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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062445
(43)【公開日】2022-04-20
(54)【発明の名称】電動スノーモビル
(51)【国際特許分類】
   B62M 27/02 20060101AFI20220413BHJP
   B60K 1/00 20060101ALI20220413BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20220413BHJP
   B62M 7/02 20060101ALI20220413BHJP
   B62J 41/00 20200101ALI20220413BHJP
   B62J 43/16 20200101ALI20220413BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20220413BHJP
   H01M 10/613 20140101ALI20220413BHJP
   H01M 10/625 20140101ALI20220413BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20220413BHJP
   H01M 10/6556 20140101ALI20220413BHJP
   H01M 10/6568 20140101ALI20220413BHJP
   F01P 3/18 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
B62M27/02 C
B60K1/00
B60K1/04 Z
B62M27/02 D
B62M27/02 H
B62M7/02 X
B62J41/00
B62J43/16
H01M10/48 301
H01M10/613
H01M10/625
H01M10/633
H01M10/6556
H01M10/6568
F01P3/18 Q
F01P3/18 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020170459
(22)【出願日】2020-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】特許業務法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 恭士
【テーマコード(参考)】
3D235
5H030
5H031
【Fターム(参考)】
3D235AA28
3D235BB45
3D235CC12
3D235CC15
3D235DD12
3D235DD24
3D235FF02
3D235FF37
3D235FF43
3D235HH02
3D235HH16
5H030AS08
5H031AA09
5H031HH06
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】簡易な構造により熱交換を行う電動スノーモビル100を提供することにある。
【解決手段】電動スノーモビル100は、車体フレーム80と、運転者シートSと、電動モータMと、スキー20R、20Lと、トラック機構30と、電動モータMへ電力を供給するバッテリBTと、少なくとも外気により流体を冷却する冷却部81aと、バッテリBTと流体との熱交換をする第1熱交換部81bと、電動モータMと流体との熱交換をする第2熱交換部55と、冷却部81aにおいて冷却された流体を第1熱交換部81bへ送る第1流路C1と、冷却部81aにおいて冷却された流体を第2熱交換部55へ送る第2流路C2と、第1熱交換部81bにおいて熱交換された流体と、第2熱交換部55において熱交換された流体とを、冷却部81aへ送る第3流路C3と、を有する。
【選択図】図9

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延びている車体フレームと、
前記車体フレームに支持されている運転者シートと、
前記車体フレームに支持されている電動モータと、
前記車体フレームに支持されているスキーと、
トラックベルトを含み、前記運転者シートの下方において前記車体フレームに支持されているトラック機構と、
前記電動モータへ電力を供給するバッテリと、
少なくとも外気により流体を冷却する冷却部と、
前記バッテリと前記流体との熱交換をする第1熱交換部と、
前記電動モータと前記流体との熱交換をする第2熱交換部と、
前記冷却部において冷却された前記流体を前記第1熱交換部へ送る第1流路と、
前記冷却部において冷却された前記流体を前記第2熱交換部へ送る第2流路と、
前記第1熱交換部において熱交換された前記流体と、前記第2熱交換部において熱交換された前記流体とを、前記冷却部へ送る第3流路と、
を有する電動スノーモビル。
【請求項2】
前記第1流路へ送られる前記流体の流量と、前記第2流路へ送られる前記流体の流量を調整可能な流量調整部を有する、
請求項1に記載の電動スノーモビル。
【請求項3】
前記流量調整部は、前記第1流路及び前記第2流路の少なくとも一方又は両方へ前記流体を送る、
請求項1又は2に記載の電動スノーモビル。
【請求項4】
前記バッテリの温度と前記電動モータの温度の少なくとも一方に基づいて、前記流量調整部を制御する制御部を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電動スノーモビル。
【請求項5】
前記第1流路と前記第2流路とは合流部において合流すると共に前記第3流路に接続されている、
請求項1~4のいずれか1項に記載の電動スノーモビル。
【請求項6】
前記第1流路及び/又は前記第2流路を通じて前記第3流路へ前記流体を送るポンプを有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の電動スノーモビル。
【請求項7】
少なくとも前記第1流路又は前記第2流路のいずれかを流れる前記流体を加温する加温部が設けられている、
請求項1~6のいずれか1項に記載の電動スノーモビル。
【請求項8】
前記加温部は、前記バッテリを加温する加温シートである、
請求項7に記載の電動スノーモビル。
【請求項9】
前記加温シートは、前記運転者シートの下方であって、前記バッテリの上面に設けられている、
請求項8に記載の電動スノーモビル。
【請求項10】
前記冷却部及び前記第1熱交換部のうち少なくとも一方は、前記車体フレームの一部を構成している、
請求項1~9のいずれか1項に記載の電動スノーモビル。
【請求項11】
