IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カルソニックカンセイ株式会社の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062556
(43)【公開日】2022-04-20
(54)【発明の名称】温度調整システム
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20220413BHJP
   B60H 1/22 20060101ALI20220413BHJP
   B60L 50/64 20190101ALI20220413BHJP
   B60L 58/26 20190101ALI20220413BHJP
   B60L 58/27 20190101ALI20220413BHJP
   B60K 11/02 20060101ALN20220413BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B60H1/22 651A
B60L50/64
B60L58/26
B60L58/27
B60K11/02
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020170649
(22)【出願日】2020-10-08
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2021-10-06
(71)【出願人】
【識別番号】000004765
【氏名又は名称】マレリ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川口 達生
(72)【発明者】
【氏名】荻原 智
(72)【発明者】
【氏名】丸山 智弘
(72)【発明者】
【氏名】川俣 達
(72)【発明者】
【氏名】中村 崇
(72)【発明者】
【氏名】谷 勇輝
(72)【発明者】
【氏名】廣野 幸治
(72)【発明者】
【氏名】清水 聡
(72)【発明者】
【氏名】前田 知広
(72)【発明者】
【氏名】角倉 盛義
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
3L211
5H125
【Fターム(参考)】
3D038AA10
3D038AB01
3D038AC22
3D235AA01
3D235BB19
3D235CC15
3D235FF25
3D235FF38
3D235FF43
3D235HH02
3D235HH31
3L211BA60
3L211DA26
3L211DA28
3L211DA33
5H125AA01
5H125AC12
5H125BC19
5H125CD06
5H125CD09
5H125FF24
5H125FF27
(57)【要約】
【課題】簡素な構成でバッテリの温度を調整する。
【解決手段】温度調整システム1は、冷媒を圧縮する電動コンプレッサ52と、圧縮された冷媒の熱を放出する水冷コンデンサ53と、放熱された冷媒を膨張させる可変絞り機構54と、膨張した冷媒を用いて熱交換を行う冷却器55と、熱交換に用いた冷媒を気液分離させ気相冷媒を電動コンプレッサ52へ供給する気液分離器56と、を有する冷凍サイクル回路50と、冷却水の熱を放出する外部放熱器64を有する第一冷却水回路60と、水冷コンデンサ53にて放出される熱で冷却水が加熱される第二冷却水回路70と、冷却器55内に流れる冷媒との熱交換で冷却水が冷却され、冷却水との熱交換でバッテリ84を温度調整する第三冷却水回路80と、第一冷却水回路60と第二冷却水回路70を接続分離させる切替弁91と、第二冷却水回路70と第三冷却水回路80を接続分離させる切替弁92と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被温度調整器の温度を調整する温度調整システムであって、
冷媒を圧縮する第一圧縮器と、前記第一圧縮器にて圧縮された冷媒の熱を放出する放熱器と、前記放熱器にて熱が放出された冷媒を膨張させる第一膨張弁と、前記第一膨張弁にて膨張した冷媒を用いて熱交換を行う冷却器と、前記冷却器での熱交換に用いられた冷媒を気液分離させて気相冷媒を前記第一圧縮器へ供給する気液分離器と、を有する冷凍サイクル回路と、
冷却水の熱を外部へ放出する外部放熱器を有する第一冷却水回路と、
前記放熱器にて放出される冷媒の熱によって、内部を流通する冷却水が加熱される第二冷却水回路と、
前記冷却器内に流れる冷媒との熱交換によって、内部を流通する冷却水が冷却され、当該冷却水との熱交換によって、前記被温度調整器の温度を調整する第三冷却水回路と、
前記第一冷却水回路と前記第二冷却水回路とを接続または分離させる第一バルブと、
前記第二冷却水回路と前記第三冷却水回路とを接続または分離させる第二バルブと、
を備える、
ことを特徴とする温度調整システム。
【請求項2】
請求項1に記載の温度調整システムであって、
前記被温度調整器を冷却する第一冷却モードでは、
前記第一バルブは、前記第一冷却水回路と前記第二冷却水回路とを接続し、
前記第二バルブは、前記第二冷却水回路と前記第三冷却水回路とを分離させる、
ことを特徴とする温度調整システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の温度調整システムであって、
前記被温度調整器を加熱する加熱モードでは、
前記第一バルブは、前記第一冷却水回路と前記第二冷却水回路とを分離させ、
前記第二バルブは、前記第二冷却水回路と前記第三冷却水回路とを接続する、
ことを特徴とする温度調整システム。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一つに記載の温度調整システムであって、
空調用冷媒を圧縮する第二圧縮器と、前記第二圧縮器にて圧縮された空調用冷媒の熱を放出する室外熱交換器と、前記室外熱交換器にて熱が放出された空調用冷媒を膨張させる第二膨張弁と、前記第二膨張弁にて膨張された空調用冷媒と前記第三冷却水回路内を流通する冷却水との間で熱交換を行う熱交換器と、を有し、車室内の空調に用いられる空調用冷凍サイクル回路をさらに備える、
ことを特徴とする温度調整システム。
【請求項5】
請求項4に記載の温度調整システムであって、
前記被温度調整器を冷却する第二冷却モードでは、
前記第一バルブは、前記第一冷却水回路と前記第二冷却水回路とを接続し、
前記第二バルブは、前記第二冷却水回路と前記第三冷却水回路とを分離させ、
前記熱交換器は、空調用冷媒との熱交換によって、前記第三冷却水回路内を流通する冷却水を冷却する、
ことを特徴とする温度調整システム。
【請求項6】
請求項4または5に記載の温度調整システムであって、
前記第三冷却水回路は、
前記被温度調整器をバイパスするように冷却水を流通させるバイパス流路と、
前記被温度調整器と熱交換を行うように冷却水を流通させるか、もしくは前記バイパス流路に冷却水を流通させるかを切り替える第三バルブと、を有し、
前記車室内の暖房を補助する補助暖房モードでは、
前記第一バルブは、前記第一冷却水回路と前記第二冷却水回路とを分離させ、
前記第二バルブは、前記第二冷却水回路と前記第三冷却水回路とを接続し、
前記第三バルブは、前記バイパス流路に冷却水を流通させ、
前記熱交換器は、前記第三冷却水回路内を流通する冷却水との熱交換によって、空調用冷媒を加熱する、
ことを特徴とする温度調整システム。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一つに記載の温度調整システムであって、
前記気液分離器は、
前記第一圧縮器に供給される気相冷媒に液相冷媒を混合させる流路と、
前記流路の開度を調整して前記流路内を流れる液相冷媒の流量を増減させる開閉切替機構と、を有し、
前記被温度調整器の温度を高くする場合には前記流路の開度を大きくし、前記被温度調整器の温度を低くする場合には前記流路の開度を小さくする、
ことを特徴とする温度調整システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被温度調整器の温度を調整する温度調整システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、冷却水冷却器を有して低温の冷却水を供給する低温側冷却水回路と、冷却水加熱器を有して高温の冷却水を供給する高温側冷却水回路と、低温側冷却水回路または高温側冷却水回路から供給される冷却水と電池との間で熱交換をする電池温調用熱交換器と、電池温調用熱交換器に接続される冷却水回路(低温側冷却水回路または高温側冷却水回路)を切り替える第1切替弁及び第2切替弁と、を備える車両用熱管理システムが開示されている。
【0003】
上記の車両用熱交換管理システムでは、電池の充電状態や温度状態に応じて、電池温調用熱交換器へ冷却水を供給する冷却水回路を切り替えることで、電池を冷却及び暖機している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6206231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の車両用熱交換システムでは、二つの冷却水回路の接続を切り替える第1切替弁及び第2切替弁が複雑な構成であるため、システム全体が複雑化している。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、簡素な構成で被温度調整器の温度を調整可能な温度調整システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様によれば、被温度調整器の温度を調整する温度調整システムは、冷媒を圧縮する第一圧縮器と、前記第一圧縮器にて圧縮された冷媒の熱を放出する放熱器と、前記放熱器にて熱が放出された冷媒を膨張させる第一膨張弁と、前記第一膨張弁にて膨張した冷媒を用いて熱交換を行う冷却器と、前記冷却器での熱交換に用いられた冷媒を気液分離させて気相冷媒を前記第一圧縮機へ供給する気液分離器と、を有する冷凍サイクル回路と、冷却水の熱を外部へ放出する外部放熱器を有する第一冷却水回路と、前記放熱器にて放出される冷媒の熱によって、内部を流通する冷却水が加熱される第二冷却水回路と、前記冷却器内に流れる冷媒との熱交換によって、内部を流通する冷却水が冷却され、当該冷却水との熱交換によって、前記被温度調整器の温度を調整する第三冷却水回路と、前記第一冷却水回路と前記第二冷却水回路とを接続または分離させる第一バルブと、前記第二冷却水回路と前記第三冷却水回路とを接続または分離させる第二バルブと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
上記態様では、第一バルブ及び第二バルブによって、冷却水の熱を放出する第一冷却水回路と、冷凍サイクル回路により冷却水が加熱される第二冷却水回路と、冷凍サイクル回路により冷却水が冷却される第三冷却水回路と、を接続または分離させる。これにより、被温度調整器と熱交換する冷却水の温度を調整することで、被温度調整器の温度を調整することができる。第一バルブ及び第二バルブは、各冷却水回路どうしを接続するか分離させるかを切り替えるだけの簡素な構成である。したがって、簡素な構成で被温度調整器の温度を調整可能な温度調整システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の実施形態に係る温度調整システムの構成図である。
図2図2は、空調装置の暖房モードについて説明する図である。
図3図3は、空調装置の冷房モードについて説明する図である。
図4図4は、温度調整システムの第一冷却モードについて説明する図である。
図5図5は、温度調整システムの加熱モードについて説明する図である。
図6図6は、温度調整システムの第二冷却モードについて説明する図である。
図7図7は、温度調整システムの補助暖房モードについて説明する図である。
図8図8は、温度調整システムが備える気液分離器の概略構成図である。
図9A図9Aは、第一の変形例に係る気液分離器の概略構成図である。
図9B図9Bは、第一の変形例に係る気液分離器の図9Aの場合とは異なるモードにおける概略構成図である。
図10A図10Aは、第二の変形例に係る気液分離器の概略構成図である。
図10B図10Bは、第二の変形例に係る気液分離器の図10Aの場合とは異なるモードにおける概略構成図である。
図11A図11Aは、第三の変形例に係る気液分離器の概略構成図である。
図11B図11Bは、第三の変形例に係る気液分離器の図11Aの場合とは異なるモードにおける概略構成図である。
図12A図12Aは、第四の変形例に係る気液分離器の概略構成図である。
図12B図12Bは、第四の変形例に係る気液分離器の図12Aの場合とは異なるモードにおける概略構成図である。
