(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2022062567
(43)【公開日】2022-04-20
(54)【発明の名称】弁装置、弁装置の設置構造、および流量調整ユニット
(51)【国際特許分類】
E02B 13/02 20060101AFI20220413BHJP
A01G 25/00 20060101ALI20220413BHJP
【FI】
E02B13/02 C
A01G25/00 501D
A01G25/00 501E
A01G25/00 501F
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2020170670
(22)【出願日】2020-10-08
(71)【出願人】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079968
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 光司
(72)【発明者】
【氏名】小林 剛士
(57)【要約】
【課題】 使い勝手のよい弁装置を提供する。
【解決手段】 弁装置4は、用水路1に設置される流量調整ユニット5と、その流量調整ユニット5に取り付けられて圃場2側を向く弁ユニット9とを備える。流量調整ユニット5は、通孔6bを内部に有する中空筒部6aが表側に突出形成された基板部6と、基板部6の裏側に重合配置されるとともに通孔6bに塞ぎかかるように基板部6に沿って移動して通孔6bから裏側に臨む開口6cの大きさを変化させる閉塞板7とを、備える。弁ユニット9は、流路空間9aを内部に有する筒状に形成されており、また、その弁ユニット9は、流路空間9aを閉鎖する閉位置と開放する開位置とに変位する弁体10と、中空筒部6aに連結される連結部11とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
用水路と圃場との間の連絡水路を形成するとともに前記連絡水路内の流路を開閉する、弁装置であって、
前記用水路に設置される流量調整ユニットと、その流量調整ユニットに取り付けられて前記圃場側を向く弁ユニットとを備え、
前記流量調整ユニットは、前記流路の一部となる通孔を内部に有する中空筒部が表側に突出形成された基板部と、前記基板部の裏側に重合配置されるとともに前記通孔に塞ぎかかるように前記基板部に沿って移動して前記通孔から裏側に臨む開口の大きさを変化させる閉塞板とを、備え、
前記弁ユニットは、前記流路の一部となる流路空間を内部に有する筒状に形成されており、また、前記弁ユニットは、前記流路空間を閉鎖する閉位置と開放する開位置とに変位する弁体と、前記中空筒部に連結される連結部とを備える、弁装置。
【請求項2】
前記閉塞板は、前記通孔から裏側に臨む開口を閉じた位置に移動可能であり、
前記弁ユニットは、少なくとも前記弁体を前記中空筒部から取外し可能である、請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
前記基板部の両側部に、前記用水路の内面に形成された溝に嵌まる延長板部材を取付可能な取付部が設けられている、請求項1または2に記載の弁装置。
【請求項4】
前記取付部は、前記基板部の上下方向の全長に渡って延び側部外方に開口して前記延長板部材を差込み可能な溝状の凹部を有する、請求項3に記載の弁装置。
【請求項5】
前記凹部の対向する内面のうち少なくとも一方の面には、その凹部の延びる方向に間隔を空けて突出して先端が前記延長板部材に当接可能な複数の凸部が設けられている、請求項4に記載の弁装置。
【請求項6】
前記閉塞板は、前記基板部に設けられた被係止部に係合して、その閉塞板の位置が維持される係止部を有し、
前記被係止部および/または前記係止部は、前記閉塞板の移動方向となる上下方向に並ぶように複数設けられて、前記閉塞板が上下方向の複数の位置に維持されることで、前記通孔が、前記閉塞板で上から下に向かって段階的に閉塞され、
その閉塞の段階数は、前記閉塞板の下端の高さ位置が前記基板部の裏面における前記通孔の中心よりも下側であって最下端よりも上側となる段階数が、前記閉塞板の下端の高さ位置が前記基板部の裏面における前記通孔の中心よりも上側であって最上端よりも下側となる段階数と比して、多くなっている、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の弁装置。
【請求項7】
前記基板部の上端側と前記閉塞板の上端側とに、それら基板部と閉塞板とを紐で接続するための紐掛け部が設けられている、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の弁装置。
【請求項8】
用水路と圃場との間の連絡水路を形成するとともに前記連絡水路内の流路を開閉する弁装置の設置構造であって、
前記弁装置は、流量調整ユニットと弁ユニットとを備え、
前記流量調整ユニットは、前記流路の一部となる通孔を内部に有する中空筒部が表側に突出形成された基板部と、前記基板部の裏側に重合配置されるとともに前記通孔に塞ぎかかるように前記基板部に沿って移動して前記通孔から裏側に臨む開口の大きさを変化させる閉塞板とを、備え、
前記流量調整ユニットは、前記基板部の両側部に設けられた取付部に、延長板部材が取り付けられて、その延長板部材が前記用水路の内面に形成された溝に嵌まることで、前記用水路に設置されており、
前記弁ユニットは、前記流路の一部となる流路空間を内部に有する筒状に形成されており、また、前記弁ユニットは、前記流路空間を閉鎖する閉位置と開放する開位置とに変位する弁体を備えて、前記中空筒部に連結されている、弁装置の設置構造。
【請求項9】
両前記延長板部材の前記取付部からの突出長が、互いに異なっている、請求項8に記載の弁装置の設置構造。
【請求項10】
用水路に設置され、圃場側を向く弁ユニットとともに前記用水路と前記圃場との間の連絡水路を形成する、流量調整ユニットであって、