前記車体フレームの上板は、前記冷却部及び前記第1熱交換部を含む板状の熱交換器である、
請求項1~9のいずれか1項に記載の電動スノーモビル。
【請求項12】
前記車体フレームの上板には、前記冷却部及び前記第1熱交換部のうち少なくとも一方を前記トラックベルトに対向するように露出させる開口が形成されている、
請求項1~9のいずれか1項に記載の電動スノーモビル。
【請求項13】
前記冷却部は、前記第1熱交換部よりも容量が大きい、
請求項1~12のいずれか1項に記載の電動スノーモビル。
【請求項14】
前記バッテリは、前記運転者シートの下方であって、前記第1熱交換部上に設けられている、
請求項1~13のいずれか1項に記載の電動スノーモビル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動スノーモビルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電動車両において、空調機能を用いてバッテリの温度を調整することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5-262144号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、スノーモビルにおいては、静寂性等の観点から電動モータにより走行するものが望まれている。電動モータは、車体に搭載されるバッテリから供給される電力により駆動する。このようなスノーモビルにおいては、バッテリや電動モータが昇温することを抑制する必要がある。しかしながら、スノーモビルにおいては、乗用車と異なり、特許文献1に開示されるような空調機能が備えられておらず、空調機能を用いてバッテリや電動モータの温度調整をすることはできない。また、熱交換器を用いてバッテリや電動モータの温度を調整することが考えられるが、バッテリと電動モータのそれぞれに熱交換器を設けると構造が複雑化してしまう。
【0005】
本開示の目的の一つは、簡易な構造により熱交換を行う電動スノーモビルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示で提案する電動スノーモビルは、前後方向に延びている車体フレームと、前記車体フレームに支持されている運転者シートと、前記車体フレームに支持されている電動モータと、前記車体フレームに支持されているスキーと、トラックベルトを含み、前記運転者シートの下方において前記車体フレームに支持されているトラック機構と、前記電動モータへ電力を供給するバッテリと、少なくとも外気により流体を冷却する冷却部と、前記バッテリと前記流体との熱交換をする第1熱交換部と、前記電動モータと前記流体との熱交換をする第2熱交換部と、前記冷却部において冷却された前記流体を前記第1熱交換部へ送る第1流路と、前記冷却部において冷却された前記流体を前記第2熱交換部へ送る第2流路と、前記第1熱交換部において熱交換された前記流体と、前記第2熱交換部において熱交換された前記流体とを、前記冷却部へ送る第3流路と、を有する。このスノーモビルによると、簡易な構造により熱交換を行うことができる。
【0007】
(2)(1)に記載の電動スノーモビルにおいて、前記第1流路へ送られる前記流体の流量と、前記第2流路へ送られる前記流体の流量を調整可能な流量調整部を有するとよい。これによると、熱交換を行う対象に応じて流体を流すことができる。
【0008】
(3)(1)又は(2)に記載の電動スノーモビルにおいて、前記流量調整部は、前記第1流路及び前記第2流路の少なくとも一方又は両方へ前記流体を送るとよい。これによると、熱交換を行う対象に応じて流体を流すことができる。
【0009】
(4)(1)~(3)のいずれかに記載の電動スノーモビルにおいて、前記バッテリの温度と前記電動モータの温度の少なくとも一方に基づいて、前記流量調整部を制御する制御部を有するとよい。これによると、熱交換を行う対象に応じて流体を流すことができる。
【0010】
(5)(1)~(4)のいずれかに記載の電動スノーモビルにおいて、前記第1流路と前記第2流路とは合流部において合流すると共に前記第3流路に接続されているとよい。
【0011】
(6)(1)~(5)のいずれかに記載の電動スノーモビルにおいて、前記第1流路及び/又は前記第2流路を通じて前記第3流路へ前記流体を送るポンプを有するとよい。
【0012】
(7)(1)~(6)のいずれかに記載の電動スノーモビルにおいて、少なくとも前記第1流路又は前記第2流路のいずれかを流れる前記流体を加温する加温部が設けられているとよい。これによると、電動モータ又は/及びバッテリの温度の低下を抑制することができる。
【0013】
(8)(7)に記載の電動スノーモビルにおいて、前記加温部は、前記バッテリを加温する加温シートであるとよい。これによると、バッテリの温度の低下を抑制することができる。
【0014】
(9)(8)に記載の電動スノーモビルにおいて、前記加温シートは、前記運転者シートの下方であって、前記バッテリの上面に設けられているとよい。これによると、運転者シートを加温すると共に、バッテリの温度の低下を抑制することができる。
【0015】
(10)(1)~(9)のいずれかに記載の電動スノーモビルにおいて、前記冷却部及び前記第1熱交換部のうち少なくとも一方は、前記車体フレームの一部を構成しているとよい。これによると、車体フレームの部品点数を少なくし、軽量化できる。
【0016】
(11)(1)~(9)のいずれかに記載の電動スノーモビルにおいて、前記車体フレームの上板は、前記冷却部及び前記第1熱交換部を含む板状の熱交換器であるとよい。これによると、車体フレームの部品点数を少なくし、軽量化できる。
【0017】
(12)(1)~(9)のいずれかに記載の電動スノーモビルにおいて、前記車体フレームの上板には、前記冷却部及び前記第1熱交換部のうち少なくとも一方を前記トラックベルトに対向するように露出させる開口が形成されているとよい。これによると、熱交換器における冷却性能を向上することができる。
【0018】
(13)(1)~(12)のいずれかに記載の電動スノーモビルにおいて、前記冷却部は、前記第1熱交換部よりも容量が大きいとよい。これによると、熱交換器における冷却性能を向上することができる。
【0019】
(14)(1)~(13)のいずれかに記載の電動スノーモビルにおいて、前記バッテリは、前記運転者シートの下方であって、前記第1熱交換部上に設けられているとよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態に係る電動スノーモビルを前方斜め上から見た斜視図である。
図2】本実施形態に係る電動スノーモビルを後方斜め上から見た斜視図である。
図3】本実施形態に係る電動スノーモビルを左方から見た側面図である。
