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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062288
(43)【公開日】2022-04-20
(54)【発明の名称】電池モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/6555 20140101AFI20220413BHJP
   H01M 50/20 20210101ALI20220413BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220413BHJP
   H01M 10/617 20140101ALI20220413BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20220413BHJP
   H01M 10/647 20140101ALI20220413BHJP
【FI】
H01M10/6555
H01M2/10 S
H01M10/613
H01M10/617
H01M10/625
H01M10/647
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2019034108
(22)【出願日】2019-02-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001889
【氏名又は名称】三洋電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】今井 謙一
(72)【発明者】
【氏名】百田 貴大
【テーマコード(参考)】
5H031
5H040
【Fターム(参考)】
5H031AA09
5H031CC01
5H031EE04
5H031KK01
5H040AA28
5H040AA37
5H040AS04
5H040AT02
5H040AT06
5H040AY10
5H040CC20
5H040CC30
5H040CC34
5H040JJ06
5H040NN03
(57)【要約】
【課題】複数の電池間における温度分布のばらつきを低減しながら過熱の連鎖を抑制する。
【解決手段】電池モジュール1は、積層された複数の電池14と、隣接する2つの電池14間に配置され、当該2つの電池14間を電気的に絶縁するセパレータ16であって、熱伝導抑制部72および熱伝導促進部74を有するセパレータ16と、複数の電池14に熱的に接続される冷却部6と、を備える。熱伝導抑制部72は、熱伝導促進部74よりも熱伝導性が低く、隣接する2つの電池14間の熱伝導を抑制する。熱伝導促進部74は、冷却部6に当接し、隣接する2つの電池14間の熱伝導を促進するとともに電池14の熱を冷却部6に伝導する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された複数の電池と、
隣接する2つの電池間に配置され、当該2つの電池間を電気的に絶縁するセパレータであって、熱伝導抑制部および熱伝導促進部を有するセパレータと、
前記複数の電池に熱的に接続される冷却部と、を備え、
前記熱伝導抑制部は、前記熱伝導促進部よりも熱伝導性が低く、隣接する2つの電池間の熱伝導を抑制し、
前記熱伝導促進部は、前記冷却部に当接し、隣接する2つの前記電池間の熱伝導を促進するとともに前記電池の熱を前記冷却部に伝導することを特徴とする電池モジュール。
【請求項2】
前記熱伝導促進部は、隣接する2つの前記電池間に延在する第1部分と、前記第1部分から連続して2つの前記電池のうち一方の電池と前記冷却部との間に延在する第2部分と、を有する請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記熱伝導促進部は、前記熱伝導抑制部に嵌入する突出部を有する請求項1または2に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記複数の電池はそれぞれ、前記冷却部と対向する第1面と、前記第1面とは異なる第2面と、を有し、
前記電池モジュールは、電池の積層方向に延びる拘束部材であって、各電池の前記第2面と対向するように配置されて前記複数の電池を前記積層方向に挟み込む拘束部材と、
前記拘束部材と各電池の前記第2面との間に配置されて、各電池の熱を前記拘束部材に伝導する熱伝導層と、
を備える請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記電池の前記第2面から前記拘束部材への伝熱量は、前記電池の前記第1面から前記冷却部への伝熱量よりも小さい請求項4に記載の電池モジュール。
【請求項6】
前記拘束部材は、前記冷却部に熱的に接続される請求項4または5に記載の電池モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば車両用等の、高い出力電圧が要求される電源として、複数個の電池が電気的に接続された電池モジュールが知られている。このような電池モジュールに関して、特許文献1には、複数の電池が積層された電池積層体と、隣り合う電池の間に配置されたセパレータと、電池積層体の両端に配置された金属製のエンドプレートと、電池積層体の両端に位置する電池とエンドプレートとの間に配置されたエンドセパレータと、各電池に伝熱状態に連結された冷却プレートと、を備えた電池モジュールが開示されている。
【0003】
