IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ NLTテクノロジー株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-光造形装置及び光変調装置 図1
  • 特開-光造形装置及び光変調装置 図2
  • 特開-光造形装置及び光変調装置 図3
  • 特開-光造形装置及び光変調装置 図4
  • 特開-光造形装置及び光変調装置 図5
  • 特開-光造形装置及び光変調装置 図6
  • 特開-光造形装置及び光変調装置 図7
  • 特開-光造形装置及び光変調装置 図8
  • 特開-光造形装置及び光変調装置 図9
  • 特開-光造形装置及び光変調装置 図10
  • 特開-光造形装置及び光変調装置 図11
  • 特開-光造形装置及び光変調装置 図12
  • 特開-光造形装置及び光変調装置 図13
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062540
(43)【公開日】2022-04-20
(54)【発明の名称】光造形装置及び光変調装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/273 20170101AFI20220413BHJP
   B29C 64/129 20170101ALI20220413BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220413BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20220413BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20220413BHJP
【FI】
B29C64/273
B29C64/129
B33Y30/00
B29C64/393
B33Y50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020170625
(22)【出願日】2020-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】303018827
【氏名又は名称】Tianma Japan株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100183955
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 悟郎
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100180334
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋美
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(74)【代理人】
【識別番号】100174067
【弁理士】
【氏名又は名称】湯浅 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 成美
(72)【発明者】
【氏名】溝口 親明
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL06
4F213WL12
4F213WL43
4F213WL77
4F213WL82
4F213WL83
4F213WL85
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、断面積が広い造形物を高解像で造形できる光造形装置及び光変調装置を提供する。
【解決手段】光造形装置100は、光硬化樹脂RLを保持する樹脂槽10と、光硬化樹脂RLを硬化させる光を出射する光源部40と、光変調部50とを備える。光変調部50は、液晶と、液晶を挟持する第1基板と第2基板と、液晶に電圧を印加する第1電極と第2電極とを有し、光硬化樹脂RLを硬化させる光を三次元造形物の形状に基づくパターンに変調し、変調された光を光硬化樹脂に照射する。光変調部は、複数の、電圧透過率特性が互いに異なる第1領域と第2領域とを含む変調領域を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化樹脂を保持する樹脂槽と、
前記光硬化樹脂を硬化させる光を出射する光源部と、
液晶と、前記液晶を挟持する第1基板と第2基板と、前記液晶に電圧を印加する第1電極と第2電極とを有し、前記光を三次元造形物の形状に基づくパターンに変調し、該変調された光を前記光硬化樹脂に照射する光変調部と、を備え、
前記光変調部は、複数の、電圧透過率特性が互いに異なる第1領域と第2領域とを含む変調領域を有し、
前記液晶は、前記第1基板の主面に平行な方向に配向し、前記第1電極と前記第2電極に電圧を印加されることにより、前記第1基板の前記主面に平行な面内で回転し、
前記液晶に予め設定されている第1電圧が印加された第1状態において、前記第1領域と前記第2領域は予め設定されている透過率よりも小さい透過率を有し、
前記液晶に予め設定されている第2電圧が印加された第2状態において、前記第1領域は前記予め設定されている透過率以上の透過率を有し、前記第2領域は前記予め設定されている透過率よりも小さい透過率を有し、
前記液晶に予め設定されている第3電圧が印加された第3状態において、前記第1領域と前記第2領域は前記予め設定されている透過率以上の透過率を有し、
前記液晶に予め設定されている第4電圧が印加された第4状態において、前記第1領域は前記予め設定されている透過率よりも小さい透過率を有し、前記第2領域は前記予め設定されている透過率以上の透過率を有し、
前記光硬化樹脂は、前記第1領域又は前記第2領域の透過率が前記予め設定されている透過率以上である場合に、硬化する、
光造形装置。
【請求項2】
前記第1領域の前記光を透過する領域の面積と前記第2領域の前記光を透過する領域の面積が等しい、
請求項1に記載の光造形装置。
【請求項3】
前記第2状態における前記第1領域の透過率と、前記第3状態における前記第1領域と前記第2領域の透過率と、前記第4状態における前記第2領域の透過率とが、等しい、
請求項1又は2に記載の光造形装置。
【請求項4】
前記第1電極と前記第2電極は櫛歯形状を有し、
