(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062439
(43)【公開日】2022-04-20
(54)【発明の名称】自走式ロボット
(51)【国際特許分類】
B25J 5/00 20060101AFI20220413BHJP
【FI】
B25J5/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020170452
(22)【出願日】2020-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】599011687
【氏名又は名称】学校法人 中央大学
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】中村 太郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 文臣
(72)【発明者】
【氏名】多加谷 一輝
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS14
3C707CS08
3C707HS14
3C707HS21
3C707WA18
3C707WA25
(57)【要約】
【課題】推進力を得るためのアクチュエータの数の増加を抑制しつつ、牽引力となる推進力の増加を可能な自走式ロボットを提供する。
【解決手段】管内を移動する自走式ロボットであって、流体の供給により管軸方向に伸長し、流体の排出により管軸方向に収縮する伸縮ユニットと、流体の供給により管径方向に膨張し、管内壁面を把持する把持ユニットとを交互に連結して備え、伸縮ユニットの数が奇数個であるときに、把持ユニットの一方側に連結された伸縮ユニットが伸長するときは、他方側に連結された伸縮ユニットが収縮するように、把持ユニットの両側に連結された伸縮ユニットの伸縮動作を互いに拘束する拘束手段を備える構成とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
管内を移動する自走式ロボットであって、
流体の供給により管軸方向に伸長し、流体の排出により管軸方向に収縮する伸縮ユニットと、
流体の供給により管径方向に膨張し、管内壁面を把持する把持ユニットと、
を交互に連結して備え、
前記伸縮ユニットの数が奇数個であるときに、
把持ユニットの一方側に連結された伸縮ユニットが伸長するときは、他方側に連結された伸縮ユニットが収縮するように、把持ユニットの両側に連結された伸縮ユニットの伸縮動作を互いに拘束する拘束手段を備えることを特徴とする自走式ロボット。
【請求項2】
前記拘束手段は、伸縮ユニットに挟まれた把持ユニット毎に対応して設けられたことを特徴とする請求項1に記載の自走式ロボット。
【請求項3】
前記拘束手段は、伸縮ユニットに挟まれた把持ユニットの1つおきに対応して設けられたことを特徴とする請求項1に記載の自走式ロボット。
【請求項4】
管内を移動する自走式ロボットであって、
流体の供給により管軸方向に伸長し、流体の排出により管軸方向に収縮する伸縮ユニットと、
流体の供給により管径方向に膨張し、管内壁面を把持する把持ユニットと、
を交互に連結して備え、
前記伸縮ユニットが偶数個であるときに、
進行方向最後尾側に位置する伸縮ユニットが収縮するときは、進行方向側に位置する各把持ユニットの進行方向側に連結された伸縮ユニットが伸長するように、最後尾側に位置する伸縮ユニットと進行方向側に位置する各把持ユニットの進行方向側に連結された伸縮ユニットとの伸縮動作を互いに拘束する拘束手段を備えたことを特徴とする自走式ロボット。
【請求項5】
前記伸縮ユニットと前記把持ユニットとの連結において伸縮ユニットが進行方向先頭に配置されたことを特徴とする請求項1乃至請求項4いずれかに記載の自走式ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自走式ロボットに関し、特に、蠕動運動を模した動作により推進する波動伝播型の自走式ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、工場等の配管検査では、押し込み式の内視鏡が用いられている。押し込み式の内視鏡は、先端に設けたカメラから延長する配線を作業者が管内に押し込み、カメラを管内の奥へと移動させることで管内の状態の確認に利用されている。しかし、実際の配管には、複数の曲部が設けられているとともにその長さも長距離であることが多い。このため押し込み長さが長くなると、配線と管内壁の摩擦が大きくなり、作業者による配線を押し込む手元の力が内視鏡の先端までうまく伝達されないため、管路全体の検査に困難さを生じさせている。
そこで押し込み式の内視鏡に代わる検査手法として、自走式ロボットを用いた内視鏡の利用が提案されている。自走式ロボットを配管の検査に用いるには、その性能として、小型であることに加え、前述の配線の管壁との摩擦よりも大きな推進力があること、さらに配管形状に柔軟に対応可能であることが求められる。例えば、自走式ロボットには、車輪型、クローラ型、蛇型、波動伝播型等の駆動形態の利用が挙げられる。しかし、車輪型、クローラ型、蛇型の自走式ロボットによって内視鏡を長距離移動させるための力を得るには、機構が大型化しやすく、工場の配管内の検査には適用が困難と考えられる。一方、波動伝播型、例えば、特許文献1に示すような流体圧駆動の自走式ロボットは、主として弾性体により形成された管を把持するアクチュエータ及び進行方向への推進力を生じさせるアクチュエータを複数連結して構成される。このような自走式ロボットは、小型でも大きな推進力が得られるとともに、その柔軟構造により、工場の長距離細径かつ複雑に入り組んだ配管内の検査に利用可能と期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示すような波動伝播型の流体圧駆動の自走式ロボットを用いた場合であっても、検査対象となる配管が長距離、かつ複数の曲部を有する複雑なものであることを考慮すると、内視鏡の配線に駆動源となる流体の供給管等を加えた牽引物を牽引して推進するための、より大きな牽引力が必要とされる。