(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062441
(43)【公開日】2022-04-20
(54)【発明の名称】農園芸用被覆シートの押えアンカー並びにその操作具
(51)【国際特許分類】
A01G 13/02 20060101AFI20220413BHJP
【FI】
A01G13/02 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020170455
(22)【出願日】2020-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000104375
【氏名又は名称】カワサキ機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智久
【テーマコード(参考)】
2B024
【Fターム(参考)】
2B024EC05
2B024EC07
(57)【要約】
【課題】 被覆資材のアンカー部材の固定にあたり、無理な腰をかがめた姿勢をとることなく、結果的に作業負担を軽減できる被覆シートの押えアンカー並びにその操作具を開発することを技術課題としたものである。
【解決手段】 本発明の農園芸用被覆シートSの押えアンカー1は、ピン状のアンカー本体部11の頂部に操作用適合構造12を具えていることを特徴として成るものであり、本発明の農園芸用被覆シートSの押えアンカー1の保持具2は、保持部22については、下面を平板状の吸着面とした磁石片Mを保持作用体22Aとして具え、この保持作用体22Aの磁力により、押えアンカー1の頂部に形成した操作用適合構造12を吸着保持するものであることを特徴として成るものである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピン状のアンカー本体部の頂部に操作用適合構造を具えていることを特徴する農園芸用被覆シートの押えアンカー。
【請求項2】
前記アンカー本体部は平行した2本の要素ピンにより構成され、操作用適合構造の下側に押えフランジを具えていることを特徴とする請求項1記載の農園芸用被覆シートの押えアンカー。
【請求項3】
前記操作用適合構造はアンカー本体部の構成部材と別体の平板状の適合片により構成し、この適合片をアンカー本体部に溶接固定したものであることを特徴とする請求項1または2記載の農園芸用被覆シートの押えアンカー。
【請求項4】
前記操作用適合構造は、アンカー本体を構成する金属線材を平盤状に曲成させて構成したものであることを特徴とする請求項1、2または3記載の農園芸用被覆シートの押えアンカー。
【請求項5】
適宜の長さのロッド本体部の上部にグリップ部を形成し、下端に被覆シートの押えアンカーの頂部を接続できる保持部を具えていることを特徴とする農園芸用被覆シートの押えアンカーの操作具。
【請求項6】
前記保持部は、下面を平板状の吸着面とした磁石片を保持作用体として具え、この保持作用体の磁力により、請求項3または4記載のいずれか記載の押えアンカーの頂部に形成した操作用適合構造を吸着保持するものであることを特徴する請求項5記載の農園芸用被覆シートの押えアンカーの操作具。
【請求項7】
前記ロッド本体部はグリップ部上方に具えた上部ロッド要素と、保持部を下端に具えた下部ロッド要素との2部材で構成され、両者は互いに入れ子状に組み合わされロッド本体部の作用長を調整自在としたことを特徴とする請求項5または6記載の農園芸用被覆シートの押えアンカーの操作具。
【請求項8】
前記下部ロッド要素は、下端に引抜用フックを具えた引抜用のアダプタとして別体形成されたものであることを特徴とする請求項7記載の農園芸用被覆シートの押えアンカーの操作具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば農作物の畝を覆うようにして作物の安定的な収穫につなげる被覆シートの操作手法に関するものであって、特に被覆シートの敷設時あるいは除去時の作業を自然な作業姿勢を保って行うことができるようにした被覆シートの押えアンカー並びにその操作具に係るものである。
【背景技術】
【0002】