前記光変調部を平面視した場合、前記第1電極の櫛歯部と前記第2電極の櫛歯部は、交互に、互いに平行に配置されている、
請求項1から3のいずれか1項に記載の光造形装置。
【請求項5】
前記光変調部を平面視した場合、前記第1領域における前記第1電極の櫛歯部と前記第2電極の櫛歯部との間隔は、前記第2領域における前記第1電極の櫛歯部と前記第2電極の櫛歯部との間隔よりも狭い、
請求項4に記載の光造形装置。
【請求項6】
前記第1基板に設けられる第1偏光板と、前記第2基板に設けられ前記第1偏光板に対してクロスニコルに配置される第2偏光板とを備え、
前記第1電極の櫛歯部は、前記液晶の配向方向に延出し、V字状に折れ曲がり、
前記第2電極の櫛歯部は、前記第1電極の櫛歯部と反対方向に延出し、V字状に折れ曲がり、
前記第1領域における前記第1電極の櫛歯部と前記第2電極の櫛歯部は、前記液晶の配向方向に対して5°傾き、
前記第2領域における前記第1電極の櫛歯部と前記第2電極の櫛歯部は、前記液晶の配向方向に対して、前記第1領域における前記第1電極の櫛歯部と前記第2電極の櫛歯部と逆向きに5°傾き、
前記第1偏光板の偏光軸と前記第2偏光板の偏光軸の一方が、前記液晶の配向方向に対して、前記第1領域における前記第1電極の櫛歯部と前記第2電極の櫛歯部と同じ向きに5°傾いている、
請求項5に記載の光造形装置。
【請求項7】
前記第1基板に設けられる第1偏光板と、前記第2基板に設けられる第2偏光板とを備え、
前記第1電極の櫛歯部と前記第2電極の櫛歯部は、V字状に折れ曲がり、
前記第1偏光板の偏光軸と前記第2偏光板の偏光軸の一方が、前記液晶の配向方向に対して、0°よりも大きく15°よりも小さく傾いている、
請求項4又は5に記載の光造形装置。
【請求項8】
複数の、電圧透過率特性が互いに異なる第1領域と第2領域とを含み、入射する光を変調する変調領域を有し、
液晶と、前記液晶を挟持する第1基板と第2基板と、前記液晶に電圧を印加する第1電極と第2電極とを備え、
前記液晶は、前記第1基板の主面に平行な方向に配向し、前記第1電極と前記第2電極に電圧を印加されることにより、前記第1基板の前記主面に平行な面内で回転し、
前記液晶に予め設定されている第1電圧が印加された第1状態において、前記第1領域と前記第2領域は予め設定されている透過率よりも小さい透過率を有し、
前記液晶に予め設定されている第2電圧が印加された第2状態において、前記第1領域は前記予め設定されている透過率以上の透過率を有し、前記第2領域は前記予め設定されている透過率よりも小さい透過率を有し、
前記液晶に予め設定されている第3電圧が印加された第3状態において、前記第1領域と前記第2領域は前記予め設定されている透過率以上の透過率を有し、
前記液晶に予め設定されている第4電圧が印加された第4状態において、前記第1領域は前記予め設定されている透過率よりも小さい透過率を有し、前記第2領域は前記予め設定されている透過率以上の透過率を有する、
光変調装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光造形装置及び光変調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元造形物の断面形状に基づいて光硬化性樹脂に光を照射することにより、三次元造形物を造形する技術が知られている。例えば、特許文献1は、液晶シャッタによって光を光硬化性樹脂に選択的に照射して、三次元造形物を造形する装置と三次元造形物の造形方法とを開示している。
【0003】
特許文献1では、液晶シャッタによって光硬化性樹脂に光を選択的に照射して、一層分の光硬化性樹脂を硬化させた後、硬化した光硬化性樹脂を液晶シャッタから遠ざかる方向に移動させる。そして、光を硬化した光硬化性樹脂の上に流入した光硬化性樹脂に液晶シャッタによって選択的に照射して、次の一層分の光硬化性樹脂を硬化させる。特許文献1では、これらの工程を繰り返することにより、三次元造形物を造形している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-232383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
断面積が広い造形物を高解像で造形する場合、特許文献1の装置は、大型で高精細な液晶シャッタを備えなければならない。大型で高精細な液晶シャッタを駆動するためには、多量のドライバIC(Integrated Circuit)が必要となり、また、液晶シャッタを駆動する回路が複雑になる。
【0006】
本開示は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、断面積が広い造形物を高解像で造形できる光造形装置及び光変調装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の第1の観点に係る光造形装置は、
光硬化樹脂を保持する樹脂槽と、
前記光硬化樹脂を硬化させる光を出射する光源部と、
液晶と、前記液晶を挟持する第1基板と第2基板と、前記液晶に電圧を印加する第1電極と第2電極とを有し、前記光を三次元造形物の形状に基づくパターンに変調し、該変調された光を前記光硬化樹脂に照射する光変調部と、を備え、
前記光変調部は、複数の、電圧透過率特性が互いに異なる第1領域と第2領域とを含む変調領域を有し、
前記液晶は、前記第1基板の主面に平行な方向に配向し、前記第1電極と前記第2電極に電圧を印加されることにより、前記第1基板の前記主面に平行な面内で回転し、
前記液晶に予め設定されている第1電圧が印加された第1状態において、前記第1領域と前記第2領域は予め設定されている透過率よりも小さい透過率を有し、
前記液晶に予め設定されている第2電圧が印加された第2状態において、前記第1領域は前記予め設定されている透過率以上の透過率を有し、前記第2領域は前記予め設定されている透過率よりも小さい透過率を有し、
前記液晶に予め設定されている第3電圧が印加された第3状態において、前記第1領域と前記第2領域は前記予め設定されている透過率以上の透過率を有し、
前記液晶に予め設定されている第4電圧が印加された第4状態において、前記第1領域は前記予め設定されている透過率よりも小さい透過率を有し、前記第2領域は前記予め設定されている透過率以上の透過率を有し、
前記光硬化樹脂は、前記第1領域又は前記第2領域の透過率が前記予め設定されている透過率以上である場合に、硬化する。
