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特開2022-6246椎間スペーサーを設計する方法およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022006246
(43)【公開日】2022-01-13
(54)【発明の名称】椎間スペーサーを設計する方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/44 20060101AFI20220105BHJP
   A61B 34/10 20160101ALI20220105BHJP
   A61B 17/70 20060101ALI20220105BHJP
【FI】
A61F2/44
A61B34/10
A61B17/70
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020108383
(22)【出願日】2020-06-24
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2020-11-11
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(71)【出願人】
【識別番号】518421348
【氏名又は名称】株式会社京・クリエイト
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】竹本 充
(72)【発明者】
【氏名】清水 優
(72)【発明者】
【氏名】藤林 俊介
(72)【発明者】
【氏名】西村 賢治
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 清幸
【テーマコード(参考)】
4C097
4C160
【Fターム(参考)】
4C097AA10
4C097CC05
4C097CC15
4C097MM03
4C160LL24
4C160LL39
4C160LL62
(57)【要約】
【課題】X線投影画像撮影時の患者の姿勢にかかわらず、常に患者に適合したセミカスタムメイドの椎間スペーサーを設計する。
【解決手段】脊椎のX線投影画像に基づき、椎体ずれ情報を取得すると共に、冠状面に平行な複数の面のそれぞれと対象椎体間の尾側椎体の頭側終板及び頭側椎体の尾側終板との交線に適合した第1及び第4の自由曲線と、椎間スペーサーの横断面の輪郭を決定する第3の自由曲線のベクトル画像データを取得する。三次元座標系内に自由曲線を再配置し、第1及び第4の自由曲線からそれぞれ第1及び第2の面を形成し、椎体ずれ情報に基づき、第1及び第2の面の位置関係を修正する。第1及び第2の面を椎間スペーサーの尾側及び頭側終板面とし、第3の自由曲線を尾側および頭側終板面間において移動させた時の軌跡から椎間スペーサーの側面を形成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
椎間スペーサーを設計する方法であって、
(1)患者の脊椎の三次元X線投影画像内に、三次元直交座標系を、Z軸が正中に平行にのび、X-Z平面が冠状面および矢状面のうちの一方に平行にのび、Y-Z平面が前記冠状面および前記矢状面のうちの他方に平行にのびるように設定するステップと、
(2)前記三次元X線投影画像における対象椎体間の頭側および尾側の椎体の相対的なずれに関する椎体ずれ情報を取得するステップと、
(3)前記三次元直交座標系のX-Z平面に平行な複数の平面のそれぞれと前記尾側の椎体の頭側終板との交線に適合した複数の第1の自由曲線、および/または前記三次元直交座標系のY-Z平面に平行な複数の平面のそれぞれと前記尾側の椎体の頭側終板との交線に適合した複数の第2の自由曲線のベクトル画像データと、前記三次元直交座標系のX-Y平面に平行な平面上における設計すべき前記椎間スペーサーの輪郭を決定する第3の自由曲線のベクトル画像データと、前記三次元直交座標系のX-Z平面に平行な複数の平面のそれぞれと前記頭側の椎体の尾側終板との交線に適合した複数の第4の自由曲線、および/または前記三次元直交座標系のY-Z平面に平行な複数の平面のそれぞれと前記頭側の椎体の尾側終板との交線に適合した複数の第5の自由曲線のベクトル画像データを取得するステップと、
(4)前記三次元X線投影画像とは独立に設定した三次元直交座標系内に、前記ベクトル画像データに基づいて、前記第1および/または第2の自由曲線と、前記第3の自由曲線と、前記第4および/または第5の自由曲線とを再配置し、前記第1および/または第2の自由曲線を含む第1の面と、前記第4および/または第5の自由曲線を含む第2の面とを形成するステップと、
(5)前記椎体ずれ情報に基づき、前記三次元直交座標系において、前記第2の面を前記第1の面に対して変位させ、または前記第1の面を前記第2の面に対して変位させて、前記第1および第2の面を正常な相対位置関係において配置するステップと、
(6)前記第1および第2の面をそれぞれ前記椎間スペーサーの尾側終板面および頭側終板面とし、前記三次元直交座標系において、前記第3の自由曲線を前記椎間スペーサーの尾側および頭側終板面間においてZ軸方向に移動させたときの軌跡から前記椎間スペーサーの側面を形成し、前記椎間スペーサーの前記尾側および頭側終板面と、前記側面とから前記椎間スペーサーを画成するステップと、を順次実行することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第3の自由曲線が、前記尾側の椎体の一対の鉤状突起のそれぞれの内縁または前記対象椎体間の椎間板の両側縁に沿ってのびる第1の線分と、前記椎間板の前縁よりも内側において前記前縁に沿ってのびる第2の線分と、前記椎間板の後縁よりも内側において前記後縁に沿ってのびる第3の線分と、互いに隣接する前記第1の線分および前記第2の線分を接続する第1の円弧状部分と、互いに隣接する前記第1の線分および前記第3の線分を接続する第2の円弧状部分と、からなっていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(6)の実行後に、
