(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062311
(43)【公開日】2022-04-20
(54)【発明の名称】感歪抵抗体及びトルク検出器
(51)【国際特許分類】
G01L 3/10 20060101AFI20220413BHJP
【FI】
G01L3/10 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020170226
(22)【出願日】2020-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】591156799
【氏名又は名称】ユニパルス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】長尾 武奈
(72)【発明者】
【氏名】野崎 照彦
(72)【発明者】
【氏名】古畑 均
(57)【要約】
【課題】半田付け等の作業が容易な新たな感歪抵抗体、及び、当該感歪抵抗体を添着させて回転軸の剛性度合いを改善させた新たなトルク検出器を提供する。
【解決手段】2つの受感素子3A,3Bと、3つの端子部6a~6cとが、一段に並べて配設され、端子部6aと端子部6cとの間に受感素子3Aが配設され、端子部6bと端子部6cとの間に受感素子3Bが配設されている。そして、各端子部6a~6cの+Y方向側又は-Y方向側には、受感素子3A,3Bが配設されていない。当該感歪抵抗体1を使用することで、トルク検出器の回転軸に設ける起歪部の軸方向の長さを短くする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗体により形成された歪み検出用の折り返しパターンを有する2つの受感素子と、
前記各受感素子から配線によってそれぞれ引き出される複数の端子部と、を備え、
前記各受感素子と前記各端子部とが、同一面上に交互に併設される、
ことを特徴とする感歪抵抗体。
【請求項2】
前記2つの受感素子は、第1の受感素子及び第2の受感素子であり、
前記複数の端子部は、
前記第1の受感素子の一端側から引き出された第1の端子部と、
前記第2の受感素子の一端側から引き出された第2の端子部と、
前記第1の受感素子の他端側及び前記第2の受感素子の他端側から引き出された第3の端子部と、を備える、
ことを特徴する請求項1に記載の感歪抵抗体。
【請求項3】
前記第1の受感素子の折り返しパターンが伸びている方向と、前記第2の受感素子の折り返しパターンが伸びている方向とが、所定角度で交差している、ことを特徴とする請求項2に記載の感歪抵抗体。
【請求項4】
抵抗体により形成された歪み検出用の折り返しパターンを有する第1の受感素子と、
抵抗体により形成された歪み検出用の折り返しパターンを有する第2の受感素子と、
前記第1の受感素子の一端側から引き出された第1の端子部と、
前記第2の受感素子の一端側から引き出された第2の端子部と、
前記第1の受感素子の他端側及び前記第2の受感素子の他端側から引き出され、前記第1の受感素子及び前記第2の受感素子を接続する第3の端子部と、を備え、
前記第1の受感素子及び前記第2の受感素子、並びに、前記第1の端子部、前記第2の端子部及び前記第3の端子部は、一の方向に沿って、同一面上に並行して併設され、
前記第3の端子部が、並行して配設された前記第1の受感素子及び前記第2の受感素子の間に配設され、
前記第1の端子部は、前記第1の受感素子の前記第3の端子部が配置されていない側に配設され、
前記第2の端子部は、前記第2の受感素子の前記第3の端子部が配置されていない側に配設されている、
ことを特徴とする感歪抵抗体。
【請求項5】
モータ部の回転軸のねじりトルクを検出するトルク検出器であって、
前記回転軸に設けられた薄肉の弾性変形する起歪部と、
前記起歪部に添着される請求項1~4のいずれか一項に記載の感歪抵抗体と、を備える、
ことを特徴とするトルク検出器。
【請求項6】
前記各受感素子及び前記各端子部は、前記回転軸の軸方向と直交する方向に併設されている、ことを特徴とする請求項5に記載のトルク検出器。
【請求項7】
前記感歪抵抗体の数は、2以上であり、
前記感歪抵抗体のそれぞれは、前記起歪部に形成された異なる平面部分に添着される、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載のトルク検出器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾性変形する起歪部に添着される感歪抵抗体及び当該感歪抵抗体を備えるトルク検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、回転軸のトルクを検出する様々な技術が提案されている。こうした提案技術の一つとして、感歪抵抗体を用いて回転軸のねじれを直接的に測定するものがある。かかる技術では、回転軸に薄肉の起歪部を設け、当該起歪部に感歪抵抗体を添着する。そして、起歪体のねじれに伴って感歪抵抗体が変形したときの抵抗値を測定することで、回転軸のトルクを検出するようになっている。