前記連絡水路内の流路の一部となる通孔を内部に有する中空筒部であって、前記流路の一部となる流路空間を内部に有する筒状に形成され、その流路空間を閉鎖する閉位置と開放する開位置とに変位する弁体を備えた、前記弁ユニットが連結される、中空筒部が、表側に突出形成された基板部と、
前記基板部の裏側に重合配置されるとともに前記通孔に塞ぎかかるように前記基板部に沿って移動して前記通孔から裏側に臨む開口の大きさを変化させる閉塞板とを、
備える、流量調整ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、用水路と圃場との間の連絡水路を形成する弁装置、その弁装置の設置構造、および流量調整ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、水田の取水を行うための水田用水閘があった(例えば、特許文献1参照)。
図35に示すように、この水田用水閘30は、円筒状の通水管31と、通水管31の一方の開口31aの外側に位置してその開口31aを閉塞する開閉蓋32と、その開閉蓋32を回動自在に支持する支持部材33とを備えていた。そこで、この水田用水閘30は、開閉蓋32の開度を調整することで、水の流量を調整することができた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来の水田用水閘30においては、開閉蓋32で通水管31の開口31aを閉塞して取水を停止したり、開閉蓋32の開度を調整して流量を調整したりすることはできたが、開閉蓋32の開度を所定の開度に保ったまま、取水を停止したり、取水を再開したりすることはできず、使い勝手が悪かった。
【0005】
この発明は、上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、使い勝手のよい弁装置、弁装置の設置構造、および流量調整ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る弁装置、弁装置の設置構造、および流量調整ユニットは、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係る弁装置は、用水路と圃場との間の連絡水路を形成するとともに前記連絡水路内の流路を開閉する、弁装置であって、前記用水路に設置される流量調整ユニットと、その流量調整ユニットに取り付けられて前記圃場側を向く弁ユニットとを備える。ここで、前記流量調整ユニットは、前記流路の一部となる通孔を内部に有する中空筒部が表側に突出形成された基板部と、前記基板部の裏側に重合配置されるとともに前記通孔に塞ぎかかるように前記基板部に沿って移動して前記通孔から裏側に臨む開口の大きさを変化させる閉塞板とを、備える。そして、前記弁ユニットは、前記流路の一部となる流路空間を内部に有する筒状に形成されており、また、前記弁ユニットは、前記流路空間を閉鎖する閉位置と開放する開位置とに変位する弁体と、前記中空筒部に連結される連結部とを備える。
【0007】
この弁装置によると、弁装置は、用水路に設置される流量調整ユニットと、その流量調整ユニットに取り付けられて圃場側を向く弁ユニットとを備えている。そこで、流量調整ユニットにおいて、閉塞板の移動により、中空筒部の通孔から裏側に臨む開口の大きさを所定の大きさに調整し、かつ、弁ユニットにおいて、弁体を、弁ユニットの内部の流路空間を開放する開位置とすることで、流量調整ユニットにおける開口の大きさで定まる所定の流量で、用水路から圃場へ取水することができる。そして、圃場への取水を停止する場合は、閉塞板の位置はそのままで、弁ユニットにおける弁体を、流路空間を閉鎖する閉位置とすることができる。さらに、その後、取水を再開する場合は、閉塞板の位置を保ったまま、弁体を開位置とすることができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係る弁装置は、請求項1に記載の弁装置において、前記閉塞板は、前記通孔から裏側に臨む開口を閉じた位置に移動可能となっている。そして、前記弁ユニットは、少なくとも前記弁体を前記中空筒部から取外し可能となっている。これにより、閉塞板で開口を閉じて、弁ユニットにおける少なくとも弁体を取り外すことで、その弁体の修理、点検、さらには交換等をすることができる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明に係る弁装置は、請求項1または2に記載の弁装置において、前記基板部の両側部に、前記用水路の内面に形成された溝に嵌まる延長板部材を取付可能な取付部が設けられている。これにより、流量調整ユニットを用水路に設置するにあたって、適宜大きさ、寸法等の延長板部材を用いることで、用水路の幅に簡単に合わせて設置することができる。
【0010】
また、請求項4に記載の発明に係る弁装置は、請求項3に記載の弁装置において、前記取付部は、前記基板部の上下方向の全長に渡って延び側部外方に開口して前記延長板部材を差込み可能な溝状の凹部を有する。これにより、延長板部材を基板部の凹部に差し込むことで、その延長板部材を基板部に簡単に取り付けることができる。さらに、凹部が、基板部の上下方向の全長に渡って延びることから、用水による水圧を上下方向の全体で受け止めることができる。
【0011】
また、請求項5に記載の発明に係る弁装置は、請求項4に記載の弁装置において、前記凹部の対向する内面のうち少なくとも一方の面には、その凹部の延びる方向に間隔を空けて突出して先端が前記延長板部材に当接可能な複数の凸部が設けられている。凹部に複数の凸部を設けることで、延長板部材が反ったような場合であっても、複数の凸部の幾つかを延長板部材に当てて、延長板部材を基板部に挟持状態で取り付けることが可能となる。
【0012】