農作物の育成現場では、畑地の保全、雑草の繁殖防止、作物の成長促進、防虫、防疫等の目的で、種々の農園芸用の被覆シートを敷設する作業が行われている。
この作業について、作業者の負担をより軽減させる対策の一環として、本出願人らは別途、特願2020-052736号 「農園芸用被覆資材の巻取り展開装置」(特許文献1)を提案している。このような作業支援の装置の開発により、被覆シートの敷設作業は著しく省力化や効率化、ないしは作業負担の軽減化が達成されている。
【0003】
このような敷設作業の効率向上が達成されてきた半面、被覆シートの敷設作業に伴う被覆シートの固定作業に関しては、従来手法を踏襲しており、必ずしも作業負担の軽減は達成されていなかった。特に被覆シートの展開敷設作業が効率されたことに伴い、それに応じるべく迅速に進めなければならない固定作業の負担はより過大に認識されるものとなっている。
【0004】
具体的に言えば、被覆シートの固定は、例えば適宜の剛性を具えた金属線材をヘアピン状に形成したアンカー部材を用い、これを被覆シートを貫いて、畑土中に突き刺して行うものである。この固定のための作業にあたっては当然ながらアンカー部材をまず地面に仮り刺しするが、その際作業者は身体をかがめる必要があり、作業者の体への過大な負担は免れ得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明はこのような背景を考慮してなされたものであって、被覆資材のアンカー部材の固定にあたり、無理な腰をかがめた姿勢をとることなく、結果的に作業負担を軽減できる被覆シートの押えアンカー並びにその操作具を開発することを技術課題としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の農園芸用被覆シートの押えアンカーは、ピン状のアンカー本体部の頂部に操作用適合構造を具えていることを特徴として成るものである。
【0008】
請求項2記載の農園芸用被覆シートの押えアンカーは、前記請求項1記載の要件に加え、前記アンカー本体部については、平行した2本の要素ピンにより構成され、操作用適合構造の下側に押えフランジを具えていることを特徴として成るものである。
【0009】
請求項3記載の農園芸用被覆シートの押えアンカーは、前記請求項1または2記載の要件に加え、前記操作用適合構造については、アンカー本体部の構成部材と別体の平板状の適合片により構成し、この適合片をアンカー本体部に溶接固定したものであることを特徴として成るものである。
【0010】
請求項4記載の農園芸用被覆シートの押えアンカーは、前記請求項1、2または3記載の要件に加え、前記操作用適合構造については、アンカー本体を構成する金属線材を平盤状に曲成させて構成したものであることを特徴として成るものである。
【0011】
請求項5記載の農園芸用被覆シートの押えアンカーの操作具は、適宜の長さのロッド本体部の上部にグリップ部を形成し、下端に被覆シートの押えアンカーの頂部を接続できる保持部を具えていることを特徴として成るものである。
【0012】
請求項6記載の農園芸用被覆シートの押えアンカーの操作具は、前記請求項5記載の要件に加え、前記保持部については、下面を平板状の吸着面とした磁石片を保持作用体として具え、この保持作用体の磁力により、前記請求項3または4記載のいずれか記載の押えアンカーの頂部に形成した操作用適合構造を吸着保持するものであることを特徴として成るものである。
【0013】
請求項7記載の農園芸用被覆シートの押えアンカーの操作具は、前記請求項5または6記載の要件に加え、前記ロッド本体部については、グリップ部上方に具えた上部ロッド要素と、保持部を下端に具えた下部ロッド要素との2部材で構成され、両者は互に入れ子状に組み合わされロッド本体部の作用長を調整自在としたことを特徴として成るものである。
【0014】
請求項8記載の農園芸用被覆シートの押えアンカーの操作具は、前記請求項7記載の要件に加え、前記下部ロッド要素については、下端に引抜用フックを具えた引抜用のアダプタとして別体形成されたものであることを特徴として成るものである。
【発明の効果】
【0015】
まず請求項1記載の発明によれば、ピン状のアンカー本体部の頂部に操作用適合構造を具えていることから農園芸用被覆シートの操作具を用いることができ、これにより被覆シートのアンカー部材の固定にあたり、腰をかがめた無理な姿勢をとることなく、結果的に作業負担を軽減できる。