図4】本実施形態に係る電動スノーモビルを上方から見た上面図である。
図5】本実施形態に係る電動スノーモビルを後方斜め下から見た斜視図である。
図6】本実施形態の熱交換器及び熱交換器上に載置されるバッテリを示す斜視図である。
図7図6で示す熱交換器の上板金及び下板金の断面を示す拡大図である。
図8】熱交換器の下板金を上方から見た上面図である。
図9】本実施形態に係る電動スノーモビルにおける流路及びその周辺部材を模式的に示す図である。
図10】本実施形態に係る電動スノーモビルにおける流路及びその周辺部材を模式的に示す図である。
図11】本実施形態に係る電動スノーモビルにおける流路及びその周辺部材を模式的に示す図である。
図12】本実施形態に係る電動スノーモビルにおける流路及びその周辺部材を模式的に示す図である。
図13】本実施形態の第1変形例に係る電動スノーモビルにおける流路及びその周辺部材を模式的に示す図である。
図14】本実施形態の第2変形例に係る電動スノーモビルを後方斜め下から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態(以下、本実施形態)について図面を参照して説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る電動スノーモビルを前方斜め上から見た斜視図である。図2は、本実施形態に係る電動スノーモビルを後方斜め上から見た斜視図である。図3は、本実施形態に係る電動スノーモビルを左方から見た側面図である。図4は、本実施形態に係る電動スノーモビルを上方から見た上面図である。図5は、本実施形態に係る電動スノーモビルを後方斜め下から見た斜視図である。
【0023】
以下の説明では、各図においてY1、Y2で示す方向をそれぞれ前方、後方と称する。X1、X2で示す方向をそれぞれ右方、左方と称する。Z1、Z2で示す方向を上方、下方と称する。
【0024】
また、本明細書においては、「支持される」(支持する)との用語を、第1の部材が第2の部材に直接取り付けられて支持される(支持する)ものに限らず、第1の部材が、第3の部材に取り付けられており、第3の部材を介して第2の部材に支持されている場合も含めた意味として用いる。
【0025】
[電動スノーモビル100の概要]
本実施形態に係る電動スノーモビル100は、主に雪上を走行する、鞍乗型の車両である。電動スノーモビル100は、バッテリBTからの電力により電動モータMを駆動することにより走行する。バッテリBT及び電動モータMは、その駆動に伴い昇温する。
【0026】
なお、電動モータMを図3において示すが、図1図2、及び図4においては省略している。また、バッテリBTを図3及び図4において示すが、図1及び図2においては省略している。また、図5においては、トラック機構30を省略している。
【0027】
また、車体内部が視認できるように、図1図2、及び図4おいては外装カバーや運転者シートを省略して図示しており、図3においては外装カバー110と運転者シートSを破線で示している。
【0028】
電動スノーモビル100は、シャフト支持フレーム10と、右スキー20R及び左スキー20Lと、トラック機構30と、ステアリングシャフト40と、車体フレーム80と、電動モータMと、バッテリBTとを有している。
【0029】
[シャフト支持フレーム10]
シャフト支持フレーム10は、ステアリングシャフト40を支持するフレームであって、主にパイプ状の部材で構成される。なお、シャフト支持フレーム10を構成する部材は、パイプ状の部材に限られず、板状の部材を含んでいてもよい。また、シャフト支持フレーム10は金属からなるものであってもよいし、樹脂からなるものであってもよい。シャフト支持フレーム10は、シャフト支持部11と、補助フレーム12と、右前フレーム13Rと、左前フレーム13Lと、を含む。
【0030】
図3に示すように、シャフト支持部11は、側面視において、後方かつ下方に延びると共に、その前端においてステアリングシャフト40を回動可能に支持している。
【0031】
図2に示すように、補助フレーム12は、その上部がシャフト支持部11に取り付けられており、その下部が車体フレーム80に支持されている逆U字型である。
【0032】
右前フレーム13R及び左前フレーム13Lは、シャフト支持部11から前方かつ下方に延びる形状である。右前フレーム13Rと左前フレーム13Lとは、車幅方向に互いに離間して設けられている。
【0033】
図4に示すように、右前フレーム13Rは、前方に向かうに従い右方に傾斜している。左前フレーム13Lは、前方に向かうに従い左方に傾斜している。すなわち、右前フレーム13Rと左前フレーム13Lとは、前方に向かうに従い互いに離間するように設けられている。
【0034】
ステアリングシャフト40は、上方かつ後方に延びており、その末端が車体フレーム80に回動可能に支持されており、その先端にステアリングハンドル41が設けられている。また、ステアリングシャフト40は、その末端と先端との間において、シャフト支持フレーム10により回動可能に支持されている。
【0035】
なお、シャフト支持フレーム10を構成する各フレーム及び部位は、互いに一体的に形成されるものであってもよいし、それぞれ別体であって、ボルトや溶接などの結合手段によって互いに固定されるものであってもよい。また、シャフト支持フレーム10を構成する各フレーム及び部位は、樹脂からなり、互いに一体的に形成されていてもよい。
【0036】
[右スキー20R、左スキー20L]
電動スノーモビル100はさらに、右スキー支持フレーム15Rと、左スキー支持フレーム15Lと、を含む。右スキー支持フレーム15Rは、車体フレーム80の前部において右方に延びており、その先端において右スキー20Rを支持している。左スキー支持フレーム15Lは、車体フレーム80の前部において左方に延びており、その先端において左スキー20Lを支持している。
【0037】
右スキー20Rは、右スキー支持フレーム15Rに支持されると共に下方に延びる被支持部21Rと、被支持部21Rの下端に取り付けられる板部22Rとで構成される。同様に、左スキー20Lは、左スキー支持フレーム15Lに支持されると共に下方に延びる被支持部21Lと、被支持部21Lの下端に取り付けられる板部22Lとで構成される。
【0038】
また、本実施形態においては、バネ構造及びダンパーを有するサスペンション70R、70Lが、右スキー20R、左スキー20Lと、車体フレーム80とを掛け渡すようにそれぞれ設けられている。
【0039】
[トラック機構30]
トラック機構30は、右スキー20R及び左スキー20Lよりも後方で車体フレーム80に支持されている。トラック機構30は、電動モータMの駆動力により回動するトラックベルト31を含む。トラックベルト31の回動により、車体が推進する。