また、請求項6に記載の発明に係る弁装置は、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の弁装置において、前記閉塞板は、前記基板部に設けられた被係止部に係合して、その閉塞板の位置が維持される係止部を有する。ここで、前記被係止部および/または前記係止部は、前記閉塞板の移動方向となる上下方向に並ぶように複数設けられて、前記閉塞板が上下方向の複数の位置に維持されることで、前記通孔が、前記閉塞板で上から下に向かって段階的に閉塞される。そして、その閉塞の段階数は、前記閉塞板の下端の高さ位置が前記基板部の裏面における前記通孔の中心よりも下側であって最下端よりも上側となる段階数が、前記閉塞板の下端の高さ位置が前記基板部の裏面における前記通孔の中心よりも上側であって最上端よりも下側となる段階数と比して、多くなっている。これにより、閉塞板による開口の開度の小さい側で、流量を微調整することが可能となる。
【0013】
また、請求項7に記載の発明に係る弁装置は、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の弁装置において、前記基板部の上端側と前記閉塞板の上端側とに、それら基板部と閉塞板とを紐で接続するための紐掛け部が設けられている。これにより、両紐掛け部に紐を渡すようにして、その紐で閉塞板を吊り下げることで、その閉塞板による通孔の閉塞の度合いを無段階に調整することができる。
【0014】
また、請求項8に記載の発明に係る弁装置の設置構造は、用水路と圃場との間の連絡水路を形成するとともに前記連絡水路内の流路を開閉する弁装置の設置構造であって、前記弁装置は、流量調整ユニットと弁ユニットとを備える。ここで、前記流量調整ユニットは、前記流路の一部となる通孔を内部に有する中空筒部が表側に突出形成された基板部と、前記基板部の裏側に重合配置されるとともに前記通孔に塞ぎかかるように前記基板部に沿って移動して前記通孔から裏側に臨む開口の大きさを変化させる閉塞板とを、備える。そこで、前記流量調整ユニットは、前記基板部の両側部に設けられた取付部に、延長板部材が取り付けられて、その延長板部材が前記用水路の内面に形成された溝に嵌まることで、前記用水路に設置されている。そして、前記弁ユニットは、前記流路の一部となる流路空間を内部に有する筒状に形成されており、また、前記弁ユニットは、前記流路空間を閉鎖する閉位置と開放する開位置とに変位する弁体を備えて、前記中空筒部に連結されている。
【0015】
この弁装置の設置構造によると、流量調整ユニットが、延長板部材を介して用水路に設置されている。そして、弁ユニットが、流量調整ユニットの中空筒部に連結されている。そこで、流量調整ユニットにおいて、閉塞板の移動により、中空筒部の通孔から裏側に臨む開口の大きさを所定の大きさに調整し、かつ、弁ユニットにおいて、弁体を、弁ユニットの内部の流路空間を開放する開位置とすることで、流量調整ユニットにおける開口の大きさで定まる所定の流量で、用水路から圃場へ取水することができる。そして、圃場への取水を停止する場合は、閉塞板の位置はそのままで、弁ユニットにおける弁体を、流路空間を閉鎖する閉位置とすることができる。さらに、その後、取水を再開する場合は、閉塞板の位置を保ったまま、弁体を開位置とすることができる。また、流量調整ユニットを用水路に設置するにあたって、適宜大きさ、寸法等の延長板部材を用いることで、用水路の幅に簡単に合わせて設置することができる。
【0016】
また、請求項9に記載の発明に係る弁装置の設置構造は、請求項8に記載の弁装置の設置構造において、両前記延長板部材の前記取付部からの突出長が、互いに異なっている。これにより、用水路に対し偏心した位置に、中空筒部、ひいては弁ユニットを配置することができる。
【0017】
また、請求項10に記載の発明に係る流量調整ユニットは、用水路に設置され、圃場側を向く弁ユニットとともに前記用水路と前記圃場との間の連絡水路を形成する、流量調整ユニットである。この流量調整ユニットは、基板部と閉塞板とを備える。前記基板部には、前記連絡水路内の流路の一部となる通孔を内部に有する中空筒部であって、前記流路の一部となる流路空間を内部に有する筒状に形成され、その流路空間を閉鎖する閉位置と開放する開位置とに変位する弁体を備えた、前記弁ユニットが連結される、中空筒部が、表側に突出形成されている。そして、前記閉塞板は、前記基板部の裏側に重合配置されるとともに前記通孔に塞ぎかかるように前記基板部に沿って移動して前記通孔から裏側に臨む開口の大きさを変化させる閉塞板である。
【0018】
これにより、この流量調整ユニットにおいて、閉塞板の移動により、中空筒部の通孔から裏側に臨む開口の大きさを所定の大きさに調整し、かつ、弁ユニットにおいて、弁体を、弁ユニットの内部の流路空間を開放する開位置とすることで、流量調整ユニットにおける開口の大きさで定まる所定の流量で、用水路から圃場へ取水することができる。そして、圃場への取水を停止する場合は、閉塞板の位置はそのままで、弁ユニットにおける弁体を、流路空間を閉鎖する閉位置とすることができる。さらに、その後、取水を再開する場合は、閉塞板の位置を保ったまま、弁体を開位置とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明に係る弁装置、弁装置の設置構造、および流量調整ユニットによれば、閉塞板を移動することで、流量を調整することができるとともに、閉塞板の位置を保ったまま、弁体を開位置としたり閉位置としたりして、連絡水路の流路を開閉することができることから、取水を再開したときに前回の流量を維持することができ、使い勝手がよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この発明の一実施の形態の、弁装置の設置構造であって弁ユニットにおける弁体が開位置にある斜視図である。
【
図3】同じく、弁装置の設置構造であって弁ユニットにおける弁体が閉位置にある斜視図である。
【
図5】同じく、流量調整ユニットにおける閉塞板によって開口が閉じた状態を示す、
図4相当図である。
【
図7】同じく、弁装置から弁ユニットの本体を外した状態を示す斜視図である。
【
図8】同じく、弁装置から弁ユニット全体を外した状態を示す斜視図である。
【
図9】同じく、流量調整ユニットおよび延長板部材の表側からの斜視図である。
【
図10】同じく、流量調整ユニットおよび延長板部材の裏側からの斜視図である。
【
図11】同じく、閉塞板によって開口が閉じた状態を示す、
