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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062369
(43)【公開日】2022-04-20
(54)【発明の名称】車両用灯具
(51)【国際特許分類】
   F21S 41/663 20180101AFI20220413BHJP
   F21S 41/65 20180101ALI20220413BHJP
   F21S 41/20 20180101ALI20220413BHJP
   F21S 41/147 20180101ALI20220413BHJP
   F21W 102/135 20180101ALN20220413BHJP
   F21W 102/13 20180101ALN20220413BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20220413BHJP
【FI】
F21S41/663
F21S41/65
F21S41/20
F21S41/147
F21W102:135
F21W102:13
F21Y115:10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020170333
(22)【出願日】2020-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000136
【氏名又は名称】市光工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145908
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信雄
(74)【代理人】
【識別番号】100136711
【弁理士】
【氏名又は名称】益頭 正一
(72)【発明者】
【氏名】大橋 悠二
(72)【発明者】
【氏名】今村 洋弥
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 英治
(57)【要約】
【課題】異なる通行帯に応じた配光パターンを形成するにあたり、光量の低下に伴う視認性の低下を防止することができる車両用灯具を提供する。
【解決手段】車両用灯具は、第1光源61から出射される光によってカットオフラインを有した第1配光パターンを形成すると共に、第2光源62から出射される光によって第1配光パターンと異なる第2配光パターンを形成し、形成された第1配光パターン及び第2配光パターンによってロービーム配光を形成するものであって、第1光源61及び第2光源62を制御する制御部を備え、制御部は、第1光源61について減光又は消灯制御した場合、第2光源62について出射光量を増加させる制御を実行する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1光源から出射される光によってカットオフラインを有した第1配光パターンを形成すると共に、第2光源から出射される光によって前記第1配光パターンと異なる第2配光パターンを形成し、形成された前記第1配光パターン及び前記第2配光パターンによってロービーム配光を形成する車両用灯具であって、
前記第1光源及び前記第2光源を制御する光学制御部を備え、
前記光学制御部は、前記第1光源について減光又は消灯制御した場合、前記第2光源について出射光量を増加させる制御を実行する
ことを特徴とする車両用灯具。
【請求項2】
前記第2光源は、前記第1配光パターンよりも下側領域において前記第1配光パターンよりも拡散した拡散配光パターンを形成するための拡散配光パターン用光源と、前記拡散配光パターンよりも照射範囲が狭く且つ遠方を照射する遠方配光パターンを形成するための遠方配光パターン用光源と、を備え、
前記光学制御部は、前記第1光源について減光又は消灯制御した場合、前記遠方配光パターン用光源の出射光量を、前記第1光源の出射光量よりも高く、且つ、前記拡散配光パターン用光源の出射光量と同程度又は当該出射光量よりも高くする
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用灯具。
【請求項3】
前記光学制御部は、前記第1光源について減光又は消灯制御する前後において、前記第1光源と前記第2光源との総消費電力が略同じとされている
ことを特徴とする請求項1又は請求項2のいずれかに記載の車両用灯具。
【請求項4】
ハイビーム配光を形成するためのハイ光源をさらに備え、
前記第1光源、前記第2光源、前記ハイ光源及び前記光学制御部とは同一基板上に搭載され、