この電池モジュールでは、エンドプレートとエンドセパレータとの接合面に空隙を設けて、エンドプレートとエンドセパレータとの接触面積を低減していた。これにより、電池積層体の両端面に位置する電池が伝熱性に優れたエンドプレートによって他の電池よりも冷却されることを阻止して、複数の電池の温度分布のばらつきを低減していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-111493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電池モジュールでは、ある電池の温度が過度に上昇し、その熱が隣接する電池にも伝わってこの隣接する電池の温度も過度に上昇するという、過熱の連鎖が生じるおそれがある。特に、近年は電池モジュールのさらなる高容量化が求められており、この要求を満たすために電池の高容量化が進んでいる。電池が高容量化すると電池の温度上昇が大きくなる傾向にあるため、過熱の連鎖がより起こりやすくなる。
【0006】
過熱の連鎖を抑制する方法としては、例えば各電池の間に断熱材を挟んで、隣り合う電池間での熱の移動を抑制することが考えられる。しかしながら、隣り合う電池間での熱の移動を抑制すると、電池間に温度分布のばらつきが生じやすくなる。複数の電池の寿命を揃え、電池モジュール全体の寿命を延ばす観点からは、電池間の温度分布のばらつきは回避することが望まれる。
【0007】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の電池間における温度分布のばらつきを低減しながら過熱の連鎖を抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のある態様は、電池モジュールである。この電池モジュールは、積層された複数の電池と、隣接する2つの電池間に配置され、当該2つの電池間を電気的に絶縁するセパレータであって、熱伝導抑制部および熱伝導促進部を有するセパレータと、複数の電池に熱的に接続される冷却部と、を備える。熱伝導抑制部は、熱伝導促進部よりも熱伝導性が低く、隣接する2つの電池間の熱伝導を抑制し、熱伝導促進部は、冷却部に当接し、隣接する2つの電池間の熱伝導を促進するとともに電池の熱を冷却部に伝導する。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、複数の電池間における温度分布のばらつきを低減しながら過熱の連鎖を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態1に係る電池モジュールの斜視図である。
図2】電池モジュールの分解斜視図である。
図3】電池モジュールの一部を模式的に示す斜視図である。
図4】電池モジュールの一部を模式的に示す断面図である。
図5】電池モジュールの一部を模式的に示す平面図である。
図6】電池モジュールの一部を模式的に示す断面図である。
図7】実施の形態2に係る電池モジュールの一部を模式的に示す断面図である。
図8】実施の形態3に係る電池モジュールの一部を模式的に示す斜視図である。
図9】変形例1に係る電池モジュールの一部を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図に示す各部の縮尺や形状は、説明を容易にするために便宜的に設定されており、特に言及がない限り限定的に解釈されるものではない。また、本明細書または請求項中に「第1」、「第2」等の用語が用いられる場合には、特に言及がない限りこの用語はいかなる順序や重要度を表すものでもなく、ある構成と他の構成とを区別するためのものである。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0013】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る電池モジュールの斜視図である。図2は、電池モジュールの分解斜視図である。電池モジュール1は、電池積層体2と、一対のエンドプレート4と、冷却部6と、熱伝導層10と、拘束部材12と、を備える。
【0014】
電池積層体2は、複数の電池14と、セパレータ16と、を有する。各電池14は、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル-水素電池、ニッケル-カドミウム電池等の充電可能な二次電池である。各電池14は、いわゆる角形電池であり、扁平な直方体形状の外装缶18を有する。外装缶18の一面には図示しない略長方形状の開口が設けられ、この開口を介して外装缶18に電極体や電解液等が収容される。外装缶18の開口には、開口を塞ぐ封口板20が設けられる。
【0015】
封口板20には、長手方向の一端寄りに正極の出力端子22が配置され、他端寄りに負極の出力端子22が配置される。一対の出力端子22はそれぞれ、電極体を構成する正極板、負極板と電気的に接続される。以下では適宜、正極の出力端子22を正極端子22aと称し、負極の出力端子22を負極端子22bと称する。また、出力端子22の極性を区別する必要がない場合、正極端子22aと負極端子22bとをまとめて出力端子22と称する。
【0016】
外装缶18、封口板20および出力端子22は導電体であり、例えば金属製である。封口板20と外装缶18の開口とは、例えばレーザー溶接により接合される。各出力端子22は、封口板20に形成された貫通孔(図示せず)に挿通される。各出力端子22と各貫通孔との間には、絶縁性のシール部材(図示せず)が介在する。
【0017】
本実施の形態の説明では、便宜上、封口板20を電池14の上面、封口板20と対向する外装缶18の底面を電池14の下面とする。また、電池14は、上面および下面をつなぐ2つの主表面を有する。この主表面は、電池14が有する6つの面のうち面積の最も大きい面である。また、主表面は、上面および下面の長辺と接続される長側面である。上面、下面および2つの主表面を除いた残り2つの面は、電池14の側面とする。この側面は、上面および下面の短辺と接続される一対の短側面である。
【0018】