【0003】
ここで、回転軸のトルクを検出するために起歪体に添着される感歪抵抗体の形状は、一方向回転の軸のねじれだけでなく、逆方向回転の軸のねじれについても精度良く検出するため、一般に、特許文献1の
図7に示されるような感歪抵抗体が用いられている(以下、「従来例」と呼ぶ)。かかる従来例の感歪抵抗体(ひずみゲージ)は、最大の感度方向が90度で交差する2つの受感素子(ひずみ検知部)と、4つの端子部とを備えている。当該2つの受感素子は、中心線方向を対称にして対向するように間隔なく並べられて配設される。また、各受感素子からはそれぞれ2つの端子部が引き出され、これらの端子部は、受感素子が並べれられている段とは別の段に並べられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来例の感歪抵抗体では、軸の中心線方向を対称にして、2つの受感素子と、複数の端子部とが2段に並べられ、中心線方向を縦方向とすると縦長の構造となっている。この結果、従来例の感歪抵抗体では、受感素子から引き出された端子部間の距離が狭くなる傾向がある。この結果、端子間の半田付けの作業に熟練した技術が必要な場合があった。また、従来例の感歪抵抗体では、感歪抵抗体の長さが中心線方向に長くなる傾向があるため、当該感歪抵抗体を添着させる起歪体の軸方向の長さも長くなる傾向にあった。このため、回転軸における起歪体の軸方向の長さが長くなることを抑制して、回転軸の剛性を高めたいという要請があった。
【0006】
また、感歪抵抗体の端子部の半田付けは、感歪抵抗体を回転軸の起歪体に添着させた後に行われる。端子間の距離が狭い感歪抵抗体を軸方向に長い起歪体に添着させてから半田付けを行うと、半田付けに際して熱が逃げやすく、この点からも半田付けの作業に手間がかかることも想定される。
【0007】
この結果、従来例の感歪抵抗体では、端子部間の半田付けが困難になるという課題と、感歪抵抗体を添着させる起歪体の軸方向の長さが長くなることを抑制して、回転軸の剛性を高めたいという課題があり、改善の余地があった。このため、こうした課題を改善することができる技術が待望されている。かかる要請に応えることが、本発明が解決すべき課題の一つとして挙げられる。
【0008】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、半田付け等の作業が容易な新たな感歪抵抗体、及び、当該感歪抵抗体を添着させて回転軸の剛性度合いを改善させた新たなトルク検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、第1の観点からすると、抵抗体により形成された歪み検出用の折り返しパターンを有する2つの受感素子と、前記各受感素子から配線によってそれぞれ引き出される複数の端子部と、を備え、前記各受感素子と前記各端子部とが、同一面上に交互に併設される、ことを特徴とする感歪抵抗体である。
【0010】
この感歪抵抗体では、各受感素子と複数の受感素子とが、同一面上に交互に併設されている。したがって、本発明の感歪抵抗体によれば、各端子部へのリード線等の半田付け等が容易になる。
【0011】
また、本発明の感歪抵抗体では、前記2つの受感素子は、第1の受感素子及び第2の受感素子であり、前記複数の端子部は、前記第1の受感素子の一端側から引き出された第1の端子部と、前記第2の受感素子の一端側から引き出された第2の端子部と、前記第1の受感素子の他端側及び前記第2の受感素子の他端側から引き出された第3の端子部と、を備える構成とすることができる。
【0012】
この場合には、例えば、第1の受感素子から引き出された第1の端子部、第1の受感素子、第1の受感素子及び第2の受感素子から引き出された第3の端子部、第2の受感素子、第2の受感素子から引き出された第2の端子部の順に並べて同一平面上に配設することができる。
【0013】
また、本発明の感歪抵抗体では、前記第1の受感素子の折り返しパターンが伸びている方向と、前記第2の受感素子の折り返しパターンが伸びている方向とが、所定角度で交差するようにすることができる。このため、第1の受感素子の歪み検出の最大感度方向と、第2の受感素子の歪み検出の最大感度方向とを所定角度で交差させて、双方向の回転軸のねじれ等を検出することができる。
