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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062315
(43)【公開日】2022-04-20
(54)【発明の名称】農業用被覆材
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20220413BHJP
   B32B 27/30 20060101ALI20220413BHJP
   A01G 9/14 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
B32B27/32 C
B32B27/30 102
A01G9/14 S
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020170232
(22)【出願日】2020-10-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-12-01
(71)【出願人】
【識別番号】000219912
【氏名又は名称】東京インキ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520391479
【氏名又は名称】池永 和義
(72)【発明者】
【氏名】池永 和義
(72)【発明者】
【氏名】池田 浩気
【テーマコード(参考)】
2B029
4F100
【Fターム(参考)】
2B029EB03
2B029EB13
2B029EC02
2B029EC06
2B029EC16
2B029EC19
2B029EC20
4F100AK01B
4F100AK03A
4F100AK03C
4F100AK04A
4F100AK04C
4F100AK21B
4F100AK25B
4F100BA03
4F100BA06
4F100BA10A
4F100BA10C
4F100DC16A
4F100DC16C
4F100EC08
4F100GB01
4F100JB16A
4F100JB16C
4F100JD15B
4F100JL04
(57)【要約】      (修正有)
【課題】破断やカール、吸水性樹脂フィルム同士のくっつきの問題を解決した、農業用被覆材の提供。
【解決手段】1層の吸水性樹脂フィルム2とそれを挟む2層の疎水性樹脂からなる網状シート3で構成された農業用被覆材であって、当該農業用被覆材が疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの順で3層に積層されてなる農業用被覆材。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1層の吸水性樹脂フィルムとそれを挟む2層の疎水性樹脂からなる網状シートで構成された農業用被覆材であって、当該農業用被覆材が疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの順で3層に積層されてなる農業用被覆材。
【請求項2】
前記農業用被覆材を構成する疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートが縫製により接続している請求項1記載の農業用被覆材。
【請求項3】
前記農業用被覆材を構成する疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの縫製がY1-Y2方向(長手方向)のみに縫製してなる請求項1記載の農業用被覆材。
【請求項4】
前記農業用被覆材を構成する疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートのY1-Y2方向(長手方向)縫製の間隔がX1-X2方向(幅方向)於いて5cm以上10cm以下の縫製間隔で縫製されてなる請求項1から3のいずれかに記載の農業用被覆材。
【請求項5】
前記吸水性樹脂が、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂のいずれかである請求項1から4のいずれかに記載の農業用被覆材。
【請求項6】
前記疎水性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂である請求項1から5のいずれかに記載の農業用被覆材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂フィルムと疎水性樹脂からなる網状シートで構成される農業用被覆材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農業用被覆材として、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリエチレンフィルム、エチレン- 酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリビニルアルコール系フィルムなどが用いられており、施設栽培用ハウス、例えばビニルハウス等の外側を被覆するためのシートや内張りカーテン、農作物の上に保温性や害虫防止のために被覆するトンネル用シートあるいはベタがけ用シートなど、様々なところで利用されている。中でも、施設栽培用ハウスの外側を被覆するためのシートやベタがけシートに用いる場合においては保温と防霜のため、内張りカーテンに用いる場合においては保温と防滴のため、透明性と透湿性を損なわず耐候性に優れるといった性能が求められる。
【0003】