(7)前記椎間スペーサーの後方に所定の距離離れた点を通り、前記冠状面に平行にのびる軸を設定して、前記椎間スペーサーの頭側終板面を前記軸のまわりに所定の角度回転させたときの軌跡から前記椎間スペーサーの側面拡張部分を形成するとともに、回転後の前記椎間スペーサーの頭側終板面を前記椎間スペーサーの新たな頭側終板面として、前記椎間スペーサーの新たな頭側終板面と、前記椎間スペーサーの尾側終板面と、前記椎間スペーサーの側面および側面拡張部分とから、修正された前記椎間スペーサーを画成するステップ
を実行することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
患者の脊椎の三次元X線投影画像から取得された、対象椎体間の頭側および尾側の椎体の相対的なずれに関する椎体ずれ情報と、前記頭側および尾側の椎体に関係する複数の自由曲線のベクトル画像データとを用いて椎間スペーサーを設計するプログラムであって、
前記三次元X線投影画像内に、三次元直交座標系が、Z軸が正中に平行にのび、X-Z平面が冠状面および矢状面のうちの一方に平行にのび、Y-Z平面が前記冠状面および前記矢状面のうちの他方に平行にのびるように設定され、
前記複数の自由曲線が、前記三次元直交座標系のX-Z平面に平行な複数の平面のそれぞれと前記尾側の椎体の頭側終板との交線に適合した複数の第1の自由曲線、および/または前記三次元直交座標系のY-Z平面に平行な複数の平面のそれぞれと前記尾側の椎体の頭側終板との交線に適合した複数の第2の自由曲線と、前記三次元直交座標系のX-Y平面に平行な平面上における設計すべき前記椎間スペーサーの輪郭を決定する第3の自由曲線と、前記三次元直交座標系のX-Z平面に平行な複数の平面のそれぞれと前記頭側の椎体の尾側終板との交線に適合した複数の第4の自由曲線、および/または前記三次元直交座標系のY-Z平面に平行な複数の平面のそれぞれと前記頭側の椎体の尾側終板との交線に適合した複数の第5の自由曲線とからなるプログラムにおいて、
(1)前記椎体ずれ情報、および前記ベクトル画像データの入力を受ける手順と、
(2)前記三次元X線投影画像とは独立に設定した三次元直交座標系内に、前記ベクトル画像データに基づいて、前記第1および/または第2の自由曲線と、前記第3の自由曲線と、前記第4および/または第5の自由曲線とを再配置し、前記第1および/または第2の自由曲線を含む第1の面と、前記第4および/または第5の自由曲線を含む第2の面とを形成する手順と、
(3)前記椎体ずれ情報に基づき、前記三次元直交座標系において、前記第2の面を前記第1の面に対して変位させ、または前記第1の面を前記第2の面に対して変位させて、前記第1および第2の面を正常な相対位置関係において配置する手順と、
(4)前記第1および第2の面をそれぞれ前記椎間スペーサーの尾側終板面および頭側終板面とし、前記三次元直交座標系において、前記第3の自由曲線を前記椎間スペーサーの尾側および頭側終板面間においてZ軸方向に移動させたときの軌跡から前記椎間スペーサーの側面を形成し、前記椎間スペーサーの前記尾側および頭側終板面と、前記側面とから前記椎間スペーサーを画成する手順と、を順次コンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項5】
前記第3の自由曲線が、前記尾側の椎体の一対の鉤状突起のそれぞれの内縁または前記対象椎体間の椎間板の両側縁に沿ってのびる第1の線分と、前記椎間板の前縁よりも内側において前記前縁に沿ってのびる第2の線分と、前記椎間板の後縁よりも内側において前記後縁に沿ってのびる第3の線分と、互いに隣接する前記第1の線分および前記第2の線分を接続する第1の円弧状部分と、互いに隣接する前記第1の線分および前記第3の線分を接続する第2の円弧状部分と、からなっていることを特徴とする請求項4に記載のプログラム。
【請求項6】
前記手順(4)の実行後に、
(5)前記椎間スペーサーの後方に所定の距離離れた点を通り、前記冠状面に平行にのびる軸を設定して、前記椎間スペーサーの頭側終板面を前記軸のまわりに所定の角度回転させたときの軌跡から前記椎間スペーサーの側面拡張部分を形成するとともに、回転後の前記椎間スペーサーの頭側終板面を前記椎間スペーサーの新たな頭側終板面として、前記椎間スペーサーの新たな頭側終板面と、前記椎間スペーサーの尾側終板面と、前記椎間スペーサーの側面および側面拡張部分とから、修正された前記椎間スペーサーを画成する手順
を前記コンピュータに実行させることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脊椎固定術において使用される椎間スペーサーを設計する方法およびプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
脊椎の損傷には、外傷、変性および腫瘍等の疾患による損傷と、それを治療するための手術手技による損傷(手術の際に、靭帯や関節等がやむなく切除されることによって生じる損傷)とがあるが、かかる脊椎損傷の治療手段の1つとして脊椎固定術がある。
【0003】
脊椎固定術は不安定化した2つ以上の椎骨をつなげて固定する外科的手法であり、脊椎固定術においては、椎間スペーサーが用いられる。椎間スペーサーは、不安定な椎体間に挿入され、それらの椎体と癒合することによって当該椎体を互いに固定する。
【0004】
そして、従来、我が国においては、椎間スペーサーとして、海外から輸入された既製品が使用されるのが一般的であった。
ところが、それらの椎間スペーサーは、外国人と体格差がある日本人の脊椎に適合しないサイズ、形状のものが多く、そのため、患者への使用に際し患者の骨を削る等して、患者の身体を椎間スペーサーに合わせる必要があり、患者に対する侵襲が大きいという欠点を有していた。
【0005】