前記光学制御部は、前記ハイビーム配光の特定箇所について減光又は消灯させるために前記ハイ光源に対してデューティ比制御を行うと共に、前記第1光源と前記第2光源とについてもデューティ比制御を行うことで、出射光量を制御する
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【請求項5】
前記第1光源を有すると共に前記第1光源からの光を出射する第1レンズを有した第1光学ユニットと、
前記第2光源を有すると共に前記第2光源からの光を出射する前記第1レンズとは別体の第2レンズを有した第2光学ユニットと、
を備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の車両用灯具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用灯具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、右側通行と左側通行との異なる通行帯の地域間(国間)を自動車で移動することがある。このため、左側通行用の配光パターンと右側通行用の配光パターンとを切替(いわゆるドーバー対応)可能となっていることが好ましい。そこで、例えば左側通行時においてカットオフラインを有する配光パターンを形成し、右側通行時には対向車両の運転者に対して眩惑を与えないようにするためにカットオフラインを有することなく主として水平基準線よりも下側を照射する配光パターンを形成する車両用灯具が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-123327号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の車両用灯具は、配光パターンを切り替える際に、カットオフラインを形成する光学ユニットの消灯又は減光を行う構成となっていたため、全体的な光量の減少を招くこととなり、車両前方側の視認性の低下を招く可能性があった。
【0005】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、異なる通行帯に応じた配光パターンを形成するにあたり、光量の低下に伴う視認性の低下を防止することができる車両用灯具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る車両用灯具は、第1光源から出射される光によってカットオフラインを有した第1配光パターンを形成すると共に、第2光源から出射される光によって前記第1配光パターンと異なる第2配光パターンを形成し、形成された前記第1配光パターン及び前記第2配光パターンによってロービーム配光を形成する車両用灯具であって、前記第1光源及び前記第2光源を制御する光学制御部を備え、前記光学制御部は、前記第1光源について減光又は消灯制御した場合、前記第2光源について出射光量を増加させる制御を実行する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カットオフラインを有した第1配光パターンを形成するための第1光源について減光又は消灯制御した場合、第2光源について出射光量を増加させる制御を実行するため、異なる通行帯に応じた配光パターンを形成するために第1光源について減光又は消灯制御した場合に全体的な光量の低下を抑えることができ、光量の低下に伴う視認性の低下を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る車両用灯具を示す斜視図である。
図2図1に示した基板の平面図である。
図3】ロービーム配光を模式的に示す図であり、(a)はロービーム配光を示し、(b)は第1配光パターンを示し、(c)は第2配光パターンの1つを示し、(d)は第2配光パターンの他の1つを示している。
図4】第1導光レンズの正面図である。
図5図2に示した制御部によるデューティ比制御の様子を示す図表である。
図6】第2実施形態に係る車両用灯具を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を好適な実施形態に沿って説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。また、以下に示す実施形態においては、一部構成の図示や説明を省略している箇所があるが、省略された技術の詳細については、以下に説明する内容と矛盾が発生しない範囲内において、適宜公知又は周知の技術が適用されていることはいうまでもない。
【0010】