特に、自走式ロボットが管内奥へと進行すればするほど、これら牽引物と配管との間に生じる摩擦等の負荷が大きくなり、走行速度の低下や走行の停止等が懸念される。例えば、負荷を軽減する方法の一つとして、内視鏡の配線に無線通信を利用することも考えられるが、配管には鉄を素材とするものもあり、無線通信による管内映像の取得は困難であり、負荷の減少には限界がある。また、特許文献1の自走式ロボットによって大きな牽引力を得るためには、連結されるアクチュエータの数が倍増し、複雑な管内の移動に困難さを生じさせてしまう。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、推進力を得るためのアクチュエータの数の増加を抑制しつつ、推進に必要とされる牽引力の増加を可能な自走式ロボットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための自走式ロボットの構成として、管内を移動する自走式ロボットであって、流体の供給により管軸方向に伸長し、流体の排出により管軸方向に収縮する伸縮ユニットと、流体の供給により管径方向に膨張し、管内壁面を把持する把持ユニットとを交互に連結して備え、伸縮ユニットの数が奇数個であるときに、把持ユニットの一方側に連結された伸縮ユニットが伸長するときは、他方側に連結された伸縮ユニットが収縮するように、把持ユニットの両側に連結された伸縮ユニットの伸縮動作を互いに拘束する拘束手段を備える構成とした。
本構成によれば、自走式ロボットを構成するユニット数の増加を抑制しつつ推進に必要とされる牽引力を大きくすることができる。
拘束手段は、伸縮ユニットに挟まれた把持ユニット毎に対応して設けたり、伸縮ユニットに挟まれた把持ユニットの1つおきに対応して設けたりしても良い。
また、自走式ロボットの他の構成として、管内を移動する自走式ロボットであって、流体の供給により管軸方向に伸長し、流体の排出により管軸方向に収縮する伸縮ユニットと、流体の供給により管径方向に膨張し、管内壁面を把持する把持ユニットと、を交互に連結して備え、伸縮ユニットが偶数個であるときに、進行方向最後尾側に位置する伸縮ユニットが収縮するときは、進行方向側に位置する各把持ユニットの進行方向側に連結された伸縮ユニットが伸長するように、最後尾側に位置する伸縮ユニットと進行方向側に位置する各把持ユニットの進行方向側に連結された伸縮ユニットとの伸縮動作を互いに拘束する拘束手段を備える構成としても良い。
また、伸縮ユニットと把持ユニットとの連結において伸縮ユニットを進行方向先頭に配置することで、自走式ロボットを構成するユニット数を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】把持ユニットの軸方向断面図及び動作図である。
【
図3】伸縮ユニットの軸方向断面図及び動作図である。
【
図5】走行部により得られる推進力(牽引力)の発生メカニズムを示す図である。
【0008】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、各図に基づき説明する。
図1は、本実施形態に係る自走式ロボット1の一実施形態を示す概略構成図である。
自走式ロボット1は、概略、移動体としての走行部10と、走行部10の動作を制御する制御手段としての制御部100とで構成される。
【0010】
図1に示すように、走行部10は、管z内に設けられ、管zの内壁を走行面として管z内を移動する実質的なロボットとして機能する。走行部10は、管zの内壁面との間に摩擦力を生じさせる把持ユニット20と、推進力を生じさせる伸縮ユニット50とを主たる構成として備える。
【0011】
本実施形態では、走行部10は、2つの把持ユニット20と、3つの伸縮ユニット50とを直列に、把持ユニット20が伸縮ユニット50の間に位置するように交互に連結される。
【0012】
図2(a)は、把持ユニット20の構成を示す軸方向断面図である。把持ユニット20は、内筒22と、外筒24と、端部部材26;26とを備える。把持ユニット20は、二重管をなすように内筒22の外周に外筒24が配置され、内筒22の外周と外筒24の内周との間に、閉空間の流体室S20を形成すべく、端部部材26;26が設けられる。
【0013】
内筒22は、気密性を有する素材で構成され、軸方向に伸縮が可能であり、外周からの圧力に対して半径方向にはほとんど拡縮が見られない特性を有する筒体として形成される。本実施形態では、内筒22は、軸方向への伸縮を許容し、半径方向に拡縮のない円筒状の蛇腹を用いた。
【0014】
外筒24は、弾性体より形成される円筒状の筒本体と、当該筒本体の内部に密に内挿された複数の繊維とから構成される所謂軸方向繊維強化型人工筋肉からなる。筒本体の材質としては、シリコーンゴム等の合成ゴム、或いは天然ラテックスゴム等の天然ゴム等の気密性及び伸縮性を有する弾性素材が好適である。
繊維は、外筒24を形成する筒本体の軸線に沿って一端側から他端側まで連続して延長するように筒本体内に内挿される。繊維の内挿される形態は、例えば、層状に複数積層して内挿しても良く、積層せずに単層であっても良い。なお、繊維が筒本体の軸方向に沿って延長するとは、軸方向に対して多少の交差を許容する。また、前述の一端側から他端側まで連続するとは、一本の繊維が外筒24の一端側から他端側に到達する状態や、外筒の軸方向長さよりも短い複数の繊維を、軸方向に重複するように分布させて一端側から他端側まで到達するものであっても良い。
繊維の素材には、軸方向への伸縮変化の小さい素材が好適である。例えば、繊維の素材には、例えば、アラミド繊維、炭素(カーボン)繊維、ガラス繊維、ナイロン、ポリアミド系繊維やポリオレフィン系繊維、金属繊維等の被伸長性を有するものを適宜選択して用いることができる。繊維に適当なプライマー処理、又は、表面酸化処理を行うことで、接着性を十分に向上させることができるが、好ましくは、ゴムとの接着性に応じて選択すると良い。また、繊維の形態は、フィラメント、ヤーン(スパン・ヤーン及びフィラメント・ヤーン)、ストランド等のいずれの形態でも用いることができ、さらに、撚りをかけずに収束させた無撚繊維、これらの繊維を複数本撚って作成した繊維を用いることも可能である。繊維の種類にもよるが、二種類以上の素材の異なる繊維や形態の異なる繊維を組み合わせても良い。