図13A図13Aは、第五の変形例に係る気液分離器の概略構成図である。
図13B図13Bは、第五の変形例に係る気液分離器の図13Aの場合とは異なるモードにおける概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る温度調整システム1について説明する。
【0011】
まず、図1を参照して、温度調整システム1の構成について説明する。
【0012】
温度調整システム1は、車両(図示省略)に搭載されるシステムであって、車室内(図示省略)の空調を行う空調装置10と、車両に搭載される被温度調整器としてのバッテリ84の温度を調整する温度調整回路100と、を備える。本実施形態では被温度調整器がバッテリ84である場合について説明するが、被温度調整器は、温度調整が必要な機器であれば特に限定されるものではない。被温度調整器の他の例としては、例えば車両の電動パワートレーン,エンジンオイル,もしくはトランスミッションオイルなどがあげられる。
【0013】
空調装置10は、空気導入口21を有する風路2と、空気導入口21から空気を導入して風路2に流すブロワユニット3と、風路2を流れる空気を冷却または加熱する空調用冷凍サイクル回路としてのヒートポンプユニット4と、ヒートポンプユニット4の後述するヒータコア43に接触する空気を調整するエアミックスドア5と、を有する。
【0014】
風路2には、空気導入口21から吸い込まれた空気が流れる。風路2には、車室外の外気と車室内の内気とが吸い込まれる。風路2を通過した空気は、車室内に導かれる。
【0015】
ブロワユニット3は、軸中心の回転によって風路2に空気を流す送風装置としてのブロワ31を有する。ブロワユニット3は、車室外の外気を取り入れる外気取入口と車室内の内気を取り入れる内気取入口との開閉用のインテークドア(図示省略)を有する。インテークドアは、外気取入口と内気取入口の開閉または開度を調整し、車室外の外気と車室内の内気との吸込量を調整可能である。
【0016】
ヒートポンプユニット4は、空調用冷媒が循環する冷媒循環回路41と、電動モータ(図示省略)によって駆動されて空調用冷媒を圧縮する第二圧縮器としての電動コンプレッサ42と、電動コンプレッサ42にて圧縮された冷媒の熱によって空気を加熱するヒータコア43と、ヒータコア43を介して流入される空調用冷媒と外気との間で熱交換を行う室外熱交換器44と、ヒータコア43または室外熱交換器44から流入される冷媒を液相冷媒と気相冷媒とに分離させる気液分離器45と、気液分離器45からの冷媒の流れを切り替える切替弁46と、気液分離器45から流入する液相冷媒を減圧膨張させ温度を下げる温度式膨張弁47と、温度式膨張弁47にて膨張して温度が下がった冷媒によって風路2内の空気を冷却するエバポレータ48と、を有する。また、ヒートポンプユニット4は、気液分離器45から流入する液相冷媒を用いて熱交換を行う熱交換器49を有する。
【0017】
冷媒循環回路41は、ヒートポンプユニット4の構成要素を結ぶ流路から構成され、内部を空調用冷媒が流通する。冷媒循環回路41には、コントローラ(図示省略)による指令信号に応じて開度が調整される可変絞り機構41a~41cが設けられる。詳細には、可変絞り機構41aは、冷媒循環回路41のうちエバポレータ48をバイパスするバイパス流路41dに設けられる。この可変絞り機構41aが第二膨張弁に相当する。可変絞り機構41bは、冷媒循環回路41のうち室外熱交換器44をバイパスするバイパス流路41eに設けられる。可変絞り機構41cは、冷媒循環回路41のうちバイパス流路41eと室外熱交換器44との間の流路に設けられる。可変絞り機構41a~41cは、開状態の場合には空調用冷媒を通過させ、閉状態の場合には空調用冷媒の通過を遮断し、絞り状態の場合には空調用冷媒を減圧膨張させる。絞り状態における絞りの程度は、コントローラによって適宜調整される。
【0018】
電動コンプレッサ42は、例えばベーン形の回転式コンプレッサであるが、スクロール形のコンプレッサを用いてもよい。電動コンプレッサ42は、コントローラからの指令信号によって回転速度が制御される。
【0019】
ヒータコア43は、風路2内に設けられる。ヒータコア43には、電動コンプレッサ42によって圧縮された空調用冷媒が流入する。ヒータコア43は、風路2を流れる空気が接触する場合には、当該空気と電動コンプレッサ42によって圧縮された空調用冷媒との間で熱交換を行い、空気を暖める。ヒータコア43に接触する空気の量は、ヒータコア43よりも風路2内の風流れ方向上流側に設けられたエアミックスドア5の位置に応じて調整される。エアミックスドア5の位置は、コントローラの指令信号に応じて移動する。
【0020】
室外熱交換器44は、例えば車両のエンジンルーム(電気自動車においてはモータルーム)内に配置され、ヒータコア43を介して流入される空調用冷媒と外気との間で熱交換を行う。室外熱交換器44には、車両の走行や室外ファン44aの回転によって、外気が導入される。ヒートポンプユニット4における室外熱交換器44の下流側(詳細には、室外熱交換器44と気液分離器45との間)には、逆止弁41fが設けられる。
【0021】
気液分離器45は、室外熱交換器44から流入する空調用冷媒を、液相の空調用冷媒と気相の空調用冷媒とに分離させる。
【0022】
切替弁46は、コントローラによって制御されるソレノイドを有する電磁弁である。切替弁46が開状態に切り替えられると、気相の空調用冷媒が電動コンプレッサ42に導かれる。一方、切替弁46が閉状態に切り替えられると、液相の空調用冷媒が気液分離器45から可変絞り機構41aまたは温度式膨張弁47へ導かれる。
【0023】
温度式膨張弁47は、気液分離器45から液相の空調用冷媒が流入すると当該液相の空調用冷媒を減圧膨張させ温度を下げる。温度式膨張弁47は、エバポレータ48の出口側に取り付けられた感温筒部を有し、エバポレータ48の出口側における冷媒の加熱度を所定値に維持するように開度が自動的に調整される。
【0024】
エバポレータ48は、風路2内に設けられて、温度式膨張弁47にて減圧された液相の空調用冷媒と風路2を流れる空気との間で熱交換を行うことで、風路2を流れる空気を冷却及び除湿する。エバポレータ48内では、風路2を流れる空気の熱によって液相の空調用冷媒が蒸発して気相の空調用冷媒になる。当該気相の空調用冷媒は、気液分離器45を介して再び電動コンプレッサ42に供給される。
【0025】
熱交換器49は、バイパス流路41dにおいて可変絞り機構41aよりも下流側に設けられる。熱交換器49には、可変絞り機構41aを介して空調用冷媒が流入するとともに、後述する温度調整回路100の第三冷却水回路80を介して冷却水が流入する。すなわち、熱交換器49は、可変絞り機構41aを介して流入する空調用冷媒と第三冷却水回路80を流通する冷却水との間で熱交換を行う。
【0026】
次に、図2及び図3を参照して、空調装置10の各運転モードについて説明する。図2及び図3では、空調用冷媒が流通する箇所を実線で示し、空調用冷媒の流通が停止する箇所を破線で示す。
【0027】
<暖房モード>
図2は、空調装置10の暖房モードについて説明する図である。暖房モードは、車室内を暖房する場面で稼働するモードである。
【0028】
暖房モードでは、エアミックスドア5は、風路2を流れる空気をヒータコア43へ導く位置に調整される。可変絞り機構41aは、バイパス流路41dを遮断する(気液分離器45と熱交換器49との接続を遮断する)閉状態に設定される。可変絞り機構41bは、バイパス流路41eを遮断する(ヒータコア43と気液分離器45との接続を遮断する)閉状態に設定される。可変絞り機構41cは、ヒータコア43から室外熱交換器44へ導かれる空調用冷媒を減圧膨張させる絞り状態に設定される。切替弁46は、室外熱交換器44から導かれた気相の空調用冷媒が電動コンプレッサ42に流入し、液相の空調用冷媒が気液分離器45から温度式膨張弁47及びエバポレータ48へ流入しないように開状態に切り替えられる。
【0029】
これにより、電動コンプレッサ42にて圧縮されてヒータコア43に流入した空調用冷媒は、ヒータコア43を通過する空気との間で熱交換を行い、液化する。すなわち、暖房モードでは、ヒータコア43は凝縮器として機能する。また、ヒータコア43を通過して加熱された空気は、風路2から車室内へ導かれる。これにより、車室内が暖房される。
【0030】
ヒータコア43にて液化した空調用冷媒は、可変絞り機構41cを通過して減圧膨張し、室外熱交換器44へ流入する。室外熱交換器44に流入した空調用冷媒は、室外熱交換器44に導入される外気との間で熱交換を行い、気化する。すなわち、暖房モードでは、室外熱交換器44は蒸発器として機能する。
【0031】
室外熱交換器44にて気化した空調用冷媒は、逆止弁41f、気液分離器45、及び切替弁46を介して再び電動コンプレッサ42へ供給される。暖房モードでは、上記のように空調用冷媒がヒートポンプユニット4を循環することで、風路2を流れる空気が加熱されて、車室内が暖房される。
【0032】
<冷房モード>
図3は、空調装置10の冷房モードについて説明する図である。冷房モードは、車室内を冷房する場面で稼働するモードである。
【0033】
冷房モードでは、エアミックスドア5は、風路2を流れる空気がヒータコア43をバイパスする位置に調整される。可変絞り機構41aは、バイパス流路41dを遮断する(気液分離器45と熱交換器49との接続を遮断する)閉状態に設定される。可変絞り機構41bは、バイパス流路41eを遮断する(ヒータコア43と気液分離器45との接続を遮断する)閉状態に設定される。可変絞り機構41cは、ヒータコア43から室外熱交換器44へ空調用冷媒が流入できる開状態に設定される。切替弁46は、液相の空調用冷媒が気液分離器45から温度式膨張弁47へ流入し、室外熱交換器44から導かれた気相の空調用冷媒が電動コンプレッサ42に流入しないように閉状態に切り替えられる。
【0034】
これにより、電動コンプレッサ42にて圧縮された空調用冷媒は、高温高圧状態のままヒータコア43及び可変絞り機構41cを介して室外熱交換器44に流入する。当該空調用冷媒は、室外熱交換器44を通過する空気との間で熱交換を行い、液化する。すなわち、冷房モードでは、室外熱交換器44は凝縮器として機能する。
【0035】
室外熱交換器44にて液化した空調用冷媒は、気液分離器45に流入し、気相の空調用冷媒と液相の空調用冷媒とに分離する。気液分離器45内に貯留された液相の空調用冷媒は、温度式膨張弁47を介してエバポレータ48へ流入する。
【0036】
温度式膨張弁47は、気液分離器45から流入した液相冷媒を減圧膨張させる。温度式膨張弁47は、エバポレータ48を通過した気相冷媒の温度をフィードバックして、気相冷媒が適切な加熱度となるように開度が調節される。
【0037】
エバポレータ48に流入した空調用冷媒は、風路2を流れる空気との間で熱交換を行い、風路2を流れる空気の熱によって気化する。すなわち、冷房モードでは、エバポレータ48は蒸発器として機能する。また、エバポレータ48に流入した空調用冷媒との間で熱交換を行った風路2内の空気は、冷却及び除湿されて、風路2を通過してゆく。これにより、車室内が冷房または除湿される。
【0038】
エバポレータ48にて気化した空調用冷媒は、気液分離器45を介して再び電動コンプレッサ42に供給される。冷房モードでは、上記のように空調用冷媒がヒートポンプユニット4を循環することで、風路2を流れる空気が冷却及び除湿される。
【0039】
続いて、主に図1を参照して、温度調整回路100の構成について説明する。
【0040】
図1に示すように、温度調整回路100は、冷凍サイクル回路50と、バッテリ84の温度を調整するための冷却水が流通する第一冷却水回路60,第二冷却水回路70,及び第三冷却水回路80と、第一冷却水回路60と第二冷却水回路70とを接続または分離させる第一バルブとしての切替弁91と、第二冷却水回路70と第三冷却水回路80とを接続または分離させる第二バルブとしての切替弁92と、を有する。
【0041】
冷凍サイクル回路50は、冷媒が循環する冷媒循環回路51と、電動モータ(図示省略)によって駆動されて冷媒を圧縮する第一圧縮器としての電動コンプレッサ52と、電動コンプレッサ52にて圧縮された冷媒の熱を放出する放熱器としての水冷コンデンサ53と、水冷コンデンサ53にて熱が放出された冷媒を膨張させる第一膨張弁としての可変絞り機構54と、可変絞り機構54にて膨張した冷媒を用いて熱交換を行う冷却器55と、冷却器55での熱交換に用いられた冷媒を気液分離させて気相冷媒を電動コンプレッサ52へ供給する気液分離器56と、を有する。
【0042】
電動コンプレッサ52は、例えばベーン形の回転式コンプレッサであるが、スクロール形のコンプレッサを用いてもよい。電動コンプレッサ52は、コントローラからの指令信号によって回転速度が制御される。