図1は、本実施形態に係る車両用灯具を示す斜視図である。図1に示す車両用灯具1は、例えば車両前方部位に設けられる前照灯として構成されるものであって、図示しないハウジングとアウターレンズとによって形成された灯室内に配置されるものである。この車両用灯具1は、基板Bと、第1及び第2導光レンズ10,20と、シェード30と、投影レンズ40とを備えている。基板Bは、光源や光源を制御する機能部を備えたものである。また、基板Bには、第1及び第2導光レンズ10,20がネジ止め等によって固定的に取り付けられている。
【0011】
図2は、図1に示した基板Bの平面図であり、図3は、ロービーム配光を模式的に示す図であり、(a)はロービーム配光を示し、(b)は第1配光パターンを示し、(c)は第2配光パターンの1つを示し、(d)は第2配光パターンの他の1つを示している。図2に示すように、基板Bは、コネクタ部50と、複数のロー光源60と、複数のハイ光源70と、制御部(光学制御部)80とを搭載したものであり、基板Bの平面が投影レンズ40のレンズ軸AX(図1参照)に対して下向きに傾斜して配置されている。
【0012】
コネクタ部50は、例えば基板Bの端部に設けられ、相手側コネクタ(図示せず)が接続されることで外部からの電力供給や上位機器からの指示信号を受けるものである。複数のロー光源60は、ロービーム配光LD(図3(a)参照)を形成するためのものであって、間隔を空けて水平方向に複数個並んだ状態で配置されている。このような複数のロー光源60は、中央側の2つの第1光源61と、第1光源61の両側4つの第2光源62とで構成されている。
【0013】
第1光源61は、カットオフラインCL(図3(b)参照)を有した第1配光パターンP1(図3(b)参照)を形成するための光源である。第2光源62は、第1配光パターンP1と異なる第2配光パターンP2(図3(c)及び図3(d)参照)を形成するための光源である。ロービーム配光LDは、第1配光パターンP1と第2配光パターンP2との合成によって形成される。
【0014】
ここで、第2光源62は、最外側の2つの拡散配光パターン用光源62aと、拡散配光パターン用光源62a及び第1光源61によって挟まれて配置された遠方配光パターン用光源62bとを備えている。拡散配光パターン用光源62aは、第1配光パターンP1よりも下側領域において第1配光パターンP1よりも拡散した拡散配光パターンDP1(図3(d)参照)を形成するための光源である。遠方配光パターン用光源62bは、拡散配光パターンDP1よりも照射範囲が狭く且つ遠方を照射する遠方配光パターンDP2(図3(c)参照)を形成するための光源である。
【0015】
図2に示す複数のハイ光源70は、ハイビーム配光を形成するための光源であって、ロー光源60と同一基板B上に搭載されている。このハイ光源70は、例えば図2に示すように、ロー光源60よりも下方において水平方向に並べられた光源アレイによって構成されている。
【0016】
再度図1を参照する。第1導光レンズ10は、後述の複数のレンズ部11~13を有し、複数のロー光源60のそれぞれに対して1つずつレンズ部11~13が設けられた構成となっている。図4は、第1導光レンズ10の正面図である。図4に示すように、第1導光レンズ10は、第1光源61に対向して設けられた第1レンズ部11と、拡散配光パターン用光源62aに対向して設けられた第2レンズ部12と、遠方配光パターン用光源62bに対向して設けられた第3レンズ部13とを備えている。これらレンズ部11~13は、各光源61,62a,62bからの光を受け入れると共に、投影レンズ40側に出射するものである。
【0017】
図1に示すように、第2導光レンズ20は、略板状に形成されており、複数のハイ光源70に対向配置されたものである。この第2導光レンズ20は、複数のハイ光源70からの光を受け入れると共に、投影レンズ40側に出射するものである。シェード30は、例えば板状の第2導光レンズ20の上面に貼り付けられた2枚の板材によって構成されており、第1光源61から第1レンズ部11を通じて到達した光の一部を遮光又は反射してカットオフラインCL(図3(b)参照)を形成するものである。
【0018】
投影レンズ40は、各光源60,70からの光を受け入れて出射するものである。
【0019】
図2に示した制御部80は光源60,70を制御するものであり、特に本実施形態においては光源60をデューティ比制御して、いわゆるドーバー対応等を行うようになっている。図5は、図2に示した制御部80によるデューティ比制御の様子を示す図表である。図5に示すように、制御部80は、通常時(ドーバー対応を行っていないとき)において、第1光源61をデューティ比80%で点灯制御し、拡散配光パターン用光源62a及び遠方配光パターン用光源62bをデューティ比60%で点灯制御する。
【0020】