筒本体を形成する素材は、後述する流体室S20への圧縮空気の給排によってその形状が変化し得る材質であれば如何なる材質であっても良い。また、筒本体の厚さや繊維の配置については、外筒24の空気排出時の伸長する力等を考慮して決められる。
【0015】
端部部材26;26は、内筒22と外筒24とを同軸に配置可能に、かつ、内筒22の外周と外筒24の内周との間に形成される空間を、内筒22及び外筒24の各端部側から閉塞可能な、概略円筒状の筒体として構成される。各端部部材26;26の一端側の内周には内筒22を取り付けるための内筒固定部28、外周には外筒24を取り付けるための外筒固定部30が設けられている。
【0016】
内筒固定部28には、内筒22の端部が挿入され、内筒22の外周と気密状態を維持可能に固定される。内筒固定部28における内筒22の固定は、例えば、内筒22に螺旋状の蛇腹を用いる場合には、この螺旋に対応してねじ込み可能な溝を内筒固定部28として形成し、内筒22の外周が端部部材26に密着するように固定しても良く、特に内筒固定部28の形状についてはこれに限定されず、内筒22の外周の形状に応じて適宜好適な形状で形成すれば良い。また、別途、接着や止め輪などの固定手段を用いることで、内筒22の外周を端部部材26に密着させて、端部部材26から脱落不能に固定しても良い。
また、本実施形態では、内筒固定部28は、内筒22の外周を密着させるように形成するものとしたが、内筒22の内周が密着するように端部部材26に形成しても良い。
【0017】
外筒固定部30には、外筒24の端部が挿入され、外筒の内周と気密状態を維持可能に固定される。外筒24の外筒固定部30への固定は、例えば、非伸縮のひも状の固定部材32を固定手段として外筒24の外周側から巻き付け、端部部材26に締め付け固定すれば良い。この場合、
図2に示すように、端部部材26に円周方向に沿って一周分窪む溝34を形成しておくことで、固定部材32のずれ、即ち、外筒24の端部部材26からの脱落を防止することができる。
【0018】
各端部部材26において内筒固定部28及び外筒固定部30が形成された端部とは逆側の端部側には、軸方向に突出するおねじ部36が設けられる。おねじ部36は、端部から軸方向に所定長さ形成され、把持ユニット20を伸縮ユニット50に連結するときの連結機構として機能する。
【0019】
また、一方の端部部材26には、流体室S20への空気の給排を可能にするための孔38が設けられている。孔38は、一端が端部部材26の外側の端面に開口し、他端が外筒固定部30に設けられた溝34よりも内側に開口するように形成され、流体室S20に連通している。端面側に開口する孔38の一部は、後述のチューブ118A;118Bが挿入可能に形成され、他部よりも大径に形成されている。
【0020】
そして、把持ユニット20は、孔38を介して流体室S20に空気が供給されると、外筒24に内挿された繊維が軸方向への伸長を規制するため、
図2(b)に示すように、外筒24が半径方向に膨張しつつ軸方向に収縮する。この外筒24の軸方向への収縮に伴ない、内筒22も従属的に軸方向に収縮する。したがって、外筒24を管zの内径以上に膨張させることで把持ユニット20に管zを把持させることができる。なお、以下の説明において、この膨張した状態を把持状態という場合がある。また、流体室S20に供給された空気が孔38を介して排出されると、外筒24の弾性及び内筒22の弾性による復元力により、
図2(c)に示すように、半径方向に収縮しつつ軸方向に伸長して元の状態に戻る。なお、以下の説明において、この状態を把持開放状態という場合がある。つまり、把持ユニット20は、流体室S20への空気の供給、又は、流体室S20からの排出により、軸方向に伸縮するとともに半径方向に膨縮するアクチュエータとして機能する。
【0021】
図3(a)は、伸縮ユニット50の構成を示す軸方向断面図である。伸縮ユニット50は、外観視において円筒状に形成され、空気を供給することで軸方向に伸長し、排出することで軸方向に収縮するように構成される。なお、伸縮ユニット50は、把持ユニット20と異なり、空気の給排に伴ない半径方向への膨縮を小さく構成されることが好ましい。
【0022】
本実施形態の伸縮ユニット50は、把持ユニット20と同様に、内筒52と、外筒54と、端部部材56;56とを備える。伸縮ユニット50は、二重管をなすように内筒52の外周に外筒54を配置し、内筒52の外周と外筒54の内周との間に、閉空間の流体室S50を形成すべく、内筒52及び外筒54のそれぞれの端部に端部部材56;56が設けられる。
【0023】
内筒52及び外筒54は、それぞれコイルばね58;62と、被覆体60:64とで構成されている。
コイルばね58;62には、それぞれ引っ張りばねが用いられる。外筒54を形成するコイルばね62は、内筒52を形成するコイルばね58の外径寸法よりも大径である。内筒52の外周には被覆体60が、外筒54の外周には被覆体64がそれぞれ設けられる。
【0024】
被覆体60;64は、気密性及び可撓性を有する非伸縮性の素材を筒状に形成したものである。被覆体60;64は、コイルばね58;62の外周に沿って囲繞するように設けられ、コイルばね58;62の伸縮動作を妨げないように形成されている。即ち、被覆体60;64は、コイルばね58;62の自然長の長さよりも長く形成されている。被覆体60;64には、例えば、ビニールやアルミ箔等を筒状に形成したものを利用することができる。
【0025】
端部部材56;56は、内筒52と外筒54とを同軸に配置可能に、かつ、内筒52の外周と外筒54の内周との間に形成される空間を、内筒52及び外筒54の各端部側から閉塞可能な、概略円筒状の筒体として構成される。
各端部部材56の一端側の内周側には内筒52を取り付けるための内筒固定部66と、外周側には外筒54を取り付けるための外筒固定部68とが設けられている。