【0016】
また請求項2記載の発明によれば、アンカー本体部は、平行した2本の要素ピンにより構成され、操作用適合構造の下側に押えフランジを具えていることから、被覆シートを畑表面に確実に固定することができる。
【0017】
また請求項3記載の発明によれば、操作用適合構造については、アンカー本体部の構成部材と別体の平板状の適合片により構成し、この適合片をアンカー本体部に溶接固定したものであるから、磁力を用いた操作具との確実な装着・離脱が可能となる。
【0018】
また請求項4記載の発明によれば、アンカー本体を構成する金属線材を平盤状に曲成させて構成したものであることから、フランジの溶接などの要しないで操作用適合構造を形成することができ、廉価なアンカーを提供することができる。
【0019】
また請求項5記載の発明によれば、適宜の長さのロッド本体部の上部にグリップ部を形成し、下端に被覆シートの押えアンカーの頂部を接続できる保持部を具えていることから、下端側に押えアンカーを吸着した状態で、腰を屈めた不自然な姿勢を取ることなく押えアンカーを畑表面に押し込むことができる。
【0020】
また請求項6記載の発明によれば、保持部については、下面を平板状の吸着面とした磁石片を保持作用体として具えているので、複雑な操作を要さずに確実に押えアンカーを吸着することができる。
【0021】
また請求項7記載の発明によれば、ロッド本体部については、グリップ部上方に具えた上部ロッド要素と、保持部を下端に具えた下部ロッド要素との2部材で構成され、両者は互に入れ子状に組み合わされロッド本体部の作用長を調整自在としたことから、使用者の体形に合わせて適宜の長さに調整することができる。
【0022】
また請求項8記載の発明によれば、下部ロッド要素については、下端に引抜用フックを具えた引抜用のアダプタとして別体形成されたものであるから、下端ロッド要素を交換することで押えアンカーを土から引き抜き際にも操作具を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の農園芸用被覆シートの押えアンカー並びにその操作具の使用状態を表す説明図である。
【
図2】本発明の農園芸用被覆シートの押えアンカーの操作具を用いた押し込み作業、引き抜き作業を示す説明図である。
【
図3】本発明の農園芸用被覆シートの押えアンカーの押し込み作業を行う際の巻取展開装置との作動態様における関係を示した説明図である。
【
図4】本発明の押えアンカーの他の実施例を示す斜視図である。
【
図5】本発明の押えアンカーと他の実施形態である操作具との関係を示す説明図であって、(a)は、押し込み作業時の結合関係を示す斜視図であり、(b)は引き抜き作業時の係止関係を示す縦断側面図である。
【
図6】他の実施形態である操作具における押し込み作業時の状態と、引き抜き作業状態とを示した斜視図である。
【
図7】他の実施形態である操作具における押し込み作業時の状態と、引き抜き作業状態とを示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明を実施するための最良の形態は、以下述べる実施例をその一つとするものであると共に、この技術思想に基づく種々の改良した実施例をも含むものである。
【実施例0025】
以下、本発明を図示の実施例に基づいて具体的に説明する。先ず、被覆シートSの押えアンカー1、並びにその操作具2の説明に先立ち、
図1に示す被覆資材の巻取展開装置3並びにそれによる被覆シートSの敷設態様、固定態様について概説する。
【0026】
まず、巻取展開装置3を概説すると、このものは畝をまたいで走行できるようにしたフレーム部材31とこのフレーム部材31に支持されて被覆シートSの巻取りを行う巻取軸32と、この巻取軸32の前段に設けられる中間ガイド体33と、さらにこの中間ガイド体33の前段に設けられる受け入れガイド体34とを具え、前記巻取軸32に巻取状態にある被覆シートSを装置後方に展開するように繰り出すものである。
【0027】