これに対して、制御部80は、ドーバー対応を行うときには、第1光源61を減光又は消灯制御する。この際、制御部80は、第1光源61のデューティ比を低下又は0%とすることで、減光又は消灯制御する。
【0021】
ここで、本実施形態に係る車両用灯具1は、例えば左側通行の地域において、図3(a)に示すようなカットオフラインCLを有したロービーム配光LDを形成する。このとき、水平基準線HL-HRよりもやや上方且つ鉛直基準線VU-VLよりもやや左側(車両側から見て左側)の規制ポイントRP1において、第1の所定値以上の光量が求められる。また、水平基準線HL-HRよりもやや下方且つ鉛直基準線VU-VLよりもやや右側(車両側から見て右側)の規制ポイントRP2において、第2の所定値以上の光量が求められる。
【0022】
これに対して、例えば右側通行の地域においては規制ポイントRP1において、第1の所定値未満の光量が求められる。よって、制御部80は、第1光源61を減光又は消灯制御することで、ドーバー対応を行う。なお、規制ポイントRP2において第2の所定値以上の光量が求められる点は同じであるとする。
【0023】
具体的には制御部80は、第1のドーバー対応時において、第1光源61をデューティ比0%に制御する。また、制御部80は、第2及び第3のドーバー対応時において、第1光源61をデューティ比40%に制御する。第1~第3のドーバー対応のうちいずれを実行するかは、選択可能となっていてもよいし、固定のいずれか1つのみが実行可能となっていてもよい。
【0024】
このように、制御部80は、通常時よりも第1光源61のデューティ比を低下又は0%とすることで、規制ポイントRP1における光量を第1の所定値未満とし、ドーバー対応を行うこととなる。
【0025】
ここで、本実施形態において制御部80は、第1のドーバー対応時に拡散配光パターン用光源62a及び遠方配光パターン用光源62bをデューティ比100%で点灯制御する。また、制御部80は、第2のドーバー対応時に拡散配光パターン用光源62aをデューティ比70%で点灯制御し、遠方配光パターン用光源62bをデューティ比90%で点灯制御する。さらに、制御部80は、第3のドーバー対応時に拡散配光パターン用光源62aをデューティ比90%で点灯制御し、遠方配光パターン用光源62bをデューティ比70%で点灯制御する。
【0026】
このように、制御部80は、第1光源61を減光又は消灯制御する場合、第2光源62についてデューティ比を上げて(60%を超える値として)、出射光量を増加させる制御を実行する。
【0027】
特に、制御部80は、第1光源61を減光又は消灯制御する場合、第2のドーバー対応時のように、遠方配光パターン用光源62bのデューティ比を、第1光源61及び拡散配光パターン用光源62aのデューティ比よりも高くして、これらよりも出射光量を高くすることが好ましい。また、制御部80は、第1光源61を減光又は消灯制御する場合、第1のドーバー対応時のように、遠方配光パターン用光源62bのデューティ比を、第1光源61のデューティ比よりも高く、且つ、拡散配光パターン用光源62aのデューティ比と同程度(例えば両者の差が5%以内、好ましくは3%以内)にしてもよい。これにより、遠方の視認性が確保されるからである。
【0028】
さらに、制御部80は、通常時におけるデューティ比の総計を200%(80%+60%+60%)としている。同様に、制御部80は第1のドーバー対応時におけるデューティ比の総計を200%(0%+100%+100%)としている。また、制御部80は第2のドーバー対応時についてもデューティ比の総計を200%(40%+90%+70%)としており、第3のドーバー対応時についてもデューティ比の総計を200%(40%+70%+90%)としている。
【0029】
よって、第1光源61、拡散配光パターン用光源62a、及び遠方配光パターン用光源62bについてデューティ比に応じた消費電力が互いに同じである場合には、第1光源61を減光又は消灯制御する前後(すなわちドーバー対応の前後)において、光源61,62a,62bの総消費電力が略同じとされることとなる。
【0030】
加えて、本実施形態において制御部80は、ハイビーム配光の特定箇所について減光又は消灯させるために(ADB(Adaptive Driving Beam)制御を行うために)ハイ光源70に対してもデューティ比制御を行うことが好ましい。この場合、ドーバー対応のデューティ比制御と、ADB制御時のデューティ比制御とを同じ制御部80で実行することができることとなる。
【0031】
次に、本実施形態に係る車両用灯具1を搭載した車両が左側通行の地域から右側通行の地域に移動してドーバー対応を行ったときの動作について説明する。
【0032】