【0026】
内筒固定部66は、例えば、内筒52を構成するコイルばね58がねじ込み可能に形成され、コイルばね58が端部部材56から脱落不能に取り付けられる。また、コイルばね58が内筒固定部66にねじ込み固定された状態において、コイルばね58の外周を囲繞する被覆体60が内筒固定部66に対して非伸縮性のひも状の括り部材で締め付けることで内筒固定部66に対して気密状態を維持するように密着される。
【0027】
外筒固定部68は、例えば、外筒54を構成するコイルばね62がねじ込み可能に形成され、コイルばね62が端部部材56から脱落不能に取り付けられる。また、コイルばね62が外筒固定部68にねじ込み固定された状態において、コイルばね62の外周を囲繞する被覆体64が外筒固定部68に対して非伸縮性のひも状の括り部材で締め付けることで外筒固定部68に対して気密状態を維持するように密着される。
【0028】
各端部部材56において内筒固定部66及び外筒固定部68が形成された端部とは逆側の端部側の内周には、めねじ部70が設けられる。めねじ部70は、把持ユニット20の端部部材26に形成されたおねじ部36が螺入可能に、端面から軸方向に所定長さ形成される。このめねじ部70は、把持ユニット20を伸縮ユニット50に連結するときの連結機構として機能する。
【0029】
また、一方の端部部材56には、流体室S50への空気の給排を可能にするための孔72が設けられている。孔72は、一端がめねじ部70よりも内側の内周面に開口し、他端が外筒固定部68よりも内側に開口するように形成されている。内周面に開口する孔72には、後述のチューブ119A~119Cを挿入するためのジョイント74が取り付けられる。
【0030】
伸縮ユニット50は、孔72を介して流体室S50に空気が供給されると、
図3(b)に示すように、内筒52及び外筒54を形成するコイルばね58;62の付勢力に対抗しながら軸方向へのみ伸長する。また、流体室S50に供給された空気が孔72を介して排出されると、
図3(c)に示すように、内筒52及び外筒54を形成するコイルばね58;62の復元力により軸方向に収縮する。つまり、伸縮ユニット50は、流体室S50への空気の供給、又は、流体室S50からの排出により、軸方向にのみ伸縮するアクチュエータとして機能する。
【0031】
上記構成の把持ユニット20及び伸縮ユニット50は、
図1に示すように、進行方向側から伸縮ユニット50、把持ユニット20が交互に連結される。この連結により、走行部10には、連結された複数の伸縮ユニット50の内筒52及び複数の把持ユニット20の内筒22により連通する一つの中空空間が形成される。
【0032】
この中空空間には、複数の伸縮ユニット50の動作を相互に作用させるための2本の拘束手段T1;T2と、把持ユニット20及び伸縮ユニット50に空気を給排するための複数のチューブ118A~118C,119A;119B等が延長する。また、走行部10の先頭に内視鏡を構成するカメラを取り付け、カメラから延長する配線を中空空間を利用して延長させることができる。
なお、以下の説明では、連結された伸縮ユニット50及び把持ユニット20を特定するために、伸縮ユニット50については先頭側から伸縮ユニット50A,50B,50Cなどといい、把持ユニット20については先頭側から把持ユニット20A,20Bという。また、伸縮ユニット50(A~C)の端部部材56;56、把持ユニット20(A~C)の端部部材26;26については進行方向を基準として、前方端部部材56や前方端部部材26、後方端部部材56や後方端部部材26等という。
【0033】
拘束手段T1;T2は、それぞれ可撓性を有する非伸縮性のひも状部材で構成される。拘束手段T1;T2は、可撓性及び非伸縮性のものであり、所定の引張強度が得られるものであれば、金属製、化繊等に関わらず素材は限定されない。
【0034】
拘束手段T1は、把持ユニット20Aを挟んで連結された伸縮ユニット50Aと、伸縮ユニット50Bとが連動して動作するように取り付けられる。また、拘束手段T2は、把持ユニット20Bを挟んで連結された伸縮ユニット50Bと、伸縮ユニット50Cとが連動して動作するように取り付けられる。
【0035】
本実施形態では、
図1,
図4に示すように、拘束手段T1は、一端を伸縮ユニット50Aの前方端部部材56に固定し、他端を伸縮ユニット50Bの後方端部部材56に固定するものとした。また、拘束手段T2は、一端を伸縮ユニット50Bの前方端部部材56に固定し、他端を伸縮ユニット50Cの後方端部部材56に固定するものとした。即ち、拘束手段T1は、伸縮ユニット50Aの前側の端部から伸縮ユニット50Bの後側の端部までの距離を一定に拘束するように設けられ、拘束手段T2は、伸縮ユニット50Bの前側の端部から伸縮ユニット50Cの後側の端部までの距離を一定に拘束するように設けられる。
【0036】
なお、拘束手段T1の他端が固定される位置は、伸縮ユニット50Bの後方端部部材56に限定されない。伸縮ユニット50Bの後方端部部材56に固定されたものと見なせる位置であれば、例えば、伸縮ユニット50Bの後方端部部材56に連結される把持ユニット20Bの前方端部部材26若しくは後方端部部材26、或いは、把持ユニット20Bの後方端部部材26に連結される伸縮ユニット50Cの前方端部部材56であっても良い。
また、拘束手段T2の一端が固定される位置は、伸縮ユニット50Bの前方端部部材56に限定されない。伸縮ユニット50Bの前方端部部材56に固定されたものと見なせる位置であれば、例えば、伸縮ユニット50Bの前方端部部材56に連結される把持ユニット20Aの前方端部部材26若しくは後方端部部材26、或いは、把持ユニット20Aの前方端部部材26に連結される伸縮ユニット50Aの後方端部部材56であっても良い。
【0037】
拘束手段T1;T2を端部部材26や端部部材56に固定する方法は、特に限定されず、拘束手段T1;T2に張力が加わったときに固定状態が維持されるものであれば良い。
【0038】