【0043】
水冷コンデンサ53は、電動コンプレッサ52にて圧縮された冷媒と第二冷却水回路70(冷却水流路71)から流入する冷却水との間で熱交換を行う。詳細には、水冷コンデンサ53は、電動コンプレッサ52にて圧縮された冷媒の熱を放出させて、第二冷却水回路70内を流れる冷却水を加熱する。
【0044】
可変絞り機構54は、コントローラによる制御に応じて開度が調整される。可変絞り機構54は、開度に応じて、水冷コンデンサ53から流入する冷媒を減圧膨張させる。
【0045】
冷却器55は、可変絞り機構54にて膨張した冷媒と第三冷却水回路80を流通する冷却水との間で熱交換を行う。詳細には、冷却器55では、可変絞り機構54にて膨張した冷媒が蒸発することで、第三冷却水回路80の内部を流通する冷却水が冷却される。
【0046】
気液分離器56は、冷却器55での熱交換に用いられた冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離させ、気相冷媒を電動コンプレッサ52へ供給する。また、気液分離器56は、温度調整システム1の運転モードに応じて、気相冷媒とともに液相冷媒を電動コンプレッサ52に供給する。気液分離器56の構成と冷媒の供給の詳細については、後述する。
【0047】
第一冷却水回路60は、内部を冷却水が流通する冷却水流路61,62と、冷却水を送り出すポンプ63と、冷却水の熱を外部へ放出する外部放熱器64と、を有する。
【0048】
第二冷却水回路70は、内部を冷却水が流通する冷却水流路71,72を有する。冷却水流路71は、水冷コンデンサ53と連通している。そのため、冷却水流路71内を流通する冷却水は、水冷コンデンサ53に流入し、冷凍サイクル回路50の冷媒の熱によって加熱される。
【0049】
第三冷却水回路80は、内部を冷却水が流通する冷却水流路81~83と、バッテリ84をバイパスするように冷却水を流通させるバイパス流路85と、第三バルブとしての切替弁86と、冷却水を送り出すポンプ87と、を有する。
【0050】
冷却水流路81は、熱交換器49と連通している。冷却水流路81内を流通する冷却水は、熱交換器49に空調用冷媒が流通している場合には、当該空調用冷媒との間で熱交換を行う。
【0051】
冷却水流路82には、冷却水流路82内を流れる冷却水との間で熱交換を行うバッテリ84が設けられる。冷却水流路82内に冷却水が流れる場合には、当該冷却水とバッテリ84との間で熱交換が行われる。
【0052】
冷却水流路83は、冷却器55と連通している。冷却水流路83内を流通する冷却水は、冷却器55内を流れる冷媒との間で熱交換を行い、冷却される。
【0053】
バイパス流路85は、冷却水流路81と冷却水流路83とを接続する流路であって、バッテリ84をバイパスするように冷却水を流通させる流路である。
【0054】
切替弁91は、第一冷却水回路60と第二冷却水回路70との間に設けられる。切替弁91は、コントローラからの指令信号によって切り替えられる四方弁である。
【0055】
切替弁91が接続状態に切り替えられると、切替弁91は、冷却水流路61と冷却水流路71とを接続するとともに、冷却水流路62と冷却水流路72とを接続する(図1参照)。すなわち、接続状態の切替弁91は、第一冷却水回路60と第二冷却水回路70とを接続する。
【0056】
切替弁91が分離状態に切り替えられると、切替弁91は、冷却水流路61と冷却水流路62とを接続するとともに、冷却水流路71と冷却水流路72とを接続する(図5参照)。すなわち、分離状態の切替弁91は、第一冷却水回路60と第二冷却水回路70とを分離させる。
【0057】
このように、切替弁91は、第一冷却水回路60と第二冷却水回路70とを接続するか分離させるかを切り替えるだけの簡素な構成である。
【0058】
切替弁92は、第二冷却水回路70と第三冷却水回路80との間に設けられる。切替弁92は、コントローラからの指令信号によって切り替えられる四方弁である。
【0059】
切替弁92が接続状態に切り替えられると、切替弁92は、冷却水流路71と冷却水流路83とを接続するとともに、冷却水流路72と冷却水流路81とを接続する(図5参照)。すなわち、接続状態の切替弁92は、第一冷却水回路60と第二冷却水回路70とを接続する。
【0060】
切替弁92が分離状態に切り替えられると、切替弁92は、冷却水流路71と冷却水流路72とを接続するとともに、冷却水流路81と冷却水流路83とを接続する(図1参照)。すなわち、分離状態の切替弁92は、第二冷却水回路70と第三冷却水回路80とを分離させる。
【0061】
このように、切替弁92は、第二冷却水回路70と第三冷却水回路80とを接続するか分離させるかを切り替えるだけの簡素な構成である。
【0062】
切替弁86は、コントローラからの指令信号によって切り替えられる三方弁である。
切替弁86は、冷却水流路81から流入する冷却水を冷却水流路82に流通させるかバイパス流路85に流通させるかを切り替える。
【0063】
切替弁86が冷却水流路81と冷却水流路82とを接続するとともに冷却水流路81とバイパス流路85とを遮断するように切り替えられた場合には、冷却水は、冷却水流路81から冷却水流路82内へ流通してバッテリ84との間で熱交換を行う。このとき、切替弁86は、バイパス流路85に冷却水を流通させずに、バッテリ84と熱交換を行うように冷却水流路82に冷却水を流通させる。
【0064】
切替弁86が冷却水流路81とバイパス流路85とを接続するとともに冷却水流路81とバイパス流路85とを遮断するように切り替えられた場合には、冷却水は、冷却水流路81からバイパス流路85へ流通する。このとき、切替弁86は、冷却水流路82に冷却水を流通させずに、バイパス流路85に冷却水を流通させる。
【0065】
次に、図4から図7を参照して、上記構成の温度調整システム1の運転モードでの作用について説明する。図4から図7では、各図該当する運転モード時において、熱伝達媒体(冷媒,空調用冷媒,冷却水)が流通する箇所を実線で示し、熱伝達媒体の流通が停止する箇所を破線で示す。
【0066】
温度調整システム1は、車両や被温度調整器の状態に応じて4つのモードを切り替えて稼働する。4つのモードは、バッテリ84を冷却する第一冷却モード(図4参照)と、バッテリ84を加熱する加熱モード(図5参照)と、第一冷却モードよりもバッテリ84を強く冷却する第二冷却モード(図6参照)と、ヒートポンプユニット4及び温度調整回路100を協働させて車室内を暖房する補助暖房モード(図7参照)と、である。
【0067】
<第一冷却モード>
図4は、温度調整システム1の第一冷却モードについて説明する図である。第一冷却モードは、バッテリ84の発熱などによってバッテリ84を冷却する必要がある場面で稼働するモードである。
【0068】
第一冷却モードでは、切替弁91は接続状態に、切替弁92は分離状態にそれぞれ切り替えられる。すなわち、切替弁91は第一冷却水回路60と第二冷却水回路70とを接続し、切替弁92は第二冷却水回路70と第三冷却水回路80とを分離させる。また、切替弁86は、冷却水流路81と冷却水流路82とを接続するとともに、冷却水流路81とバイパス流路85とを遮断するように切り替えられる。
【0069】
また、第一冷却モードでは、可変絞り機構41aは、バイパス流路41dを遮断する(気液分離器45と熱交換器49との接続を遮断する)閉状態に設定される。すなわち、熱交換器49に空調用冷媒が流入しないため、第一冷却モードでは、空調用冷媒と第三冷却水回路80内を流れる冷却水との間では熱交換が行われない。なお、第一冷却モードにおける可変絞り機構41b,41cの状態と、エアミックスドア5の配置とは、特に限定されるものではなく任意である。すなわち、温度調整システム1は、切替弁91,切替弁92,切替弁86,及び可変絞り機構41aを切り替えるだけで、第一冷却モードへ切り替わる。
【0070】
第一冷却モードでは、水冷コンデンサ53において、電動コンプレッサ52にて圧縮された冷媒と冷却水流路71内を流れる冷却水との間で熱交換が行われる。これにより、冷媒が液化するとともに冷却水流路71内を流れる冷却水が加熱される。
【0071】
水冷コンデンサ53にて加熱された冷却水は、冷却水流路71から切替弁91を介して第一冷却水回路60へ流入し、外部放熱器64を通過する。これにより、冷却水の熱が外部へ放出される。外部放熱器64を通過して冷却された冷却水は、冷却水流路62,切替弁91,冷却水流路72,及び切替弁92を介して再び冷却水流路71へ戻る。このように、水冷コンデンサ53にて冷却水に放熱された冷媒の熱は、第一冷却水回路60及び第二冷却水回路70によって、外部へと放出される。
【0072】
水冷コンデンサ53にて液化した冷媒は、可変絞り機構54にて減圧膨張して、冷却器55へ流入する。冷却器55は、可変絞り機構54にて減圧膨張した冷媒と第三冷却水回路80を流通する冷却水との間で熱交換を行う。詳細には、可変絞り機構54にて膨張した冷媒が蒸発することで、第三冷却水回路80の内部を流通する冷却水が冷却される。
【0073】
なお、熱交換器49には空調用冷媒が流入していない(熱交換器49では熱交換が行われない)。そのため、冷却器55によって冷却された冷却水は、熱交換器49を通過しても温度が変わらない。
【0074】
冷却水流路82では、冷却器55にて冷却された冷却水とバッテリ84との間で熱交換が行われる。すなわち、冷却器55にて冷却された冷却水によって、バッテリ84が冷却される。
【0075】
上記のように、温度調整システム1は、切替弁91,切替弁92,切替弁86,及び可変絞り機構41aを切り替えるだけで、第一冷却モードへ切り替わる。第一冷却モードでは、切替弁91によって第一冷却水回路60と第二冷却水回路70とを接続し、切替弁92によって第二冷却水回路70と第三冷却水回路80とを分離させる。これにより、第三冷却水回路80内を流通する冷却水は、冷凍サイクル回路50内を流通する冷媒との熱交換によって冷却される。すなわち、第三冷却水回路80内を流通する冷却水の温度を下げることで、バッテリ84の温度を下げることができる。
【0076】
<加熱モード>
図5は、温度調整システム1の加熱モードについて説明する図である。加熱モードは、バッテリ84の温度を上昇、維持、または温度下降を鈍化させる必要がある場面で稼働するモードである。
【0077】
加熱モードでは、切替弁91は分離状態に、切替弁92は接続状態にそれぞれ切り替えられる。すなわち、切替弁91は第一冷却水回路60と第二冷却水回路70とを分離させ、切替弁92は第二冷却水回路70と第三冷却水回路80とを接続する。また、切替弁86は、冷却水流路81と冷却水流路82とを接続するとともに冷却水流路81とバイパス流路85とを遮断するように切り替えられる。
【0078】
また、加熱モードでは、可変絞り機構41aは、バイパス流路41dを遮断する(気液分離器45と熱交換器49との接続を遮断する)閉状態に設定される。すなわち、熱交換器49に空調用冷媒が流入しないため、加熱モードでは、第一冷却モードと同様に、空調用冷媒と第三冷却水回路80内を流れる冷却水との間では熱交換が行われない。なお、加熱モードにおける可変絞り機構41b,41cの状態と、エアミックスドア5の配置とは、特に限定されるものではなく任意である。すなわち、温度調整システム1は、切替弁91,切替弁92,切替弁86,及び可変絞り機構41aを切り替えるだけで、加熱モードへ切り替わる。
【0079】
加熱モードでは、水冷コンデンサ53において、電動コンプレッサ52にて圧縮された冷媒と冷却水流路71内を流れる冷却水との間で熱交換が行われる。これにより、冷媒が液化するとともに冷却水流路71内を流れる冷却水が加熱される。
【0080】
水冷コンデンサ53にて加熱された冷却水は、冷却水流路71から切替弁91,冷却水流路72,切替弁92,冷却水流路81(熱交換器49),ポンプ87,及び切替弁86を介して冷却水流路82へ流入する。上記したように熱交換器49には空調用冷媒が流入していない(熱交換器49では熱交換が行われない)ため、水冷コンデンサ53にて加熱された冷却水は、熱交換器49を通過しても温度が変わらない。
【0081】
冷却水流路82では、水冷コンデンサ53にて加熱された冷却水とバッテリ84との間で熱交換が行われる。すなわち、水冷コンデンサ53にて加熱された冷却水によって、バッテリ84が加熱される。
【0082】
バッテリ84を加熱した冷却水は、冷却水流路83に導かれて冷却器55を流通する。当該冷却水は、可変絞り機構54にて減圧膨張した冷媒との間での熱交換により冷却される。
【0083】
冷却器55にて冷却された冷却水は、冷却水流路83,切替弁92,及び冷却水流路71を介して、再び水冷コンデンサ53に流入し、水冷コンデンサ53にて放出される冷媒の熱によって加熱される。
【0084】