この装置によって展開される被覆シートSは、例えば不織布シートであり、幅寸法を2m以下、長さ寸法100m程度の寸法のもので、例えば作物Fの畝を3列ほど一枚の被覆シートSで覆うようにしている。そして被覆シートSが展開していく都度、作業者Pは被覆シートSの両側縁部を押えアンカー1で固定する作業を行っていく。以下押えアンカー1とその操作具2の具体的構成について説明する。
【0028】
まず押えアンカー1はその好ましい形体の一例としては、
図1から
図3に示すように、一例として金属細丸棒状の上部を曲げ返して、ヘアピン状に形成した2本の平行した要素ピン10からなるアンカー本体部11を具える。そしてその上方に操作用適合構造12が具えられる。
【0029】
操作用適合構造12とは、後述する操作具2との接続組合せを円滑に図る構造であって、具体的には磁性金属体の円盤状の適合片12Aをアンカー本体部11の頂部に溶接固定したものである。この適合片12Aは、アンカー本体部11との溶接部位を除いて、一部肉抜き状にした引抜操作孔13を具える。さらにこのアンカー本体部11の頂部近くの操作用適合構造12の下側には、適宜硬さ、いわゆるコシのある樹脂またはゴム製等の押えフランジ14を具える。
【0030】
次に押えアンカー1を打ち込む等の作業を行う操作具2について説明する。
このものは、適宜の長さのロッド本体部20の上部にグリップ部21を形成し、下端に被覆シートSの押えアンカー1の頂部を接続できる保持部22を具えている。先ず、ロッド本体部20は一例として金属製パイプで構成されるものであり、この実施例ではロッド本体部20は上部ロッド要素20Aと下部ロッド要素20Bとの二つの部材で構成されている。
【0031】
両者は下部ロッド要素20Bが上部ロッド要素20Aの内側に入れ子状にはまり、且つ上部ロッド要素20Aの下方に設けたロックボルト20Cにより両者の固定が図られ、結果的にロッド本体部20の作用長Lが調節自在に構成されている。このロッド本体部20の上方のグリップ部21は、適宜にロッド本体部20を下方に押し込むことができるような形状をとればよいものであり、この実施例は上方にロッド本体部20に対し直交するような形態とするためにフォーク部21Aを介してグリップ部21を構成している。
【0032】
一方ロッド本体部20の下端に設けられる保持部22について説明すると、この保持部22は保持作用体22Aとして磁石片Mを有する。この磁石片Mは磁石ホルダ22Bにより、下方を解放した状態で上方と周囲が囲まれるような状態で取り付けられている。なお磁石ホルダ22Bは、非磁性体の樹脂等により構成されることが好ましいものであって、その目的としては後述するように前記押えアンカー1を保持するにあたり、保持作用面が下面だけに限定されるようにするためである。
【0033】
なお実際の農作業においては、敷設した被覆シートSを所要期間経過後に、巻取る作業も行われる。このときには、前記下部ロッド要素20Bに代えて、引抜用アダプタ23を用いる。即ち、引抜用アダプタ23は下部ロッド要素20Bと同一径のパイプ状部材の下端に、引抜用フック23Aを形成したものである。この引抜用フック23Aを、被覆シートSを押さえている押えアンカー1の頂部にかけて引き上げる。なおこの操作の詳細については後述する。
【0034】
以上述べた、押えアンカー1と操作具2との使用方法を説明しながらその作用を説明する。
まず、実際の作用形態の一例としては、
図1に示すように、効能率で被覆シートSを作物Fの畝上に展開できる巻取展開装置3を用いた作業とともに、被覆シートSの固定作業が行われる。即ち、
図1、
図3に示すように、巻取展開装置3からの繰り出された被覆シートSは、巻取展開装置3後方で、畝面の畑土を覆うようになり、そのタイミングで作業者Pは押えアンカー1により被覆シートSの側縁部を、長さ方向に適宜の間隔で固定してゆく。
【0035】
具体的には巻取展開装置3に取り付けたストッカー35に入れられている押えアンカー1が取り出されて、操作具2により押えアンカー1が被覆シートSを貫き地中に押し込まれる。即ち、押えアンカー1の操作用適合構造12は磁性体の盤状の適合片12Aであり、この部位を操作具2の下端に設けられた磁石片Mが吸着できるように接近させると、