図10相当図である。
【
図12】同じく、閉塞板によって通孔が段階的に閉塞される、それぞれの裏側からの図であって、(a)は、全開、(b)は、約4/6開、(c)は、約3/6開、(d)は、約2/6開、(e)は、約1/6開、(f)は、全閉状態を示す。
【
図19】同じく、両延長板部材の取付部からの突出長が、互いに異なる場合の、
図6相当図である。
【
図20】同じく、弁ユニットの上側からの斜視図である。
【
図21】同じく、弁ユニットの下側からの斜視図である。
【
図25】同じく、本体と連結体とを分離した弁ユニットの縦断面図である。
【
図31】同じく、操作ハンドルを示し、(a)は、斜視図、(b)は、断面図である。
【
図32】同じく、弁体が開位置にあるときの弁ユニットの縦断面図である。
【
図33】同じく、作動指示体における出没体が前進位置にあって操作ハンドルを係止して、弁体が開位置にある、
図27相当図である。
【
図34】同じく、作動指示体における出没体が後退位置にあって操作ハンドルへの出没体の係止が外れて、弁体が閉位置にある、
図27相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明に係る弁装置、弁装置の設置構造、および流量調整ユニットを実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1~
図34は、本発明の一実施の形態を示す。図中符号1は、例えば現場打設コンクリートとかコンクリートブロックなどからなる用水路を示す。2は、水田等の圃場を示す。3は、前記用水路1と前記圃場2との間の連絡水路を示す。4は、前記連絡水路3を形成するとともにその連絡水路3内の流路3aを開閉する弁装置を示す。4zは、弁装置4の設置構造を示す。
【0023】
弁装置4は、用水路1(詳しくは、用水路1の内側)に設置される流量調整ユニット5と、その流量調整ユニット5に取り付けられて圃場2側を向く弁ユニット9とを備える。
【0024】
流量調整ユニット5は、用水路1に設置され、圃場2側を向く弁ユニット9とともに用水路1と圃場2との間の連絡水路3を形成する。この流量調整ユニット5は、前記流路3a(詳しくは、前記連絡水路3内の流路3a)の一部となる通孔6bを内部に有する中空筒部6aが表側(つまり、用水路1とは反対側)に突出形成された基板部6と、その基板部6の裏側(つまり、用水路1側)に重合配置されるとともに通孔6bに塞ぎかかるように基板部6に沿って移動して通孔6bから裏側に臨む開口6cの大きさを変化させる閉塞板7とを、備える。
【0025】
一方、弁ユニット9は、前記流路3aの一部となる流路空間9aを内部に有する筒状に形成されており、また、前記弁ユニット9は、その流路空間9aを閉鎖する閉位置と開放する開位置とに変位する弁体10と、前記中空筒部6aに連結される連結部11とを備える。
【0026】
詳細には、流量調整ユニット5における閉塞板7は、前記通孔6bから裏側に臨む開口6cを閉じた位置に移動可能であり、弁ユニット9は、少なくとも前記弁体10(図示実施の形態においては、後述する本体12)を流量調整ユニット5の中空筒部6aから取外し可能となっている。
【0027】
また、流量調整ユニット5においては、閉塞板7は、基板部6に設けられた被係止部6dに係合して、その閉塞板7の位置が維持される係止部7aを有する。そして、被係止部6dおよび/または係止部7a(図示実施の形態においては、被係止部6d)は、閉塞板7の移動方向となる上下方向に並ぶように複数設けられて、閉塞板7が上下方向の複数の位置に維持されることで、前記通孔6bが、閉塞板7で上から下に向かって段階的に閉塞される。ここにおいて、その閉塞の段階数は、閉塞板7の下端の高さ位置が基板部6の裏面における前記通孔6bの中心よりも下側であって最下端よりも上側となる段階数が、閉塞板7の下端の高さ位置が基板部6の裏面における前記通孔6bの中心よりも上側であって最上端よりも下側となる段階数と比して、多くなっている。詳細には、その閉塞の段階数は、閉塞板7の下端の高さ位置が基板部6の裏面における前記通孔6bの中心よりも下側であって最下端よりも上側となる段階数が、2段階以上(図示実施の形態においては2段階)であり、閉塞板7の下端の高さ位置が基板部6の裏面における前記通孔6bの中心よりも上側であって最上端よりも下側となる段階数が、1段階となっている。
図12は、それぞれの段階を示し、(a)は、全開、(b)は、約4/6開、(c)は、約3/6開、(d)は、約2/6開、(e)は、約1/6開、(f)は、全閉の状態となっている。
【0028】
また、流量調整ユニット5は、基板部6の両側部に、用水路1の内面に形成された溝1aに嵌まる延長板部材8を取付可能な取付部6eが設けられている。この取付部6eは、基板部6の上下方向の全長に渡って延び側部外方に開口して前記延長板部材8を差込み可能な溝状の凹部6fを有している。なお、用水路1における溝1aは、用水路1の両側壁1b、1bに形成されるが、用水路1の両側壁1b、1bに加えて用水路1の底壁1cに形成されて、U字状に連続する一条の溝からなる場合もある。この場合は、延長板部材8の側端に加えて、延長板部材8の下端および基板部6の下端が、溝1aに嵌まる。
【0029】
弁装置4の設置構造4zにおいては、流量調整ユニット5は、基板部6の両側部に設けられた取付部6eに、延長板部材8が取り付けられて、その延長板部材8が用水路1の内面に形成された溝1aに嵌まることで、用水路1に設置されている。つまり、流量調整ユニット5は、延長板部材8を介して用水路1に設置されている。そして、弁ユニット9(詳しくは、前記連結部11)は、流量調整ユニット5における中空筒部6aに連結されている。
【0030】
具体的には、流量調整ユニット5においては、基板部6は、縦長の方形形状をした板状の基板部本体6gと、その基板部本体6gの両側部においてその裏面側に間隔をあけて対向位置する対向板部6hと、その対向板部6hをその幅の中間部分で基板部本体6gと繋ぐ間隔保持部6iとを、備える。そこで、基板部本体6gの下部側に、前記中空筒部6aが設けられる。
【0031】