ここで、冷凍サイクル回路50内では、電動コンプレッサ52によって冷媒が圧縮されるため、水冷コンデンサ53にて冷媒から冷却水に放出される熱量は、冷却器55にて冷却水から冷媒が受け取る熱量と電動コンプレッサ52にて冷媒圧縮時に生じる熱量との和である。すなわち、冷却水は、冷却器55にて放出する熱量よりも大きな熱量を水冷コンデンサ53にて受け取ることになる。そのため、水冷コンデンサ53にて加熱された冷却水の温度は、冷却器55にて冷却される前の冷却水の温度(バッテリ84を加熱した後の冷却水の温度)よりも高くなる。そのため、水冷コンデンサ53にて加熱された冷却水とバッテリ84との間で熱交換が行われることで、バッテリ84は加熱される。
【0085】
なお、加熱モードでは、冷却水の熱を外部へ放出する第一冷却水回路60は、第二冷却水回路70及び第三冷却水回路80と分離している。そのため、水冷コンデンサ53にて加熱された冷却水がバッテリ84と熱交換を行う前に冷却されることもない。
【0086】
このように、温度調整システム1は、切替弁91,切替弁92,切替弁86,及び可変絞り機構41aを切り替えるだけで、加熱モードへ切り替わる。加熱モードでは、切替弁91によって第一冷却水回路60と第二冷却水回路70とを分離させ、切替弁92によって第二冷却水回路70と第三冷却水回路80とを接続する。これにより、第三冷却水回路80内を流通する冷却水は、冷凍サイクル回路50内を流通する冷媒との熱交換によって加熱される。すなわち、バッテリ84と熱交換する第三冷却水回路80内を流通する冷却水の温度を上げることで、バッテリ84の温度を上げることができる。
【0087】
<第二冷却モード>
図6は、温度調整システム1の第二冷却モードについて説明する図である。第二冷却モードは、第一冷却モードよりもさらにバッテリ84を冷却する必要がある場面(例えば、バッテリ84を急速充電したい場面)で稼働するモードである。すなわち、第二冷却モードは、バッテリ84の最大冷却モードである。
【0088】
第二冷却モードでは、切替弁91は接続状態に、切替弁92は分離状態にそれぞれ切り替えられる。すなわち、切替弁91は第一冷却水回路60と第二冷却水回路70とを接続し、切替弁92は第二冷却水回路70と第三冷却水回路80とを分離させる。また、切替弁86は、冷却水流路81と冷却水流路82とを接続するとともに冷却水流路81とバイパス流路85とを遮断するように切り替えられる。
【0089】
また、第二冷却モードでは、可変絞り機構41aは、気液分離器45から流入する空調用冷媒を減圧膨張させる絞り状態に設定される。可変絞り機構41bは、空調用冷媒の通過を遮断する閉状態に設定される。可変絞り機構41cは、空調用冷媒を通過させる開状態に設定される。また、切替弁46は、液相の空調用冷媒が気液分離器45から可変絞り機構41aへ流入し、室外熱交換器44から導かれた気相の空調用冷媒が電動コンプレッサ42に流入しないように閉状態に設定される。
【0090】
第一冷却モードと同様に、第二冷却モードでは、冷却水流路71を流通する冷却水が、水冷コンデンサ53にて加熱され、冷却水流路83を流通する冷却水が、冷却器55にて冷却される。水冷コンデンサ53にて加熱された冷却水は、外部放熱器64を通過することで熱が外部へ放出され、再び冷却水流路71へ戻る。
【0091】
第三冷却水回路80では、冷却器55によって冷却された冷却水は、切替弁92を介して冷却水流路81(熱交換器49)へ流入する。
【0092】
ここで、熱交換器49には、空調用冷媒が流入する。詳細には、ヒートポンプユニット4において、電動コンプレッサ42にて圧縮された空調用冷媒は、高温高圧状態のままヒータコア43及び可変絞り機構41cを介して室外熱交換器44に流入する。室外熱交換器44では、空調用冷媒は、室外熱交換器44を通過する空気との間で熱交換を行い、液化する。室外熱交換器44にて液化した空調用冷媒は、逆止弁41f,気液分離器45,及びバイパス流路41dを介して可変絞り機構41aへ流入し、可変絞り機構41aにて減圧膨張して再び熱交換器49に流入する。
【0093】
熱交換器49は、可変絞り機構41aにて膨張した空調用冷媒と第三冷却水回路80の冷却水流路81内を流通する冷却水との間で熱交換を行い、当該冷却水を冷却する。
【0094】
詳細には、可変絞り機構41aにて減圧膨張した空調用冷媒は、熱交換器49にて冷却水流路81内を流通する冷却水との間で熱交換を行い、気化する。気化した空調用冷媒は、バイパス流路41d及び気液分離器45を介して再び電動コンプレッサ42に流入する。一方、冷却水流路81内を流通する冷却水(冷却器55によって冷却された冷却水)は、空調用冷媒との間で熱交換を行い、さらに冷却される。熱交換器49での熱交換によって、冷却水流路81を流通する冷却水は、第一モードのときよりもさらに冷却されることになる。
【0095】
冷却器55及び熱交換器49によって冷却された冷却水は、ポンプ87及び切替弁86を介して、冷却水流路82に流入する。冷却水流路82では、冷却水とバッテリ84との間で熱交換が行われて、バッテリ84が第一冷却モードよりもさらに冷却される。
【0096】
このように、温度調整システム1は、切替弁91,切替弁92,切替弁86,可変絞り機構41a~41c,及び切替弁46を切り替えることで、第二冷却モードへ切り替わる。第二冷却モードでは、切替弁91によって第一冷却水回路60と第二冷却水回路70とを接続し、切替弁92によって第二冷却水回路70と第三冷却水回路80とを分離させる。これにより、第三冷却水回路80内を流通する冷却水は、冷凍サイクル回路50内の冷媒との熱交換によって冷却されるとともに、熱交換器49における空調用冷媒との熱交換によっても冷却される。すなわち、バッテリ84と熱交換する第三冷却水回路80内を流通する冷却水の温度を第一冷却モードのときよりも下げることで、第一冷却モードよりもバッテリ84の温度を下げることができる。
【0097】
<補助暖房モード>
図7は、温度調整システム1の補助暖房モードについて説明する図である。補助暖房モードは、暖房モードでは車室内の暖房を充分に行うことができない場面(例えば外気が極低温(例えば-20℃以下)であるために室外熱交換器44にて外気から熱を充分に取り込むことができない場面)で稼働するモードである。
【0098】
補助暖房モードでは、切替弁91は分離状態に、切替弁92は接続状態にそれぞれ切り替えられる。すなわち、切替弁91は第一冷却水回路60と第二冷却水回路70とを分離させ、切替弁92は第二冷却水回路70と第三冷却水回路80とを接続する。また、切替弁86は、冷却水流路81と冷却水流路82とを遮断するとともに冷却水流路81とバイパス流路85とを接続するように切り替えられる。すなわち、補助暖房モードでは、冷却水流路82内を冷却水が流通しないため、バッテリ84の温度調整は行われない。
【0099】
また、補助暖房モードでは、可変絞り機構41aは、気液分離器45から流入する空調用冷媒を減圧膨張させる絞り状態に設定される。可変絞り機構41bは、ヒータコア43から流入する空調用冷媒を通過させる開状態に設定される。可変絞り機構41cは、空調用冷媒の通過を遮断する閉状態に設定される。すなわち、補助暖房モードでは、室外熱交換器44には、空調用冷媒が流通しない。また、切替弁46は、液相の空調用冷媒が気液分離器45から可変絞り機構41aへ流入し、室外熱交換器44から導かれた気相の空調用冷媒が電動コンプレッサ42に流入しないように閉状態に切り替えられる。
【0100】
加熱モードと同様に、補助暖房モードでは、冷却水流路71を流通する冷却水が、水冷コンデンサ53にて加熱される。水冷コンデンサ53によって加熱された冷却水は、切替弁91,冷却水流路72,及び切替弁92を介して冷却水流路81(熱交換器49)へ流入する。
【0101】
ここで、熱交換器49には、空調用冷媒が流入する。詳細には、ヒートポンプユニット4において、電動コンプレッサ42にて圧縮されてヒータコア43に流入した空調用冷媒は、ヒータコア43を通過する空気との間で熱交換を行い、液化する。ヒータコア43にて液化した空調用冷媒は、可変絞り機構41b,バイパス流路41e,気液分離器45,及びバイパス流路41dを介して、可変絞り機構41aへ流入する。空調用冷媒は、可変絞り機構41aにて減圧膨張して、熱交換器49に流入する。なお、室外熱交換器44と気液分離器45との間には、逆止弁41fが設けられている。そのため、バイパス流路41eに流入した空調用冷媒が、室外熱交換器44及び可変絞り機構41cを介して再びバイパス流路41eへと循環することはない。
【0102】
熱交換器49は、可変絞り機構41aにて膨張した空調用冷媒と水冷コンデンサ53によって加熱されて第三冷却水回路80(冷却水流路81)内を流通する冷却水との間で熱交換を行う。すなわち、熱交換器49は、第三冷却水回路80内を流通する冷却水との熱交換によって、空調用冷媒を加熱して気化させる。
【0103】
熱交換器49にて気化した空調用冷媒は、バイパス流路41d及び気液分離器45を介して電動コンプレッサ42に供給される。空調用冷媒は、電動コンプレッサ42で圧縮されて高温の状態となり、ヒータコア43へ流入する。
【0104】
ヒータコア43では、空調用冷媒によって、ヒータコア43を通過する空気が加熱される。ヒータコア43を通過して加熱された空気は、風路2から車室内へ導かれる。
【0105】
熱交換器49にて空調用冷媒を加熱した冷却水は、バイパス流路85を流通して冷却水流路83(冷却器55)に導かれる。冷却水流路83(冷却器55)に導かれた冷却水は、水冷コンデンサ53にて液化して可変絞り機構54にて減圧膨張した冷媒との熱交換により冷却される。冷却器55にて冷却された冷却水は、冷却水流路83,切替弁92,及び冷却水流路71を介して、再び水冷コンデンサ53に流入する。冷却水は、水冷コンデンサ53にて放出される冷媒の熱によって加熱される。
【0106】
このように、温度調整システム1は、切替弁91,切替弁92,切替弁86,可変絞り機構41a~41c,及び切替弁46を切り替えることで、補助暖房モードへ切り替わる。補助暖房モードでは、ヒートポンプユニット4及び温度調整回路100を協働させて、空調用冷媒を、冷凍サイクル回路50より生じる熱で加熱することで、暖房モードでは車室内の暖房を充分に行うことができない場面であっても車室内を充分に暖房することができる。
【0107】
ここで、仮に、温度調整システム1が温度調整回路100を備えない場合には、車室内の暖房を充分に行うことができない場面に対応するためには、電動コンプレッサ42を大型化するか、もしくはヒータコア43とは別のヒータ(例えばPTC(Positive Temperature Coefficient)ヒータ)を設けることなどが考えられる。
【0108】
しかしながら、電動コンプレッサ42を大型化すると、車室内の暖房を充分に行うことができない場面以外(例えば冷房モードや暖房モード)の電動コンプレッサ52の効率が下がるおそれがある。
【0109】
また、ヒータコア43とは別のヒータを設けると、別のヒータを稼働させるための高電圧電源や高電圧電源のマネジメントシステムも必要となり、システム全体が複雑化してしまう。
【0110】
これらに対して、温度調整システム1では、ヒートポンプユニット4と温度調整回路100とを備えることで、電動コンプレッサ42の大型化を回避し、全てのモードに適した大きさの電動コンプレッサ42を適用することができる。すなわち、全てのモードにおいて、電動コンプレッサ42の効率を向上させることができる。
【0111】
また、温度調整システム1では、ヒータコア43以外に別のヒータを設けることなく、車室内の暖房を充分に行うことができない場面で、車室内を充分に暖房することができる。すなわち、ヒータコア43とは別のヒータを設けるための高電圧電源や高電圧電源のマネジメントシステムを省くことができ、システム全体を簡略化することができる。
【0112】
続いて、図8を参照して、温度調整回路100の冷凍サイクル回路50が有する気液分離器56について説明する。図8は、温度調整システム1の冷凍サイクル回路50が有する気液分離器56の概略構成図である。
【0113】
気液分離器56は、タンク部56aと、冷却器55から流出した冷媒をタンク部56a内に流入させる入口管56bと、入口管56bから流入した冷媒を気相冷媒と液相冷媒とに分離する分離部材56cと、タンク部56a内の気相冷媒及び液相冷媒を電動コンプレッサ52へ供給する第一出口管56dと、電動コンプレッサ52に供給される気相冷媒にタンク部56a内の液相冷媒を混合させる流路56eが内部に形成される第二出口管56fと、第二出口管56fの流路56eの開度を調整して流路56e内を流れる液相冷媒の流量を増減させる可変絞り機構56gと、を有する。
【0114】