図1~3に示すように操作具2の下端に押えアンカー1が取り付けられたような状態となる。この状態は、作業者Pが自然の立ち姿勢で操作具2を持った時、押えアンカー1は、アンカー本体部11の下端部が被覆シートSの直上部に位置し、そのまま操作具2で押えアンカー1の頂部を押し込めば、押えアンカー1は、そのアンカー本体部11が被覆シートSを貫いて、これを地中に差し込む。
【0036】
この操作は操作具2がアンカーの上方に取り付けられたような形態となっているから、押し込み操作も、そのまま操作具2を下方に押し込むだけで行うことができ、作業者Pは腰をかがめるような無理な姿勢をとることなく自然な姿勢で作業が行われる。このようにして押えアンカー1に設けられた押えフランジ14が畑土面に達するのを基準とて、押し込みを完了させる。その後押えアンカー1を残して操作具2を引き上げるが、両者は単に磁力による吸着がされているだけであるので、操作具2をわずかに傾けると磁力による吸着作用が弱化し、その状態で操作具2を引き上げて、押えアンカー1を押し込み位置、すなわち畑地中に残したまま操作具2を引き上げることができる。
【0037】
一方、押し込み済の押えアンカー1を引き抜く際には、引抜用アダプタ23を用い、これを前記下部ロッド要素20Bと付け替え、その先端即ち下端のフック23Fを適合片12Aの引抜操作孔13から差し込み、アンカー本体部11の頂部にフック23Fを引掛けてこれを上方に抜き取るようにする。この操作も押えアンカー1の押し込み時と同様に、作業者Pは腰をかがめるような不自然な姿勢とならないで行うことができる。
【0038】
本発明は、以上述べた実施例を一つの典型的な好ましい実施例とするものであるが、さらに本発明の技術思想内において他の実施例も考慮し得る。
〈i .アンカーの他の実施例〉
図4(a)に示すものは、金属細丸棒材を一本のみでアンカー本体部11を形成したタイプであり、頂部をU字状に一部曲げ返しその上面に適合片12Aを溶接固定した、いわゆるペグ状のものである。
さらに
図4(b)に示すものは、金属細丸棒材のみで操作用適合構造12を構成するものである。即ち、アンカー本体部11を構成する要素ピン10を2本平行に設けたものであり、その頂部において素材を曲成し円環部と中心部とを同一素材で連続形成し操作用適合構造12としたものである。なお、これら操作用適合構造12とするため、素材を平盤状に形成した部位については溶接を完全に排除しても良いし、線材の素材の接近部位を溶接しても良い。
また、
図4(c)に示す実施例は、頂部にアンカー本体部11の頂部形状を素材を曲成して側面視凸形状としたものであり、このものは後述する操作具2の他の実施例である押し込み引き抜きの共用タイプのものに適用できるものである。
【0039】
〈ii.操作具の他の実施例〉
次に操作具2についての他の実施例を説明する。
図5に示す実施例は、押えアンカー1の押し込み操作と引き抜き操作の双方を行うことができるいわば共用タイプである。このものは、例えば操作具2におけるロッド本体部20の下部ロッド要素20Bについて、その下方を偏平状に加工し、保持部22の一部となる収め部25を形成したものである。
【0040】
この収め部25には、ここに収めた押えアンカー1の離脱を防ぎ、且つ、引き抜き時にも作用する保持ラッチ26を具える。保持ラッチ26は下部ロッド要素20Bの下端に回動自在に取り付けられるものであって、全体として側面視コ字状をなし、上部のフォーク部26Aの先端を回動支点26Pとして下部ロッド要素20Bに取り付けられ、このフォーク部26Aから下方に延びるアーム部26Bに対し、その下端にラッチ作用端26Cを形成する。このラッチ作用端26Cは収め部25に対し、その外側からカンヌキ状に収め部25内に挿入状態に設けられる。
【0041】
そして保持ラッチ26全体としては、ボーデンケーブル27により開閉シフトされるものであって、ボーデンケーブル27のインナーケーブルの下端がアーム部26Bの上端に接続される。更にボーデンケーブル27のアウタストッパ27Aとの間にセットスプリング26Sを介在させ、保持ラッチ26全体としては、常にラッチ作用端26Cが収め部25内に入り込んだ状態を維持する。なおラッチ作用端26Cは、その下面側は傾斜面として、押えアンカー1の受け入れを容易にする、一方で上面はほぼ水平面として押えアンカー1の抜け出しがされない構成をとる。そして前記保持ラッチ26を操作するために、グリップ部21の至近位置に操作レバー28を配置する。