そこで、椎間スペーサーをフルカスタムメイドとし、患者毎に専用の椎間スペーサーを設計する方法がこれまでに提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
この従来法によれば、まず、患者の脊椎の三次元X線投影画像に基づき、三次元画像解析ソフトウェアを用いて画像解析がなされ、二値化された三次元X線投影画像から対象となる椎体間に関係する一対の椎体(頭側の椎体および尾側の椎体)のそれぞれの三次元画像が抽出され、抽出された三次元画像のSTLデータが取得される。
【0006】
次に、取得されたSTLデータに基づき、三次元モデリングソフトウェアを用いて、一対の椎体のうちの尾側の椎体における頭側終板面の形状に基づき、椎間スペーサーの横断面の形状が決定され、次いで、この横断面形状を底面とし、対象となる椎体間の間隔に対応する高さの柱状体が形成される。さらに、この柱状体の底面が尾側の椎体の頭側終板面に置き換えられ、この柱状体の上面が頭側の椎体の尾側終板面に置き換えられ、椎間スペーサーが形成され、椎間スペーサーの設計データが取得される。
【0007】
その後、この椎間スペーサーの設計データと患者の脊椎の元の三次元X線投影画像とに基づき、三次元画像解析ソフトウェアを用いて椎間スペーサーの適合性がチェックされ、必要な場合には、設計データの修正がなされる。
【0008】
この設計法によれば、患者一人一人に最適な形状およびサイズの椎間スペーサーを設計(製造)することができ、よって、患者の骨を削る等して患者の身体を椎間スペーサーに合わせる必要がなく、患者に対して低侵襲な施術が行える。
【0009】
しかし、その一方で、患者の脊椎の三次元X線投影画像から対象となる椎体間に関係する一対の椎体の画像を抽出するのにかなりの手間と時間を要し、そのため、椎間スペーサーの製造コストが高くつき、それに伴って椎間スペーサーを用いた施術が高額になり、患者は多大な費用負担を強いられるという問題があった。
【0010】
また、脊椎に損傷がある患者の中には、椎間板の変形によって、対象椎体間の頭側および尾側の椎体が互いに正常な位置からずれた状態となっている者もおり、このような患者については、対象椎体間の頭側および尾側の椎体が互いに正常な位置からずれた状態の三次元X線投影画像が取得される。
【0011】
ところが、上述の設計法においては、このずれの補正が考慮に入れられておらず、そのため、設計された椎間スペーサーを使用しても、対象椎体間の頭側および尾側の椎体が互いに正常な位置関係に修正されない場合があった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】平成25年度課題解決型医療機器等開発事業「骨関節疾患治療におけるSLM技術を用いたテーラーメード型デバイスの開発」 研究開発成果報告書(要約版)、委託者 経済産業省、委託先 佐川印刷株式会社、平成26年2月、p.18-19
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
したがって、本発明の課題は、X線投影画像撮影時の患者の姿勢にかかわらず、常に患者に適合したセミカスタムメイドの椎間スペーサーを設計することができる手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、第1の発明によれば、椎間スペーサーを設計する方法であって、(1)患者の脊椎の三次元X線投影画像内に、三次元直交座標系を、Z軸が正中に平行にのび、X-Z平面が冠状面および矢状面のうちの一方に平行にのび、Y-Z平面が前記冠状面および前記矢状面のうちの他方に平行にのびるように設定するステップと、(2)前記三次元X線投影画像における対象椎体間の頭側および尾側の椎体の相対的なずれに関する椎体ずれ情報を取得するステップと、(3)前記三次元直交座標系のX-Z平面に平行な複数の平面のそれぞれと前記尾側の椎体の頭側終板との交線に適合した複数の第1の自由曲線、および/または前記三次元直交座標系のY-Z平面に平行な複数の平面のそれぞれと前記尾側の椎体の頭側終板との交線に適合した複数の第2の自由曲線のベクトル画像データと、前記三次元直交座標系のX-Y平面に平行な平面上における設計すべき前記椎間スペーサーの尾側終板の輪郭を決定する第3の自由曲線のベクトル画像データと、前記三次元直交座標系のX-Z平面に平行な複数の平面のそれぞれと前記頭側の椎体の尾側終板との交線に適合した複数の第4の自由曲線、および/または前記三次元直交座標系のY-Z平面に平行な複数の平面のそれぞれと前記頭側の椎体の尾側終板との交線に適合した複数の第5の自由曲線のベクトル画像データを取得するステップと、(4)前記三次元X線投影画像とは独立に設定した三次元直交座標系内に、前記ベクトル画像データに基づいて、前記第1および/または第2の自由曲線と、前記第3の自由曲線と、前記第4および/または第5の自由曲線とを再配置し、前記第1および/または第2の自由曲線を含む第1の面と、前記第4および/または第5の自由曲線を含む第2の面とを形成するステップと、(5)前記椎体ずれ情報に基づき、前記三次元直交座標系において、前記第2の面を前記第1の面に対して変位させ、または前記第1の面を前記第2の面に対して変位させて、前記第1および第2の面を正常な相対位置関係において配置するステップと、(6)前記第1および第2の面をそれぞれ前記椎間スペーサーの尾側終板面および頭側終板面とし、前記三次元直交座標系において、前記第3の自由曲線を前記椎間スペーサーの尾側および頭側終板面間においてZ軸方向に移動させたときの軌跡から前記椎間スペーサーの側面を形成し、前記椎間スペーサーの前記尾側および頭側終板面と、前記側面とから前記椎間スペーサーを画成するステップと、を順次実行することを特徴とする方法が提供される。
【0015】
ここで、「自由曲線」とは、コンピュータ・グラフィックスにおいて主として曲線や直線を描くために使用される、始点、終点および少なくとも1つの制御点を有する曲線(制御点が始点または終点に重なる場合は、直線となる)をいい、自由曲線上の点の座標値が1つのパラメータで表される(以下同様)。