【0040】
[電動モータM]
図3に示すように、電動モータMは、車体フレーム80に支持されている。本実施形態において、電動モータMは、右スキー支持フレーム15R、左スキー支持フレーム15Lに対する右スキー20R、左スキー20Lの取り付け位置よりも後方に位置している。このように、比較的重量のある電動モータMを後方に配置することで、車体の重心を後方にすることができる。これにより、ステアリングハンドル41のハンドリングが軽くなり、快適な走行が可能となる。
【0041】
[バッテリBT]
バッテリBTは、電動モータMへ電力を供給する。バッテリBTは、不図示のBMS(Battery Management System)等のバッテリコントローラによってその動作が制御されるとよい。また、本実施形態においては、図3図4、及び後述の図6等に示すように、バッテリBTは、運転者シートSの下方であって、後述の熱交換器81の第1熱交換部81b上に設けられている。
【0042】
[車体フレーム80]
車体フレーム80は、車体の骨格を形成すると共に、電動スノーモビル100を構成する各部材を支持するものである。具体的には、車体フレーム80は、シャフト支持フレーム10、右スキー20R及び左スキー20L、トラック機構30、ステアリングシャフト40、電動モータM、バッテリBTを支持している。
【0043】
車体フレーム80は、前後方向に延びて設けられており、その前部においてシャフト支持フレーム10の各部の末端を支持しており、その後部にバンパー19が設けられている。車体フレーム80のうち、シャフト支持フレーム10の末端を支持する前部より後方であって、バンパー19より前方において、図3に示す運転者シートSが支持されている。
【0044】
本実施形態において、車体フレーム80は、電動モータMを収容するモータ収容領域MR(図1等参照)を有する。モータ収容領域MRは、車体フレーム80の上面より窪んだ領域であり、その左右両端には切り欠き80aが形成されている。電動モータMは、その左右両端部が切り欠き80aに嵌められ、車体フレーム80に支持されている。このように、比較的重量のある電動モータMを、車体の下部に設けることにより、車体の重心を低くすることができる。車体の重心が低くなることにより、快適な走行が可能となる。
【0045】
車体フレーム80は、板状の熱交換器81と、熱交換器81の前部に沿って下方に延びている前側板82Fと、熱交換器81の左部から下方に延びている左側板82Lと、熱交換器81の右部から下方に延びている右側板82Rとを含んでいる。熱交換器81、左側板82L、及び右側板82Rは、トラックベルト31の上部が収容される空間を形成している。
【0046】
熱交換器81は、上面視において、前後方向が長手方向である矩形の板状部材である。熱交換器81上には、運転者シートSが直接又は間接的に載置されている。
【0047】
また、図3に示すように、熱交換器81上には、バッテリBTが載置されているとよい。具体的には、バッテリBTは、熱交換器81のうち後述の第1熱交換部81b上に載置されているとよい。なお、図3に示すバッテリBTの数、大きさ等は一例であり、これに限られるものではない。
【0048】
左側板82Lの下端には、運転者シートSに座る運転者の左足が置かれる左ステップ83Lが設けられている。右側板82Rの下端には、運転者シートSに座る運転者の右足が置かれる右ステップ83Rが設けられている。左ステップ83L及び右ステップ83Rは、車幅方向に所定の幅を有する板状である。
【0049】
[車体フレーム80:熱交換器81の構成]
次に、主に図6図8を参照して、本実施形態の熱交換器の構成について説明する。図6は、本実施形態の熱交換器及び熱交換器上に載置されるバッテリを示す斜視図である。図7は、図6で示す熱交換器の上板金及び下板金の断面を示す拡大図であって、図6に示す切断線VII-VIIにおける切断面を示す図である。図8は、熱交換器の下板金を上方から見た上面図である。図8に示す矢印は流体の流れを示しており、特に破線の矢印は冷媒として機能する流体の流れを示している。
【0050】
熱交換器81には、流体が流れると共に、流体が収容される流路Cが形成されている。図1等においては、流路Cの外形を破線で示している。なお、本実施形態においては、流体として水を用いるが、これに限られず、熱を運ぶことができる気体や液体であれば他の媒体であってもよい。
【0051】
熱交換器81は、2枚の板金が重なって構成されるものである。熱交換器81は、図7に示すように、上板金811と下板金812とを有している。上板金811及び下板金812は、鉄、アルミニウム等の金属や、ステンレス鋼等、熱伝導率の高い材料からなるとよい。上板金811と下板金812とは、溶接などにより互いに接合されているとよい。
【0052】
上板金811は、その上面及び下面が平坦面となっている板状部材である。一方、下板金812は、プレス加工がなされた凹凸を有する板状部材である。図7に示すように、下板金812の凹部812aは、上板金811と下板金812との間に流体が流れる空間を形成する。下板金812の凸部812bは、上板金811の下面に接合されると共に、流体が流れる空間を区画している。
【0053】
図6に示すように、熱交換器81の前部は下方に屈曲している。すなわち、熱交換器81の前部は、図1に示す前側板82Fに沿う形状となっている。ただし、図6に示す熱交換器81の形状は一例であり、これに限られるものではない。
【0054】
本実施形態において、流路Cは、図8に示すように、冷却部81aと、右接続流路81aRと、左接続流路81aLとを含む。
【0055】
冷却部81aは、冷却部81aに流れ込んできた流体を、外気との温度差に応じて冷却する部分である。電動スノーモビル100が外気温の低い雪上を走行する場合においては、冷却部81a内に流れる流体は冷却されることとなる。
【0056】
また、冷却部81aは、図3に示すように、トラックベルト31の上方に配置されている。そのため、トラックベルト31に付着した水分や雪が、トラックベルト31の回動に伴い上方に巻き上げられ、冷却部81aの裏面に当たることとなる。これにより、冷却部81a内を流れる流体は、冷却部81aの裏面に当たった水分や雪との温度差に応じて冷却されることとなる。
【0057】
図6に示すように、右接続流路81aRの前部には右パイプ85aRが接続されており、左接続流路81aLの前部には左パイプ85aLが接続されている。左パイプ85aLは、後述の第3流路Cの少なくとも一部を構成する部分である。
【0058】