【0042】
以下、この押し抜き共用タイプの操作具2についてその使用態様を説明する。
この操作具2に対しては適用されるアンカーは
図4(C)に示したタイプのものであって、平板上に展開する適合片12Aを含む操作用適合構造12を具えないものである。したがって従来から市販されているタイプの押えアンカー(例えば、株式会社槍木産業製
商品名「黒丸君(登録商標)」)をそのまま適用する。
まず、操作具2によって押えアンカー1を保持させるには、単にアンカー頂部を収め部25にはめ込む操作だけでよい。即ち、この操作によって、収め部25に半ば挿入された押えアンカー1の頂部は、その頂部がラッチ作用端26Cの下面の傾斜面に接すると、セットスプリング26Sの弾発力に抗してラッチ作用端26Cを押しのけるようにしてこれを退かせ、収め部25内部に入り込む。その後ラッチ作用端26Cはセットスプリング26Sの作用により進入状態に復帰する。
【0043】
この状態で、操作具2の下端に吊り下げ状に保持された押えアンカー1は、被覆シートSを貫いて畑地面に突き刺すように押し込まれる。もちろんこの時も作業者Pは腰をかがめるような無理な姿勢をとらずに作業を行うことができる。そして被覆シートSを押さえた押えアンカー1を残して操作具2を引き上げるには、グリップ部21手元の操作レバー28をにぎり、保持ラッチ26の上端の自由端部を上方に引き上げるようにして全体を回動させ、ラッチ作用端26Cを収め部25から退去させる。これにより操作具2と押えアンカー1との係合が解除され、畑地面に刺さった押えアンカー1を残したまま操作具2を引き上げることができる。
【0044】
一方この共用タイプの操作具2により押えアンカー1を引き抜くには、畑地面近くの押えアンカー1の頂部に操作具2の下端を当てがって押し込む。これによって押えアンカー1の頂部がラッチ作用端26Cを押し退けて収め部25の奥部、即ち上部に入り込む。
この状態で操作具2を引き上げれば、ラッチ作用端26Cが押えアンカー1の頂部を引っ掛けた状態を保ち、その引き抜きを可能とする。
引き抜かれた押えアンカー1と操作具2との切り離しは、先に述べた操作レバー28を握りラッチ作用端26Cを収め部25から退去させることによって行う。
【0045】
〈共用タイプの操作具の他の実施例〉
更に前述の共用タイプの操作具2の技術思想は、すでに基本的な実施例として、
図1から3に示した操作具2にも応用できる。即ち
図6に示すものは、引抜用フック本体24を下部ロッド要素20Bに回動自在に採り付けたものである。
具体的には引抜用フック本体24は側面視弓形と表現できるような形状を採り、自由端側に係止フック24Aを形成し、このものを下方に位置させた作用時の状態では、係止フック24Aは、保持部22の下方に位置する状態となる。即ち、保持部22下側に係止フック24Aが設けられ、既に述べたような押えアンカー1の引き抜きを行うのである。
一方係止フック24Aを用いない非作用時には、この部位を上方に引き起させるようにして退去位置に収める。
なおこの作用時と非作用時との2つの位置は回動軸24Bを蝶ネジ23Cの締め込むことにより固定的に設定する。
同時に
図7に示すように棒状のフック体29に設けられた操作部29Aを操作して、円盤状とした磁石片Mからなる保持作用体22Aの中心から出現、退去させるようにしてもよい。
【0046】
〈iii .更に他の実施例〉
更に
図3(B)に示す実施例は、前記巻取展開装置3の機体を利用したものであり、機体後方に車輪付きのサブフレーム36を設け、そこに操作具2を上下に可動状態に取り付けたものである。可動状態とするには、サブフレーム36に鞘状の支持部材37を設けたり、あるいは平行リンク上の支持部材を採り付ける。
このようにした場合には、作業者Pは操作具2自体を保持する必要はなく、これを単に上下に押し込む操作をするだけでよい。
もちろん巻取展開装置3は、押えアンカー1の操作時には一時停止を行うが、サブフレーム36自体が巻取展開装置3本体に対し、走行方向に伸縮自在となっているときには、巻取展開装置3の本体は走行しながらも、押えアンカー1の操作が定位置で一時的に留まって行うことができる。