自由曲線としては、例えば、スプライン曲線およびベジェ曲線が知られている。
【0016】
第1の発明の好ましい実施例によれば、前記第3の自由曲線が、前記尾側の椎体の一対の鉤状突起のそれぞれの内縁または前記対象椎体間の椎間板の両側縁に沿ってのびる第1の線分と、前記椎間板の前縁よりも内側において前記前縁に沿ってのびる第2の線分と、前記椎間板の後縁よりも内側において前記後縁に沿ってのびる第3の線分と、互いに隣接する前記第1の線分および前記第2の線分を接続する第1の円弧状部分と、互いに隣接する前記第1の線分および前記第3の線分を接続する第2の円弧状部分と、からなっている。
【0017】
第1の発明の別の好ましい実施例によれば、前記ステップ(6)の実行後に、(7)前記椎間スペーサーの後方に所定の距離離れた点を通り、前記冠状面に平行にのびる軸を設定して、前記椎間スペーサーの頭側終板面を前記軸のまわりに所定の角度回転させたときの軌跡から前記椎間スペーサーの側面拡張部分を形成するとともに、回転後の前記椎間スペーサーの頭側終板面を前記椎間スペーサーの新たな頭側終板面として、前記椎間スペーサーの新たな頭側終板面と、前記椎間スペーサーの尾側終板面と、前記椎間スペーサーの側面および側面拡張部分とから、修正された前記椎間スペーサーを画成するステップを実行する。
【0018】
上記課題を解決するため、また、第2の発明によれば、患者の脊椎の三次元X線投影画像から取得された、対象椎体間の頭側および尾側の椎体の相対的なずれに関する椎体ずれ情報と、前記頭側および尾側の椎体に関係する複数の自由曲線のベクトル画像データとを用いて椎間スペーサーを設計するプログラムであって、前記三次元X線投影画像内に、三次元直交座標系が、Z軸が正中に平行にのび、X-Z平面が冠状面および矢状面のうちの一方に平行にのび、Y-Z平面が前記冠状面および前記矢状面のうちの他方に平行にのびるように設定され、前記複数の自由曲線が、前記三次元直交座標系のX-Z平面に平行な複数の平面のそれぞれと前記尾側の椎体の頭側終板との交線に適合した複数の第1の自由曲線、および/または前記三次元直交座標系のY-Z平面に平行な複数の平面のそれぞれと前記尾側の椎体の頭側終板との交線に適合した複数の第2の自由曲線と、前記三次元直交座標系のX-Y平面に平行な平面上における設計すべき前記椎間スペーサーの尾側終板の輪郭を決定する第3の自由曲線と、前記三次元直交座標系のX-Z平面に平行な複数の平面のそれぞれと前記頭側の椎体の尾側終板との交線に適合した複数の第4の自由曲線、および/または前記三次元直交座標系のY-Z平面に平行な複数の平面のそれぞれと前記頭側の椎体の尾側終板との交線に適合した複数の第5の自由曲線とからなるプログラムにおいて、(1)前記椎体ずれ情報、および前記ベクトル画像データの入力を受ける手順と、(2)前記三次元X線投影画像とは独立に設定した三次元直交座標系内に、前記ベクトル画像データに基づいて、前記第1および/または第2の自由曲線と、前記第3の自由曲線と、前記第4および/または第5の自由曲線とを再配置し、前記第1および/または第2の自由曲線を含む第1の面と、前記第4および/または第5の自由曲線を含む第2の面とを形成する手順と、(3)前記椎体ずれ情報に基づき、前記三次元直交座標系において、前記第2の面を前記第1の面に対して変位させ、または前記第1の面を前記第2の面に対して変位させて、前記第1および第2の面を正常な相対位置関係において配置する手順と、(4)前記第1および第2の面をそれぞれ前記椎間スペーサーの尾側終板面および頭側終板面とし、前記三次元直交座標系において、前記第3の自由曲線を前記椎間スペーサーの尾側および頭側終板面間においてZ軸方向に移動させたときの軌跡から前記椎間スペーサーの側面を形成し、前記椎間スペーサーの前記尾側および頭側終板面と、前記側面とから前記椎間スペーサーを画成する手順と、を順次コンピュータに実行させることを特徴とするプログラムが提供される。
【0019】
第2の発明の好ましい実施例によれば、前記第3の自由曲線が、前記尾側の椎体の一対の鉤状突起のそれぞれの内縁または前記椎間板の両側縁に沿ってのびる第1の線分と、前記対象椎体間の椎間板の前縁よりも内側において前記前縁に沿ってのびる第2の線分と、前記椎間板の後縁よりも内側において前記後縁に沿ってのびる第3の線分と、互いに隣接する前記第1の線分および前記第2の線分を接続する第1の円弧状部分と、互いに隣接する前記第1の線分および前記第3の線分を接続する第2の円弧状部分と、からなっている。
【0020】
第2の発明の別の好ましい実施例によれば、前記手順(4)の実行後に、(5)前記椎間スペーサーの後方に所定の距離離れた点を通り、前記冠状面に平行にのびる軸を設定して、前記椎間スペーサーの頭側終板面を前記軸のまわりに所定の角度回転させたときの軌跡から前記椎間スペーサーの側面拡張部分を形成するとともに、回転後の前記椎間スペーサーの頭側終板面を前記椎間スペーサーの新たな頭側終板面として、前記椎間スペーサーの新たな頭側終板面と、前記椎間スペーサーの尾側終板面と、前記椎間スペーサーの側面および側面拡張部分とから、修正された前記椎間スペーサーを画成する手順を前記コンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、脊椎の三次元X線投影画像内に三次元直交座標系を設定し、椎体ずれ情報を取得する一方、X-Z平面に平行な複数の平面のそれぞれと対象椎体間の尾側の椎体の頭側終板との交線に適合した複数の第1の自由曲線、および/またはY-Z平面に平行な複数の平面のそれぞれと尾側の椎体の頭側終板との交線に適合した複数の第2の自由曲線のベクトル画像データと、X-Y平面に平行な平面上における椎間スペーサーの輪郭を決定する第3の自由曲線のベクトル画像データと、X-Z平面に平行な複数の平面のそれぞれと対象椎体間の頭側の椎体の尾側終板との交線に適合した複数の第4の自由曲線、および/またはY-Z平面に平行な複数の平面のそれぞれと頭側の椎体の尾側終板との交線に適合した複数の第5の自由曲線のベクトル画像データを取得する。