そして、間隔保持部6iと、基板部本体6gおよび対向板部6hにおける間隔保持部6iを境にして外側を向く部分とで、前記取付部6eが形成され、その取付部6eにおける基板部本体6gと対向板部6hとの間が、前記凹部6fとなる。そして、凹部6fの対向する内面のうち少なくとも一方の面(図示実施の形態においては、対向板部6h側の面)には、その凹部6fの延びる方向(つまり、上下方向)に間隔を空けて突出して先端が前記延長板部材8に当接可能な複数の凸部6j、6jが設けられている。また、取付部6eには、凹部6fに延長板部材8を差し込んだ状態でその延長板部材8を取付部6eにビス6xを用いてビス固定するためのビス下孔6kが形成されている。こうして、ビス固定することで、延長板部材8を取付部6e(ひいては、基板部6)にしっかりと固定することができる。また、このビス下孔6kは、凹部6fの表面側と裏面側(つまり、基板部本体6gと対向板部6h)との両方に設けられ、いずれも薄張りで塞がれている。このため、延長板部材8を用いることなく、基板部6の取付部6eを用水路1の溝1aに差し入れた場合に、水がビス下孔6kを通過するのを防ぐことができる。また、ビス下孔6kは、凹部6fの表面側と裏面側とで軸心が一致している。このため、片方のビス下孔6kからビスを手締めした際に、延長板部材8を貫通して反対側に到達したときに、その反対側にもビス下孔6kがあることから、小さい力で締め込むことが可能となる。
【0032】
また、対向板部6hにおける間隔保持部6iを境にして内側を向く部分(以下、案内溝形成部6mと称す)と、基板部本体6gとの間は、閉塞板7の側部が差し入れられてその閉塞板7の移動を案内する案内溝6nとなる。そして、案内溝形成部6mに、前述の被係止部6dが、閉塞板7の移動方向となる上下方向に並ぶように複数設けられる。詳細には、案内溝形成部6mの端面は、その上部側において、凹凸状に形成されている。そこで、その凹凸のうちの凸部分が、前記被係止部6dとなる。そして、図示実施の形態においては、案内溝形成部6mの上端部分もまた、前記被係止部6dとなっている。また、案内溝形成部6mには、案内溝6n側に膨出するようにして、前記開口6cが閉じるように下方に向かう閉塞板7を基板部本体6gの裏面に向けて押し進める案内面6pが形成されている。そこで、開口6cが閉じたとき、この案内面6pにより、閉塞板7を基板部本体6g(基板部6)の裏面に密着させて、通孔6b側への水漏れを低減あるいは防止することができる。
【0033】
また、基板部本体6gの裏面には、通孔6bよりも下方の位置に、突起6qが設けられ、この突起6qに、閉塞板7の下端が当接することで、それ以上の閉塞板7の下方への移動が阻止される。そして、閉塞板7の下端が突起6qに当接したときには、前記通孔6bの全体が閉塞される(つまり、前記開口6cが閉じる)。
【0034】
また、基板部6の上端側と閉塞板7の上端側とに、それら基板部6と閉塞板7とを紐(図示せず)で接続するための紐掛け部6r、7bが設けられる。詳細には、基板部6側の紐掛け部6rは、基板部6(詳しくは、基板部本体6g)に設けられた一対の切欠き6s、6sに挟まれた部分からなり、紐が両切欠き6s、6sに通されて紐掛け部6rに掛けられる。
【0035】
閉塞板7は、方形形状をした板状の閉塞板本体7cと、前述の係止部7aおよび紐掛け部7bと、この閉塞板7を基板部6に沿って移動(詳しくは、上下方向に移動)させるための指掛け部7dとを備える。係止部7aは、閉塞板本体7cの上端部分の両側部において、その閉塞板本体7cの板面から突出して鉤状に下方に折れ曲がって形成され、その係止部7aが、基板部6の被係止部6dに掛けられるようにして係合する。そして、閉塞板7を基板部6に沿って移動(詳しくは、上下動)させる際は、係止部7aを被係止部6dから外して案内溝6n内に押し入れるようにする。紐掛け部7bは、閉塞板本体7cの上端部分において、上方に半リング状に突出して形成される。指掛け部7dは、閉塞板本体7cの上寄りの位置において、閉塞板本体7cから略台形状に突出して形成される。
【0036】
弁ユニット9は、前記弁体10を有する本体12と、前記連結部11とを備える。詳細には、連結部11は、本体12と分離可能に接続されて前記中空筒部6aに連結される連結体11aからなる。
【0037】
また、圃場2には、その圃場2内の水位が所定水位になったことを検知する水位計ユニット(図示を省略)が、設置される。そして、水位計ユニットと弁ユニット9との間に、水位計ユニットによる所定水位の検知を弁ユニット9に伝達して、流路空間9aを開放する開位置(
図2、
図32、
図33参照)から閉鎖する閉位置(
図4、
図5、
図24、
図34参照)への弁体10の移動を許可する伝達体13が設けられる。そこで、弁ユニット9(詳しくは、本体12)は、伝達体13を接続可能な接続部14を有する。
【0038】
弁ユニット9においては、前記本体12は、内部に前記弁体10が配置される筒状の弁体ケース15を備える。そして、前述したように、連結部11は、本体12と分離可能に接続される連結体11aからなるが、この連結体11aが、弁体ケース15と互いの内部が連通するように筒状に形成され、その連結体11aと弁体ケース15(ひいては、本体12)とが、分離可能に接続される。
【0039】
本体12にあっては、前記弁体ケース15は、流路空間9aの下流寄りの部分が膨出して(詳しくは、概略方形状に膨出して)形成されており、その膨出部15aの部分で分割された、第1弁体ケース151と第2弁体ケース152とからなって、それら第1および第2弁体ケース151、152が、ビス16により一体化されている。そして、第2弁体ケース152は、膨出部15aに続く上側部分が膨出して(詳しくは、概略方形状に膨出して)形成された、上側膨出部15bとなっている。ここで、第1弁体ケース151は、流路空間9aの下流側に位置し、第2弁体ケース152は、流路空間9aの上流側に位置する。そこで、この弁体ケース15における第2弁体ケース152側に、前記連結体11aが組み付けられる。そして、弁体ケース15(詳しくは、第1弁体ケース151)の内側に、弁体10(詳しくは、後述する弁本体10a)が当接する弁座15cが設けられる。