上記農業用被覆材としては、例えば特許文献1では、ビニルアルコール系フィルムと網状樹脂シートとが接着剤層を介して接着された積層体からなり、接着剤をビニルアルコール系フィルムの全面に塗布するのではなく、部分的に塗布することにより透湿性を損なうことなく、耐候性やカール抑制性に優れた効果を有する農業用被覆材を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-52511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の農業用被覆材は、ビニルアルコール系フィルムと網状シートが前記網状樹脂シートの網を構成する格子の上に塗布された接着剤で接着された2層構造をしているが、水を吸収・蒸散するたびに伸び縮みするビニルアルコール系フィルムと伸縮しない網状樹脂シートとの間で応力が発生し、2層のシートの間でカールが発生するという問題があった。また、ビニルアルコール系フィルムと網状樹脂シートからなる2層の農業用被覆材をビニルハウスの内張カーテンに使用した場合、水をたくさん含んだ農業用被覆材を折りたたむ際にビニルアルコール系フィルム同士が接して、後に農業用被覆材が乾燥した際に接しているビニルアルコール系フィルム同士がくっついてしまうという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、1層の吸水性樹脂フィルム(ビニルアルコール系フィルムなど)とそれを挟む2層の疎水性樹脂からなる網状シートで構成された疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの3層の農業用被覆材で、当該疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの3層のシートが接着剤を用いずに縫製で接続している農業用被覆材が、農業用被覆材のカール、吸水性樹脂フィルム同士のくっつきを防止することを見いだした。
【0007】
請求項1記載の発明は、
1層の吸水性樹脂フィルムとそれを挟む2層の疎水性樹脂からなる網状シートで構成された農業用被覆材であって、当該農業用被覆材が疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの順で3層に積層されてなる農業用被覆材である。
【0008】
1層の吸水性樹脂フィルムとそれを挟む2層の疎水性樹脂からなる網状シートで構成された疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの3層の農業用被覆材は、ビニルハウスの内張カーテンとして用いた場合に、水をたくさん含んだ農業用被覆材を折りたたむ際に吸水性樹脂フィルム同士が直接接せず、疎水性樹脂からなる網状シート同士が接するため、農業用被覆材が乾燥した際に農業用被覆材同士がくっついてしまうという問題は発生しない。また、当該農業用被覆材を巻き上げたり折りたたんだりする際に、吸水性樹脂フィルムが疎水性樹脂からなる網状シートにサンドイッチのように挟まれているため、たっぷりと水を含んだ吸水性樹脂フィルムが直接作業者に接することがなく、作業者の衣服を濡らしてしまうこともない。
【0009】
請求項2記載の発明は、
前記農業用被覆材を構成する疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートが縫製により接続している請求項1記載の農業用被覆材である。
【0010】
1層の吸水性樹脂フィルムとそれを挟む2層の疎水性樹脂からなる網状シートで構成された疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの3層の農業用被覆材が縫製により各層が接続していると、水を吸収・蒸散するたびに伸び縮みする吸水性樹脂フィルムと伸縮しない疎水性樹脂からなる網状シートとの間で発生する応力が縫製の糸の遊び(冗長性)により吸収され疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの3層のシートの間でカールが発生するという問題が発生しない。また縫製で発生する疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの3層を貫く縫製穴より水が排出されるため、水をたっぷり含む吸水性樹脂フィルムから早く水を抜くことができる。
【0011】
請求項3記載の発明は、
前記農業用被覆材を構成する疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの縫製がY1-Y2方向(長手方向)のみに縫製してなる請求項1記載の農業用被覆材である。
【0012】
当該農業用被覆材は、前記農業用被覆材を構成する疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの縫製がY1-Y2方向(長手方向)のみに縫製しているため、折り畳みまたは巻きあげ方向と平行な複数の直線部分で構成されており、不使用時には折り畳み巻き取みがしやすい。
【0013】
請求項4記載の発明は、
前記農業用被覆材を構成する疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートのY1-Y2方向(長手方向)縫製の間隔がX1-X2方向(幅方向)於いて5cm以上10cm以下の縫製間隔で縫製されてなる請求項1から3のいずれかに記載の農業用被覆材である。
【0014】
前記農業用被覆材を構成する疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートのY1-Y2方向(長手方向)縫製の間隔がX1-X2方向(幅方向)於いて5cm以上10cm以下であると、吸水性樹脂フィルムが2つの疎水性樹脂からなる網状シート層間で蛇腹に縮んで吸水性樹脂フィルムがくっついしてしまう現象を防止することができる
【0015】
請求項5記載の発明は、
前記吸水性樹脂が、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂のいずれかである請求項1から4のいずれかに記載の農業用被覆材である。