また、便宜上、電池積層体2において電池14の上面側の面を電池積層体2の上面とし、電池14の下面側の面を電池積層体2の下面とし、電池14の側面側の面を電池積層体2の側面とする。これらの方向および位置は、便宜上規定したものである。したがって、例えば、本発明において上面と規定された部分は、下面と規定された部分よりも必ず上方に位置することを意味するものではない。
【0019】
封口板20には、一対の出力端子22の間に弁部24が設けられる。弁部24は、安全弁とも呼ばれ、電池14の内部のガスを放出するための機構である。弁部24は、外装缶18の内圧が所定値以上に上昇した際に開弁して、内部のガスを放出できるように構成される。弁部24は、例えば、封口板20の一部に設けられる、他部よりも厚さが薄い薄肉部と、この薄肉部の表面に形成される線状の溝とで構成される。この構成では、外装缶18の内圧が上昇すると、溝を起点に薄肉部が裂けることで開弁される。各電池14の弁部24は、後述する排気ダクト38に接続され、電池内部のガスは弁部24から排気ダクト38に排出される。
【0020】
また、各電池14は、絶縁フィルム26を有する。絶縁フィルム26は、例えば筒状のシュリンクチューブであり、外装缶18を内部に通した後に加熱される。これにより、絶縁フィルム26は収縮し、外装缶18の2つの主表面、2つの側面および底面を被覆する。絶縁フィルム26により、隣り合う電池14間、あるいは電池14とエンドプレート4や拘束部材12との間の短絡を抑制することができる。
【0021】
複数の電池14は、隣り合う電池14の主表面同士が対向するようにして所定の間隔で積層される。なお、「積層」は、任意の1方向に複数の部材を並べることを意味する。したがって、電池14の積層には、複数の電池14を水平に並べることも含まれる。本実施の形態では、電池14は水平に積層されている。したがって、電池14の積層方向Xは、水平に延びる方向である。以下では適宜、水平で且つ積層方向Xに垂直な方向を水平方向Yとし、積層方向Xおよび水平方向Yに対し垂直な方向を鉛直方向Zとする。
【0022】
また、各電池14は、出力端子22が同じ方向を向くように配置される。本実施の形態の各電池14は、出力端子22が鉛直方向上方を向くように配置される。この状態で、各電池14における一対の出力端子22は水平方向Yに並ぶ。典型的には、隣接する電池14を直列に接続する場合、一方の電池14の正極端子22aと他方の電池14の負極端子22bとが隣り合うように積層される。また、隣接する電池14を並列に接続する場合、一方の電池14の正極端子22aと他方の電池14の正極端子22aとが隣り合うように積層される。
【0023】
セパレータ16は、絶縁スペーサとも呼ばれ、例えば絶縁性を有するシートからなる。セパレータ16は、隣接する2つの電池14間に配置され、当該2つの電池14間を電気的に絶縁する。セパレータ16の構造については後に詳細に説明する。
【0024】
電池積層体2は、一対のエンドプレート4で挟まれる。一対のエンドプレート4は、積層方向Xにおける電池積層体2の両端に配置される。一対のエンドプレート4は、積層方向Xにおける両端に位置する電池14と、外端セパレータ5を介して隣り合う。外端セパレータ5は、例えばポリプロピレン(PP)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ノリル(登録商標)樹脂(変性PPE)等の熱可塑性樹脂で構成される絶縁性の樹脂シートである。各エンドプレート4は、鉄、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属で構成される金属板である。エンドプレート4と電池14との間に外端セパレータ5が介在することで、両者が絶縁される。
【0025】
各エンドプレート4は、水平方向Yを向く2つの面に締結孔4aを有する。本実施の形態では、3つの締結孔4aが鉛直方向Zに所定の間隔をあけて配置されている。締結孔4aが設けられる面は、拘束部材12の後述する平面部54と対向する。
【0026】
電池積層体2の上面には、バスバープレート28が載置される。バスバープレート28は、複数の電池14の上面を覆う板状の部材である。バスバープレート28は、各電池14の弁部24に対応する位置に、弁部24を露出させる複数の開口部32を有する。また、バスバープレート28は、開口部32の上方を覆うダクト天板34と、開口部32の側方を囲う側壁36と、を有する。ダクト天板34が側壁36の上端に固定されることで、バスバープレート28に排気ダクト38が形成される。各弁部24は、開口部32を介して排気ダクト38に連通される。
【0027】
また、バスバープレート28は、各電池14の出力端子22に対応する位置に、出力端子22を露出させる開口部40を有する。各開口部40には、バスバー42が載置される。複数のバスバー42は、バスバープレート28によって支持される。各開口部40に載置されたバスバー42によって、隣り合う電池14の正極端子22aと負極端子22bとが電気的に接続される。
【0028】
バスバー42は、銅やアルミニウム等の金属で構成される略帯状の部材である。バスバー42は、一方の端部が一方の電池14の正極端子22aに接続され、他方の端部が他方の電池14の負極端子22bに接続される。なお、バスバー42は、隣接する複数個の電池14における同極性の出力端子22どうしを並列接続して電池ブロックを形成し、さらに電池ブロックどうしを直列接続してもよい。
【0029】
積層方向Xにおいて両端に位置する電池14の出力端子22に接続されるバスバー42は、外部接続端子44を有する。外部接続端子44は、外部負荷(図示せず)に接続される。また、バスバープレート28には、電圧検出線46が載置される。電圧検出線46は、複数の電池14に電気的に接続されて各電池14の電圧を検出する。電圧検出線46は、複数の導線(図示せず)を有する。各導線は、一端が各バスバー42に接続され、他端がコネクタ48に接続される。コネクタ48は、外部の電池ECU(図示せず)等に接続される。電池ECUは、各電池14の電圧等の検知、各電池14の充放電等を制御する。