【0014】
本発明は、第2の観点からすると、抵抗体により形成された歪み検出用の折り返しパターンを有する第1の受感素子と、抵抗体により形成された歪み検出用の折り返しパターンを有する第2の受感素子と、前記第1の受感素子の一端側から引き出された第1の端子部と、前記第2の受感素子の一端側から引き出された第2の端子部と、前記第1の受感素子の他端側及び前記第2の受感素子の他端側から引き出され、前記第1の受感素子及び前記第2の受感素子を接続する第3の端子部と、を備え、前記第1の受感素子及び前記第2の受感素子、並びに、前記第1の端子部、前記第2の端子部及び前記第3の端子部は、一の方向に沿って、同一面上に並行して併設され、前記第3の端子部が、並行して配設された前記第1の受感素子及び前記第2の受感素子の間に配設され、前記第1の端子部は、前記第1の受感素子の前記第3の端子部が配置されていない側に配設され、前記第2の端子部は、前記第2の受感素子の前記第3の端子部が配置されていない側に配設されている、ことを特徴とする感歪抵抗体である。
【0015】
この感歪抵抗体では、第1の受感素子及び第2の受感素子を含む各受感素子、並びに、第1の端子部、第2の端子部及び第3の端子部を含む各端子部が、一の方向に沿って、同一面上に並行して併設されている。そして、第1の端子部と第2の端子部との間に第1の受感素子が配設されているため、第1の端子部と第2の端子部とが近接していない。また、第2の端子部と第3の端子部との間に第2の受感素子が配設されいるため、第2の端子部と、第3の端子部とが近接していない。
【0016】
したがって、本発明の感歪抵抗体によれば、第1、第2及び第3の端子部へのリード線等の半田付け等が容易になる。
【0017】
本発明は、第3の観点からすると、 モータ部の回転軸のねじりトルクを検出するトルク検出器であって、前記回転軸に設けられた薄肉の弾性変形する起歪部と、前記起歪部に添着される請求項1~3のいずれか一項に記載の感歪抵抗体と、を備える、ことを特徴とするトルク検出器である。
【0018】
このトルク検出器では、回転軸のひずみの検出に際して、第1の受感素子及び第2受感素子を含む各受感素子、及び、第1の端子部、第2の端子部及び第3の端子部を含む各端子部が、一段に並べられて配設されている感歪抵抗体を使用する。このため、回転軸における起歪部の軸方向の長さを短くすることができる。
【0019】
したがって、本発明のトルク検出器によれば、回転軸の剛性度合いを改善させることができる。また、トルク検出器に取り付けた感歪抵抗体の各端子部へのリード線等の半田付け等が容易になる。
【0020】
また、本発明のトルク検出器では、前記各受感素子及び前記各端子部は、前記回転軸の軸方向と直交する方向に併設されているようにすることができる。このため、第1の受感素子の歪み検出の最大感度方向、及び、第2の受感素子の歪み検出の最大感度方向を最良の状態に設定しつつ、回転軸における起歪体の軸方向の長さを最大限まで短くすることができる。
【0021】
また、本発明のトルク検出器では、前記感歪抵抗体の数は、2以上であり、前記感歪抵抗体のそれぞれは、前記起歪部に形成された異なる平面部分に添着されるようにすることができる。この場合には、温度変化等による検出誤差を低減することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上説明したように、本発明の感歪抵抗体によれば、 半田付け等の作業が容易になり、作業者の利便性を向上させるという効果を奏する。また、本発明のトルク検出器によれば、 当該感歪抵抗体を添着させて剛性度合いを改善させるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施形態に係る感歪抵抗体の平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るトルク検出器の外観図である。
【
図4】
図2のトルク検出器のフランジ等の一部の部品を省略したときの外観図である。
【
図5】
図2のトルク検出器の起歪部、及び、当該起歪部に添着される感歪抵抗体を説明するための図である。
【
図6】
図2のトルク検出器の起歪部に添着される感歪抵抗体を説明するための起歪部の断面図である。
【
図7】本発明の実施形態に係る力検出器の感歪抵抗体を含んで構成されるホイートストンブリッジ回路及び周辺の構成図である。
【
図8】
図2のトルク検出器の回転軸がねじれたときの起歪部の状態を説明するための図(その1)である。
【
図9】
