもよい。
【0064】
(変形例8)
路線バス10を一例として電池交換システムを説明したが、あらかじめ運行計画が定ま
っているバスを含む電動車両を運行する場合にも、本発明を適用できる。すなわち、本発
明は路線バスの電池交換システムに限定されない。
たとえば、不定期に運行される観光バスなど、出発地点から終着地点までの距離が長く
、フル充電した電動車両の航続距離が不足する場合にも本発明を適用できる。すなわち、
途中の経路地点に電池充電交換所を設定し、観光バスがその電池充電交換所に到着する前
に、推定電池残量を演算し、電池充電交換所から終着地点までに必要な電池容量を補う例
にも本発明を適用できる。
【0065】
(変形例9)
通信装置17が各種情報を管理センター20に送信するタイミングは、一例として停留
所を通過する時点としたが、バス10が所定距離走行するごとに送信するように設定して
も良い。あるいは、終点の停留所を通過する時点でも良い。車両基地センター30に所定
距離接近したときに送信するようにしても良い。所定時刻ごととしてもよい。
【0066】
(変形例10)
上記実施の形態では、車両基地センター30に帰車したバス10の電池残量を、終点駅
で得たSOC情報と、終点駅と車両基地センター30との間で消費する予想消費量とに基
づいて推定演算した。しかし、終点駅が車両基地センター30である場合、あるいは、終
点駅から車両基地センター30までの距離が短い場合、車両基地センター30での電池交
換作業時間が確保できない恐れがある。
このようなことが想定されるときは、終点駅の手前のいずれかの停留所を通過する際の
電池残量から、その停留所から車両基地センター30までの予想消費量の合計値を差し引
いたSOCを車両基地センター30到着時の推定SOCとして演算するのが好ましい。
【0067】
本発明は上記実施の形態の内容に限定されるものではない。本発明の技術的思想の範囲
内で考えられるその他の態様も本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0068】
10…バス 11…走行駆動装置 12…電池ユニット
13…統合バッテリマネジメントシステム 14…切替器
15…車両制御装置 16…位置検出装置 17…通信装置
20…管理センター 21…サーバ
21A…SOC取得部 21B…電池容量算出部
21C…電池交換指示情報生成部 22…データベース
23…通信インターフェース 30…車両基地センター
31…サーバ 32…表示装置 33…通信インターフェース
111…モータ 112…インバータ
113…モータコントローラ
121,121A~121D…電池パック
122…バッテリマネジメントシステム 221…運行計画情報テーブル
222…電池交換管理テーブル
図1
図2
図3
図4
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図7
図8
図9
図10