【0030】
冷却部6は、複数の電池14に熱的に接続されて、つまり各電池14に熱交換可能に接続されて、各電池14を冷却する機構である。本実施の形態の冷却部6は、冷却プレート6aと介在層6bとが積層された構造を有する。冷却プレート6aおよび介在層6bは、積層方向Xおよび水平方向Yに延在する平板状であり、鉛直方向Zに積層されている。例えば冷却プレート6aは、アルミニウム等の熱伝導性の高い金属材料で構成される。また、例えば介在層6bは、アクリルゴムシートやシリコーンゴムシート等の良好な熱伝導性および絶縁性を有する公知の樹脂シートで構成される。介在層6bは、良好な熱伝導性および絶縁性を有する公知の接着剤やグリス等で構成されてもよい。
【0031】
介在層6bは絶縁性を有していなくてもよい。例えば、外装缶18が絶縁フィルム26等で十分に絶縁されている場合には、介在層6bとして絶縁性を有しないシート、接着剤、グリス等を採用することができる。なお、外装缶18を絶縁フィルム26等で絶縁するとともに、介在層6bとして良好な熱伝導性および絶縁性を有するシート等を用いる場合には、より確実な絶縁を実現することができる。
【0032】
冷却部6は電池積層体2の下面側に配置され、冷却部6の主表面に電池積層体2が載置される。したがって、電池積層体2と冷却部6とは鉛直方向Zに並ぶ。介在層6bは、電池積層体2と冷却プレート6aとの間に介在する。つまり、冷却プレート6aは、介在層6bを介して電池積層体2に熱的に接続される。介在層6bを電池積層体2と冷却プレート6aとの間に配置することで、各電池14と冷却プレート6aとの熱的な接続をより確実に得ることができる。このため、各電池14の冷却効率を高めることができるとともに、各電池14をより均一に冷却することができる。また、介在層6bが絶縁性を有することで、電池積層体2と冷却プレート6aとが電気的に接続されてしまうことを回避することができる。介在層6bを接着剤や樹脂シートで構成した場合は、さらに、介在層6bによって、XY平面の延在方向における電池積層体2と冷却プレート6aとのずれを抑制するという効果も期待できる。
【0033】
冷却プレート6aは、後述する吸熱部76(図3参照)に熱的に接続される。例えば吸熱部76は、水やエチレングリコール等の冷媒が流れる流路(図示せず)を内部に有する。この流路は、電池モジュール1の外部に熱的に接続されている。吸熱部76は、冷却プレート6aから熱を吸収し、冷媒を介して電池モジュール1の外部に移動させる。これにより、各電池14の冷却効率をより高めることができる。
【0034】
熱伝導層10は、拘束部材12と電池積層体2との間に配置されて、各電池14の熱を拘束部材12に伝導する。また熱伝導層10は、絶縁性を有し、拘束部材12と電池積層体2とを絶縁するサイドセパレータとしても機能する。複数の電池14はそれぞれ、冷却部6と対向する第1面14aと、第1面14aとは異なる第2面14bと、を有する。そして、熱伝導層10は、拘束部材12と各電池14の第2面14bとの間に配置される。本実施の形態では、冷却部6が各電池14の下面と対向し、拘束部材12が各電池14の側面と対向する。このため、第1面14aは電池14の下面であり、第2面14bは電池14の側面である。したがって、第2面14bは第1面14aから連続する面である。
【0035】
本実施の形態では、水平方向Yに一対の熱伝導層10が配列される。各熱伝導層10は、電池14の積層方向Xに長い平板状である。一対の熱伝導層10の間には、電池積層体2が配置される。熱伝導層10は、介在層6bと同様に樹脂シートや、接着剤、グリス等で構成することができる。
【0036】
拘束部材12は、バインドバーとも呼ばれ、電池14の積層方向Xに延びる長尺状の部材である。拘束部材12は、各電池14の第2面14b(側面)と対向するように配置される。本実施の形態では、水平方向Yに一対の拘束部材12が配列される。各拘束部材12は金属製である。拘束部材12を構成する金属としては、鉄やステンレス鋼等が例示される。一対の拘束部材12の間には、電池積層体2、一対のエンドプレート4、冷却部6および一対の熱伝導層10が配置される。
【0037】
本実施の形態の拘束部材12は、平面部54と、一対の腕部56と、を有する。平面部54は矩形状であり、電池積層体2の側面に沿って積層方向Xに延びる。一対の腕部56は、鉛直方向Zにおける平面部54の両側の端部領域から電池積層体2側に突出する。つまり、一方の腕部56は、平面部54の上辺から電池積層体2側に突出し、他方の腕部56は、平面部54の下辺から電池積層体2側に突出する。したがって、一対の腕部56は、電池積層体2および冷却部6の配列方向で互いに対向する。一対の腕部56の間には、電池積層体2、冷却部6および熱伝導層10が配置される。
【0038】
平面部54における各エンドプレート4と対向する領域には、コンタクトプレート68が溶接等により固定される。コンタクトプレート68は、鉛直方向Zに長い部材である。コンタクトプレート68には、エンドプレート4の締結孔4aに対応する位置に、コンタクトプレート68を水平方向Yに貫通する貫通孔70が設けられる。また、平面部54は、コンタクトプレート68の貫通孔70に対応する位置に、平面部54を水平方向Yに貫通する貫通孔58を有する。
【0039】