【0016】
とりわけ吸水性樹脂フィルムがビニルアルコール系フィルムであった場合には、吸水して膨潤したビニルアルコール系フィルム同士が接したままで樹脂より水が抜けてしまうと容易に剥がすことができず、水で濡らして膨潤させてから剥がすという手間が発生するが、本発明のように疎水性樹脂からなる網状シートを介するとこのような問題が起きない。
【0017】
請求項6記載の発明は、
前記疎水性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂である請求項1から5のいずれかに記載の農業用被覆材である。
【0018】
また、疎水性樹脂からなる網状シートがオレフィン系樹脂の網状シートである場合には、オレフィン系樹脂の疎水性と滑り性のために吸水性フィルムの癒着が起こらずに好適である。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、1層の吸水性樹脂フィルムとそれを挟む2層の疎水性樹脂からなる網状シートで構成された疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの3層の農業用被覆材で、当該疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの3層のシートが接着剤を用いずに縫製で接続している農業用被覆材が、農業用被覆材の破断やカール、吸水性樹脂フィルム同士のくっつきの問題を解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の農業用被覆材の正面図である。
図2】本発明の農業用被覆材の断面図である。
図3】従来の農業用被覆材の正面図である。
図4】従来の農業用被覆材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様の構成要素には同一の符号を付し、適宜に説明を省略する。また、本実施形態は、本発明を実施するための一形態に過ぎず、本発明は本実施形態によって限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更実施の形態が可能である。
【0022】
本発明は、1層の吸水性樹脂フィルム(ビニルアルコール系フィルムなど)とそれを挟む2層の疎水性樹脂からなる網状シートで構成された疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの3層の農業用被覆材で、当該疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの3層のシートが接着剤を用いずに縫製で接続している農業用被覆材が、農業用被覆材の破断やカール、吸水性樹脂フィルム同士のくっつきを防止することを見いだしたことを発明の要旨としているが、このような事例はこれまで知られていない。
【0023】
すなわち本発明は、
1層の吸水性樹脂フィルムとそれを挟む2層の疎水性樹脂からなる網状シートで構成された農業用被覆材であって、当該農業用被覆材が疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの順で3層に積層されてなる農業用被覆材である。また本発明は、前記農業用被覆材を構成する疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートが縫製により接続している農業用被覆材である。
【0024】
〔実施形態1〕
実施形態1の農業用被覆材について説明する。
【0025】
まず、本発明で用いられる吸水性樹脂フィルムについて説明する。
本発明に用いられる吸水性樹脂フィルムは、湿度が高いときには空気中の水蒸気を吸収して膨潤し、湿度が低いときにはフィルム中に含まれる水分を蒸散する機能を有するフィルムである。吸水性樹脂としては、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアクリル酸系樹脂などが挙げられる。中でもポリビニルアルコール系樹脂が本発明には好適である。
【0026】
ポリビニルアルコール系樹脂はPVAとも呼ばれる熱可塑性樹脂のひとつであり、融点はおよそ200℃、耐熱温度は40~80℃である。ポリビニルアルコールは、酢酸ビニルモノマーを重合したポリ酢酸ビニルを鹸化して製造される。
【0027】
本発明で用いられるポリビニルアルコール系フィルムは、未延伸のポリビニルアルコール系フィルムが好適である。延伸したポリビニルアルコール系フィルムは、空気中の水蒸気を吸って膨潤したりフィルム中に含まれる水分を蒸散したりする際にフィルムの伸張幅が大きくなり、接続し伸縮がほとんど起きない疎水性樹脂からなる網状シートとの間の応力発生の原因となる。よってできるだけ未延伸のポリビニルアルコール系フィルムを用いる方が好ましい。
【0028】
ポリビニルアルコール系フィルムを製造するに当たっては、ドラム、エンドレスベルト等の金属面上にポリビニルアルコール系樹脂溶液を流延してフィルムを形成したり、あるいは押出機を用いて、Tダイ法、インフレーション法により押出製膜される。
【0029】
本発明で用いられるポリビニルアルコール系フィルムの膜厚は10~100μmであることが好ましく、更には15~50μm、特には25~50μmが好ましい。かかる膜厚が薄すぎると強度が低く耐候性が低下する傾向があり、厚すぎるとフィルム重量が重くなってビニルハウスの補強が必要になったり、作物の生長を阻害する傾向がある。
【0030】
また、ポリビニルアルコール系フィルムの可視光領域の透過率としては、作物の生長を阻害しない点で50%以上、特には70%以上、更には90%以上であることが好ましい。なお、全光線透過率の上限値としては通常99%である。
【0031】