タンク部56aは、有底円筒形状に形成され、その内部には冷媒を貯留する空間Sが形成される。タンク部56aの上部には入口管56bが接続される。入口管56bには、冷媒の温度を検出する冷媒温度センサ(図示省略)と、冷媒の圧力を検出する冷媒圧力センサ(図示省略)が設けられる。両センサにより検出された冷媒の温度及び圧力の情報は、コントローラへと送られる。
【0115】
分離部材56cは、有底筒状に形成され底部が上方に位置するようにタンク部56a内の上部に設けられる。冷却器55から流出して入口管56bを介してタンク部56a内に流入した冷媒は、分離部材56cと衝突することで、気相冷媒と液相冷媒とに分離される。分離部材56cによって分離された液相冷媒は、タンク部56aの内周面に沿って、タンク部56aの外縁側に降下する。これにより、気相冷媒は空間Sの上部に溜まり、液相冷媒は空間Sの下部に溜まる。
【0116】
ところで、冷凍サイクル回路50を循環する冷媒には、冷凍サイクル回路50を構成する要素を潤滑するための潤滑油が混合している。潤滑油は、液相冷媒と混合した状態で空間Sの下部に溜まる。
【0117】
第一出口管56dは、内管部56hと外管部56iとを有する。
【0118】
内管部56hは、両端が開口するパイプ状に形成され、内部には気相冷媒及び液相冷媒が流通可能な流路56jが形成される。内管部56hの一端は、冷媒循環回路51によって電動コンプレッサ52と連結される(図示省略)。これにより、流路56jは、電動コンプレッサ52と接続される(図示省略)。内管部56hの他端は、空間S内において、オイルブリード穴である貫通孔56pから潤滑油を吸い上げられる位置にあるように設けられる。
【0119】
外管部56iは、内管部56hの外径よりも大きな内径を有する形状に形成される。外管部56iは、内管部56hの外周に設けられる。これにより、外管部56iの内径と内管部56hの外径との間には、円環状の流路56kが形成される。流路56kと流路56jとは、流路56l(内管部56hの他端側と外管部56iの内周面とにより形成される流路)によって接続される。
【0120】
外管部56iの一端56i1は、分離部材56cの底部と間隔をあけて対向する位置に設けられる。これにより、外管部56iの一端56i1と分離部材56cとの間には、冷媒が流路56kへ流入可能な流入口56mが形成される。
【0121】
外管部56iの他端56i2は、空間S内に貯留される液相冷媒の液位よりも常に下方に位置するように設けられる。外管部56iの他端56i2側の外周には、メッシュ部56nが設けられる。メッシュ部56nは、液相冷媒に含まれる不純物を捕捉し、液相冷媒を通過させる。すなわち、外管部56iの他端56i2側は、液相冷媒が流入可能な構造となっている。外管部56iの他端56i2側の内部には、誘導部材56oが設けられる。
【0122】
誘導部材56oは、上端部分の直径が外管部56iの内径と同等であって、底面に液相冷媒が流通可能な貫通孔56pが形成される皿形状の部材である。貫通孔56pは、冷凍サイクル回路50の構成要素を潤滑するために必要な量の潤滑油を流路56lへ流入させる大きさに形成される。誘導部材56oは、空間S内に貯留される液相冷媒の液位よりも常に下方に貫通孔56pが位置するように外管部56i内に保持される。
【0123】
空間S内に貯留される気相冷媒は、流入口56m及び流路56k,56l,56jを介して、電動コンプレッサ52へ供給される。また、空間S内に貯留される液相冷媒の一部は、メッシュ部56nにて不純物を取り除かれて外管部56i内に流入し、貫通孔56pから流路56lへ流入する。流路56lに流入した液相冷媒は,流路56kから流路56lに流入した気相冷媒と混合して流路56jへ流入し、電動コンプレッサ52へ供給される。これにより、電動コンプレッサ52には、気相冷媒と冷凍サイクル回路50の構成要素を潤滑するのに必要な量の液相冷媒との混合冷媒が供給される。電動コンプレッサ52は、冷媒が含有する潤滑油によって潤滑される。
【0124】
第二出口管56fは、両端が開口するパイプ状に形成される。第二出口管56fの内部には、液相冷媒が流通可能な流路56eが形成される。第二出口管56fの一端は、気液分離器56の外部にて、電動コンプレッサ52へ気相冷媒を供給する第一出口管56dの内管部56hと連結される(図示省略)。これにより、流路56jと流路56eとが接続される。
【0125】
第二出口管56fの他端は、空間S内に貯留される液相冷媒の液位よりも常に下方に位置するように設けられる。また、第二出口管56fの他端側の外周には、外管部56iの他端56i2側と同様に、メッシュ部56nが設けられる。そのため、空間S内に貯留される液相冷媒の一部は、メッシュ部56nを通過することで不純物が取り除かれて、流路56eへ流入する。
【0126】
第二出口管56fには、流路56eの開度を調整して流路56e内を流れる液相冷媒の流量を増減させる開閉切替機構としての可変絞り機構56gが設けられる。可変絞り機構56gの開度は、コントローラによって制御される。
【0127】
第二出口管56fの流路56eは、可変絞り機構56gにより調整される開度に応じて、空間S内に貯留される液相冷媒を流路56jへ供給する。言い換えれば、流路56eは、第一出口管56d(流路56j)から電動コンプレッサ52に供給される気相冷媒に液相冷媒を混合させる流路として機能する。
【0128】
次に、温度調整システム1の運転モードにおける気液分離器56の作用について説明する。
【0129】
まず、バッテリ84の温度を高くする場合(加熱モード)について説明する。この場合には、加熱モード(図5参照)の説明にて述べたように、低温状態のバッテリ84が第三冷却水回路80内を流通する冷却水との熱交換によって加熱される。
【0130】
ここで、冷却器55では、バッテリ84に熱を奪われた冷却水と冷媒との間で熱交換が行われる(図5参照)。そのため、冷却器55から流出して気液分離器56に流入する冷媒は、温度が所定値以下になるとともに、圧力が所定値以下になる。
【0131】
コントローラは、入口管56bに設けられる冷媒温度センサ及び冷媒圧力センサから入力される検出値に基づいて気液分離器56内に流入する冷媒の温度及び圧力を算出し、算出した冷媒の温度及び圧力とコントローラに予め記憶されている冷媒の温度の所定値及び圧力の所定値とを比較する。コントローラは、算出した冷媒の温度または圧力が所定値以下であると判定すると、可変絞り機構56gを制御して流路56eから流路56jへ液相冷媒が供給されるように流路56eの開度を大きくする。
【0132】
すなわち、バッテリ84の温度を高くする場合には、気液分離器56は、第一出口管56dの流路56jを流れる冷媒(気相冷媒及び冷凍サイクル回路50の構成要素を潤滑するのに必要な量の液相冷媒)に第二出口管56fの流路56eを介して液相冷媒を混合させて、液相冷媒の混合率が増えた冷媒(気相冷媒及び液相冷媒)を電動コンプレッサ52へ供給する。なお、気相冷媒に混合させる液相冷媒の量は、電動コンプレッサ52が受け取れる液相冷媒の許容量の範囲内に収められる。液相冷媒の流入による電動コンプレッサ52への影響を抑制するためである。
【0133】
液相冷媒の混合率が増えた冷媒(気相冷媒及び液相冷媒)を電動コンプレッサ52に供給することで、電動コンプレッサ52に供給される冷媒の密度が高くなり、電動コンプレッサ52から水冷コンデンサ53へ供給される冷媒の流量が増大する。これにより水冷コンデンサ53にて放熱される熱量が増えるため、水冷コンデンサ53による冷却水流路83を流れる冷却水(バッテリ84と熱交換を行う冷却水)を加熱する性能が向上する。したがって、バッテリ84を、より加熱することができる。
【0134】
次に、バッテリ84の温度を低くする場合(第一冷却モード及び第二冷却モード)について説明する。この場合には、第一冷却モード(図4参照)及び第二冷却モード(図6参照)の説明にて述べたように、高温状態のバッテリ84が第三冷却水回路80内を流通する冷却水との熱交換により冷却される。
【0135】
ここで、冷却器55では、バッテリ84により加熱された冷却水と冷媒との間で熱交換が行われる(図4及び図6参照)。そのため、冷却器55から流出して気液分離器56に流入する冷媒は、温度が所定値より高くなるとともに、圧力が所定値より高くなる。
【0136】
コントローラは、入口管56bに設けられる冷媒温度センサ及び冷媒圧力センサから入力される検出値に基づいて気液分離器56に流入する冷媒の温度及び圧力を算出し、算出した冷媒の温度及び圧力とコントローラに予め記憶されている冷媒の温度の所定値及び圧力の所定値とを比較する。コントローラは、算出した冷媒の温度または圧力が所定値より高いと判定すると、可変絞り機構56gを制御して流路56eから流路56jへ液相冷媒が供給されない程度まで流路56eの開度を小さくする。
【0137】
すなわち、バッテリ84の温度を低くする場合には、気液分離器56は、第二出口管56fから液相冷媒を供給しない。そのため、バッテリ84の温度を高くする場合と比べて、電動コンプレッサ52へ供給される冷媒の密度が低くなり、電動コンプレッサ52から水冷コンデンサ53へ供給される冷媒の流量が減少する。
【0138】
電動コンプレッサ52から水冷コンデンサ53へ供給される冷媒の流量が減少すると、可変絞り機構54に流入する冷媒の流量も減少するが、その分、可変絞り機構54での冷媒の膨張率が大きくなる。これにより、冷却器55での冷媒の気化による冷却水からの吸熱量が増えるため、冷却器55による冷却水流路83を流れる冷却水(バッテリ84と熱交換を行う冷却水)を冷却する性能が向上する。したがって、バッテリ84を、より冷却することができる。
【0139】
続いて、図9Aから図13Bを参照して、気液分離器56の第一から第五の変形例について説明する。
【0140】
まず、図9A及び図9Bを参照して、第一の変形例に係る気液分離器561について説明する。図9Aは、温度調整システム1がバッテリ84の温度を低くする場合(第一冷却モード及び第二冷却モード)における気液分離器561の概略構成図である。図9Bは、温度調整システム1がバッテリ84の温度を高くする場合(加熱モード)における気液分離器561の概略構成図である。図9A及び9Bでは、気液分離器56と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0141】
気液分離器561は、第二出口管56fを有しない点で気液分離器56と相違する。また、気液分離器561は、誘導部材56oに代えて、電磁弁561aによって外管部56i内を移動可能な誘導部材561bを有する点で気液分離器56と相違する。
【0142】
図9A及び図9Bに示すように、気液分離器561は、流路56l内を流れる液相冷媒の流量を増減させる開閉切替機構としての電磁弁561a及び誘導部材561bを有する。
【0143】
電磁弁561aは、タンク部56aの底面のうち、外管部56iの他端56i2側と対向する位置に設けられる。電磁弁561aは、ソレノイド部561a1と弁部561a2とを有する。ソレノイド部561a1は、タンク部56aの外部に設けられる。弁部561a2は、タンク部56aの外部から外管部56iの他端56i2側内に挿入される。弁部561a2は、戻しばね561a3によって、タンク部56aから退出する方向へ付勢されている。電磁弁561aは、コントローラによって制御される通電状態に応じて弁部561a2を移動させる。
【0144】
誘導部材561bは、上端部分の直径が外管部56iの内径と同等であって、底面に貫通孔56pが形成される皿形状の部材である。誘導部材561bは、外管部56iの他端56i2側の内周を軸方向に移動可能に設けられている。また、誘導部材561bは、電磁弁561aの弁部561a2と連結している。
【0145】
図9Aに示すように、電磁弁561aの弁部561a2がタンク部56aの内部に挿入されるように移動すると、誘導部材561bも連動して移動する。この場合には、誘導部材561bは、上端部分がメッシュ部56nの上端よりも高く、かつ、タンク部56aに貯留される液相冷媒の液面よりも高い位置に保持される。この場合には、液相冷媒が貫通孔56pからのみ流路56lへ流入する。
【0146】
図9Bに示すように、電磁弁561aの弁部561a2がタンク部56aから退出するように移動すると、誘導部材561bも連動して移動する。この場合には、誘導部材561bは、上端部分がメッシュ部56nの上端よりも低く、かつ、タンク部56aに貯留される液相冷媒の液面よりも低い位置に保持される。この場合では、貫通孔56pに加えて、誘導部材561bの上端部分よりも上側のメッシュ部56nからも流路56l内へ冷媒が流入する。
【0147】
すなわち、誘導部材561bが図9Bの位置にある場合には、図9Aの位置にある場合よりも多量の液相冷媒を流路56lへ流入させることができる。言い換えると、流路56lの開度は、誘導部材561bが図9Aに示す位置にある場合よりも誘導部材561bが図9Bに示す位置にある場合の方が大きくなる。