【0040】
また、弁体ケース15は、弁体10を軸支するための軸部17を支持する軸受け部15dを有する。この軸受け部15dは、弁体ケース15の内外を貫通する孔からなり、弁体ケース15の、前記流路空間9aを挟む両側部(詳しくは、第1弁体ケース151の、流路空間9aを挟む両側部の上部部分)に設けられる。
【0041】
弁体10は、弁本体10aと、軸部構成部10bとを備え、それら弁本体10aと軸部構成部10bとが繋ぎ部10cによって繋がっている。弁本体10aは、円板状に形成される。そして、弁本体10aの周縁側が斜めに折れ曲がって形成され、その折れ曲がった部分が、弁座15cに当接することで、前記流路空間9a(ひいては、前記流路3a)を閉鎖する(
図24参照)。
【0042】
軸部構成部10bは、弁体ケース15(詳しくは、第1弁体ケース151)の内側において、各端が、軸受け部15dと対向位置する。そして、軸部構成部10bの各端には、孔10dがあけられている。そこで、弁体10は、前記閉位置においては、用水が圃場2へと流出する流出口15eに一部が掛かるようにして膨出部15aに配置され、前記開位置においては、膨出部15aから上側膨出部15bに渡る上部部分に収容される。また、軸部構成部10bには、中央位置に棒状の芯材10eが設けられる。そこで、この芯材10eの外周には、付勢部材となるトーションスプリング18が、装着される。このトーションスプリング18は、一端が、弁体10の裏面(詳しくは、弁本体10aの裏面に設けられたスプリング受け10f)に支えられ、他端が、弁体ケース15(詳しくは、第1弁体ケース151)の天面に支えられて、弁体10を、前記開位置から前記閉位置に向かう閉方向に付勢する。
【0043】
また、本体12は、操作ハンドル19を有する。この操作ハンドル19は、円錐台形状の基部19aと、その裏面から突出して前記軸部17の一部となる第1軸部分19bと、基部19aの側面から延設されたハンドル部19cとを備える。
図26に示すように、この操作ハンドル19は、第1軸部分19bが、弁体ケース15の一方の軸受け部15dに挿入されて、弁体10の軸部構成部10bの一端に取付け固定され、こうして、操作ハンドル19は、軸部構成部10bの一端(ひいては、弁体10)に連結される。軸部構成部10bの他端においては、前記軸部17の一部となる第2軸部分20aを有する軸部材20が、弁体ケース15の他方の軸受け部15dに挿入されて、軸部構成部10bの他端に取付け固定される。こうして、弁体10と操作ハンドル19(図示実施の形態においては、加えて、軸部材20)とは、一体化されて、操作ハンドル19は、弁体10の回動移動にあわせて(詳しくは、弁体10と一体となって)回動し、弁体10が閉位置にあるとき、ハンドル部19cが下方を向く閉弁姿勢となり、弁体10が開位置にあるとき、ハンドル部19cが水平方向を向く開弁姿勢となる。
【0044】
詳細には、操作ハンドル19における、基部19aおよび第1軸部分19bには、基部19a側から第1大径孔19dがあけられ、第1軸部分19b側から第2大径孔19eがあけられ、さらに、内部には、第1大径孔19dと第2大径孔19eとを連通するように小径孔19fがあけられている。そこで、ビス21が、第1大径孔19dと小径孔19fとを通り、第2大径孔19eに挿入された軸部構成部10bの一端に設けられた孔10dにねじ込まれることで、第1軸部分19b(操作ハンドル19)は、軸部構成部10bの一端に取付け固定されて、操作ハンドル19は、弁体10に固定される。そして、軸部材20には、おもて面側から第1大径孔20bがあけられ、うら面側から第2大径孔20cがあけられ、さらに、内部には、第1大径孔20bと第2大径孔20cとを連通するように小径孔20dがあけられている。そこで、ビス22が、第1大径孔20bと小径孔20dとを通り、第2大径孔20cに挿入された軸部構成部10bの他端に設けられた孔10dにねじ込まれることで、第2軸部分20a(軸部材20)は、軸部構成部10bの他端に取付け固定される。
【0045】
また、操作ハンドル19は、ハンドル部19cの延設方向が、第1軸部分19bの突出方向と直交する方向となっており、そのハンドル部19cの先端部分、つまりは操作ハンドル19の先端部分は、第1軸部分19bの突出方向に位置ずれして偏平状に形成されている。そして、その先端部分には、被係止孔19gがあけられている。
【0046】
接続部14は、弁体ケース15(本体12)の、流路空間9aを挟む側部に設けられる。詳細には、接続部14は、第2弁体ケース152の上側膨出部15bの、流路空間9aを挟む側部において、軸受け部15d(ひいては、操作ハンドル19の基部19a)と同じ高さ位置に突出して形成され、その接続部14には、孔14aがあけられている。図示実施の形態においては、この接続部14に、伝達体13が、接続補助部材23を介して接続される。つまり、接続部14に、接続補助部材23が取り付けられ、その接続補助部材23に、伝達体13が連結(詳しくは、着脱可能に連結)される。詳細には、接続補助部材23には、取付孔23aがあけられており、ビス24が、その取付孔23aを通り、接続部14に設けられた孔14aにねじ込まれることで、接続補助部材23は、接続部14に取り付けられる。
【0047】
また、接続補助部材23は、弁体10が開位置にあるときの操作ハンドル19(詳しくは、操作ハンドル19の先端部分)を受け入れる受入れ凹部23bを有する。詳細には、接続補助部材23は、略円柱状の基端部23cと、その基端部23cの先端から突出する略円筒状の筒部23dとを備え、前記受入れ凹部23bは、筒部23dの後方であって前記基端部23cに設けられる。前記取付孔23aは、裏面から受入れ凹部23bに貫通するように設けられる。そして、受入れ凹部23bには、取付孔23aと交差するように、溝23eが設けられ、この溝23eに、ビス24の頭部が嵌まり込む。筒部23dは、伝達体13(詳しくは、後述する作動指示体26)が連結される被連結部となるものであり、その内周面には、雌ねじ23fが形成されている。そして、筒部23d内と受入れ凹部23bとを連通するように孔23gがあけられている。