【0008】
本開示の第2の観点に係る光変調装置は、
複数の、電圧透過率特性が互いに異なる第1領域と第2領域とを含み、入射する光を変調する変調領域を有し、
液晶と、前記液晶を挟持する第1基板と第2基板と、前記液晶に電圧を印加する第1電極と第2電極とを備え、
前記液晶は、前記第1基板の主面に平行な方向に配向し、前記第1電極と前記第2電極に電圧を印加されることにより、前記第1基板の前記主面に平行な面内で回転し、
前記液晶に予め設定されている第1電圧が印加された第1状態において、前記第1領域と前記第2領域は予め設定されている透過率よりも小さい透過率を有し、
前記液晶に予め設定されている第2電圧が印加された第2状態において、前記第1領域は前記予め設定されている透過率以上の透過率を有し、前記第2領域は前記予め設定されている透過率よりも小さい透過率を有し、
前記液晶に予め設定されている第3電圧が印加された第3状態において、前記第1領域と前記第2領域は前記予め設定されている透過率以上の透過率を有し、
前記液晶に予め設定されている第4電圧が印加された第4状態において、前記第1領域は前記予め設定されている透過率よりも小さい透過率を有し、前記第2領域は前記予め設定されている透過率以上の透過率を有する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、光変調部を駆動するためのドライバICを少なくでき、簡易な構成で、断面積が広い造形物を高解像で造形できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態1に係る光造形装置の構成を示す図である。
図2】実施形態1に係る光造形装置を示す模式図である。
図3】実施形態1に係る光変調部を示す上面図である。
図4図3に示す光変調部をA-A線で矢視した断面図である。
図5】実施形態1に係る変調領域を示す上面図である。
図6】実施形態1に係る第1領域と第2領域と第3領域の電圧透過率特性を示す図である。
図7】実施形態1に係る第1領域と第2領域の硬化光を透過する領域を示す平面図である。
図8】実施形態1に係る三次元造形物の造形方法を示すフローチャートである。
図9】実施形態2に係る変調領域と第1偏光板の偏光軸と第2偏光板の偏光軸とを示す平面図である。
図10】実施形態2に係る傾斜角θ=10°での第1領域と第2領域の電圧透過率特性を示す図である。
図11】実施形態2に係る傾斜角θ=15°での第1領域と第2領域の電圧透過率特性を示す図である。
図12】変形例に係る変調領域と第1偏光板の偏光軸と第2偏光板の偏光軸とを示す平面図である。
図13】変形例に係る第1領域と第2領域の電圧透過率特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施形態に係る光造形装置について、図面を参照して説明する。
<実施形態1>
図1図8を参照して、本実施形態に係る光造形装置100を説明する。光造形装置100は、光硬化樹脂RLから三次元造形物Obを造形する。
【0012】
光造形装置100は、図1図2に示すように、樹脂槽10と造形プレート20と移動部30と光源部40と光変調部50と制御部90とを、筐体5内に備える。樹脂槽10は、光硬化樹脂RLを保持する。造形プレート20は、面20aに三次元造形物Obを造形される。移動部30は造形プレート20を移動させる。光源部40は、光硬化樹脂RLを硬化させる光を出射する。光変調部50は、光硬化樹脂RLを硬化させる光を三次元造形物Obの形状に基づくパターンに変調する。制御部90は、光造形装置100の各部を制御する。本明細書では、理解を容易にするため、図2における光造形装置100の右方向(紙面の右方向)を+X方向、上方向(紙面の上方向)を+Z方向、+X方向と+Z方向に垂直な方向(紙面の手前方向)を+Y方向として説明する。また、光硬化樹脂RLを硬化させる光を、硬化光とも記載する。
【0013】
光造形装置100の樹脂槽10は、図2に示すように、光硬化樹脂RLを保持する。樹脂槽10は、+Z方向の面が開口した箱形状の容器である。樹脂槽10は、底部12と壁部14とを有する。
【0014】
樹脂槽10の底部12は、光源部40から出射される硬化光を透過する。底部12は、例えば、平板状のガラスである。樹脂槽10の壁部14は、硬化光を遮る。壁部14は、樹脂、金属等から形成される。
【0015】
ここで、光硬化樹脂RLについて説明する。光硬化樹脂RLは、予め設定されている波長の光を照射されることにより硬化する液状の樹脂である。本実施形態では、光硬化樹脂RLは、光源部40から出射される光(硬化光)を照射されることにより、硬化する。光硬化樹脂RLは、モノマー、オリゴマー、重合開始剤等を含む。重合開始剤は、光源部40から出射される硬化光を吸収してラジカル、イオン等の活性種を発生し、モノマー、オリゴマー等に重合反応を開始させる。本実施形態では、光硬化樹脂RLはUV(Ultraviolet)硬化型樹脂である。
【0016】
光造形装置100の造形プレート20は、樹脂製又は金属製の平板である。造形プレート20は、図2に示すように、樹脂槽10の底部12に対して+Z側に配置されている。また、光造形装置100の初期状態では、造形プレート20は樹脂槽10内に位置している(造形プレート20の初期位置)。造形プレート20は、移動部30によって+Z方向と-Z方向に移動される。造形プレート20は、樹脂槽10の底部12に対向する面20aに三次元造形物Obを造形される。
【0017】
光造形装置100の移動部30は、造形プレート20を+Z方向と-Z方向とに移動させる。移動部30は、アーム32と移動機構34とを有する。移動部30のアーム32は、造形プレート20と移動機構34とを接続する。移動部30の移動機構34は、アーム32を介して、造形プレート20を+Z方向と-Z方向に移動させる。移動機構34は、モータ、ボールネジ、スライダ等(図示せず)を備えている。
【0018】
光造形装置100の光源部40は、硬化光(すなわち、光硬化樹脂RLを硬化させる光)を、光硬化樹脂RL(+Z方向)に向けて出射する。本実施形態では、光源部40は、樹脂槽10に対して-Z側に配置される。光源部40は、樹脂槽10側に位置する上面40aからUV光を+Z方向へ出射する。光源部40は、反射シート、UV光を出射するLED(Light emitting diode)、拡散シート等を備えている。光源部40から出射されるUV光における最大の強度を有する波長は、例えば、405nmである。