ポリビニルアルコール系フィルムの破断強度としては、耐候性の点で23℃、50%RHにおいて、150MPa以上であることが好ましく、更には250MPa以上であることが好ましい。なお、破断強度の上限値としては、通常、350MPaである。
【0032】
本発明に使用可能なポリビニルアルコール系フィルムとしては、「ポバール」(株式会社クラレ製)や「ソロブロン」(株式会社アイセロ製)などが挙げられるが、どのようなポリビニルアルコール系フィルムでも利用可能である。
【0033】
次に本発明で用いられる疎水性樹脂からなる網状シートについて説明する。
本発明で用いられる疎水性樹脂からなる網状シートは疎水性樹脂からなるが、疎水性樹脂であればどのような樹脂も適用可能である。疎水性樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリスチレンなどあらゆるものが利用できる。とりわけポリオレフィン系樹脂やポリエステル樹脂が好適で、特にポリオレフィン系樹脂としてはポリエチレンやポリプロピレン、ポリエステル樹脂としてはポリエチレンテレフタレート(PET)が好適である。
【0034】
疎水性樹脂からなる網状シートは、疎水性樹脂を網目状、格子状などにしたものである。疎水性樹脂からなる網状シートの空隙率は、間に挟む吸水性樹脂フィルムの表面積を広くするために格子間隔が大きい方がよいが、あまり大きすぎると農業用被覆材を折りたたんだ際に吸水性樹脂フィルム同士が張り付く、強度不足になるなどの不具合が生じる。また空隙率が小さすぎると、水抜けがわるくなり、なかなか乾燥しない。網状シートの空隙率としては、透湿性、透明性、強度の点で10~70%であることが好ましく、更には20~60%、特には30~50%であることが好ましい。
【0035】
疎水性樹脂からなる網状シートとしては、プラスチックスフィルムを延伸し、この延伸フィルムにヤスリやその他の手段により傷をつけて割裂し(スプリットし)、これを拡巾したものを縦・横に連続的に積層・熱融着したメッシュ状の不織布、いわゆるワリフや、同様のプラスチックフィルムを延伸し、この延伸フィルムをマイクロスリットしたフラットヤーンを縦横方向に織って、熱融着や接着剤等により一体化した織布なども利用可能である。疎水性樹脂からなる網状シートとしては、例えば、「ポリクロス」(ダイヤテックス株式会社製、日本ワイドクロス株式会社製など)と呼ばれるものがある。
【0036】
次に疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの3層の接続方法について説明する。
すなわち農業用被覆材を構成する疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの3層は、接着剤を用いずに縫製により接続させるのが好適である。
【0037】
1層の吸水性樹脂フィルムとそれを挟む2層の疎水性樹脂からなる網状シートで構成された疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの3層の農業用被覆材が縫製により各層が接続していると、水を吸収・蒸散するたびに伸び縮みする吸水性樹脂フィルムと伸縮しない疎水性樹脂からなる網状シートとの間で発生する応力が縫製の糸の遊び(冗長性)により吸収され疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの3層のシートの間で破断したりカールが発生するという問題が発生しない。
【0038】
次に図を用いて、本発明の農業用被覆材について説明する。
図1は、本発明の農業用被覆材の正面図である。また図2は、図1のX1-X2(幅方向)とY1-Y2(長手方向)の断面で切断した際の本発明の農業用被覆材の断面図である。
【0039】
図2のように、本発明の農業用被覆材は2枚の疎水性樹脂からなる網状シート3に挟まれた吸水性樹脂フィルム2から構成されるサンドイッチ構造をしている。そして、2枚の疎水性樹脂からなる網状シート3に挟まれた吸水性樹脂フィルム2から構成されるサンドイッチ構造を縫製糸4が貫く形で縫合されている。縫合はY1―Y2方向(長手方向)と平行に行われ、原則的にはX1-X2方向(幅方向)と平行には縫合は行わない。縫合間隔はX1-X2方向(幅方向)から見て5~10cm程度の間隔でなされる。さらに好適な縫合間隔はX1-X2方向(幅方向)から見て7.5cm程度である。縫合間隔が広すぎると、吸水性樹脂フィルムが2つの疎水性樹脂からなる網状シート層間で蛇腹に縮んで吸水性樹脂フィルムがくっついしてしまう現象が起きる可能性がある。
【0040】
縫製はどのような方法でも可能であるが、例えば株式会社ハシマ製のコンピューターキルティングマシン「HSQ-65SP」などの自動縫製装置を用いることが好適である。このようなマシンを使うと、縫製のピッチ(縫い目のピッチ)は概ね2mm程度である。縫製のピッチ(縫い目のピッチ)が細かい方が疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの3層を貫く穴の数が増えるため、吸水性樹脂フィルムから水が抜けやすくなる。
【0041】
本発明の農業用被覆材のように、2枚の疎水性樹脂からなる網状シート3に挟まれた吸水性樹脂フィルム2から構成されるサンドイッチ構造を縫製により針で貫き、前記3層の層を貫く孔があると、たっぷり水を含んだ吸水性樹脂フィルム2から当該孔を経由して速やかに排水されるため、当該農業用被覆材をビニルハウス内の内張りカーテンとして用いた場合に、当該農業用被覆材のビニルハウス内壁側の表面に水滴がくっついて水がたまるいわゆる「金魚鉢現象」を解消することができる。
【0042】
次に図を用いて、従来の農業用被覆材について説明する。
図3は、従来の農業用被覆材の正面図である。また図4は、図3のX1-X2(幅方向)とY1-Y2(長手方向)の断面で切断した際の従来の農業用被覆材の断面図である。
【0043】