【0048】
連結体11aは、自身を中空筒部6aに連結するための取付孔11dを有している。そこで、連結体11aは、取付孔11dを通って中空筒部6aにねじ込まれたり打ち込まれたりするビス等の固着具(図示せず)により、中空筒部6a(基板部6)に固定され、ひいては、弁ユニット9が、中空筒部6a(基板部6、ひいては、流量調整ユニット5)に取り付けられる。もっとも、連結体11aは、中空筒部6aに、ビス等の固着具を用いることなく接着によって固定されてもよく、また、ビス等の固着具に加えて接着によって固定されてもよい。
【0049】
本体12と連結体11aとの組み付けにおいては、連結体11aの一部が、本体12(詳しくは、第2弁体ケース152)の端部に挿入される。ここで、連結体11aには、本体12に挿入される部分の外周面に、ガイド溝11eが形成されている(
図28参照)。このガイド溝11eは、連結体11aの先端から斜め方向に延びる第1ガイド溝11fと、その第1ガイド溝11fに続いて周方向に延びる第2ガイド溝11gとを備えている。一方、本体12(詳しくは、第2弁体ケース152)の内周面には、ガイド溝11eに係合する突部15xが設けられている(
図25参照)。そこで、連結体11aが本体12に挿入されるように、本体12を押し進め、突部15xが第1ガイド溝11fに進入したところで、本体12を回動(図示実施の形態においては、時計回り方向に回動)すると、突部15xが第1ガイド溝11fに案内されて、本体12は、連結体11a側に引き込まれる。そして、さらに本体12を回動(図示実施の形態においては、時計回り方向に回動)することで、突部15xが第2ガイド溝11g内を移動する。
【0050】
そして、連結体11aには、固定部材25が設けられる。この固定部材25は、連結体11aに、その軸心方向にスライド可能に取り付けられている。詳細には、固定部材25は、断面コ字状に形成され、連結体11aの外周面に形成された支持突起11hを覆うように嵌められて、先端部分が、本体12側に突出する第1位置(
図24参照)と、本体12から控えた第2位置(
図25参照)との間を、スライド可能となっている。一方、本体12の外周面には、係合突起15fが形成されている。そこで、連結体11aに対し本体12を回動し終えた状態で、固定部材25を前記第2位置から前記第1位置にスライドすると、その固定部材25が、係合突起15fを覆うようにしてその係合突起15fに係合する。これにより、本体12は、自身の回動が阻止され、こうして、弁体10を含む本体12は、連結体11a(ひいては、流量調整ユニット5の中空筒部6a)に取付け固定される。また、本体12が連結体11aに固定された状態から、固定部材25を前記第1位置から前記第2位置にスライドすることで、係合突起15fへの固定部材25の係合が解除され、さらに、本体12を回動(図示実施の形態においては、反時計回り方向に回動)することで、ガイド溝11eへの前記突部15xの係合が解除されて、弁体10を含む本体12が連結体11a(ひいては、流量調整ユニット5の中空筒部6a)から取り外される。
【0051】
伝達体13は、アウターチューブ13a内に配されたインナーワイヤー13bを備えている。このインナーワイヤー13bは、水位計ユニットによる所定水位の検知によりその水位計ユニット側に引き込まれるように作動する。また、伝達体13には、その先端に、作動指示体26が設けられる。この作動指示体26は、出没体27と、その出没体27をスライド可能に収容する指示体ケース28とを備える。詳細には、指示体ケース28は、その外周面に雄ねじ28aが設けられており、その雄ねじ28aを接続補助部材23の雌ねじ23fにねじ込むことで、作動指示体26(伝達体13)は、接続補助部材23に連結され、ひいては、弁ユニット9の接続部14に接続される。
【0052】
出没体27は、前記スライドにより、先端に備わる係止突部27aが、指示体ケース28から突出して(
図33参照)、接続補助部材23に設けられた孔23gを通り、開弁姿勢にある操作ハンドル19の被係止孔19gに進入する。
【0053】
また、出没体27は、後端側に前記インナーワイヤー13bが接続されるワイヤー接続部27bを有して、インナーワイヤー13bが水位計ユニット側に引き込まれることで、出没体27が、突出状態となる前進位置から引き下がった後退位置に移動して、操作ハンドル19(詳しくは、被係止孔19g)への出没体27(詳しくは、係止突部27a)の係止が外れて、付勢部材であるトーションスプリング18の付勢により、操作ハンドル19に連動する弁体10が開位置(
図33参照)から閉位置(
図34参照)に移動する。なお、図示実施の形態においては、出没体27が、指示体ケース28に収容されることから、インナーワイヤー13bは、指示体ケース28内に引き入れられて、出没体27のワイヤー接続部27bに接続される。そして、アウターチューブ13aは、指示体ケース28に支持される。また、図示を省略するが、作動指示体26を含む伝達体13を取り外した状態においても、操作ハンドル19を開弁姿勢とし、接続補助部材23を回動操作することで、その接続補助部材23が操作ハンドル19の先端部分に係合して、その操作ハンドル19を開弁姿勢に保持することが可能となっている。すなわち、水位計ユニットとか伝達体13を用いることなく、接続補助部材23を手動操作することで、弁体10を閉位置や開位置に維持することもできる。
【0054】