【0019】
光造形装置100の光変調部50は、図2に示すように、樹脂槽10と光源部40との間に配置される。光変調部50は、光源部40から出射された硬化光を三次元造形物Obの形状に基づくパターンに変調し、樹脂槽10の底部12を介して、変調された硬化光を光硬化樹脂RLに照射する。光変調部50は、図3に示すように、マトリクス状に配列され、硬化光を変調する変調領域52を有している。光変調部50は、TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)により駆動される、横電界駆動型の液晶パネルである。本実施形態では、光変調部50は、In-Plane Switchingモードで動作する。なお、図3では、複数の変調領域52のうちの一部のみを図示している。
【0020】
光変調部50は、図3に示すように、TFT基板60と対向基板70とドライバIC85とを備える。また、光変調部50は、図4に示すように、液晶62と、第1電極64と、第2電極66と、第1偏光板72と、第2偏光板74とを備える。
【0021】
まず、TFT基板60と、対向基板70と、第1偏光板72と、第2偏光板74と、ドライバIC85について説明する。
【0022】
光変調部50のTFT基板60は、図3に示すように、第1基板61とドライバ回路82とを有する。第1基板61は、例えば、ガラス基板である。第1基板61の第1主面61aには、図4に示すように、液晶62に電圧を印加する第1電極64と第2電極66が設けられる。第1基板61の第2主面61bには、第1偏光板72が設けられる。
【0023】
また、第1基板61の第1主面61aには、変調領域52を選択するためのTFT、TFTを硬化光から保護する遮光膜、液晶62を配向する配向膜等が設けられる(いずれも図示せず)。さらに、第1基板61の第1主面61aには、複数の共通配線と複数の信号配線と複数の走査配線が形成されている(いずれも図示せず)。共通配線は、第1電極64に共通電位を供給する。信号配線は第2電極66に電圧を供給し、走査配線はTFTを動作させる電圧を供給する。変調領域52は信号配線と走査配線とに囲まれ、TFTが走査配線と信号配線との交差部に設けられている。信号配線と第2電極66は、TFTを介して接続されている。
【0024】
ドライバ回路82は、図3に示すように、変調領域52が配列されている領域を囲む位置に設けられる。ドライバ回路82は、走査配線と信号配線と共通配線に電圧を供給する。
【0025】
光変調部50の対向基板70は、図4に示すように、TFT基板60に対向し、図示しないシール材によりTFT基板60に貼り合わされている。対向基板70は、第2基板71とブラックマトリクスBMとを有する。第2基板71は、例えば、ガラス基板である。第2基板71の第1主面71aには、ブラックマトリクスBMと液晶62を配向する配向膜が設けられる。第2基板71の第2主面71bには、第2偏光板74が設けられる。
また、第2基板71とTFT基板60の第1基板61は、液晶62を挟持する。
【0026】
ブラックマトリクスBMは、第2基板71の第1主面71aに格子状に設けられる。ブラックマトリクスBMは、変調領域52を画定する。ブラックマトリクスBMは、黒色樹脂、クロム等から形成される。
【0027】
光変調部50の第1偏光板72は、第1基板61の第2主面61bに設けられる。第1偏光板72の偏光軸は、液晶62の配向方向(+Y方向)に平行に配置される。
【0028】
光変調部50の第2偏光板74は、第2基板71の第2主面71bに設けられる。第2偏光板74の偏光軸は、第1偏光板72の偏光軸に対してクロスニコルに配置に配置される。したがって、光変調部50は、ノーマリーブラックモードで動作する。
【0029】
光変調部50のドライバIC85は、TFT基板60の第1基板61に設けられる。ドライバIC85は、ドライバ回路82に電力、タイミング信号等を供給する。ドライバIC85は、図示しないFPC(Flexible Printed Circuit)を介して、制御部90に接続している。
【0030】
次に、液晶62と第1電極64と第2電極66と変調領域52について、説明する。
【0031】
光変調部50の液晶62は、TFT基板60の第1基板61と対向基板70の第2基板71に挟持される。液晶62は、電圧を印加されていない状態において、第1基板61と第2基板71に設けられた配向膜により、第1基板61の第1主面61aに平行な方向に配向に配向している。また、液晶62は、第1電極64と第2電極66が印加する電圧により、第1基板61の第1主面61aに平行な面内で回転する。本実施形態では、液晶62は、+Y方向に配向した、ポジ型のネマチック液晶である。
【0032】
光変調部50の第1電極64と第2電極66は、液晶62に電圧を印加する。第1電極64は、共通配線に接続して、共通電極として機能する。第2電極66は、TFTを介して信号配線に接続して、駆動電極として機能する。
【0033】
第1電極64と第2電極66は、図5に示すように、第1基板61の第1主面61aに、ITO(Indium Tin Oxide)から櫛歯形状に形成される。第1電極64は、液晶62の配向方向(+Y方向)に延出し、V字状に折れ曲がっている櫛歯部64a、64bを有する。また、第2電極66は、第1電極64の櫛歯部64a、64bと反対方向(-Y方向)に延出し、V字状に折れ曲がっている櫛歯部66a、66b、66cを有する。第2電極66の櫛歯部66a、66b、66cと第1電極64の櫛歯部64a、64bは、X方向に沿って交互に、互いに平行に配置される。これにより、第1基板61の第1主面61aに平行でX方向の横電界が、櫛歯部66aと櫛歯部64aとの間と、櫛歯部64aと櫛歯部66bとの間と、櫛歯部66bと櫛歯部64bとの間と、櫛歯部64bと櫛歯部66cとの間に生じる。第1基板61の第1主面61aに平行でX方向の横電界により、液晶62は、第1基板61の第1主面61aに平行な面内で回転する。
第1電極64の櫛歯部64a、64bと第2電極66の櫛歯部66a、66b、66cの詳細については、後述する。
【0034】
光変調部50の変調領域52は、マトリクス状に配列され、光源部40から出射された硬化光を変調する。変調領域52は、図5に示すように、3つの領域を含む。なお、図5では、理解を容易にするために、第1偏光板72、第2偏光板74等を省略している。
【0035】