【0022】
次いで、三次元X線投影画像とは独立に設定した三次元直交座標系内に、ベクトル画像データに基づき、第1~第5の自由曲線を再配置し、第1および/または第2の自由曲線を含む第1の曲面を形成し、第4および/または第5の自由曲線を含む第2の曲面を形成し、椎体ずれ情報に基づき、第2の面を第1の面に対して変位させ、または第1の面を第2の面に対して変位させて第1および第2の面を正常な相対位置関係において配置する。
【0023】
そして、第1および第2の面をそれぞれ椎間スペーサーの尾側終板面および頭側終板面とし、第3の自由曲線を椎間スペーサーの尾側および頭側終板面間においてZ軸方向に移動させたときの軌跡から椎間スペーサーの側面を形成し、椎間スペーサーの尾側および頭側終板面と、側面とから椎間スペーサーを画成し、それによって、椎間スペーサーをセミカスタムメイド化した。
【0024】
このセミカスタムメイドの椎間スペーサーは、患者の脊椎の三次元X線投影画像に基づいて設計され、患者の身体に一定程度(患者の身体を椎間スペーサーに合わせる必要がない程度)まで適合しているので、患者に対して低侵襲な施術が実現できる。
【0025】
また、三次元X線投影画像に基づいて、撮影時の患者の姿勢に関する情報と、第1~第5の自由曲線のベクトル画像データを取得さえすれば、椎間スペーサーの設計が行えるので、フルカスタムメイドの場合に比べて、椎間スペーサーの設計に要するコストおよび時間を大幅に削減することができる。
【0026】
さらには、脊椎に損傷がある患者の一部に生じている対象椎体間の頭側および尾側の椎体の相対的なずれを椎間スペーサーの設計段階で修正するので、椎間板の変形を矯正する椎間スペーサーを設計することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の1実施例による椎間スペーサー設計法のフロー図である。
図2】本発明の別の実施例による椎間スペーサー設計法のフロー図である。
図3】本発明の1実施例による椎間スペーサー設計プログラムのフロー図である。
図4】本発明の別の実施例による椎間スペーサー設計プログラムのフロー図である。
図5】(A)は患者の脊椎の三次元X線投影画像の一例を示した図であり、(B)は(A)の矢状面に平行な面における断層像であり、(C)は(A)の冠状面における断層像であり、(D)は(A)の正中に直交する面における断層像である。
図6図5の三次元X線投影画像から第1および第3の自由曲線のベクトル画像データを取得するプロセスを説明する図である。
図7図5の三次元X線投影画像から第4の自由曲線のベクトル画像データを取得するプロセスを説明する図である。
図8図6(B)の画像に対応する拡大図である。
図9】三次元直交座標系において、第1、第3および第4の自由曲線に基づいて椎間スペーサーを設計するプロセスを説明する図である。
図10】三次元直交座標系において、第1、第3および第4の自由曲線に基づいて椎間スペーサーを設計するプロセスを説明する図である。
図11】三次元直交座標系において、第1、第3および第4の自由曲線に基づいて椎間スペーサーを設計するプロセスを説明する図である。
図12】三次元直交座標系において、第1、第3および第4の自由曲線に基づいて椎間スペーサーを設計するプロセスを説明する図である。
図13】三次元直交座標系において、第1、第3および第4の自由曲線に基づいて椎間スペーサーを設計するプロセスを説明する図である。
図14】三次元直交座標系において、第1、第3および第4の自由曲線に基づいて椎間スペーサーを設計するプロセスを説明する図である。
図15】三次元直交座標系において、第1、第3および第4の自由曲線に基づいて椎間スペーサーを設計するプロセスを説明する図である。
図16】三次元直交座標系において、第1、第3および第4の自由曲線に基づいて椎間スペーサーを設計するプロセスを説明する図である。
図17】三次元直交座標系において、第1、第3および第4の自由曲線に基づいて椎間スペーサーを設計するプロセスを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の構成を好ましい実施例に基づいて説明する。
図1は、本発明の1実施例による椎間スペーサー設計法のフロー図である。
図1を参照して、本発明の方法によれば、患者の脊椎の三次元X線投影画像内に、三次元直交座標系X-Y-Zを、Z軸が正中に平行にのび(一致する場合も含む)、X-Z平面が冠状面および矢状面のうちの一方(この実施例では、冠状面)に平行にのび(一致する場合も含む)、Y-Z平面が冠状面および矢状面のうちの他方(この実施例では、矢状面)に平行にのびる(一致する場合も含む)ように設定し(図1のステップS1)、次いで、三次元X線投影画像における対象椎体間の椎間板の頭側および尾側の椎体の相対的なずれに関する椎体ずれ情報を取得する(図1のステップS2)。
【0029】
図5(A)には、この実施例で使用する三次元X線投影画像を示した。また、図5(B)は図5(A)の矢状面に平行な面における断層像であり、図5(C)は図5(A)の冠状面における断層像であり、図5(D)は図5(A)の正中に直交する面における断層像である。
【0030】
図5を参照して、この実施例では、対象椎体間は頚椎の椎体C5および椎体C6間であり、当該対象椎体間の椎間板を代替する椎間スペーサーを設計する。
【0031】
椎体ずれ情報は、この実施例では、尾側の椎体C6の頭側終板を基準とする頭側の椎体C5の尾側終板のずれの測定値である。
【0032】
このずれの測定は、DICOMデータ(三次元X線投影画像データ)が扱える公知の適当な描画ソフトウェア(VGStudio(登録商標)、VINCENT(登録商標)、ZIOstation(登録商標)等)がインストールされたコンピュータを使用し、コンピュータのディスプレイに表示した三次元X線投影画像に基づき、マウス等のポインティングデバイスを用いて、次のように行う。