【0148】
このように、気液分離器561は、電磁弁561aによって誘導部材561bの位置を移動させることで、流路56lの開度を調整して流路56l内に流れる液相冷媒の量を増減させることができる。以降の説明では、誘導部材561bが図9Aに示す位置にある場合を「誘導部材561bが閉位置に位置する」と言い、誘導部材561bが図9Bに示す位置にある場合を「誘導部材561bが開位置に位置する」と言う。
【0149】
次に、温度調整システム1の運転モードにおける気液分離器561の作用について説明する。
【0150】
まず、バッテリ84の温度を高くする場合(加熱モード)について説明する。この場合には、気液分離器561に流入する冷媒は、温度が所定値以下になるとともに、圧力が所定値以下になる。
【0151】
コントローラは、冷媒の温度または圧力が所定値以下であると判定すると、電磁弁561aを制御して、図9Bに示すように誘導部材561bを開位置に移動させて流路56lの開度を大きくする。これにより、誘導部材561bが閉位置に位置する場合よりも多量の液相冷媒が流路56l内へ流入する。
【0152】
流路56lは、流路56kから流入する気相冷媒に、誘導部材561bの移動により流入する液相冷媒を混合させる。流路56lにより液相冷媒の混合率が増えた冷媒(気相冷媒及び液相冷媒)は、流路56jを介して電動コンプレッサ52へ供給される。なお、気液分離器561においても、気相冷媒に混合させる液相冷媒の量は、電動コンプレッサ52が受け取れる液相冷媒の許容量の範囲内に収められる。
【0153】
このように、液相冷媒の混合率が増えた冷媒(気相冷媒及び液相冷媒)を電動コンプレッサ52に供給することで、電動コンプレッサ52に供給される冷媒の密度が高くなり、電動コンプレッサ52から水冷コンデンサ53へ供給される冷媒の流量が増大する。これにより、水冷コンデンサ53にて放熱される熱量が増えるため、水冷コンデンサ53により冷却水流路83を流れる冷却水(バッテリ84と熱交換を行う冷却水)を加熱する性能が向上する。したがって、バッテリ84を、より加熱することができる。
【0154】
次に、バッテリ84の温度を低くする場合(第一冷却モード及び第二冷却モード)について説明する。この場合には、気液分離器561に流入する冷媒は、温度が所定値より高くなるとともに、圧力が所定値より高くなる。
【0155】
コントローラは、冷媒の温度または圧力が所定値より高いと判定すると、電磁弁561aを制御して、図9Aに示すように誘導部材561bを閉位置に移動させて流路56lの開度を小さくする。これにより、冷凍サイクル回路50の構成要素を潤滑するのに必要な量だけの液相冷媒が貫通孔56pからのみ流路56l内へ流入する。
【0156】
そのため、バッテリ84の温度を高くする場合と比べて、電動コンプレッサ52へ供給される冷媒の密度が低くなり、電動コンプレッサ52から水冷コンデンサ53へ供給される冷媒の流量が減少する。
【0157】
電動コンプレッサ52から水冷コンデンサ53へ供給される冷媒の流量が減少すると、可変絞り機構54に流入する冷媒の流量も減少するが、その分、可変絞り機構54での冷媒の膨張率が大きくなる。これにより、冷却器55での冷媒の気化による冷却水からの吸熱量が増え、冷却器55による冷却水流路83を流れる冷却水(バッテリ84と熱交換を行う冷却水)を冷却する性能が向上する。したがって、バッテリ84を、より冷却することができる。
【0158】
次に、図10A及び図10Bを参照して、第二の変形例に係る気液分離器562について説明する。図10Aは、温度調整システム1がバッテリ84の温度を低くする場合(第一冷却モード及び第二冷却モード)における気液分離器562の概略構成図である。図10Bは、温度調整システム1がバッテリ84の温度を高くする場合(加熱モード)における気液分離器562の概略構成図である。図10A及び図10Bでは、気液分離器56,561と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0159】
気液分離器562は、ベローズ562a及び補助ばね562bによって誘導部材562dを移動させる点で、他の気液分離器56,561と相違する。
【0160】
図10A及び図10Bに示すように、気液分離器562は、流路56l内を流れる液相冷媒の流量を増減させる開閉切替機構としてのベローズ562a,補助ばね562b,及び誘導部材562dを有する。
【0161】
ベローズ562aは、タンク部56aの底面のうち、外管部56iの他端56i2が設けられる位置に設けられる。すなわち、ベローズ562aは、外管部56iの他端56i2の内周に収容される。
【0162】
ベローズ562a内には、雰囲気温度(本実施形態では空間S内の冷媒の温度)が所定値より高くなると膨張し所定値以下になると収縮するガスが充填される。ベローズ562aは、空間S内の冷媒の温度が所定値より高くなると、図10Aに示すように伸長し、空間S内の冷媒の温度が所定値以下になると、図10Bに示すように収縮する。
【0163】
補助ばね562bは、所定の弾性力を有するばね部材である。補助ばね562bは、一端が外管部56iの内周面から突出する保持部562eと接触するとともに他端が誘導部材562dの上端部分と接触することで、流路56k内に保持される。
【0164】
誘導部材562dは、上端部分の直径が内管部56hの外径よりも大きく形成される皿形状の部材である。誘導部材562dには、複数の貫通孔562cが形成される。貫通孔562cは、冷凍サイクル回路50の構成要素を潤滑するために必要な量の液相冷媒を流路56lへ流入させる大きさに形成される。誘導部材562dは、外管部56iの他端56i2側の内部を移動可能に設けられる。誘導部材562dの底面部分は、ベローズ562aと連結している。誘導部材562dの上端部分は補助ばね562bの他端と接触している。
【0165】
図10Aに示すように、空間S内の冷媒の温度が所定値より高くなることで、ベローズ562aが伸長すると、補助ばね562bを収縮させて誘導部材562dが移動する。この場合には、誘導部材562dは、誘導部材562dの上端部分がメッシュ部56nの上端よりも高い位置に保持される。この場合には、液相冷媒が貫通孔562cを介して流路56lへ流入する。
【0166】
図10Bに示すように、空間S内の冷媒の温度が所定値以下になることで、ベローズ562aが収縮すると、補助ばね562bの復元力により誘導部材562dが移動する。この場合には、誘導部材562dは、誘導部材562dの上端部分がメッシュ部56nの上端よりも低い位置に保持される。この場合には、貫通孔562cに加えて、誘導部材562dの上端部分よりも上側のメッシュ部56nからも流路56l内へ冷媒が流入する。
【0167】
すなわち、誘導部材562dが図10Bの位置にある場合には、図10Aの位置にある場合よりも多量の液相冷媒を流路56lへ流入させることができる。言い換えると、流路56lの開度は、誘導部材562dが図10Aに示す位置にある場合よりも誘導部材562dが図10Bに示す位置にある場合の方が大きくなる。
【0168】
このように、気液分離器562は、空間S内の冷媒の温度に応じて自動的に流路56lの開度が変更され、流路56l内に流れる液相冷媒の量を増減させることができる。そのため、気液分離器562は、気液分離器56,561のように、冷媒の温度圧力を検出するためのセンサ類やコントローラによる制御を必要としない。以降の説明では、誘導部材562dが図10Aに示す位置にある場合を「誘導部材562dが閉位置に位置する」と言い、誘導部材562dが図10Bに示す位置にある場合を「誘導部材562dが開位置に位置する」と言う。
【0169】
次に、温度調整システム1の運転モードにおける気液分離器562の作用について説明する。
【0170】
まず、バッテリ84の温度を高くする場合(加熱モード)について説明する。この場合には、気液分離器562に流入する冷媒は、温度が所定値以下になる。
【0171】
空間S内に流入し貯留される冷媒の温度が所定値以下になることで、図10Bに示すように、誘導部材562dが開位置に移動し、流路56lの開度が大きくなる。これにより、誘導部材562dが閉位置に位置する場合よりも多量の液相冷媒が流路56l内へ流入する。
【0172】
流路56lは、流路56kから流入する気相冷媒に、誘導部材562dの移動により流入する液相冷媒を混合させる。流路56lにより液相冷媒の混合率が増えた冷媒(気相冷媒及び液相冷媒)は、流路56jを介して電動コンプレッサ52へ供給される。なお、気液分離器562においても、気相冷媒に混合させる液相冷媒の量は、電動コンプレッサ52が受け取れる液相冷媒の許容量の範囲内に収められる。
【0173】
このように、液相冷媒の混合率が増えた冷媒(気相冷媒及び液相冷媒)を電動コンプレッサ52に供給することで、電動コンプレッサ52に供給される冷媒の密度が高くなり、電動コンプレッサ52から水冷コンデンサ53へ供給される冷媒の流量が増大する。これにより、水冷コンデンサ53にて放熱される熱量が増えるため、水冷コンデンサ53により冷却水流路83を流れる冷却水(バッテリ84と熱交換を行う冷却水)を加熱する性能が向上する。したがって、バッテリ84を、より加熱することができる。
【0174】
次に、バッテリ84の温度を低くする場合(第一冷却モード及び第二冷却モード)について説明する。この場合には、気液分離器562に流入する冷媒は、温度が所定値より高くなる。
【0175】
空間S内に流入し貯留される冷媒の温度が所定値より高くなることで、図10Aに示すように、誘導部材562dが閉位置に移動し、流路56lの開度が小さくなる。これにより、冷凍サイクル回路50の構成要素を潤滑するのに必要な量だけの液相冷媒が貫通孔562cを介して流路56l内へ流入する。
【0176】
そのため、バッテリ84の温度を高くする場合と比べて、電動コンプレッサ52へ供給される冷媒の密度が小さくなり、電動コンプレッサ52から水冷コンデンサ53へ供給される冷媒の流量も減少する。
【0177】
電動コンプレッサ52から水冷コンデンサ53へ供給される冷媒の流量が減少すると、可変絞り機構54に流入する冷媒の流量も減少するが、その分、可変絞り機構54での冷媒の膨張率が大きくなる。これにより、冷却器55での冷媒の気化による冷却水からの吸熱量が増えるため、冷却器55による冷却水流路83を流れる冷却水(バッテリ84と熱交換を行う冷却水)を冷却する性能が向上する。したがって、バッテリ84を、より冷却することができる。
【0178】
次に、図11A及び図11Bを参照して、第三の変形例に係る気液分離器563について説明する。図11Aは、温度調整システム1がバッテリ84の温度を低くする場合(第一冷却モード及び第二冷却モード)における気液分離器563の概略構成図である。図11Bは、温度調整システム1がバッテリ84の温度を高くする場合(加熱モード)における気液分離器563の概略構成図である。図11A及び図11Bでは、気液分離器56,561,562と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0179】
気液分離器563は、ダイヤフラム563a及び補助ばね562bによって誘導部材561bを移動させる点で、気液分離器56,561,562と相違する。
【0180】
図11A及び図11Bに示すように、気液分離器563は、流路56l内を流れる液相冷媒の流量を増減させる開閉切替機構としてのダイヤフラム563a,補助ばね562b,及び誘導部材561bを有する。
【0181】
ダイヤフラム563aは、タンク部56aの底面のうち、外管部56iの他端56i2が設けられる位置に設けられる。すなわち、ダイヤフラム563aは、外管部56iの他端56i2の内周に収容される。
【0182】
ダイヤフラム563a内には、雰囲気温度(本実施形態では空間S内の冷媒の温度)が所定値より高くなると膨張し所定値以下になると収縮するガスが充填されている。そのため、ダイヤフラム563aは、空間S内の冷媒の温度が所定値より高くなると図11Aに示すように伸長し、空間S内の冷媒の温度が所定値以下になると図11Bに示すように収縮する。
【0183】
図11Aに示すように、空間S内の冷媒の温度が所定値より高くなることで、ダイヤフラム563aが伸長すると、補助ばね562bを収縮させて誘導部材561bが移動する。この場合には、誘導部材561bは、上端部分がメッシュ部56nの上端よりも高い位置に保持される。この場合には、液相冷媒が貫通孔56pからのみ流路56lへ流入する。
【0184】