変調領域52の第1領域52aは第1電極64の櫛歯部64a、64bの根元側(-Y方向側)に位置し、変調領域52の第2領域52bは第2電極66の櫛歯部66a、66b、66cの根元側(+Y方向側)に位置する。また、変調領域52の第3領域52cは、第1領域52aと第2領域52bとの間に位置する。第1領域52aと第2領域52bと第3領域52cは、配置されている櫛歯部64a、64b、66a~66cの間隔が異なることにより、互いに異なる電圧透過率特性を有している。
【0036】
第1領域52aの櫛歯部66a、64a、66b、64b、66cの間隔D1は、櫛歯部66a~66cの幅を広くすることにより最も狭く設定され、第1領域52aでは、透過率が最も低電圧で変化する(すなわち、液晶62の駆動電圧が最も低い)。第2領域52bの櫛歯部66a、64a、66bの間隔D2は、第1領域52aの櫛歯部64a、66b、64b、66cの間隔よりも広く設定され、第2領域52bでは、透過率が第1領域よりも高い電圧で変化する(すなわち、液晶62の駆動電圧が第1領域52aよりも高い)。第3領域52cの櫛歯部66a、64a、66b、64b、66cの間隔D3は、櫛歯部66a~66cの幅を狭めることにより最も広く設定され、第3領域52cでは、透過率が最も高電圧で変化する(すなわち、液晶62の駆動電圧が最も高い)。
以下では、図6を参照して、第1領域52aと第2領域52bと第3領域52cの電圧透過率特性と光硬化樹脂RLの硬化状態について、具体的に説明する。なお、第1電極64の櫛歯部64bが第2領域52bに配置されていないが、これについては後述する。
【0037】
第1領域52aと第2領域52bと第3領域52cの透過率は、櫛歯部64a、64b、66a~66cの間隔を調整することにより、予め設定されている第1電圧V1~第4電圧V4が液晶62に印加された場合に、予め設定されている透過率Ts以上であるか否か設定されている。各電圧の電圧値は、第1電圧V1、第2電圧V2、第3電圧V3、第4電圧V4の順に高くなっている。また、予め設定されている透過率Tsは、光硬化樹脂RLに照射される硬化光の単位面積当たりのエネルギーが光硬化樹脂RLの臨界露光量となる、透過率である。光硬化樹脂RLの臨界露光量は、光硬化樹脂RLが硬化するために必要最小限の、単位面積当たりのエネルギーを意味する。例えば、ウレタン-アクリレート系の光硬化樹脂の臨界露光量は、0.8mJ/cm程度である。したがって、変調領域52のいずれかの領域の透過率が予め設定されている透過率Ts以上である場合、その領域に対応する領域の光硬化樹脂RLは硬化する。また、変調領域52のいずれかの領域の透過率が予め設定されている透過率Tsよりも小さい場合、その領域に対応する領域の光硬化樹脂RLは硬化しない。なお、予め設定されている第1電圧V1~第4電圧V4を、それぞれ、第1電圧V1、第2電圧V2、第3電圧V3、第4電圧V4と記載する。また、予め設定されている透過率Tsを臨界透過率Tsと記載する。
【0038】
まず、第1領域52aについて説明する。図6に示すように、最も小さい第1電圧V1が液晶62に印加された第1状態では、第1領域52aの透過率は、臨界透過率Tsよりも小さい。第1電圧V1よりも大きい第2電圧V2が液晶62に印加された第2状態では、第1領域52aの透過率は、臨界透過率Ts以上となる。さらに、第2電圧V2よりも大きい第3電圧V3が液晶62に印加された第3状態では、第1領域52aの透過率は、最大透過率よりも小さくなるものの、臨界透過率Ts以上となる。最も大きい第4電圧V4が液晶62に印加された第4状態では、第1領域52aの透過率は、臨界透過率Tsよりも小さくなる。
したがって、第1電圧V1が液晶62に印加された第1状態と第4電圧V4が液晶62に印加された第4状態では、第1領域52aに対応する領域の光硬化樹脂RLは硬化しない。一方、第2電圧V2が液晶62に印加された第2状態と第3電圧V3が液晶62に印加された第3状態では、第1領域52aに対応する領域の光硬化樹脂RLは硬化する。
【0039】
次に、第2領域52bについて説明する。第1電圧V1が液晶62に印加された第1状態では、第2領域52bの透過率は、第1領域52aと同様に、臨界透過率Tsよりも小さい。第2電圧V2が液晶62に印加された第2状態では、図6に示すように、第1領域52aよりも駆動電圧が高い第2領域52bの透過率は、臨界透過率Tsよりも小さい状態を維持している。第3電圧V3が液晶62に印加された第3状態では、第2領域52bの透過率は、臨界透過率Ts以上となる。第4電圧V4が液晶62に印加された第4状態では、第2領域52bの透過率は、最大透過率よりも小さくなるものの、臨界透過率Ts以上となる。
したがって、第1電圧V1が液晶62に印加された第1状態と第2電圧V2が液晶62に印加された第2状態では、第2領域52bに対応する領域の光硬化樹脂RLは硬化しない。一方、第3電圧V3が液晶62に印加された第3状態と第4電圧V4が液晶62に印加された第4状態では、第2領域52bに対応する領域の光硬化樹脂RLは硬化する。
【0040】
駆動電圧が最も高い第3領域52cの透過率は、図6に示すように、第1電圧V1~第4電圧V4のいずれが印加された場合であっても、臨界透過率Tsよりも小さい。なお、第3領域52cの直上に位置する光硬化樹脂RLは、第1領域52aに対応する領域の光硬化樹脂RL又は第2領域52bに対応する領域の光硬化樹脂RLに含まれる。
【0041】
以上をまとめると、第1電圧V1が液晶62に印加された第1状態では、第1領域52aと第2領域52bと第3領域52cの透過率は臨界透過率Tsよりも小さいので、いずれの領域に対応する領域の光硬化樹脂RLも硬化しない。第2電圧V2が液晶62に印加された第2状態では、第1領域52aの透過率は臨界透過率Ts以上となり、第2領域52bと第3領域52cの透過率は臨界透過率Tsよりも小さいので、第1領域52aに対応する領域の光硬化樹脂RLが硬化する。第3電圧V3が液晶62に印加された第3状態では、第1領域52aと第2領域52bの透過率は臨界透過率Ts以上となり、第3領域52cの透過率は臨界透過率Tsよりも小さいので、第1領域52aに対応する領域の光硬化樹脂RLと第2領域52bに対応する領域の光硬化樹脂RLが硬化する。第4電圧V4が液晶62に印加された第4状態では、第1領域52aと第3領域52cの透過率は臨界透過率Tsよりも小さく、第2領域52bの透過率は臨界透過率Ts以上であるので、第2領域52bに対応する領域の光硬化樹脂RLが硬化する。