次に、以上の構成からなる弁装置4および設置構造4zの作用効果について説明する。弁装置4は、用水路1に設置される流量調整ユニット5と、その流量調整ユニット5に取り付けられて圃場2側を向く弁ユニット9とを備えている。そこで、流量調整ユニット5において、閉塞板7の移動により、中空筒部6aの通孔6bから裏側に臨む開口6cの大きさを所定の大きさに調整し、かつ、弁ユニット9において、弁体10を、弁ユニット9の内部の流路空間9aを開放する開位置とすることで、流量調整ユニット5における開口6cの大きさで定まる所定の流量(例えば、圃場2での水温ならしに適した流量)で、用水路1から圃場2へ取水することができる。そして、圃場2への取水を停止する場合は、閉塞板7の位置はそのままで、弁ユニット9における弁体10を、流路空間9a(ひいては、連絡水路3の流路3a)を閉鎖する閉位置とすることができる。さらに、その後、取水を再開する場合は、閉塞板7の位置を保ったまま、弁体10を開位置とすることができる。すなわち、閉塞板7を移動することで、流量を調整することができるとともに、閉塞板7の位置を保ったまま、弁体10を開位置としたり閉位置としたりして、連絡水路3の流路3aを開閉することができることから、取水を再開したときに前回の流量を維持することができ、使い勝手がよい。
【0055】
また、閉塞板7は、中空筒部6aの通孔6bから裏側に臨む開口6cを閉じた位置に移動可能となっている。そして、弁ユニット9は、少なくとも弁体10(図示実施の形態においては、本体12)を中空筒部6aから取外し可能となっている。これにより、閉塞板7で開口6cを閉じて、弁ユニット9における少なくとも弁体10(本体12)を取り外すことで、その弁体10(本体12)の修理、点検、さらには交換等をすることができる。
【0056】
また、被係止部6dと係止部7aとで、中空筒部6aの通孔6bが、閉塞板7で上から下に向かって段階的に閉塞される。これにより、流量の定量設定が可能となり、流量の設定を容易に行うことができる。また、このとき、その閉塞の段階数は、閉塞板7の下端の高さ位置が基板部6の裏面における前記通孔6bの中心よりも下側であって最下端よりも上側となる段階数が、閉塞板7の下端の高さ位置が基板部6の裏面における前記通孔6bの中心よりも上側であって最上端よりも下側となる段階数と比して、多くなっている。これにより、閉塞板7による開口6cの開度の小さい側で、流量を微調整することが可能となる。
【0057】
また、基板部6の上端側と閉塞板7の上端側とに、紐掛け部6r、7bが設けられている。このため、両紐掛け部6r、7bに紐を渡すようにして、その紐で閉塞板7を吊り下げることで、その閉塞板7による通孔6bの閉塞の度合いを無段階に調整することができ、特に、係止部7aあるいは被係止部6dが破損したような場合に、この紐で、通孔6bの閉塞の度合いを調整することができる。また、閉塞板7が水没状態にある場合、その閉塞板7を、手で紐を持って引き上げることができる。さらに、閉塞板7を基板部6から外した場合に、閉塞板7が紛失するのを防ぐことができる。
【0058】
また、基板部6の両側部に、用水路1の溝1aに嵌まる延長板部材8を取付可能な取付部6eが設けられている。これにより、流量調整ユニット5を用水路1に設置するにあたって、適宜大きさ、寸法等の延長板部材8を用いることで、用水路1の幅に簡単に合わせて設置することができる。さらに、延長板部材8の片方のみを交換することで、別の場所の幅違いの用水路1にこの流量調整ユニット5を用いることもできる。しかも、取付部6eが、基板部6の両方の側部に設けられることから、両延長板部材8、8の取付部6eからの突出長を、互いに同じにしたり、互いに異なるようにすることで、中空筒部6a(ひいては、弁ユニット9)を、用水路1に対し、センター位置に配置したり、偏心した位置に配置(片寄せ配置)したりすることができ、周囲の環境に合わせて、弁ユニット9を配置することができる。特に、図示実施の形態のような横に操作ハンドル19がある弁ユニット9を中空筒部6aに連結するときに、中空筒部6a(ひいては、弁ユニット9)を用水路1に対し偏心した位置に配置(片寄せ配置)することで、用水路1との干渉を避けることが可能となる(
図19参照)。
【0059】
また、前記取付部6eは、延長板部材8を差込み可能な溝状の凹部6fを有している。これにより、延長板部材8を凹部6fに差し込むことで、その延長板部材8を基板部6に簡単に取り付けることができる。さらに、凹部6fが、基板部6の上下方向の全長に渡って延びることから、用水による水圧を上下方向の全体で受け止めることができる。
【0060】
また、前記凹部6fに複数の凸部6j、6jを設けることで、延長板部材8が反ったような場合であっても、複数の凸部6j、6jの幾つかを延長板部材8に当てて、延長板部材8を基板部6に挟持状態で取り付けることが可能となる。また、延長板部材8を基板部6の凹部6fに差し込んだ後に、ビス固定するような場合に、ビス固定の前に延長板部材を凸部6jで仮保持することができ、ビス固定を容易に行うことができる。
【0061】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、弁ユニット9は、本体12と連結体11aとを備えて、その連結体11aが本体12と分離可能に連結されることで、本体12が、連結体11a、ひいては中空筒部6aから取外し可能となるが、連結部11を、弁ユニット9の本体12に一体的に設け、弁体10のみを取外し可能あるいは弁体10を取り外し不能としてもよい。
【0062】
また、基板部6には、延長板部材8を取付可能な取付部6eが設けられているが、この取付部6eを設けることなく、基板部6が用水路1の溝1aに嵌まることで、その基板部6が用水路1に直接取り付けられてもよい。
【0063】
また、弁ユニット9を用いることなく、つまり、弁ユニット9を流量調整ユニット5に取り付けることなく、流量調整ユニット5を単独で用いて、その流量調整ユニット5を用水路1(詳しくは、用水路1の内側)に設置することもできる。これにより、閉塞板7の移動により、中空筒部6aの通孔6bから裏側に臨む開口6cの大きさを所定の大きさに調整することで、その開口6cの大きさで定まる所定の流量で、用水路1から圃場2へ取水することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 用水路
1a 溝
2 圃場
3 連絡水路
3a 流路
4 弁装置
4z 弁装置の設置構造
5 流量調整ユニット
6 基板部
6a 中空筒部
6b 通孔
6c 開口
6d 被係止部
6e 取付部
6f 凹部
6j 凸部
6r 紐掛け部
7 閉塞板
7a 係止部
7b 紐掛け部
8 延長板部材
9 弁ユニット
9a 流路空間
11 連結部