拘束手段T1;T2の長さは、伸縮ユニット部50A~50Cに設定された軸方向への伸縮量に基づいて設定される。具体的には、拘束手段T1の長さは、伸縮ユニット50Aの伸縮動作が把持ユニット20Aを挟んで連結された伸縮ユニット50Bに作用するように設定され、拘束手段T2の長さは、把持ユニット20Bの動作が把持ユニット20Bを挟んで連結された伸縮ユニット50Cに作用するように設定される。例えば、拘束手段T1;T2は、伸縮ユニット50Cが最大限伸長し、伸縮ユニット50Aと伸縮ユニット50Bが最大限収縮した状態を保ちながら拘束手段T1,T2により各伸縮ユニット50A~50Cの伸長及び伸縮を拘束するように長さが設定される。
【0039】
把持ユニット20A;20Bの膨張・収縮、及び伸縮ユニット50A~50Cの伸長・収縮を制御する制御部100は、例えば、
図1に示すように構成することができる。制御部100は、把持ユニット20A;20Bを膨張、伸縮ユニット50A~50Cを伸長させるときに、圧縮空気を供給する空気供給手段110と、把持ユニット20A;20Bを収縮、伸縮ユニット50A~50Cを収縮させるときに、空気を排出する空気排出手段120と、空気供給手段110から把持ユニット20A;20B及び伸縮ユニット50A~50Cに空気を供給、空気排出手段120により把持ユニット20A;20B及び伸縮ユニット50A~50Cから空気をするためのチューブ118A;118B及びチューブ119A~119C等を備える。
【0040】
空気供給手段110は、例えば、圧縮空気を生成するコンプレッサー、コンプレッサーにより生成された圧縮空気の圧力を所定の圧力に整圧するレギュレータ、レギュレータにより整圧された圧縮空気を所定の順序で把持ユニット20A;20B及び伸縮ユニット50A~50Cに供給、その供給状態の維持、また、供給を停止して把持ユニット20A;20B及び伸縮ユニット50A~50Cから空気を排出可能なバルブ機構などで構成することができる。また、空気排出手段120には、真空ポンプを用いることができる。空気排出手段120は、前述のバルブ機構に接続され、バルブ機構が空気を排出可能なときに強制的に把持ユニット20A;20B及び伸縮ユニット50A~50Cから空気を排出かのうに構成することが好ましい。そして、直列に連結された把持ユニット20A;20B及び伸縮ユニット50A~50Cが、波動を伝播するように、換言すれば、蠕動運動を模した動作をするように、バルブ機構を制御し、走行部10を前進、或いは後進させればよい。
なお、前述の制御部100の構成は一例であって、走行部10が前進、後進、停止等の動作の制御が可能なものであれば前述の構成に限定されない。
【0041】
図4は、走行部10の推進動作を示す図である。なお、同図では、管zは省略してある。
図4(a)は、走行部10を走行させるときの初期状態であるものとする。同図では、把持ユニット20A;20Bが膨張して管zを把持した状態にあり、伸縮ユニット50A;50Cが収縮し、伸縮ユニット50Bが伸長した状態にある。
次に、
図4(b)に示すように、把持ユニット20A及び伸縮ユニット50A~50Cを
図4(a)に示す状態を維持したまま、後方の把持ユニット20Bの把持状態を開放する。
次に、
図4(c)に示すように、把持ユニット20Aの把持状態及び把持ユニット20Bの開放状態を維持したまま、伸縮ユニット50Bの伸長状態を開放するとともに、先頭の伸縮ユニット50Aと後尾の伸縮ユニット50Cを伸長させる。把持ユニット20Aが把持状態にあるため、拘束手段T1を介して伸縮ユニット50Aに接続された伸縮ユニット50Bは、伸縮ユニット50Aの伸長に伴い把持ユニット20Aに押し付けられるように収縮する。加えて、拘束手段T2を介して伸縮ユニット50Cに接続された伸縮ユニット50Bは、伸縮ユニット50Cの伸長に伴い、さらに把持ユニット20Aに押し付けられるように収縮することになる。これにより、走行部10の伸縮ユニット50Cの後方端部部材56には、進行方向への牽引力が得られる。
次に、
図4(d)に示すように、把持ユニット20Aの把持状態と、伸縮ユニット50A;50Cの伸長状態と、伸縮ユニット50の収縮状態とを維持したまま、把持ユニット20Bを膨張させて管zを把持させる。
次に、
図4(e)に示すように、把持ユニット20Bの把持状態と、伸縮ユニット50A;50Cの伸長状態と、伸縮ユニット50の収縮状態とを維持したまま、把持ユニット20Aの把持状態を開放する。
次に、
図4(f)に示すように、把持ユニット20Bの把持状態と、把持ユニット20Aの把持状態の開放とを維持したまま、伸縮ユニット50A;50Cの伸長状態を開放するとともに、伸縮ユニット50Bを伸長させる。
そして、上記
図4(a)~(f)に示す動作を繰り返すことで、走行部10が前進する。
【0042】
図5は、走行部10により得られる推進力(牽引力)の発生メカニズムを示す図である。
図5(a)は、把持ユニット20Aが把持状態、把持ユニット20Bが把持の開放状態にあるとともに、伸縮ユニット50A~50Cが自然状態を示している。自然状態とは、空気が供給されておらず、流体室S50が大気開放されている状態をいう。また、
図5(b)は、把持ユニット20Aを把持状態、把持ユニット20Bを把持開放状態、伸縮ユニット50A及び伸縮ユニット50Bに空気を供給して伸長させるとともに伸縮ユニット50Bから空気を排出して収縮させたときを示し、牽引力を発生している状態を示している。
図5(b)は、走行部10の動作を示した
図4(c)に対応する。
【0043】
なお、
図5では、拘束手段T1の他端が固定された位置を、伸縮ユニット50Bの後方端部部材56から把持ユニット20Bの中央に、拘束手段T2の一端が固定された位置を、伸縮ユニット50Bの前方端部部材56からは維持ユニット20Aの中央に前述の説明からずらして示しているが、拘束手段T1の他端が固定された伸縮ユニット50Bの後方端部部材56に作用する力は、この後方端部部材56に連結される把持ユニット20Bの前方端部部材26や後方端部部材26、或いは、この後方端部部材26に連結される伸縮ユニット50Cの前方端部部材56のいずれにおいても同じと見なすことができるため、拘束手段T1が把持ユニット20Bの軸方向長さの中央に固定されているものとして示した。また、伸縮ユニット50Bの拘束手段T2の一端が固定される前方端部部材56についても同様に考えることができるため、拘束手段T2が把持ユニット20Aの軸方向長さの中央に固定されているものとして示した。