なお、右パイプ85aR及び左パイプ85aLは、電動モータMへ向けて前方に延びて設けられているが、図6においては、一部のみを示すこととする。後述の右パイプ85bR及び左パイプ85bLも同様とする。なお、図1においては、熱交換器81に接続される各パイプの図示は省略している。
【0059】
右接続流路81aRは、右パイプ85aRを通じて、冷却部81aと、後述のバルブ構造体V(図9等参照)とを接続する部分である。左接続流路81aLは、左パイプ85aLを通じて、冷却部81aと、第1熱交換部81b及び後述の第2熱交換部55(図9等参照)とを接続する部分である。
【0060】
本実施形態において、流路Cはさらに、図8に示すように、第1熱交換部81bと、右接続流路81bRと、左接続流路81bLとを含む。
【0061】
第1熱交換部81bは、熱交換部81b上に載置されるバッテリBTと、第1熱交換部81b内を流れる流体との温度差に応じて、バッテリBTと流体との熱交換をする部分である。バッテリBTの温度が、第1熱交換部81b内を流れる流体の温度よりも低い場合、バッテリBTは加温されることとなる。一方、バッテリBTの温度が、第1熱交換部81b内を流れる流体の温度よりも高い場合、バッテリBTは冷却されることとなる。
【0062】
図6に示すように、右接続流路81bRの前部には右パイプ85bRが接続されており、左接続流路81bLの前部には左パイプ85bLが接続されている。
【0063】
右接続流路81bRは、右パイプ85bRを通じて、第1熱交換部81bと、後述のバルブ構造体Vとを接続する部分である。左接続流路81bLは、左パイプ85bLを通じて、第1熱交換部81bと、冷却部81a及び後述の第2熱交換部55(図9等参照)とを接続する部分である。また、右パイプ85bR及び左パイプ85bLは、後述の第1流路Cの少なくとも一部を構成するものである。
【0064】
図8に示すように、冷却部81aは、第1熱交換部81bの後方に形成されている。また、右接続流路81aR及び左接続流路81aLは、右接続流路81bR及び左接続流路81bLよりも車幅方向の外側に形成されている。すなわち、第1熱交換部81b、右接続流路81bR、及び左接続流路81bLは、平面視において、冷却部81aと、右接続流路81aRと、左接続流路81aLとに囲まれるように形成されている。
【0065】
前後方向における第1熱交換部81bの長さは、バッテリBTの長さよりも長いとよい。また、車幅方向(左右方向)における第1熱交換部81bの幅は、バッテリBTの幅より広いとよい。このような構成により、バッテリBTの下面の全域を第1熱交換部81b上に載置することができ、バッテリBTと、第1熱交換部81b内を流れる流体との熱交換を効率良く行うことができる。
【0066】
また、冷却部81aは、第1熱交換部81bよりも容量が大きいとよい。言い換えると、図8に示すように、平面視における冷却部81aの面積は、平面視における第1熱交換部81bの面積よりも大きいとよい。このように、熱交換器81を構成する部分のうち、冷却部81aを比較的大きくすることにより、冷却性能を高めることができる。すなわち、流体をより効率的に冷却することができる。その結果、バッテリBT及び電動モータMをより効率的に冷却することができる。
【0067】
また、図8に示すように、下板金812の凸部812bは、冷却部81aにおいて前後方向に延びる延伸部86を有する。延伸部86は、冷却部81aを、右接続流路81aRに接続される領域と、左接続流路81aLに接続される領域とに区画している。このような構成により、冷却部81a内における流体の流速を速くすることができ、流体の循環を効率良く行うことが可能となる。なお、図8においては、延伸部86が、車幅方向における冷却部81aの中央部に設けられている例について示すが、車幅方向における延伸部86の配置はこれに限られるものではない。
【0068】
また、図8に示すように、下板金812の凸部812bは、第1熱交換部81bにおいて前後方向に延びる延伸部87を有する。延伸部87は、第1熱交換部81bを、右接続流路81bRに接続される領域と、左接続流路81bLに接続される領域とに区画している。このような構成により、第1熱交換部81b内における流体の流速を速くすることができ、流体の循環を効率良く行うことが可能となる。なお、図8においては、延伸部87が、車幅方向における熱交換部81bの中心部より右側に設けられている例について示すが、車幅方向における延伸部87の配置はこれに限られるものではない。
【0069】
なお、下板金812の凸部812bと、上板金811の裏面との間にはシール部材が設けられていてもよい。これにより、凸部812bを介して、流体が冷却部81aと第1熱交換部81bとの間を行き来してしまうことを抑制できる。
【0070】
[本実施形態における熱交換について]
次に、図9図12を参照して、本実施形態における熱交換について説明する。図9図12は、本実施形態に係る電動スノーモビルにおける流路及びその周辺部材を模式的に示す図である。
【0071】
図9図12に示すように、電動スノーモビル100は、上述した構成に加えて、上流側バルブV1及び下流側バルブV2を含む流量調整部であるバルブ構造体Vと、ポンプPと、加温部であるヒータHと、第2熱交換部55と、アクチュエータ91と、制御部92とを有している。なお、図9図12においては、図6で示した各パイプの図示については省略している。
【0072】
また、電動スノーモビル100は、冷却部81aにおいて冷却された流体を第1熱交換部81bへ送る第1流路C1と、冷却部81aにおいて冷却された流体を第2熱交換部55へ送る第2流路C2とを含んでいる。また、電動スノーモビル100は、第1熱交換部81bにおいて熱交換された流体と第2熱交換部55において熱交換された流体とを冷却部81aへ送る第3流路C3を含んでいる。
【0073】
本実施形態において、第1流路C1は、上流側バルブV1及び下流側バルブV2と、第1熱交換部81bの右接続流路81bRとを接続する流路を含む流路である。第2流路C2は、下流側バルブV2と第2熱交換部55とを接続する流路を含む流路である。
【0074】
第3流路C3は、第1熱交換部81bにおいて熱交換された流体が流れる第1流路C1と第2熱交換部55において熱交換された流体が流れる第2流路C2との合流部93と、冷却部81aの左接続流路81aLとを接続する流路である。すなわち、第1流路C1と第2流路C2とは、合流部93において合流すると共に第3流路C3に接続されている。
【0075】
第1流路C1、第2流路C2、第3流路C3の構成は特に限定されるものではないが、例えば、その内部に流体が流れる管であるとよい。
【0076】