各拘束部材12の平面部54に一対のエンドプレート4が係合することで、複数の電池14が積層方向Xに挟み込まれる。具体的には、複数の電池14と複数のセパレータ16とが交互に配列されて電池積層体2が形成され、電池積層体2が外端セパレータ5を介して一対のエンドプレート4で積層方向Xに挟まれる。また、電池積層体2の下面に冷却部6が配置される。この状態で、電池積層体2が一対の熱伝導層10で水平方向Yに挟まれる。さらに、一対の熱伝導層10の外側から、一対の拘束部材12が全体を水平方向Yに挟み込む。
【0040】
一対のエンドプレート4と一対の拘束部材12とは、締結孔4a、貫通孔70および貫通孔58が重なり合うように、互いに位置合わせされる。そして、ねじ等の締結部材59が貫通孔58および貫通孔70に挿通され、締結孔4aに螺合される。これにより、一対のエンドプレート4と一対の拘束部材12とが固定される。一対のエンドプレート4と一対の拘束部材12とが係合されることで、複数の電池14は、積層方向Xにおいて締め付けられて拘束される。これにより、各電池14は、積層方向Xにおいて位置決めされる。
【0041】
また、拘束部材12は、複数の電池14を積層方向Xに挟み込むとともに、電池積層体2および冷却部6をこれらの配列方向に挟み込む。具体的には、拘束部材12は、電池14の積層方向Xにおける平面部54の両端部が一対のエンドプレート4と係合することで、複数の電池14を積層方向Xに挟み込む。また、拘束部材12は、一対の腕部56で電池積層体2および冷却部6を鉛直方向Zに挟み込む。つまり、拘束部材12は、複数の電池14を締結する機能と、電池積層体2と冷却部6とを締結する機能とを兼ね備えている。したがって、電池積層体2と冷却部6とは、従来の構造とは異なり、ねじで非締結である。
【0042】
一対の腕部56によって電池積層体2および冷却部6が鉛直方向Zに挟み込まれた状態で、介在層6bは、電池積層体2および冷却プレート6aに押圧されて、弾性変形または塑性変形する。これにより、電池積層体2と冷却プレート6aとの熱的な接続をより確実に得ることができる。また、電池積層体2全体の冷却の均一化を図ることができる。さらに、電池積層体2と冷却プレート6aとのXY平面方向のずれをより一層抑制することができる。
【0043】
一例として、これらの組み付けが完了した後に、電池積層体2にバスバープレート28が載置される。そして、各電池14の出力端子22にバスバー42が取り付けられて、複数の電池14の出力端子22どうしが電気的に接続される。例えばバスバー42は、溶接により出力端子22に固定される。
【0044】
バスバープレート28の上面には、トップカバー60が積層される。トップカバー60により、電池14の出力端子22や弁部24、バスバー42等への結露水や塵埃等の接触が抑制される。トップカバー60は、例えば絶縁性を有する樹脂からなる。トップカバー60は、鉛直方向Zで外部接続端子44と重なる位置に絶縁カバー部62を有する。トップカバー60は、例えばスナップフィットによりバスバープレート28に固定される。トップカバー60がバスバープレート28に載置された状態で、外部接続端子44が絶縁カバー部62で覆われる。
【0045】
図3は、電池モジュール1の一部を模式的に示す斜視図である。図4は、電池モジュール1の一部を模式的に示す断面図である。図4では、電池14の内部構造の図示を省略している。
【0046】
セパレータ16は、熱伝導抑制部72および熱伝導促進部74を有する。熱伝導抑制部72および熱伝導促進部74はともに絶縁性を有し、隣り合う2つの電池14の間に介在する。熱伝導抑制部72および熱伝導促進部74はともに、隣り合う2つの電池14の主表面に当接する。
【0047】
熱伝導抑制部72は、熱伝導促進部74よりも熱伝導性が低く、隣接する2つの電池14間の熱伝導を抑制する。一方、熱伝導促進部74は、熱伝導抑制部72よりも熱伝導性が高く、隣接する2つの電池14間の熱伝導を促進する。つまり、熱伝導抑制部72を介した2つの電池14間の伝熱量(単位時間、単位面積当たりの通過熱量)は、熱伝導促進部74を介した当該伝熱量よりも小さい。また、熱伝導促進部74は、冷却部6に当接して、電池14の熱を冷却部6に伝導する。
【0048】
熱伝導抑制部72は、シート状であり、一例として断熱材およびラミネートフィルムで構成される。断熱材は、シート状であり、不織布等からなる繊維シートの繊維間に、シリカキセロゲル等の多孔質材が担持された構造を有する。シリカキセロゲルは、空気分子の運動を規制するナノサイズの空隙構造を有し、熱伝導率が低い。断熱材の熱伝導率は、約0.018~0.024W/m・Kであり、空気の熱伝導率よりも低い。このため、熱伝導抑制部72を設けることで、隣接する2つの電池14間に断熱層として空気の層を備える場合よりも、当該電池14間の熱伝導をより抑制することができる。断熱材は、特に狭スペースで使用される断熱材として有用である。
【0049】
また、シリカキセロゲルは外部からの押圧に対してその構造を安定的に維持することができる。このため、拘束部材12による積層方向Xの締め付けがあっても、断熱材の断熱性能を安定的に維持することができる。したがって、電池モジュール1は、熱伝導抑制部72を備えることで、電池14間に断熱層として空気の層を備える場合よりも、電池14間の熱伝導をより安定的に抑制することができる。さらに、断熱材は空気よりも熱伝導率が低いため、空気の層に比べてより薄い層厚で同程度の断熱効果を得ることができる。よって、電池モジュール1の大型化を抑制することができる。
【0050】
ラミネートフィルムは、断熱材の全体を包んで保護するための部材である。ラミネートフィルムにより、断熱材における多孔質材が繊維シートから脱落することを抑制することができる。ラミネートフィルムは、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)等からなる。
【0051】