【0044】
以下、本実施形態に係る走行部10における牽引力の発生メカニズムについて説明する。
本実施形態に係る走行部10により得られる牽引力は、拘束手段T1により動作が拘束される2つの把持ユニット20A;20B及びこれらを連結する1つの把持ユニット20Aと、拘束手段T2により動作が拘束される2つの把持ユニット20B;20C及びこれらを連結する1つの把持ユニット20Bと、を基本構成とする2組のユニット群の協働によって得られる。そこで、
図5(b)に示す走行部10の動作を、拘束手段T1により拘束される伸縮ユニット50A;50Bの動作と、拘束手段T2により拘束される伸縮ユニット50B;50Cの動作の2つに分けて説明する。
【0045】
まず、拘束手段T1により拘束される伸縮ユニット50A;50Bの動作について考える。
把持ユニット20Aが把持状態であることから、拘束手段T1の一端が固定された伸縮ユニット50Aの前方端部部材56は、供給された空気の圧力によって進行方向前方に押し出され、進行方向への能動的な力が作用する。この力は、拘束手段T1の他端が固定された伸縮ユニット50Bの後方端部部材56を進行方向に牽引し、後方端部部材56に進行方向への受動的な力を作用させる。つまり、伸縮ユニット50Aの前方端部部材56の進行方向への移動が、拘束手段T1を介して伸縮ユニット50Bの後方端部部材56に伝達されることにより、各端部部材56;56のそれぞれに進行方向に向かう力が得られる。
【0046】
また、拘束手段T1の他端が固定された伸縮ユニット50Bの後方端部部材56は、空気の排出によって進行方向前方へと吸引され、進行方向への能動的な力が作用する。つまり、伸縮ユニット50Bの後方端部部材56には、空気の排出による収縮動作による進行方向への能動的な力に加え、拘束手段T1の牽引による進行方向への受動的な力も作用する。
ここで、伸縮ユニット50Aの伸長により生じる力をFa、伸縮ユニット50Bの収縮により生じる力をFsとすれば、拘束手段T1の他端が固定された伸縮ユニット50Bの後方端部部材56には、力Fsに力Faを加えた進行方向に向いた力Ftra1が得られることになる。
【0047】
次に、拘束手段T2により拘束される伸縮ユニット50B;50Cの動作の動作について考える。
拘束手段T2の一端が固定された伸縮ユニット50Bの前方端部部材56は、把持ユニット20Aが把持状態であることから、管zに固定された状態にある。つまり、伸縮ユニット50Cへの空気の供給による伸長動作おいて、伸縮ユニット50Cの後方端部部材56の移動は、拘束手段T2に拘束される。このため、伸縮ユニット50Cの伸長は、供給された空気の圧力によって前方端部部材56を進行方向前方に押し出すことになり、前方端部部材56に進行方向への能動的な力を作用させる。この力は、把持開放状態の把持ユニット20Bを介して伸縮ユニット50Bを受動的に進行方向に押す力となる。ここで、伸縮ユニット50Cの伸長に要した空気の圧力を、伸縮ユニット50Aの伸長に要した空気の圧力と同じとした場合、伸縮ユニット50Cの伸長により生じる力は、伸縮ユニット50Aの伸長により生じた能動的な力faと同じである。
【0048】
したがって、伸縮ユニット50A及び伸縮ユニット50Cの伸長による力2×Faに、伸縮ユニット50Bの収縮による力Fsを加えた力Ftracの作用する伸縮ユニット50Bの後方端部部材56を、把持ユニット20A;20B及び伸縮ユニット50A~50Cに空気を給排するためのチューブ118A;118B及びチューブ119A~119Cを牽引するための力の作用点として利用することにより、大きな牽引力が得られ、走行部10の移動距離が長距離であっても安定して推進させることができる。
【0049】
なお、引用文献1の自走式ロボットは、本実施形態に係る走行部10のユニット数と同じでありながら、得られる牽引力が、本実施形態に係る走行部10により得られる牽引力よりも小さい。
【0050】
図6は、走行部10の他の実施形態を示す図である。
前述の実施形態と同様に、推進力(牽引力)を得ための走行部10の他の実施形態としては、
図6(a)に示すように、3つの把持ユニット20と、4つの伸縮ユニット50とで構成することもできる。この場合、前述の実施形態に比べて走行部10を構成するユニット数が多くなるものの、引用文献1において開示される自走式ロボットの推進力の増加方法に比べてその数を抑えることができる。
【0051】
他の実施形態の走行部10は、3つの把持ユニット20と4つの伸縮ユニット50とで構成され、伸縮ユニット50の間に把持ユニット20を配置し、伸縮ユニット50と把持ユニット20とを交互に直列に連結して構成される。即ち、前述の基本構成とする2つの伸縮ユニット50A;50B及びこれらを連結する1つの把持ユニット20Aと、2つの伸縮ユニット50C;50D及びこれらを連結する1つの把持ユニット20Cと、を把持ユニット20Bにより直列に連結したものと見ることができる。
【0052】
拘束手段T1は、把持ユニット20Cを挟んで連結された伸縮ユニット50Cと、伸縮ユニット50Dとが連動して動作するように取り付けられる。また、拘束手段T2は、伸縮ユニット50Dと、伸縮ユニット50Aとが連動して動作するように取り付けられる。
【0053】
本実施形態では、
図6に示すように、拘束手段T1は、一端が伸縮ユニット50Cの前方端部部材56に固定され、他端が伸縮ユニット50Dの後方端部部材56に固定されるものとした。また、拘束手段T2は、一端が伸縮ユニット50Aの前方端部部材56に固定され、他端が伸縮ユニット50Dの後方端部部材56に固定されるものとした。即ち、拘束手段T1は、伸縮ユニット50Cの前側の端部から伸縮ユニット50Dの後側の端部までの距離を一定に拘束するように設けられ、拘束手段T2は、伸縮ユニット50Aの前側の端部から伸縮ユニット50Dの後側の端部までの距離を一定に拘束するように設けられる。
【0054】