(1)尾側の椎体C6の頭側終板の中心を設定し、当該頭側終板に当該中心を含む第1の基準平面を設定する。また、尾側の椎体C6に第1の補助座標系X-Y-Zを設定して、座標原点が当該中心に位置し、X-Y平面が第1の基準平面上に位置し、X軸およびY軸がそれぞれX軸およびY軸に平行になるようにする。
(2)頭側の椎体C5の尾側終板の中心を設定し、当該尾側終板に当該中心を含む第2の基準平面を設定する。また、頭側の椎体C5に第2の補助座標系X-Y-Zを設定して、座標原点が当該中心に位置し、X-Y平面が第2の基準平面上に位置し、X軸およびY軸がそれぞれ当該尾側終板の左右方向の中心および前後方向の中心に位置するようにする。
(3)「第2の基準平面が第1の基準平面に対し平行になり、かつ頭側の椎体C5の尾側終板の中心が、尾側の椎体C6の頭側終板の中心から第1の基準平面に垂直にのばした垂線上に当該頭側終板の中心から所定の間隔をあけて位置するときに、頭側の椎体C5が尾側の椎体C6に対し正常な位置にある」との判定基準、すなわち、「X軸およびY軸がそれぞれX軸およびY軸と平行になり、Z軸がZ軸に一致し、第1および第2の補助座標系の座標原点間の間隔が所定長のときに、頭側の椎体C5が尾側の椎体C6に対し正常な位置にある」との判定基準の下に、X-Z平面、Y-Z平面およびX-Y平面のそれぞれにおいて、第2の基準平面の第1の基準平面に対する傾きと、頭側の椎体C5の尾側終板の中心および尾側の椎体C6の頭側終板の中心間のずれを測定する。
【0033】
そして、図5の三次元X線投影画像では、ずれの測定値(椎体ずれ情報)として、前屈5度(Y-Z平面におけるずれ)、左屈10度(X-Z平面におけるずれ)、左回旋10度(X-Y平面におけるずれ)が取得される。
なお、この三次元X線投影画像においては、頭側の椎体C5の尾側終板の中心および尾側の椎体C6の頭側終板の中心間のずれは生じていない。
【0034】
この実施例では、椎体ずれ情報として、尾側の椎体C6の頭側終板を基準とする頭側の椎体C5の尾側終板のずれを測定したが、頭側の椎体C5の尾側終板を基準とする尾側の椎体C6の頭側終板のずれを測定して椎体ずれ情報としてもよい。
【0035】
本発明の方法によれば、さらに、三次元直交座標系X-Y-ZのX-Z平面に平行な複数の平面(X-Z平面を含むこともある)のそれぞれと尾側の椎体C6の頭側終板との交線に適合した複数の第1の自由曲線Lのベクトル画像データ、および/または三次元直交座標系のY-Z平面に平行な複数の平面(Y-Z平面を含むこともある)のそれぞれと尾側の椎体C6の頭側終板との交線に適合した複数の第2の自由曲線Lのベクトル画像データ、および三次元直交座標系のX-Y平面に平行な平面上(X-Y平面上の場合も含む)における設計すべき椎間スペーサーの輪郭を決定する第3の自由曲線Lのベクトル画像データと、X-Z平面に平行な複数の平面(X-Z平面を含むこともある)のそれぞれと頭側の椎体C5の尾側終板との交線に適合した複数の第4の自由曲線Lのベクトル画像データ、および/または三次元直交座標系のY-Z平面に平行な複数の平面(Y-Z平面を含むこともある)のそれぞれと頭側の椎体C5の尾側終板との交線に適合した複数の第5の自由曲線Lのベクトル画像データを取得する(図1のステップS3)。
【0036】
ここで、「自由曲線」とは、コンピュータ・グラフィックスにおいて主として曲線や直線を描くために使用される、始点、終点および少なくとも1つの制御点を有する曲線(制御点が始点または終点に重なる場合は、直線となる)をいい、自由曲線上の点の座標値が1つのパラメータで表される。
【0037】
自由曲線としては、例えば、スプライン曲線やベジェ曲線が知られている。この実施例ではベジェ曲線を使用する。
【0038】
この実施例では、説明を簡略化するために、第1の自由曲線Lおよび第3の自由曲線Lおよび第4の自由曲線Lのベクトル画像データのみを取得し、第2の自由曲線Lおよび第5の自由曲線Lのベクトル画像データは取得しない。
【0039】
三次元X線投影画像から第1および第3の自由曲線L、Lのベクトル画像データを取得するプロセスをそれぞれ図6(A)および図6(B)に示した。また、同画像から第4の自由曲線Lのベクトル画像データを取得するプロセスを図7に示した。
【0040】
第3の自由曲線Lは、図8に示すように、尾側の椎体C6の一対の鉤状突起のそれぞれの内縁または椎間板の両側縁に沿ってのびる第1の線分d、dと、椎間板の前縁よりも内側において前縁に沿ってのびる第2の線分dと、椎間板の後縁よりも内側において後縁に沿ってのびる第3の線分dと、互いに隣接する第1の線分dおよび第2の線分dを接続する第1の円弧状部分d、dと、互いに隣接する第1の線分dおよび第3の線分dを接続する第2の円弧状部分d、dと、からなっている。
【0041】
この場合、第3の自由曲線L、特に、第2および第3の線分dおよびdは、椎間スペーサーと、椎体を取り巻く神経および血管との接触が確実に回避されるエリアに位置するように決定される。なお、第3の自由曲線Lによって画成される図形の形状はこの実施例に限定されない。
【0042】
三次元X線投影画像からの自由曲線L、LおよびLのベクトル画像データの取得は次のように行う。
例えば、X-Z平面に平行な1つの平面において第1の自由曲線Lのベクトル画像データを取得する場合は、コンピュータのディスプレイに表示した三次元X線投影画像の当該1つの平面における断層像において、第1の自由曲線Lの始点、終点および制御点を、ポインティングデバイスを用いて指定する。
【0043】
それによって、第1の自由曲線Lのベクトル画像データとして、始点、終点および制御点のそれぞれの座標値と、第1の自由曲線L上の点の座標値を決定する関数(第1の自由曲線Lを表すパラメトリック方程式)が自動的に取得される。
第3および第4の自由曲線L、Lのベクトル画像データの取得の仕方もこれと同様である。
【0044】