【0042】
したがって、本実施形態では、1つの変調領域52の液晶62に印加される電圧を制御することにより、変調領域52内の2つの領域(第1領域52aと第2領域52b)の透過率を制御して、それぞれの領域に対応する領域の光硬化樹脂RLを硬化させるか否か制御できる。1つの変調領域52により、変調領域52内の2つの領域に対応する領域の光硬化樹脂RLを硬化させるか否か制御できるので、光変調部50のドライバIC85の数を少なくできる。また、光変調部50のドライバ回路82を簡略化できる。
【0043】
第2状態における第1領域52aの透過率と、第3状態における第1領域52aの透過率と、第3状態における第2領域52bの透過率と、第4状態における第2領域52bの透過率(以下、露光透過率Teと総称する)は、硬化させる光硬化樹脂RLの厚さに依存する。すなわち、硬化する光硬化樹脂RLの厚さは、照射される硬化光の単位面積当たりのエネルギー(以下、硬化露光量と記載)に依存するので、露光透過率Teは、硬化させる光硬化樹脂RLの厚さに応じた硬化露光量を有する硬化光が透過する、透過率に設定される。例えば、ウレタン-アクリレート系の光硬化樹脂を100μmの厚さで硬化させるための硬化露光量が2mJ/cmとすると、露光透過率Teは、透過した硬化光の露光量が2mJ/cmとなる透過率である。
【0044】
本実施形態では、第1領域52aにおける硬化光を透過する領域S1の面積の総和と、第2領域52bにおける硬化光を透過する領域S2の面積の総和を等しくすることが、好ましい。さらに、図6に示すように、第2電圧V2(第2状態)と第3電圧V3(第3状態)と第4電圧V4(第4状態)における露光透過率Teを等しくすることが、好ましい。これらより、光硬化樹脂RLに照射される硬化光の硬化露光量を容易に制御でき、光硬化樹脂RLを均一に硬化できる。
第1領域52aにおける硬化光を透過する領域S1は、図7に示すように、第1領域52aにおいて横電界が生じる電極(櫛歯部64a~64c、66a、66b)間の領域を意味する。また、第2領域52bにおける硬化光を透過する領域S2は、第2領域52bにおいて横電界が生じる電極(櫛歯部64a、66a、66b)間の領域を意味する。本実施形態では、第2領域52bに第1電極64の櫛歯部64bを配置しないことにより、領域S1の面積の総和と領域S2の面積の総和とを等しくしている。図7では、理解を容易にするために、第1偏光板72、第2偏光板74等を省略し、第1電極64、第2電極66を破線で示している。
【0045】
図1に戻り、光造形装置100の制御部90は、移動部30と光源部40と光変調部50とを制御する。また、制御部90は、三次元造形物Obの三次元形状を表す三次元形状データから、三次元造形物Obの+Z方向に垂直な断面の形状を表す断面形状データを生成する。断面形状データは、予め設定された間隔で生成される。
【0046】
制御部90は、各種の処理を実行するCPU(Central Processing Unit)92と、プログラムとデータとを記憶しているROM(Read Only Memory)94と、データを記憶するRAM(Random Access Memory)96と、各部の間の信号を入出力する入出力インタフェース98とを備える。制御部90の機能は、CPU92が、ROM94に記憶されたプログラムを実行することによって、実現される。入出力インタフェース98は、CPU92と、移動部30と光源部40と光変調部50のドライバIC85と図示しない外部装置との信号を入出力する。
【0047】
次に、図8を参照して、三次元造形物Obの造形方法を説明する。本実施形態では、三次元造形物Obは、光造形装置100によって、硬化した光硬化樹脂RSの層をn層積層することにより造形される。
【0048】
図8は、三次元造形物Obの造形方法を示すフローチャートである。三次元造形物Obの造形方法は、光硬化樹脂RLと断面形状データとを準備する工程(ステップS10)と、造形プレート20を初期位置に配置する工程(ステップS20)と、硬化光を変調して、変調された硬化光を光硬化樹脂RLに照射することにより、光硬化樹脂RLを硬化させる工程(ステップS30)と、硬化した光硬化樹脂RSを移動させる工程(ステップS40)と、硬化した光硬化樹脂RSの層がn層積層されたか否か判別する工程(ステップS50)と、を含む。本実施形態では、ステップS30とステップS40が繰り返される。
【0049】
ステップS10では、三次元造形物Obを造形するための光硬化樹脂RLと、三次元造形物Obの断面形状データとを準備する。本実施形態では、光硬化樹脂RLはUV硬化型樹脂である。断面形状データは、外部装置から入力された三次元造形物Obの三次元形状データから、光造形装置100の制御部90によって生成される。断面形状データは、n層分生成される。三次元形状データは、例えば、三次元造形物Obの三次元CAD(Computer-Aided Design)データである。
【0050】
ステップS20では、移動部30によって造形プレート20を移動させて、造形プレート20を初期位置に配置する。具体的には、造形プレート20は、三次元造形物Obを造形される面20aと樹脂槽10の底部12との間隔が硬化した光硬化樹脂RSの一層分の厚さである位置に配置される。
【0051】
ステップS30では、光源部40からUV光を出射させる。そして、1層目の断面形状データに基づいて、出射されたUV光を光変調部50より変調する。変調されたUV光は、樹脂槽10の底部12を介して、光硬化樹脂RLに照射される。これにより、光硬化樹脂RLが硬化して、1層目の硬化した光硬化樹脂RSが形成される。
光変調部50では、選択された変調領域52の液晶62に印加される電圧を制御することにより、1つの変調領域52内の2つの領域(第1領域52aと第2領域52b)に対応する光硬化樹脂RLを硬化させるか否か制御できるので、簡易な構成で、光硬化樹脂RSを形成できる。
【0052】
ステップS40では、移動部30によって、硬化した光硬化樹脂RS(造形プレート20)を、+Z方向に、硬化した光硬化樹脂RSの層の厚さ分移動させる。
【0053】
ステップS50では、ステップS30を実行した回数がn回よりも小さい場合、硬化した光硬化樹脂RSの層がn層積層されていないと判別する(ステップS50;NO)。n層積層されていないと判別されると、造形処理はステップS30に戻り、2層目以降の硬化した光硬化樹脂RSを形成する。ステップS30を実行した回数がn回である場合、硬化した光硬化樹脂RSの層がn層積層されたと判別され(ステップS50;YES)、造形処理は終了する。以上により、光造形装置100は三次元造形物Obを造形できる。