第2熱交換部55は、その内部に流体が流れると共に流体が収容される構造であり、電動モータMと、第2熱交換部55内を流れる流体との温度差に応じて、電動モータMと流体との熱交換をする。電動モータMの温度が、第2熱交換部55内を流れる流体の温度よりも低い場合、電動モータMは加温されることとなる。一方、電動モータMの温度が、第2熱交換部55内を流れる流体の温度よりも高い場合、電動モータMは冷却されることとなる。第2熱交換部55は、例えば、電動モータMに取り付けられるウォータージャケットであるとよい。
【0077】
バルブ構造体Vは、第1流路C1及び第2流路C2の少なくも一方又は両方へ流体を送る構造である。このような構成により、熱交換を行う対象に応じて流体を流すことができる。また、バルブ構造体Vは、第1流路C1へ送られる流体の流量と、第2流路C2に送られる流量を調整可能である。バルブ構造体Vは、ポンプPを介して互いに接続されている上流側バルブV1及び下流側バルブV2を含む。その構造の詳細な説明については省略するが、上流側バルブV1及び下流側バルブV2は共に三方弁である。
【0078】
上流側バルブV1は、右接続流路81aRと、第1流路Cと、ポンプPとに接続されている。すなわち、上流側バルブV1は、バルブ構造体Vに流れ込んできた流体を、右接続流路81aRと、第1流路C1と、ポンプPとのいずれかに送り出すことができる構造である。
【0079】
下流側バルブV2は、第1流路C1と、第2流路C2と、ポンプPとに接続されている。すなわち、下流側バルブV2は、バルブ構造体Vに流れ込んできた流体を、第1流路C1と、第2流路C2と、ポンプPとのいずれかに送り出すことができる構造である。
【0080】
アクチュエータ91は、制御部92によりその動作が制御され、バルブ構造体Vに流れ込んできた流体の送り出し方向及び流量を切り替える装置である。
【0081】
制御部92は、バッテリBTの温度と電動モータMの温度の少なくとも一方に基づいて、アクチュエータ91を動作させることでバルブ構造体Vを制御するとよい。例えば、制御部92は、バッテリBTの温度が所定の閾値よりも低い場合、バッテリBTを冷却する流れを作るようバルブ構造体Vを制御するとよい。なお、図示は省略するが、電動スノーモビル100は、バッテリBTの温度を検出する温度センサと、電動モータMの温度を検出する温度センサを有しているとよい。
【0082】
ポンプPは、バルブ構造体Vに流れ込んできた流体を、第1流路C1及び/又は第2流路C2を通じて第3流路C3へ流体を送る機能を有する。
【0083】
ヒータHは、流体を加温する装置である。図9等においては、ヒータHが、第2流路C2を流れる流体を加温する位置に設けられる例を示している。
【0084】
[本実施形態における熱交換について:バッテリBT及び電動モータMの冷却]
図9を参照して、熱交換器81を用いたバッテリBT及び電動モータMの冷却について説明する。
【0085】
図9に示す各矢印は流体が流れる方向を示している。図9に示す「×」は、その流路に流体が流れないことを示している。流体が流れる方向は、ポンプP及びバルブ構造体Vの動作により決まるものである。後述の図10図13においても同様である。
【0086】
図9に示す例においては、バルブ構造体Vに流れ込んだ流体を、第1流路C1及び第2流路C2のそれぞれに送り出すように、ポンプP及びバルブ構造体Vが動作している。
【0087】
まず、冷却部81a内を流れる流体は、外気や雪などとの温度差に応じて冷却される。その後、冷却部81aで冷却された流体は、右接続流路81aRを通じて、バルブ構造体Vに流れ込む。バルブ構造体Vに流れ込んだ流体の一部は第1流路C1へ送り出され、他の一部は第2流路C2へ送り出される。
【0088】
第1流路C1へ送り出された流体は、第1熱交換部81bへ流れ込む。第1熱交換部81bへ流れ込んだ流体は、バッテリBTと熱交換される。これにより、流体の温度が上昇する一方で、バッテリBTの温度が低下する。すなわち、流体が冷媒として機能することで、バッテリBTが冷却されることとなる。
【0089】
第1熱交換部81bにおいて加温された流体は、第1流路C1、第3流路C3及び左接続流路81aLを通じて、冷却部81aに流れ込む。このように、第1熱交換部81bにおいて加温された流体は、冷却部81aへ戻ることにより、再び冷却されることとなる。
【0090】
一方、バルブ構造体Vにおいて第2流路C2へ送り出された流体は、第2熱交換部55へ流れ込む。第2熱交換部55へ流れ込んだ流体は、電動モータMと熱交換される。これにより、流体の温度が上昇する一方で、電動モータMの温度が低下する。すなわち、流体が冷媒として機能することで、電動モータMが冷却されることとなる。
【0091】
第2熱交換部55において加温された流体は、第2流路C2、第3流路C3及び左接続流路81aLを通じて、冷却部81aに流れ込む。このように、第2熱交換部55において加温された流体は、冷却部81aへ戻ることにより、再び冷却されることとなる。
【0092】
以上のように、図9に示す例においては、冷却部81aにおける流体の冷却と、流体によるバッテリBT及び電動モータMの冷却を繰り返し行うことにより、バッテリBT及び電動モータMの昇温を抑制することが可能となる。
【0093】
制御部92は、バッテリBTの温度及び電動モータMの温度が所定の閾値以上の場合に、アクチュエータ91を動作させることにより、図9で示す流体の流れとなるようにバルブ構造体Vを制御するとよい。なお、バルブ構造体Vから第1流路C1に送り出される流体の流量と、バルブ構造体Vから第2流路C2に送り出される流体の流量とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0094】
[本実施形態における熱交換について:電動モータMの冷却]
図10を参照して、熱交換器81を用いた電動モータMの冷却について説明する。
【0095】
図10に示す例においては、バルブ構造体Vに流れ込んだ流体を、第2流路C2に送り出すように、ポンプP及びバルブ構造体Vが動作している。
【0096】
まず、冷却部81a内を流れる流体は、外気や雪などとの温度差に応じて冷却される。その後、冷却部81aで冷却された流体は、右接続流路81aRを通じて、バルブ構造体Vに流れ込む。バルブ構造体Vに流れ込んだ流体は第2流路C2へ送り出される。
【0097】
第2流路C2へ送り出された流体は、第2熱交換部55へ流れ込む。第2熱交換部55へ流れ込んだ流体は、電動モータMと熱交換される。これにより、流体の温度が上昇する一方で、電動モータMの温度が低下する。すなわち、流体が冷媒として機能することで、電動モータMが冷却されることとなる。
【0098】
第2熱交換部55において加温された流体は、第2流路C2、第3流路C3及び左接続流路81aLを通じて、冷却部81aに流れ込む。このように、第2熱交換部55において加温された流体は、冷却部81aへ戻ることにより、再び冷却されることとなる。