本発明の方法によれば、さらに、三次元X線投影画像とは独立に設定した三次元直交座標系内に、ベクトル画像データに基づき、第1および/または第2の自由曲線L、Lと、第3の自由曲線Lと、第4および/または第5の自由曲線L、Lとを再配置し、第1および/または第2の自由曲線L、Lを含む第1の面Fと、第4および/または第5の自由曲線L、Lを含む第2の面Fとを形成する(図1のステップS4)。
【0045】
この実施例では、ステップS3において第2および第5の自由曲線L、Lのベクトル画像データを取得しないので、ステップS4では、第2および第5の自由曲線L、Lは省かれる。
【0046】
次いで、椎体ずれ情報に基づき、三次元直交座標系において、第2の面Fを第1の面Fに対して変位させて、第1および第2の面F、Fを正常な相対位置関係において配置する(図1のステップS5)。
【0047】
この場合、第2の面Fを第1の面Fに対して変位させる代わりに、第1の面Fを第2の面Fに対して変位させてもよい。
【0048】
本発明の方法によれば、さらに、第1および第2の面F、Fをそれぞれ椎間スペーサーMの尾側終板面Eおよび頭側終板面Eとし、三次元直交座標系において、第3の自由曲線Lを椎間スペーサーMの尾側および頭側終板面E、E間においてZ軸方向に移動させたときの軌跡から椎間スペーサーMの側面Eを形成し、椎間スペーサーMの尾側および頭側終板面E、Eと、側面Eとから椎間スペーサーMを画成する(図1のステップS6)。
【0049】
ステップS4~S6は、公知の適当な3Dモデリングソフトウェアを用いて実行することができる。
この実施例では、3Dモデリングソフトウェア「Rhinoceros(登録商標)」のプラグイン「Grasshopper(登録商標)」を使用し、「Rhinoceros(登録商標)」および「Grasshopper(登録商標)」がインストールされたコンピュータを用いて実行する。
【0050】
以下に、ステップS4およびS5を具体的に説明する。
(1)まず、図9に示すように、ベクトル画像データに基づき、三次元直交座標系内に、第1、第3および第4の自由曲線L、L、Lを再配置する。
(2)次に、図10に示すように、ソフトウェアのロフトコマンドを用いて、第1の自由曲線Lを含む第1の面(サーフェス)Fと、第4の自由曲線Lを含む第2の面(サーフェス)Fを形成する。
例えば、第1の面Fは、ポインティングデバイスを用いて、ディスプレイ上においてすべての第1の自由曲線Lを選択した後、ロフトコマンドを実行することによって自動的に形成される。
【0051】
ロフトコマンドによって形成される面(サーフェス)はNURBS曲面と呼ばれ、NURBS曲面はパラメトリック曲面の一種であり、NURBS曲面に含まれるパラメータ値と三次元直交座標系の点の座標値とが対応関係を有している。そして、このパラメータ値を変化させることによって、NURBS曲面を三次元直交座標系上に表すことができる。
【0052】
(3)さらに、図11に示すように、第1の面Fの中心を設定し、第1の面Fに当該中心を含む第1の基準平面(図示はしない)を設定する。また、第1の面Fに第1の補助座標系X-Y-Zを設定して、座標原点が当該中心に位置し、X-Y平面が第1の基準平面上に位置し、X軸およびY軸がそれぞれX軸およびY軸に平行になるようにする。
(4)また、第2の面Fの中心を設定し、第2の面Fに当該中心を含む第2の基準平面(図示はしない)を設定する。また、第2の面Fに第2の補助座標系X-Y-Zを設定して、座標原点が当該中心に位置し、X-Y平面が第2の基準平面上に位置し、X軸およびY軸がそれぞれ第2の基準平面の左右方向の中心および前後方向の中心に位置するようにする。
【0053】
(5)椎体ずれ情報「前屈5度(Y-Z平面におけるずれ)、左屈10度(X-Z平面におけるずれ)、左回旋10度(X-Y平面におけるずれ)」に基づき、第2の基準平面(第2の面F)をX軸に関し時計回りに5度回転させ(図12参照、前屈5度の修正)、次いで、第2の基準平面(第2の面F)をY軸に関し時計回りに10度回転させ(図13参照、左屈10度の修正)、さらに、第2の基準平面(第2の面F)をZ軸関し時計回りに10度回転させる(図14参照、左回旋10度の修正)。
(6)それによって、第1および第2の面F、Fが正常な相対位置関係において配置される。そして、このときの第1および第2の面F、Fをそれぞれ椎間スペーサーMの尾側終板面Eおよび頭側終板面Eとする。
【0054】
(7)その後、図15に示すように、第3の自由曲線Lを椎間スペーサーMの尾側および頭側終板面E、E間においてZ軸方向に移動させたときの軌跡から椎間スペーサーMの側面Eを形成する。
(6)そして、椎間スペーサーの頭側終板面E、尾側終板面E、および側面Eから椎間スペーサーMを画成する(図16参照)。
【0055】
そして、椎間スペーサーMの画成(設計)の完了後は、得られた設計データを、このソフトウェアによって三次元造形データ(例えば、STLデータ)に変換し、ファイル出力する。
【0056】
こうして、本発明によれば、椎間スペーサーをセミカスタムメイド化することができる。そして、このセミカスタムメイドの椎間スペーサーは、患者の脊椎の三次元X線投影画像に基づいて設計され、患者の身体に一定程度(患者の身体を椎間スペーサーに合わせる必要がない程度)まで適合しているので、患者に対して低侵襲な施術が実現できる。
【0057】
また、三次元X線投影画像に基づいて、撮影時の患者の姿勢に関する情報と、第1~第5の自由曲線のベクトル画像データを取得さえすれば、椎間スペーサーの設計が行えるので、フルカスタムメイドの場合に比べて、椎間スペーサーの設計に要するコストおよび時間を大幅に削減することができる。
【0058】
さらには、脊椎に損傷がある患者の一部に生じている対象椎体間の頭側および尾側の椎体の相対的なずれを椎間スペーサーの設計段階で修正するので、椎間板の変形を矯正する椎間スペーサーを設計することができる。
【0059】
なお、設計した椎間スペーサーMを、対象椎体間の前後傾運動を考慮して、さらに修正したい場合がある。