なお、拘束手段T1の一端が固定される位置は、伸縮ユニット50Cの前方端部部材56に限定されない。伸縮ユニット50Cの前方端部部材56に固定されたものと見なせる位置であれば、例えば、伸縮ユニット50Cの前方端部部材56に連結される把持ユニット20Aの後方端部部材26若しくは前方端部部材26、或いは、把持ユニット20Aの前方端部部材26に連結される伸縮ユニット50Cの後方端部部材56であっても良い。
【0055】
そして、本実施形態では、
図6(a)に示すように、4つの伸縮ユニット50A~50Dを自然状態、把持ユニット20A;20Cを把持状態、把持ユニット20Bを把持開放状態から、
図6(b)に示すように、把持ユニット20A;20Cを把持状態、把持ユニット20Bを把持開放状態を維持したまま、2つの伸縮ユニット50B;50Dを収縮させるとともに伸縮ユニット50A;50Cを伸長させることにより牽引力が得られる。
【0056】
まず、拘束手段T1により拘束される伸縮ユニット50C;50Dの動作について考える。
把持ユニット20Cが把持状態であることから、拘束手段T1の一端が固定された伸縮ユニット50Cの前方端部部材56は、供給された空気の圧力によって進行方向前方に押し出され、進行方向への能動的な力が作用する。
また、伸縮ユニット50Cの前方端部部材56には、把持開放状態の把持ユニット20Bを介して収縮された伸縮ユニット50Bが連結されている。伸縮ユニット50Bの前方端部部材56が把持状態にある把持ユニット20Aに連結されているため、伸縮ユニット50Bの後方端部部材56は、空気の排出によって進行方向前方へと吸引され、進行方向への能動的な力が作用する。
【0057】
これら伸縮ユニット50Cの前方端部部材56に作用する力は、拘束手段T1の他端が固定された伸縮ユニット50Dの後方端部部材56を進行方向に牽引し、後方端部部材56に進行方向への受動的な力を作用させる。つまり、伸縮ユニット50Cの前方端部部材56の進行方向への移動が、拘束手段T1を介して伸縮ユニット50Bの後方端部部材56に伝達されることにより、伸縮ユニット50Dの後方端部部材56を進行方向に牽引する力として得られる。
【0058】
さらに、拘束手段T1の他端が固定された伸縮ユニット50Dの後方端部部材56は、空気の排出によって進行方向前方へと吸引され、進行方向への能動的な力が作用する。つまり、伸縮ユニット50Dの後方端部部材56には、空気の排出による収縮動作による進行方向への能動的な力に加え、拘束手段T1の牽引による進行方向への受動的な力が作用する。
【0059】
ここで、伸縮ユニット50Cの伸長により生じる力をFa、伸縮ユニット50B及び伸縮ユニット50Dの収縮により生じる力をFsとすれば、拘束手段T1の他端が固定された伸縮ユニット50Bの後方端部部材56には、力Faに2×力Fsを加えた力が得られることになる。
【0060】
次に、拘束手段T2により拘束される伸縮ユニット50A;50Dの動作について考える。
把持ユニット20Aが把持状態であることから、拘束手段T2の一端が固定された伸縮ユニット50Aの前方端部部材56は、供給された空気の圧力によって進行方向前方に押し出され、進行方向への能動的な力が作用する。この力は、拘束手段T2の他端が固定された伸縮ユニット50Dの後方端部部材56を進行方向に牽引し、後方端部部材56に進行方向への受動的な力を作用させる。つまり、伸縮ユニット50Aの前方端部部材56の進行方向への移動が、拘束手段T2を介して伸縮ユニット50Dの後方端部部材56に伝達されることにより、伸縮ユニット50Dの後方端部部材56に進行方向に沿う力を作用させる。
ここで、伸縮ユニット50Cの伸長により生じる力をFaとすれば、伸縮ユニット50Bの後方端部部材56には、進行方向に沿う力Faが作用する。
【0061】
したがって、拘束手段T1;T2が固定された伸縮ユニット50Dの後方端部部材56には、先の力Faに2×力Fsに、力Faを加えた力、即ち、2×力Fa+2×力Fsが進行方向に沿って加わることになり、この後方端部部材56をチューブ118A;118B及びチューブ119A~119C等を牽引するときの力の作用点とすることで、前述の実施形態で得られる牽引力よりも大きな牽引力を得ることができる。
【0062】
また、
図6に示すように走行部10を構成した場合、拘束手段T1;T2の接続は、
図7に示すように変更しても良い。即ち、
図7に示すように、
図6に示す拘束手段T2の後方の端部の固定位置が、拘束手段T1の前方の端部の固定位置と同じ位置に接続されている点で先の実施形態と相違する。
なお、以下の説明では、拘束手段T1の前方の端部は、伸縮ユニット50Cの前方端部部材56に固定され、拘束手段T2の後方の端部は、伸縮ユニット50Bの後方端部部材56に固定されているものとして説明する。このように拘束手段T1;T2の固定位置を設定できる理由については前述の通りである。
【0063】
本実施形態では、拘束手段T2により拘束される伸縮ユニット50A;50Bの動作から考える。
把持ユニット20Aが把持状態であることから、拘束手段T2の一端が固定された伸縮ユニット50Aの前方端部部材56は、供給された空気の圧力によって進行方向前方に押し出され、進行方向への能動的な力が作用する。この力は、拘束手段T2の他端が固定された伸縮ユニット50Bの後方端部部材56を進行方向に牽引し、後方端部部材56に進行方向への受動的な力を作用させる。つまり、伸縮ユニット50Aの前方端部部材56の進行方向への移動が、拘束手段T2を介して伸縮ユニット50Bの後方端部部材56に伝達されることにより、伸縮ユニット50Bの後方端部部材56に進行方向に沿う力を作用させる。
【0064】
また、拘束手段T2の他端が固定された伸縮ユニット50Bの後方端部部材56は、空気の排出によって進行方向前方へと吸引され、進行方向への能動的な力が作用する。つまり、伸縮ユニット50Dの後方端部部材56には、空気の排出による収縮動作による進行方向への能動的な力に加え、拘束手段T1の牽引による進行方向への受動的な力が作用する。
【0065】
次に、拘束手段T1により拘束される伸縮ユニット50C;50Dの動作について考える。