【0099】
以上のように、図10に示す例においては、冷却部81aにおける流体の冷却と、流体による電動モータMの冷却を繰り返し行うことにより、電動モータMの昇温を抑制することが可能となる。この例においては、流体とバッテリBTとの間で熱交換が行われることがなく、電動モータMをより効率的に冷却させることができる。
【0100】
[本実施形態における熱交換について:バッテリBTの冷却]
図11を参照して、熱交換器81を用いたバッテリBTの冷却について説明する。
【0101】
図11に示す例においては、バルブ構造体Vに流れ込んだ流体を第1流路C1に送り出すように、ポンプP及びバルブ構造体Vが動作している。
【0102】
まず、冷却部81a内を流れる流体は、外気や雪などとの温度差に応じて冷却される。その後、冷却部81aで冷却された流体は、右接続流路81aRを通じて、バルブ構造体Vに流れ込む。バルブ構造体Vに流れ込んだ流体は第1流路C1へ送り出される。
【0103】
第1流路C1へ送り出された流体は、第1熱交換部81bへ流れ込む。第1熱交換部81bへ流れ込んだ流体は、バッテリBTと熱交換される。これにより、流体の温度が上昇する一方で、バッテリBTの温度が低下する。すなわち、流体が冷媒として機能することで、バッテリBTが冷却されることとなる。
【0104】
第1熱交換部81bにおいて加温された流体は、第1流路C1、第3流路C3及び左接続流路81aLを通じて、冷却部81aに流れ込む。このように、第1熱交換部81bにおいて加温された流体は、冷却部81aへ戻ることにより、再び冷却されることとなる。
【0105】
以上のように、図11に示す例においては、冷却部81aにおける流体の冷却と、流体によるバッテリBTの冷却を繰り返し行うことにより、バッテリBTの昇温を抑制することが可能となる。この例においては、流体と電動モータMとの間で熱交換が行われることがなく、バッテリBTをより効率的に冷却させることができる。
【0106】
[本実施形態における熱交換について:バッテリBT及び電動モータMの加温]
図12を参照して、熱交換器81を用いたバッテリBT及び電動モータMの加温について説明する。
【0107】
図12に示す例においては、第1熱交換部81bから第1流路C1を通じてバルブ構造体Vに流れ込んだ流体を第2流路C2に送り出すように、ポンプP及びバルブ構造体Vが動作している。
【0108】
さらに、図12に示す例においては、第2流路C2を流れる流体を加温するヒータHをON(通電)している。
【0109】
ヒータHにより第2流路C2を流れる流体は加温される。ヒータHにより加温された流体は第1熱交換部81bへ流れ込む。第1熱交換部81bへ流れ込んだ流体は、バッテリBTと熱交換される。これにより、流体の温度が低下する一方で、バッテリBTの温度が上昇する。すなわち、流体が熱媒として機能することで、バッテリBTが加温されることとなる。
【0110】
加温された流体は第1流路Cへ送り出されて、バルブ構造体Vに流れ込む。バルブ構造体Vに流れ込んだ流体は、第2流路C2へ送り出され、第2熱交換部55に流れ込む。
【0111】
第2熱交換部55へ流れ込んだ流体は、電動モータMと熱交換される。これにより、流体の温度が低下する一方で、電動モータMの温度が上昇する。すなわち、流体が熱媒として機能することで、バッテリBTが加温されることとなる。
【0112】
第2熱交換部55において冷却された流体は、第2流路C2へ送り出されて、ヒータHにより再び加温されることとなる。
【0113】
以上のように、ヒータHによる流体の加温と、流体によるバッテリBT及び電動モータMの加温を繰り返し行うことにより、バッテリBT及び電動モータMの低温化を抑制することができる。なお、ヒータHの配置は図9等に示すものに限られず、少なくとも、第1流路C1又は第2流路C2を流れる流体を加温可能な位置に配置されているとよい。
【0114】
[本実施形態の変形例]
図13を参照して、本実施形態の変形例について説明する。図9図12においては、バルブ構造体が2つのバルブを備える例について示したが、変形例の電動スノーモビル101は、1つのバルブV3を有している。バルブV3は、ポンプP、第1流路C1及び第2流路C2のそれぞれに接続される三方弁である。
【0115】
また、変形例の電動スノーモビル101は、図9図12で示したヒータHの代わりに、バッテリBTの側面に設けられる加温シートH1を有している。加温シートH1は、シート状のヒータであり、バッテリBTの側面に沿うように接触又は近接して設けられており、バッテリBTを加温する。
【0116】
加温シートH1は、例えば、バッテリBTの上面に沿うように設けられているとよい。このような構成により、加温シートH1は、バッテリBTの上方に配置される運転者シートSを加温するシートヒータを兼ねることができる。すなわち、加温シートH1により、第1熱交換部81b内を流れる流体を加温すると共に、運転者シートSを加温することができる。
【0117】
図13に示す例においては、バルブV3は、バルブV3への流体が流れ込むこと及びバルブV3からの流体が流れ出すことを断つように動作している。そのため、ポンプPの動作に関わらず、流体が流れないようになっている。すなわち、冷却部81aにおいて冷却された流体は、冷却部81aに収容される状態を維持し、第1熱交換部81bや第2熱交換部55へ流れ込むことがない。バッテリBT及び電動モータMが低温化することを抑制することが可能となる。
【0118】
[その他]
図9図13で示した流体の流路については一例であって、これに限られるものではない。電動スノーモビル100は、少なくとも、冷却部81aにおいて冷却された流体を第1熱交換部81bへ送る流路と、冷却部81aにおいて冷却された流体を第2熱交換部55へ送る流路と、第1熱交換部81b及び第2熱交換部55において熱交換された流体を冷却部81aへ送る流路とを有するものであればよい。
【0119】
また、図9図13で示したバルブ構造体VやポンプPの数、配置は一例であって、これに限られるものではない。
【0120】
また、本実施形態及びその変形例においては、バッテリBTが、車体フレーム80の熱交換器81上に1つのバッテリBTが載置される例について説明したが、これに限られるものではない。すなわち、熱交換器81上に複数のバッテリBTが載置されていてもよい。また、例えば、右前フレーム13R、左前フレーム13Lなどによって、吊り下げられて、電動モータMの上方に設けられているバッテリをさらに有していてもよい。なお、バッテリBTは、複数のバッテリセルを含むものであってもよい。
【0121】