また、熱伝導抑制部72は耐熱性が高い。より具体的には、断熱材の耐熱性が高い。さらに具体的には、繊維シートが融点の高い繊維を含むか、多孔質材が融点の高い物質からなるか、あるいはその両方である。例えば、断熱材は、融点が300℃以上である。具体的には、断熱材を構成する繊維シートおよび/または多孔質材の融点が300℃以上である。特に、繊維シートを構成する繊維の融点を300℃以上とすることが好ましい。これにより、断熱材が高温に曝された場合であっても、繊維シートが多孔質材を担持した状態を維持することができる。
【0052】
熱伝導抑制部72の耐熱性を高めることで、電池14が発熱しても熱伝導抑制部72を残存させることができる。このため、熱伝導抑制部72により電池14間の絶縁を維持することができる。また、隣り合う電池14間の熱伝導が抑制された状態を、より長期間維持することができる。
【0053】
熱伝導促進部74は、シート状であり、例えばポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレン(PE)、シリコーンゴム等の樹脂シートで構成される。熱伝導促進部74の熱伝導率は、熱伝導抑制部72および空気の熱伝導率よりも高い。また好ましくは、熱伝導促進部74の厚さは熱伝導抑制部72の厚さ以上である。これにより、熱伝導促進部74をより確実に電池14に当接させることができる。よって、隣り合う電池14間でより確実に熱を移動させることができる。熱伝導抑制部72と熱伝導促進部74とは、接着やインサート成形等により互いに固定される。
【0054】
本実施の形態のセパレータ16では、鉛直方向Zにおける上方の領域が熱伝導抑制部72で構成され、下方の領域が熱伝導促進部74で構成されている。つまり、熱伝導抑制部72と熱伝導促進部74とは、鉛直方向Zに配列される。したがって、各電池14における熱伝導抑制部72と接する上方の領域においては、隣接する電池14への熱の移動が抑制される。一方、各電池14における熱伝導促進部74と接する下方の領域においては、隣接する電池14への熱の移動が促進される。
【0055】
各電池14の第1面14a、すなわち下面は冷却部6の介在層6bに直に接している。このため、各電池14の大部分の熱は、それぞれの第1面14aから介在層6bに移動する。また、各電池14の一部の熱は、熱伝導促進部74を介して隣の電池14に移動し、移動した先の電池14の第1面14aから介在層6bに移動する。さらに、熱伝導促進部74は、介在層6bに直に接している。このため、各電池14の熱の一部は、熱伝導促進部74を介して隣の電池14に移動するだけでなく、熱伝導促進部74から介在層6bに移動する。介在層6bに移動した熱は冷却プレート6aに移動し、冷却プレート6aから吸熱部76に放散される。
【0056】
例えば図4に示すように、第2電池14Qと第3電池14Rとで挟まれた第1電池14Pが熱暴走したとする。この場合、第2電池14Qと第1電池14Pとの間に配置される熱伝導抑制部72によって、第1電池14Pから第2電池14Qへの熱の移動が妨げられる。同様に、第3電池14Rと第1電池14Pとの間に配置される熱伝導抑制部72によって、第1電池14Pから第3電池14Rへの熱の移動が妨げられる。
【0057】
一方、第2電池14Qと第1電池14Pとの間に配置される熱伝導促進部74によって、第1電池14Pから第2電池14Qへの熱の移動が促される。同様に、第3電池14Rと第1電池14Pとの間に配置される熱伝導促進部74によって、第1電池14Pから第3電池14Rへの熱の移動が促される。これにより、第1電池14Pの熱は、第1電池14Pの第1面14aから冷却部6に移動するとともに、熱伝導促進部74を介して両隣の第2電池14Qおよび第3電池14Rに移動する。そして、第2電池14Qおよび第3電池14Rの第1面14aから冷却部6に移動する。
【0058】
さらに、第2電池14Qに移動した熱の一部は、第2電池14Qに隣接する第4電池14Sに熱伝導促進部74を介して移動し、第4電池14Sの第1面14aからも冷却部6に移動する。同様に、第3電池14Rに移動した熱の一部は、第3電池14Rに隣接する第5電池14Tに熱伝導促進部74を介して移動し、第5電池14Tの第1面14aからも冷却部6に移動する。また、一部の熱は、隣接する電池14間を移動する過程で熱伝導促進部74から冷却部6に移動する。
【0059】
このように、各電池14の冷却部6側の領域に熱伝導促進部74を配置し、隣接する電池14への熱の移動を促進させることで、各電池14の温度差を小さくすることができる。また、各電池14の熱を自身の第1面14aからだけでなく、積層された他の電池14の第1面14aや、各電池14間の熱伝導促進部74から冷却部6に移動させることができる。このため、各電池14の冷却効率を向上させることができる。また、隣り合う2つの電池14間に熱伝導抑制部72を配置し、電池14間での熱の移動が許容される領域を制限している。これにより、いずれかの電池14の熱暴走に起因して他の電池14の温度が過度に上昇すること、つまり過熱の連鎖を抑制することができる。
【0060】
各セパレータ16における熱伝導抑制部72および熱伝導促進部74の大きさの比率、形状ならびに配置は、隣り合う電池14間の伝熱量等を考慮して、実験やシミュレーションの結果に基づいて適宜設定することができる。熱伝導抑制部72および熱伝導促進部74の大きさの比率は、言い換えれば積層方向Xからセパレータ16を見たときの熱伝導抑制部72および熱伝導促進部74の面積の比率である。なお、好ましくは、セパレータ16は熱伝導抑制部72および熱伝導促進部74を含めた全体が実質的に均一な厚みを有する。
【0061】
また、本実施の形態では、拘束部材12と各電池14の第2面14b、すなわち側面との間に配置される熱伝導層10によって、各電池14の熱が拘束部材12に移動する。図5は、電池モジュール1の一部を模式的に示す平面図である。図6は、電池モジュール1の一部を模式的に示す断面図である。図6では、電池14の内部構造の図示を省略している。