【0054】
以上のように、光変調部50の変調領域52の第1領域52aと第2領域52bは、第1電極64の櫛歯部64a、64bと第2電極66の櫛歯部66a、66b、66cとの間隔が異なることにより、互いに異なる電圧透過率特性を有している。具体的には、第1電圧V1が液晶62に印加された第1状態では、第1領域52aと第2領域52bは、臨界透過率Tsよりも小さい透過率を有している。また、第2電圧V2が液晶62に印加された第2状態では、第1領域52aは臨界透過率Ts以上の透過率を有し、第2領域52bは臨界透過率Tsよりも小さい透過率を有している。第3電圧V3が液晶62に印加された第3状態では、第1領域52aと第2領域52bは臨界透過率Ts以上の透過率を有している。さらに、第4電圧V4が液晶62に印加された第4状態では、第1領域52aは臨界透過率Tsよりも小さい透過率を有し、第2領域52bは臨界透過率Ts以上の透過率を有している。
液晶62に印加する電圧により、変調領域52の第1領域52aと第2領域52bの透過率を制御して、それぞれの領域に対応する領域の光硬化樹脂RLを硬化させるか否か制御できるので、光変調部50のドライバIC85の数を少なくできる。また、光変調部50のドライバ回路82を簡略化できる。したがって、光造形装置100は、簡易な構成で、断面積が広い造形物を高解像で造形できる。
【0055】
<実施形態2>
実施形態1の光造形装置100では、櫛歯部64a、64b、66a~66cの間隔が異なることにより、変調領域52の第1領域52aと第2領域52bが互いに異なる電圧透過率特性を有している。変調領域52の第1領域52aと第2領域52bは、他の構成により、互いに異なる電圧透過率特性を有してもよい。
【0056】
図9図11を参照して、本実施形態の光造形装置100について説明する。本実施形態の光造形装置100は、実施形態1の光造形装置100と同様に、樹脂槽10と造形プレート20と移動部30と光源部40と光変調部50と制御部90とを備える。本実施形態では、光変調部50の第1電極64と第2電極66と第1偏光板72と第2偏光板74の構成が実施形態1と異なるので、ここでは、これらと変調領域52について説明する。
【0057】
本実施形態の第1電極64と第2電極66は、実施形態1と同様に、第1基板61の第1主面61aに、ITOから櫛歯形状に形成される。第1電極64は、図9に示すように、液晶62の配向方向62a(+Y方向)に延出し、V字状に折れ曲がっている櫛歯部64a、64bを有する。また、第2電極66は、第1電極64の櫛歯部64a、64bと反対方向(-Y方向)に延出し、V字状に折れ曲がっている櫛歯部66a、66b、66cを有する。第2電極66の櫛歯部66a、66b、66cと第1電極64の櫛歯部64a、64bは、X方向に沿って交互に、互いに平行で等間隔に配置される。これにより、実施形態1と同様に、第1主面61aに平行でX方向の横電界が、櫛歯部66aと櫛歯部64aとの間と、櫛歯部64aと櫛歯部66bとの間と、櫛歯部66bと櫛歯部64bとの間と、櫛歯部64bと櫛歯部66cとの間に生じる。第1主面61aに平行でX方向の横電界により、液晶62は、第1基板61の第1主面61aに平行な面内で回転する。
【0058】
本実施形態の第1偏光板72は、実施形態1と同様に、第1基板61の第2主面61bに設けられる。本実施形態では、第1偏光板72の偏光軸72aは、図9に示すように、液晶62の配向方向62a(+Y方向)に対して、傾斜角θで傾いている。
【0059】
本実施形態の第2偏光板74は、実施形態1と同様に、第2基板71の第2主面71bに設けられる。第2偏光板74の偏光軸74aは、実施形態1と同様に、第1偏光板72の偏光軸72aに対してクロスニコルに配置に配置される。
【0060】
本実施形態では、第1電極64の櫛歯部64a、64bと第2電極66の櫛歯部66a~66cがV字状に折れ曲がり、第1偏光板72の偏光軸72aが液晶62の配向方向に対して傾いているので、変調領域52には、互いに異なる電圧透過率特性を有する第1領域52aと第2領域52bが生じる。第1領域52aと第2領域52bは、櫛歯部64a、64b、66a~66cの折れ曲がりで分かれ、第1領域52aは櫛歯部64a、64bの根元側(-Y方向側)に位置し、第2領域52bは第2電極66の櫛歯部66a、66b、66cの根元側(+Y方向側)に位置する。
【0061】
本実施形態の第1領域52aと第2領域52bの電圧透過率特性を説明する。図10は、傾斜角θ=10°での第1領域52aと第2領域52bの電圧透過率特性を示す。
【0062】
傾斜角θ=10°の場合、本実施形態の第1領域52aは、図10に示すように、実施形態1の第1領域52aと同様の電圧透過率特性を有している。具体的には、第1電圧V1が液晶62に印加された第1状態では、第1領域52aの透過率は、臨界透過率Tsよりも小さい。第2電圧V2が液晶62に印加された第2状態では、第1領域52aの透過率は、臨界透過率Ts以上となる。さらに、第3電圧V3が液晶62に印加された第3状態では、第1領域52aの透過率は、臨界透過率Ts以上である。第4電圧V4が液晶62に印加された第4状態では、第1領域52aの透過率は、臨界透過率Tsよりも小さくなる。
【0063】
また、傾斜角θ=10°の場合、本実施形態の第2領域52bも、実施形態1の第2領域52bと同様の電圧透過率特性を有している。具体的には、第1電圧V1が液晶62に印加された第1状態では、第2領域52bの透過率は、臨界透過率Tsよりも小さい。第2電圧V2が液晶62に印加された第2状態では、第2領域52bの透過率は、臨界透過率Tsよりも小さい。第3電圧V3が液晶62に印加された第3状態では、第2領域52bの透過率は、臨界透過率Ts以上となる。第4電圧V4が液晶62に印加された第4状態では、第2領域52bの透過率は、臨界透過率Ts以上である。
【0064】
したがって、本実施形態においても、実施形態1と同様に、1つの変調領域52の液晶62に印加される電圧を制御することにより、変調領域52内の第1領域52aと第2領域52bの透過率を制御して、それぞれの領域に対応する領域の光硬化樹脂RLを硬化させるか否か制御できる。液晶62に印加する電圧により、変調領域52内の第1領域52aと第2領域52bに対応する領域の光硬化樹脂RLを硬化させるか否か制御できるので、光変調部50のドライバIC85の数を少なくできる。また、光変調部50のドライバ回路82を簡略化できる。