まず、車両が左側通行の地域を走行している場合、例えば図5の通常時に示すように、制御部80は、第1光源61についてデューティ比を80%に制御し、遠方配光パターン用光源62b及び拡散配光パターン用光源62aについてデューティ比を60%に制御する。
【0033】
その後、車両が右側通行の地域に移動したとすると、車両側又は外部からの指示に応じてドーバー対応が行われる。この際、制御部80は、第1光源61についてデューティ比を低下又は0%とすることで、第1光源61について減光又は消灯制御を行う。さらに、制御部80は、第2光源62についてデューティ比を上げることで、第2光源62からの出射光量を増加させる。これにより、第1光源61について減光又は消灯制御を行ったことによる全体的な光量の低下を抑え、光量の低下に伴う視認性の低下を防止するようにしている。
【0034】
特に、制御部80は、第1又は第2のドーバー対応を行った場合、遠方配光パターン用光源62bについて第1光源61よりも出射光量を大きく、且つ、拡散配光パターン用光源62aよりも出射光量を大きく又は同程度とすることとなり、遠方の視認性をより確保してより一層遠方の視認性を確保することとなる。
【0035】
なお、図5に示すように、制御部80は、第1光源61について減光又は消灯制御の前後において、デューティ比の合計が同じとなっていることから、第1光源61、拡散配光パターン用光源62a、及び遠方配光パターン用光源62bについてデューティ比に応じた消費電力が互いに同じである場合、総消費電力も同じとなる。
【0036】
加えて、制御部80は、ハイビーム配光のADB制御(デューティ比制御)も実行することから、同一の制御部80によってドーバー対応とADB制御とを実行することとなる。
【0037】
このようにして、本実施形態に係る車両用灯具1によれば、カットオフラインCLを有した第1配光パターンP1を形成するための第1光源61について減光又は消灯制御した場合、第2光源62について出射光量を増加させる制御を実行するため、異なる通行帯に応じた配光パターンを形成するために第1光源61について減光又は消灯制御した場合に全体的な光量の低下を抑えることができ、光量の低下に伴う視認性の低下を防止することができる。
【0038】
また、第2光源62は拡散配光パターン用光源62aと遠方配光パターン用光源62bとを備え、第1光源61について減光又は消灯制御した場合、遠方配光パターン用光源62bの出射光量を、第1光源61の出射光量よりも高く、且つ、拡散配光パターン用光源62aの出射光量と同程度又はこの出射光量よりも高くした場合には、第1光源61の減光又は消灯制御時において、遠方の視認性が確保されることとなる。よって、より適切に視認性の低下を防止することができる。
【0039】
また、第1光源61について減光又は消灯制御する前後において、第1光源61と第2光源62との総消費電力が略同じとされているため、一方の通行帯に応じた配光パターンを形成する際の消費電力が他方の通行帯に応じた配光パターンを形成する際の消費電力より高くなってしまう事態を防止することができる。
【0040】
また、ロー光源60、ハイ光源70及び制御部80が同一基板Bに搭載されているため、コンパクト化を図りつつも、ハイビーム配光の特定箇所について減光又は消灯させる例えばADBを実現する際に実行されるデューティ比制御と、異なる通行帯に応じた配光パターンを形成するために実行されるデューティ比制御とを同じ制御部80で実現することができ、制御部80の数の増加も抑えてより一層のコンパクト化を図ることができる。
【0041】
次に、本発明の第2実施形態に係る車両用灯具について説明する。第2実施形態に係る車両用灯具は、第1実施形態に係る車両用灯具1と同様であるが、一部構成が異なっている。以下、第1実施形態との相違点について説明する。
【0042】
図6は、第2実施形態に係る車両用灯具2を示す正面図である。第2実施形態に係る車両用灯具2は、例えば車両右前方に前照灯として搭載されるものであって、図6に示すように、第1光源61、拡散配光パターン用光源62a、及び、遠方配光パターン用光源62bがそれぞれ別基板に搭載されており、それぞれに対して光学レンズ90を備え、これら構成が図示しないハウジングとアウターレンズとによって形成された灯室内に配置されている。
【0043】
第1レンズ91は、第1光源61の前方に取り付けられ、第1光源61からの光を受け入れると共にアウターレンズ側に出射するものである。第1光源61と第1レンズ91とは、第1光学ユニットU1を形成する。
【0044】
第2レンズ92は、第1レンズ91とは別体のレンズ部材であって、第2光源62の前方に取り付けられ、第2光源62からの光を受け入れると共にアウターレンズ側に出射するものである。第2光源62と第2レンズ92とは、第2光学ユニットU2を形成する。