図2のトルク検出器の回転軸がねじれたときの起歪部の状態を説明するための図(その1)である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、発明の一実施形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下の説明及び図面においては、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0025】
[感歪抵抗体1の構成]
図1には、一実施形態に係る感歪抵抗体1の平面図が示されている。
図1における座標系(X,Y)は、図示の通りに定義されている。
図1に示されるように、感歪抵抗体1は、ベースとなるフィルム状の基材2上に抵抗体及び配線がパターン形成され、受感素子3A,3Bと、配線部5a~5cと、端子部6a~6cとを備えている。すなわち、受感素子3A,3B、配線部5a~5c、及び、端子部6a~6cは、基材2上(同一面上)に配設されている。ここで、受感素子3Aが第1の受感素子に対応し、受感素子3Bが第2の受感素子に対応している。また、端子部6aが第1の端子部に対応し、端子部6bが第2の端子部に対応し、端子部6cが第3の端子部に対応している。
【0026】
本実施形態では、基材2は、例えば誘電体のポリイミドフィルムである。また、2つの受感素子3A,3B、配線部5a~5c、複数の端子部6a~6cは、金属であって、例えば、銅とニッケルとの合金を使用している。また、必要に応じて、受感素子3A,3B、配線部5a~5c等には、上面から保護層7にて覆われている場合がある。
【0027】
ここで、保護層7は、例えばポリイミド樹脂であって、液体の塗布若しくはフィルムの接着で形成される。保護層7は、本実施形態では、矩形7a~7cの部分を除いた基材2全体の領域内に形成されている。こうした保護層7を設けることで、受感素子3A及び受感素子3Bに機械的な損傷等が生じることを防止でき、また、受感素子3A及び受感素子3Bを水分等から保護することができる。保護層7は、ポリイミド樹脂の他に、エポキシ樹脂、PEEK樹脂、PET樹脂、PPS樹脂等の絶縁性の樹脂にて形成することができる。また、保護層7の厚さは、例えば数μm~30μm程度とすることができる。
【0028】
上記の受感素子3A,3Bは、歪み検出用に平行に配設された複数の線状の抵抗体の折り返しパターンを含んで構成され、当該抵抗体の線幅は比較的小さく設けられている。受感素子3Aは、基材2上の+X方向側に配設され、受感素子3bは、基材2上の-X方向側に配設されている。そして、受感素子3A,3Bの間に、端子部6cが配設されている。
【0029】
受感素子3Aの抵抗体は、XY座標系でマイナス45度の方向Aに最大感度で歪みを検出できるようにした細い線幅で、マイナス45度の方向Aで平行に複数の配設されている。そして、受感素子3Aの歪みの検出方向の長さは、一端側である配線部5aの方から徐々に増加して、その後他端側である配線部5cの方へ向かって徐々に減少している。これらの隣り合う抵抗体の端部は、エンドタブ部により、折り返して繋がれている。
【0030】
受感素子3Bの抵抗体は、XY座標系でプラス45度の方向Bに最大感度で歪みを検出できるようにした細い線幅で、プラス45度の方向Bで平行に複数配設されている。そして、受感素子3Bの歪みの検出方向の長さも、一端側である配線部5bから徐々に増加し、その後他端側である配線部5cの方へ向かって徐々に減少している。これらの隣り合う抵抗体の端部は、エンドタブ部により、折り返して繋がれている。
【0031】
このように、本実施形態に係る感歪抵抗体1は、せん断型2軸の感歪抵抗体1であり、受感素子3Aと受感素子3Aとの歪みの検出の最大感度方向が90度の所定角度で交差し、同一の基材2上にY軸方向を対称にして、対称配置されている。
【0032】
上記の配線部5a~5cは、受感素子3A,Bと電気的に繋がって信号を配線する部分であり、歪みを検出しない程度に十分太い線幅となっている。配線部5aは、受感素子3Aの一端側と繋がって信号を配線する。配線部5bは、受感素子3Bの一端側と繋がって信号を配線する。また、配線部5cは、受感素子3Aの他端側及び受感素子3Bの他端側と電気的に繋がっている。
【0033】
上記の端子部6aは、配線部5aから延伸した部分であり、受感素子3Aの+X方向側に配設されている。上記の端子部6bは、配線部5bから延伸した部分であり、受感素子3Bの-X方向側に配設されている。また、上記の端子部6cは、配線部5cから延伸した部分であり、受感素子3A,3Bの間に配設されている。
【0034】