図3のように、本発明の農業用被覆材は疎水性樹脂からなる網状シート3に吸水性樹脂フィルム2の2層からなる。そして、疎水性樹脂からなる網状シート3と吸水性樹脂フィルム2は、接着剤5で接着されている。接着間隔は網状シートの網の間隔と同等で、X1-X2方向から見て2mm程度の間隔でなされる(当該接着方法は「スジラミ」と呼ばれている)。接着はY1―Y2方向と平行に行われ、原則的にはX1-X2方向には接着は行わない。
【実施例0044】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0045】
<実施例1>
吸水性樹脂フィルムとしてポリビニルアルコール系フィルム「ソロブロン」(株式会社アイセロ製/厚さ30μm)1枚と、疎水性樹脂からなる網状シートとしてポリエチレン樹脂からなる「ポリクロス」(ダイヤテックス株式会社製/厚さ20μm)2枚を、疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの順ではさみ、X1-X2方向(幅方向)の縫製間隔が7.5cmになるように株式会社ハシマ製のコンピューターキルティングマシン「HSQ-65SP」などの自動縫製装置を用いて縫製した(縫製のピッチ(縫い目のピッチ)は概ね2mm程度)。
【0046】
<比較例1>
吸水性樹脂フィルムとしてポリビニルアルコール系フィルム「ソロブロン」(株式会社アイセロ製/厚さ30μm)1枚と、疎水性樹脂からなる網状シートとしてポリエチレン樹脂からなる「ポリクロス」(ダイヤテックス株式会社製/厚さ20μm)1枚を、吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの順で図3及び段落0043のように接着剤にて接着した。X1-X2方向(幅方向)の接着間隔は2mmであった。
【0047】
<カール性試験>
実施例1及び比較例1で作製した農業用被覆材を水に1時間浸した後、水より取り出して観察した。実施例1の農業用被覆材は特に変化は無くカールが発生しなかったが、比較例1の農業用被覆材は断面において三日月状になる程度にカールした。
【0048】
<癒着性試験>
実施例1及び比較例1で作製した農業用被覆材を水に1時間浸した後、蛇腹折りに3層に折りたたんだ(なお、比較例1の農業用被覆材はカールして丸まったものを広げてから折りたたんだ)。折りたたんだ農業用被覆材に1kgの重りを載せ、一晩放置した。一晩放置後の折りたたんだ農業用被覆材を広げてみた。実施例1の農業用被覆材はくっつくことなく広げることができたが、比較例1の農業用被覆材は吸水性樹脂フィルムがくっついてしまい広げることができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明を利用することで、 1層の吸水性樹脂フィルムとそれを挟む2層の疎水性樹脂からなる網状シートで構成された疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの3層の農業用被覆材で、当該疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの3層のシートが接着剤を用いずに縫製で接続している農業用被覆材が、農業用被覆材の破断やカール、吸水性樹脂フィルム同士のくっつきの問題を解決することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 農業用被覆材
2 吸水性樹脂フィルム
3 疎水性樹脂からなる網状シート
4 縫製糸
5 接着剤
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2021-08-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1層の吸水性樹脂フィルムとそれを挟む2層の疎水性樹脂からなる網状シートで構成された農業用被覆材であって、
前記吸水性樹脂がポリビニルアルコール系樹脂で、かつ前記疎水性樹脂がポリオレフィン系樹脂であり、
当該農業用被覆材が疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの順で縫製により接続され3層に積層されてなり、
当該縫製がY1-Y2方向(長手方向)のみに縫製されてなる農業用被覆材。
【請求項2】
前記農業用被覆材を構成する疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートのY1-Y2方向(長手方向)縫製の間隔がX1-X2方向(幅方向)於いて5cm以上10cm以下の縫製間隔で縫製されてなる請求項1に記載の農業用被覆材。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
請求項1記載の発明は、
1層の吸水性樹脂フィルムとそれを挟む2層の疎水性樹脂からなる網状シートで構成された農業用被覆材であって、
前記吸水性樹脂がポリビニルアルコール系樹脂で、かつ前記疎水性樹脂がポリオレフィン系樹脂であり、
当該農業用被覆材が疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートの順で縫製により接続され3層に積層されてなり、
当該縫製がY1-Y2方向(長手方向)のみに縫製されてなる農業用被覆材である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
請求項2記載の発明は、
前記農業用被覆材を構成する疎水性樹脂からなる網状シート/吸水性樹脂フィルム/疎水性樹脂からなる網状シートのY1-Y2方向(長手方向)縫製の間隔がX1-X2方向(幅方向)於いて5cm以上10cm以下の縫製間隔で縫製されてなる請求項1に記載の農業用被覆材である。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】削除
【補正の内容】