図11Bに示すように、空間S内の冷媒の温度が所定値以下になることで、ダイヤフラム563aが収縮すると、補助ばね562bの復元力により誘導部材561bが移動する。この場合には、誘導部材561bは、誘導部材561bの上端部分がメッシュ部56nの上端よりも低い位置に保持される。この場合には、貫通孔562cに加えて、誘導部材561bの上端部分よりも上側のメッシュ部56nからも流路56l内へ冷媒が流入する。
【0185】
すなわち、誘導部材561bが図11Bの位置にある場合には、図11Aの位置にある場合よりも多量の液相冷媒を流路56lへ流入させることができる。言い換えると、流路56lの開度は、誘導部材561bが図11Aに示す位置にある場合よりも誘導部材561bが図11Bに示す位置にある場合の方が大きくなる。
【0186】
このように、気液分離器563は、空間S内の冷媒の温度に応じて自動的に流路56lの開度が変更され、流路56l内に流れる液相冷媒の量を増減させることができる。そのため、気液分離器563は、気液分離器56,561のように、冷媒の温度圧力を検出するためのセンサ類やコントローラによる制御を必要としない。以降の説明では、誘導部材561bが図11Aに示す位置にある場合を「誘導部材561bが閉位置に位置する」と言い、誘導部材561bが図11Bに示す位置にある場合を「誘導部材561bが開位置に位置する」と言う。
【0187】
次に、温度調整システム1の運転モードにおける気液分離器563の作用について説明する。
【0188】
まず、バッテリ84の温度を高くする場合(加熱モード)について説明する。この場合には、気液分離器563に流入する冷媒は、温度が所定値以下になる。
【0189】
空間S内に流入し貯留される冷媒の温度が所定値以下になることで、図11Bに示すように、誘導部材561bが開位置に移動し、流路56lの開度が大きくなる。これにより、誘導部材561bが閉位置に位置する場合よりも多量の液相冷媒が流路56l内へ流入する。
【0190】
流路56lは、流路56kから流入する気相冷媒に、誘導部材561bの移動により流入する液相冷媒を混合させる。流路56lにより液相冷媒の混合率が増えた冷媒(気相冷媒及び液相冷媒)は、流路56jを介して電動コンプレッサ52へ供給される。なお、気液分離器563においても、気相冷媒に混合させる液相冷媒の量は、電動コンプレッサ52が受け取れる液相冷媒の許容量の範囲内に収められる。
【0191】
このように、液相冷媒の混合率が増えた冷媒(気相冷媒及び液相冷媒)を電動コンプレッサ52に供給することで、電動コンプレッサ52に供給される冷媒の密度が高くなり、電動コンプレッサ52から水冷コンデンサ53へ供給される冷媒の流量が増大する。これにより、水冷コンデンサ53にて放熱される熱量が増えるため、水冷コンデンサ53により冷却水流路83を流れる冷却水(バッテリ84と熱交換を行う冷却水)を加熱する性能が向上する。したがって、バッテリ84を、より加熱することができる。
【0192】
次に、バッテリ84の温度を低くする場合(第一冷却モード及び第二冷却モード)について説明する。この場合には、気液分離器563に流入する冷媒は、温度が所定値より高くなる。
【0193】
空間S内に流入し貯留される冷媒の温度が所定値より高くなることで、図11Aに示すように、誘導部材561bが閉位置に移動し、流路56lの開度が小さくなる。これにより、冷凍サイクル回路50の構成要素を潤滑するのに必要な量だけの液相冷媒が貫通孔56pからのみ流路56l内へ流入する。
【0194】
そのため、バッテリ84の温度を高くする場合と比べて、電動コンプレッサ52へ供給される冷媒の密度が小さくなり、電動コンプレッサ52から水冷コンデンサ53へ供給される冷媒の流量も減少する。
【0195】
電動コンプレッサ52から水冷コンデンサ53へ供給される冷媒の流量が減少すると、可変絞り機構54に流入する冷媒の流量も減少するが、その分、可変絞り機構54での冷媒の膨張率が大きくなる。これにより、冷却器55での冷媒の気化による冷却水からの吸熱量が増えるため、冷却器55による冷却水流路83を流れる冷却水(バッテリ84と熱交換を行う冷却水)を冷却する性能が向上する。したがって、バッテリ84を、より冷却することができる。
【0196】
次に、図12A及び図12Bを参照して、第四の変形例に係る気液分離器564について説明する。図12Aは、温度調整システム1がバッテリ84の温度を低くする場合(第一冷却モード及び第二冷却モード)における気液分離器564の概略構成図である。図12Bは、温度調整システム1がバッテリ84の温度を高くする場合(加熱モード)における気液分離器564の概略構成図である。図12A及び図12Bでは、気液分離器56,561,562,563と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0197】
気液分離器563は、圧力変化に応じて伸縮する伸縮機構564a及び補助ばね562bによって誘導部材562dを移動させる点で、気液分離器56,561,562,563と相違する。
【0198】
図12A及び図12Bに示すように、気液分離器564は、流路56l内を流れる液相冷媒の流量を増減させる開閉切替機構としての伸縮機構564a,補助ばね562b,及び誘導部材562dを有する。
【0199】
伸縮機構564aは、空間S内の冷媒の圧力に応じて伸縮する第一伸縮部564a1と、第一伸縮部564a1の伸縮に伴い伸縮する第二伸縮部564a2と、第一伸縮部564a1と第二伸縮部564a2とを繋ぐ連結部564a3と、を有する。
【0200】
第一伸縮部564a1は、内部に気体が充填される中空部が形成される部位である。第一伸縮部564a1は、タンク部56a内のうち外管部56iの外側の位置に設けられる。第一伸縮部564a1の一端には、空間S内の冷媒の圧力を受ける受圧部が形成される。第一伸縮部564a1の他端は、連結部564a3の一端と連結される。
【0201】
第二伸縮部564a2は、内部に気体が充填される中空部が形成される部位である。第二伸縮部564a2は、外管部56iの他端56i2側内に収容されるように設けられる。第二伸縮部564a2の一端には、誘導部材562dが連結される。また、第二伸縮部564a2の一端には、空間S内の冷媒の圧力を受ける受圧部が形成される。第二伸縮部564a2の受圧部は、第一伸縮部564a1の受圧部よりも受圧面積が小さくなるように形成される。第二伸縮部564a2の他端は、連結部564a3の他端と連結される。
【0202】
連結部564a3は、内部に気体が流通可能な中空部が形成される部位である。連結部564a3は、空間S内の冷媒の圧力が作用しないように、タンク部56aの外部に設けられる。連結部564a3の中空部は、連結部564a3の一端が第一伸縮部564a1の他端と連結されることで、第一伸縮部564a1の中空部と連通する。また、連結部564a3の中空部は、連結部564a3の他端が第二伸縮部564a2の他端と連結されることで、第二伸縮部564a2の中空部と連通する。
【0203】
すなわち、第一伸縮部564a1の中空部と、第二伸縮部564a2の中空部と、連結部564a3の中空部とは、連続した1つの中空部である。中空部には、気体が充填されている。
【0204】
図12Aに示すように、空間S内の冷媒の圧力が所定値より高くなると、第二伸縮部564a2の受圧部よりも受圧面積が大きい受圧部を有する第一伸縮部564a1が収縮する。第一伸縮部564a1が収縮することで、第一伸縮部564a1の中空部内の気体は、連結部564a3の中空部を介して、第二伸縮部564a2の中空部へと移動する。これにより、第二伸縮部564a2は伸長する。第二伸縮部564a2が伸長することで、補助ばね562bを収縮させて誘導部材562dが移動する。この場合には、誘導部材562dは、誘導部材562dの上端部分がメッシュ部56nの上端よりも高い位置に保持される。この場合には、液相冷媒が貫通孔562cからのみ流路56lへ流入する。
【0205】
図12Bに示すように、空間S内の冷媒の圧力が所定値以下になると、第一伸縮部564a1が伸長する。第二伸縮部564a2は、第一伸縮部564a1の伸長に伴って収縮する。第二伸縮部564a2が収縮すると、補助ばね562bの復元力により誘導部材562dが移動する。この場合には、誘導部材562dは、誘導部材562dの上端部分がメッシュ部56nの上端よりも高い位置に保持される。この場合には、貫通孔562cに加えて、誘導部材561bの上端部分よりも上側のメッシュ部56nからも流路56l内へ冷媒が流入する。
【0206】
すなわち、誘導部材562dが図12Bの位置にある場合には、図12Aの位置にある場合よりも多量の液相冷媒を流路56lへ流入させることができる。言い換えると、流路56lの開度は、誘導部材562dが図12Aに示す位置にある場合よりも誘導部材562dが図12Bに示す位置にある場合の方が大きくなる。
【0207】
このように、気液分離器564は、空間S内の冷媒の圧力に応じて自動的に流路56lの開度が変更され、流路56l内に流れる液相冷媒の量を増減させることができる。そのため、気液分離器564は、気液分離器56,561のように、冷媒の温度圧力を検出するためのセンサ類やコントローラによる制御を必要としない。以降の説明では、誘導部材562dが図12Aに示す位置にある場合を「誘導部材562dが閉位置に位置する」と言い、誘導部材562dが図12Bに示す位置にある場合を「誘導部材562dが開位置に位置する」と言う。
【0208】
次に、温度調整システム1の運転モードにおける気液分離器564の作用について説明する。
【0209】
まず、バッテリ84の温度を高くする場合(加熱モード)について説明する。この場合には、気液分離器564に流入する冷媒は、圧力が所定値以下になる。
【0210】
空間S内に流入し貯留される冷媒の圧力が所定値以下になることで、図12Bに示すように、誘導部材562dが開位置に移動し、流路56lの開度が大きくなる。これにより、誘導部材562dが閉位置に位置する場合よりも多量の液相冷媒が流路56l内へ流入する。
【0211】
流路56lは、流路56kから流入する気相冷媒に、誘導部材562dの移動により流入する液相冷媒を混合させる。流路56lにより液相冷媒の混合率が増えた冷媒(気相冷媒及び液相冷媒)は、流路56jを介して電動コンプレッサ52へ供給される。なお、気液分離器564においても、気相冷媒に混合させる液相冷媒の量は、電動コンプレッサ52が受け取れる液相冷媒の許容量の範囲内に収められる。
【0212】
このように、液相冷媒の混合率が増えた冷媒(気相冷媒及び液相冷媒)を電動コンプレッサ52に供給することで、電動コンプレッサ52に供給される冷媒の密度が高くなり、電動コンプレッサ52から水冷コンデンサ53へ供給される冷媒の流量が増大する。これにより水冷コンデンサ53にて放熱される熱量が増えるため、水冷コンデンサ53により冷却水流路83を流れる冷却水(バッテリ84と熱交換を行う冷却水)を加熱する性能が向上する。したがって、バッテリ84を、より加熱することができる。
【0213】
次に、バッテリ84の温度を低くする場合(第一冷却モード及び第二冷却モード)について説明する。この場合には、気液分離器564に流入する冷媒は、圧力が所定値より高くなる。
【0214】
空間S内に流入し貯留される冷媒の圧力が所定値より高くなることで、図12Aに示すように、誘導部材562dが閉位置に移動し、流路56lの開度が小さくなる。これにより、冷凍サイクル回路50の構成要素を潤滑するのに必要な量だけの液相冷媒が貫通孔562cを介して流路56l内へ流入する。
【0215】
そのため、バッテリ84の温度を高くする場合と比べて、電動コンプレッサ52へ供給される冷媒の密度が小さくなり、電動コンプレッサ52から水冷コンデンサ53へ供給される冷媒の流量も減少する。
【0216】
電動コンプレッサ52から水冷コンデンサ53へ供給される冷媒の流量が減少すると、可変絞り機構54に流入する冷媒の流量も減少するが、その分、可変絞り機構54での冷媒の膨張率が大きくなる。これにより、冷却器55での冷媒の気化による冷却水からの吸熱量が増えるため、冷却器55による冷却水流路83を流れる冷却水(バッテリ84と熱交換を行う冷却水)を冷却する性能が向上する。したがって、バッテリ84を、より冷却することができる。
【0217】
次に、図13A及び図13Bを参照して、第五の変形例に係る気液分離器565について説明する。図13Aは、温度調整システム1がバッテリ84の温度を低くする場合(第一冷却モード及び第二冷却モード)における気液分離器565の概略構成図である。図13Bは、温度調整システム1がバッテリ84の温度を高くする場合(加熱モード)における気液分離器565の概略構成図である。図13A及び図13Bでは、気液分離器56,561,562,563,564と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0218】