端子部6aにおける矩形7aの部分、端子部6bにおける矩形7bの部分、及び、端子部6cにおける矩形7cの部分には、保護層7が形成されていない。したがって、端子部6a~6cは、それぞれ配線部5a~5cから延伸した金属が露出している。このため
、端子部6a~6cに、半田付け等によりリード線等が接続可能となっている。
【0035】
このように、本実施形態に係る感歪抵抗体1では、2つの受感素子3A,3Bと、3つの端子部6a~6cとが、X方向に一段に並べられて配設されている。そして、端子部6aと端子部6cとの間に受感素子3Aが配設され、端子部6aと端子部6cとが近接していない。また、端子部6bと端子部6cとの間に受感素子3Bが配設され、端子部6bと,端子部6cとが近接していない。このため、端子部6a~6cへのリード線等の半田付け等が容易になる。
【0036】
また、本実施形態に係る感歪抵抗体1では、各端子部6a~6cの+Y方向側又は-Y方向側には、受感素子3A,3Bが配設されていない。このため、端子部6a~6cにリード線等の半田付け等をするの際して、リード線等を+Y方向側に引き出すこともでるし、-Y方向側に引き出すこともできる。
【0037】
また、本実施形態に係る感歪抵抗体1では、受感素子3A,3Bと、端子部6a~6cが、X方向に一段に並べられて配設されているため、Y方向の長さが短くなっている。
【0038】
[トルク検出器10の構成]
図2~
図5には、上述した感歪抵抗体1と同様に構成された感歪抵抗体を備える一実施形態に係るトルク検出器10の外観図が示されている。
図2~
図5における座標系(U,V,W)は、図示の通りに定義されている。ここで、
図2は、トルク検出器10の斜視図である。また、
図3は、
図2に示した回転軸を通る平面Pで切断したときのトルク検出器10の断面図である。また、
図4は、
図2に示したトルク検出器10の内部の斜視図である。さらに、
図5は、
図4に示したトルク検出器10の-V方向側の部分を拡大した拡大図(VW平面視図)である。
【0039】
図2~5により総合的に示されるように、トルク検出器10は、回転軸12と、フランジ13と、ケーシング14a~14eとを備えている。また、トルク検出器10は、回転軸12に設けられた起歪部12cと、当該起歪部12cに添着される感歪抵抗体1a,1b(
図2~5において不図示、
図6,7を参照)とを備えている。また、トルク検出器10は、モータ部、回転基板26、固定基板28a,28b、1次側コア21及び2次側コア23、ロータリーエンコーダ30等を含む要素を備えている。
【0040】
上記の回転軸12は、モータの出力軸であり、軸方向(V方向)に渡って段階的に径が変化する金属製の略円柱部材である。当該回転軸12は、負荷装置に接続することができるように、フランジ13から突出している。当該回転軸12は、後述するように、起歪部12cを備え、当該起歪部12cには感歪抵抗体1a,1bが添着されている。
【0041】
上記のフランジ13には、回転軸12を通す穴が設けられている。また、フランジ13は、トルク検出器10を装置等に固定する穴を有している。当該フランジ13は、トルク検出のための電子回路を実装した回転基板26と、回転基板26へ電力を供給する部材とを外部から保護している。
【0042】
上記のケーシング14aは、フランジ13に連結され、回転軸12を支持するベアリング15aを保持している。上記のケーシング14bは、ケーシング14aに連結され、モータの発熱を外部へ放射するヒートシンクを有している。上記のケーシング14cは、ケーシング14bに連結され、回転軸12を支持するベアリング15bを保持している。上記のケーシング14dは、ケーシング14cに連結され、回転軸12の回転位置を検出するロータリーエンコーダ30を外部から保護している。上記のケーシング14eは、回転基板26及びロータリーエンコーダ30から送信されたそれぞれの信号を処理する回路を実装した固定基板28bを外部から保護している。
【0043】
これらのフランジ13、ケーシング14a~14eによって、トルク検出のための電子回路を実装した回転基板26や固定基板28a,28b、ロータリーエンコーダ30やモータ部等を外部から保護している。また、ベアリング15a,15bによって、回転軸12は、回転自在に支持されている。
【0044】
ここで、上述したベアリング15a及びベアリング15bは、例えば玉軸受である。ベアリング15aは、その外輪がケーシング14aに嵌合して配置される。ベアリング15aは、その内輪にて回転軸12に、例えばしまりばめで嵌合して挿入され、軸方向が規制される。ベアリング15bは、その外輪が仕切り部材19によって軸方向が規制されて、ケーシング14cに嵌合して配置される。ベアリング15bは、その内輪にて回転軸12に、例えばしまりばめで嵌合して挿入され、軸方向が規制される。なお、ベアリングの種類、配置及び位置の規制は例示であってこれに限るものではない。