【0045】
ここで、第2レンズ92は、拡散配光パターン用レンズ92aと、遠方配光パターン用レンズ92bとを備えている。拡散配光パターン用レンズ92aは、拡散配光パターン用光源62aの前方に取り付けられ、拡散配光パターン用光源62aからの光を受光してアウターレンズ側に出射する。拡散配光パターン用光源62aと拡散配光パターン用レンズ92aとは、拡散光学ユニットU21を形成する。遠方配光パターン用レンズ92bは、遠方配光パターン用光源62bの前方に取り付けられ、遠方配光パターン用光源62bからの光を受光してアウターレンズ側に出射する。遠方配光パターン用光源62bと遠方配光パターン用レンズ92bとは、遠方光学ユニットU22を形成する。
【0046】
ここで、第1光学ユニットU1は、図3(b)に示したようにカットオフラインCLを有した第1配光パターンP1を形成する。また、拡散光学ユニットU21は、図3(d)に示したような拡散配光パターンDP1を形成する。さらに、遠方光学ユニットU22は、図3(c)に示したような遠方配光パターンDP2を形成する。
【0047】
なお、このような車両用灯具2についても第1実施形態と同様に、ドーバー対応時に第1光源61について減光又は消灯制御を実行され、第2光源62について出射光量を増加させられる。
【0048】
このようにして、第2実施形態に係る車両用灯具2によれば、第1実施形態と同様に、光量の低下に伴う視認性の低下を防止することができる。また、遠方の視認性を確保して、より適切に視認性の低下を防止することができる。加えて、一方の通行帯に応じた配光パターンを形成する際の消費電力が他方の通行帯に応じた配光パターンを形成する際の消費電力より高くなってしまう事態を防止することができる。
【0049】
さらに、第2実施形態によれば、第1光源61を有すると共に第1光源61からの光を出射する第1レンズ91を有した第1光学ユニットU1と、第2光源62を有すると共に第2光源62からの光を出射する第2レンズ92を有した第2光学ユニットU2とを備えるため、第1光学ユニットU1によって第1配光パターンP1を形成し、第2光学ユニットU2によって第2配光パターンP2を形成することができ、第1光源61と第2光源62とを同一ユニット内に備える場合と比較すると、それぞれの配光パターンを形成し易くして光束利用効率の向上を図ることができる。
【0050】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよいし、公知・周知技術を組み合わせてもよい。
【0051】
なお、本実施形態に係る車両用灯具1,2は、通常時が左側通行用でありドーバー対応時に右側通行用の配光を想定しているが、これに限らず、逆であってもよい。
【0052】
さらに、本実施形態に係る車両用灯具1,2は、デューティ比制御によって光量を制御しているが、これに限らず、第1及び第2光源61,62に供給する電流の大きさを制御して光量を制御するようにしてもよいし、第1及び第2光源61,62をそれぞれ複数個備える場合には、点灯個数を制御するようにしてもよい。
【0053】
また、ロービーム配光LDを構成する第1配光パターンP1、拡散配光パターンDP1及び遠方配光パターンDP2は図3に示した形状に限らず、ロービーム配光LDを形成できる範囲内において形状は適宜変更可能である。
【0054】
また、本実施形態においては前照灯を前提に説明したが、これに限らず、適用可能であれば、他の方向を照射する車両用灯具に対して適用されてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1,2 :車両用灯具
10 :第1導光レンズ
11 :第1レンズ部
12 :第2レンズ部
13 :第3レンズ部
20 :第2導光レンズ
30 :シェード
40 :投影レンズ
50 :コネクタ部
60 :ロー光源
61 :第1光源
62 :第2光源
62a :拡散配光パターン用光源
62b :遠方配光パターン用光源
70 :ハイ光源
80 :制御部(光学制御部)
90 :光学レンズ
91 :第1レンズ
92 :第2レンズ
92a :拡散配光パターン用レンズ
92b :遠方配光パターン用レンズ
AX :レンズ軸
B :基板
CL :カットオフライン
DP1 :拡散配光パターン
DP2 :遠方配光パターン
LD :ロービーム配光
P1 :第1配光パターン
P2 :第2配光パターン
RP1,RP2:規制ポイント
U1 :第1光学ユニット
U2 :第2光学ユニット
U21 :拡散光学ユニット
U22 :遠方光学ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6