【0062】
図5に示すように、各電池14の熱は、熱伝導層10を介して拘束部材12に移動し、拘束部材12から電池モジュール1の外部に放熱される。これにより、電池14の冷却効率を向上させることができる。この際、各電池14の熱の一部は、拘束部材12を介して他の電池14に移動する。また、各電池14の熱の一部は、熱伝導層10を介しても他の電池14に移動し得る。これにより、各電池14の温度差を小さくすることができる。また、図6に示すように、拘束部材12に移動した熱は、熱伝導抑制部72および熱伝導促進部74が並ぶ方向、つまり鉛直方向Zに拘束部材12内を移動する。これにより、各電池14における鉛直方向Zでの温度差を小さくすることができる。
【0063】
さらに、拘束部材12は、冷却部6に熱的に接続される。本実施の形態では、拘束部材12の平面部54が冷却部6の側面に当接し、下側の腕部56が冷却プレート6aの下側の主表面に当接する。これにより、各電池14の熱を拘束部材12を介して冷却部6に移動させることができる。この結果、各電池14の冷却効率をより向上させることができる。なお、拘束部材12と冷却プレート6aとの間には絶縁シート(図示せず)が介在し、両者は電気的に絶縁される。
【0064】
また、各電池14の熱の一部は、熱伝導層10内を鉛直方向Zに移動し得る。このため、各電池14における鉛直方向Zでの温度差をより小さくすることができる。さらに、熱伝導層10は、冷却部6に熱的に接続される。本実施の形態では、熱伝導層10の下端が介在層6bに当接する。これにより、各電池14の熱を熱伝導層10を介して冷却部6に移動させることができる。この結果、各電池14の冷却効率をより向上させることができる。
【0065】
本実施の形態では、電池14の各第2面14bから拘束部材12への伝熱量は、電池14の第1面14aから冷却部6への伝熱量よりも小さい。より好ましくは、2つの第2面14bから拘束部材12への合計の伝熱量が第1面14aから冷却部6への伝熱量よりも小さい。例えば、第2面14bから拘束部材12への伝熱量が第1面14aから冷却部6への伝熱量よりも小さくなるように、熱伝導層10の熱伝導性や寸法が設定される。一例として、熱伝導層10は、介在層6bよりも熱伝導性の低い材料で構成される。冷却部6には吸熱部76が直に接続されている。このため、冷却部6は拘束部材12に比べて放熱効率が高い。よって、電池14の熱を拘束部材12よりも冷却部6により多く伝導させることで、過熱の連鎖をより確実に抑制することができる。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態に係る電池モジュール1は、積層された複数の電池14と、隣接する2つの電池14間に配置され、当該2つの電池14間を電気的に絶縁するセパレータ16であって、熱伝導抑制部72および熱伝導促進部74を有するセパレータ16と、複数の電池14に熱的に接続される冷却部6と、を備える。熱伝導抑制部72は、熱伝導促進部74よりも熱伝導性が低く、隣接する2つの電池14間の熱伝導を抑制する。熱伝導促進部74は、冷却部6に当接し、隣接する2つの電池14間の熱伝導を促進するとともに電池14の熱を冷却部6に伝導する。
【0067】
このように、熱伝導抑制部72と熱伝導促進部74とを組み合わせて、隣り合う電池14間の熱の移動を制御することで、複数の電池14間における温度分布のばらつきを低減しながら、背反となる過熱の連鎖を抑制することができる。また、熱伝導促進部74を冷却部6に当接させているため、各電池14の冷却効率を高めることができる。これにより、過熱の連鎖をより抑制することができる。
【0068】
また、例えば介在層6bの主表面に電池14の間隔に合わせて仕切り壁を設け、この仕切り壁を熱伝導促進部74として利用する場合、各電池14の膨張収縮に対して熱伝導促進部74の位置を追従させることは困難である。これに対し、各セパレータ16に熱伝導促進部74を設けることで、各電池14の膨張収縮に対して熱伝導促進部74の位置を良好に追従させることができる。
【0069】
また、複数の電池14はそれぞれ、冷却部6と対向する第1面14aと、第1面14aとは異なる第2面14bと、を有する。電池モジュール1は、電池14の積層方向Xに延びる拘束部材12であって、各電池14の第2面14bと対向するように配置されて複数の電池14を積層方向Xに挟み込む拘束部材12と、拘束部材12と各電池14の第2面14bとの間に配置されて、各電池14の熱を拘束部材12に伝導する熱伝導層と、を備える。これにより、複数の電池14の温度分布のばらつきをより低減することができる。また、各電池14の冷却効率を高めて、過熱の連鎖をより抑制することができる。
【0070】
また、本実施の形態の電池モジュール1では、電池14の第2面14bから拘束部材12への伝熱量は、電池14の第1面14aから冷却部6への伝熱量よりも小さい。これにより、拘束部材12を介して隣接する電池14間を移動する熱の量を抑えることができる。この結果、過熱の連鎖をより抑制することができる。また、拘束部材12は、冷却部6に熱的に接続される。これにより、各電池14の冷却効率をより向上させることができ、過熱の連鎖をより抑制することができる。
【0071】
(実施の形態2)
実施の形態2に係る電池モジュールは、熱伝導促進部74の形状を除き、実施の形態1と共通の構成を有する。以下、本実施の形態に係る電池モジュール1について実施の形態1と異なる構成を中心に説明し、共通する構成については簡単に説明するか、あるいは説明を省略する。図7は、実施の形態2に係る電池モジュールの一部を模式的に示す断面図である。図7では、電池14の内部構造の図示を省略している。
【0072】