【0045】
<トルク検出器10の内部の構成>
トルク検出器10の内部の構成について、説明する。上記の起歪部12cは、回転軸12の一部に設けられる。起歪部12cは、例えば、回転軸12の軸線を含む平面に平行であって、かつ、回転軸12の軸線を中心として回転対称な複数の平面にて回転軸12を切断した形状を有している。この起歪部12cは、回転軸12の軸方向には強度を有していて変形しないが、起歪部12c以外の部分よりも断面積を小さくすることで、回転軸12に生じたねじりトルクにより弾性変形する。
【0046】
本実施形態では、起歪部12cは、向かい合う平行な2つの平面部分(複数の平面部分)を有している。この平面部分と円柱形状との境界部は、回転軸12と垂直な面の断面積が徐々に変化する形状となっている。本実施形態では、当該2つの平面部分のそれぞれに、感歪抵抗体1a,1bが添着されている。
図5に示されるように、感歪抵抗体1a,1bが添着される平面部分の軸方向(V方向)の長さは、感歪抵抗体1a,1bの縦方向(
図1のY方向)の長さと概ね同じになっている。
【0047】
ここで、起歪部12cに添着される感歪抵抗体1a,1bは、検出した歪みを電気信号に変換するホイートストンブリッジ回路に組み込まれる。起歪部12cに添着される感歪抵抗体1a,1b、及び、ホイートストンブリッジ回路の構成の説明については、後述する。
【0048】
上記の回転基板26は、環状の円板であって、カラー等の固定部材を介して回転軸12に固定され、当該回転軸12とともに回転する。本実施形態では、回転基板26は、回転軸12の回転子の負荷側に定されている。回転基板26は、抵抗変化検出回路の一部と、A/D変換器と、CPUと、その他の整流回路及び安定化回路等とを備えている。抵抗変化検出回路は、感歪抵抗体1a,1bの抵抗変化を検出するホイートストンブリッジ回路と増幅器とを含んでいる。A/D変換器は、抵抗変化検出回路の出力をデジタル信号に変換する。CPUは、このデジタル信号を演算処理してねじりトルクの測定値を求める。そして、ねじりトルクの測定値のデジタル信号は、回転基板26上に実装された送信素子27によって光信号に変換され、無線通信にて固定基板28a上に実装された不図示の受信素子へ送られる。
【0049】
上記の固定基板28a及び固定基板28bは、例えば基板間コネクタで機械的かつ電気的に接続されていて、固定基板28bはケーシング14e等に固定されている。固定基板28a及び固定基板28bは、受光素子と、デジタル復調回路とを備えている。受光素子は、送信素子27が送信した光信号を電気信号に変換するフォトダイオードなどである。デジタル復調回路は、受光素子で電気信号に変換したデジタル変調信号からねじりトルクの測定値の信号をデジタル復調によって取り出す。固定基板28bは、配線ケーブルにより、トルク検出器10を制御する不図示の制御装置と繋がっている。また、固定基板28a及び固定基板28bには、不図示の外部の制御装置と繋がっているスイッチング回路等が設けられている。
【0050】
上記の2次側コア23は、回転軸12における回転基板26が固定された位置の反負荷側に、中空円柱状の部材を介して当該部材の外周面に固定されている。2次側コア23は、例えば、フェライトシートなどの磁性体シートである。2次側コア23の外周円筒面には、例えば銅線などの導電性の線材が巻回されて2次側コイル24が形成されている。
【0051】
上記の1次側コア21は、2次側コア23及び2次側コイル24と対向する位置に、1次側コアホルダ20を間に介して、固定基板28aに固定されている。1次側コア21は、断面形状がコ字型の突部を有する柱形状をしていて、例えば、フェライトなどの磁性体である。1次側コイル22は、例えば銅線などの導電性の線材であり、1次側コア21の2つの突部間に巻回して形成され、その端部は固定基板28aに接続されている。
【0052】
また、不図示の外部の制御装置と繋がった固定基板28a及び固定基板28bのスイッチング回路が、制御装置から供給された直流電流を交流電流に変換する。このスイッチング回路は、1次側コイル22と結線されており、変換した交流電流を1次側コイル22へ出力する。但し、制御装置によって交流電流が供給される場合は、スイッチング回路は不要である。変換された交流電流は1次側コイル22に交流磁界を発生させ、2次側コイル24に電流を誘起する。したがって、2次側コイル24が1次側コイル22から非接触で電力を受電できる。2次側コイル24に誘起された交流電流は、回転基板26内の整流回路と安定化回路とによって直流電圧へ変換され、直流電圧は、抵抗変化検出回路、A/D変換器、CPUなどへ供給される。