【0065】
傾斜角θ=15°での第1領域52aと第2領域52bの電圧透過率特性を図11に示す。傾斜各θ=15°においても、本実施形態の第1領域52aは、図11に示すように、実施形態1の第1領域52aと同様の電圧透過率特性を有している。また、本実施形態の第2領域52bも、実施形態1の第2領域52bと同様の電圧透過率特性を有している。ただし、図11に示すように、臨界透過率Tsに対する露光透過率Teの比(Te/Ts)を大きくすることが、困難である。臨界透過率Tsに対する露光透過率Teの比が小さいと、硬化した光硬化樹脂RLの厚さを厚くできない。したがって、傾斜角θは0°よりも大きく15°よりも小さいことが、好ましい。
【0066】
以上のように、本実施形態においても、光変調部50のドライバIC85の数を少なくでき、光変調部50のドライバ回路82を簡略化できる。したがって、本実施形態の光造形装置100は、簡易な構成で、断面積が広い造形物を高解像で造形できる。
【0067】
<変形例>
以上、実施形態を説明したが、本開示は、要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0068】
例えば、実施形態1では、第1偏光板72の偏光軸72aは液晶62の配向方向62a(+Y方向)に平行に配置され、第2偏光板74の偏光軸74aは第1偏光板72の偏光軸72aに対してクロスニコルに配置に配置される。実施形態1の第1偏光板72の偏光軸72aは、実施形態2の偏光軸72aと同様に、液晶62の配向方向62aに対して傾斜角θで傾いてもよい。例えば、図12に示すように、液晶62の配向方向62aに対して、第1電極64の櫛歯部64a、64bが時計回り方向に5°傾き(傾斜角φ1=5°)、第2電極66の櫛歯部66a~66cが反時計回り方向に5°傾き(傾斜角φ2=5°)、第1偏光板72の偏光軸72aが時計回り方向に5°傾いてもよい(傾斜角θ=5°)。この場合、図13に示すように、臨界透過率Tsに対する露光透過率Teの比を大きくできる。
【0069】
実施形態1の櫛歯部64a、64b、66a~66cは、折れ曲がっていなくともよい。また、実施形態1の第3領域52cは、対向基板70のブラックマトリクスBMに覆われてもよい。
【0070】
実施形態1の樹脂槽10の底部12は、平板状のガラスから形成されているが、樹脂槽10の底部12は、硬化光を透過する樹脂、硬化光を透過する高分子フィルム等から形成されてもよい。また、ガラス、樹脂等から形成された底部12は剥離処理(例えば、シリコンコーティング処理)を施されてもよい。これにより、底部12と硬化した光硬化樹脂RSとの密着を防ぐことができる。
【0071】
光硬化樹脂RLはUV硬化型樹脂に限られない。光硬化樹脂RLは、例えば、可視光を照射されることにより硬化する樹脂であってもよい。また、光硬化樹脂RLは、重合禁止剤、金属微粒子、顔料等を含んでもよい。
【0072】
光源部40から出射される光はUV光に限られない。光源部40は光硬化樹脂RLを硬化させる光(硬化光)を出射する。光源部40は、光硬化樹脂RLに含まれる重合開始剤が活性種を発生させる波長に応じて、可視光を出射してもよい。また、光源部40は、LEDに代えてランプを備えてもよい。さらに、光源部40は、硬化光を平行光とするコリメータを備えてもよい。
【0073】
実施形態1、2では、第1偏光板72と第2偏光板74とをクロスニコルに配置して、光変調部50をノーマリーブラックモードで動作させているが、第1偏光板72と第2偏光板74とをパラレルニコルに配置して、光変調部50をノーマリーホワイトモードで動作させてもよい。また、実施形態1、2の光変調部50はIn-Plane Switchingモードで動作しているが、光変調部50は他の横電界モードで動作してもよい。例えば、光変調部50は、Fringe Field Switchingモードで動作してもよい。
【0074】
実施形態1では、光造形装置100は、層状の硬化した光硬化樹脂RSを順次に積層して三次元造形物Obを造形している。光造形装置100は、造形プレート20を連続的に移動しつつ、光変調部50によって、硬化光を光硬化樹脂RLに連続的に照射して、三次元造形物Obを連続的に造形してもよい。
【0075】
実施形態1、2と変形例の光変調部50は、入射する光を変調して出射する光変調装置として機能してもよい。例えば、光変調部50を文字、画像等を表示する光変調装置(表示装置)として用いてもよい。
【0076】
以上、好ましい実施形態について説明したが、本開示は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示には、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲が含まれる。
【符号の説明】
【0077】
5 筐体、10 樹脂槽、12 底部、14 壁部、20 造形プレート、20a 面、30 移動部、32 アーム、34 移動機構、40 光源部、40a 上面、50 光変調部、52 変調領域、52a 第1領域、52b 第2領域、52c 第3領域、60 TFT基板、61 第1基板、61a 第1基板の第1主面、61b 第1基板の第2主面、62 液晶、62a 液晶の配向方向、64 第1電極、64a,64b 第1電極の櫛歯部、66 第2電極、66a,66b,66c 第2電極の櫛歯部、70 対向基板、71 第2基板、71a 第2基板の第1主面、71b 第2基板の第2主面、72 第1偏光板、72a 第1偏光板の偏光軸、74 第2偏光板、74a 第2偏光板の偏光軸、82 ドライバ回路、85 ドライバIC、90 制御部、92 CPU、94 ROM、96 RAM、98 入出力インタフェース、100 光造形装置、D1,D2,D3 間隔、θ,φ1,φ2 傾斜角、BM ブラックマトリクス、RL 光硬化樹脂、RS 硬化した光硬化樹脂、Ob 三次元造形物、S1,S2 硬化光を透過する領域、Te 露光透過率、Ts 臨界透過率、V1 第1電圧、V2 第2電圧、V3 第3電圧、V4 第4電圧
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13