気液分離器565は、形状記憶ばね565a及び補助ばね562bによって誘導部材561bを移動させる点で、気液分離器56,561,562,563,564と相違する。
【0219】
図13A及び図13Bに示すように、気液分離器564は、流路56l内を流れる液相冷媒の流量を増減させる開閉切替機構としての形状記憶ばね565a,補助ばね562b,及び誘導部材561bを有する。
【0220】
形状記憶ばね565aの一端は、タンク部56aの底面のうち外管部56iの他端56i2が設けられる位置に固定される。形状記憶ばね565aの他端は、誘導部材561bの底面側と連結される。形状記憶ばね565aは、外管部56iの他端56i2の内周に収容される。
【0221】
形状記憶ばね565aは、補助ばね562bと直列に設けられる。形状記憶ばね565aは、誘導部材561bを挟んで補助ばね562bと対向する。形状記憶ばね565aは、空間S内の冷媒の温度が所定値より高くなると図13Aに示すように伸長し、空間S内の冷媒の温度が所定値以下になると図13Bに示すように収縮する。
【0222】
図13Aに示すように、空間S内の冷媒の温度が所定値より高くなることで形状記憶ばね565aが伸長すると、補助ばね562bを収縮させて誘導部材561bが移動する。この場合には、誘導部材561bは、上端部分がメッシュ部56nの上端よりも高い位置に保持される。この場合には、液相冷媒が貫通孔56pからのみ流路56lへ流入する。
【0223】
図13Bに示すように、空間S内の冷媒の温度が所定値以下になることで、形状記憶ばね565aが収縮すると、補助ばね562bの復元力により誘導部材561bが移動する。この場合には、誘導部材561bは、誘導部材561bの上端部分がメッシュ部56nの上端よりも低い位置に保持される。この場合には、貫通孔562cに加えて、誘導部材561bの上端部分よりも上側のメッシュ部56nからも流路56l内へ冷媒が流入する。
【0224】
すなわち、誘導部材561bが図13Bの位置にある場合には、図13Aの位置にある場合よりも多量の液相冷媒を流路56lへ流入させることができる。言い換えると、流路56lの開度は、誘導部材561bが図13Aに示す位置にある場合よりも誘導部材561bが図13Bに示す位置にある場合の方が大きくなる。
【0225】
このように、気液分離器565は、空間S内の冷媒の温度に応じて自動的に流路56lの開度が変更され、流路56l内に流れる液相冷媒の量を増減させることができる。そのため、気液分離器565は、気液分離器56,561のように、冷媒の温度圧力を検出するためのセンサ類やコントローラによる制御を必要としない。以降の説明では、誘導部材561bが図13Aに示す位置にある場合を「誘導部材561bが閉位置に位置する」と言い、誘導部材561bが図13Bに示す位置にある場合を「誘導部材561bが開位置に位置する」と言う。
【0226】
次に、温度調整システム1の運転モードにおける気液分離器565の作用について説明する。
【0227】
まず、図13Bを参照して、バッテリ84の温度を高くする場合(加熱モード)について説明する。この場合には、気液分離器565に流入する冷媒は、温度が所定値以下になる。
【0228】
空間S内に流入し貯留される冷媒の温度が所定値以下になることで、図13Bに示すように、誘導部材561bが開位置に移動し、流路56lの開度が大きくなる。これにより、誘導部材561bが閉位置に位置する場合よりも多量の液相冷媒が流路56l内へ流入する。
【0229】
流路56lは、流路56kから流入する気相冷媒に、誘導部材561bの移動により流入する液相冷媒を混合させる。流路56lにより液相冷媒の混合率が増えた冷媒(気相冷媒及び液相冷媒)は、流路56jを介して電動コンプレッサ52へ供給される。なお、気液分離器565においても、気相冷媒に混合させる液相冷媒の量は、電動コンプレッサ52が受け取れる液相冷媒の許容量の範囲内に収められる。
【0230】
このように、液相冷媒の混合率が増えた冷媒(気相冷媒及び液相冷媒)を電動コンプレッサ52に供給することで、電動コンプレッサ52に供給される冷媒の密度が高くなり、電動コンプレッサ52から水冷コンデンサ53へ供給される冷媒の流量が増大する。これにより水冷コンデンサ53にて放熱される熱量が増えるため、水冷コンデンサ53により冷却水流路83を流れる冷却水(バッテリ84と熱交換を行う冷却水)を加熱する性能が向上する。したがって、バッテリ84を、より加熱することができる。
【0231】
次に、バッテリ84の温度を低くする場合(第一冷却モード及び第二冷却モード)について説明する。この場合には、気液分離器565に流入する冷媒は、温度が所定値より高くなる。
【0232】
空間S内に流入し貯留される冷媒の温度が所定値より高くなることで、図13Aに示すように、誘導部材561bが閉位置に移動し、流路56lの開度が小さくなる。これにより、冷凍サイクル回路50の構成要素を潤滑するのに必要な量だけの液相冷媒が貫通孔56pからのみ流路56l内へ流入する。
【0233】
そのため、バッテリ84の温度を高くする場合と比べて、電動コンプレッサ52へ供給される冷媒の密度が小さくなり、電動コンプレッサ52から水冷コンデンサ53へ供給される冷媒の流量も減少する。
【0234】
電動コンプレッサ52から水冷コンデンサ53へ供給される冷媒の流量が減少すると、可変絞り機構54に流入する冷媒の流量も減少するが、その分、可変絞り機構54での冷媒の膨張率が大きくなる。これにより、冷却器55での冷媒の気化による冷却水からの吸熱量が増えるため、冷却器55による冷却水流路83を流れる冷却水(バッテリ84と熱交換を行う冷却水)を冷却する性能が向上する。したがって、バッテリ84を、より冷却することができる。
【0235】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0236】
バッテリ84の温度を調整する温度調整システム1は、冷媒を圧縮する電動コンプレッサ52と、電動コンプレッサ52にて圧縮された冷媒の熱を放出する水冷コンデンサ53と、水冷コンデンサ53にて熱が放出された冷媒を膨張させる可変絞り機構54と、可変絞り機構54にて膨張した冷媒を用いて熱交換を行う冷却器55と、冷却器55での熱交換に用いられた冷媒を気液分離させて気相冷媒を電動コンプレッサ52へ供給する気液分離器56と、を有する冷凍サイクル回路50と、冷却水の熱を外部へ放出する外部放熱器64を有する第一冷却水回路60と、水冷コンデンサ53にて放出される冷媒の熱によって、内部を流通する冷却水が加熱される第二冷却水回路70と、冷却器55内に流れる冷媒との熱交換によって、内部を流通する冷却水が冷却され、当該冷却水との熱交換によって、バッテリ84の温度を調整する第三冷却水回路80と、第一冷却水回路60と第二冷却水回路70とを接続または分離させる切替弁91と、第二冷却水回路70と第三冷却水回路80とを接続または分離させる切替弁92と、を備える。
【0237】
温度調整システム1において、バッテリ84を冷却する第一冷却モードでは、切替弁91は、第一冷却水回路60と第二冷却水回路70とを接続し、切替弁92は、第二冷却水回路70と第三冷却水回路80とを分離させる。
【0238】
これらの構成によれば、簡易な構成である切替弁91及び切替弁92を切り替えるだけで、バッテリ84と熱交換する第三冷却水回路80内を流通する冷却水の温度を下げて、バッテリ84の温度を下げることができる。
【0239】
また、温度調整システム1において、バッテリ84を加熱する加熱モードでは、切替弁91は、第一冷却水回路60と第二冷却水回路70とを分離させ、切替弁92は、第二冷却水回路70と第三冷却水回路80とを接続する。
【0240】
これらの構成によれば、簡素な構成である切替弁91及び切替弁92を切り替えるだけで、バッテリ84と熱交換する第三冷却水回路80内を流通する冷却水の温度を上げて、バッテリ84の温度を上げることができる。
【0241】
言い換えれば、簡素な構成でバッテリ84の温度を調整可能な温度調整システム1を提供することができる。
【0242】
また、温度調整システム1は、空調用冷媒を圧縮する電動コンプレッサ42と、電動コンプレッサ42にて圧縮された空調用冷媒の熱を放出する室外熱交換器44と、室外熱交換器44にて熱が放出された空調用冷媒を膨張させる可変絞り機構41aと、可変絞り機構41aにて膨張された空調用冷媒と第三冷却水回路80内を流通する冷却水との間で熱交換を行う熱交換器49と、を有し、車室内の空調に用いられるヒートポンプユニット4をさらに備える。
【0243】
温度調整システム1において、バッテリ84を冷却する第二冷却モードでは、切替弁91は、第一冷却水回路60と第二冷却水回路70とを接続し、切替弁92は、第二冷却水回路70と第三冷却水回路80とを分離させ、熱交換器49は、空調用冷媒との熱交換によって、第三冷却水回路80内を流通する冷却水を冷却する。
【0244】
これらの構成によれば、第三冷却水回路80内を流通する冷却水を、冷凍サイクル回路50との熱交換によって冷却するとともに、熱交換器49における空調用冷媒との熱交換によっても冷却する。これにより、バッテリ84と熱交換する第三冷却水回路80内を流通する冷却水の温度を第一冷却モードよりも下げて、第一冷却モードよりもバッテリ84の温度を下げることができる。
【0245】
また、温度調整システム1の第三冷却水回路80は、バッテリ84をバイパスするように冷却水を流通させるバイパス流路85と、バッテリ84と熱交換を行うように冷却水を流通させるか、もしくはバイパス流路85に冷却水を流通させるかを切り替える切替弁86と、を有する。温度調整システム1において、車室内の暖房を補助する補助暖房モードでは、切替弁91は、第一冷却水回路60と第二冷却水回路70とを分離させ、切替弁92は、第二冷却水回路70と第三冷却水回路80とを接続し、切替弁86は、バイパス流路85に冷却水を流通させ、熱交換器49は、第三冷却水回路80内を流通する冷却水との熱交換によって、空調用冷媒を加熱する。
【0246】
この構成によれば、空調用冷媒を冷凍サイクル回路50より生じる熱で加熱することで、暖房モードでは車室内の暖房を充分に行うことができない場面であっても車室内を充分に暖房することができる。また、全てのモードにおいて、電動コンプレッサ42の効率を向上させることができる。また、システム全体を簡略化することができる。
【0247】
また、温度調整システム1の気液分離器56は、電動コンプレッサ52に供給される気相冷媒に液相冷媒を混合させる流路56eと、流路56eの開度を調整して流路56e内を流れる液相冷媒の流量を増減させる可変絞り機構56gと、を有し、バッテリ84の温度を高くする場合には流路56eの開度を大きくし、バッテリ84の温度を低くする場合には流路56eの開度を小さくする。
【0248】
この構成によれば、気液分離器56は、バッテリ84の温度を高くする場合には流路56eの開度を大きくして電動コンプレッサ52へ供給する冷媒の流量を増やす。これにより、温度調整システム1では、水冷コンデンサ53による冷却水の加熱性能が向上し、バッテリ84をより加熱することができる。また、バッテリ84の温度を低くする場合には流路56eの開度を小さくして電動コンプレッサ52か供給する冷媒の流量を減らす。これにより、温度調整システム1では、冷却器55による冷却水の冷却性能が向上しバッテリ84をより冷却することができる。なお、第一から第五の変形例に係る気液分離器561,562,563,564,565によってもまた、同様の効果を奏する。
【0249】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0250】
1 温度調整システム
4 ヒートポンプユニット(空調用冷凍サイクル回路)
41a 可変絞り機構(第二膨張弁)
42 電動コンプレッサ(第二圧縮器)
44 室外熱交換器
49 熱交換器
50 冷凍サイクル回路
52 電動コンプレッサ(第一圧縮器)
53 水冷コンデンサ(放熱器)
54 可変絞り機構(第一膨張弁)
55 冷却器
56 気液分離器
56e 流路
56l 流路
56o 誘導部材(開閉切替機構)
561 気液分離器
561a 電磁弁(開閉切替機構)
561b 誘導部材(開閉切替機構)
562 気液分離器
562a ベローズ(開閉切替機構)
562b 補助ばね(開閉切替機構)
562d 誘導部材(開閉切替機構)
563 気液分離器
563a ダイヤフラム(開閉切替機構)
564 気液分離器
564a 伸縮機構(開閉切替機構)
565 気液分離器
565a 形状記憶ばね(開閉切替機構)
60 第一冷却水回路
64 外部放熱器
70 第二冷却水回路
80 第三冷却水回路
84 バッテリ(被温度調整器)
91 切替弁(第一バルブ)
92 切替弁(第二バルブ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B