【0053】
上記のロータリーエンコーダ30は、回転軸12の反負荷側の端部に接続配置され、回転軸12の回転位置を検出する。ロータリーエンコーダ30は、本実施形態では反射型光学式であるが、透過式であってもよいし、光学式に限らず磁力その他の方式によるものであっても良い。そして、ロータリーエンコーダ30への電力供給及びロータリーエンコーダ30からの位置信号出力は、固定基板28bと繋がった不図示のコネクタ付きケーブルを介して行われ、位置信号は、外部の制御装置へ送られる。
【0054】
上記のモータ部は、回転軸12の軸方向の+V方向側に設けられている。モータ部は、例えば交流サーボモータであって、固定子16と、永久磁石17とを含んでいる。固定子16は、積層鉄心とこれを囲む巻線コイル等で構成される。この固定子16は、ケーシング14bに固着されている。
【0055】
固定子16の内側には、所定の間隔にて回転子が配置されている。回転子は回転軸12に、永久磁石17が取り付けられて構成される。ここで、回転子は、支持部材の表面に永久磁石を接着した表面磁石型(SPM)であってもよいし、支持部材を半径方向に拡大して支持部材の内部に永久磁石を埋め込んだ埋込磁石型(IPM)であってもよい。
【0056】
<感歪抵抗体1a,1bの構成>
上記の感歪抵抗体1a,1bは、
図1に示される感歪抵抗体1と同様に構成され、起歪部12cの平面に添着される。
図6には、回転軸12の軸方向に垂直な平面で起歪部12cを切断したときの断面図が示されている。
図5,6により総合的に示されるように、感歪抵抗体1aは、起歪部12cにおける+U方向側のVW平面部分に添着され、感歪抵抗体1bは、-U方向側のVW平面部分に添着されている。本実施形態では、上述したように、起歪部12cにおける平面部分のV方向側の長さは、感歪抵抗体1a,1bのY方向側の長さ(
図1を参照)とほぼ同じになっている。
【0057】
感歪抵抗体1a,1bは、
図1に示される感歪抵抗体1と同様に構成されている。本実施形態では、受感素子3A,3Bに対応する感歪抵抗体1aの受感素子を、それぞれ、受感素子3aA,3aBと記し、受感素子3A,3Bに対応する感歪抵抗体1bの受感素子を、それぞれ、受感素子3bA,3bBと記している。
【0058】
感歪抵抗体1a,1bは、回転軸12に加わるねじりトルクに応じて、起歪部12cに生ずる歪みを検出する。当該感歪抵抗体1a,1bは、検出した歪みを電気信号に変換するホイートストンブリッジ回路に組み込まれる。当該回路は、回転基板26に実装されている。
【0059】
<感歪抵抗体1a,1bを含むホイートストンブリッジ回路等の構成>
感歪抵抗体1a,1bを含むホイートストンブリッジ回路等の構成について、説明する。
図7には、トルク検出器10の感歪抵抗体1a,1bを含んで構成されるホイートストンブリッジ回路及び周辺回路の構成が示されている。
図7に示されるように、ホイートストンブリッジ回路に加えて、増幅回路51と、アナログ/デジタル変換回路52と、表示装置53とを有している。
【0060】
ホイートストンブリッジ回路では、受感素子3aA,3aBを有する感歪抵抗体1aの端子部6cが、端子T1に接続され、受感素子3bA,3bBを有する感歪抵抗体1bの端子部6cが、端子T3に接続されている。また、感歪抵抗体1aの端子部6aが端子T4に接続され、感歪抵抗体1aの端子部6bが端子T2に接続されている。また、感歪抵抗体1bの端子部6aが端子T2に接続され、感歪抵抗体1bの端子部6bが端子T4に接続されている。
【0061】
増幅回路51は、感歪抵抗体1a,1bを含むホイートストンブリッジ回路から出力されるアナログ信号を増幅する。アナログ/デジタル変換回路52は、当該アナログ信号をデジタル信号に変換する。表示装置53は、例えば、液晶パネル等の表示デバイスと、アナログ/デジタル変換回路52から送られた信号に基づいて、当該表示デバイスに情報を表示させる表示制御回路を備えている。表示装置53は、検出された回転軸12のねじりモーメントに関する情報を表示する。
【0062】
[回転軸12のねじれ時の起歪部12c及び感歪抵抗体1a,1bの状態]
図8は、感歪抵抗体1a,1bが添着されている略長方体の起歪部12cを平面に展開した図である。また、
図9は、図示した方向τに回転軸12がねじれたときの感歪抵抗体1a,1bが添着されている起歪部12cの面の状態を、概念的に説明する図である。