電池モジュール1は、積層された複数の電池14と、隣接する2つの電池14間に配置され、当該2つの電池14間を電気的に絶縁するセパレータ16と、複数の電池14に熱的に接続される冷却部6と、を備える。セパレータ16は、熱伝導抑制部72および熱伝導促進部74を有する。
【0073】
本実施の形態の熱伝導促進部74は、第1部分78と、第2部分80と、を有する。第1部分78は、隣接する2つの電池14間に延在する。第2部分80は、第1部分78から連続して2つの電池14のうち一方の電池14と冷却部6との間に延在する。したがって、本実施の形態のセパレータ16および熱伝導促進部74は、水平方向Yから見てL字形状である。
【0074】
より具体的には、第1部分78は、YZ平面に対して平行に延在し、隣接する2つの電池14の主表面に当接する。また、第1部分78の上端は、熱伝導抑制部72の下端に接続される。第2部分80は、XY平面に対して平行に延在し、積層方向Xにおける一方の端部が第1部分78の下端に接続される。第2部分80の上側の主表面は第1面14aに当接し、第2部分80の下側の主表面は介在層6bに当接する。電池14の第1面14aは、実質的に全体が第2部分80で覆われる。積層方向Xにおける第2部分80の他方の端部は、隣に配置されたセパレータ16の第2部分80に突き当たる。
【0075】
本実施の形態によれば、熱伝導促進部74と冷却部6とが接触する状態をより確実に得ることができる。また、熱伝導促進部74と冷却部6との接触面積を増やすことができる。この結果、各電池14の冷却効率をより高めることができる。
【0076】
(実施の形態3)
実施の形態3に係る電池モジュールは、熱伝導促進部74の形状を除き、実施の形態1と共通の構成を有する。以下、本実施の形態に係る電池モジュール1について実施の形態1と異なる構成を中心に説明し、共通する構成については簡単に説明するか、あるいは説明を省略する。図8は、実施の形態3に係る電池モジュールの一部を模式的に示す斜視図である。
【0077】
電池モジュール1は、積層された複数の電池14と、隣接する2つの電池14間に配置され、当該2つの電池14間を電気的に絶縁するセパレータ16と、複数の電池14に熱的に接続される冷却部6と、を備える。セパレータ16は、熱伝導抑制部72および熱伝導促進部74を有する。
【0078】
本実施の形態の熱伝導促進部74は、熱伝導抑制部72に嵌入する突出部82を有する。セパレータ16を積層方向Xから見たとき、突出部82は、熱伝導抑制部72に嵌入している。突出部82は、熱伝導抑制部72と熱伝導促進部74との境界線から熱伝導抑制部72内に突出する。これにより、各電池14における熱伝導抑制部72と熱伝導促進部74とが並ぶ方向での温度差を小さくすることができる。また、本実施の形態の突出部82は、隣接する2つの電池14の主表面に当接する。
【0079】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明した。前述した実施の形態は、本発明を実施するにあたっての具体例を示したものにすぎない。実施の形態の内容は、本発明の技術的範囲を限定するものではなく、請求の範囲に規定された発明の思想を逸脱しない範囲において、構成要素の変更、追加、削除等の多くの設計変更が可能である。設計変更が加えられた新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形それぞれの効果をあわせもつ。前述の実施の形態では、このような設計変更が可能な内容に関して、「本実施の形態の」、「本実施の形態では」等の表記を付して強調しているが、そのような表記のない内容でも設計変更が許容される。各実施の形態に含まれる構成要素の任意の組み合わせも、本発明の態様として有効である。図面の断面に付したハッチングは、ハッチングを付した対象の材質を限定するものではない。
【0080】
(変形例1)
図9は、変形例1に係る電池モジュールの一部を模式的に示す平面図である。熱伝導層10は、複数の第1部材84と、第2部材86と、を有する。複数の第1部材84はそれぞれ、鉛直方向Zに長い帯状であり、積層方向Xに所定の間隔をあけて配列される。各第1部材84は、各電池14の第2面14bに当接する。第2部材86は、平板状であり、拘束部材12と各第1部材84との間に介在する。
【0081】
第1部材84および第2部材86は、少なくとも一方が絶縁性を有する。好ましくは、第1部材84および第2部材86の両方が絶縁性を有する。また好ましくは、各第1部材84は、第2部材86に比べて高い熱伝導性を有する。これにより、各電池14から拘束部材12への熱伝導を促進しながら、熱伝導層10内で積層方向Xに移動する熱の量を減らすことができる。これにより、過熱の連鎖をより抑制することができる。
【0082】
(その他)
電池モジュール1が備える電池14の数は特に限定されない。エンドプレート4と拘束部材12との固定構造は特に限定されず、周知の構造を採用することができる。典型的には、実施の形態に開示する構造以外の固定構造として、ボルトやリベットを用いた固定や、溶接、メカニカルクリンチ等が挙げられる。電池14は、円筒状等であってもよい。電池積層体2と冷却プレート6aとの間の熱伝導と摩擦力とが十分に確保できる場合には、介在層6bを省略し、PETやPCからなる絶縁シートを電池積層体2と冷却プレート6aとの間に介在させてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 電池モジュール、 6 冷却部、 10 熱伝導層、 12 拘束部材、 14 電池、 14a 第1面、 14b 第2面、 16 セパレータ、 72 熱伝導抑制部、 74 熱伝導促進部、 78 第1部分、 80 第2部分、 82 突出部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9