把持ユニット20Cが把持状態であることから、拘束手段T1の一端が固定された伸縮ユニット50Cの前方端部部材56は、供給された空気の圧力によって進行方向前方に押し出され、進行方向への能動的な力が作用する。また、伸縮ユニット50Cの前方端部部材56には、伸縮ユニット50Bの後方端部部材56に作用する進行方向に沿う力が、把持開放状態の把持ユニット20Bを介して伝達される。
即ち、伸縮ユニット50Cの前方端部部材56には、伸縮ユニット50Cの伸長による進行方向への能動的な力と、把持ユニット20Bを介して伝達された力とを合わせた力が作用する。この合わせた力は、拘束手段T1の他端が固定された伸縮ユニット50Dの後方端部部材56を進行方向に牽引し、後方端部部材56に進行方向への受動的な力を作用させる。
【0066】
また、拘束手段T1の他端が固定された伸縮ユニット50Dの後方端部部材56は、空気の排出によって進行方向前方へと吸引され、進行方向への能動的な力が作用する。つまり、伸縮ユニット50Dの後方端部部材56には、空気の排出による収縮動作による進行方向への能動的な力に加え、拘束手段T1の牽引による進行方向への受動的な力が作用する。
【0067】
ここで、伸縮ユニット50A及び伸縮ユニット50Cの伸長により生じるそれぞれの力をFa、伸縮ユニット50B及び伸縮ユニット50Dの収縮により生じるそれぞれの力をFsとすれば、伸縮ユニット50Dの後方端部部材56には、進行方向に沿う2×力Fa+2×力Fsが作用する。
したがって、伸縮ユニット50Dの後方端部部材56を前述の牽引物を牽引する力の作用点として用いることで、
図6に示す形態と同じ大きな牽引力を得ることができる。
【0068】
また、
図7に示すように、拘束手段T1;T2を接続する場合、
図8に示すように、走行部10を構成することができる。
図7に示す走行部10は、2つの伸縮ユニット50A;50B及び1つの把持ユニット20Aで形成され、拘束手段T1によって動作が拘束される1つのユニット群と、2つの伸縮ユニット50C;50D及び1つの把持ユニット20Cとで形成され、拘束手段T2によって動作が拘束される1つのユニット群とを、把持ユニット20Bを介在させて連結されたものと見なすことができる。
この場合、
図8に示すように、伸縮ユニット50Dの後方に、さらに把持ユニット20Dを介在させて拘束手段T3によって動作が拘束される2つの伸縮ユニット50E;50F及び1つの把持ユニット20Eからなるユニット群を連結することもできる。また、伸縮ユニット50Fの後方に、把持ユニット20Fを介在させて拘束手段T4によって動作が拘束される2つの伸縮ユニット50G;50H及び1つの把持ユニット20Gからなるユニット群を連結しても良い。
このように、ユニット群を連結するごとに、牽引力が大きくなることは、前述の説明から容易に理解することができる。
【0069】
以上説明したように、交互に連結される伸縮ユニット50及び把持ユニット20の数量に応じて、伸縮ユニット50の伸縮動作を互いに拘束する拘束手段を複数設け、拘束手段による影響を重ね合わせることにより、自走式ロボットを構成するユニット数の増加を抑制しつつ推進に必要とされる牽引力を大きくすることができる。
また、
図1、
図7,
図8のように、走行部10を構成した場合、進行方向前後において対称であるため、前進のみならず後進においても同様の牽引力を得ることができる。
【0070】
なお、交互に連結される伸縮ユニット50及び把持ユニット20の数量、及び拘束手段を取り付ける位置は、前述の各実施形態に限定されないことは言うまでもなく、自走式ロボットを構成するユニット数の増加を抑制しつつ推進に必要とされる牽引力を大きくできるものであれば適宜変更しても良い。
また、伸縮ユニット50及び把持ユニット20の連結において、走行部10の最後尾が把持ユニット20であっても良い。
【0071】
即ち、流体の供給により管軸方向に伸長し、流体の排出により管軸方向に収縮する伸縮ユニットと、流体の供給により管径方向に膨張し、管内壁面を把持する把持ユニットとを交互に連結して備え、伸縮ユニットの数が奇数個であるときに、把持ユニットの一方側に連結された伸縮ユニットが伸長するときは、他方側に連結された伸縮ユニットが収縮するように、把持ユニットの両側に連結された伸縮ユニットの伸縮動作を互いに拘束する拘束手段を備える構成とすることにより、自走式ロボットを構成するユニット数の増加を抑制しつつ推進に必要とされる牽引力を大きくすることができる。
また、拘束手段は、伸縮ユニットに挟まれた把持ユニット毎に対応して設けたり、伸縮ユニットに挟まれた把持ユニットの1つおきに対応して設けたりしても良い。なお、拘束手段は、伸縮ユニットに挟まれた把持ユニット毎に対応して設けられるとは、
図1,
図4,
図5に示すように、走行部10を構成する各把持ユニットの両側に直結された伸縮ユニットが連動するように拘束手段が設けられていることを意味する。したがって、隣接する把持ユニットの間にある伸縮ユニットは、2本の拘束手段の影響を受ける。また、伸縮ユニットに挟まれた把持ユニットの1つおきに対応して設けられるとは、
図7,
図8等に示すように、1つの把持ユニットと、この両側に直結された伸縮ユニットとを1つの単位構成として、この単位構成を把持ユニットで連結し、各単位構成の形成する伸縮ユニットが連動するように拘束手段が設けられていることを意味する。
また、伸縮ユニットが偶数個であるときに、進行方向最後尾側に位置する伸縮ユニットが収縮するときは、
図6に示すように、進行方向側に位置する各把持ユニットの進行方向側に連結された伸縮ユニットが伸長するように、最後尾側に位置する伸縮ユニットと進行方向側に位置する各把持ユニットの進行方向側に連結された伸縮ユニットとの伸縮動作を互いに拘束する拘束手段を備えるようにしても良い。
伸縮ユニットと把持ユニットとの連結において伸縮ユニットを進行方向先頭に配置することで、自走式ロボットを構成するユニット数を減少させることができる。
【符号の説明】
【0072】
1 自走式ロボット、10 走行部、20 把持ユニット、
50 伸縮ユニット、T1;T2 拘束手段、z 管。