図9に示されるように、回転軸12が方向τにねじれると、点D,Eを無結ぶ対角線方向に起歪部12cの面が伸び、点F,Gを結ぶ対角線方向に起歪部12cの面が縮む。ここで、[T]は起歪部12cの面が伸びたことを表し、[C]は起歪部12cの面が縮んだことを表している。
【0063】
図8に示されるように、回転軸12が方向τにねじれて起歪部12cが変形すると、当該変形に伴って、感歪抵抗体1aでは、受感素子3aAを構成する複数の抵抗体が縮み、受感素子3aBを構成する複数の抵抗体が伸びる。また、感歪抵抗体1bでは、受感素子3bAを構成する抵抗体が縮み、受感素子3bBを構成する抵抗体が伸びる。
【0064】
このように、受感素子3aA,3bAは、回転軸12が方向τにねじれて起歪部12cが変形すると、これらを構成する複数の抵抗体が伸びる。また、受感素子3aB,3bBは、回転軸12が方向τにねじれて起歪部12cが変形すると、これらを構成する複数の抵抗体が縮む。
【0065】
このように、本実施形態に係るトルク検出器10では、回転軸12に備えられた起歪部12cの軸方向の長さは、感歪抵抗体1a,1bの縦方向(
図1のY方向)の長さと概ね同じになっている。このため、感歪抵抗体1a,1bを添着させる起歪部12cの軸方向の長さを短くすることができ、回転軸12の剛性度合いを向上させることができる。
【0066】
以上説明したように、本実施形態では、感歪抵抗体1(1a,1b)が
図1のような構成をしているため、端子部6a~6cへのリード線等の半田付け等が容易になる。また、感歪抵抗体1(1a,1b)が
図1のような構成しているため、端子部6a~6cにリード線等の半田付け等をするのに際して、リード線等を+Y方向側に引き出すこともでるし、-Y方向側に引き出すこともできる。
【0067】
また、本実施形態では、感歪抵抗体1(1a,1b)では、受感素子3A,3Bと、端子部6a~6cが、X方向に一段に並べて配設されていることから、Y方向の長さが短くなっている。このため、トルク検出器10における回転軸12の起歪部12cの軸方向の長さを短くすることができ、回転軸12の剛性度合いを向上させることができる。
【0068】
したがって、本実施形態によれば、半田付け等の作業が容易な新たな感歪抵抗体1(1a,1b)とすることができる。また、本実施形態によれば、当該感歪抵抗体1(1a,1b)を使用してトルク検出器10の回転軸12の剛性度合いを改善させることができる。
【0069】
[実施形態の変形]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0070】
本実施形態では、トルク検出器に本実施形態の感歪抵抗体を用いたが、当該感歪抵抗体を剪断歪み変形によって測定が行われるロードセルなどの力検出器にも用いて適用することができる。
【0071】
また、上記の実施形態では、起歪部を長方体形状とし、トルク検出器の回転軸と平行な2つの平面に、せん断型2軸の感歪抵抗体を添着させた。これに対し、4つの面に、せん断型2軸の感歪抵抗体を添着させるようにしてもよい。また、起歪部の形状は、六角柱形状等の他の形状にするようにしてもよい。
【0072】
また、本実施形態のトルク検出器は、波動減速機を備えていかなったが、波動減速機を備えるようにしてもよい。
【0073】
また、上記の実施形態では、感歪抵抗体を使用して軸のねじりモーメントを検出したが、感歪抵抗体に印加される力を検出するのであれば、荷重等の他の量を検出するようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0074】
以上説明したように、本実施形態の感歪抵抗体は、トルク検出器の感歪抵抗体に適用することができる。また、本発明のトルク検出器は、トルクを検出するトルク検出器に適用することができる。
【符号の説明】
【0075】
1,1a,1b :感歪抵抗体
2 :基材
3A :受感素子(第1の受感素子)
3B :受感素子(第2の受感素子)
3aA,3aB,3bA,3bB :受感素子
5a,5b,5c :配線部
6a :端子部(第1の端子部)
6b :端子部(第2の端子部)
6c :端子部(第3の端子部)
7 :保護層
10 :トルク検出器
12 :回転軸
12c :起歪部
13 :フランジ
14a~14e :ケーシング
15a,15b :ベアリング
16 :固定子
17 :永久磁石
19 :仕切り部材
20 :1次側コアホルダ
21 :1次側コア
22 :1次側コイル
23 :2次側コア
24 :2次側コイル
26 :回転基板
27 :送信素子
28a,28b :固定基板
30 :ロータリーエンコーダ
51 :増幅回路
52 :アナログ/デジタル変換回路
53 :表示装置
T1、T2、T3、T4 :端子