また、本実施形態及びその変形例においては、車体フレーム80の上板が、熱交換器81である例について説明した。このような構成により、車体フレーム80の部品点数を少なくし、軽量化できる。しかしながら、これに限られず、例えば、車体フレーム80が板状の上板を有し、その上板の上面又は下面に、熱交換器81が別部材として設けられていてもよい。この場合、車体フレーム80の上板に開口hが形成されており、その開口hから熱交換器81の一部がトラックベルト31に対向して露出するように熱交換器81が設けられているとよい。具体的には、冷却部81a又は第1熱交換部81bが開口hから露出するように、熱交換器81が車体フレーム80の上板上に設けられているとよい。なお、一例として、図14において、車体フレーム80の上板に開口hが形成されており、開口hから熱交換器81の一部である冷却部81aが露出する構成を採用した電動スノーモビル102を示す。この構成によると、トラックベルト31から巻き上げられた水分や雪が、開口hを介して冷却部81aの裏面に当たることとなる。その結果、車体フレーム80の上板と別部材である熱交換器81の冷却部81aの冷却性能を向上することができる。
【0122】
また、冷却部81aと第1熱交換部81bとは1つの部材で構成されるものに限らず、別部材であってもよい。この場合、冷却部81aと第1熱交換部81bは、管等の流路により互いに接続されているとよい。
【0123】
また、本実施形態及びその変形例においては、上板金811の上面が平坦面であり、その平坦面状にバッテリBTが載置される例について示した。このような構成により、上板金811上に載置されるバッテリBTの姿勢が安定する。さらに、上板金811(第1熱交換部81b)に対するバッテリBTの下面の接触面積を最大限とることができ、第1熱交換部81bにおける熱交換を効率良く行うことができる。ただし、これに限られず、上板金811にプレス加工がなされることで凹凸が形成されていてもよい。
【0124】
また、本実施形態及びその変形例においては、バッテリBT及び電動モータMと、流体との熱交換を行う例について説明したが、熱交換を行う対象はこれに限られない。例えば、バッテリBT及び電動モータMに加えて、バッテリBTから供給される電力により駆動すると共に電動モータMの回転を制御するインバータと、流体との熱交換を行うことが可能な構成であってもよい。
【0125】
[実施形態の概要]
(1)電動スノーモビル100は、前後方向に延びている車体フレーム80と、車体フレーム80に支持されている運転者シートSと、前記車体フレーム80に支持されている電動モータMと、車体フレーム80に支持されている右スキー20R及び左スキー20Lと、トラックベルト31を含み、運転者シートSの下方において車体フレーム80に支持されているトラック機構30と、電動モータMへ電力を供給するバッテリBTと、少なくとも外気により流体を冷却する冷却部81aと、バッテリBTと流体との熱交換をする第1熱交換部81bと、電動モータMと流体との熱交換をする第2熱交換部55と、冷却部81aにおいて冷却された流体を第1熱交換部81bへ送る第1流路C1と、冷却部81aにおいて冷却された流体を第2熱交換部55へ送る第2流路C2と、第1熱交換部81bにおいて熱交換された流体と、第2熱交換部55において熱交換された流体とを、冷却部81aへ送る第3流路C3と、を有する。
【0126】
(2)電動スノーモビル100は、第1流路C1へ送られる流体の流量と、第2流路C2へ送られる流体の流量を調整可能なバルブ構造体Vを有する。
【0127】
(3)バルブ構造体Vは、第1流路C1及び第2流路C2の少なくとも一方又は両方へ流体を送る。
【0128】
(4)電動スノーモビル100は、バッテリBTの温度と電動モータMの温度の少なくとも一方に基づいて、バルブ構造体Vを制御する制御部92を有する。
【0129】
(5)第1流路C1と第2流路C2とは合流部93において合流すると共に第3流路C3に接続されている。
【0130】
(6)電動スノーモビル100は、第1流路C1及び/又は第2流路C2を通じて第3流路C3へ流体を送るポンプPを有する。
【0131】
(7)少なくとも第1流路C1又は第2流路のいずれかを流れる流体を加温する加温部が設けられている。
【0132】
(8)加温部は、バッテリBTを加温する加温シートH1である。
【0133】
(9)加温シートH1は、運転者シートSの下方であって、バッテリBTの上面に設けられている。
【0134】
(10)冷却部81a及び第1熱交換部81bのうち少なくとも一方は、車体フレーム80の一部を構成している。
【0135】
(11)車体フレーム80の上板は、冷却部81a及び第1熱交換部81bを含む板状の熱交換器81である。
【0136】
(12)車体フレーム80の上板には、冷却部81a及び第1熱交換部81bのうち少なくとも一方をトラックベルト31に対向するように露出させる開口が形成されている。
【0137】
(13)冷却部81aは、第1熱交換部81bよりも容量が大きい。
【0138】
(14)バッテリBTは、運転者シートSの下方であって、第1熱交換部81b上に設けられている。
【0139】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく種々の変形が可能である。例えば、実施形態で説明した構成は、実質的に同一の構成、同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成で置き換えることができる。
【符号の説明】
【0140】
10 シャフト支持フレーム、11 シャフト支持部、12 補助フレーム、13R 右前フレーム、13L 左前フレーム、15R 右スキー支持フレーム、15L 左スキー支持フレーム、19 バンパー、20R 右スキー、21R 被支持部、22R 板部、20L 左スキー、21L 被支持部、22L 板部、30 トラック機構、31 トラックベルト、40 ステアリングシャフト、41 ステアリングハンドル、55 第2熱交換部、70R,70L サスペンション、80 車体フレーム、81 熱交換器、81a 冷却部、81b 第1熱交換部、811 上板金、812 下板金、812a 凹部、812b 凸部、82F 前側板、82R 右側板、82L 左側板、83L,83R ステップ、85aR 右パイプ、85aL 左パイプ、85bR 右パイプ、85bL 左パイプ、86,87 延伸部、91 アクチュエータ、92 制御部、93 合流部、100,101、102 電動スノーモビル、110 外装カバー、BT バッテリ、M 電動モータ、S 運転者シート、P ポンプ、H ヒータ、V バルブ構造体、V1 第1バルブ、V2 第2バルブ、V3 バルブ。

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