そして、後傾運動を考慮した修正を行う場合には、図1のステップS1~S6を順次実行した後、さらに、図17に示すように、椎間スペーサーMの後方に所定の距離離れた点を通り、冠状面に平行にのびる軸(X軸に平行な軸)Vを設定して、椎間スペーサーMの頭側終板面Eを軸Vのまわりに所定の角度回転させたときの軌跡から椎間スペーサーMの側面拡張部分Eを形成するとともに、回転後の椎間スペーサーMの頭側終板面Sを椎間スペーサーMの新たな頭側終板面E’として、椎間スペーサーの新たな頭側終板面E’と、椎間スペーサーの尾側終板面Eと、椎間スペーサーの側面Eおよび側面拡張部分Eとから、修正された椎間スペーサーM’を画成(設計)する(図2のステップS7)。
【0060】
この場合、軸Vの設定位置および軸Vの回りの回転角度は、例えば椎間板軸面上の20~60mm後方の位置において30度回転させる等、必要とされる修正の程度(個々の患者の対象椎体の状態等に依存する)に応じて適当に決定される。
【0061】
図3は、本発明の1実施例による椎間スペーサー設計プログラムのフロー図である。
本発明の椎間スペーサー設計プログラムは、患者の脊椎の三次元X線投影画像から取得された、対象椎体間の頭側および尾側の椎体の相対的なずれに関する椎体ずれ情報と、頭側および尾側の椎体に関係する複数の自由曲線のベクトル画像データとを用いて椎間スペーサーを設計する。
【0062】
この場合、三次元X線投影画像からの椎体ずれ情報の取得、および自由曲線のベクトル画像データの取得は、上述した本発明の椎間スペーサー設計方法のステップS1~S3を順次実行することによってなされる。
【0063】
すなわち、本発明の椎間スペーサー設計プログラムにおいては、上記の第1~第5の自由曲線のベクトル画像データが用いられる。
【0064】
図3を参照して、本発明によれば、コンピュータに、椎体ずれ情報、および第1~第5の自由曲線のベクトル画像データの入力を受けさせる(図3の手順P1)。
【0065】
次に、コンピュータに、三次元直交座標系を三次元X線投影画像とは独立に設定させ、三次元直交座標系内に、ベクトル画像データに基づいて、第1および/または第2の自由曲線と、第3の自由曲線と、第4および/または第5の自由曲線とを再配置させ、第1および/または第2の自由曲線を含む第1の面と、第4および/または第5の自由曲線を含む第2の面とを形成させる(図3の手順P2)。
【0066】
そして、コンピュータに、椎体ずれ情報に基づき、三次元直交座標系において、第2の面を第1の面に対して変位させて、第1および第2の面を正常な相対位置関係において配置させる(図3の手順P3)。
【0067】
この場合、第2の面を第1の面に対して変位させる代わりに、第1の面を第2の面に対して変位させてもよい。
【0068】
さらに、コンピュータに、第1および第2の面をそれぞれ椎間スペーサーの尾側終板面および頭側終板面とし、三次元直交座標系において、第3の自由曲線を椎間スペーサーの尾側および頭側終板面間においてZ軸方向に移動させたときの軌跡から椎間スペーサーの側面を形成し、椎間スペーサーの尾側および頭側終板面と、椎間スペーサーの側面とから椎間スペーサーを画成させる(図3の手順P4)。
【0069】
なお、コンピュータによって設計された椎間スペーサーを、対象椎体間の前後傾運動を考慮して、さらに修正したい場合がある。
そして、例えば、後傾運動を考慮した修正を行う場合には、手順P1~P4を順次実行した後、さらに、コンピュータに、椎間スペーサーの後方に所定の距離離れた点を通り、冠状面に平行にのびる軸を設定して、椎間スペーサーの頭側終板面を当該軸のまわりに所定の角度回転させたときの軌跡から椎間スペーサーの側面拡張部分を形成するとともに、回転後の椎間スペーサーの頭側終板面を椎間スペーサーの新たな頭側終板面として、椎間スペーサーの新たな頭側終板面と、椎間スペーサーの尾側終板面と、椎間スペーサーの側面および側面拡張部分とから、修正された椎間スペーサーを画成(設計)させる(図4の手順P5)。
【0070】
この場合、軸の設定位置および軸の回りの回転角度は、例えば椎間板軸面上の20~60mm後方の位置において30度回転させる等、必要とされる修正の程度(個々の患者の対象椎体の状態等に依存する)に応じて適当に決定される。
【0071】
以上、本発明の好ましい実施例を説明したが、本発明の構成は上記実施例に限定されず、当業者が本願の特許請求の範囲に記載した構成の範囲内で種々の変形例を案出し得ることは言うまでもない。
【0072】
例えば、上記実施例では、頚椎の1つの椎体間を対象椎体間として、椎間スペーサーを設計したが、本発明によれば、上記実施例と同様にして、脊椎の他の構成部分(胸椎、腰椎等)の椎体間の椎間スペーサーを設計することができる。
【0073】
また、上記実施例では、本発明を、頭側の椎体の尾側終板の中心と尾側の椎体の頭側終板の中心の間にずれがなく、頭側の椎体の尾側終板の当該尾側終板の中心に関する傾きのずれのみが生じている場合に適用したが、本発明は、頭側の椎体の尾側終板の中心および尾側の椎体の頭側終板の中心間のずれと、頭側の椎体の尾側終板の当該尾側終板の中心に関する傾きのずれの両方が生じている場合にも適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
C5 頭側の椎体
C6 尾側の椎体
鉤状突起の内縁または椎間板の側縁
第2の線分
第3の線分
第1の円弧状部分
第2の円弧状部分
椎間スペーサーの頭側終板面
’ 椎間スペーサーの新たな頭側終板面
椎間スペーサーの尾側終板面
椎間スペーサーの側面
椎間スペーサーの拡張側面部分
第1の面
第2の面
第1の自由曲線
第2の自由曲線
第3の自由曲線
第4の自由曲線
第5の自由曲線
M 椎間スペーサー
M’ 修正された椎間スペーサー
V 冠状面に平行にのびる軸(X軸に平行な軸)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17